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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】曲がり削孔方法及び曲がり削孔システム
(51)【国際特許分類】
   E21B 7/04 20060101AFI20220713BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
E21B7/04 A
E02D3/12 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018055856
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2019167728
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000115463
【氏名又は名称】ライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【氏名又は名称】田中 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】林 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】秋本 哲平
(72)【発明者】
【氏名】三宅 淳
(72)【発明者】
【氏名】岡村 元
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-106283(JP,A)
【文献】特開2004-107880(JP,A)
【文献】特開平04-089998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 7/04
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する掘削ロッドと、該掘削ロッドの先端に支持された削孔ビットと、該削孔ビット先端の噴射ノズルに掘削用水を供給する送水部と、前記掘削ロッドを介して前記削孔ビットを回転させる回転駆動部と、前記掘削ロッドを介して前記削孔ビットを推進させる推進駆動部とを備えた削孔機を使用して地盤を削孔する曲がり削孔方法において、
前記削孔ビットの位置及び姿勢を示す位置姿勢パラメータを時間経過とともに記録し、位置姿勢パラメータのデータを蓄積する位置姿勢パラメータデータ収集と、
前記送水部、前記回転駆動部及び前記推進駆動部を制御するための送水圧、ロッドの回転圧・回転角度及び推進圧を操作パラメータとして時間経過とともに記録し、操作パラメータのデータを蓄積する操作パラメータデータ収集と、
別々に測定された位置姿勢パラメータと操作パラメータとを同一時刻となるように同期させ、機械学習用データを生成し、過去の作業で蓄積したデータ群を機械学習し、入力された計画削孔ライン、位置姿勢パラメータ及び操作パラメータに対応する次のステップにおける最適な操作パラメータを算出する解析手段を構築しておく事前学習とを経た後、
前記削孔機に搭載された前記解析手段に計画削孔ライン、同一時刻となるように同期させた位置姿勢パラメータ及び操作パラメータを入力し、次のステップにおける最適な操作パラメータを目標操作パラメータとして出力し、該目標操作パラメータを表示又は前記目標操作パラメータに基づいて前記送水部、前記回転駆動部及び前記推進駆動部を自動制御することを特徴とする曲がり削孔方法。
【請求項2】
前記事前学習は、熟練操作者に係る機械学習用データを機械学習し、入力された前記計画削孔ライン、前記位置姿勢パラメータ及び前記操作パラメータに対する前記熟練操作者の操作に倣った最適な操作パラメータを出力する解析手段を構築する請求項1に記載の曲がり削孔方法。
【請求項3】
前記事前学習は、収集された位置姿勢パラメータ及び操作パラメータの経歴と次のステップの削孔ビット位置又は削孔形状との関係を機械学習し、入力された位置姿勢パラメータ及び操作パラメータの経歴から次のステップの削孔ビット位置又は削孔形状を予測する予測手段を構築するとともに、
想定されるその後の操作パラメータの推移に基づいて前記予測手段によって多数の削孔ビット位置の候補又は多数の仮想削孔形状を予測し、該多数の削孔ビット位置の候補又は各位置各仮想削孔形状の中から計画削孔形状に適応するものを選択し、該選択された削孔ビット位置の候補又は仮想削孔形状に基づいて次のステップにおける最適な操作パラメータを決定し、出力する解析手段を構築する請求項1又は2に記載の曲がり削孔方法。
