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特許7104601パッキンとこれを用いた止水方法及び止水構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】パッキンとこれを用いた止水方法及び止水構造
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20220713BHJP
   E03F 5/10 20060101ALI20220713BHJP
   E03C 1/12 20060101ALI20220713BHJP
   E02D 29/12 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
F16J15/10 L
E03F5/10 A
E03C1/12 E
E02D29/12 E
F16J15/10 S
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018184717
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020051606
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】特許業務法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】西 孝樹
(72)【発明者】
【氏名】胸永 政利
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】実公昭62-043031(JP,Y2)
【文献】特開平11-140896(JP,A)
【文献】実開平02-148089(JP,U)
【文献】実開昭61-187945(JP,U)
【文献】実開平04-108674(JP,U)
【文献】国際公開第1989/00900(WO,A1)
【文献】特開2006-144555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/00
E02D 29/045-37/00
E03C 1/12-1/264
E03C 1/266-1/33
E03F 1/00-11/00
F16J 15/00-15/14
F16L 1/00-1/26
F16L 5/00-7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水部材の壁面に設けられた開口に配管を挿通して下水管路系を形成するために、前記開口の周縁に取り付けられ、前記排水部材と前記配管との間を止水するパッキンであって、
前記開口の端面と対向する環状の本体部と、
前記本体部に突設され、前記排水部材の内側面と対向する第一突条部と、
前記本体部に突設され、前記排水部材の外側面と対向する第二突条部と、を具備して構成され、
前記本体部の前記開口側の面と前記第一突条部の前記排水部材内部に対向した面とが、平面及び/又は曲面により、連続して略弧状に形成されており、
前記本体部において前記開口の端面と対向する面の端部が隆起していること
を特徴とするパッキン。
【請求項2】
前記本体部の前記開口側の面が、膨出部を具備すること、
を特徴とする請求項1に記載のパッキン。
【請求項3】
前記膨出部が、前記本体部の前記開口側の面の略中央が膨出することにより形成されること、
を特徴とする請求項2に記載のパッキン。
【請求項4】
前記第一突条部側から前記第二突条部側に切断して該切断面を正面視した際、前記本体部の前記開口側の輪郭線が、前記膨出部の頂点を基準として、前記第一突条部側と前記第二突条部側それぞれが略対称に形成されること、
を特徴とする請求項3に記載のパッキン。
【請求項5】
排水部材の壁面に設けられた開口に配管を挿通して下水管路系を形成するために、前記排水部材と前記配管との間を止水する止水構造であって、
壁面に開口を有する排水部材と、
前記開口の周縁に取り付けられた請求項1~4のいずれかに記載のパッキンと、
前記開口に前記パッキンを介して挿通された配管と、
を具備することを特徴とする止水構造。
【請求項6】
排水部材の壁面に設けられた開口に配管を挿通して下水管路系を形成するために、前記開口の周縁にパッキンを取り付け、前記排水部材と前記配管との間を止水する止水方法であって、
前記パッキンは、
前記開口の端面と対向する環状の本体部と、
前記本体部に突設され、前記排水部材の内側面と対向する第一突条部と、
前記本体部に突設され、前記排水部材の外側面と対向する第二突条部と、を有し、
