(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】電解水生成装置及び水質情報処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20060101AFI20220713BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20220713BHJP
【FI】
C02F1/461 A
C25B9/00 A
(21)【出願番号】P 2018023011
(22)【出願日】2018-02-13
【審査請求日】2020-11-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591201686
【氏名又は名称】株式会社日本トリム
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】小泉 義信
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0096827(KR,A)
【文献】特開2003-103250(JP,A)
【文献】特開2018-051497(JP,A)
【文献】特開2016-165668(JP,A)
【文献】特開2017-021713(JP,A)
【文献】特開2017-159275(JP,A)
【文献】特開2016-190196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46 - 1/48
C25B 1/00 - 9/77
13/00 - 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極及び陰極の給電体が設けられ、水を電気分解して電解水を生成する電解槽を備えた電解水生成装置であって、
GPS衛星から発信された信号を受信する受信手段と、
前記信号から位置情報を取得する位置情報取得手段と、
電気分解される前又は電気分解された後の水の水質を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された前記水質に関する情報を、前記位置情報と関連付けて記憶する記憶手段と
、
前記信号から時刻情報を取得する時刻情報取得手段とを含み、
前記記憶手段は、前記水質に関する情報を前記時刻情報と関連付けて記憶し、
前記電解槽を有する装置本体と、
水を浄化して前記電解槽に供給する浄水カートリッジとを備え、
前記浄水カートリッジは、装置本体に対して着脱可能に構成され、
前記記憶手段は、前記浄水カートリッジに内蔵されている、
電解水生成装置。
【請求項2】
前記記憶手段に記憶された情報を送信する送信手段をさらに含む、請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項3】
前記電解槽を有する装置本体を備え、
前記記憶手段は、前記装置本体に対して脱着自在である、請求項1又は2に記載の電解水生成装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記給電体間に印加される電圧及び前記給電体に供給される電流に基づいて、前記水質に関する情報を計算する、請求項1乃至3のいずれかに記載の電解水生成装置。
【請求項5】
前記水質に関する情報には、前記電解槽から流出する水のpHが含まれる、請求項1乃至4のいずれかに記載の電解水生成装置。
【請求項6】
前記水質に関する情報には、前記電解槽に流入する水の電気伝導度が含まれる、請求項1乃至5のいずれかに記載の電解水生成装置。
【請求項7】
前記水質に関する情報には、前記電解槽から流出する水の酸化還元電位が含まれる、請求項1乃至6のいずれかに記載の電解水生成装置。
【請求項8】
請求項1記載の複数の電解水生成装置と、
各電解水生成装置の前記記憶手段に記憶された前記情報を収集する収集手段と、
前記収集手段によって収集された前記情報を蓄積する蓄積手段と、
前記蓄積手段に蓄積された前記情報を、前記位置情報に基づいて統計的に処理し、前記水質に関する情報を地域毎に集計する集計手段とを備えた、水質情報処理システム。
【請求項9】
請求項1記載の複数の電解水生成装置と、
各電解水生成装置の前記記憶手段に記憶された前記情報を収集する収集手段と、
前記収集手段によって収集された前記情報を蓄積する蓄積手段と、
