IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社イトーキの特許一覧

<>
  • 特許-椅子 図1
  • 特許-椅子 図2
  • 特許-椅子 図3
  • 特許-椅子 図4
  • 特許-椅子 図5
  • 特許-椅子 図6
  • 特許-椅子 図7
  • 特許-椅子 図8
  • 特許-椅子 図9
  • 特許-椅子 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/62 20060101AFI20220713BHJP
【FI】
A47C7/62 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017187110
(22)【出願日】2017-09-27
(65)【公開番号】P2019058531
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-09-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】守田 圭
(72)【発明者】
【氏名】前川 尚幸
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203153106(CN,U)
【文献】米国特許第05547247(US,A)
【文献】特開平10-257937(JP,A)
【文献】特開2017-131572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と、
前記座部の側方で前記座部よりも上方に配置されたテーブル支持部と、
前記テーブル支持部の上方に配置されたテーブル部と、を備え、
前記テーブル支持部は、前後方向に延びる基部と、着座者から見て前記基部から左右内向きに張り出した張出し部とを有し、
前記基部に、前記テーブル部を水平回動可能に連結する連結部を設け、
前記張出し部に、前記張出し部と前記テーブル部の間に配置されて前記テーブル部の下方側への移動を制限する規制部材が設けられている椅子。
【請求項2】
前記張出し部は、前記テーブル部の回動軸を中心とする円弧状溝を備え、
一端側が前記テーブル部の下面に固定されて他端側が前記円弧状溝に挿通された突出部材が設けられている請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記座部に対して前記テーブル支持部よりも外側に側板部が立設されており、
前記円弧状溝及び前記突出部材は、前記テーブル部が前記側板部に接触しないように前
記テーブル部の回動可能範囲を制限している請求項2に記載の椅子。
【請求項4】
前記突出部材は、前記円弧状溝を貫通し、かつ、前記円弧状溝よりも幅広で前記円弧状溝の下方に配置される抜け防止部を備えている請求項2又は3に記載の椅子。
【請求項5】
前記テーブル部は、着座者から見て、左右縁部のうち一方の縁部寄りの部位に回動軸を有し、他方の縁部を回動自由端とすると共に、手前側の後方限界位置と前方側の前方限界位置との間で回動可能に設けられており、
前記テーブル部が前記後方限界位置に位置する状態おいて平面視で前記回動軸から前記回動自由端側へ向かって延びる直線を基準線とし、
2つの前記規制部材が前記基準線を挟んで配置されている請求項1から4のいずれか一項に記載の椅子。
【請求項6】
2つの前記規制部材は、前記回動軸を中心として前記基準線を前記テーブル部とともに回動させたときの前記基準線の移動軌跡を挟んで配置されている請求項5に記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、座部とテーブル部を備えた椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
座部とテーブル部を備えた椅子として、テーブル部が水平回動可能に設けられたものが知られている(例えば特許文献1,2を参照。)。また、特許文献2には、座部の左右側方及び後方をパネルで囲んだセミクローズドタイプの椅子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-215980号公報
