(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】方向付けられた赤外線放射装置
(51)【国際特許分類】
H05B 3/10 20060101AFI20220713BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20220713BHJP
H05B 3/14 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
H05B3/10 B
H05B3/00 345
H05B3/14 F
(21)【出願番号】P 2018519800
(86)(22)【出願日】2016-10-21
(86)【国際出願番号】 US2016058190
(87)【国際公開番号】W WO2017070520
(87)【国際公開日】2017-04-27
【審査請求日】2019-09-24
(32)【優先日】2015-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514257262
【氏名又は名称】ナノコンプ テクノロジーズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アントワネット,ピーター エル.
(72)【発明者】
【氏名】ガイラス,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ゼイラ,エイタン
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-106972(JP,A)
【文献】特開2011-058794(JP,A)
【文献】特開2010-254566(JP,A)
【文献】特開平03-280382(JP,A)
【文献】特表2009-525558(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0056929(US,A1)
【文献】特開平07-114974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/10
H05B 3/00
H05B 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方向付けられた赤外線エネルギーを発するための装置であって、
電力源からエネルギーを受け取るための入力部;
電流が電力源からの入力部を介して適用されるときに赤外線エネルギーを発するように構成されている、複数のナノチューブを含むナノ構造部材;
発せられた赤外線エネルギーの少なくとも一部を
遠隔に位置する標的を加熱するためにナノ構造部材に向かう方向に方向付けるように構成された、ナノ構造部材
に間接的に連結された反射部材;および
ナノ構造部材と反射部材との間に位置する
1以上のスペーサーであって、各スペーサーがハニカム構造を有する
、スペーサー
を含む、装置。
【請求項2】
ナノ構造部材が、シートとして扱われる十分な構造的完全性を有する必要な結合力を提供するための隣接したナノチューブ間に十分な数の接触部位を有している連続構造体を形成するために重ねて置かれた複数の混在されたナノチューブを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ナノ構造部材が、重ねて堆積された不織布のナノチューブの複数の層を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
不織布の材料が、1平方メートル当たり約10グラムのナノチューブ面密度を有する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
反射部材が、自立性の反射材料である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
反射部材が、基板上に堆積された反射材料を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
スペーサーが、遠隔に位置する標的を加熱するための望ましい方向に方向付けられる赤外線の望ましい波長の約2分の1に等しい厚さを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
遠隔に位置する標的が、人間または動物である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
実質的に円筒状または円錐形である、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
反射部材が、発せられた赤外線エネルギーを装置の中央部分内に集中させるように装置の外面を形成する、請求項
9に記載の装置。
【請求項11】
反射部材が、発せられた赤外線エネルギーを外向きに方向付けるように装置の内面を形成する、請求項
9に記載の装置。
【請求項12】
方向付けられた赤外線エネルギーを発するための装置であって、該装置は、
電流が適用されるときに赤外線エネルギーを発するように構成されている、複数のナノチューブを含むナノ構造部材;
発せられた赤外線エネルギーの少なくとも一部を
遠隔に位置する標的を加熱するためにナノ構造部材に向かう方向に反射するように構成された、反射部材;および
予め決められた間隔を維持するためにナノ構造部材と反射部材との間に位置するスペーサーであって、ハニカム構造を有するスペーサーを含む、装置。
【請求項13】
予め決められた間隔が、遠隔に位置する標的を加熱するための望ましい方向に反射される赤外線の望ましい波長の約2分の1に等しい、請求項
12に記載の装置。
【請求項14】
予め決められた間隔が、ナノ構造部材によって発せられた赤外線の主波長の約2分の1に等しい、請求項
12に記載の装置。
【請求項15】
方向付けられた赤外線エネルギーを発するための装置であって、
