(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】安定な塩基性電解質材料およびこれを含む溶媒材料
(51)【国際特許分類】
C01B 15/08 20060101AFI20220713BHJP
【FI】
C01B15/08
(21)【出願番号】P 2018512826
(86)(22)【出願日】2016-05-19
(86)【国際出願番号】 US2016033213
(87)【国際公開番号】W WO2016187395
(87)【国際公開日】2016-11-24
【審査請求日】2019-05-16
(32)【優先日】2015-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517371006
【氏名又は名称】カールソン,ローレンス
(73)【特許権者】
【識別番号】517371028
【氏名又は名称】アドロフ,ローレンス
(73)【特許権者】
【識別番号】517402975
【氏名又は名称】ホウール,ティモシー
(73)【特許権者】
【識別番号】517402986
【氏名又は名称】ヴュルツブルガー,スティーブン
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】カールソン,ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】アドロフ,ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】ホウール,ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】ヴュルツブルガー,スティーブン
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07513987(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学構造を有する物質の組成物:
【化1】
上記式中、xは3よりも大きい整数であり;
yはx-1またはx-3の値を有する整数であり;
mは1~6の整数であり;
nは1~3の整数であり;
Zは単原子カチオン、多原子イオンまたはカチオン性複合体(cationic complex)の1つである。
【請求項2】
mが3~6の整数である、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項3】
Zが+2以上の電荷を有する多原子イオンである、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項4】
Zが硫酸イオン、炭酸イオン、リン酸イオン、シュウ酸イオン、クロム酸イオン、重クロム酸イオン、ピロリン酸イオンおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の物質の組成物。
【請求項5】
化学量論的にバランスのとれた水素(1+)、トリヒドロキシの化学的な塩からなり、前記塩は、以下:
硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、シュウ酸塩、クロム酸塩、重クロム酸塩、ピロリン酸塩およびこれらの混合物;
の少なくとも一つである、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項6】
以下:H
4O
3
の塩を含む、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項7】
yがx-1の値を有する整数である、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項8】
yがx-3の値を有する整数である、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項9】
極性溶媒と、
式:
【化2】
上記式中、xは3よりも大きい整数であり;
yはxよりも小さい整数であり;
Zは単原子カチオン、多原子イオンまたはカチオン性複合体の1つである;を有する化学組成物と、を含み、
前記化学組成物の少なくとも一部は、H
4O
3
2-、H
5O
2
2-、H
7O
2
2-、H
6O
5
2-およびこれらの混合物の少なくとも一つとして存在する、化学組成物。
【請求項10】
Zが+2以上の電荷を有する多原子イオンから選択される、請求項9に記載の化学組成物。
【請求項11】
前記極性溶媒が、水、1~4の炭素原子を有する短鎖アルコール、ならびに水および短鎖アルコールの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の化学組成物。
【請求項12】
以下:ヒドロキシ硫酸塩水和物(hydrogexy sulfate hydrate);の少なくとも1つの化学量論的にバランスのとれた化学組成からなる、請求項9に記載の化学組成物。
【請求項13】
前記化学組成物が、約0.5重量%~約50重量%存在する、請求項9に記載の化学組成物。
【請求項14】
前記化学組成物が、1重量%~30重量%の量で存在する、請求項9に記載の化学組成物。
【請求項15】
前記化学組成物が、実効pKaを8~12とするのに十分な量で存在する、請求項9に記載の化学組成物。
【請求項16】
安定な電解質が、実効ヒドロキソニウムアニオン濃度を約1重量ppm~約25重量%とするのに十分な量で存在する、請求項9に記載の化学組成物。
【請求項17】
水、極性有機溶媒およびこれらの混合物からなる群から選択される溶媒と、
一般式:
【化3】
上記式中、xは3よりも大きい整数であり;
yはx-1またはx-3の値を有する整数であり;
aは1~6の数であり;
bは1~3の数であり;
Zは単原子カチオン、多原子カチオンまたはカチオン性複合体である;を有する解離した化合物と、を含む使用溶液。
【請求項18】
aが3~6の数であり、Zが+2以上の電荷を有する多原子イオンである、請求項17に記載の使用溶液。
【請求項19】
前記解離した化合物が、0.5重量%~50重量%の量で存在する、請求項17に記載の使用溶液。
【請求項20】