【文献】特開2017-131572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の椅子では、テーブル部に下方へ向かう大きな荷重が加わった時に、テーブル部を回動可能に支持する部位に大きな負荷がかかり、当該部位が破損して使用者が負傷する虞れがあるなど、安全性に問題があった。このような不具合を防止すべく、特許文献2の椅子では、テーブル部の下面に、椅子設置面に到達する足体が取り付けられている。しかし、当該足体は、テーブル部の使用時には座部の前方に配置されるので、着座者の足に接触して着座者の使用感の低下を招くなど、改善の余地があった。
【0005】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものであり、座部とテーブル部を備えた椅子において、着座者の良好な使用感を確保しながら、安全性を向上することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、座部と、前記座部の側方で前記座部よりも上方に配置されたテーブル支持部と、前記テーブル支持部の上方に配置されたテーブル部と、を備え、前記テーブル支持部は、前後方向に延びる基部と、着座者から見て前記基部から左右内向きに張り出した張出し部とを有し、前記基部に、前記テーブル部を水平回動可能に連結する連結部を設け、前記張出し部に、前記張出し部と前記テーブル部の間に配置されて前記テーブル部の下方側への移動を制限する規制部材が設けられている椅子である。
【0007】
本願発明において、前記張出し部は、前記テーブル部の回動軸を中心とする円弧状溝を備え、一端側が前記テーブル部の下面に固定されて他端側が前記円弧状溝に挿通された突出部材が設けられているようにしてもよい。
【0008】
さらに、前記座部に対して前記テーブル支持部よりも外側に側板部が立設されており、前記円弧状溝及び前記突出部材は、前記テーブル部が前記側板部に接触しないように前記テーブル部の回動可能範囲を制限しているようにしてもよい。
【0009】
また、前記突出部材は、前記円弧状溝を貫通し、かつ、前記円弧状溝よりも幅広で前記円弧状溝の下方に配置される抜け防止部を備えているようにしてもよい。
【0010】
本願発明の椅子において、前記テーブル部は、着座者から見て、左右縁部のうち一方の縁部寄りの部位に回動軸を有し、他方の縁部を前記回動自由端とすると共に、手前側の後方限界位置と前方側の前方限界位置との間で回動可能に設けられており、前記テーブル部が前記後方限界位置に位置する状態おいて平面視で前記回動軸から前記回動自由端側へ向かって延びる直線を基準線とし、2つの前記規制部材が前記基準線を挟んで配置されていようにしてもよい。
【0011】
さらに、2つの前記規制部材は、前記回動軸を中心として前記基準線を前記テーブル部とともに回動させたときの前記基準線の移動軌跡を挟んで配置されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本願発明の椅子は、テーブル部の回動自由端側へ張り出した張出し部を備えるテーブル支持部と、張出し部とテーブル部の間に配置されてテーブル部の下方側への移動を制限する規制部材を備えているので、テーブル部に下方へ向かう荷重が加わった時に、テーブル部の下方側への移動を制限すると共に上記規制部材が負荷を張出し部側へ分散し、テーブル部とテーブル支持部とを連結する連結部の周辺にかかる負荷を低減できる。したがって、本願発明の椅子は、テーブル部の下面に椅子設置面に到達する足体を設けなくても、連結部周辺の破損を防止でき、着座者の良好な使用感を確保しながら、安全性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図2】同実施形態を示す図であり、(A)は左側面図、(B)は右側面図である。
図3】同実施形態を示す図であり、(A)は前方斜視図、(B)は後方斜視図である。
図4】同実施形態の分解斜視図である。
図5】同実施形態のテーブル部周辺を下方側から見た前方斜視図である。
図6】同テーブル部周辺の取付け状態を説明するための斜視図である。
図7】テーブル部の後方斜視図である。
図8】テーブル部、テーブル支持部及び連結部の分解斜視図である。
図9】(A)はテーブル部周辺を示す平面図、(B)は(A)のB-B視断面図である。テーブル支持部及び連結部の分解斜視図である。
図10図9(A)のA-A視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本願では、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、この前後・左右の方向は、座部に普通に腰掛けた人の向きを基準にしている。正面視は、着座した人と相対向した方向から見た状態である。
