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特許7104458リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)結合抗体およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)結合抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220713BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220713BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220713BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C07K16/46
A61K39/395 N
A61K45/00
A61K47/68
A61P31/12
A61P35/00
A61P37/02
A61P43/00 111
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020554837
(86)(22)【出願日】2019-04-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 CN2019080847
(87)【国際公開番号】W WO2019192432
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-10-19
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/081636
(32)【優先日】2018-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520383511
【氏名又は名称】上海博威生物医薬有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】王少雄
(72)【発明者】
【氏名】徐立忠
(72)【発明者】
【氏名】趙▲じん▼
(72)【発明者】
【氏名】王明
(72)【発明者】
【氏名】須▲じゅえ▼華
(72)【発明者】
【氏名】宋飛
【審査官】竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-526052(JP,A)
【文献】特表2017-516489(JP,A)
【文献】Clinical & Experimental Immunology,Vol.164, No.2,2011年,p.265-274
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列SYGIS(配列88)からなる重鎖可変領域CDR1;
(b)配列WISAYNGNTNYAQKLQG(配列89)からなる重鎖可変領域CDR2;および
(c)配列DGWWELLRPDDAFDI(配列90)からなる重鎖可変領域CDR3
を含む重鎖可変領域と、
(d)配列SGDKLGDKYAY(配列91)からなる軽鎖可変領域CDR1;
(e)配列YDSDRPS(配列92)からなる軽鎖可変領域CDR2;および
(f)配列QVWDSSSDQVV(配列93)からなる軽鎖可変領域CDR3
を含む軽鎖可変領域とを含む、単離された抗LAG-3抗体。
【請求項2】
重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、
(1)重鎖可変領域はアミノ酸配列41からなり、軽鎖可変領域はアミノ酸配列43からなり、
(2)重鎖可変領域はアミノ酸配列75からなり、軽鎖可変領域はアミノ酸配列43からなり、または、
(3)重鎖可変領域はアミノ酸配列77からなり、軽鎖可変領域はアミノ酸配列43からなる、
請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
モノクローナル抗体、ヒト抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
LAG-3結合抗体フラグメントである、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体フラグメントは、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、または(Fab’)フラグメントである、請求項4に記載の抗体。
【請求項6】
完全長抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項7】
IgG抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項8】
単一特異性抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項9】
多重特異性抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項10】
前記多重特異性抗体は二重特異性抗体である、請求項9に記載の抗体。
【請求項11】
前記二重特異性抗体は、第2の生体分子に結合する第2の結合ドメインを含み、前記第2の生体分子は細胞表面抗原である、請求項10に記載の抗体。
【請求項12】
前記細胞表面抗原は腫瘍抗原である、請求項11に記載の抗体。
【請求項13】
請求項1に記載の抗体および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の抗体に連結された治療剤を含む免疫複合体。
【請求項15】
前記治療剤は細胞毒性剤である、請求項14に記載の免疫複合体。
【請求項16】
請求項1に記載の抗体をコードする単離された核酸。
【請求項17】
当該抗体はLAG-3結合抗体フラグメントである、請求項16に記載の核酸。
【請求項18】
前記抗体フラグメントは、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、または(Fab’)フラグメントである、請求項17に記載の核酸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗体の分野に関し、該抗体の使用および調製方法に関する。具体的には、本発明は、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)結合抗体および疾患の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リンパ球活性化遺伝子-3(lymphocyte activation gene-3)、すなわち、LAG-3は、CD223とも称され、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーの一つの膜タンパク質である。その分子量は70KDaであり、ヒト染色体12(20p13.3)に位置している。該膜タンパク質は、一つのV領域と三つのC2領域との四つの細胞外免疫グロブリンスーパーファミリードメインを含む。CD4分子と比較して、それらが染色体における位置は似ており、しかもそれら二つの分子とも一部の共同アミノ酸(<20%)を含む。そのため、それらが同じ遺伝子から進化したと一部の科学者は考えられている[1]。LAG-3をコードするDNAは8つのエクソンがある。当該分子の細胞外領域は、D1、D2、D3、およびD4の四つの部分で構成されている。D1領域には、30のアミノ酸からなる環状構造があり、特異性を有する。また、D1はVシリーズ免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、D2、D3およびD4はC2シリーズ免疫グロブリンスーパーファミリーに属す。D1とD3領域、D2とD4領域には、多くのアミノ酸配列は一致しており、これは、2つのIgSF領域遺伝子が複製して4つの領域になったからかもしれない。細胞質領域は、(1)CD4のプロテインキナーゼのCサイトに似ている可能性のあるセリンリン酸化サイトS454;(2)他の既知のタンパク質とは異なる保存的なKIEELE配列モチーフ;(3)重複したEP配列の三つの部分からなる[2]
【0003】
LAG-3のほとんどは、D1領域に形成された二量体を介して細胞膜に発現される。成熟したLAG-3は、細胞膜上で切断されて相対分子量が54000である可溶性部分p54(D1、D2、およびD3からなる)と、相対分子量が16000である膜貫通‐細胞質部分p16とになることができる[3]。完全なLAG-3分子切断は、D4領域と膜貫通領域との間に生じる20のアミノ酸リンカーペプチドのタンパク質溶解反応である。細胞膜上のLAG-3分子は可溶性分子に切断され、膜貫通マトリックスメタロプロテイナーゼAMAD10およびAMAD17によって調節され、TCRシグナル伝達経路はこれら2つの調節モードで重要な役割を果たす[4]
【0004】
LAG-3分子は主に、活性化されたNK細胞及びTリンパ球の表面に発現し、高親和性でHLA-IIに結合し、リンパ球の活性化に寄与する[5,2]。LAG-3は、Tリンパ球の増殖活性化およびT細胞の動的平衡を負に制御し[6]、LAG-3の異所性発現もT細胞の調節に寄与する。Workman[7]らの研究によって、LAG-3欠損の高齢マウス体内のT細胞の数は野生型の2倍であり、CD4CD8LAG-3のT細胞はリンパ球の増殖を促進し、安定状態を維持することができ、この機能は、野生型においてLAG-3の異所性発現によって中止したことは発見された。また、抗LAG-3モノクローナル抗体によるインビボ治療では、LAG-3欠損細胞と比較してT細胞の増殖を有意に高めることができる。Workman[8]らはリアルタイム蛍光定量PCR研究を通して、形質細胞様樹状細胞の表面でのLAG-3の発現は、制御性T細胞または活性化エフェクターT細胞の表面発現の10倍であることを発見し、これは、形質細胞様樹状細胞の生物学的機能に重要な役割を果たすことを示している。
【0005】
Th1細胞はLAG-3を発現するが、Th2細胞は発現しないか低発現化する。IL-12は、LAG-3分子の発現を刺激する最大の可能性を有する[9]。LAG-3分子は、T細胞の増殖を負に調節し、記憶T細胞プールを制御する[10]。この負の調節機能は、LAG-3:MHCクラスII分子との結合と密接に関係し、その細胞質領域の構造のシグナル伝達を介する必要があり、特に高度に保存的なKIEELE配列と最も密接に関連している。この調節機能は、CD4分子と競合してMHCクラスII分子に結合することではない。したがって、LAG-3は独立した負の調節分子である[2]
【0006】
LAG-3はCD4T細胞細胞を負に調節し、LAG-3:MHCクラスII分子の相互作用下で、その細胞内シグナル伝達により、CD4Th1細胞の増殖とサイトカイン分泌(IFN-γ、IL-2、TNFなど)を阻害する。しかし、抗LAG-3抗体はその機能を回復し、細胞増殖と関連因子の分泌を促進することができる[11]
【0007】
LAG-3分子はCD8T細胞の活性をも負に調節し、マウス実験では、LAG-3分子を阻害することでCD8T細胞の増殖を増加させることができ、その細胞毒性活性を増加することもでき、IFN-γは有意に増加し、CD8T細胞に対して直接的な調節作用がある。LAG-3とCD8T細胞の作用中、CD4T細胞の寄与は必要ではない[2,11]
【0008】
LAG-3分子は、CD4CD25制御性T細胞(Treg細胞)の阻害機能に対して直接的な調節効果を有し[11,12]、Treg細胞が機能を果たすための必要な分子である。抗LAG-3抗体はTreg細胞の機能を有意に阻害することができ、しかも細胞機能の最大化程度と密接に関連している。また、抗LAG-3抗体は、Treg細胞の機能を阻害することでエフェクターT細胞を増殖させることもできるが、Treg細胞のアポトーシスを促進することはできない[13]。同時に、エフェクターT細胞はTreg細胞でのLAG-3分子の発現を用量依存的に増加させることができる。また、LAG-3の異所性発現はTreg細胞の調節機能にも関連している。これから見ると、LAG-3はリンパ球の内部環境の安定化に対して非常に重要な役割を果たしている[14]。また、Liangら[15]は、Treg細胞の表面のLAG-3分子と樹状細胞膜上のMHCクラスII分子との間の細胞‐細胞接触作用により、Treg細胞が細胞質シグナル伝達を介して樹状細胞の成熟を阻害できることを発見した。そして、この効果には、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)経路の介在が必要である。
【0009】
腫瘍の発展において、腫瘍特異的CD8T細胞は腫瘍組織内で細胞数が増えるが、その機能は部分的に失われる。抗LAG-3抗体の使用またはLAG-3遺伝子の除去により、CD8T細胞の機能を回復できる。CD8T細胞の数とその細胞毒性を増加させると、サイトカイン分泌も増加する。また、LAG-3の機能をブロックした後、腫瘍組織における細胞毒性Tリンパ球の数と機能は明らかに増加し、腫瘍の成長が抑制されたため、LAG-3分子の発現を阻害することでリンパ球の免疫機能を回復でき、腫瘍の発展を阻害できると思われる。Gandhiら[13]は、ホジキンリンパ腫患者の腫瘍組織および末梢血において、LAG-3がリンパ球で高度に発現していることを発見した。腫瘍組織における特異的CD8T細胞の機能は明らかに損なわれ、高度に発現したLAG-3および/またはFoxP3のCD4CD25T細胞の数と負の関連がある。LAG-3T細胞を除去すると、特異的CD8T細胞の抗腫瘍機能が回復し、サイトカイン分泌が増加することが分かる。したがって、LAG-3の発現は特異性T細胞の免疫負調節機能に関連しており、LAG-3分子の機能を阻害することで特異性CD8T細胞の抗腫瘍効果を高めることができ、この分子は、潜在的な腫瘍免疫治療の標的である可能性がある。
【0010】
