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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】硬貨搬送装置及び運賃箱
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/10 20190101AFI20220713BHJP
   G07D 1/00 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
G07D11/10
G07D1/00 Z GBL
G07D1/00 Z GBF
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021195745
(22)【出願日】2021-12-01
【審査請求日】2021-12-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390001199
【氏名又は名称】株式会社小田原機器
(74)【代理人】
【識別番号】100123881
【弁理士】
【氏名又は名称】大澤 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100134625
【弁理士】
【氏名又は名称】大沼 加寿子
(74)【代理人】
【識別番号】100080931
【弁理士】
【氏名又は名称】大澤 敬
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 悟志
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-143701(JP,A)
【文献】特開昭55-000994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00- 3/16
G07D 9/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に軸支された回転体であって、それぞれ硬貨1枚を収容する硬貨収容部が回転方向に等間隔に複数箇所設けられ、隣接する前記硬貨収容部の間の外周面に、前記回転方向に等間隔に凹部が設けられた回転体と、
駆動源と、
前記駆動源によって所定の閉経路上を周回移動するように駆動される環状部材であって、突起部を等間隔に複数備える環状部材とを備え、
前記回転体が、前記環状部材の周回移動に伴って各前記凹部に順次挿入される各前記突起部により回転駆動され、当該回転体の回転に伴って、当該回転体の近傍に位置する硬貨を各前記硬貨収容部に1枚ずつ収容し、該収容された硬貨を搬送して前記環状部材の隣接する突起部間の各間隙に1枚ずつ供給するように構成され、
前記環状部材が、当該環状部材の周回移動に伴って、前記突起部間に収容した硬貨を前記突起部により押して前記閉経路に沿って搬送するように構成されていることを特徴とする硬貨搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の硬貨搬送装置であって、
前記硬貨収容部の回転面が第1面上にあり、前記閉経路が前記第1面と平行でない第2面上にあることを特徴とする硬貨搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の硬貨搬送装置であって、
前記回転体の回転に伴って、前記硬貨収容部に収容された硬貨が前記環状部材の隣接する突起部間の間隙に落下することを特徴とする硬貨搬送装置。
【請求項4】
請求項2に記載の硬貨搬送装置であって、
前記回転体が、前記回転体の回転に伴って、前記硬貨収容部に収容された硬貨を前記環状部材の隣接する突起部間の間隙に落下させることにより、該硬貨を前記環状部材の隣接する突起部間の各間隙に1枚ずつ供給するように構成され、
前記閉経路は前記突起部間の間隙に前記回転体から硬貨が供給される位置から上方に向かって延びていることを特徴とする硬貨搬送装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の硬貨搬送装置であって、
前記回転体に向けて前記硬貨を移動させるための搬送路を備え、
前記硬貨は、重力により前記搬送路上を、前記回転体が備える前記硬貨収容部へ収容可能な向きを向いた状態で前記回転体に向けて移動することを特徴とする硬貨搬送装置。
【請求項6】
請求項に記載の硬貨搬送装置であって、
前記搬送路上に設けられ、前記硬貨の移動を阻止する阻止部材と、
前記回転体から与えられる動力により、前記回転体が前記硬貨収容部1つ分回転する毎に、前記硬貨収容部1つ分回転する時間より短い時間だけ前記阻止部材による前記阻止を解除する解除機構とを設けたことを特徴とする硬貨搬送装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の硬貨搬送装置であって、
前記搬送路は、当該搬送路上を移動する硬貨が当該搬送路から外れないように規制する規制部材を備え、
前記規制部材は、所定の位置に空隙を備え、
硬貨が前記搬送路上に所定の位置まで連なった状態でさらに前記搬送路に硬貨が供給された場合、該供給された硬貨は前記連なった硬貨に弾かれて前記空隙に落下することを特徴とする硬貨搬送装置。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の硬貨搬送装置を筐体内に備えることを特徴とする運賃箱。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の硬貨搬送装置を筐体の側面に近接して備える運賃箱であって、
前記回転体及び前記環状部材により搬送される硬貨が、少なくとも前記回転体及び前記環状部材の一部において視認できるように、前記筐体の前記側面に窓部を設けたことを特徴とする運賃箱。
【請求項10】
請求項5乃至7のいずれか一項に記載の硬貨搬送装置を備える運賃箱であって、
硬貨の投入を受け入れる硬貨受け入れ部と、
前記硬貨受け入れ部に投入された硬貨を前記搬送路に供給する硬貨供給部とを備え、