【請求項4】
可撓性を有する掘削ロッドと、該掘削ロッドの先端に支持された削孔ビットと、該削孔ビット先端の噴射ノズルに掘削用水を供給する送水部と、前記掘削ロッドを介して前記削孔ビットを回転させる回転駆動部と、前記掘削ロッドを介して前記削孔ビットを推進させる推進駆動部と、前記掘削ロッドの先端部に配置され、前記削孔ビットの位置及び姿勢を示す位置姿勢パラメータを時間経過とともに測定する位置姿勢測定手段と、前記送水部、前記回転駆動部及び前記推進駆動部を制御するための送水圧、ロッドの回転圧・回転角度及び推進圧を操作パラメータとして時間経過とともに測定する操作値測定手段とを備えた削孔機を使用する曲がり削孔システムにおいて、
前記位置姿勢パラメータと前記操作パラメータとを記録するデータロガーを備え、記録された前記位置姿勢パラメータ及び前記操作パラメータのデータ群に基づいて別々に測定された前記位置姿勢パラメータと前記操作パラメータとを同一時刻となるように同期させた機械学習用データ及び解析手段入力用データを生成するデータ生成部を備えるとともに、
過去の作業で蓄積されたデータ群を機械学習し、その結果に基づいて構築され、入力された計画削孔ライン、前記位置姿勢パラメータ及び前記操作パラメータに対応する次のステップの最適な操作パラメータを算出する解析手段を備え、
前記解析手段は、前記削孔機に搭載され、前記最適な操作パラメータを目標操作パラメータとして表示又は前記目標操作パラメータに基づいて前記送水部、前記回転駆動部及び前記推進駆動部を自動制御するようにしたことを特徴とする曲がり削孔システム。
【請求項5】
前記操作パラメータに前記削孔機の操作具の操作量を含む請求項4に記載の曲がり削孔システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物下の地盤改良等に用いられる曲がり削孔方法及び曲がり削孔システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、地盤の液状化防止工法として、地表より地盤中に薬液注入作業孔を形成し、この薬液注入作業孔を通して地盤中に薬液を注入することにより地盤改良する方法が知られている。
【0003】
この液状化防止工法を構造物下の地盤に施工するにあたっては、薬液注入作業用孔を、対象構造物周囲の地表より構造物下に向けて斜めに削孔した後、構造物直下において水平方向に向きを変えて削孔する曲がり削孔方法が用いられている(例えば特許文献1及び2)。
【0004】
この曲がり削孔方法に用いられる装置(以下、削孔機という)は、可撓性を有する掘削ロッドと、掘削ロッドの先端に支持された削孔ビットと、削孔ビット先端の噴射ノズルに掘削用水を供給する送水部と、掘削ロッドを介して削孔ビットを回転させる回転駆動部と、掘削ロッドを介して削孔ビットを推進させる推進駆動部とを備えている。
【0005】
また、削孔ビットは、片側にテーパ面が形成されているとともに、先端にテーパ面と平行な延長方向に向けた掘削用ジェット水噴射ノズルが備えられ、地上の送水部(掘削用泥水圧送ポンプ)より、ロッドを通してベントナイト泥水からなる掘削用水が供給され、噴射ノズルから高圧で噴射されるようになっている。
【0006】
この削孔ビットは、回転させないで押し込むことにより、テーパ面の延長方向に曲り削孔がなされ、回転させつつ押し込むことにより直進削孔がなされるようになっている。
【0007】
また、この曲がり削孔機には、掘削ロッドの先端部に配置され、削孔ビットの位置及び姿勢を示す位置姿勢パラメータを時間経過とともに測定する位置姿勢測定手段を備え、削孔ビットの位置及び削孔ビットの回転角、傾斜角等を操作画面上で逐次確認しながら、送水部、回転駆動部及び推進駆動部を操作画面の数値等を視認しつつ操作し、所定の計画削孔ラインに沿って削孔するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第3896369号公報
【文献】特許第3826386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、作業画面上に表示された削孔ビットの位置及び削孔ビットの回転角、傾斜角等の情報を視認した操作者の判断に従って、感覚的に送水部、回転駆動部及び推進駆動部を操作していた。