前記蓄積手段に蓄積された前記情報を、前記位置情報及び前記時刻情報に基づいて統計的に処理し、前記水質に関する情報を地域毎及び季節毎に集計する集計手段とを備えた、水質情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を電気分解して電解水を生成する電解水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電解槽に供給された水を電気分解することによって、水素が溶け込んだ電解水素水を生成する電解水生成装置が広く普及しつつある。(例えば、特許文献1参照)陽極及び陰極の給電体には、電気分解のための直流電圧が印加される。
【0003】
電解水生成装置が電気分解する水は、地域によって水質が異なっている。このため、電解槽に供給される水質に応じて、電解水生成装置の各種制御を最適化することが望ましい。
【0004】
しかしながら、電解水生成装置が設置される全ての地域の水質を隈無く調査するのは、事実上困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、設置される地域の水質を容易に調査できる電解水生成装置等を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、陽極及び陰極の給電体が設けられ、水を電気分解して電解水を生成する電解槽を備えた電解水生成装置であって、GPS衛星から発信された信号を受信する受信手段と、前記信号から位置情報を取得する位置情報取得手段と、電気分解される前又は電気分解された後の水の水質を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された前記水質に関する情報を、前記位置情報と関連付けて記憶する記憶手段とを含む。
【0008】
上記電解水生成装置において、前記信号から時刻情報を取得する時刻情報取得手段をさらに含み、前記記憶手段は、前記水質に関する情報を前記時刻情報と関連付けて記憶する、ことが望ましい。
【0009】
上記電解水生成装置において、前記記憶手段に記憶された情報を送信する送信手段をさらに含む、ことが望ましい。
【0010】
上記電解水生成装置において、前記電解槽を有する装置本体を備え、前記記憶手段は、前記装置本体に対して脱着自在である、ことが望ましい。
【0011】
上記電解水生成装置において、前記検出手段は、前記給電体間に印加される電圧及び前記給電体に供給される電流に基づいて、前記水質に関する情報を計算する、ことが望ましい。
【0012】
上記電解水生成装置において、前記水質に関する情報には、前記電解槽から流出する水のpHが含まれる、ことが望ましい。
【0013】
上記電解水生成装置において、前記水質に関する情報には、前記電解槽に流入する水の電気伝導度が含まれる、ことが望ましい。
【0014】
上記電解水生成装置において、前記水質に関する情報には、前記電解槽から流出する水の酸化還元電位が含まれる、ことが望ましい。
【0015】
本発明の水質情報処理システムは、複数の上記電解水生成装置と、各電解水生成装置の前記記憶手段に記憶された前記情報を収集する収集手段と、前記収集手段によって収集された前記情報を蓄積する蓄積手段と、前記蓄積手段に蓄積された前記情報を、前記位置情報に基づいて統計的に処理し、前記水質に関する情報を地域毎に集計する集計手段とを備える。
【0016】
本発明の水質情報処理システムは、複数の上記電解水生成装置と、各電解水生成装置の前記記憶手段に記憶された前記情報を収集する収集手段と、前記収集手段によって収集された前記情報を蓄積する蓄積手段と、前記蓄積手段に蓄積された前記情報を、前記位置情報及び前記時刻情報に基づいて統計的に処理し、前記水質に関する情報を地域毎及び季節毎に集計する集計手段とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電解水生成装置は、電解槽と、装置本体と、受信手段と、位置情報取得手段と、検出手段と、記憶手段とを含む。受信手段は、GPS衛星から発信された信号を受信する。位置情報取得手段は、受信手段が受信した信号から位置情報を取得する。検出手段は、電解槽に流入する水又は電解槽から流出する水の水質を検出する。記憶手段は、検出手段によって検出された水質に関する情報を、位置情報と関連付けて記憶する。従って、上記電解水生成装置の記憶手段に記憶された情報を収集することにより、電解水生成装置が設置される地域の水質を容易に調査可能となる。
【0018】