慢性ウイルス感染症ではT細胞衰弱はしばしば発生する。Blackburn[16]らは研究により、CD8T細胞の衰弱が複数の阻害性受容体の共発現によって負に調節されることを発見した。衰弱したCD8T細胞は7つの阻害性受容体を発現することができる。複数の異なる阻害性受容体の共発現は、T細胞衰弱およびより深刻な感染と密接に関連しており[17]、T細胞阻害性受容体PD-1及びLAG-3を遮断すると、相乗的にT細胞応答を高め、体内のウイルス量を低めることができる。Konnai[18]らは、ウシ白血病ウイルスを感染した牛体内の細胞のLAG-3の発現について分析した結果、LAG-3CD8T細胞及びLAG-3CD3細胞に結合したMHCクラスII分子が対照群よりも有意に高いことを発見した。対照群および無症候性群牛と比較して、ウイルス感染が持続している牛の末梢血単核細胞上のLAG-3分子の平均蛍光強度は有意に増加した。そして、PD-1とLAG-3の遮断実験により明らかに、ウイルス感染が持続している牛の末梢血単核細胞でPD-1とLAG-3抗体を増加させるとINF-γとIL-2の発現をアップレギュレートすることができる。上記発見により、ウイルスに感染した場合、T細胞はLAG-3分子の制限効果およびMHCクラスIIシグナル分子の発現を通じてその阻害機能を発揮し、LAG-3もウイルス免疫治療の標的である可能性があることは示されている。
【発明の概要】
【0011】
本発明は下記項に係る。
1.リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)結合抗体であって、前記抗体は、顕著に改善された、主要組織適合性(MHC)クラスII分子へのLAG-3の結合を阻害する作用を有する、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)結合抗体。
2.下記のアミノ酸配列:
配列41、配列45、配列49、配列53、配列57、配列61、配列75または配列77
を含む重鎖可変領域と、
下記のアミノ酸配列:
配列43、配列47、配列51、配列55、配列59または配列63
を含む軽鎖可変領域と
を含む、項1に記載の抗体。
3.下記の重鎖可変領域と軽鎖可変領域との組み合わせを含む、項1または2に記載の抗体:
(1)アミノ酸配列41と43;
(2)アミノ酸配列45と47;
(3)アミノ酸配列49と51;
(4)アミノ酸配列53と55;
(5)アミノ酸配列57と59;
(6)アミノ酸配列61と63;
(7)アミノ酸配列75と43;または
(8)アミノ酸配列77と43。
4.アミノ酸配列41からなる重鎖可変領域と、アミノ酸配列43からなる軽鎖可変領域とを含む、項1~3のいずれか一項に記載の抗体。
5.(a)配列SYGIS(配列88)からなる重鎖可変領域CDR1;
(b)配列WISAYNGNTNYAQKLQG(配列89)からなる重鎖可変領域CDR2;および
(c)配列DGWWELLRPDDAFDI(配列90)からなる重鎖可変領域CDR3
を含む重鎖可変領域と、
(d)配列SGDKLGDKYAY(配列91)からなる軽鎖可変領域CDR1;
(e)配列YDSDRPS(配列92)からなる軽鎖可変領域CDR2;および
(f)配列QVWDSSSDQVV(配列93)からなる軽鎖可変領域CDR3
を含む軽鎖可変領域とを含む、単離された抗LAG-3抗体。
6.重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、
(1)重鎖可変領域はアミノ酸配列41からなり、軽鎖可変領域はアミノ酸配列43からなり、
(2)重鎖可変領域はアミノ酸配列75からなり、軽鎖可変領域はアミノ酸配列43からなり、および
(3)重鎖可変領域はアミノ酸配列77からなり、軽鎖可変領域はアミノ酸配列43からなる、
項5に記載の抗体。
7.モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である、項1~6のいずれか一項に記載の抗体。
8.LAG-3結合抗体フラグメントである、項1~7のいずれか一項に記載の抗体。
9.前記抗体フラグメントは、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、または(Fab’)フラグメントである、項8に記載の抗体。
10.完全長抗体である、項1~7のいずれか一項に記載の抗体。
11.IgG抗体である、項1~7のいずれか一項に記載の抗体。
12.単一特異性抗体である、項1~11のいずれか一項に記載の抗体。
13.多重特異性抗体である、項1~11のいずれか一項に記載の抗体。
14.前記多重特異性抗体は二重特異性抗体である、項13に記載の抗体。
15.前記二重特異性抗体は、第2の生体分子に結合する第2の結合ドメインを含み、前記第2の生体分子は細胞表面抗原である、項14に記載の抗体。
16.前記細胞表面抗原は腫瘍抗原である、項15に記載の抗体。
17.項1~16のいずれか一項に記載の抗体および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
18.項1~16のいずれか一項に記載の抗体に連結された治療剤を含む免疫複合体。
19.前記治療剤は細胞毒性剤である、項18に記載の免疫複合体。
20.薬学的に許容される担体をさらに含む、項18または19に記載の免疫複合体を含む医薬組成物。
21.項17または20に記載の医薬組成物を収容する容器と、前記医薬組成物の使用を説明するプロトコルとを含む、製品。
22.一つ以上のその他の薬剤を収容する一つ以上の容器をさらに含む、項21に記載の製品。
23.前記その他の薬剤は、免疫刺激抗体、化学療法剤、および抗ウイルス薬からなる群より選択される一つ以上である、項22に記載の製品。
24.項1~16のいずれか一項に記載の抗体をコードする単離された核酸。
25.項24に記載の単離された核酸を含むベクター。
26.項25に記載のベクターを含む宿主細胞。
27.前記宿主細胞は哺乳動物細胞である、項26に記載の宿主細胞。
28.前記哺乳動物細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、項27に記載の宿主細胞。
29.項26~28のいずれか一項に記載の宿主細胞を培養することを含む、項1~16のいずれか一項に記載の抗体を調製する方法。
30.前記宿主細胞または培地から前記抗体またはLAG-3結合抗体フラグメントを回収することをさらに含む、項29に記載の方法。
31.抗原特異的T細胞応答を刺激する方法であって、前記T細胞を項1~16のいずれか一項に記載の抗体と接触させることにより抗原特異的T細胞応答を刺激することを含む方法。
32.被験者の免疫反応を刺激する方法であって、項1~16のいずれか一項に記載の抗体を前記被験者に投与することにより前記被験者の免疫反応を刺激することを含む方法。
33.前記被験者は腫瘍を有する被験者であり、しかも前記被験者に投与した項1~16のいずれか一項に記載の抗体は、前記腫瘍に対する免疫反応を刺激した、項32に記載の方法。
34.前記被験者はウイルス保有者であり、しかも前記被験者に投与した項1~16のいずれか一項に記載の抗体は、前記ウイルスに対する免疫反応を刺激した、項32に記載の方法。
35.項1~16のいずれか一項に記載の抗体を被験者に投与することを含む、被験者にの腫瘍細胞増殖を阻害する方法。
36.項1~16のいずれか一項に記載の抗体を被験者に投与することを含む、被験者にのウイルス感染を治療する方法。
37.項1~16のいずれか一項に記載の抗体が、一つ以上のその他の薬剤と組み合わせて使用される、項31~36のいずれか一項に記載の方法。
38.前記その他の薬剤は、免疫刺激抗体、抗癌薬、または抗ウイルス薬からなる群より選択される一つ以上である、項37に記載の方法。
39.前記免疫刺激抗体は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、および抗CTLA-4抗体からなる群より選択される一つ以上である、項38に記載の方法。
40.抗原特異的T細胞応答を刺激するための薬剤の調製における、項1~16のいずれか一項に記載抗体の使用。
41.被験者において免疫反応を刺激するための薬剤の調製における、項1~16のいずれか一項に記載抗体の使用。
42.前記被験者は腫瘍を有する被験者であり、しかも前記被験者に投与した項1~16のいずれか一項に記載の抗体は、前記腫瘍に対する免疫反応を刺激した、項41に記載の使用。
43.前記被験者はウイルス保有者であり、しかも前記被験者に投与した項1~16のいずれか一項に記載の抗体は、前記ウイルスに対する免疫反応を刺激した、項42に記載の使用。
44.被験者における腫瘍細胞増殖を阻害するための薬剤の調製における、項1~16のいずれか一項に記載の抗体の使用。
45.被験者におけるウイルス感染を治療するための薬剤の調製における、項1~16のいずれか一項に記載の抗体の使用。
46.項1~16のいずれか一項に記載の抗体が、一つ以上のその他の薬剤と組み合わせて使用される、項40~45のいずれか一項に記載の使用。
47.前記その他の薬剤は、免疫刺激抗体、抗癌薬、または抗ウイルス薬からなる群より選択される一つ以上である、項46に記載の使用。
【発明の詳細】
【0012】
1.定義
本文の用語の「抗体」は広義に使用され、様々な抗体構造をカバーし、LAG-3への結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体フラグメントを含むが、これらに限られていない。
【0013】
本文で使用される用語の「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の群から得られた抗体のことであり、すなわち、該群を構成する個別の抗体は同一であり、および/または同じエピトープに結合するが、例えば、自然に存在する突然変異またはモノクローナル抗体の調製中に発生する突然変異を含むような可能な変異抗体を除くと、このような変異体は一般に微量で存在する。異なるエピトープに対する異なる抗体を含む典型的なポリクローナル抗体製剤と比較して、モノクローナル抗体製剤における各モノクローナル抗体は、抗原上の単一のエピトープに対する。よって、修飾語「モノクローナル」とは、実質的に均一な抗体群から得られることを特徴とする抗体のことであり、いずれかの特定の方法で調製する必要のある抗体と見なすべきではない。例えば、本発明のモノクローナル抗体は複数の技術によって製造することができ、ハイブリドーマ法、組み換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限られていない。
【0014】
用語の「完全長抗体」、「完全抗体」は、本文で互いに置き換えて使用でき、天然抗体の構造と基本的に類似した構造を有する抗体を指す。
【0015】
「ヒト抗体」は、「ヒト抗体」、「完全なヒト抗体」、または「全ヒト抗体」とも呼ばれ、アミノ酸配列が、ヒトまたはヒト細胞により生じるか、ヒト抗体系統(Human antibody lineage)またはその他のヒト抗体のコード配列を利用した非ヒト由来の抗体に由来するアミノ酸配列に対応する抗体のことである。このヒト抗体の定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特定的に除外している。ヒト抗体は、例えば、下記文献:Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991);Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R. Liss,第77頁(1985);Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86-95(1991)などに記載されている、ファージディスプレイライブラリー技術を含む、本分野で既知の様々な技術を使用して調製することができる。ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してそのような抗体を生じさせるように修飾されているが、その内因性遺伝子座が不活化になっているトランスジェニック動物(例えば、免疫異種マウス)に抗原を投与することにより、調製することができる(XENOMOUSETM技術について、例えば、米国特許第6,075,181号及び第6,150,584号参照)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成したヒト抗体について、例えば、Li et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,103:3557-3562(2006)を参照できる。
【0016】
用語の「キメラ」抗体とは、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の供給源または種に由来し、重鎖および/または軽鎖の残りの部分が異なる供給源または種に由来する抗体をいう。
【0017】
「ヒト共通フレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的にみられるアミノ酸残基を表すフレームワークのことである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列は、可変ドメイン配列のサブグループから選択される。一般に、配列サブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版、NIH Publication 91-3242,Bethesda MD (1991)、第1~3巻のサブグループのようなものである。一実施形態では、VLについて、前記サブグループは、Kabatら(同上)によって記載されているサブグループκIである。一実施形態では、VHについて、前記サブグループは、Kabatら(同上)によって記載されているサブグループIIIである。
【0018】
「ヒト化」抗体とは、非ヒトHVRに由来するアミノ酸残基およびヒトFRに由来するアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。ある実施形態では、ヒト化抗体は、実質的にすべての中の少なくとも一つおよび典型的に二つの可変ドメインを含み、すべてまたは実質的にすべてのHVR(例えば、CDR)が非ヒト抗体のHVRに対応し、しかもすべてまたは実質的にすべてのFRがヒト抗体のFRに対応する。ヒト化抗体は任意に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでもよい。非ヒト抗体の「ヒト化形態」とは、ヒト化された抗体を指す。