【0010】
従って、従来の技術では、操作者の熟練度によって削孔速度や精度が異なり、経験の浅い操作者では、所定の削孔速度によって高品質の削孔を実現することが困難であるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、操作者の熟練度に依存せずに所定の削孔速度で高品質の削孔を行うことができる曲がり削孔方法及び曲がり削孔システムの提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、可撓性を有する掘削ロッドと、該掘削ロッドの先端に支持された削孔ビットと、該削孔ビット先端の噴射ノズルに掘削用水を供給する送水部と、前記掘削ロッドを介して前記削孔ビットを回転させる回転駆動部と、前記掘削ロッドを介して前記削孔ビットを推進させる推進駆動部とを備えた削孔機を使用して地盤を削孔する曲がり削孔方法において、 前記削孔ビットの位置及び姿勢を示す位置姿勢パラメータを時間経過とともに記録し、位置姿勢パラメータのデータを蓄積する位置姿勢パラメータデータ収集と、前記送水部、前記回転駆動部及び前記推進駆動部を制御するための送水圧、ロッドの回転圧・回転角度及び推進圧を操作パラメータとして時間経過とともに記録し、操作パラメータのデータを蓄積する操作パラメータデータ収集と、
別々に測定された位置姿勢パラメータと操作パラメータとを同一時刻となるように同期させ、機械学習用データを生成し、過去の作業で蓄積したデータ群を機械学習し、入力された計画削孔ライン、位置姿勢パラメータ及び操作パラメータに対応する次のステップにおける最適な操作パラメータを算出する解析手段を構築しておく事前学習とを経た後、前記削孔機に搭載された前記解析手段に計画削孔ライン、同一時刻となるように同期させた位置姿勢パラメータ及び操作パラメータを入力し、次のステップにおける最適な操作パラメータを目標操作パラメータとして出力し、該目標操作パラメータを表示又は前記目標操作パラメータに基づいて前記送水部、前記回転駆動部及び前記推進駆動部を自動制御することにある。
【0013】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記事前学習は、熟練操作者に係る機械学習用データを機械学習し、入力された計画削孔ライン、前記位置姿勢パラメータ及び前記操作パラメータに対する前記熟練操作者の操作に倣った最適な操作パラメータを出力する解析手段を構築することにある。
【0014】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記事前学習は、収集された位置姿勢パラメータ及び操作パラメータの経歴と次のステップの削孔ビット位置又は削孔形状との関係を機械学習し、入力された位置姿勢パラメータ及び操作パラメータの経歴から次のステップの削孔ビット位置又は削孔形状を予測する予測手段を構築するとともに、想定されるその後の操作パラメータの推移に基づいて前記予測手段によって多数の削孔ビット位置の候補又は多数の仮想削孔形状を予測し、該多数の削孔ビット位置の候補又は各位置各仮想削孔形状の中から計画削孔形状に適応するものを選択し、該選
択された削孔ビット位置の候補又は仮想削孔形状に基づいて次のステップにおける最適な操作パラメータを決定し、出力する解析手段を構築することにある。
【0015】
請求項4に記載の発明の特徴は、可撓性を有する掘削ロッドと、該掘削ロッドの先端に支持された削孔ビットと、該削孔ビット先端の噴射ノズルに掘削用水を供給する送水部と、前記掘削ロッドを介して前記削孔ビットを回転させる回転駆動部と、前記掘削ロッドを介して前記削孔ビットを推進させる推進駆動部と、前記掘削ロッドの先端部に配置され、前記削孔ビットの位置及び姿勢を示す位置姿勢パラメータを時間経過とともに測定する位置姿勢測定手段と、前記送水部、前記回転駆動部及び前記推進駆動部を制御するための送水圧、ロッドの回転圧・回転角度及び推進圧を操作パラメータとして時間経過とともに測定する操作値測定手段とを備えた削孔機を使用する曲がり削孔システムにおいて、前記位置姿勢パラメータと前記操作パラメータとを記録するデータロガーを備え、記録された前記位置姿勢パラメータ及び前記操作パラメータのデータ群に基づいて別々に測定された前記位置姿勢パラメータと前記操作パラメータとを同一時刻となるように同期させた機械学習用データ及び解析手段入力用データを生成するデータ生成部を備えるとともに、過去の作業で蓄積されたデータ群を機械学習し、その結果に基づいて構築され、入力された計画削孔ライン、前記位置姿勢パラメータ及び前記操作パラメータに対応する次のステップの最適な操作パラメータを算出する解析手段を備え、前記解析手段は、前記削孔機に搭載され、前記最適な操作パラメータを目標操作パラメータとして表示又は前記目標操作パラメータに基づいて前記送水部、前記回転駆動部及び前記推進駆動部を自動制御するようにしたことにある。
