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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】燃料配置特定システム
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/02 20060101AFI20220713BHJP
   G06T 7/70 20170101ALI20220713BHJP
【FI】
G21C19/02 010
G21C19/02 020
G06T7/70 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018212922
(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2020079743
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小西 孝明
(72)【発明者】
【氏名】長井 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】小林 希士
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-257981(JP,A)
【文献】特開平09-257982(JP,A)
【文献】特開昭63-191998(JP,A)
【文献】特開2018-096931(JP,A)
【文献】特開2002-334323(JP,A)
【文献】特開2005-351659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/02
G21C 17/00-17/14
G06T 7/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料集合体と前記燃料集合体を支持する支持部とを上方から撮像するように設置された撮像機と、
前記燃料集合体と前記支持部に光を上方向から照射するように設置された上方照明と、
前記燃料集合体と前記支持部に光を斜め上方向から照射するように設置された斜方照明と、
前記撮像機が撮像した画像を処理する画像処理部と、
を備え、
前記撮像機は、
前記上方照明が点灯し前記斜方照明が消灯した状態で第1の撮像画像を撮像し、
前記上方照明が消灯し前記斜方照明が点灯した状態で第2の撮像画像を撮像し、
前記画像処理部は、
前記第2の撮像画像に含まれる領域の輝度差によって、前記燃料集合体の上部に設けられた識別情報を抽出する処理と、
前記第1の撮像画像と前記第2の撮像画像との輝度の差分から、前記燃料集合体の間の格子状領域を抽出する処理と、
を実施する、
ことを特徴とする燃料配置特定システム。
【請求項2】
前記撮像機は、原子力発電所の炉心の上方に設置され、前記炉心に配置された、複数の前記燃料集合体と前記支持部である上部格子板とを上方から撮像し、
前記上方照明は、前記炉心に光を上方向から照射するように設置され、
前記斜方照明は、前記炉心に光を斜め上方向から照射するように設置されている、
請求項1に記載の燃料配置特定システム。
【請求項3】
前記画像処理部は、抽出した前記識別情報の画像と抽出した前記格子状領域の画像とを重ね合わせて合成して合成画像を得る、
請求項2に記載の燃料配置特定システム。
【請求項4】
前記炉心は、前記燃料集合体と前記上部格子板を含む複数の部分領域に分けられ、
前記撮像機は、前記炉心の上方を移動して前記部分領域ごとに前記第1の撮像画像と前記第2の撮像画像を撮像し、
前記画像処理部は、全ての前記部分領域についての前記合成画像を得ることで、前記識別情報と前記格子状領域が表示された前記炉心の全体撮像画像を得る、
請求項3に記載の燃料配置特定システム。
【請求項5】
前記上方照明は、前記炉心の上方を移動する台車に備えられている、
請求項2に記載の燃料配置特定システム。
【請求項6】
前記斜方照明は、前記炉心の上方から吊り下げられて配置されている、
請求項2に記載の燃料配置特定システム。
【請求項7】
前記斜方照明は、前記炉心の壁面に備えられている、
請求項2に記載の燃料配置特定システム。
【請求項8】
前記斜方照明は、前記斜方照明からの光が前記燃料集合体に遮られて前記上部格子板に当たらない俯角を持つように設置されている、
請求項2に記載の燃料配置特定システム。
【請求項9】
前記斜方照明は、前記炉心の周方向に沿って複数が設置されている、
請求項2に記載の燃料配置特定システム。
【請求項10】
前記画像処理部は、前記全体撮像画像において、前記燃料集合体の位置を前記格子状領域に基づいて定める、
請求項4に記載の燃料配置特定システム。
【請求項11】
前記撮像機は、原子力発電所の燃料格納プールの上方に設置され、前記燃料格納プールに配置された、複数の前記燃料集合体と前記支持部である燃料ラックとを上方から撮像し、
前記上方照明は、前記燃料格納プールに光を上方向から照射するように設置され、
前記斜方照明は、前記燃料格納プールに光を斜め上方向から照射するように設置されている、
請求項1に記載の燃料配置特定システム。
【請求項12】
前記画像処理部は、抽出した前記識別情報の画像と抽出した前記格子状領域の画像とを重ね合わせて合成して合成画像を得る、
請求項11に記載の燃料配置特定システム。
【請求項13】
前記燃料格納プールは、前記燃料集合体と前記燃料ラックを含む複数の部分領域に分けられ、
前記撮像機は、前記燃料格納プールの上方を移動して前記部分領域ごとに前記第1の撮像画像と前記第2の撮像画像を撮像し、
