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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   A63F 7/02 20060101AFI20220713BHJP
【FI】
A63F7/02 304D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018095928
(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公開番号】P2019198553
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】591044614
【氏名又は名称】株式会社足立ライト工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】真 健一郎
【審査官】武田 知晋
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-110372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
電力の供給により駆動する電気的駆動源と、
前記電気的駆動源の駆動に伴い回動し、少なくとも一部に光が通過可能な光透過部を有し、前記光透過部以外の部位は光を遮蔽する遮蔽部として機能する歯車と
複数の発光体と、
複数の前記発光体の発光を制御する発光制御手段と、
を備え、
前記光透過部は、前記歯車の中心軸から放射方向に向かって形成されており、
前記ベース部材に前記発光体を設け、
前記歯車を互いに噛み合うように複数個配置することで前記電気的駆動源の駆動に伴い直接又は間接的に前記歯車のすべてが回動可能であり、
前記歯車に対し前記発光制御手段により制御された前記発光体からの光を照射することによって、前記光透過部から出射する光の残像によって、文字、記号、模様及びそれらの変化を表現可能であることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記ベース部材の一方側面には、前記歯車を軸支する立設された回転支軸と、前記歯車の各々に対応して形成された遮蔽性を有する区画壁と、を備え、
前記区画壁により、前記ベース部材と前記歯車との間に閉鎖的な空間部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記ベース部材の他方側面には、前記空間部に対応する位置に前記発光体を複数個設けた電子基板を配置し、
前記ベース部材には、複数の前記発光体に対応して形成された光透過用貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記歯車の前面に透光性を有する前面カバー部材を設け、前記前面カバー部材に複数個の前記歯車に対して前記回転支軸から抜け落ちることを防止する抜け止め防止機構を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記歯車の前記光透過部以外の部位に装飾を施した装飾部が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的駆動源によって可動する可動体と、その可動体の可動に伴い、発光体の発光を電子制御により行うことによって生ずる残像現象を利用して文字や図形を表示させる表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の遊技機等においては、液晶表示装置を用いた演出ばかりでなく、その液晶表示装置と連動させて総合的な演出をする演出用役物装置も併せて設けられた遊技機が主流となっている。
【0003】
例えば、特許文献1の第4形態(図8)においては、発光体を回転させ、その発光体の発光を制御することによって残像を生じさせ図柄などを表示する表示装置に関する記載がある。さらに、その表示装置の回転内側の空間に液晶ディスプレイ(LCD)を配置したパチンコ機を提案している。
【0004】
また、特許文献2に示される操作スイッチは、演出表示パターンに応じて遊技者が操作スイッチを操作することによって、操作スイッチからの送風による刺激と、回転する発光素子の残像効果を利用した文字等の表示による視覚的な刺激を受けることができるものが提案されている。この発明によれば、重複した刺激を一度に体感することが可能で、演出機能をより一層高めることができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、発光体に対する電気供給を電源供給基板に設けられたトランスから、電源受容回路に設けられたトランスに対して非接触で電磁誘導を利用した電源の供給を行っている、回転動する発光体に対して電源の供給を行う場合には、このように供給側と供給を受ける側とに互いにトランスを設けるなど特別な方法を用いることが必要であり、それに伴う部品点数の増加及びコストの増加並びに設置場所の確保の必要性等の問題が発生することになる。
