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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】測点投影システム、および測定治具
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/265 20060101AFI20220713BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20220713BHJP
   G01N 29/48 20060101ALI20220713BHJP
   G01B 17/00 20060101ALI20220713BHJP
   G01N 29/11 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
G01N29/265
E01D22/00 A
G01N29/48
G01B17/00 B
G01N29/11
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018172720
(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公開番号】P2020046214
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】508036743
【氏名又は名称】株式会社横河ブリッジ
(73)【特許権者】
【識別番号】392036153
【氏名又は名称】菱電湘南エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】溝井国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山浦 明洋
(72)【発明者】
【氏名】市川 英
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-160440(JP,A)
【文献】実開平05-055061(JP,U)
【文献】特開平11-271288(JP,A)
【文献】特開平11-237233(JP,A)
【文献】特開平11-230953(JP,A)
【文献】実開昭53-093276(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00 - E01D 24/00
G01B 17/00 - G01B 17/08
G01N 29/00 - G01N 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と前記第1の面の裏面である第2の面とを有する被測定体において、前記第2の面で測定された測点を前記第1の面に投影する測点投影システムであって、
前記第2の面に配置された第2の探触子と、
前記第2の探触子と第2のケーブルで接続され、前記第2の探触子に、前記測点から前記第1の面に向かって超音波を入射させる第2の超音波探傷器と、
前記第1の面に配置され、前記第2の探触子から入射された超音波の透過パルスを走査する第1の探触子と、
前記第1の探触子と第1のケーブルで接続され、前記透過パルスの走査により出力される走査信号を前記第1の探触子から取得する第1の超音波探傷器であって、前記走査信号を可視化して表示することにより、前記測点の前記第1の面への投影を支援する表示部を備えた第1の超音波探傷器と、
前記第1の面に固定され、前記第1の探触子を前記第1の面において摺動自在に保持する測定治具と
を備え、
前記測定治具は、
前記第1の探触子の走査方向に沿って配置される軸部と、前記軸部に沿って移動自在に前記軸部に取り付けられ、移動距離を表示するデジタル表示器とを有するデジタル測長器と、
前記軸部の長手方向の端部に設けられ、前記第1の面に固定される固定部と、
前記デジタル表示器の上部に着脱自在に取り付けられ、前記第1の探触子を保持する探触子ホルダと、
前記探触子ホルダの上部に配置された矩形状のスライダと
を備え、
前記スライダは、
前記走査方向に垂直な辺の延長線が、前記探触子ホルダに保持された前記第1の探触子の基準点を通るように配置され、前記辺を形成する辺部であって、前記走査方向に垂直、かつ、前記基準点を通る線の罫書きをガイドする辺部を備えた測点投影システム。
【請求項2】
前記スライダは、
前記探触子ホルダが取り外されると、下方にスライドし、前記辺部により、前記走査方向に垂直、かつ、前記基準点を通る線の罫書きをガイドする請求項1に記載の測点投影システム。
【請求項3】
前記表示部は、
前記走査信号に基づいて、前記透過パルスの振幅を透過パルス高さとして、前記透過パルス高さが閾値を超えているか否かを表すパルス高さ表示グラフを表示する請求項1または請求項2に記載の測点投影システム。
【請求項4】
前記第2の探触子は、
前記測点から前記第2の面に対して垂直な方向に超音波を入射する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の測点投影システム。
【請求項5】
第1の面と前記第1の面の裏面である第2の面とを有する被測定体において、前記第2の面で測定された測点を前記第1の面に投影する測点投影システムに備えられた測定治具であって、
前記測点投影システムは、
前記第2の面に配置された第2の探触子と、
