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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】ソレノイド、電磁弁、及び緩衝器
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/16 20060101AFI20220713BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20220713BHJP
   F16F 9/46 20060101ALI20220713BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20220713BHJP
   H01F 7/121 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
H01F7/16 D
F16F9/34
F16F9/46
F16K31/06 330
H01F7/121
H01F7/16 R
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018045349
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2019160994
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593056543
【氏名又は名称】株式会社タカコ
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 亮介
(72)【発明者】
【氏名】段下 直明
(72)【発明者】
【氏名】土井 康平
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】実開平2-145373(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/16
F16F 9/34
F16F 9/46
F16K 31/06
H01F 7/121
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのコイルと、
前記コイルへの通電により離間する方向へ吸引される第一可動鉄心及び第二可動鉄心と、
前記第一可動鉄心を第二可動鉄心側へ附勢する附勢部材と、
前記第一可動鉄心と前記第二可動鉄心の接近を制限する第一の規制部材とを備える
ことを特徴とするソレノイド。
【請求項2】
所定の間隔をあけて配置される第一固定鉄心と第二固定鉄心を備え、
前記第一可動鉄心と前記第二可動鉄心は、前記第一固定鉄心と前記第二固定鉄心の間に前記第一固定鉄心と前記第二固定鉄心に対して遠近可能に設けられており、
前記第一可動鉄心は、前記第二可動鉄心の第一固定鉄心側に配置されて、前記コイルへの通電により前記第一固定鉄心に吸引されるとともに、
前記第二可動鉄心は、前記第一可動鉄心の第二固定鉄心側に配置されて、前記コイルへの通電により前記第二固定鉄心に吸引される
ことを特徴とする請求項1に記載のソレノイド。
【請求項3】
前記第一可動鉄心は、前記コイルへの通電により前記第一固定鉄心に吸着されるように設定されており、
前記第一可動鉄心を前記第一固定鉄心に吸着させるのに最低限必要な電流量は、前記第一可動鉄心の前記第一固定鉄心への吸着を維持するのに最低限必要な電流量よりも大きい
ことを特徴とする請求項2に記載のソレノイド。
【請求項4】
前記第一可動鉄心と前記第二可動鉄心は、ともに有底筒状で、それぞれの底部を第二固定鉄心側へ向けており、
前記第一可動鉄心は、前記第二可動鉄心の内側に移動自在に挿入されており、
前記附勢部材は、コイルばねであり、前記第一可動鉄心の内側に挿入されて前記第一可動鉄心の底部と前記第一固定鉄心との間に介装されている
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のソレノイド。
【請求項5】
前記第二可動鉄心と前記第二固定鉄心の接近を制限する第二の規制部材を備える
ことを特徴とする請求項2から4の何れか一項に記載のソレノイド。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載のソレノイドを備えて圧力制御通路の途中に設けられた電磁弁であって、
前記圧力制御通路を開閉する弁体と、
前記弁体の開弁圧を調節する前記ソレノイドとを備え、
前記コイルへの通電により前記第二可動鉄心を吸引する力により前記弁体が閉じる方向へ附勢され、
前記コイルへ通電しないと前記附勢部材により前記弁体が閉じる方向へ付勢される
ことを特徴とする電磁弁。
【請求項7】
請求項6に記載の電磁弁を備える緩衝器であって、
シリンダと、
前記シリンダ内に摺動自在に挿入されて前記シリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、
前記伸側室と前記圧側室とを連通する主通路と、
内周側を前記主通路が通る環状の弁座部材と、
前記弁座部材に離着座して前記主通路を通過する液体の流れに抵抗を与える主弁体と、
途中に絞りが設けられて前記主弁体の背面に前記伸側室の圧力を減圧して導く伸側圧力導入通路と、
前記主弁体の背面に前記圧側室の圧力を減圧して導く圧側圧力導入通路と、
前記伸側圧力導入通路の前記絞りよりも下流に接続される前記圧力制御通路と、
前記圧力制御通路の途中に設けられる前記電磁弁とを備え、
前記主弁体は、前記弁座部材に離着座する環状の第一弁体部材と、前記第一弁体部材の反弁座部材側に積層されて前記第一弁体部材に離着座する第二弁体部材とを有し、
前記第一弁体部材と前記第二弁体部材は、前記伸側室の圧力により前記弁座部材から離れる方向へ附勢され、
前記第二弁体部材は、前記第一弁体部材の内周側の圧力により前記第一弁体部材から離れる方向へ附勢され、
前記コイルへの通電により前記第二可動鉄心を吸引する力により、前記第一弁体部材と前記第二弁体部材が弁座部材側へ附勢される
ことを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイドと、ソレノイドを備えた電磁弁と、ソレノイドを含む電磁弁を備えた緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
ソレノイドは、例えば、電磁弁等に利用されており、電磁弁の中には、車両の車体と車輪との間に介装される緩衝器の減衰力を可変にするのに利用されるものがある。
【0003】
このような緩衝器は、例えば、特許文献1に示すように、伸縮時に生じる液体の流れに抵抗を与える主弁体と、途中に絞りが設けられて主弁体より上流側の圧力を主弁体の背面に減圧して導く圧力導入通路と、この圧力導入通路の絞りより下流に接続される圧力制御通路とを備える。
【0004】
そして、上記緩衝器では、上記圧力制御通路の途中に電磁弁を設けており、その電磁弁は、圧力制御通路の途中に設けられる弁座に離着座する弁体と、この弁体を弁座から離れる方向へ附勢する附勢ばねと、この附勢ばねの附勢力とは反対方向の推力を弁体に与えるソレノイドとを備える。
【0005】
具体的に、上記ソレノイドは、コイルと、所定の間隔をあけて配置されるとともにコイルへの通電時に磁化される第一固定鉄心及び第二固定鉄心と、第一固定鉄心と第二固定鉄心との間に移動可能に配置される環状の可動鉄心と、この可動鉄心の内周に固定されて先端が弁体に当接するシャフトとを有する。そして、上記ソレノイドでは、コイルが励磁されると磁路が第一固定鉄心、可動鉄心、及び第二固定鉄心を通過するように形成されて、可動鉄心が第二固定鉄心側へ吸引されて弁体をシャフトで弁座側へ押すようになっている。
【0006】