前記画像処理部は、全ての前記部分領域についての前記合成画像を得ることで、前記識別情報と前記格子状領域が表示された前記燃料格納プールの全体撮像画像を得る、
請求項12に記載の燃料配置特定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所において燃料の配置を特定するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の原子炉内に配置された燃料(燃料集合体)は、使用後に使用済燃料集合体として保管プール(燃料格納プール)に保管される。使用済燃料集合体の炉心から保管プールへの移動、及び新しい燃料集合体の炉心への装荷は、定期検査での一工程として実施されている。炉心の所定の位置から燃料が取り出されているか、保管プールの所定の位置に燃料が配置されたか、及び炉心の所定の位置に燃料が装荷されたかを確認するために、燃料集合体の上部に刻印された、個々の燃料集合体を特定する文字(刻印文字)を水中カメラ等によって撮像し、撮像画像を人が目視することで、正しい刻印文字の燃料集合体を取り扱ったかを判断している。
【0003】
従来の技術では、多数配列された燃料集合体を1台の水中カメラを用いて1列ごとに撮像していたので、全ての燃料集合体の刻印文字の特定には非常に時間がかかり、定期検査に要する時間が長い。
【0004】
特許文献1には、燃料配置の検査時間を短縮する技術の例として、複数の水中カメラと水中照明の反射板を備え、燃料交換機等によって水中を移動し、燃料集合体の複数列を同時に撮影する装置が記載されている。
【0005】
また、燃料集合体が正しい位置に装荷されているかを確認するには、燃料集合体の刻印文字と炉心内の位置情報とを紐付けて管理する必要がある。
【0006】
特許文献2には、刻印文字と燃料集合体の装荷位置を特定する技術の例が記載されている。特許文献2に記載の装置は、燃料交換機に取り付けられた位置指示具と、上部格子板または燃料ラックに配置された番地測定治具とを備え、燃料交換機を移動した際の位置指示具と番地測定治具とのずれを測定することで、燃料集合体の装荷位置番地を特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平05-027079号公報
【文献】特開2001-318186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
定期検査にかかる時間を短縮するには、燃料集合体の刻印文字を効率的に認識し、どの刻印文字の燃料集合体がどの位置に存在するかを特定する時間を短縮する必要がある。燃料集合体の刻印文字をより効率的に認識するには、より多くの燃料集合体を一括で撮像できることが望ましい。燃料集合体の刻印文字と位置を特定する時間を短縮するには、燃料集合体の刻印文字と位置とを効率よく関連付けることができるのが望ましい。
【0009】
特許文献1に記載の装置のように、水面高さ付近の燃料交換機から燃料集合体の付近まで固定具で吊り下げられた水中カメラを水中で移動させる装置では、水中カメラと燃料集合体との距離が短く、より多くの燃料集合体を一括で撮像するのが困難である。また、固定具で吊り下げられた水中カメラを、水中にて高速で移動させるのは難しい。
【0010】
特許文献2に記載の装置のように、燃料交換機を移動させて燃料集合体の位置を特定する装置では、短時間で複数の燃料集合体の位置を特定するのが困難であり、燃料集合体の刻印文字と位置とを効率よく関連付けるのが難しい。
【0011】
本発明の目的は、燃料集合体の刻印文字を効率的に認識でき、燃料集合体の刻印文字と位置とを高速に特定できる燃料配置特定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による燃料配置特定システムは、複数の燃料集合体と前記燃料集合体を支持する支持部とを上方から撮像する撮像機と、前記燃料集合体と前記支持部に光を上方向から照射するように設置された上方照明と、前記燃料集合体と前記支持部に光を斜め上方向から照射するように設置された斜方照明と、前記撮像機が撮像した画像を処理する画像処理部とを備える。前記撮像機は、前記上方照明が点灯し前記斜方照明が消灯した状態で第1の撮像画像を撮像し、前記上方照明が消灯し前記斜方照明が点灯した状態で第2の撮像画像を撮像する。前記画像処理部は、前記第2の撮像画像に含まれる領域の輝度差によって、前記燃料集合体の上部に設けられた識別情報を抽出する処理と、前記第1の撮像画像と前記第2の撮像画像との輝度の差分から、前記燃料集合体の間の格子状領域を抽出する処理とを実施する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、燃料集合体の刻印文字を効率的に認識でき、燃料集合体の刻印文字と位置とを高速に特定できる燃料配置特定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例による燃料配置特定システムの構成の概略を示す図である。
図2】本発明の実施例による燃料配置特定システムが実行する、燃料の配置を特定するプロセスを示すブロック図である。
図3】炉心と燃料格納プールを上方から見た図である。
図4】炉心の一部を上方から見た図である。
図5図4の破線A-Aにおける断面図である。
図6】上方照明撮像画像の一部を示す図である。
図7】上方照明撮像画像における、燃料集合体上部ハンドルの上面を示す図である。
図8図7の破線B-Bにおける断面図である。
図9】炉心の一部を上方から見た図である。
図10図9の破線C-Cにおける断面図である。
図11】斜方照明撮像画像の一部を示す図である。
