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特許7104456樹脂合成用溶媒及び該溶媒を用いた合成樹脂の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】樹脂合成用溶媒及び該溶媒を用いた合成樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/00 20060101AFI20220713BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20220713BHJP
   C09D 11/033 20140101ALI20220713BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20220713BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20220713BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220713BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220713BHJP
   G03F 7/023 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
C08G73/00
C08G18/00 B
C09D11/033
C09D201/00
C09D7/20
C09J11/06
C09J201/00
G03F7/023
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022515689
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(86)【国際出願番号】 JP2021033063
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2020151667
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314001841
【氏名又は名称】KJケミカルズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平田 明理
(72)【発明者】
【氏名】増田 英樹
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-061603(JP,A)
【文献】特開2000-345028(JP,A)
【文献】特開昭63-021917(JP,A)
【文献】国際公開第2018/066522(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/170940(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00 - 73/26
C08G 18/00 - 18/87
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミド系溶媒(A)10~99.9999質量%と、反応促進剤(B)0.0001~5質量%と、安定剤(D)及び/又はイオン性液体を含有し、前記反応促進剤(B)は分子内に第三級アミノ基を一つ以上有する脂肪族又は芳香族第三級アミン化合物、前記安定剤(D)は分子中に活性水素を有する化合物である樹脂合成用溶媒(C)であって、前記樹脂はポリイミド前駆体、ポリアミドイミド前駆体、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びポリウレタン樹脂から選択される何れか1種の樹脂である樹脂合成用溶媒(C)。
【請求項2】
アミド系溶媒(A)は一般式(1)に示されるアルコキシ-N-置換プロパンアミドである請求項1に記載の樹脂合成用溶媒(C)。
【化1】
(式中、R~Rは各々独立に炭素数1~22の直鎖状アルキル基、炭素数3~22の分岐鎖状アルキル基、炭素数2~22のアルキルエーテル基、炭素数3~22の脂環式炭化水素並びに炭素数6~22の芳香族炭化水素を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。又、RとRは各々独立に水素原子(同時に水素原子である場合を除く)、又はそれらを担持する窒素原子と一緒になって、飽和5~7員環(酸素原子を有するものを含む。)を形成したものを含む。)
【請求項3】
反応促進剤(B)は一般式(2)に示される、分子内に第三級アミノ基を一つ以上有し、更に分子内にエーテル基、エステル基とアミド基から選択される1種以上の官能基を有する脂肪族又は芳香族第三級アミン化合物である請求項1又は2に記載の樹脂合成用溶媒(C)。
(式中、A、B及びCは各々独立に炭素数1~22の直鎖状アルキル基、炭素数3~22の分岐鎖状のアルキル基又はアルキルエーテル基、アルキルエステル基、アルキルアミド基、炭素数3~22の脂環式炭化水素並びに炭素数6~22の芳香族炭化水素、一般式(3)で表されるエーテル基を有する置換基、一般式(4)で表されるエステル基を有する置換基、一般式(5)で表されるアミド基を有する置換基(式中のR、RとRは、各々炭素数1~22の直鎖状アルキレン、炭素数3~22分岐鎖状のアルキレン基又はアルキレンエーテル基、炭素数3~22の脂環式炭化水素並びに炭素数6~22の芳香族炭化水素を表す。R、R、R10とR11は、炭素数1~22の直鎖状アルキル基、炭素数3~22の分岐鎖状のアルキル基又はアルキルエーテル基、アルキルエステル基、アルキルアミド基、炭素数3~22の脂環式炭化水素並びに炭素数6~22の芳香族炭化水素を表す。又、R10とR11は各々独立に水素原子であってもよく、R10とR11はそれらを担持する窒素原子と一緒になって、飽和5~7員環(酸素原子を有するものを含む)を形成したものでもよい。)を表す。)。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【請求項4】
請求項1~の何れか一項に記載の樹脂合成用溶媒(C)を用い、酸二無水物と、ジアミン及び/又はジイソシアネートとを混合して重合させるポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法、及びこれらの前駆体を加熱イミド化するポリイミド又はポリアミドイミドの製造方法。
【請求項5】
請求項1~の何れか一項に記載の樹脂合成用溶媒(C)を用い、ポリオールとジイソシアネートを混合して重合させるポリウレタンの製造方法、及びポリウレタンを水に分散させるポリウレタンディスパージョンの製造方法。
【請求項6】
請求項1~の何れか一項に記載の樹脂合成用溶媒(C)を含有する、ポリウレタンディスパージョン。
【請求項7】
請求項1~の何れか一項に記載の樹脂合成用溶媒(C)を含有する、ポリイミドワニス、ポリアミドイミドワニス、ポリウレタン樹脂ワニスから選択される何れか1種の樹脂ワニス。
【請求項8】
請求項1~の何れか一項に記載の樹脂合成用溶媒(C)と、ポリイミドワニス、ポリアミドイミドワニス、ポリウレタン樹脂ワニスから選択される何れか1種以上の樹脂ワニスを含有するバインダー樹脂。
【請求項9】
請求項1~の何れか一項に記載の樹脂合成用溶媒(C)と、ポリイミドワニス、ポリアミドイミドワニス、ポリウレタン樹脂ワニスから選択される何れか1種以上の樹脂ワニスを含有するインキ組成物。
【請求項10】
請求項1~の何れか一項に記載の樹脂合成用溶媒(C)と、ポリイミドワニス、ポリアミドイミドワニス、ポリウレタン樹脂ワニスから選択される何れか1種以上の樹脂ワニスを含有する感光性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~の何れか一項に記載の樹脂合成用溶媒(C)と、ポリイミドワニス、ポリアミドイミドワニス、ポリウレタン樹脂ワニスから選択される何れか1種以上の樹脂ワニスを含有する接着剤樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1~の何れか一項に記載の樹脂合成用溶媒(C)と、ポリイミドワニス、ポリアミドイミドワニス、ポリウレタン樹脂ワニスから選択される何れか1種以上の樹脂ワニスを含有する潤滑塗膜用樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1~の何れか一項に記載の樹脂合成用溶媒(C)と、ポリイミドワニス、ポリアミドイミドワニスから選択される何れか1種以上の樹脂ワニスを含有する耐熱性塗料。
【請求項14】
請求項1~3の何れか一項に記載の樹脂合成用溶媒(C)と、ポリイミドワニス又はポリイミド樹脂溶液を含有する塗工液を用い、基材上に塗膜を形成してから、段階的加熱イミド化するポリイミドフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂等の合成樹脂の合成用溶媒及び、該溶媒を用いた合成樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドの一群(ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエーテルイミド等)は強固な分子構造を持ち、耐熱性に優れるだけでなく、機械的性質や化学的性質も他の樹脂にないものを持っており、高性能プラスチックとしてフィルム、コーティング剤、保護膜、電気絶縁材料全般、ベアリング、耐熱塗料、断熱軸、断熱トレー、電子部品、自動車部品等様々の分野に広く使用されている。特に芳香族ポリイミドは芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物により合成され、強固な分子構造と強固な分子間力を有することにより、合成樹脂中で最高レベルの熱的、機械的、化学的性質を持つ、スーパーエンジニアリング・プラスチックとして広く知られている。ポリイミドは一般に不融不溶性のため、有機溶媒中でジアミン或いはジイソシアネートと、酸二無水物とを、室温程度の低温で反応させ、前駆体としてポリアミド酸を合成し、得られた前駆体の溶液をフィルム等に加工した後、加熱により又は化学反応により脱水環化(イミド化)することによって合成されている。又、有機溶媒に可溶なポリイミドや熱可塑性ポリイミド等を合成する場合には、ポリイミド前駆体を合成した後、同じ溶媒中で加熱することによってイミド化を行うことができる。種々のポリイミドにおいて、高性能の製品を取得するため、安定的に、高分子量の前駆体溶液(ワニス)を合成することと、得られる前駆体溶液が優れる保存安定性(溶液安定性)を有することが必要となり、前駆体の合成に関する研究も注目されている。
【0003】
ポリイミドの化学構造によって適切な溶媒(良溶媒)の種類は異なるが、ポリイミド前駆体の合成は一般的にアミド系溶媒等の有機極性溶媒が用いられている。アミド系溶媒は、優れた溶解力、高い沸点や引火点を有し、熱的、化学的に安定であることが特徴として知られているが、ポリイミド前駆体の合成によく使われているN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)が、皮膚や目に接触すると炎症を発生し易く、又発がん性や催奇形性の疑いがある等、人体への有害性が問題となっており、特にNMPにおいて、環境上、毒性学的及び/又は行政上(REACH)にも問題もある(特許文献1及び2)。
【0004】
NMP、DMF等のアミド系溶媒の低安全性等の問題を解決するため、最近では、安全性も溶解力も高いアミド系溶媒としてN-ブチル-2-ピロリドン(NBP)、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(KJCMPA(登録商標))、がポリイミド前駆体等のポリイミドの一群の合成用溶媒として注目されてきた(特許文献3及び4)。しかし、これらの先行技術は、NBPやKJCMPAをNMPの単なる代替溶媒として用いることを目的としたため、従来のNMPと同程度の溶解力等の効果さえ発揮すればよく、従来NMPが有する諸々の問題、例えば、ポリイミド前駆体の分子量が伸びにくい、ポリイミド前駆体の溶液安定性が低い(白濁しやすい)、ポリイミド成膜時に白化しやすい、表面ムラ発生しやすい等の問題が解決されることではなかった。一方で、ポリイミド成膜時の白化問題や表面ムラ発生問題を解決するため、KJCMPA又は3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(KJCBPA(登録商標))を使用する報告もあるが(特許文献5~7)、これらの溶媒と同時に非極性有機溶媒やアルコール、水を混合して使用することが必要であった。しかしながら、活性水素を有するアルコールや水の多量導入により酸二無水物の加水分解反応や、生成した前駆体であるポリアミド酸の加水分解等の副反応が生じ、結果としてポリイミド前駆体溶液の白濁化を避けられなくなり、ポリイミド前駆体の高分子量化が達成できない等の問題を逆に起こりやすくなる。
