(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】ドレン回収システムおよびドレン回収方法
(51)【国際特許分類】
F22D 11/00 20060101AFI20220713BHJP
【FI】
F22D11/00 H
(21)【出願番号】P 2018217447
(22)【出願日】2018-11-20
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤島 英樹
(72)【発明者】
【氏名】深井 忠章
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】宮木 望
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-154905(JP,A)
【文献】特開2012-026606(JP,A)
【文献】特開2014-112018(JP,A)
【文献】特開2010-048490(JP,A)
【文献】特開2001-183493(JP,A)
【文献】特開昭50-009475(JP,A)
【文献】特許第3455445(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラを含む火力発電設備を重油燃料により起動するときに前記ボイラの空気を、
加熱した蒸気で予熱することで、発生するドレンを排出する空気予熱器と、
前記空気予熱器から排出されるドレンを貯蔵するドレンタンクと、
前記ドレンタンクの前記ドレンの回収先の一つとされる脱気器と、
前記空気予熱器または前記ドレンタンクの温度を検出する第1温度検出器と、
前記脱気器の温度を検出する第2温度検出器と、
前記火力発電設備を起動してから負荷を上昇させてゆく中で、前記第1温度検出器および前記第2温度検出器を監視し、負荷上昇に伴い重油燃料から石炭燃料へ切り替わるときに、前記第1温度検出器により検出された前記空気予熱器または前記ドレンタンクの温度を前記第2温度検出器により検出される前記脱気器の温度が超える前に、前記ドレンの回収先を前記脱気器から他の回収先へ切り替えるよう振分部を制御する制御部と、
前記ドレンタンクと前記脱気器との間にドレン回収路として設けられたドレン回収用配管と、
前記ドレン回収用配管の出口と前記脱気器のドレン導入口とを、前記脱気器側に下り勾配で接続する傾斜配管と
を具備するドレン回収システム。
【請求項2】
前記傾斜配管の傾斜角度が、水平方向に対して30度以上75度未満の範囲である請求項1記載のドレン回収システム。
【請求項3】
前記ドレン回収用配管または前記ドレン回収用配管から分岐して前記傾斜配管に接続されるバイパス配管に弁を設ける場合、前記弁をボール弁またはゲート弁とする請求項1
又は請求項
2記載のドレン回収システム。
【請求項4】
ボイラを含む火力発電設備を重油燃料により起動するときに空気予熱器が前記ボイラの空気を、
加熱した蒸気で予熱することで発生するドレンを排出し、
前記空気予熱器から排出されるドレンをドレンタンクに貯蔵し、
前記ドレンタンクの前記ドレンの回収先の一つである脱気器へ振り分け、
前記空気予熱器または前記ドレンタンクの温度を第1温度検出器で、前記脱気器の温度を第2温度検出器で検出し、
前記火力発電設備の負荷上昇に伴い、重油燃料から石炭燃料に切り替わるときに、
前記第1温度検出器により検出された前記空気予熱器または前記ドレンタンクの温度を
前記第2温度検出器で検出された前記脱気器の温度が超える前に、前記ドレンタンクと前記脱気器との間に設けたドレン回収用配管のドレン回収調節弁を制御して前記ドレンの回収先を前記脱気器から他の回収先へ振り分け、
前記脱気器側の前記ドレン回収用配管に残ったドレンを、前記ドレン回収用配管の出口と前記脱気器のドレン導入口とを前記脱気器側に下り勾配で接続する傾斜配管を通じて前記脱気器へ回収するドレン回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ドレン回収システムおよびドレン回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭や重油などの化石燃料を用いる火力発電設備(以下「発電プラント」称す)では、発電プラントの起動過程において、重油にて起動することが多く、ボイラで使用する燃焼用空気の温度を蒸気によって予熱する空気予熱器(スチームエアヒータともいう)が設置されている。