【0015】
図1~4に示すように、本実施形態の椅子は、座部1と背もたれ部2とを有する椅子部3と、椅子部3を支持する脚フレーム部4と、座部1の右側方で脚フレーム部4上に立設された肘掛け部5と、肘掛け部5に支持されたテーブル部6とを備えている。脚フレーム部4は、左右両側に鉛直姿勢の脚板7,8を備えている。左右の脚板7,8は、手前に向けて間隔が広がるように、平面視ハ字の形態に配置されている。
【0016】
椅子部3及び肘掛け部5の左右側方及び後方を囲うように、左右のサイドパネル9,10及びバックパネル11が鉛直姿勢で設けられている。パネル9,10,11の上端部は、背もたれ部2よりも高い位置に設けられており、ここでは椅子部3への着座者の頭頂部よりも高い位置に設定されている。左右のサイドパネル9,10は、手前に向けて間隔が広がるように、平面視ハ字の形態に配置されている。また、サイドパネル9,10の外側面及び内側面は、例えば不織布で形成され、前後方向に延伸する複数の凸条部が上下方向に配列されて、凹凸状に形成されている。これにより、椅子部3への着座者に対する外部からの遮音性が向上されている。
【0017】
左右のサイドパネル9,10は、脚板7,8の上部と背もたれ部2の側部とに、例えば樹脂製クリップからなる複数の固定部材12で固定されている。バックパネル11は、背もたれ部2の側部と背面とに、ブラケット金具13と係合部材14a及び受け部材14bとを介して固定されている。
【0018】
パネル9,10,11の上部に、ルーフパネル15,16,17が取り付けられている。ルーフパネル15,16,17は、その下部が鉛直姿勢に配置され、その上部が上端部側ほど椅子内側に位置する傾斜姿勢に配置されるように、屈曲している。図1に示すように、ルーフパネル15,16,17の上部は、平面視で椅子部3の周縁部に重なっている。これにより、着座者が感じる篭り感や、上方側からの遮音性及び遮蔽性が向上されている。
【0019】
図4に示すように、左右のルーフパネル15,16は、その下端部の前後2箇所に突出部18及び貫通孔19を備えている。貫通孔19に左右一対の挟持部材20a,20bが突出部18を挟んでビス21で固着される一方で、挟持部材20a,20bがパネル9,10の上端部位を挟持することで、ルーフパネル15,16はパネル9,10の上端部に取り付けられている。バックルーフパネル17は、その下端部の左右2箇所に膨出部22を備えている。ピン部材23の一端側が膨出部22内に挿入される一方、ピン部材23の他端側がバックパネル11の上端面に設けられた係合穴24に挿入されることで、バックルーフパネル17はバックパネル11の上端部に取り付けられている。
【0020】
また、この実施形態の椅子には、座部1の上面左寄り部位に設置されるサイドテーブル25が設けられている。サイドテーブル25は、板状の天板部26と、天板部26の下面に固着されたL型金具27を備えている。L型金具27の部位のうち、天板部26の下面から下方へ向けて突出する鉛直部位27aは、天板部26の左縁部に沿って配置されている。サイドテーブル25は、鉛直部位27aが座部1と左サイドパネル10との隙間に挿入されて、天板部26が座部1の上面に載置されることで、座部1の上に着脱可能に取り付けられる。
【0021】
図5,6にも示すように、肘掛け部5は、脚フレーム部4の右縁部前寄り部位の上に載置されている。肘掛け部5は、脚フレーム部4上に載置される略箱型の配線ボックス部28と、配線ボックス部28上に固着される板状のテーブル支持部29を備えている。
【0022】
配線ボックス部28は、板金製のベース部30、前カバー部31、後カバー部32、補強部材33、下カバー部34及び上カバー部35を備えている。ベース部30は、下方が解放された正面視略C字形で前後縦長の形状を有する。前カバー部31は、右側が解放された平面視略C字形で上下縦長の形状を有し、前面31b及び左側面31cの下端よりも上方に位置する後面31aの下端がベース部30の上面30aに当接するようにして、ベース部30の前部に固着されている。前カバー部31の下端側開口部は下カバー部34で覆われ、上端側開口部は上カバー部35で覆われている。
【0023】
補強部材33は、上下縦長で四角筒状の形状を有し、ベース部30の上面30aの前寄り部位に設けられた開口部30bと、カバー部34,35の開口部34a,35aとに挿通されて、前カバー部31内に配置されている。補強部材33は、ベース部30の上面30a及びカバー部34,35に固着されている。