【0019】
本文で使用される用語の「超可変領域」または「HVR」とは、抗体可変ドメインにおいて、高い配列可変性(「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる)を有する、および/または確定した構造を有するループ(「超可変ループ」)が形成している、および/または抗原接触残基(「抗原接触点」)を含む各領域を指す。一般に、抗体は6つのHVRを含み、VHには3つ(H1、H2、H3)があり、VLには3つ(L1、L2、L3)がある。本文で例示的なHVRは下記のものを含む:
(a)アミノ酸残基26-32(L1)、50-52(L2)、91-96(L3)、26-32(H1)、53-55(H2)および96-101(H3)に現れる超可変ループ(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987));
(b)アミノ酸残基24-34(L1)、50-56(L2)、89-97(L3)、31-35b(H1)、50-65(H2)および95-102(H3)に現れるCDR(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版、Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991));
(c)アミノ酸残基27c-36(L1)、46-55(L2)、89-96(L3)、30-35b(H1)、47-58(H2)および93-101(H3)に現れる抗原接触点(MacCallum et al.,J.Mol.Biol.262:732-745(1996));および
(d)HVRアミノ酸残基46-56(L2)、47-56(L2)、48-56(L2)、49-56(l2)、26-35(H1)、26-35b(H1)、49-65(H2)、93-102(H3)および94-102(H3)を含む、(a)、(b)および/または(c)の組み合わせ。
【0020】
別途説明する場合を除き、HVR残基および可変ドメイン内のその他の残基(例えば、FR残基)は、本文においてKabatら(同上)に従って番号付けられる。
【0021】
用語の「可変領域」または「可変ドメイン」とは、抗体の抗原への結合に関連する抗体重鎖または軽鎖ドメインを指す。天然抗体の重鎖および軽鎖(それぞれVHとVLである)の可変ドメインは一般に類似した構造を持ち、各ドメインには4つの保存的フレームワーク領域(FR)と3つの超可変領域(HVR)が含まれる(例えば、Kindt et al.,Kuby Immunology,第6版参照)。単一のVHまたはVLドメインでは抗原結合特異性を付与するには十分である。また、特定の抗原に結合する抗体に由来するVHまたはVLドメインを使用してその抗原に結合する抗体を単離して、相補的なVLまたはVHドメインのライブラリーをそれぞれスクリーニングすることができる(例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880-887(1993);Clarkson et al.,Nature 352:624-628(1991)参照)。
【0022】
「抗体フラグメント」とは、完全な抗体の他に、完全な抗体中の、当該完全な抗体が結合する抗原の一部に結合する分子を指す。抗体フラグメントの実例として、Fv、Fab、、Fab’-SH、F(ab’);二機能性抗体;直鎖状抗体(linear antibodies);単鎖抗体分子(例えば、scFv);および抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が含まれるが、これらに限られていない。
【0023】
本文で使用される用語の「細胞毒性剤」とは、細胞機能を阻害または防止し、および/または細胞死亡または破壊を引き起こす物質を指す。細胞毒性剤は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212およびLu放射性同位体);化学療法剤または薬剤(例えば、メトトレキサート、アデリミシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシンまたは他の挿入剤);成長阻害剤;リボ分解酵素のような酵素およびそのフラグメント;抗生物質;そのフラグメントおよび/または変異体を含む、細菌、真菌、植物または動物由来の小分子毒素または酵素活性毒性のような毒素;本分野で既知の様々な抗腫瘍薬または抗癌剤を含むが、これらに限られていない。
【0024】
「免疫複合体」は、抗体が一つ以上の異種分子(細胞毒性剤を含むが、これに限られていない)である複合体である。
【0025】
「被験者」または「個体」は、哺乳動物である。哺乳動物は、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、およびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギおよびげっ歯類(例えば、マウス、ラット)を含むが、これらに限られていない。ある実施形態では、前記被験者または個体はヒトである。
【0026】
用語の「プロトコル」とは、通常治療製品の商業包装に含まれる説明書を指し、適応症、使用法、投与量、投与、併用療法、禁忌症および/またはこのような治療製品の使用に関する警告などの情報が含まれている。
【0027】
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一結合サイトとその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有相互作用の合計の強度を指す。別途説明する場合を除き、本文で使用されるように、「結合親和性」とは、結合パートナーメンバー(例えば、抗体と抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。パートナーYに対する分子Xの親和性は、一般的に解離定数(KD)で表すことができる。親和性は、本文で説明するそれらの方法を含む、本分野で既知の常用方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための特定の説明的および例示的な実施形態は後文で説明する。
【0028】
参照ポリペプチド配列の「アミノ酸配列同一性パーセンテージ(%)」の定義は、候補配列を参照ポリペプチド配列にアライメントして必要に応じてギャップを導入することで最大の配列同一性パーセンテージを実現した後、如何なる保存的な置換も配列同一性の一部として見なさない場合、候補配列における参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同じのアミノ酸残基のパーセンテージである。アミノ酸配列の同一性パーセンテージを確定することは、本分野の複数種類の手段によって実現でき、例えば、公衆が入手できるコンピュータソフトウエア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGhまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアによって実現できる。当業者は配列をアライメントするための適切なパラメータを決めることができ、該パラメータは、アライメントされる配列のフルサイズに対して最大のアライメントを実現するための如何なるアルゴリズムを含む。
【0029】
例えば、ALIGN-2を用いることによりアミノ酸配列を比較する場合、所定のアミノ酸配列Aの、所定のアミノ酸配列Bに対して、と、またはについてのアミノ酸配列同一性%は以下のように計算される:
100×分数X/Y
ここで、Xは、AおよびBのプログラムアライメントを実行する時に、配列アライメントプログラムALIGN-2において同一でマッチングすると評価したアミノ酸残基の数であり、且つそのうちYはBにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さとアミノ酸配列Bの長さが等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%とは異なることを理解されたい。別途説明する場合と除き、本文中において使用するすべてのアミノ酸配列同一性%は、ALIGN-2コンピュータプログラムによって得られるものである。
【0030】
2.抗体、調製方法、組成物、および製品
1)抗体
本発明は抗LAG-3抗体に係る。一部の実施形態では、本発明は、(a)配列88のアミノ酸配列、または該配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列89のアミノ酸配列、または該配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列90のアミノ酸配列、または該配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列91のアミノ酸配列、または該配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列92のアミノ酸配列、または該配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(f)配列93のアミノ酸配列、または該配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むHVR-L3からなる群より選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR)またはいわゆる相補性決定領域(CDR)を含む結合ドメインを含む抗LAG-3抗体を提供する。場合によって、抗LAG-3抗体が有する重鎖可変(VH)ドメイン(領域)は、配列41、75、または77と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、または配列41、75または77のアミノ酸配列を含んでもよく、および/またはその軽鎖可変(VL)ドメイン(領域)は、配列43と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、または配列43のアミノ酸配列を含む。
【0031】
一部の実施形態では、抗LAG-3抗体は、下記のアミノ酸配列:
配列41、配列45、配列49、配列53、配列57、配列61、配列75または配列77を含む重鎖可変領域と、
下記のアミノ酸配列:
配列43、配列47、配列51、配列55、配列59または配列63を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0032】
一部の実施形態では、抗LAG-3抗体は下記の重鎖可変領域と軽鎖可変領域との組み合わせを含む:
(1)アミノ酸配列41と43;
(2)アミノ酸配列45と47;
(3)アミノ酸配列49と51;
(4)アミノ酸配列53と55;
(5)アミノ酸配列57と59;
(6)アミノ酸配列61と63;
(7)アミノ酸配列75と43;または
(8)アミノ酸配列77と43。
【0033】
一部の実施形態では、抗LAG-3抗体は、アミノ酸配列41、配列75、または配列77を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列43を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0034】
2)抗体フラグメント
一部の実施形態では、本文で提供される抗体は抗体フラグメントである。抗体フラグメントは、Fab、Fab’、Fab’-SH、(Fab’)、FvおよびscFv断片、および後文で説明するその他の断片を含むが、これらに限られていない。一部の抗体フラグメントに関する説明について、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)を参照されたい。scFv断片に関する説明について、例えば、Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,第113巻、Rosenburg and Moore ed.,(Springer-Verlag,New York)、第269-315頁(1994);WO93/16185、および米国特許第5,571,894号及び第5,587,458号を参照できる。
【0035】
二機能性抗体は、二つの抗原結合サイトを有する抗体フラグメントであり、それは二価または二重特異性でっあってもよい。例えば、EP404,097;WO1993/01161;Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003);およびHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)を参照できる。三機能性抗体および四機能性抗体は、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)にも記載されている。
【0036】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてまたは一部、または軽鎖可変ドメインのすべてまたは一部を含む抗体フラグメントである。一部の実施形態では、単一ドメイン抗体はヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA;例えば、米国特許第6,248,516B1号参照)。
【0037】
抗体フラグメントは、様々な技術によって生じることができ、それらの技術は完全な抗体のタンパク質加水分解消化および本文に記載の組み換え宿主細胞(例えば、大腸菌またはファージ)を含むが、これらに限られていない。
【0038】
3)キメラ抗体およびヒト化抗体