前記第2の探触子と第2のケーブルで接続され、前記第2の探触子に、前記測点から前記第1の面に向かって超音波を入射させる第2の超音波探傷器と、
前記第1の面に配置され、前記第2の探触子から入射された超音波の透過パルスを走査する第1の探触子と、
前記第1の探触子と第1のケーブルで接続され、前記透過パルスの走査により出力される走査信号を前記第1の探触子から取得する第1の超音波探傷器と、
前記第1の超音波探傷器に備えられ、前記走査信号を可視化して表示することにより、前記測点の前記第1の面への投影を支援する表示部と
を備え、
前記測定治具は、
前記第1の面に固定され、前記第1の探触子を前記第1の面において摺動自在に保持しており、
前記第1の探触子の走査方向に沿って配置される軸部と、前記軸部に沿って移動自在に前記軸部に取り付けられ、移動距離を表示するデジタル表示器とを有するデジタル測長器と、
前記軸部の長手方向の端部に設けられ、前記第1の面に固定される固定部と、
前記デジタル表示器の上部に着脱自在に取り付けられ、前記第1の探触子を保持する探触子ホルダと、
前記探触子ホルダの上部に配置された矩形状のスライダと
を備え、
前記スライダは、
前記走査方向に垂直な辺の延長線が、前記探触子ホルダに保持された前記第1の探触子の基準点を通るように配置され、前記辺を形成する辺部であって、前記走査方向に垂直、かつ、前記基準点を通る線の罫書きをガイドする辺部を備えている測定治具。
【請求項6】
前記スライダは、
前記探触子ホルダが取り外されると、前記探触子ホルダの位置までスライドし、前記辺部により、前記走査方向に垂直、かつ、前記基準点を通る線の罫書きをガイドする請求項に記載の測定治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測点投影システム、測定治具、および測点投影方法に関する。特に、表裏の関係にある2つの面を有する鋼板といった被測定体において、一方の面の測点を他方の面に投影する測点投影システム、測定治具、および測点投影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼橋の補修あるいは補強工事の現場で、新規部材の取り付け位置を測定する際、例えば既設の垂直補剛材のような取り付け位置の直近の部材が基準とされる場合が多い。しかし、基準となる既設の部材が腹板の片面のみ、あるいは箱桁の内部のみに設置されている状況で、部材のない側の面を罫書く場合、遠くの部材あるいは桁端等の位置を基準に計測することになる。この場合、取り付け位置の誤差が大きくなる虞がある。
【0003】
特許文献1には、裏面に打刻指定点を形成し、その打刻指定点を超音波探触子により反対面から検知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-237232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、一方の面に打刻点、すなわち傷を付けなければ検知できないという課題がある。
【0006】
本発明は、被測定体の一方の面で計測された測点から超音波を送信し、他方の面で超音波を受信することで、被測定体に傷を付けることなく、高い精度で他方の面に測点を投影することができる測点投影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る測点投影システムは、第1の面と前記第1の面の裏面である第2の面とを有する被測定体において、前記第2の面で測定された測点を前記第1の面に投影する測点投影システムであって、
前記第2の面に配置された第2の探触子と、
前記第2の探触子と第2のケーブルで接続され、前記第2の探触子に、前記測点から前記第1の面に向かって超音波を入射させる第2の超音波探傷器と、
前記第1の面に配置され、前記第2の探触子から入射された超音波の透過パルスを走査する第1の探触子と、
前記第1の探触子と第1のケーブルで接続され、前記透過パルスの走査により出力される走査信号を前記第1の探触子から取得する第1の超音波探傷器と
を備え、
前記第1の超音波探傷器は、
前記走査信号を可視化して表示することにより、前記測点の前記第1の面への投影を支援する表示部を備えた。
【0008】
前記表示部は、
前記走査信号に基づいて、前記透過パルスの振幅を透過パルス高さとして、前記透過パルス高さが閾値を超えているか否かを表すパルス高さ表示グラフを表示する。
【0009】
前記第2の探触子は、
前記測点から前記第2の面に対して垂直な方向に超音波を入射する。
【0010】
前記測点投影システムは、
前記第1の面に固定され、前記第1の探触子を前記第1の面において摺動自在に保持する測定治具を備え、
前記測定治具は、
前記第1の探触子の走査方向に沿って配置される軸部と、前記軸部に沿って移動自在に前記軸部に取り付けられ、移動距離を表示するデジタル表示器とを有するデジタル測長器と、
前記軸部の長手方向の端部に設けられ、前記第1の面に固定される固定部と、
前記デジタル表示器の上部に取り付けられ、前記第1の探触子を保持する探触子ホルダと
を備えた。
【0011】
前記探触子ホルダは、着脱自在に前記デジタル表示器に取り付けられ、
前記測定治具は、
前記探触子ホルダの上部に配置された矩形状のスライダであって、前記走査方向に垂直な辺の延長線が、前記探触子ホルダに保持された前記第1の探触子の基準点を通るように配置されたスライダを備え、
前記スライダは、
前記辺を形成する辺部であって、前記走査方向に垂直、かつ、前記基準点を通る線の罫書きをガイドする辺部を備えた。
【0012】
