(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】表面修飾ハロイサイト、表面修飾ハロイサイトの製造方法、及び、触媒反応
(51)【国際特許分類】
C01B 33/26 20060101AFI20220713BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220713BHJP
【FI】
C01B33/26
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2018547722
(86)(22)【出願日】2017-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2017038513
(87)【国際公開番号】W WO2018079605
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2016209031
(32)【優先日】2016-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016209032
(32)【優先日】2016-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000200301
【氏名又は名称】JFEミネラル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】近内 秀文
(72)【発明者】
【氏名】島津 省吾
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/004949(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/039416(WO,A1)
【文献】JOO Yongho, et al.,Aggregation and Stabilization of Carboxylic Acid Functionalized Halloysite Nanotubes(HNT-COOH),THE JOURNAL OF PHYSICAL CHEMISTRY C,2012年07月16日,116,p.18230-18235
【文献】Wanga Yuanming,et al.,Sulfonated halloysite nanotubes/polyethersulfonenanocomposite membrane for efficient dye purification,Journal of MembraneScience,2015年06月06日,150,p.243-251
【文献】Yunlei Zhang, et al.,Acid-chromic chloride functionalized natural clay-particles for enhanced conversion of one-pot cellulose to 5-hydroxymethylfurfural in ionic liquids,Royal Society of Chemistry,4,2014年04月,p.11664-11672
【文献】篠塚悠,スルホン化アロフェンの合成と個体酸触媒としての挙動,粘土科学討論会講演要旨集,2008年,52,114-115
【文献】石崎慧,スルホン化粘土化合物触媒を用いた2-プロパノール溶媒中でのフルクトースからの5-ヒドロキシメチルフルラ-ルの合成,日本化学会講演予稿集(=日本化学会年会講演予稿集)(春・秋),2012年,92,458
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B33/20-39/54
C07B31/00-61/00;63/00-63/04;C07C1/00-409/44
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に-L-COOHで表されるカルボキシ基含有基又は-L′-SO
3Hで表されるスルホ基含有基を有するハロイサイトである、表面修飾ハロイサイト。ここで、Lは、単結合、又は、2価の有機基を表し、L′は、2価の有機基を表す。ただし、前記表面修飾ハロイサイトが前記スルホ基含有基を有するハロイサイトである場合、表面修飾前のハロイサイトの表面水酸基量(mmol/g)に対する、スルホ基含有基の含有量(mmol/g)の割合は、20~80mol%である。
【請求項2】
表面に前記カルボキシ基含有基を有するハロイサイトである、請求項1に記載の表面修飾ハロイサイト。
【請求項3】
表面に前記スルホ基含有基を有するハロイサイトである、請求項1に記載の表面修飾ハロイサイト。
【請求項4】
表面にさらに水酸基を有するハロイサイトである、請求項1~3のいずれか1項に記載の表面修飾ハロイサイト。
【請求項5】
少なくとも一部がナノチューブ状である、請求項1~4のいずれか1項に記載の表面修飾ハロイサイト。
【請求項6】
ハロイサイトとカルボン酸無水物又は環状スルホン酸エステルとを反応させることで、請求項1~4のいずれか1項に記載の表面修飾ハロイサイトを製造する、表面修飾ハロイサイトの製造方法。
【請求項7】
ナノチューブ状のハロイサイトを含有するハロイサイトとカルボン酸無水物又は環状スルホン酸エステルとを反応させることで、請求項5に記載の表面修飾ハロイサイトを製造する、表面修飾ハロイサイトの製造方法。
【請求項8】
固体触媒である、請求項1~5のいずれか1項に記載の表面修飾ハロイサイト
。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の表面修飾ハロイサイトを固体触媒として用いて、多糖を加水分解することにより単糖を合成する
