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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】浸漬ヒーターユニット
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/82 20060101AFI20220713BHJP
   H05B 3/06 20060101ALI20220713BHJP
   F27D 11/02 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
H05B3/82
H05B3/06 A
F27D11/02 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021163057
(22)【出願日】2021-10-01
【審査請求日】2021-10-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592134871
【氏名又は名称】日本坩堝株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000219750
【氏名又は名称】東海高熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大田 峰彦
(72)【発明者】
【氏名】竹内 晋之介
(72)【発明者】
【氏名】坂本 和久
(72)【発明者】
【氏名】米久 直幸
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-149099(JP,U)
【文献】中国実用新案第204272408(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/78-3/82
H05B 3/06
F27D 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属を加熱する浸漬ヒーターユニットであって、
上下方向に沿って延びた少なくとも一つの発熱体を有するヒーターと、
前記発熱体の上端部を露出した状態で前記ヒーターを収容し、外面から突き出したつば部を有するヒーターチューブと、
前記ヒーターチューブの内面に対して前記ヒーターを非接触位置に保つスペーサ部材と、
前記発熱体の上端部の位置を保つ位置決め部と、
前記位置決め部を前記つば部上に保持する保持部と、
を備え
前記スペーサ部材は、
前記ヒーターチューブの底部に収容され、前記ヒーターチューブの内底面に対して前記ヒーターの下端を非接触位置に保つ下スペーサと、
前記ヒーターチューブの上端部に設けられ、前記ヒーターチューブの開口内周縁に対して前記ヒーターを非接触位置に保つ上スペーサと、
を有する
浸漬ヒーターユニット。
【請求項2】
前記上スペーサは、
前記ヒーターチューブの開口面に通される挿入部と、
前記挿入部の上端に設けられ前記ヒーターチューブの前記開口面を覆う蓋部と、
前記挿入部の下面と前記蓋部の上面を貫通し、前記発熱体を通す挿通穴と、
を有する、
請求項1記載の浸漬ヒーターユニット。
【請求項3】
前記上スペーサと前記位置決め部との間に配置され、前記発熱体が通されかつ前記挿通穴よりも径が大きい取付け穴を有する板状のアダプタと、
中心軸に沿って前記発熱体が通された状態で前記取付け穴内に通される筒部、及び前記筒部から径方向の外側に突き出て前記取付け穴を覆う覆い部を有するブッシュと、
を更に備え、
前記取付け穴の内周面と前記筒部の外周面との間には隙間が形成されている、
請求項2記載の浸漬ヒーターユニット。
【請求項4】
前記位置決め部は、前記ヒーターの上端部が通され上底面を有する凹部を有し、
前記位置決め部は、前記凹部の上底面と前記下スペーサとの間に前記ヒーターを挟むことで、前記発熱体の上端部の位置を保つように構成されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の浸漬ヒーターユニット。
【請求項5】
溶融金属を加熱する浸漬ヒーターユニットであって、
上下方向に沿って延びた少なくとも一つの発熱体を有するヒーターと、
前記発熱体の上端部を露出した状態で前記ヒーターを収容し、外面から突き出したつば部を有するヒーターチューブと、
前記ヒーターチューブの内面に対して前記ヒーターを非接触位置に保つスペーサ部材と、
前記発熱体の上端部の位置を保つ位置決め部と、
前記位置決め部を前記つば部上に保持する保持部と、を備え、
前記保持部は、
前記つば部の下面に対して下方から当たる位置規制板と、
前記位置規制板上に前記位置決め部を支持する複数の支柱と、
を有する、
浸漬ヒーターユニット。
【請求項6】
前記複数の支柱の各々と前記位置決め部との間に設けられ、前記位置決め部を前記複数の支柱に沿って弾性的に位置変更させる弾性体を更に備える、
請求項5記載の浸漬ヒーターユニット。
【請求項7】
溶融金属を加熱する浸漬ヒーターユニットであって、
上下方向に沿って延びた少なくとも一つの発熱体を有するヒーターと、
前記発熱体の上端部を露出した状態で前記ヒーターを収容し、外面から突き出したつば部を有するヒーターチューブと、
前記ヒーターチューブの内面に対して前記ヒーターを非接触位置に保つスペーサ部材と、
前記発熱体の上端部の位置を保つ位置決め部と、
前記位置決め部を前記つば部上に保持する保持部と、を備え、
前記位置決め部は、上下方向に貫通する貫通穴を有し、
前記発熱体は、上端部に電極を含み、
前記浸漬ヒーターユニットは、前記電極に接続されかつ前記貫通穴を通して前記位置決め部よりも上方に引き出された接続具を更に備える、浸漬ヒーターユニット