前記スライダは、
前記探触子ホルダが取り外されると、下方にスライドし、前記辺部により、前記走査方向に垂直、かつ、前記基準点を通る線の罫書きをガイドする。
【0013】
本発明に係る測定治具は、第1の面と前記第1の面の裏面である第2の面とを有する被測定体において、前記第2の面で測定された測点を前記第1の面に投影する測点投影システムに備えられた測定治具であって、
前記測点投影システムは、
前記第2の面に配置された第2の探触子と、
前記第2の探触子と第2のケーブルで接続され、前記第2の探触子に、前記測点から前記第1の面に向かって超音波を入射させる第2の超音波探傷器と、
前記第1の面に配置され、前記第2の探触子から入射された超音波の透過パルスを走査する第1の探触子と、
前記第1の探触子と第1のケーブルで接続され、前記透過パルスの走査により出力される走査信号を前記第1の探触子から取得する第1の超音波探傷器と、
前記第1の超音波探傷器に備えられ、前記走査信号を可視化して表示することにより、前記測点の前記第1の面への投影を支援する表示部と
を備え、
前記測定治具は、
前記第1の面に固定され、前記第1の探触子を前記第1の面において摺動自在に保持している。
【0014】
前記測定治具は、
前記第1の探触子の走査方向に沿って配置される軸部と、前記軸部に沿って移動自在に前記軸部に取り付けられ、移動距離を表示するデジタル表示器とを有するデジタル測長器と、
前記軸部の長手方向の端部に設けられ、前記第1の面に固定される固定部と、
前記デジタル表示器の上部に取り付けられ、前記第1の探触子を保持する探触子ホルダと
を備えた。
【0015】
前記探触子ホルダは、着脱自在に前記デジタル表示器に取り付けられ、
前記測点投影システムは、
前記探触子ホルダの上部に配置された矩形状のスライダであって、前記走査方向に垂直な辺の延長線が、前記探触子ホルダに保持された前記第1の探触子の基準点を通るように配置されたスライダを備え、
前記スライダは、
前記辺を形成する辺部であって、前記走査方向に垂直、かつ、前記基準点を通る線の罫書きをガイドする辺部を備えた。
【0016】
前記スライダは、
前記探触子ホルダが取り外されると、前記探触子ホルダの位置までスライドし、前記辺部により、前記走査方向に垂直、かつ、前記基準点を通る線の罫書きをガイドする。
【0017】
本発明に係る測点投影方法は、第1の面と前記第1の面の裏面である第2の面とを有する被測定体において、前記第2の面で測定された測点を前記第1の面に投影する測点投影方法であって、
前記第2の面に配置された第2の探触子と第2のケーブルで接続された第2の超音波探傷器が、前記第2の探触子により、前記測点から前記第1の面に向かって超音波を入射し、
前記第1の面に配置された第1の探触子が、前記第2の探触子から入射された超音波の透過パルスを走査し、
前記第1の探触子と第1のケーブルで接続された第1の超音波探傷器が、前記透過パルスの走査により出力される走査信号を可視化して表示部に表示し、
前記表示部に表示された可視化された走査信号に基づいて、前記透過パルスの振幅を透過パルス高さとして、前記透過パルス高さが閾値を超える位置を重なり開始位置として取得するとともに、前記透過パルス高さが前記閾値から離れる位置を重なり終了位置として取得し、
前記重なり開始位置と前記重なり終了位置とに基づいて、前記測点を前記第1の面に投影した投影点を検出する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る測点投影システムによれば、被測定体に傷を付けることなく、高い精度で測点を投影することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態1に係る測点投影システムの構成図。
図2】超音波ビームを表した模式図。
図3】実施の形態1に係る測定治具の構成図。
図4】実施の形態1に係るスライダがスライドした状態の例を示す図。
図5】実施の形態1に係る測点投影システムによる測点投影方法の流れを示す図。
図6】実施の形態1に係る超音波送信側の第2の探触子の設置状況を示す図。
図7】実施の形態1に係る超音波受信側の第1の探触子および測定治具の設置状況を示す図。
図8】実施の形態1に係る表示部に表示されたパルス高さ表示グラフの例。
図9】実施の形態1に係る投影点Ptの検出手順の流れを示す図。
図10】実施の形態1に係るデジタル表示器がゼロリセットされた状態の例。
図11】実施の形態1において、透過パルス高さが閾値Gを離れる直前のデジタル表示器の例。
図12】実施の形態1に係る透過パルス閾値エリアR2の検知手法を示す模式図。
図13】実施の形態1において走査線Lscan上の透過パルス高さのピークの位置までデジタル表示器を戻した図。
図14】実施の形態1において透過パルス高さのピークの位置で走査線Lscan(走査方向Pscan)に対して垂線を引く図。
図15】実施の形態1において線Lkを検出後、線Lk2を検出した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。なお、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、実施の形態の説明において、上、下、左、右、前、後、表、裏といった方向あるいは位置が示されている場合、それらの表記は、説明の便宜上、そのように記載しているだけであって、装置、器具、あるいは部品の配置および向きを限定するものではない。
【0021】
実施の形態1.