【0003】
空気予熱器で空気の予熱に使った蒸気は、空気温度を上昇させることで熱交換し凝縮水(ドレン)化し、空気予熱器系外に排出する。
【0004】
空気予熱器で発生したドレンは、温度が高く発生量も多いことから、プラント熱サイクルの一つであるボイラ給水系統内ヘ回収するのが効率的である。
【0005】
プラント熱サイクルでは、ドレンを既設のボイラ給水系統内の設備である脱気器ヘ回収することが有効であるが、脱気器は、通常、タービン建屋の最上部(ドレンタンクの上)に設置されるため、以下に示すようなドレン回収を目的とした機器を設置している。
【0006】
すなわち、空気予熱器のドレンを一次回収するドレンタンクと、このドレンタンクのドレンを、配管を通じて脱気器に汲み上げるドレンポンプとを設け、配管内をドレンポンプで昇圧することでドレンタンクのドレンを脱気器ヘ回収するようにしている。
【0007】
石炭火力発電プラントの場合、プラント始動時から中間負荷(石炭燃料ヘの切り換え負荷に達する)までは、重油で運転するプラントが多く、特に石炭燃料ヘ切り替えるときには、必要な空気の流量が減少し、これが蒸気量の減少に繋がり、ドレンの流量が著しく減少する。
【0008】
このように、重油から石炭に燃料が切り替わる中間負荷の状態では、空気予熱器のドレン温度よりも脱気器の器内温度が高くなるという温度の逆転現象が発生し、これが原因で、配管内で回収されるドレンによる水撃現象(ウォータハンマ現象)が起きる。
【0009】
詳細に説明すると、ドレン回収用の配管内をドレン流量が減少することに伴い配管内に空間が発生し、脱気器の蒸気がその空間を埋めるために逆流し始め、空気予熱器ドレンの低温ドレンと脱気器の内部の高温飽和蒸気が直接接触することで、瞬間に凝縮されて、配管内の空間にドレンが急速に移動し、これがウォータハンマ現象の元になる。ウォータハンマ現象が発生すると、配管やその周囲の機器(弁など)がダメージを受けて破損し(例えば配管に亀裂や破断が生じ)、これが蒸気の外部噴出に繋がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第3455445号公報
【文献】特開2010-48490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来は、プラント始動時から中間負荷に至ったときにドレンの回収先を脱気器から他の回収先に切り替えるが、この際に、脱気器の前段の配管に残ったドレンが脱気器から逆流する蒸気と混じり合い、瞬間に凝縮されたドレンが配管内の空間を急速に移動し、これにより発生したウォータハンマ現象によって、配管やその周囲の機器(弁など)がダメージを受けるため、その部位の劣化状況の確認などのメンテナンス作業が短い周期で必要になるという問題があった。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、空気予熱器から排出されるドレンの回収先を脱気器からそれ以外の回収先へ切り替えることで生じるウォータハンマ現象を防止し、脱気器へのドレン配管やその周囲の機器に対するメンテナンス周期を長くすることができるドレン回収システムおよびドレン回収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態のドレン回収システムは、空気予熱器、ドレンタンク、脱気器、ドレン回収用配管、傾斜配管、第1温度検出器、第2温度検出器、制御部を備える。空気予熱器はボイラを含む火力発電設備を重油燃料により起動するときにボイラの空気を、加熱した蒸気で予熱することで、発生するドレンを排出する。ドレンタンクは空気予熱器から排出されるドレンを貯蔵する。脱気器はドレンタンクのドレンの回収先の一つとされる。第1温度検出器は、空気予熱器またはドレンタンクの温度を検出する。