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸漬ヒーターユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の浸漬ヒータの一形態が開示されている。特許文献1記載の浸漬ヒータは、溶融金属に漬けられるように炉に設置され、溶融金属を加熱する。特許文献1記載の浸漬ヒータは、保護管と、保護管の内部に収容された発熱体と、保護管と発熱体との間に充填された無機充填物と、発熱体に給電する電流端子と、を備える。発熱体が発熱すると、その熱は、無機充填物を介して保護管に伝導し、保護管から放熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-139847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の浸漬ヒータを始めとする、発熱体と保護管との間に充填物が充填された浸漬ヒーターでは、充填物の密度が、部分的に密や粗になりやすく、均一になりにくい上に、充填物自体のコストも高い。このため、浸漬ヒーターとして、発熱体と保護管との間に充填物を使用しない構造を採用するにはメリットがある。
しかし、発熱体と保護管との間に充填物が無いと、浸漬ヒーターを製造工場から設置現場まで輸送する際に、発熱体と保護管とが干渉する可能性があり、破損の可能性が懸念される。また、発熱体、保護管等の部品を、個別に、製造工場から設置する現場に輸送した上で、当該現場で組み立てると、現場作業者の作業効率が悪いうえに、現場作業者の技量によっては、適切な組み立てができずに、十分な能力が得られない浸漬ヒーターとなる可能性もある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、発熱体と保護管との間に充填物を充填しない構造を採用しつつ、輸送しやすい浸漬ヒーターユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一態様の浸漬ヒーターユニットは、溶融金属を加熱する浸漬ヒーターユニットであって、上下方向に沿って延びた少なくとも一つの発熱体を有するヒーターと、前記発熱体の上端部を露出した状態で前記ヒーターを収容し、外面から突き出したつば部を有するヒーターチューブと、前記ヒーターチューブの内面に対して前記ヒーターを非接触位置に保つスペーサ部材と、前記ヒーターの上端部の位置を保つ位置決め部と、前記位置決め部を前記つば部上に保持する保持部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る上記態様の浸漬ヒーターユニットは、発熱体と保護管との間に充填物を充填しない構造を採用しつつ、組み立てられた状態での取り扱いが容易で輸送しやすい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る浸漬ヒーターユニットの斜視図である。
図2図2は、同上の浸漬ヒーターユニットの分解斜視図である。
図3図3は、同上の浸漬ヒーターユニットのヒーターチューブ及び取付け部材を省略した分解斜視図である。
図4図4は、同上の浸漬ヒーターユニットの鉛直面に沿う面で切断した断面図である。
図5図5(A)は、図4のA部分拡大図である。図5(B)は、図4のB部分拡大図である。
図6図6は、図5(A)の位置決め部の凹部近傍の拡大図である。
図7図7(A)は、ヒーターの上部の取付け部材を省略した斜視図である。図7(B)は、図7(A)において、充填部材を充填した斜視図である。
図8図8(A)は、変形例1の浸漬ヒーターユニットにおいて、ヒーターの上部の取付け部材を省略した斜視図である。図8(B)は、図7(A)の鉛直面に沿う面で切断した断面図である。
図9図9は、図8(B)のC部分拡大図である。
図10図10は、変形例2の浸漬ヒーターユニットにおいて、位置決め部と支持部との間に弾性体を配置した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
以下、本発明の実態形態について添付図面を参照して説明する。
【0010】
(1)全体
本実施形態に係る浸漬ヒーターユニット1は、炉に溜められた溶融金属に漬けられるように設置されることで、溶融金属を加熱することができる。ここでいう「加熱」は、熱を加えることを意味し、溶融金属の温度を上昇させること、溶融金属を保温させることのほか、溶融金属の温度低下を緩やかにさせることも含む。溶融金属は、溶解した略液状の金属のことである。溶融金属をなす金属としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム合金、亜鉛合金等が挙げられる。
【0011】
なお、浸漬ヒーターユニット1を炉に取り付ける方法については、従来の取付け方法によって取り付けられる。本明細書では説明を省略する。
【0012】
浸漬ヒーターユニット1は、図1に示すように、ヒーター2と、ヒーターチューブ3と、スペーサ部材4と、取付け部材5と、平編素線を含む接続具8と、を備える。
【0013】
以下では、説明の便宜上、図1に示すように、浸漬ヒーターユニット1の長手方向に沿う方向のうち、接続具8からヒーターチューブ3に向かう方向を「下方向」とし、その反対方向を「上方向」とし、下方向及び上方向に平行な2方向を「上下方向」として定義する。ただし、この方向の定義は、本発明に係る浸漬ヒーターユニット1の使用態様を限定する趣旨ではない。
【0014】
(2)ヒーター
