(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】光ファイバセンシング
(51)【国際特許分類】
G01D 5/353 20060101AFI20220713BHJP
【FI】
G01D5/353 B
(21)【出願番号】P 2018567297
(86)(22)【出願日】2017-06-19
(86)【国際出願番号】 GB2017051790
(87)【国際公開番号】W WO2017220985
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-06-11
(32)【優先日】2016-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512297505
【氏名又は名称】オプタセンス・ホールデイングス・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴッドフリー,アレステア
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-523551(JP,A)
【文献】特開2001-264028(JP,A)
【文献】特開2002-090123(JP,A)
【文献】特開2002-107122(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0057432(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0222811(US,A1)
【文献】国際公開第2004/040241(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01D 5/26- 5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分布型光ファイバセンサであって、
分布型音響センシングを行い、センシング光ファイバのセンシング部分に対応する複数のチャネルのそれぞれからの測定信号を提供するために、使用中にセンシング光ファイバをインテロゲートするためのインテロゲータと、
第1の特性シグネチャを検出するために前記測定信号を分析するように構成されたプロセッサとを備え、
前記第1の特性シグネチャが、第1のチャネルおよ
びすべての下流チャネルに
当てはまり、
かつ、第1のチャネルおよびすべての
下流チャネル上で同時に発生する、複数のチャネルからの測定信号の変化を含む、
分布型光ファイバセンサ。
【請求項2】
プロセッサが、大振幅歪みとして第1の特性シグネチャの発生を識別するように構成される、請求項1に記載の分布型光ファイバセンサ。
【請求項3】
プロセッサが、大振幅歪みの場所として第1のチャネルの場所を識別するように構成される、請求項2に記載の分布型光ファイバセンサ。
【請求項4】
インテロゲータが、インテロゲータから出力されるインテロゲーティング放射の偏光状態を周期的に変化させる偏光変調器を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の分布型光ファイバセンサ。
【請求項5】
インテロゲータに光学的に連結された前記センシング光ファイバをさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の分布型光ファイバセンサ。
【請求項6】
制御された変調をセンシング光ファイバに適用する少なくとも1つの変調コントローラを備える、請求項5に記載の分布型光ファイバセンサ。
【請求項7】
少なくとも1つの変調コントローラが、制御された歪みをセンシング光ファイバに選択的に
印加するために、センシング光ファイバに機械的に連結されたアクチュエータを備える、請求項6に記載の分布型光ファイバセンサ。
【請求項8】
少なくとも1つの変調コントローラが、センシングファイバ内を進むインテロゲーティング放射に、制御された偏光変調を適用する偏光変調器を備える、請求項6に記載の分布型光ファイバセンサ。
【請求項9】
センシング光ファイバに沿って異なる場所に配置された複数の前記変調コントローラがある、請求項7または8に記載の分布型光ファイバセンサ。
【請求項10】
インテロゲータが、インテロゲータから出力されるインテロゲーティング放射の偏光状態を変化させる第1の偏光変調器を備え、センサは、前記少なくとも1つの変調コントローラのうちの1つが前記制御された変調をセンシング光ファイバに適用している間に、インテロゲータから出力されるインテロゲーティング放射の偏光状態を変化させるように構成される、請求項6から9のいずれか一項に記載の分布型光ファイバセンサ。
【請求項11】
プロセッサが、前記制御された変調を適用する変調コントローラによって適用される制御された変調に関連のある、第1の特性シグネチャを検出し、この変調コントローラに関連のある第1の特性シグネチャの最小振幅に対応する偏光状態を決定するように構成される、請求項10に記載の分布型光ファイバセンサ。
【請求項12】
プロセッサが、変調コントローラによって適用される制御された変調に関連のある第1の特性シグネチャの最小振幅に対応する偏光状態の、何らかの変化を、経時的に検出するように構成される、請求項11に記載の分布型光ファイバセンサ。
【請求項13】
プロセッサが、
第1の変調コントローラの上流のセンシングファイバに作用する歪みの変化を示すものとして、
前記第1の変調コントローラによって適用される制御された変調に関連のある第1の特性シグネチャの最小振幅に対応する偏光状態の、何らかの検出された変化を、識別するように構成される、請求項12に記載の分布型光ファイバセンサ。
【請求項14】
プロセッサが、第1の変調コントローラによって適用される制御された変調に関連のある第1の特性シグネチャの最小振幅に対応する偏光状態の、検出された変化を補償するために、第1の変調コントローラの上流の第2の変調コントローラによって適用される制御された変調を、調節するように構成される、請求項13に記載の分布型光ファイバセンサ。
【請求項15】
センシング光ファイバが、パイプラインの経路、輸送ネットワークの少なくとも一部の経路、鉄道の経路、境界または周囲、関心のある地質学的形成の近く、貯留槽の近く、および電力ケーブルの経路沿い、のうちの少なくとも1つに沿って配備される、請求項1から14のいずれか一項に記載の分布型光ファイバセンサ。
【請求項16】
分布型光ファイバセンサであって、
使用中に、センシング光ファイバを光放射で繰り返しインテロゲートし、前記センシング光ファイバの中からレーリー後方散乱された後方散乱光放射を検出し、センシング光ファイバのセンシング部分に対応する複数のチャネルのそれぞれからの測定信号を提供するために後方散乱を分析するように構成されたインテロゲータユニットと、
第1のチャネルおよ
びすべての下流チャネルに
当てはまり、
かつ、第1のチャネルおよびすべての
下流チャネル上で同時に発生する、複数のチャネルからの測定信号の変化を検出するために、前記測定信号を分析するように構成されたプロセッサと
を備える、分布型光ファイバセンサ。
【請求項17】
分布型光ファイバセンシングの方法であって、
分布型音響センシングを行い、センシング光ファイバのセンシング部分に対応する複数のチャネルのそれぞれからの測定信号を提供するために、センシング光ファイバをインテロゲートするステップと、