【0006】
また、特許文献1は発光体である発光ダイオード(LED)とその電子基板とを回転させ、その回転軌道上にて発光の制御をすることで筒状(円柱状)の曲面にて立体的な表現が可能な表示装置としている。しかしながら、遊技者から見える表示面(前面側)を大きくしようとすると表示装置の前面(上下左右方向)ばかりでなく回転する径方向に向けて全体的に大型化してしまう。つまりパチンコ機など前後方向にスペースの制限のあるものに搭載しようとする場合には、その配置場所の確保が難しくなり、設計上の制約を大きく受けてしまうという問題が発生していた。
【0007】
また、特許文献2は、発光素子(光源)を備えた回転する回転体に対する電気の供給を、回転駆動を担う電動モータとは別にスリップリングを用いて行うものである。しかしながら、一般的に使用されるブラシを介して回転体に電気を供給するタイプのスリップリングについては、ノイズの発生やブラシの摩耗の発生といった問題が常につきまとい、定期的な保守メンテナンスが不可欠で、製品に搭載する場合には使用頻度や耐用回数を考慮しなければならず設計上の大きな制約があった。また、スリップリングは比較的高価な部品となることから、製品全体としてのコストアップとなり、製品として採用するのに大きな課題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許4374846号公報
【文献】特開2011-24778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、回転体と歯車の機能を一体化することによって、大幅なコスト削減と省スペースを確保することができ、かつ回転動される発光体に対し電気の供給を行う必要もスリップリングを設ける必要のない光の残像を利用した表示装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0011】
本発明にかかる表示装置は、
ベース部材と、
電力の供給により駆動する電気的駆動源と、
前記電気的駆動源の駆動に伴い回動し、少なくとも一部に光透過部を有する歯車と、
複数の発光体と、
複数の前記発光体の発光を制御する発光制御手段と、
を備え、
前記ベース部材に前記発光体を設け、
前記歯車を互いに噛み合うように複数個配置することで前記電気的駆動源の駆動に伴い直接又は間接的に前記歯車のすべてが回動可能であり、
前記歯車に対し前記発光制御手段により制御された発光体からの光を照射することによって、前記光透過部から出射する光の残像によって、文字、記号、模様及びそれらの変化を表現可能であることを特徴とする。
【0012】
本発明にかかる表示装置は、歯車の少なくとも一部に光を通過させることが可能な光透過部を有し、この光透過部以外の部位は光を遮蔽する遮蔽部として機能する。この歯車が回転している状態で発光制御手段により、発光のタイミング、時間等が制御された発光体の光を照射することを主たる構成としている。かかる構成を採用することによって、前記光透過部から出射する光の残像によって、文字、記号、模様及びそれらの変化を表現することができる。また、本発明にかかる表示装置は、視認される光の位置制御に影響を及ぼす回転体としての機能とその回転体に力を伝達する歯車として機能が一体的に形成されている。そのため、回転体と歯車とを各々別体に作製する場合と比べて、大幅なコスト削減及び省スペースを実現することができる。
【0013】
また、歯車を互いに噛み合うように複数個配置することで、電気的駆動源の駆動に伴い一斉に回動するという構成を採用しているので、電気的駆動源からの駆動力を隣接する歯車に効率よく伝達することができる。また、視認しようとする人(例えば、遊技者)から見える表示面を大きくしたい場合には、互いに噛み合う歯車の数を増加させることで実現可能となる。従って、表示画面を大きくした場合であっても、奥行き方向(後方側)に表示装置が拡大することがないため、無用に大型化することなく表示画面の大型化をすることができる。
【0014】
さらに、回転動される発光体に対して電気供給を行うものではないため、スリップリングを設ける必要もない光の残像を利用した表示装置とすることができる。そのため、コスト削減及び設計の自由化に資する表示装置とすることができる。
【0015】
また、本発明にかかる表示装置において、前記ベース部材の一方側面には、前記歯車を軸支する立設された回転支軸と、前記歯車の各々に対応して形成された遮蔽性を有する区画壁と、を備え、
前記区画壁により、前記ベース部材と前記歯車との間に閉鎖的な空間部が形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0016】
