(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】シリンジに含まれる流体を移送するための装置、方法、および製造物
(51)【国際特許分類】
A61M 39/04 20060101AFI20220713BHJP
【FI】
A61M39/04
(21)【出願番号】P 2020528882
(86)(22)【出願日】2018-11-09
(86)【国際出願番号】 IB2018058808
(87)【国際公開番号】W WO2019106463
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-04-23
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】ポーター、ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】クジンスキー、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ワーツ、ジェイスン
(72)【発明者】
【氏名】コビルカ、ブランドン
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-502116(JP,A)
【文献】特開2005-204678(JP,A)
【文献】特表2010-536498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジに含まれる流体を移送するための装置であって、
円筒形本体を有するエアロック構成要素であって、前記円筒形本体が、第1の端部、第2の端部、および前記第1の端部と前記第2の端部との間に配設された中空チューブを有し、前記中空チューブが、内部表面および外部表面を有する、前記エアロック構成要素と、
前記円筒形本体の前記第1の端部にある環状開口部と、
前記中空チューブの前記外部表面から前記中空チューブの前記内部表面までの気体入口孔と、
前記中空チューブの前記内部表面から前記中空チューブの前記外部表面までの気体出口孔と、
前記中空チューブの前記内部表面に結合された内向きに面する気密材料と、
前記円筒形本体の前記第2の端部に結合されたセプタムと
、
前記中空チューブの前記内部表面に接触する気体をモニタするための気体センサと
を備える、装置。
【請求項2】
前記円筒形本体の前記第2の端部に結合された第1の端部と、容器の外部表面の周りで環状本体を形成する細長い脚部を有する第2の端部とを有する取付け部材をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記内向きに面する材料がOリングである、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記内向きに面する材料が中空プラグである、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記セプタムがシリコーン・セプタムである、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記セプタムがPTFEセプタムである、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記気体入口孔から外向きに延在する中空シャフトをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記気体出口孔が一方向弁を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
流体を移送する方法であって、
流体移送装置を取得することであって、前記流体移送装置が、
円筒形本体を有するエアロック構成要素であって、前記円筒形本体が、第1の端部、第2の端部、および前記第1の端部と前記第2の端部との間に配設された中空チューブを有し、前記中空チューブが、内部表面および外部表面を有する、前記エアロック構成要素、
前記円筒形本体の前記第1の端部にある環状開口部、
前記中空チューブの前記外部表面から前記中空チューブの前記内部表面までの気体入口孔、
前記中空チューブの前記内部表面から前記中空チューブの前記外部表面までの気体出口孔、
前記中空チューブの前記内部表面に結合された内向きに面する気密材料、
前記円筒形本体の前記第2の端部に結合されたセプタム
、
前記円筒形本体の前記第2の端部に結合された第1の端部を有する取付け部材
、ならびに
前記中空チューブの前記内部表面に接触する気体をモニタするための気体センサ
を備える、前記取得することと、
前記取付け部材の第2の端部を、前記流体を保持する容器の外部表面に結合することと、
針に結合されたシリンジを、前記円筒形本体の前記第1の端部にある前記環状開口部に通して挿入することと、
前記気体センサが、前記中空チューブ内の気体をモニタすることと、
前記中空チューブに不活性気体流を導入することであって、前記不活性気体流が、前記気体入口孔を通って前記中空チューブに入り、前記気体出口孔を通って前記中空チューブから出る、前記導入することと、
前記シリンジを、前記円筒形本体の前記第2の端部に向かって前記中空チューブの中で前方に動かすことと、
前記セプタムを前記針で穿孔することと、
前記針が前記容器内の前記流体に接触するように、前記シリンジを前記中空チューブの中で前方に動かすことと、