電力源からエネルギーを受け取るための入力部;
電流が電力源からの入力部を介して適用されるときに赤外線エネルギーを発することができる、グラフェン、グラファイト、カーボンブラック、または他のカーボンベースの材料の少なくとも1つを含む炭素質部材;
発せられた赤外線エネルギーの少なくとも一部を
遠隔に位置する標的を加熱するために炭素質部材に向かう方向に方向付けるように構成された、炭素質部材に直接的または間接的に連結された反射部材;および
炭素質部材と反射部材との間に位置する
1以上のスペーサーであって、各スペーサーがハニカム構造を有する
、スペーサー
を含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願への相互参照>
本出願は、2015年10月23日出願の発明の名称「方向付けられた赤外線放射装置(Directed Infrared Radiator Article)」の米国仮特許出願第62/245,341号の優先権を主張し、その開示は、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
赤外線による加熱には、典型的に、化学反応または電気抵抗によって温められたソースを必要とする。そのようなシステムは非効率的であり、広範囲の波長にわたってそれらの放射線を発する。そのソースは危険でもあり、偶然に他の物質を点火させて火傷を引き起こし、それらの操作に必要とされるしばしば大量の電流が原因で電気ショックを伝える可能性がある。これらのソースは、しばしば、大きな熱質量を有していることを特徴とし、結果として、昇温までの時間の延長をもたらす他に、停止された後に長時間の間危険なほど熱くされたままになる。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、遠隔標的を加熱するために赤外線エネルギーを発する及び方向付けるための装置に関する。該装置は、遠隔に位置する標的を加熱するための、電流が適用されたときに赤外線エネルギーを発するように構成されたナノ構造部材および発せられた赤外線エネルギーの少なくとも一部を望ましい方向に方向付けるように構成された反射部材を含み得る。
【0004】
ナノ構造部材は、幾つかの実施形態では、シートとして扱われる十分な構造的完全性を有する必要な結合力を提供するための隣接したナノチューブ間に十分な数の接触部位を有している連続構造体を形成するために重ねて置かれた複数の混在されたナノチューブを含み得る。1つのそのような実施形態では、ナノ構造部材は、フィロ・ドウ構造(phyllo-dough structure)を形成するために重ねて堆積された不織布のナノチューブの複数の層を含み得る。ナノ構造部材の実施形態は、1平方メートル当たり約10グラムのナノチューブ面密度を有し得る。代替的な実施形態では、グラフェン、グラファイト、カーボンブラック、または他のカーボンベースの材料の少なくとも1つを含む炭素質部材が、ナノ構造部材の代わりに用いられてもよい。反射部材は、幾つかの実施形態では、自立性の反射材料であってもよく、他の実施形態では、基板上に堆積された反射材料を含んでもよい。
【0005】
ナノ構造部材および反射部材は、幾つかの実施形態では、互いに直接連結されてもよく、他の実施形態では、その代わりに、ナノ構造部材と反射部材との間に位置する1つ以上のスペーサーによって分離されてもよい。スペーサーの厚さは、ナノ構造部材から発せられた赤外線エネルギーと反射部材によって反射された赤外線エネルギーとの間の相殺的干渉を最小限にするのを助けるように選択され得る。スペーサーは、全体的な放射されたエネルギーを一般に最大限にするように、あるいはヒトまたは動物などの具体的な標的を熱するのに最適な波長などの、特定の波長の放射線を最大限にするように調整され得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1A】
図1Aは、本開示の実施形態による方向付けられた赤外線ヒーターの平面図を示す。
【
図1B】
図1Bは、本開示の実施形態による方向付けられた赤外線ヒーターの断面図を示す。
【
図2A】
図2Aは、本開示の実施形態による代表的なカーボンナノチューブ部材に関する波長に応じた透過率を例示する。
【
図2B】
図2Bは、赤外波長のスペクトルに関する代表的なヒトの吸収特性を例示する。
【
図3】
図3は本開示の実施形態によるカーボンナノチューブ部材を示す。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態によるCNTシート内のナノチューブのフィロ・ドウ配置の断面図を示す。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態によるカーボンナノチューブシートを形成するためのシステムを示す。
【
図6A】
図6Aは、本開示の実施形態によるカーボンナノチューブシートを採取するためのシステムを示す。
【
図6B】
図6Bは、本開示の実施形態によるカーボンナノチューブシートを採取するためのシステムを示す。
【
図7A】
図7Aは、本開示の実施形態による方向付けられた赤外線ヒーターを示す。
【
図7B】
図7Bは、本開示の別の実施形態による方向付けられた赤外線ヒーターを示す。
【
図8A】
図8Aは、本開示の実施形態によるスペーサーを有している方向付けられた赤外線ヒーターを示す。
【
図8B】
図8Bは、本開示の別の実施形態によるスペーサーを有している方向付けられた赤外線ヒーターを示す。
【
図9A】
図9Aは、本開示の実施形態による円錐形の方向付けられた赤外線ヒーターを示す。
【
図9B】
図9Bは、本開示の実施形態による円錐形の方向付けられた赤外線ヒーターを示す。
【
図10A】
図10Aは、本開示の実施形態による円筒状の方向付けられた赤外線ヒーターを示す。
【
図10B】