かかる構成を採用することにより、閉鎖的な空間部内に発光体からの光を照射することになり、その閉鎖的な空間部内だけが明るく照らされ、その光は歯車に形成された光透過部からのみ視認可能となる。従って、その光透過部が歯車の回転軌道上のどの位置にあっても均一的に光を視認可能となり、光の残像も均一的に生じさせることが可能となる。ひいては、歯車を互いに噛み合うように複数個配置した場合にも全体的に均一的、かつ鮮明な発光状態を提供することができる表示装置とすることができる。
【0017】
さらに、本発明にかかる表示装置において、前記ベース部材の他方側面には、前記空間部に対応する位置に前記発光体を複数個設けた電子基板を配置し、
前記ベース部材には、複数の前記発光体に対応して形成された光透過用貫通孔が設けられていることを特徴とするものであってもよい。
【0018】
ベース部材の一方側面側に回転支軸、区画壁及び歯車等を配置して、回転機構や発光に関わる閉鎖的な空間部を集約して形成した場合に、さらにベース部材の一方側面側に発光体が実装された電子基板を配置しようとすると、その各々の空間部に電子基板を配置する必要性が生じ、回転支軸や区画壁を考慮した複雑な電子基板の設計が要求される。かかる構成を採用すると、部品点数の増加、コストの増加、設計の複雑化を招く虞があり、さらには、組み立て工程も複雑かつ煩雑になる可能性がある。しかしながら、本発明では、ベース部材に複数の発光体に対応した光透過用貫通孔を形成して、光透過用貫通孔を介して光を照射することにより、その回転機構や発光に関わる閉鎖的な空間部が集約的に形成されないベース部材の他方側面側に発光体を複数個設けた電子基板を配置することができ、部品点数の増加、コストの増加及び設計の煩雑化を低減し、組み立て工程が複雑かつ煩雑化する虞を防止することができる。
【0019】
さらに、本発明にかかる表示装置において、前記歯車の前面に透光性を有する前面カバー部材を設け、前記前面カバー部材に前記複数個の前記歯車に対して前記回転支軸から抜け落ちることを防止する抜け止め防止機構を設けたことを特徴とするものであってもよい。
【0020】
歯車を互いに噛み合うように複数個配置した場合において、その歯車の数を増やして配置させればさせるほど、歯車の抜け止め防止のために要するEリングや抜け止め用ビスなども各々の回転支軸に対して設ける必要が生じ、部品点数の増加や作業時間の増加につながり、コストが増加してしまう虞がある。しかしながら、前面カバー部材自体に抜け止め防止機構を設けることによって、複数個の歯車を配置するような場合であっても、その各々の回転支軸に対してEリングや抜け止め用ビスなどの抜け止め防止のための部材を設ける必要がなくなるので、部品点数の減少や作業時間の短縮を図ることができる。
【0021】
さらに、本発明にかかる表示装置において、前記歯車の光透過部以外の部位に装飾を施した装飾部が形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0022】
かかる構成を採用することによって、視認する者は歯車が静止した状態の時にはその装飾が視認可能であり、その歯車を回転させ、さらに所定のタイミングで発光体を発光させたときには、装飾部が認識不可能な状態となり、歯車の光透過部からの光の残像のみが視認されることになる。従って、視認する者にとって、装飾としての表現から光の残像現象としての表現への変化が可能となるので、より趣向性の高い表示装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、第1実施形態にかかる表示装置100の斜視図である。
図2図2は、第1実施形態にかかる表示装置100の前面側を示す分解斜視図である。
図3図3は、第1実施形態にかかる表示装置100の背面側を示す分解斜視図である。
図4図4は、第1実施形態にかかるベース部材10、歯車30、導光部材34、回転支軸11等を示す分解斜視図である。
図5図5は、第1実施形態にかかる表示装置100の表示状態の一例を示す図である。
図6図6は、第1実施形態にかかる表示装置100の表示状態の別例を示す図である。
図7図7は、第1実施形態にかかる表示装置100の表示状態のさらなる別例を示す図である。
図8図8は、第2実施形態にかかる表示装置200の斜視図である。
図9図9は、第2実施形態にかかる表示装置200の前面側を示す分解斜視図である。
図10図10は、第2実施形態にかかる表示装置200の表示状態の一例を示す図である。
図11図11は、第2実施形態にかかる表示装置200の表示状態の別例を示す図である。
図12図12は、第3実施形態にかかる表示装置に使用される歯車30を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明にかかる表示装置100について、図面に沿って詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る表示装置100の斜視図であり、図2は、本発明の第1実施形態に係る表示装置100を前面側から見た分解斜視図であり、図3は、本発明の第1実施形態にかかる表示装置100を背面側から見た分解斜視図である。