ヒーター2は、浸漬ヒーターユニット1の熱源となる部材である。ヒーター2は、図2に示すように、上下方向に沿って延びており、大部分がヒーターチューブ3内に収容される。ヒーター2は、図3に示すように、発熱領域である発熱部21と、発熱しない領域である非発熱部22と、を備える。本実施形態に係るヒーター2は、非発熱部22として、ヒーター2の上端を含む第一非発熱部221と、ヒーター2の下端を含む第二非発熱部222と、を備える。第一非発熱部221、発熱部21及び第二非発熱部222は、この順でヒーター2の長手方向に沿って並んでおり、第一非発熱部221は、ヒーター2の長手方向において、発熱部21よりも上方に形成されている。
【0015】
ヒーター2は、上端部に形成された電極233に対して電圧を印加することで発熱部21が発熱する。電極233は、第一非発熱部221のうちの上端部に形成されている。ただし、電極233は、第一非発熱部221に含まれていれば、上端部に形成されていなくてもよく、例えば、ヒーター2の上端から下方向に離れた位置に形成されていてもよい。
【0016】
本実施形態に係るヒーター2は、複数(ここでは三つ)の発熱体23と、連結体24と、を備える。各発熱体23は、上下方向に一様な断面形状(円形)で延びた棒状のセラミックヒーターであり、下端から上方に向かう一範囲が発熱領域H1であり、それ以外の範囲が非発熱領域H2である。電極233は、各発熱体23に形成されている。本実施形態に係るヒーター2では、複数の発熱体23の発熱領域H1によって、ヒーター2の発熱部21が構成されており、複数の発熱体23の非発熱領域によってヒーター2の第一非発熱部221が構成されている。
【0017】
連結体24は、複数の発熱体23の下端部同士を連結し、複数の発熱体23を一体にする。連結体24は、上方から見て(以下、平面視)略円形状に形成されている。連結体24の上面には、複数の発熱体23の下端部が嵌まり込む複数の嵌合凹部241が形成されている。連結体24の素材としては、特に制限はなく、例えば、セラミック、カーボン、金属等が挙げられる。ヒーター2の第二非発熱部222は、連結体24によって構成されている。
【0018】
(3)ヒーターチューブ
ヒーターチューブ3は、ヒーター2を保護しつつ、ヒーター2からの熱を溶融金属に伝導させる保護管である。ヒーターチューブ3は、図2に示すように、有底円筒状に形成されており、上端面に開口面を有する。ヒーターチューブ3は、浸漬ヒーターユニット1として組み立てられた状態では、図4に示すように、ヒーター2に対し、発熱部21を覆いかつ第一非発熱部221のうちの少なくとも上端部を露出するように位置付けられる。
【0019】
ヒーターチューブ3は、炭化珪素(SiC)を主成分とする材料で形成されており、耐酸化性、耐熱性、物理的強度、スラグや溶融金属等の化学的浸食に対する耐食性、熱伝導性を有している。ここで言う「主成分」とは、材料中の含有量が最も多いこと(好ましくは、含有量が55重量%を超えること)を意味する。ヒーターチューブ3を構成する材料は、主成分である炭化珪素に加えて、例えば、ホウ化物、SiO(例えば、シリカ、石英等)、金属酸化物(例えば、アルミナ、ムライト等)、カーボン(例えば、黒鉛、カーボンブラック等)等を含有することができる。これにより、耐熱衝撃性(耐スポール性)、耐酸化性、熱伝導性等を向上することができる。
【0020】
ヒーターチューブ3は、図4に示すように、チューブ本体31と、つば部32と、を備える。
【0021】
チューブ本体31は、ヒーターチューブ3の主体を構成する部分である。チューブ本体31は、上下方向に中心軸を有する有底円筒の直管状に形成されており、下端部の外面が半球状に形成されている。また、チューブ本体31の内面の底面(以下、内底面311という)も半球面状に形成されている。チューブ本体31の上端面は開口面を有しており、当該開口面は、チューブ本体31の内部に通じている。
【0022】
つば部32は、チューブ本体31の外面から、チューブ本体31の径方向の外側に突き出している。つば部32は、チューブ本体31の外面の周方向の全長にわたって形成されている。ただし、つば部32は、本発明では、チューブ本体31の外面の周方向の全長にわたっている必要はなく、部分的に形成されてもよい。
【0023】
つば部32は、チューブ本体31の上端部に設けられている。つば部32の上面は、チューブ本体31の上端面と面一である。ただし、本発明では、つば部32の上面は、チューブ本体31の上端面と面一でなくてもよく、溶融金属に接しない位置であれば、チューブ本体31の上端面から下方向に進んだ位置に形成されてもよい。
【0024】
ヒーターチューブ3は、浸漬ヒーターユニット1として組み立てられると、発熱体23のうちの少なくとも発熱部21を覆う。本実施形態では、ヒーターチューブ3は、ヒーター2の第二非発熱部222、発熱部21、ならびに第一非発熱部221のうちの下部及び中央部を覆う。これにより、第一非発熱部221のうちの少なくとも上端部が露出する。本実施形態では、ヒーターチューブ3により覆われないヒーター2の露出した部分を「上部」とし、上部のうちの電極233に対応する部分を「上端部」とする。
【0025】
(4)スペーサ部材
スペーサ部材4は、ヒーターチューブ3の内面に対して、ヒーター2を非接触位置に保つ部材である。スペーサ部材4は、ヒーターチューブ3に設けられている。スペーサ部材4は、電気的な絶縁性を有する材料で形成されている。スペーサ部材4の材料としては、例えば、アルミナ、サファイア、窒化アルミニウム、窒化珪素、コージライト、ムライト、フォルステライト等が挙げられるが、このなかでも、耐熱性及び電気絶縁性の観点から、アルミナが用いられることが好ましい。本実施形態に係るスペーサ部材4は、図4に示すように、下スペーサ41と、上スペーサ42と、を備える。
【0026】