前記シリンジによって、ある体積の前記流体を回収することと、
前記針が前記中空チューブの内側にくるまで、前記シリンジを前記中空チューブの中で後方に動かすことと、
前記容器から前記取付け部材を結合解除することと
を含む方法。
【請求項10】
前記取付け部材を第2の容器に結合することと、
前記シリンジを、前記円筒形本体の前記第2の端部に向かって前記中空チューブの中で前方に動かすことと、
前記セプタムを前記針で穿孔することと、
前記ある体積の前記流体を前記第2の容器に入れることと
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
製造物であって、
プランジャ、バレル、および先端を有するシリンジと、
前記シリンジの前記先端に結合された針と、
流体移送装置であって、
円筒形本体を有するエアロック構成要素であって、前記円筒形本体が、第1の端部、第2の端部、および前記第1の端部と前記第2の端部との間に配設された中空チューブを有し、前記中空チューブが、内部表面および外部表面を有する、前記エアロック構成要素、
前記円筒形本体の前記第1の端部にある環状開口部、
前記中空チューブの前記外部表面から前記中空チューブの前記内部表面までの気体入口孔、
前記中空チューブの前記内部表面から前記中空チューブの前記外部表面までの気体出口孔、
前記中空チューブの前記内部表面に結合された内向きに面する気密材料
、
前記円筒形本体の前記第2の端部に結合されたセプタム
、ならびに
前記中空チューブの前記内部表面に接触する気体をモニタするための気体センサ
を備える前記流体移送装置と
を備える製造物。
【請求項12】
前記円筒形本体の前記第2の端部に結合された第1の端部と、容器の外部表面の周りで環状本体を形成する細長い脚部を有する第2の端部とを有する取付け部材をさらに備える、請求項11に記載の製造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はシリンジ付属物に関し、より詳細には、空気感受性材料を扱うためのシリンジ付属物に関する。
【背景技術】
【0002】
空気感受性流体は、一般的な大気成分(たとえば、水蒸気、酸素、二酸化炭素、汚染物質など)と反応する任意の溶液または純粋な液体である。これらの反応の例は、熱分解反応、金属酸化物、水素化物、もしくは硫化物の生成、または二酸化炭素分子との金属錯体の生成などを含むことができる。反応性気体から流体を保護するために、空気感受性流体は不活性雰囲気(たとえば、窒素またはアルゴン)下で保管される。たとえば空気感受性流体は、アンプル、またはセプタム・キャップ付きボトルに保管することができる。また空気感受性流体は、不活性雰囲気を有するグローブボックスに保管することもできる。セプタムを穿孔するシリンジにより、流体をボトルから移送することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、シリンジに含まれる流体を移送するための装置、方法、および製造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
様々な実施形態は、シリンジに含まれる流体を移送するための装置を対象とする。この装置は、円筒形本体を有するエアロック構成要素であって、円筒形本体が、第1の端部、第2の端部、ならびに第1の端部と第2の端部との間に配設された内部表面および外部表面のある中空チューブを有する、エアロック構成要素を含むことができる。またこの装置は、円筒形本体の第1の端部にある環状開口部、ならびに中空チューブの外部表面から内部表面までの気体入口孔、および中空チューブの内部表面から外部表面までの気体出口孔を含むことができる。気体入口孔は、外向きに延在する中空シャフトを有することができ、気体出口孔は、一方向弁を含むことができる。さらにこの装置は、内向きに面する気密材料(たとえばOリングまたは中空プラグ)、およびセプタムを含むことができる。セプタムは、シリコーンまたはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの材料から作られてもよい。さらにこの装置は、円筒形本体の第2の端部に結合された第1の端部と、容器の外部表面の周りで環状本体を形成する細長い脚部を有する第2の端部とを有する取付け部材を含むことができる。
【0005】
さらなる実施形態は、流体を移送する方法を対象とする。この方法は、流体を保持する容器の外部表面に結合される取付け部材を有する流体移送装置を取得することを含むことができる。この方法はさらに、針に結合されたシリンジを流体移送装置の開口部に挿入することを含むことができる。さらにこの方法は、不活性気体流を中空チューブに導入することと、シリンジを中空チューブの中で円筒形本体の第2の端部に向かって動かすことと、セプタムを針で穿孔することと、針が容器内の流体に接触するように、シリンジを中空チューブの中で前方に動かすこととを含むことができる。またこの方法は、ある体積の液体をシリンジで回収することと、針が中空チューブの内側にくるまで、シリンジを中空チューブの中で後方に動かすことと、取付け部材を容器から結合解除することとを含むことができる。さらにこの方法は、取付け部材を第2の容器に結合することと、シリンジを前方に動かすことと、セプタムを穿孔することと、ある体積の液体を第2の容器入れることとを含むことができる。
