(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】電圧制御発振器、PLL回路およびCDR装置
(51)【国際特許分類】
H03B 5/12 20060101AFI20220713BHJP
H03L 7/099 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
H03B5/12 G
H03L7/099
(21)【出願番号】P 2018139140
(22)【出願日】2018-07-25
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】399011195
【氏名又は名称】ザインエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100110582
【氏名又は名称】柴田 昌聰
(72)【発明者】
【氏名】久保 俊一
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-314412(JP,A)
【文献】特表2018-506894(JP,A)
【文献】特開2007-300623(JP,A)
【文献】特開2007-184778(JP,A)
【文献】特表2005-528034(JP,A)
【文献】特開2010-226286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/00- 5/42
H03L 7/099
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタ、第1容量回路および第2容量回路を備え、これらインダクタ、第1容量回路および第2容量回路による共振現象により、入力される制御電圧値に応じた周波数を有する発振信号を出力する電圧制御発振器であって、
前記第1容量回路および前記第2容量回路それぞれは、ノードN1とノードN2との間に設けられ両ノード間の電圧値に応じた容量値を有する可変容量素子と、前記ノードN2とノードN3との間に設けられた容量素子と、前記ノードN2にバイアス電圧値を与えるとともに前記可変容量素子に流れるリーク電流の量を検出する検出回路と、前記検出回路による検出結果に基づいて前記リーク電流を補償する電流を前記ノードN1に流す補償回路と、を備え、
前記第1容量回路および前記第2容量回路それぞれのノードN3の間に前記インダクタが設けられており、
前記第1容量回路および前記第2容量回路それぞれのノードN1は互いに電気的に接続されて前記制御電圧値が入力される、
電圧制御発振器。
【請求項2】
前記第1容量回路および前記第2容量回路それぞれのノードN3に接続され、制御信号により設定される容量値を有する第3容量回路を更に備える、
請求項1に記載の電圧制御発振器。
【請求項3】
前記第1容量回路および前記第2容量回路それぞれの検出回路が共通であり、
前記第1容量回路および前記第2容量回路それぞれの補償回路が共通である、
請求項1または2に記載の電圧制御発振器。
【請求項4】
前記検出回路は、
第1電位供給端にソースが接続されたMOSトランジスタM1と、
前記MOSトランジスタM1のドレインと前記ノードN2との間に設けられた抵抗部と、
前記MOSトランジスタM1のドレインに接続された第1入力端子と、バイアス電圧値が入力される第2入力端子と、前記MOSトランジスタM1のゲートに接続された出力端子とを有する差動アンプと、
を含み、
前記補償回路は、
前記第1電位供給端にソースが接続され、前記差動アンプの前記出力端子にゲートが接続されたMOSトランジスタM2と、
第2電位供給端と前記MOSトランジスタM2のドレインとの間に設けられたMOSトランジスタM3と、
前記第2電位供給端と前記ノードN1との間に設けられ、前記MOSトランジスタM3とともにカレントミラー回路を構成し、前記MOSトランジスタM3に流れる電流と同じ量の電流を流すMOSトランジスタM4と、
を含む、
請求項1~3の何れか1項に記載の電圧制御発振器。
【請求項5】
前記検出回路は、前記第2電位供給端と前記MOSトランジスタM1のドレインとの間に設けられた第1電流源を更に含む、
請求項4に記載の電圧制御発振器。
【請求項6】
前記検出回路は、前記第2電位供給端と前記ノードN2との間に設けられた第2電流源を更に含む、
請求項4に記載の電圧制御発振器。
【請求項7】
前記補償回路は、前記第1電位供給端と前記ノードN1との間に設けられた第3電流源を更に含む、
請求項5または6に記載の電圧制御発振器。
【請求項8】
前記補償回路は、前記第2電位供給端と前記MOSトランジスタM3および前記MOSトランジスタM4それぞれのゲートとの間に設けられた第4電流源を更に含む、
請求項5または6に記載の電圧制御発振器。
【請求項9】
前記検出回路は、
第1電位供給端にソースが接続されたMOSトランジスタM11と、
第2電位供給端にソースが接続されたMOSトランジスタM21と、
前記MOSトランジスタM11および前記MOSトランジスタM21それぞれのドレインと前記ノードN2との間に設けられた抵抗部と、
前記MOSトランジスタM11および前記MOSトランジスタM21それぞれのドレインに接続された第1入力端子と、バイアス電圧値が入力される第2入力端子と、前記MOSトランジスタM11および前記MOSトランジスタM21それぞれのゲートに接続された出力端子とを有する差動アンプと、
を含み、
前記補償回路は、
前記第1電位供給端にソースが接続され、前記差動アンプの前記出力端子にゲートが接続されたMOSトランジスタM12と、
前記第2電位供給端と前記MOSトランジスタM12のドレインとの間に設けられたMOSトランジスタM13と、
前記第2電位供給端と前記ノードN1との間に設けられ、前記MOSトランジスタM13とともにカレントミラー回路を構成し、前記MOSトランジスタM13に流れる電流と同じ量の電流を流すMOSトランジスタM14と、
前記第2電位供給端にソースが接続され、前記差動アンプの前記出力端子にゲートが接続されたMOSトランジスタM22と、
前記第1電位供給端と前記MOSトランジスタM22のドレインとの間に設けられたMOSトランジスタM23と、
前記第1電位供給端と前記ノードN1との間に設けられ、前記MOSトランジスタM23とともにカレントミラー回路を構成し、前記MOSトランジスタM23に流れる電流と同じ量の電流を流すMOSトランジスタM24と、
を含む、
請求項1~3の何れか1項に記載の電圧制御発振器。
【請求項10】
前記検出回路は、前記抵抗部として、ゲート電圧に応じた抵抗値を有するMOSトランジスタM5を含む、
請求項4~9の何れか1項に記載の電圧制御発振器。
【請求項11】
入力される制御電圧値に応じた周波数を有する発振信号を出力する請求項1~10の何れか1項に記載の電圧制御発振器と、
前記電圧制御発振器から出力される発振信号または該発振信号を分周した信号を帰還発振信号として入力するとともに、入力信号をも入力し、これら帰還発振信号と入力信号との間の位相差を検出して、この位相差を表す位相差信号を出力する位相比較器と、
前記位相比較器から出力される位相差信号を入力して、この位相差信号が表す位相差に応じた充放電電流を出力するチャージポンプと、
前記チャージポンプから出力される充放電電流を入力し、この充放電量に応じて増減される前記制御電圧値を前記電圧制御発振器へ出力するループフィルタと、
を備えるPLL回路。
【請求項12】
前記電圧制御発振器として複数の電圧制御発振器を備え、
前記複数の電圧制御発振器のうち何れか1つの電圧制御発振器から出力される発振信号を選択して出力する選択部を更に備える、
請求項11に記載のPLL回路。
【請求項13】
前記複数の電圧制御発振器のうち前記選択部により選択された電圧制御発振器を除く他の電圧制御発振器は、前記バイアス電圧値に替えて前記制御電圧値を入力する、
請求項12に記載のPLL回路。
【請求項14】
クロックが埋め込まれたデジタル信号を入力し、このデジタル信号に基づいてデータおよびクロックを復元して、その復元データおよび復元クロックを出力するCDR装置であって、
前記復元クロックが指示するタイミングで前記デジタル信号のデータをサンプリングして、そのサンプリングしたデータを前記復元データとして前記復元クロックに同期して出力するサンプラと、
前記入力信号として前記復元データを前記位相比較器に入力し、前記電圧制御発振器から前記発振信号として前記復元クロックを出力するともに、前記復元クロックを前記サンプラに与える請求項11~13の何れか1項に記載のPLL回路と、
を備えるCDR装置。
【請求項15】
ノードN1とノードN2との間に設けられ両ノード間の電圧値に応じた容量値を有する可変容量素子と、
前記ノードN2とノードN3との間に設けられた容量素子と、
前記ノードN2にバイアス電圧値を与えるとともに前記可変容量素子に流れるリーク電流の量を検出する検出回路と、
前記検出回路による検出結果に基づいて前記リーク電流を補償する電流を前記ノードN1に流す補償回路と、