【0005】
又、ポリウレタンはプラスチック素材でありながら、ゴムのように柔らかく抗張力(引張強度)や耐摩耗性、弾性、耐油性に優れており、スポーツシューズの靴底、衣類等の日用品から、防音材や保温材、接着剤等の工業用材料、バンパーやヘッドレスト等の自動車用材料に至るまで、あらゆる工業用品に使用されている。ポリウレタンの合成はその構造、用途によって種々の方法が挙げられるが、ウレタン化反応は発熱反応を伴うため、多くの熱可塑性ポリウレタンが溶液重合法で安定的に合成されている。特に高分子量化するためには、生成するポリウレタンが均一に溶解できる極性溶媒としてDMF等が多く用いられている。しかしながら、前記のようにDMFによる安全性問題が依然として懸念されている。
【0006】
以上述べたように、高分子量のポリマーを効率よく、安定的に合成することができ、反応中も反応後も反応溶液が白濁せず、高い透明性と保存安定性を有し、かつ基材に対する密着性に優れる合成樹脂を取得できる、ポリイミド前駆体、ポリアミドイミド前駆体等のポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン等の合成に好適に用いられる溶媒はまだ知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-194025号公報
【文献】特開2013-023583号公報
【文献】特表2017-517582号公報
【文献】特開2015-511935号公報
【文献】特開2017-149796号公報
【文献】特開2017-061603号公報
【文献】特開2017-052877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高分子量のポリマーを効率よく、安定的に合成することができ、反応中も反応後も反応溶液が白濁せず、高い透明性と保存安定性を有し、かつ基材に対する密着性に優れる合成樹脂を取得することができ、ポリイミド前駆体、ポリアミドイミド前駆体等のポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン等の合成に好適に用いられる溶媒及び、該溶媒を用いた前記合成樹脂の製造方法を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アミド系溶媒(A)と反応促進剤(B)を含有する樹脂合成用溶媒(C)を見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)アミド系溶媒(A)10~99.9999質量%と、反応促進剤(B)0.0001~5質量%を含有し、前記反応促進剤(B)は分子内に第三級アミノ基を一つ以上有する脂肪族又は芳香族第三級アミン化合物である樹脂合成用溶媒(C)、
(2)アミド系溶媒(A)は一般式(1)に示されるアルコキシ-N-置換プロパンアミドである(1)に記載の樹脂合成用溶媒(C)、
【化1】
(式中、R~Rは各々独立に炭素数1~22の直鎖状アルキル基、炭素数3~22の分岐鎖状アルキル基、炭素数2~22のアルキルエーテル基、炭素数3~22の脂環式炭化水素並びに炭素数6~22の芳香族炭化水素を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。又、RとRは各々独立に水素原子(同時に水素原子である場合を除く)、又はそれらを担持する窒素原子と一緒になって、飽和5~7員環(酸素原子を有するものを含む。)を形成したものを含む。)、
(3)反応促進剤(B)は一般式(2)に示される、分子内に第三級アミノ基を一つ以上有し、更に分子内にエーテル基、エステル基とアミド基から選択される1種以上の官能基を有する脂肪族又は芳香族第三級アミン化合物である(1)又は(2)に記載の樹脂合成用溶媒(C)、
(式中、A、B及びCは各々独立に炭素数1~22の直鎖状アルキル基、炭素数3~22の分岐鎖状のアルキル基又はアルキルエーテル基、アルキルエステル基、アルキルアミド基、炭素数3~22の脂環式炭化水素並びに炭素数6~22の芳香族炭化水素、一般式(3)で表されるエーテル基を有する置換基、一般式(4)で表されるエステル基を有する置換基、一般式(5)で表されるアミド基を有する置換基(式中のR、RとRは、各々炭素数1~22の直鎖状アルキレン、炭素数3~22分岐鎖状のアルキレン基又はアルキレンエーテル基、炭素数3~22の脂環式炭化水素並びに炭素数6~22の芳香族炭化水素を表す。R、R、R10とR11は、炭素数1~22の直鎖状アルキル基、炭素数3~22の分岐鎖状のアルキル基又はアルキルエーテル基、アルキルエステル基、アルキルアミド基、炭素数3~22の脂環式炭化水素並びに炭素数6~22の芳香族炭化水素を表す。又、R10とR11は各々独立に水素原子であってもよく、R10とR11はそれらを担持する窒素原子と一緒になって、飽和5~7員環(酸素原子を有するものを含む)を形成したものでもよい。)を表す。)、
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
(4)樹脂合成用溶媒(C)は、更に安定剤(D)及び/又はイオン性液体を含有し、前記安定剤(D)は分子中に活性水素を有する化合物である(1)~(3)の何れか一項に記載の樹脂合成用溶媒(C)、
(5)ポリイミド前駆体、ポリアミドイミド前駆体、ポリエステルイミド前駆体、ポリエーテルイミド前駆体、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、前記各種樹脂の前駆体から選択される何れか2種以上からなるポリイミド系共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、フッ素樹脂の合成に用いられる(1)~(4)の何れか一項に記載の樹脂合成用溶媒(C)、
(6)(1)~(5)の何れか一項に記載の樹脂合成用溶媒(C)を用い、酸二無水物と、ジアミン及び/又はジイソシアネートとを混合して重合させるポリイミド前駆体、ポリアミドイミド前駆体の製造方法、及びこれらの前駆体を加熱イミド化するポリイミドの製造方法、
(7)(1)~(5)の何れか一項に記載の樹脂合成用溶媒(C)を用い、ポリオールとジイソシアネートを混合して重合させるポリウレタンの製造方法、及びポリウレタンを水に分散させるポリウレタンディスパージョンの製造方法、
(8)(1)~(5)の何れか一項に記載の樹脂合成用溶媒(C)を含有する、ポリウレタンディスパージョン、
(9)(1)~(5)の何れか一項に記載の樹脂合成用溶媒(C)を含有する、ポリイミドワニス、ポリアミドイミドワニス、ポリエステルイミドワニス、ポリエーテルイミドワニス、ポリウレタン樹脂ワニス、ポリアミド樹脂ワニス、ポリアクリル樹脂ワニス、フッ素樹脂ワニスから選択される何れか1種の樹脂ワニス、
(10)(1)~(5)の何れか一項に記載の樹脂合成用溶媒(C)と、ポリイミドワニス、ポリアミドイミドワニス、ポリエステルイミドワニス、ポリエーテルイミドワニス、ポリウレタン樹脂ワニス、ポリアミド樹脂ワニス、ポリアクリル樹脂ワニス、フッ素樹脂ワニスから選択される何れか1種以上の樹脂ワニスを含有するバインダー樹脂、
(11)(1)~(5)の何れか一項に記載の樹脂合成用溶媒(C)と、ポリイミドワニス、ポリアミドイミドワニス、ポリエステルイミドワニス、ポリエーテルイミドワニス、ポリウレタン樹脂ワニス、ポリアミド樹脂ワニス、ポリアクリル樹脂ワニス、フッ素樹脂ワニスから選択される何れか1種以上の樹脂ワニスを含有するインキ組成物、
(12)(1)~(5)の何れか一項に記載の樹脂合成用溶媒(C)と、ポリイミドワニス、ポリアミドイミドワニス、ポリエステルイミドワニス、ポリエーテルイミドワニス、ポリウレタン樹脂ワニス、ポリアミド樹脂ワニス、ポリアクリル樹脂ワニス、フッ素樹脂ワニスから選択される何れか1種以上の樹脂ワニスを含有する感光性樹脂組成物、
(13)(1)~(5)の何れか一項に記載の樹脂合成用溶媒(C)と、ポリイミドワニス、ポリアミドイミドワニス、ポリエステルイミドワニス、ポリエーテルイミドワニス、ポリウレタン樹脂ワニス、ポリアミド樹脂ワニス、ポリアクリル樹脂ワニス、フッ素樹脂ワニスから選択される何れか1種以上の樹脂ワニスを含有する接着剤樹脂組成物、
(14)(1)~(5)の何れか一項に記載の樹脂合成用溶媒(C)と、ポリイミドワニス、ポリアミドイミドワニス、ポリエステルイミドワニス、ポリエーテルイミドワニス、ポリウレタン樹脂ワニス、ポリアミド樹脂ワニス、ポリアクリル樹脂ワニス、フッ素樹脂ワニスから選択される何れか1種以上の樹脂ワニスを含有する潤滑塗膜用樹脂組成物、
(15)(1)~(5)の何れか一項に記載の樹脂合成用溶媒(C)と、ポリイミドワニス、ポリアミドイミドワニス、ポリエステルイミドワニス、ポリエーテルイミドワニス、フッ素樹脂ワニスから選択される何れか1種以上の樹脂ワニスを含有する耐熱性塗料
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂合成用溶媒は、アミド系溶媒(A)と反応促進剤(B)を含有し、該合成用溶媒を、酸二無水物とジアミン及び/又はジイソシアネートからポリイミド前駆体、ポリアミドイミド前駆体等を合成する際の反応溶媒として用いることにより、これらの反応が制御可能の高速度で進行すると同時に高分子量の各種前駆体(ポリアミド酸)を得ることができ、得られるポリアミド酸溶液は優れた透明性を有し、長期保管しても白濁せず、保存安定性が良好である。このような各種ポリアミド酸溶液から高透明性、高平滑性、かつ優れた機械的強度を有するポリイミドフィルム、耐熱性塗料等を容易に製造することができる。更に、本発明の樹脂合成用溶媒は、ポリオールとジイソシアネートのウレタン化反応にも好適に用いることができ、反応が制御可能の高速度で進行すると同時に高分子量かつ高性能のポリウレタンが取得できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を詳細に記載する。
本発明の実施形態は、アミド系溶媒(A)と反応促進剤(B)を含有する樹脂合成用溶媒(C)である。アミド系溶媒(A)は、分子内にアミド基を1個以上有する化合物であり、その含有量は樹脂合成用溶媒(C)に対して10~99.9999質量%である。アミド系溶媒(A)は、分子内に活性水素及び/又は活性水素と反応する官能基を有しない化合物であることが好ましく、又その含有量が80質量%以上である場合、反応温度における樹脂合成用溶媒(C)の流動性を保つため、Aの0℃~140℃の温度範囲における状態は液体であることがより好ましい。
【0013】
前記のアミド系溶媒(A)は特に限定されないが、人の健康、生態や環境に対して危険性や有害性が低いものであることが好ましく、人の健康、生態や環境に対して影響がない高安全性化合物であることがより好ましい。このような化合物としては、例えば、N-アルキル(炭素数4以上)-2-ピロリドン(N-ブチル-2-ピロリドン、N-ヘキシル-2-ピロリドン等)、N-アルキル(炭素数1以上)アルカン(炭素数2以上)アミド(N-エチルヘキタンアミド、N-ブチルブタンアミド等)、N,N-ジアルキル(炭素数1以上)アルカン(炭素数2以上)アミド(N,N-ジメチルブタンアミド、N,N-ジエチルブタンアミド、N,N-ジメチルオクタンアミド等)、アルコキシ(炭素数1以上)-N-アルキル((炭素数1以上)アルカン(炭素数2以上)アミド(エトキシ-N-メチルプロパンアミド、ヘキシロキシ-N-エチルブタンアミド等)、アルコキシ(炭素数1以上)-N,N-ジアルキル((炭素数1以上)アルカン(炭素数2以上)アミド(メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、エトキシ-N,N-ジメチルブタンアミド、ラウロキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、フェニロキシ-N,N-メチルエチルプロパンアミド等)、アルカノイル(炭素数2以上)モルホリン(プロパノイルモルホリン、ブタノイルモルホリン、ヘキサノイルモルホリン、オクタノイルモルホリン等)、アルコキシ(炭素数1以上)アルカノイル(炭素数2以上)モルホリン(メトキシエタノイルモルホリン、4-(3-メトキシプロピノイル)モルホリン等)、N,N-ジアルキル(炭素数2以上)アセトアミド(N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジプロピルアセトアミド、N,N-ジイソプロピルアセトアミド、N,N-ジブチルアセトアミド、N,N-ジイソブチルアセトアミド、N,N-ジヘキシルアセトアミド等)が挙げられる。これらのアミド系溶媒(A)は1種類単独で使用してもよいし、又2種類以上併用してもよい。
【0014】
