(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】ロールミル
(51)【国際特許分類】
B02C 4/28 20060101AFI20220713BHJP
B02C 4/02 20060101ALI20220713BHJP
B01F 33/87 20220101ALI20220713BHJP
【FI】
B02C4/28 Z
B02C4/02
B01F33/87
(21)【出願番号】P 2018111933
(22)【出願日】2018-06-12
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000139883
【氏名又は名称】株式会社井上製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081547
【氏名又は名称】亀川 義示
(72)【発明者】
【氏名】佐野 昌広
(72)【発明者】
【氏名】鎮目 正嗣
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-083337(JP,A)
【文献】特開2008-237967(JP,A)
【文献】特開2006-043529(JP,A)
【文献】特開昭63-203298(JP,A)
【文献】特開昭51-071360(JP,A)
【文献】国際公開第2009/007196(WO,A1)
【文献】実開昭54-029471(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 1/00 - 7/18
15/00 - 17/24
B01F 29/00 - 33/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールの作用周面の側方に垂直端面を介してシール周面を形成し、
該垂直端面及びシール周面に
せき板の下端部を押圧し
て供給バンクを形成したロールミルにおいて、せき板の側面中央に
設けた受圧部に傾斜面が形成され、せき板の
受圧部に対向するロールミル本体に加圧軸を設け、該加圧軸の先端に
截頭錐体状の押圧ヘッドを設け、
該押圧ヘッドの周縁には外周縁側に傾斜する環状の当接部が形成され、押圧ヘッドの当接部が上記受圧部の傾斜面に当接することによりロールミル本体の前後方向に
受圧部が移動した際、上記受圧部の移動に追従して
上記当接部が回転移動するよう上記押圧ヘッドを加圧軸に回転可能に連結したことを特徴とするロールミル。
【請求項2】
上記押圧ヘッドは、スラスト玉軸受付き針状ころ軸受を介して加圧軸に支持され請求項
1に記載のロールミル。
【請求項3】
上記押圧ヘッドを保持する押圧体は、加圧軸の先端
に固定した支持板と、該支持板に固定されスラスト玉軸受付き針状ころ軸受を保持する軸受ハウジングと、該軸受で支持され上記押圧ヘッドを取り付けた回転軸を含む請求項
2に記載のロールミル。
【請求項4】
上記ロールミルは、前ロールを固定し、後ロールと中ロールを前ロール方向に移動できるようにした前ロール固定式の3本ロールミルである請求項1~
3のいずれかに記載のロールミル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種印刷インキ、塗料、着色材、セラミックス、絵具、シーリング材、電子材料、薬品、食品、飼料、その他の各種製品の製造工程において、処理材料を練肉、分散、解砕処理するためのロールミルに関し、特にロール間に供給バンクを形成するためロール間の端部を塞ぐせき板の加圧構造に特徴を有するロールミルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロールミルは、回転数、回転方向が異なる複数本のロールを隣接して設け、ロールの作用周面間に生じる圧縮作用と剪断作用により処理材料を微粒子化して練肉処理や分散、解砕処理をするために広く用いられている。例えば、3本ロールミルは、
図1に示すように、ロールミル本体1の前後方向に隣接して、前ロール2、中(中央)ロール3、後(供給)ロール4の3本のロールを配置し、後ロール4、中ロール3、前ロール2の順に回転速度を速くしてある。処理材料は、後ロール4と中ロール3間に形成した供給バンク5に供給されるが、この供給バンク5は、ロール間から処理材料が漏れないよう端部をせき板6で塞いで形成されている。
【0003】
せき板6を設置する構成としては、せき板6の下端部7に、隣接する2本のロールの形状に合わせた湾曲面8を対向して形成し、この下端部7をそれぞれのロールの外周の作用周面9に自重で載置することにより漏洩を防止するようにした上乗せ式(例えば特許文献1参照)が知られている。また、圧縮、剪断作用をするロールの作用周面9ではなく、
図3に示すように、ロールの作用周面9の側方に、垂直端面10を介して小径のシール周面11を形成し、せき板6の内側面20を垂直端面10に押圧し、同時にシール周面11にせき板の湾曲部8を押し付けるサイドシール方式も知られている。
【0004】
上記サイドシール方式では、せき板6の下端部7を、ロールの垂直端面10方向及びシール周面11方向に同時に押し付けるために、