前記解離した化合物が、1ppmよりも多い量で存在する、請求項17に記載の使用溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年5月19日に提出された米国仮出願番号第62/163,941号に対して優先権を主張するものであり、その開示は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、溶液のpHを変化させることができ、初期の溶液組成に応じて得られる溶液を塩基性にすることができる種々の水溶液に組み込むことができる物質の組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
2つの異なった電荷タイプ、すなわち、正に帯電したカチオン(+)のモル数と負に荷電したアニオン(-)のモル数とが化学量論的に電荷バランスがとれ、安定した電荷の中性水溶液を生成すると、閉じた系の内部エネルギーが安定するという科学的事実は、熱力学の法則に基づいて、長く受け入れられている。中性溶液中の静電荷タイプは、同数の負の静電荷(-)によってバランスされる正の静電荷(+)を必然的に有することが広く認識されている。しかしながら、塩基性水溶液に関して実施された研究は、様々な溶液が過剰なヒドロキシラジカルを保有しうることを示している。
【0004】
この現象は、水分子が溶液中に存在する不均衡な電荷を安定化するのに有効であるという結論を支持する。水溶液中に存在する水分子は、任意の不均衡な電荷を安定化させ、電荷のバランスがとれた溶液を生じさせると考えられている。この結果は熱力学の法則に適合し、水分子の孤立電子対からなり、電荷の均衡をとる新しいタイプの求核試薬(charge balancing neucleophile)の存在を強く示唆する。
【0005】
これまで、電荷バランスのとれた溶液を得るために、水分子によって安定化された過剰のヒドロキシルラジカルが長時間存在しうる溶液の製造は架空のものであった。かような材料を提供すること、そして、そのような解決を提供することができる物質の組成物を提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0006】
本明細書中、極性溶媒中に存在する時、以下の化学構造を有する物質の組成物が開示される:
【0007】
【0008】
上記式中、xは3を超える整数であり;
yはxよりも小さい整数であり;
分子成分に伴う電荷は少なくとも-1である。
【0009】
また、本明細書中、以下の式を有する物質の組成物が開示される:
【0010】
【0011】
上記式中、xは3よりも大きい整数であり;
yはxよりも小さい整数であり;
mは1~6の整数であり;
nは1~3の整数であり;
Zは単原子カチオン、多原子カチオンまたはカチオン性複合体(cationic complex)である。
【0012】
また、以下を含む使用溶液が開示される:
【0013】
【0014】
上記式中、xは3よりも大きい整数であり;
yはxよりも小さい整数であり;
aは1~6の数であり;
bは1~3の数であり;
Zは単原子カチオン、多原子カチオンまたはカチオン性複合体である;および、
水、極性有機溶媒およびこれらの混合物からなる群から選択される溶媒。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下の図面は、本明細書に開示される本発明を説明するために提示されたものである:
【
図1】
図1は、本明細書に開示される安定な電解質複合体の一実施形態の概略図である。
【
図2】
図2は、本明細書に開示される合成方法の実施形態を概説するプロセス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
水溶液等の極性溶媒中で使用することができ、塩基性またはアルカリ性ヒドロキソニウムイオン(alkaline hydroxonium ion)由来の複合体(complex)として広く解釈される新規な電解質が本明細書中に開示される。本明細書で定義される、「アルカリ性ヒドロキソニウムイオン複合体(alkaline hydroxonium ion complex)」は、それぞれの酸素分子が少なくとも2つの水素分子に結合し、その塩基性塩として存在することができる、少なくとも4つの酸素分子を有する。ある実施形態において、アルカリ性ヒドロキソニウムイオン複合体は、水溶液または極性有機溶媒などの極性溶液中に、少なくとも、存在する水素の数よりも少ない数の酸素原子と結合する、4つ、5つおよび/または6つの水素原子を有する原子から主に構成される集団として存在する。
【0017】
本明細書に開示される物質の組成物が水性または極性溶媒と混合される場合、得られる組成物は、塩基性またはアルカリ性ヒドロキソニウムイオンより構成されうる溶液である。適当なアルカリ性アニオン性物質は、アルカリ性ヒドロキソニウムイオン複合体とも称されうる。物質の組成物およびこれを含む溶液は、高いpHまたはアルカリ性pHが求められる様々な用途において有用性を有しうる。本明細書に開示される材料はまた、特定の洗浄および消毒用途に限定されない状況において適用性を有しうる。
【0018】
極微量のアルカリ性アニオン性ヒドロキソニウムが、遊離したヒドロキシラジカルの存在下で水分子から水中に自発的に形成しうることが理論化されている。いずれの理論にも拘束されることなく、天然に生じる安定なアルカリ性アニオン性ヒドロキソニウムイオンは、もし生じたとしても、極めてまれであると考えられている。水中において天然に生じるアルカリ性アニオン性ヒドロキソニウムイオンの濃度は、480,000,000分の1以下であると推定される。天然に生じるアルカリ性アニオン性ヒドロキソニウムイオンは、典型的にはナノ秒の範囲の寿命を有する不安定な遷移化学種であると理論付けられている。天然に生じるアルカリ性アニオン性ヒドロキソニウムイオンは反応性であり、水によって容易に溶媒和され、したがって、これらのアルカリ性アニオン性ヒドロキソニウムイオンは遊離状態では存在しない。
【0019】
本明細書に開示されるアルカリ性電解質材料は、水溶液または極性溶媒中に導入されたとき安定であり、濃縮することおよび/またはこれに付随する水溶液または極性溶媒から単離することができる。