***構成の説明***
図1は、本実施の形態に係る測点投影システム500の構成を示す図である。
測点投影システム500は、鋼板といった被測定体300の一方の面の測点を他方の面に投影する装置である。被測定体300は、第1の面310と、第1の面310の裏面である第2の面320とを有する。なお、第1の面310と第2の面320とは略平行であるものとする。測点投影システム500は、被測定体300において、第2の面320で測定された測点Psを第1の面310に投影する。第2の面320の測点Psを第1の面310に投影した点を投影点Ptという。第2の面320の測点Psを第1の面310に投影するとは、例えば、測点Psから第2の面320に対して垂直に第1の面310に向かって引いた線と第1の面310との交点を投影点Ptとして検出することである。
【0022】
被測定体300は、具体例として、鋼橋の腹板あるいは箱桁等に用いられる鋼板である。被測定体300において、表裏両面のうち一方の面である第2の面320には、既設の垂直補剛材のような部材等を基準に計測された測点Psが設定されている。一方、他方の面である第1の面310では、例えば、基準となる部材等が存在せず、測点Psに対応する投影点Ptを高精度に罫書くことが難しい状況であることが想定される。
【0023】
測点投影システム500は、第1の面310の側に、第1の超音波探傷器100と、第1の探触子110と、第1のケーブル120とを備える。第1の超音波探傷器100と、第1の探触子110と、第1のケーブル120とを第1の超音波探傷装置10ともいう。また、測点投影システム500は、第2の面320の側に、第2の超音波探傷器200と、第2の探触子210と、第2のケーブル220とを備える。第2の超音波探傷器200と、第2の探触子210と、第2のケーブル220とを第2の超音波探傷装置20ともいう。第1の超音波探傷装置10と、第2の超音波探傷装置20は、各々異なる装置である。第2の超音波探傷装置20がスピーカ専用であり、第1の超音波探傷装置10がマイクロフォン専用であってもよい。あるいは、第1の超音波探傷装置10と第2の超音波探傷装置20は、各々がスピーカ機能とマイクロフォン機能との両機能を有する同様の構成の超音波探傷装置であってもよい。
【0024】
第2の探触子210は、第2の面320に配置されている。第2の超音波探傷器200は、第2の探触子210と第2のケーブル220で接続されている。そして、第2の超音波探傷器200は、第2の探触子210に、測点Psから第1の面310に向かって超音波を入射させる。第2の探触子210は、測点Psから第2の面320に対して垂直な方向に超音波を入射する。
【0025】
第1の探触子110は、第1の面310に配置されている。第1の探触子110は、第2の探触子210から入射された超音波の透過パルスを走査(スキャン)する。第1の超音波探傷器100は、第1の探触子110と第1のケーブル120で接続されている。そして、第1の超音波探傷器100は、透過パルスの走査により出力される走査信号11を第1の探触子110から取得する。
【0026】
図1に示すように、第1の超音波探傷器100は、増幅器101、A/D(Analog-to-Digital)変換器102、CPU(Central Processing Unit)103、および表示部104を備える。走査信号11は、第1の超音波探傷器100に入力されると、増幅器101により増幅され、A/D変換器102によりデジタル信号に変換される。そして、デジタル信号に変換された走査信号11は、CPU103により可視化処理が施され、表示部104に表示される。表示部104は、具体的には、LCD(Liquid Crystal Display)といったディスプレイである。また、可視化処理については後述する。
【0027】
このように、第1の超音波探傷器100は、走査信号11を可視化して表示部104に表示する。作業者は、可視化されて表示部104に表示された走査信号11に基づいて、測点Psの投影点Ptを検出する。すなわち、表示部104は、可視化された走査信号11を表示することにより、測点Psの第1の面310への投影を支援する。
なお、第1の超音波探傷器100において走査信号11を可視化して表示するために、例えば、第2の超音波探傷器200の送信パルスの繰り返し信号出力を1秒間に数千回以上行い、第1の超音波探傷器100の受信パルスの繰り返し信号入力を1秒間に数10回とする。
【0028】
ここで、本実施の形態に係る測点投影システム500の測点投影方法の概要について説明する。
測点投影方法では、まず、第2の面320の測点Psに中心を合わせて固定した第2の探触子210から超音波が入射される。第2の探触子210の中心を第2の基準点211とする。また、第2の探触子210は、超音波送信用の送信探触子ともいう。反対側の面である第1の面310において、第1の探触子110が、被測定体300を透過した超音波の透過パルスを走査し、測点Psに対応する位置を第1の面310上で投影点Ptとして検出する。第1の探触子110は、超音波受信用の受信探触子ともいう。
【0029】
図2は、超音波ビームを表した模式図である。