一部の実施形態では、本文で提供される抗体はキメラ抗体である。一部のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984)に記載されている。
【0039】
一部の実施形態では、キメラ抗体はヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体はヒト化によってヒトに対する免疫原性を低下させるとともに、親の非ヒト抗体の特異性および親和性を保持している。一般的に、ヒト化抗体は一つ以上の可変ドメインを含み、その中で、CDRのようなHVR(またはその一部)は非ヒト抗体に由来し、且つFR(またはその一部)はヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体は、ヒト定常領域の少なくとも一部も含んでもよい。一部の実施形態では、ヒト化抗体における一部のFR残基は、例えば、抗体の特異性または親和性を修復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基を取得する抗体)からの対応する残基で置換される。
【0040】
ヒト化抗体およびその製造方法について、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)に記載されており、さらに、例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);米国特許第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号及び第7,087,409号;Kashmiri et al.,Methods 36:25-34(2005)(特異性決定領域(SDR)移植が記載されている);Padlan,Mol.Immunol.28:489-498(1991)(「表面改質」が記載されている);Dall and Acqua et al., Methods 36:43-60(2005)(「FR組み換え」が記載されている);およびOsbourn et al.,Methods 36:61-68(2005)およびKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)(FR組み換えに対する「ガイド選択」方法が記載されている)に記載されている。
【0041】
4)ヒト抗体
一部の実施形態では、本文で提供される抗体はヒト抗体である。ヒト抗体は、本分野で既知の様々な技術によって生じることができる。
【0042】
ヒト抗体は、修飾されたトランスジェニック動物に免疫原を投与し、抗原でチャレンジして完全なヒト抗体またはヒト可変領域を有する完全な抗体を調製することができる。このような動物は典型的に、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、染色体外に存在するか、動物染色体にランダムに組み込まれている、すべてまたは一部のヒト免疫グロブリン遺伝子座を含む。このようなトランスジェニックマウスには、内因性免疫グロブリン遺伝子座は一般に不活性化されている。トランスジェニッ動物からヒト抗体を得る方法について、例えば、米国特許第6,075,181号及び第6,150,584号(XENOMOUSETM技術が記載されている);米国特許第5,770,429号;米国特許第7,041,870号(K-M技術が記載されている);および米国出願公開第US2007/0061900号を参照できる。このような動物により生成した完全な抗体に由来するヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることにより、さらに修飾されることができる。
【0043】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づいた方法によって製造してもよい。ヒトモノクローナル抗体の生成に用いられるヒト骨髄腫およびマウス‐ヒトハイブリッド骨髄腫細胞株が記載されている。例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,第51-63頁;Marcel Dekker,Inc.,New York,1987);およびBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照できる。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成したヒト抗体は、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)にも記載されている。その他の方法は、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からモノクローナルヒトIgM抗体が生成することは記載されている)およびNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(2006)(ヒト‐ヒトハイブリドーマが記載されている)に記載の方法を含む。ヒトハイブリドーマ技術(Trioma技術)は、Vollmers and Brandlein,Histology and Histophathology,20(3):927-937(2005)、およびVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)にも記載されている。
【0044】
ヒト抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を単離することにより調製してもよい。次いで、このような可変ドメイン配列を所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。本発明の実施例部分は、ファージディスプレイライブラリーを介してヒト抗体をスクリーニングするプロセスを説明している。
【0045】
具体的には、LAG-3結合活性を有する抗体によってコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることにより、高い親和性を有する本発明の抗体を単離することができる。例えば、ファージディスプレイライブラリーを生成し、所望の結合特徴を有する抗体についてそのようなライブラリーをスクリーニングするための様々な方法は本分野で知られている。このような方法について、例えば、Hoogenboom et al., Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al. ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)を参照でき、しかも、さらに、例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552-554;Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992);Marks and Bradbury,Methods in Molecular Biology 248:161-175(Lo ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004);およびLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)に記載されている。
【0046】
一部のファージディスプレイ法では、VHおよびVL遺伝子系統がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって単独にクローン化され、ファージライブラリーにランダムに組み換えられ、その後、Winter et al.,Ann.Rev.Immunol.,12:433-455(1994)に記載のように、抗原‐結合ファージに対してスクリーニングすることができる。ファージは典型的に、抗体フラグメントを単鎖Fv(scFv)フラグメントまたはFabフラグメントとして示す。免疫源からのライブラリーは、ハイブリドーマを構築せずに免疫原に対する高い親和性を有する抗体を提供する。ヒト抗体ファージライブラリーを記載している特許公開は、例えば、米国特許第5,750,373号及び米国特許公開第2005/0079574号、第2005/0119455号、第2005/0266000号、第2007/0117126号、第2007/0160598号、第2007/0237764号、第2007/0292936号、および第2009/0002360号を含む。
【0047】
ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体または抗体フラグメントは、本文においてヒト抗体またはヒト抗体フラグメントと見なされる。
【0048】
5)多重特異性抗体
上記の形態のいずれかにおいて、本文で提供される抗LAG-3抗体は、二重特異性抗体などの多重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも二つの異なるサイトに結合特異性を有するモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、一つの結合特異性はLAG-3に対するものであり、もう一つの結合特異性はいずれかその他の抗原(例えば、第2の生体分子、細胞表面抗原、腫瘍抗原)に対するものである。それ相応に、二重特異性抗LAG-3抗体は、LAG-3、および、CD3、CD20、FcRH5、HER2、LYPD1、LY6G6D、PMEL17、LY6E、CD19、CD33、CD22、CD79A、CD79B、EDAR、GFRA1、MRP4、RET、Steap1またはTenB2などの腫瘍抗原に対して結合特異性を有し得る。二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体フラグメントとして調製することもできる。
【0049】
多重特異性抗体を製造するための技術は、異なる特異性を有する二つの免疫グロブリン重鎖‐軽鎖ペアの組み換え共発現を含むが、これらに限られていない(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983);WO93/08829;およびTraunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991))WO2009/080253;Schaefer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,108:11187-11192(2011))、WO2009/089004A1など参照)。
【0050】
6)抗体変異体
本発明の抗体は、本発明の抗LAG-3抗体のアミノ酸配列変異体を包含する。例えば、抗体の結合親和性および/またはその他の生物学的特性をさらに改善するために調製される抗体変異体が必要になる場合がある。抗体のアミノ酸配列変異体は、その抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することにより、またはペプチド合成により調製できる。このような修飾は、例えば、アミノ酸配列内の残基の欠失および/または挿入および/または置換を含む。欠失、挿入、および置換を任意に組み合わせて最終構築体を得ることができ、その条件として、最終構築体が所望の特徴、例えば抗原結合、を備える必要がある。
【0051】
a.変異体の置換、挿入、および欠失
一部の実施形態では、一つ以上のアミノ酸置換を有する抗体変異体が提供される。置換型突然変異誘発の関連サイトはHVRとFRを含む。保存的な置換は、下記の「好ましい置換」という見出しの下に表示される。より実質的な変化は、下記の「例示的置換」という見出しの下で提供され、且つ後文でアミノ酸側鎖のタイプを参照しながらさらに説明される。アミノ酸置換を関連抗体に導入し、所望の活性(例えば、抗原結合の保持/改善、またはADCCまたはCDCの改善)について生成物をスクリーニングすることができる。
【0052】
アミノ酸の例示的な置換およびアミノ酸の好ましい置換
共有の側鎖特性に従ってアミノ酸を群分けすることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)アルカリ性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
非保存的置換には、これらのタイプのいずれかのメンバーを別のタイプと交換することが必ず伴われる。
【0053】
一つのタイプの置換型変異体は、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の一つ以上の超可変領域残基の置換に係る。一般的には、更なる研究のために選択された取得した変異体は、ある生物学的特性(例えば、親和性の増加)において親抗体と比較して修飾(例えば、改善)され、および/または実質的に親抗体のある生物学的特性が保持される。例示的な置換型変異体は親和性成熟抗体であり、これは、例えば、ファージディスプレイの親和性成熟技術(本文に記載のようなもの)に基づいて便利に生じることができる。一言でいうと、一つ以上のHVR残基を突然変異させて変異抗体をファージ上に提示され、しかも特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。
【0054】
一部の実施形態では、そのような変化が実質的にLAG-3への抗体の結合能力を損なわない限り、一つ以上のHVR(CDR)内で置換、挿入または欠失は起こってもよい。例えば、実質的に結合親和性を低下させない保存的変化(例えば、本文で提供される保存的置換)をHVRにおいて行うことができる。例えば、そのような変化は、HVR中の抗原接触残基以外のところにあることができる。上記で提供されたVHおよびVL配列を変異させる一部の実施形態では、各HVRは変化しないか、1、2または3個以下のアミノ酸置換を含む。
【0055】
Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085に記載されているように、突然変異誘発を行うために標的とすることができる抗体残基または領域を識別するために適用する方法は、「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。