を備える容量回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧制御発振器、PLL回路およびCDR装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電圧制御発振器(VCO: Voltage Controlled Oscillator)は、入力される制御電圧値に応じた周波数を有する発振信号を出力することができる。電圧制御発振器は、PLL(Phase Locked Loop)回路およびCDR(Clock Data Recovery)装置等において重要な一構成要素として用いられる。電圧制御発振器としては様々なタイプのものがある。そのなかでも、LC-VCOは、インダクタおよび電圧制御によって容量値が変化するキャパシタを含み、これらインダクタおよびキャパシタによる共振現象により、入力される制御電圧値に応じた周波数を有する発振信号を出力する。他のタイプの電圧制御発振器と比較すると、LC-VCOのジッタは少ない。したがって、10Gbps以上の周波数の場合には、様々なタイプがある電圧制御発振器のなかでもLC-VCOの使用が不可欠である。
【0003】
LC-VCOは、共振現象に関与するキャパシタとして、2端子間に印加される電圧値によって容量値が変化する容量素子を含む。このような容量素子は、バリキャップ(Varicap Diode)、バラクタ(Varactor Diode)または可変容量ダイオード(Variable Capacitance Diode)と呼ばれている。本明細書では、このような容量素子を「可変容量素子」という。例えば、可変容量素子は、CMOSプロセスにより低濃度N型不純物を注入したNウェルに高濃度P型不純物を注入したP+領域を有するダイオードにより構成される。また、例えば、可変容量素子は、低濃度P型不純物を注入したPウェルに高濃度N型不純物を注入した2つのN+領域を有するMOSトランジスタにより構成される。
【0004】
一般に、可変容量素子は、印加される電圧値に応じた容量値を有するだけでなく、該電圧値に応じた量のリーク電流が生じる。可変容量素子のリーク電流により、LC-VCOから出力される発振信号にジッタが生じて、LC-VCOの性能が悪くなる場合がある。LC-VCOの性能が悪いと、これを用いるPLL回路またはCDR装置の性能も悪くなる。
【0005】
このような問題を解消することを意図した発明が特許文献1に開示されている。この文献に開示された発明は、LC-VCOとは別にレプリカ回路を備える。レプリカ回路は、LC-VCOの可変容量素子と同等の可変容量素子を含み、また、差動アンプおよびカレントミラー回路をも含む。そして、この発明は、レプリカ回路の可変容量素子のリーク電流によりLC-VCOの可変容量素子のリーク電流を補償することにより、LC-VCOの性能悪化を抑制することを図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示された発明では、LC-VCOの可変容量素子とレプリカ回路の可変容量素子との間で特性が相違していると、各々の可変容量素子に流れるリーク電流が相違し、十分に補償をすることができない。それ故、LC-VCOの性能悪化を十分に抑制することができず、また、これを用いるPLL回路またはCDR装置の性能悪化を十分に抑制することもできない。また、特許文献1に開示された発明では、半導体基板上に集積化する場合にレプリカ回路の可変容量素子のレイアウト面積が大きい。
【0008】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、可変容量素子のリーク電流による性能悪化を抑制することができ、レイアウト面積の増加を抑制することができる電圧制御発振器を提供することを目的とする。また、本発明は、LC-VCOの可変容量素子のリーク電流による性能悪化を抑制することができるPLL回路およびCDR装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電圧制御発振器は、インダクタ、第1容量回路および第2容量回路を備え、これらインダクタ、第1容量回路および第2容量回路による共振現象により、入力される制御電圧値に応じた周波数を有する発振信号を出力する。本発明の電圧制御発振器において、第1容量回路および第2容量回路それぞれは、ノードN1とノードN2との間に設けられ両ノード間の電圧値に応じた容量値を有する可変容量素子と、ノードN2とノードN3との間に設けられた容量素子と、ノードN2にバイアス電圧値を与えるとともに可変容量素子に流れるリーク電流の量を検出する検出回路と、検出回路による検出結果に基づいてリーク電流を補償する電流をノードN1に流す補償回路と、を備える。さらに、本発明の電圧制御発振器において、第1容量回路および第2容量回路それぞれのノードN3の間にインダクタが設けられており、第1容量回路および第2容量回路それぞれのノードN1は互いに電気的に接続されて制御電圧値が入力される。
【0010】
本発明の電圧制御発振器は、第1容量回路および第2容量回路それぞれのノードN3に接続され、制御信号により設定される容量値を有する第3容量回路を更に備えるのが好適である。
【0011】
本発明の電圧制御発振器において、第1容量回路および第2容量回路それぞれの検出回路が共通であるのが好適であり、第1容量回路および第2容量回路それぞれの補償回路が共通であるのも好適である。
【0012】
本発明の電圧制御発振器において、検出回路は、(1) 第1電位供給端にソースが接続されたMOSトランジスタM1と、(2) MOSトランジスタM1のドレインとノードN2との間に設けられた抵抗部と、(3) MOSトランジスタM1のドレインに接続された第1入力端子と、バイアス電圧値が入力される第2入力端子と、MOSトランジスタM1のゲートに接続された出力端子とを有する差動アンプと、を含むのが好適である。また、補償回路は、(1) 第1電位供給端にソースが接続され、差動アンプの出力端子にゲートが接続されたMOSトランジスタM2と、(2) 第2電位供給端とMOSトランジスタM2のドレインとの間に設けられたMOSトランジスタM3と、(3) 第2電位供給端とノードN1との間に設けられ、MOSトランジスタM3とともにカレントミラー回路を構成し、MOSトランジスタM3に流れる電流と同じ量の電流を流すMOSトランジスタM4と、を含むのが好適である。
【0013】
なお、第1電位供給端および第2電位供給端のうち、一方は高電位供給端であり、他方は低電位供給端である。第1電位供給端が高電位供給端であって第2電位供給端が低電位供給端である場合、高電位供給端にソースが接続されるMOSトランジスタM1,M2はPMOSトランジスタであり、低電位供給端にソースが接続されるMOSトランジスタM3,M4はNMOSトランジスタである。逆に、第1電位供給端が低電位供給端であって第2電位供給端が高電位供給端である場合、低電位供給端にソースが接続されるMOSトランジスタM1,M2はNMOSトランジスタであり、高電位供給端にソースが接続されるMOSトランジスタM3,M4はPMOSトランジスタである。
【0014】
本発明の電圧制御発振器において、検出回路は、第2電位供給端とMOSトランジスタM1のドレインとの間に設けられた第1電流源を更に含むのが好適である。また、検出回路は、第2電位供給端とノードN2との間に設けられた第2電流源を更に含むのも好適である。
【0015】
本発明の電圧制御発振器において、補償回路は、第1電位供給端とノードN1との間に設けられた第3電流源を更に含むのが好適である。また、補償回路は、第2電位供給端とMOSトランジスタM3およびMOSトランジスタM4それぞれのゲートとの間に設けられた第4電流源を更に含むのも好適である。
【0016】
本発明の電圧制御発振器において、検出回路は、(1) 第1電位供給端にソースが接続されたMOSトランジスタM11と、(2) 第2電位供給端にソースが接続されたMOSトランジスタM21と、(3) MOSトランジスタM11およびMOSトランジスタM21それぞれのドレインとノードN2との間に設けられた抵抗部と、(4) MOSトランジスタM11およびMOSトランジスタM21それぞれのドレインに接続された第1入力端子と、バイアス電圧値が入力される第2入力端子と、MOSトランジスタM11およびMOSトランジスタM21それぞれのゲートに接続された出力端子とを有する差動アンプと、を含むのが好適である。また、補償回路は、(1) 第1電位供給端にソースが接続され、差動アンプの出力端子にゲートが接続されたMOSトランジスタM12と、(2) 第2電位供給端とMOSトランジスタM12のドレインとの間に設けられたMOSトランジスタM13と、(3) 第2電位供給端とノードN1との間に設けられ、MOSトランジスタM13とともにカレントミラー回路を構成し、MOSトランジスタM13に流れる電流と同じ量の電流を流すMOSトランジスタM14と、(4) 第2電位供給端にソースが接続され、差動アンプの出力端子にゲートが接続されたMOSトランジスタM22と、(5) 第1電位供給端とMOSトランジスタM22のドレインとの間に設けられたMOSトランジスタM23と、(6) 第1電位供給端とノードN1との間に設けられ、MOSトランジスタM23とともにカレントミラー回路を構成し、MOSトランジスタM23に流れる電流と同じ量の電流を流すMOSトランジスタM24と、を含むのが好適である。