図12】斜方照明撮像画像における、燃料集合体上部ハンドルの上面を示す図である。
図13図12の破線B-Bにおける断面図である。
図14A】刻印文字の画像を示す図である。
図14B】燃料集合体の間の格子状領域の画像を示す図である。
図14C】刻印文字の画像と格子状領域の画像とを重ね合わせて合成して得た部分領域の合成画像を示す図である。
図14D】全体撮像画像を示す図である。
図15】刻印文字とその位置とを表す刻印文字リストの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による燃料配置特定システムは、原子力発電所における燃料交換作業のために、炉心に装荷された燃料または燃料格納プールに保管された燃料の配置を特定することができる。以下、本発明の実施例による燃料配置特定システムを、図面を用いて説明する。
【0016】
図1は、本実施例による燃料配置特定システムの構成の概略を示す図である。燃料配置特定システムは、撮像機5、上方照明6、斜方照明7、台車8、照明制御部9、画像取得部10、画像処理部11、記憶部12、及び表示部14を備える。照明制御部9、画像取得部10、画像処理部11、及び記憶部12は、コンピュータ13で構成されている。
【0017】
撮像機5は、原子力発電所の炉心1に配置された撮像対象である燃料集合体2と上部格子板4を撮像するように、炉心1の上方に設置されている。撮像機5は、燃料集合体2と上部格子板4を上方から、上部格子板4に略垂直な方向(燃料集合体2の長さ方向に略平行な方向)に撮像する。上部格子板4は、燃料集合体2の上部を支持する支持部であり、格子状の板状部材である。
【0018】
上方照明6は、炉心1に光を上方向から照射するように、撮像機5の近傍に設置されている。すなわち、上方照明6は、上部格子板4の上面に対して略垂直な方向(燃料集合体2の長さ方向に略平行な方向)に光を照射する。
【0019】
斜方照明7は、炉心1に光を斜め上方向から照射するように、上方照明6よりも炉心1の近傍に設置されている。すなわち、斜方照明7は、上部格子板4の上面に対して斜め上方向から光を照射する。
【0020】
台車8は、撮像機5と上方照明6を備え、炉心1の上方を移動する。台車8は、燃料交換機に設けられた台車を用いてもよく、既存の任意の台車を用いることもできる。台車8は、作業員に制御される。
【0021】
照明制御部9は、上方照明6と斜方照明7に接続され、上方照明6と斜方照明7の点灯と消灯を切り替える。
【0022】
画像取得部10は、撮像機5に接続され、撮像機5の撮像を制御し、撮像機5が撮像した画像を取得する。
【0023】
画像処理部11、画像取得部10から送られた画像を処理する。
【0024】
記憶部12は、画像処理部11から送られた画像を保存する。
【0025】
表示部14は、コンピュータ13に接続され、画像処理部11が処理した画像や記憶部12が記憶した画像を表示する。
【0026】
燃料集合体2は、その上部に燃料集合体上部ハンドル3を備える。燃料集合体2の上部には、個々の燃料集合体2を特定するための識別情報が設けられている。この識別情報は、個々の燃料集合体2に固有の情報であり、燃料集合体2の上部に刻印文字として刻印されている。刻印文字は、燃料集合体上部ハンドル3の上面に設けられてもよく、燃料集合体2の上面に設けられてもよい。
【0027】
図1に示した例では、撮像機5と上方照明6は、器具を介して台車8に固定されており、斜方照明7は、炉心1の上方から支持部材で吊り下げられて配置されている。撮像機5と上方照明6と斜方照明7の配置は、後述する撮像画像が得られるような配置であれば、図1に示した配置に限らない。例えば、斜方照明7を炉心1の領域の壁面に設置してもよく、上方照明6を炉心1の上方から吊り下げて配置してもよい。
【0028】
なお、本実施例では、燃料集合体2の刻印文字は、文字、数字、及び記号を含み、燃料集合体上部ハンドル3の上面に窪んで描かれている。
【0029】
本実施例による燃料配置特定システムは、撮像機5が撮像した燃料集合体2と上部格子板4の画像から燃料集合体2の刻印文字と炉心1内での位置とを関連付けて、どの刻印文字を持つ燃料集合体2が炉心1内のどの位置に存在するかを特定する。
【0030】
図2は、本実施例による燃料配置特定システムが実行する、燃料(燃料集合体2)の配置を特定するプロセスを示すブロック図である。
【0031】
ステップS101で、燃料集合体2の配置の特定プロセスが開始される。
【0032】
ステップS102は、台車の移動ステップである。台車8は、撮像機5が燃料集合体2と上部格子板4を撮像する位置に移動するまで、移動する。炉心1は、台車8の移動範囲と撮像機5の撮像範囲に応じて、炉心1の上方から見て、撮像対象である燃料集合体2と上部格子板4を含む複数の部分領域に分けられる。撮像機5は、予め定めた順番に従って、この部分領域を1つずつ撮像する。このため、撮像機5は、撮像すべき部分領域を撮像できる位置に、台車8で移動する。なお、撮像機5が一度の撮像で燃料集合体2と上部格子板4の全体を撮像できれば、この全体が1つの部分領域であると考える。撮像機5が撮像すべき部分領域を撮像できる位置まで移動したら、台車8は、移動を停止する。
【0033】
ステップS103は、上方照明の点灯ステップである。上方照明6は、照明制御部9により点灯し、燃料集合体2の上面、燃料集合体上部ハンドル3の上面、及び上部格子板4の上面に対して略垂直に光を照射する。斜方照明7は、照明制御部9により消灯している。
【0034】
ステップS104は、画像の撮像ステップである。撮像機5は、上方照明6が点灯し斜方照明7が消灯した状態で、撮像すべき部分領域に存在する燃料集合体2と上部格子板4を撮像する。