アミド系溶媒(A)は、下記一般式(1)(式中、R~Rは各々独立に炭素数1~22の直鎖状アルキル基、炭素数3~22の分岐鎖状アルキル基、炭素数2~22のアルキルエーテル基、炭素数3~22の脂環式炭化水素又は炭素数6~22の芳香族炭化水素を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。又、RとRは各々独立に水素原子(同時に水素原子である場合を除く)、又はそれらを担持する窒素原子と一緒になって、飽和5~7員環(酸素原子を有するものを含む。)を形成したものを含む。)に示されるアルコキシ-N-置換プロパンアミドとアルコキシ-N,N-二置換プロパンアミドであることが好ましい。アルコキシ-N-置換プロパンアミドとアルコキシ-N,N-二置換プロパンアミドは工業的に製造されており、更に分子内にエーテル基とアミド基を同時に有し、各種合成樹脂及びそれらの原料に対する溶解性が優れているためである。
【化6】
【0015】
前記のアルコキシ-N-置換プロパンアミドとアルコキシ-N,N-二置換プロパンアミドは、R、RとRに示す官能基を任意に組み合わせで構成される化合物であり、例えば、メトキシ-N-メチルプロパンアミド(RとRはメチル基、Rは水素原子である場合)、メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(R、RとRは全てメチル基である場合)、3-メトキシ-N,N-ジエチルプロパンアミド(Rはメチル基、RとRはエチル基である場合)、ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(Rはブチル基、RとRはメチル基である場合)、ラウロキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(Rはラウリル基、RとRはメチル基である場合)、ステアロキシ-N-エチルプロパンアミド(Rはステアリル基、Rは水素原子、Rはエチル基である場合)、フェニロキシ-N,N-メチルエチルプロパンアミド(Rはフェニル基、Rはメチル基、Rはエチル基である場合)、エトキシ-N-フェニルプロパンアミド(Rはエチル基、Rは水素原子、Rはフェニル基である場合)、メトキシ-N-シクロヘキシルプロパンアミド(Rはメチル基、Rはシクロヘキシル基、Rは水素原子である場合)、イソオクチロキシ-N-エトキシエチルプロパンアミド(Rはイソオクチル基、Rは水素原子、Rはエトキシエチル基である場合)、シクロヘキシロキシ-N,N-メチルオレイルプロパンアミド(Rはシクロヘキシル基、Rはメチル基、Rはオレイル基である場合)、3-イソプロポキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(Rはイソプロピル基、RとRはメチル基である場合)、4-(3-メトキシプロピノイル)モルホリン(Rはメチル基、RとRはそれらを担持する窒素原子と一緒になって、酸素原子有する飽和6員環を形成した場合)等が挙げられる。これらの化合物は1種類単独で使用してもよいし、又2種類以上併用してもよい。
【0016】
又、アルコキシ-N-置換プロパンアミドとアルコキシ-N,N-二置換プロパンアミドは、一般式(6)(式中、R12は炭素数1~18の直鎖状又は炭素数3~18の分岐鎖状のアルキル基、R13とR14はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1~6の直鎖状又は炭素数3~6の分岐鎖状のアルキル基を表し(同時に水素原子である場合を除く)、R15は水素原子又はメチル基を表す。)で表される化合物であることが、安価な工業品原料を入手しやすく、立体的障害の低い構造により高収率に工業的製造できるため、好ましい。更に、メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドとブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドが作業者や環境に対する安全性が高く、工業品として一般的に取り扱われているため、特に好ましい。
【化7】
【0017】
本発明における反応促進剤(B)は、分子内に第三級アミノ基を一つ以上有する化合物である。反応促進剤(B)のアミノ基が有する置換基は、特に限定されず、脂肪族でも芳香族でもよく、又、鎖状でも、環状でも、不飽和基を有しても有さなくてもよい。又、反応促進剤(B)が、分子内にヘテロ原子と結合する水素原子を有しない場合、Bは合成樹脂の原料である酸二無水物やイソシアネート化合物等との副反応を生じず、短時間で高分子量の合成樹脂を取得することができるため、好ましい。樹脂合成用溶媒(C)を用いて樹脂の合成反応を行う際に、反応促進剤(B)は、その沸点が反応温度より高い化合物を選択することが、反応中に揮発することがなく、効率よく反応を促進できるため、好ましい。前記の反応促進剤(B)としては、例えば、トリアルキル(炭素数1以上、同一でも、異なってもよい)アミン、ジアルキル(炭素数1以上、同一でも、異なってもよい)シクロヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン等の第三級脂肪族アミン、ジアルキル(炭素数1以上、同一でも、異なってもよい)アニリン、ジアルキル(炭素数1以上、同一でも、異なってもよい)2,4,6-トリメチルアニリン、N-メチルジフェニルアミン、トリフェニルアミン等の第三級芳香族アミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N-メチルジベンジルアミン等の芳香族置換基を有する第三級脂肪族アミンが挙げられる。これらの反応促進剤(B)は1種類単独で使用してもよいし、又2種類以上併用してもよい。
【0018】
反応促進剤(B)は、更に分子内にエーテル基、エステル基とアミド基から選択される1種以上の官能基を有することがより好ましい。これらの官能基を持つことにより反応促進剤(B)による反応の促進効果(反応速度の向上及び/又は生成ポリマーの分子量向上)が向上する傾向がある。これらの効果に関するメカニズムは明確ではないが、エーテル基、エステル基又はアミド基の共存による反応促進剤(B)の極性が強くなったためと発明者らは推測している。
【0019】
分子内にエーテル基を有する反応促進剤(B)(以下、「反応促進剤(b1)」や単に「b1」とも称する。)は、特に限定されず、第三級アミノ基が有する何れかの置換基に1個以上のエーテル基を有すればよい。又、これらのエーテル基は鎖状の構造で形成されてもよく、環状の構造で形成されてもよい。例えば、(メトキシエチル)ジエチルアミン、N,N-ジメチルジメトキシメタンアミン、(エトキシエチル)ジブチルアミン、(メトキシヘキシル)エチルヘキシルアミン、(メトキシエチル)ジフェニルアミン、ジ(メトキシエチル)シクロヘキシルアミン、トリ(ブトキシメチル)アミン等が挙げられる。これらの反応促進剤(b1)は1個単独で使用してもよいし、又2個以上併用してもよい。
【0020】
分子内にエステル基を有する反応促進剤(B)(以下、「反応促進剤(b2)」や単に「b2」とも称する。)は、特に限定されず、第三級アミノ基が有する何れかの置換基に1個以上のエステル基を有すればよい。又、これらのエステル基は鎖状の構造で形成されてもよく、環状の構造で形成されてもよい。例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、ジメチルアミノプロピオン酸メチル、ジメチルアミノプロピオン酸ブチル、ジブチルアミノプロピオン酸メチル、ジブチルアミノプロピオン酸ブチル、ジエチルアミノ酪酸エチル、エチルヘキシルアミノ酢酸ブチル、モルホリノプロピオン酸イソプロピル、メチルベンジルアミノラウリン酸エチル等が挙げられる。これらの反応促進剤(b2)は1個単独で使用してもよいし、又2個以上併用してもよい。
【0021】
分子内にアミド基を有する反応促進剤(B)(以下、「反応促進剤(b3)」や単に「b3」とも称する。)は、アミド系溶媒(A)を除いて、特に限定されず、第三級アミノ基が有する何れかの置換基に1個以上のアミド基を有すればよい。又、これらのアミド基は鎖状の構造で形成されてもよく、環状の構造で形成されてもよい。例えば、ジメチルアミノ-N,N-ジメチルプロピオン酸アミド、ジメチル-N,N-ジブチルアミノプロピオン酸アミド、ジブチルアミノ-N,N-ジメチルプロピオン酸アミド、ジブチルアミノ-N,N-ジブチルプロピオン酸アミド、ジエチルアミノ-N,N-ジメチル酪酸アミド、エチルヘキシルアミノ-N,N-ジエチル酢酸アミド、モルホリノプロピオン酸モルホリド、メチルベンジルアミノ-N,N-ジメチルラウリン酸アミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド等が挙げられる。これらの反応促進剤(b3)は1個単独で使用してもよいし、又2個以上併用してもよい。
【0022】
分子内にエーテル基を有する反応促進剤(b1)、分子内にエステル基を有する反応促進剤(b2)及び分子内にアミド基を有する反応促進剤(b3)は、それらからなる群より選択される1種単独で使用してもよいし、又2種以上併用してもよい。
【0023】
本実施形態の樹脂合成用溶媒(C)は、アミド系溶媒(A)を含有し、Aの含有量は樹脂合成用溶媒(C)の全体に対して10~99.9999質量%である。Aの含有量は20~99.99質量%であることが好ましく、30~99.8質量%であることがより好ましい。樹脂合成用溶媒(C)の中に、Aを10質量%以上含有すると、各種樹脂合成用原料、得られる合成樹脂に対して十分な溶解力を有するため、好ましい。又、Aを99.9999質量%以下含有する場合、樹脂合成用溶媒(C)の必須構成成分である反応促進剤(B)を0.0001質量%以上含有することが可能であり、Bによる反応促進効果が確認できるため、好ましい。
【0024】
本実施形態の樹脂合成用溶媒(C)は、アミド系溶媒(A)以外に、反応促進剤(B)を含有する。Bの含有量は樹脂合成用溶媒(C)の全体に対して0.0001~5質量%である。樹脂合成用溶媒(C)中にBが0.0001質量%以上含有されれば、樹脂合成の反応に対する促進効果を発揮することができるため、好ましい。一方、反応促進剤(B)の含有量が合成用溶媒(C)の全体に対して5質量%を超えると反応速度が制御しにくくなる可能性があり、好ましくない。反応促進剤(B)は第三級アミノ基を有するため、樹脂合成中に生成するカルボン酸基と中和塩を形成しやすく、ポリイミド前駆体とポリアミドイミド前駆体であるポリアミド酸のカルボン酸基を中和塩として保護することにより、これらの前駆体溶液の透明性と保存安定性を向上させる。このような中和塩が、前駆体の加熱イミド化に伴い、蒸発し、脱保護されたカルボン酸基のイミド化反応により高分子量のポリイミド樹脂とポリアミドイミド樹脂を得ることができる。これらの観点から、反応促進剤(B)の含有量は樹脂合成用溶媒(C)の全体に対して0.001~2質量%であることが好ましく、0.01~1質量%であることがより好ましい。
【0025】
又、反応促進剤(B)に含まれ得る上記反応促進剤(b1)、(b2)と(b3)の含有量は、b1、b2とb3がそれぞれ単独使用できるため、樹脂合成用溶媒(C)の全体に対してb1、b2とb3それぞれが0.0001~5質量%である。但し、b1、b2とb3から任意に選択される2種以上を混合して使用する場合、それらの合計含有量は樹脂合成用溶媒(C)の全体に対して5質量%を超えない。
【0026】
反応促進剤(B)は、分子内にアミド基を有する反応促進剤(b3)であることが好ましい。1個以上のアミノ基と1個以上のアミド基を有することで、分子全体の極性が向上すると共にアミド基の影響でアミノ基による反応促進効果が向上する、或いはb3の分子内のアミド基とアミノ基の相互作用により、アミノ基に加え、アミド基による反応促進効果も生じたと考えられる。又、樹脂合成の原料や生成物の種類、各種原料の仕込み比、反応温度や反応時間等の反応条件によって、更に生成する合成樹脂の所望分子量等によって、b3と分子中にエステル基を有する反応促進剤(b2)を混合して使用することや、b3と分子中にエーテル基を有する反応促進剤(b1)を混合して使用すること、b3とb2及びb1を混合して使用することができる。
【0027】
樹脂合成用溶媒(C)の一実施形態として、アミド系溶媒(A)とその他の溶媒の併用が可能である。その他の溶媒として、例えば、キシレン、ソルベントナフサ、トルエン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素系溶媒、1,3-ジメチル尿素、1,3-ジエチル尿素、1,3-ジフェニル尿素、1,3-ジシクロへキシル尿素、テトラメチル尿素、テトラエチル尿素、2-イミダゾリジノン、プロピレン尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルプロピレン尿素等のウレア基を有するウレア系溶媒、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等のラクトン系溶媒、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、1,4-ジオキサン、2-メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、アセトフェノン、アセチルアセトン、酢酸ブチル、安息香酸エチル、酢酸2-エトキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、アセト酢酸エチル、酢酸イソアミル、酢酸n-ペンチル、プロピオン酸エチル等のエーテル系溶媒、ケトン溶媒、エステル系溶媒、1,3-ジオキソラン、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン、N-ホルミルモルホリン、4-アセチルモルホリン等の汎用溶媒が挙げられる。これらの溶媒はその他の溶媒として1種単独で使用してもよいし、又2種以上併用してもよい。