このような弁体を閉じる方向へ附勢するソレノイドの推力は、ソレノイドへ供給する電流量に比例し、供給電流量を大きくすればするほど大きくなり、これにより弁体の開弁圧が高くなる。主弁体の背圧は、その弁体の開弁圧に制御され、背圧が大きくなるほど主弁体による抵抗が大きくなる。
【0007】
このため、ソレノイドへ供給する電流量を増やして弁体の開弁圧を高くすると、主弁体による抵抗が大きくなって緩衝器の発生する減衰力を大きくし、減衰力特性をハードにできる。反対に、ソレノイドへ供給する電流量を少なくして弁体の開弁圧を低くすると、主弁体による抵抗が小さくなって緩衝器の発生する減衰力を小さくし、減衰力特性をソフトにできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-173716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のような緩衝器を車両に利用した場合であって、車両が良路を走行する通常走行時の乗り心地を良好にする上では減衰力特性をソフトにするのが好ましい。そして、従来のソレノイドを備えた電磁弁を緩衝器に利用した場合、ソレノイドへの供給電流量を小さくしたときに減衰力特性をソフトにでき、通常走行時の消費電力を抑えて節電できる。
【0010】
また、上記電磁弁の弁体において、開弁圧制御する部分を圧力制御弁部とすると、弁体には、圧力制御弁部より下流を開閉する開閉弁部が設けられており、ソレノイドへの通電が断たれて圧力制御弁部が最大限に開くと開閉弁部が圧力制御通路を閉じる。圧力制御通路における圧力制御弁部の開閉部と開閉弁部の開閉部の間には、フェール通路が接続されていて、このフェール通路にはパッシブ弁が設けられている。
【0011】
このため、ソレノイドへの通電を断つフェール時には、開閉弁部が圧力制御通路を閉じて液体がパッシブ弁を通るようになる。よって、フェール時には主弁体の背圧がパッシブ弁の開弁圧により決まる。つまり、電磁弁への電力供給が断たれても、緩衝器の伸縮時に生じる液体の流れに主弁体で所定の抵抗を与え、緩衝器が所定の減衰力を発揮できるのでフェールセーフとなる。
【0012】
しかし、上記構成では、圧力制御時の通路とは別にフェール時の通路を設ける必要があるので、緩衝器の構造が複雑化してコストがかかる。そうかといって、電磁弁の弁体を附勢ばねで閉じる方向へ附勢し、ソレノイドで弁体へ開く方向の推力を与えるようにしたのでは、圧力制御時とフェール時の通路を共通化できるものの、通常走行時の消費電力が大きくなってしまう。なぜなら、上記構成において通常走行時の減衰力特性をソフトにするには、ソレノイドへの供給電流量を大きくする必要があるためである。
【0013】
つまり、圧力制御に利用される電磁弁等では、ソレノイドへ供給する電流量が小さい場合に弁体等の対象物に与える推力を小さくするとともに、ソレノイドの非通電時にも、上記推力と同方向へ対象物を附勢したい場合がある。
【0014】
そこで、本発明は、このような課題を解決するために創案されたものであり、ソレノイドへの供給電流量が小さい場合には、対象物を一方へ附勢するソレノイドの推力を小さくするとともに、ソレノイドの非通電時にもその推力と同方向へ対象物を附勢できるソレノイド、電磁弁、及び緩衝器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するソレノイドは、1つのコイルへの通電により離間する方向へ吸引される第一可動鉄心及び第二可動鉄心と、第一可動鉄心を第二可動鉄心側へ附勢する附勢部材と、第一可動鉄心と第二可動鉄心の接近を制限する第一の規制部材とを備える。
【0016】
上記構成によれば、ソレノイドへの通電時に第一可動鉄心を吸引する力により附勢部材の附勢力をキャンセルできるとともに、第二可動鉄心を吸引する力により対象物を一方へ附勢できる。そして、その第二可動鉄心を吸引する力は、ソレノイドへの供給電流量が小さいほど小さくなるので、ソレノイドへ供給する電流量が小さい場合に対象物に与える推力を小さくできる。
【0017】
さらに、上記構成によれば、ソレノイドの非通電時に第一可動鉄心の吸引が解かれて、附勢部材の附勢力が第一可動鉄心、第一の規制部材、及び第二可動鉄心を介して対象物へと伝わる。対象物に対して附勢部材の附勢力が作用する方向は、第二可動鉄心を吸引する力の方向と同じ方向であるので、ソレノイドの非通電時にも通電時の推力と同方向へ対象物を附勢できる。
【0018】
また、上記ソレノイドでは、第一可動鉄心と第二可動鉄心が所定の間隔をあけて配置される第一固定鉄心と第二固定鉄心との間にこれらに対してそれぞれ遠近可能に設けられており、第一可動鉄心が第二可動鉄心の第一固定鉄心側に配置されてコイルへの通電により第一固定鉄心に吸引されるとともに、第二可動鉄心が第一可動鉄心の第二固定鉄心側に配置されてコイルへの通電により第二固定鉄心に吸引されるとよい。当該構成によれば、コイルへの通電により第一可動鉄心と第二可動鉄心を離間する方向へ吸引するのが容易である。
【0019】
また、上記ソレノイドでは、第一可動鉄心がコイルへの通電により第一固定鉄心に吸着されるように設定されており、第一可動鉄心を第一固定鉄心に吸着させるのに最低限必要な電流量が第一可動鉄心の第一固定鉄心への吸着を維持するのに最低限必要な電流量よりも大きく設定されているとよい。当該構成によれば、ソレノイドへ供給する電流量に対する推力の特性がヒステリシスをもった特性となる。
【0020】
また、上記ソレノイドでは、第一可動鉄心と第二可動鉄心がともに有底筒状でそれぞれの底部を第二固定鉄心側へ向けており、第一可動鉄心が第二可動鉄心の内側に移動自在に挿入されるとともに、附勢部材がコイルばねであって第一可動鉄心の内側に挿入されて第一可動鉄心の底部と第一固定鉄心との間に介装されているとよい。
【0021】
上記構成によれば、コイルが励磁されたときに磁路が第一固定鉄心、第一可動鉄心、第二可動鉄心、及び第二固定鉄心を通過するようにして、第一可動鉄心を第一固定鉄心へ吸引させるとともに、第二可動鉄心を第二固定鉄心へ吸引させるのが容易である。
【0022】
また、上記ソレノイドが第二可動鉄心と第二固定鉄心の接近を制限する第二の規制部材を備えるとよい。当該構成によれば、第二可動鉄心が第二固定鉄心に吸着されて、第二可動鉄心の円滑な移動が妨げられるのを防止できる。
【0023】
また、上記ソレノイドが圧力制御通路の途中に設けられた電磁弁に利用されていて、その電磁弁が圧力制御通路を開閉する弁体を備え、その弁体の開弁圧をソレノイドで調節するようになっており、1つのコイルへの通電により第二可動鉄心を吸引する力により弁体が閉じる方向へ附勢され、コイルへ通電しないと前記附勢部材により前記弁体が閉じる方向へ付勢されるとよい。当該構成によれば、電磁弁が圧力制御弁として機能できる。
【0024】
このような電磁弁では、前述のように、ソレノイドへ供給する電流量が小さい場合に対象物に与える推力を小さくするとともに、ソレノイドの非通電時にも上記推力と同方向へ対象物を附勢したい場合がある。このため、上記電磁弁に本発明に係るソレノイドを適用するのが特に有効である。
【0025】
また、上記電磁弁が緩衝器に利用されていて、その緩衝器が伸側室と圧側室とを連通する主通路と、内周側を主通路が通る環状の弁座部材と、弁座部材に離着座して主通路を通過する液体の流れに抵抗を与える主弁体と、途中に絞りが設けられて主弁体の背面に伸側室の圧力を減圧して導く伸側圧力導入通路と、主弁体の背面に圧側室の圧力を減圧して導く圧側圧力導入通路と、伸側圧力導入通路の絞りよりも下流に接続される圧力制御通路とを備えて、この圧力導入通路の途中に電磁弁が設けられていることがある。
【0026】
このような場合には、主弁体が弁座部材に離着座する環状の第一弁体部材と、第一弁体部材の反弁座部材側に積層されて第一弁体部材に離着座する第二弁体部材とを有し、第一弁体部材と第二弁体部材が伸側室の圧力により弁座部材から離れる方向へ附勢され、第二弁体部材が第一弁体部材の内周側の圧力により第一弁体部材から離れる方向へ附勢され、コイルへの通電により第二可動鉄心を吸引する力により第一弁体部材と第二弁体部材が弁座部材側へ附勢されるとよい。