下スペーサ41は、図5(B)に示すように、ヒーターチューブ3の底部に収容され、ヒーターチューブ3の内底面311に対してヒーター2の下端を非接触位置に保つ部材である。下スペーサ41の下面は、球面状に形成されており、内底面311に面状に接触する。下スペーサ41は、ヒーター2が載る載置面411と、載置面411の外周を囲む突出部412と、を備える。載置面411は、平面状に形成されており、上方向を向く。突出部412は、載置面411にヒーター2の下端部(具体的には、連結体24)が載った状態で、ヒーター2の下端部が、載置面411に対して、ヒーターチューブ3の径方向に移動するのを妨げる。
【0027】
上スペーサ42は、図5(A)に示すように、ヒーターチューブ3の開口内周縁に対してヒーター2を非接触位置に保つ部材である。上スペーサ42は、ヒーターチューブ3の上端部に設けられる。上スペーサ42は、挿入部421と、蓋部422と、複数の挿通穴423と、を備える。
【0028】
挿入部421は、上スペーサ42において、ヒーターチューブ3の開口面に通される部分である。挿入部421の外径は、挿入部421及びヒーターチューブ3の寸法精度の関係上、挿入部421とヒーターチューブ3との間に一定の隙間(いわゆる、遊び)を有するように形成されることが好ましい。ここでいう「一定の隙間」は、(ヒーターチューブ3の内径と挿入部421の外径との差)/2で表される寸法であり、例えば、2mm以上であることが好ましく、より好ましくは4mm以上である。「一定の隙間」の上限値としては、特に制限はないが、例えば、ヒーターチューブ3の外径の1/2以下であることが好ましい。
【0029】
蓋部422は、ヒーターチューブ3の開口面を覆う部分である。蓋部422は、挿入部421の上端に設けられている。蓋部422は、挿入部421に対して一体に成形されているが、例えば、ねじ止め、嵌め込み、ピン止め、溶着、接着、スナップフィット構造等によって挿入部421に接合されてもよい。
【0030】
蓋部422の外径は、挿入部421の外径よりも大きく、かつヒーターチューブ3の内径よりも大きく形成されている。また、蓋部422の外径は、ヒーターチューブ3のつば部32の外径以下に形成されている。ただし、本発明では、蓋部422の外径は、ヒーターチューブ3のつば部32の外径よりも大きく形成されていてもよい。
【0031】
挿通穴423は、発熱体23を通す穴である。挿通穴423は、挿入部421の下面と蓋部422の上面とを貫通する。挿通穴423は、間隔をおいて複数形成されており、複数の発熱体23が、一対一で通される。本実施形態に係る浸漬ヒーターユニットは複数の発熱体23を有するため、複数の挿通穴423が形成されているが、発熱体23が一つの場合には、挿通穴423は一つのみ形成される。
【0032】
各挿通穴423の内径は、ヒーター2の取付け性の関係上、発熱体23の外面との間に一定の隙間を有するように形成されることが好ましい。ここでいう「一定の隙間」は、(挿通穴423の内径と発熱体23の外径との差)/2で表される寸法であり、例えば、1mm以上であることが好ましく、より好ましくは2mm以上である。「一定の隙間」の上限値としては、例えば、5mmであることが好ましい。これによって、発熱体23の芯出しを精度よく行うことができる。
【0033】
ここで言う「発熱体23の芯出し」とは、発熱体23の中心軸がヒーターチューブ3の中心軸に対して平行となるように、発熱体23の角度や位置を調整して、発熱体23をヒーターチューブ3に取り付ける一製造工程を意味する。ヒーター2の芯出しを精度よく行うには、挿通穴423の長さをできる限り長くすることが好ましく、すなわち、挿入部421の下面と蓋部422の上面との間の寸法(「上スペーサ42の厚さ寸法T1」ともいう)をできる限り大きく設計することが好ましい。上スペーサ42の厚さ寸法T1としては、例えば、T1≦20mmであることが好ましく、より好ましくはT1≦50mmである。上スペーサ42の厚さ寸法の上限値は、例えば、400mmである。
【0034】
各挿通穴423には、図7(A)に示すように、発熱体23が通される。上述の通り、挿通穴423と発熱体23との間には、一定の隙間が形成されるため、発熱体23が発熱した際に、当該隙間から熱が逃げる可能性がある。このため、本実施形態に係る浸漬ヒーターユニット1では、挿通穴423と発熱体23との間の隙間には、図7(B)に示すように、充填部材43が充填される。
【0035】
充填部材43は、挿通穴423と発熱体23との間の隙間に充填される部材であり、当該隙間を埋める。充填部材43は、弾性及び耐熱性を有することが好ましい。充填部材43としては、例えば、セラミックファイバー、ガラスウール、ロックウール等が挙げられる。
【0036】
(5)取付け部材
取付け部材5は、図1に示すように、ヒーターチューブ3に対して、ヒーター2を取り付ける部材である。取付け部材5によって、ヒーターチューブ3に対してヒーター2を取り付けたまま、浸漬ヒーターユニット1として輸送を行うことができる。取付け部材5は、図2に示すように、位置決め部6と、保持部7と、を備える。
【0037】
(5.1)位置決め部
位置決め部6は、発熱体23の上端部のヒーターチューブ3に対する位置を保つ部材である。位置決め部6は、板状に形成されている。位置決め部6は、本実施形態では、平面視円形状に形成されているが、本発明では形状に特に制限はなく、例えば、平面視三角形状、平面視四角形状、平面視五角形状等の平面視多角形状、平面視楕円形状、隅丸多角形状、ブロック状、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状、格子状等に形成されてもよい。
【0038】