【0028】
その他の溶媒の含有量は、樹脂合成用溶媒(C)の全体に対して89.9999質量%以下であり、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~30質量%である。その他の溶媒を89.9999質量%以下含有する場合、樹脂合成用溶媒(C)の必須構成成分であるアミド系溶媒(A)を10質量%以上、反応促進剤(B)を0.0001質量%以上含有でき、Aによる各種樹脂合成用原料、得られる合成樹脂に対する高い溶解力、及びBによる反応促進効果が確認できるため、好ましい。
【0029】
一実施形態において、アミド系溶媒(A)とその他の溶媒の沸点は、常圧で80℃~400℃であることが好ましい。又、これらの溶媒の沸点は、常圧で100℃~350℃であることがより好ましく、180℃~280℃であることが特に好ましい。溶媒の沸点が80℃未満であれば、合成樹脂の製造工程において、80℃以上の温度で反応を行う場合、溶媒の蒸発により反応液の濃度が変化し、得られる樹脂の前駆体や合成樹脂の分子量、溶液粘度が再現しにくくなる。一方、溶媒の沸点が400℃を超えると、ポリアミド酸の溶液を金属等の基板上にフィルム化して、100℃~500℃の温度で段階的にイミド化させる製造工程において、溶媒が蒸発し切らず、得られたポリイミドフィルム等の製品中に多量に残存したり、製品中で炭化したりすることがあり、製品の透明性、強度、伸度、耐熱性、耐薬品性等が低下する問題がある。
【0030】
樹脂合成用溶媒(C)の一実施形態として、アミド系溶媒(A)とイオン性液体の併用が可能である。又、樹脂合成用溶媒(C)は、アミド系溶媒(A)、その他の溶媒及びイオン性液体を併用することができる。本発明において、イオン性液体は、アニオンとカチオンから構成される塩であり、0℃~150℃の温度範囲における状態は液体である。イオン性液体は極性が高く、難溶性合成樹脂に対する優れる溶解力を有するため、イオン性液体を含有することによって、透明性、安定性がより高いポリアミド酸溶液等を得ることができる。又、イオン性液体は難揮発性、難燃性であり、熱的安定性と化学的安定性が高く、高いイオン伝導性や優れた電気化学特性を有するため、ポリアミド酸の高温イミド化反応においても悪影響を与えることがなく、ポリイミドフィルム等の製品中に微量のイオン性液体を含有させることにより、製品に柔軟性を付与することができ、ガラス転移温度以上の温度でイミド化反応を進行させることができ、耐熱性がより向上する。
【0031】
イオン性液体は、これを構成する基本骨格のカチオンから分類すると、イミダゾリウム塩、ピロリジニウム塩、ピリジ二ウム塩、ピペリジニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩が挙げられる。又、これらの塩のアニオン種を変えることや、カチオンとアニオンが有するアルキル基等の置換基を変えることで、様々なイオン性液体を選択することができる。中でも、イミダゾリウム塩、ピロリジニウム塩、ピリジ二ウム塩、ピペリジニウム塩、アンモニウム塩は窒素原子を有し塩基性を示すため、好ましい。これは、樹脂合成用溶媒(C)に含まれるアミド系溶媒が中性から弱塩基性のものが多く、塩基性を示すイオン性液体はアミド系溶媒との相性がよいためであると考える。又、イミダゾリウム塩とアンモニウム塩が、高純度の工業品を入手し易いため、より好ましい。これらのイオン性液体は1種単独で使用してもよいし、又2種以上併用してもよい。
【0032】
イオン性液体の含有量は、樹脂合成用溶媒(C)の全体に対して20質量%以下、好ましくは0.001~10質量%であり、より好ましくは0.01~5質量%である。イオン性液体の含有量が20質量%を超えると、ポリアミド酸の溶液を直接加熱して取得するポリイミドフィルム等の最終製品中に、イオン性液体が多量に残存し、又、ポリアミド酸の溶液を一旦沈殿処理してからイミド化を行っても、最終製品中のイオン性液体が少量残存し、製品の品質に悪影響を与える恐れがある。一方、イオン性液体を0.001質量%以上含有することで、ポリイミドフィルム等の最終製品に柔軟性、伸度、電気化学特性を提供できるため、好ましい。
【0033】
本実施形態の樹脂合成用溶媒(C)は、更に安定剤(D)を含有することができる。本明細書における安定剤(D)とは、分子中に活性水素を有する化合物であり、具体的には水、アルコール、アミン等が挙げられる。安定剤(D)は、分子中に活性水素を有するため、合成樹脂の原料である酸二無水物やジイソシアネートと反応し、これらの化合物の反応基を保護することにより、樹脂合成の反応速度を必要に応じて緩和することや反応液の白濁、不溶物発生(ゲル化)を防止することができ、樹脂合成反応の速度制御、樹脂の分子量制御、樹脂溶液の安定性制御等をより精密に行うことができる。特に温度等反応条件を変化させながら反応させる多段階式の反応において、反応促進剤(B)と安定剤(D)を併用することによって、広範囲な温度において反応をスムーズに進行させることができ、高分子量の樹脂や、高い透明性と保存安定性を有する樹脂溶液を取得できる。
【0034】
前記の安定剤(D)は、脱保護しやすい観点から、水、沸点140℃未満のアルコール、又は沸点140℃未満のアミン((B)を除く)あることが好ましい。又、安定剤(D)は、反応液から蒸留により容易に除去できる観点から、水、沸点120℃以下のアルコール又は沸点120℃以下のアミン((B)を除く)であることがより好ましく、沸点100℃以下のアルコール又は沸点100℃以下のアミン((B)を除く)であることが特に好ましい。安定剤(D)は1種単独で使用してもよいし、又2種以上併用してもよい。
【0035】
安定剤(D)としてのアルコールは、特に限定されず、分子内に水酸基を有すればよい。アルコールとしては、分子内に水酸基を1個のみ有する単官能アルコール、分子内に水酸基を2個有する二官能アルコール、分子内に水酸基を3個以上有する多官能アルコールを用いることができる。中でも、単官能アルコールは、保護反応も脱保護反応も比較的容易に進行するため、好ましい。単官能アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノール、t-ブチルアルコール、9-デセン-1-オール、1-オクタコサノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル、4-ジメチルアミノ-1-ブタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の分子内に一級又は二級の水酸基1個を有する単官能アルコールが挙げられる。中でも、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブチルアルコールとt-ブチルアルコールの沸点が常圧で120℃以下であり、低温で脱保護可能のため、より好ましい。これらのアルコールは1種単独で使用してもよいし、又2種以上併用してもよい。
【0036】
安定剤(D)としてのアミンは、反応性促進剤(B)を除く、分子内にアミノ基を有する第一級アミンと第二級アミンであれば、特に限定されない。中でも、第二級アミンは、保護反応も脱保護反応も比較的容易に進行するため、好ましい。第二級アミンとして、例えば、ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジアリルアミン、ピペリジン、ピロリジン、モルホリン、N-メチルベンジルアミンとジベンジルアミン等の第二級アミンが挙げられる。中でも、ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジアリルアミン、ピペリジン、ピロリジンの沸点が常圧で120℃以下であり、低温で脱保護可能のため、より好ましい。これらのアミンは1種単独で使用してもよいし、又2種以上併用してもよい。
【0037】
安定剤(D)は、水、前記の各種アルコール及び前記の各種アミンからなる群より選択される何れか1種単独で使用してもよいし、又は2種以上併用してもよい。
【0038】
安定剤(D)を用いる場合、Dの種類と樹脂合成反応の原料の種類によって、その作用機構は異なると推測される。例えば、酸二無水物とジアミンからポリイミド前駆体及びポリイミド樹脂の合成において、まず酸二無水物とジアミンを溶媒中で開環重付加反応させることにより、ポリイミド前駆体としてポリアミド酸(カルボン酸基とアミドを有する)が得られ、その後、加熱することによりポリアミド酸の分子内脱水環化(カルボン酸基とアミド基の脱水によりイミド基の形成)反応が起こり、ポリイミドが得られる。この反応系内に水が存在すると、酸二無水物の1個のカルボン酸無水物基を加水分解して2個のカルボン酸基を生成し、アミノ基と反応する官能基の数が増加し、仕込んだジアミンと酸二無水物の化学量論性が崩れてポリアミド酸の重合度が上がらず、最終的に高分子量のポリイミド樹脂が得られないため、安定剤として水を添加することは好ましくない。一方、この反応系内にアルコール又はアミンが存在すると、1個のカルボン酸無水物基とアルコールが反応し、1個のカルボン酸基と1個のカルボン酸エステル基を生成し、又は1個のカルボン酸無水物基とアミンが反応し、1個のカルボン酸基と1個のカルボン酸アミド基を生成し、アミノ基と反応する官能基の数が変化せず、高重合度の、部分的にアミド酸エステル基に置換されたポリアミド酸又は部分的にアミド酸アミド基に置換されたポリアミド酸が得られる。ポリアミド酸エステルとポリアミド酸アミドは、相当するポリアミド酸に比べ、溶液の安定性が高いため、樹脂合成用溶媒に安定剤としてアルコール又はアミンを添加することで、高透明性、高安定性のポリイミド前駆体溶液を取得できる。又、ポリアミド酸エステルとポリアミド酸アミドは、加熱によりアルコールやアミンの脱離を伴いイミド化され、最終的に高分子量のポリイミド樹脂が得られる。このため、酸二無水物とジアミンからポリイミド前駆体及びポリイミド樹脂を合成する場合に、その溶媒に安定剤としてアルコール、アミンを添加することは好ましい。
【0039】
又、安定剤(D)を用いて、酸二無水物とジイソシアネートからポリアミドイミド前駆体及びポリアミドイミド樹脂を合成する場合、反応系内に少量の水を含有することにより酸無水物基が加水分解して、カルボン酸基が得られ、得られたカルボン酸基がジイソシアネートのイソシアネート基と反応してアミド基を生成し、ポリアミドイミド前駆体であるポリアミド酸の重合度が低下せず、逆に反応速度の向上と分子量(重合度)の向上が見られる。又、この反応系内にアルコール又はアミンが存在すると、ポリイミド前駆体の反応系と同様な効果が見られると同時に、アルコールやアミンがイソシアネート基に対する保護効果を有するため、必要に応じて保護や脱保護することで、より高透明性、高安定性、高分子量のポリイミド前駆体溶液及び高分子量のポリアミドイミド樹脂を得ることができる。このため、酸二無水物とジイソシアネートからポリアミドイミド前駆体及びポリアミドイミド樹脂を合成する場合に、その溶媒に安定剤として水、アルコール、アミンを添加することは好ましい。
【0040】
安定剤(D)の含有量は、樹脂合成反応の種類、用いる反応促進剤(B)、又は安定剤(D)の種類によって適宜変更することができるが、Bの全体量に対して10~500質量%であることが好ましい。この範囲内であれば、ポリアミドイミド前駆体、ポリイミド前駆体等の前駆体の合成も、ポリウレタンの合成も、所定の温度範囲における反応速度を容易に制御できる。又、Dの含有量は、Bに対して20~300質量%であることがより好ましく、50~200質量%であることが特に好ましい。
【0041】
本実施形態の樹脂合成用溶媒(C)は、ポリイミド前駆体、ポリアミドイミド前駆体、ポリエステルイミド前駆体、ポリエーテルイミド前駆体、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、前記各種の樹脂前駆体から選択される何れか2種以上からなるポリイミド系共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、フッ素樹脂の合成に好適に用いることができる。
【0042】
ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂及びそれら何れかの前駆体の原料として用いられる酸二無水物は、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9-ビス(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル)フルオレン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等の環状脂肪族基を含有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの酸二無水物は1種単独で使用してもよいし、又2種以上併用してもよい。
