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特許7104449二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症の予防または治療用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症の予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4152 20060101AFI20220713BHJP
   A61K 31/404 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220713BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20220713BHJP
【FI】
A61K31/4152
A61K31/404
A61P31/14
A23L33/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021512905
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 KR2020014348
(87)【国際公開番号】W WO2021235616
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2021-03-17
(31)【優先権主張番号】10-2020-0060160
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0091814
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0113852
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521090896
【氏名又は名称】シンテカバイオ インコーポレイティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】特許業務法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン、チョンスン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、チョンホイ
(72)【発明者】
【氏名】キム、トンミュン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ポンファン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ、ヨンペ
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ヒョンジュン
(72)【発明者】
【氏名】イ、インチョル
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジヨン
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/213365(WO,A1)
【文献】特開2013-256525(JP,A)
【文献】特表2010-519261(JP,A)
【文献】特表2006-527185(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0001260(KR,A)
【文献】国際公開第2014/052836(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2006/0257852(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1913789(KR,B1)
【文献】TON, Anh-Tien et al.,Rapid Identification of Potential Inhibitors of SARS-CoV-2 Main Protease by Deep Docking of 1.3 Bill,Molecular Informatics,2020年03月,Vol.39, 2000028,p.1-7
【文献】Nature,2020年06月11日,Vol.582,pp.289-293
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A23L 33/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩;及び式(2)で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症の予防または治療用薬学的組成物。
【化1】
(1)
【化2】
(2)
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩と、前記式(2)で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を、同時に、個別に、または順次的に併用して投与することを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症は、呼吸器疾患であることを特徴とする、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症は、前記コロナウイルス感染後2日~14日の潜伏期を経て、症状が見られることを特徴とする、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症は、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染で高熱、咳、息切れ、肺炎、下痢、腎不全、腎機能障害、敗血症ショックからなる群から選択されるいずれか一つ以上の症状を示すことを特徴とする、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
式(1)で表される化合物、またはその食品学的に許容可能な塩;及び式(2)で表される化合物、またはその食品学的に許容可能な塩を含む、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症の予防または改善用食品組成物。
【化3】
(1)
【化4】
(2)
【請求項7】
式(1)で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩;及び式(2)で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、抗二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス組成物。
【化5】
(1)
【化6】
(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染または二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染が原因で誘発される疾患の予防または治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(COVID-19、SARS-CoV-2、2019-nCoV)は、2019年12月、中国武漢で最初に発生してから、中国と全世界へ拡散された。そこで世界保健機関(WHO)は、COVID-19に対し、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)を宣言し、2020年3月11日にCOVID-19を、香港インフルエンザ(1968)、新型インフルエンザ(2009)に次いで、世界的大流行(pendemic)を宣言した。COVID-19は、感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つばなど)が呼吸器や目、鼻、口の粘膜に付着して感染する。感染すると、2~14日(推定)の潜伏期間を経て、発熱と咳や呼吸困難などの呼吸器症状、肺炎などが主な症状として見られているが、無症状の感染例も稀に出てきている。