第1の特性シグネチャを検出するために前記測定信号を分析するステップとを含み、
前記第1の特性シグネチャが、第1のチャネルおよ
びすべての下流チャネルに
当てはまり、
かつ、第1のチャネルおよびすべての
下流チャネル上で同時に発生する、複数のチャネルからの測定信号の変化を含む、
方法。
【請求項18】
第1の特性シグネチャの発生が、大振幅歪みの発生として識別される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
大振幅歪みの場所として第1のチャネルの場所を識別するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
インテロゲータから出力されるインテロゲーティング放射の偏光状態を周期的に変化させるステップを含む、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
制御された変調を、少なくとも1つの定められた場所でセンシング光ファイバに適用するステップを含む、請求項17から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
制御された変調を適用するステップが、機械的アクチュエータによって、制御された歪みをセンシング光ファイバに
印加するステップを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
制御された変調を適用するステップが、偏光変調器によって、センシングファイバ内を進むインテロゲーティング放射に、制御された偏光変調を適用するステップを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
複数の異なる定められた場所で前記制御された変調を順次適用するステップを含む、請求項21から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記制御された変調が定められた場所のうちの少なくとも1つでセンシング光ファイバに適用される間に、センシング光ファイバに入力されるインテロゲーティング放射の偏光状態を、変化させるステップを含む、請求項21から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
定められた場所で適用される制御された変調に関連のある、第1の特性シグネチャを検出し、この制御された変調に関連のある第1の特性シグネチャの最小振幅に対応する偏光状態を、決定するステップを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
定められた場所で適用される制御された変調に関連のある第1の特性シグネチャの最小振幅に対応する偏光状態の、何らかの変化を経時的に検出するステップを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
第1の定められた場所の上流のセンシングファイバに作用する歪みの変化を示すものとして、前記第1の定められた場所で適用される制御された変調に関連のある第1の特性シグネチャの最小振幅に対応する偏光状態の、何らかの検出された変化を識別するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
偏光状態の検出された変化を補償するために、第1の定められた場所の上流の第2の定められた場所で適用される制御された変調を、調節するステップを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
センシング光ファイバが、パイプラインの経路、輸送ネットワークの少なくとも一部の経路、鉄道の経路、境界または周囲、関心のある地質学的形成の近く、貯留槽の近く、および電力ケーブルの経路沿い、のうちの少なくとも1つに沿って配備される、請求項17から29のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、分布型光ファイバセンシングに関し、詳細には光ファイバの歪みセンシングに関する。
【背景技術】
【0002】
分布型光ファイバセンシングは、センシングファイバの長さに沿って環境の監視を提供するために、関心のある場所に光ファイバがセンシングファイバとして配備され、光放射でインテロゲート(interrogate)される、知られている技法である。
【0003】
分布型光ファイバセンサの1つのタイプは、コヒーレント光放射でセンシングファイバを繰り返しインテロゲートし、センシングファイバの中からレーリー後方散乱される放射を検出および分析して、センシングファイバに作用する擾乱、すなわち動的歪みのセンシングを提供する。このような擾乱は、例えば、入射音響波、または同様のものなどによって引き起こされるものなどのファイバの振動である可能性がある。このようなセンシングは、したがって、分布型音響センシング(DAS:distributed acoustic sensing)と呼ばれることが多いが、センシングファイバに作用する任意のタイプの入射する機械的擾乱または動的歪みの変化にセンサが敏感な可能性があるということが理解されよう。
【0004】
このようなDASシステムは、動的擾乱、すなわち音響の刺激もしくは振動、または同様のものを有効な監視を提供することができ、周囲または境界の監視、パイプラインまたは例えば道路、鉄道等といった輸送インフラなどの線状資産の監視、および例えば、炭化水素の貯留槽または不必要な材料/危険な材料の保存/隔離のためのエリアといった地質学的形成の監視などの、様々な応用の範囲で使用するために提案されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】英国特許出願公開第2,442,745号明細書
【文献】国際公開第2012/137022号
【文献】国際公開第2012/137021号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
すでに述べたように、レーリー後方散乱に基づくこのような分布型光ファイバセンサは、動的な振動または歪みの事象を検出するのに有効であり、このような擾乱に比較的敏感な可能性がある。センサは限定的なダイナミックレンジを有するが、センシングファイバに作用する大振幅擾乱が、例えば、位相ベースのシステムに対して、2πより大きい位相の変化といった、信号ラッピングを生じることがあり、このようなシステムからの測定値の不確実性をもたらす。また、従来のレーリーに基づく分布型光ファイバセンサは、典型的には、光ファイバに作用する静的歪みに対してゆっくり作用する変化について何の情報ももたらさない。
【0007】
本開示の実施形態は、このようなセンサから決定され得る情報を改善および/または拡張し得る分布型光ファイバセンシングのための方法および装置に関する。
【0008】
したがって、本発明の1つの態様によれば:
分布型音響センシングを行い、センシング光ファイバのセンシング部分に対応する複数のチャネルのそれぞれからの測定信号を提供するために、使用中にセンシング光ファイバをインテロゲートするためのインテロゲータ(interrogator)と、
第1の特性シグネチャを検出するために前記測定信号を分析するように構成されたプロセッサとを備え、