【0027】
上記構成によれば、正常時に第一可動鉄心の吸引により附勢部材の附勢力をキャンセルするようにした場合、ソレノイドへ供給する電流量を増やすほど弁体及び主弁体に付与される閉じ方向の推力が大きくなって、減衰力特性がハードになる。換言すると、減衰力特性をソフトにする場合、ソレノイドへ供給する電流量が少なくて済むので、緩衝器を車両に搭載した場合には、通常走行時の消費電力を少なくできる。また、これによりソレノイドの発熱を抑制して緩衝器の液温変化を小さくできるので、液温変化に起因する減衰力特性の変化を小さくできる。
【0028】
さらに、上記構成によれば、フェール時に第一可動鉄心の吸引が解かれると附勢部材で弁体、第一弁体部材及び第二弁体部材を閉じ方向へ附勢できる。このため、フェール時における弁体の開弁圧をコイルばねの設定により決められるとともに、主通路を通過する液体の流れに対して第一弁体部材又は第二弁体部材により所定の抵抗を付与できる。
【0029】
そして、前述のように正常時には附勢部材の附勢力をキャンセルするようになっていて、フェール時に緩衝器がフルソフト時よりも大きな減衰力を発揮でき、フェール時に減衰力が不足するのを防止できる。加えて、上記構成によれば、フェール時にも液体が圧力制御通路を通過でき、圧力制御用の通路とは別にフェール時に液体を流すための通路を設ける必要がない。このため、緩衝器の構成を簡易にしてコストを低減できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明のソレノイド、電磁弁、及び緩衝器によれば、ソレノイドへの供給電流量が小さい場合には、対象物を一方へ附勢するソレノイドの推力を小さくするとともに、ソレノイドの非通電時にもその推力と同方向へ対象物を附勢できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施の形態に係るソレノイドを含む電磁弁を備えた緩衝器の縦断面図である。
図2図1の緩衝器のピストン部分を拡大して示した縦断面図である。
図3図2の一部をさらに拡大して示した縦断面図である。
図4】本発明の一実施の形態に係るソレノイドにおける供給電流量と、弁体を押し下げる方向へ作用する力との関係を示した特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品を示す。
【0033】
図2に示すように、本発明の一実施の形態に係るソレノイドSは、電磁弁4に利用されており、その電磁弁4は、緩衝器Dの減衰弁Vを構成する部材である。また、その緩衝器Dは、本実施の形態では車両のサスペンションに利用されている。
【0034】
図1に示すように、緩衝器Dは、シリンダ1と、このシリンダ1内に摺動自在に挿入されるピストン10と、一端がピストン10に連結されて他端がシリンダ1外へ突出するピストンロッド11とを備える。
【0035】
そして、車両における車体と車軸の一方にシリンダ1が連結され、他方にピストンロッド11が連結される。このようにして緩衝器Dは車体と車軸との間に介装される。また、車両が凹凸のある路面を走行する等して車輪が上下に振動すると、ピストンロッド11がシリンダ1に出入りして緩衝器Dが伸縮し、ピストン10がシリンダ1内を図1中上下(軸方向)に移動する。
【0036】
シリンダ1の軸方向の一端部には、ピストンロッド11の挿通を許容する環状のヘッド部材12が装着されている。このヘッド部材12は、ピストンロッド11を摺動自在に支持するとともにシリンダ1の一端を塞ぐ。その一方、シリンダ1の他端はボトムキャップ13で塞がれている。このようにしてシリンダ1内は密閉されており、そのシリンダ1内に液体と気体が封入されている。
【0037】
より詳しくは、シリンダ1内には、ピストン10から見てピストンロッド11とは反対側にフリーピストン14が摺動自在に挿入されている。そして、そのフリーピストン14のピストン10側に、作動油等の液体が充填された液室Lが形成される。その一方、フリーピストン14から見てピストン10とは反対側に、圧縮気体が封入されたガス室Gが形成される。
【0038】
このように、緩衝器Dでは、シリンダ1内の液室Lとガス室Gとがフリーピストン14で仕切られている。さらに、液室Lは、ピストン10でピストンロッド11側の伸側室L1とその反対側(反ピストンロッド側)の圧側室L2とに区画されている。また、ピストン10には減衰弁Vが取り付けられている。そして、その減衰弁Vは、伸側室L1と圧側室L2との間を行き交う液体の流れに抵抗を与える。
【0039】
上記構成によれば、緩衝器Dの伸長時に、ピストン10がシリンダ1内を図1中上側へ移動して伸側室L1を圧縮すると、伸側室L1の液体が減衰弁Vを通って圧側室L2へ移動するとともに、当該液体の流れに減衰弁Vによって抵抗が付与される。このため、緩衝器Dの伸長時には伸側室L1の圧力が上昇し、緩衝器Dがその伸長作動を妨げる伸側の減衰力を発揮する。
【0040】
反対に、緩衝器Dの収縮時に、ピストン10がシリンダ1内を図1中下側へ移動して圧側室L2を圧縮すると、圧側室L2の液体が減衰弁Vを通って伸側室L1へ移動するとともに、当該液体の流れに減衰弁Vによって抵抗が付与される。このため、緩衝器Dの収縮時には圧側室L2の圧力が上昇し、緩衝器Dがその収縮作動を妨げる圧側の減衰力を発揮する。
【0041】
さらに、緩衝器Dが伸縮する際、フリーピストン14が動いてガス室Gを拡大したり縮小したりして、シリンダ1に出入りするピストンロッド11の体積分を補償する。
【0042】
しかし、緩衝器Dの構成は、図示する限りではなく、適宜変更できる。例えば、ガス室Gに替えて液体と気体を収容するリザーバを設け、緩衝器の伸縮時にシリンダとリザーバとの間で液体をやり取りするようにしてもよい。さらに、緩衝器Dを両ロッド型にして、ピストンの両側にピストンロッドを設けてもよく、その場合には、ピストンロッド体積を補償するための構成を省略できる。
【0043】
つづいて、図2に示すように、減衰弁Vは、伸側室L1と圧側室L2とを連通する主通路P1と、内周側を主通路P1が通る環状の弁座部材2と、この弁座部材2に離着座して主通路P1を開閉する主弁体3と、途中に絞りO1が形成されて主弁体3の背面に主弁体3より伸側室L1側の圧力を減圧して導く伸側圧力導入通路P2と、途中に絞りO2が形成されて主弁体3の背面に主弁体3より圧側室L2側の圧力を減圧して導く圧側圧力導入通路P3と、伸側圧力導入通路P2の絞りO1より下流に接続されて途中に電磁弁4が設けられる圧力制御通路P4と、主通路P1における主弁体3よりも圧側室L2側に設けられる伸側バルブ5及び圧側バルブ6とを備える。
【0044】
また、ピストン10とピストンロッド11は、これらをつなぐ筒状のガイド7とともに減衰弁VのハウジングHを構成する。より詳しくは、ピストン10は、有底筒状であり、筒部10aをピストンロッド11側へ向けている。また、ピストンロッド11の先端には、有天筒状のケース部11aが設けられており、このケース部11aは、筒部11bをピストン10側へ向けている。このように、ピストン10とケース部11aは、互いの筒部10a,11bが向かい合うように配置されている。
【0045】
そして、ケース部11aにおける筒部11bの先端部内周にガイド7の軸方向の一端部が螺合され、ピストン10における筒部10aの先端部内周にガイド7の軸方向の他端部が螺合されている。このようにしてケース部11a、ガイド7、及びピストン10が一体化されて減衰弁VのハウジングHとして機能し、そのハウジングHの内側に弁座部材2、主弁体3、電磁弁4、及び圧側バルブ6が収容される。また、ハウジングHの外側に、伸側バルブ5が装着される。
【0046】