【0020】
アルカリ性電解質材料成分は、1つ以上の強無機酸と適切な強塩基との制御された反応によって製造することができる。強無機酸の非限定的な例としては、pKa≧1.74であるものがある。強無機酸材料は、水に添加されると、これに伴う水溶性溶液中で完全にイオン化する。用いられる強酸材料成分は、強無機酸の混合物でありうると考えられる。ある製造プロセスにおいて、強酸材料成分は、水に加えたときに、水溶液中において完全ではないもののイオン化し、特定の用途において有用性を有しうる、pKa<1.74であるような弱酸を含んでいてもよい。かような状況において、酸性混合組成物は、平均pKa≧1.74を有しうると考えられる。
【0021】
本開示において、本明細書で定義される安定なアルカリ性ヒドロニウムイオン複合体が水溶液または極性有機溶媒に添加または混合されたときに、極性溶媒を生成し、その溶液中に当初存在する本来のヒドロキシルイオン濃度とは無関係に、対応する溶液に添加される、開示された安定なアルカリ性のヒドロキソニウム物質の量に依存する実効アルカリ性pKaを与えることが、全く予想外に見いだされた。得られる溶液は、極性溶媒として機能することができ、安定なアルカリ性ヒドロニウムイオン複合体物質の添加前の初期溶液pHが6~8である場合には、特定の用途において7~14の実効pKbを示すことができる。
【0022】
本明細書で開示される安定なアルカリ性ヒドロキシルイオン複合体および/またはこれを含む材料は、初期pHが酸性領域、例えば、pHが2~6の範囲にある溶液に添加し、得られる溶液のpHを、非反応的に中性またはアルカリ性レベルに調整し、および/または、得られる溶液の実効または実際のpKbを7~14のレベルに変化させることができ、特定の用途では、8~12のレベルが達成されると考えられる。本明細書で開示される安定なヒドロニウム複合体物質は、発熱性、酸化など、これらに限定されない測定可能な反応特性を伴わずに、酸性物質または選択された溶液に添加することができる。
【0023】
水性自己解離(aqueous auto-dissociation)の結果として水中に存在する理論的な任意のカチオン性ヒドロニウムイオンの酸性度は、水中の酸の濃度を判断するために用いられる間接的な尺度である。強酸は、理論上のカチオン性ヒドロニウムイオン材料よりも良好なプロトンドナーと考えられ、そうでなければ、導入される酸のかなりの部分が非イオン化状態で存在するであろう。強塩基は、理論上のアニオン性ヒドロニウム材料よりも優れたまたはより効率的なヒドロキシルドナーであると考えられる。先に示したように、水性自己解離に由来すると考えられるこれまでの理論的に天然に生じる、カチオン性またはアニオン性のヒドロニウムイオンは、種として不安定であり、その発生は確率的で、仮に存在するとしても、これに付随する水溶液中において極端に低濃度で存在すると考えられる。一般に、水溶液中に存在するカチオン性またはアニオン性のヒドロキソニウムイオンは、存在するとしても、0から480,000,000分の1未満の値の濃度で存在する。
【0024】
カチオン性ヒドロニウムイオンは単離することができるが、仮にそうであったとしても、カチオン性ヒドロニウムの場合、HF-SbF5SO2のような構造にある超酸配位子または溶液に結合したモノマーとして固相または液相有機合成(liquid phase organo-synthesis)によって自然の水溶液から単離されうる。これまで、単離された安定なアニオン性またはアルカリ性のヒドロニウムイオン材料が得られたという試みは成功していない。
【0025】
対照的に、本明細書中に開示される安定なアルカリ性ヒドロキソニウム材料は、適切な水性または有機材料と混合された場合、濃アルカリヒドロキソニウムアニオン源を提供する。本明細書に開示される安定なアルカリ性ヒドロキソニウム材料は、長期保存寿命を有し、水または適切な極性溶媒といった溶液に添加された場合に、長期間にわたり入手可能なアルカリ性ヒドロキソニウムイオン材料源を提供する。本明細書中に開示された材料は、長期または持続的な期間にわたってパフォーマンス有効性を維持する。
【0026】
本明細書中に開示される材料は、以下の式を有する物質の組成物である:
【0027】
【0028】
上記式中、xは3よりも大きい整数であり;
yはxよりも小さい整数であり;
mは1~6の整数であり;
nは1~3の整数であり;
Zは単原子カチオン、多原子カチオンまたはカチオン性複合体(cationic complex)である。
【0029】
ある実施形態において、mは、3~6の整数でありうることが意図される。また、ある実施形態においては、yは、x-1の値を有しうることが意図され;他の実施形態では、yは、x-3の値を有しうることが意図される。
【0030】
本明細書に開示される材料は、xの値などの因子に基づいて変化し得る種々の配置を有することができる極性溶媒中で混合されたときに、水和錯体(hydration complexes)を形成することができる。本明細書に開示された構造に基づく、H
4O
3
2-を含むアルカリ性ヒドロキソニウムアニオン複合体(錯体)の一例の構造および形状の非限定的な例を
図1に示す。アルカリ性ヒドロキソニウムアニオンH
4O
3
2-は、2個の酸素原子のそれぞれの間に少なくとも2個の水素原子が共有されつつ、アニオン分子中のそれぞれの酸素原子に結合した2個の水素原子を有すると理論付けられている。示された分子において、アルファ、ベータおよびガンマ酸素原子は、連続的に配向される。ベータ酸素のH-O-H結合角(θ’)は、105°~108°の間であると推定され;アルファおよびガンマ酸素原子のH-O-H結合角(θ、θ”)は、それぞれ130°より大きく140°未満であると推定される。
【0031】
ある実施形態では、xの値は4~7の整数であり、yはxよりも小さい整数である。ある実施形態では、yは、xより小さい整数であり、さらに、xは、2~5の整数である。開示されたアルカリ性ヒドロキソニウムイオン複合体の特定の式の非限定的な例としては、H5O2
2-;H6O5
2-;H7O2
2-;H3O4
2-などの複合体が挙げられる。