前記第1の特性シグネチャが、第1のチャネルおよび実質的にすべての下流チャネルに適合し、このようなすべてのチャネル上で同時に発生する、複数のチャネルからの測定信号の変化を含む、
分布型光ファイバセンサが提供される。
【0009】
したがって、下記でさらに詳細に説明されるように、様々な実施形態のセンサは、例えば、第1の特性信号が、第1のセンシング部分からセンシングファイバの終わりまで、実質的にすべてのセンシングチャネルに同時に影響を及ぼす明白な測定信号である第1の特性信号の、分布型光ファイバセンサからの測定信号を分析する。プロセッサは、大振幅歪みまたは他の大振幅擾乱として第1の特性シグネチャの発生を識別するように構成されてよい。第1のチャネルの場所は、大振幅歪みの場所として識別されてよい。
【0010】
いくつかの実施形態において、インテロゲータは、インテロゲータから出力されるインテロゲーティング放射の偏光状態を周期的に変化させる偏光変調器を備える。
【0011】
実施形態は、製造され得るようなインテロゲータおよびプロセッサに関し、また、インテロゲータに光学的に連結されたセンシング光ファイバを伴うインサイチュのセンサに関する。
【0012】
いくつかの実施形態において、制御された変調をセンシング光ファイバに適用する少なくとも1つの変調コントローラがあってよい。少なくとも1つの変調コントローラは、制御された歪みをセンシング光ファイバに選択的に適用するためにセンシング光ファイバに機械的に連結されたアクチュエータ、および/またはセンシングファイバ内を進むインテロゲーティング放射に、制御された偏光変調を適用する偏光変調器を備えることができる。センシング光ファイバに沿って、定められた異なる場所に配置された複数の変調コントローラがあってよい。
【0013】
インテロゲータは、インテロゲータから出力されるインテロゲーティング放射の偏光状態を変化させる第1の偏光変調器を備えることができ、センサは、少なくとも1つの変調コントローラのうちの1つが制御された変調をセンシング光ファイバに適用している間に、インテロゲータから出力されるインテロゲーティング放射の偏光状態を変化させるように構成される。プロセッサは、変調コントローラによって適用される制御された変調に関連のある、第1の特性シグネチャを検出し、この変調コントローラに関連のある第1の特性シグネチャの最小振幅に対応する偏光状態を決定するように構成されてよい。プロセッサは、変調コントローラによって適用される制御された変調に関連のある第1の特性シグネチャの最小振幅に対応する偏光状態の、何らかの変化を経時的に検出するようにさらに構成されてよい。第1の変調コントローラによって適用される制御された変調に関連のある第1の特性シグネチャの最小振幅に対応する偏光状態の、何らかの検出された変化は、前記アクチュエータの上流のセンシングファイバに作用する歪みの変化を示すものとして識別されてよい。
【0014】
いくつかの実施形態において、プロセッサは、第1の変調コントローラによって適用される制御された変調に関連のある第1の特性シグネチャの最小振幅に対応する偏光状態の、検出された変化を補償するために、第1の変調コントローラの上流の第2の変調コントローラによって適用される制御された変調を、調節するように構成されてよい。
【0015】
センサは、様々な応用で使用されてよい。センシング光ファイバは:パイプラインの経路、輸送ネットワークの少なくとも一部の経路、鉄道の経路、境界または周囲、関心のある地質学的形成の近く、貯留槽の近く、および電力ケーブルの経路沿い、のうちの少なくとも1つに沿って配備されてよい。
【0016】
別の態様において:
使用中に、センシング光ファイバを光放射で繰り返しインテロゲートし、前記センシング光ファイバの中からレーリー後方散乱された後方散乱光放射を検出し、センシング光ファイバのセンシング部分に対応する複数のチャネルのそれぞれからの測定信号を提供するために後方散乱を分析するように構成されたインテロゲータユニットと、
第1のチャネルおよび実質的にすべての下流チャネルに適合し、このようなすべてのチャネル上で同時に発生する、複数のチャネルからの測定信号の変化を検出するために、前記測定信号を分析するように構成されたプロセッサと
を備える、分布型光ファイバセンサが提供される。
【0017】
態様はまた、分布型光ファイバセンシングの方法に関し:
分布型音響センシングを行い、センシング光ファイバのセンシング部分に対応する複数のチャネルのそれぞれからの測定信号を提供するために、センシング光ファイバをインテロゲートすることと、
第1の特性シグネチャを検出するために前記測定信号を分析することとを含み、
前記第1の特性シグネチャが、第1のチャネルおよび実質的にすべての下流チャネルに適合し、このようなすべてのチャネル上で同時に発生する、複数のチャネルからの測定信号の変化を含む。
【0018】
方法は、上述の装置の変形形態のいずれかを使用して実装されてよい。特に、第1の特性シグネチャの発生は、大振幅歪みの発生として識別される。第1のチャネルの場所は、大振幅歪みの場所として識別されてよい。方法は、インテロゲータから出力されるインテロゲーティング放射の偏光状態を周期的に変化させることを含むことができる。
【0019】
方法は、少なくとも1つの定められた場所で、制御された変調をセンシング光ファイバに適用することを伴うことができる。制御された変調は、機械的アクチュエータによって、制御された歪みをセンシング光ファイバに適用すること、および/または偏光変調器によって、センシングファイバ内を進むインテロゲーティング放射に、制御された偏光変調を適用することを含むことができる。制御された変調は、複数の異なる定められた場所で順次適用されてよい。制御された変調が定められた場所のうちの少なくとも1つでセンシング光ファイバに適用される間に、センシング光ファイバに入力されるインテロゲーティング放射の偏光状態を、変化させてよい。方法は、定められた場所で適用される制御された変調に関連のある、第1の特性シグネチャを検出し、この制御された変調に関連のある第1の特性シグネチャの最小振幅に対応する偏光状態を、決定することを含むことができる。定められた場所で適用される制御された変調に関連のある第1の特性シグネチャの最小振幅に対応する偏光状態の、何らかの変化は経時的に検出されてよい。第1の定められた場所で適用される制御された変調に関連のある第1の特性シグネチャの最小振幅に対応する偏光状態の、何らかの検出された変化は、前記第1の定められた場所の上流のセンシングファイバに作用する歪みの変化を示すものとして識別されてよい。方法は、偏光状態の検出された変化を補償するために、第1の定められた場所の上流の第2の定められた場所で適用される制御された変調を、調節することも含むことができる。
【0020】
センシング光ファイバは:パイプラインの経路、輸送ネットワークの少なくとも一部の経路、鉄道の経路、境界または周囲、関心のある地質学的形成の近く、貯留槽の近く、および電力ケーブルの経路沿い、のうちの少なくとも1つに沿って配備されてよい。
【0021】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照しながらこれから論じられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】レーリー後方散乱に基づく分布型光ファイバセンシングの装置を示す図である。
【
図2a】大振幅歪みの特性を示すシグネチャの検出を示す図である。
【