【0056】
7)組み換え方法
本発明の抗LAG-3抗体は、例えば米国特許第4,816,567号に記載されているように、組み換え方法で調製することができる。一実施形態では、本文に記載の抗LAG-3抗体をコードする単離された核酸が提供される。このような核酸は、該抗体(例えば、該抗体の軽鎖および/または重鎖)のVLを含むアミノ酸配列および/またはそのVHを含むアミノ酸配列をコードすることができる。別の一実施形態では、このような核酸を含む1つ以上のベクター(例:発現ベクター)が提供される。別の一実施形態では、このような核酸を含む宿主細胞が提供される。このような一実施形態では、宿主細胞は、(1)該抗体のVLを含むアミノ酸配列および該抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸のベクター;または、(2)該抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター、および該抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含む(例えば、改質転換によってそれを有する)。一実施形態では、該宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ球様細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)などの真核細胞である。一実施形態では、抗LAG-3抗体を製造する方法が提供され、該方法は、該抗体の発現に適した条件下で前文で提供された該抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養すること、および該宿主細胞(または宿主細胞の培地)から該抗体を回収してもよいことを含む。
【0057】
抗LAG-3抗体を組み替えて生成するために、抗体をコードする核酸を単離し(例えば、上記のように)、且つ宿主細胞においてさらにクローニングおよび/または発現するために一つ以上のベクターを挿入する。このような核酸は、通常の手順(例えば、該抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)を使用して容易に単離して配列決定できる。
【0058】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に適した宿主細胞は、本文に記載の原核細胞または真核細胞を含む。例えば、特にグリコシル化とFcエフェクター機能が必要ではない場合に、細菌内に抗体を生成させてもよい。細菌において抗体フラグメントとポリペプチドを発現することについて、例えば、米国特許第5,648,237号、第5,789,199号、および第5,840,523号を参照できる。発現後、可溶性部分中の抗体を細菌の細胞質から分離し、さらに精製することができる。
【0059】
原核生物の他に、糸状菌や酵母などの真核微生物も、抗体をコードするベクターの適切なクローニングまたは発現宿主であり、部分的にまたは完全にヒトグリコシル化パターンを生成するためにグリコシル化経路がすでに「ヒト化」された抗体の真菌および酵母菌株を含む。Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004);およびLi et al.,Nat.Biotech.24:210-215(2006)を参照できる。
【0060】
グリコシル化抗体の発現に適した宿主細胞も多細胞生物(無脊椎動物および脊椎動物)に由来する。無脊椎動物細胞の実例として、植物および昆虫細胞が挙げられる。昆虫細胞に結合するために使用可能な多くの、特にスポドプテラ・フルギぺルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのための、バキュロウイルス株が特定されている。
【0061】
植物細胞培養物も宿主として使用できる。米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、第7,125,978号、および第6,417,429号(トランスジェニック植物で抗体を生成するためのPLANTIBODIESTM技術が記載されている)を参照できる。
【0062】
脊椎動物細胞も宿主とすることができる。例えば、懸濁液中での増殖に適した哺乳動物細胞株は適している場合がある。哺乳動物宿主細胞株が適用されるその他の実例として、SV40形質転換されたサル腎臓CV1細胞株(COS-7);ヒト胎児腎細胞株(例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)に記載されている293または293細胞);ベビーハムスター腎細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980)に記載のTM4細胞);サル腎細胞(CV1);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76);ヒト子宮頸癌細胞(HELA);イヌ腎細胞(MDCK);バッファローラット肝細胞(BRL3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(HepG2)マウス乳房腫瘍(MMT060562);Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)に記載のTRI細胞;MRC5細胞;およびFS4細胞が挙げられる。その他の適用される哺乳動物宿主細胞株は、DHFR-CHO細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;およびY0、NS0およびSp2/0のような骨髄腫細胞株を含む。抗体の生成に適する一部の哺乳動物宿主細胞株に関する説明について、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,第248巻(B.K.C.Lo ed.,Humana Press,Totowa,NJ)、第255-268頁(2003)を参照できる。
【0063】
8)免疫複合体
本発明はまた、化学療法剤または化学療法薬剤、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物または動物由来の酵素活性毒素またはそのフラグメント)または放射性同位体などの一つ以上の細胞毒性剤に本文の抗LAG-3抗体が結合した免疫複合体を提供する。
【0064】
一実施形態では、免疫複合体は抗体‐薬剤複合体(ADC)であり、抗体は、メイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、第5,416,064号、および欧州特許EP0425235B1参照);モノメチルオルリスタチン薬物部分DEおよびDF(MMAEおよびMMAF)などのオルリスタチン(米国特許第5,635,483号、第5,780,588号、および第7,498,298号参照);ドラスチン;カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、第5,714,586号、第5,739,116号、第5,767,285号、第5,770,701号、第5,770,710号、第5,773,001号および第5,877,296号;Hinman et al.,Cancer Res.53:3336-3342(1993);およびLode et al.,Cancer Res.58:2925-2928(1998))、メトトレキサート;ビンクリスチン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル(larotaxel)、テセタキセル(tesetaxel)、およびオルタタキセル(оrtataxel)などのタキサン;トリコテセン(trichothecene);およびCC1065を含むが、これらに限られていない一つ以上の薬剤に結合する。
【0065】
別の一実施形態では、免疫複合体は、本文に記載の抗LAG-3抗体と酵素活性毒素またはそのフラグメントとの複合体を含み、該酵素活性毒素は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、外毒素A鎖およびトリコテセン-マイコトキシンなどを含むが、これらに限られていない。
【0066】
別の一実施形態では、免疫複合体は、本文に記載の抗LAG-3抗体と放射性原子とが結合して形成する放射性複合体を含む。複数の放射性同位体は、放射性複合体に用いることができる。その実例は、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212およびLuの放射性同位体を含む。
【0067】
抗体と細胞毒性剤との複合体は、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-ホルメート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(アジピン酸ジメチル塩酸塩など)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミドなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビサジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ジアゾニウム誘導体(ビス(p-ジアゾベンゾイル)エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トルエン2,6-ジイソシアネートなど)、および二重活性化フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)などの複数の二官能性タンパク質カップリング剤を使用して製造することができる。
【0068】
9)薬物製剤
本発明の抗LAG-3抗体の薬物製剤は、所望の純度を有する抗体を一つ以上の選択されてもよい薬学的に許容される担体(Remington‘s Pharmaceutical Science第16版、Osol,A.ed.(1980))と混合して凍結乾燥製剤または水溶液を形成して調製される。薬学的に許容される担体は、使用される用量および濃度下において一般的に被験者に対して毒性がなく、且つ、リン酸塩、クエン酸塩およびその他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸やメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼト二ウム;フェノール、ブタノールまたはベンジルアルコール;メチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのp-ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;m-クレゾール);低分子量(約10個より少ない残基を有する)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン酸、ヒスチジン、アルギニンまたはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む、単糖、二糖及びその他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;ショ糖、マンニトール、フコースまたはソルビトールなどの糖類;ナトリウムのような塩形成対イオン;金属錯体(例えば、亜鉛-タンパク錯体);および/またはポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン界面活性剤を含むが、これらに限られていない。
【0069】
例示的な凍結乾燥された抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水性抗体製剤は、米国特許第6,171,586号及びWO2006/044908に記載されているものを含み、後者の製剤は、ヒスチジン-酢酸塩バッファーを含む。
【0070】
本文の製剤はまた、治療される特定の適応症に必要な複数の活性成分、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有する活性成分を含んでもよい。例えば、追加の治療剤(例えば、化学療法剤、細胞毒性剤、成長阻害剤および/または抗ホルモン剤)をさらに提供する必要がある場合がある。このような活性成分は、組み合わせた形で予定の目的に有効な量で存在することに適している。
【0071】
10)製品
本発明のもう一態様において、本発明の抗体または医薬組成物を含む製品が提供される。該製品は、容器と、その容器上にあるまたはその容器に関連付けられたラベルまたはプロトコルを含む。適切な容器はボトル、バイアル、注射器、IV溶液バッグなどを含む。このような容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から作られることができる。該容器は、本発明の組成物自体または該組成物と別の組成物との組み合わせを収納し、しかも無菌の入口を有してもよい(例えば、該容器は静脈内溶液バッグ、または皮下注射針によって貫通可能な栓を含むバイアルであってもよい)。該組成物中の少なくとも一種類の活性化剤は本発明の抗体である。前記ラベルまたはプロトコルは、選択された腫瘍またはウイルス感染の治療に前記組成物を使用することを説明する。また、前記製品は、(a)本発明の抗体を含む組成物を含有する第1の容器と、(b)別の細胞毒性剤またはその他の治療剤を含む組成物を含有する第2の容器とを含んでもよい。本発明のこの実施形態における製品は、このような組成物を腫瘍またはウイルス感染の治療に使用可能であることを説明するためのプロトコルをさらに含んでもよい。選択されてもよいが、若しくはまた、該製品はさらに第2(または第3)の容器を含んでもよく、その容器は、静菌注射用水(BWFI)、リン酸塩緩衝生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液などの薬学的に許容されるバッファーを含む。さらには、その他のバッファー、希釈剤、フィルター、針および注射器を含む、商業および使用者の角度から見ると必要とされるその他の材料を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1図1は、6つのIgG4モノクローナル抗体とヒトLAG-3-6*Hisタグ融合タンパク質のインビトロ結合活性の検出結果を示す図である。