【0006】
さらなる実施形態は、プランジャ、バレル、および針に結合された先端を有するシリンジと、流体移送装置とを含むことができる製造物を対象とする。針は、ルアー・ロック・ハブを有することができる。流体移送装置は、円筒形本体を有するエアロック構成要素であって、円筒形本体が、第1の端部、第2の端部、ならびに第1の端部と第2の端部との間に配設された内部表面および外部表面のある中空チューブを有する、エアロック構成要素を含むことができる。またこの装置は、円筒形本体の第1の端部にある環状開口部、ならびに中空チューブの外部表面から内部表面までの気体入口孔、および中空チューブの内部表面から外部表面までの気体出口孔を含むことができる。気体入口孔は、外向きに延在する中空シャフトを有することができ、気体出口孔は、一方向弁を含むことができる。さらにこの装置は、内向きに面する気密材料(たとえばOリング)、およびセプタムを含むことができる。セプタムは、シリコーンまたはゴムなどの材料から作られてもよい。さらにこの装置は、取付け部材を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示のいくつかの実施形態による流体移送装置、シリンジ、およびバイアルの概略斜視図である。
【
図2】本開示のいくつかの実施形態による流体移送装置、シリンジ、およびバイアルの概略断面斜視図である。
【
図3】流体移送装置が代替的な取付け部材を有する、本開示のいくつかの実施形態による流体移送装置の概略斜視図である。
【
図4】本開示のいくつかの実施形態による流体移送装置を使用して、空気感受性液体を移送する工程を示すフロー図である。
【
図5】本開示のいくつかの実施形態による、空気感受性液体を移送する視覚的工程を示す一連の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
周囲空気に存在する気体に対して感応性のある材料が、実験室および医療の環境においてよく使用される。これらの化合物は、「空気感受性」化合物と呼ばれる。「周囲空気」は、化合物が使用もしくは保管される屋内または屋外の雰囲気(たとえば地球大気)を指す。地球大気、したがってほとんどの周囲空気は、おおよそ78.09%の窒素(N2)、21.95%の酸素(O2)、0.93%のアルゴン(Ar)、0.04%の二酸化炭素(CO2)、0.4~1%の水蒸気(H2O)、および少量の(すなわちおおよそ0.04%未満の)他の気体(たとえば、水素(H2)、メタン(CH4)、クリプトン(Kr)、ネオン(Ne)、ヘリウム(He)など)、ならびに汚染物質(たとえば、二酸化窒素(NO2)、二酸化硫黄(SO2)、オゾン(O3)、一酸化炭素(CO)、微粒子、酸など)の混合物である。これらの化合物うちの少なくとも1つと反応し得る多岐にわたる化合物が存在する。たとえば、金属(たとえば、銀、鉄、および銅)は、水、酸素、および他の大気成分と徐々に反応することにより、変色したり、錆びたり、緑青を生じたりすることがある。しかし、N2または希ガス(Ar、He、Kr、およびNe)と反応する化合物はほとんどない。したがって、これらの気体は「不活性気体」と呼ばれる。
【0009】
空気感受性と呼ばれる材料は、典型的には、不活性雰囲気中での保管を要するほど短い時間スケール(たとえば、1秒未満から数カ月にわたる時間スケール)で、酸素または水蒸気あるいはその両方と反応する材料である。不活性雰囲気は、化学的に非反応性の1つまたは複数の気体の雰囲気(たとえば、実質的に酸素、水、二酸化炭素などがない雰囲気)である。窒素(N2)およびアルゴン(Ar)は、地球上でのその相対存在量に起因して、実験室環境で最も一般的に使用される不活性気体である。
【0010】
空気感受性材料の保管要件の性質は、主にその材料の反応スピードおよび危険有害性に応じて決まる。酸素または水蒸気あるいはその両方と数カ月未満で反応する材料は、セプタム・キャップを有するボトル内に不活性雰囲気下で保管されることが多く、安全に取出しおよび移送するために、気密シリンジによってそのセプタム・キャップを穿孔することができる。いくつかの空気感受性材料は、周囲空気の成分と素早く(たとえば、数秒または数分で)発熱的に反応し、危険な場合がある。たとえば、自然発火性材料は、酸素または水蒸気あるいはその両方とのその反応性に起因して、おおよそ54.55°C以下の空気中で自然発火する。溶液に溶解された状態で、または純粋な液体として保管もしくは移送されることが一般的な自然発火性化合物の例は、金属水素化物、有機リチウム試薬、グリニャール試薬、ジホスファン、tert-ブチルリチウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルボラン、ジエチル亜鉛などを含むことができる。自然発火性化合物に関連する危険があるにも関わらず、これらの材料の多くは、商業上の合成でも研究においても幅広く応用されている。
【0011】