図2b】大きい歪みを受けるDASセンサからのデータの例を示す図である。
【
図3】1つの実施形態による分布型光ファイバの歪みセンサを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の実施形態は、分布型光ファイバセンサに関し、詳細にはレーリー後方散乱に基づく分布型光ファイバセンサに関し、詳細には大振幅歪みに関連した信号特性を検出することに関する。
【0024】
図1は、時には分布型音響センシング(DAS)と称されることもある、レーリー後方散乱に基づく分布型光ファイバセンシングのための装置(100)を示す。DASセンサは、センシングファイバとして配置され、いくつかの適切な接続(リムーバブル接続であってよい)を通じて直接的に、またはいくつかの例では、例えば、中間のファイバもしくは同様のものを介して間接的に、インテロゲータユニット102に一方の終端で光学的に連結された光ファイバ101を備える。センシングファイバ101は、何キロメートルもの長さであってよく、例えば、約40km、またはそれ以上の長さでもよい。センシングファイバは、ファイバブラッググレーティング、または同様のものなどの、意図的に配備された反射サイトを必要としない、テレコミュニケーションの応用でごく普通に使用されるものなどの、標準の変更されていないシングルモードの光ファイバであってよい。変更されていない長さの標準的な光ファイバを使用してセンシングを行えるということは、低コストで容易に利用できるファイバが使用され得ることを意味する。しかし、いくつかの実施形態において、センシングファイバは、入射振動に特に敏感なように製造または配置された光ファイバを備えることができる。典型的には、センシング光ファイバは、場合によっては、ケーブル内の光ファイバの束のうちの1つとして、また任意選択で、強化もしくは外装の要素、または横歪みに対する反応を調整するように配置される要素などの他の構成要素と共に、光ファイバケーブルの構造の一部を形成する。センシングファイバは典型的には比較的安価であるので、センシングファイバは、元の場所(インサイチュ)にファイバを置いておくコストが重大なものにならないような比較的永続的な様態で、配備されてよい。
【0025】
動作中、インテロゲータユニット102は、センシング光ファイバ101を繰り返しインテロゲートし、各インテロゲーション(interrogation)は、例えば、選択された周波数パターンを有する一連の光パルスを含み得るコヒーレントなインテロゲーティング(interrogating)電磁放射をセンシングファイバに放つことを含む。1つの例において、インテロゲーティング放射は、パルス間に所定の周波数差がある、2つの時間的に(およびしたがって空間的に)分離されたパルスを含むことができる。このようなDASセンサでは、パルス間の周波数差は、関心のある搬送波周波数を定義する。しかし、他の形式のパルス状のインテロゲーティング放射または連続的に変調された波を使用するDASセンサも知られており、使用されてよいことが理解されよう。本明細書で使用される場合、用語「光(の)、光学的(な)(optical)」は可視スペクトルに制約されず、光放射は、赤外線放射および紫外線放射を含み、用語「光(light)」もそれに応じて解釈されることに留意されたい。インテロゲータユニット102はしたがって、レーザ103などの少なくとも1つの光源、およびいくつかの実施形態において、インテロゲーティング放射を生み出す少なくとも1つの光変調器104を備える。1つの実施形態において、(所与のインテロゲーションのための)インテロゲーティング放射は、知られている光周波数差によって分離された複数の光パルスを含むことができる。
【0026】
レーリー後方散乱の現象は、散乱してインテロゲータユニットに戻ってくる、ファイバに入力された光のいくつかの断片を生じ、ここで、それは、ファイバに作用する擾乱を表す測定信号を提供するために検出され、処理される。インテロゲーティング放射はコヒーレントなので、任意の瞬間にインテロゲータに戻されて受け取られるレーリー後方散乱は、ファイバの特定の一部からのファイバ内で生成された後方散乱の干渉信号である。このレーリー後方散乱は、インテロゲーティング放射と、光ファイバ内にある本来の散乱サイトとの間の相互作用によって生成されることに留意されたい。したがって、センシング機能は、センシングファイバ全体の至る所に効果的に分布されてよい(しかし、応答は、ファイバの個別のセンシング部分からの結果を提供するように、時間ビンの中で処理される)。このようなセンサは、したがって、センシングがファイバの至る所に分布され、ファイバ自体に固有であるので、分布型センサまたは固有センサ(intrinsic sensor)と呼ばれる。これは、典型的にはポイントセンサとして定められたエリアにセンシング機能が提供される、ファイバブラッググレーティング(FBG:fibre Bragg grating)または類似の意図的に導入された反射サイトを有するファイバを使用したセンサと対照をなす。
【0027】
光ファイバの全体にわたる散乱サイトの分布は、実質的にランダムであり、したがって後方散乱の干渉信号は、センシングファイバの長さに沿ってランダムに変化する成分を含む。しかし一般に、センシングファイバに作用する何らかの環境的な刺激がない場合、ファイバの所与のセンシング部分からの後方散乱の特性は、(インテロゲーティング放射の特性が変化しないと想定すると)連続したインテロゲーションに対して同じである。しかし、ファイバのセクション上で動的歪みを作り出す入射音響波などの環境的な刺激は、このセクションからの後方散乱による干渉信号の属性の結果としての変化によって、このセンシング部分に対する実際の光路長に変化をもたらす。この変化は、センシングファイバに作用する擾乱の程度を示すために検出され、使用されてよい。
【0028】
インテロゲータユニット102はしたがって、ファイバ101内の固有の散乱サイトからレーリー後方散乱される放射を検出するように配置される少なくとも1つの光検知器105も備える。
【0029】
光検知器からの信号は、センシングファイバの定められたセンシング部分への往復移動時間に対応する時間ビンの中で信号プロセッサ106によって処理される。時間ビンのそれぞれにおける信号は、後方散乱の属性の変化を検出するために処理され、各センシング部分の測定信号を生成する。
【0030】
いくつかの例において、信号プロセッサは、センシングファイバに放たれたインテロゲーティング放射の光パルスの間の周波数差に基づいて応答信号を復調する。インテロゲータは、例えば、GB2,442,745もしくはWO2012/137022に記載されるように、またはWO2012/137021に記載されるように動作することができ、これらのそれぞれの内容が引用により組み込まれている。
【0031】
測定信号の位相は、光ファイバの様々なセクションからの後方散乱された光放射から導出されてよい。ファイバ上で歪みを引き起こす入射圧力波によるものなどの、ファイバの所与のセクションにおける実際の光路長の何らかの変化は、繰り返しのインテロゲーションの間の測定位相の変化をもたらす。このようにファイバに作用する動的変化は、したがって光ファイバの複数のセンシング部分のそれぞれにおいて検出され得る。位相の変化の規模は、光路長の実際の変化に関連し、したがってセンシングファイバのこのセンシング部分の歪みを示す性質をもつ。
【0032】