第2温度検出器は、脱気器の温度を検出する。制御部は、火力発電設備を起動してから負荷を上昇させてゆく中で、第1温度検出器および第2温度検出器を監視し、負荷上昇に伴い重油燃料から石炭燃料へ切り替わるときに、第1温度検出器により検出された空気予熱器またはドレンタンクの温度を第2温度検出器により検出される脱気器の温度が超える前に、ドレンの回収先を脱気器から他の回収先へ切り替えるよう振分部を制御する。ドレン回収用配管はドレンタンクと脱気器との間にドレン回収路として設けられる。傾斜配管はドレン回収用配管の出口と脱気器のドレン導入口とを、脱気器側に下り勾配で接続する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の火力発電プラントにおける空気予熱器ドレン回収システムの構成を示す図である。
【
図2】各計測ポイントでの計測データによる切り替えタイミングを示すグラフである。
【
図3】第2実施形態の火力発電プラントにおける空気予熱器ドレン回収システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、実施形態を詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1はドレン回収システムを含む一つの実施の形態の火力発電プラントを示す図である。
【0016】
第1実施形態の火力発電プラントは、主要設備として、ボイラ、タービン、発電機などの主要設備の他に、空気予熱器ドレン回収システムを備える。
【0017】
図1に示すように、空気予熱器ドレン回収システムは、例えば蒸気式の空気予熱器1、ドレンタンク9、ドレンポンプ11、脱気器20、これら機器を接続する配管(空気予熱器ドレン管8、ドレン管16、ドレン水張り管22など)と、各機器に設けられた検出器(空気温度や蒸気温度、水位などの検出器4、14、24、25など)と、これら検出器と信号線で接続された制御装置15を備える。
【0018】
空気予熱器1は、ボイラへ供給する空気とタービンから抽出した蒸気との間で熱交換を行うことでボイラへ供給する空気を予熱する。
【0019】
空気温度検出器4は、空気予熱器出口空気ダクト3に設置される。空気温度検出器4は空気予熱器1の温度を検出する。水位検出器14は、ドレンタンク9の水位を検出する。ドレン温度検出器24は、ドレンタンク9の出口に接続される配管に設けられている。ドレン温度検出器24は、ドレンタンク9のドレンの温度を検出する。脱気器温度検出器25は、脱気器の温度を検出する。
【0020】
空気予熱器ドレン管8は、空気予熱器1からドレンタンク9へドレンを送る流路である。ドレンタンク9は、空気予熱器1で発生したドレンを、空気予熱器ドレン管8を通じて回収し一次貯水する。ドレンタンクベント弁10は、制御によりドレンタンク9内から外部へドレンを放出する。
【0021】
ドレンポンプ11は、ドレンタンク9に貯水されたドレンをドレンタンク9から排出する。ドレンタンク9から排出されたドレンは、ドレンポンプ11によりプラント熱サイクルの設備(脱気器20またはその他の回収先30など)へ送られ、プラント熱サイクルの設備で利用する水として回収される。つまり脱気器20またはその他の回収先30などは、ドレンタンク9のドレンの回収先の一つとされる。
【0022】
ポンプ再循環系統12は、ドレンポンプ11から送り出したドレンの一部をドレンタンク9に戻して循環させることでドレンポンプ11の最低流量を保護する。ポンプ再循環系統12には配管や弁が含まれる。
【0023】
ドレン逆止弁13は、ポンプ停止時にドレン管16の側からドレンポンプ11へドレンが逆流することを防止するための逆止弁である。復水逆止弁29は、復水管21へドレンが逆流することを防止するための逆止弁である。
【0024】
ドレン配管16は、ドレンタンク9からドレンポンプ11により送り出されて逆止弁13を通過したドレンを脱気器20の側へ導くためのドレンの流路である。
脱気器回収調節弁17は、制御装置15から出力される制御信号により、調節弁の流量開度を変化させてドレンタンク9の排出ドレン量を調節する。脱気器回収調整弁前弁18は、脱気器回収調節弁17の前段に設けられる電動弁である。