【0025】
本発明にかかる表示装置100は、図2に示すように、主として、ベース部材10と、電力の供給により駆動する電気的駆動源20と、複数の歯車30と、発光体40と、発光体40が実装された電子基板45と、これらを収納するカバー部材50と、を備えており、図1に示すように、ベース部材10と、複数の歯車30と、発光体40と、発光体40が実装された電子基板45とがカバー部材50に収納されている。
【0026】
ベース部材10は、電気的駆動源20、歯車30等が取り付けられる。電気的駆動源20としては、電気モータ等が挙げられる。
【0027】
歯車30は、非透過性の物質で作製されており、歯車30の歯底円内の少なくとも一部に、回転軸方向に光を通過させる光透過部33が設けられている。光透過部33は、背面側に配置される発光体40からの光を照射し、前面側に導出する。そのため、視認者は光透過部33を通過した光を認識することになる。光透過部33は、本実施形態においては、図2及び図4に示すように、中心軸側から放射方向に向かって直線状に形成されている。しかしながら、光透過部33の形態は特に限定するものではない。例えば、矩形、三角形、星型等に形成しても構わない。本実施形態のように、中心軸部側から歯底円近くまで直線状に形成することで、この範囲から光が通過するので、歯車30の面の大きさを最大限に利用することができる。光透過部33は、単なる貫通孔であってもよいし、貫通孔に対して透明なプラスチックやガラスを設けたものでもよい。より好ましくは、背面側の発光体40からの光を効率よく表面側に導出するために、導光部材34を取り付けても良い。導光部材34は、図4に示すように光透過部33の開口の形状に合わせて設けられた光導出部34aと、発光体40側に形成された光導出部34aよりも大きな面積を有する光導入部34bとからなり、光導出部34aが歯車30の光透過部33に挿入された状態で歯車30にビスで固定されている。かかる構成を採用することによって、大きな面積を有する光導入部34bから導入された光を効率よく光導出部34aから出射することができ、より明るい光を導出することができる。
【0028】
歯車30は、ベース部材10の一方側面側に前後左右に3行4列で、かつすべての歯車30が隣接する歯車30の歯と互いに噛合するように配列される。ベース部材10は、この配列に適合するように、それぞれの歯車30に対応してベース部材10に回転支軸11が立設配置されている。回転支軸11は、図4に示すように、径の細い先端部11aと径の太い本体部11bとからなり、歯車30の中心の貫通孔に差し込むだけで載置された状態で歯車30を保持できる。なお、本実施形態においては、歯車30を3行4列に配置したが、歯車30の数、行、列の数は、特に限定するものではなく、複数の歯車30のうちの一つを回転させることにより、すべての歯車30が回転するように配置されてあれば自由に配列させることができる。歯車30の行及び列を増やすことで、表示される表示面積を大きくすることができる。この際に、表示面積を大きくしても、奥行き方向に拡大することはなく、奥側のスペースを大きく確保する必要がない。
【0029】
ベース部材10には、それぞれの歯車30に対応して、歯車30と同一又は一回り小さい外周を有する光遮蔽性を有する区画壁12が形成されている。この区画壁12により、ベース部材10、歯車30及び区画壁12によって囲まれた閉鎖的な空間部αが形成される。閉鎖的な空間部αを形成することで、ベース部材10の背面側から導入された発光体40からの光を漏らすことなく、光透過部33からのみ光が前面側に導出される。そのため隣接する歯車30に対応した発光体40からの光と混ざることがなく、均一な光を光透過部33から導出することができる。従って、その光透過部33が歯車30の回転軌道上のどの位置にあっても均一的に光を視認可能となり、光の残像も均一的に生じさせることが可能となる。ひいては、歯車30を互いに噛み合うように複数個配置した場合にも全体的に均一的、かつ鮮明な発光状態を提供することができる
【0030】
また、ベース部材10は、それぞれの歯車30の少なくとも一つに対して駆動力を伝達する電気的駆動源20が取り付けられている。電気的駆動源20は、直接に歯車30を駆動してもよいが、図2に示すように、歯車30のいずれかに噛合した駆動伝達歯車31を別途取り付けて、間接的に伝達してもよい。本実施形態においては、最も左側列の中央の歯車30と噛合するように駆動伝達歯車31が取り付けられ、この駆動伝達歯車31に駆動力を伝達する電気的駆動源20としてのモータがベース部材10の他方側面(背面側)に取り付けられている。また、図2に示すように、駆動伝達歯車31には前面側に向けて突出する位置確認片36が設けられている。この位置確認片36は駆動伝達歯車31が回転した際に、後述する前面カバー部材50aに設けられた光学式のセンサ部材60(フォトセンサ)の発光部61と受光部62との間を通過し、遮断することで原点位置として検知され認識可能となる。そして、この原点位置に基づき発光制御手段からの信号により発光体40を制御し、光の残像を利用した表現を可能とするようにしている。なお、図2における発光部61と受光部62との位置は反対に取り付けられていても構わない。