たとえば、tert-ブチルリチウム(t-BuLi)は、アミンおよび炭化水素を含む化合物を脱プロトン化できる一般的に使用される強塩基である。しかし、t-BuLiは極度に自然発火性の液体であり、実験室において多数の事故および負傷者を出してきた。したがって、t-BuLiは、不活性雰囲気下で気密容器に保管し、気密シリンジまたはカニューレによって注意深く移送しなくてはならない。さらに、不活性雰囲気下の実験室グローブボックスまたはグローブバッグ内でt-BuLiを扱うことにより、多くの危険を軽減することができるが、これは常に現実的とは限らない。さらに、t-BuLiが適切な空気のない技法を用いて扱われた場合でも、危険が生じる恐れがある。シリンジまたはカニューレでのt-BuLiの移送に伴ってよく生じる問題は、移送中の針の先端に液体の液滴がしばしば残り、この液滴が容易に発火し得ることである。液滴の発火により生じる危険に加えて、熱分解反応の1つの生成物はリチウム塩であり、これが沈殿すると針を詰まらせる恐れがある。
【0012】
空気感受性流体を気密シリンジで移送するための装置が開示される。この装置は、これらの流体を安全に移送するための付属物としてシリンジとともに、または容器もしくはシリンジを含むデバイスの構成要素として、使用することができる。本明細書において、「気密」という用語は、気体および液体に対して実質的に不透過性である材料および封止を説明するために使用される。シリンジを使用して容器から液体を引き抜き、液体を移送し、液体を別の容器に注入するときに、流体移送装置は、シリンジの針をシリンジ・バレルの一部分(すなわち、針に結合されたバレルの端部)とともに、不活性気体で充たされた空洞内に封入する。容器の例は、ボトル、バイアル、フラスコ、試験管などを含むことができる。これらの容器は気密セプタム・キャップ(すなわち、気体および液体に対しては実質的に不透過性であるが、針で穿孔することができる膜を有するキャップ)を有する。セプタム・キャップは、容器内側の液体が、周囲空気と接触することを防止する。しかし、いくつかの実施形態では、容器がセプタム・キャップを有していないことに留意すべきである。これについては、以下でより詳細に検討する。
【0013】
図1は、本開示のいくつかの実施形態による流体移送装置110、シリンジ120、およびバイアル130の概略斜視
図100である。シリンジ120はバレル135を含む。またシリンジ120はプランジャも含み、シリンジ120は針に結合される。針およびプランジャは
図1に示しておらず、以下でより詳細に検討する。シリンジ120は、ガラス、プラスチック、金属などの1つまたは複数の材料から作られた気密シリンジである。気密シリンジは、そのシリンジ・バレルの内部壁との封止を形成する締まり嵌めプランジャを有し、それにより針とは反対のバレルの端部において気体がバレルに出入りするのを防止するタイプのシリンジである。しかし、他の実施形態では、気密ではないシリンジが使用されてもよいことに留意すべきである。さらに、バイアル以外の容器(たとえば、ボトル、試験管、フラスコなど)が使用されてもよい。
【0014】
流体移送装置110は、中空チューブの形の円筒形本体をもつエアロック構成要素140を有する。しかし、エアロック構成要素140は、多角形(たとえば、矩形、三角形、六角形など)の細長い形状を有してもよいことに留意すべきである。いくつかの実施形態では、エアロック構成要素140はプラスチックである。しかし、エアロック構成要素140は、ガラスまたは金属から作られてもよい。エアロック構成要素140は、不透明であっても透明であってもよく、または部分的に透明で部分的に不透明であってもよい。たとえば、不透明チューブが透明な窓を有してもよい。さらに、エアロック構成要素140は、中空チューブ内側の気体の同一性および濃度を判定するための気体センサを含むことができる。これについては、
図2に関してより詳細に検討する。
【0015】
エアロック構成要素140の中空チューブに沿って、気体入口ポート150および気体出口ポート160が存在する。入口ポート150は、中空チューブの外部表面からエアロック構成要素140の中空チューブの内部表面までエアロック構成要素140の壁にある孔である。入口ポート150は、エアロック構成要素140の表面から垂直にまたは斜角に延在する中空シャフトを有することができる。不活性気体源に接続された気密管が、入口ポート150の中空シャフトに取り付けられてもよい。気密管の例は、ゴム管、シリコーン管、ラテックス管、およびPTFE管を含むことができる。しかし、任意の他の気密管材料が使用されてもよい。
【0016】
気体出口ポート160は、中空チューブの内部表面からエアロック構成要素140の中空チューブの外部表面までエアロック構成要素140の壁にある孔である。気体出口ポート160は一方向弁を含むことができ、または気体出口ポート160は、エアロック構成要素140の外側表面から垂直にまたは斜角に延在する中空シャフトを有する単純な孔とすることができる。さらに、エアロック構成要素140のパージを容易にするために、出口ポート160は任意選択で、真空源に接続された管に取り付けられてもよい。エアロック構成要素140のパージについては、
図2に関してより詳細に検討する。入口ポート150および出口ポート160の中空シャフトは、気密管との気密封止を形成しやすくするために任意選択で環状の鋸歯状部を有することができる。いくつかの実施形態では、出口ポート160がシャフトを有していないことに留意すべきである。さらにいくつかの実施形態では、入口ポート150は、気密管を使用することなく気体源に直接接続される。
【0017】