図2図2は、ExpiCHO-Sの一過性トランスフェクションにより発現かつ精製されたMV705-3モノクローナル抗体のSEC-HPLC検出純度を示す図である。
図3図3は、MV705-3モノクローナル抗体とヒトLAG-3-6*Hisタグ組み換え融合タンパク質の結合のELISA測定結果を示す図である。
図4図4は、ヒトLAG-3-mFc組み換え融合タンパク質とMHCクラスII分子との結合に対する抗ヒトLAG-3完全ヒトモノクローナル抗体のブロッキング効果を示す図である。
図5図5は、抗ヒトLAG-3完全ヒトモノクローナル抗体とマカクLAG-3*6Hisタグ融合タンパク質抗原との交差結合活性を示す図である。
図6図6は、抗ヒトLAG-3完全ヒトモノクローナル抗体とマウスLAG-3抗原との交差活性を示す図である。
図7図7は、抗ヒトLAG-3完全ヒトモノクローナル抗体と活性化ヒトCD4T細胞との結合活性を示す図である。
図8図8は、抗ヒトLAG-3完全ヒトモノクローナル抗体のインビトロ生物学的機能分析を示す図である。
図9図9は、MV705-3およびBMS対照モノクローナル抗体(BMS-25F7およびBMS-986016)の結合エピトープ分析実験設計を示す図である。
図10a図10a~図10dは、MV705-3およびBMS対照モノクローナル抗体(BMS-25F7およびBMS-986016)の結合エピトープの分析結果を示す図である。
図10b図10a~図10dは、MV705-3およびBMS対照モノクローナル抗体(BMS-25F7およびBMS-986016)の結合エピトープの分析結果を示す図である。
図10c図10a~図10dは、MV705-3およびBMS対照モノクローナル抗体(BMS-25F7およびBMS-986016)の結合エピトープの分析結果を示す図である。
図10d図10a~図10dは、MV705-3およびBMS対照モノクローナル抗体(BMS-25F7およびBMS-986016)の結合エピトープの分析結果を示す図である。
図11図11は、クローン11452、クローン13380およびクローン13381の重鎖可変領域、軽鎖可変領域のアミノ酸配列およびCDR配列を示す図である。
図12図12は、LAG-3ヒト化マウスMC38担癌モデルにおいてインビボで13381変異体の抗腫瘍効果を検証したことを示す図である。平均腫瘍体積±SEMが図示されている。*は、有意水準が0.05であることを表し、**は、有意水準が0.01であることを表す。
【実施例1】
【0073】
抗LAG-3モノクローナル抗体の調製
1.1 ヒトLAG-3組み換え融合タンパク質に高親和性で結合する単鎖抗体のパニング
本実施例は、完全なヒト単鎖scFvファージディスプレイライブラリーからヒトLAG-3組み換え融合タンパク質に高い親和性で結合する単鎖抗体をパニングする方法について説明する。この方法は、後述の完全ヒト単鎖scFvファージディスプレイライブラリーの使用に係り、市販のヒトLAG-3-6*His組み換え融合タンパク質(Novoprotein、cat#CJ91)、大腸菌TG1(Lucigen、cat#60502-1)、およびM13KO7ヘルパーファージ(Thermo Fisher、cat#18311019)の使用に係る。本実施例に係る全ヒト単鎖scFvファージディスプレイライブラリーは、pBR3.22プロモーターとM13ファージpIIIタンパク質ディスプレイシステムを含むファージミドベクターpCLS1.0(配列1)から構築され、そのC末端にはMyc-Hisタグが含まれている。ライブラリーの構築時に大腸菌TG1が使用された。当該全ヒト単鎖scFvファージディスプレイライブラリーは、文献でよく知られている通常の方法によって構築され、下記のように簡単に説明する。すなわち、RNA抽出キット(TaKaRa、cat#9767)を利用して市販の健康人PBMCs(Allcells、cat#PB-003F-S、50サンプル)からRNAを獲得し、各全ヒトscFv単鎖ファージディスプレイサブライブラリーは、5または10のサンプルのRNAを混合して構築された。逆転写キット(Thermo Fisher、cat#4368814)を使用してRNAを逆転写してcDNAの第一鎖を合成し、ヒト抗体可変領域遺伝子を増幅するための特異性プライマーを文献(CaiXH,GarenA.PNAS,1995.92(14):6537-6541)およびV-baseデータベースに従って設計して合成した。cDNA第一鎖をテンプレートとして、ヒト抗体重鎖可変領域と軽鎖可変領域をそれぞれPCRで増幅した。分子クローニング技術を利用してヒト抗体重鎖可変領域および軽鎖可変領域遺伝子フラグメントをファージミドベクターpCLS1.0にクローニングした。具体的には、ヒト抗体軽鎖可変領域をNhe I/Not I二重消化によってベクターpCLS1.0にクローニングし、大腸菌TG1にエレクトロポレーションにより形質転換して、ファージ軽鎖サブライブラリーを得てベクターpCLS1.0-VLを得た。続いてSfi I/Xhо I二重消化を利用してヒト抗体重鎖可変領域をベクターpCLS1.0-VLにクローニングした。同じ方法を使用して重鎖可変領域と軽鎖可変領域の組み合わせを備えた全ヒトscFvファージディスプレイサブライブラリーを得た。各サブライブラリーの合計ストレージ容量は9×10である。
パニング実験におけるヒトLAG-3-6*Hisタグ融合タンパク質はいずれもバイオチンラベリングキット(Biotin Labeling Kit-NH2(Dojindo,cat#LK03))を使用してバイオチンを標識した。パニング実験を以下のように簡単に説明する。すなわち、大腸菌TG1を使用してM13KO7ヘルパーファージを調製し、測定力価は約1.0×1013であり、それをOD600値が0.5~0.6である上記全ヒトscFv単鎖ファージディスプレイライブラリーに感染させて一回目の入力(input)ファージを取得した。液相パニングストラテジーを利用し、事前にDynabeads(登録商標)M-280 Streptavidin(Thermo,cat#11206D)とプレインキュベーションしたビオチン化ヒトLG-3-6*Hisタグ組み換え融合タンパク質によりヒトLAG-3のscFv単鎖抗体に結合するファージを濃縮した。濃縮された前記単鎖抗体ファージをpH2.2、0.1Mグリシン‐塩酸溶液で溶出し、一回目の出力(оutput)ファージを取得した。一回目の出力ファージをOD600値が0.5~0.6であるTG1大腸菌に感染させて二回目の入力ファージを取得し、続いて上記生物学的パニング方法を使用してヒトLAG-3-6*Hisタグ組み換え融合タンパク質に結合する二回目の出力ファージを得た。二回目の生物学的パニング方法を繰り返して三回目または四回目のパニングを行い、三回目または四回目のパニングを経て濃縮された出力ファージを大腸菌TG1に感染させてモノクローンを得て、ヒトLAG-3-6*Hisタグ組み換え融合タンパク質と高い親和性を有するモノクローナル大腸菌をファージELISAにより同定、選択して配列決定の分析をし、19個の単一ヌクレオチド配列を得た。具体的な配列を表1に示す。
1.2 フローサイトメトリーによりLAG-3タンパク質に結合する単鎖抗体を選択してIgG転換を行った
単一ヌクレオチド配列を持つ19個のモノクローナルscFv単鎖抗体が細胞表面LAG-3タンパク質に対する結合能力をテストするために、これらのscFv単鎖抗体を持つ大腸菌モノクローンをIPTGで誘導して可溶性scFv単鎖抗体タンパク質を発現させ、ろ過された上清と活性化されたヒトCD4T細胞を取って結合活性を検出した。ヒトCD4T細胞濃縮キット(STEMCELL、cat#19052)を使用してヒト末梢血PBMCsからCD4T細胞を単離した。そして、単離されたCD4T細胞をCD3/CD28 Dynabeads(Gibco、cat#11131D)と共インキュベーションし、5%COインキュベーターで37℃で48時間活性化した。前記IPTGにより誘導発現された19個の可溶性scFv単鎖抗体タンパク質、2YT培地(Sangon Biotech (Shanghai) Co., Ltd.、cat#SD7019)およびブランク対照PBS(Hyclone、cat#SH30256.01)をそれぞれ活性化されたヒトCD4T細胞と4℃で1時間共インキュベーションした。次いで、細胞を冷1×PBSバッファーで二回洗浄した。1:50希釈のanti-His-PEタグ抗体(Miltenyi Biotec、cat#130-092-691)を入れて混合物を4℃で30分間インキュベーションした後、冷1×PBSバッファーで二回洗浄し、Guava easyCyte HTフローサイトメーター(MERCK MILLIPORE)により、活性化されたCD4陽性T細胞に対する前記誘導発現されたscFv単鎖抗体の結合活性を分析した。フローサイトメトリー中にLAG-3を発現するCD4陽性T細胞はゲーティングにより選択された。結果は表2に示されるように、モノクローンにより誘導発現された19個の可溶性scFv単鎖抗体タンパク質のうち6個の抗体タンパク質(11446、11452、11454、11455、11471、11487)は、活性化されたヒトCD4陽性T細胞に対する最高の結合活性を有する。
11446、11452、11454、11455、11471、11487の6つのscFv単鎖抗体遺伝子を選択して分子クローニングし、IgG4に転換した。一般的には、リーダーペプチド、Nhe I/Not I消化サイト、重鎖遺伝子定常領域およびヒトIgG4-Fcを含む配列をpCDNA3.3+にクローニングして構築し、ベクターpCDNA3.3-IgG4が得られた。同様に、リーダーペプチド、Nhe I/BsiW I消化サイト、軽鎖Kappa遺伝子定常領域を含む配列をpCDNA3.3+にクローニングして構築し、ベクターpCDNA3.3-VKappaが得られ、または、リーダーペプチド、BamH I/Hind III消化サイト、軽鎖lambda遺伝子定常領域を含む配列をpCDNA3.3+にクローニングして構築し、ベクターpCDNA3.3-VLambdaが得られた。前記scFv単鎖抗体の重鎖可変領域遺伝子ヌクレオチド配列の両端にNhe I/Not Iサイトを加えてpCDNA3.3-IgG4プラスミドの対応するサイトに挿入し、前記scFv単鎖抗体の軽鎖可変領域ヌクレオチド配列の両端にNhe I/BsiW Iサイトを加えてpCDNA3.3-Vkappaプラスミドの対応するサイトに挿入し、またはBamH I/Hind III消化サイトを利用してscFv単鎖抗体の軽鎖可変領域ヌクレオチド配列をpCDNA3.3-VLambdaベクターに挿入した。前記モノクローナル抗体を発現する組み換えプラスミドを取得した。表3に示されるように、その中で、すべての重鎖はIgG4である(Padlan EA Mol Immunol.1994 Feb;31(3):169-217. Anatomy of the antibody molecule)。
1.3 IgG4モノクローナル抗体の発現、精製、同定および結合活性
上記表3に記載されている重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含む組み換えプラスミドを、ExpiFectamineTM CHO Transfection Kit(Thermo Fisher,cat#A29129)リポソーム法を使用して懸濁培養されたExpiCHO-S細胞(Thermo Fisher,cat#A29127)を一過性トランスフェクションした。
30ml ExpiCHO Expression培地(Thermo Fisher,cat#A29100-01)において、37℃、8%CO、120rpmの条件下で前記取得したトランスフェクションされたExpiCHO-S細胞を培養した。
10~14日間培養されたトランスフェクション細胞を二次遠心分離処理(一次遠心分離の条件は、20分間、400gである;二次遠心分離の条件は、20分間、10000gである)し、細胞と細胞破片を除去して上清を得た。清澄化された上清をプロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラム(GE Healthcare,cat#GE-17-5438-04)に載せ、三段階で溶出(溶出バッファーは順に、150mM Nacl、pH5.0のリン酸塩バッファー;20mMクエン酸ナトリウム‐1M 塩化ナトリウムpH5.0;20mMクエン酸ナトリウムpH5.0の溶出バッファーである)して不純物を除去した後、pH3.0の20mMクエン酸ナトリウム溶液により目標の抗体を分離して捕獲した。最後に、限外ろ過濃縮ステップにより、目標の抗体をpH7.4の1×PBSバッファーに置き換えた。
精製された6つのIgG抗体(11446、11452、11454、11455、11471、11487)について、ELISA法によりヒトLAG-3-6*Hisタグ組み換え融合タンパク質抗原に対するインビトロ結合活性を検出した。このテストは、市販のヒトLAG-3-6*Hisタグ融合タンパク質(Novoprotein、cat#CJ91)に係る。具体的には、ヒトLAG-3-6*Hisタグ融合タンパク質をコーティングバッファー(炭酸塩バッファー)で1μg/mlの濃度に希釈し、4℃で96ウェルプレート(CORNING、cat#9018)に一晩コーティングした。pH7.4の1×PBSバッファーで三回洗浄した後、5%スキムミルクで2時間ブロックした。精製された6つのIgG抗体をpH7.4の1×PBSバッファーにより100μg/mlから3倍勾配で希釈し、コーティング抗体とともに25℃で2時間共インキュベーションした。そして、抗‐hIgGタグが付けられているHRP検出抗体を使用してヒトLAG-3-6*Hisタグ組み換え融合タンパク質抗原に対する前記抗体の結合を検出した。図1と表4に示すように、11452クローンは、ヒトLAG-3-6*Hisタグ融合タンパク質抗原に対する最高の親和性を有し、該クローン11452はMV705-3と命名され、その重鎖CDR1(HCDR1)アミノ酸配列はSYGIS(配列88)であり、重鎖CDR2(HCDR2)アミノ酸配列はWISAYNGNTNYAQKLQG(配列89)であり、重鎖CDR3(HCDR3)アミノ酸配列はDGWWELLRPDDAFDI(配列90)であり、軽鎖CDR1(LCDR1)アミノ酸配列はSGDKLGDKYAY(配列91)であり、軽鎖CDR2(LCDR2)アミノ酸配列はYDSDRPS(配列92)であり、軽鎖CDR3(LCDR3)アミノ酸配列はQVWDSSSDQVV(配列93)である。