コロナウイルスは、RNAの複製及び逆転写酵素(RdRp)の塩基配列の差異によりα、β、γ、およびδ群に分類される。COVID-19ウイルスは、SARS- CoV及びMERS- CoVウイルスと共にβ群に属するヒトに感染するウイルスであって(Subunit Vaccines Against Emerging Pathogenic Human Coronaviruses.Wang N、Shang J、Jiang S、Du L. Front Microbiol .2020 Feb 28;11:298.)、COVID-19の塩基配列は、SARS- CoV、MERS- CoVに対して、それぞれ80%、50%一致する(Wu C.et al.Analysis of therapeutic targets for SARS-CoV-2 and discovery of potential drugs by computational methods.2020 Feb Acta Pharmaceutica Sinica B)。
コロナウイルスは、長さが26~32kbのプラス鎖の一本鎖RNAウイルスであって、宿主細胞の受容体を介して宿主に入ると、2つの巨大なポリタンパク質;pp1a(486kDa)、pp1ab(790kDa)を作り、これよりウイルスの自己タンパク質分解酵素;3CLプロテアーゼ(3CLpro、またはMproとも呼ばれる。)を利用して、ウイルスの転写(transcription)と複製(replication)に必要な酵素;RdRp、Helicase、ribonucleoclease及び3CLproなどを含む16個の非構造タンパク質を産生する(Autoprocessing mechanism of severe acute respiratory syndrome coronavirus 3C-like protease(SARS- CoV 3CLpro)from its polyproteins。Muramatsu T、Kim YT、Nishii W、Terada T、Shirouzu M、Yokoyama S.FEBS J.2013 May;280(9):2002-13.doi:10.1111)。
3CLproは、分子量34kDaのタンパク質であって(アミノ酸306個)の初期存在量は、pp1a、pp1abにより自ずと切り出されてくる(autoprocessing)ものと報告されている(Autoprocessing mechanism of severe acute respiratory syndrome coronavirus 3C-like protease(SARS- CoV 3CLpro)from its polyproteins。Muramatsu T、Kim YT、Nishii W、Terada T、Shirouzu M、Yokoyama S.FEBS J.2013 May;280(9):2002-13.doi:10.1111)。3CLproは、ドメインI、II、IIIからなる二量体(dimer)構造であり、ドメインI、IIの間の溝(cleft)に活性部位(基質結合部位)が位置する。活性部位は、コロナウイルス間でアミノ酸配列及び3次元構造がよく保存されている(SARS- CoVと構造的に96%一致)。最近、中国のJin Z.、グループからCOVID-19 3CLproの構造(Protein Data Bank ID 6LU7)が報告されたが、12個のコロナウイルス3CLpro間において構造の違いが見られる部位は、ドメインIIIと表面ループ(surface loops)であり、活性部位は高く保存されていた(Structure of Mpro from COVID-19 virus and discovery of its inhibitors.Jin Z、Du X、Xu Y、Deng Y、Liu M、Zhao Y、Zhang B、Li X、Zhang L、Peng C、Duan Y、Yu J、Wang L、Yang K、Liu F、Jiang R、Yang X、You T、Liu X、Yang X、Bai F、Liu H、Liu X、Guddat LW、Xu W、Xiao G、Qin C、Shi Z、Jiang H、Rao Z、Yang H.Nature.2020 Apr 9 doi:10.1038/s41586-020-2223-y)。
前記のように3CLproのアミノ酸配列と構造がコロナウイルス間において変化が少なく、何よりも3CLproの機能がウイルス増殖において必要不可欠であるため、3CLproはコロナウイルス治療剤における重要な標的の一つである。現在COVID-19の治療剤として開発中のLopinavir(phase 3:NCT04252274、NCT04251871、NCT04255017、ChiCTR2000029539)、Ritonavir(phase 3:NCT04251871、NCT04255017、NCT04261270)、Darunavir(phase 3:NCT04252274)などが、いずれも3CLproを標的としており、これらの薬物は、本来ヒト免疫不全ウイルス(HIV:Human Immunodeficiency Virus)のタンパク質分解酵素阻害剤としてFDAの承認を受けた(Therapeutic options for the 2019 novel coronavirus(2019-nCoV)Li G、De Clercq E.Nat Rev Drug Discov.2020 Mar;19 (3):149-150.doi:10.1038)。
コロナウイルス感染症の改善または治療用薬学組成物に関する技術としては、韓国登録特許第1913789号においてコロナウイルス感染による疾患治療用化合物が開示されており、米国公開特許第2006-0257852号において重症急性呼吸器症候群コロナウイルスに関する技術が開示されているが、本発明のコロナウイルス3CLプロテアーゼの活性阻害剤を有効成分として含むコロナウイルス感染症の予防または治療用組成物についての開示はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の一目的は、化学式1で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症の予防または治療用薬学的組成物を提供するものである。
本発明のもう一つの目的は、化学式2で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症の予防または治療用薬学的組成物を提供するものである。
本発明のもう一つの目的は、化学式1で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩及び化学式2で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症の予防または治療用薬学的組成物を提供するものである。
本発明のもう一つの目的は、化学式1で表される化合物、またはその食品学的に許容可能な塩を含む二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症の予防または改善用食品組成物を提供するものである。
本発明のもう一つの目的は、化学式2で表される化合物、またはその食品学的に許容可能な塩を含む二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症の予防または改善用食品組成物を提供するものである。
本発明のもう一つの目的は、化学式1で表される化合物、またはその食品学的に許容可能な塩及び化学式2で表される化合物、またはその食品学的に許容可能な塩を含む二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症の予防または改善用食品組成物を提供するものである。
本発明のもう一つの目的は、治療学的に有効な量の化学式1で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を、これを必要とする対象体に投与する段階;を含む二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症の治療方法を提供するものである。
本発明のもう一つの目的は、治療学的に有効な量の化学式2で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を、これを必要とする対象体に投与する段階;を含む二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症の治療方法を提供するものである。
本発明のもう一つの目的は、治療学的に有効な量の化学式1で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩と、化学式2で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩とを、これを必要とする対象体に投与する段階;を含む二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症の治療方法を提供するものである。