以下、減衰弁Vにおいて、そのハウジングHに収容又は装着される各部材について、詳細に説明する。以下の説明では、説明の便宜上、特別な説明がない限り、図2,3中上下を単に「上」「下」という。
【0047】
ピストン10の筒部10aの内周には、突起10bが設けられている。弁座部材2は、その外周部突起10bとガイド7との間に挟まれて固定されている。前述のように、弁座部材2は環状であり、その上端内周部に環状の第一弁座2aが形成されている。そして、その第一弁座2aに主弁体3が離着座する。この主弁体3は、上下に分割されており、下側(弁座部材2側)の第一弁体部材30と、この第一弁体部材30に積層される上側の第二弁体部材31とを有して構成されている。
【0048】
第一弁体部材30は、環状であり、その上端に第二弁体部材31が離着座する環状の第二弁座30aが形成されている。さらに、第一弁体部材30の外周と内周には、それぞれテーパ面30b,30cが形成されている。テーパ面30b,30cの形状は、それぞれ下端へ向かうに従って径が徐々に小さくなるように円錐台形状となっている。そして、第一弁体部材30は、外周にテーパ面30bが形成された部分を弁座部材2の内側へ挿入し、テーパ面30bを第一弁座2aに離着座させる。
【0049】
その一方、第二弁体部材31は、頭部31aと、この頭部31aの下側に連なり外径が頭部31aの外径よりも大きい胴部31bと、この胴部31bの下側に連なり外径が胴部31bの外径よりも小さい環状の脚部31cとを有する。そして、第二弁体部材31は、ガイド7の内側に摺動自在に挿入されていて、脚部31cを第一弁体部材30の第二弁座30aに離着座させるようになっている。
【0050】
より詳しくは、ガイド7の内径は、上端部分がその下側よりも一段小さくなっている。ガイド7において、上端部の内径の小さい部分を小内径部7a、その下側の内径の大きい部分を大内径部7bとする。すると、小内径部7aの内周に第二弁体部材31の頭部31aが摺接し、大内径部7bの内周に第二弁体部材31の胴部31bが摺接する。
【0051】
つづいて、図3に示すように、第二弁体部材31の脚部31c及び第一弁体部材30の外周であって、脚部31cから径方向外側へ張り出す胴部31bの下側には環状隙間Kが形成されている。この環状隙間Kは、ガイド7に形成された連通孔7cにより伸側室L1と連通されており、環状隙間K内の圧力が伸側室L1の圧力と略等しくなる。そして、その伸側室L1の圧力は、主弁体3における外周側のテーパ面30b、脚部31cから張り出した胴部31bの下側面等に作用し、第一弁体部材30と第二弁体部材31が伸側室L1の圧力により上向きに附勢される。
【0052】
より詳しくは、第一弁体部材30のテーパ面30bにおける第一弁座2aへの接触部の外径を直径a、第二弁体部材31の胴部31bにおける大内径部7bへの摺接部の外径を直径bとする。すると、直径bは直径aより大きく(b>a)、伸側室L1の圧力を受ける主弁体3の受圧面積は、直径bの円の面積から直径aの円の面積を除いた面積となる。そして、主弁体3は、伸側室L1の圧力にその受圧面積を乗じた力により、第一弁体部材30を第一弁座2aから離座させる方向(開く方向)へ附勢される。
【0053】
このため、緩衝器Dの伸長時に伸側室L1の圧力が上昇し、その圧力によって第一弁体部材30と第二弁体部材31が押し上げられて第一弁体部材30が開くと、伸側室L1の液体が第一弁体部材30と第一弁座2aとの間を通ってピストン10の底部10c(図2)側へと向かう。そして、第一弁体部材30は、当該液体の流れに抵抗を与えるようになっている。
【0054】
図2に示すように、ピストン10の底部10cには、当該底部10cを上下に貫通する伸側通路10dと圧側通路10eが形成されている。つまり、第二弁体部材31の胴部31bとピストン10の底部10cとの間であって、周囲を脚部31c、第一弁体部材30、弁座部材2、及びピストン10の筒部10aで囲われる区域を中央室L3とすると、伸側通路10dと圧側通路10eはその中央室L3と圧側室L2とを連通できるようになっている。
【0055】
伸側通路10dの入口は常に中央室L3と連通され、伸側通路10dの出口は底部10cの下側に積層された伸側バルブ5で開閉される。この伸側バルブ5は、緩衝器Dの伸長時に開弁して伸側通路10dを中央室L3から圧側室L2へ向かう液体の流れに抵抗を与えるとともに、収縮時には閉じてその逆方向の流れを阻止する。
【0056】
その一方、圧側通路10eの入口は常に圧側室L2と連通され、圧側通路10eの出口は底部10cの上側に積層された圧側バルブ6で開閉される。この圧側バルブ6は、緩衝器Dの収縮時に開弁して圧側通路10eを圧側室L2から中央室L3へ向かう液体の流れに抵抗を与えるとともに、伸長時には閉じてその逆方向の流れを阻止する。そして、緩衝器Dの収縮時に圧側室L2から中央室L3へ流入した液体は、主弁体3側へと向かう。
【0057】
中央室L3の圧力は、第二弁体部材31における脚部31cの下側面等に作用し、第二弁体部材31が中央室L3の圧力により上向きに附勢される。さらに、中央室L3の圧力は、第一弁体部材30の内周側のテーパ面30c等に作用し、第一弁体部材30が中央室L3の圧力により下向きに附勢される。このように、第一弁体部材30と第二弁体部材31は、中央室L3の圧力によって逆向きに附勢される。
【0058】
より詳しくは、図3に示すように、第二弁体部材31の頭部31aの上側と中央室L3は、後述する縦孔31fにより連通されていて、これらの圧力が等しくなる。そして、第二弁体部材31の頭部31aにおける小内径部7aへの摺接部の外径を直径c、第二弁体部材31の脚部31cにおける第二弁座30aへの接触部の内径を直径dとする。すると、直径dは直径cより大きく(d>c)、中央室L3の圧力を受ける第二弁体部材31の受圧面積は、直径dの円の面積から直径cの円の面積を除いた面積となる。そして、第二弁体部材31は、中央室L3の圧力にその受圧面積を乗じた力により、第二弁座30aから離座する方向(開く方向)へ附勢される。
【0059】
また、第一弁体部材30の外周側のテーパ面30bにおける第一弁座2aへの接触部の内径を直径eとすると、前述の直径dは直径eより大きく(d>e)、中央室L3の圧力を受ける第一弁体部材30の受圧面積は、直径dの円の面積から直径eの円の面積を除いた面積となる。そして、第一弁体部材30は、中央室L3の圧力にその受圧面積を乗じた力により、第一弁座2aへ着座する方向(閉じる方向)へ附勢される。
【0060】
このため、緩衝器Dの収縮時に圧側バルブ6(図2)が開いて液体が圧側室L2から中央室L3へ流入してその圧力が上昇し、この圧力によって第二弁体部材31が押し上げられて第一弁体部材30から離れると、中央室L3の液体が第二弁体部材31と第二弁座30aとの間を通って伸側室L1へ移動する。そして、第二弁体部材31は、当該液体の流れに対して抵抗を与えるようになっている。
【0061】
以上からわかるように、連通孔7c、環状隙間K、中央室L3、並びに、伸側通路10d及び圧側通路10eは、それぞれ伸側室L1と圧側室L2とを連通する主通路P1の一部となっており、その主通路P1を主弁体3で開閉する。さらに、主通路P1における主弁体3の開閉部よりも圧側室L2側が伸側通路10dと圧側通路10eに分岐して、それぞれに伸側バルブ5又は圧側バルブ6が設けられている(図2)。換言すると、伸側バルブ5と圧側バルブ6は、主弁体3の圧側室L2側に並列に接続されている。
【0062】
そして、緩衝器Dの伸長時には、主通路P1を伸側室L1から圧側室L2へ向かう液体の流れに第一弁体部材30と伸側バルブ5で抵抗を与え、緩衝器Dがその抵抗に起因する伸側の減衰力を発揮する。反対に、緩衝器Dの収縮時には、主通路P1を圧側室L2から伸側室L1へ向かう液体の流れに第二弁体部材31と圧側バルブ6で抵抗を与え、緩衝器Dがその抵抗に起因する圧側の減衰力を発揮する。
【0063】