前記本体部の前記開口側の面と前記第一突条部の前記排水部材内部に対向した面とが平面及び/又は曲面により連続して略弧状に形成され、かつ、前記本体部において前記開口の端面と対向する面の端部が隆起しており、
前記パッキンを前記開口の周縁に嵌合させ、前記配管を前記パッキンの内側に挿通し、前記排水部材の内側において、前記本体部の前記開口側の端部と前記配管とが離隔していること、
を特徴とする止水方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水ます等の排水部材と配管との接続部に配設するパッキン、該パッキンを用いた止水方法及び止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配管が合流する地点等には雨水ます等の排水部材が配設され、当該排水部材を介して配管を接続していた。また、このような排水部材は、配管内を通過するゴミ等の固形物を各地で収集する役割も担っており、配管内の汚れ及び詰まりを好適に防止し、清掃性をも向上することができるため広く普及している。
【0003】
一般的に、上記排水部材と配管との接続は、排水部材に開口を設け、該開口に配管を挿通して行うことが多い。この時、排水部材と配管との間の隙間を埋めるため、パッキン等の止水材が用いられている。
【0004】
従来のパッキンは、例えば特許文献1(特開平10-37295号公報)にあるように、その横断面において配管の挿通先(排水部材内部側)に向かって延設部が設けられており(特許文献1の図3における補助リング部1d)、配管を該延設部に接触させつつ排水部材内に挿通することによってパッキンが排水部材に押圧され、配管と排水部材との隙間を止水するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-37295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のパッキンは上記のように延設部を介して配管からの押圧力をパッキン本体に伝達する構造のため、押圧力が分散するため高い止水性を実現することについて未だ改善の余地があった。また、延設部と配管との接触面積が大きいため、双方間で大きな摩擦抵抗が発生し、配管を容易に挿通することについても未だ改善の余地があった。特に雨水ます等の排水部材の開口と配管の口径が大きい場合には、これらの問題点は顕著に表れる傾向にある。
【0007】
ここで、従来のパッキンの構造に着目すると、延設部を具備していること、及び該延設部を含めた被接触面が広く形成されていること、により、止水性及び施工性のさらなる向上が図れないのは明らかであって、これらの点において特に未だ改善の余地があったといえる。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、簡便な構造で好適な止水性及び施工性を発揮可能なパッキンと、これを用いた止水方法及び止水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決すべく、本発明は、
排水部材の壁面に設けられた開口に配管を挿通して下水管路系を形成するために、前記排水部材の開口の周縁に取り付けられ、前記排水部材と前記配管との間を止水するパッキンであって、
前記排水部材の端面と対向する環状の本体部と、
前記本体部に突設され、前記排水部材の内側面と対向する第一突条部と、
前記本体部に突設され、前記排水部材の外側面と対向する第二突条部と、を具備して構成され、
前記本体部の開口側の面と前記第一突条部の前記排水部材内部に対向した面とが、平面及び/又は曲面により、連続して略弧状に形成されること、
を特徴とするパッキンを提供する。
【0010】
このような構成を有する本発明のパッキンでは、本体部の開口側の面から第一突条部の排水部材内部に対向した面にかけて滑らかな略弧状に形成されていることにより、配管から受けた押圧力を分散させず確実にパッキンを排水部材に押圧し、止水性を好適に向上することができる。
【0011】
また、上記の本発明のパッキンにおいては、
前記本体部の開口側の面が、膨出部を具備することが好ましい。
【0012】
このような構成を有する本発明のパッキンでは、膨出部を優先して配管に接触することができパッキンに対してより強い押圧力を与えて更に止水性を向上することができる。また、パッキンと配管との接触面積を低減して双方間で発生する摩擦抵抗を低減することができる。即ち、膨出部を具備することで止水性の担保及び向上を図ると共に、更なる施工性の向上を達成することができる。
【0013】
また、上記の本発明のパッキンにおいては、
前記膨出部が、前記本体部の開口側の面の略中央が膨出することにより形成されることが好ましい。
