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<図1>
  • 特許-超電導装置及び超電導コイル保護方法 図1
  • 特許-超電導装置及び超電導コイル保護方法 図2
  • 特許-超電導装置及び超電導コイル保護方法 図3
  • 特許-超電導装置及び超電導コイル保護方法 図4
  • 特許-超電導装置及び超電導コイル保護方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】超電導装置及び超電導コイル保護方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/02 20060101AFI20220713BHJP
   H01L 39/14 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
H01F6/02 ZAA
H01L39/14 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018059024
(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公開番号】P2019175889
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-02-04
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高温超電導実用化促進技術開発/高磁場マグネットシステム開発/高温超電導高安定磁場マグネットシステム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】塚本 修巳
【審査官】森岡 俊行
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-161398(JP,A)
【文献】特開2007-059920(JP,A)
【文献】特開2006-340418(JP,A)
【文献】特開昭62-279608(JP,A)
【文献】特開昭59-121902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 6/00
H01L 39/14
H02K 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の超電導コイルと、
互いに直列に接続され、かつ前記複数の超電導コイルそれぞれと並列に設けられた第1抵抗器及び第1スイッチと、
前記複数の超電導コイルのいずれかにクエンチが発生したことを検出した場合に、前記複数の超電導コイルのうちクエンチが発生した第1超電導コイル以外の一以上の超電導コイルと並列に設けられた一以上の前記第1スイッチを導通状態にする制御部と、
を有する超電導装置。
【請求項2】
前記複数の超電導コイルのうち互いに隣接する2つの超電導コイルの接続点と、当該2つの超電導コイルに対応する2つの前記第1抵抗器及び前記第1スイッチの群の接続点との間に直列に設けられた第2抵抗器及び第2スイッチをさらに有する、
請求項1に記載の超電導装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1超電導コイルと並列に設けられた前記第1スイッチ、及び前記複数の超電導コイルの直列接続方向の中央位置を基準として前記第1超電導コイルの位置と対称な位置の第2超電導コイルと並列に設けられた前記第1スイッチ以外の前記一以上の第1スイッチを導通状態にする、
請求項1又は2に記載の超電導装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数の超電導コイルのうち前記第1超電導コイル及び前記第2超電導コイル以外の全ての前記超電導コイルと並列に設けられた前記一以上の第1スイッチを導通状態にする、
請求項3に記載の超電導装置。
【請求項5】
前記複数の超電導コイルのうち、前記複数の超電導コイルの直列接続方向の中央位置に近いほど、前記超電導コイルと並列に設けられている前記第1抵抗器の抵抗値が小さい、
請求項1から4のいずれか一項に記載の超電導装置。
【請求項6】
前記複数の超電導コイルと並列に設けられた第抵抗器をさらに有し、
前記第1抵抗器の抵抗値が前記第抵抗器の抵抗値よりも小さい、
請求項1から5のいずれか一項に記載の超電導装置。
【請求項7】
導通状態にする前記一以上の第1スイッチと直列接続された一以上の前記第1抵抗器の抵抗値の合計値が前記第抵抗器の抵抗値よりも小さい、
請求項6に記載の超電導装置。
【請求項8】
前記複数の超電導コイルそれぞれと並列に設けられた、それぞれ抵抗値が異なる複数の前記第1抵抗器を有し、
前記制御部は、クエンチが発生した前記超電導コイルがどれであるかによって、前記複数の第1抵抗器のうち導通状態にする第1抵抗器を決定する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の超電導装置。