また、本実施の形態では、第二弁体部材31の脚部31cの下端に切欠き31d(図3)が形成されている。そして、当該切欠き31dによりオリフィスが形成されている。このため、主弁体3が閉じた状態、即ち、第一弁体部材30と第二弁体部材31の両方が閉じた状態であっても、伸側室L1と中央室L3がオリフィスを介して連通される。
【0064】
つづいて、第二弁体部材31における頭部31aとガイド7の大内径部7bとの間であって頭部31aから径方向外側へ張り出す胴部31bの上側には、環状の背圧室L4が形成されている。この背圧室L4の圧力は、主弁体3の背面となる胴部31bの上側面に作用し、第一弁体部材30と第二弁体部材31が背圧室L4の圧力により下向きに附勢される。
【0065】
より詳しくは、図3に示すように、背圧室L4の圧力を受ける主弁体3の受圧面積は、前述の直径bの円の面積から直径cの円の面積を除いた面積となる。そして、主弁体3は、背圧室L4の圧力にその受圧面積を乗じた力により、第一弁体部材30と第二弁体部材31をそれぞれ第一弁座2aと第二弁座30aに着座させる方向(閉じる方向)へ附勢される。
【0066】
また、第二弁体部材31には、頭部31aから胴部31bにかけての中心部に取付孔31eが形成されるとともに、その取付孔31eの外周側に位置して頭部31aの上側と脚部31cの内周側を連通する縦孔31fと、一端が背圧室L4に開口するとともに他端が取付孔31eに開口する横穴31gと、取付孔31eと環状隙間Kとを連通する第一傾斜孔31hと、背圧室L4と中央室L3とを連通する第二傾斜孔31iが形成されている。
【0067】
取付孔31eには、筒状のバルブケース8が装着されており、このバルブケース8は、その軸方向の一端を上側へ向けて配置されている。そのバルブケース8の外周には、周方向に沿う環状溝8aが形成されており、この環状溝8aによりバルブケース8の外周に上下閉塞された環状の隙間が形成されている。そして、その隙間に横穴31gと第一傾斜孔31hが開口している。
【0068】
このため、背圧室L4は、横穴31g、環状溝8aによってバルブケース8の外周に形成された隙間、第一傾斜孔31h、環状隙間K、及び連通孔7cを通じて伸側室L1と連通される。第一傾斜孔31hの途中には、絞りO1が設けられているので、伸側室L1の圧力が減圧されて背圧室L4へと導かれる。
【0069】
また、第二弁体部材31において、頭部31aから径方向外側へ張り出す胴部31bの上側には、第二傾斜孔31iの出口を開閉するチェック弁33が装着されている。このチェック弁33は、緩衝器Dの収縮時に開弁して第二傾斜孔31iを中央室L3から背圧室L4へ向かう液体の流れを許容するとともに、伸長時には閉じてその逆方向の流れを阻止する。さらに、第二傾斜孔31iの途中にも絞りO2が設けられているので、中央室L3の圧力が減圧されて背圧室L4へと導かれる。
【0070】
つづいて、バルブケース8の上部には、内径が上端へ向かうに従って徐々に拡径するテーパ部8bと、このテーパ部8bの上端から上方へ突出する環状の弁座部8cが設けられている。テーパ部8bには、環状溝8aによりバルブケース8の外周に形成された環状の隙間とテーパ部8bの内周側とを連通する連通孔8dが形成されている。また、バルブケース8の弁座部8cには、電磁弁4の弁体9が離着座する。
【0071】
その弁体9は、バルブケース8の内側に摺動自在に挿入される摺動部9aと、この摺動部9aからバルブケース8の上側へ突出し、外径が摺動部9aの外径より小さい小径部9bと、バルブケース8外へ突出した小径部9bの上端から横方向へ張り出して弁座部8cに離着座する開閉部9cと、この開閉部9cから上側へ突出する軸部9dとを含む。
【0072】
さらに、電磁弁4は、通電時に弁体9を下向き、即ち、開閉部9cを弁座部8cへ着座させる方向へ推力を与えるソレノイドSを有する。そして、弁体9がこのソレノイドSの推力を受けて下向きに進むと、開閉部9cが弁座部8cに着座する。また、弁体9の小径部9bの外周にはバルブケース8との間に環状の隙間ができて、この隙間に連通孔8dを通じて背圧室L4の圧力が伝播されるようになっており、弁体9が背圧室L4の圧力により上向きに附勢される。
【0073】
このため、弁体9を上向きに附勢する背圧室L4の圧力による力が、弁体9を押し下げる方向へ作用するソレノイドSの推力を上回るようになると弁体9の開閉部9cが弁座部8cから離れる。そして、このように弁体9が開くと、液体が開閉部9cと弁座部8cとの間を通って第二弁体部材31の頭部31aの上側へ移動し、縦孔31fを通って頭部31aの上側から中央室L3へと移動する。
【0074】
以上からわかるように、第一傾斜孔31h、環状溝8aによりバルブケース8の外周に形成される隙間、及び横穴31gは、絞りO1を含んで主弁体3の背面に主弁体3より伸側室L1側の圧力を減圧して導く伸側圧力導入通路P2を構成する。
【0075】
また、第二傾斜孔31iは、絞りO2を含んで主弁体3の背面に主弁体3より圧側室L2側の圧力を減圧して導く圧側圧力導入通路P3を構成する。そして、この圧側圧力導入通路P3は、チェック弁33により一方通行となっており、圧側室L2側から主弁体3の背面へ向かう液体の流れのみを許容する。
【0076】
また、連通孔8d、弁体9の小径部9bの外周にできる隙間、第二弁体部材31の頭部31aの上側、及び縦孔31fは、伸側圧力導入通路P2の絞りO1より下流に接続される圧力制御通路P4を構成しており、この圧力制御通路P4の途中に電磁弁4が設けられている。
【0077】
そして、伸側室L1の圧力が高まる緩衝器Dの伸長時には、液体が伸側圧力導入通路P2を通じて伸側室L1から背圧室L4へ流入し、背圧室L4の圧力が上昇する。さらに、その背圧室L4の圧力により電磁弁4の弁体9が開くと、液体が圧力制御通路P4を背圧室L4から中央室L3へ向けて流れ、主通路P1を伸側室L1から圧側室L2へ向かう液体の流れに合流する。
【0078】
このため、緩衝器Dの伸長時には、背圧室L4の圧力が電磁弁4の弁体9の開弁圧に制御される。そして、電磁弁4へ供給する電流量を大小調節してソレノイドSの推力を調節すると、弁体9の開弁圧が大小調節されるので、電磁弁4へ通電する正常時には緩衝器Dの伸長時の背圧室L4の圧力を制御できる。このように、本実施の形態において、電磁弁4は、緩衝器Dの伸長時に主弁体3の背圧を制御する圧力制御弁として機能する。
【0079】
反対に、圧側室L2から中央室L3へ液体が流入する緩衝器Dの収縮時には、チェック弁33が開き、液体が圧側圧力導入通路P3を通じて中央室L3から背圧室L4へ流入し、伸側圧力導入通路P2を通って背圧室L4から伸側室L1へと流れる。
【0080】
このとき、圧力制御通路P4の電磁弁4より下流側の圧力は、中央室L3の圧力に等しく、電磁弁4より上流側の背圧室L4の圧力より高いので、電磁弁4の弁体9が閉じた状態に維持される。このため、本実施の形態では、緩衝器Dの収縮時には、電磁弁4による背圧室L4の圧力制御が効かなくなる。
【0081】
つづいて、図2に示すように、ソレノイドSは、ピストンロッド11のケース部11a内に収容されている。そして、ソレノイドSは、コイル40とそのコイル40に通電するハーネス41とをモールド樹脂で一体化したモールドステータMと、コイル40への通電時に磁化される第一固定鉄心42及び第二固定鉄心43と、第一固定鉄心42と第二固定鉄心43との間に介装されてこれらの間に磁気的な空隙を形成するフィラーリング44とを備える。
【0082】
モールドステータMは、ケース部11a内に収容される。そして、第一固定鉄心42は、ベース部42aと、このベース部42aの一端から拡径方向へ張り出す環状のフランジ部42bとを含み、このフランジ部42bを上側へ向けてモールドステータM内に挿入される。その一方、第二固定鉄心43は、略円盤状であり、モールドステータMの下側に積層される。
【0083】