【実施例2】
【0074】
トランスフェクションされたExpiCHO-S細胞からのMV705-3 LAG-3モノクローナル抗体の調製
好ましいクローンMV705-3の重鎖および軽鎖遺伝子を含む組み換えプラスミドを、ExpiFectamineTM CHO Transfection Kit(Thermo Fisher,cat#A29129)リポソーム法を使用して大規模(200~600ml)懸濁培養されたExpiCHO-S細胞(Thermo Fisher,cat#A29127)を一過性トランスフェクションし、実施例1.3に記載のトランスフェクション、培養、精製方法を用いて目標の抗体を調製した。最後に、後続の各インビトロおよびインビボ活性検出および生物学的分析実験のために、限外ろ過濃縮ステップにより、目標の抗体をpH7.4の1×PBSバッファーに置き換えた。
【実施例3】
【0075】
一過性発現、精製されたMV705-3抗体の純度分析
3.1 実施例2で得られたLAG-3モノクローナル抗体MV705-3の純度をキャピラリー電気泳動(CE-SDS)で分析した
SDS-MW Analysisキット(Beijing Biosmart Tech. Institute、cat#BSYK018)を使用して下記の方法に従ってモノクローナル抗体MV705-3サンプルに対して還元および非還元処理を行った。
非還元:100μgの抗ヒトLAG-3全ヒトモノクローナルMV705-3抗体サンプルを75μlの1%濃度のSDSバッファーに入れて、0.1M Tris-HClで容量を95μlにメスアップし、5μlのヨードアセトアミドを加え、均一にボルテックスした後、70℃で5分間インキュベーションし、8℃で1分間6000g遠心分離した。
還元:100μgの抗ヒトLAG-3全ヒトモノクローナルMV705-3抗体サンプルを75μlの1%濃度のSDSバッファーに入れて、0.1M Tris-HClで容量を95μlにメスアップし、5μlのβ-メルカプトエタノールを加え、均一にボルテックスした後、70℃で5分間インキュベーションし、8℃で1分間6000g遠心分離した。
そして、キャピラリー電気泳動装置(Beckman、型番:PA800plus)を用いて純度分析をした。その結果、還元(R-CE-SDS)と非還元(NR-CE-SDS)条件下で、本発明の、ExpiCHO-Sの一過性トランスフェクションにより発現精製された抗ヒトLAG-3全ヒトモノクローナルMV705-3抗体サンプルは、重鎖(HC)、軽鎖(LC)、およびメインピークのピーク純度のパーセンテージ(%)は表5に示される。
3.2 実施例2で得られたLAG-3モノクローナル抗体MV705-3の純度をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC-HPLC)により分析した
20μgの抗ヒトLAG-3全ヒトモノクローナルMV705-3抗体(濃度を1mg/mlに調整した)をHPLCクロマトグラフィー(Agilent Technologies)のカラム(TOSOH、型番:TSKgel G3000SWXL)に入れた。移動相は50mMリン酸塩バッファーと300mM NaClであり、pH7.0であり、流速は0.8ml/minであり、検出波長は280nmである。その結果は図2に示される。ピークの計算は、ChemStationソフトウェアを用いて分析し、本発明の抗ヒトLAG-3全ヒトモノクローナルMV705-3抗体のメインピークの割合(%)は99.2%を超え、多量体ピークの割合(%)は1%未満である。
【実施例4】
【0076】
ヒトLAG-3-6*Hisタグ組み換え融合タンパク質に対するMV705-3モノクローナル抗体の結合
4.1 ELISA法によりヒトLAG-3-6*Hisタグ組み換え融合タンパク質に対するMV705-3モノクローナル抗体の親和性を検出した
本実施例は、ヒトLAG-3-6*Hisタグ組み換え融合タンパク質抗原に対するMV705-3モノクローナル抗体の結合力をインビトロ活性実験で検出することに係る。このテストは、市販のヒトLAG-3-6*Hisタグ融合タンパク質(Novoprotein、cat#CJ91)および陽性対照抗体を使用した。その陽性対照抗体は、抗体25F7(US2011/0150892A1、PCT/US2009/053405)であり、その重鎖ヌクレオチド配列、重鎖アミノ酸配列、軽鎖ヌクレオチド配列、軽鎖アミノ酸配列はそれぞれ、配列64、配列65、配列66、配列67である。そのIgG4 kappaベクターの構築方法について、実施例1.2を参照することができ、しかも実施例1.3に記載の方法でExpiCHO-S細胞をトランスフェクションして発現し精製し、pH7.4の1×PBSバッファーに保存した。抗ヒトLAG-3全ヒトモノクローナル抗体MV705-3、陽性対照抗体をそれぞれコーティングバッファー(炭酸塩バッファー)で1μg/mlの濃度に希釈し、4℃で96ウェルプレート(CORNING、cat#9018)に一晩コーティングした。pH7.4の1×PBSバッファーで三回洗浄した後、5%スキムミルクで2時間ブロックした。ヒトLAG-3-6*Hisタグ融合タンパク質をpH7.4の1×PBSバッファーにより20μg/mlから3倍勾配で希釈し、コーティング抗体とともに25℃で2時間共インキュベーションした。そして、抗‐Hisタグが付けられているHRP検出抗体を使用してヒトLAG-3-6*Hisタグ融合タンパク質抗原に対する前記抗体の結合を検出した。一回のELISA実験結果は図3に示されるように、MV705-3モノクローナル抗体はヒトLAG-3組み換え融合タンパク質に対して高い親和性を有し、ELISAで検出された親和性EC50値は40 ng/mlである。表6は、三回の独立ELISA実験における、ヒトLAG-3-6*Hisタグ組み換え融合タンパク質に対するMV705-3モノクローナル抗体の結合のEC50値の範囲(40-100 ng/ml)_をまとめている。
4.2 MV705-3モノクローナル抗体の親和平衡解離定数(KD)の検出
ヒトLAG-3-6*Hisタグ組み換え融合タンパク質に対するMV705-3モノクローナル抗体の結合能力を、Octet Red96生体分子間相互作用システム(Octet Red96、ForteBio)を使用して検出した。抗ヒトIgG Fc(AHC)動力学的バイオセンサー(Fortebio、#18-5063)をpH1.7のグリシンで前処理してから検出用PBSバッファーに浸した。MV705-3を10μg/mlの濃度でAHCバイオセンサーに固定した。次に、MV705-3がロードされたAHCバイオセンサーを異なる濃度のヒトLAG-3-6*His抗原とバッファーに浸した。検体カラムの最終希釈点は、バッファーとロードされたバイオセンサー間の非特異的な結合をテストするように検出用バッファーのみを含む。0~300秒で抗原と抗体との結合が検出され、そして300~900秒で解離が発生した。検出用バッファーで60秒のベースラインが確定された。抗LAG-3モノクローナル抗体の親和性曲線は、1:1の結合の動力学センシング一価結合モデルでフィッティングさせられた。結合動力学分析は表7に示す。
4.3 BIAcоreによるMV705-3モノクローナル抗体の親和平衡解離定数KDの測定
本実施例は、BIAcоre SPR技術を用いて、ヒトLAG-3-6*Hisタグ組み換え融合タンパク質に対するMV705-3モノクローナル抗体または上記陽性対照抗体の結合を検証した。モノクローナル抗体MV705-3(1.1μg/ml)または陽性対照抗体(12.9μg/ml)を500RUレベルに設定し、製造元が推奨した標準的固定化操作手順に基づいてそれをCM5チップ(GE、ロット番号:BR100530)にコーティングした。異なる濃度(0.352~45nM)のヒトLAG-3-6*Hisタグ組み換え融合タンパク質を30μl/minの流速で、抗体にカップリングされたチップの表面にそれぞれ120秒注射・分析し、抗原を10分間解離させた。抗原結合の解離が完了した後、pH2.1のGly-HCl再生溶液を用いて30μl/minの流速でチップの表面を30秒再生し、さらにPBSバッファーでチップを60秒洗浄してチップの状態を安定させた。BIAcоre制御ソフトウェア(バージョン2.0.1)を使用し、BIAcоre T200(No.1602831)表面プラズモン共振器ですべての実験を行った。BiaEvaluation 3.0ソフトウェアを使用してデータ分析をした。結合動力学分析は表8に示すように、MV705-3モノクローナル抗体は、陽性対照抗体25F7よりも、ヒトLAG-3-6*Hisタグ組み換え融合タンパク質に結合するKDが高い。
【実施例5】
【0077】
ヒトLAG-3-mFc組み換え融合タンパク質とMHCクラスII分子との結合に対するMV705-3のブロッキング効果
本実施例は、ヒトLAG-3-mFc組み換え融合タンパク質とMHCクラスII分子との結合に対して抗ヒトLAG-3完全ヒトモノクローナル抗体MV705-3がブロッキング効果を有することを証明できるインビトロ結合活性テストを行った。このテストは、ヒトLAG-3-mFc組み換え融合タンパク質と、ヒトMHCクラスII分子を表面に発現するDaudi細胞とを使用した。ヒトLAG-3-mFc融合タンパク質(hLAG-3-mFc)は、ヒトLAG-3細胞外ドメインとマウスFcとを融合してなるものであり、そのヌクレオチド配列は配列68であり、アミノ酸配列は配列69である。LAG-3-mFc融合タンパク質を発現するヌクレオチド配列を発現ベクターpcDNA3.3にクローニングし、Expi293細胞(Thermo Fisher,cat#A14527)にトランスフェクションし、実施例1.3に類似した方法で精製して上記hLAG-3-mFc組み換え融合タンパク質を得た。配列#10161を発現ベクターpcDNA3.3に構築し、Expi293細胞にトランスフェクションし、発現精製によりイソタイプ対照タンパク質を得た。このテストは、陽性対照抗体25F7(実施例4に記載の通り)とこのアイソタイプ対照タンパク質の両方に係る。
ヒトLAG-3-mFc組み換え融合タンパク質とMHCクラスII分子との結合に対する前記抗体のブロッキング効果をテストするために、MV705-3、陽性対照抗体25F7およびアイソタイプ対照タンパク質を4℃に予め冷却したの1×PBSバッファーで100μg/mlから3倍勾配希釈し、それと同時に各勾配希釈液に10μg/mlのhLAG-3-mFc組み換え融合タンパク質溶液を加えた。該混合液を4℃で30分間インキュベーションしてから、4℃に予め冷却したの1×PBSバッファーにより洗浄された2×10個のDaudi細胞を加え、4℃で1時間インキュベーションした。その後、予め冷却した4℃の1×PBSバッファーで一回洗浄し、ウサギ抗マウスIgGのPEタグ抗体(Abcam,cat#ab7000)と、洗浄されたDaudi細胞とを1時間インキュベーションし、Guava easyCyte HTフローサイトメーター(MERCK MILLIPORE)でhLAG-3-mFc組み換えタンパク質とDaudi細胞との結合を分析した。
図4と表9に示す結果のように、モノクローナル抗体MV705-3は、ヒトLAG-3-mFc組み換え融合タンパク質とDaudi細胞表面のMHCクラスII分子との結合を効果的にブロッキングすることができ、そのブロッキングIC50値は2.8μg/mlである。これは、ヒトLAG-3-mFcとDaudi細胞表面のMHCクラスII分子との結合に対する陽性対照抗体25F7のブロッキング能力に相当し、陽性対照抗体25F7のブロッキングIC50値は3.3μg/mlである。
【実施例6】
【0078】
アカゲザルLAG-3抗原およびマウスLAG-3抗原に対するMV705-3の結合活性
本実施例は、前記抗体が、アカゲザル(Macaca fascicularis)LAG-3抗原およびマウスLAG-3抗原と交差反応を有するか否かを説明するためのインビトロ結合活性テストを行った。このテストは、市販の組み換えアカゲザルLAG-3-6*Hisタグ融合タンパク質(Novoprotein、cat#C998)、および構築発現された組み換えマウスLAG-3-6*Hisタグ融合タンパク質に係る。マウスLAG-3遺伝子完全長cDNA(Sinobiological,cat#MG53069-G)を発現ベクターpcDNA3.3にクローニングし、Expi293細胞にトランスフェクションし、上記組み換えマウスLAG-3-6*Hisタグ融合タンパク質(ヌクレオチド配列は配列70であり、アミノ酸配列は配列71である)を得た。
前記抗体とアカゲザルLAG-3抗原との交差反応をテストするために、抗ヒトLAG-3全ヒトモノクローナル抗体MV705-3と陽性対照抗体25F7をそれぞれコーティングバッファー(炭酸塩バッファー)で1μg/mlの濃度に希釈し、4℃で96ウェルプレート(CORNING、cat#9018)に一晩コーティングした。1×PBSバッファーで三回洗浄した後、5%スキムミルクで2時間ブロックした。アカゲザルLAG-3-6*Hisタグ融合タンパク質を1×PBSバッファーにより20μg/mlから3倍勾配で希釈し、コーティング抗体とともに25℃で2時間共インキュベーションした。そして、抗‐hisタグが付けられているHRP検出抗体を使用してアカゲザルLAG-3-6*Hisタグ融合タンパク質抗原に対する前記抗体の結合を検出した。