図10Bは、本開示の実施形態による円筒状の方向付けられた赤外線ヒーターを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、加熱装置に関し、特に、人、物体などの意図した標的の遠隔加熱のために赤外線エネルギーを生成する及び方向付けるためのナノチューブベースの装置に関する。
【0008】
図1Aおよび1Bを参照すると、本開示の方向付けられた赤外線ヒーター(100)は、一般に、1つ以上のカーボンナノチューブ(CNT)部材(200)、1つ以上の反射部材(300)、および1つ以上のスペーサー(400)を含み得る。電気エネルギーがCNT部材(200)に適用されて、赤外線エネルギーを生成し、反射部材(300)は、発せられたエネルギーを加熱される標的の方へと形作る及び方向付ける働きをし得る。本発明の実施形態に従って作られたカーボンナノチューブは、
図2Aに示されるように、電流がそれらを通り抜ける結果として遠赤外スペクトルにおいて効率的に放射するように作用することができる。これによって、加熱装置は効率的になり、それ自体を加熱することなく、すべての方向で遠赤外において放射することができる。遠隔赤外線加熱は、典型的に、望ましい加熱効果を達成するために標的とされた人または物体のまわりの空気を温める必要がないため、意図した標的(例えば、人または物体)を温める効率的な方法であり得る。
図2Bの示される及び後に本開示でより詳細に議論されるように、試験は、約8ミクロンから12ミクロンの範囲内の赤外線が、人体に最適に吸収され、それ故ヒトへの加熱用途に最適であり得ることを示した。
【0009】
電源は、任意の適切な方法で本発明のCNT部材(200)に接続され得る。一実施形態では、1つ以上のリード線などの入力部(input)は、例えば、
図1Cに示されるように圧着によって機械的に接続され得る。別の実施形態では、適切な入力部またはリード線を提供するために、銀インクなどの伝導材料がCNT部材(200)上に堆積され得る。さらに別の実施形態では、CNT部材(200)のナノチューブと金属のリード線または他の適切な入力部との間の伝導率を増強するために、ガラス状カーボン前駆体が、CNT部材(200)と金属のリード線または他の適切な入力部との間に適用され得る。
【0010】
現在、ナノチューブを成長させる、およびこれらのナノチューブから作られたヤーン、シートまたはケーブル構造を形成するための複数のプロセスおよびそれらの変形が存在する。これらは以下を含む:(1)周囲圧力近くで又は高圧で、および約400℃を超える温度で生じることができる一般的なプロセスである、化学蒸着(CVD)、(2)完成度が高いチューブをもたらすことができる高温プロセスである、アーク放電、および(3)レーザーアブレーション。
【0011】
本発明は、一実施形態において、カーボンナノチューブを含む適切なナノ構造体を生成するために、CVDプロセスまたは当該産業に既知の類似した気相熱分解の手順を利用する。CVDプロセスのための成長温度は、例えば、約400℃から約1350℃の範囲で比較的低くなり得る。単層(SWNT)または多層(MWNT)のカーボンナノチューブ(CNT)は、本発明の実施形態において、ナノスケールの触媒粒子を試薬炭素含有ガス(即ち、ガス状の炭素源)の存在下にさらすことによって成長させられ得る。特に、ナノスケールの触媒粒子は、既存の粒子の追加によって、あるいは有機金属前駆体、またはさらに非金属触媒からの粒子のインサイチュでの合成によって、試薬炭素含有ガスへと導入され得る。SWNTおよびMWNT両方が成長させられ得るが、特定の例において、SWNTが、ロープ状構造を形成するためのその比較的より高い成長の速度および傾向が要因で選択され、これは、取り扱い(handling)、熱伝導率、電子的特性、および強度の利点をもたらし得る。
【0012】
本発明に関連して生成された個々のカーボンナノチューブの強度は、約30GPaまたはそれ以上であり得る。強度は、留意されるべきこととして、欠陥の影響を受けやすい。
しかしながら、本発明の作り上げられたカーボンナノチューブの弾性係数は、欠陥の影響を受けないかもしれず、約1TPaから約1.2TPaまで様々であり得る。さらに、一般に構造に敏感なパラメーターであり得るこれらのナノチューブの破損歪みは、本発明において約10%から最大約25%までの範囲に及び得る。
【0013】
さらに、本発明のナノチューブの直径は、比較的小さくなっている。本発明の一実施形態では、本発明の作り上げられたナノチューブの直径は、約1nm未満から約数10nmまでの範囲であり得る。本発明の一実施形態に従って作られたカーボンナノチューブが、市販のカーボンナノチューブと比較したときに、長さが伸長され得る(即ち、長いチューブ)ことが認識されるべきである。本発明の一実施形態では、本発明の作り上げられたナノチューブの長さは、ミリメートル(mm)範囲であり得る。
【0014】
炭素から合成されたナノチューブに対する適用の全体にわたって言及されているが、ホウ素、MoS2、またはその組み合わせなどの他の化合物が、本発明に関連するナノチューブの合成に使用されてもよいことが留意されるべきである。例えば、ホウ素ナノチューブも成長させられ得るが、それが異なる化学前駆体を用いて行われ得ることが理解されるべきである。加えて、個々のカーボンナノチューブの抵抗力を低減するためにもホウ素が使用され得ることが留意されるべきである。さらに、本発明のナノチューブを作り上げるために、プラズマCVDなどの他の方法も使用することができる。
【0015】
<CNT部材(200)>
CNT部材(200)は、カーボンナノチューブを含有している導電材料を含み得る。一実施形態では、より詳細に以下に記載されるように、CNT部材(200)は、ナノチューブの不織布シートまたはナノチューブヤーンを含み得る。別の実施形態では、CNT部材(200)は、ナノチューブ含有フィルムまたは印刷ナノチューブインクなどの、ナノチューブの分散液を含み得る。また別の実施形態では、CNT部材(200)はナノチューブアレイを含み得る。参照の便宜上、CNT部材(200)はまた、本明細書でナノ構造部材と呼ばれ得る。