【請求項9】
直列に接続された複数の超電導コイルと、互いに直列に接続され、かつ前記複数の超電導コイルそれぞれと並列に設けられた第1抵抗器及び第1スイッチと、を有する装置を制御する方法であって、
前記複数の超電導コイルのいずれかにクエンチが発生したことを検出するステップと、
前記複数の超電導コイルのいずれかにクエンチが発生したことを検出した場合に、前記複数の超電導コイルのうちクエンチが発生した第1超電導コイル以外の一以上の超電導コイルと並列に設けられた一以上の前記第1スイッチを導通状態にするステップと、
を有する超電導コイル保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クエンチが発生した超電導コイルを保護することができる超電導装置及び超電導コイル保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超電導コイルにクエンチが発生した場合に超電導コイルが破損してしまうことを防ぐための方法が提案されている(例えば、非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】松尾竜太、小島あかね、有山隆紘、松田直大、渕田佳稀、高尾智明、塚本修巳著「マルチ超電導コイルで構成されるHTSコイルのクエンチ保護法の提案」、2017年超電導機器研究会ASC-17-010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の方法においては、直列接続された複数の超電導コイルのうち両端の超電導コイルにクエンチが発生することが想定されていた。しかしながら、両端の超電導コイル以外の超電導コイルにクエンチが発生することも想定される。従来の方法では、両端の超電導コイル以外の超電導コイルにクエンチが発生した場合に、クエンチが発生した超電導コイルを保護することができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、直列接続された複数の超電導コイルのうち任意の超電導コイルを保護するための超電導装置及び超電導コイル保護方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の超電導装置は、直列に接続された複数の超電導コイルと、互いに直列に接続され、かつ前記複数の超電導コイルそれぞれと並列に設けられた第1抵抗器及び第1スイッチと、前記複数の超電導コイルのいずれかにクエンチが発生したことを検出した場合に、前記複数の超電導コイルのうちクエンチが発生した第1超電導コイル以外の一以上の超電導コイルと並列に設けられた一以上の前記第1スイッチを導通状態にする制御部と、を有する。
【0007】
超電導装置は、前記複数の超電導コイルのうち互いに隣接する2つの超電導コイルの接続点と、当該2つの超電導コイルに対応する2つの前記第1抵抗器及び前記第1スイッチの群の接続点との間に直列に設けられた第2抵抗器及び第2スイッチをさらに有してもよい。
【0008】
前記制御部は、前記第1超電導コイルと並列に設けられた前記第1スイッチ、及び前記複数の超電導コイルの直列接続方向の中央位置を基準として前記第1超電導コイルの位置と対称な位置の第2超電導コイルと並列に設けられた前記第1スイッチ以外の前記一以上の第1スイッチを導通状態にしてもよい。
【0009】
前記制御部は、前記複数の超電導コイルのうち前記第1超電導コイル及び前記第2超電導コイル以外の全ての前記超電導コイルと並列に設けられた前記一以上の第1スイッチを導通状態にしてもよい。
【0010】
前記複数の超電導コイルのうち、前記複数の超電導コイルの直列接続方向の中央位置に近いほど、前記超電導コイルと並列に設けられている前記第1抵抗器の抵抗値が小さくてもよい。
【0011】
また、前記複数の超電導コイルと並列に設けられた第2抵抗器をさらに有し、前記第1抵抗器の抵抗値が前記第2抵抗器の抵抗値よりも小さくてもよい。この場合、導通状態にする前記一以上の第1スイッチと直列接続された一以上の前記第1抵抗器の抵抗値の合計値が前記第2抵抗器の抵抗値よりも小さくてもよい。
【0012】
超電導装置は、前記複数の超電導コイルそれぞれと並列に設けられた、それぞれ抵抗値が異なる複数の前記第1抵抗器を有し、前記制御部は、クエンチが発生した前記超電導コイルがどれであるかによって、前記複数の第1抵抗器のうち導通状態にする第1抵抗器を決定してもよい。
【0013】
本発明の第2の態様の超電導コイルの保護方法は、直列に接続された複数の超電導コイルと、互いに直列に接続され、かつ前記複数の超電導コイルそれぞれと並列に設けられた第1抵抗器及び第1スイッチと、を有する装置を制御する方法であって、前記複数の超電導コイルのいずれかにクエンチが発生したことを検出するステップと、前記複数の超電導コイルのいずれかにクエンチが発生したことを検出した場合に、前記複数の超電導コイルのうちクエンチが発生した第1超電導コイル以外の一以上の超電導コイルと並列に設けられた一以上の前記第1スイッチを導通状態にするステップと、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、直列接続された複数の超電導コイルのうち任意の超電導コイルを保護することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】超電導装置が有する超電導コイルユニットの概要を示す図である。