【0017】
なお、第1電位供給端および第2電位供給端のうち、一方は高電位供給端であり、他方は低電位供給端である。第1電位供給端が高電位供給端であって第2電位供給端が低電位供給端である場合、高電位供給端にソースが接続されるMOSトランジスタM11,M12,M23,M24はPMOSトランジスタであり、低電位供給端にソースが接続されるMOSトランジスタM21,M22,M13,M14はNMOSトランジスタである。逆に、第1電位供給端が低電位供給端であって第2電位供給端が高電位供給端である場合、低電位供給端にソースが接続されるMOSトランジスタM11,M12,M23,M24はNMOSトランジスタであり、高電位供給端にソースが接続されるMOSトランジスタM21,M22,M13,M14はPMOSトランジスタである。また、差動アンプの第1入力端子および第2入力端子のうち、一方は反転入力端子であり、他方は非反転入力端子である。
【0018】
本発明の電圧制御発振器において、検出回路は、抵抗部として、ゲート電圧に応じた抵抗値を有するMOSトランジスタM5を含むのが好適である。
【0019】
本発明のPLL回路は、(1) 入力される制御電圧値に応じた周波数を有する発振信号を出力する上記の本発明の電圧制御発振器と、(2) 電圧制御発振器から出力される発振信号または該発振信号を分周した信号を帰還発振信号として入力するとともに、入力信号をも入力し、これら帰還発振信号と入力信号との間の位相差を検出して、この位相差を表す位相差信号を出力する位相比較器と、(3) 位相比較器から出力される位相差信号を入力して、この位相差信号が表す位相差に応じた充放電電流を出力するチャージポンプと、(4) チャージポンプから出力される充放電電流を入力し、この充放電量に応じて増減される制御電圧値を電圧制御発振器へ出力するループフィルタと、を備える。
【0020】
本発明のPLL回路は、電圧制御発振器として複数の電圧制御発振器を備え、複数の電圧制御発振器のうち何れか1つの電圧制御発振器から出力される発振信号を選択して出力する選択部を更に備えるのが好適である。
【0021】
本発明のPLL回路において、複数の電圧制御発振器のうち選択部により選択された電圧制御発振器を除く他の電圧制御発振器は、バイアス電圧値に替えて制御電圧値を入力するのが好適である。
【0022】
本発明のCDR装置は、クロックが埋め込まれたデジタル信号を入力し、このデジタル信号に基づいてデータおよびクロックを復元して、その復元データおよび復元クロックを出力する。本発明のCDR装置は、(1) 復元クロックが指示するタイミングでデジタル信号のデータをサンプリングして、そのサンプリングしたデータを復元データとして復元クロックに同期して出力するサンプラと、(2) 入力信号として復元データを位相比較器に入力し、電圧制御発振器から発振信号として復元クロックを出力するともに、復元クロックをサンプラに与える上記の本発明のPLL回路と、を備える。
【0023】
本発明の容量回路は、ノードN1とノードN2との間に設けられ両ノード間の電圧値に応じた容量値を有する可変容量素子と、ノードN2とノードN3との間に設けられた容量素子と、ノードN2にバイアス電圧値を与えるとともに可変容量素子に流れるリーク電流の量を検出する検出回路と、検出回路による検出結果に基づいてリーク電流を補償する電流をノードN1に流す補償回路と、を備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明のLC-VCOは、可変容量素子のリーク電流による性能悪化を抑制することができ、レイアウト面積の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、PLL回路1の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、電圧制御発振器40の回路例を示す図である。
【
図3】
図3は、電圧制御発振器40の特性を説明する図である。
【
図4】
図4は、可変容量素子の特性を説明する図である。
【
図5】
図5は、電圧制御発振器40Aの構成を示す図である。
【
図6】
図6は、電圧制御発振器40Bの構成を示す図である。
【
図7】
図7は、検出回路48および補償回路49の第1回路例を示す図である。
【
図8】
図8は、検出回路48および補償回路49の第2回路例を示す図である。
【
図9】
図9は、検出回路48および補償回路49の第3回路例を示す図である。
【
図10】
図10は、検出回路48および補償回路49の第4回路例を示す図である。
【
図11】
図11は、検出回路48および補償回路49の第5回路例を示す図である。
【
図12】
図12は、検出回路48および補償回路49の第6回路例を示す図である。
【
図13】
図13は、検出回路48および補償回路49の第7回路例を示す図である。
【
図14】
図14は、検出回路48および補償回路49の第8回路例を示す図である。
【
図15】
図15は、検出回路48および補償回路49の第9回路例を示す図である。
【
図16】
図16は、検出回路48および補償回路49の第10回路例を示す図である。
【
図17】
図17は、検出回路48および補償回路49の第11回路例を示す図である。
【
図18】
図18は、検出回路48および補償回路49の第12回路例を示す図である。
【
図19】
図19は、検出回路48および補償回路49の第13回路例を示す図である。
【
図20】
図20は、検出回路48および補償回路49の第14回路例を示す図である。
【
図21】
図21は、検出回路48および補償回路49の第15回路例を示す図である。
【
図23】
図23は、可変容量素子における2端子間の印加電圧値とリーク電流量との間の関係を示す図である。
【
図24】
図24は、PLL回路における制御電圧値VCおよび発振信号CLKoutの周波数それぞれの時間変化を示す図である。
【
図26】
図26は、電圧制御発振器40
1,40
2それぞれの可変容量素子C1の容量値が付加されたループフィルタ30の容量素子33の容量値と制御電圧値VCとの間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0027】
図1は、PLL回路1の構成を示す図である。PLL回路1は、位相比較器10、チャージポンプ20、ループフィルタ30、電圧制御発振器40および分周器50を備える。ループフィルタ30は、抵抗器31、容量素子32および容量素子33を含む。
【0028】
位相比較器10は、分周器50から出力される帰還発振信号を入力するとともに、入力信号をも入力する。入力信号は、周波数が一定である基準発振信号であってもよいし、各ビットの期間が一定であるデジタル信号であってもよい。位相比較器10は、これら帰還発振信号と入力信号との間の位相差を検出して、この位相差を表す位相差信号をチャージポンプ20へ出力する。位相差信号は、帰還発振信号および入力信号のうち何れの信号の位相が進んでいるかを表す。
【0029】
チャージポンプ20は、位相比較器10から出力される位相差信号を入力して、この位相差信号が表す位相差に応じた充放電電流をループフィルタ30へ出力する。チャージポンプ20からループフィルタ30へ出力される充放電電流は、基準発振信号および入力信号のうち何れの信号の位相が進んでいるかに応じて極性が異なる。ループフィルタ30は、チャージポンプ20から出力される充放電電流を入力し、この充放電量に応じて増減される制御電圧値VCを電圧制御発振器40へ出力する。
【0030】
ループフィルタ30は、チャージポンプ20から出力される充放電電流を第1端に入力する抵抗器31と、抵抗器31の第2端と接地電位端との間に設けられた容量素子32と、抵抗器31の第1端と接地電位端との間に設けられた容量素子33と、を含む。チャージポンプ20の出力端および電圧制御発振器40の入力端は、ループフィルタ30の抵抗器31の第1端と接続されている。
【0031】
電圧制御発振器40は、ループフィルタ30から出力される制御電圧値VCを入力し、この制御電圧値VCに応じた周波数を有する発振信号CLKoutを出力する。分周器50は、電圧制御発振器40から出力される発振信号を入力し、この発振信号をN分周して帰還発振信号を生成し、この帰還発振信号を位相比較器10へ出力する。
【0032】
位相比較器10、チャージポンプ20、ループフィルタ30、電圧制御発振器40および分周器50はループを構成している。このループにおいて、位相比較器10に入力される帰還発振信号と入力信号との間の位相差が小さくなるように、チャージポンプ20からループフィルタ30へ充放電電流が入力される。そして、このループの動作が安定した状態では、電圧制御発振器40から出力される発振信号は、入力信号の周波数をN倍した周波数を有する。なお、分周器50は設けられなくてもよく、この場合には、電圧制御発振器40から出力される発振信号は基準発振信号の周波数と同じ周波数を有し、分周比N=1とする。