【0016】
ここで
図3を参照すると、本発明は、一実施形態において、ナノ構造のCNTシート(12) から作られたCNTストリップ(10)を提供する。CNTストリップ(10)は、その長さに沿った、即ち、CNTシート(12) の平面内の導電性を可能にするように設計され得る。
図3での示されるように、CNTストリップ(10)は、単一のCNTシート(12) の形態で実質的平面体を含み得る。シート(12) は、一実施形態において、多数の(a cloud of)CNTから重ねて堆積された複数の不織布のカーボンナノチューブ(14)の単層であり得るか、あるいは代替的に多層(51 )であり得、その各層は、多数のCNTから重ねて堆積された複数の不織布のナノチューブである(
図4を参照)。多層シートの場合には、複数の不織布のカーボンナノチューブが、フィロ・ドウ構造を形成し、それによって、各層は、多数のCNTから重ねて堆積された複数の不織布のカーボンナノチューブを含む。他の実施形態では、CNTストリップ(10)は、1つ以上のCNTヤーンであり得る。CNTストリップは、単一のヤーン、またはより大きなヤーンを形成するために一緒に束ねられた又は撚られた複数のヤーンであり得る。CNTヤーンの例は、2006年7月17日に出願の米国特許出願第7,993,620号に記載され、これはその全体が引用によって本明細書に組み込まれる。
【0017】
ここで
図5を参照すると、ナノチューブの成形に使用するための、米国特許第7,993,620号(引用によって本明細書に組み込まれる)に開示されたシステムに類似したシステム(30)が例示されている。システム(30)は、一実施形態において、合成チャンバ(31)に連結され得る。合成チャンバ(31)は、一般に、反応ガス(即ち、ガス状の炭素源)が供給され得る入口端(311)、伸長された長さのナノチューブ(313)の合成が生じ得るホットゾーン(312)、および反応の産物、即ちナノチューブおよび排気ガスが排出して収集され得る、出口端(314)を含む。合成チャンバ(31)は、一実施形態において、炉(316)を通って伸長する石英管(315)を含み得る。一方、システム(30)によって生成されたナノチューブは、個々の単層ナノチューブ、そのようなナノチューブの束、及び/又は絡み合った単層ナノチューブであり得る。特に、システム(30)は、圧縮され(compacted)混在されたナノチューブから生成された及びシートとして扱われる十分な構造的完全性を有している、実質的に連続的な不織布シートの形成に使用され得る。
【0018】
システム(30)は、本発明の一実施形態において、合成チャンバ(31)内から環境への浮遊微粒子の放出を最小限にするように、実質的に気密であるように設計されたハウジング(32)も含み得る。ハウジング(32)はまた、酸素がシステム(30)へと入り、合成チャンバ(31)に到達するのを防ぐように作用し得る。特に、合成チャンバ(31)内の酸素の存在は、完全性に影響を与え、ナノチューブ(313)の産生を損なわせかねない。システム(30)はまた、出願番号12/140,263に開示されたインジェクターに類似したインジェクターを含み得、これはその全体が引用によって本明細書に組み込まれる。
【0019】
システム(30)はまた、システム(30)の合成チャンバ(31)内のCVDプロセスから作られた合成されたナノチューブ(313)を収集するように設計された、ハウジング(32)内に位置する、移動式ベルト(320)を含み得る。特に、ベルト(320)は、その上に収集されたナノチューブが、実質的に連続的な伸長可能な構造(321)、例えば、不織布シートを続いて形成することを可能にするために使用され得る。そのようなシートは、シートとして扱われる十分な構造的完全性を有する、圧縮され、実質的に整列していない、および混在されたナノチューブ(313)のマトリックス、ナノチューブの束、または絡み合ったナノチューブから生成され得る。
【0020】
作り上げられたナノチューブ(313)を収集するために、ベルト(320)は、合成チャンバ(31)の出口端(314)に隣接して位置付けられ、それによって、ナノチューブをベルト(320)上に堆積させることが可能となる。一実施形態では、ベルト(320)は、
図5で例示されるように、出口端(314)からのガスの流れと実質的に平行に位置付けられ得る。代替的に、ベルト(320)は、
図6Aおよび
図6Bで例示されるように、出口端(314)からのガスの流れと実質的に垂直に位置付けられ、本質的に穴が多く設けられ得ることで、ナノ材料を運ぶガスの流れが通り抜けることを可能にする。一実施形態では、ベルト(320)は、出口端(314)より実質的に広いシートを生成するために、出口端(314)からのガスの流れと実質的に垂直な方向に左右に平行移動するように設計され得る。ベルト(320)はまた、従来のコンベヤーベルトに類似した、連続的なループとして設計されてもよく、その結果、ベルト(320)は軸まわりを連続して回転することができ、それによって、CNTの複数の実質的に別個の層がベルト(320)上に堆積されて、
図4で示されるシートのような、シート(321)を形成することができる。その目的のために、ベルト(320)は、一実施形態において、対向する回転要素(322)のまわりでループ状にされ、電気モーターなどの機械デバイスによって駆動され得る。一実施形態では、機械デバイスは、張力および速度が最適化され得るように、コンピューターまたはマイクロプロセッサーなどの制御システムの使用によって制御され得る。シート(321)の形成におけるCNTの多層の堆積は、本発明の一実施形態に従って、ナノチューブ間の中間層の接触を結果的に最小限にすることができる。具体的には、シート(321)の各々の別個の層におけるナノチューブは、シート(321)の隣接層には伸長しない傾向がある。結果として、平面に垂直な(normal-to-plane)熱伝導率は、シート(321)を介して最小限にされ得る。
【0021】