本発明のもう一つの目的は、化学式1で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む抗二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス組成物を提供するものである。
本発明のもう一つの目的は、化学式2で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む抗二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス組成物を提供するものである。
本発明のもう一つの目的は、化学式1で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩及び化学式2で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む抗二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス組成物を提供するものである。
本発明のもう一つの目的は、化学式1で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を含む3CLプロテアーゼの活性阻害剤を提供するものである。
本発明のもう一つの目的は、化学式2で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を含む3CLプロテアーゼの活性阻害剤を提供するものである。
本発明のもう一つの目的は、化学式1で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩及び化学式2で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を含む3CLプロテアーゼの活性阻害剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症の予防または治療効果がある化合物を見出し、この二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルスの抑制効果を確認することにより、本発明を完成した。
本発明の一側面において、本発明は、次の化学式1で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
[化1]
前記化学式1で表される化合物は、ザフィルルカスト(Zafirlukast)であって、IUPAC名称はシクロペンチル3-{2-メトキシ-4- [(o-トリルスルホニル)カルバモイル]ベンジル}-1-メチル-1H-インドール-5-イルカルバメート(Cyclopentyl 3{2-methoxy-4-[(o-tolylsulfonyl)carbamoyl] benzyl}-1-methyl-1H-indol-5-ylcarbamate)である。
本発明において、前記化学式1で表される化合物は、3CLプロテアーゼ活性を阻害することができる。これにより、前記化学式1の化合物は、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルスに既に感染した宿主細胞(個体)内でウイルスの増殖を抑制することに活用することができる。
本発明の他の一側面において、本発明は、次の化学式2で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
[化2]

前記化学式2で表される化合物は、スルピンフィラゾン(Sulfinpyrazone)であって、IUPAC名称は、1,2-ジフェニル-4-[2-(フェニルスルフィニル)エチル]ピラゾリジン-3,5-ジオン(1,2-diphenyl-4-[2-(phenylsulfinyl)ethyl]pyrazolidine-3,5-dione)である。前記スルピンフィラゾンは、一般に血小板凝集抑制剤の用途として知られており、3CLプロテアーゼ活性を阻害する効果や抗COVID-19に対する効果について開示されたところがない。
本発明において、前記化学式2で表される化合物は、3CLプロテアーゼ活性を阻害することができ、前記化学式2の化合物は、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルスに既に感染した宿主細胞(個体)内でウイルスの増殖を抑制することに活用することができる。
本発明の他の一側面において、本発明は、下記化学式1で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩;及び次の化学式2で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩;を有効成分として含む二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
[化1]

;及び
[化2]

本発明において、前記化学式1及び2で表される化合物を含む併用薬学的組成物は、3CLプロテアーゼ活性を阻害することができる。前記化学式1および2の化合物は、これらの組み合わせによる相乗効果を有し、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルスに既に感染した宿主細胞(個体)内でウイルスの増殖を抑制することに活用することができる。
本発明において、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩と、前記化学式2で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、1:99ないし99:1の重量比で混合することができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
また、本発明において、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩と、前記化学式2で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、同時に、個別に、または順次的に併用して投与することができ、単独または多重投与されることができる。前記した要素をすべて考慮して副作用なしに最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは当業者によって容易に決定することができる。
具体的には、本発明の前記化学式1における化合物を含む組成物、化学式2を含む組成物または化学式1および2における化合物を含む組成物は、個体が二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染後、ウイルスが個体内で増殖するために関連タンパク質をプロセッシングするタンパク質分節化の段階を阻害することができる。これは、ウイルス感染の最初の段階を阻害する活性とは差別化され、特にウイルスの宿主細胞(個体)感染のためのバインディング(ウイルスentry)を阻害する機序とは異なる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本出願で使用した用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに別の意味を有さない限り、複数の表現を含む。本出願における「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、段階、構造またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構造又はこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
特に断りがない限り、技術的または科学的な用語を含んでここで使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。一般に使用される辞典に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、本出願で特に断りがない限り、理想的または過度に形式的な意味に解釈されない。