【0032】
ある実施形態では、物質の組成物は、以下の化学構造を有する解離したまたは部分的に解離した複合体として極性または半極性溶液中に存在することができる:
【0033】
【0034】
上記式中、xは3よりも大きい整数であり;
yはxよりも小さい整数であり;
aは1~6の整数であり;
bは1~3の整数であり;
Zは単原子カチオン、多原子カチオンまたはカチオン性複合体(cationic complex)である。
【0035】
アニオンHxOx-y
a-は、個々のイオンとして、または、緩やかに配位クラスター化された関係で存在してもよく、場合によっては安定な水和錯体を形成してもよい。アニオンHxOx-y
a-は、ある割合の個々のイオンおよびある割合の安定な水和錯体を含む混合物中に存在しうるとも考えられる。ある実施形態では、存在する全アニオンの一部としての個々のイオンの割合は、10%~50%である。
【0036】
多原子カチオンZは、少なくとも1つの両性ラジカルを有する材料から誘導することができる。ある実施形態では、用いられる多原子カチオンは、+2以上の電荷を有する両性カチオンでありうる。このようなカチオンの非限定的な例としては、硫酸イオン、炭酸イオン、リン酸イオン、クロム酸イオン、重クロム酸イオン、ポリリン酸イオン、オルトリン酸イオンおよびこれらの混合物が挙げられる。ある実施形態では、両性多原子カチオンは、pKa≦1.7の値を有する酸から誘導することができると考えられる。
【0037】
単原子カチオンZは、アルカリ、アルカリ土類金属、遷移金属、ポスト遷移金属(post transition metal)などから誘導することができる。ある実施形態では、これらの単原子カチオンは、リチウム、ナトリウムおよびカリウムなどの第1族材料、ベリリウム、マグネシウム、カルシウムなどの第2族材料、チタンなどの第4族材料、バナジウムおよびニオブなどの第5族材料、クロムおよびモリブデンなどの第6族材料;マンガンなどの第7族材料、例えばマンガン;鉄などの第8族材料;コバルトなどの第9族の材料;ニッケルおよびパラジウムなどの第10族材料;銅、銀および金などの第11族材料;亜鉛およびカドミウムなどの第12族材料;アルミニウムなどの第13族材料でありうる。単原子カチオンは+1以上の電荷を有することができる。
【0038】
ある実施形態では、単原子カチオンZは+2以上の電荷を有する。このような材料の非限定的な例としては、第2族材料およびアルミニウムが挙げられる。+2以上の電荷を有する他のカチオンとしては、鉄(III)、鉄(II)、銅(II)、コバルト(III)、コバルト(II)、錫(II)、錫(IV)、鉛(II)、鉛(IV)、水銀(II)および水銀(I)が挙げられる。
【0039】
用いることができる適切なカチオン複合体Zとしては、ホウ素-ニッケル、ホウ素-リチウム、マグネシウム-リチウム、マグネシウム-ケイ素およびリチウム-ケイ素などのホウ素-マグネシウム複合体が挙げられるが、これらに限定されない。用いられるカチオン複合体は、典型的には、+2以上の電荷を有する。
【0040】
多くの状況において、本明細書に開示される安定なアルカリ性電解質材料は、標準的な温度および圧力下で安定であり、水よりも小さい濡れ性(wetting characteristics)を有する水様液体として存在しうる;すなわち、70ダイン/cm未満である。本明細書で開示される電解質材料は、水または他の極性有機溶媒に添加されると、非解離状態、解離状態またはこれらの2つの組み合わせのいずれかの状態において、100万分の1より大きい有効濃度の安定なヒドロニウムアニオン材料を含む溶液を生成することができる。ある用途では、電解質材料は、0.05重量%を超える濃度で存在することができる。アルカリ性電解質材料は、最大10~1モル比当量、さらに、5~1モル比当量の最大濃度で存在することができると考えられる。すなわち、本明細書に開示される材料1モルを中和するために、約10モル当量の適当な標準無機酸、例えば塩酸が必要である。ある実施形態では、アルカリ性電解質材料は、0.05重量%~50重量%の量で溶液中に存在してもよく、ある実施形態では、1重量%~30重量%の濃度が可能である。ある実施形態では、濃度は1ppm~25重量%であると考えられる。
【0041】
全く予想外なことに、本明細書に開示された安定なアルカリ性電解質材料を所望の溶液に添加することによって得られるヒドロキソニウムアニオンは、溶液中に存在するすべての酸(総酸)に対する遊離酸の割合を付随して変化させることなく、得られる材料の酸機能性(acid functionality)を変化させることが見出された。伴う溶液の酸機能性の変化としては、例えば、測定されたpHの変化、遊離酸対総酸の比の変化、比重の変化およびレオロジーのような特性が挙げられる。本明細書中に開示されるアルカリ性ヒドロキソニウムイオン複合体(alkaline hydroxonium ion complex)を含む安定なアルカリ性電解質材料の製造に用いられる類似の現存の物質と比較して、得られる溶液におけるスペクトルおよびクロマトグラフィーの結果の変化もまた注目される。本明細書に開示される安定なヒドロキソニウムイオン材料の添加は、遊離酸対総酸の比において典型的に観察されるであろう変化と相関しないpKbの変化をもたらす。
【0042】
このように、本明細書に開示される安定なアルカリ性ヒドロキソニウム電解質材料を、pHが6~8である水溶液に添加すると、実効pKbが8~14である溶液が得られる。また、得られる溶液のpKbは、カロメル電極、特定イオンORPプローブによって測定された場合、14より大きい値を示しうると解される。本明細書で使用される用語「実効pKb」は、得られる溶媒中または溶液中に存在する利用可能な総ヒドロキソニウムアニオン濃度の尺度として定義され、また、pKaの逆数(inverse reciprocal)として定義することができる。したがって、種々のプローブおよび測定装置の性能特性が与えられると、物質のpHおよび/またはその関連するpKaは、これ(ら)を測定したとき、7~16の数値を示しうる。
【0043】