第2の探触子210が当接している第2の面320と平行な面、すなわち第1の面310を見ると、超音波ビームの音圧分布は中心軸Loで最も高く、同心円状に中心から距離が離れるほど低くなる。第2の面320から送信された超音波の透過パルスを第1の面310で受信した時、透過パルスの振幅が最大となるときが送受信の2つの探触子の中心が一致するときである。なお、透過パルスの振幅は、可視化された走査信号11の探査図形上では透過パルスの高さ(以下、透過パルス高さ)となる。すなわち、透過パルス高さが最大(ピーク)となるときが、第2の探触子210の中心である第2の基準点211と第1の探触子110の中心である第1の基準点111とが一致するときである。第2の基準点211と第1の基準点111とが一致するということは、第1の基準点111の位置が、測点Psから第1の面310に引かれた垂線上にあり、測点Psを投影した投影点Pt上にあることを意味する。よって、受信探触子である第1の探触子110は、透過パルス高さのピークを探して透過パルスを走査する。
例えば、本実施の形態に係る測点投影システム500の超音波の探査モードは、垂直探触子を用いた透過法である。透過法とは、送信探触子から発信された超音波ビームが試験体を伝搬して受信探触子に入射した際の超音波エネルギーの強さで、材料の探傷を行う方法である。
【0030】
図3は、本実施の形態に係る測定治具400の構成を示す図である。
測点投影システム500は、第1の探触子110による透過パルスの走査に用いる測定治具400を備える。測定治具400は、第1の面310に固定され、第1の探触子110を第1の面310において摺動自在に保持する。
【0031】
測定治具400は、軸部401とデジタル表示器402とから成るデジタル測長器403を備える。デジタル測長器403は、例えば、デジタルノギスを応用して構成される。
軸部401は、第1の探触子110の走査方向Pscanに沿って配置される。デジタル表示器402は、軸部401に沿って移動自在に軸部401に取り付けられ、移動距離を表示する。デジタル表示器402は、電源をオンオフする電源スイッチ21とデジタル表示をゼロリセットするリセットスイッチ22を備える。
また、測定治具400は、軸部401の長手方向の端部に設けられ、第1の面310に固定される固定部404を備える。固定部404は、例えば、マグネットを用いて構成される。
【0032】
また、測定治具400は、デジタル表示器402の上部に取り付けられ、第1の探触子110を保持する探触子ホルダ405を備える。探触子ホルダ405は、着脱自在にデジタル表示器402に取り付けられている。具体的には、探触子ホルダ405は、ホルダ固定用ローレットノブ406により、着脱自在にデジタル表示器402の上部に設置される。
また、測定治具400は、探触子ホルダ405の上部に配置された矩形状のスライダ407を備える。
図3に示すように、デジタル表示器の上部には、探触子ホルダ405とスライダ407とが取り付けられる取付板408を備える。探触子ホルダ405は、ホルダ固定用ローレットノブ406により、着脱自在に取付板408に取り付けられる。また、スライダ407は、上下方向にスライド可能に取付板408に取り付けられる。
【0033】
スライダ407は、走査方向Pscanに垂直な辺の延長線が、探触子ホルダ405に保持された第1の探触子110の第1の基準点111を通るように配置されている。スライダ407は、上記の辺を形成する辺部71であって、走査方向Pscanに垂直、かつ、第1の基準点111を通る線Lkの罫書きをガイドする辺部71を備える。
また、デジタル表示器402を走査方向Pscanに移動させることにより、走査方向Pscanに平行で、かつ、第1の基準点111を通る線が走査線Lscanとなる。
【0034】
図4は、本実施の形態に係るスライダ407がスライドした状態の例を示す図である。
スライダ407は、探触子ホルダ405が取り外されると、下方にスライドする。そして、辺部71は、走査方向Pscanに垂直、かつ、第1の基準点111を通る線Lkの罫書きをガイドする。
【0035】
***手順の説明***
図5は、本実施の形態に係る測点投影システム500による測点投影方法の流れを示す図である。
図5を用いて、第2の面320で測定された測点Psを第1の面310に投影する測点投影方法の手順について説明する。
【0036】
<ステップS101:測点投影システム500の設置>
図6は、本実施の形態に係る超音波送信側の第2の探触子210の設置状況を示す図である。
図7は、本実施の形態に係る超音波受信側の第1の探触子110および測定治具400の設置状況を示す図である。
ステップS101において、測点投影システム500が被測定体300に取り付けられる。図1に示すように、測点Psが存在する第2の面320の側には、第2の探触子210と、第2の探触子210と第2のケーブル220で接続された第2の超音波探傷器200が配置される。また、第2の面320の反対面である第1の面310の側には、第1の探触子110と、第1の探触子110と第1のケーブル120で接続された第1の超音波探傷器100が配置される。
【0037】
図6に示すように、第2の探触子210は、第2の面320に配置される。このとき、第2の探触子210は、第2の探触子210の中心である第2の基準点211を測点Psに合わせて第2の面320に配置される。
また、図7に示すように、第1の面310には、測定治具400が固定される。測定治具400は、探触子ホルダ405により第1の探触子110を保持している。測定治具400は、軸部401が第1の探触子110の走査方向Pscanに沿うように固定される。