【0043】
ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂及びそれら何れかの前駆体の原料として用いられるジアミン化合物は、例えば、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジ(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-5,5’-ジヒドロキシベンジジン、3,5-ジアミノ安息香酸、3,4-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸、これらの芳香族環の水素原子の少なくとも一部をアルキル基やハロゲン原子で置換した化合物等の芳香族ジアミン、シクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミン等の環状脂肪族基を含有する脂肪族ジアミン等が挙げられる。これらのジアミン化合物は1種単独で使用してもよいし、又2種以上併用してもよい。
【0044】
ポリアミドイミド樹脂やその前駆体の原料、及びポリウレタン樹脂の原料として用いられるジイソシアネートは、例えば、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート及び芳香脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。これらのジイソシアネート化合物は1種単独で使用してもよいし、又2種以上併用してもよい。
【0045】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2,2’-ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカメチレントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアナトメチルオクタン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアネート-5-イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテル-ω、ω’-ジイソシアネート、リジンイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート、2-イソシアナトプロピル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート、ビス(4-イソシアネート-n-ブチリデン)ペンタエリスリトール、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
【0046】
又、脂肪族ジイソシアネート中の環状構造を有する脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)、1,3-又は1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはこれらの混合物(ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI))、4,4’-、2,4’-又は2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはこれらの混合物(H12MDI)、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジイソシアネートもしくはこれらの混合物、1,3-又は1,4-ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,2’-ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,5-又は2,6-ジイソシアナトメチルビシクロ[2,2,1]-ヘプタン(NBDI)、2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-5-イソシアナトメチルビシクロ-[2,2,1]-ヘプタン、2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-6-イソシアナトメチルビシクロ-[2,2,1]-ヘプタン、2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-5-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-[2,2,1]-ヘプタン、2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-6-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-[2,2,1]-ヘプタン、2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-5-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-[2,2,1]-ヘプタン、2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-6-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-[2,2,1]-ヘプタン等の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0047】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート及び2,6-トリレンジイソシアネート、ならびに、これらトリレンジイソシアネートの異性体混合物(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート及び2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ならびに、これらジフェニルメタンジイソシアネートの任意の異性体混合物(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、パラフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0048】
前記の芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(XDI)、1,3-又は1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TMXDI)等の芳香脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
【0049】
ポリウレタン樹脂の原料として用いられるポリオールの具体例としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。これらのポリオールを1種単独で使用してもよいし、又2種以上併用してもよい。
【0050】
本実施形態の樹脂合成用溶媒(C)は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂及びそれらの前駆体、並びにポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリル樹脂、フッ素樹脂等に対する溶解性に優れるため、各種樹脂の製造と溶解に用いられる溶媒として好適に使用することができる。又、本実施形態の樹脂合成用溶媒(C)を用いることにより前記各種樹脂の合成反応を短時間で完結することができ、反応が低温でも容易に進行し、高温でも容易に制御でき、高分子量、高透明性と良好な耐熱性、機械的特性を有する樹脂を取得することができる。
【0051】
樹脂合成用溶媒(C)を使用して各種樹脂を合成する場合、公知の反応条件で行うことができる。即ち、反応装置、原料及び原料仕込み比、原料の仕込み方法、反応温度、反応時間、精製方法等は従来とおりである。又、反応温度において、ポリイミド前駆体、ポリアミドイミド前駆体(以下、併せてポリアミド酸とも称する。)、ポリウレタンを合成する際に、従来に比べ、より低い温度でも反応を完結することができる。一方、各種前駆体の脱水イミド化反応は、従来に比べ、より高い温度で処理することができ、より高耐熱性、高耐薬品性を有するポリイミド、ポリアミドイミド等の樹脂製品を得ることができる。
【0052】
一実施形態における樹脂合成用溶媒(C)を使用して酸二無水物とジアミンからポリイミド前駆体を合成する反応において、反応温度は-20℃~80℃であり、0℃~70℃であることが好ましく、10℃~60℃であることがより好ましい。酸二無水物とジイソシアネートからポリアミドイミド前駆体を合成する反応において、反応温度は40℃~140℃であり、60℃~130℃であることが好ましく、80℃~120℃であることがより好ましい。これらの前駆体の合成は、反応温度がそれぞれの下限温度以上であれば、反応が十分な速度で進行することができ、短時間で完結できるため、生産性がよい。又、反応温度がそれぞれの上限温度以下である場合、生成したポリアミド酸の分子内イミド化反応の進行が抑制され、ポリアミド酸溶液の透明性が良く、又経時的白濁やゲル状不溶物の析出がなく、保存安定性が良い。なお、これらの反応の反応時間は、反応温度により変わってくるが、通常1時間~24時間の範囲である。
【0053】
一実施形態における樹脂合成用溶媒(C)を使用してポリオールとジイソシアネートからポリウレタンを合成する反応において、反応温度は通常20℃~150℃であり、30℃~120℃であることが好ましく、40℃~110℃であることがより好ましい。反応促進剤(B)の存在によりウレタン化反応を20℃程度の低温においても進行させることができ、又高分子量のポリウレタンが得られる。又、安定剤としてアルコールやアミンが存在すると、ジイソシアネートのイソシアネート基が保護され、加熱によるジイソシアネートの自己重合(ウレチヂオン化やイソシアヌレート化等)、高温におけるジイソシアネートとアミド系溶媒の副反応を抑制することができ、ゲル化しない高分子量ポリウレタン溶液を取得できる。このように得られるポリウレタン溶液の粘度は低く、コーティング剤用、インク用、接着剤用等のバインダー樹脂として好適に用いることができる。
【0054】
一実施形態で製造される合成用溶媒(C)を含有するポリウレタン樹脂溶液を用いて、これを水中に添加して、ポリウレタン樹脂を水に分散させることでポリウレタンディスパージョン(PUDs)が製造される。PUDsは環境に配慮した低VOCタイプの水系塗料、接着剤、インクバインダー、コーティング剤等に幅広く使用されている。PUDsに含有される有機溶媒は水溶性と優れる安全性が要求されるため、樹脂合成用溶媒(C)はPUDs向けポリウレタン樹脂の合成用溶媒として最適であると考える。樹脂合成用溶媒(C)を含有するPUDsは、イソシアネート基が安定剤(D)により保護されるため、保存安定性に優れ、長期間保存しても分散液の二層分離や不溶物発生(ゲル化)等を生じず、-20~80℃の広い温度範囲で貯蔵することができる。又、樹脂合成用溶媒(C)中のアミド系溶媒(A)のアミド基がゴム、プラスチックから金属まで各種基材に対する良好な密着性を有するため、PUDsは溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、熱間圧延鋼板、冷間圧延鋼板等の各種鋼板に使用される鋼板処理剤に、ゴムコーティング剤に、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド等のフィルム、基板のコーティング剤、プライマーに好適に用いられる。本発明で製造されるポリウレタン樹脂は高分子量化することができ、それから調製されるPUDsの粘度を目的に応じて任意に調整することができ、インクジェット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷など、各種印刷様式に適用可能であり、テキスタイル(捺染)、フィルム、シート等への印刷インク用バインダーとして使用することができる。
【0055】