エアロック構成要素140は、第1の端部および第2の端部を有する。シリンジ120は、エアロック構成要素140の第1の端部を通して挿入され、エアロック構成要素140の第2の端部は、取付け部材180の第1の端部の実質的に環状の開口部に結合される。取付け部材180は、バイアル130に係合する第2の端部を有する。これについては、
図2に関してより詳細に検討する。いくつかの実施形態では、取付け部材180の第1の端部は、エアロック構成要素140の外部表面に摩擦によって結合される。たとえば、取付け部材180の第1の端部の開口部の周囲が、エアロック構成要素140の第2の端部の周囲よりわずかに大きい場合、取付け部材180の第1の端部の内部表面は、エアロック構成要素140の第2の端部の外部表面の周りにきつく嵌まることが可能である。いくつかの実施形態では、取付け部材180はプラスチックであるが、取付け部材180の材料のさらなる例は、ゴム(たとえば、天然ゴム、ブチル・ゴム、イソプレン重合体など)、シリコーン、および金属を含むことができる。取付け部材については、
図3に関してより詳細に検討する。
【0018】
図2は、本開示のいくつかの実施形態による流体移送装置110、シリンジ120、およびバイアル130の概略断面斜視
図200である。シリンジ120のバレル135は先端に向かって先細り、この先端が、バイアル130から流体を回収するための中空の針205に嵌まる。針205は、ルアー・ロック・ハブまたはスリップ・ハブによって先端に結合されてもよく、または針205は、取外し不可能にシリンジ120に取り付けられてもよい。バイアル130は、セプタム・キャップ220に結合された首部210を有する。セプタム・キャップ220は、市販元から得る液体を含むバイアル130に予め取り付けられた気密キャップの一部であってもよく、またはセプタム・キャップ220は、ユーザによりバイアル130に付けられてもよい。セプタム・キャップ220は、気体不透過性材料から作られた実質的に環状のセプタム230をキャップ220の中央に有するプラスチックまたは金属のキャップ(たとえば、スクリュー・キャップまたはクラウン・キャップ)とすることができる。しかし、セプタム・キャップ220はまた、セプタム・スリーブ・ストッパであってもよい。セプタム230の材料の例は、シリコーン、ゴム(たとえば、天然ゴム、ブチル・ゴム、イソプレン重合体など)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PTFE/シリコーン、PTFE/グレイ・ブチル、PTFE/ゴム、シリコーン/アルミニウム、およびフルオロエラストマを含むことができる。しかし、任意の他のタイプの気密セプタムが使用されてもよい。いくつかの実施形態では、バイアル130はガラス・バイアルである。しかし、バイアル130は、プラスチックまたは金属のバイアルであってもよい。
【0019】
取付け部材180に接続される流体移送装置110の第2の端部は、取付け部材180をバイアル130の首部210に係合することによってバイアル130に結合される。取付け部材180は、エアロック構成要素140から延在し、バイアル首部210の外側表面に係合する。取付け部材180は、細長い脚部235-1、235-2、235-N(集合的に235と呼ぶ)を有し、これらがまとまって、バイアル首部210を囲む実質的に環状の本体を形成する。流体移送装置110をバイアル130に固定するために、バイアル130の首部210が脚部235間に挿入されるとき、細長い脚部235はバイアル130の首部210の周りで径方向外向きの方向に広がる。いくつかの実施形態では、取付け部材180の内部表面に配設されたOリングが、バイアル首部210との気密封止を形成するが、本明細書にはこのOリングを図示していない。
【0020】
シリンジ120および針205は、エアロック構成要素140の第1の端部の実質的に環状の開口部242を通って、エアロック構成要素140の中空チューブの内側空洞240に挿入される。シリンジ120は、針205およびシリンジ120のバレル135が環状開口部242を通って入るように、エアロック構成要素140の内部空洞240に挿入される。環状開口部242は、シリンジ120が内側空洞240に挿入されたときに、シリンジ120のバレル135との気密封止を形成するように、内向きに面するOリング245に結合される。内向きに面するOリング245の位置は、気体の入口ポート150と出口ポート160の間の内部空洞240の部分内で長手方向に変化してもよいことに留意すべきである。
【0021】
さらにOリング245は、シリンジ120のバレル135との気密封止を形成することができる別の内向きに面する材料によって置き換えられてもよい。たとえば、気密材料(たとえば、ゴム、熱可塑性物質、シリコーン、PTFEなど)から作られた中空プラグまたはディスクが、エアロック構成要素140の内側空洞240の内部表面に結合されてもよい。シリンジ120は、こうしたプラグまたはディスクのおおよそ中央の穴または他の開口部を通って挿入されてもよい。シリンジ120のバレル135の直径に基づき、異なる穴の直径が使用されてもよい。さらに、中空プラグは、エアロック構成要素140の第1の端部から外向きに延在してもよい。
【0022】