測定治具400は、第1の面310において、測点Psに対応するおよその位置を第1の探触子110が通るように配置される。例えば、測点Psに対応する位置を第1の面310の側の桁端あるいは遠くの部材等から測定することにより、測点Psに対応するおよその位置を決定する。
【0038】
<ステップS102:超音波の入射>
ステップS102において、第2の超音波探傷器200が、第2の探触子210により、測点Psから第1の面310に向かって超音波を入射させる。第2の探触子210は、測点Psから第1の面310に向かって、第2の面320に対して垂直な方向に超音波を入射する。
【0039】
<ステップS103:走査信号の可視化表示>
第1の探触子110が、第2の探触子210から入射された超音波の透過パルスを走査する。具体的には、測定治具400のデジタル表示器402を走査方向Pscanに移動させることにより、第1の探触子110は走査線Lscan上の透過パルスを走査する。そして、第1の探触子110は、透過パルスの走査により出力される走査信号11を第1のケーブル120を介して第1の超音波探傷器100に出力する。
第1の超音波探傷器100は、走査信号11を取得すると、走査信号11を増幅器101により増幅し、A/D変換器102によりデジタル信号に変換する。そして、第1の超音波探傷器100は、デジタル信号に変換した走査信号11に対してCPU103により可視化処理を施し、可視化した走査信号11を表示部104に表示する。
【0040】
図8は、本実施の形態に係る表示部104に表示されたパルス高さ表示グラフ41の例である。
図8に示すように、表示部104には、パルス高さ表示グラフ41が表示される。パルス高さ表示グラフ41では、透過パルスの振幅が透過パルス高さとして表される。
パルス高さ表示グラフ41では、縦軸は透過パルス高さ(%)、横軸はビーム経路(mm)を表している。また、透過パルス高さを判定するための閾値G(ゲートともいう)のラインも表示されている。閾値Gは、透過パルス高さが所定の値(閾値G)以上となる範囲を検知するために用いられる。
【0041】
<ステップS104:投影点Ptの検出>
次に、表示部104に表示された走査信号11、すなわちパルス高さ表示グラフ41に基づいて、第1の探触子110が透過パルスを検出し始めた後、透過パルス高さが閾値Gを超える位置が重なり開始位置Pxとして取得される。また、透過パルス高さが閾値Gを離れる位置が重なり終了位置Pyとして取得される。そして、重なり開始位置Pxと重なり終了位置Pyとに基づいて、測点Psを第1の面310に投影した投影点Ptが検出される。
【0042】
図9は、本実施の形態に係る投影点Ptの検出手順の流れを示す図である。
図10は、本実施の形態に係るデジタル表示器402がゼロリセットされた状態の例である。
図9を用いて、投影点Ptの検出手順について詳しく説明する。
【0043】
<ステップS41:デジタル表示ゼロリセット>
パルス高さ表示グラフ41が第1の超音波探傷器100の表示部104に表示される。図8に示すように、透過パルス高さが閾値Gを超えたところでデジタル表示器402をゼロリセットする。図10に示すように、デジタル表示器402がゼロにリセットされる。作業者が、透過パルス高さが閾値Gを超えたことを目視で確認し、リセットスイッチ22を押下してもよい。あるいは、第1の超音波探傷器100は、透過パルス高さが閾値Gを超えると、確認ビープ音を発する、あるいは、LEDランプが点灯するといった機能を有していてもよい。
【0044】
<ステップS42:透過パルス閾値エリアR2の検知>
続いて、走査線Lscan上で第1の探触子110を移動させる。このとき、透過パルス高さは徐々に高くなり、ピークを向かえたあと再度低くなっていく。低下する透過パルス高さが再度閾値Gの高さになったときのデジタル表示器402の値を読む。透過パルス高さが再度閾値Gの高さになったときとは、透過パルス高さが閾値Gを離れる(閾値Gを下回る)直前を意味する。第1の超音波探傷器100が、透過パルス高さが閾値Gを超えると確認ビープ音を発するといった機能を有している場合、透過パルス高さが閾値Gを超えてから離れるまで、確認ビープ音が鳴り続ける。
【0045】
図11は、本実施の形態において、透過パルス高さが閾値Gを離れる直前のデジタル表示器402の例である。
このときのデジタル表示器402の値の絶対値は、透過パルス高さが閾値Gを超えてから離れるまでの水平距離を表している。すなわち、図11では、透過パルス高さが閾値Gを超えてから離れるまでの水平距離が21.36mmであることを表している。
【0046】
図12は、本実施の形態に係る透過パルス閾値エリアR2の検知手法を示す模式図である。
透過パルス高さが最初に閾値Gを超えた位置が、第1の探触子110の超音波閾値エリアR1と透過パルス閾値エリアR2とが重なり始めた位置である。ここで、デジタル表示器402をゼロリセットする。このときの第1の探触子110の位置を重なり開始位置Pxとする。
超音波閾値エリアR1とは、第1の探触子110が、閾値Gを超えているパルス高さの超音波を検知する範囲を表す。また、透過パルス閾値エリアR2とは、第2の探触子210から入射された超音波の透過パルスのうち、パルス高さが閾値Gを超えている透過パルスの範囲を表す。