前記搬送路と前記硬貨収容部の回転面とが共通の第1面上にあり、
前記閉経路が前記第1面と平行でない第2面上にあり、
前記閉経路は、前記突起部間の間隙に前記回転体から硬貨が供給される位置から上方に向かって延びていることを特徴とする運賃箱。
【請求項11】
請求項10に記載の運賃箱であって、
前記閉経路を搬送される硬貨を、その種類に応じた硬貨貯蔵部であって前記回転体よりも高い位置に設けられた硬貨貯蔵部へ落下させる硬貨分離部を備えることを特徴とする運賃箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、硬貨搬送装置及び、硬貨搬送装置を備えた運賃箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、代金等として投入された硬貨を搬送する硬貨搬送装置が知られている。
例えば、特許文献1には、無端送り帯に突起を一定間隔で多数設け、この突起を、回転可能に軸支された円盤状の整流板の切り欠き部に係合させ、投入された硬貨を、整流板によって整列させて上記突起の間に収容し、その後上記突起の間に置かれた状態で無端送り帯に沿って搬送する装置が記載されている。
【0003】
特許文献2には、硬貨送り用ピンが形成された搬送用チェーンと、該搬送用チェーンと同期して回転し、同一円周上の複数個所に硬貨取入れ孔を有する回転板とを備え、ホッパに収容された多数の硬貨を、回転板の回転に伴って順次硬貨取入れ孔に嵌め込んで搬送用チェーンに向けて搬送し、硬貨送り用ピンの間に移し、該硬貨送り用ピンの間に置かれた状態で搬送用チェーンに沿って搬送する装置が記載されている。
【0004】
また、上記のような硬貨搬送装置が、搬送した硬貨を金庫に収納したり、釣り銭として利用できるように種類ごとに分別して貯蔵したりすることも知られている。
これらのような硬貨搬送装置は、バス等の乗り物に設置され乗客から運賃を受領するための運賃箱において用いられる他、遊技機や自動販売機など、硬貨を扱う様々な装置において用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公昭55-15755号公報
【文献】特開平6-274734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のような硬貨搬送装置や、それを備える様々な装置において、小型化、低コスト化、故障発生率の低下、メンテナンス性の向上といった要求がある。
このような要求に応えるためには、設計の自由度を向上させ、少ない容積に必要な部品を詰め込めるようにすることや、部品点数を削減することなどが有用と考えられる。
【0007】
ここで、特許文献1に記載の装置では、無端送り帯の回転駆動を、整流板と同軸の回転軸を回転させることにより行っている。また、特許文献2に記載の装置では、搬送用チェーンの回転駆動を、モータの出力軸に連結された駆動スプロケットにより行い、回転板も同じ出力軸に連結されている。
従って、モータを整流板あるいは回転板と同軸に配置する必要があって設計の自由度の制約をうけるほか、単にモータを他の位置に配置すると、モータの駆動力を整流板/回転板と無端送り帯/搬送用チェーンの双方に伝えるための伝達経路が別途必要となり、部品点数の増加につながる。
【0008】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、部品点数の増加を抑えつつ、硬貨搬送装置の設計の自由度を向上させることを目的とする。また、このことを通じ、硬貨搬送装置を備えた運賃箱の小型化を図れるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の硬貨搬送装置は、上記の目的を達成するため、回転可能に軸支された回転体であって、それぞれ硬貨1枚を収容する硬貨収容部が回転方向に等間隔に複数箇所設けられ、隣接する上記硬貨収容部の間の外周面に、上記回転方向に等間隔に凹部が設けられた回転体と、駆動源と、上記駆動源によって所定の閉経路上を周回移動するように駆動される環状部材であって、突起部を等間隔に複数備える環状部材とを設けたものである。このような硬貨搬送装置において、上記回転体が、上記環状部材の周回移動に伴って各上記凹部に順次挿入される各上記突起部により回転駆動され、その回転体の回転に伴って、その回転体の近傍に位置する硬貨を各上記硬貨収容部に1枚ずつ収容し、その収容された硬貨を搬送して上記環状部材の隣接する突起部間の各間隙に1枚ずつ供給するように構成され、上記環状部材が、その環状部材の周回移動に伴って、上記突起部間に収容した硬貨を上記突起部により押して上記閉経路に沿って搬送するように構成されているとよい。
【0010】
さらに、上記硬貨収容部の回転面が第1面上にあり、上記閉経路が上記第1面と平行でない第2面上にあるとよい。
さらに、上記回転体の回転に伴って、上記硬貨収容部に収容された硬貨が上記環状部材の隣接する突起部間の間隙に落下するように構成されているとよい。
あるいは、上記回転体が、上記回転体の回転に伴って、上記硬貨収容部に収容された硬貨を上記環状部材の隣接する突起部間の間隙に落下させることにより、該硬貨を上記環状部材の隣接する突起部間の各間隙に1枚ずつ供給するように構成され、上記閉経路は上記突起部間の間隙に上記回転体から硬貨が供給される位置から上方に向かって延びていてもうよい。
また、上記の各硬貨搬送装置において、上記回転体に向けて上記硬貨を移動させるための搬送路を備え、上記硬貨は、重力により上記搬送路上を、上記回転体が備える上記硬貨収容部へ収容可能な向きを向いた状態で上記回転体に向けて移動するように構成されているとよい。
さらに、上記搬送路上に設けられ、上記硬貨の移動を阻止する阻止部材と、上記回転体から与えられる動力により、上記回転体が上記硬貨収容部1つ分回転する毎に、上記硬貨収容部1つ分回転する時間より短い時間だけ上記阻止部材による上記阻止を解除する解除機構とを設けるとよい。
【0011】