【0014】
また、上記の本発明のパッキンにおいては、
前記第一突条部側から前記第二突条部側に切断して該切断面を正面視した際、前記本体部の開口側の輪郭線が、前記膨出部の頂点を基準として、前記第一突条部側と前記第二突条部側それぞれが略対称に形成されることが好ましい。
【0015】
このような構成を有する本発明のパッキンでは、円柱形状や円錐台形状等の排水部材に対してパッキンを配設した場合、開口近傍の形状に合わせてパッキン全体が湾曲し部分的に異なる変形を起こすが、配管の全周に対して膨出部又は本体部のいずれかを確実に当接することができ、良好な止水性を担保することができる。また、第一突条部側及び第二突条部側が同じように配管に接触するため、パッキンの全周で偏りの少ない止水性を発揮することができる。
【0016】
また、上記の本発明のパッキンにおいては、
前記本体部の前記排水部材の端面と対向する面の端部が隆起していることが好ましい。
【0017】
このような構成を有する本発明のパッキンでは、隆起させた端部が排水部材の開口の端面により強く押圧されるため、更に止水性が向上する。
【0018】
また、本発明は、上記本発明のパッキンを用いた止水構造をも提供する。かかる止水構造は、壁面に開口を有する排水部材と、前記開口の周縁に取り付けられた上記本発明のパッキンと、前記開口に前記パッキンを介して挿通された配管と、を具備して下水管路系を形成することを特徴とする。
【0019】
更に本発明では、
排水部材の壁面に設けられた開口に配管を挿通して下水管路系を形成するために、前記排水部材の開口の周縁にパッキンを取り付け、前記排水部材と前記排水配管との間を止水する止水方法であって、
前記パッキンは、
前記排水部材の端面と対向する環状の本体部と、
前記本体部に突設され、前記排水部材の内側面と対向する第一突条部と、
前記本体部に突設され、前記排水部材の外側面と対向する第二突条部と、を有し、
前記本体部の開口側の面と前記第一突条部の前記排水部材内部に対向した面とが、平面及び/又は曲面により、連続して略弧状に形成され、
前記パッキンを前記開口の周縁に嵌合させ、前記配管を前記パッキンの内側に挿通し、前記排水部材の内側において前記本体部の端面と前記配管とが離隔すること、
を特徴とする止水方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、簡便な構造で好適な止水性及び施工性を発揮可能なパッキンと、これを用いた止水方法及び止水構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係るパッキン1を用いた下水管路系の一部を示す斜視図である。
図2】本実施形態に係るパッキン1の構造を示す図であって、図2(a)は、パッキン1の平面図であり、図2(b)は、パッキン1の底面図である。
図3図2(a)における矢視Aの断面図である。
図4図2(a)における矢視Bの端面図である。
図5】本実施形態のパッキン1を排水部材51に配設する工程を示す図であって、図5(a)は、配設前を示す模式図であり、図5(b)は、配設後を示す模式図である。
図6】本実施形態のパッキン1を介して配管53を排水部材51に挿通する工程を示す図であって、図6(a)は、挿通前を示す模式図であり、図6(b)は、挿通後を示す模式図である。
図7】パッキン1を介して配管53を排水部材51に挿通した状態を部分的に拡大視した模式図である。
図8】本実施形態のパッキン1を介して配管53を円柱形状や円錐台形状等の排水部材51に挿通した際の状態を示す図であって、図8(a)は、開口55を正面視した模式図であり、図8(b)は、図8(a)における矢視Cの断面図であり、図8(c)は、図8(a)における矢視Dの断面図である。
図9】膨出部9の位置を異にした変形例を示す図であって、図9(a)は、膨出部9を本体部3の中心方向D1に向う面の上方向Z1に形成した変形例の断面図であり、図9(b)は、膨出部9を本体部3の中心方向D1に向う面の下方向Z2に形成した変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るパッキンとこれを用いた止水方法及び止水構造における代表的な実施形態について、図を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明は図示されるものに限られるものではなく、各図面は本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。更に、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