本発明において、抗二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルスは、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症、すなわち、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染またはこれにより誘発された疾患の予防、治療または改善を意味することができる。また、抗二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルスは、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルスの対象体内の増殖の抑制、死滅などを含んでウイルスの活性を減少させる全ての行為を含むものと解釈することができる。
本明細書において、前記「予防」とは、前記の薬学的組成物の投与により二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルスの感染または二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染が原因で誘発される疾患を抑制または遅延させる全ての行為を意味する。また、前記「治療」とは、前記薬学的組成物の投与により二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルスの感染または二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染が原因で誘発される疾患の症状が好転したり、有利に変更するすべての行為を意味する。
二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染による疾患は、呼吸器疾患であることができる。前記二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症は、例えば、ウイルス感染後2日~14日の潜伏期を経て、症状が見られる。これらの症状は、例えば、高熱、咳、息切れ、肺炎、下痢のような胃-腸管の症状、器官機能不全(腎不全、腎機能障害など)、敗血症ショック、ひどい場合、死亡を含み、前記ウイルス感染によって引き起こされる症状であれば、どんなものでも含まれる。
本発明の前記化学式1で表される化合物または前記化学式2で表される化合物は、その薬学的に許容可能な塩だけでなく、通常の方法によって製造することができる、異性体、水和物、および溶媒和物を全部含む。
本発明において、薬学的に許容可能な塩は、医薬業界で通常に使用される塩を意味し、例えば、カルシウム、カリウム、ソジウム、およびマグネシウムなどで製造された無機イオン塩、塩酸、硝酸、リン酸、臭素酸、ヨウ素酸、過塩素酸、および硫酸などで製造された無機酸塩;酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、シュウ酸、安息香酸、酒石酸、フマル酸、マンデル酸、プロピオン酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、ガラクツロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グルクロン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、カルボン酸、バニリン酸、ハイドロヨウ素酸などで製造された有機酸塩;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、およびナフタレンスルホン酸などで製造されたスルホン酸塩;グリシン、アルギニン、リジンなどで製造されたアミノ酸塩;及びトリメチルアミン、トリエチルアミン、アンモニア、ピリジン、ピコリンなどで製造されたアミン塩などがあるが、挙げられたこれらの塩により、本発明で意味する塩の種類が限定されるものではない。
前記薬学的に許容可能な塩は、食品学的に許容可能な塩も相応して適用されることができる。
本発明の薬学的組成物は、薬効を増加させることはないが、薬学的組成物に通常使用され、香り、味、視覚などを向上させることができる成分をさらに含むことができる。また、本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容可能な添加剤をさらに含むことができる。薬学的に許容可能な添加剤は、例えば、デンプン、ゼラチン化デンプン、微結晶セルロース、乳糖、ポビドン、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸水素カルシウム、ラクトース、マンニトール、飴、アラビアゴム、アルファ化デンプン、とうもろこし澱粉、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、オパドライ、デンプングリコール酸ナトリウム、カルバナワックス、合成ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、白糖、デキストロース、ソルビトール、およびタルクなどがあるが、これらに限定されない。加えて、前記薬学的組成物は、単独使用または既存に使用された抗二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス活性を有する物質を含むことができる。
本発明の前記薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体を含み、経口または非経口の人体または獣医用として剤形化することができる。本発明の薬学的組成物を製剤化する場合、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤及び界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用することができる。経口投与のための固形製剤としては、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、およびカプセル剤などが含まれ、これらの固形製剤は、本発明の化合物を含む薬学的組成物に少なくとも一種以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム(Calcium carbonate)、スクロース(Sucrose)またはラクトース(Lactose)とゼラチンなどを混ぜて調製することができる。また、単純な賦形剤以外にマグネシウム、ストレート、タルクのような潤滑剤を使用することができる。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤およびシロップ剤などが該当するが、よく使用される単純希釈剤である水及びリキッドパラフィン以外にさまざまな賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、および保存剤などが含まれることができる。非経口投与のための製剤としては、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤及び坐剤が含まれる。非水性溶剤及び懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(Propylene glycol)、ポリエチレングリコール、およびオリーブオイルのような植物油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用されることができる。坐剤の基剤としては、ウィテプソル(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用されることができる。
本発明の「水和物」は、前記化学式1で表される化合物または前記化学式2で表される化合物が、水が非共有的に分子間力で結合されているものであって、化学量論的または非化学量論的な量の水を含むものであることができる。
具体的には、前記水和物は、活性成分1モルを基準に水を約0.25モルないし約10モル比で含むことができ、より具体的には、約0.5モル、約1.5モル、約2モル、約2.5モル、約3モルなどを含むことができ、これらに限定されるものではない。
本発明の「溶媒和物」は、前記化学式1で表される化合物または前記化学式2で表される化合物が、水でない溶媒が分子間力で結合されているものであって、化学量論的または非化学量論的な量の水を含むことができるものである。具体的には、前記水和物は、活性成分1モルを基準に水を約0.25モルないし約10モル比で含むことができ、より具体的には、約0.5モル、約1.5モル、約2モル、約2.5モル、約3モル、約5モル等を含むことができ、これらに限定されるものではない。