さらに、上記搬送路に、その搬送路上を移動する硬貨が当その搬送路から外れないように規制する規制部材を備え、上記規制部材の所定の位置に空隙を設け、硬貨が上記搬送路上に所定の位置まで連なった状態でさらに上記搬送路に硬貨が供給された場合、その供給された硬貨は上記連なった硬貨に弾かれて上記空隙に落下するようにするとよい。
【0012】
また、この発明の運賃箱は、上記のいずれかの硬貨搬送装置を筐体内に設けたものである。
また、この発明の別の運賃箱は、上記のいずれかの硬貨搬送装置を筐体の側面に近接して備える運賃箱であって、上記回転体及び上記環状部材により搬送される硬貨が、少なくとも上記回転体及び上記環状部材の一部において視認できるように、上記筐体の上記側面に窓部を設けたものである。
【0013】
また、この発明のさらに別の運賃箱は、硬貨の投入を受け入れる硬貨受け入れ部と、上記硬貨受け入れ部に投入された硬貨を上記搬送路に供給する硬貨供給部とを備え、上記搬送路と上記硬貨収容部の回転面とが共通の第1面上にあり、上記閉経路が上記第1面と平行でない第2面上にあり、上記閉経路は、上記突起部間の間隙に上記回転体から硬貨が供給される位置から上方に向かって延びているものである。
このような運賃箱において、上記閉経路を搬送される硬貨を、その種類に応じた硬貨貯蔵部であって上記回転体よりも高い位置に設けられた硬貨貯蔵部へ落下させる硬貨分離部を設けるとよい。
【0014】
以上のような本発明は、装置の発明として実施する他、方法、システム、など、任意の態様で実施可能である。
【発明の効果】
【0015】
以上のようなこの発明の硬貨搬送装置によれば、部品点数の増加を抑えつつ、硬貨搬送装置の設計の自由度を向上させることができる。また、以上のようなこの発明の運賃箱によれば、硬貨搬送装置を備えた運賃箱の小型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の一実施形態である運賃箱10の構成例を示す斜視図である。
図2図1に示した運賃箱10が備える硬貨搬送部100の正面図である。
図3図2に示した硬貨搬送部100の右側面図である。
図4図2のA-A線に沿う切断部の端面図である。
図5図2に示した硬貨搬送部100におけるチェーン140及び回転体120の駆動に関連する部材の配置を示す、図2と対応する説明図である。
図6】同じく、図3と対応する説明図である。
図7図2に示したピン185を駆動する機構の一部を示す部分分解斜視図である。
図8図7に示した回転体120のカム125により駆動される、ピン185を備えた支持部材180の構成を示す分解斜視図である。
図9図2に示した硬貨搬送部による硬貨の搬送経路に関する説明図である。
図10】同じく、硬貨が搬送経路の途中で落下する場合に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、この発明の硬貨搬送装置の一実施形態を備えた、この発明の運賃箱の一実施形態について説明する。
【0018】
図1は、その運賃箱全体の外観を示す斜視図である。
図1に示す運賃箱10は、バス等の乗り物の、運転席の脇に配置され、乗客から運賃等の支払いを受領するための箱である。支払いは、硬貨で受領できるほか、紙幣、電子決済、切符などでも受領できる。また、両替や釣銭が必要なときに硬貨を払い出すこともできる。その他、乗車経路、運賃、精算残額などの表示や、乗車券の発行なども行うことができる。しかし、本実施形態の特徴は硬貨の搬送機能にあるため、この点を中心に説明する。
【0019】
運賃箱10は、図1に示すように、筐体11の表面及び内部に、様々な機材を装着して構成されている。
筐体11の表面には、一括投入口12、カードリーダライタ13、硬貨投入口14、紙幣投入口15、硬貨払出口16、ディスプレイ17、タッチパネル18、窓部19、プリンタ20が設けられ、筐体11は、固定具21により床面に固定されている。筐体11の内部には、図1に表れる読取部30、硬貨搬送部100の他、金庫、硬貨貯蔵部、分離機構、券種判定部など、様々な機材が設けられている。
【0020】
これらのうち一括投入口12は、硬貨と、整理券等のシート材との投入を受け入れる投入口であり、硬貨受け入れ部として機能する。一括投入口12に投入されたものは、不図示かつ公知の分離機構により硬貨とシート材とに分離される。このうち硬貨は不図示の計数部により種類と枚数をカウントされた上で後述する硬貨搬送部100に送られる。シート材は、読取部30に送られて読取部30に装備されたセンサによりシート材上に記載された又は登録された情報が読み取られ、窓部19を通過したのちに符号22で示す位置に設けられる金庫に落下してそこへ収納される。
【0021】
カードリーダライタ13は、ICカードに対して遠隔でデータの読み書きを行う機能を備える。電子マネーでの支払い受領や、回数券やサービスチケットなどに関する情報の登録などを行うことができる。
硬貨投入口14は、両替する硬貨の投入を受け入れる硬貨受け入れ部である。ここへ投入された硬貨も、不図示かつ公知の計数部により種類と枚数をカウントされた上で金庫22に収納されるが、硬貨と認識されなかった場合には硬貨払出口に返却される。
【0022】
紙幣投入口15は、両替や支払いのための紙幣の投入を受け入れる投入口である。ここへ投入された紙幣は、不図示かつ公知の券種判定部により券種を判定されカウントされた上で、金庫に設けられた券種ごとの紙幣貯蔵部へ移送され、収納される。
硬貨払出口16は、両替後や釣銭の硬貨を利用者に渡すための払出口である。払い出すべき硬貨は不図示の硬貨貯蔵部から硬貨払出口16へ移送される。このとき、硬貨貯蔵部を筐体11の高い位置に配置しておくことにより、硬貨を硬貨貯蔵部から硬貨払出口16へ所定の搬送路を経て落下させる形で払い出しを行うことができ、運搬に動力を必要とする場合に比べて機構部の部品点数を削減することができる。
【0023】
ディスプレイ17は、乗車区間、運賃、精算残額など、様々な情報を利用者に伝えるための画面を表示する表示部である。
タッチパネル18は、乗務員に対して、利用者の乗車区間、運賃、精算残額などの様々な情報を伝える画面を表示したり、GUI(グラフィカルユーザインタフェース)により乗務員からの操作を受け付けたりするための操作表示部である。
【0024】