【0023】
1.パッキン1の概要
図1を用いて、本実施形態に係るパッキン1の概要について説明する。図1は、本実施形態に係るパッキン1を用いた下水管路系の一部を示す斜視図である。パッキン1は、雨水ます等の排水部材51に設けた開口55の周縁61に配設して使用するものであって、このパッキン1を介して排水用の配管53を排水部材51に挿通することで配管53と排水部材51間の止水を好適に行う。
【0024】
ここで、排水部材51は、雨水ます、汚水ます、会所ます、排水に含まれる異物を捕集する阻集器、及び円筒状の配管等を広く含むものであり、本実施形態では下水管路系を形成するための部材である。また、排水部材51は種々の形状を有することができ、例えば円錐台形状、角錐台形状、円柱形状、及び角柱形状等が挙げられ、特に限定されるものではない。
【0025】
2.パッキン2の構造
次に、図2図4を用いて、本実施形態に係るパッキン1の構造について詳細に説明する。図2は、本実施形態に係るパッキン1の構造を示す図であって、図2(a)は、パッキン1の平面図であり、図2(b)は、パッキン1の底面図である。また、図3は、図2(a)における矢視Aの断面図であり、図4は、図2(a)における矢視Bの端面図である。
【0026】
なお、本実施形態のパッキン1の構造を理解容易にするため、平面視した状態(図2参照)のパッキン1の中心を仮想中心点Cで表し、径方向において外から中心方向をD1、中心から外方向をD2とする。また、縦断面視(側面視)(図3及び4参照)した状態のパッキン1の上方向(径方向に対する垂直方向のうちの上向き)をZ1とし、下方向(径方向に対する垂直方向のうちの下向き)をZ2とする。なお、図2においてはパッキン1をやや太めに表している。
【0027】
パッキン1は、ゴム等の弾性材を用いて形成され、図2図4に示すとおり、平面視した状態で略環状部分(特に図2参照)で形成され、また断面視した状態で略U字状(特に図4参照)に形成された特徴を有している。
【0028】
より具体的には、パッキン1は、最も中心方向D1側に配置されて排水部材51の開口55の端面に対向する本体部3と、本体部3の上方向Z1端部から外方向D2に突設されて排水部材51の内側面57と対向する第一突条部5と、本体部3の下方向Z2端部から外方向D2に突設されて排水部材51の外側面59と対向する第二突条部7と、から構成されており、略U字の縦断面形状を有し、かつ中心を軸にして当該断面形状を有する略環状体を形成している。
【0029】
図4に示すように、本体部3の中心方向D1に向う面(開口側の面)と、第一突条部5の上方向Z1に向う面(排水部材51内部に対向する面)とが、平面及び/又は曲面により、連続して略弧状に形成されている点に特徴を有している。なお、本体部3の中心方向D1に向う面(開口側の面)と、第一突条部5の下方向Z2に向う面(排水部材51外部に対向する面)も、平面及び/又は曲面により、連続して略弧状に形成されている。
【0030】
本実施形態のパッキン1は、上述のとおり本体部3から第一突条部5において、配管53が当接しうる面を含む範囲の面が滑らかな略弧状に形成されているため、配管53より受けた押圧力を分散させず確実にパッキン1を排水部材51に押圧することができ、排水部材51の開口55と配管53間の隙間を埋めて止水性を好適に向上することができる。
【0031】
更に、従来のパッキンが具備した延設部等を具備しないため、パッキン1と配管53との接触面積を抑えて簡便に配管53をパッキン1内に挿通することができ、施工性を向上することができる。
【0032】
本体部3、第一突条部5、及び第二突条部7の各サイズ、及び中心の位置は配設する排水部材51及び配管53のサイズに応じて適宜決定することができる。また、中心方向D1~外方向D2における第一突条部5の長さを第二突条部7より短くすればパッキン1の上方向Z1部分を容易に排水部材51内部に挿通でき、開口55の周縁61に対してパッキン1を簡便に配設することができる。
【0033】
また、本実施形態のパッキン1は、本体部3の中心方向D1に向う面(開口側の面)が、膨出部9を備えている点に特徴を有する。膨出部9は、本体部3の中心方向D1に向う面に形成された滑らかな山形部位乃至は凸状部位であって、上記した従来のパッキンにおいて根本近傍に谷部を有する程度に高く突起状に形成された延設部とは明確に異なるものである。このような膨出部9を具備することにより、パッキン1に配管53を挿通した際に膨出部9が配管53に接触してパッキン1により強い押圧力を与えるため、止水性が更に確実に向上する。
【0034】