【0016】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項4の構成に加え、前記操作パラメータに前記削孔機の操作具の操作量を含むことにある。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る曲がり削孔方法は、請求項1に記載の構成を具備することによって、所定の削孔速度で高品質の削孔を行うことができる。また、本発明において、別々に測定される位置姿勢パラメータ及び操作パラメータを的確に関連付け、正確なデータを生成することができる。
【0018】
さらに、本発明において、請求項2に記載の構成を具備することによって、熟練の操作者による削孔と同等の結果を得ることができる。
【0019】
さらにまた、本発明において、請求項3に記載の構成を具備することによって、刻々と変化する状況に対応して最適な削孔を行うことができる。
【0020】
本発明に係る曲がり削孔システムは、請求項4に記載の構成を具備することによって、所定の削孔速度で高品質の削孔を行うことができる。また、本発明において、機械学習用のデータ及び解析手段に入力するデータを効率よく収集することができる。さらに、別々に測定される位置姿勢パラメータ及び操作パラメータを的確に関連付け、正確なデータを生成することができる。
【0021】
さらに、本発明において、請求項5に記載の構成を具備することによって、最適な操作方法を定量的に案内することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る曲がり削孔方法の概要を示すブロック図である。
図2図1中の本作業に使用する曲がり削孔システムの概要を示す側面図である。
図3】同上の削孔ビットの進行状態を示す部分拡大断面図である。
図4図2中の解析手段及び周辺機器の概要を示すブロック図である。
図5】本発明に係る曲がり削孔方法における本作業の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明に係る曲がり削孔方法及び曲がり削孔システムの実施態様を図1図5に示した実施例に基づいて説明する。
【0024】
この曲がり削孔方法は、過去の作業において蓄積されたデータから機械学習用のデータを収集するデータ収集と、その収集されたデータ群に基づいた事前学習とを経た後、実際に曲がり削孔システムを用いて地盤を曲がり削孔する本作業を行うようになっている。
【0025】
曲がり削孔システムは、曲がり削孔機1を使用して地盤を削孔するものであり、過去の作業で蓄積したデータ群を機械学習し、その結果に基づいて構築された解析手段12を削孔機1に搭載することによって、削孔機1の制御に関する最適な制御値、即ち、操作パラメータを目標操作パラメータとして表示又はその目標操作パラメータに基づいて削孔機1を自動制御するようになっている。
【0026】
削孔機1は、図2に示すように、可撓性を有する掘削ロッド2と、掘削ロッド2の先端に支持された削孔ビット3と、削孔ビット3先端の噴射ノズル4に掘削用水を供給する送水部5と、掘削ロッド2を介して削孔ビット3を回転させる回転駆動部と、掘削ロッド2を介して削孔ビット3を推進させる推進駆動部とを備えている。尚、図中符号6は、回転駆動部及び推進駆動部を構成する削孔機本体6である。
【0027】
また、削孔ビット3には、図3に示すように、片側にテーパ面3aが形成されているとともに、先端にテーパ面3aと平行な延長方向に向けた掘削用ジェット水噴射ノズル4が備えられ、地上の送水部5(掘削用泥水圧送ポンプ)より、ロッド2を通してベントナイト泥水からなる掘削用水が供給され、噴射ノズル4から高圧で噴射されるようになっている。
【0028】
この削孔ビット3は、回転させないで押し込むことにより、図3(a)に示すようにテーパ面3aの延長方向に曲り削孔がなされ、回転させつつ押し込むことにより図3(b)に示すように直進削孔がなされるようになっている。
【0029】