本発明の水質情報処理システムは、複数の電解水生成装置と、収集手段と、蓄積手段と、集計手段とを備える。収集手段は、各電解水生成装置の記憶手段に記憶された情報を収集する。蓄積手段は、収集手段によって収集された情報を蓄積する。集計手段は、蓄積手段に蓄積された情報を、位置情報に基づいて統計的に処理し、地域毎の水質に関する情報を集計する。従って、各電解水生成装置の検出手段によって検出された水質に関する情報が、収集・蓄積され、集計手段によって位置情報に基づいて統計的に処理され地域毎に集計される。これにより、各地域における水質の傾向が容易に把握され、電解水生成装置の各種制御等に利用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態の電解水生成装置の外観を示す斜視図。
【
図3】同電解水生成装置の電気的構成を示すブロック図。
【
図4】本実施形態の水質情報処理システムの電気的構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1乃至3は、電解水生成装置を示している。
図1は本実施形態の電解水生成装置1の外観を示し、
図2は電解水生成装置1の流路構成を示し、
図3は電解水生成装置1の電気的構成を示している。
【0021】
図1に示されるように、本実施形態の電解水生成装置1は、水を電気分解する装置本体2と、装置本体2に供給される水を浄化する浄水カートリッジ3とを備えている。
【0022】
装置本体2は、電解槽4と、制御手段(位置情報取得手段、時刻情報取得手段)5と、受信手段6と、検出手段7と、記憶手段8とを含んでいる(
図2及び3参照)。
【0023】
浄水カートリッジ3は、電解水生成装置1に供給された原水を濾過することにより、浄水を生成する。本実施形態の浄水カートリッジ3は、装置本体2に対して着脱可能に構成されている。これにより、使用により又は経時によって寿命を迎えた浄水カートリッジ3は、新品の浄水カートリッジ3に交換されうる。
【0024】
浄水カートリッジ3は、電解槽4の上流に設けられている。従って、浄水カートリッジ3によって浄化された水が、電解槽4に供給される。
【0025】
電解槽4は、水を電気分解して電解水を生成する。電解槽4によって電解室40が区画される。電解室40には、第1給電体41及び第2給電体42が設けられている。本実施形態の電解槽4では、第1給電体41と第2給電体42とが互いに対抗して配置され、第1給電体41と第2給電体42との間には、隔膜43が設けられている。隔膜43は、電解槽4の電解室40を第1給電体41側の第1極室40aと、第2給電体42側の第2極室40bとに区分する。
【0026】
隔膜43は、電気分解で生じたイオンを通過させ、隔膜43を介して第1給電体41と、第2給電体42とが電気的に接続される。第1給電体41と第2給電体42との間に電圧が印加されると、電解室40内で水が電気分解され、電解水が得られる。
【0027】
例えば、
図2に示される状態では、第1給電体41には正の電荷が帯電し、第1極室40aは、陽極室として機能している。一方、第2給電体42には負の電荷が帯電し、第2極室40bは、陰極室として機能している。すなわち、第2極室40bでは発生した水素ガスが溶け込んだ還元性の電解水素水が、第1極室40aでは発生した酸素ガスが溶け込んだ電解酸性水がそれぞれ生成される。
【0028】
第1給電体41及び第2給電体42に印加される電圧の極性は、制御手段5によって制御される。第1給電体41及び第2給電体42の極性が適宜切り替えられることにより、第1給電体41及び第2給電体42が陽極給電体又は陰極給電体として機能する機会が均等化され、第1給電体41及び第2給電体42が洗浄される。これにより、第1給電体41及び第2給電体42等へのスケールの付着が抑制される。
【0029】
以下、本明細書では、特に断りのない限り、第1給電体41が陽極給電体として、第2給電体42が陰極給電体として、それぞれ機能している場合が説明される。
【0030】
第1給電体41及び第2給電体42に印加される電圧は、制御手段5によって制御される。制御手段5は、電解槽4、受信手段6、検出手段7及び記憶手段8等の各部の制御を司る。
【0031】
制御手段5は、例えば、各種の演算処理、情報処理等を実行するCPU(Central Processing Unit)及びCPUが実行する動作プログラムを記憶するメモリを有している。CPUは、予め定められた動作プログラムに基づいて第1給電体41及び第2給電体42に印加される電圧を制御する。