図5と表10に示すように、モノクローナル抗体MV705-3は、アカゲザルLAG-3-6*Hisタグ融合タンパク質と良好な交差反応活性を有し、そのEC50値は0.11μg/mlである。前記陽性対照抗体25F7は、アカゲザルLAG-3-6*Hisタグ融合タンパク質との交差反応が弱く、対応するEC50値は7.0μg/mlである。
前記抗体とマウスLAG-3抗原との交差反応をテストするために、上記方法を使用してマウスLAG-3-6*Hisタグ融合タンパク質抗原に対する前記抗体MV705-3の結合活性を検出した。その結果は図6と表11に示すように、マウスLAG-3抗原に対して、前記抗体MV705-3と陽性対照抗体25F7のいずれも弱い交差反応の活性を有する。
【実施例7】
【0079】
活性化されたヒトCD4T細胞に対するMV705-3の結合活性
本実施例は、活性化されたヒトCD4T細胞に対する前記抗体の結合活性をテストするためのインビトロ結合活性テストを行い、活性化されたヒトCD4T細胞の表面に天然ヒトLAG-3が発現される。実施例1.2に記載の方法を使用してCD4T細胞を活性化した。そして、抗体MV705-3、陽性対照抗体25F7、上記陰性対照、すなわちアイソタイプ対照を、冷1×PBSバッファー(Hyclone,cat#SH30256.01)で10μg/mlから3倍または4倍勾配希釈した。結合活性検出について、1:200希釈のヤギ抗ヒトIgG-PEタグ抗体(Abcam,cat#ab98596)を使用してCD4T細胞に対する前記抗体の結合を検出し、Guava easyCyte HTフローサイトメーター(MERCK MILLIPORE)により、細胞に対する前記抗体の結合活性を分析した。フローサイトメトリー中にLAG-3を発現するCD4陽性T細胞はゲーティングにより選択された。その結果は図7と表12に示すように、MV705-3モノクローナル抗体は、LAG-3のCD4陽性T細胞を高い親和性で結合・発現することができ、その結合EC50値は1.9ng/mlである。
【実施例8】
【0080】
MV705-3のインビトロ生物学的機能分析
本実施例はインビトロ生物学的機能分析を実行し、市販の、ヒトLAG-3を安定的に発現する細胞株LAG3/NFAT Reporter-Jurkat (BPS bioscience,cat#71278)、Raji細胞(ATCC,cat#CCL-86)、スーパー抗原試薬(Toxin technology-ET404)、biо-glоルシフェラーゼ試薬(Promega,cat#G7940)をテストに利用した。
前記抗体のインビトロT細胞の活性化生物学的機能をテストするために、前記抗体MV705-3および陽性対照抗体25F7をRPIM1640(Gbico,cat#11875093)を150μg/ml(最終濃度の5倍)から3倍勾配希釈し、濃度ごとにウェルを三つ重複し、一つの抗体のブランク濃度のブランク対照を設置した。各希釈勾配の抗体をそれぞれ4×10の細胞/ウェルのLAG3/NFAT Reporter-Jurkat細胞と混合し、37℃、5%COインキュベーターで30分間プレインキュベーションした。そして、順に3×10の細胞/ウェルRaji細胞及び10μlの濃度0.08ng/ml(最終濃度の10倍)のスーパー抗原試薬を加えた。混合物を37℃、5%COインキュベーターで5~6時間共インキュベーションした。100μlのbiо-glоルシフェラーゼ検出試薬をすばやく加えて5~10分間インキュベーションし、TECAN蛍光検出装置(TECAN infinite M1000 PRO)を使用して生体蛍光のシグナルを測定して前記抗体のインビトロT細胞の活性化機能を分析した。誘導倍数は、各濃度勾配の生体蛍光シグナル値とブランク対照生体蛍光シグナル値との比であり、実験結果はGraphPad Prismにより非線形回帰分析された。
その結果は図8および表13に示すように、前記抗体MV705-3の濃度の増加につれて、生体蛍光のシグナル強度は勾配依存的に上昇した。これは、前記抗体MV705-3がNFATレポーター遺伝子の発現を増加させることができることを説明し、そのEC50値は0.04μg/mlである。前記抗体MV705-3は、陽性対照抗体25F7よりも有意に優れたインビトロT細胞活性化生物学的機能を示し、陽性対照抗体25F7のEC50値は0.64μg/mlである。
【実施例9】
【0081】
MV705-3、BMS-25F7抗体、およびBMS-986016抗体の結合エピトープの分析
本実施例の目的は、MV705-3モノクローナル抗体が、BMS-25F7抗体(US2011/0150892A1及びPCT/US2009/053405のような文献に開示されており、ここで言及して本出願に組み込まれる)またはBMS-986016抗体(BMS-986016は、WO2015116539に記載のSEQ ID NO:1と2に示される重鎖および軽鎖を含み、WO2014/008218にも記載されており、ここで言及して本出願に組み込まれる)と同じ結合エピトープを有するか否かを分析することである。実験は、Octet Red96生体分子間相互作用システム(Octet Red96、ForteBio)を使用して表した。実験設計は図9に示され、以下のように簡単に説明する。すなわち、ビオチンで標識されたhLAG-3-6*hisタグ組み換えタンパク質を10μg/mlの濃度でSAバイオセンサー(Fortebio、ロット番号18-5020)に固定し、300秒平衡した後にPBSバッファーに浸漬し、hLAG-3-6*hisタグ組み換えタンパク質をロードしたSAバイオセンサーを下記各グループのサンプルに浸漬した:(1)100μg/mlのBMS対照モノクローナル抗体(BMS-25F7またはBMS-986016);(2)100μg/mlのMV705-3モノクローナル抗体;(3)100μg/mlのMV705-3モノクローナル抗体と100μg/mlのBMS対照モノクローナル抗体BMS-25F7またはBMS-986016の混合物;(4)50μg/mlのMV705-3モノクローナル抗体と50μg/mlのBMS対照モノクローナル抗体BMS-25F7またはBMS-986016の混合物。PBSバッファーで60秒のベースラインが確定された。0~300秒で抗原と抗体との結合が検出され、そして300~900秒で解離が発生した。抗LAG-3モノクローナル抗体の親和性曲線は、1:2の結合の動力学センシング一価結合モデルでフィッティングさせられた。結合動力学分析は図10a~dに示すように、飽和濃度下(100μg/ml)で、hLAG-3-hisタグ組み換えタンパク質に対するMV705-3モノクローナル抗体の結合およびBMS対照モノクローナル抗体の結合はいずれも最高値(Rmax)に達したが、両方の抗体の混合物は100μg/ml+100μg/mlまたは50μg/ml+50μg/mlの濃度下でいずれもhLAG-3-hisタグ組み換えタンパク質に対する結合シグナル値を増加させることができる。これは、hLAG-3抗原に対するMV705-3モノクローナル抗体の結合エピトープは、それに対するBMSの対照抗体の結合エピトープとは異なることを示している。
【実施例10】
【0082】
MV705-3モノクローナル抗体の変異体の設計、構築発現及び活性試験
10.1 MV705-3モノクローナル抗体の変異体の設計及び構築発現
MV705-3モノクローナル抗体のアミノ酸配列の潜在的な分解サイトを分析して調べた結果、その抗体の重鎖中に二つのサイトが「DD」アミノ酸配列を含み、アスパラギン異性化の可能性のある潜在的な識別サイトであり、それぞれ配列41の第89、90サイト、及び108、109サイトに位置することは発見された。Q5(登録商標) Site-Directed Mutagenesis Kit部位特異的変異誘発キット(New England Biolabs、ロット番号E0552S)を使用し、MV705-3モノクローナル抗体のVH領域の第89、90サイト及び108、109サイトに対する部位特異的変異誘発を実施し、それらをDEまたはEDに変更した。誘発が成功したMV705-3モノクローナル抗体変異体VH領域を、ヒトIgG4 S228P定常領域を含むMV705-3モノクローナル抗体の元ベクターにサブクローニングした(得られたクローン番号を表14に示す;得られたクローン重鎖VHヌクレオチド配列とアミノ酸配列番号について表15参照)。MV705-3モノクローナル抗体の各変異体の重鎖を発現するベクターをそれぞれ、MV705-3モノクローナル抗体の軽鎖を発現するベクターと一緒にExpi-CHO-S細胞にトランスフェクションした。
下記の各分析方法により、得られた上記8つのMV705-3モノクローナル抗体変異体とMV705-3モノクローナル抗体の活性を検出した:(a)ヒトLAG-3組み換えタンパク質に結合するELISA;(b)ヒトLAG-3タンパク質を発現する細胞に結合する実験;(c)市販の、ヒトLAG-3を安定的に発現する細胞株LAG3/NFAT Reporter-Jurkatを利用したインビトロ生物学的機能分析。
10.2 MV705-3モノクローナル抗体変異体の活性試験
(a)ヒトLAG-3組み換えタンパク質にMV705-3モノクローナル抗体の変異体が結合するELISA方法は、実施例4に記載の通りであり、その結果は表16に示すように、2つの変異体タンパク質13380(DE+DD)、13381(ED+DD)が、ヒトLAG-3-hisタグ組み換え融合タンパク質に対するMV705-3モノクローナル抗体の結合能力と類似した結合能力を有し、その他の変異体の結合能力は異なる程度で低下した。
(b)ヒトLAG-3を発現する細胞に対するMV705-3モノクローナル抗体の結合の実験方法を下記のように簡単に説明する:
被験抗体MV705-3モノクローナル抗体とその変異体、陽性対照抗体BMS-25F7及びBMS-986016抗体を冷1×PBSバッファー(Hyclone,cat#SH30256.01)で10μg/mlから3倍または4倍勾配希釈した。結合活性検出について、1:200希釈のヤギ抗ヒトIgG-PE標識した抗体(Abcam,cat#ab98596)を使用してヒトLAG-3を発現する細胞に対する前記抗体の結合を検出し、Guava easyCyte HTフローサイトメーター(MERCK MILLIPORE)により、細胞に対する前記抗体の結合活性を分析した。フローサイトメトリー中にLAG-3を発現する陽性細胞はゲーティングにより選択された。その結果は表17に示される。ELISA結果と類似し、MV705-3モノクローナル抗体は、LAG-3の細胞を高い親和性で結合・発現することができ、その2つの変異体タンパク質13380(DE+DD)、13381(ED+DD)が、ヒトLAG-3を発現する細胞に対するMV705-3モノクローナル抗体タンパク質の結合能力と類似した結合能力を有し、その他の変異体の結合能力は異なる程度で低下した。
(c)市販の、ヒトLAG-3を安定的に発現する細胞株LAG3/NFAT Reporter-Jurkatを利用したインビトロ生物学的機能分析は、実施例8に記載の通りである。LAG-3に対するMV705-3変異体クローン13365(DD+DE)、13565(DE+DE)及び13564(ED+DE)の結合能力は大幅に低下していることはすでに分かった。そのため、MV705-3モノクローナル抗体及び、13380(DE+DD)、13381(ED+DD)、13386(DD+ED)、13563(DE+ED)、及び13616(ED+ED)の5つの変異体のみをテストした。その結果は表18に示すように、変異体タンパク質13380(DE+DD)及び13381(ED+DD)は、MV705-3モノクローナル抗体と類似した、インビトロでT細胞を活性化する能力を持っている。
【実施例11】
【0083】
インビボでの腫瘍細胞増殖の阻害における13381変異体の有効性
インビボでの腫瘍細胞増殖の阻害におけるMV705-3モノクローナル抗体の13381変異体の有効性をテストするために、ヒト化LAG-3(Lymphocyte-activation gene 3)マウス(SHANGHAI MODEL ORGANISMS CO., LTD.から購入、完全な株名:B6.129-Lag3tm(hLAG3)/Smоc;カタログ番号NM-KI-00049)を使用した。相同組み換え法を使用してマウス内因性Lag3遺伝子のすべての細胞外領域配列をヒトLAG3配列に置き換え、これによってマウスにヒトキメラLAG3タンパク質を発現させた。マウスMC38結腸癌細胞株をマウスに接種して腫瘍移植モデルを調製した。
上記ヒト化LAG-3マウス(B6.129-Lag3tm(hLAG3)/Smоc)にそれぞれ0日目に1×10のMC38細胞を移植し、腫瘍が平均約123(mm)に増殖した時に群分けして投薬し始め、3週間連続して週に2回投与し(BIWx3)、投与開始から3~4週間連続して観察して平均腫瘍体積を測定した。動物を、(1)PBS溶媒対照、BIWx3、ip;(2)mPD-1抗体(BE0146、BioCell)、1mg/kg、BIWx3、ip;(3)MV705-3モノクローナル抗体の13381変異体、10mg/kg、BIWx3、ip;(4)MV705-3モノクローナル抗体の13381変異体、10mg/kg、及びmPD-1抗体(BE0146、BioCell)、1mg/kg、BIWx3、ipの四つの群に分けた(n=8)。
その結果は表19及び図12に示すように、MV705-3モノクローナル抗体の13381変異体は単独で腫瘍増殖を効果的に阻害でき、平均腫瘍増殖阻害率は35.11%であり(
)、TiまたはViは、特定の時点での治療群または対照群の平均腫瘍体積を表し、T0またはV0は、群分けの後、投与前の治療群または対照群の平均腫瘍体積を表す。それに対して、抗マウスPD-1モノクローナル抗体は腫瘍増殖に対して阻害の効果が無く、MV705-3モノクローナル抗体の13381変異体は、抗マウスPD-1モノクローナル抗体と組み合わせて投与する場合、腫瘍増殖に対する阻害効果が最も強く、平均腫瘍増殖阻害率は46.07%である。
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図1
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【配列表】
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