また、削孔機1には、図2図4に示すように、掘削ロッド2の先端部に配置され、削孔ビット3の位置及び姿勢を示す位置姿勢パラメータを時間経過とともに測定する位置姿勢測定手段7を備え、削孔ビット3の位置及び削孔ビット3の回転角、傾斜角等の位置姿勢パラメータを操作画面13上で逐次確認しつつ、回転駆動部及び推進駆動部を操作画面13の制御値等を視認しつつ操作又は自動制御し、所定の計画削孔ラインに沿って削孔できるようになっている。
【0030】
位置姿勢測定手段7は、ロッド2の先端部、例えば、ロッド2先導部分にジャイロや角度計等の計測器を内蔵させ、その計測値より削孔ビット3の位置、回転角及び傾斜角を測定できるようになっている。
【0031】
さらに、この削孔機1には、送水部5、回転駆動部及び推進駆動部を制御するための制御値(送水圧、ロッド2の回転圧・回転速度、推進圧等)、即ち、操作パラメータを時間経過とともに測定する操作値測定手段8を備えている。
【0032】
操作値測定手段8は、送水部5、回転駆動部及び推進駆動部を制御する制御部に内蔵され、操作パラメータ、即ち、送水圧、ロッド2の回転圧・回転速度、推進圧等を測定するようになっている。
【0033】
尚、操作パラメータには、削孔機1の操作具、例えば、送水部5、回転駆動部及び推進駆動部を操作するレバー、ダイヤル、スイッチ、数値入力用のテンキー等の操作量を含むようにし、その操作量をセンサやエンコーダ等で定量化して測定するようにしてもよい。
【0034】
また、この削孔機1には、位置姿勢パラメータと操作パラメータとを記録するデータロガー9を備え、削孔作業の際に計測された削孔ビット3の位置及び削孔ビット3の回転角、傾斜角等の位置姿勢パラメータを時間経過とともに記録できるとともに、回転駆動部及び推進駆動部を制御するための制御値、即ち、操作パラメータを時間経過とともに記録できるようになっている。
【0035】
また、この曲がり削孔システムは、記録された位置姿勢パラメータ及び操作パラメータのデータ群に基づいて機械学習用データ及び解析手段入力用データを生成するデータ生成部10を備え、別々に測定された位置姿勢パラメータと操作パラメータとを同一時刻となるように同期させた機械学習用データ及び解析手段入力用データを生成し、そのデータを機械学習部11に出力又は解析手段12に出力するようになっている。尚、機械学習部11への出力は、データ転送装置によって送信してもよく、USBメモリ等の着脱式のデータ記憶装置を用いてもよい。
【0036】
機械学習部11は、削孔機1とは別体のコンピュータ機器によって構成され、過去の作業において記録され、蓄積された位置姿勢パラメータ及び操作パラメータのデータ群を基に機械学習することによって、入力された計画削孔ライン、位置姿勢パラメータ及び操作パラメータに対応する次のステップの最適な操作パラメータを算出するアルゴリズムを導き出し、それを体現する解析用プログラムP1,P2,…を構築するようになっている。
【0037】
機械学習は、特に手法は限定されず、例えば、多変量解析の手法、サポートベクターマシーンの手法、ニューラルネットワークの手法等を用いている。
【0038】
解析手段12は、演算処理を行う演算装置12aと、演算装置12aによって実行される解析用プログラムP1,P2,…を記憶する記憶装置12bとを備え、演算装置12aによって解析用プログラムP1,P2,…を実行することによって、手動入力、位置姿勢測定手段7、操作値測定手段8又はデータ生成部10より入力された位置姿勢パラメータ及び操作パラメータに対応する次のステップの最適な操作パラメータを算出し、操作画面13又は自動制御装置に出力されるようになっている。
【0039】
また、この曲がり削孔システムは、削孔機1の操作を行う操作パネルやコンピュータ機器に操作画面13を備え、解析手段12によって算出された最適な操作パラメータを目標操作パラメータとして表示するようになっている。
【0040】
次に、このような曲がり削孔システムを用いた曲がり削孔方法の具体的な手順について説明する。尚、上述の実施例と同様の構成には、同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
(データ収集)
データ収集は、実際の曲がり削孔作業において、削孔ビット3の位置及び姿勢を示す位置姿勢パラメータを時間経過とともに記録し、位置姿勢パラメータのデータを蓄積する位置姿勢パラメータデータ収集と、送水部5、回転駆動部及び推進駆動部を制御するための操作パラメータを時間経過とともに記録し、操作パラメータのデータを蓄積する操作パラメータデータ収集とを行う。