【0033】
図2は、電圧制御発振器40の回路例を示す図である。この図に示される電圧制御発振器40はLC-VCOである。電圧制御発振器40は、第1容量回路41、第2容量回路42、第3容量回路43、インダクタ44、インダクタ45、NMOSトランジスタ46およびNMOSトランジスタ47を含む。
【0034】
第1容量回路41および第2容量回路42は共通の構成を有する。第1容量回路41および第2容量回路42それぞれは、可変容量素子C1、容量素子C2および抵抗器Rを含む。可変容量素子C1は、ノードN1とノードN2との間に設けられている。可変容量素子C1の容量値は、ノードN1とノードN2との間の電圧値に依存する。容量素子C2は、ノードN2とノードN3との間に設けられている。容量素子C2の容量値は、ノードN2とノードN3との間の電圧値に依らず一定であってよい。抵抗器Rの一端はノードN2に接続され、抵抗器Rの他端に任意のバイアス電圧値Vbiasが入力される。抵抗器Rの抵抗値は高く、第1容量回路41および第2容量回路42それぞれのノードN2に任意のバイアス電圧値Vbiasが与えられる。
【0035】
第3容量回路43は、第1容量回路41および第2容量回路42それぞれのノードN3に接続されている。第3容量回路43は、第1容量回路41のノードN3に接続された複数の容量素子と、これら複数の容量素子それぞれに対応して直列に接続されたスイッチとを含む。また、第3容量回路43は、第2容量回路42のノードN3に接続された複数の容量素子と、これら複数の容量素子それぞれに対応して直列に接続されたスイッチとを含む。第3容量回路43は、外部から与えられる制御信号により各スイッチのオン/オフの状態が設定されて、これらの設定に応じた容量値を有する。
【0036】
インダクタ44およびインダクタ45は共通の特性を有する。インダクタ44は、電源電位供給端と第1容量回路41のノードN3との間に設けられている。インダクタ45は、電源電位供給端と第2容量回路42のノードN3との間に設けられている。
【0037】
NMOSトランジスタ46およびNMOSトランジスタ47は共通の特性を有する。NMOSトランジスタ46のドレインは第1容量回路41のノードN3に接続されている。NMOSトランジスタ46のソースは接地電位供給端に接続されている。NMOSトランジスタ46のゲートはNMOSトランジスタ47のドレインに接続されている。NMOSトランジスタ47のドレインは第2容量回路42のノードN3に接続されている。NMOSトランジスタ47のソースは接地電位供給端に接続されている。NMOSトランジスタ47のゲートはNMOSトランジスタ46のドレインに接続されている。
【0038】
第1容量回路41および第2容量回路42それぞれのノードN1は共通であり、このノードN1に制御電圧値VCが入力される。第1容量回路41および第2容量回路42それぞれのノードN3(または、これに電気的に接続されたノード)から発振信号CLKoutが出力される。
【0039】
図3は、電圧制御発振器40の特性を説明する図である。この図において、横軸は、電圧制御発振器40に入力される制御電圧値VCである。縦軸は、電圧制御発振器40から出力される発振信号CLKoutの周波数である。この図では、制御電圧値VCと発振信号CLKoutの周波数との間の関係(FV特性)を示す線が9本示されている。制御信号により第3容量回路43の容量値を設定することで、その9つのFV特性のうちの何れか1つのFV特性を選択することができる。そして、その選択したFV特性において制御電圧値VCに対応する周波数の発振信号CLKoutが電圧制御発振器40から出力される。なお、複数のFV特性のうちから一つを選択する必要がなく、FV特性が固定でも構わなければ、第3容量回路43は設けられなくてもよい。
【0040】
ところで、電圧制御発振器40の第1容量回路41および第2容量回路42それぞれに含まれる可変容量素子C1は、ノードN1とノードN2との間に印加される電圧値に応じた量のリーク電流が生じる。そのリーク電流の量によっては、PLL回路1の性能が悪化する。
【0041】
例えば、可変容量素子は、CMOS微細プロセスによりPウェルに2つのN+領域を有するMOSトランジスタにより構成される。このMOSトランジスタのソースおよびドレインを互いに電気的に接続して一方の端子とし、ゲートを他方の端子としたとき、このMOSトランジスタの接合容量値は、これら2つの端子の間に印加される電圧値に応じたものになる。また、これら2つの端子の間に、印加電圧値に応じた量のリーク電流が生じる。このMOSトランジスタにおけるリーク電流はゲートリークと呼ばれる。近年、プロセスが微細化してゲート酸化膜が薄くなることによりゲートリークは顕在化してきた。
【0042】
図4は、可変容量素子の特性を説明する図である。この図は、2端子間の印加電圧値と容量値との間の関係、および、2端子間の印加電圧値とリーク電流量との間の関係を示す。この図に示されるように、印加電圧値が0を超えて大きくなると、リーク電流量は急激に大きくなっていく。なお、リーク電流量は、温度によっても大きく変化する。通常は、温度が高いほど、リーク電流量は大きい。リーク電流量は例えば数nA~数十μAである。
【0043】
電圧制御発振器40の第1容量回路41および第2容量回路42それぞれに含まれる可変容量素子C1にリーク電流が生じると、その電流は、バイアス電圧値Vbiasの入力端から抵抗器Rおよび可変容量素子C1を経て制御電圧値VCの入力端へ向かう方向に、または、これとは逆の方向に、流れる。電流が流れる方向は、可変容量素子C1の向き及びバイアス電圧値Vbiasに依って異なる。
【0044】
この電流が流れる方向が何れであっても、この電流により、ループフィルタ30の容量素子32,33の蓄積電荷量が変動して、ループフィルタ30から出力される制御電圧値VCが変動する。電圧制御発振器40に入力される制御電圧値VCが変動すると、電圧制御発振器40から出力される発振信号CLKoutの周波数も変動し、位相比較器10に入力される帰還発振信号の周波数も変動する。
【0045】
位相比較器10において、入力信号と帰還発振信号との間の位相差が検出される。この位相差が小さくなるように、チャージポンプ20からループフィルタ30へ充放電電流が入力される。この充放電電流は例えば10μA程度以上である。制御電圧値VCが元の値に戻ることで、電圧制御発振器40から出力される発振信号CLKoutの周波数も元に戻る。
【0046】
しかし、PLL回路1におけるフィードバックは入力信号の周期毎に行われるので、入力信号の周期(または1ビット当たりの時間)が長いと、1周期の間の発振信号CLKoutの周波数の変動幅が大きくなり、発振信号CLKoutのジッタが大きくなる。また、チャージポンプ20からループフィルタ30へ与えられる充放電電流量より可変容量素子C1のリーク電流量が大きいと、フィードバックによって制御電圧値VCを元の値に戻すことができなくなり、PLL回路として動作しなくなる。
【0047】
可変容量素子として、例えば以下の二つの素子がある。その一つは、ゲート酸化膜が薄く低電圧(1.0V)で動作して、容量変化量が大きく、リーク電流量が比較的大きい。他の一つは、ゲート酸化膜が厚く高電圧(3.3V)で動作して、容量変化量が小さく、リーク電流量が比較的小さい。後者の高電圧動作の可変容量素子を用いる場合には、容量可変範囲を増やすために制御電圧の範囲を増加させる方法があるが、チャージポンプおよびループフィルタ等の周辺回路をも高電圧で動作するものを用いる必要があり、半導体基板上に集積化する場合にレイアウト面積が大きくなる。また、制御電圧の範囲を増加させずに、可変容量素子のサイズを大きくすることも対策として考えられるが、この場合にもレイアウト面積が大きくなる。
【0048】
特許文献1に開示された発明は、LC-VCOの可変容量素子と同等の可変容量素子を含むレプリカ回路を設け、このレプリカ回路の可変容量素子のリーク電流によりLC-VCOの可変容量素子のリーク電流を補償することにより、LC-VCOの性能悪化を抑制することを図る。しかし、この場合もレイアウト面積が大きくなる。また、LC-VCOの可変容量素子とレプリカ回路の可変容量素子との間で特性が相違していると、各々の可変容量素子に流れるリーク電流が相違し、十分に補償をすることができない。それ故、LC-VCOの性能悪化を十分に抑制することができず、また、これを用いるPLL回路またはCDR装置の性能悪化を十分に抑制することもできない。
【0049】
以下に説明する実施形態は、このような問題点を解消し得るものである。
図5は、電圧制御発振器40Aの構成を示す図である。この図に示される電圧制御発振器40Aは、第1容量回路41A、第2容量回路42A、第3容量回路43、インダクタ44、インダクタ45、NMOSトランジスタ46およびNMOSトランジスタ47を備える。