【0025】
ドレン水張り管22は、脱気器回収調節弁17および脱気器回収調整弁前弁18、脱気器直前ドレン配管19aおよび復水管21により脱気器20付近の流路(ドレン管16)の水張りを行う。
【0026】
ドレンタンク水位調節弁23および脱気器回収調節弁17は、制御装置15から出力される制御信号により、脱気器20または脱気器20以外の回収先である回収先30へドレンの流れを切り替える。つまりこのドレンタンク水位調節弁23および脱気器回収調節弁17などは、ドレンの回収先を、脱気器20または他の回収先30に振り分ける振分部として機能する。
【0027】
ドレン水張り管22と脱気器20とを繋ぐドレン回収路であるドレン回収用配管19には、脱気器回収調節弁17およびその前弁である脱気器回収調整弁前弁18が設けられている。脱気器直前ドレン配管19aは、上記ドレン回収用配管19の一部であり、脱気器回収調節弁17以降の脱気器20に至る配管部分である。脱気器回収調整弁前弁18は電動弁である。
【0028】
脱気器直前ドレン配管19aは、水平管または垂直管ではなく、下り勾配の傾斜角度が例えば水平方向に対して30°以上70°未満の範囲で設置される傾斜配管である。なお、ドレン水張り管22と脱気器20のドレン導入口20aとの位置関係(高低差)によっては、例えば高低差が大きい場合は、脱気器直前ドレン配管19aの設置角度を、例えば水平方向に対して45°以上75°未満の範囲にしてもよい。設置角度については、水平方向を基準にして説明したが、垂直方向を基準にしてもよい。
【0029】
すなわち、脱気器直前ドレン配管19aは、その傾斜角度の範囲が水平方向に対して45度以上75度未満または30度以上70度未満で設置される。上記2つの傾斜角度の範囲を総合すると、傾斜角度は、脱気器20側に下り勾配で水平方向に対して30°以上75°未満の範囲が好ましいと言える。
【0030】
このような傾斜角度の範囲で脱気器直前ドレン配管19aを設置することで、蒸気凝縮現象が発生する前に、脱気器回収調節弁17以降の配管に残留しているドレンを脱気器20に流して全量回収できる。
【0031】
この際、配管に残留しているドレンは、配管底部を流れ落ち、脱気器20から逆流してくる飽和蒸気は、配管上部を伝って上ってゆくため、互いが混合することなく入れ替わるので、ドレン回収用配管19での蒸気の逆流による蒸気凝縮現象が発生することがなくなる。
【0032】
制御装置15は、各検出器により検出される検出値に応じて各機器を制御する。具体的には、プラント起動時に、制御装置15は、空気温度検出器4により検出される空気温度を監視し、空気温度が予め設定されている温度よりも低い場合、空気予熱器1を制御して、蒸気で空気を予熱し空気の温度を上昇させる。この際、空気予熱器1は、蒸気によって発生する凝縮水(ドレン)を、ドレン管8を通じてドレンタンク9へ排出する。
【0033】
また、制御装置15は、水位検出器14により検出されるドレンタンク9の水位を監視し、水位の変化(上昇または下降)に応じてドレンポンプ11を制御してドレンタンク9の排水量を調節する。この際、ドレンタンク9の水位(ドレン貯蔵量)が一定の値を超える場合は、プラント負荷や空気予熱器1、ドレンタンク9、脱気器20などの温度に応じて、ドレンタンク水位調節弁23や脱気器回収調節弁17などを制御して、排出されるドレンを脱気器20または他の回収先30へ振り分け、プラント熱サイクルの設備で利用する水として回収する。
【0034】
例えば制御装置15は、プラント起動後、プラント負荷が上昇する中で、空気予熱器1またはドレンタンク9の温度と脱気器20の温度を監視し、互いの温度の逆転現象が発生する前に、ドレンタンク水位調節弁23および脱気器回収調節弁17を制御して、それまで脱気器20へ回収していたドレンを他の回収先30へ振り分ける。この際、制御装置15は、ドレンタンク水位調節弁23を開け脱気器回収調節弁17を閉じる。
【0035】
次に、
図2のグラフを参照してこの火力発電プラントの動作を説明する。