【0032】
第1給電体41と制御手段5との間の電流供給ラインには、電流検出手段44が設けられている。電流検出手段44は、第2給電体42と制御手段5との間の電流供給ラインに設けられていてもよい。電流検出手段44は、第1給電体41及び第2給電体42に供給する電解電流を検出し、その値に相当する信号を制御手段5に出力する。
【0033】
制御手段5は、電流検出手段44から入力される信号に応じて、第1給電体41と第2給電体42との間に印加する電圧をフィードバック制御する。例えば、電解電流が過大である場合、制御手段5は、上記電圧を減少させ、電解電流が過小である場合、制御手段5は、上記電圧を増加させる。これにより、第1給電体41及び第2給電体42に供給する電解電流が適切に制御されうる。
【0034】
電解槽4の下流には、流路切替弁51と、出水管52と出水管53とが設けられている。制御手段5は、第1給電体41及び第2給電体42の極性と流路切替弁51の動作とを同期して制御することにより、ユーザーによって選択された所望の電解水を、常に一方の出水管52から吐水可能となる。
【0035】
受信手段6は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星200から発信された信号を受信する。受信手段6は、アンテナ及びレシーバー等によって構成される。受信手段6によって受信された信号は、制御手段5に入力される。
【0036】
制御手段5は、受信手段6から入力された信号(複数のGPS衛星200から発信された信号)から電解水生成装置1の位置に関する情報(以下、位置情報とする)を取得する位置情報取得手段としての機能を有する。
【0037】
検出手段7は、電解槽4を流れる水の水質を検出する。検出手段7は、電解槽4内又はその上流及び下流に設けられている。電解槽4内に設けられた検出手段7は、電気分解中(第1給電体41及び第2給電体42と検出手段7との位置関係によっては、電気分解される前又は電気分解された後)の水の水質を検出する。電解槽4の上流に設けられた検出手段7は、電解槽4に流入する電気分解される前の水の水質を検出する。電解槽4の下流に設けられた検出手段7は、電解槽4から流出する電気分解された後の水の水質を検出する。
【0038】
記憶手段8は、検出手段7によって検出された水質に関する情報を、位置情報と関連付けて記憶する。従って、電解水生成装置1の記憶手段8に記憶された情報を収集することにより、電解水生成装置1が設置される地域の水質を容易に調査可能となる。
【0039】
制御手段5は、受信手段6から入力された信号から時刻情報を取得する時刻情報取得手段としての機能を有するのが望ましい。時刻情報には、年・月・日・時・分・秒に関する情報が含まれる。この場合、記憶手段8は、検出手段7によって検出された水質に関する情報を、時刻情報と関連付けて記憶する。電解水生成装置1の記憶手段8に記憶された情報を収集することにより、季節毎の水質の変動を容易に調査可能となる。また、記憶手段8が、上記水質に関する情報を、位置情報及び時刻情報と関連付けて記憶することにより、電解水生成装置1が設置される地域における季節毎(より詳細には、月毎)の水質の変動を容易に調査可能となる。
【0040】
図3に示されるように、電解水生成装置1は、記憶手段8に記憶された情報を送信する送信手段9をさらに含むのが望ましい。送信手段9は、制御手段5によって制御され、例えば、有線LAN又は無線LAN、ブルートゥース(登録商標)等の近距離無線通信規格を介して記憶手段8に記憶された水質に関する情報、位置情報及び時刻情報を定期的に送信する。送信手段9から送信された情報を受信することにより、電解水生成装置1が設置される地域の水質をより一層容易に調査可能となる。
【0041】
記憶手段8は、装置本体2に実装される内部メモリの他、例えば、カード型メモリ等の装置本体2に対して脱着自在な外部メモリであってもよい。外部メモリが装置本体2から離脱され、例えば、パーソナルコンピュータ等と接続されることにより、上記水質に関する情報等が抽出可能となる。従って、記憶手段8として外部メモリが適用される場合、電解水生成装置1の構成から送信手段9が省略されていてもよい。
【0042】
上記外部メモリは、浄水カートリッジ3に内蔵されていてもよい。電解水生成装置1の販売元は、浄水カートリッジ3を回収することにより、外部メモリから上記水質に関する情報等が抽出可能となる。
【0043】