図2に示された電圧制御発振器40の構成と比較すると、
図5に示される電圧制御発振器40Aは、第1容量回路41に替えて第1容量回路41Aを備える点で相違し、第2容量回路42に替えて第2容量回路42Aを備える点で相違する。
【0050】
第1容量回路41Aおよび第2容量回路42Aは共通の構成を有する。第1容量回路41Aおよび第2容量回路42Aそれぞれは、可変容量素子C1、容量素子C2、検出回路48および補償回路49を含む。可変容量素子C1は、ノードN1とノードN2との間に設けられている。可変容量素子C1の容量値は、ノードN1とノードN2との間の電圧値に依存する。容量素子C2は、ノードN2とノードN3との間に設けられている。容量素子C2の容量値は、ノードN2とノードN3との間の電圧値に依らず一定であってよい。検出回路48は、ノードN2にバイアス電圧値Vbiasを与えるとともに、可変容量素子C1に流れるリーク電流の量を検出する。補償回路49は、検出回路48による検出結果に基づいて、可変容量素子C1のリーク電流を補償する電流をノードN1に流す。
【0051】
図6は、電圧制御発振器40Bの構成を示す図である。この図に示される電圧制御発振器40Bは、第1容量回路41B、第2容量回路42B、第3容量回路43、インダクタ44、インダクタ45、NMOSトランジスタ46およびNMOSトランジスタ47を備える。
図5に示された電圧制御発振器40Aの構成と比較すると、
図6に示される電圧制御発振器40Bは、第1容量回路41Aに替えて第1容量回路41Bを備える点で相違し、第2容量回路42Aに替えて第2容量回路42Bを備える点で相違する。
【0052】
第1容量回路41Bおよび第2容量回路42Bは共通の構成を有する。第1容量回路41Bおよび第2容量回路42Bそれぞれは、可変容量素子C1、容量素子C2、検出回路48および補償回路49を含む。本構成では、第1容量回路41Bおよび第2容量回路42Bそれぞれの検出回路48が共通である。また、第1容量回路41Bおよび第2容量回路42Bそれぞれの補償回路49が共通である。
【0053】
なお、電圧制御発振器40A(
図5)および電圧制御発振器40B(
図6)それぞれにおいて、複数のFV特性のうちから一つを選択する必要がなく、FV特性が固定でも構わなければ、第3容量回路43は設けられなくてもよい。
【0054】
図7は、検出回路48および補償回路49の第1回路例を示す図である。第1回路例では、検出回路48は、PMOSトランジスタM1、抵抗器Rおよび差動アンプAを含む。補償回路49は、PMOSトランジスタM2、NMOSトランジスタM3およびNMOSトランジスタM4を含む。
【0055】
検出回路48において、PMOSトランジスタM1のソースは、電源電位供給端に接続されている。抵抗器Rは、PMOSトランジスタM1のドレインとノードN2との間に設けられている。差動アンプAの非反転入力端子は、PMOSトランジスタM1のドレインに接続されている。差動アンプAの反転入力端子は、バイアス電圧値Vbiasが入力される。差動アンプAの出力端子は、PMOSトランジスタM1のゲートに接続されている。
【0056】
補償回路49において、PMOSトランジスタM2のソースは、電源電位供給端に接続されている。PMOSトランジスタM2のゲートは、差動アンプAの出力端子に接続されている。NMOSトランジスタM3のソースは、接地電位供給端に接続されている。NMOSトランジスタM3のドレインは、PMOSトランジスタM2のドレインに接続されている。NMOSトランジスタM4のソースは、接地電位供給端に接続されている。NMOSトランジスタM4のドレインは、ノードN1に接続されている。NMOSトランジスタM4のゲートは、NMOSトランジスタM3のゲートおよびドレインに接続されている。NMOSトランジスタM4は、NMOSトランジスタM3とともにカレントミラー回路を構成し、NMOSトランジスタM3に流れる電流と同じ量の電流を流す。
【0057】
検出回路48において、差動アンプAの反転入力端子と非反転入力端子とはイマジナリショートの関係を有することから、差動アンプAの反転入力端子は非反転入力端子と同じバイアス電圧値Vbiasとされ、そのバイアス電圧値Vbiasが抵抗器Rを介してノードN2に与えられる。可変容量素子C1のリーク電流は、電源電位供給端からPMOSトランジスタM1,抵抗器Rおよび可変容量素子C1を経てノードN1へ流れる。すなわち、PMOSトランジスタM1に流れる電流の量は、可変容量素子C1のリーク電流量と同じである。差動アンプAの出力端子からPMOSトランジスタM1のゲートに与えられる電圧値は、可変容量素子C1のリーク電流量と同じ量の電流がPMOSトランジスタM1に流れるような値となる。
【0058】
補償回路49において、差動アンプAの出力端子からPMOSトランジスタM2のゲートに与えられる電圧値は、差動アンプAの出力端子からPMOSトランジスタM1のゲートに与えられる電圧値と同じである。したがって、PMOSトランジスタM2に流れる電流の量は、PMOSトランジスタM1に流れる電流の量と同じである。PMOSトランジスタM2に流れる電流は、NMOSトランジスタM3にも流れる。NMOSトランジスタM4とNMOSトランジスタM3とはカレントミラー回路を構成しているから、NMOSトランジスタM4に流れる電流の量は、PMOSトランジスタM3に流れる電流の量と同じである。すなわち、NMOSトランジスタM4に流れる電流の量は、可変容量素子C1のリーク電流量と同じである。したがって、NMOSトランジスタM4に流れる電流は、可変容量素子C1のリーク電流を補償することができる。
【0059】
図8は、検出回路48および補償回路49の第2回路例を示す図である。第2回路例では、検出回路48は、NMOSトランジスタM1、抵抗器Rおよび差動アンプAを含む。また、補償回路49は、NMOSトランジスタM2、PMOSトランジスタM3およびPMOSトランジスタM4を含む。
【0060】
検出回路48において、NMOSトランジスタM1のソースは、接地電位供給端に接続されている。抵抗器Rは、NMOSトランジスタM1のドレインとノードN2との間に設けられている。差動アンプAの非反転入力端子は、NMOSトランジスタM1のドレインに接続されている。差動アンプAの反転入力端子は、バイアス電圧値Vbiasが入力される。差動アンプAの出力端子は、NMOSトランジスタM1のゲートに接続されている。
【0061】
補償回路49において、NMOSトランジスタM2のソースは、接地電位供給端に接続されている。NMOSトランジスタM2のゲートは、差動アンプAの出力端子に接続されている。PMOSトランジスタM3のソースは、電源電位供給端に接続されている。PMOSトランジスタM3のドレインは、NMOSトランジスタM2のドレインに接続されている。PMOSトランジスタM4のソースは、電源電位供給端に接続されている。PMOSトランジスタM4のドレインは、ノードN1に接続されている。PMOSトランジスタM4のゲートは、PMOSトランジスタM3のゲートおよびドレインに接続されている。PMOSトランジスタM4は、PMOSトランジスタM3とともにカレントミラー回路を構成し、PMOSトランジスタM3に流れる電流と同じ量の電流を流す。
【0062】
検出回路48において、差動アンプAの反転入力端子と非反転入力端子とはイマジナリショートの関係を有することから、差動アンプAの反転入力端子は非反転入力端子と同じバイアス電圧値Vbiasとされ、そのバイアス電圧値Vbiasが抵抗器Rを介してノードN2に与えられる。可変容量素子C1のリーク電流は、ノードN1から可変容量素子C1,抵抗器RおよびNMOSトランジスタM1を経て接地電位供給端へ流れる。すなわち、NMOSトランジスタM1に流れる電流の量は、可変容量素子C1のリーク電流量と同じである。差動アンプAの出力端子からNMOSトランジスタM1のゲートに与えられる電圧値は、可変容量素子C1のリーク電流量と同じ量の電流がNMOSトランジスタM1に流れるような値となる。
【0063】
補償回路49において、差動アンプAの出力端子からNMOSトランジスタM2のゲートに与えられる電圧値は、差動アンプAの出力端子からNMOSトランジスタM1のゲートに与えられる電圧値と同じである。したがって、NMOSトランジスタM2に流れる電流の量は、NMOSトランジスタM1に流れる電流の量と同じである。NMOSトランジスタM2に流れる電流は、PMOSトランジスタM3にも流れる。PMOSトランジスタM4とPMOSトランジスタM3とはカレントミラー回路を構成しているから、PMOSトランジスタM4に流れる電流の量は、NMOSトランジスタM3に流れる電流の量と同じである。すなわち、PMOSトランジスタM4に流れる電流の量は、可変容量素子C1のリーク電流量と同じである。したがって、PMOSトランジスタM4に流れる電流は、可変容量素子C1のリーク電流を補償することができる。
【0064】