【0031】
また、ベース部材10の他方側面(背面側)には、光源となる発光ダイオード(LED)等の発光体40が配置される。発光体40は、電子基板45に複数実装されており、それぞれの発光のタイミング、発光時間等をそれぞれ制御することができる発光制御手段(図示しない。)と接続されている。本実施形態においては、一つの歯車30に対して4つの発光体40が設けられているが、その数は限定するものではない。このように、1つの歯車30に対して複数の発光体40を設けることによって、歯車30が回転している際の光透過部33の位置によって、発光体40を使い分けることによって、光の強さ等を容易に調整することができる。また、それぞれの発光体40の色を異なるものとすることによって、発光させる色の選択を容易に行うことができる。ベース部材10の底面には、図3に示すように、発光体40の配置に対応するように、光透過用貫通孔15が複数形成されており、この光透過用貫通孔15から発光体40の光が閉鎖された空間部αに導出される。かかる構成を採用することにより、回転機構や発光に関わる閉鎖的な空間部αが集約的に形成されないベース部材10の他方側面側に、発光体40を複数個設けた電子基板45を配置することができ、部品点数の増加、コストの増加及び設計の煩雑化を低減し、組み立て工程が複雑かつ煩雑化する虞を防止することができる。
【0032】
カバー部材50は、ベース部材10に取り付けられた電気的駆動源20と、複数の歯車30と、発光体40等を収容するための部材であり、かつ、これらの部材の一部を保持する機能を有する部材である。カバー部材50は、図2に示すように、前面カバー部材50aと、後面カバー部材50bとで形成され、ベース部材10を介してそれぞれを対向するようにして互いにビス等で固定することで、ベース部材10に取り付けられた電気的駆動源20と、複数の歯車30と、発光体40等を位置決めした状態で収容する。好ましくは、前面カバー部材50aに回転支軸11から歯車30が抜け落ちるのを防止する抜け止め機構を設けるとよい。具体的には、前面カバー部材50aに回転支軸11の先端が嵌まり込む回転支軸用孔51を複数個形成し、その各々の回転支軸用孔51に回転支軸11の先端を保持できるように形成する。かかる構成を採用することによって、カバー部材50を取り付けるだけで歯車30の抜け落ちが防止されるとともに、組み立てる際に、各々の回転支軸11の先端が前面カバー部材50aに形成された回転支軸用孔51に嵌まり込んでいるかどうかを確認することが可能となる。つまり、前面カバー部材50aが歯車30の抜け止め防止機構として機能するばかりでなく、ベース部材10に立設されたすべての回転支軸11が同一方向に向けて立設されているかどうかを確認するためのチェック機構としても機能する。このチェック機構により、歯車30を互いに噛み合うように複数個配置した場合であっても、すべての歯車30が円滑に回動することを確実に実行することが可能な表示装置100とすることができる。
【0033】
以上のようにして作製された表示装置100は、以下のようにして使用される。表示装置100の電気的駆動源20がオンになると駆動伝達歯車31が駆動される。駆動伝達歯車31は、隣接配置された歯車30を駆動し、歯車30はさらに隣接した歯車30を駆動する。こうした駆動の伝達により、すべての歯車30が回転する。それぞれの歯車30は平歯車からなり、歯数を同じにしてあるので、回転方向は隣接する歯車30と異なるが、回転数は同じになる。特に限定するものではないが、残像現象を利用するためには、秒速10回転~50回転程度に設定すると良い。
【0034】
こうして歯車30が回転している状態で、発光体40は、歯車30の光透過部33が所定の位置にある場合に発光するように制御される。例えば、図5に示すように、左上の歯車30が回転している状態において、歯車30の光透過部33が、それぞれ数字の7の一部を表す位置(36、37)で発光するように制御することによって、光の残像によって、視認する者にとっては、その位置の形状のみを認識することができる。その他の歯車30も同様に、所定のあらかじめ決められた位置に歯車30の光透過部33が位置した場合に発光させることによって、例えば、78という数字を表現することができる。また、図6に示すように、発光させる位置に幅をもたせる、すなわち、所定の時間発光させ続けることによって、扇状に発光をさせることも可能になる。さらに、発光させるタイミングを順次変化させることによって、図7に示すように、矢印が移動していくかのように模様を変化させて表現することもできる。このように、発光体40の発光のタイミング、時間を制御することによって、全体として様々な所定の文字、数字、記号、模様及びそれらの変化を表現することができる。