典型的には、溶液のpHは、そのプロトン濃度の尺度である。プロトン濃度は、一般的に、存在する-OH部分の反比例(inverse proportion)となるように保持される。本明細書で開示される安定なアルカリ性電解質材料は、極性溶液などのマトリックスに導入されると、水素プロトンと、ヒドロキソニウムアニオン電解質材料および/またはその付随する、互いに錯形成した一以上のヒドロキソニウムイオンの複合体として存在する複合体との、少なくとも部分的な配位を容易にすると考えられる。このように、本明細書中に開示される導入された安定なヒドロキソニウムアニオンは、極性溶液等の付随するマトリックス中において存在する他の成分に対し、導入されたヒドロキシル部分の選択的な官能性(functionality)を可能にする状態で存在する。
【0044】
より具体的には、本明細書に開示される安定な電解質材料は、以下の一般式を有しうる:
【0045】
【0046】
xは4以上の整数であり;
yはxよりも小さい整数であり;
nは1~4の整数であり;
Zは+1~+3の電荷を有する両性多原子イオンである。
【0047】
両性多原子成分としては、例えば、炭酸イオン、炭酸水素イオン、クロム酸イオン、シアン化物イオン、窒化物イオン、硝酸イオン、過マンガン酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、亜塩素酸イオン、過塩素酸イオン、臭化水素酸(hydrobromite)イオン、臭化物イオン、臭素酸イオン、ヨウ化物イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸水素イオンが挙げられる。物質の組成物は、上に列挙した物質に対して単一物質から構成されてもよいし、または、列挙した化合物の1つ以上の組み合わせから構成されてもよいと考えられる。
【0048】
ある実施形態において、xは3~9の整数であり、他の実施形態では、xは3~6の整数であることも考えられる。物質の組成物は、値xが3より大きい整数の平均分布であり、好ましくは、4~6の整数である異性体分布として存在しうることが考えられる。
【0049】
ある実施形態において、yはy=1の値を有する整数であり、適用可能であればy=2またはy=3である。
【0050】
本明細書中に開示される物質の組成物は、ある実施形態において、以下の式を有していてもよい:
【0051】
【0052】
xは4~6の整数であり;
yはxよりも小さい、1~3の整数であり;
Zは1~3の電荷を有する両性多原子イオンであり、以下の1つ以上でありうる:炭酸イオン、炭酸水素イオン、クロム酸イオン、シアン化物イオン、窒化物イオン、硝酸イオン、過マンガン酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、亜塩素酸イオン、過塩素酸イオン、臭化水素酸(hydrobromite)イオン、臭化物イオン、臭素酸イオン、ヨウ化物イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸水素イオン。
【0053】
本明細書に開示される物質の組成物は、適当な無機水酸化物に適当な無機酸を添加することによって形成することができる。無機水酸化物中に導入される無機酸は、約1.18~1.93の比重を有し;22~70°ボーメ(baume)の密度を有していてもよい。ある実施形態では、無機酸は、1.53~1.85の比重を有し;50~67°ボーメの密度を有すると考えられる。無機酸は、単原子酸または多原子酸のいずれかでありうる。
【0054】
無機酸は、同質であってもよく、または規定されたパラメータの範囲内にある種々の酸化合物の混合物であってもよい。酸は、意図されたパラメータから外れる酸化合物を1つ以上含む混合物であってもよいが、他の物質と組み合わせると、規定された範囲内の平均酸組成値を与えることも考えられる。用いられる無機酸または酸は、任意の適当な等級または純度のものでありうる。場合によっては、技術グレード(tech grade)および/または食品グレードの材料を適切に使用することができる。
【0055】
用いられる無機水酸化物材料は、水溶性または部分的に水溶性の無機水酸化物であってもよい。プロセスにおいて用いられる部分的に水溶性の水酸化物は、一般に、これに添加される酸物質との混和性を示すものである。適当な部分的に水溶性の無機水酸化物の非限定的な例としては、共に用いられる酸において少なくとも50%の混和性を示すものがある。無機水酸化物は、無水物であっても、水和物であってもよい。
【0056】
水溶性無機水酸化物の非限定的な例としては、例えば、水溶性アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物および希土類水酸化物が挙げられる;これらは、単独でまたは互いに組み合わせて使用してもよい。他の水酸化物も、本開示の範囲内にあると解される。「水溶性(Water-solubility)」の用語は、用いられる水酸化物材料と関連して定義され、標準温度および標準圧力において水中で75%以上の溶解特性を示す材料と定義される。利用される水酸化物は、典型的には、全くの溶液、懸濁液または過飽和スラリー(super-saturated slurry)として、酸物質に導入されうる液体物質である。ある実施形態では、水溶液中の無機水酸化物の濃度は、共に用いられる酸の濃度に依存しうると考えられる。水酸化物材料の適当な濃度の非限定的な例は、5モルの物質(5 mole material)の5~50%を超える水酸化物濃度である。
【0057】
適当な材料としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウムおよび/または水酸化銀が挙げられるが、これらに限定されない。無機水酸化物溶液は、その使用時、5モルの物質の5~50%の無機水酸化物濃度を有していてもよく、ある用途では5~20%の濃度でありうる。ある方法では、無機水酸化物材料は、消石灰(slaked lime)として存在するような適当な水溶液中の水酸化カルシウムでありうる。
【0058】