この光入力の形式および検出の方法は、単一の連続した光ファイバを個別の長さのセンシング部分に空間的に分解することができるようにする。すなわち、1つのセンシング部分で検知された測定信号は、隣の部分における測定信号から実質的に無関係に提供されることが可能である。光ファイバのセンシング部分の空間分解能は、例えばおよそ10mであってよく、これは例えば連続した長さ約40kmのファイバに対して、40kmのファイバに沿って配備されるおよそ4000個の独立音響チャネルを提供する。さらに多くのチャネルが異なるチャネル幅のファイバ上に配置されてもよい。
【0033】
用語「音響(acoustic)」は、光ファイバ上の歪みの変化を生じ得る任意のタイプの圧力波または機械的擾乱を意味し、疑問を避けるために、用語音響は、超音波および亜音速波、ならびに地震波または他の誘発振動を含むように用いられるということに留意されたい。本明細書で使用される場合、用語「分布型音響センシング」すなわち「DAS」は、ファイバに沿った長さに分布される複数の個別の音響センシング部分を提供するために、光ファイバを光学的にインテロゲートすることによるセンシングを意味するものと理解され、用語「分布型音響センサ」はそれに応じて解釈される。
【0034】
したがってインテロゲータユニット102からの出力は、センシング部分に作用する音響信号または動的歪みを示す、関連するセンシングファイバ101の各センシング部分の測定信号であってよい。個別のセンシング部分は、DASセンサのチャネルと呼ばれることもある。したがってセンサは、DASセンサの複数のチャネルの測定信号を生み出す。インテロゲータユニット102の出力は、様々なチャネルの測定信号を分析するように構成され得るデータプロセッサ107に渡されてよい。データプロセッサ107は、インテロゲータユニット102と同じ場所にあってよく、またその場所からリモートに配置されてもよい。
【0035】
以前に述べたように、このようなシステムは、センシング部分に作用する動的歪みを比較的正確かつ鋭敏な検出を提供することができ、一方のセンシング部分からの測定信号は、別のセンシング部分からの測定信号とは実質的に関係がない。
【0036】
本発明の実施形態において、センシングファイバの複数の異なるセンシング部分、すなわちセンサのチャネルからの後方散乱信号が、センシングファイバ上の局所化された大振幅歪みを示す性質をもつ特性シグネチャを検出するために分析されてよい。
【0037】
本発明の実施形態は、センシングファイバに作用する大振幅歪みまたは高歪みレートは、大きい歪みの場所でインテロゲーティング放射の特性に対する変化をもたらすことがあるという認識に少なくとも部分的に依存する。
【0038】
例えば各インテロゲーションに対するインテロゲーティング放射が、コヒーレントな光放射のパルスを含むDASシステムを考える。所与の場所でセンシングファイバに作用する大振幅歪みは、この場所でセンシング光ファイバ内のパルスの特性を変調することができる。これはパルスの偏光および/または位相の変調になり得、とはいえパルス特性の変化の主な原因は、歪みが誘発した偏光の変化であると考えられている。
【0039】
例えばパルスの偏光といったインテロゲーティング放射の特性のこの変調は、センシング部分からの測定信号の検出可能な変化をもたらすということが理解されてきた。この場合、1つのインテロゲーションと次のインテロゲーションの間の測定信号の変化は、1つのインテロゲーションから別のインテロゲーションへのこのセンシング部分に到達するインテロゲーティング放射の特性の変化によるものである。センシング光ファイバの長さに沿った第1の場所における大きい歪みの結果、パルス特性がこの第1の場所で変調される場合、パルスは変調されたパルスとなり、このパルスは、センシングファイバに沿ってさらに進みながら光ファイバのその後のすべてのセンシング部分に到達するということが理解されよう。したがってセンシングファイバに沿った第1の場所で発生する大きい歪みの結果は、第1の場所すなわち第1のチャネルで始まり、センサのその後のすべてのチャネルに実質的に同時に当てはまる測定信号の変化であり、第1の場所とファイバの遠位端との間のすべての下流のセンシング部分である。
【0040】
従来のDASセンシングに関して、インテロゲーティング放射の偏光状態は、1つのインテロゲーションから次のインテロゲーションまで実質的に一貫し、ファイバに作用する任意の環境的な刺激がない場合、任意の所与のセンシング部分に到達するインテロゲーティング放射の偏光状態は、1つのインテロゲーションから次のインテロゲーションまで実質的に一貫している。所与のセンシングに作用する低振幅の歪みは、このセンシング部分に対する実際の光路長の検出可能な変化をもたらし得るが、センシングファイバのその後のセンシング部分に対するインテロゲーティング放射の偏光状態に実質的に影響しない。しかしインテロゲーティング放射が所与のセンシング部分を通り抜けているときに発生する大きい歪みまたは大きい歪みレートは、インテロゲーティング放射の偏光状態に著しい変化をもたらす。センシングファイバ内の複屈折は、センシングファイバの実際の屈折率がインテロゲーティング放射の偏光状態と共に変化することを意味する。したがって、インテロゲーティング放射の偏光状態の変化は、実質的にその後のすべてのセンシング部分の明らかな屈折率の変化、したがって実際の光路長の変化をもたらす可能性がある。
【0041】
これは、センシングファイバの長さに沿った第1の場所で発生する大振幅歪みが、光ファイバのその後のすべてのセンシング部分、すなわちDASセンサのすべての下流チャネルに対して測定信号の実質的に同時の変化をもたらすことを意味する。これは、測定信号の検出可能な変化を引き起こす変調が、センシング部分だけに当てはまるこのセンシング部分の実際の光路長の変調である場合の、さらに低い振幅歪みの検出と対照をなす。
【0042】
したがってインテロゲーティング放射がセンシングファイバの第1の場所を通るときに第1の場所で発生する大きい歪みは、このポイント以降のインテロゲーティング放射の偏光状態を変化させる可能性がある。すでに述べたように、これは、このチャネル、およびセンシングファイバの実質的にその後のすべてのチャネルに即座に当てはまる明らかな信号のように見えることがある。ウォーターフォールタイプのプロットでは、これは、第1の場所以降のセンシングファイバの実質的にすべてのチャネルに当てはまる、強度が増大する信号の線のように見えることがある。強度の変化に基づく単一パルスのDASシステムに関して、これは、強さのステップ変化である。位相ベースのシステムに関して、チャネルからチャネルへの(±πラジアンの範囲内の)ランダムな振幅を伴う位相の明らかなステップ変化があることもある。
【0043】
本発明の実施形態において、データプロセッサ107は、したがって大振幅歪みの特性シグネチャを検出するために、複数のセンシング部分、すなわちセンサの複数のチャネルからの測定信号を分析するように配置されてよい。この特性シグネチャは、第1のチャネルおよび実質的にすべての下流チャネルに適合し、このようなすべてのチャネル上で実質的に同時に発生する、複数のチャネルからの測定信号の変化であってよい。プロセッサは、大振幅歪みとして第1の特性シグネチャの発生を識別するように構成されてよい。プロセッサは、大振幅歪みの場所として第1のチャネルの場所を識別するようにさらに構成されてよい。
【0044】