図2のグラフにおいて、符号31は空気予熱器1のドレン温度、符号32は重油使用量、符号33はプラント負荷、符号34は脱気器20の器内温度、符号35は石炭使用量、符号36はドレン回収切替点、符号37はウォータハンマ発生域を示す。
火力発電プラントを起動させるときは、ボイラの燃料に重油を使用するため、蒸気式の空気予熱器1にて空気の温度を大気温度から上昇させるのに重油を使用する。このとき、空気の温度を上昇させるのに使用する熱源が蒸気であるため、火力発電プラントの起動時にはドレンが大量に発生し、空気予熱器1の内部の圧力も上昇することになる。
【0036】
空気予熱器1で発生したドレンは、空気予熱器1の飽和温度となるために高温のドレンがドレンタンク9に流入する。このとき火力発電プラントは、起動を開始したばかりの状熊であるために脱気器20内部の温度(器内温度)は100℃以下の状態である。
【0037】
そして、プラント負荷(発電負荷)33を上昇させると、
図2に示すように、重油使用量32が増加すると共に空気予熱器1で消費される蒸気量も増加し、発生ドレン量も増えることになるが、そのままプラント負荷(発電負荷)33が上昇し、重油燃料から石炭燃料に切り替わるタイミングになると、重油の使用量32が減少する。これに伴い蒸気の消費量も低下し、発生するドレンの量が減少すると共に、空気予熱器1のドレン温度31も低下することになる。
【0038】
ところが、プラント負荷33の上昇によって、プラント負荷33が例えば50%前後の中間負荷の状態では、既に脱気器20の機内温度34は200℃を超えた状態となっているため、通常、重油燃料と石炭燃料との切り替えタイミングで空気予熱器1のドレン温度31と脱気器20の器内温度34との逆転現象が発生する。
【0039】
そこで、この第1実施形態の火力発電プラントでは、制御装置15が、脱気器温度検出器25により検出される脱気器20の器内温度と、ドレン温度検出器24により検出されるドレンタンク9のドレンの温度を監視する中で、互いの温度が反転(逆転)する前のドレン回収切替点36(
図2参照)になると、制御装置15は、ドレン回収分岐配管26に取り付けられているドレンタンク水位調節弁23および脱気器回収調節弁17を制御して、ドレンの流れ(ドレン回収先)を、脱気器20から他の回収先30(ドレン回収分岐配管26の側)へ切り替える。
【0040】
詳細に説明すると、制御装置15は、ドレンタンク水位調節弁23を開け、脱気器回収調節弁17を閉じる制御を行う。脱気器20の温度とドレンタンク9の温度が逆転する前を、例えば反転タイミングに達する直前、または反転タイミングに近づく、などともいう。
【0041】
これにより、脱気器20ヘのドレンの回収が停止されると共に、ドレンタンク9のドレンは、ドレンポンプ11、ドレン逆止弁13、ドレン回収分岐配管26からドレンタンク水位調節弁23を通じて他の回収先30へ回収されるようになる。
【0042】
脱気器20側では、脱気器回収調節弁17を閉じられて脱気器20ヘのドレンの回収が停止されたことで、脱気器回収調節弁17から脱気器20に至るまでのドレン回収用配管19に残留しているドレンが、下り勾配の脱気器直前ドレン配管19aを通じて脱気器20へ流れて、脱気器20に全量回収される。
【0043】
このため、脱気器20の飽和蒸気が脱気器直前ドレン配管19aへ逆流しても残留ドレンが混ざり合うことがなくなり、蒸気凝縮が起こらず、したがってウォータハンマ発生域37(
図2参照)において、ウォータハンマ現象が発生することがなくなる。なお、脱気器回収調節弁17の位置から脱気器直前ドレン配管19aまでの配管内にドレンが残留しないように、脱気器回収調節弁17やその前段の脱気器回収調節弁前弁18などの弁類をボール弁またはゲート弁とすることで、弁の機構的な段差でドレンが残留することがなくなり、その部位での蒸気凝縮をなくすことができる。
【0044】