また、フィラーリング44は、筒状で、その一端が第一固定鉄心42のフランジ部42bに当接するとともに、他端が第二固定鉄心43に当接する。このため、組付時において、まずピストンロッド11のケース部11a内にモールドステータMを挿入し、次にモールドステータMの内側に第一固定鉄心42とフィラーリング44をこの順に挿入し、その下側に第二固定鉄心43を重ねてケース部11aにガイド7を螺合すると、第二固定鉄心43がモールドステータMの筒部の先端に固定されるとともに、第一固定鉄心42がケース部11aの内側の天井部に固定される。
【0084】
このように、第一固定鉄心42と第二固定鉄心43は、所定の間隔をあけて配置される。そして、ソレノイドSは、これら第一固定鉄心42と第二固定鉄心43との間に上下(第一固定鉄心42側と第二固定鉄心43側)に移動可能に配置される上側(第一固定鉄心42側)の第一可動鉄心45及び下側(第二固定鉄心43側)の第二可動鉄心46と、第一可動鉄心45を下側(第二可動鉄心46側)へ附勢するコイルばね47とを備える。
【0085】
第一可動鉄心45と第二可動鉄心46は、ともに有底筒状であり、各々の底部45a,46aを下側へ向けて配置されている。そして、第一可動鉄心45は、第二可動鉄心46の内側に軸方向へ移動自在に挿入されている。さらに、その第一可動鉄心45の内側にコイルばね47が挿入されており、そのコイルばね47は、第一可動鉄心45の底部45aと第一固定鉄心42との間に圧縮された状態で介装されて、第一可動鉄心45を第二可動鉄心46側へ附勢する。
【0086】
このように、本実施の形態では、第一可動鉄心45を第二可動鉄心46側へ附勢する附勢部材としてコイルばね47を利用している。しかし、附勢部材の構成はこの限りではなく、適宜変更できる。例えば、附勢部材は、コイルばね以外のばね、ゴム等の弾性部材であってもよく、附勢部材の構成に応じてその配置も変更できる。
【0087】
また、第一可動鉄心45の底部45aと第二可動鉄心46の底部46aには、それぞれ軸方向に貫通する連通孔(符示せず)が形成されている。このため、第一可動鉄心45及び第二可動鉄心46の内外に差圧が生じてこれらの円滑な移動が妨げられるのを防止できる。なお、連通孔の位置及び数は図示する限りではなく、適宜変更できる。
【0088】
また、ソレノイドSは、第一可動鉄心45の底部45aと第二可動鉄心46の底部46aとの間に配置される板ばね48と、第二可動鉄心46の底部46aと第二固定鉄心43との間に配置される板ばね49とを備える。以下、説明の便宜上、第一可動鉄心45側の板ばね48を第一の板ばね48、第二固定鉄心43側の板ばね49を第二の板ばね49とする。
【0089】
第一の板ばね48は、第一可動鉄心45の底部45aと第二可動鉄心46の底部46aがある程度接近すると、それ以上の接近を阻止して第一可動鉄心45と第二可動鉄心46が吸着するのを防止する。同様に、第二の板ばね49は、第二可動鉄心46の底部46aと第二固定鉄心43がある程度接近すると、それ以上の接近を阻止して第二可動鉄心46が第二固定鉄心43に吸着するのを防止する。
【0090】
このように、本実施の形態では、第一、第二の板ばね48,49が第一可動鉄心45と第二可動鉄心46、又は第二可動鉄心46と第二固定鉄心43の接近量を制限してこれらの接触を防ぐ規制部材としてそれぞれ機能する。しかし、規制部材の構成は、鉄心同士の所定以上の接近を阻止できるようになっている限り、適宜変更できる。
【0091】
例えば、第一、第二の板ばね48,49の片方又は両方を、ゴム、合成樹脂等のリングに替えて、当該リングを規制部材として利用してもよい。また、当該規制部材により決められる第一可動鉄心45と第二可動鉄心46との間の最小隙間量、及び第二可動鉄心46と第二固定鉄心43との間の最小隙間量は、適宜変更できる。
【0092】
また、ソレノイドSでは、コイル40が励磁されると、磁路が第一固定鉄心42、第一可動鉄心45、第二可動鉄心46、第二固定鉄心43、及びケース部11aを通過するように形成されて、第一可動鉄心45が第一固定鉄心42へ吸引される一方、第二可動鉄心46は第二固定鉄心43へ吸引されるようになっている。換言すると、コイル40が励磁されると、第一可動鉄心45と第二可動鉄心46が互いに離れる方向へ吸引される。
【0093】
第一可動鉄心45と第一固定鉄心42との間には、第一、第二の板ばね48,49のような規制部材が設けられていない。このため、ソレノイドSへ供給される電流量が所定以上になると、第一可動鉄心45がコイルばね47の附勢力に抗して上側へ進み、第一固定鉄心42に吸着される。このような状態では、コイルばね47の附勢力は第二可動鉄心46には伝わらない。
【0094】
しかし、本実施の形態において、第一可動鉄心45が吸着されるまでの間は、コイルばね47の附勢力が第一可動鉄心45と第一の板ばね48を介して第二可動鉄心46に伝わるようになっている。換言すると、第一可動鉄心45が吸着されるまでの間、第二可動鉄心46がコイルばね47の附勢力を受けて下側へ附勢される。
【0095】
また、第二固定鉄心43の中央部には、第二固定鉄心43を軸方向に貫通する挿通孔43aが形成されている。この挿通孔43aには、電磁弁4の弁体9の軸部9dが移動自在に挿通されており、その軸部9dの先端が第二可動鉄心46の下端に当接する。このため、第二可動鉄心46がコイルばね47の附勢力を受けて下側へ附勢されたり、ソレノイドSの通電時に第二可動鉄心46が下側(第二固定鉄心43)へ吸引されたりすると、弁体9に下向き、即ち、弁体9を押し下げる方向の力が作用する。
【0096】
図4には、ソレノイドSへ供給する電流量と、ソレノイドSによる弁体9を押し下げる方向へ作用する力との関係を示している。図4中、Iaは、第一固定鉄心42から離れた状態にある第一可動鉄心45を第一固定鉄心42へ吸着させるのに最低限必要な電流量である。また、Ibは、第一可動鉄心45を第一固定鉄心42に吸着させた状態を維持するのに最低限必要な電流量である。
【0097】
ソレノイドSの非通電時には、コイルばね47の附勢力が第一可動鉄心45と第二可動鉄心46を介して弁体9を押し下げる方向へ作用する。このため、図4に示すように、ソレノイドSの非通電時であっても、ソレノイドSで弁体9を下側へ附勢できる。
【0098】
そして、このような状態からソレノイドSへ供給する電流量を大きくしていくと、第一可動鉄心45を上側へ、第二可動鉄心46を下側へ吸引する力が大きくなる。ソレノイドSへの供給電流量がIaに満たない領域では、弁体9にコイルばね47の附勢力が伝わるものの、第一可動鉄心45を下側へ附勢するコイルばね47の力の一部が第一可動鉄心45を吸引する力により相殺される。このため、ソレノイドSへの供給電流量がIaに満たない領域では、供給電流量を大きくするほどソレノイドSが弁体9に与える下向きの力が小さくなる。
【0099】
その一方、ソレノイドSへの供給電流量がIa以上になると、第一可動鉄心45が第一固定鉄心42に吸着されて、コイルばね47の附勢力が第二可動鉄心46に伝わらなくなる。このような状態では、第二可動鉄心46を吸引する力のみが弁体9を押し下げる方向へ作用する。この第二可動鉄心46を吸引する力は、供給電流量に比例して大きくなるので、ソレノイドSへの供給電流量がIa以上の領域では、供給電流量を大きくするほどソレノイドSが弁体9に与える下向きの力が大きくなる。
【0100】
反対に、ソレノイドSへの供給電流量を小さくしていくと、第一可動鉄心45を上側へ、第二可動鉄心46を下側へ吸引する力が小さくなる。そして、ソレノイドSへの供給電流量がIb以上の領域では、第一可動鉄心45が第一固定鉄心42に吸着された状態に維持されている。このため、ソレノイドSへの供給電流量がIb以上の領域では、供給電流量を小さくするほどソレノイドSが弁体9に与える下向きの力が小さくなる。
【0101】
その一方、ソレノイドSへの供給電流量がIb未満になると、第一可動鉄心45が第一固定鉄心42から離れる。このため、ソレノイドSへの供給量がIb未満の領域では、供給電流量を小さくするほどソレノイドSが弁体9に与える下向きの力が大きくなる。