図2に示すように、せき板6の側面中央に、傾斜面12を有する受圧部13を形成してある。そして、従来は、
図7に示すように、該受圧部13を押圧するため、先端17が略円錐状に尖った押圧軸14を有する油圧ピストン装置15をロールミル本体1側の対向する位置に固定してある。上記油圧ピストン装置15の加圧ピストン16を駆動すると、押圧軸14は直進運動し、略円錐状の先端17の1点が上記受圧部13に当接し、せき板6を押圧している。受圧部13はせき板6の中央に設けられているから、受圧部13の傾斜面12による力の分力で、ロールの垂直端面10方向とシール周面11方向にせき板6を押圧する力が生じる。
図8に示すように、ロールが移動する前は、押圧軸14の先端17が当接する受圧部13の位置は、せき板6の側面中心線18上にあって、一致しているので、左右均等の力でせき板6を前後のロールに押し付けてシールすることができる。
【0005】
一方、ロールミルでは、上記ロールは隣接するロール間の間隔を微調整できるように前後方向に移動可能に設けられている。この移動は、固定したロールに対しどのロールを移動させるかにより構成が相違している。例えば3本ロールミルの場合、中ロール3を固定し、この中ロール3に対して後ロール4及び前ロール2を近接、離隔できるようにした中ロール固定式や、前ロール2を固定し、後ロール4及び中ロール3を前ロール2に近接、離隔させる前ロール固定方式が知られている。ロールの移動量は、前ロール固定方式の場合、最大でも約1.2mm程度である。上述したように、上記押圧軸14は、ロールミル本体1側に固定され、
図8に示すように、先端17の1点に作用する押圧荷重で受圧部13を押圧する構成であり、上記したように、ロールを移動させる前では、この作用点はせき板の側面中央、すなわち受圧部13の中心を通る側面中心線18の位置で一致している。ロールの移動に伴ってせき板が移動すると、せき板の受圧部13は、中心線18の位置が移動前の位置に対して距離L変位した位置に移動するが、押圧軸14はロールミル本体1に固定されていて移動しない。その結果、先端17の当接位置とせき板6の受圧部13の中心線18の位置は、
図9に示すように、距離Lだけ外れ、せき板6は芯ずれして押圧されることになる。そのため、せき板6の受圧部13に押圧軸14の先端でこじったような傷が発生する。また、せき板6を押圧する作用点の位置が側面中心線からずれるので、シール周面11や垂直端面10に作用する荷重が不均等になって偏摩耗を生じさせ、メンテナンス時間に影響を及ぼす原因になっていた。さらに、上記したように隣接しているロールの回転数が相違しているので、回転数が大きい側に接しているせき板6の端面が摩耗しやすく、隙間が生じると漏洩を発生するが、せき板6が芯ずれして前後が不均衡に押圧されると、このような不均等な隙間が一層生じやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-237967公報(段落0010、
図2 )
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の解決課題は、ロールの作用周面の側方に垂直端面を介してシール周面を形成し、該垂直端面とシール周面にせき板の下端部を押圧して供給バンクを形成したロールミルにおいて、ロールをロールミル本体の前後方向に移動しても、せき板を押圧する部分に芯ずれを発生せずに、隣接するロールの垂直端面とシール周面にせき板の下端部を均等に押圧できるようにしたロールミルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、ロールの作用周面の側方に垂直端面を介してシール周面を形成し、せき板の側面中央に設けた受圧部を押圧してせき板の下端部を上記垂直端面及びシール周面に押圧し供給バンクを形成するようにしたロールミルにおいて、せき板の側面中央に対向するロールミル本体に加圧軸を設け、該加圧軸の先端に、上記受圧部に当接する当接部を周縁に形成した押圧ヘッドを設け、上記せき板及び受圧部がロールミル本体の前後方向に移動した際、上記当接部が受圧部の移動に追従して移動するよう上記押圧ヘッドを加圧軸に回転可能に連結したことを特徴するロールミルが提供され、上記課題が解決される。
【0009】
本発明において、上記押圧ヘッドは、外周縁側に傾斜する当接部を形成した截頭錐体状に形成され、該押圧ヘッドはスラスト玉軸受付き針状ころ軸受を介して加圧軸に支持されている上記ロールミルが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上記のように構成され、せき板の側面中央に設けた受圧部に対向して、該受圧部に当接する当接部を周縁に形成した押圧ヘッドを設け、上記せき板がロールの移動に伴って前後方向に移動した際、上記当接部が受圧部の移動に追従して回転移動するよう押圧ヘッドを加圧軸の先端に回転可能に連結したから、せき板の受圧部が移動しても当接部が回転移動して上記受圧部を側面中心線の部分で押圧することができ、前後のロールの垂直端面及びシール周面にせき板の下端部を均等に押圧することができる。このように、前後のロールに接するせき板に対し平均荷重を与えることにより、偏摩耗が防止され、処理材料の漏れを防止することができる。