本実施形態の樹脂合成用溶媒(C)を用いて製造されたポリイミド前駆体溶液(ポリアミド酸溶液、樹脂ワニスとも称する。)は、長期保存中(輸送や貯蔵)や使用時(ポリイミド成形体の製造)における安定性が良好である。樹脂合成用溶媒(C)を使用して得られるポリイミド前駆体溶液は、バインダー樹脂としてポリイミド成形体やポリアミドイミド成形体の形成用塗工液、インク、絶縁性保護膜、導電性インク、感光性樹脂、耐熱性塗料等に利用することができる。又、ポリイミド成形体の形成用塗工液としては、例えば、金属やガラス基材上に通常の成膜法(スピンコーティング法、ディップコーティング法、溶媒キャスティング法、スロットダイコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法等)により所望の厚みを有する塗膜を形成してから、段階的加熱イミド化することによりポリイミドフィルム、ポリイミドシート、ポリアミドイミド耐熱塗膜、潤滑塗膜、金属接着用接着膜、液晶配向膜等の成形体の成形に利用することができる。
【0056】
本実施形態の樹脂合成用溶媒(C)を用いて、ポリイミドフィルムを製造することができる。その製造方法は特に限定されないが、樹脂合成用溶媒(C)を用いて合成されたポリイミドワニス(ポリイミド前駆体溶液、部分イミド化したポリイミド前駆体溶液)又はポリイミド樹脂溶液(可溶性ポリイミド樹脂の溶液)を用いて、金属やガラス基材上に塗膜を形成してから、高温対流オーブン等で100℃~500℃の温度下で段階的熱処理によりイミド化する方法が挙げられる。熱処理は窒素等の不活性ガス雰囲気下で、100℃~300℃で10~60分間、300℃~400℃で30~60分間、400℃~500℃で5~30分行い、好ましくは100℃~150℃で10~30分間、220℃~250℃で10~30分間、350℃で30分間、450℃で10分間を行う。このような温度と時間で熱処理されたポリイミドフィルムは、溶媒を段階的にかつ完全に除去することができ、高透明性、高耐熱性を有する。
【0057】
本実施形態の樹脂合成用溶媒(C)を用いて、ポリイミド粒子を製造することができる。その製造方法は特に限定されないが、樹脂合成用溶媒(C)を用いて合成されたポリイミドワニス(ポリイミド前駆体溶液、部分イミド化したポリイミド前駆体溶液)を撹拌しながら50℃~300℃の温度下で段階的に加熱し、イミド化して不溶化したポリイミド粒子を分散、沈殿させる方法と、樹脂合成用溶媒(C)を用いて合成されたポリイミドワニスを高沸点の非極性溶媒(貧溶媒)中に加え、超音波照射しながら又は撹拌しながら50℃~300℃の温度下で段階的に加熱し、イミド化して不溶化したポリイミド粒子を分散、沈殿させる方法を挙げることができる。高沸点の非極性溶媒としてキシレン、アセトフェノン、安息香酸エチル、安息香酸ベンジル、テトラリン等が挙げられる。ここで50℃~300℃で段階的加熱とは、50℃~200℃で30~120分間、200℃~300℃で10~60分間加熱することであり、好ましくは70℃で60分間、120℃で60分間、240℃で30分間加熱することである。これらの方法で製造されたポリイミド粒子は、遠心分離や減圧乾燥処理で粉末として得た後、更に350℃で120分間を熱処理することが好ましい。
【0058】
本発明の製造方法で得られるポリイミド粒子は、ポリイミド樹脂と同様に高耐熱性、耐溶剤性(耐薬品性)、優れた電気絶縁性等の特性を有し、電気・電子産業技術分野や航空・宇宙技術分野等のハイテク産業において広く用いられる。例えば、画像形成用の粉末トナー添加剤、電気絶縁部品のコーティング材、成形用充填材、液晶用スペーサー等の電気・電子材料、耐熱性塗料や潤滑剤の添加剤等の複合材料への応用展開が期待されている。
【0059】
本発明の樹脂合成用溶媒(C)を使用することで高品質なポリイミドワニス、ポリアミドイミドワニス、ポリエステルイミドワニス、ポリエーテルイミドワニス、ポリウレタン樹脂ワニス、ポリアミド樹脂ワニス、ポリアクリル樹脂ワニス、フッ素樹脂ワニスを取得することができる。又、これらのワニスを適宜に加熱処理、成形加工することにより高品質なポリイミド系、ポリアミドイミド系、ポリエステルイミド系、ポリエーテルイミド系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリアクリル系、フッ素系の樹脂、フィルム、粒子等を取得することができる。これらの樹脂、フィルム、粒子等の成形体は、フレキシブル電子基板フィルム、銅張積層フィルム、ラミネートフィルム、電気絶縁フィルム、燃料電池用多孔質フィルム、分離フィルム等のポリイミドフィルムやポリイミドシート、絶縁被膜、耐熱性皮膜、ICパッケージ、接着膜、液晶配向膜、レジスト膜、平坦化膜、マイクロレンズアレイ膜、電線被覆膜、光ファイバー被覆膜等のポリイミド被膜、駆動ベルト、電子写真方式の画像形成装置用のベルト(例えば、中間転写ベルト、転写ベルト、定着ベルト、搬送ベルト)等のベルト部材として好適に用いることができる。
【実施例
【0060】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」及び「%」、「/」は特記しない限りすべて質量基準である。
【0061】
実施例及び比較例に用いた材料は以下のとおりである。
(A)アミド系溶媒
A-1:N-ブチル-2-ピロリドン
A-2:3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(KJケミカルズ社製、登録商標「KJCMPA」)
A-3:3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(KJケミカルズ社製、登録商標「KJCBPA」)
A-4:3-ラウロキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド
A-5:3-メトキシ-N,N-ジエチルプロパンアミド
A-6:3-エトキシ-N-フェニルプロパンアミド
A-7:3-メトキシ-N-シクロヘキシルプロパンアミド
A-8:N,N-ジエチルブタンアミド
A-9:N-プロパノイルモルホリン
A-10:4-(3-メトキシプロピオニル)モルホリン
A-11:N,N-ジイソプロピルアセトアミド
A-12:3-イソプロポキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド
(B)反応促進剤
B-1:トリブチルアミン
B-2:トリエチレンジアミン
b1-1:(メトキシエチル)ジフェニルアミン
b1-2:N,N-ジメチルジメトキシメタンアミン
b2-1:ジメチルアミノプロピオン酸メチル
b2-2:ジブチルアミノプロピオン酸ブチル
b2-3:3-メトキシプロピオン酸メチル
b3-1:ジブチルアミノ-N,N-ジメチルプロピオン酸アミド
b3-2:モルホリノプロピオン酸モルホリド
b3-3:ジメチルアミノ-N,N-ジメチルプロピオン酸アミド
b3-4:N,N-ジメチルプロピオンアミド
(D)安定剤
D-1:水
D-2:メタノール
D-3:イソプロピルアルコール
D-4:ジエチルアミン
D-5:ピロリジン
(E)イオン性液体
E-1:トリフルオロメタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム
E-2:1-メチル-3-プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
(F)その他の溶媒
F-1:1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン
F-2:ジメチルスルホキシド
F-3:γ-バレロラクトン
F-4:γ-ブチロラクトン
F-5:N-ホルミルモルホリン
F-6:4-アセチルモルホリン
F-7:ジプロピレングリコールジメチルエーテル
F-8:4-メチルテトラヒドロピラン
F-9:シクロペンチルメチルエーテル
F-10:キシレン
【0062】
実施例1(ポリイミド前駆体溶液の合成と評価)
攪拌棒、温度計、滴下ロート、窒素ガス導入管を備えた容量1000mLの4つ口フラスコに、溶媒としてC-1(表1に示す)350g、ジアミン化合物として4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)25.0g(125mmol)を仕込んだ。窒素ガスを通しながら室温で30分間攪拌し、無色、透明な溶液を得た後、溶液の温度を80℃に昇温し、80℃を維持しながら酸二無水物として3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)37.8g(128mmol)をゆっくり加えた。80℃で更に1時間攪拌を続けた後、室温に冷却し、固形分濃度が15質量%となるように溶媒C-1(5g)を加え、無色、透明な粘性のあるポリイミド前駆体溶液(ワニス)を得た。得られたワニスの透明性、着色の有無を目視で観測し、粘度測定とポリイミド前駆体の数平均分子量分析を下記方法により行い、結果を表1に示した。又、得られたワニスを40℃で30日間保管した後、その粘度測定を行い、経時粘度変化率を下記式により算出し、保管後の粘度と経時粘度変化率を表1に示した。
経時粘度変化率(%)=(30日後の粘度-初期粘度)/初期粘度×100%
【0063】
(粘度測定)
コーンプレート型粘度計(東機産業社製、RE550型粘度計)を使用し、JIS K5600-2-3に準じて、25℃にてワニスの粘度を測定した。
【0064】
(数平均分子量)
日立製作所製高速液体クロマトグラフィーL6000及び日立製作所製データ解析装置ATT-8を用いて、カラムとしてはGelpack GL-S300MDT-5(2本)を使用し、移動相としてDMF/THF=1/1(L/L)の混合物にリン酸(0.06M)と臭化リチウム(0.06M)を溶解させた溶媒を使用した。試料濃度0.2%、流量1.0ml/minの条件で測定を行い、数平均分子量はポリスチレン標準サンプルを用いた検量線で算出した。
【0065】
ポリイミドフィルムの作製と評価
得られたポリイミド前駆体溶液(ワニス)をガラス基板に塗布し、熱風乾燥機を用いて、窒素気流下、120℃で10分間、250℃で10分間、350℃で30分間加熱処理した。ポリイミドフィルムとガラス基板の積層体を水に10分間浸漬し、ガラス基板からポリイミドフィルムを剥離し、熱風乾燥機を用いて80℃で10分間乾燥し、膜厚が約10μmの無色、透明なポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの外観、光透過性、強度、伸度、線熱膨張係数を下記方法により評価を行い、結果を表1に示した。
【0066】
(ポリイミドフィルムの外観)
得られたポリイミドフィルムを用いて、目視によって観察し、発泡や割れ等の不具合の発生状況を確認し、以下の基準により評価を行った。
◎:淡黄色、透明で、発泡も割れもないものである。
〇:淡黄色~黄色、透明で、発泡或いは割れが僅かにあるものである。
△:黄色又は半透明で、発泡或いは割れが数個あるものである。
×:黄色~褐色又は不透明で、発泡或いは割れが多数あるものである。
【0067】
(透明性)
温度23℃、相対湿度50%の条件下、得られたポリイミドフィルムを一晩静置した後、光透過率を測定した。測定はヘイズメーター(日本電色工業製、NDH-2000)を用いて、JIS K7105に準拠して測定を行った。光透過率が高いほど、ポリイミドフィルムの透明性がよい。
【0068】
(引張強度と引張伸度)
得られたポリイミドフィルムを長さ100mm、幅10mmの試験片に裁断し、温度23℃、相対湿度50%の条件下、24時間静置した後、引張試験機(ORIENTEC社製、テンシロン RTA-100)を用い、チェック間50mm、引張速度50mm/min、n=5で試験を行った。引張強度が高いほど、ポリイミドフィルムの強度が高い。又、引張伸度が高いほど、ポリイミドフィルムの伸度が高い。
【0069】
(線熱膨張係数)
得られたポリイミドフィルムを長さ20mm、幅2mmの試験片に裁断し、温度23℃、相対湿度50%の条件下、一晩静置した後、熱機械分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、EXSTAR6000)を用い、窒素気流下で測定を行った。測定方法は、5℃/minのレートで室温から220℃まで昇温し、220℃から室温まで降温し、その後、5℃/minのレートで2回目昇温し、50℃~200℃の平均線膨張係数を測定した。平均線膨張係数が低いほど、耐熱性や寸法安定性が高い。
【0070】
実施例2~12及び比較例1~6
実施例2~12において、表1と表2に記載のジアミン成分、酸二無水物成分、溶媒(C-2~C-12)とその他の成分を用いた以外、実施例1と同様にし、固形分濃度が15質量%のポリイミド前駆体溶液(ワニス)を合成し、更にポリイミドフィルムの作製を行った。得られたワニスとフィルムの評価を実施例1と同様に実施し、結果を表1と2に示した。又、比較例1~6において、表3に記載のジアミン成分、酸二無水物成分、溶媒とその他の成分を用いて、実施例1と同様にポリイミド前駆体溶液(ワニス)の合成とポリイミドフィルムの作製を行った。得られたワニスとフィルムの評価を実施例1と同様に実施し、結果を表3に示した。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