窓部19は、硬貨搬送部100を搬送されていく硬貨や読取部30を通過するシート材、すなわち乗客が投入したものを、乗務員が目視で確認できるように、筐体11のうちこれらの各部が配置された箇所を透明にして形成したものである。硬貨搬送部100及び読取部30は、この目視が容易にできるように、またスペースを無駄にしないように、筐体11のうち乗務員側の側面に近接させて配置している。
【0025】
プリンタ20は、紙等のシート材によるチケットの発券や収受の証跡となる領収書の発行等のために文字等の情報を書き込む装置である。
金庫22は、運賃箱10に投入された紙幣、硬貨及びシート材を保管するための保管庫であり、図1に符号22の破線で示すように、運賃箱10の下方に設けられている。
【0026】
硬貨搬送部100は、後に詳述するが、順次供給される硬貨を上方に設けた硬貨貯蔵部に1枚ずつ搬送する装置である。硬貨搬送部100は、概ね水平方向は矢印Xで示す範囲に、垂直方向は矢印Yで示す範囲に設けられている。
以上のような運賃箱10の動作は、不図示の制御部に設けられたプロセッサが所要のプログラムを実行することにより、または専用の制御回路により、またはそれらの組み合わせにより制御される。
【0027】
次に、硬貨搬送部100の構成及び動作について説明する。この硬貨搬送部100は、この発明の硬貨搬送装置の一実施形態である。
まず、図2及び図3を用いて硬貨搬送部100の全体構成について説明する。
硬貨搬送部100は、図3に主に表れるように、相互に固定された第1基板110と第2基板130とを基本構造としている。また、第2基板130は、硬貨搬送部100を地面に置く際に支えとなる脚191,192を有している。硬貨搬送部100は、筐体11内に設置する際には所定のレールに沿って所定位置まで挿入するため、脚191,192がなくとも設置可能であるが、脚191,192は、硬貨搬送部100をユニットとして運賃箱10から取り外して保管する際等に用いる。
【0028】
なお、以降の説明において、図2に表れる側の面を第1基板110及び第2基板130の表側、その反対側の面を裏側と呼ぶ。第2基板130は、第1基板110の裏側に配置されていることになる。
【0029】
第1基板110は、回転体120を収容するための窪み110aと、硬貨の搬送路を形成するために搬送路内から表側にせり上がった段差部110b,110cと、硬貨を落下させるための空隙110dと、後述するピン185を貫通させるための透孔110eとを備える。
【0030】
また、第1基板110上の表側にはプレート111が固定され、プレート111の上側に、硬貨が第1基板110の表側の面と平行な向きに転がって回転体120に向けて移動する第1搬送路112が形成される(図4参照)。第1搬送路112の上側入口付近の図で右側の壁は段差部110bにより形成され、回転体120付近の上側の壁は段差部110cにより形成される。プレート111、段差部110b,110cは、第1搬送路112上を移動する硬貨が第1搬送路112から外れないように規制する規制部材として機能する。
また、第1搬送路112と空隙110dとの間には段差はなく、空隙110dが形成された位置で第1搬送路112から図で左方に外れた硬貨は、空隙110dから第1基板110の裏側へ落下する。
【0031】
第1基板110の上部には、硬貨搬送部100を計数部等の上流側のユニットと接続し、上流側のユニットから供給される硬貨を第1搬送路112に受け入れるためのアダプタ113を設けている。上流側のユニットは、第1搬送路112に対し、硬貨を、その両面が第1搬送路112の表側の面に沿う向きを向いた状態で供給するように構成する。この供給は、硬貨を所定の搬送路に転がすことによって行う、上方から落下させることにより行う、何らかの搬送機構に収容して搬送して行うなど、任意の方法で行うことができる。
【0032】
次に、回転体120は、ここでは概ね円盤状の部材であり、回転軸121を中心に回転可能なように、第1基板110上の窪み110aの内部に配置されている。回転体120上には、回転方向に等間隔に5つの硬貨収容部122が形成されている。各硬貨収容部122は、第1搬送路112と同一平面上又は第1搬送路112に対して裏側に向けて若干沈んだ面上に形成され、隣接する硬貨収容部122間は、中心から5方向に延び表側に立ち上がる壁部123により仕切られている。
【0033】
各硬貨収容部122は、硬貨搬送部100が取り扱う最大サイズの硬貨を1枚収容して回転体120の回転方向に搬送可能なサイズに形成されている。ただし、図2からわかるように、窪み110aの周囲は第1搬送路112と連続した同一平面に形成されている。従って、各硬貨収容部122もこれと同一平面上にあれば、硬貨収容部122に収容された硬貨が硬貨収容部122から若干はみだしても、問題なく搬送可能である。
また、回転体120の、隣接する硬貨収容部122の間の外周面には、回転方向に等間隔に5つの凹部124が設けられている。この凹部124は、後述するチェーン140のピン142と噛み合わせるために設けたものである。回転体120の、図2に表れない裏側の構造については、図7を参照しつつ後述する。
【0034】
次に、第2基板130には、チェーン140を収容するため、周囲よりも裏側に向けて窪んだレール131をほぼ全周に亘って設けている。このレール131と後述するスプロケット172~175(図5参照)が、チェーン140が周回する閉経路を規定する。第2基板130は、図で左上側端部では内側でのみチェーン140の位置を規制しているが、この位置にもレール131を設けて両側からチェーン140の位置を規制してもよい。
【0035】
また、後述のようにチェーン140は図2で反時計回りに回転させるが、その周回経路のうち回転体120の下側から落下路165までの部分で、硬貨がチェーン140に沿って搬送される。そして、第2基板130のうちこの部分に、運搬する最大の硬貨の径よりも若干大きい幅で、周囲よりも裏側に向けて窪んだ第2搬送路132が形成されている。レール131は、第2搬送路132の内部に形成されることになる。水平方向に硬貨を搬送する部分では、レール131は第2搬送路132の中央よりもやや下に形成するとよい。