位置決め部6は、図5(A)に示すように、発熱体23の上端部が通される複数の凹部61を有する。複数の凹部61には、複数の発熱体23の上端部が一対一で通される。各凹部61は、図6に示すように、下方向を向く底面(以下、「上底面611」という)と、内側面612とを有している。複数の凹部61は、各発熱体23に対応する位置に形成されている。上底面611は、凹部61に発熱体23の上端部が通されると、ヒーター2の上端面に対向する。したがって、浸漬ヒーターユニット1として組み立てられた状態では、図4に示すように、凹部61の上底面611と下スペーサ41の載置面411とで、ヒーター2が挟まれる。この状態で、凹部61の内側面612は、図6に示すように、発熱体23の上端部が上底面611に対してヒーターチューブ3の径方向に移動するのを妨げる。
【0039】
位置決め部6は、電気的な絶縁性を有している。位置決め部6の材料としては、例えばカルシウム、カルシア、アルミナ、シリカ、ムライト、サファイア、窒化アルミニウム、窒化珪素、コージライト、フォルステライト等のうちの一種又は複数種の複合体が挙げられ、このなかでも、電気絶縁性、機械的強度及び軽量性の観点から、アルミナ、シリカ、ムライト、及びカルシウム(又はカルシア)の複合体が用いられることが好ましい。
【0040】
(5.2)保持部
保持部7は、ヒーターチューブ3のつば部32上に、位置決め部6を保持する部材である。保持部7は、図5(A)に示すように、位置規制板71と、複数の支柱72と、を備える。
【0041】
位置規制板71は、つば部32の下面に対して下方から当たり、少なくとも上方向及び径方向に位置決めされる部材である。ここでいう「つば部32の下面に対して下方から当たる」とは、つば部32の下面に対して接触して「直接的に当たる」場合のほか、シーリング材や粘着剤等を介在して「間接的に当たる」場合も含むこととする。
【0042】
位置規制板71は、図2に示すように、円環状に形成されている。位置規制板71は、中央の開口部711に対し、ヒーターチューブ3のチューブ本体31が上方から挿し込まれ、つば部32の下面に当たる位置に位置付けられる。位置規制板71とつば部32とは、例えば、接着剤、ねじ止め、挟み込み等で互いに固定されてもよい(すなわち、全方向に位置決めされてもよい)が、ここでは、位置規制板71は、ヒーターチューブ3に対して、つば部32の下面に当たる位置から上方向及び径方向に移動しないように位置規制されている。
【0043】
支柱72は、位置規制板71上に位置決め部6を支持する部材である。複数の支柱72は、図5(A)に示すように、位置規制板71と位置決め部6とをつなぐ。各支柱72は、上下方向に延びた棒状体で構成されており、具体的には、ボルトで構成されている。
【0044】
支柱72に対する位置決め部6の固定は、支柱72のねじ部にねじ込まれるナット721で行われる。ナット721をねじ込むと、位置決め部6は、位置規制板71に対して近付く方向に移動するが、このとき、ヒーター2の上端に対して、下方向に力を加える。ヒーター2は、位置決め部6の凹部61の上底面611と、下スペーサ41の載置面411との間で挟まれ、支持される。これによって、輸送中等に浸漬ヒーターユニット1に振動が加わっても、ヒーター2が、ヒーターチューブ3内でガタつくのを防ぐことができ、ヒーター2が折れ曲がったり、破損したりすることを回避することができる。
【0045】
(5.3)接続具
接続具8は、図1に示すように、電極233に接続され、位置決め部6に形成された貫通穴62を通して位置決め部6から上方に引き出されている。したがって、作業者は、ヒーター2に対する電気的な接続作業の作業性を向上することができる。
【0046】
位置決め部6は、図2に示すように、位置決め部6の上面と下面とを貫通する複数の貫通穴62を有する。貫通穴62は、平面視で、凹部61に隣接する位置に形成されており、凹部61からずれた位置に形成されている。ここで言う「平面視で凹部61からずれた位置」とは、平面視で、貫通穴62と凹部61とが重なる部位がないような位置関係を意味する。貫通穴62の形状としては、特に制限はなく、スリット状、長穴状、丸穴状等が挙げられる。
【0047】
接続具8は、図3に示すように、電極233に接続される連結具81と、連結具81に接続されかつ貫通穴62に通される導線82と、を備える。連結具81は、電極233に接触した状態で電極233に対して固定される固定部811と、固定部811から発熱体23の径方向に突き出る導線接続部812と、を備える。連結具81は、導体で構成されている。
【0048】
本実施形態に係る導線82は、扁平状の平編素線(フラットケーブル)で構成されている。導線82は、導線接続部812に電気的に接続される第一端子821と、ハーネスの長手方向の端部のうちの第一端子821とは反対側に形成された第二端子822と、を備える。第二端子822は、図1に示すように、浸漬ヒーターユニット1が組み立てられると、位置決め部6よりも上方に位置する。なお、導線82としては、平編素線に限らず、例えば、撚り線、単線、ハーネス等であってもよい。
【0049】
第二端子822に電力を供給すると、導線82及び連結具81を介して各発熱体23に電力が供給される。これによって、ヒーター2の発熱部21が発熱する。
【0050】
(6)作用効果
以上説明したように、本実施形態に係る浸漬ヒーターユニット1は、スペーサ部材4によってヒーターチューブ3とヒーター2とを非接触の状態に保ちつつ、位置決め部6によって発熱体23の上端部の位置が保たれた状態で、当該位置決め部6が保持部7によってつば部32上に保持される。このため、浸漬ヒーターユニット1として組み立てられた状態では、一のユニット品を構成する。この結果、浸漬ヒーターユニット1として、予め組み立てられた状態で輸送することができ、現場で部品を組み立てることなく、浸漬ヒーターユニット1を現場に搬入することができる。
【0051】