表1~表3に示した実施例と比較例の結果から分かるとおり、本発明の実施形態である樹脂合成用溶媒(C)はアミド系溶媒(A)と反応促進剤(B)を含有することによって、ジアミン化合物と酸二無水物との反応を速くかつ安定的に進行させることができ、高透明性、無色、低粘度のポリイミド前駆体溶液(ワニス)を製造することができる。又、得られたワニスの粘度の経時的な変化率は極めて低く、長期的な貯蔵や輸送に対応することができる。更に、これらのワニスを用いて得られるポリイミドフィルムは高透明性、高光透過性、低着色性を有し、かつ強度、伸度と耐熱性や寸法安定性に優れていることが分かる。本発明の効果は、樹脂合成用溶媒(C)の構成成分であるアミド系溶媒(A)の優れた溶解力と反応促進剤(B)による反応促進の相乗効果によるものであり、アミド系溶媒(A)のみ或いは反応促進剤(B)とその他の溶媒の組み合わせで得られるものではない。
【0075】
実施例13(ポリアミドイミド前駆体溶液の合成)
撹拌機、冷却管、温度計及び窒素ガス導入管を備える3Lの四口フラスコに、トリメリット酸二無水物(TMA)117.6g(0.6mol)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)128.8g(0.4mol)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)250.2g (1.0mol)及び溶媒C-13(表4に示す)500gを仕込んで、撹拌しながら120℃に昇温し、120℃で6時間反応させた。反応終了後、反応液を80℃に冷却し、固形分濃度が30質量%となるように溶媒C-13(660g)で希釈し、無色透明な溶液としてポリアミドイミド前駆体溶液(ワニス)を得た。得られた前駆体溶液の粘度と前駆体の数平均分子量を前記同様の方法で測定し、その結果を表4に示した。
【0076】
実施例14~24と比較例7~12
実施例14~24において、表4と表5に記載の酸二無水物成分、ジイソシアネート成分、溶媒(C-14~C-24)とその他の成分を用いた以外、実施例13と同様にし、ポリアミドイミド前駆体溶液の合成を行った。又、比較例7~12において、表6に記載の酸二無水物成分、ジイソシアネート成分、溶媒とその他の成分を用いて、実施例13と同様にポリアミドイミド前駆体溶液の合成を行った。得られた各種前駆体溶液の粘度と前駆体の数平均分子量を前記同様の方法で測定し、その結果を表4~6に示した。
【0077】
塗膜作製と評価
得られたポリアミドイミド前駆体溶液(ワニス)を試験用塗料として厚み1.0mmのアルミ基板又は銅箔の上に、乾燥膜厚約5μmとなるように塗布して、80℃で20分予備乾燥を行い、400℃で10分間焼成することにより塗膜を得た。得られた塗膜を用いて、密着性、耐折り曲げ性、耐酸性、耐アルカリ性及び耐スチーム性を評価し、結果を表4~6に示した。
【0078】
(密着性)
JIS-K5600に従い、塗膜に1mmの碁盤目を100個作製し、粘着テープにより剥離試験を行った。残った碁盤目の数を数え、下記基準により密着性を評価した。
◎:100個で剥離なし
〇:95~99個で剥離なし
△:70~94個で剥離なし
×:0~69個で剥離なし
【0079】
(耐折り曲げ性)
塗膜(アルミ板付き)の塗布面を外側にして折り曲げる際、折り曲げ部に塗布に用いたアルミニウム板を挟み、折り曲げ部に亀裂が入るときの挟んだ板の枚数によって、下記基準のとおり耐折り曲げ性を評価した。
◎:0枚
〇:1~2枚
△:3~5枚
×:6枚以上
【0080】
(耐酸性)
塗膜(アルミ板付き)の非塗布面を粘着テープで保護した試験片を、5%硫酸溶液に浸漬し、室温で1週間静置した後、塗膜の状態を目視で観察し、下記基準により耐酸性を評価した。
○:変化なし
△:ブリスターが見られる
×:塗膜が剥離
【0081】
(耐アルカリ性)
塗膜(アルミ板付き)の非塗布面を粘着テープで保護した試験片を、5%水酸化ナトリウム溶液に浸漬し、室温で1週間静置した後、塗膜の状態を目視で観察し、下記基準により耐アルカリ性を評価した。
○:変化なし
△:ブリスターが見られる
×:塗膜が剥離
【0082】
(耐スチーム性)
塗膜(アルミ板付き)をオートクレーブ中で2atmに加圧された120℃のスチームと100時間接触させ、その後、前記と同様に密着性を評価し、密着性が高いほど、耐スチーム性が高いと評価した。
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
表4~6に示した実施例と比較例の結果から分かるとおり、本発明の実施形態である樹脂合成用溶媒(C)はアミド系溶媒(A)と反応促進剤(B)を含有することによって、ジイソシアネート化合物が酸二無水物と反応する際に、反応を安定的に進行させることができ、かつ反応速度が高く、高透明性、無色、低粘度のポリアミドイミド前駆体溶液(ワニス)を製造することができる。又、得られたワニスの粘度の経時的な変化率は極めて低く、長期的な貯蔵や輸送に対応することができる。更に、これらのワニスを用いて金属基板上に塗布し、300℃~550℃の高温での焼き付け作業により、優れた密着性、耐折り曲げ性、耐酸性、耐アルカリ性と耐スチーム性を有する高性能塗膜を取得することができる。本発明の効果は、樹脂合成用溶媒(C)の構成成分であるアミド系溶媒(A)の優れた溶解力と反応促進剤(B)による反応促進の相乗効果によるものであり、アミド系溶媒(A)のみ或いは反応促進剤(B)とその他の溶媒の組み合わせで得られるものではない。このように得られた塗膜は焼き付け温度以上の耐熱性を有すため、本発明で得られる各種のポリアミドイミド前駆体溶液(ワニス)は耐熱性塗料として好適に用いることができる。
【0087】
実施例25(ポリウレタン樹脂溶液の合成)
撹拌機、冷却管と温度計を備える2Lの四口フラスコに、ポリプロピレングリコール(PPG)150.0g(0.05mol)、ポリエステルポリオール(PEs)100.0g(0.05mol)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)62.6g(0.25mol)及び溶媒C-25(表7に示す)800gを仕込んで、撹拌しながら70℃に昇温し、70℃で2時間反応させ、プレポリマーを得た。次に、エチレングリコール(EG)9.3g(0.15mol)を添加し、60℃で3時間反応させた。反応液を室温に冷却し、固形分(ポリウレタン樹脂)濃度が25.0質量%となるように溶媒C-25(490g)で希釈し、無色透明な溶液としてポリウレタン樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の粘度と樹脂の数平均分子量を前記同様の方法で測定し、表7に示した。
【0088】
実施例26~36と比較例13~18
表7~9に記載の条件に変更した以外は、実施例25と同様に、実施例26~36及び比較例13~18におけるポリウレタン樹脂の合成を行った。得られた各種樹脂溶液の粘度と樹脂の数平均分子量を前記同様の方法で測定し、表7~9に示す。
【0089】
得られたポリウレタン樹脂溶液を用いて、下記方法により塗膜を作製した。前記同様の引張試験により塗膜の引張強度(破断強度)と引張伸度(破断伸度)を測定し、表7~9に示した。
【0090】
(透湿性試験と耐水圧試験)
得られたポリウレタン樹脂溶液を用いて、撥水処理を施したナイロンタフタ上に、ロールオンナイフコーターにて乾燥後の厚さが40μmとなるように塗布し、水中で2分間凝固させた。更に50℃の温水に3分間浸漬させ洗浄を行い、150℃で1分間乾燥させることにより、ポリウレタン樹脂膜を有する透湿防水布帛を得た。得られた透湿防水布帛を用いて、JIS L-1099(A-1法)に基づいて透湿度を測定し、又、JIS L-1092に基づいて耐水圧を測定した。これらの測定結果を表7~9に示した。
【0091】
【表7】
【0092】
【表8】
【0093】
【表9】
【0094】
表7~9に示した結果から分かるとおり、本発明の実施形態である樹脂合成用溶媒(C)はアミド系溶媒(A)と反応促進剤(B)を含有することによって、ポリオールとジイソシアネートの反応を安定的に進行させることができ、かつ得られるポリウレタン樹脂の分子量が高く、高透明性、無色のポリウレタン樹脂溶液を製造することができる。又、得られたポリウレタン樹脂溶液の粘度の経時的な変化率は極めて低く、長期的な貯蔵や輸送に対応することができる。更に、これらのポリウレタン樹脂溶液を用いて離型紙やプラスチックシート上に塗布することで高強度と高伸度の塗膜を取得することができ、ナイロンタフタ上に塗布することによって透湿性と耐水性を併せ持つ透湿防水布帛等の耐水性製品を製造することができる。本発明の効果は樹脂合成用溶媒(C)の構成成分であるアミド系溶媒(A)の優れた溶解力と反応促進剤(B)による反応促進の相乗効果によるものであり、アミド系溶媒(A)のみ或いは反応促進剤(B)とその他の溶媒の組み合わせで得られるものではない。又、本発明で得られるポリウレタン樹脂は優れる耐水性を有するため、水に分散させることにより各種ポリウレタンディスパージョン(PUDs)を製造することができる。
【0095】
実施例37~46(潤滑塗料)と比較例19~24
実施例1~24と比較例1~12で得られた各種ワニス(ポリイミド前駆体溶液、ポリイミドアミド前駆体溶液)を用いて、表10と表11に示す固体潤滑剤、添加剤と混合し、固形分濃度が15質量%になるように各ワニスに用いた溶媒によって希釈し、潤滑塗料を調製した。調製した潤滑塗料を用いて、下記方法にて塗料性、塗装性を評価し、その結果を表10に示す。又、下記方法により潤滑塗料から潤滑塗膜を作製して、耐摩耗性、密着性を評価し、結果を表10と表11に示す。なお、表中、「MoS」は二硫化モリブデン(住鉱潤滑剤社製、モリパウダーPS、密度4.8g/cm)、「PTFE」はポリテトラフルオロエチレン(セントラル硝子社製、セフラルルーブ)、「グラファイト」は鱗片状黒鉛W-5(伊藤黒鉛工業社製、密度2.2g/cm)、「エポキシ樹脂」はノボラック型エポキシ樹脂(油化シェル社製、エピコート152)を示す。
【0096】
(塗料性)
調製した潤滑塗料について、固体潤滑剤の分散状態と、樹脂ワニス(ポリイミドワニス、ポリアミドイミドワニス)の凝集の有無を目視で確認し、以下の基準により評価を行った。
◎:混合過程及び調製後の潤滑塗料中に凝集物が見られず、樹脂ワニスが溶解し、均質である(実用レベル)。
○:混合過程で固体潤滑剤が均一に分散していないが、最終的に潤滑塗料中に凝集物がなく、ワニス樹脂が溶解し、均質である(実用レベル)。
×:混合過程または調製後の潤滑塗料中のワニス樹脂が凝集によりゲル化を引き起こす。
【0097】
(塗装性)
調製した潤滑塗料を用いて、スプレー塗装法によりSUS316円盤(直径100mm、厚さ5mm)の表面に厚さ10μmの被膜を塗装した。塗装面の状態を目視で確認し、以下の基準により評価を行った。
○:塗装面が均一で良好である(実用レベル)。
×:塗装面が不均一で、うねり及びムラがある。
【0098】
(摺動特性(耐摩耗性))
調製した潤滑塗料を用いて、90℃に予熱したSUS316円盤(直径100mm、厚さ5mm)の表面に塗膜の厚さが10μmとなるようにスプレー塗装した。その後、100℃で10分間、200℃で10分間乾燥し、更に400℃で1時間加熱して、塗膜試験片を得、鋼球(SUJ2)を相手材として往復摺動摩耗試験を行った。摺動試験条件は、15mm/sで100サイクルとした。摺動試験後、塗膜の摩耗深さを測定し、以下の基準により評価を行った。
◎:最も消耗している部分の摩耗深さが3μm以下である(実用レベル)。
○:最も消耗している部分の摩耗深さが3μmを超え、5μm以下である(実用レベル)。
△:最も消耗している部分の摩耗深さが5μmを超え、7μm以下である(実用レベル)。
×:最も消耗している部分の摩耗深さが7μm以上である。
【0099】
(密着性)
調製した潤滑塗料をSUS316板(直径50mm×50mm、厚さ5mm)の表面に塗膜の厚さが10μmになるように塗装条件を固定してスプレー塗装した。塗装面を100℃で10分間、200℃で10分間乾燥し、更に400℃で1時間加熱して塗膜を形成した。JIS-K5600に従い、塗膜に1mmの碁盤目を100個作製し、粘着テープにより剥離試験を行った。残った碁盤目の数を数え、下記基準により密着性を評価した。
◎:100個で剥離なし
〇:95~99個で剥離なし
△:70~94個で剥離なし
×:0~69個で剥離なし
【0100】
【表10】
【0101】
【表11】
【0102】
実施例47~52(接着剤)と比較例25~28
卓上塗工機(コーターTC-1、三井電気精機株式会社製)を用いて、実施例1~24と比較例1~12で得られた各種ワニス(ポリイミド前駆体溶液、ポリイミドアミド前駆体溶液)を、乾燥後の厚さが35μmになるようにポリイミドフィルム(デュポン社製、カプトンENS、縦×横×厚さ=200mm×300mm×25μm)の片面にバーコーター(RDS社製 #15)にて塗布し、100℃で10分間、200℃で10分間乾燥を行い、接着剤層厚さ35μmのカバーレイフィルムとした。得られたカバーレイフィルム(接着剤層側)を、表面の防錆金属層を除去した銅箔上に置き(ポリイミドフィルム/接着剤層/銅箔)、温度400℃、圧力1MPa、時間1分の条件でプレスし、その後オーブンにて温度400℃、時間24時間の条件で加熱し、ポリイミドフィルム/接着剤層/銅箔の三層構成の積層体を得た。