大振幅歪みの特性シグネチャを検出する原理、またこれがどのようにさらに低い振幅歪みの従来の検出と区別され得るかが、
図2aに関連して示される。
図2aは、関心のあるエリアに配備され、インテロゲータユニット102に第1の終端(近位端)で接続されるセンシングファイバ101を有する上述のものなどの、レーリーベースの分布型光ファイバセンサを示す。
図2aは、このようなセンサによって生み出され得るものなどの、理想化されたウォーターフォールタイプのプロットも示す。
【0045】
ウォーターフォールプロットは、時間に対する、センシングファイバ101のチャネルの検出された測定信号の表示を示し、何らかの検出された変化の強度が(
図2のこの例において)グレースケールの変化によってプロットされる。
【0046】
図2aは、異なる時間にセンシングファイバの異なる場所で作用する3つの異なるタイプの擾乱を示す。擾乱Aは、比較的低振幅の動的歪みの変化に対応する。これは、検出のためにDASセンサが典型的に用いられる音響信号のタイプであることがある。この例では、擾乱Aは第1の場所に比較的局所化される。これは、第1の場所のすぐ近くのチャネルまたは複数のチャネルで検出される比較的局所化された擾乱をもたらす。これは、ウォーターフォールプロット内の特徴202によって示されるように、擾乱が続く限り続く可能性がある関連チャネルにおける検出可能な信号をもたらすことがある。上述のように、このような擾乱は、対応するチャネルで検出可能な信号を提供するが、擾乱によって直接擾乱されない他の任意のセンシング部分には影響を及ぼさない関連するセンシング部分の実際の光路長の局所化された変化を引き起こす。
【0047】
擾乱Bは、光ファイバの第2の場所で発生する大振幅歪みの事象を表し、擾乱は、光ファイバ内で伝播する光放射に関する偏光の著しい変調を与えるのに十分である。これもまた、センサからの測定信号の検出可能な変化を作り出すが、今回これは、インテロゲーティング放射の特性の変化によるものである。したがってこの変化は、このセンシング部分、および変調されたインテロゲーティング放射がその後伝播するその後のすべてのセンシング部分に当てはまる。これは、(インテロゲータユニットから離れてインテロゲーティング放射を伝搬させるという意味で)第2の場所からファイバの遠位端まで、すなわちすべての下流チャネルで、すべてのセンシング部分からの測定信号の実質的に同時の変化を生み出すように見える。これは、理想化されたウォーターフォールプロットの特徴203によって示される。この信号は、大きい擾乱が続く限り続く。
【0048】
音響/地震の事象の中には、説明されたタイプの局所化された大きい歪みのない状態でいくつかのチャネルに影響を与えることがあるものもあるということが理解されよう。擾乱Cは、比較的大きい空間広がりの音響波の波面が、第3の場所におけるセンシングファイバ101に対する入射であることを示す。しかしこのようなケースでは、波面が、センシング光ファイバ101のすべての部分に対する同時の入射であるとは考えにくく、むしろ、波面がセンシングファイバを通り過ぎて伝播する様々な時間に、異なるセンシング部分が擾乱される可能性がある。擾乱のパターンは、環境内のセンシングファイバの配備、および波面の形状に依存する。
図2は、比較的遠い音源からの音響波が全体的に線状のセンシングファイバと相互作用するときに当てはまることがある例を示す。例えば、波の発生元に最も近いポイントにあるセンシング部分に対応するチャネルで最初の擾乱があることがあり、その後、波が隣のチャネルのセンシング部分に到達するにつれて、擾乱は様々な時間にこれらのチャネルに拡がり、204として示されるものなどの特徴をもたらす。
【0049】
図2に示されるウォーターフォールプロットは説明のために示されるにすぎず、実用的なシステムで生成される必要はないことが当然理解されよう。
【0050】
図2bは、センシングファイバが、センシングファイバの始めで、すなわちセンシングファイバの近位端(チャネル0)で、制御された大きい歪みを繰り返し受けた場合の、実際のDASシステムからのデータのウォーターフォールプロットを示す。
図2aの理想化されたプロットのように、ウォーターフォールプロットは、センサの様々なチャネルのデータを示し、(この例では)時間は垂直に走る。任意の測定された擾乱信号の振幅または強度が、(実用的なシステム内に)色の度合いで示される。別個の特徴203は、すべてのチャネルに同時に影響することをはっきりと見ることができる。この例では、チャネルは水平に走り、特徴は、歪みが発生している限り当てはまる、はっきりとした別個の水平の線のように見える。
【0051】
したがってデータプロセッサ107は、第1のチャネルおよび実質的にすべての下流チャネルに適合し、このようなすべてのチャネル上で実質的に同時に発生する、測定信号の変化に対する、センサの複数のチャネルからの測定信号を分析するように構成されてよい。このような特性シグネチャの検出は、大振幅歪みの指示として使用されてよい。したがってプロセッサは、例えば、適切なグラフィカルディスプレイ上にアラートを表示することによって、または他のなんらかの状態アラートもしくはメッセージを生成することによって、特性シグネチャの存在にフラグをたてることができる。プロセッサは、第1のチャネルの場所、すなわち同時の信号変化が検出される最上流のチャネルに対応するものとして、大振幅歪みの場所をさらに識別することができる。
【0052】
データプロセッサは、センサのすべてのチャネルを分析することができ、また処理の負担を減らすために、特性シグネチャに対するチャネルのサブセットを少なくとも最初に分析することもできる。例えば、大振幅歪みの複数ステージの検出の一部として、第1のサブセットは、センシングファイバの長さに沿った様々な位置にあるチャネルから形成され、分析され得る。特性シグネチャが第1のサブセットに存在するように見える場合、さらに多くのチャネルが追加されてよく、特性シグネチャが存在することを確認するために追加のチャネルも分析されてよい。
【0053】
このようにしてはっきりと見える信号を作り出すのに必要な擾乱の大きさは、以前に説明されたような所与のチャネル上の従来の音響信号を生成するのに必要なものよりもはるかに大きい。例えば、約1秒間に作られる曲げ半径約50mmの、180度のセンシングファイバの湾曲は、同じオーダーの類似の擾乱のような検出可能な信号を生む。同様に、例えば、光ファイバケーブルを直接押す(stamping)オーダーの、センシングファイバへの直接の比較強い衝撃が検出可能な信号を示すことも予想される。1秒あたり約10-4のオーダーの歪みレートが、このタイプの検出可能な信号を生むことがある。
【0054】
センシングファイバが埋設された場所で発生する地すべりまたは落石などの事象が、このオーダーの歪みを生み出す可能性が十分あり、したがって本開示の方法で検出できる可能性がある。以前に述べたように、パイプラインまたは鉄道などの資産を監視する用途のためにDASセンサが提案された。資産の近くの地すべりまたは落石の発生には明らかに関心がある。パイプラインについては、高圧パイプラインの破裂にも明らかに関心があり、論じられる種類の検出可能な信号をもたらす。
【0055】