【0102】
本実施の形態では、第一可動鉄心45の吸着を維持するのに最低限必要な電流量Ibは、吸着に最低限必要な電流量Iaよりも小さい(図4)。このため、ソレノイドSへ供給する電流量に対する力の特性は、ヒステリシスをもった特性となる。なお、図4では、供給電流量の小さい領域を誇張して記載している。また、本実施の形態では、電磁弁4へ通電する正常時において、供給電流量がIc以上の範囲で調節されるようになっており、IcはIb以上の値となるように設定されている。
【0103】
そして、正常時には、一度、Ia以上の通電を行って第一可動鉄心45を第一固定鉄心42へ吸着させた後、Ib以下とならない電流値となるように設定される。このため、正常時には、弁体9を押し下げる方向へ作用するソレノイドSの推力が供給電流量に比例して大きくなり、供給電流量を大きくするほど弁体9の開弁圧が大きくなる。また、弁体9が弁座部8cに着座している状態では、ソレノイドSの推力が弁体9とバルブケース8を介して主弁体3を閉じる方向へ作用するようになっている。
【0104】
よって、正常時に電磁弁4へ供給する電流量を増やすと、主弁体3を閉じる方向へ作用するソレノイドSの推力が大きくなるとともに、緩衝器Dの伸長時には弁体9の開弁圧が高くなって背圧室L4の圧力が高くなり、この背圧室L4の圧力による主弁体3を閉じ方向へ附勢する力も大きくなる。また、緩衝器Dの収縮時には、電磁弁4による背圧室L4の圧力制御は効かなくなるものの、電磁弁4へ供給する電流量を増やせば主弁体3を閉じる方向へ作用するソレノイドSの推力が大きくなる。
【0105】
よって、正常時に電磁弁4への供給電流量を大きくすると第一弁体部材30及び第二弁体部材31が開き難くなり、これらを液体が通過する際の抵抗が大きくなる。このため、正常時に電磁弁4への供給電流量を大きくすると、緩衝器Dの発生する伸側及び圧側の減衰力が大きくなり、減衰力特性をハードにできる。
【0106】
反対に、正常時に電磁弁4へ供給する電流量を減らすと、主弁体3を閉じる方向へ作用するソレノイドSの推力が小さくなるとともに、緩衝器Dの伸長時には弁体9の開弁圧が低くなって背圧室L4の圧力が低くなり、この背圧室L4の圧力による主弁体3を閉じ方向へ附勢する力も小さくなる。また、緩衝器Dの収縮時には、電磁弁4による背圧室L4の圧力制御は効かなくなるものの、電磁弁4へ供給する電流量を減らせば主弁体3を閉じる方向へ作用するソレノイドSの推力が小さくなる。
【0107】
よって、正常時に電磁弁4への供給電流量を小さくすると第一弁体部材30及び第二弁体部材31が開きやすくなり、これらを液体が通過する際の抵抗が小さくなる。このため、正常時に電磁弁4への供給電流量を小さくすると、緩衝器Dの発生する伸側及び圧側の減衰力が小さくなり、減衰力特性をソフトにできる。
【0108】
その一方、電磁弁4への通電を断つフェール時には、第一可動鉄心45が第一固定鉄心42から離れてコイルばね47が機能するようになり、このコイルばね47の附勢力に起因する下向きの力が弁体9に作用する。
【0109】
フェール時において緩衝器Dが伸長する場合、背圧室L4の圧力が弁体9の開弁圧により決まる。そして、その弁体9の開弁圧は、コイルばね47の特性により自由に設定できる。また、弁体9が弁座部8cに着座している状態では、コイルばね47の附勢力に起因する下向きの力が弁体9とバルブケース8を介して主弁体3を閉じる方向へ作用する。
【0110】
このため、例えば、大きな附勢力を発揮できるコイルばね47を利用すれば、ソレノイドS自体によって主弁体3を閉じ方向へ附勢する力を大きくできるとともに、弁体9の開弁圧を高く設定できる。そして、このようにすると、主弁体3が主通路P1を通過する液体の流れに与える抵抗を大きくしてフェール時における緩衝器Dの伸側及び圧側の減衰力を大きくできる。
【0111】
より具体的には、正常時において電磁弁4へ供給する電流量を最小(Ic)に設定した状態をフルソフトとすると、フェール時における緩衝器Dの伸側及び圧側の減衰力をフルソフトでの減衰力よりも大きく設定できる。このため、フェール時の減衰力が不足するのを防止できる。
【0112】
さらに、フェール時の減衰力をフルソフトでの減衰力より大きくしたとしても、電磁弁4への通電時にはコイルばね47の附勢力をキャンセルできる。このため、フルソフトにしたときに減衰力が過剰になることもない。加えて、正常時において、減衰力特性をソフトにしたときの電磁弁4への供給電流量は小さくて済むので、緩衝器Dを搭載した車両の通常走行時の減衰力特性をソフトにした場合、消費電力を少なくできる。また、これによりソレノイドSの発熱を抑制して緩衝器Dの液温変化を小さくできるので、液温変化に起因する減衰力特性の変化を小さくできる。
【0113】
以下、本実施の形態に係るソレノイドS、ソレノイドSを備えた電磁弁4、及びソレノイドSを含む電磁弁4を備えた緩衝器Dの作用効果について説明する。
【0114】
本実施の形態において、ソレノイドSは、コイル40と、このコイル40への通電により離間する方向へ吸引される第一可動鉄心45及び第二可動鉄心46と、第一可動鉄心45を第二可動鉄心46側へ附勢するコイルばね(附勢部材)47と、第一可動鉄心45と第二可動鉄心46の接近を制限する第一の板ばね(規制部材)48とを備える。
【0115】
上記構成によれば、ソレノイドSへの通電時に第一可動鉄心45を吸引する力によりコイルばね47の附勢力をキャンセルできるとともに、第二可動鉄心46を吸引する力により弁体9等の対象物を一方へ附勢できる。そして、その第二可動鉄心46を吸引する力は、ソレノイドSへの供給電流量が小さいほど小さくなるので、ソレノイドSへ供給する電流量が小さい場合に弁体9に与える推力を小さくできる。
【0116】
さらに、上記構成によれば、ソレノイドSの非通電時に第一可動鉄心45の吸引が解かれて、コイルばね47の附勢力が第一可動鉄心45、第一の板ばね48、及び第二可動鉄心46を介して弁体9へと伝わる。弁体9に対してコイルばね47の附勢力が作用する方向は、第二可動鉄心46を吸引する力の方向と同じ方向であるので、ソレノイドSの非通電時にも通電時の推力と同方向へ弁体9を附勢できる。
【0117】
つまり、上記構成によれば、ソレノイドSへの供給電流量が小さい場合には、弁体(対象物)9を一方へ附勢するソレノイドSの推力を小さくできるとともに、ソレノイドSの非通電時にもその推力と同方向へ弁体(対象物)9を附勢できる。
【0118】
また、本実施の形態のソレノイドSは、所定の間隔をあけて配置される第一固定鉄心42と第二固定鉄心43を備える。上記所定の間隔とは、第一可動鉄心45と第二可動鉄心46が第一固定鉄心42と第二固定鉄心43との間にそれぞれに対して遠近できる間隔であり、任意に設定できる。そして、第一可動鉄心45と第二可動鉄心46は、第一固定鉄心42と第二固定鉄心43との間にそれぞれに対して遠近可能に設けられている。
【0119】
さらに、第一可動鉄心45は、第二可動鉄心46の第一固定鉄心42側に配置されて、コイル40への通電により第一固定鉄心42に吸引される。その一方、第二可動鉄心46は、第一可動鉄心45の第二固定鉄心43側に配置されて、コイル40への通電により第二固定鉄心43に吸引される。このため、コイル40への通電により第一可動鉄心45と第二可動鉄心46を離間する方向へ吸引するのが容易である。
【0120】
さらに、本実施の形態のソレノイドSでは、第一可動鉄心45と第二可動鉄心46は、ともに有底筒状で、それぞれの底部45a,46aを第二固定鉄心43側へ向けている。そして、第一可動鉄心45は、第二可動鉄心46の内側に移動自在に挿入されている。さらに、第一可動鉄心45を第二可動鉄心46側へ附勢する附勢部材がコイルばね47であり、第一可動鉄心45の内側に挿入されて、その第一可動鉄心45の底部45aと第一固定鉄心42との間に介装されている。