このようにこの第1実施形態の火力発電プラントによれば、脱気器直前ドレン配管19aを下り勾配で配設し、プラント始動以降、制御装置15が、ドレン温度検出器24により検出される空気予熱器ドレン温度と脱気器温度検出器25により検出される脱気器温度とを監視し、負荷上昇により原油燃料から石炭燃料に切り替わる際に脱気器温度検出器25により検出される脱気器の温度と、ドレン温度検出器24により検出されるドレンの温度の値が反転する前のドレン回収切替点36に達すると、ドレン回収分岐配管26に取り付けられたドレンタンク水位調節弁23を制御して、ドレン回収先を脱気器20から他の回収先30に切り替えることで、脱気器20ヘのドレンの回収が停止されると共に、回収停止で脱気器20の前段の流路(ドレン回収用配管19)に残留しているドレンが下り勾配の脱気器直前ドレン配管19aを通じて脱気器20に全量回収される。このため、脱気器回収調節弁17以降(脱気器20の前段)の脱気器直前ドレン配管19aに蒸気逆流が発生してもウォータハンマ現象が発生せず、この結果、脱気器直前ドレン配管19aやその周囲の機器(弁類など)の劣化を遅らせることができ、メンテナンスの期間を長くすることができる。
【0045】
また、脱気器直前ドレン配管19aを、垂直ではなく、脱気器20側に下り勾配で水平方向に対して傾斜角度が45°以上75°未満の範囲、または30°以上70°未満の範囲で設置することで、蒸気凝縮現象が発生する前に、脱気器回収調節弁17以降の配管に残留しているドレンを脱気器20に流して全量回収し、脱気器20から逆流してくる飽和蒸気と入れ替るので、ドレン回収用配管19での蒸気の逆流による蒸気凝縮現象が発生することがなくなる。上記傾斜角度の範囲を総合すると、傾斜角度は脱気器20側に下り勾配で水平方向に対して30°以上75°未満の範囲が好ましいと言える。
【0046】
これにより、脱気器回収調節弁17以降の脱気器直前ドレン配管19aを含むドレン回収用配管19で発生するウォータハンマ現象の発生を防止することができる。この結果、ドレン回収用配管19に付設されている脱気器回収調節弁17などの劣化や破損を防止すると共に、ドレン回収用配管19の亀裂や破断の発生を防止し、配管の亀裂箇所から蒸気が外部に噴出するといった事態を未然に防止することができる。
【0047】
なお、上記実施形態では、空気予熱器1のドレン温度と脱気器20の器内温度とを比較したが、空気予熱器1のドレン温度に変えてドレンタンク9のドレン温度を利用してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、ドレン回収用配管19(水平配管)の脱気器回収調節弁17の前に設ける脱気器回収調節弁前弁18などをボール弁またはゲート弁にする例について説明したが、脱気器回収調節弁17の後ろに後弁を設ける場合も、その後弁をボール弁またはゲート弁にしたほうがよい。
【0049】
(第2実施形態)
図3は第2実施形態の空気予熱器ドレン回収システムの構成を示す図である。この第2実施形態を説明するにあたり、第1実施形態と同じ構成には同一の符号を付しその説明は省略する。
【0050】
図3に示すように、この第2実施形態の空気予熱器ドレン回収システムは、ドレン水張り管22と脱気器20とを繋ぐドレン回収路であるドレン回収用配管19において、脱気器回収調節弁17に接続される傾斜配管である脱気器直前ドレン配管19aに、脱気器回収調節弁後弁27を設けると共に、脱気器回収調節弁前弁18の前段で分岐し脱気器直前ドレン配管19aに接続されるバイパス配管31に脱気器回収調節弁バイパス弁28を設けて構成される。脱気器回収調節弁前弁18は電動弁でなくてもよい。
【0051】
この場合、脱気器回収調節弁17以降の脱気器直前ドレン配管19aに設ける弁類(脱気器回収調節弁後弁27など)の弁をボール弁またはゲート弁にする。このように傾斜配管である脱気器直前ドレン配管19aに設ける弁類をボール弁またはゲート弁とすることで、弁の構造によって弁自体にドレンが留まることがなくなり、その部位での蒸気凝縮をなくすことができる。弁類としては、脱気器回収調節弁後弁27の他に、脱気器回収調節弁バイパス弁28や脱気器回収調節弁17の前弁である脱気器回収調節弁前弁18や止め弁(図示せず)などをボール弁またはゲート弁としてもよい。
【0052】