このタイプの大きい擾乱の検出に使用できる1つの応用は、特に海底電力ケーブルといった電力ケーブルの故障の検出でありうる。電力ケーブルは、特にオーバヘッドケーブルまたは同様のものが実用的ではない場所で、高電圧の電力送配電システムの一部として使用されることが多い。高電圧AC配電のためのこのような電力ケーブルは、互いにおよび環境から絶縁された様々な導体を備えることがある。いくつかの例において、絶縁は、導体および/または環境の間で短絡を引き起こして失敗することがある。関連する高電圧は、このような短絡故障が、電力ケーブルに著しいダメージを生じ得る非常に強力な事象になり得ることを意味する。典型的には、これは、電力ケーブルの関連部分が修繕される/置き換えられることが可能になるまで、配電ネットワークの関連部分がシャットダウンされなければならないという結果になる。
【0056】
いくつかの応用において、例えば海底電力ケーブルに関して、障害の箇所、およびしたがって電力ケーブルの損傷を受けたセクションを決定することは、従来では、ケーブルを物理的に検査しなければならないことを伴うことがあり、これには海底からケーブルを引き上げることを伴う可能性がある。これは、時間のかかる高費用な処理になる可能性がある。電力ケーブルに連結されるか、または埋め込まれたセンシングファイバを用いるDASセンサを使用して、このタイプの強力な短絡事象に関連のある擾乱を監視することが提案されてきた。
【0057】
しかし、このような短絡故障に関連のある擾乱は著しく強力である可能性がある。擾乱はとても大きいので、このような障害の事象の際には、短絡中の短時間ではあるが大きい電流の流れにより、センシングファイバの大半が信号で飽和されることがある。これは、障害の実際の箇所を正確に決定しにくくすることがある。しかし、説明されたタイプの特性信号を生む障害箇所を通り過ぎて伝播するインテロゲーティング放射の特性の変調をもたらす障害箇所自体に大きい擾乱がある。この例では、特性の変調は、この場所にあるセンシングファイバに影響を及ぼす著しい温度変化によって部分的に引き起こされることがある。したがって大きい擾乱の場所の検出は、電力ケーブルに沿って障害の箇所を検出するのに役立つように使用されてよい。
【0058】
上述のように、インテロゲーティング放射の特性の変調を引き起こす主な影響は誘発された偏光変調であり、これは主に歪みが誘発した変調である可能性があるが、上述のように、著しい急激な温度変化もインテロゲーティング放射のなんらかの変調をもたらすことがあるということが理解される。光ファイバの所与の部分における歪みが、インテロゲーティング放射の偏光変調をもたらす程度は、インテロゲーティング放射がひずんだセクションに到達するときのインテロゲーティング放射の偏光状態に依存し、これは、ファイバに放たれるインテロゲーティング放射の最初の偏光状態、および放射がセンシングファイバの前の部分を通って伝播するときの偏光の何らかの変調の累積的な影響に明らかに依存する。
【0059】
したがって理論上は、インテロゲーティング放射の最初の偏光状態により、特定の場所で発生する所与の大振幅歪みは、その大きい歪みによる偏光変調を経験しないか、または限定的な偏光変調だけを経験し得るという可能性がある。しかし、センシングファイバの所与のチャネルは、インテロゲーティング放射のいくつかの最初の偏光状態に対する(大振幅歪みによる測定信号の検出可能な変化を生み出す観点からの)感度の最低値を経験することがあるとはいえ、典型的には、経験したなんらかの変調、およびしたがって、結果として生じるなんらかの検出可能な信号が存在することが実験によって発見された。最低値は、偏光の非常に限定的な範囲にわたってのみ発生することが発見され、同時にすべてのチャネル上にゼロ感度が及ぶことは決してないということがさらに発見された。したがってファイバ上の大振幅歪みが検出可能な信号を全く生み出せない可能性は実用的なシステムでは非常に低い。
【0060】
しかし、いくつかの実施形態において、インテロゲータユニットは偏光変調器を備えることができ、センシング光ファイバに放たれるインテロゲーティング放射の偏光状態を周期的に変化させるように構成されてよい。例えば、インテロゲータユニット102は通常、第1の偏光状態で動作することができるが、第2の異なる偏光状態を周期的に使用することもできる。第1の偏光状態で繰り返されるインテロゲーションの間に、大きい歪みの発生が、特性シグネチャを有する検出可能な信号を生み出す可能性がある。しかし、第1の偏光状態で放たれたインテロゲーティング放射に対して変調をもたらさない場所で大振幅歪みが発生したという起こりそうにない事象では、第2の偏光状態で繰り返されるインテロゲーションからの信号が、特性信号を求めて分析されることもある。第2の偏光状態の繰り返しは、センサの通常動作にあまり著しく干渉しないように、第1の偏光状態の繰り返しよりはるかに頻度が低い可能性がある。
【0061】
いくつかの実施形態において、センシングファイバに作用する静的歪みに対する何らかの変化についての情報を決定するために、制御された大きい歪みが、1つまたは複数の定められた場所でセンシングファイバに意図的に適用されることがある。
【0062】
上述のように、第1の場所で適用される所与の大きい歪みが、インテロゲーティング放射の属性の変調、およびしたがって検出可能な信号をもたらす、その程度は、第1の場所に届くインテロゲーティング放射の偏光状態に少なくとも部分的に依存し、その偏光状態は、順に、センシングファイバに放たれたインテロゲーティング放射の最初の偏光、および前のファイバからの何らかの偏光変調の累積的な影響に依存する。同じく論じられたように、インテロゲーティング放射の最初の偏光の非常に限定的な範囲に対する感度の最低値が、第1の場所で経験されることがあるということが発見された。
【0063】
したがって、第1の場所に意図的に適用される制御された大振幅歪みに対する、感度の最低値に対応する最初の偏光状態は、周期的に決定されてよい。感度の最低値に必要な最初の偏光状態の変化が存在する場合、これは、第1の場所の上流のファイバからの累積的な変調が変化したことの指示として受け取られてよく、センシングファイバの上流部、すなわち第1の場所の前の静的歪みが変化したことを示すものとして受け取られてよい。
【0064】
センシングファイバの長さに沿った複数の異なる場所で、制御された大振幅歪みを適用し、その後それぞれの場所で適用された歪みに対する感度の最低値に対応する最初の偏光状態を決定することによって、センシングファイバが、一連のセクションに実質的に分割されてよい。所与のセクションに対する静的歪みの何らかの著しい変化は、制御された歪みが適用されるすべての下流の場所の最低感度に必要な偏光状態の変化をもたらす。
【0065】
図3は、1つの実施形態による分布型光ファイバセンシングシステムを示す。
図3は、センシング光ファイバ101をインテロゲートするための上述のような線に沿った分布型光ファイバセンシングのインテロゲータユニット102を示す。しかし本実施形態には、センシング光ファイバ101に放たれたインテロゲーティング放射の最初の偏光状態を変調するための偏光変調器301がある。
【0066】
センシングファイバは、センシングファイバの長さに沿った様々なポイントで複数の変調コントローラ302a-302cに連結される。変調コントローラ302a-302cは、制御された変調をもたらすように構成される。いくつかの実施形態において、少なくともいくつかの変調コントローラは、例えば、制御された比較的大きい振幅の歪みをセンシングファイバに選択的に適用することができる任意のタイプの制御された機械的アクチュエータといったアクチュエータであってよい。センシングファイバは、任意の便利な方式でアクチュエータに連結されてよく、いくつかの実施形態では、アクチュエータのうちの少なくともいくつかの周囲に巻きつけられてよい。これらのアクチュエータは、下記で説明されるように、いくつかの歪みセンシングセクション303-1から303-4にセンシングファイバを実質的に分割する。