【0103】
ポリイミド銅張積層板(新日鐵化学社製、エスパネックスMC18-25-00FRM)を回路加工して、配線幅/配線間隔(L/S)=1mm/1mmの回路が形成されたプリント基板を用意し、上記カバーレイフィルム(接着剤層側)をプリント基板の回路面に置き(ポリイミドフィルム/接着剤層/プリント基板/接着剤層/ポリイミドフィルム)、温度400℃、圧力1MPa、時間1分の条件でプレスし、その後オーブンにて温度400℃、時間24時間の条件で加熱し、カバーレイフィルムを備えた配線基板(ポリイミドフィルム/接着剤層/プリント基板/接着剤層/ポリイミドフィルムの五層構成の積層体)を得た。
【0104】
得られた積層体の接着強度を下記方法で測定し、下記基準により評価を行い、結果を表12に示す。又、得られた配線基板の半田耐熱性(乾燥及び耐湿)を下記方法で評価を行い、結果を表12に示す。
【0105】
(接着強度)
積層体を幅10mm、長さ100mmの試験片に切り出し、引張試験機(東洋精機社製、ストログラフ-M1)を用いて、180°方向に50mm/分の速度でポリイミドフィルムと銅箔を引き剥がし、剥離強度を接着強度とし、下記基準で評価した。
◎:0.35kN/m以上
○:0.2kN/m以上0.35kN/m未満
×:0.2kN/m未満
【0106】
(半田耐熱性(乾燥))
得られた配線基板を温度105℃、相対湿度50%の恒温恒湿槽に1時間放置した後、加熱した半田浴中に10秒間浸漬し、その接着状態を観察して、発泡、ふくれ、剥離等の不具合の有無を確認し、下記基準により評価した。
○:半田浴温度300℃でも発泡、ふくれ、剥離等の不具合なし。
×:半田浴温度300℃未満で発泡、ふくれ、剥離等の不具合あり。
【0107】
(半田耐熱性(耐湿))
得られた配線基板を温度85℃、相対湿度85%の恒温恒湿槽に24時間放置した後、加熱した半田浴中に10秒間浸漬し、その接着状態を観察して、発泡、ふくれ、剥離等の不具合の有無を確認した。
○:半田浴温度280℃でも発泡、ふくれ、剥離等の不具合なし。
×:半田浴温度280℃未満で発泡、ふくれ、剥離等の不具合あり。
【0108】
【表12】
【0109】
実施例53~58(感光性樹脂)と比較例29~32
実施例1~12と比較例1~6で得られた各種ワニス(ポリイミド前駆体溶液)を、固形分10gとなるように計量し、キノンジアジド化合物としてα,α,α’-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼンの1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステル(東洋合成工業社製、TS150-A)1.6g、光酸発生剤としてWPAG-567(富士フィルム和光純薬社製)0.42gを加えて感光性ポリイミド前駆体組成物を得た。得られた感光性ポリイミド前駆体組成物を6インチのシリコンウエハー上に、プリベーク後の膜厚が14~16μmとなるように塗布し、ホットプレート(東京エレクトロン社製の塗布現像装置Mark-7)を用いて120℃で2分間プリベークし、感光性樹脂膜を得た。次に、露光機(GCA社製i線ステッパーDSW-8000)にパターンの切られたレチクルをセットし、365nmの強度で露光時間を変化させて得られた感光性樹脂膜を水銀灯のi線(365nm)で露光した。東京エレクトロン社製Mark-7の現像装置を用い、50回転で水酸化テトラメチルアンモニウムの2.38%水溶液を10秒間、露光後の膜に噴霧した。その後、0回転で40秒間静置し、再度10秒間噴霧、40秒間静置の後、400回転で水にてリンス処理、3000回転で10秒振り切り乾燥し、現像後の感光性樹脂膜を得た。現像後の感光性樹脂膜を、光洋サーモシステム社製イナートオーブンINH-21CDを用いて、窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)、140℃で30分間、その後350℃まで1時間で昇温して350℃で1時間熱処理をし、キュア膜を作製した。
【0110】
得られた感光性ポリイミド前駆体組成物の保存安定性、パターン加工における感度及び解像度、加熱処理前後の膜厚の収縮率、及びキュア膜の接着特性を下記方法により評価し、結果を表13に示す。
【0111】
(保存安定性)
感光性ポリイミド前駆体組成物を調製後、速やかにパターン加工したものの最適露光時間と、23℃で2週間放置した後にパターン加工したものの最適露光時間との差の絶対値を算出し、下記基準により評価した。
◎:差の絶対値が100msec以下
○:差の絶対値が100msec超200msec以下
×:差の絶対値が200msec超
【0112】
(感度)
露光及び現像後、50μmのライン・アンド・スペースパターン(1L/1S)が、1対1の幅に形成される露光時間(最適露光時間)を求め、下記基準により評価した。最適露光時間が短い程、感度が高い。
◎:最適露光時間が700msec以下
○:最適露光時間が700msec超、800msec以下
×:最適露光時間が800msec超
【0113】
(解像度)
露光及び現像後、最適露光時間における最小のパターン寸法を測定し、下記基準により評価した。最小のパターン寸法が小さい程、解像度が高い。
◎:最小のパターン寸法が5μm以下
○:最小のパターン寸法が5μm超10μm以下
×:最小のパターン寸法が10μm超
【0114】
(収縮率)
大日本スクリーン製造社製ラムダエースSTM-602を使用し、現像後の感光性樹脂膜の膜厚(屈折率1.629)とキュア膜の膜厚(屈折率1.773)を測定し、膜厚の収縮率を以下の式に従って算出し、下記基準により評価した。
収縮率(%)=(現像後の膜厚-キュア後の膜厚)÷現像後の膜厚×100
◎:収縮率が25%以下
○:収縮率が25%超30%以下
×:収縮率が30%超
【0115】
(接着特性)
シリコン基板上に感光性ポリイミド前駆体組成物をプリベーク後の膜厚が10μmとなるように塗布し、ホットプレート(東京エレクトロン社製の塗布現像装置Mark-7)を用いて、120℃で2分間プリベークした。その後、空気雰囲気下、170℃で30分間、350℃で1時間加熱処理してポリイミド膜を得た。ポリイミド膜を120℃、2気圧の飽和条件で400時間のプレッシャークッカーテスト(PCT)処理を行った後、2mmの碁盤目を100個作製し、粘着テープにより剥離試験を行った。剥がれた碁盤目の数を数え、下記基準により接着特性を評価した。
○:剥がれ個数が30未満
×:剥がれ個数が30以上
【0116】
【表13】
【0117】
実施例59~64(インク組成物)と比較例33~36
実施例1~24と比較例1~12で得られた各種ワニス(ポリイミド前駆体溶液、ポリイミドアミド前駆体溶液)を、そのままインク組成物として用いて、印刷(塗布、乾燥)後の反り、耐溶剤性、耐メッキ性、難燃性、及び印刷性を下記方法により評価し、表14に示す。
【0118】
(反り)
各種ワニスを、縦×横×厚さ=50mm×50mm×13μmの銅箔上に、乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗布した。その後、オーブンにて、温度400℃、時間30分の条件で加熱乾燥し、銅箔(基材)上にポリイミド樹脂層又はポリアミドイミド樹脂層が積層された積層体を得た。該積層体の四隅の反り量の平均値を求め、下記基準により評価した。
◎:反り量の平均値が1mm以下
○:反り量の平均値が1mm超2mm以下
×:反り量の平均値が2mm超え
【0119】
(耐溶剤性試験)
上記(反り)試験で得られた積層体(基材:銅箔)のそれぞれを、表14に示す溶媒に室温で5分間浸漬し、表面(樹脂層)の状態を目視で観察し、下記基準により評価した。
◎:変化なし
○:表面の一部にざらつきや溶解が見られる
×:溶解
【0120】
(耐メッキ性)
上記(反り)試験で得られた積層体(基材:銅箔)のそれぞれに、以下に示す工程で無電解金メッキ処理を施し、試験体を得た。具体的には積層体を、各工程の槽に順次浸漬した後、乾燥した。得られた試験体の表面状態を目視観察し、下記基準により評価した。
(無電解金メッキ処理工程)
脱脂処理(酸性脱脂=酸処理)、水洗、ソフトエッチング、水洗、デスミア処理、
塩化パラジウム触媒化、ニッケル(硝酸ニッケル)メッキ、
金(シアン化金カリウム)メッキ、水洗、乾燥
(評価基準)
◎:変化なし
○:端部付近にダメージあり
×:表面に粒状にメッキが付着
【0121】
(難燃性)
各種ワニスを、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン100H、厚み25μm)上に、乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗布した。その後、オーブンにて、温度400℃、時間30分の条件で加熱乾燥し、ポリイミドフィルム(基材)上にポリイミド樹脂層又はポリアミドイミド樹脂層が積層された積層体(基材:ポリイミドフィルム)を得た。得られた積層体について、UL94フィルム材料の垂直燃焼性試験(VTM)に準拠して、下記燃焼性分類により難燃性を評価した。
◎:V-0
○:V-1
×:V-2
【0122】
(印刷性)
各種ワニスを、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン100H、厚み25μm)上に、厚み100μmのステンレス製メタルマスクを介して、ライン幅500μm、スペース500μmのラインアンドスペースのパターンを印刷した。具体的には、ポリイミドフィルム上にメタルマスクを載せて密着させ、その上に各種ワニスを展開し、フッ素樹脂製のヘラでメタルマスクの開口部に液を充填した後、余分な液をすり切り、メタルマスクをゆっくり除去する方法で印刷を行った。印刷後、速やかに湿度約100%、温度50℃の恒温恒湿槽に8分間保持し、さらに、オーブンにて、温度400℃、時間30分の条件で加熱し、ポリイミドフィルム(基材)上に厚み15~20μmのポリイミド樹脂層又はポリアミドイミド樹脂層が積層された積層体(基材:ポリイミドフィルム)を得た。得られた積層体の印刷性を、下記基準により評価した。
◎:パターンに、にじみやかすれなし。
○:パターンの認識はできるが、僅かなにじみやかすれがある。
×:パターンが確認できない程度のにじみやかすれがある。
【0123】
【表14】
【0124】
表10~14に示した実施例と比較例の結果から分かるとおり、本発明の実施形態であるアミド系溶媒(A)と反応促進剤(B)を含有する樹脂合成用溶媒(C)を用いて合成されたポリイミド前駆体とポリアミドイミド前駆体は、高い分子量を有しながら、低粘度、高透明性と高安定性のこれらの前駆体溶液(樹脂ワニス)が得られる。このような樹脂ワニスは各種バインダー樹脂として、潤滑塗膜(潤滑塗料)、接着剤、感光性樹脂、インク組成物として好適に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
以上説明してきたように、本発明の実施形態である樹脂合成用溶媒(C)はアミド系溶媒(A)と反応促進剤(B)を含有し、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、それら何れかの前駆体及び/又はそれらから選択される2種以上の前駆体からなるポリイミド系共重合体、並びにポリウレタン樹脂の合成に好適に用いることができる。本発明の実施形態である樹脂合成用溶媒を用いて製造されたポリイミドワニス、ポリアミドイミドワニス、ポリウレタン樹脂ワニス等の樹脂ワニスは種々用途のバインダー樹脂として好適に用いられ、又成形加工で得られたポリイミドフィルムは優れた物性を示し、半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜、有機EL素子の絶縁層やスペーサー層、薄膜トランジスタ基板の平坦化膜、有機トランスジスタの絶縁膜、フレキシブルプリント基板、フレキシブルのデバイス用基板や液晶ディスプレイ用基板、有機ELディスプレイ用基板、電子ペーパー用基板、薄膜太陽電池用基板等の受光デバイスとして基板等、更にリチウムイオン二次電池の電極用バインダー、半導体用接着剤等として好適に用いることができる。又、本発明の実施形態である樹脂合成用溶媒を用いて製造されたポリイミド前駆体は、可溶性ポリイミドに対して優れた溶解性を有するため、液晶配向剤の製造に好適に用いられる。
【要約】
【課題】短時間で高分子量のポリマーを合成することができ、反応中も反応後も反応溶液が白濁せず、高い透明性と保存安定性を有する、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂等の合成樹脂の合成に用いられる溶媒、及び該溶媒を用いた合成樹脂の製造方法を提供すること。
【解決手段】アミド系溶媒(A)10~99.9999質量%と、反応促進剤(B)0.0001~5質量%を含有し、前記反応促進剤(B)は分子内に第三級アミノ基を一つ以上有する脂肪族又は芳香族第三級アミン化合物である樹脂合成用溶媒(C)。