本明細書に開示される安定な電解質材料を調製する際に、無機水酸化物は、任意の適切な体積の液体の形態で、任意の適切な反応容器中に収められうる。種々の実施形態において、反応容器は、適切な容量の非反応性ビーカーでありうることが意図される。用いられる無機水酸化物の量は、50mLほどの小さいものであってもよい。最大5000ガロン、あるいはそれよりも大きな体積もまた、本開示の範囲内にあると考えられる。
【0059】
無機水酸化物は、一般的には室温下で反応容器中に保持されうる。初期の無機塩基を約23~約70℃の範囲に維持することが可能である。しかしながら、15~約40℃の範囲内のより低い温度を採用することもできる。
【0060】
無機水酸化物は、プロセスの特定の用途において採用される1~2.5HPの機械的エネルギーを与える撹拌レベルで、適切な手段によって機械的に撹拌され、約0.5HP~3HPのレベルの機械エネルギーが付与される。撹拌は、種々の適当な手段によって行うことができ、当該手段としては、例えば、DCサーボドライブ、電気インペラ、磁気撹拌器、化学インダクタ(chemical inductor)などが挙げられるが、これに限定されない。
【0061】
撹拌は、酸の添加の直前に間隔をあけて開始してもよく、また、酸導入工程の少なくとも一部の間に、間隔をあけて継続してもよい。
【0062】
導入すべき酸物質は、当該容器から測定された計量方式で酸物質を分注することができる、任意の適切な容器内に保持してもよい。容器は、望ましくはまたは必要に応じて、周囲温度から約200°Fまでの間の温度で加熱される材料を提供するように構成された、適切な加熱要素を含むことができ、ある実施形態では、周囲温度から70℃までの間の温度で加熱される材料が用いられる。
【0063】
本明細書に開示される方法において、選択される酸物質は、少なくとも7以上の平均モル濃度(M)を有する濃酸であってもよい。ある手順では、平均モル濃度は少なくとも10以上であり;特定の用途では、7~10の平均モル濃度である。用いられる酸は、純粋な液体、液体スラリー、または本質的に濃縮された形態の溶解した酸の水溶液として存在してもよい。
【0064】
適切な酸物質は、水性物質または非水性物質のいずれかでありうる。適当な酸物質の非限定的な例としては、以下の1つ以上が挙げられる:塩酸、硝酸、リン酸、塩素酸、過塩素酸、クロム酸、硫酸、過マンガン酸、青酸、臭素酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、ヨウ素酸、フルオロホウ酸、フルオロケイ酸、フルオロチタン酸。
【0065】
ある実施形態において、用いられる濃強酸は、30~67°ボーメの比重を有する硫酸でありうる。この物質を反応容器に入れ、16~70℃の温度で機械的に撹拌することができる。
【0066】
開示された方法のある特定の用途では、容器中に存在し、撹拌されている規定量の水酸化物に、計量された規定量の適当な酸物質が添加されうる。添加される酸の総量は、6重量%~10重量%の範囲のヒドロキソニウムアニオン濃度を有する溶液を製造するのに十分な量である。使用される方法は、産生する沈殿副生成物の形成を低減または除去し、そして一般的に非晶質形態を示す沈殿物を最小量とするものである。
【0067】
開示される方法では、酸物質は、所定の全共鳴時間間隔(resonance time interval:TR)を与えるため、規定時間にわたって1回または複数回、計量された体積が、撹拌されている無機水酸化物に導入される。概説される方法における共鳴時間間隔(TR)は、ヒドロキソニウムアニオン材料が発達する環境を促進し提供するのに必要な時間間隔であると考えられる。本明細書に開示される方法にて採用される共鳴時間間隔(TR)は、典型的には12~120時間であり、共鳴時間間隔(TR)は24~72時間であり、その中の増分は特定の用途において利用される。
【0068】
この方法の様々な用途において、酸は、複数の計量された分量中の上表面の無機水酸化物に時間をかけて導入される。通常は、酸物質の全量が、一般的に、共鳴時間間隔(TR)の開始時に発生し、その後に続く全共鳴時間間隔の一部で進行する、複数のサイクルで導入される。酸の添加を行う間の部分の共鳴時間間隔を、(TA)と称する。一般に、TA間隔の間、酸は、複数の所定の添加サイクルで添加されうる。特定の状況では、添加サイクルは、末尾導入(rear-loaded)されてもよい。本明細書中で使用される用語としての末尾導入添加(Rear-loaded addition)」は、TAの最初の25%の間に添加される酸の量がTAの最後の25%の間に添加される酸の分量よりも少ないことを意味すると解される。
【0069】
添加される計量された各分量における使用可能な酸の割合は、外部プロセス条件、in situプロセス条件、特定の材料特性、容器の形状等の非限定的な要因に基づいて変化しうるか、または同じでありうると理解されるべきである。
【0070】
計量された追加分の分量の数は、2~12であってもよいと考えられる。各計量された分量を添加する間隔は、開示される方法の特定の用途において5~60分でありうる。実際の添加間隔は、特定の用途では、60分~5時間でありうる。
【0071】
計量された分量は、所望の反応に基づいて量および間隔を変化させてもよい。特定の用途では、非直線的な添加サイクルが、本明細書に開示されるヒドロニウムアニオン材料の形成を促進することが予想外に見出されている。したがって、特定の用途では、最初の添加部分は、後に添加される分よりも、より小さな分量であり、および/または、より長い個々の添加間隔にわたって添加されることが意図される。また、計量された添加分量は、濃度および/またはより小さな酸濃度体積との組成、および/または、プロセスの初期において添加されるより低強度の酸を変化させてもよいことが意図される。
【0072】
この方法の特定の用途では、100mL体積の66°ボーメ濃硫酸材料を、50mLの50重量%の水中の水酸化カルシウム材料に添加する。添加は、5回の計量された増加分を、混合しながら2mL/分で行われうる。硫酸を水酸化カルシウムに添加すると、沈殿物または懸濁/溶解した固体としての硫酸カルシウムの生成の証拠となる、液体の濁りが増加する。生成した硫酸カルシウムは、懸濁し、溶解した固体の最小の濃度を得ることを目的として、継続して行なわれる酸の添加に伴った様式で除去することができる。
【0073】