本発明の薬学的組成物は、目的とする方法によって経口投与したり、非経口投与することができ、非経口投与時の皮膚外用または腹腔内注射、直腸内注射、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射または胸部内注射などの注入方式を選択することが好ましい。
また、本発明に係る薬学的組成物は、吸入によって投与することができる。肺に直接薬物を伝達しながらも、毒性を示さずに少ない容量でもより長い作用持続時間を示すことができる。吸入用投与は、薬物を含有する呼吸可能な粒子または液滴を含み、気道、鼻腔などを介して吸入可能な薬学製剤を用いた投与であることができる。このような吸入用投与においては、これらに限定されるものではないが、例えば、乾燥粉末吸入器装置(DPI)または圧縮計量容量吸入器(pressurized metered dose inhaler、pMDI)のいずれかを使用することができる。薬物粒子は、例えば、伝達装置(乾燥粉末吸入器)の内部に含有された脆性の(frangible)マトリックス内に軽く(lightly)圧縮される。動作時、伝達装置はマトリックスから薬物粒子の一部を擦りむき(abrades)、気道に薬物粒子を伝達する吸気呼吸内にこれらを分散させる。代替として薬物粒子は、伝達装置(乾燥粉末吸入器)内の保存場所の内部に含有される自由流動性(free flowing)粉末であることができる。保管場所は、装置内部の一体式チャンバー、またはカプセル、ブリスターや動作の前に装置の内部に挿入される同様の性能の保管場所であることができる。動作時の装置は、保管場所から薬物粒子の一部を分散させ、気道に薬物粒子を伝達する吸入呼吸内にこれらを分散させる。
本発明の前記薬学的組成物は、個体に投与して、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染または二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルスが原因で誘発される疾患を予防または治療することができる。本発明で使用される用語、「個体」または「対象体」は、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染または二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルスが原因で誘発される疾患を有しており、本発明の前記薬学的組成物を投与し、症状が好転され得る疾患を有するヒトを含む馬、羊、豚、ヤギ、犬などの哺乳動物を意味するが、好ましくは、ヒトを意味する。
本発明で使用される用語、「投与」は、何らかの適切な方法で個体に、本発明の薬学的組成物を導入することを意味する。投与経路は、目的組織に到達することができる限り、どんな一般的な経路を通じて経口または非経口投与することができる。また、本発明の薬学的組成物が標的細胞に移動することができるようにする任意の装置によって投与することができる。
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明で使用される用語、薬学的に有効な量は、医学的治療に適用可能な合理的な恩恵/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効容量レベルは、患者の体重、性別、年齢、健康状態、重症度、薬物の活性、薬物に対する感度、投与時間、投与経路、および排出速度、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素およびその他の医学分野でよく知られている要素によって決定されることができる。本発明の薬学的組成物は、個別治療剤として投与するか、他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは、順次的または同時に投与することができる。単独または多重投与されることができる。前記要素の全部を考慮して副作用なしに最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、当業者によって容易に決定されることができる。
例えば、本発明に係る薬学的組成物において、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を0.0001~500mg/kgで、好ましくは0.001~100mg/kgの用量で投与することができ、前記投与は、一日に一回または数回に分けて投与することもできる。
また、例えば、本発明に係る薬学的組成物において、前記化学式2で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を0.0001~500mg/kgで、好ましくは0.001~100mg/kgの容量で投与することができ、前記投与は、一日に一回または数回に分けて投与することもできる。
また、例えば、本発明に係る薬学的組成物において、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩と、前記化学式2で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を、前記に述べた適切な投与範囲の組み合わせで投与することができる。
本発明の前記薬学的組成物は、前記化学式1で表される化合物および/または前記化学式2で表される化合物のほか、同一または類似する薬効を示す有効成分を1種以上さらに含むことができる。
本発明は、前記化学式1で表される化合物;前記化学式2で表される化合物;または前記化学式1で表される化合物及び前記化学式2で表される化合物の組み合わせを含む組成物の治療学的に有効な量の投与を含む二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染または二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染が原因で誘発される疾患の予防または治療する方法を提供する。
本発明に使用される「治療学的に有効な量」という用語は、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染または二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染が原因で誘発される疾患の予防または治療に有効な前記化学式1で表される化合物;前記化学式2で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩;または前記化学式1で表される化合物及び前記化学式2で表される化合物の組み合わせの量を示す。
本発明は、治療学的に有効な量の前記化学式2で表される化合物;または前記化学式1で表される化合物及び前記化学式2で表される化合物の組み合わせを、これを必要とする対象体に投与する段階;を含む二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症の治療方法を提供する。
前記化学式1で表される化合物、または化学式2で表される化合物を含む組成物を投与することにより、兆候の発現前に病気そのものを扱うだけでなく、これの兆候を阻害したり、避けることもまた含む。疾患の管理において、特定の活性成分の予防的または治療能力は、病気または状態の本質(nature)と深刻度、および活性成分が投与される経路などにより様々である。容量と容量の頻度は、個々の患者の年齢、体重、および反応によって多様である。適切な用量・用法は、これらの因子を当然に考慮する、この分野の通常の知識を有する者によって容易に選択することができる。
前記対象体は、ヒトを含み、哺乳類などであることができる。
前記治療方法は、前記化学式1で表される化合物;前記化学式2で表される化合物;または前記化学式1で表される化合物及び前記化学式2で表される化合物の組み合わせを含む組成物と一緒に疾患の治療に役立つ追加の活性製剤の治療学的に有効な量の投与をさらに含むことができ、追加の活性製剤は、前記化学式1で表される化合物、または化学式2で表される化合物を含む組成物と一緒に相乗効果や補助効果を示すことができる。
本発明は、また、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染または二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染が原因で誘発される疾患の治療用薬剤の製造のための前記の化学式1で表される化合物;前記化学式2で表される化合物;または前記化学式1で表される化合物及び前記化学式2で表される化合物の組み合わせを含む組成物の用途を提供する。薬剤の製造のための前記化学式1または2で表される化合物は、許容される補助剤、希釈剤、担体などを混在させることができ、その他の活性製剤と一緒に配合製剤で製造され、活性成分の相乗作用を有することができる。