【0035】
また、このようにして作製された表示装置100は、パチンコ遊技機の演出用役物として使用することができる。好ましくは、表示装置100自体を可動式とした可動役物とすることが望ましい。本発明の表示装置100は、構造的にシンプルであり、軽量であることから、液晶ディスプレイ(LCD)を可動させるのに比べて、その可動させる部材にかかる負担を大幅に低減することができる。
【0036】
(第2実施形態)
第2実施形態にかかる表示装置200が図8に示されている。また、第2実施形態にかかる表示装置200の分解斜視図が図9に示されている。第2実施形態にかかる表示装置200は、第1実施形態にかかる表示装置100に対して、大きさ及び歯数の異なる歯車30を組み合わせている点が異なる。これに伴い、区画壁12の大きさ及び位置、電子基板45の実装された発光体40の位置、前面カバー部材50aの回転支軸用孔51の位置がそれぞれの歯車30の位置に対応する位置に変更されている。
【0037】
表示装置200に使用される歯車30は、歯数の比率を考慮して、大小の異なる歯車30を使用することができる。かかる表示装置200を使用することによって、図10又は図11に示すように、光透過部33が通過する位置の自由度が高くなり、また、光透過部33の長さを複数設定することができるため、多様な表現を可能とする表示装置200とすることができる。
【0038】
(第3実施形態)
第3実施形態にかかる表示装置の歯車30が図12に示されている。表示装置の外観は第1実施形態と同様に表れるので、図は省略する。第3実施形態にかかる表示装置は、第1実施形態又は第2実施形態にかかる表示装置(100、200)に対して、歯車30の光透過部33以外の部位に装飾を施した装飾部38が形成されている点が異なる。その他の構成は同様であるので、説明を省略する。
【0039】
歯車30に装飾を施した装飾部38を設けることによって、歯車30が静止した状態の時にはその装飾が視認可能であり、その歯車30を回転させ、さらに所定のタイミングで発光体40を発光させたときには装飾部38が認識不可能な状態となり、歯車30の光透過部33からの光の残像のみが視認されることになる。従って、視認する者にとって、装飾としての表現から光の残像現象としての表現への変化が可能となるので、より趣向性の高い表示装置とすることができる。なお、装飾部38は、印刷、転写等の平面状の装飾、凹凸で形成した立体的な装飾のいずれであってもよい。
【0040】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施しうる。
【0041】
上述の実施形態においては、区画壁12は、ベース部材10の一方側面に一体的に設けられていたが、別部材としても構わない。別部材としても同様の効果を得ることができる。
【0042】
また、上述の実施形態においては、前面カバー部材50aとして透光性を有するものとしたが、透光性に加えて、アルミ蒸着、印刷、転写又はシート状の鏡面部材を貼着することによってハーフミラーとして機能するようにしてもよい。
【0043】
前面カバー部材50aに、ハーフミラーとしての機能を設けることにより、発光体40が消えている状態で前面カバー部材50aを前面側から視認した場合には、その前面カバー部材50aに施されたハーフミラーにより鏡面のみが視認される。歯車30を回転させ、所定のタイミングで発光体40を発光させることで、歯車30の光透過部33から出射する光は、前面カバー部材50aの裏面側へ出射され、ハーフミラーとして鏡面を透光した場所のみが、前面カバー部材50aの前面で残像現象として視認されることになる。従って、あたかも鏡面上に光が文字、数字、記号、模様及びそれらの変化として動的に浮かび上がっているように見える状態となる。このように鏡面上に光の残像現象による表現が浮き上がって見えるようになるので、視認する者にとって趣向性の高い表示装置100とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
上述した実施の形態で示すように、遊技機の表示装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
10…ベース部材、11…回転支軸、11a…先端部、11b…本体部、12…区画壁、15…光透過用貫通孔、20…電気的駆動源、30…歯車、31…駆動伝達歯車、33…光透過部、34…導光部材、34a…光導出部、34b…光導入部、36…位置確認片、38…装飾部、40…発光体、45…電子基板、50…カバー部材、50a…前面カバー部材、50b…後面カバー部材、51…回転支軸用孔、60…センサ部材、61…発光部、62…受光部、100,200…表示装置、α…空間部
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