また、スペーサ部材4は、下スペーサ41と上スペーサ42とを有するため、ヒーターチューブ3の底部の内底面311とヒーター2との非接触状態と、ヒーターチューブ3の上端部とヒーター2との非接触状態とを確実に保つことができる。
【0052】
また、浸漬ヒーターユニット1では、スペーサ部材4によって、ヒーターチューブ3とヒーター2とを非接触の状態に保っている上に、位置決め部6と下スペーサ41との間にヒーター2を挟むことで、発熱体23の上端部の位置を保っている。このため、ヒーターチューブ3に対してヒーター2を固定することができ、輸送時にヒーター2が折れたり、破損したりすることを抑制することができる。さらに、ヒーターチューブ3に対してヒーター2を固定する構造が、発熱体23の発熱領域を阻害しないため、浸漬ヒーターユニット1として予め組み立てられた状態で、現場に搬入されても、そのまま設置することができる。
【0053】
また、複数の挿通穴423は、上スペーサ42において互いに離れた位置に形成されている。複数の発熱体23は、複数の挿通穴423に対して一対一で通される。このため、上スペーサ42によれば、複数の発熱体23は互いに接触することなく、互いの間の間隔を保つことができる。
【0054】
<変形例>
上記実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0055】
(1)変形例1
上記実施形態では、図7(B)に示すように、挿通穴423とヒーター2との間に充填部材43が充填され、これによって、挿通穴423とヒーター2との間から、ヒーター2から生じた熱が逃げるのを抑制した。
【0056】
ところで、ヒーター2が発熱することによって、各発熱体23が、発熱体23の長手方向に膨張することがある。このとき、発熱体23が上下から挟まれていると、湾曲しようとする力が生じる。このとき、発熱体23が、充填部材43によって、発熱体23の長手方向の中間部分で拘束されていると、応力が生じ得る。このため、本変形例では、これを緩和するために、充填部材43に代えて、例えば、図8(A)(B)に示すような構造を採用している。ここでは、上記実施形態と異なる部分を主に説明し、共通する部分については、説明を省略する。
【0057】
本変形例に係る浸漬ヒーターユニット1は、図8(A)(B)に示すように、アダプタ9と、複数のブッシュ91と、を備える。なお、図8(A)(B)では、取付け部材5については図示を省略している。
【0058】
アダプタ9は、複数のブッシュ91を支持する。アダプタ9は、発熱体23が通る複数の取付け穴92を有する。アダプタ9は、上スペーサ42と位置決め部6(図1参照)との間に配置される。具体的には、本変形例では、上スペーサ42に載せられる。アダプタ9は、上スペーサ42に対して、接着、ねじ止め等の固定手段で、固定されてもよいし、載せるだけで固定されていなくてもよい。
【0059】
アダプタ9は、上面及び下面が互いに平行な平面であり、板状に形成されている。アダプタ9の上面は、取付け穴92の中心軸に対して直交している。また、アダプタ9の下面も、取付け穴92の中心軸に対して直交している。アダプタ9の形状は、本変形例では円板状であるが、本発明では特に制限はなく、例えば、四角板状、五角形板状、楕円形状等であってもよい。
【0060】
アダプタ9の材料は、特に制限はなく、例えば、例えば、アルミナ、サファイア、窒化アルミニウム、窒化珪素、コージライト、ムライト、フォルステライト等が挙げられるが、このなかでも、耐熱性及び電気絶縁性の観点から、アルミナが用いられることが好ましい。
【0061】
ブッシュ91は、発熱体23が通された状態で、取付け穴92に嵌め込まれる。ブッシュ91は、図9に示すように、中央に発熱体23が通される筒部911と、筒部911の上端部から径方向の外側に突き出て取付け穴92を覆う覆い部912と、を備える。覆い部912は、アダプタ9の上面に載る。
【0062】
取付け穴92の内周面と筒部911の外周面との間には隙間が形成されている。これにより、ブッシュ91は、筒部911が取付け穴92内で移動し得る範囲において、アダプタ9の上面に沿って移動し得る。覆い部912は、どの位置に移動しても、取付け穴92を覆うような大きさに設定されている。
【0063】
ここで、図9に示すように、発熱体23の外径をd1、上スペーサ42の挿通穴423の内径をd2、アダプタ9の取付け穴92の内径をd3、筒部911の外径をd4とする。このとき、d1<d2<d3であり、d2≦d4である。なお、筒部911の内径と発熱体23の外径d1との差は、略同じサイズであってよく、例えば、0mm以上2mm以下であることが好ましい。
【0064】
また、取付け穴92の内径d3と筒部911の外径d4との差d3-d4は、1mm以上であることが好ましく、より好ましくは4mm以上である。d3-d4が、1mm未満であると、発熱体23に生じる応力が適切に緩和できない可能性がある。d3-d4の上限値には特に制限はないが、例えば、例えば、7mmを超えると、発熱体23が上スペーサ42の挿通穴423の内面に当たり得る。
【0065】
この構成によれば、発熱体23が発熱した結果、発熱体23が径方向に沿って湾曲する力が働いても、それに追従してブッシュ91が移動するため、応力を緩和することができる。このとき、取付け穴92は、ブッシュ91の覆い部912に覆われているため、ヒーター2とヒーターチューブ3との間の熱が取付け穴92から逃げるのを抑制することができる。
【0066】
(2)変形例2
上記実施形態では、位置決め部6は、支柱72に対して固定されたが、例えば、図10に示すように、位置決め部6は、支柱72に沿って弾性的に位置変更し得る構造であってもよい。これによって、発熱体23が発熱した際、各発熱体23が、発熱体23の長手方向に膨張しても、熱応力の発生を抑制することができる。