いずれの理論にも拘束されるものではないが、硫酸を水酸化カルシウムに添加すると、初期の水素プロトンまたは導入された硫酸と関連したプロトンが消費される。これにより、水素プロトン酸素化(hydrogen proton oxygenation)が起こり、酸の添加時において予見されるように、問題となるプロトンがオフガス(off-gassed)されないと考えられる。代わりに、問題となるプロトンは、液体材料中に存在するイオン性水分子成分と再結合し、さらに再構築する。
【0074】
酸添加共鳴間隔(TA)は、一般に、ほとんどの用途において全共鳴間隔(TR)よりも短い。酸の添加が完了したら、得られた材料を、追加の共鳴プロセス間隔(TP)の間、25℃~70℃の温度に保持して、さらなる反応ならびに結合の形成および配向を可能にすることができる。TPは60分から72時間の間であってよく、撹拌の有無にかかわらず進行させることができる。一般に、TA+TP=TRであり、TRの間にヒドロニウムアニオンの75%~95%が形成されると考えられている。
【0075】
適当な共鳴時間TRが完了した後、製造された材料を、2000ガウスを超える値で非双極磁場(a non-bi-polar magnetic field)に曝露してもよい;特定の用途では、200万ガウスを超える磁場が採用される。特定の状況では、10,000~200万ガウスの磁場が使用されうると考えられる。適当な磁場発生器の非限定的な一例が、Wurzburgerの米国特許第7,122,269号において見出され、その明細書は参照により本明細書に組み込まれる。製造された材料を、5分~24時間の磁場存在間隔(a magnetic field dwell interval:MD)の間、所望の磁場に曝露することができる。
【0076】
沈殿物または懸濁した固体副生成物として存在する固体物質の少なくとも一部は、任意の適当な手段によって除去することができる。固体副生成物の除去は、一般的に、磁場への曝露および/または任意の濃縮プロセスの前に行われる。適切な除去手段としては、例えば以下が挙げられるが、これらに限定されない:重力濾過、強制濾過(forced filtration)、遠心分離機、逆浸透など。
【0077】
本明細書に開示される物質の組成物は、室温かつ相対湿度50~75%で保管された場合に少なくとも1年間は安定であると考えられる貯蔵安定性のある粘性液体である。物質の組成物は、様々な最終用途において無溶媒で(neat)または希釈して使用することができる。物質の組成物は、電荷バランスの取れていないアルカリ性ヒドロニウムの全モル数の6~10%を含む、1.87~1.78モル濃度の溶液を有しうる。
【0078】
開示されるような方法から得られる安定な電解質材料の組成物は、滴定的(titrimtrically)かつ重量測定的(grvimetrically)に測定し、pHに対する実効pKbの指標を与える場合、200~150Mの濃度のモル濃度、ある場合には187~178Mの濃度のモル濃度を有する。この材料は、1.05を超える重量測定範囲(gravimetric range)を有し;ある場合には、1.5より大きな範囲である。
【0079】
開示されるような物質の組成物は、極性溶媒に導入され、15体積%を超える濃度のアルカリ性ヒドロキソニウムアニオンを含む溶液を与えうることも考えられる。ある用途では、アルカリ性ヒドロキソニウムアニオンの濃度は25%よりも大きくすることができ、また、アルカリ性ヒドロキソニウムアニオンの濃度は15~50体積%となりうると考えられる。
【0080】
極性溶媒は、水性物質、または水性および有機物質の混合物のいずれかでありうる。極性溶媒が有機成分を含む状況では、有機成分としては、以下の少なくとも1つを含みうる:5個未満の炭素原子を有する飽和および/または不飽和の短鎖アルコール、および/または5個未満の炭素原子を有する飽和および不飽和の短鎖カルボン酸。溶媒が水および有機溶媒を含む場合、水対溶媒の比は、水:溶媒が、それぞれ1:1~400:1であることが意図される。
【0081】
本明細書に開示された溶媒材料中に存在するイオン性複合体は、任意の適切な構造を有し、一般に安定であり、当該イオン性複合体を生成するために作り出された環境の存在下で、ヒドロキシル供与体として機能することができる溶媒和を形成していてもよい。
特定の実施形態において、アルカリ性ヒドロキソニウムイオン複合体は、以下の式によって表される:
【0082】
【0083】
上記式中、xは4以上の整数であり;
yはxよりも小さい整数であり;
nは1~4の整数である。
【0084】
本明細書に定義されるアルカリ性ヒドロニウムイオンは、個々のアニオン複合体中でより少ない数の酸素原子と錯形成した4~7個の水素原子を有する、独特なアニオン複合体で存在すると考えられる。これらは、本開示において、アルカリ性ヒドロキソニウムアニオン複合体と称される。本明細書で使用される「アルカリ性ヒドロキソニウムアニオン複合体(alkaline hydroxonium anion complex)」の用語は、カチオンH
xO
x-y(ここで、xは4以上の整数である)を取り囲む分子のクラスターとして広く定義することができる。アルカリ性ヒドロニウムアニオン複合体は、少なくとも4つの追加の水素分子と、水分子としてそれに結合または会合した(錯形成した)化学量論的割合の酸素分子とを含んでもよい。したがって、本明細書の方法で用いられうるアルカリ性ヒドロキソニウムアニオン複合体の非限定的な例の式表示は、
図1中の式によって表される材料から誘導することができる。
【0085】