【0035】
ステップS105は、上方照明撮像画像データの取得ステップである。画像取得部10は、撮像機5がステップS104で撮像した画像である上方照明撮像画像を、上方照明撮像画像データとして取得する。
【0036】
ステップS106は、斜方照明の点灯ステップである。斜方照明7は、照明制御部9により点灯し、燃料集合体2の上面、燃料集合体上部ハンドル3の上面、及び上部格子板4の上面に対して斜め上方向から光を照射する。上方照明6は、照明制御部9により消灯する。
【0037】
ステップS107は、画像の撮像ステップである。撮像機5は、斜方照明7が点灯し上方照明6が消灯した状態で、撮像すべき部分領域に存在する燃料集合体2と上部格子板4を撮像する。
【0038】
ステップS108は、斜方照明撮像画像データの取得ステップである。画像取得部10は、撮像機5がステップS107で撮像した画像である斜方照明撮像画像を、斜方照明撮像画像データとして取得する。
【0039】
ステップS109は、刻印文字の抽出処理ステップである。画像処理部11は、画像取得部10から送られた斜方照明撮像画像データを用い、斜方照明撮像画像に含まれる領域の輝度差によって、斜方照明撮像画像から燃料集合体2のそれぞれの刻印文字を抽出する。
【0040】
ステップS110は、刻印文字画像データの取得ステップである。画像処理部11は、ステップS109で抽出した刻印文字の画像を、刻印文字画像データとして取得する。
【0041】
ステップS111は、画像の差分処理ステップである。画像処理部11は、画像取得部10から送られた上方照明撮像画像データと斜方照明撮像画像データを用い、上方照明撮像画像と斜方照明撮像画像との輝度の差分を求め、求めた差分から、上部格子板4と制御棒17を含む領域である、燃料集合体2の間の格子状領域(燃料集合体2同士の間に形成された格子状領域)を抽出する。
【0042】
ステップS112は、マッピング画像データの取得ステップである。画像処理部11は、ステップS111で抽出した格子状領域の画像を、マッピング画像データとして取得する。
【0043】
ステップS113は、全領域を撮像したか否かの判定ステップである。作業員または画像処理部11は、燃料集合体2と上部格子板4からなる領域の部分領域の全て、すなわち撮像対象である燃料集合体2と上部格子板4の全領域を、撮像機5が撮像したか否かを判定する。
【0044】
撮像機5が全領域を撮像していない場合は、ステップS102に戻り、撮像機5が次に撮像すべき部分領域を撮像できる位置に移動するまで、台車8が移動し、ステップS103からステップS113を繰り返す。
【0045】
撮像機5が全領域を撮像していた場合は、ステップS114に進む。
【0046】
ステップS114は、画像の合成ステップである。画像処理部11は、ステップS110で取得した刻印文字画像データとステップS112で取得したマッピング画像データとを用いて、刻印文字の画像と格子状領域の画像とを、刻印文字の位置と燃料集合体2の位置とが炉心1内での位置と一致するように重ね合わせて合成する。燃料集合体2の位置は、格子状領域の位置から分かる。画像処理部11は、全ての部分領域、すなわち撮像対象である燃料集合体2と上部格子板4の全領域について、刻印文字の画像と格子状領域の画像とを合成した合成画像を得ることで、炉心1の全体撮像画像を得る。この全体撮像画像には、刻印文字と格子状領域が表示されている。
【0047】
ステップS115は、全体撮像画像データの取得ステップである。画像処理部11は、ステップS114で合成した全領域についての画像である全体撮像画像を、全体撮像画像データとして取得する。
【0048】
ステップS116は、画像の保存・表示ステップである。画像処理部11は、ステップS115で取得した全体撮像画像データを記憶部12に保存し、全体撮像画像を表示部14に表示する。画像処理部11は、全体撮像画像データの記憶部12への保存と全体撮像画像の表示部14への表示との一方または両方を実行することができる。また、画像処理部11は、上方照明撮像画像データ、斜方照明撮像画像データ、刻印文字画像データ、及びマッピング画像データのうち少なくとも1つのデータを記憶部12に保存してもよく、上方照明撮像画像、斜方照明撮像画像、刻印文字の画像、及び格子状領域の画像のうち少なくとも1つの画像を表示部14に表示してもよい。
【0049】
図2に示したプロセスでは、上方照明6を点灯して撮像した後に、上方照明6を消灯して斜方照明7を点灯して撮像する。本実施例による燃料配置特定システムでは、初めに斜方照明7を点灯し上方照明6を消灯して撮像し、その後に斜方照明7を消灯し上方照明6を点灯して撮像してもよい。
【0050】
図1に示した燃料配置特定システムは、上方照明6と斜方照明7を1つずつ備える。本実施例による燃料配置特定システムは、上方照明6と斜方照明7のそれぞれを、1つまたは複数備えることができる。例えば、燃料配置特定システムが複数の斜方照明7を備える場合には、炉心1を上方から見たときに燃料集合体2を囲むように、炉心1の周方向に沿って複数の斜方照明7が設置され、複数の斜方照明7のうちの1つまたは複数を交替で点灯するか、複数の斜方照明7の全てを同時に点灯して撮像する。複数の斜方照明7を点灯すると、斜方照明撮像画像に含まれる領域の輝度差や上方照明撮像画像と斜方照明撮像画像との輝度差が大きくなり、より正確かつ容易に刻印文字や格子状領域を抽出できる。
【0051】
以下では、図2のブロック図に示したステップについて詳細に説明する。
【0052】
ステップS102の台車8の移動ステップについて、図3を用いて説明する。
【0053】