本発明は、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症の治療のための化学式1で表される化合物;前記化学式2で表される化合物;または前記化学式1で表される化合物及び前記化学式2で表される化合物の組み合わせを提供する。
本発明は、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症の予防または治療に使用するための前記化学式1で表される化合物;前記化学式2で表される化合物;または前記化学式1で表される化合物及び前記化学式2で表される化合物を有効成分として含む薬学的組成物を提供する。
本発明の他の一側面において、前記化学式1で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む抗二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス組成物を提供する。
本発明の他の一側面において、前記化学式2で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む抗二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス組成物を提供する。
本発明の他の一側面において、前記化学式1で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩;前記化学式2で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩;を有効成分として含む抗二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス組成物を提供する。
本発明の他の一側面において、化学式1で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を含む3CLプロテアーゼの活性阻害剤を提供する。
本発明の他の一側面において、化学式2で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を含む3CLプロテアーゼの活性阻害剤を提供する。
本発明の他の一側面において、化学式1で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩及び化学式2で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を含む3CLプロテアーゼの活性阻害剤を提供する。
3CLproのアミノ酸配列と構造がウイルス間において変化が少なく、何よりも3CLproの機能がウイルス増殖において必要不可欠であるので、3CLproは、ウイルス治療剤の重要な標的の一つとして使用することができる。
本発明では、前記化学式1で表される化合物;前記化学式2で表される化合物;または前記化学式1で表される化合物及び前記化学式2で表される化合物の組み合わせが3CLプロテアーゼに対する優れた活性阻害効果がある。
前記にて確認されるように、本発明に係るZafirlukast;Sulfinpyrazone;Zafirlukast及びSulfinpyrazoneは、肺病変度の側面で非常に優れた改善効果を示すことができ、感染に対する迅速な治療及び改善効果を示すことができる。
本発明の用途、組成物、治療方法に記載された事項は、互いに矛盾しない限り、同様に適用される。
本発明の他の一側面において、本発明は、以下の化学式1で表される化合物、またはその食品学的に許容可能な塩を含む二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症の予防または改善用食品組成物を提供する。
[化1]
本発明の他の一側面において、本発明は、以下の化学式2で表される化合物、またはその食品学的に許容可能な塩を含む二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症の予防または改善用食品組成物を提供する。
[化2]
本発明の他の一側面において、以下の化学式1で表される化合物、またはその食品学的に許容可能な塩;及び次の化学式2で表される化合物、またはその食品学的に許容可能な塩;を含む二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染症の予防または改善用食品組成物を提供する。
[化1]
;及び
[化2]
前記化学式1で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩と、前記化学式2で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、前述した薬学的組成物にて説明したところがすべて適用されることができる。
本発明において、前記食品組成物は、そのまま添加したり他の食品または食品成分と一緒に使用することができ、通常の方法に従って適宜に使用することができる。
本明細書において、前記「食品組成物」は、人体に有用な機能性を有する原料や成分を使用し、製造し、加工した食品を意味する。
前記食品の種類には、特別な制限はない。前記化学式1で表される化合物、またはその食品学的に許容可能な塩を含む組成物に添加することができる食品の例としては、各種スープ、飲料水、茶、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤などがあり、通常の意味での健康食品をすべて含むことができる。前記の他に、本発明の前記化学式1で表される化合物、またはその食品学的に許容可能な塩を含む組成物は、数々の栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。その他、本発明の食品組成物は、天然フルーツジュース、フルーツジュース飲料、野菜飲料の製造のための果肉を含有することができる。これらの成分は、独立して、または混合して使用することができる。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る薬学的組成物は、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染または二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルスが原因で誘発される疾患を予防または治療する効果がある。
本発明に係る食品組成物は、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染または二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルスが原因で誘発される疾患を予防または改善する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】AI新薬プラットフォーム(DeepMatcher TM)を基盤とするAIディープラーニングアルゴリズムを示したものである。
図2】本発明の化学式1及び化学式2の化合物の細胞毒性評価と細胞病変抑制効果の評価結果をグラフで示したものである。
図3】本発明の化学式1及び化学式2の化合物処理前後の細胞形態観察結果を示したものである。
図4】本発明の化学式1及び化学式2の化合物の3CLプロテアーゼ活性の結果を示したものである。
図5】本発明の化学式1及び2の化合物のACE2とSARS-CoV-2 Spike S1タンパク質の結合活性に対する薬物効能評価結果を示したものである。
図6】Lung lobeによりマル1ないしマル5に分けられ、それぞれの重量に合わせて、肺病変度を評価するための基準を示すための肺の画像を示す。
図7】肉眼的治癒率を確認した結果を示す図であるNC(Negative control)、VC(Virus control)、PC(Positive control、Remdesivir)、Za (Zafirlukast)、Za+Sulf(ZafirlukastとSulfinpyrazone)。
図8】実験を通して確認された肉眼的肺病変度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の理解を助けるために実施例を提示する。以下の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものであり、実施例により本発明の内容が限定されるものではない。