さらに、シリンジ・バレル135の表面と、エアロック構成要素140の第1の端部における内部表面との間に、真空グリース(たとえば、炭化水素ベースの高真空グリース、シリコーン・グリース、またはラムジー・グリース(Ramsay grease))を塗布することにより、実質的に環状の開口部242とシリンジ120との間の封止が、Oリングまたはプラグなしで形成されてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、気密封止は、内向きに面する気密材料なしで形成されてもよいことに留意すべきである。たとえば、環状開口部にきつく嵌まり、エアロック構成要素140の内部表面と接触するシリンジ・バレル135は、内部空洞240に空気が出入りするのを防止することができる。いくつかの実施形態では、シリンジ120は、内部空洞240内で前後に動かせるが、取外し不可能にエアロック構成要素140に結合されてもよい。
【0023】
挿入されたシリンジ120の存在により、エアロック構成要素140の第1の端部における環状開口部242が封止された後、内部空洞240の内側の周囲空気を不活性気体で置換するために、空洞240がパージされる。空洞240をパージする際、気体源(たとえば気体タンクまたはシュレンク・フラスコ)からの不活性気体が、気体入口ポート150に嵌められた管を通って空洞240に入る。不活性気体が入口ポート150を通って入るにつれ、周囲空気は気体出口ポート160を通って押し出される。さらにいくつかの実施形態では、内部空洞240から周囲空気を除去しやすくするために、出口ポート160は、真空源に接続された管に嵌められている。
【0024】
さらに、気体センサが、エアロック構成要素140に含まれてもよい。気体センサは、移送される空気感受性化合物と反応し得る気体の存在を示すことにより、パージの必要なときをユーザが判断できるようにする。気体センサの例は、酸素センサ(たとえば、ジルコニア・ベースのセンサ、広帯域のジルコニア・ベースのセンサ、チタン・ベースのセンサ、クラーク型電極、および酸素オプトード)、二酸化炭素センサ(たとえば、非分散型赤外線(NDIR)CO2センサ、およびポリマーまたはヘテロポリシロキサンに基づく化学センサ)、および水蒸気センサ(たとえば、比色検出器、金属コイル型湿度計、乾湿計、静電容量湿度計、抵抗湿度計、熱湿度計、および重量湿度計(gravimetric hygrometer))を含むことができる。
【0025】
セプタム250は、エアロック構成要素140の第2の端部に位置付けられる。このセプタム250を、本明細書では「エアロック・セプタム250」と呼ぶ。エアロック・セプタム250は、第2の端部の開口部を気密封止で覆うことにより、エアロック構成要素140の第2の端部を閉じる。エアロック・セプタム250は、第2の端部において内側空洞240に気体が出入りするのを防止する。エアロック・セプタム250を作る元になる気体不透過性材料の例は、シリコーン、ゴム(たとえば、天然ゴム、ブチル・ゴム、イソプレン重合体など)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PTFE/シリコーン、PTFE/グレイ・ブチル、PTFE/ゴム、シリコーン/アルミニウム、PTFE/サーモシール、およびフルオロエラストマを含むことができる。しかし、任意の他のタイプの気密セプタム材料が使用されてもよい。シリンジ120の針205を使用して、エアロック・セプタム250が穿孔される。シリンジ120は、エアロック構成要素140の第2の端部に向かって、内部空洞240の中を前方に動かされる。シリンジ120は、針205がエアロック・セプタム250およびバイアル・セプタム230を穿孔し、バイアル130の内側の流体に接触するまで前方に動かされる。これについては、
図4および
図5に関してより詳細に検討する。
【0026】
図3は、流体移送装置が代替的な取付け部材310を有する、本開示のいくつかの実施形態による流体移送装置110の概略斜視
図300である。流体移送装置110の代替的な取付け部材310は、気体および液体に対して不透過性である可撓性材料(たとえばゴムまたはシリコーン)から作られる。この可撓性の取付け部材310は、取付け部材310がバイアル130の首部を囲むように、バイアル130に押し付けられる。いくつかの実施形態では、可撓性の取付け部材310は、バイアル130によって受け入れられるのに十分な可撓性を有しているが、バイアル130の外部との気密封止を形成するのに十分な弾性を有する。
【0027】
いくつかの実施形態では、他のタイプの取付け部材が使用されてもよいことに留意すべきである。たとえば、取付け部材は、ルアー・ロック嵌め、スリップ嵌め、すりガラス嵌め(ground glass fitting)、差込み嵌め、PTFE、またはプラスチック・スリーブを含むことができる。取付け部材はさらに、接合クリップ(たとえば、ケック・クリップ)によってバイアル首部に固定されてもよく、またはシリコーン・グリースもしくはPTFEテープ(たとえば、テフロン(登録商標)・テープ)で封止されてもよく、あるいはその両方であってもよい。いくつかの実施形態では、流体移送装置は取付け部材を有さず、その代わりにクリップ、アダプタ、テープ、手などで固定されることにも留意すべきである。さらに、取付け部材180または310は、エアロック構成要素140に取外し不可能に取り付けられてもよく、またはエアロック構成要素140自体の一部分であってもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、エアロック構成要素140の第2の端部が取付け部材として作用することができる。