【0036】
チェーン140は、所定の閉経路を周回移動する環状部材であり、複数の駒141を、隣接する駒141間で回転及び若干の伸縮が可能なように連結して構成されている。また、一部の駒141には、チェーン140の周回方向に対して垂直に、かつ第2搬送路132の表側の面(硬貨の背面を支える面)に対しても垂直に、図で手前側に向かって延びるピン142が形成されている。ピン142は、チェーン140の全長に亘って等間隔で形成され、図2に示すように、その間隔は回転体120に形成された隣接する凹部124間の距離と一致する。ピン142は、隣接するピン142間に硬貨を1枚収容し、チェーン140の周回移動に連れて後ろ側から硬貨を押して第2搬送路132に沿って移動させることができる程度のサイズ及び強度で形成する。
【0037】
第2基板130の図で上側には、表側に膨らんだポケット133が形成されている。こ
のポケット133の裏側には、後述するように、落下路162~165から落下した硬貨を種類ごとに貯蔵するための不図示の硬貨貯蔵部が配置される。
また、以上説明してきた第1基板110及び第2基板130上の表側には、概ね第1搬送路112、回転体120及びそれらよりも下側の部分にある第2搬送路132を覆う範囲に、透明板150を設けている(図4参照)。この透明板150により、搬送される硬貨が表側に落下することを防止している。
【0038】
なお、図3及び図4からわかるように、第2搬送路132は重力方向(図3の縦方向)に対して20度程度傾いて形成されているため、第2搬送路132上を搬送される硬貨はその裏面側を第2搬送路132により十分支えられ、大きな振動等がなければ図2の手前側に落下することはない。透明板150は、第2搬送路132よりも角度が浅い第1搬送路112及び回転体120上で搬送される硬貨の落下を防止するためのものである。このため、図2で上側の、落下路162~165付近においては、第2搬送路132の手前側には透明板150を設けていない。
【0039】
また、第2基板130の図で上側には、第2搬送路132に沿って搬送される硬貨をその種類ごとに分離するための硬貨分離部として、支持部材161及び落下路162~165を設けている。これらの各部の構成及び機能の詳細については図9を参照して後述する。
また、図3に示すように、第2基板130の裏側には、チェーン140を駆動するためのモータ170を設けている。モータ170の駆動軸171は、図5に示すようにスプロケット172に接続されている。チェーン140の駆動については、図5及び図6も参照して後述する。
【0040】
次に、図4を参照して、第1搬送路112及び第2搬送路132周辺の部材の位置関係についてさらに説明する。図4は、図2のA-A線に沿う切断部の端面図である。
図2の説明でも述べたが、図4に示す通り、第1基板110上に固定されたプレート111上に、硬貨200を回転体120に向けて搬送するための第1搬送路112が形成される。プレート111の表面側には透明板150が配置される。硬貨200は、仮想線で示す位置でプレート111上を回転体120に向けて転がる。
【0041】
A-A線上では第1基板110はプレート111の上側に硬貨200の半径よりも若干高い位置までしか形成されておらず、その上側には空隙110dが形成されている。
破線A1は、第1搬送路112が形成される面を示す。図2でA-A線より右側では、第1搬送路112は破線A1の位置に形成され、硬貨200は上側から第1搬送路112を転がって下方へ移動する。第1搬送路112から図2で左側に外れた硬貨200は、図4に矢印A3で示すように、空隙110dを経て第1搬送路112(第1基板110)の裏側に落下する。この位置では、第2基板130にも大きな開口が形成されているので、硬貨200は第2基板130にも阻止されることなく第2基板130の裏側に落下する。そして、図1に示したように硬貨搬送部100の下側に配置された金庫22に収容される。
【0042】
一方、第2基板130上にはレール131内に収容されたチェーン140が配置される。ここで、チェーン140に設けられたピン142は、回転体120の凹部124に挿入されて凹部124と噛み合うように設ける。図2の説明で述べたように、回転体120の硬貨収容部122は第1搬送路112と同一平面上にあるので、凹部124の表側端部もこれと同じ位置、すなわち破線A1上に来る。従って、ピン142は、破線A1と交わる位置に設けている。
また、第2基板130上には第2搬送路132も形成され、硬貨収容部122からピン142の間に落とされた硬貨200は、仮想線で示すようにこの第2搬送路132上を搬送される。
【0043】
図2で第2搬送路132が上側に立ち上がる箇所では、第2搬送路132は図4の破線A2の位置に形成される。すなわち、第2搬送路132は、第1搬送路112及び硬貨収容部122の回転面と平行でない平面上に形成されている。このため、硬貨200を下方へ搬送する第1搬送路112と、上方へ搬送する第2搬送路132とを、水平方向から見て重なる位置に設けることができ、両搬送路を同一平面内の異なる位置に設ける場合と比べて省スペース化することができる。
図4で上側に表れる第2基板130とポケット133は、図2で空隙110dの裏側に見える部分である。
【0044】
次に、図5及び図6を用いて、チェーン140及び回転体120の駆動について説明する。
図5及び図6はそれぞれ、チェーン140及び回転体120の駆動に関連する部材の配置を図2及び図3と同じアングルで示す説明図である。
【0045】
図5及び図6はそれぞれ、チェーン140及び回転体120に加え、これらの駆動に関与するモータ170、駆動軸171及びスプロケット172~175の配置を、図2及び図3と同じアングルで、他の部材を取り除いた状態で示す図である。ただし図6では、ピン142の間隔が、仮想線で示す硬貨200の直径よりもやや長い程度であることを分かりやすくするため、図で奥側(図2の左側)に見えるピンの図示は省略している。
【0046】
図5に示すように、チェーン140は駒141が概ね第2基板130の四隅に設けられた4つのスプロケット172~175に張架されている。スプロケット172~175は、第2基板130の裏側に設けられているため、図2には表れていない。