【0024】
横及び後カバー部32は、右側面32aと中間面32bと左側面32cからなる平面視略Z字形の形状を有し、前カバー部31と同じ高さ寸法で形成されている。右側面32aは、前カバー部31の右方とベース部30の右側面の前寄り部位及び中央部位とを覆っている。中間面32bは、右側面32aの後端から左方へ向けて屈曲されてベース部30の上に配置されている。左側面32cは、中間面32bの左端から後方へ向けて屈曲されてベース部30の左側面30cの後寄り部位を覆っている。
【0025】
配線ボックス部28において、テーブル支持部29と、ベース部30の上面30aと、前カバー部31の後面31aと、後及び横カバー部32の中間面32bとで囲まれた空間36が形成されている。空間36は、座部1側に開口しており、スマートフォンやタブレット端末などの携帯情報端末や、カバン、書類、書物などを収容可能に構成されている。
【0026】
ベース部30の上面30aには、前カバー部31の後面31aと後及び横カバー部32の中間面32bとの間の位置に、電源用開口部30dが形成されている。電源用開口部30dには、電源コンセント37が取り付けられている。電源コンセント37は、前後方向に並ぶ4つのコンセント38と、コンセント38群よりも後方で左右方向に並ぶ2つの給電用USBポート39を備えている。これにより、例えばスマートフォンやタブレット端末などの携帯情報端末や、カメラや音響機器、電子辞書などの携帯機器を充電しながらベース部30の上面30aに載置することが可能である。なお、電源コンセント37の位置は、着座者が着座した状態でコンセントを使用しやすいように上面30aに設けられているが、電源コンセント37は、空間36に露出するようにして、前カバー部31の後面31aや、後及び横カバー部32の中間面32bに設けられてもよい。
【0027】
配線ボックス部28は、前部を固定する4本のボルト40と、後部を固定する2本のボルト41とで、脚フレーム部4及び背もたれ部2に固定される。具体的には、配線ボックス部28の下カバー部34が脚フレーム部4の前フレーム4aの右端部位と右フレーム4bの前端部位に下方側からボルト40で固定され、横及び後カバー部32の左側面部32cが背もたれ部2の右側部に右方側からボルト41で固定される。
【0028】
また、配線ボックス部28には、横及び後カバー部32の右側面32a及び中間面32bの各上端と上カバー部35の後端から、空間36の上方へ向けて突設された天板取付け部32d,32e,35bが設けられている。天板取付け部32d,32e,35bには、ボルト挿通穴44が2つずつ形成されている。
【0029】
配線ボックス28部の上に、例えば繊維板製のテーブル支持部29が固定されている。テーブル支持部29は、配線ボックス部28の上方を覆う平面視略長方形の固定天板部42と、固定天板部42の前端部左縁部位から左斜め前方向に突設された張出し部43とを備えている。固定天板部42は、肘掛けや物置台として利用可能である。
【0030】
固定天板部42の裏面には6つの雌ねじ穴45が設けられている。6つの雌ねじ穴45は、配線ボックス部28の天板取付け部32d,32e,35bに設けられた6つのボルト挿通穴44の位置に対応して配置されている。配線ボックス部28へのテーブル支持部29の取付け時には、ボルト挿通穴44と雌ねじ穴45が位置合わせされ、ボルト46がボルト挿通穴44を介して雌ねじ穴45に取り付けられることで、テーブル支持部29が配線ボックス部28に固定される。
【0031】
図7~10にも示すように、テーブル支持部29の固定天板部42の前寄り部位及び張出し部43の上方に、テーブル部6が配置されている。テーブル部6は、固定天板部42の前寄り部位に連結部47を介して水平回動可能に連結されている。
【0032】
テーブル部6は、例えば繊維板からなる角丸長方形の回動天板部57と、回動天板部57の上面前寄り部位に配置された左右横長の凸条部材58と、回動天板部57の右前角部近傍に配置されたドリンクホルダ59を備えている。回動天板部57の下面の右縁部近傍位置に連結部47が取り付けられており、回動天板部57は左縁部を回動自由端85として水平回動する。つまり、テーブル部6は、着座者から見て、右縁部(左右縁部のうち一方の縁部)寄りの部位に回動軸Cを有し、左縁部(他方の縁部)を回動自由端85とする。