【0042】
通常、実際の曲がり削孔作業は、以下のような手順で行い、その時系列とともに各ステップにおける位置姿勢パラメータ及び操作パラメータを測定し、記録する。
【0043】
先ず、削孔開始位置の地盤表層部に削孔機1を設置するとともに、必要に応じてガイド管を設置し、削孔機本体6の回転駆動軸にロッド2を連結し、削孔ビット3を回転推進または推進のみにより地盤に挿入し、削孔を開始する。また、ロッド2を通して送水部5よりベントナイト泥水等の掘削水の送水を開始する。
【0044】
その際、位置姿勢測定手段7による位置姿勢パラメータの測定、即ち、削孔ビット3の三次元位置、回転角及び傾斜角の測定を開始し、随時データロガー9に送信するとともに、操作値測定手段8による操作パラメータの測定、即ち、送水部5による掘削水の送水圧、回転駆動部のロッド2の回転圧・回転速度、推進駆動部のロッド2の推進圧の測定を開始し、随時データロガー9に送信する。また、必要に応じて、それらを操作する際の操作具の操作量を測定し、随時データロガー9に送信する。
【0045】
そして、ロッド2を構成する管体をそれぞれ継ぎ足しながら、削孔機本体6によりロッド2に回転力および推進力を与え、ロッド2先端の削孔ビット3により削孔しながら所定の位置まで地中を直線的に推進させる。
【0046】
その際、地盤の状態等によって推進方向や推進速度に変化が生じた場合には、計画された削孔ライン及び削孔速度となるように、回転駆動部のロッド2の回転圧・回転速度、推進駆動部の推進圧及び送水部5の送水圧を調節する。
【0047】
そして、作業が行われている間、位置姿勢測定手段7は、位置姿勢パラメータ、即ち、削孔ビット3の位置、回転角及び傾斜角が時間経過とともに随時測定し、データロガー9に送信する。
【0048】
また、操作値測定手段8は、変化する回転駆動部のロッド2の回転圧・回転速度、推進駆動部の推進圧及び送水部5の送水圧を時間経過とともに測定し、データロガー9に送信する。尚、必要に応じて、調節の際に操作した操作具の操作量も定量的に測定し、データロガー9に送信する。
【0049】
一方、曲線推進を行うときには、回転駆動部のロッド2の回転圧・回転速度を調節して、削孔ビット3の回転角を所望の位置に合わせてロッド2の回転を停止させ、その状態で掘削水を噴射しつつ、推進駆動部の推進圧を調節してロッド2に推進力のみを与える。
【0050】
その際、図3(a)に示すように、削孔ビット3のテーパ面3aに地盤より作用する力により削孔ビット3の推進方向が徐々に変化し、送水部5の送水圧、推進駆動部の推進圧を調節しつつ計画された所定の削孔ラインに沿って地中を曲線的に推進させる。また、必要に応じて回転駆動部のロッド2の回転圧・回転速度を調節する。
【0051】
そして、作業が行われている間、位置姿勢測定手段7は、位置姿勢パラメータ、即ち、削孔ビット3の位置、回転角及び傾斜角を時間経過とともに随時測定し、データロガー9に送信する。
【0052】
また、操作値測定手段は、操作によって変化する回転駆動部のロッド2の回転圧・回転速度、推進駆動部の推進圧及び送水部5の送水圧を時間経過とともに随時測定し、データロガー9に送信する。尚、必要に応じて、調節の際に操作した操作具の操作量も定量的に測定し、データロガー9に送信する。
【0053】
次に、削孔ビット3が所定の方向に向けられたら、回転駆動部のロッド2の回転圧・回転速度、推進駆動部の推進圧及び送水部5の送水圧を調節し、当該所定の方向に向けた直進的な推進に移行し、同様に位置姿勢パラメータ及び操作パラメータの測定を行う。
【0054】
このように計画された削孔ラインに合わせて、直進推進と曲線推進とを行っていき、各時点での位置姿勢パラメータ及び操作パラメータをそれぞれ時間経過とともに測定し、データロガー9に送信して記録する。
【0055】
(データ生成)
一方、データ生成部10は、別々に測定され、データロガー9に送信された位置姿勢パラメータと操作パラメータとを同一時刻となるように同期させ、機械学習用データを生成し、保存する。
【0056】
上述のデータ取集で収集されたデータ群は、機械学習用データとして生成され、機械学習部11に登録される。
【0057】
(事前学習)
事前学習では、蓄積された過去の作業における位置姿勢パラメータと操作パラメータとのデータ群を機械学習し、本作業の際に入力された計画削孔ライン、位置姿勢パラメータ及び操作パラメータに対応する次のステップにおける最適な操作パラメータを算出する解析手段12を構築する。