【0121】
上記構成によれば、コイル40が励磁されたとき、磁路が第一固定鉄心42、第一可動鉄心45、第二可動鉄心46、及び第二固定鉄心43を通過するようにして、第一可動鉄心45を第一固定鉄心42へ吸引させるとともに、第二可動鉄心46を第二固定鉄心43へ吸引させるのが容易である。また、附勢部材であるコイルばね47が第一可動鉄心45の内側に収容されるので、ソレノイドSが軸方向に嵩張るのを防止できる。
【0122】
とはいえ、コイル40への通電により第一可動鉄心45と第二可動鉄心46を離間する方向へ吸引するようになっていれば、どのように固定鉄心を設けてもよく、第一可動鉄心45と第二可動鉄心46の構成も適宜変更できる。さらに、附勢部材の構成も、コイルばねに限らず、適宜変更できる。
【0123】
また、本実施の形態のソレノイドSは、第一可動鉄心45と第二可動鉄心46の接近を制限する第一の規制部材である板ばね48と、第二可動鉄心46と第二固定鉄心43の接近を制限する第二の規制部材である板ばね49を備えている。このため、第一可動鉄心45が第二可動鉄心46に吸着されたり、第二可動鉄心46が第二固定鉄心43へ吸着されたりするのを防止できる。
【0124】
しかし、第一、第二の規制部材の構成は、板ばね48,49に限らず、適宜変更できる。そして、このような変更は、第一可動鉄心45と第二可動鉄心46を離間する方向へ吸引するための固定鉄心の配置、第一可動鉄心45と第二可動鉄心46の構成、並びに附勢部材の構成によらず可能である。
【0125】
また、本実施の形態のソレノイドSでは、第一可動鉄心45がコイル40への通電により第一固定鉄心42に吸着されるように設定されている。そして、第一可動鉄心45を第一固定鉄心42に吸着させるのに最低限必要な電流量Iaは、第一可動鉄心45の第一固定鉄心42への吸着を維持するのに最低限必要な電流量Ibよりも大きい。
【0126】
このため、コイル40へ供給する電流量に対するソレノイドSの推力の特性は、ヒステリシスをもった特性となる。さらに、第一可動鉄心45が第一固定鉄心42に吸着された状態では、コイルばね47の附勢力が第二可動鉄心46へ伝わらなくなる。そして、第一可動鉄心45を第一固定鉄心42へ吸着させると、そのような状態を安定的に維持できる。
【0127】
しかし、コイル40への供給電流量が所定以上になったとき、第二可動鉄心46がコイルばね47の附勢力を受けない構造となっていれば、必ずしも第一可動鉄心45を第一固定鉄心42に吸着させなくてもよい。さらに、第一可動鉄心45を吸着させるのに最低限必要な電流量Ia、及び第一可動鉄心45の吸着を維持するのに最低限必要な電流量Ibは、それぞれ任意に設定できる。
【0128】
また、本実施の形態では、ソレノイドSが圧力制御通路P4の途中に設けられた電磁弁4に利用されており、この電磁弁4が圧力制御通路P4を開閉する弁体9を備える。そして、コイル40への通電により第二可動鉄心46を吸引する力により弁体9が閉じる方向へ附勢され、ソレノイドSで弁体9の開弁圧を調節するようになっている。このため、電磁弁4より上流側の圧力が弁体9の開弁圧に制御され、電磁弁4が圧力制御弁として機能できる。
【0129】
さらに、本実施の形態では、その電磁弁4が緩衝器Dに利用されており、緩衝器Dがシリンダ1と、このシリンダ1内に摺動自在に挿入されてシリンダ1内を伸側室L1と圧側室L2とに区画するピストン10と、伸側室L1と圧側室L2とを連通する主通路P1と、内周側を主通路P1が通る環状の弁座部材2と、この弁座部材2に離着座して主通路P1を通過する液体の流れに抵抗を与える主弁体3と、途中に絞りO1が設けられて主弁体3の背面に伸側室L1の圧力を減圧して導く伸側圧力導入通路P2と、主弁体3の背面に圧側室L2の圧力を減圧して導く圧側圧力導入通路P3と、伸側圧力導入通路P2の絞りO1よりも下流に接続される圧力制御通路P4とを備え、電磁弁4がその圧力制御通路P4の途中に設けられている。
【0130】
そして、主弁体3は、弁座部材2に離着座する環状の第一弁体部材30と、この第一弁体部材30の上側(反弁座部材側)に積層されて第一弁体部材30に離着座する第二弁体部材31とを有する。これら第一弁体部材30と第二弁体部材31は、伸側室L1の圧力により弁座部材2から離れる方向へ附勢される。その一方、第二弁体部材31は、第一弁体部材30の内周側の圧力により第一弁体部材30から離れる方向へ附勢される。また、コイル40への通電により第二可動鉄心46を吸引する力により、第一弁体部材30と第二弁体部材31が弁座部材2側へ附勢される。
【0131】
上記構成によれば、正常時に第一可動鉄心45の吸引によりコイルばね47の附勢力をキャンセルするようにした場合、ソレノイドSへ供給する電流量を増やすほど弁体9及び主弁体3に付与される閉じ方向の推力が大きくなって、減衰力特性がハードになる。換言すると、減衰力特性をソフトにする場合、ソレノイドSへ供給する電流量が少なくて済むので、緩衝器Dを車両に搭載した場合には、通常走行時の消費電力を少なくできる。また、これによりソレノイドSの発熱を抑制して緩衝器Dの液温変化を小さくできるので、液温変化に起因する減衰力特性の変化を小さくできる。
【0132】
さらに、上記構成によれば、フェール時に第一可動鉄心45の吸引が解かれ、コイルばね(附勢部材)47で弁体9、第一弁体部材30及び第二弁体部材31を閉じ方向へ附勢できる。このため、フェール時における弁体9の開弁圧をコイルばね47の設定により決められるとともに、主通路P1を通過する液体の流れに対して第一弁体部材30又は第二弁体部材31により所定の抵抗を付与できる。
【0133】
そして、前述のように正常時にはコイルばね47の附勢力をキャンセルするようになっていて、フェール時に緩衝器Dがフルソフト時よりも大きな減衰力を発揮でき、フェール時に減衰力が不足するのを防止できる。加えて、上記構成によれば、フェール時にも液体が圧力制御通路P4を通過でき、圧力制御用の通路とは別にフェール時に液体を流すための通路を設ける必要がない。このため、緩衝器Dの構成を簡易にしてコストを低減できる。
【0134】
しかし、ソレノイドSを含む電磁弁4を設ける通路の構成は適宜変更できるとともに、その電磁弁4を備えた緩衝器Dの構成も適宜変更できる。例えば、前述のように、緩衝器がリザーバを備える場合には、電磁弁4で背圧を制御される主弁体3を設けた主通路が伸側室又は圧側室とリザーバとを連通するとしてもよく、伸側バルブ5及び圧側バルブ6を廃するとしてもよい。加えて、電磁弁4は緩衝器D以外に利用されてもよいのは勿論、ソレノイドSは、圧力制御弁として機能する電磁弁4以外に利用されていてもよい。
【0135】
そして、これらの変更は、第一可動鉄心45と第二可動鉄心46を離間する方向へ吸引するための固定鉄心の配置、第一可動鉄心45と第二可動鉄心46の構成、附勢部材の構成、並びに規制部材の構成によらず可能である。
【0136】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0137】
D・・・緩衝器、L1・・・伸側室、L2・・・圧側室、Ia・・・第一可動鉄心を第一固定鉄心に吸着させるのに最低限必要な電流量、Ib・・・第一可動鉄心の第一固定鉄心への吸着を維持するのに最低限必要な電流量、O1・・・絞り、P1・・・主通路、P2・・・伸側圧力導入通路、P3・・・圧側圧力導入通路、P4・・・圧力制御通路、S・・・ソレノイド、1・・・シリンダ、2・・・弁座部材、3・・・主弁体、4・・・電磁弁、9・・・弁体、10・・・ピストン、30・・・第一弁体部材、31・・・第二弁体部材、40・・・コイル、45・・・第一可動鉄心、45a・・・第一可動鉄心の底部、46・・・第二可動鉄心、46a・・・第二可動鉄心の底部、47・・・コイルばね(附勢部材)、48・・・板ばね(第一の規制部材)、49・・・板ばね(第二の規制部材)
図1
図2
図3
図4