【0033】
回動天板部57には、凸条部材58を取り付けるための3つの貫通孔60と、ドリンクホルダ59を取り付けるための貫通孔61が形成されている。凸条部材58は、その下部から下方へ突出する3つの突起部62が上方側から貫通孔60に挿通されることで、回動天板部57に取り付けられる。また、ドリンクホルダ59は、有底円筒形の円筒部59aの上端部に外向きの鍔部59bを有し、円筒部59aが上方側から貫通孔61に挿通されて鍔部59bの下面が回動天板部57の上面に当接することで、回動天板部57に取り付けられる。図5~9に示すように、円筒部59aは、回動天板部57の下方側でテーブル支持部29の前方に配置されている。テーブル部6は、円筒部59aがテーブル支持部29(固定天板部42及び張出し部43)に接触しないように、回動可能範囲が制限されている。
【0034】
図7に示すように、回動天板部57に板状の携帯情報端末63aやノートパソコンなどの携帯電子機器を載置する際に、当該携帯電子機器の背面を凸条部材58に載置することで、回動天板部57上に当該電子機器を前高後低姿勢に傾斜配置できる。これにより、着座者は、携帯情報端末63aの表示画面を真上から覗き込まなくても表示画面内の表示物を見やすくなり、又はノートパソコンのキーボードを操作しやすくなり、着座者の利便性が向上する。
【0035】
また、図7に示すように、凸条部材58には左右横長の溝状部64が形成されている。板状の携帯情報端末63bの一縁部を溝状部64に差し込むことで、携帯情報端末63bは前高後低の傾斜起立姿勢で自立保持される。これにより、着座者は、背もたれ部2にもたれた状態で携帯情報端末63bの表示画面を視認したり、携帯情報端末63bの表示画面を見ながら回動天板部57で作業したりでき、利便性が向上する。
【0036】
図10に示すように、この実施形態では、連結部47は、いわゆるスイベルトルクヒンジであり、外向きに突出する鍔部を上下両端部に有する略円筒形のスリーブ48に、下側から順にワッシャ49、プレート50、ブラケット51、プレート52、ワッシャ53、ベースプレート54、皿ばね55、ワッシャ56が抜け不能に嵌着されている。ワッシャ49,53、プレート50,52及びベースプレート54はスリーブ48と一体的に回転するように構成され、ブラケット51、皿ばね55及びワッシャ56はスリーブ48に対して回転自在に支持されている。この連結部47は、摩擦力を利用することで、ブラケット51をベースプレート54に対して任意の回転角で停止可能に構成されている。
【0037】
固定天板部42の上面と回動天板部57の下面には、連結部47の取付位置に、取付け凹部42a,42b,57aが形成されている。固定天板部42の取付け凹部42a,42bは、同心で外径が互いに異なる円筒形を有し、上下方向で互いに繋がっている。取付け凹部42aは、取付け凹部42bよりも大径で、かつ固定天板部42の上面に開口している。
【0038】
天板部42,57への連結部47の取付けの際には、まず、連結部47の上部(ワッシャ56側)が回動天板部57の取付け凹部57a内に配置され、ベースプレート54が3本のビス65で回動天板部57の下面に固定される。次に、連結部47の下部(ワッシャ49側)が取付け凹部42a,42b内に配置されるように、回動天板部57が固定天板部42に重ね合せられる。そして、固定天板部42に設けられた3箇所のボルト挿通孔66に3本のボルト67が固定天板部42の裏面(下面)側から挿通され、ボルト67でブラケット51が取付け凹部42aの底面に固定される。その後、連結部47及び回動天板部57が取り付けられた状態の固定天板部42が配線ボックス部28に取り付けられる(図6参照)。これにより、回動天板部57は、椅子において、固定天板部42に連結部47を介して水平回動可能に支持される。
【0039】
肘掛け部5において、連結部47の下方には、配線ボックス部28の補強部材33が配置されている。これにより、固定天板部42や回動天板部57に大きな荷重がかかっても配線ボックス部28が変形等しないように構成されている。また、連結部47のスリーブ48には、下方側からスペーサ管68及びキャップボルト69が挿通されており、スリーブ48内への異物の侵入が防止されている。なお、キャップボルト69は、ワッシャ70を介してスペーサ管68に挿通され、スペーサ管68と共にスリーブ48内に挿通されて、回動天板部57の取付け凹部57aの底部に穿設された取付け穴71に取り付けられる。
【0040】