望まれる程度まで、ローラー(45)などの圧力アプリケーターが利用されてもよい。
図6Aおよび
図6Bを参照すると、圧力アプリケーターはベルト(44)に隣接して位置づけられ、ベルト(44)はガスの流れに実質的に垂直に位置づけられ、それによって、圧縮力(即ち、圧力)を収集されたナノ材料に適用する。特に、ナノ材料がローラー(45)の方に運ばれると、ベルト(44)上のナノ材料は、ローラー(45)の下およびそれとは逆(against)の移動を強いられ、その結果、混在されたナノ材料に圧力が適用され得、一方でナノ材料は、ベルト(44)とローラー(45)との間で干渉性の(coherent)実質的に結合されたシート(46)へと圧縮される。ベルト(44)上のナノ材料に対する圧力を増強させるために、プレート(444)がベルト(44)の後ろに位置づけられて、硬質表面が提供され、硬質表面に対してローラー(45)からの圧力が適用され得る。収集されたナノ材料の量が十二分にあり、それが十分に混在されており、その結果、シート(46)を生成するべく必要な結合力を提供するために、十分な数の接触部位が存在する場合、ローラー(45)の使用が必要ではないかもしれないことが留意されるべきである。様々な実施形態では、CNT部材(200)の不織布のCNTシートの実施形態は、約20重量%から約90重量%の範囲、および好ましくはおよそ80%のカーボンナノチューブの密度を有し得る。
【0022】
混在されたナノ材料のシート(46)をベルト(44)から切り離し、続いてハウジング(42)から取り除くために、メスまたはブレード(47)が、ローラー(45)の下流に提供され、その先端はベルト(44)の表面(445)に接触している。このように、シート(46)が下流にローラー(45)を通り過ぎて移動すると、ブレード(47)は、ベルト(44)の表面(445)からシート(46)を持ち上げるように作用し得る。代替的な実施形態では、シート(46)を取り除くためにブレードは必ずしも使用中である必要はない。むしろ、シート(46)は、手動で又は当該芸術分野における他の既知の方法で取り除かれ得る。
【0023】
さらに、ブレード(47)の下流にスプールまたはローラー(48)が設けられてもよく、その結果、切り離されたシート(46)は、続いてその上へと配向され、回収するためにローラー(48)に巻きつけられ得る。シート(46)がローラー(48)に巻きつけられるにつれ、複数の層が形成され得る。もちろん、シート(46)がその後のハウジング(42)からの除去のために収集され得る限り、他の機構が使用されてもよい。ローラー(48)は、ベルト(44)のように、一実施形態において、その回転軸がシート(46)の移動方向に対して実質的に横方向であるように、電気モーター(481)などの機械的駆動装置によって駆動され得る。
【0024】
ローラー(48)に巻きつけられる際、シート(46)自体への結合を最小化するために、分離材料(49)(
図6Aと6Bを参照)は、シート(46)がローラー(48)に巻きつけられる前に、シート(46)の1つの側部上に適用され得る。本発明に関する使用のための分離材料(49)は、連続するロール(491)に供給され得る様々な商業上利用可能な金属シート又はポリマーの1つでもよい。そのために、シート(46)がローラー(48)に巻きつけられると、分離材料(49)はローラー(48)上へとシート(46)に沿って引っ張られ得る。シート(46)の1つの側部に適用され得る限り、分離材料(49)を含むポリマーは、シート、液体、又は任意の他の形態で設けられ得ることに注意されたい。更に、シート(46)内の混合されたナノチューブが、Fe、Co、Niなどの強磁性体の触媒のナノ粒子を含有し得るため、分離材料(49)は、1つの実施形態において、シート(46)が分離材料(49)へ強力にくっつくのを防ぐために、例えば導電性又はその他のものなどの非磁性材料でもよい。代替的な実施形態において、分離材料は必要でない場合もある。
【0025】
シート(46)は生成された後、シート(46)として残り、又は小片などのより小さな切片に切断され得る。一実施形態において、シート(46)を小片に切断するためにレーザーを使用してもよい。レーザー光線は、一実施形態において、レーザーがハウジングから出るとシート(46)に向けられるように、ハウジングに隣接して位置してもよい。レーザー光線の操作及び小片の切断を制御するためにコンピューター又はプログラムが利用され得る。代替的な実施形態において、シート(46)を小片に切断するための、当技術分野で既知の任意の機械的な手段又は他の手段が、使用され得る。
【0026】
望ましい程度にまで、静電場(図示せず)は、ほぼベルト運動の方向で、合成チャンバ(31)から生成されるナノチューブを整列するために使用され得る。静電場は、1つの実施形態において、例えば合成チャンバ(31)の出口端(314)の周辺に2以上の電極を置き、且つ該電極に高電圧を加えることにより、生成され得る。電圧は、一実施形態において、約10Vから約100kV、好ましくは約4kVから約6kVまで変動し得る。必要ならば、電極は、小さな石英又は他の適切な絶縁体などの絶縁体で保護され得る。電場の存在により、中を通って移動するナノチューブは、移動式ベルト上でナノチューブの整列をもたらすように電場と実質的に整列し得る。
【0027】
代替的に、カーボンナノチューブは、全体において引用により本明細書に組み込まれる同時係属の米国特許出願第12/170,092号で提供されるような、カーボンナノチューブシートの合成後に伸ばすことによって整列され得る。
【0028】
システム(30)は、注記されるように、
図4に示されるように不織布シートに高強度のバルクナノ材料を提供することができる。カーボンナノチューブ(14)は、一実施形態において、