スプロケット172~175のうちスプロケット172のみが、モータ170の駆動軸171に固定されて駆動力を与えられる駆動スプロケットであり、残りの3つはチェーン140の回転に連れて回転する従動スプロケットである。
【0047】
また、回転体120は、ピン142が凹部124に挿入された状態でチェーン140が反時計回りに回転することにより、左から右へ移動するピン142から駆動力を与えられて、回転軸121を中心に反時計回りに従動回転する。隣り合う凹部124の間隔と隣り合うピン142の間隔とは一致しているので、チェーン140の回転に伴い、順次ピン142が凹部124に挿入され、回転体120に反時計回りの駆動力を与えることになる。
【0048】
ここで、図6に示すように、回転体120(の硬貨収容部122)とチェーン140とは、異なる平面上に形成されている。破線A1は、図4の場合と同じく、第1搬送路112がある面の位置を示す。しかし、凹部124の深さをピン142の直径よりも大きくしておけば、凹部124において回転体120がピン142の軸に対して垂直になっていなくても、問題なく凹部124内にピン142を挿入することができる。また、凹部124へのピン142の挿入をスムーズにするため、凹部124の幅を、ピン142の直径よりも若干大きく形成してもよい。
【0049】
これらのようにサイズに余裕を持たせると、凹部124とピン142との間に遊びができ、噛み合いが厳密でなくなる。しかし、回転体120は、硬貨収容部122に収容された硬貨が回転体120の回転に伴って下側まで搬送されてきた時に隣り合うピン142の間に落下する程度に、ピン142の移動と同期して回転させることができれば足りる。従って、遊びにより局所的にピン142の移動速度と回転体120の回転速度との間にズレが生じても、特に問題はない。
【0050】
また、回転体120は、基本的に上から下に向けて硬貨を搬送するように構成されており、最後にピン142の間に硬貨を移動させる際にも、硬貨収容部122から落下させることにより移動させる。従って、硬貨をホッパから掬い上げて上方へ搬送する場合に比べると、回転体120の回転に要する力は小さくて済む。このことも、凹部124とピン142とを強固に結合する必要がなく、上記の遊びを許容し得る理由の1つである。
【0051】
スプロケット172~175は、ズレなくチェーン140と噛み合うため、チェーン140の移動経路と同一平面上に配置することが好ましい。しかし、凹部124とピン142の間には遊びを許容しているので、回転体120とチェーン140との配置面が異なっていても、これらの間でピン142を介して動力を伝達することができ、図4を用いて説明したような第1搬送路112と第2搬送路132の配置を実現できる。
【0052】
次に、図7及び図8を用いて、第1搬送路112上において回転体120へ向かう硬貨の移動を阻止する阻止部材であるピン185と、その阻止を解除する解除機構について説明する。
図7は、ピン185を駆動する機構の一部を示す部分分解斜視図、図8は、回転体120のカム125により駆動される、ピン185を備えた支持部材180の構成を示す分解斜視図である。
【0053】
図7には、回転体120及び第1基板110の裏側の構成が表れている。図7に示すように、回転体120の裏面には、各硬貨収容部122と対応するカム125が設けられている。シャフト126とブッシュ127は、回転体120を第1基板110に対して回転可能に搭載するための部品である。
一方、第1基板110の裏面には、回転体120を収容するための窪み110aの中に、カム125を収容するための溝部115が設けられている。
【0054】
また、第1基板110の裏側には、図8に示すようにピン185を支持する支持部材180も配置されている。なお、図8では支持部材180を表側(ピン185の先端側)から見た状態を示しており、図7とは視点が反対側になっている。
図7及び図8に示すように、支持部材180はアーム181及びアーム182を備えている。アーム181は、第1基板110に設けられたスリット116に挿入され、バネ支持部117内に配置されたバネにより、第1基板110の裏面に向けて付勢されている。また、アーム181は回転体120のカム125の移動経路上に配置されている。アーム182は、その先端部が、第1基板110の裏面に固定された軸190により、軸190を中心に回動可能なように支持されている。この支持部は図7では省略されている。
【0055】
また、支持部材180には、4つの透孔184が設けられ、ピン185が各透孔184を通して突き出し、バネ186により裏面側から表面側に向けて付勢されるように、カバー187とネジ188を用いて固定されている。このピン185が、図2に示した透孔110eから第1基板110の表面側に突き出し、第1搬送路112上を転がる硬貨の進行を阻止する阻止部材として機能する。
【0056】
以上のように構成された支持部材180は、カム125の凸部がアーム181に突き当たるタイミングでは、アーム181がカム125により裏側に押されて軸190を中心に裏側(第1基板110の裏面から離れる側)へ回転し、これに伴ってピン185が第1基板110の表面から引っ込んで、硬貨の進行阻止が解除される。これらの各部は阻止部材による硬貨の進行阻止を解除する解除機構として機能する。
【0057】
また、カム125の凹部がアーム181に対向するタイミングでは、アーム181はバネ支持部117内のバネの付勢力により第1基板110の裏面に押し当てられ、この状態ではピン185が第1基板110の表面に突き出す。
カム125の凸部は、各硬貨収容部122と対応して5つ設けられている。このことにより、解除機構は、回転体120が硬貨収容部122の1つ分回転する毎に、硬貨収容部122の1つ分回転する時間より短い時間だけ、ピン185による硬貨の進行阻止を解除する。
【0058】
次に、以上の阻止部材及び解除機構の動作について説明する。