図1,2,10に示すように、回動天板部57の上面は水平に配置されている。この実施形態では、回動天板部57は水平回動するので、回動天板部57の上面は常に水平に保たれ、回動天板部57への載置物(例えば携帯情報端末や、ノートパソコン、書類、書籍、筆記具、時計など)が落下しにくいように構成されている。
【0041】
図9,10に示すように、張出し部43と回動天板部57の間に前後一対の規制部材82が配置されている。この実施形態では、規制部材82は、張出し部43の上面に形成された規制部材取付け穴83に嵌入される樹脂製のブッシュ82aと、ブッシュ82aの上端に取り付けられる樹脂製のキャップ82bを備えている。規制部材82(キャップ82b)の上端は、回動天板部57の下面に当接又は近接する位置に配置されており、規制部材82は、回動天板部57の下方側への移動を制限する。また、規制部材82は、平面視でテーブル部6の回動軸Cよりも左方位置に配置されている。すなわち、規制部材82は、テーブル部6の回動軸Cに対して、テーブル部6の回動自由端85側に配置されている。なお、この実施形態では、キャップ82bの上面は、丸みを帯びた形状を有し、回動天板部57の下面と点接触することで、回動天板部57の回動時の摺動性が損なわれないようにしている。
【0042】
例えば、回動天板部57の上に重たい荷物が載置されたり、使用者が回動天板部57に手をついて体重をかけたりした場合など、テーブル部6に下方へ向かう荷重が加わったときに、規制部材82は、回動天板部57の下方側への移動を制限すると共に、当該荷重に起因する負荷を張出し部43側へ分散する。これにより、連結部47の周辺にかかる負荷が低減されるので、連結部47周辺の破損を防止でき、安全性及び耐久性が向上する。
【0043】
また、図9,10に示すように、テーブル支持部29の張出し部43には、テーブル部6の回動軸Cを中心とする円弧状溝72と幅広円弧状溝73が形成されている。円弧状溝72は、張出し部43の上面側に形成されている。幅広円弧状溝73は、円弧状溝72に沿って張出し部43の下面側に形成されており、かつ円弧状溝72と上下方向で繋がっている。張出し部43上面に配置される前後一対の規制部材82は、回動軸Cから円弧状溝72の一端(後側の端部)へ向かう直線84aと、円弧状溝72の他端(前側の端部)へ向かう直線84bとの間の領域を挟んで配置されている。
【0044】
円弧状溝72,73には、スペーサ管74及びボルト75が挿通されている。ボルト75は、ワッシャ76を介してスペーサ管74に挿通され、スペーサ管74と共に円弧状溝72,73に挿通されて、回動天板部57の下面に設けられた雌ねじ穴77に固定される。スペーサ管74、ボルト75及びワッシャ76は、回動天板部57の下面に突設された突出部材78を構成する。
【0045】
張出し部43の下面には、幅広円弧状溝73の形成位置を含む領域に略長方形のカバー収容凹部79が形成されている。カバー収容凹部79に、板状のカバー部材80が2本のビス81で取り付けられる。カバー部材80の下面と張出し部43の下面は、ほぼ面一になっており、着座者の負傷や衣服の損傷が防止されている。
【0046】
幅広円弧状溝73の溝幅は、ワッシャ76の外径よりも大きい寸法に設定されており、幅広円弧状溝73内にボルト75の頭部及びワッシャ76が収容される。一方、円弧状溝72の溝幅は、ワッシャ76の外径よりも小さい寸法に設定されている。例えば着座者の膝や太ももが回動天板部57の下面に当たる等して、回動天板部57に上向きの負荷がかかったときに、ワッシャ76が幅広円弧状溝73の上部に接触して抜け防止部として機能することで、回動天板部57の上方側への変位が規制される。これにより、回動天板部57の回動自由端85側が張出し部43に対して大きく持ち上げられる現象が防止され、連結部47と天板部42,57との連結箇所や、連結部47の破損を防止できる。
【0047】
また、円弧状溝72及び突出部材78は、回動天板部57の回動可能範囲を制限する。この実施形態では、図9(A)に二点鎖線の仮想線で示すように、回動天板部57は、着座者側(背もたれ部2側)の縁部が椅子の左右方向とおおむね平行になる後方限界位置6aと、当該縁部が左右方向と約45°の角度をなす前方限界位置6bとの間の範囲内で水平回動可能である。ここで、椅子の左右方向とは、着座者が座部1に普通に着座した状態での着座者の身体の前後方向に直交する方向である。なお、後方限界位置6a及び前方限界位置6bは適宜設定可能である。例えば、前方限界位置6bは、椅子部3に人が出入りすることが可能な範囲で適宜設定可能である。