図4に示されるように1つのCNTシート(12)に多層の構造又は形態を形成するために複数の別個の層(51)に堆積され得る。上述のように、ナノファイバーの不織布シート(110)は、SWNT又はMWNTのカーボンナノチューブのいずれかの複数の別個の層の堆積から作製され得る。一実施形態において、そのような不織布シート(110)の引張強度は、SWNTでは40MPa以上であり得る。更に、そのようなシートは、ナノチューブの形成からの残りの触媒と共に使用され得る。しかし、典型的な残りのものは、2原子パーセント未満でもよい。
【0029】
不織布シートにナノ材料を設けることにより、バルクナノ材料は、容易に扱われ、その一方で構造的完全性を維持し、続いて最終用途のために処理され得る。本開示のナノチューブの不織布シートとヤーンは、加熱の用途に有益な多数の特徴を提示し得る。これらの材料は導電性であり、熱質量が少なく、高度に可撓性であり、且つ化学的劣化に耐性がある。
【0030】
システム(30)と同様のシステムも、ナノチューブヤーンの製造に使用されてもよい。ヤーンを製造するために、ハウジング(32)を、炉(316)からナノチューブを受けとり、それを紡いでヤーンにするための装置と取り換えることができる。装置は、ナノチューブがチューブ(315)から出たときにそれらを集める回転スピンドルを含んでもよい。回転スピンドルは、複数のチューブが入り且つ紡がれてヤーンにされる、取り込み端部を含んでもよい。スピンの方向は、ナノチューブ貫通孔(315)の移動方向へと実質的に横断され得る。回転スピンドルは、ヤーンがスピンドルの出口端の方へとガイドされ得る経路を含んでもよい。その後、ヤーンはスプール上で集められてもよい。
【0031】
本発明の実施形態に従って作製されるカーボンナノチューブは、界面活性剤での処理を必要としない場合があり、導電率と熱伝導率が少なくとも3倍優れていることを、理解されたい。更に、本発明の実施形態に従って作られるカーボンナノチューブシートは、複数の層を含み得る。
【0032】
様々な実施形態において、CNT部材(200)は、赤外線放射を増強するための添加物質を更に含み得る。特に、様々な実施形態において、産生される赤外線エネルギーの波長に影響を及ぼすための添加物質が使用され得る。例えば、一実施形態において、添加物質は、3-6ミクロンの範囲で発せられたエネルギーの波長を、代わりに8-12ミクロンの範囲で発せられるように調整するように含まれてもよい。記載した目的に適している添加物質の例は、限定されないが、光ルミネセンス材料である燐光物質を含む。当業者は、明示された目的に適している本開示の範囲内の他の適切な添加物質を認識している。
【0033】
炭素質部材(500)
様々な実施形態において、炭素質材料を含む部材(500)(以下、炭素質部材(500)と称する)は、CNT部材(200)の適所に使用されてもよい。適宜、本開示は主に、CNT部材(200)を含むような方向付けられた赤外線ヒーターについて記載しているが、様々な実施形態において、方向付けられた赤外線ヒーター(100)は付加的に又は代替的に炭素質部材(500)を含み得ることを理解されたい。CNT部材(200)のように、炭素質部材(500)の幾つか実施形態は、赤外線エネルギーを生成し及び/又は生成された赤外線エネルギーの調整を助ける能力を増強するための添加物質を含み得る。
【0034】
炭素質部材(500)は、電流が適用されると赤外線エネルギーを発することができる導電性の炭素質材料を含み得る。適切な炭素質材料の代表的な例は、限定されないが、グラフェン、グラファイト、及びカーボンブラックを含む。場合によっては、炭素質材料は、Grafoilシート又はグラフェンシートなどのシートで商業上利用可能であり;しかし、他の場合に、炭素質材料を、炭素質部材(500)を形成するために基板又は支持体の他の形態に連結させることが必要な場合もある。例えば、幾つかの実施形態において、グラファイト又は導電性カーボンブラックをベースとするインクなどの炭素質材料は、基板上に覆われ又は堆積されてもよい。これらのインクの多くは、DuPont及びMerecoのような企業から市販で入手可能である。
【0035】
また別の実施形態において、CNT部材(200)はハイブリッド材料を形成するために炭素質材料と組み合わせられ得る。例えば、CNT部材(200)は、ハイブリッド材料を形成するためにグラフェンインクやカーボンブラックインクなどに浸され得る。インクの代表的な濃度は、CNT部材(200)の最大約50容量%に及ぶこともある。結果として生じるハイブリッド材料は導電率の増大を提示し得る。
【0036】
反射部材(300)及びスペーサー(400)
ここで
図7Aと7Bを参照すると、方向付けられた赤外線ヒーター(100)は反射部材(300)を更に含み得る。様々な実施形態において、反射部材(300)は、望ましい方向でCNT部材(200)により生成される赤外線エネルギーを方向付けるように構成されてもよい。代替的に又は付加的に、反射部材(300)は、その効果と効率を増強するために、方向付けられた赤外線エネルギーを集中するように構成され得る。
【0037】
反射部材(300)は、一実施形態において、CNT部材(200)から発せられた赤外線エネルギーを反射するのに適切な材料及び構造でもよい。反射材料の例は、限定されないが、銀、金、又は、CNT部材(200)から発せられた赤外線エネルギーを反射することができる特性を持つ他の金属材料を含み得る。反射部材(300)は、好ましい実施形態において、反射部材(300)自体の加熱を避けるために、CNT部材(200)から発せられた赤外線エネルギーの少なくとも80%を反射できなければならない。大半の金属は典型的に赤外線エネルギーの約85%から95%を反射することができ、金及び同様の金属では、約97%の有効性でスペクトルの上端で実行する。一実施形態において、反射部材(300)は、Mlylar又はアルミニウムで処理されたMylarなどの自立性の反射材料を含んでもよい。別の実施形態において、反射部材(300)は、基板に堆積される又はさもなくば適用され或いは基板により支持される反射材料を含み得る。高分子フィルムなどの任意の適切な基板が、反射材料の構造の支持のために利用され得る。反射材料と支持基板は、限定されないが、基板上での反射材料の堆積、結合剤(例えば接着剤)の使用、又は基板の表面に対して反射材量を密封するための材料(例えば、高分子シーラント層)の適用を含む、適切な様式で連結され得る。当業者は、これらが単に適切な反射材料、基板、及びそれらの組み合わせの例示であり、本発明がこれらの例示的実施形態にのみ限定されないことを意図されていることを、認識している。