上記水質に関する情報としては、例えば、電解槽4に流入する電気分解される前の水の電気伝導度(EC)が挙げられる。上記ECは、制御手段5が第1給電体41と第2給電体42との間に印加する直流電圧及び電流検出手段44から入力される信号に基づいて、計算によって取得できる。すなわち、電流検出手段44及び制御手段5が、EC検出手段として機能する。
【0044】
上記水質に関する情報としては、例えば、電解槽4に流入する電気分解される前の水のpHが挙げられる。上記pHは、電解槽4内又は電解槽4の上流に設けられたpH検出手段10によって検出される。
【0045】
上記水質に関する情報としては、例えば、電解槽4から流出する電気分解された後の水のpHが挙げられる。上記pHは、電解槽4内又は電解槽4の下流に設けられたpH検出手段10によって検出される。本実施形態では、検出手段7の一例として、電解槽4の下流にpH検出手段10が設けられている。pH検出手段10は、定期的に電解槽4から流出する水のpHを検出し、制御手段5に出力する。
【0046】
電解槽4に流入する電気分解される前の水のpHが既知の場合、上記電気分解された後の水のpHは、制御手段5が電流検出手段44及び電解槽4の上流に設けられた流量センサー12から入力される信号に基づいて、計算によって取得することも可能である。この場合、電流検出手段44、流量センサー12及び制御手段5が、pH検出手段として機能する。
【0047】
上記水質に関する情報としては、例えば、電解槽4から流出する電気分解された後の水の酸化還元電位(ORP)が挙げられる。上記ORPは、電解槽4内又は電解槽4の下流に設けられたORP検出手段11によって検出される。本実施形態では、検出手段7の一例として、電解槽4の下流にORP検出手段11が設けられている。ORP検出手段11は、定期的に電解槽4から流出する水のORPを検出し、制御手段5に出力する。
【0048】
上記ORPは、制御手段5が電流検出手段44及び電解槽4の下流に設けられた流量センサー12から入力される信号に基づいて、計算によって取得することも可能である。この場合、電流検出手段44、流量センサー12及び制御手段5が、ORP測定手段として機能する。
【0049】
上記pH、EC及びORPは、電解槽4に供給される電気分解される前の水に含まれるミネラル成分の影響を受け、季節によって変動する。本電解水生成装置1では、検出手段7が上記pH、EC及びORPを検出し、記憶手段8が、上記pH、EC及びORPに関する情報を、位置情報及び時刻情報と関連付けて記憶する。従って、記憶手段8に記憶された情報を収集することにより、電解水生成装置1が設置される地域における季節毎の水質の変動を容易に調査可能となる。
【0050】
図4は、電解水生成装置1を含む水質情報処理システム100の概略構成を示している。水質情報処理システム100は、複数の電解水生成装置1とサーバー装置101とを備える。
【0051】
各電解水生成装置1とサーバー装置101とは、通信可能に接続されている。例えば、各電解水生成装置1の送信手段9は、3G又は4G等の移動通信システムの規格に準拠する無線通信機器によって基地局(図示せず)等を介してサーバー装置101に接続されうる。無線通信機器の具体例としては、タブレット型のコンピューターやスマートフォンと称される多機能形態電話機等が挙げられる。送信手段9と無線通信機器との接続は、例えば、ケーブル又は無線LAN、ブルートゥース等の近距離無線通信規格が適用される。このような移動通信システムの一部を用いることにより、居住者の宅内に新たな通信線等を配設する必要がないため、水質情報処理システム100を安価かつ容易に構築できる。
【0052】
送信手段9は、光ファイバー、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)等による有線通信でインターネットを介してサーバー装置101と接続されていてもよい。この場合、送信手段9とインターネットとの間には、モデム及び無線又は有線のルーター等が介在していてもよい。
【0053】
サーバー装置101は、例えば、電解水生成装置1の販売元等によって管理されている。サーバー装置101は、収集手段102と、蓄積手段103と、集計手段104とを備えている。サーバー装置101の構成は、複数のコンピューター装置に分散されていてもよい。
【0054】
収集手段102は、各電解水生成装置1の記憶手段8に記憶された水質に関する情報を収集する。収集手段102には、例えば、送信手段9から送信された情報に相当する信号を受信する受信手段105が含まれる。