図3は、炉心1と燃料格納プール15を上方から見た図である。炉心1には、燃料集合体2が配置されている。燃料格納プール15は、燃料ラック22に収納された使用済の燃料集合体2を保管する。撮像機5を備えた台車8は、炉心1と燃料格納プール15の上方の平面に設けられたレール上を移動する。台車8は、直交する2軸に沿う平行移動の組み合わせによって、任意の位置に移動可能な構成を備える。
【0054】
ステップS102において、台車8は、撮像機5が撮像すべき部分領域の上方に位置するまで、移動する。
【0055】
次に、ステップS103の上方照明の点灯ステップと、ステップS104の画像の撮像ステップと、ステップS105の上方照明撮像画像データの取得ステップについて、図4から図8を用いて説明する。
【0056】
図4は、炉心1の一部を上方から見た図である。炉心1は、上方から見ると、上部格子板4により正方形の領域(セル)に分割される。セルの中心には、4つのブレードを備えて上方から見ると十字形状の制御棒17が配置される。上部格子板4と制御棒17とで囲まれた、セル内の4つの領域のそれぞれには、チャンネルボックス16に囲われた燃料集合体2が1体ずつ配置されている。燃料集合体2の上部には、燃料集合体上部ハンドル3が取り付けられている。セル内では、4体の燃料集合体2の燃料集合体上部ハンドル3が、制御棒17のブレードの向きと45度をなす角度で、制御棒17の中心を囲むように配置されている。燃料集合体上部ハンドル3の上面には、ハンドル3の向きに沿って、燃料集合体2の刻印文字26が刻印されている。
【0057】
なお、燃料集合体上部ハンドル3の向きは、任意であり、制御棒17のブレードの方向と45度をなす角度でなくてもよい。
【0058】
図5は、図4の破線A-Aにおける断面図、すなわち炉心1の一部を側方から見た断面図である。なお、図5では、制御棒17を示すのを省略している。
【0059】
上部格子板4は、その上面がチャンネルボックス16の上端より下に位置する。燃料集合体上部ハンドル3は、その上面がチャンネルボックス16の上端より上に位置する。これらの位置関係から、上方照明6が点灯したときに炉心1を上方から見ると、上部格子板4を直接視認できるとともに、燃料集合体上部ハンドル3の上面を直接視認できる。
【0060】
ステップS103で上方照明6が点灯し(斜方照明7は消灯している)、ステップS104で撮像機5が撮像すると、図6に示す上方照明撮像画像が取得できる。
【0061】
図6は、ステップS104で撮像機5が撮像した上方照明撮像画像の一部を示す図である。1つの上方照明撮像画像には複数(例えば40個)のセルが含まれるが、図6では、説明を分かりやすくするために、1つのセルについての上方照明撮像画像30を示している。
【0062】
燃料集合体2、燃料集合体上部ハンドル3、上部格子板4、及び制御棒17には、上方照明6からの光が当たっている。このため、上方照明撮像画像30では、燃料集合体2、燃料集合体上部ハンドル3、上部格子板4、及び制御棒17を視認可能である。
【0063】
図7図8を用いて、上方照明撮像画像30における、燃料集合体上部ハンドル3の上面に刻印された刻印文字26の見え方について説明する。
【0064】
図7は、上方照明撮像画像30における、燃料集合体上部ハンドル3の上面を示す図である。燃料集合体上部ハンドル3の上面は、刻印文字26が刻印されていない平面である平面領域18と、刻印文字26の形を表している刻印文字領域19とに分かれる。
【0065】
図8は、図7の破線B-Bにおける断面図、すなわち燃料集合体上部ハンドル3の上部を側方から見た断面図である。図8に示すように、刻印文字領域19は、燃料集合体上部ハンドル3の上面が窪んだ領域であり、窪んだ形状によって刻印文字26が描かれている。
【0066】
上方照明6が点灯して、燃料集合体上部ハンドル3の上面に対して略垂直に光6aが照射されていると、刻印文字領域19には真上から上方照明6の光6aが当てられている。このため、上方照明撮像画像30では、刻印文字領域19には光6aが遮られて影となる部分がなく、刻印文字領域19の輝度は、平面領域18と同じ輝度となる。
【0067】
以上のようにして、ステップS104で、図6に示すような燃料集合体2、燃料集合体上部ハンドル3、上部格子板4、及び制御棒17を視認可能な上方照明撮像画像30が撮像される。上方照明撮像画像30では、平面領域18と刻印文字領域19とが同じ輝度である。
【0068】
ステップS105で、画像取得部10は、上方照明撮像画像30を上方照明撮像画像データとして取得する。なお、平面領域18と刻印文字領域19とが同じ輝度で撮像されているので、上方照明撮像画像30を用いて刻印文字26を抽出するのは困難である。
【0069】
次に、ステップS106の斜方照明の点灯ステップと、ステップS107の画像の撮像ステップと、ステップS108の斜方照明撮像画像データの取得ステップについて、図9から図13を用いて説明する。
【0070】
図9は、図4と同様に、炉心1の一部を上方から見た図である。図9には、炉心1を斜め上方向から照射する斜方照明7も示している。図9では、一例として、斜方照明7は、照射する光の向きが燃料集合体上部ハンドル3の向きに直交するまたは平行であるように配置されており、破線C-Cの向きに光を照射する。但し、斜方照明7が照射する光の向きは、破線C-Cの向きでなくてもよい。
【0071】
図10は、図9の破線C-Cにおける断面図、すなわち炉心1の一部を側方から見た断面図である。図10には、斜方照明7も示している。なお、図10では、制御棒17を示すのを省略している。
【0072】