【0038】
CNT部材(200)と反射部材(300)は、方向付けられた赤外線ヒーター(100)を形成するために互いに連結され得る。1つの実施形態において、CNT部材(200)と反射部材(300)は、感圧性アクリラート又は熱硬化性アクリル酸樹脂などの接着剤を使用して連結されてもよい。別の実施形態において、CNT部材(200)は、反射部材(300)へと積層されてもよい。構成の一例は、Mylar又はアルミニウムで処理されたMylarに積層される、1平方メートル当たり約10グラム(gsm)のナノチューブ面密度を持つ、ナノチューブの不織布シートを含む。もちろん、CNT部材(200)と反射部材(300)を連結するための任意の適切な方法と媒体が使用されてもよい。
【0039】
図7Bは、反射特性を増強するようにパターン化される(patterned)、可撓性CNTシート(200)と可撓性反射部材(300)とを含む方向付けられた赤外線ヒーター(100)の可撓性の実施形態を示す。
【0040】
ここで
図8Aと8Bを参照すると、方向付けられた赤外線ヒーター(100)は、CNT部材(200)と反射部材(300)との間に位置するスペーサー(400)を更に含み得る。スペーサー(400)は、CNT部材(200)と反射部材(300)との間の予め定められた間隔を維持するように構成され得る。
図7におけるように反射部材(300)はCNT部材(200)に対して直接位置決めされ得ることが確実に想定され得るが、方向付けられた赤外線ヒーター(100)の効率は、発せられた放射と反射された放射との間の相殺的干渉を最小化するように互いに距離を置いてこれらのコンポーネントを位置決めすることにより改善され得ることを、理解されたい。スペーサー(400)は、これらコンポーネント間に位置すると、様々な実施形態において、赤外線エネルギーが最小限の干渉で通過することを可能にするのに適切な材料で作製され得る。一実施形態において、スペーサー(400)は、ヒーター(100)に付加的な構造的完全性を設けるために、ハニカム構造又は他の適切な構造を含み得る。もちろん、スペーサー(400)は材料の別の層である必要がないが、むしろ、CNT部材(200)と反射部材(300)との間の望ましい間隔を維持するために適切な構造(例えば、フレーム、複数の物体又は非重要構造)を含んでもよい。
図8Bは、スペーサー(400)がフォームから構成される実施形態を示す。
【0041】
構成の一例は、スペーサー(400)(例えばハニカム構造)の片側に積層されるCNT部材(200)(例えばナノチューブの不織布シート)、及びスペーサー(400)のもう片側に積層される反射部材(300)(例えばMylarシート)を含む。スペーサー(400)の厚みは、後述のように、CNT部材(200)と反射部材(300)との間に、相殺的干渉を最小化するのに適切な間隔を設けるように選択され得る。
【0042】
様々な実施形態において、反射部材(300)は、CNT部材(200)から発せられた赤外線エネルギーが反射部材(300)に反射するときに生じ得る相殺的干渉を最小化するように構成された距離で、CNT部材(200)に対して位置決めされてもよい。相殺的干渉は典型的に、入射波と反射波が互いにほぼ位相がずれて相互に作用する時に生じる。これは、一実施形態において、望ましい赤外線エネルギーの約2分の1の波長により赤外線エネルギー源から離れて反射部材(300)との間隔を空けることにより最小化され得る。例えば、約11ミクロンの波長を持つ赤外線エネルギーを反射することが望ましい場合、反射部材(300)は、その赤外線エネルギー源から約5.5ミクロンの距離に位置決めされ得る。
【0043】
幾つかの用途において、波長にかかわらず、標的に対して可能な限り赤外線エネルギーを反射することが望ましい場合もある。そのような場合、反射部材(300)は、CNT部材(200)により生成される赤外線エネルギーの主波長の相殺的干渉を最小化するのに適切なCNT部材(200)からの距離に、位置決めされ得る。例えば、CNTシートが様々な波長を持つ赤外線エネルギー(多数の放射線は10ミクロンの波長を持つ)を生成する場合、反射部材は、その主波長の半分に等しい距離に、つまれ、5ミクロンの距離に位置決めされ得る。
【0044】
他の用途において、特定の波長の赤外線エネルギーがCNT部材(200)から発せられた主波長であるかどうかにかかわらず、特定の波長の赤外線エネルギーを反射することが望ましい場合もある。そのような用途において、間隔は、望まれない波長の発せられた赤外線エネルギーをフィルタ処理し(filter out)、代わりに、加熱される人又は物体の方へと望ましい波長の赤外線エネルギーを主に方向付けるために、ある程度使用されてもよい。
【0045】
反射部材(300)とCNT部材(200)との間の適切な間隔の判定は、反射されることが望ましい大多数の赤外線エネルギーが発せられるCNT部材(200)内の深さの近似値(approximation)を必要とし得る。これは、CNT部材(200)の多くの特性、例えばその厚み、ナノチューブの密度分布、及び中に含まれるナノチューブの均等度に依存し得る。一実施形態において、特にCNT部材(200)が非常に薄く及び/又は赤外線エネルギーの望ましい波長を生成する要因となる高密度のタイプのナノチューブを表面に持つ場合、赤外線エネルギー源は、CNT部材(200)の表面で近似され得る。別の実施形態において、例えば、CNT部材(200)がより厚く及び/又はその厚みの中で赤外線エネルギーの望ましい波長を生成する要因となる高密度のタイプのナノチューブを持つ場合、赤外線エネルギー源はCNT部材(200)の表面より下で近似され得る。当業者は、本開示の教示に基づき、与えられた用途とCNT部材(200)の構造に適切な間隔を認識している。