図2】超電導装置の構成を示す図である。
図3】一部の超電導コイルにクエンチが発生した後に各超電導コイルを流れる電流の変化を示すシミュレーション結果である。
図4】一部の超電導コイルにクエンチが発生した後に各超電導コイルを流れる電流の変化を示すシミュレーション結果である。
図5】第2実施形態に係る超電導装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
[超電導コイルの概要]
図1は、本実施形態の超電導装置1が有する超電導コイルユニット11の概要を示す図である。図2は、超電導装置1の構成を示す図である。超電導装置1は、例えばMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置である。
【0017】
図1に示す超電導コイルユニット11は、4つのパンケーキコイルである超電導コイルL1、L2、L3、L4を備えているが、超電導コイルユニット11が有する超電導コイルの数は任意である。超電導コイルL1、L2、L3、L4に電流を流すと、図1に示すように磁界が発生する。
【0018】
超電導コイルL1、L2、L3、L4のいずれかにクエンチが発生すると、クエンチが生じた超電導コイルが損傷してしまう。そこで、超電導装置1は、クエンチが発生したことを検出すると、クエンチが発生した超電導コイルを流れている電流を他の超電導コイルに移す転流を行うことで、クエンチが発生した超電導コイルを保護する構成を備えている。以下、超電導装置1の詳細について説明する。
【0019】
[超電導装置1の構成]
超電導装置1は、超電導コイルユニット11と制御部12とを備える。超電導コイルユニット11は、電流源Pと、複数の超電導コイルL(超電導コイルL1~Ln)と、複数の第1抵抗器R1(抵抗器R11~R1n)と、複数の第2抵抗器R2(抵抗器R21~R2n)と、複数の第1スイッチS1(スイッチS11~S1n)と、複数の第2スイッチS2(スイッチS21~S2n)第3スイッチTと、ダイオードDと、第3抵抗器rと、を有する。ここで、nは、2以上の整数である。
【0020】
電流源P及び第3スイッチTは、複数の超電導コイルLと直列に設けられている。電流源Pは、複数の超電導コイルLに磁界を発生させるための電流を供給する。第3スイッチTは、電流源Pと直列接続されており、制御部12の制御に基づいて、電流源Pが出力する電流を複数の超電導コイルLに流す導通状態と、電流を複数の超電導コイルLに流さない非導通状態とを切り替える。
【0021】
ダイオードD及び第3抵抗器rは、互いに直列に接続された複数の超電導コイルLと並列に設けられている。ダイオードD及び第3抵抗器rは、電流源Pにおける第3スイッチTと接続されていない側と、第3スイッチTにおける電流源Pと接続されていない側との間において、互いに直列に接続されている。
【0022】
超電導装置1は、それぞれの超電導コイルLと並列に、互いに直列に接続された第1抵抗器R11~R1nと第1スイッチS11~S1nとを有する。すなわち、超電導装置1は、互いに直列に接続され、かつ複数の超電導コイルL1~Lnそれぞれと並列に設けられた第1抵抗器R11~R1n及び第1スイッチS11~S1nを有する。
【0023】
また、超電導装置1は、隣接する超電導コイルLの接続点と、第1抵抗器R1kと第1スイッチS1(k+1)との接続点との間に、互いに直列に接続された第2抵抗器R21~R2nと第2スイッチS21~S2nとを有する。ここで、kはn以下の整数である。第1抵抗器R11~R1nの抵抗値は、第3抵抗器rの抵抗値よりも小さい。第1スイッチS11~S1n、第2スイッチS21~S2n、及び第3スイッチTは、制御部12の制御により、導通状態と非導通状態とを切り替えることができる。
【0024】
制御部12は、例えばコンピュータである。制御部12は、記録媒体に記憶されたプログラムを実行することにより、複数の第1スイッチS11~S1n、第2スイッチS21~S2n、及び第3スイッチTの導通状態を制御する。
【0025】
制御部12は、複数の超電導コイルLのいずれかにクエンチが発生したことを検出した場合に、第3スイッチTを非導通状態にする。また、制御部12は、複数の超電導コイルLのうちクエンチが発生した第1超電導コイルL以外の一以上の超電導コイルLと並列に設けられた一以上の第1スイッチS1を導通状態にする。また、制御部12は、導通状態にした第1スイッチS1と直列に接続された第1抵抗器R1に電流が流れるように、少なくとも一部の第2スイッチS2を導通状態にする。例えば、制御部12は、超電導コイルL1と超電導コイルLnにクエンチが発生したことを検出した場合に、超電導コイルL2~L(n-1)と並列に設けられた第1スイッチS12~S1(n-1)を導通状態にするとともに、第2スイッチS21~S2(n-1)を導通状態にする。