ピン185により第1搬送路112上の硬貨の進行が阻止されている状態で、ピン185を引っ込めて阻止を解除すると、硬貨は第1搬送路112を回転体120に向けて転がり始める。ピン185が引っ込んでいる時間が短いと、硬貨が進行方向に2列あるピン185の全てを通過する前に、ピン185が再度突き出すことになる。この場合、硬貨はピン185と透明板150との間に挟まって停止し、進行を阻止されることになる。このときには、ピン185はバネ186の付勢力に抗して適当な長さだけ後退する。
ピン185が引っ込んでいる時間が短くても、何度か解除と阻止を繰り返せば、硬貨は2列のピン185の位置を通過して、回転体120の硬貨収容部122に収容される。
【0059】
一方、ピン185が引っ込んでいる時間が短いと、硬貨が1枚通過してから次の硬貨が通過するまでに、確実にピン185を突き出し、次の硬貨の進行を阻止することができる。また、硬貨は丸いため、高さ方向の中央付近以外では前の硬貨と後ろの硬貨との間に隙間ができる。従って、ピン185と透明板150との間に挟まっている硬貨に対して後ろから次の硬貨が勢いよく突き当り、挟まっている硬貨を押し出すような場合でも、前の硬貨が押し出された瞬間に、バネ186の付勢力によりピン185が突き出し、次の硬貨の進行を阻止することができる。
【0060】
ここでは、ピン185を硬貨の進行方向に2列に設けているので、よりこのような阻止の確実性を高めることができる。また、ピン185を上下方向にも2行設け、硬貨を2本のピンで支えるようにしているため、挟まっている硬貨が押し出されること自体、起こりにくい。
回転体120に接する部分に複数の硬貨が溜まると詰まりの原因となるため、このように、硬貨が2枚続けて回転体120に接する部分に到達しないようにすることが重要である。逆に、回転体120が硬貨収容部122の1つ分回転する毎に、確実に次の硬貨が回転体120に接する部分まで移動していることは、必須ではない。
【0061】
以上のような阻止部材及び解除機構は、回転体120の回転に伴って回転体120から与えられる動力によって動作するので、これらを動作させるための独立の駆動源を設ける必要がない。従って、少ない部品点数で設けることができる。
【0062】
次に、図9及び図10を用いて、以上説明してきた硬貨搬送部100における硬貨の搬送経路及び搬送手順について説明する。図9及び図10は、その搬送経路の説明図である。図9及び図10では、搬送経路中の様々な位置にある硬貨200を仮想線で示し、その搬送方向を矢印で示している。
【0063】
硬貨搬送部100が搬送すべき硬貨200は、アダプタ113に接続された上流側のユニットから、まず矢印R1に示すように第1搬送路112に対して供給される。この供給は、鉛直方向よりも若干図で右向きに、第1搬送路112の上部右側面に突き当たるように供給されることが好ましい。このように供給された硬貨200は、矢印R2及びR3で示すように、ピン185に突き当たる位置まで第1搬送路112上を転がって移動し、そこで進行を阻止されて停止する。ここまでの硬貨200の移動は全て重力に従ったもので、その他の外力を加える必要はない。
【0064】
そして、上述の解除機構によりピン185による阻止が解除されると、硬貨200は矢印R4で示すように回転体120に接する位置まで転がる。そして、壁部123に接触しつつ、回転体120の回転に伴い反時計回りに上昇してくる硬貨収容部122の中に落下する形で、矢印R5に示すように硬貨収容部122に収容される。
第1搬送路112を移動する硬貨は、硬貨収容部122へ収容可能な向きを向いた状態で硬貨収容部122の近傍まで移動してくることになるので、硬貨収容部122への収容も、特段の機構なしに、重力に従って行うことができる。
その後、硬貨200は矢印R6に示すように硬貨収容部122に収容された状態で回転体120の回転に伴い搬送される。
【0065】
その後、硬貨収容部122が下向きになると、矢印R7で示すように硬貨200はチェーン140の隣接するピン142の間に落下し、ここに収容される。隣接するピン142は硬貨収容部122の両側にある凹部124にそれぞれ挿入されているため、硬貨収容部122が下を向くときには、硬貨200が落ちる先は必ず隣接するピン142の間となる。
なおこのとき、硬貨が落ちる先の、第2搬送路132の下側に開閉機構を設け、硬貨と判定されなかったものや、落下路162~165を経た硬貨貯蔵部への貯蔵の対象としない硬貨(例えば1円玉や5円玉)を、第2搬送路132に沿って搬送せずに落下させ、金庫22に収容するようにしてもよい。当該開閉機構の近傍に硬貨を識別するためのセンサを設け、貯蔵の対象となる硬貨以外のものを検出した場合に、開閉機構を開いてそのものを第2搬送路132外に落下させることが考えられる。
【0066】
いずれにせよ、ピン142の間に収容された硬貨200は、チェーン140の回転移動に伴い、後ろ側のピン142により後ろ側から押されながら、第2搬送路132上を、初めは矢印R8のように水平に、次いで矢印R9、R10のように上方に移動していく。上方へ移動する際には、下側のピン142により、落下しないように支えられる。
【0067】
次に、硬貨200は、第2基板130の上側の、左に向けて緩やかに登っていく部分に達し、この部分を搬送される間に、硬貨のサイズに応じた落下路162~165に落下し、種類ごとに分別される。
この部分では、硬貨200はその上側背面を支持部材161により支えられながら進行するが、支持部材161は徐々に高い位置に配置され、径の小さい硬貨ほど先に支えを失って、その上側が図で奥側に、その下側が図で手前側に傾いて、第2搬送路132からその径に応じた落下路162~165へ、矢印R11~R14で示すように落下する。その落下した硬貨は、ポケット133の裏側に硬貨の種類ごとに設けられた硬貨貯蔵部(ストッカ)に、釣銭や両替時の払出用に貯蔵される。
【0068】
また、図10に示すように、硬貨200が硬貨搬送部100に対して短時間に多数供給された場合など、硬貨200が第1搬送路112上にその上端付近まで積みあがった場合を考える。この状態でさらに硬貨200bが供給されると、硬貨200bはそれまでに積みあがった上端の硬貨200aにより、図で左側に弾かれ、空隙110dを通して図4に矢印A3で示したように落下し、金庫22に収容される。このことにより、特段の機構部を設けず、重力を利用して、搬送が追い付かない硬貨を第1搬送路112から取り除いて金庫22に収容することができる。