図9は、検出回路48および補償回路49の第3回路例を示す図である。第3回路例では、検出回路48は、PMOSトランジスタM1、PMOSトランジスタM5および差動アンプAを含む。また、補償回路49は、PMOSトランジスタM2、NMOSトランジスタM3およびNMOSトランジスタM4を含む。
【0065】
第1回路例(
図7)と比較すると、第3回路例(
図9)は、検出回路48が抵抗器Rに替えてPMOSトランジスタM5を含む点で相違する。PMOSトランジスタM5は、PMOSトランジスタM1のドレインとノードN2との間に設けられている。PMOSトランジスタM5は、抵抗器Rと同様に抵抗部として用いられるものであり、ゲートに与えられる参照電圧値Vrefに応じた抵抗値を有する。PMOSトランジスタM5を抵抗部として用いることで、小さいレイアウト面積で高抵抗の抵抗部を実現することができる。
【0066】
図10は、検出回路48および補償回路49の第4回路例を示す図である。第4回路例では、検出回路48は、NMOSトランジスタM1、NMOSトランジスタM5および差動アンプAを含む。また、補償回路49は、NMOSトランジスタM2、PMOSトランジスタM3およびPMOSトランジスタM4を含む。
【0067】
第2回路例(
図8)と比較すると、第4回路例(
図10)は、検出回路48が抵抗器Rに替えてNMOSトランジスタM5を含む点で相違する。NMOSトランジスタM5は、NMOSトランジスタM1のドレインとノードN2との間に設けられている。NMOSトランジスタM5は、抵抗器Rと同様に抵抗部として用いられるものであり、ゲートに与えられる参照電圧値Vrefに応じた抵抗値を有する。NMOSトランジスタM5を抵抗部として用いることで、小さいレイアウト面積で高抵抗の抵抗部を実現することができる。
【0068】
これまでに説明した第1回路例(
図7)、第2回路例(
図8)、第3回路例(
図9)および第4回路例(
図10)では、制御電圧値VCの大きさによっては、リーク電流が小さくなって、検出回路48によるリーク電流量の検出ができず、補償回路49によるリーク電流の補償ができない可能性がある。その対策として、以下に説明する第5回路例(
図11)、第6回路例(
図12)、第7回路例(
図13)および第8回路例(
図14)のように、ダミーのリーク電流を流す第1電流源I1または第2電流源I2を設けるのが好適である。第1電流源I1または第2電流源I2が流すダミーのリーク電流の量は数十nA程度であるのが妥当である。このようなダミーのリーク電流を流すことは、回路起因のリーク電流になる。しかし、ダミーのリーク電流の量は、チャージポンプからの電流の量と比べて1/100程度であって十分に小さいことから、誤差として扱うことができる。
【0069】
図11は、検出回路48および補償回路49の第5回路例を示す図である。第5回路例では、検出回路48は、PMOSトランジスタM1、抵抗器R、差動アンプAおよび第1電流源I1を含む。また、補償回路49は、PMOSトランジスタM2、NMOSトランジスタM3およびNMOSトランジスタM4を含む。第1回路例(
図7)と比較すると、第5回路例(
図11)は、検出回路48が第1電流源I1を更に含む点で相違する。第1電流源I1は、接地電位供給端とPMOSトランジスタM1のドレインとの間に設けられている。
【0070】
図12は、検出回路48および補償回路49の第6回路例を示す図である。第6回路例では、検出回路48は、NMOSトランジスタM1、抵抗器R、差動アンプAおよび第1電流源I1を含む。また、補償回路49は、NMOSトランジスタM2、PMOSトランジスタM3およびPMOSトランジスタM4を含む。第2回路例(
図8)と比較すると、第6回路例(
図12)は、検出回路48が第1電流源I1を更に含む点で相違する。第1電流源I1は、電源電位供給端とNMOSトランジスタM1のドレインとの間に設けられている。
【0071】
図13は、検出回路48および補償回路49の第7回路例を示す図である。第7回路例では、検出回路48は、PMOSトランジスタM1、抵抗器R、差動アンプAおよび第2電流源I2を含む。また、補償回路49は、PMOSトランジスタM2、NMOSトランジスタM3およびNMOSトランジスタM4を含む。第1回路例(
図7)と比較すると、第7回路例(
図11)は、検出回路48が第2電流源I2を更に含む点で相違する。第2電流源I2は、接地電位供給端とノードN2との間に設けられている。
【0072】
図14は、検出回路48および補償回路49の第8回路例を示す図である。第8回路例では、検出回路48は、NMOSトランジスタM1、抵抗器R、差動アンプAおよび第2電流源I2を含む。また、補償回路49は、NMOSトランジスタM2、PMOSトランジスタM3およびPMOSトランジスタM4を含む。第2回路例(
図8)と比較すると、第8回路例(
図12)は、検出回路48が第2電流源I2を更に含む点で相違する。第2電流源I2は、電源電位供給端とノードN2との間に設けられている。
【0073】
第5回路例(
図11)、第6回路例(
図12)、第7回路例(
図13)および第8回路例(
図14)それぞれにおいて、第3回路例(
図9)および第4回路例(
図10)と同様に、抵抗器Rに替えてMOSトランジスタM5を設けてもよい。
【0074】
これまでに説明した第5回路例(
図11)、第6回路例(
図12)、第7回路例(
図13)および第8回路例(
図14)では、第1電流源I1または第2電流源I2が流すダミーのリーク電流により誤差が生じる。以下に説明する第9回路例(
図15)、第10回路例(
図16)、第11回路例(
図17)および第12回路例(
図18)では、この誤差を抑制するための第3電流源I3または第4電流源I4を設ける。
【0075】
図15は、検出回路48および補償回路49の第9回路例を示す図である。第9回路例では、検出回路48は、PMOSトランジスタM1、抵抗器R、差動アンプAおよび第2電流源I2を含む。また、補償回路49は、PMOSトランジスタM2、NMOSトランジスタM3、NMOSトランジスタM4および第3電流源I3を含む。第7回路例(
図13)と比較すると、第9回路例(
図15)は、補償回路49が第3電流源I3を更に含む点で相違する。第3電流源I3は、電源電位供給端とノードN1との間に設けられている。第3電流源I3が流す電流の量は、第2電流源I2が流す電流の量と同じである。
【0076】
図16は、検出回路48および補償回路49の第10回路例を示す図である。第10回路例では、検出回路48は、NMOSトランジスタM1、抵抗器R、差動アンプAおよび第2電流源I2を含む。また、補償回路49は、NMOSトランジスタM2、PMOSトランジスタM3、PMOSトランジスタM4および第3電流源I3を含む。第8回路例(
図14)と比較すると、第10回路例(
図16)は、補償回路49が第3電流源I3を更に含む点で相違する。第3電流源I3は、接地電位供給端とノードN1との間に設けられている。第3電流源I3が流す電流の量は、第2電流源I2が流す電流の量と同じである。
【0077】
図17は、検出回路48および補償回路49の第11回路例を示す図である。第11回路例では、検出回路48は、PMOSトランジスタM1、抵抗器R、差動アンプAおよび第2電流源I2を含む。また、補償回路49は、PMOSトランジスタM2、NMOSトランジスタM3、NMOSトランジスタM4および第4電流源I4を含む。第7回路例(
図13)と比較すると、第11回路例(
図17)は、補償回路49が第4電流源I4を更に含む点で相違する。第4電流源I4は、接地電位供給端とNMOSトランジスタM3およびNMOSトランジスタM4それぞれのゲートとの間に設けられている。第4電流源I4が流す電流の量は、第2電流源I2が流す電流の量と同じである。
【0078】
図18は、検出回路48および補償回路49の第12回路例を示す図である。第12回路例では、検出回路48は、NMOSトランジスタM1、抵抗器R、差動アンプAおよび第2電流源I2を含む。また、補償回路49は、NMOSトランジスタM2、PMOSトランジスタM3、PMOSトランジスタM4および第4電流源I4を含む。第8回路例(
図14)と比較すると、第12回路例(
図18)は、補償回路49が第4電流源I4を更に含む点で相違する。第4電流源I4は、電源電位供給端とPMOSトランジスタM3およびPMOSトランジスタM4それぞれのゲートとの間に設けられている。第4電流源I4が流す電流の量は、第2電流源I2が流す電流の量と同じである。
【0079】
第9回路例(
図15)、第10回路例(
図16)、第11回路例(
図17)および第12回路例(
図18)それぞれにおいて、第3回路例(
図9)および第4回路例(
図10)と同様に、抵抗器Rに替えてMOSトランジスタM5を設けてもよい。また、第5回路例(
図11)および第6回路例(
図12)それぞれに対して、第3電流源I3または第4電流源I4を設けてもよい。
【0080】
これまでに説明した第5~第12の各回路例は、第1電流源I1または第2電流源I2によりダミーのリーク電流を流すものであった。また、第9~第12の各回路例は、第1電流源I1または第2電流源I2が流すダミーのリーク電流により生じる誤差を第3電流源I3または第4電流源I4により抑制するものであった。以下に説明する第13回路例(