【0046】
好ましい実施形態において、方向付けられた赤外線ヒーター(100)は、望ましい波長範囲で約70%より高い遠赤外線反射を達成するための適切な材料と間隔で構成されてもよい。様々な実施形態において、間隔は、約8ミクロンと12ミクロンの間の波長を持つ赤外線エネルギーの相殺的干渉を最小化するように設定され得る。研究により、
図2Bに示されるように、この範囲内の波長を持つ赤外線エネルギーが人間を熱するのに最も有効であることが示された。もちろん、本開示はそのようなものに限定されるようには意図されておらず、方向付けられた赤外線ヒーター(100)は、与えられた用途のための任意の適切な波長又は波長の範囲の赤外線エネルギーを生成且つ方向付けるように構成され得る。
【0047】
幾つかの実施形態において、方向付けられた赤外線放射装置(100)は、物理的ダメージ、及び要素又は有害な化学物質への曝露からCNT部材(200)を保護するためのカバー部材を更に含み得る。カバー部材は、標的の方へと方向付けられる、発せられ且つ反射された赤外線エネルギーを阻害しないように、赤外線エネルギーを十分に通すものでなければならないことを、理解されたい。
図7Bと8Bは、そのようなカバー部材を含む、方向付けられた赤外線放射装置(100)の実施形態を示す。
【0048】
ここで
図9A-9Bと10A-10Bを参照すると、方向付けられた赤外線ヒーター(100)は、様々な実施形態において、収束ビーム又は放射線の拡散円錐体(diffuse cone)などの、赤外線エネルギーの制御された特性を形成するように形作られ得る。その目的のために、CNT部材(200)、反射部材(300)、及び(随意に)スペーサー(400)は、望ましい特性を形成するためにCNT部材(200)から発せられた赤外線エネルギーを反射するのに適切な方法で形作られ且つ連結されてもよい。一実施形態において、
図9Aに示されるように、これらのコンポーネントは、円錐体の内部表面を形成するCNT部材(200)及び円錐体の外部表面を形成する反射部材(300)を持つ円錐形ヒーター(100)を形成するように連結され得る。そのような構成において、反射部材(300)は、円錐体内にCNT部材(200)により発せられた赤外線エネルギーを集中し、且つ円錐体の開放端から加熱される人又は物体の方へそれを方向付ける役目を果たす場合もある。別の実施形態において、
図9Bに示されるように、CNT部材(200)と反射部材(300)の位置は、円錐形ヒーターにおいて反転されてもよく、それにより、反射部材(300)は、拡散する多くの赤外線エネルギーを円錐体の点の外へ及び円錐体の点の方へと方向付ける役目を果たす。もちろん、同様の実施形態は凹型と凸型の他の種類についても想定されている。更なる実施形態において、方向付けられた赤外線ヒーター(100)は、
図10Aと10Bに示されるように、その中心の方へと位置付けられる人又は物体の方に赤外線エネルギーを集中させる、或いは、円筒状ヒーター(100)の周囲に位置付けられる人又は物体の方により多くの拡散するエネルギーを方向付けるように、円筒形状であってもよい。また別の実施形態において、
図1Aと1Bに示されるように、方向付けられた赤外線ヒーター(100)は、ほぼ平らな形状でもよい。そのような実施形態は、表面の前に位置付けられる人又は物体を加熱するために表面に対して垂直に赤外線エネルギーを方向付けるために使用されてもよい。もちろん、これらは単なる例示的な構成であり、当業者は本開示の範囲内で任意数の適切な構成を認識している。
【0049】
利点と用途
本開示の方向付けられた赤外線ヒーターは、優れた電気伝導を提示する一方、オーム加熱をもたらすのに十分な耐性を持つ。
【0050】
これらのヒーターは、その低い熱質量により、人又は物体を比較的迅速に加熱することが可能となり、且つ、他の形態のヒーターの多くとは異なり、停止後に長期間にわたり熱い状態にはとどまらない。これにより、これらヒーターの使用に関連した安全上の危険の可能性が減り、これらヒーターが様々な用途に使用され得る精密度をも増強する。
【0051】
更に、本開示のヒーターは非常に可撓性であり、例えば赤外線加熱の性能を損ねる又は落とすことのない極度の半径(extreme radii)により湾曲され得る。金属又はセラミックスとは異なり、それらは容易に壊れず又は疲労せず、腐食せず、及び化学物質を通さない。
【0052】
本明細書に開示される方向付けられた赤外線ヒーターの様々な実施形態は、様々な用途に使用されてもよい。様々な実施形態において、ヒーターは、人間に暖かさを提供するために使用されてもよい。例えば、ヒーターは、日除け、傘、暖房毛布、ボディーラップ、カーシート、自動車のサイドパネル、幼児保育器などに組み込まれ得る。他の実施形態において、ヒーターは、物体を遠隔で加熱するために使用されてもよい。また別の実施形態において、ヒーターは、植物用の成長マットに使用され得る。本明細書に開示されるヒーターにより提供される遠隔赤外線加熱は、加熱される人物体物体を取り囲む空間を加熱することに欠点をもたらすことなく、効果的な加熱の用途を提供する。
【0053】
本発明は、その特定の実施形態を参照すると共に記載されてきたが、本発明の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更が行われ、且つ同等なものが置き換えられ得ることを理解されたい。加えて、多くの修正が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、特定の状況、指標、材料及び物質の組成、処理工程又は複数の工程に順応するように行われてもよい。全てのそのような修正は、本明細書に添付の特許請求の範囲内にあるよう意図される。