【0067】
取付け部材5は、弾性体73を備える。弾性体73は、位置決め部6を複数の支柱72に沿って弾性的に位置変更させる。弾性体73は、支柱72と位置決め部6との間、より具体的には、支柱72に固定されたナット721と、位置決め部6の上面との間に配置されている。弾性体73は、浸漬ヒーターユニット1が組み立てられた状態で、常時、発熱体23を下方向に押している。
【0068】
発熱によって、発熱体23が長手方向に膨張すると、位置決め部6が上方向に押されるが、弾性体73が圧縮することで、位置決め部6が上方向に移動する。したがって、熱応力が緩和される。一方、発熱体23の温度が低下し、発熱体23の長さが元に戻ると、弾性体73の弾性力に従って、位置決め部6が下方向に移動する。
【0069】
弾性体73は、弾性変形すれば特に制限はなく、例えば、ねじりコイルばね、板ばね、ゴム等が挙げられる。
【0070】
(3)その他の変形例
以下、実施形態の変形例を列挙する。
【0071】
上記実施形態に係るヒーター2は、非発熱部22が第一非発熱部221と第二非発熱部222とを備えたが、本発明では、第二非発熱部222はなくてもよい。すなわち、発熱部21がヒーター2の下端を含む領域であってもよい。また、上記実施形態に係るヒーター2は、複数の発熱体23を備えたが、一つの発熱体23のみで構成されてもよい。この場合、連結体24はなくてもよい。
【0072】
上記実施形態に係るヒーター2は、電力の供給を受けて発熱する電気ヒーターであったが、本発明では、これに限らず、例えば、ガスバーナにより構成されてもよい。また、上記実施形態に係る発熱体23は、セラミックヒーターであったが、金属ヒーターであってもよい。
【0073】
上記実施形態では、チューブ本体31は、円筒状に形成されたが、本発明では、チューブ本体31の形状に特に制限はなく、例えば、角筒状に形成されてもよい。
【0074】
上記実施形態に係るスペーサ部材4は、上スペーサ42と下スペーサ41の2部材で構成されたが、本発明では、上スペーサ42と下スペーサ41に加えて、上スペーサ42と下スペーサ41との間に設けられる中間スペーサを備えてもよい。また、スペーサ部材4によって形成されたヒーター2とヒーターチューブ3との間は、空間であってもよいし、無機充填物が充填されてもよい。また、上記実施形態のような上スペーサ42と下スペーサ41とを設けず、スペーサ部材4を無機充填物のみで構成してもよい。
【0075】
また、下スペーサ41と位置決め部6とで、ヒーターチューブ3に対して発熱体23を非接触位置に保つことができれば、上スペーサ42は無くてもよい。また、中間のスペーサ又は上スペーサ42によって、ヒーターチューブ3に対して発熱体23を非接触位置に保つことができ、かつヒーターチューブ3に対して発熱体23を固定することができれば、下スペーサ41はなくてもよい。
【0076】
上記実施形態に係る位置決め部6は、複数の凹部61を有しており、凹部61の上底面611と下スペーサ41とで、ヒーター2を挟んだが、本発明では、凹部61は無くてもよく、位置決め部6の下面は平面であってもよい。位置決め部6の下面と、下スペーサ41とでヒーター2を挟んでもよい。
【0077】
上記実施形態に係る位置規制板71は、つば部32の下面に対して下方から当たり、つば部32に対する上方向の移動を規制されたが、本発明では、位置規制板71は、例えば、断面C字状に形成され、つば部32が挿し入れられるような構造であってもよい。また、位置規制板71は、ピース状であってもよく、ヒーターチューブ3の全周に亘って設けられていなくてもよい。
【0078】
本明細書にて、「略平行」、又は「略直交」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略平行」とは、実質的に「平行」であることを意味し、厳密に「平行」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。他の「略」を伴った表現についても同様である。
【0079】
また、本明細書において「端部」及び「端」などのように、「…部」の有無で区別した表現が用いられている。例えば、「端」は物体の末の部分を意味するが、「端部」は「端」を含む一定の範囲を持つ域を意味する。端を含む一定の範囲内にある点であれば、いずれも、「端部」であるとする。他の「…部」を伴った表現についても同様である。
【0080】
<まとめ>
以上説明したように、第1の態様に係る浸漬ヒーターユニット1は、溶融金属を加熱する浸漬ヒーターユニット1である。浸漬ヒーターユニット1は、ヒーター2と、ヒーターチューブ3と、スペーサ部材4と、位置決め部6と、保持部7と、を備える。ヒーター2は、上下方向に沿って延びた少なくとも一つの発熱体23を有する。ヒーターチューブ3は、発熱体23の上端部を露出した状態でヒーター2を収容し、外面から突き出したつば部32を有する。スペーサ部材4は、ヒーターチューブ3の内面に対してヒーター2を非接触位置に保つ。位置決め部6は、発熱体23の上端部の位置を保つ。保持部7は、位置決め部6をつば部32上に保持する。
【0081】
この態様によれば、浸漬ヒーターユニット1は、スペーサ部材4によってヒーターチューブ3とヒーター2とを非接触の状態に保ちつつ、位置決め部6によって発熱体23の上端部の位置が保たれた状態で、当該位置決め部6が保持部7によってつば部32上に保持される。このため、浸漬ヒーターユニット1として組み立てられた状態では、一のユニット品を構成する。この結果、浸漬ヒーターユニット1として、予め組み立てられた状態で輸送することができ、現場で部品を組み立てることなく、浸漬ヒーターユニット1を現場に搬入することができる。
【0082】