【0048】
テーブル支持部29の張出し部43の位置は、回動天板部57がいずれの回動位置にあるときでも常に回動天板部57の下方に位置するように設計されている。つまり、張出し部43の上面に設けられた2つの規制部材82は、常に回動天板部57の下方に位置する。これにより、回動天板部57がいずれの回動位置にあるときでも、規制部材82は回動天板部57の下方側への移動を制限する。
【0049】
特に、この実施形態では、2つの規制部材82は、回動軸Cから円弧状溝72の一端及び他端へ向かう直線84a,84bの間の領域を挟んで配置されているので、張出し部43の空きスペースを有効に活用しながら、2つの規制部材82の回動方向での間隔を大きくして、広い範囲で回動天板部57の下方側への移動を制限できる。
【0050】
また、張出し部43が常に回動天板部57の下方に位置することで、例えば着座者の指や衣服などの異物が回動天板部57と張出し部43との間に挟まれにくくなっており、着座者の負傷や衣服の損傷が防止されている。
【0051】
図9(A)に示すように、回動天板部57が後方限界位置6aから前向き回動されると、回動天板部57の右前角部は外向き(右向き)回動する。この実施形態では、前方限界位置6bは、回動天板部57の右前角部が右サイドパネル9に接触しない位置に設定されており、右サイドパネル9の損傷や脱落が防止されている。
【0052】
この実施形態の椅子は、座部1と、座部1よりも上方に配置されたテーブル支持部29と、テーブル支持部29の上方に配置されたテーブル部6と、テーブル支持部29にテーブル部6を回動可能に連結する連結部47を備え、テーブル支持部29は、テーブル部6の回動自由端85側へ張り出した張出し部43を備え、張出し部43とテーブル部6の間に配置されてテーブル部6の下方側への移動を制限する規制部材82が設けられている。したがって、この実施形態の椅子は、テーブル部6に下方へ向かう荷重が加わった時に、テーブル部6の下方側への移動を制限すると共に、規制部材82が負荷を張出し部43側へ分散することで、連結部47の周辺にかかる負荷を低減できる。これにより、この実施形態の椅子は、テーブル部6の下面に椅子設置面に到達する足体を設けなくても、連結部47周辺の破損を防止でき、着座者の良好な使用感を確保しながら、安全性を向上できる。
【0053】
また、この実施形態の椅子では、張出し部43は、テーブル部6の回動軸Cを中心とする円弧状溝72を備え、一端側がテーブル部6の下面に固定されて他端側が円弧状溝72に挿通された突出部材78が設けられている。これにより、テーブル部6の回動可能範囲を所望の範囲に制限できるので、着座者や他部品へのテーブル部6の衝突を防止でき、安全性の確保や椅子の損傷防止を図れる。
【0054】
例えば、この実施形態の椅子では、座部1に対してテーブル支持部29よりも外側に、側板部の一例としての右サイドパネル9が立設されている。そこで、円弧状溝72及び突出部材78はテーブル部6が右サイドパネル9に接触しないようにテーブル部6の回動可能範囲を制限することで、右サイドパネル9及びテーブル部6の破損を防止できる。
【0055】
また、この実施形態の椅子では、突出部材78は、円弧状溝72を貫通し、かつ、円弧状溝72よりも幅広で円弧状溝72の下方位置に配置される抜け防止部の一例としてのワッシャ76を備えている。したがって、テーブル部6の回動自由端85側が大きく持ち上げられる現象が防止され、連結部47とテーブル部6及びテーブル支持部29との連結箇所や、連結部47の破損を防止できる。
【0056】
特に、上記実施形態では、回動天板部57の下方側への移動を規制する規制部材82と、回動天板部57の上方側への移動を規制する円弧状溝72,73及び突出部材78を備えているので、回動天板部57への上下いずれの方向の荷重に対しても連結部47周辺の破損を防止できる。
【0057】
また、図9に示すように、テーブル部6は、着座者から見て、左右縁部のうち一方の縁部(右縁部)寄りの部位に回動軸Cを有し、他方の縁部(左縁部)を回動自由端85とすると共に、手前側の後方限界位置6aと前方側の前方限界位置6bとの間で回動可能に設けられている。ここで、テーブル部6が後方限界位置6aに位置する状態おいて平面視で回動軸Cから回動自由端85側へ向かって延びる直線84aを基準線としたとき、2つの規制部材82は当該基準線を挟んで配置されている。これにより、テーブル部6が後方限界位置6a(使用状態)に位置するときに、上方側からテーブル部6の前後一縁部に荷重がかかっても、テーブル部6の短手(前後)方向の水平を保つことができる。