【0055】
蓄積手段103は、収集手段102によって収集された上記情報を蓄積する。蓄積手段103には、各電解水生成装置1から送信された上記水質に関する情報が、位置情報と関連付けて蓄積される。このため、蓄積手段103には、いわゆるビッグデータが蓄積される。このようなビッグデータを蓄積するため、蓄積手段103には、例えば、複数のハードディスク駆動装置等が適用される。
【0056】
集計手段104は、蓄積手段103に蓄積された上記水質に関する情報を、位置情報に基づいて統計的に処理する。集計手段104は、例えば、各種の演算処理、情報処理等を実行するCPU及びCPUが実行する動作プログラム等を記憶するメモリを有している。CPUは、予め定められた動作プログラムに基づいて、上記水質に関する情報を統計的に処理し、地域毎に集計する。CPUによる処理は定期的に実行され、その集計結果は、例えば、蓄積手段103に保存される。従って、電解水生成装置1の販売元等は、蓄積手段103等に蓄積された集計結果を参照することにより、各地域における水質の傾向が容易に把握できる。
【0057】
このように、本水質情報処理システム100では、各電解水生成装置1の検出手段7によって検出された水質に関する情報が、サーバー装置101によって、収集・蓄積され、さらには位置情報に基づいて統計的に処理されて、上記水質に関する情報が地域毎に集計される。これにより、各地域における水質の傾向が容易に把握され、電解水生成装置1の各種制御等に利用可能となる。例えば、電解水生成装置1の販売元等は、電解水生成装置1の仕向地の水質に応じて、電解水生成装置1の各種制御を最適化することが可能となる。
【0058】
より具体的には、上記pH、EC及びORPが平均値よりも高い地域では、スケール付着の進行が早い傾向にあると考えられる。このため、そのような地域に設置される電解水生成装置1では、予め、第1給電体41及び第2給電体42の極性の切り替え頻度を増やすように設定されることにより、スケールの付着を抑制できる。また、第1給電体41及び第2給電体42の極性を手動で切り替えて、給電体等の洗浄を推奨する表示又は音声を出力するように構成されていてもよい。
【0059】
蓄積手段103に蓄積される上記水質に関する情報は、位置情報及び時刻情報と関連付けられているのが望ましい。この場合、集計手段104によって、上記水質に関する情報が地域毎及び季節毎に集計される。これにより、各地域における季節毎の水質の変動傾向が容易に把握され、電解水生成装置1の各種制御等に利用可能となる。
【0060】
より具体的には、上記pH、EC及びORPが平均値よりも低い地域及び時期では、水中のミネラル成分の濃度が低い傾向にあると考えられる。このため、そのような地域に設置される電解水生成装置1では、第1給電体41と第2給電体42との間に印加する直流電圧を高めることにより、生成された電解水素水の溶存水素濃度の低下を容易に抑制することが可能となる。
【0061】
以上、本発明の電解水生成装置1及び水質情報処理システム100が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。すなわち、電解水生成装置1は、少なくとも、陽極及び陰極の給電体41、42が設けられ、水を電気分解して電解水を生成する電解槽4を備え、GPS衛星200から発信された信号を受信する受信手段6と、前記信号から位置情報を取得する位置情報取得手段(制御手段5)と、電解槽4を流れる水の水質を検出する検出手段7と、検出手段7によって検出された水質に関する情報を、位置情報と関連付けて記憶する記憶手段8とを含んでいればよい。
【0062】
また、水質情報処理システム100は、少なくとも、複数の電解水生成装置1と、各電解水生成装置1の記憶手段8に記憶された情報を収集する収集手段102と、収集手段102によって収集された情報を蓄積する蓄積手段103と、蓄積手段103に蓄積された情報を、位置情報に基づいて統計的に処理し、水質に関する情報を地域毎に集計する集計手段104とを備えていればよい。
【符号の説明】
【0063】
1 :電解水生成装置
2 :装置本体
4 :電解槽
5 :制御手段(位置情報取得手段)
6 :受信手段
7 :検出手段
8 :記憶手段
9 :送信手段
10 :pH検出手段
11 :ORP検出手段
100 :水質情報処理システム
102 :収集手段
103 :蓄積手段
104 :集計手段
105 :受信手段