<製造例1>ザフィルルカスト(Zafirlukast)
市販のZafirlukast(CAS Number:107753-78-6)を使用した。
<製造例2>スルピンフィラゾン(Sulfinpyrazone)
市販のSulfinpyrazone(CAS Number:57-96-5)を使用した。
<製造例3>ザフィルルカスト(Zafirlukast)とスルピンフィラゾン(Sulfinpyrazone)の併用
前記ザフィルルカスト(Zafirlukast)とスルピンフィラゾン(Sulfinpyrazone)を併用して使用した。
<実施例1>COVID-19 3CLプロテアーゼを阻害する候補化合物のスクリーニング
本発明では、COVID-19 3CLプロテアーゼのタンパク質-リガンド複合体の構造情報(Protein Data Bank ID 6LU7:The crystal structure of COVID-19 main protease in complex with an inhibitor N3、DOI:10.2210/pdb6LU7/pdb)を基盤とするAI新薬のプラットフォーム(DeepMatcherTM)基盤のAIディープラーニングアルゴリズムに通して2,700個あまりのFDAの承認薬から(出典:https://www.drugbank.ca/)3CLプロテアーゼ阻害化合物を探索し、候補薬物を割り出した。本発明に使用されたAI新薬プラットフォーム(DeepMatcherTM)基盤の3D-仮想グラフィックシミュレーション方法は、タンパク質-リガンド複合体の相互作用を、実際の物理的な環境の変化(分子の構造、状態、物性の変化)に応じてシミュレートすることができる技術であって、タンパク質のリガンド結合部位に関する様々な化合物の結合力について結合する薬物分子が動くスナップショットの数を解析し、測定して結合頻度(HBQI:high binding quality index)と結合構造類似度(RMSD:Root Mean Square Deviation)などで予測することができる(図1)。
<実施例2>SARS CoV-2の抗ウイルス(細胞病変抑制能)薬物評価
-素材(薬物):Zafirlukast、Sulfinpyrazone
-試験ウイルスと細胞株:1種SARS CoV-2(NCCP-43326)、VERO cell
-試験濃度及び反復数:2 Dose(10-20μM)/2回反復
実施例2-1:Cell cytotoxicity assay(細胞毒性評価)
-細胞培養液は、DMEM(5%FBS、1%Antibiotic- Antimycotic)を使用し、試験試料(薬物)に対する細胞毒性評価は、MTT assayで試験した。また、試験濃度別に試料調製した時に使用した溶媒(DMSO)は、最終濃度0.5%以下で使用した。
細胞毒性評価は、次のような順番で行われた。
1)96 well plateにwell当たり5 × 10cells /wellで分注した後、37℃ 、5%CO培養器で48時間培養後、細胞単層を得た上、PBSで2回洗浄した。
2)試験濃度別に調製した試料(薬物)を培養液を含む100μL/wellずつ分注した後、37℃、5%CO培養器で72時間培養した。
3)細胞の状態を確認後、MTT溶液を10μL/wellずつ加えた後、37℃、5%CO培養器で4時間静置した。
4)4時間反応させた後、MTT solutionを100μL/wellずつ加えた後、ピペットを使用して、formazan結晶を十分に溶解した上、plate reader機で570nmで吸光度を測定した。
5)細胞毒性の割合は、正常細胞と試験試料(薬物)を処理した群の割合で次の式1に基づいて算出した。
<数式1>
Cell viability(%)= Test OD/Control OD×100%
実施例2-2:CPE reduction Test(細胞病変抑制効果の評価)
細胞病変抑制効果の評価は、以下のような方法で進められた。
1)96 well plateにwell当たり5×10cells /wellで分注した後、37℃ 、5%CO培養器で48時間培養した後、細胞単層を得た上、PBSで2回洗浄し、細胞計数を行った。
2)ウイルスは、0.001 MOIに感染されるようにDMEM(FBS free、1%antibiotic- antimycotic)培地を用いて、100μL/wellずつ分注した後、1時間37℃、5%COインキュベーターで1時間静置した。
3)1時間感染させた後、ウイルスを除去してから試験濃度別に調製した試料(薬物)を培養液を含む100μL/wellずつ分注した後、37℃、5%CO培養器で72時間培養した。
4)細胞の状態を確認してからMTT溶液を10μL/wellずつ加えた後、37℃、5%CO培養器で4時間静置した。
5)4時間反応させてからMTT solutionを100μL/wellずつ加えた後、ピペットを用いてformazan結晶を十分に溶解させた上、plate reader機で570nmで吸光度を測定した。
6)細胞毒性の割合は、正常細胞と試験試料(薬物)を処理した群の割合で次の式2に基づいて算出した。
<数式2>
Virusinhibition rate(%)=(Test OD-Virus OD/(Control OD-Virus OD)×100%
前記実施例2-1及び実施例2-2により確認された細胞毒性基盤の抗COVID-19効能評価結果は、以下の表1及び図2と同じである。

【表1】
抗COVID-19効能評価を行った結果、表1及び図2を参照すると、Zafirlukastおよび/またはSulfinpyrazone薬物全部が細胞生存率に優れており、20μM基準Zafirlukastは、75.6±3.9%であり、Sulfinpyrazoneは、40.7±8.0%の細胞病変抑制効果があることが確認された。
<実施例3>薬物処理による細胞形態観察
-素材(薬物):Zafirlukast 、Sulfinpyrazone
-試験ウイルスと細胞株:1種SARS CoV-2(NCCP-43326)、VERO cell
-試験濃度と反復数:2 Dose(10-20μM)/2回反復
ウイルス処理前後の細胞それぞれに対して、薬物を施した際に引き起こる細胞形態の変化を観察し、その結果を図3に示した。
図3において確認されるように、対照群においてウイルスに感染した細胞(Virus)の場合、ウイルスに感染していない細胞(Nomal)に比べて形態の変化が大きいことが確認できた。
これに対し、ウイルスに感染した細胞にZafirlukastとSulfinpyrazoneを施した各実験群において形態変化が少ないことが確認できた。
<実施例4>3CLプロテアーゼ(3-chymotrypsin-like protease)抑制効果の解析(assay)
-素材(薬物):Zafirlukast 、Sulfinpyrazone
-試験3CL Protease:GC376 is purchased from Aobious (catalog number AOB36447)3CL Protease Assay Buffer(BPS catalog number 79956)3CL Protease Substrate(BPS catalog number 79952)
-試験濃度と反復数;10 Dose(0.001-30μM)/2回反復
時間差蛍光共鳴エネルギー移動解析法を用いた3CL Protease抑制効能解析は、以下のような方法で進められた。
1)それぞれの薬物を100%DMSOに10mMの濃度で溶解させて使用し、途中の希釈過程もやはり100%DMSOの濃度を維持して進められた。
2)3CL Protease assay緩衝液で、当該化合物を67.5倍に希釈した後、希釈された試料の10ulと緩衝液40ulでDMSO濃度が0.3%である50ulの反応液を製造した。
3)それぞれの薬物は、室温で30分間静置させる過程を経て、3CL protease基質の最終濃度が50uMとなるように混合した。
4)当該反応物を室温で12時間以上、反応させた。
5)それから、Infinite M1000マイクロプレートリーダー(Tecan)でTR-FRETシグナルを読み取った。
これにより、確認されたSARS-CoV-2 3CL proteaseタンパク質の活性に対する薬剤の効能評価結果は、以下の表2、表3及び図4と同じである。
【表2】
【表3】