図9図10に示すように、炉心1を上方から見たときに破線C-Cの方向(図10の左右方向)において、チャンネルボックス16の、斜方照明7から最も遠い部分と、この部分に破線C-Cの方向で対向する上部格子板4の、斜方照明7から最も遠い部分との距離をDとする。
【0073】
図10に示すように、チャンネルボックス16の上面と上部格子板4の上面との、上下方向の距離をHとする。
【0074】
上部格子板4の上面は、チャンネルボックス16の上面(上端)より下に位置する。このため、斜方照明7の俯角θ(斜方照明7の光軸の、水平面に対する角度)が以下の式(1)
θ<arctan(H/D)・・・(1)
を満たすと、上部格子板4は、チャンネルボックス16の陰に入り、斜方照明7からの光が当たらない。斜方照明7は、照射した光がチャンネルボックス16に遮られて上部格子板4に当たらないように、式(1)を満たすような俯角θを持つように設置される。
【0075】
燃料集合体上部ハンドル3は、その上面がチャンネルボックス16の上端より上に位置する。
【0076】
制御棒17は、通常では、斜方照明7の俯角θが式(1)を満たすと、チャンネルボックス16に遮られて斜方照明7からの光が当たらないような位置に配置される。
【0077】
以上の位置関係から、上方照明6が消灯して斜方照明7が点灯したときに炉心1を上方から見ると、上部格子板4と制御棒17は、チャンネルボックス16に遮られて光が当たらず視認性が低下するが、燃料集合体2と燃料集合体上部ハンドル3は視認可能である。
【0078】
ステップS106で上方照明6が消灯して斜方照明7が点灯し、ステップS107で撮像機5が撮像すると、図11に示す斜方照明撮像画像が取得できる。
【0079】
図11は、ステップS107で撮像機5が撮像した斜方照明撮像画像の一部を示す図である。図11では、図6と同様に、1つのセルについての斜方照明撮像画像40を示している。
【0080】
燃料集合体2の上面と燃料集合体上部ハンドル3の上面には、斜方照明7からの光が当たっているが、上部格子板4と制御棒17には、斜方照明7からの光が当たっていない。このため、斜方照明撮像画像40では、燃料集合体2と燃料集合体上部ハンドル3は、視認可能であり、上部格子板4と制御棒17は、視認性が低下する。斜方照明撮像画像40では、上部格子板4と制御棒17を含む領域である、燃料集合体2の間の格子状領域25が、斜方照明7からの光が当たらず視認性が低下する。
【0081】
図12図13を用いて、斜方照明撮像画像40における、燃料集合体上部ハンドル3の上面に刻印された刻印文字26の見え方について説明する。
【0082】
図12は、斜方照明撮像画像40における、燃料集合体上部ハンドル3の上面を示す図である。燃料集合体上部ハンドル3の上面は、刻印文字26が刻印されていない平面である平面領域18と、刻印文字26の形を表している刻印文字領域19とに分かれる。
【0083】
図13は、図12の破線B-Bにおける断面図、すなわち燃料集合体上部ハンドル3の上部を側方から見た断面図である。図13に示すように、刻印文字領域19は、燃料集合体上部ハンドル3の上面が窪んだ領域であり、窪んだ形状によって刻印文字26が描かれている。
【0084】
上方照明6が消灯し斜方照明7が点灯して、燃料集合体上部ハンドル3の上面に対して斜め上方向から光6bが照射されていると、刻印文字領域19は、窪んだ領域であるため平面領域18の影ができる。このため、斜方照明撮像画像40では、刻印文字領域19の輝度は、平面領域18の輝度よりも低い。
【0085】
以上のようにして、ステップS107で、図11に示すような、燃料集合体2の間の格子状領域25(上部格子板4と制御棒17を含む領域)の視認性が低く、燃料集合体2と燃料集合体上部ハンドル3が視認可能であり、燃料集合体上部ハンドル3の刻印文字領域19と平面領域18とで輝度に差がある斜方照明撮像画像40が撮像される。
【0086】
ステップS108で、画像取得部10は、斜方照明撮像画像40を斜方照明撮像画像データとして取得する。平面領域18と刻印文字領域19とが異なる輝度で撮像されているので、斜方照明撮像画像を用いて刻印文字26を抽出することが可能である。
【0087】
次に、ステップS109の刻印文字の抽出処理ステップについて、図11図12を用いて説明する。
【0088】
図11に示すように、斜方照明撮像画像40には、燃料集合体2と燃料集合体上部ハンドル3が、燃料集合体2の間の格子状領域25(上部格子板4と制御棒17を含む領域)よりも高い輝度で撮像されている。図12に示すように、斜方照明撮像画像40には、燃料集合体上部ハンドル3の上面の刻印文字領域19が、平面領域18よりも低い輝度で撮像されている。
【0089】
画像処理部11は、斜方照明撮像画像データを用いて斜方照明撮像画像40から、燃料集合体2または燃料集合体上部ハンドル3の領域を、燃料集合体2の間の格子状領域25との輝度差によって抽出し、次に、抽出した領域から、刻印文字領域19を、平面領域18との輝度差によって抽出する。抽出された刻印文字領域19は、刻印文字26を表す。
【0090】
例えば、画像処理部11は、任意の閾値以上の輝度を持つ明るい領域を抽出する二値化処理によって、斜方照明撮像画像40から燃料集合体2の領域を抽出し、次に、抽出した燃料集合体2の領域から、任意の閾値以下の輝度を持つ暗い領域を抽出する二値化処理によって、刻印文字領域19を抽出する。なお、二値化処理に用いる閾値は、所望の領域を抽出できれば任意の値でよく、固定値でも可変値でもよい。可変の閾値は、例えば、画像の平均輝度などの画像により定まるパラメータを基に、処理する画像に応じて決めることができる。また、画像処理部11は、刻印文字領域19を抽出できれば、二値化処理以外の任意の処理を用いてもよく、例えば輝度差を用いたエッジ領域抽出処理を用いてもよい。