この第2実施形態の空気予熱器ドレン回収システムによれば、第1実施形態と同様に、空気予熱器1のドレン温度と脱気器20の器内温度とが逆転するタイミングで(反転ポイントに近づくと)、ドレンタンク水位調節弁23および脱気器回収調節弁17を制御して、ドレン回収先を脱気器20からドレン回収分岐配管26の側へ切り替えることで、脱気器20ヘのドレン回収を停止し、ドレンの回収を停止したことで脱気器回収調節弁17から脱気器20までの間に残っていたドレンと、脱気器20より逆流してくる飽和蒸気との入れ替えを、傾斜角度が45°以上75°未満の下り勾配の脱気器直前ドレン配管19aが行うことで、ドレン回収用配管19の残留ドレンを、蒸気凝縮現象が発生する前に脱気器20に全量回収することができる。
【0053】
また、傾斜した脱気器直前ドレン配管19aに設置する弁類(脱気器回収調節弁後弁27など)をボール弁またはゲート弁にすることで、その弁自体にドレンが留まることがなくなる。
【0054】
したがって、脱気器回収調節弁17以降のドレン回収用配管19(脱気器直前ドレン配管19aを含む)で発生するウォータハンマの発生を防止することができる。これによりドレン回収用配管19に付設している脱気器回収調節弁17、脱気器回収調節弁後弁27の破損、しいてはドレン回収用配管19の亀裂や破断を防止し、その箇所から蒸気が噴出するといった事態を未然に防止することができる。
【0055】
すなわち、本発明によれば、空気予熱器1から排出されるドレンの回収先を脱気器20からそれ以外の回収先30へ切り替えることで生じるウォータハンマ現象を防止してドレン回収用配管19(脱気器直前ドレン配管19a)やその周囲の機器(弁類など)に対するメンテナンス周期を長くすることができる。
【0056】
なお、第1実施形態において、第2実施形態のように、ドレン回収用配管19の脱気器回収調節弁17とその付近の流路に設ける弁類(脱気器回収調節弁前弁18など)をボール弁またはゲート弁にしてもよい。
【0057】
また、上記第1実施形態では、制御装置15が、空気予熱器1のドレン温度と脱気器20の器内温度とを監視し、互いの温度が逆転する前にドレン回収先を切り替えるようにしたが、この他、例えば脱気器20の他に、復水器またはそれに相当するプラントサイクル内の回収先、またはプラントサイクル系外へと切り替える系統を有する火力発電プラントでは、ドレン回収先の切り替えに、温度差だけに限らず、プラント負荷や蒸気温度や重油量など、ドレン温度差が予測できる代替えの情報を用いてドレン回収先を切り替えてもよい。
【0058】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0059】
また上記実施形態に示した制御装置15の各構成要素を、コンピュータのハードディスク装置などのストレージにインストールしたプログラムで実現してもよく、また上記プログラムを、コンピュータ読取可能な電子媒体:electronic mediaに記憶しておき、プログラムを電子媒体からコンピュータに読み取らせることで本発明の機能をコンピュータが実現するようにしてもよい。
【0060】
電子媒体としては、例えばCD-ROM等の記録媒体やフラッシュメモリ、リムーバブルメディア:Removable media等が含まれる。さらに、ネットワークを介して接続した異なるコンピュータに構成要素を分散して記憶し、各構成要素を機能させたコンピュータ間で通信することで実現してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…空気予熱器、3…空気予熱器出口空気ダクト、4…空気温度検出器、8…空気予熱器ドレン管、9…ドレンタンク、10…ドレンタンクベント弁、11…ドレンポンプ、12…ポンプ再循環系統、13…ドレン逆止弁、14…水位検出器、15…制御装置、16…ドレン管、17…脱気器回収調節弁、17…ドレン回収調節弁、18…脱気器回収調整弁前弁、19…ドレン回収用配管、19a…脱気器直前ドレン配管、20…脱気器、20a…ドレン導入口、21…復水管、22…水張り管、23…ドレンタンク水位調節弁、24…ドレン温度検出器、25…脱気器温度検出器、26…ドレン回収分岐配管、27…脱気器回収調節弁後弁、28…脱気器回収調節弁バイパス弁、29…復水逆止弁、30…他の回収先、31…バイパス配管。