【0067】
センシングファイバ101がインテロゲータユニット102によってインテロゲートされている間に、知られている比較的大きい歪みをファイバに適用するために、使用中にコントローラ304によってアクチュエータのうちの1つ、例えば302aが活性化されてよい。上述のように、結果として生じる歪み関連の偏光変調は、例えば、セクション302-2から303-4までのすべてといった、大きい歪みを適用するアクチュエータのすべての下流センシング部分からの測定信号の中に検出可能な信号をもたらすことができる。コントローラは次に、アクチュエータ302aからの制御された大きい歪みを適用し続けながら、インテロゲータユニット102の出力に適用される偏光変調を変化させるように偏光変調器301を制御することができる。感度の最低値に適用される偏光状態、すなわち大きい歪みが適用されての最低の検出可能な信号が記録される。
【0068】
この処理は、これらのアクチュエータの感度の最低値に対応する偏光状態を決定するために、他のアクチュエータ302bおよび302cのそれぞれに対して別々に繰り返される。
【0069】
周期的にこの処理は繰り返され、アクチュエータの最低感度に必要な偏光状態の何らかの変化が決定される。関連するアクチュエータの上流のセンシングファイバ101のセクションに対する歪みの著しい変化がない場合、最低感度に必要な偏光状態は同じままであることが予想される。しかし、センシングファイバの所与のセクションにおける歪みが著しく変化した場合、すべての下流のアクチュエータの最低感度の偏光状態は変化する。
【0070】
例えば、標準DASセンシングによって検出できないセクション303-2上の静的歪みにゆっくりとした変化がある場合、これは、アクチュエータ302bおよび302cの最低感度に必要な偏光状態の変化をもたらすが、アクチュエータ302aの最低感度の偏光状態は同じままである。
【0071】
したがって、各セクション303-1から303-4の大きい擾乱の感度の最低値を与えるのに必要なインテロゲーティング放射の偏光が監視される場合、前のセクションの歪みのゆっくりとした何らかの変化が間接的に検出される可能性がある。
【0072】
いくつかの実施形態において、インテロゲータユニットから出力されるインテロゲーティング放射の偏光は、すべての状態を連続的に循環することができ、すべてのセクションにおける感度の最低値の位置は、時間に応じて監視されることが可能である。一方、これは、何らかの大きいスケールであるがゆっくりとした歪みが発生したかどうかを確かめるために、周期的に、例えば、いくつかの実装形態では一日に一度、行われてよい。これは、DASセンサの通常機能に影響を及ぼすことはなく、温度の影響を受けないものである。
【0073】
制御された歪み誘発偏光変調を与えるために、いくつかの場所で、制御された歪みをセンシングファイバに適用する代わりに、またはこれに加えて、直接の制御された偏光変調が、適切な偏光変調器によって光学的に適用されることもある。言い換えると、変調コントローラ302a-302cのうちの少なくとも1つが、その時点で、知られている偏光変調を適用するように構成された偏光変調器を備えることができる。このようにして直接適用される光学的偏光変調を制御することは、センシングファイバを様々なセクションにさらに実質的に分割し、適用される制御された偏光変調に対する感度の最低値に対応する最初の偏光状態を探すことによって、上述のような静的歪みの何らかの変化を検出できるようにする。
【0074】
したがって、所与の変調コントローラによって適用される制御された偏光変調に対する感度の最低値をもたらす、インテロゲーティング放射の最初の偏光状態の変化は、センシングファイバの前のセクションの静的歪みの変化を示すことがある。例えば、第1の時間T1において、変調コントローラ302aによって適用される制御された変調に最低感度を提供するのに必要な最初の偏光状態は、第1の状態Pa1であってよい。同様に、変調コントローラ302bおよび302cによって適用される制御された変調に対する最低感度をもたらす最初の偏光状態は、それぞれ、状態Pb1およびPc1であってよい。もしも、第2の時間T2において、コントローラ302aによって適用される制御された変調に対する感度の最低値をもたらす、最初の偏光状態が依然としてPa1であれば、その場合これは、セクション303-1上の静的歪みに著しい変化がなかったことを意味する。しかし、コントローラ302bによって適用される制御された変調に対する感度の最低値をもたらす、最初の偏光状態が、異なる状態、例えばPb2に変化した場合、これは、セクション303-2上の静的歪みが変化したことを意味する。したがって、コントローラ302cによって適用される制御された変調に対する感度の最低値をもたらす、最初の偏光状態も、異なる状態、例えばPc2に変化したという可能性もある。
【0075】
いくつかの実施形態において、所与の偏光コントローラによって適用される制御された変調に対する感度の最低値に対応する最初の偏光状態が変化した―つまりファイバの前のセクションの静歪みの変化を示している―と決定すると、このセクションの初めにある変調コントローラは、静的歪みの変化を補償するように制御されてよい。したがって、上述の例では、コントローラ302bによって適用される制御された変調に対する感度の最低値に対応する最初の偏光状態がPb1からPb2まで変化する(セクション303-2上の静的歪みの変化を示す)場合、変調コントローラ302aは、コントローラ302bに対する感度の最低値に対応する最初の偏光状態が再びPb1に対応するまで調節される連続的な変調を適用するように制御されてよい。この時点で、コントローラ302aによって適用される変調は、セクション302-2上の静的歪みの変化を補償すると想定されてよい。この場合、セクション303-3上の静的歪みの変化もある場合をのぞいて、コントローラ302cに対する感度の最低値に対応する最初の偏光状態もPc1に戻るはずである。したがって、センシングファイバの所与のセクション上の静的歪みの変化を最初に検出すること、およびその後このような変化を補償することによって、ファイバの下流セクションに対しても変化した任意の静的歪みが決定されてもよい。
【0076】
上述の実施形態が本発明を限定することなく示すこと、および当業者が、添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく多くの代替実施形態をデザインできることに留意されたい。様々な実施形態からの特徴は、そうではないと明確に示される場合をのぞいて、互いに組み合わされ、使用されてよい。単語「備える(comprising)」は、請求項に挙げられた要素またはステップ以外の要素またはステップの存在を除外せず、「a」または「an」は複数を除外せず、単一の特徴または他のユニットは、特許請求の範囲に列挙された、いくつかのユニットの機能を満たすことができる。特許請求の範囲にある任意の参照番号またはラベルは、これらの範囲を限定するように解釈されない。