【0069】
以上により、硬貨搬送部100は、運賃箱10が受け入れた硬貨を、第1搬送路112よりも高い位置にある硬貨貯蔵部へ搬送し、種類ごとに貯蔵させることができる。高い位置に硬貨貯蔵部を設けると、硬貨払出口16への払出時に重力を利用して硬貨を移送することができ、運搬に動力を必要とする場合に比べて機構部の部品点数を削減することができる。
【0070】
また、必ずしも上方への移送を必要としない場合でも、硬貨受け入れ時の搬送路(第1搬送路112)と異なる面上へ硬貨を搬送する搬送路(第2搬送路132)を、自由度高く、少ない部品点数で構成することができる。特に、以上説明した硬貨搬送部100の駆動に必要な駆動源はモータ170の1つのみであり、これを回転体120と同軸に配置する必要もない。このことによっても、設計の自由度を向上させることができる。ここではスプロケット172を駆動スプロケットとしたが、他のスプロケットを駆動スプロケットとしてもよい。
【0071】
以上で実施形態の説明を終了するが、この発明において、装置の具体的な構成、具体的な動作の手順、部品の具体的な形状や材質、配置等は、実施形態で説明したものに限るものではない。
例えば、上述した実施形態においては回転体120が概ね円盤状である例について説明したが、これに限られることはなく、円柱状など、他の形状であってもよい。
【0072】
また、上述した実施形態で説明したチェーン140は、複数の駒141を接続したものではなく、全体が一様な構成のベルトのような環状部材でもよい。材質や形状にも特に制約はない。張架にも、スプロケットでなくローラー等の他の部材を用いてもよい。ピン142も、硬貨200を後ろ側から押して搬送できる程度の強度を有する突起部であれば、形状や材質に特段の制約はない。柱状だけでなく、板状、錘状、鉤状など、任意である。環状部材と一体として環状部材と同じ材質で等間隔に突起部を形成したような部材を用いることも考えられる。回転体の凹部は、これらの突起部を挿入可能な形状及びサイズで形成すればよい。
【0073】
また、第1搬送路112のように硬貨を転がして回転体120へ向けて移動させる搬送路を設けることは必須ではない。例えば、回転体120の上方にホッパを設け、ばらばらに貯留されている硬貨を1枚ずつ硬貨収容部122に向けて落下させることにより硬貨収容部122に硬貨を収容させるような構成も採用可能である。
また、硬貨収容部122が下を向いた状態でピン142の間に硬貨を落下させることも必須ではなく、硬貨収容部122が横を向いた状態で硬貨をピン142の間に転がり出させる構成も採用し得る。
【0074】
また、硬貨搬送部100を用いて構成する装置は運賃箱10に限られない。以上説明した実施形態の硬貨搬送部100は、遊技機や自動販売機などをはじめとする、硬貨を取り扱う装置全般に用いることができる。
また、硬貨搬送部100と同様な搬送装置により、硬貨以外のものを搬送することも可能である。日本で用いられる硬貨と同様な円盤状の物であれば硬貨と同様に搬送可能であるし、搬送対象物のサイズが硬貨と異なる場合には、そのサイズに合わせて搬送装置を構成すればよい。また、搬送対象物を転がさない搬送路を採用すれば、円盤状に限られない、平板状はもちろんそれ以外の形状の物についても、回転体に当該物を収容する収容部を形成可能であり、かつその物を環状部材に設けた突起部間に収容可能であれば、同様に搬送可能である。
【0075】
また、以上説明してきた実施形態、実施例及び変形例の構成が、相互に矛盾しない限り任意に組み合わせて実施可能であり、また、一部のみを取り出して実施することができることは、勿論である。
【符号の説明】
【0076】
10…運賃箱、11…筐体、12…一括投入口、13…カードリーダライタ、14…硬貨投入口、15…紙幣投入口、16…硬貨払出口、17…ディスプレイ、18…タッチパネル、19…窓部、20…プリンタ、21…固定具、22…金庫、30…読取部、100…硬貨搬送部、110…第1基板、110a…窪み、110b,110c…段差部、110d…空隙、110e…透孔、111…プレート、112…第1搬送路、113…アダプタ、115…溝部、116…スリット、117…バネ支持部、120…回転体、121…回転軸、122…硬貨収容部、123…壁部、124…凹部、125…カム、126…シャフト、127…ブッシュ、130…第2基板、131…レール、132…第2搬送路、133…ポケット、140…チェーン、141…駒、142…ピン、150…透明板、161…支持部材、162~165…落下路、170…モータ、171…駆動軸、172~175…スプロケット、180…支持部材、181,182…アーム、184…透孔、185…ピン、186…バネ、187…カバー、188…ネジ、191,192…脚、200…硬貨、A1…第1搬送路の位置を示す破線、A2…第2搬送路の位置を示す破線、A3…硬貨の落下経路を示す矢印、R1~R14…硬貨の搬送経路を示す矢印
【要約】
【課題】部品点数の増加を抑えつつ、硬貨搬送装置の設計の自由度を向上させる。
【解決手段】 それぞれ硬貨1枚を収容する硬貨収容部122が回転方向に等間隔に複数箇所設けられ、隣接する硬貨収容部122の間の外周面に、等間隔に凹部124が設けられた回転体120と、駆動源によって所定の閉経路上を周回移動するように駆動され、ピン142を等間隔に複数備えるチェーン140とを設け、回転体120が、チェーン140の周回移動に伴って凹部124に順次挿入されるピン142により回転駆動され、回転体120の回転に伴って、回転体120の近傍に位置する硬貨を硬貨収容部122に1枚ずつ収容し、その収容された硬貨を搬送してチェーン140の隣接するピン142間の各間隙に1枚ずつ供給し、チェーン140が、その周回移動に伴って、ピン142間に収容した硬貨を上記閉経路に沿って搬送するようにした。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10