【0091】
ステップS110で、画像処理部11は、ステップS109で抽出した刻印文字領域19の画像(刻印文字26の画像)を、刻印文字画像データとして取得する。
【0092】
次に、ステップS111の画像の差分処理ステップについて、図6図11を用いて説明する。
【0093】
図6に示すように、上方照明撮像画像30には、燃料集合体2、燃料集合体上部ハンドル3、上部格子板4、及び制御棒17が高い輝度で撮像されている。図11に示すように、斜方照明撮像画像40には、燃料集合体2と燃料集合体上部ハンドル3が、燃料集合体2の間の格子状領域25(上部格子板4と制御棒17を含む領域)よりも高い輝度で撮像されている。
【0094】
画像処理部11は、上方照明撮像画像データと斜方照明撮像画像データとを用いて、上方照明撮像画像30と斜方照明撮像画像40との輝度の差分を求め、この差分から燃料集合体2の間の格子状領域25(上部格子板4と制御棒17を含む領域)を抽出する。
【0095】
このとき、刻印文字領域19も、上方照明撮像画像30と斜方照明撮像画像40とで輝度に差分があるため抽出される。しかし、刻印文字領域19は燃料集合体2の間の格子状領域25に比べて面積が小さく幅が狭いため、画像処理における領域の収縮・膨張処理により、格子状領域25を選択的に抽出可能である。なお、格子状領域25は、例えば、領域面積による選択等の他の方法を用いて抽出してもよい。
【0096】
次に、ステップS112で、画像処理部11は、ステップS111で抽出した燃料集合体2の間の格子状領域25(上部格子板4と制御棒17を含む領域)の画像を、マッピング画像データとして取得する。
【0097】
次に、ステップS113で、撮像機5が、撮像対象である燃料集合体2と上部格子板4の全領域を撮像したか否かを判定する。この判定は、例えば、これまでに撮像した全ての部分領域が、撮像対象である燃料集合体2と上部格子板4の全領域を含んでいるか否かを調べることで実行できる。ステップS113の処理は、作業員が行っても画像処理部11が行ってもよい。撮像機5が全領域を撮像した場合は、画像の合成ステップであるステップS114に進む。撮像機5が全領域を撮像していない場合は、まだ撮像していない部分領域を撮像するために、台車の移動ステップであるステップS102に戻り、ステップS102からステップS113を繰り返す。
【0098】
次に、ステップS114の画像の合成ステップについて、図14Aから図14Dを用いて説明する。
【0099】
図14Aは、ステップS109で抽出した刻印文字の画像50を示す図である。図14Aには、1つのセルについての刻印文字の画像50を2つ示している。1つの刻印文字の画像50には、4つの刻印文字26が表示されている。
【0100】
図14Bは、ステップS111で抽出した燃料集合体2の間の格子状領域の画像60を示す図である。図14Bには、1つのセルについての格子状領域の画像60を2つ示している。格子状領域の画像60において、格子状領域25で囲まれた領域は、燃料集合体2が存在する領域である。
【0101】
図14Cは、同一の部分領域について、刻印文字の画像50と格子状領域の画像60とを重ね合わせて合成して得た部分領域の合成画像70を示す図である。図14Cには、図14Aに示した刻印文字の画像50と、図14Bに示した格子状領域の画像60とを合成した部分領域の合成画像70を示している。
【0102】
図14Dは、ステップS114で得られる全体撮像画像20を示す図である。全体撮像画像20は、撮像対象の全ての燃料集合体2と刻印文字26が、炉心1内での配置と同じ配置で表示された画像である。図14Dでは、見やすくするために、一部の燃料集合体2だけを描き、刻印文字26を描いていない。
【0103】
ステップS114では、画像処理部11は、全ての部分領域、すなわち撮像対象である燃料集合体2と上部格子板4の全領域について、刻印文字画像データとマッピング画像データとを用いて、刻印文字の画像50と格子状領域の画像60を合成する。
【0104】
初めに、画像処理部11は、部分領域のそれぞれについて、同一の部分領域を撮像した刻印文字の画像50と格子状領域の画像60とを重ね合わせて合成し、部分領域の合成画像70を得る。画像処理部11は、全ての部分領域について、部分領域の合成画像70を得る。
【0105】
次に、画像処理部11は、全ての部分領域についての部分領域の合成画像70を、合成画像70内の刻印文字26と燃料集合体2の位置が炉心1内でのこれらの位置と一致するように、互いに結合する。刻印文字26と燃料集合体2の炉心1内での位置は、合成画像70に撮像された部分領域の炉心1内での位置から特定できる。部分領域の炉心1内での位置は、例えば、台車8の位置と撮像機5の撮像位置と撮像範囲から特定できる。
【0106】
画像処理部11は、このようにして、炉心1について刻印文字26と燃料集合体2の間の格子状領域25とが表示された全体撮像画像20、すなわち、撮像対象の全ての刻印文字26と燃料集合体2とが表示された全体撮像画像20を得る。
【0107】
同一の部分領域を撮像した刻印文字の画像50と格子状領域の画像60は、合成されて重ねて表示される。従って、刻印文字26は、格子状領域の画像60中の上部格子板4の位置と関連付けられて、全体撮像画像20内に表される。すなわち、刻印文字画像データとマッピング画像データは、互いに関連付けられる。
【0108】