【0026】
制御部12が第3スイッチTを非導通状態にすることにより、電流源Pから供給される電流が超電導コイルL1~Lnに流れなくなる。そして、制御部12が第1スイッチS12~S1(n-1)の少なくともいずれかを導通状態にするとともに、導通状態にした第1スイッチS1と直列に接続された第1抵抗器R1に電流が流れるようにすることで、相互インダクタンスによる磁気結合により、超電導コイルL1及び超電導コイルLnに流れている電流に対応する電流が、導通状態になった第1スイッチSに対応する超電導コイルL(例えば超電導コイルL2~超電導コイルL(n-1))に転流し、超電導コイルL1及び超電導コイルLnに流れる電流が急速に減少する。このように、超電導コイルL1及び超電導コイルLnに流れる電流が急速に減少することにより、クエンチが発生して常電導状態になった超電導コイルL1及び超電導コイルLnでのジュール熱の発生を抑制することができるので、超電導コイルL1及び超電導コイルLnの損傷を防止できる。
【0027】
制御部12は、クエンチが発生した超電導コイルLと並列に設けられた第1スイッチS1、及び複数の超電導コイルLの直列接続方向の中央位置を基準としてクエンチが発生した超電導コイルLの位置と対称な位置の第2超電導コイルLと並列に設けられた第1スイッチS1以外の一以上の第1スイッチS1を導通状態にしてもよい。制御部12は、例えば、複数の超電導コイルLのうち第1超電導コイル及び第2超電導コイル以外の全ての超電導コイルと並列に設けられた一以上の第1スイッチS1を導通状態にする。
【0028】
制御部12は、例えば超電導コイルL1にクエンチが発生した場合、(1)超電導コイルL1と並列に設けられた第1スイッチS11、及び(2)複数の超電導コイルLの中央位置に相当する超電導コイルL(n/2)を基準として超電導コイルL1と対称な位置の超電導コイルLnと並列に設けられた第1スイッチS1nの2つの第1スイッチS1以外の、第1スイッチS12~S1(n-1)を導通状態にする。また、制御部12は、第2スイッチS21~S2(n-1)を導通状態にする。
【0029】
制御部12は、例えば超電導コイルL2にクエンチが発生した場合、(1)超電導コイルL2と並列に設けられた第1スイッチS2、及び(2)超電導コイルL(n-1)と並列に設けられた第1スイッチS(n-1)の2つの第1スイッチ以外の、第1スイッチS1、及び第1スイッチS2~S(n-2)を導通状態にする。また、制御部12は、第2スイッチS21~S2(n-1)を導通状態にする。このようにすることで、電流のアンバランスが生じることにより超電導コイルLが損傷することを防止できる。
【0030】
複数の第1抵抗器R11~R1nの抵抗値は任意であるが、第1抵抗器R11~R1nそれぞれの抵抗値は、第3抵抗器rの抵抗値よりも小さいことが望ましい。そして、導通状態にする一以上の第1スイッチS1と直列接続された一以上の第1抵抗器R1の抵抗値の合計値が第3抵抗器rの抵抗値よりも小さいことが望ましい。このように、第1抵抗器R11~R1nそれぞれの抵抗値が第3抵抗器rの抵抗値よりも小さいことで、いずれかの超電導コイルLにクエンチが発生した場合に、クエンチが発生していない超電導コイルLに転流される電流値を十分に大きくすることができる。
【0031】
また、複数の超電導コイルLのうち、複数の超電導コイルLの直列接続方向の中央位置に近いほど、超電導コイルLと並列に設けられている第1抵抗器R1の抵抗値が小さくなるようにしてもよい。このようにすることで、クエンチが発生しやすい両端の超電導コイルL1又は超電導コイルLnからの距離が大きく、超電導コイルL1又は超電導コイルLnとの間の相互インダクタンスが小さい超電導コイルLに電流が流れやすくなる。この結果、複数の超電導コイルLそれぞれに流れる電流の量の差を小さくすることができるとともに、クエンチが発生した超電導コイルLを流れる電流を短時間で小さくすることができる。
【0032】
[シミュレーション結果]
図3及び図4は、一部の超電導コイルLにクエンチが発生した後に各超電導コイルLを流れる電流の変化を示すシミュレーション結果である。図3及び図4の横軸は、クエンチが発生してからの経過時間を示し、縦軸は1つの超電導コイルLを流れる電流の大きさを示している。図3及び図4に示すシミュレーション結果は、超電導装置1が8個の超電導コイルLを有する場合(すなわちn=8の場合)のシミュレーション結果である。
【0033】