更に、本体部3において膨出部9が優先して配管53に接触するため、パッキン1と配管53との接触面積を抑えて配管53挿通時の摩擦抵抗を低減し、簡便に配管53をパッキン1に挿通することができる。即ち、本実施形態のパッキン1は、膨出部9を具備することで止水性の担保及び向上を図ると共に、更なる施工性の向上をも同時に達成することができる。
【0035】
この膨出部9は、排水部材51の形状及び開口55の形状に応じて本体部3の中心方向D1に向う面(開口側の面)の種々の位置に形成すればよいが、より好ましくは本体部3の中心方向D1に向う面(開口側の面)の略中央を膨出させて形成し、本体部3の中心方向D1に向う面(開口側の面)の輪郭線が、膨出部9の頂点を基準として、第一突条部5側と第二突条部7側それぞれで略対称となるよう形成することが望ましい。なお、膨出部9の位置を異にした変形例、及び膨出部9を本体部3の中心方向D1に向う面(開口側の面)の略中央に具備した際の作用効果は後述する。
【0036】
また、本体部3の外方向D2に向う面(排水部材51の端面と対向する面)の端部が隆起していることが望ましい。パッキン1を介して配管53を排水部材51に挿通した際、本体部3の外方向D2に向う面の隆起させた端部が排水部材51の開口55の端面により強く押圧されるため、更に止水性が向上する。
【0037】
3.パッキン1の使用方法
続いて、図5及び図6を用いて本実施形態に係るパッキン1の使用方法について詳細に説明する。図5は、本実施形態のパッキン1を排水部材51に配設する工程を示す図であって、図5(a)は、配設前を示す模式図であり、図5(b)は、配設後を示す模式図である。また、図6は、本実施形態のパッキン1を介して配管53を排水部材51に挿通する工程を示す図であって、図6(a)は、挿通前を示す模式図であり、図6(b)は、挿通後を示す模式図である。
【0038】
<排水部材51に対するパッキン1の配設>
図5(a)及び(b)に示すとおり、まず排水部材51に設けた開口55に対してパッキン1の上方向Z1(第一突条部5側)を対向させつつ排水部材51の形状に合わせてパッキン1全体を湾曲させ、徐々に開口55にパッキン1を接近させる。
【0039】
続いて、第一突条部5を部分的に弾性変形(上方向Z1側に開ける)させることにより、第一突条部5と第二突条部7との離隔距離を広げると共に、当該部分を開口55から排水部材51内部に挿通して周縁61に係止させる。この要領で第一突条部5の全周を排水部材51内部に挿通し、第一突条部5と第二突条部7との間に開口55の周縁61が挿入乃至は嵌入されてパッキン1が排水部材51の開口55に配設される。
【0040】
<パッキン1を介した配管53の挿通>
次に、図6(a)及び(b)に示すとおり、パッキン1を配設した開口55に対して配管53の端部開口を対向させ、パッキン1を介して下方向Z2側(第二突条部7側)から上方向Z1側(第二一突条部5側)に向かって開口55に挿通する。
【0041】
この際、配管53の側面にパッキン1の膨出部9及び本体部3が接触することで上記挿通に対する抵抗が発生するが、これに反抗して更に配管53を水平又は垂直方向(後述するX及びY方向)に揺らしながら排水部材51側に押して挿通させることでパッキン1の本体部3が開口55の端面に押圧され、排水部材51の開口とパッキン1間、及びパッキン1と配管53間の隙間を埋めて止水可能状態を構成することができる。
【0042】
パッキン1は、本体部3の中心方向D1に向う面(開口側の面)と、第一突条部5の上方向Z1に向う面(排水部材51内部に対向する面)とが、平面及び/又は曲面により、連続して略弧状に形成されており、排水部材51の内側においてパッキン1の本体部の端面と配管53とが離隔するから、配管53の挿通性が向上される。なお、開口55に対する配管53の挿通深さは、排水部材51及び配管53のサイズに応じて適宜決定すればよい。
【0043】
4.パッキン1を用いることによる効果
次に、図7を用いて本実施形態に係るパッキン1の効果について詳細に説明する。図7は、パッキン1を介して配管53を排水部材51に挿通した状態を部分的に拡大視した模式図である。上述したとおり本実施形態のパッキン1は、本体部3の中心方向D1に向う面から第一突条部5の上方向Z1に向う面にかけて滑らかな略弧状に形成されていることにより、配管53から受けた押圧力を分散させず確実にパッキン1を排水部材51に押圧し、止水性を好適に向上することができる。
【0044】
また、パッキン1を介して配管53を排水部材51に挿通した際、本体部3が具備した膨出部9が優先して配管53に接触する。これにより、パッキン1に対してより強い押圧力を与えて止水性を更に向上すると共に、パッキン1と配管53との接触面積を小さくして双方間で発生する摩擦抵抗を低減することができる。即ち、本実施形態のパッキン1は、膨出部9を具備することで止水性の担保及び向上を図ると同時に更なる施工性の向上を達成することができる。