【0028】
図4は、本開示のいくつかの実施形態による流体移送装置、シリンジ、およびバイアルを使用して、空気感受性液体を移送する工程400を示すフロー図である。
図4を参照すると、流体移送装置、シリンジ、およびバイアルの構成要素は、
図1および
図2の流体移送装置110、シリンジ120、およびバイアル130の構成要素と同じ、または実質的に同様とすることができる。流体移送装置が、空気感受性液体を含むバイアルに結合される。これをステップ410に示す。流体移送装置は、取付け部材をバイアルの首部に係合することにより、または別の取付け機構により、バイアルに結合される。
【0029】
シリンジおよび針が、取付け部材とは反対のエアロック構成要素の端部の環状開口部に挿入される。これをステップ420に示す。シリンジは、シリンジのバレルおよび針がエアロック構成要素の中に延在するが、エアロック・セプタムを穿孔することがないように、挿入される。エアロック構成要素のチューブが、少なくとも部分的に透明な材料(たとえば、ガラスまたは透明プラスチック)から作られる場合、ユーザは、内部空洞内でのシリンジの位置を観察することができ、それによりエアロック・セプタムを不注意で穿孔することが防止される。さらに、シリンジが前方に動くことを防止するために、金属またはプラスチックのクリップなどのロック機構が、シリンジに結合されたエアロック構成要素の端部に取外し可能に取り付けられてもよい。
【0030】
シリンジのバレルが、エアロック構成要素の環状開口部において内向きに面するOリングまたは他の気密材料との気密封止を形成するように、適切な大きさのシリンジが選択される。さらに、いくつかの実施形態では、エアロック構成要素の第1の端部およびシリンジ・バレルの外部の周りにPTFEテープを巻くことにより、封止を強化することができる。さらに、いくつかの実施形態では、流体移送装置がバイアルに結合される前に、シリンジがエアロック構成要素に挿入される(すなわち、ステップ410と420が逆になる)ことに留意すべきである。
【0031】
エアロック構成要素が、その中空内部の周囲空気を不活性気体で置換するためにパージされる。これをステップ430に示す。不活性気体によるパージは、当業者によって理解されるような標準的な空気排除技術を使用して行われる。入口ポートは、気密管により不活性気体源に接続される。気体は、入口ポートを通ってエアロック構成要素の中空内部に流入し、出口ポートを通って出る。さらに、任意選択で、シリンジのプランジャを少なくとも1回上下に動かして周囲空気を排出し、針およびバレルに不活性気体を導入することにより、シリンジがパージされてもよい。エアロック構成要素の中空内部は、その後のステップ全体にわたって、不活性気体流による正圧に維持される。いくつかの実施形態では、エアロック構成要素は、気体流または気体圧力のセンサを有する。
【0032】
不活性気体が、エアロック構成要素の内部空洞を通って流れるときに、針がエアロック・セプタムを穿孔し、バイアルに入り、バイアル内の液体と接触するまで、シリンジが前方に押される。これをステップ440に示す。いくつかの実施形態では、針は、バイアルのセプタム・キャップのセプタムを穿孔する。さらに、セプタムが穿孔される前のバイアルから引き抜かれる液体の体積に一致した体積の不活性気体で、シリンジが充填されていてもよい。しかし、シリンジはそれより少ない体積の不活性気体、それより多い体積の不活性気体を含んでもよく、または気体を含まなくてもよい。シリンジ内の任意の気体がヘッドスペースに注入された後で、所望の体積の液体がシリンジによって回収される。いくつかの実施形態では、バイアルまたは他の液体容器はセプタム・キャップを有していないことに留意すべきである。たとえばユーザは、不活性雰囲気下のグローブボックスの内側で、開いたフラスコから液体を回収し、流体移送装置およびシリンジを使用して、その液体をグローブボックスの外側の第2の容器に移送することができる。
【0033】
液体の回収が完了すると、バイアルから針が引き抜かれる。これをステップ450に示す。バイアルから針を引き抜くために、針およびシリンジのバレルの一部分が、エアロック構成要素の内部空洞の内側にくるまで、シリンジはエアロック構成要素の中空内部の中で後方に動かされる。すなわち、針およびシリンジは、ステップ420においてそれらがあった位置に戻される。シリンジが配置された後にそれを定位置に保持するために、プラスチックまたは金属のクリップなどのロック機構が、任意選択で環状開口部およびシリンジ・バレルの外部に配設されてもよい。さらに、移送中にプランジャが動かないようにするために、先端とは反対のシリンジ・バレルの端部に第2のロック機構が結合されてもよい。
【0034】
次いで、流体移送装置およびシリンジが、バイアルの首部から分離され、別の容器に移送される。これをステップ460に示す。シリンジおよび針は、このステップにおいてエアロック構成要素の内部から取り外されない。いくつかの実施形態では、管は、移送まで流体移送装置から取り外されない。しかし、管は取り外されてもよく、エアロック構成要素の内部空洞の不活性気体雰囲気を維持するために、入口ポートまたは出口ポートあるいはその両方がカバーされてもまたは閉じられてもよい。次いで、不活性気体を保持する流体移送装置、空気感受性液体を含むシリンジ、および針が、ステップ410に関して説明したのと実質的に同じ方法により、第2の容器に結合される。