【0011】
上記押圧ヘッドを、外周縁側に傾斜する環状の当接部を形成した截頭錐体状に形成すると、受圧部の傾斜面との接触が確実になり、押圧荷重を的確にせき板に与えることができる。また上記押圧ヘッドを、スラスト玉軸受付き針状ころ軸受を介して加圧軸に支持させると、加圧軸からの押圧荷重が大きくなっても、押圧ヘッドは容易に回転するので、支障を生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施例を示し、3本ロールミルの説明図。
【
図6】せき板が移動した際の受圧部と押圧ヘッドの関係を示す説明図。
【
図9】せき板が移動した際の従来の押圧軸と受圧部の関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、3本ロールミルに本発明を適用した一実施例を示し、上述した従来のロールミルと基本的に同じ部分は同一の符号を付して以下説明する。ロールミル本体1には、回転数、回転方向が異なる前ロール2、中ロール3、後ロール4が設けられ、後ロール4と中ロール3間に供給バンク5が形成されている。処理材料は、供給バンク5に供給され、各ロールの外周の作用周面9間で圧縮、剪断処理される。中ロール3から前ロール2に移行した処理材料は、ドクター19で掻き取られ、図示を省いた受けタンクに回収される。
【0014】
上記供給バンク5は、後ロール4と中ロール3の両側の空間をせき板6で塞いで形成される。各ロールには、
図2、
図3に示すように、処理材料を圧縮、剪断するための作用周面9の側方に、垂直端面10を介して上記作用周面9よりも小径のシール周面11を形成してあり、せき板6の下端部7には、後ロール4と中ロール3の垂直端面10に対向する内側面20と、シール周面11に接する形状の湾曲面8を対向して形成してある。そして、湾曲面8がシール周面11に摺接し、内側面20が垂直端面10に摺接するようにロール上に載置される。せき板6の側面中央線18に沿ってロール間に位置する下方部分には、受圧部13が設けられている。該受圧部13は、下方部分の板厚が厚く、上方部分の板厚がそれより薄くなるように傾斜する傾斜面12で構成されている。
【0015】
上記ロールミル本体1には、上記せき板6を加圧する加圧軸21を有する加圧装置22が設けられている。
図4に示す加圧装置22は、油圧による加圧装置であり、加圧軸21に連結されたピストン23を駆動する油圧シリンダ24を、上記せき板6の側面中央線18に対向する位置のロールミル本体1に固定してある。該油圧シリンダ24は、シリンダ内に加圧油を供給する供給口25と流出させる流出口26を有し、ピストン23に連結したピストンロッドが加圧軸21となり、その先端には押圧体27が設けられている。該押圧体27は、上記加圧軸21に固定した支持板28と、該支持板28に固定した軸受ハウジング29と、該ハウジング29内に設けた針状コロ軸受30及びハウジングの前部に設けたスラスト軸受31と、該軸受により回転支持される回転軸32と、該回転軸32の先端に取り付けられた押圧ヘッド33を具備している。該押圧ヘッド33は、基部が略円板状で先部が截頭錐体状に形成され、外周縁側に傾斜する環状の当接部34を有し、該当接部34が受圧部13の傾斜面12に当接するようにしてある。該押圧ヘッド33は回転可能であるから、受圧部13がロールミル本体1の前後方向に移動した際、受圧部13の移動に追従して当接部34は回転移動可能である。
【0016】
上記の構成により、せき板6の下端部7をロールの垂直端面10及びシール周面11にあてがい、加圧装置を駆動すると、加圧軸21が直進し、押圧体27の押圧ヘッド33は、せき板6の受圧部13に当接部34が当接し、傾斜面12の分力作用でせき板6の側面中央をロールの垂直端面方向とシール面方向に押圧してせき板6を圧着し、処理材料の漏洩を防止することができる(
図5参照)。そして、後ロール4、中ロール3を前ロール2の方向に移動させると、せき板6及び受圧部13も移動するが、この移動量は前ロール固定方式のロールミルの場合、上述したように、最大1.2mm程度である。したがって、せき板6の側面中央線18と加圧軸21の中心との間に、
図6に示すように、最大1.2mmの位置ズレLを生じるが、押圧体27の押圧ヘッド33が回転してせき板6の移動に追従するので、移動後もせき板6は側面中央線18部分が押圧ヘッド33の当接部34で押圧され、せき板6はロールにほぼ均等に押圧され、それにより、従来のような偏摩耗を生じることがなく、漏洩を防止することができる。また、せき板に損傷を与えることもなく、せき板のメンテナンスも簡単である。
【0017】
上記実施例では、加圧装置として油圧を使用したが、その他の液圧、空圧、ばね圧、電磁装置等を使用してもよい。また、上記実施例では押圧ヘッドを略截頭錐体形に形成したが、略円板状に形成したり、一部に当接部を有する略扇形状に形成することもできる。
【符号の説明】
【0018】
1 ロールミル本体
6 せき板
9 作用周面
10 垂直端面
11 シール周面
13 受圧部
21 加圧軸
22 加圧装置
27 押圧体
32 回転軸
33 押圧ヘッド
34 当接部