表2、3及び図4を参照すると、Zafirlukast 30μMの濃度で3CL proteaseの活性が約45%以上阻害されたことが確認されており、Sulfinpyrazone 30μMの濃度で3CL proteaseの活性が約20%阻害されたことが確認された。したがって、Zafirlukastおよび/またはSulfinpyrazoneが3-chymotrypsin-like protease活性阻害に効果があることが確認された。
<実施例5>CE2:Spike S1の時間差蛍光共鳴エネルギー移動解析を通じたACE2とSARS-CoV-2 Spike S1タンパク質の結合活性に対する薬物効能評価
-素材(薬物):Zafirlukast 、Sulfinpyrazone
-試験ACE2とSpike S1タンパク質:ACE2、His-Tag、Eu -labeled(BPS Bioscience、100705)
Spike S1、Fc fusion、Avi-tag、Biotin Labeled(SARS-CoV-2)(BPS Bioscience、100679)Anti-Spike、Neutralizing Antibody(Active Motif、91361)
-試験濃度と反復数;10 Dose(0.002-30μM)/2回反復
ACE2:Spike S1の時間差蛍光共鳴エネルギー移動解析は、次のような方法で進められた。
1)ACE2-Euを1x ACE2-Spike TR-FRET緩衝液を用いて1ng/uL(12nM)で希釈した後、各wellに5uLずつ分注した。
2)1x ACE2-Spike TR-FRET緩衝液でDye-labeled受容体を100倍希釈した後、希釈されたDye-labeled受容体を各wellに5uLずつ追加した。
3)試験濃度別に調剤した試料(薬物)を5uLずつwellに追加しました。
4)1x ACE2-Spike TR-FRET緩衝液を用いて、Spike S1-Biotinを20ng/uL(200nM)で希釈した後、試験群と対照群として指定されたwellに希釈したSpike S1-Biotinを5uLずつ添加した。
5)添加していない残りのwellに1x ACE2-Spike TR-FRET緩衝液を5uLずつ添加し、プレートを室温で1時間培養した。
6)それから、Infinite M1000マイクロプレートリーダー(Tecan)でTR-FRETシグナルを読み取った。
これにより確認されたACE2とSARS-CoV-2 Spike S1タンパク質の結合活性に対する薬物効能評価結果は、表4、表5及び図5と同じである。
【表4】
【表5】
前記表4、表5及び図5を参照すれば、ZafirlukastとSulfinpyrazoneは、ACE2とSpike S1タンパク質の結合阻害において効能がないことが確認された。すなわち、ZafirlukastとSulfinpyrazoneの場合、ACE2とSpike S1に結合して作用効果を示す薬物に該当せず、3CLプロテアーゼ阻害を通して疾患の治療効果を示すことができる薬物であることを確認した。

<実施例6>Syrian Hamster用いた二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染動物モデルでの薬効評価
Syrian Hamster動物モデルを用いて、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染の治療効果を確認した。
実験は、以下の表6の条件に合わせて進められた。
【表6】
前記の条件に合わせて、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルスを投与して実験を行った。試験グループに対する条件は、次の表7の通りである:
【表7】
前記のように実験セットを構成した。
Isofluraneを使用して、10分間呼吸麻酔を行い、用意したSARS-Cov-2ウイルス100μLをハムスターの鼻腔に点滴して感染させた後、用意した薬物は、経口投与針を用いてハムスターに500μLを経口投与した。感染後4日(PID4)に剖検を通じて採取した肺組織に対して肉眼的肺病変度を評価した。肉眼的肺病変度は、ウイルス群と試験群の割合で、以下の式に基づいて算出した。
具体的には、肺を図6に示すように、Lung lobeによりマル1ないしマル5に分けられ、それぞれの重量に合わせて、肺病変度を評価した。この基準を以下の表8に示す。
【表8】
前記表8の基準に基づいて、肉眼的治癒率の評価を行い、結果の値を以下の式で確認し、その結果を図7に示した。

<数式3>
肉眼的治癒率=試験群肺炎誘発率/ウイルス群肺炎誘発率Х100

図7は、肉眼的治癒率を示す。図7から確認できるように、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス単独感染グループ(重症感染モデル、肺病変度62%)と比較して、薬物の連続投与5日で治療効能は、Zafirlukast (60m/kg/日)+ Sulfinpyrazone (120mg/kg/日)、治療率94.3%と確認され、Zafirlukast (60mg/kg/日)、治療率58.7%で確認された。一方、対照薬物であるRemdesivir(5mg/kg/日)、治療率44.3%を示した。前記より確認できるように、本発明に係るZafirlukast 、ZafirlukastとSulfinpyrazoneは、対照薬物であるレムデシビルと比較し、格段に優れた治療効能を示した。また、Zafirlukast 、ZafirlukastとSulfinpyrazoneは、両側性肺炎、肺水腫、肺出血の面でも優れた改善効果が示され、特にZafirlukastとSulfinpyrazoneは、臨床的に最も優れた治療効能を示し、異常所見や臨床症状において異常を示さなかった。
また、前記のような実験により確認された肉眼的肺病変度を図8に具体的に示した。図8における略語は、次の通りである:NC(Negative control)、VC(Virus control)、PC(Positive control)、Za (Zafirlukast)、Z+S(ZafirlukastとSulfinpyrazone)。
前記から確認できるように、本発明に係るZa(Zafirlukast)、Z+S(ZafirlukastとSulfinpyrazone)は、肉眼上の肺病変度の面で非常に優れた改善効果を示した。特に、ZafirlukastとSulfinpyrazoneは、通常の対照群に近いレベルまでの非常に優れた改善効果を示すことを確認した。

<実施例7>Syrian Hamsterを用いて、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染動物モデルでのSulfinpyrazoneの薬効評価
Syrian Hamster動物モデルを用いて、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス感染に対するSulfinpyrazoneの治療効果を確認した。
実験は、以下の表9の条件に合わせて進められた。
【表9】
前記の条件に合わせて、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルスを投与して実験を行った。試験グループに対する条件は、以下の表10の通りである:
【表10】
前記のように実験セットを構成し、肺病変度を評価し、肉眼的治癒率の評価方法は、実施例6にて遂行したことと同様に行い、その結果を以下の表11に示した。
【表11】
肉眼的治癒率を分析した結果である図11から確認できるように、二類重症急性呼吸器症候群コロナウイルス単独感染グループと比較し、薬物の連続投与4日で治療効果は、Sulfinpyrazone(50mg/kg/日)治癒率15.6%と確認された。
上記から確認できるように、本発明に係るSulfinpyrazoneは肉眼的治癒率の面で改善効果を示した。

本明細書は、本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば十分に認識して類推することができる内容については、その詳細な記載を省略しており、本明細書に記載された具体的な例示に加えて、本発明の技術的思想や必須の構成を変更しない範囲内で、より多様な変形が可能である。したがって、本発明は、本明細書で具体的に説明して例示したものとは異なる方法でも実施することができ、これは本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、理解することができる事項である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8