【0045】
また、本実施形態のパッキン1は、円柱形状や円錐台形状等の排水部材51に対して配設する場合にも優れた効果を奏することができる。図8を用いて本実施形態のパッキン1を円柱形状や円錐台形状等の排水部材51に配設した際の効果について説明する。
【0046】
図8は、本実施形態のパッキン1を介して配管53を円柱形状や円錐台形状等の排水部材51に挿通した際の状態を示す図であって、図8(a)は、開口55を正面視した模式図であり、図8(b)は、図8(a)における矢視Cの断面図であり、図8(c)は、図8(a)における矢視Dの断面図である。なお、ここでは図8(a)の開口55を正面視した状態で略水平方向をX、略垂直方向をYとして説明する。
【0047】
円柱形状や円錐台形状等の排水部材51に対してパッキン1を配設する場合、略曲面に形成された開口55にパッキン1を配設することになるため、開口55近傍の形状に合わせてパッキン1全体が湾曲し部分的に異なる変形を起こす。
【0048】
上記変形についてより具体的に詳述すると、図8(b)に示すとおり、水平方向X(開口55の左右部分)近傍の部位は、開口55に対する配管53の挿通方向と反対方向R1に回転する変形を起こす。また、図8(c)に示すとおり、垂直方向Y(開口55の上下部分)近傍の部位は、開口55に対する配管53の挿通方向と同方向R2に回転する変形を起こす。即ちパッキン1全体がひねられた様な状態となり、配管53と当接する位置が上記水平方向X近傍と垂直方向Y近傍とで異なる。
【0049】
しかしながら、本実施形態のパッキン1は、上述したとおり膨出部9を本体部3の中心方向D1に向う面(開口側の面)の略中央に形成すること、及び本体部3の中心方向D1に向う面(開口側の面)の輪郭線が、膨出部9の頂点を基準にして第一突条部5側と第二突条部7側それぞれで略対称となるよう形成すること(特に図4参照)で、配管53の全周に対して膨出部9又は本体部3のいずれかを確実に当接することができ、良好な止水性を担保することができる。
【0050】
また、従来のパッキンのように延設部が設けられている場合、水平方向X近傍の部位が開口55に対する配管53の挿通方向と反対方向R1に回転する変形に伴って、延設部も本体部の中心方向D1に向かって開口を塞ぐように変位するため、排水部材の平面に開口が形成されている場合に対して延設部と配管との抵抗がより大きくなり配管が挿通しにくくなるが、本実施形態のパッキンは延設部がないため配管を容易に挿通することができる。このように開口55が略曲面に形成されている場合に、従来パッキンと比べてさらに施工性を向上することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明してきたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の精神及び教示を逸脱しない範囲でその他の改良例や変形例が存在する。そして、かかる改良例や変形例は全て本発明の技術的範囲に含まれることは、当業者にとっては容易に理解されるところである。
【0052】
5.膨出部9の位置を異にした変形例
上述したとおり、膨出部9は本体部3の中心方向D1に向う面(開口側の面)の種々の位置に形成してもよい。図9(a)及び(b)に示すとおり、例えば膨出部9を本体部3の中心方向D1に向う面の上方向Z1又は下方向Z2のいずれかに寄せて形成すれば、排水部材51の形状、開口55の形状、及び配管53の形状に応じて膨出部9を配管53に当接させ、好適に止水性を担保することができる。
【0053】
なお、図9(a)及び(b)は、膨出部9の位置を異にした変形例を示す図であって、図9(a)は、膨出部9を本体部3の中心方向D1に向う面の上方向Z1に形成した変形例の断面図であり、図9(b)は、膨出部9を本体部3の中心方向D1に向う面の下方向Z2に形成した変形例の断面図である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のパッキンは、簡便な構造を有し、配管と排水部材との接続部において、好適な止水性及び施工性を発揮可能なものである。
【符号の説明】
【0055】
1 パッキン
3 本体部
5 第一突条部
7 第二突条部
9 膨出部
51 排水部材
53 配管
55 開口
57 内側面
59 外側面
61 周縁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9