ある実施形態において、物質の組成物は、化学量論的にバランスのとれた、過酸化水素の安定なヒドロキシル酸水和物からなり、上記酸水和物成分は、硫酸塩水和物(sulfuric hydrate)、クロム酸塩水和物(chromate hydrate)、炭酸塩水和物(carbonate hydrate)、リン酸塩水和物(phosphate hydrate)、ポリリン酸塩水和物(polyphosphate hydrate)、オルトポリリン酸塩水和物(othopolyphosphate hydrate)およびこれらの混合物の少なくとも一つである。本明細書の材料は、過酸化水素ヒドロキシル硫酸塩水和物(hydrogen peroxide hydroxyl sulfate hydrate);過酸化水素塩ヒドロキシルクロム酸水和物(hydrogen peroxide hydroxyl chromate hydrate);過酸化水素ヒドロキシル炭酸塩(hydrogen peroxide hydroxyl carbonate);過酸化水素ヒドロキシルリン酸塩水和物(hydrogen peroxide hydroxyl phosphate hydrate);過酸化水素ヒドロキシルポリリン酸塩水和物(hydrogen peroxide hydroxyl polyphosphate hydrate);過酸化水素ヒドロキシルオルトポリリン酸塩水和物(hydrogen peroxide hydroxyl orthopolyphosphate hydrate)およびこれらの混合物を含みうる。ある実施形態において、上記物質は、水素(+)、トリヒドロキシの安定な塩(a stable salt of hydrogen(1+), trihydroxy)である。
【0086】
水素(1+)、トリヒドロキシの安定な塩は、単独で、またはH2O2を含む材料との種々の画分と、非限定的な例である、H5O2;H6O5;H7O2などを含む物質との複合体とを組み合わせた状態で存在しうると解されるべきである。
【実施例】
【0087】
本開示をさらに説明するために、以下の実施例に注目する。これらの実施例は説明のために挙げられたものであり、本開示を限定するものではないと解されるべきである。
【0088】
実施例I
本明細書に開示される安定な塩基性電解質を調製するため、100mL体積の66°ボーメ(baume)の濃硫酸液をガラスビーカーに導入し、50℃の温度で撹拌しながら維持する。加えられる撹拌は、マグネチックスターラーを用いて1HPのレベルで溶液に機械的エネルギーを与える速度で行われる。用いられる酸性物質は平均モル濃度が8である。
【0089】
濃水酸化カルシウム溶液の200mL分を、撹拌している硫酸液の上部領域に徐々に添加する。濃水酸化カルシウム溶液は、40%の濃度を有する5モル濃度の材料である。200mL分を5等分し、初期の2つの分割分(portion)をそれぞれ50mL、次の分割分を40mL、最後の2つの分割分をそれぞれ30mLとする。各分割分が60分の間隔で加えられ、このとき、分割分を添加する間の共鳴時間間隔(resonance time interval)を2時間~7時間とし、より大きな共鳴時間間隔を徐々に増加させ、また、共鳴時間間隔は添加サイクルの後に行う。計量分の添加は72時間にわたって行われる。撹拌は、2番目の分割分の添加前に停止される。
【0090】
水酸化物材料を硫酸に添加すると、液体の濁りが増加した材料が生成する。液体の濁りの増加は、沈殿物としての硫酸カルシウム固体を示唆している。生成した固形物は、必要に応じて重力濾過によって液体から除去される。
【0091】
生成した水素ガスの発生を評価するために、反応中で生成したガス状物質の組成を、添加中に測定する。水素ガス発生を抑制するために添加速度を変更する。
【0092】
最終的な共鳴期間が完了した時点で、得られた液体材料を容器中へデカントし、5000の値で非双極磁場(a non-bi-polar magnetic field)に5時間の間隔で処理する。得られる材料は粘性の液体である。
【0093】
実施例II
実施例IIに概説された方法に従って製造された材料のサンプルを、水素電量測定(hydrogen coulometry)を用いて分析し、180Mのモル濃度を有すると決定された。材料をFFTIRおよびスペクトル分析によって分析する。代表的な結果を、
図1に示す。材料は、1.5を超える重量測定範囲(gravimetric range)を有することが見出され、1モルの水に含まれる水素に対して、1立方ミリリットル当たり、最大1300体積倍のオルト水素(orthohydrogen)を生じる。
【0094】
実施例Iに概説した方法に従って製造された材料の20mL分を栓付き容器に入れ、50~75%の湿度で室温にて貯蔵する。材料を分析し、その結果は、製造時に測定された結果の5%以内であり、貯蔵安定性を示した。
【0095】
実施例III
本明細書中に開示される塩基性材料の500mL分を、実施例Iに概説した方法に従って調製する。材料の一部を、導電率を決定するためにASTM-D2624に概説された手順を用いて分析する。当該材料は16,000μmhos/cmの値を示した。EPA法SW9056Aを用いて試料の一部をイオンクロマトグラフィーで分析すると、当該材料は、50mg/L未満の塩化物;窒素または硝酸塩として50mg/L未満の窒素、および1400mg/L~1500mg/Lの硫酸塩を含むことが分かっている。これは、当該材料が硫酸塩として存在することを示すと解される。
【0096】
ASTM-D891およびD4052に概説された手順に従って試料の一部を分析すると、比重が1.09~1.13であると測定される。
【0097】
上記物質のアルカリ度(alkalinity)は、水および廃水の試験のための方法A2320-標準法に概説された方法を用いて決定される。重曹に起因するアルカリ度(CaCO3として)は検出されない。炭酸塩に起因するアルカリ度(CaCO3として)は、400mg/Lのレベルで存在する。水酸化物の存在に起因するアルカリ度(CaCO3として測定される)は2000mg/Lのレベルで存在する。全アルカリ度は2400mg/Lであり、80%超が水酸化物として存在する。試料分中の全固形分は、水中の固形分の測定のための方法A2540B-標準法に概説された方法により、6300mg/Lであると決定された。この値のうち、6300mg/Lは、方法A2540Cによって測定した全溶解固形分(TDS)である。上記物質のpHは、A4500-H+Bに概説された方法を用いて、13であると測定される。
【0098】
添付の図面を参照して実施形態を説明したが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって規定される範囲から逸脱することなく、変更および改変を行い得ることを理解するであろう。