また、画像処理部11は、全体撮像画像20において、燃料集合体2の位置を、燃料集合体2の間の格子状領域25に基づいて定めることができる。例えば、画像処理部11は、全体撮像画像20において、格子状領域25で囲まれた領域の位置を示す行番号と列番号により、燃料集合体2の位置を特定することができる。この行番号と列番号は、全体撮像画像20上に配置された格子状領域25の全体の形状(または、上部格子板4の全体の形状)から、任意の方法で定めることができる。
【0109】
なお、燃料集合体2の位置は、この方法に限らず、任意の方法で特定することができる。例えば、上部格子板4に特徴的な構造を持つセル(上部格子板4で形成される領域)があれば、画像処理部11は、全体撮像画像20において、このセル(または、このセルを形成する格子状領域25)の位置をその特徴的な構造によって抽出し、このセルを基準として行番号と列番号を定め、この行番号と列番号により燃料集合体2の位置を特定してもよい。
【0110】
ステップS115で、画像処理部11は、ステップS114で得られた全体撮像画像20を、全体撮像画像データとして取得する。
【0111】
ステップS116で、画像処理部11は、ステップS115で取得した全体撮像画像データを記憶部12に保存したり、全体撮像画像20を表示部14に表示したりする。作業員は、全体撮像画像20を表示部14に表示して、炉心1内での燃料集合体2の位置と燃料集合体2の刻印文字26を特定し、どの刻印文字26の燃料集合体2がどの位置に存在するかを特定できる。
【0112】
本実施例では、刻印文字26と上部格子板4は、同一の画像(全体撮像画像20)に表示して互いに関連付けている。刻印文字26と上部格子板4は、同一の画像中の位置によらなくても、互いに関連付けることができる。例えば、刻印文字の画像50に表示された刻印文字26の炉心1内のアドレスと、格子状領域の画像60に表示された格子状領域25(上部格子板4と制御棒17を含む領域)の炉心1内のアドレスとを用いて、刻印文字26の位置を上部格子板4に対して関連付けることができる。刻印文字画像データとマッピング画像データは、このようして互いに関連付けることもできる。
【0113】
画像処理部11は、上部格子板4に対して位置を関連付けた刻印文字26を、刻印文字リストとして記憶部12に保存したり表示部14に表示したりすることができる。
【0114】
図15は、刻印文字26とその位置とを示す刻印文字リスト21の例を示す図である。刻印文字リスト21の行と列は、炉心1内のアドレスを示す。例えば、刻印文字リスト21において、A列1行の刻印文字「AA01」は、炉心1内のアドレス「A1」に存在すること(すなわち、刻印文字「AA01」を持つ燃料集合体2は、炉心1内のアドレス「A1」に位置すること)が示されている。
【0115】
本実施例による燃料配置特定システムは、以上に説明した構成を備え、燃料集合体2の刻印文字26を効率的に認識でき、燃料集合体2の刻印文字26と燃料集合体2の炉心1内の位置とを高速に関連付けて特定できる。このため、本実施例による燃料配置特定システムは、どの刻印文字26を持つ燃料集合体2が炉心1内のどの位置に存在するかを効率よく特定して、燃料の配置を特定する時間を短縮できる。
【0116】
また、本実施例による燃料配置特定システムでは、撮像機5は、燃料集合体2の上方を移動する台車8に固定され、燃料集合体2から遠い位置から燃料集合体2を撮像する。このため、本実施例による燃料配置特定システムでは、1度の撮影で広い範囲の領域が撮影でき、より多くの燃料集合体2を一括で撮像できる。また、本実施例による燃料配置特定システムでは、互いに異なる領域(部分領域)を撮像した複数の画像を結合することで、広い範囲の撮像画像を得ることができるので、より多くの燃料集合体2の画像を得ることができえる。
【0117】
なお、本実施例では、炉心1に装荷された燃料集合体2の配置を特定する例を説明したが、本発明による燃料配置特定システムは、原子力発電所の燃料格納プール15(図3)に保管された使用済の燃料集合体2の配置を特定することもできる。燃料集合体2は、燃料格納プール15では、燃料ラック22に支持されている。燃料ラック22は、上部格子板4と同様に格子状に区切られている。従って、本発明による燃料配置特定システムの、燃料格納プール15に保管された燃料集合体2の配置を特定する実施例での構成は、上述した実施例において、炉心1を燃料格納プール15に置き換えるとともに、上部格子板4を燃料ラック22に置き換えれば得られる。燃料ラック22は、燃料集合体2を支持する支持部であり、格子状の形状を有する。本発明による燃料配置特定システムでは、燃料格納プール15に保管された燃料集合体2の配置を特定する構成でも、燃料ラック22を上記の実施例での上部格子板4として扱うことで、上記の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0118】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0119】
1…炉心、2…燃料集合体、3…燃料集合体上部ハンドル、4…上部格子板、5…撮像機、6…上方照明、6a…光、6b…光、7…斜方照明、8…台車、9…照明制御部、10…画像取得部、11…画像処理部、12…記憶部、13…コンピュータ、14…表示部、15…燃料格納プール、16…チャンネルボックス、17…制御棒、18…平面領域、19…刻印文字領域、20…全体撮像画像、21…刻印文字リスト、22…燃料ラック、25…格子状領域、26…刻印文字、30…上方照明撮像画像、40…斜方照明撮像画像、50…刻印文字の画像、60…格子状領域の画像、70…部分領域の合成画像。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図15