そして、透過パルス高さが再度閾値Gの高さになる位置が、第1の探触子110の超音波閾値エリアR1と透過パルス閾値エリアR2との重なり終わりの位置である。ここで、デジタル表示器402の値を読む。このときの第1の探触子110の位置を重なり終了位置Pyとする。
【0047】
図11および図12の具体例では、超音波閾値エリアR1と透過パルス閾値エリアR2とが重なる水平距離L1は、21.36mmである。この間、透過パルス高さは閾値Gを超え続けている。
このように、表示部104は、走査信号11に基づいて、透過パルスの振幅を透過パルス高さとして、透過パルス高さが閾値Gを超えているか否かを表すパルス高さ表示グラフ41を表示する。そして、表示部104に表示された可視化された走査信号11に基づいて、透過パルス高さが閾値Gを超える位置が、重なり開始位置Pxとして取得される。また、透過パルス高さが閾値Gから離れる位置が、重なり終了位置Pyとして取得される。言い換えると、第1の探触子110が、閾値Gを超えている透過パルスを検知し始めた位置が、重なり開始位置Pxとして取得される。また、第1の探触子110が、閾値Gを超えている透過パルスを検知し終わる位置が、重なり終了位置Pyとして取得される。
なお、図12では超音波閾値エリアR1と透過パルス閾値エリアR2が中心同士を通るように図示されている。しかし、超音波閾値エリアR1と透過パルス閾値エリアR2が中心同士を通る必要はなく、エリア同士が接触し得る範囲において走査されることで、重なり開始位置Pxと重なり終了位置Pyが取得されればよい。
【0048】
<ステップS43:投影点Ptを通る線Lkの検出>
図12に示すように、デジタル表示器402の読み値、すなわち水平距離L1を1/2にした値だけ戻った位置が、この走査線Lscan上の透過パルス高さのピークとなる。ここで、走査線Lscanに対して垂線を引けば、送信探触子である第2の探触子210の中心に対応する位置、すなわち測点Psに対応する投影点Ptを通る線Lkとなる。
【0049】
図13は、走査線Lscan上の透過パルス高さのピークの位置までデジタル表示器402を戻した図である。
図14は、透過パルス高さのピークの位置で走査線Lscan(走査方向Pscan)に対して垂線を引く図である。
水平距離L1が21.36mmの場合、その1/2は10.68mmとなる。よって、図12および図13に示すように、10.68mmだけ第1の探触子110を戻す。このとき、デジタル表示器402の値は、-10.68となる。そして、この位置で探触子ホルダ405を測定治具400から取り外し、図14に示すように、スライダ407を下方にスライドさせる。上述したように、スライダ407の辺部71の延長線は、走査線Lscan(走査方向Pscan)に垂直、かつ、第1の探触子110の中心(第1の基準点111)を通る線Lkとなっている。しかも、線Lkは、走査線Lscan上における透過パルス高さのピークの位置を通っており、走査線Lscanに垂直であるため、送信探触子である第2の探触子210の中心、すなわち測点Psに対応する投影点Ptを通る線Lkとなる。
【0050】
ステップS41からステップS43をまとめると以下の通りである。第1の探触子110により透過パルスを走査線Lscan(第1の走査線の例)に沿って走査する。表示部104に表示されたパルス高さ表示グラフ41を用いることにより、走査線Lscanにおける重なり開始位置Pxと重なり終了位置Pyとが取得される。そして、走査線Lscanにおける重なり開始位置Pxと重なり終了位置Pyとの中心点を通り、かつ、走査線Lscanに垂直な線Lk(第1の線の例)が第1の面310に罫書かれる。
【0051】
<ステップS44:投影点Ptを通る線Lk2の検出>
図15は、本実施の形態において線Lkを検出後、線Lk2を検出した状態を示す図である。
測点Psに対応する投影点Ptを通る線Lkを検出した後、走査方向Pscanとは向きが異なる走査方向Pscan2に沿って測定治具400を設置し、線Lkの検出手順(ステップS41からステップS43)と同様の検出手順を実施し、線Lk2を検出する。線Lk2は、走査線Lscan2上における透過パルス高さのピークの位置を通っており、走査線Lscan2(走査方向Pscan2)に垂直であるため、第2の探触子210の中心、すなわち測点Psに対応する投影点Ptを通る線となる。
ステップS44をまとめると以下の通りである。第1の探触子110により透過パルスを走査線Lscanとは異なる走査線Lscan2(第2の走査線の例)に沿って走査する。表示部104に表示されたパルス高さ表示グラフ41を用いることにより、走査線Lscan2における重なり開始位置Px’と重なり終了位置Py’とが取得される。そして、走査線Lscan2における重なり開始位置Px’と重なり終了位置Py’との中心点を通り、かつ、走査線Lscan2に垂直な線Lk2(第2の線の例)が第1の面310に罫書かれる。
【0052】
<ステップS45:投影点Ptの検出>
図15に示すように、線Lkと線Lk2との交点が投影点Ptとして検出される。
【0053】