第2の態様に係る浸漬ヒーターユニット1では、第1の態様において、スペーサ部材4は、ヒーターチューブ3の底部に収容され、ヒーターチューブ3の内底面311に対してヒーター2の下端を非接触位置に保つ下スペーサ41と、ヒーターチューブ3に設けられて、ヒーターチューブ3の開口内周縁に対してヒーター2を非接触位置に保つ上スペーサ42と、を有する。
【0083】
この態様によれば、ヒーターチューブ3の底部の内底面311とヒーター2との非接触状態と、ヒーターチューブ3の上端部とヒーター2との非接触状態とを確実に保つことができる。
【0084】
第3の態様に係る浸漬ヒーターユニット1では、第2の態様において、上スペーサ42は、ヒーターチューブ3の開口面に通される挿入部421と、挿入部421の上端に設けられヒーターチューブ3の開口面を覆う蓋部422と、挿入部421の下面と蓋部422の上面を貫通し、発熱体23を通す挿通穴423と、を有する。
【0085】
この態様によれば、挿入部421と蓋部422とを貫通する挿通穴423に沿って発熱体23を通すことで、発熱体23の芯出しを行うことができ、製造性を向上することができる。
【0086】
第4の態様に係る浸漬ヒーターユニット1では、第3の態様において、上スペーサ42と位置決め部6との間に配置され、発熱体23が通されかつ挿通穴423よりも径が大きい取付け穴92を有する板状のアダプタ9と、中心軸に沿って発熱体23が通された状態で取付け穴92内に通される筒部911、及び筒部911から径方向の外側に突き出て取付け穴92を覆う覆い部912を有するブッシュ91と、を更に備える。取付け穴92の内周面と筒部911の外周面との間には隙間が形成されている。
【0087】
この態様によれば、発熱体23の長手方向の中間部分で発熱体23を拘束するのを防ぎながら、取付け穴92を覆うことができるため、ヒーター2に生じる熱応力を緩和することができる。
【0088】
第5の態様に係る浸漬ヒーターユニット1では、第2~4のいずれか1つの態様において、位置決め部6は、ヒーター2の上端部が通され上底面611を有する凹部61を有する。位置決め部6は、凹部61の上底面611と下スペーサ41との間にヒーター2を挟むことで、発熱体23の上端部の位置を保つように構成されている。
【0089】
この態様によれば、スペーサ部材4によって、ヒーターチューブ3とヒーター2とを非接触の状態に保っている上に、位置決め部6と下スペーサ41との間にヒーター2を挟むことで、発熱体23の上端部の位置を保つ。これにより、ヒーターチューブ3に対してヒーター2を固定することができ、輸送時にヒーター2が折れたり、破損したりすることを抑制することができる。さらに、ヒーターチューブ3に対してヒーター2を固定する構造が、発熱体23の発熱領域を阻害しないため、浸漬ヒーターユニット1として予め組み立てられた状態で、現場に搬入されても、そのまま設置することができる。
【0090】
第6の態様に係る浸漬ヒーターユニット1では、第1~5のいずれか1つの態様において、保持部7は、つば部32の下面に対して下方から当たる位置規制板71と、位置規制板71上に位置決め部6を支持する複数の支柱72と、を有する。
【0091】
この態様によれば、つば部32に位置規制された位置規制板71と、複数の支柱72とで、位置決め部6の位置を位置決めすることができ、既存のヒーターチューブ3に対して、位置決め部6及びヒーター2を固定することができる。
【0092】
第7の態様に係る浸漬ヒーターユニット1では、第6の態様において、複数の支柱72の各々と位置決め部6との間に設けられ、位置決め部6を複数の支柱72に沿って弾性的に位置変更させる弾性体73を更に備える。
【0093】
この態様によれば、発熱により、ヒーター2が長手方向に膨張しても、その膨張に追従して位置決め部6の位置を変えることができるため、ヒーター2に生じる応力を緩和できる。
【0094】
第8の態様に係る浸漬ヒーターユニット1では、第1~7のいずれか1つの態様において、位置決め部6は、上下方向に貫通する貫通穴62を有する。ヒーター2は、非発熱部22に電極233を含む。浸漬ヒーターユニット1は、電極233に接続され、かつ貫通穴62を通して位置決め部6から上方に引き出された接続具8を更に備える。
【0095】
この態様によれば、接続具8に配線を行うだけで、浸漬ヒーターユニット1として使用することができるため、設置時の作業性を向上することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 浸漬ヒーターユニット
2 ヒーター
23 発熱体
233 電極
3 ヒーターチューブ
311 内底面
32 つば部
4 スペーサ部材
41 下スペーサ
42 上スペーサ
421 挿入部
422 蓋部
423 挿通穴
6 位置決め部
61 凹部
62 貫通穴
7 保持部
71 位置規制板
72 支柱
73 弾性体
8 接続具
9 アダプタ
91 ブッシュ
911 筒部
912 覆い部
92 取付け穴
【要約】
【課題】発熱体と保護管との間に充填物を充填しない構造を採用しつつ、輸送しやすい浸漬ヒーターユニットを提供する。
【解決手段】浸漬ヒーターユニット1は、溶融金属を加熱する浸漬ヒーターユニット1であって、上下方向に沿って延びた少なくとも一つの発熱体23を有するヒーター2と、発熱体23の上端部を露出した状態でヒーター2を収容すると共に、外面から突き出したつば部32を有するヒーターチューブ3と、ヒーターチューブ3の内面に対してヒーター2を非接触位置に保つスペーサ部材4と、発熱体23の上端部の位置を保持する位置決め部6と、位置決め部6をつば部32上に保持する保持部7と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10