【0058】
この事前学習は、実際の作業におけるいくつもの状況を想定し、当該想定と位置姿勢パラメータ及び操作パラメータのデータ群とを関連づけて機械学習し、各状況における最適な操作パラメータを算出する法則を導き出すようになっている。
【0059】
例えば、データ生成において熟練操作者のデータを分類して集約し、熟練操作者に係る機械学習用データを、ニューラルネットワーク等を用いて機械学習し、入力された計画削孔ライン、位置姿勢パラメータ及び操作パラメータに対する熟練操作者の操作に倣った最適な操作パラメータを出力する解析式(解析用プログラムP1)を構築する。
【0060】
また、一方では、収集された位置姿勢パラメータ及び操作パラメータの経歴と次のステップの削孔ビット3位置又は削孔形状との関係を機械学習し、位置姿勢パラメータ及び操作パラメータの経歴から次のステップの削孔ビット3位置又は削孔形状との因果関係を導き出し、その関係に基づいて入力された計画削孔ライン、位置姿勢パラメータ及び操作パラメータの経歴から予測される操作パラメータの推移、即ち、どのような操作がされるかを予測し、次のステップの削孔ビット3位置又は削孔形状を予測する予測手段(法則)を導き出す。
【0061】
そして、想定されるその後の操作パラメータの推移に基づいて予測手段によって多数の削孔ビット3位置の候補又は多数の仮想削孔形状を予測し、多数の削孔ビット3位置の候補又は各位置各仮想削孔形状の中から計画削孔形状に適応するものを選択し、選択された削孔ビット3位置の候補又は仮想削孔形状に基づいて次のステップにおける最適な操作パラメータを決定し、出力する解析式(解析用プログラムP2)を構築する。
【0062】
そして、構築された各解析式(解析用プログラムP1,P2,…)は、解析手段12の記憶部12bに格納され、その解析手段12を本作業に用いられる削孔機1に搭載する。
【0063】
(本作業)
先ず、図2に示すように、削孔開始位置の地盤表層部に削孔機本体6を設置するとともに、解析手段12に計画された削孔ライン(以下、計画削孔ラインという)を入力する(s1)。
【0064】
また、必要に応じてガイド管を設置し、削孔機本体6の回転駆動軸にロッド2を連結し、削孔ビット3を回転推進または推進のみにより地盤に挿入し、削孔を開始する。また、ロッド2を通して送水部5よりベントナイト泥水等の掘削水の送水を開始する。
【0065】
その際、位置姿勢パラメータ、即ち、削孔ビット3の三次元位置、回転角及び傾斜角を位置姿勢測定手段7によって測定を開始し、随時データロガー9に送信するとともに、操作パラメータ、即ち、送水部5による掘削水の送水圧、回転駆動部のロッド2の回転圧・回転速度、推進駆動部のロッド2の推進圧及びそれらを操作する際の操作具の操作量を操作値測定手段によって測定を開始し、随時データロガー9に送信する(s2・s3)。
【0066】
データロガー9に送信された位置姿勢パラメータ及び操作パラメータのデータは、データ生成部10によって、同一時刻となるように同期させることによって、機械学習用データ及び解析手段入力用データを生成し、機械学習用データを保存するとともに、解析手段入力用データを順次リアルタイムに解析手段12に出力する(s4)。
【0067】
解析手段12は、データ生成部10より送信された解析手段入力用データを各解析用プログラムP1,P2,…に入力し、各解析用プログラムP1,P2,…が次のステップにおける最適な操作パラメータを算出し、その操作パラメータを目標操作パラメータとして出力する(s5・s6)。
【0068】
出力された目標操作パラメータは、操作画面13に表示され、操作者はその目標操作パラメータに合わせて送水部5、回転駆動部及び推進駆動部を操作し、掘削水の送水圧、ロッド2の回転圧及び回転速度、ロッド2の推進圧を調整する(s7)。尚、自動制御の場合には、目標操作パラメータのデータが送水部5、回転駆動部及び推進駆動部を制御する制御装置に出力され、その目標操作パラメータに基づいて各部が自動制御される。
【0069】
そして、次のステップに移行し、掘削ロッド2は、操作に従って推進されるとともに、推進後の位置姿勢パラメータ及び操作パラメータがそれぞれ測定され、上記のデータ生成、解析、目標操作パラメータの出力及び送水部5、回転駆動部及び推進駆動部の操作を繰り返す(s8)。
【0070】