図19)、第14回路例(
図20)および第15回路例(
図21)は、電流源を付加することなく、検出回路48および補償回路49を構成することができる。
【0081】
図19は、検出回路48および補償回路49の第13回路例を示す図である。第13回路例では、検出回路48は、PMOSトランジスタM11、NMOSトランジスタM21、抵抗器Rおよび差動アンプAを含む。補償回路49は、PMOSトランジスタM12、NMOSトランジスタM13、NMOSトランジスタM14、NMOSトランジスタM22、PMOSトランジスタM23およびPMOSトランジスタM24を含む。
【0082】
検出回路48において、PMOSトランジスタM11のソースは、電源電位供給端に接続されている。NMOSトランジスタM21のソースは、接地電位供給端に接続されている。PMOSトランジスタM11およびNMOSトランジスタM21それぞれのドレインは、互いに接続されている。抵抗器Rは、PMOSトランジスタM11およびNMOSトランジスタM21それぞれのドレインとノードN2との間に設けられている。差動アンプAの非反転入力端子は、PMOSトランジスタM11およびNMOSトランジスタM21それぞれのドレインに接続されている。差動アンプAの反転入力端子は、バイアス電圧値Vbiasが入力される。差動アンプAの出力端子は、PMOSトランジスタM11およびNMOSトランジスタM21それぞれのゲートに接続されている。
【0083】
補償回路49において、PMOSトランジスタM12のソースは、電源電位供給端に接続されている。PMOSトランジスタM12のゲートは、差動アンプAの出力端子に接続されている。NMOSトランジスタM13のソースは、接地電位供給端に接続されている。NMOSトランジスタM13のドレインは、PMOSトランジスタM12のドレインに接続されている。NMOSトランジスタM14のソースは、接地電位供給端に接続されている。NMOSトランジスタM14のドレインは、ノードN1に接続されている。NMOSトランジスタM14のゲートは、NMOSトランジスタM13のゲートおよびドレインに接続されている。NMOSトランジスタM14は、NMOSトランジスタM13とともにカレントミラー回路を構成し、NMOSトランジスタM13に流れる電流と同じ量の電流を流す。
【0084】
また、補償回路49において、NMOSトランジスタM22のソースは、接地電位供給端に接続されている。NMOSトランジスタM22のゲートは、差動アンプAの出力端子に接続されている。PMOSトランジスタM23のソースは、電源電位供給端に接続されている。PMOSトランジスタM23のドレインは、NMOSトランジスタM22のドレインに接続されている。PMOSトランジスタM24のソースは、電源電位供給端に接続されている。PMOSトランジスタM24のドレインは、ノードN1に接続されている。PMOSトランジスタM24のゲートは、PMOSトランジスタM23のゲートおよびドレインに接続されている。PMOSトランジスタM24は、PMOSトランジスタM23とともにカレントミラー回路を構成し、PMOSトランジスタM23に流れる電流と同じ量の電流を流す。
【0085】
検出回路48および補償回路49の第13回路例(
図19)は、第1回路例(
図7)および第2回路例(
図8)の双方の構成を含む構成とした上で、第1回路例(
図7)および第2回路例(
図8)それぞれに含まれる抵抗器Rおよび差動アンプAを共通化したものである。検出回路48におけるPMOSトランジスタM11およびNMOSトランジスタM21は、プッシュ・プル・バッファを構成している。
【0086】
図20は、検出回路48および補償回路49の第14回路例を示す図である。
図21は、検出回路48および補償回路49の第15回路例を示す図である。第14回路例(
図20)および第15回路例(
図21)それぞれでは、検出回路48は、PMOSトランジスタM11、NMOSトランジスタM21、MOSトランジスタM5および差動アンプAを含む。補償回路49は、PMOSトランジスタM12、NMOSトランジスタM13、NMOSトランジスタM14、NMOSトランジスタM22、PMOSトランジスタM23およびPMOSトランジスタM24を含む。
【0087】
第13回路例(
図19)と比較すると、第14回路例(
図20)および第15回路例(
図21)それぞれは、検出回路48が抵抗器Rに替えてMOSトランジスタM5を含む点で相違する。MOSトランジスタM5は、PMOSトランジスタM11およびNMOSトランジスタM21それぞれのドレインとノードN2との間に設けられている。MOSトランジスタM5は、抵抗器Rと同様に抵抗部として用いられるものであり、ゲートに与えられる参照電圧値Vrefに応じた抵抗値を有する。MOSトランジスタM5を抵抗部として用いることで、小さいレイアウト面積で高抵抗の抵抗部を実現することができる。
【0088】
第14回路例(
図20)と第15回路例(
図21)とは、可変容量素子C1に流れるリーク電流の向きの点で相違する。第14回路例(
図20)では、可変容量素子C1のリーク電流は、ノードN1から可変容量素子C1,MOSトランジスタM5およびNMOSトランジスタM21を経て接地電位供給端へ流れる。第15回路例(
図21)では、可変容量素子C1のリーク電流は、電源電位供給端からPMOSトランジスタM11,MOSトランジスタM5および可変容量素子C1を経てノードN1へ流れる。
【0089】
図22は、第1回路例(
図7)を採用した電圧制御発振器40B(
図6)の構成を示す図である。検出回路48は、LDO(Low Dropout)構成を有しており、差動アンプAの反転入力端子に入力されるバイアス電圧値Vbiasと同じ電圧値を、差動アンプAの非反転入力端子から抵抗器Rを介してノードN2に与える。PMOSトランジスタM1には、2個の可変容量素子C1のリーク電流と同量の電流が流れる。PMOSトランジスタM2に流れる電流の量は、PMOSトランジスタM1に流れる電流の量と同じである。PMOSトランジスタM2に流れる電流は、NMOSトランジスタM3にも流れる。NMOSトランジスタM4とNMOSトランジスタM3とはカレントミラー回路を構成しているから、NMOSトランジスタM4に流れる電流の量は、PMOSトランジスタM3に流れる電流の量と同じである。すなわち、NMOSトランジスタM4に流れる電流の量は、2個の可変容量素子C1のリーク電流量と同じである。したがって、NMOSトランジスタM4に流れる電流は、2個の可変容量素子C1のリーク電流を補償することができる。
【0090】
図23は、可変容量素子における2端子間の印加電圧値とリーク電流量との間の関係を示す図である。ここでのリーク電流は、可変容量素子C1のリーク電流のうち電圧制御発振器からチャージポンプへ流れる電流(または、これとは逆の方向に流れる電流)を表す。この図は、検出回路48および補償回路49が設けられていない比較例、および、検出回路48および補償回路49が設けられている実施形態、それぞれについて示す。検出回路48および補償回路49が設けられることにより、可変容量素子C1のリーク電流のうち電圧制御発振器からチャージポンプへ流れる電流の量は大きく減少する。
【0091】
図24は、PLL回路における制御電圧値VCおよび発振信号CLKoutの周波数それぞれの時間変化を示す図である。この図も、検出回路48および補償回路49が設けられていない比較例、および、検出回路48および補償回路49が設けられている実施形態、それぞれについて示す。検出回路48および補償回路49が設けられることにより、制御電圧値VCの変動幅は小さく、また、発振信号CLKoutの周波数の変動幅も小さい。
【0092】
本実施形態では、レプリカの可変容量素子が不要であるので、LC-VCOの可変容量素子とレプリカの可変容量素子との間の特性の相違の問題が生じることはない。本実施形態では、可変容量素子のリーク電流による性能悪化を抑制することができ、レイアウト面積の増加を抑制することができる。
【0093】
次に、PLL回路の実施形態について説明する。本実施形態のPLL回路は、PLL回路1(
図1)において電圧制御発振器40として電圧制御発振器40A(
図5)または電圧制御発振器40B(
図6)を採用したものである。また、電圧制御発振器40A(
図5)または電圧制御発振器40B(
図6)において、検出回路48および補償回路49として第1~第15の回路例の何れか(または、これらの組合せ若しくは変形例)を採用することができる。本実施形態のPLL回路は、
図25に示される構成を有するのが好ましい。
【0094】
図25は、PLL回路1Aの構成を示す図である。PLL回路1Aは、位相比較器10、チャージポンプ20、ループフィルタ30、電圧制御発振器40
1,40
2、分周器50および選択部60を備える。
図1に示されたPLL回路1の構成と比較すると、
図25に示されるPLL回路1Aは、1個の電圧制御発振器40に替えて複数個の電圧制御発振器(図では2個の電圧制御発振器40