【0035】
シリンジの針がエアロック・セプタムを穿孔し、針が、ステップ440に関して説明したのと実質的に同じ方法により、第2の容器に入る。いくつかの実施形態では、第2の容器はセプタム・キャップを有する。しかし、第2の容器は、不活性気体による正圧下にある開いた容器、または不活性雰囲気下のグローブボックスに位置付けられた開いた容器とすることもできる。液体が第2の容器に入れられ、針が、ステップ450に関して説明したのと実質的に同じ方法により、容器から引き抜かれる。
【0036】
図5は、本開示のいくつかの実施形態による、空気感受性液体560-1および560-2を移送する視覚的工程を示す一連500の概略
図510、520、530、540、および550である。これらの
図500に示す視覚的工程については、工程400に関して検討する。工程400については、
図4に関してより詳細に説明する。
図510は、ステップ410を視覚的に表したものである。流体移送装置110が、空気感受性液体560-1を保持するバイアル130に結合される。取付け部材180をバイアル130の首部210に係合することにより、流体移送装置110がバイアル130に結合される。シリンジ120および針205は、まだエアロック空洞140に挿入されない。
【0037】
図520は、工程400のステップ420および430を視覚的に表したものである。ステップ420では、空のシリンジ120およびシリンジ120に結合された針205が、流体移送装置110の内部空洞240に挿入される。シリンジ120および針205は、シリンジ120のバレル135が環状開口部242に沿った内向きに面するOリング245との気密封止を形成するように、エアロック空洞140の環状開口部242を通って挿入される。ステップ430では、エアロック構成要素の内部空洞240、シリンジ120のバレル、および針205が、入口ポート150を通って入り出口ポート160を通って出る不活性気体によってパージされる。
【0038】
図530は、工程400のステップ440を視覚的に表したものである。ステップ440では、シリンジ120は、針205がエアロック・セプタム250およびバイアル・セプタム230を穿孔するように、内部空洞240の中で前方に動かされる。シリンジ120が前方に動かされるとき、バレル135は、Oリング245との気密封止を維持する。針205がバイアル130に入ったら、バイアル内の空気感受性液体560-1がシリンジ120によって回収される。シリンジ120の内側の液体560-2は、その後別の容器に移送される。
【0039】
図540は、工程400のステップ450を視覚的に表したものである。ステップ450では、針205およびシリンジ・バレル135の一部分がエアロック構成要素の内部空洞240の内側にくるように、ステップ440で回収した液体560-2を含むシリンジ120が後方に動かされる。
図550は、工程400のステップ460を視覚的に表したものである。ステップ460では、流体移送装置110、シリンジ120、液体560-2、および針205が、バイアル130から係合解除され、少なくとも1つの追加の容器に移送される。1つまたは複数の追加の容器は、
図550に示していない。
【0040】
いくつかの実施形態では、流体移送装置110を使用して、自然発火性ではない流体が移送される。さらに、流体移送装置110を使用して、液体以外の流体(たとえば気体またはプラズマ)を移送することができる。たとえば、流体移送装置110を使用して、針を通ってシリンジに入る少量の空気成分と非自然発火的に反応する流体を移送することができる。これらの流体の例は、fブロックまたは早期dブロックの金属を有する有機金属化合物、硫化水素ガス、酸化窒素ガスなどの溶液を含むことができる。さらに、摂取されたり、吸入されたり、肌に吸収されたり、それらの組合せが行われたりすると危険な液体を移送するために、流体移送装置が使用されてもよい。これにより、危険な液体の液滴がユーザに、またはユーザが触るかもしれない表面に接触することが防止される。こうした化合物の例は、有機水銀化合物、ウイルスまたは細菌を含む液体、シアン化物イオンを含む溶液などを含むことができる。
【0041】
さらに流体移送装置110は、独立した装置ではなく、流体の移送デバイスまたは保管デバイスあるいはその両方のデバイスの構成要素であってもよい。これらの事例では、流体移送装置の構成要素は、少なくとも1つの追加の構成要素に結合されていても、独立した流体移送装置110と実質的に同じやり方で使用される。たとえば、流体保管デバイスが、ボトルまたは他の容器に取外し不可能に取り付けられた流体移送装置の構成要素を含むことができる。流体は、エアロック構成要素を通ってボトルに挿入されるシリンジによって、流体保管デバイスから取り出されてもよい。さらに、流体移送デバイスが、エアロック構成要素内で前後に動かすことができるシリンジに取外し不可能に取り付けられた流体移送装置の構成要素を含むことができる。流体移送デバイスは、空気感受性液体を保持する容器に、流体移送装置110と同じやり方で結合される。
【0042】
本明細書で検討し、添付図面に示す例は、特定の細部を参照することがある。しかし、本開示の趣旨および範囲を維持しながら加えることができる様々な修正が存在することが、理解されよう。これらは、当業者によって容易に認識および実行される。