図3は、超電導コイルL1及び超電導コイルL8にクエンチが発生した場合の、超電導コイルL1、L8、超電導コイルL2、L7、超電導コイルL3、L6、並びに超電導コイルL4、L5を流れる電流を示している。超電導コイルL1及び超電導コイルL8を流れる電流は、クエンチが発生した直後に急速に低下し、超電導コイルL2及び超電導コイルL7を流れる電流が増加している。その後、超電導コイルL3及び超電導コイルL6、並びに超電導コイルL4及び超電導コイルL5を流れる電流が増加するにつれて、超電導コイルL2及び超電導コイルL7を流れる電流も低下している。このように、超電導コイルL1及び超電導コイルL8を流れる電流が、内側のコイルに転流することで、超電導コイルL1及び超電導コイルL8の破損を防げることが確認できた。
【0034】
図4は、超電導コイルL2にクエンチが発生した場合の、各超電導コイルLを流れる電流を示している。超電導コイルL2を流れる電流は、クエンチが発生した直後に急速に低下し、超電導コイルL2に隣接する超電導コイルL1及び超電導コイルL3を流れる電流が増加している。その後、他の超電導コイルLを流れる電流が増加するにつれて、超電導コイルL1及び超電導コイルL3を流れる電流も低下していることが確認できる。このように、両端以外の超電導コイルLにクエンチが発生した場合にも転流が発生し、クエンチが発生した超電導コイルLの破損を防げることが確認できた。
【0035】
[超電導装置1による効果]
以上のとおり、超電導装置1においては、各超電導コイルLと並列に、第1抵抗器R及び第1スイッチSが設けられている。そして、制御部12は、複数の超電導コイルLのいずれかにクエンチが発生したことを検出した場合に、複数の超電導コイルLのうちクエンチが発生した超電導コイルL以外の一以上の超電導コイルLと並列に設けられた一以上の第1スイッチSを導通状態にする。このようにすることで、クエンチが発生した超電導コイルLを流れている電流が、導通状態にした第1スイッチSと並列の位置にある超電導コイルLに転流するので、クエンチが発生した超電導コイルLを流れる電流が減少し、クエンチが発生した超電導コイルLの損傷を防ぐことができる。
【0036】
なお、以上の説明においては、制御部12が、第2スイッチS21~S2(n-1)を導通状態にする動作例を示したが、制御部12は、クエンチが発生した超電導コイルL以外の一以上の超電導コイルLと並列に設けられた一以上の第1抵抗器R1に電流が流れるように、一部に第2スイッチS2を導通状態にしてもよい。例えば、超電導コイルL1にクエンチが発生した場合、制御部12は、第1スイッチS12、第2スイッチS21及び第2スイッチS22を導通状態にして、第1抵抗器R21に電流が流れるようにしてもよい。また、超電導装置1は、第2スイッチS2を有していなくてもよい。
【0037】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係る超電導装置2の構成を示す図である。超電導装置2は、複数の超電導コイルLそれぞれと並列に設けられた、それぞれ抵抗値が異なる複数の第1抵抗器Rと第1スイッチSとを有する。超電導装置2は、例えば、超電導コイルL1と並列に設けられた第1抵抗器R11及び第1抵抗器R31と、第1抵抗器R11及び第1抵抗器R32のいずれかを超電導コイルL1と接続するための第3スイッチS21及び第4スイッチS41とを有する。
【0038】
制御部12は、クエンチが発生した超電導コイルLがどれであるかによって、複数の第1抵抗器R1及び複数の第1抵抗器R3のうち導通状態にする第1抵抗器R1及び第1抵抗器R3を決定する。制御部12は、例えば、クエンチが発生した超電導コイルLが近ければ近いほど相互インダクタンスが大きいので、より小さい第1抵抗器R1又は第1抵抗器R3を導通状態にすることに決定する。具体的には、第1抵抗器R11の抵抗値が第1抵抗器R31の抵抗値よりも大きい場合、超電導コイルL2にクエンチが発生したときには第1抵抗器R11を導通状態にし、超電導コイルL3にクエンチが発生したときには第1抵抗器R31を導通状態にする。このようにすることで、クエンチが発生した超電導コイルLの位置による、転流により発生する電流の大きさのばらつきを小さくすることができる。
【0039】
[超電導装置2による効果]
以上のとおり、超電導装置2の制御部12は、クエンチが発生した超電導コイルLがどれであるかによって、他の超電導コイルLと並列に設けられた第1抵抗器R1及び第1抵抗器R3の抵抗値を制御することができる。超電導装置2がこのような構成を有することで、超電導装置2は、クエンチが発生した超電導コイルLの位置によらず、各超電導コイルLを流れる電流を所望の範囲に制御することができるので、クエンチが発生した超電導コイルLとともに、他の超電導コイルLの損傷も防ぎやすくなる。
【0040】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【符号の説明】
【0041】
1 超電導装置
2 超電導装置
11 超電導コイルユニット
12 制御部
L1~Ln 超電導コイル
R11~R1n、R31、R32 第1抵抗器
R21~R2n 第2抵抗器
r 第3抵抗器
S11~S1n 第1スイッチ
S21~S2n 第2スイッチ
T 第3スイッチ
P 電流源
D ダイオード
図1
図2
図3
図4
図5