1,40
2)を備える点で相違し、また、選択部60を更に備える点で相違する。電圧制御発振器40
1,40
2それぞれは、電圧制御発振器40A(
図5)または電圧制御発振器40B(
図6)と同様の構成を有する。
【0095】
電圧制御発振器401,402それぞれは、制御電圧値VCと発振信号CLKoutの周波数との間の関係(FV特性)が相違している。選択部60は、電圧制御発振器401,402のうち何れか1つの電圧制御発振器から出力される発振信号を選択して分周器50へ出力する。これにより、1個の電圧制御発振器が設けられる場合と比較して、このPLL回路1Aでは動作可能な周波数範囲を拡大することができる。
【0096】
また、電圧制御発振器401,402それぞれに入力される制御電圧値VCは共通である。これにより、チャージポンプ20およびループフィルタ30それぞれを1個だけ設ければよいので、回路規模の増大を抑制することができる。
【0097】
電圧制御発振器401,402のうち何れか1個が使用状態となり、その他は不使用状態となる。ループフィルタ30の容量素子33の容量値には、電圧制御発振器401,402それぞれの可変容量素子C1の容量値が付加される。不使用状態の電圧制御発振器において、ノードN2に与えられるバイアス電圧値Vbiasが、ノードN1に与えられる制御電圧値VCより小さいと、可変容量素子C1のリーク電流量が小さくなり、ループフィルタ30への影響が小さい。しかし、制御電圧値VCの変動によって可変容量素子C1の容量値が変動し、この可変容量素子C1の容量値の変動が、ループフィルタ30の容量素子33の容量値に影響を与える。
【0098】
そこで、不使用状態の電圧制御発振器において、ノードN2に与える電圧値を一定のバイアス電圧値Vbiasに替えて制御電圧値VCとすることで、可変容量素子C1の容量値の変動を抑制するのが好適である。すなわち、電圧制御発振器401,402それぞれは、ノードN2に与える電圧値として一定のバイアス電圧値Vbiasおよび制御電圧値VCのうちから何れか一方を選択するスイッチを備えるのが好適である。使用状態の電圧制御発振器は、一定のバイアス電圧値Vbiasをスイッチにより選択してノードN2に与える。不使用状態の電圧制御発振器は、制御電圧値VCをスイッチにより選択してノードN2に与える。これにより、不使用状態の電圧制御発振器において、可変容量素子C1の容量値の変動を抑制することができ、また、可変容量素子C1のリーク電流を抑制することができる。
【0099】
図26は、電圧制御発振器40
1,40
2それぞれの可変容量素子C1の容量値が付加されたループフィルタ30の容量素子33の容量値と制御電圧値VCとの間の関係を示すグラフである。この図は、不使用状態の電圧制御発振器において一定のバイアス電圧値(0V)をノードN2に与えた場合、および、不使用状態の電圧制御発振器において制御電圧値VCをノードN2に与えた場合を示す。後者の場合の方が、ループフィルタ30の容量素子33の容量値の変動が小さい。
【0100】
ループフィルタ30の容量素子33の容量値の変動が小さい方が、設計パラメータのばらつきが少なく、設計が容易になる。このような構成により、使用状態の電圧制御発振器における可変容量素子C1のリーク電流を抑制することができ、また、不使用状態の電圧制御発振器における可変容量素子C1の容量値の変動を抑制することができて、ループフィルタ30の容量素子33の容量値の変動を抑制することができる。また、不使用状態の電圧制御発振器における可変容量素子C1のリーク電流があっても、そのリーク電流を補償することができる。
【0101】
次に、CDR装置の実施形態について説明する。CDR装置は、クロックが埋め込まれたデジタル信号(例えば8B10B又は128B130Bのコーディングデータ)を入力し、このデジタル信号に基づいてデータおよびクロックを復元して、その復元データおよび復元クロックを出力するものである。CDR装置は、PLL回路およびサンプラを備えて構成される。CDR装置において、サンプラは、復元クロックが指示するタイミングでデジタル信号のデータをサンプリングして、そのサンプリングしたデータを復元データとして復元クロックに同期して出力する。PLL回路は、入力信号として復元データを位相比較器に入力し、電圧制御発振器から発振信号として復元クロックを出力するともに、復元クロックをサンプラに与える。本実施形態のCDR装置は、前述した本実施形態のPLL回路を備える。本実施形態のCDR装置は、
図27に示される構成を有するのが好ましい。
【0102】
図27は、CDR装置2の構成を示す図である。CDR装置2は、位相比較器10
1,10
2、チャージポンプ20、ループフィルタ30、電圧制御発振器40
1,40
2、分周器50,51、選択部60,61、サンプラ70および周波数同期検出部80を備える。これらのうち、位相比較器10
1、チャージポンプ20、ループフィルタ30、電圧制御発振器40
1および分周器50を含むループは、第1のPLL回路を構成している。位相比較器10
2、チャージポンプ20、ループフィルタ30および電圧制御発振器40
2を含むループは、第2のPLL回路を構成している。これら第1および第2のPLL回路において、チャージポンプ20およびループフィルタ30は共通に設けられている。第2のPLL回路は分周器を含まない。
【0103】
サンプラ70は、クロックが埋め込まれたデジタル信号を入力するとともに、選択部60により選択されて出力された発振信号(復元クロック)を入力する。サンプラ70は、復元クロックが指示するタイミングでデジタル信号のデータをサンプリングして、そのサンプリングしたデータを復元データとして復元クロックに同期して位相比較器102へ出力する。
【0104】
位相比較器102は、サンプラ70から復元データを入力するとともに、選択部60により選択されて出力された発振信号(復元クロック)を入力する。位相比較器102は、これら復元クロックと復元データとの間の位相差を検出して、この位相差を表す位相差信号を選択部61へ出力する。位相比較器102はBang-Bang型のものであるのが好適である。
【0105】
分周器51は、入力信号が101010・・・のように一定周期の繰り返しパターンのデータである場合に、その入力信号を分周して基準クロックを生成し、その基準クロックを位相比較器101へ出力する。
【0106】
位相比較器101は、入力信号が分周器51により分周されて生成された基準クロックを入力するとともに、分周器50から出力される帰還発振信号を入力する。位相比較器101は、これら帰還発振信号と基準クロックとの間の位相差を検出して、この位相差を表す位相差信号を選択部61へ出力する。
【0107】
周波数同期検出部80は、位相比較器101に入力される帰還発振信号と基準クロックとの間で周波数が同期しているか否かを検出する。
【0108】
周波数同期検出部80により周波数同期が検出されない第1期間では、選択部61は、入力信号として基準発振信号を入力する位相比較器101から出力される位相差信号を選択してチャージポンプ20へ出力する。また、この第1期間では、選択部60は、電圧制御発振器401,402のうち電圧制御発振器401から出力される発振信号を選択して出力する。
【0109】
周波数同期検出部80により周波数同期が検出されている第2期間では、選択部61は、入力信号として復元データを入力する位相比較器102から出力される位相差信号を選択してチャージポンプ20へ出力する。また、この第2期間では、選択部60は、電圧制御発振器401,402のうち電圧制御発振器402から出力される発振信号を選択して出力する。
【0110】
このCDR装置2では、周波数同期がとれていない第1期間では、分周器51から出力される基準クロックを入力する位相比較器101および電圧制御発振器401を含む第1のPLL回路が動作する。一方、周波数同期がとれている第2期間では、サンプラ70から出力される復元データを入力する位相比較器102および電圧制御発振器402を含む第2のPLL回路が動作する。したがって、基準クロックを用いた第1のPLL回路の動作を短時間で安定化することができて、入力されるデジタル信号に基づくデータおよびクロックの復元を早期に開始することができる。
【0111】
本実施形態のPLL回路およびCDR装置は、電圧制御発振器401,402が上述した構成を有することにより、可変容量素子C1のリーク電流による性能悪化を抑制することができる。
【符号の説明】
【0112】
1,1A…PLL回路、2…CDR装置、10…位相比較器、20…チャージポンプ、30…ループフィルタ、31…抵抗器、32…容量素子、33…容量素子、40,40A,40B…電圧制御発振器、41,41A,41B…第1容量回路、42,42A,42B…第2容量回路、43…第3容量回路、44,45…インダクタ、46,47…NMOSトランジスタ、48…検出回路、49…補償回路、50,51…分周器、60,61…選択部、70…サンプラ、80…周波数同期検出部、C1…可変容量素子、C2…容量素子。