***本実施の形態の効果の説明***
例えば、箱桁の内外で操作を行う場合、1台の超音波探傷器に送信および受信の両探触子をケーブルで接続し、鋼板の表裏を探査することは、ケーブル長が長くなり過ぎるといった現場の制約から実施が困難となる場合がある。本実施の形態に係る測点投影システム500によれば、第1の面に配置された第1の超音波探傷器と、第2の面に配置された第2の超音波探傷器は、各々異なる装置であり、鋼板の表裏をケーブルで接続する必要が無い。本実施の形態に係る測点投影システム500によれば、ケーブル等を表裏に渡すことが事実上不可能な現場においても、測点Psに対応する投影点Ptを高精度に検出することができる。
【0054】
また、本実施の形態に係る測点投影システム500では、測点Psから入射された超音波の透過パルスを走査することにより投影点Ptを検出する。よって、本実施の形態に係る測点投影システム500によれば、被測定体である鋼板等に打刻点といった傷を付けることなく、高精度に投影点Ptを検出することができる。
【0055】
透過パルスを走査する際、受信探触子を二次元的に走査して透過パルスのピーク検出し、投影点Ptを1回で特定する方法も考えられる。しかし、本実施の形態に係る測点投影システム500では、投影点Ptを通る線を2本検出し、2本の線Lk,Lk2の交点を投影点Ptとして検出する。よって、本実施の形態に係る測点投影システム500によれば、透過パルスのピークを見落とすことなく、高精度に投影点Ptを求めることができる。
【0056】
本実施の形態に係る測点投影システム500では、第1の面に固定され、第1の探触子を第1の面において摺動自在に保持する測定治具を備える。透過パルスを走査する際、第1の探触子の押し付け圧力により透過パルス高さが変化してしまう虞がある。本実施の形態に係る測点投影システム500によれば、測定治具において探触子の移動時は、主に横方向の力のみを必要とし、垂直方向の圧力をほぼ変えずに走査できる。よって、第1の探触子の押し付け圧力を一定保つことができ、より高精度に投影点Ptを検出することができる。
【0057】
***他の構成***
本実施の形態では、被測定体300として鋼橋の腹板あるいは箱桁等に用いられる鋼板を想定している。しかしながら、本実施の形態は、一面の測点を他面に投影する被測定体であれば、どのような態様にも適用できる。具体例として、タンク、タンカー等の船舶、車両、あるいは建造物等に用いられている鋼板であっても本実施の形態を適用することができる。
【0058】
本実施の形態では、測定治具における探触子、すなわちデジタル表示器の移動は作業者の人手でもよいし、自動的に移動させることができる機構を備えていてもよい。例えば、作業者が遠隔操作により、探触子が取り付けられたデジタル表示器を移動させてもよい。これにより、探触子の押し付け圧力をより均一化することができる。また、箱桁の内部のような人が入ることが困難な場所においても、バッテリー等を搭載することにより、測定治具により測点を投影することができる。
【0059】
また、受信側の超音波探傷器と測定治具のデジタル表示器とを制御線で接続し、透過パルス高さが閾値Gを超えると、超音波探傷器が自動的にデジタル表示器をゼロリセットしてもよい。また、超音波探傷器は、再び透過パルス高さが閾値Gになった時点のデジタル表示器の値を自動的に読み込んでもよい。そして、超音波探傷器は、CPUにより移動距離の1/2の値を算出し、移動距離の1/2だけ戻るように自動的に探触子を移動してもよい。
【0060】
実施の形態1のうち、複数の部分を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、この実施の形態のうち、1つの部分を実施しても構わない。その他、この実施の形態を、全体としてあるいは部分的に、どのように組み合わせて実施しても構わない。
すなわち、実施の形態1では、実施の形態の構成要素の自由な組み合わせ、あるいは実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【0061】
なお、上述した実施の形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明の範囲、本発明の適用物の範囲、および本発明の用途の範囲を制限することを意図するものではない。上述した実施の形態は、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 第1の超音波探傷装置、11 走査信号、100 第1の超音波探傷器、101
増幅器、102 A/D変換器、103 CPU、104 表示部、110 第1の探触子、111 第1の基準点、120 第1のケーブル、20 第2の超音波探傷装置、21 電源スイッチ、22 リセットスイッチ、200 第2の超音波探傷器、210 第2の探触子、211 第2の基準点、220 第2のケーブル、300 被測定体、310 第1の面、320 第2の面、41 パルス高さ表示グラフ、400 測定治具、401 軸部、402 デジタル表示器、403 デジタル測長器、404 固定部、405 探触子ホルダ、406 ホルダ固定用ローレットノブ、407 スライダ、408
取付板、71 辺部、500 測点投影システム、Lo 中心軸、Lk,Lk2 線、Lscan 走査線、Pscan 走査方向、G 閾値、Ps 測点、Pt 投影点、Px,Px’ 重なり開始位置、Py,Py’ 重なり終了位置、L1 水平距離。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15