【0058】
また、この実施形態の椅子では、2つの規制部材82が、回動軸Cを中心として基準線(ここでは直線84a)をテーブル部6とともに回動させたときの直線84aの移動軌跡(直線84aと直線84bの間の範囲)を挟んで配置されている。したがって、張出し部43の空きスペースを有効に活用しながら、2つの規制部材82の回動方向での間隔を大きくして、広い範囲でテーブル部6の下方側への移動を制限でき、テーブル部6の短手(前後)方向の水平をより確実に保つことができる。
【0059】
なお、この実施例では、回動軸Cから回動自由端85側へ向かって延びる基準線は、回動軸Cから後方限界位置6aにおける突出部材78の位置へ向かって延びる直線84aと一致しているが、後方限界位置6aにおける突出部材78は、上記基準線から外れた位置に設けられていてもよい。すなわち、上記基準線は、直線84aと一致していなくてもよい。
【0060】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、本願発明の椅子は、パネル9,10,11を有するセミクローズドタイプのものに限定されない。すなわち、本願発明の椅子は、座部とテーブル部を備える椅子に適用可能である。
【0061】
また、上記実施形態では、2つの規制部材82が設けられているが、本願発明の椅子において、テーブル部と張出し部の間に設けられる規制部材は、1つ又は3つ以上であってもよい。また、規制部材の配置位置は、テーブル部と張出し部の間であれば特に限定されず、例えば、直線84a,84bの間の範囲に規制部材が配置されてもよい。また、規制部材82は張出し部43に固定されているが、テーブル部6に固定されてもよい。また、上記実施形態では、規制部材82は、ブッシュ82aとキャップ82bの2つの部品で形成されているが、1つ又は3つ以上の部品で形成されていてもよい。
【0062】
また、本願発明において、連結部は、スイベルトルクヒンジに限定されず、テーブル支持部にテーブル部を回動可能に連結できる構成であれば、特に限定されない。
【0063】
また、上記実施形態では、テーブル部6の回動可能範囲は、円弧状溝72と突出部材78によって制限されているが、テーブル部6の回動可能範囲を規制する構造は、様々な態様が採用可能である。例えば、テーブル部6の前方限界位置は、右サイドパネル9にテーブル部6を当接させることで設定するなどしてもよい。また、テーブル部6の後方限界位置は、ドリンクホルダ59や、回動天板部57の下面に別途突設させた部材を張出し部43に当接させることで設定するなどしてもよい。
【0064】
円弧状溝72及び突出部材78とは異なる構成でテーブル部の前方限界位置及び後方限界位置を設定する場合であっても、テーブル部が後方限界位置に位置する状態おいて平面視で回動軸から回動自由端側へ向かって延びる基準線を挟んで2つの規制部材を配置することで、テーブル部の前後方向の水平を保つ機能が向上する。より好ましくは、2つの規制部材が、後方限界位置と前方限界位置の間で、回動軸を中心として基準線をテーブル部とともに回動させたときの基準線の移動軌跡を挟んで配置されているようにすれば、当該2つの規制部材の回動方向での間隔を大きくして、広い範囲でテーブル部の下方側への移動を制限でき、テーブル部6の前後方向の水平を保つ機能をより向上させることができる。なお、椅子の前後方向とは、着座者が座部1に普通に着座した状態での着座者の身体の前後方向である。
【0065】
また、上記実施形態では、回動天板部57は、平面視で角部に丸みをもつ略長方形の形状を有しているが、テーブル部(回動天板部)の平面形状は、これに限定されず、例えば、円形や楕円形、台形、略矩形の辺が湾曲している形状など、どのような形状であってもよい。なお、テーブル部の回動軸が、テーブル部の一縁部寄りの部位に設けられるときには、回動自由端は、上記一縁部とは反対側の縁部で構成される。
【符号の説明】
【0066】
1 座部
6 テーブル部
9 右サイドパネル(側板部)
29 テーブル支持部
43 張出し部
47 連結部
72 円弧状溝
76 ワッシャ(抜け防止部)
78 突出部材
82 規制部材
84a,84b 直線
C 回動軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10