また、解析手段12は、入力された位置姿勢パラメータ及び操作パラメータの経歴を記録し、想定されるその後の操作パラメータの推移に基づいて予測手段によって多数の削孔ビット3位置の候補又は多数の仮想削孔形状を予測する。
【0071】
そして、ロッド2を構成する管体をそれぞれ継ぎ足しながら、削孔機本体6によりロッド2に回転力および推進力を与え、ロッド2先端の削孔ビット3により削孔しながら所定の位置まで地中を直線的に推進させる。
【0072】
一方、曲線推進を行うときには、上述のs2~s8と同様の手順を実行しながら、回転駆動部のロッド2の回転圧・回転速度を調節して、削孔ビット3の回転角を所望の位置に合わせてロッド2の回転を停止させ、その状態で掘削水を噴射しつつ、推進駆動部の推進圧を調節してロッド2に推進力のみを与える。
【0073】
それに伴い、位置姿勢測定手段7及び操作値測定手段8は、それぞれ測定した位置姿勢パラメータ、操作パラメータをデータロガー9に送信し、データ生成部10で機械学習用データ及び解析手段入力用データを生成する。
【0074】
そして、解析手段12は、データ生成部10より送信された解析手段入力用データを各解析用プログラムP1,P2,…に入力し、各解析用プログラムP1,P2,…が曲線推進における次のステップの最適な操作パラメータを算出し、その操作パラメータを目標操作パラメータとして出力する。
【0075】
よって、操作者は、操作画面13に表示された目標操作パラメータに従って、送水部5の送水圧、推進駆動部の推進圧を調節することによって、削孔ビット3のテーパ面3aにかかる力により削孔ビット3の推進方向が徐々に変化し、所定のラインに沿って地中を曲線的に推進する。
【0076】
また、作業が行われている間、位置姿勢測定手段7は、位置姿勢パラメータ、即ち、削孔ビット3の位置、回転角及び傾斜角が時間経過とともに随時測定し、データロガー9に送信し、操作値測定手段は、変化する回転駆動部のロッド2の回転圧・回転速度、推進駆動部の推進圧及び送水部5の送水圧を時間経過とともに測定し、データロガー9に送信する。また、必要に応じて、調節の際に操作した操作具の操作量も定量的に測定し、データロガー9に送信する。
【0077】
そして、次のステップに移行すると、ロッド2先端の削孔ビット3は、操作に従って曲線的に推進されるとともに、推進後の位置姿勢パラメータ及び操作パラメータがそれぞれ測定され、上記のデータ生成、解析、目標操作パラメータの出力及び送水部5、回転駆動部及び推進駆動部の操作を繰り返す。
【0078】
一方、削孔ビット3の位置が計画削孔ラインより逸脱した場合等には、削孔開始から現時点までの入力された位置姿勢パラメータ及び操作パラメータの経歴を記録しているので、その経歴から想定されるその後の操作パラメータの推移、即ち、どのような操作をするかによって異なる多数の削孔ビット3位置の候補又は多数の仮想削孔形状を予測し、多数の削孔ビット3位置の候補又は各仮想削孔形状の中から計画削孔形状に適応するものを選択する。
【0079】
そして、選択された削孔ビット3位置の候補又は仮想削孔形状に基づいて次のステップにおける最適な操作パラメータを決定し、その操作パラメータを目標操作パラメータとして出力する。
【0080】
よって、操作者は、目標操作パラメータに従って操作することによって、逸脱した位置から最短で計画削孔ラインに復帰することができる。
【0081】
このように構成された曲がり削孔方法及び曲がり削孔システムでは、出力された目標操作パラメータに従って作業することによって、熟練度に関係なく、所定の削孔速度で高品質の削孔を行うことができる。
【0082】
尚、本作業において記録された機械学習用データは、データ転送装置又は着脱式の記憶装置によって機械学習部11に送ることができ、このデータを過去の作業におけるデータとして、上述のデータ収集、事前学習に還元されることによって、構築される解析用プログラムP1,P2,…の精度が向上する。
【0083】
また、本作業においては、既に完成した解析手段12を搭載することによって、データ収集、事前学習を繰り返すことなく作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0084】
1 削孔機
2 ロッド
3 削孔ビット
4 噴射ノズル
5 送水部
6 削孔機本体
7 位置姿勢測定手段
8 操作値測定手段
9 データロガー
10 データ生成部
11 機械学習部
12 解析手段
13 操作画面
図1
図2
図3
図4
図5