方法、又は、フルクトースを脱水分解することによりヒドロキシメチルフルフラールを合成する
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面修飾ハロイサイト、表面修飾ハロイサイトの製造方法、及び、触媒反応に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースを加水分解してグルコースを合成する方法として、固体触媒としてアルカリで賦活した炭素を用いる方法(非特許文献1)やスルホン化炭素を用いる方法(非特許文献2)が提案されている。
また、天然に存在する糖であるフルクトースから、バイオ燃料及びプラスチック原料として期待されるヒドロキシメチルフルフラール(HMF)を合成する方法として、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒中で酸触媒を用いる方法が提案されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】K.Yabushita他、「A Study on Catalytic Conversion of Non-Food Biomass into Chemicals」、Springer Singapore、2016年、p.43-75
【文献】X.Qi他、「Bioresource Technology」、2012年、第116巻、p.355-359
【文献】Ken-ichi Shimizu、他2名、「Catalysis Communications」、2009年8月25日、第10巻、第14号、p.1849-1853
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、酸触媒を用いてDMSO溶媒中で反応を行った場合、溶媒の分離回収が困難であるという欠点がある。このため、上記合成反応などの反応において、汎用性溶媒中で高活性を示し、かつ、分離回収が容易な固体触媒の開発が要求されている。
【0005】
本発明は、非特許文献1~3と同様に高い触媒活性を示す、新規な固体触媒、上記固体触媒の製造方法、及び、上記固体触媒を用いた触媒反応を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、表面にカルボキシ基含有基又はスルホ基含有基を有するハロイサイトが高い触媒活性を示すことを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
(1) 表面にカルボキシ基含有基又はスルホ基含有基を有するハロイサイトである、表面修飾ハロイサイト。
(2) 表面にさらに水酸基を有するハロイサイトである、上記(1)に記載の表面修飾ハロイサイト。
(3) 少なくとも一部がナノチューブ状である、上記(1)又は(2)に記載の表面修飾ハロイサイト。
(4) ハロイサイトとカルボン酸無水物又は環状スルホン酸エステルとを反応させることで、上記(1)又は(2)に記載の表面修飾ハロイサイトを製造する、表面修飾ハロイサイトの製造方法。
(5) ナノチューブ状のハロイサイトを含有するハロイサイトとカルボン酸無水物又は環状スルホン酸エステルとを反応させることで、上記(3)に記載の表面修飾ハロイサイトを製造する、表面修飾ハロイサイトの製造方法。
(6) 上記(1)~(3)のいずれかに記載の表面修飾ハロイサイトを固体触媒として用いた触媒反応。
(7) 上記(1)~(3)のいずれかに記載の表面修飾ハロイサイトを固体触媒として用いて、多糖を加水分解することにより単糖を合成する、又は、フルクトースを脱水分解することによりヒドロキシメチルフルフラールを合成する、上記(6)に記載の触媒反応。
【発明の効果】
【0008】
以下に示すように、本発明によれば、高い触媒活性(例えば、高い収率、高い選択率、高い反応転化率、特に高い収率)を示す新規な固体触媒、上記固体触媒の製造方法、及び、上記固体触媒を用いた触媒反応を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、表面修飾前後のハロイサイトのFT-IRスペクトルを表す。
【
図2】
図2は、実施例で使用されたハロイサイトのXRDパターンを表す。
【
図3】
図3は、表面修飾前後のハロイサイトのFT-IRスペクトルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の表面修飾ハロイサイト、上記表面修飾ハロイサイトの製造方法、及び、上記表面修飾ハロイサイトを用いた触媒反応について説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
[表面修飾ハロイサイト]
本発明の表面修飾ハロイサイト(以下、「本発明のハロイサイト」又は「表面修飾ハロイサイト」とも言う)は、表面にカルボキシ基(-COOH)含有基又はスルホ基(-SO3H)含有基を有するハロイサイトである。なお、以下、表面にカルボキシ基含有基を有するハイロサイトを「Hs-COOH」とも言い、また、表面にスルホ基含有基を有するハロイサイトを「Hs-PS」とも言う。
本発明のハロイサイトは、微細構造(例えば、ナノチューブ状等)を有するハロイサイトの表面にカルボキシ基含有基又はスルホ基含有基が結合した構造を有するため、上記微細構造が反応場となり、結果として、極めて高い触媒活性を示すものと推測される。
【0012】
ここでハロイサイトとは、Al2Si2O5(OH)4・2H2O、又は、Al2Si2O5(OH)4で表される粘土鉱物である。ハロイサイトは、ナノチューブ状のハロイサイト(ハロイサイトナノチューブ)を含有していてもよい。上記ハロイサイトナノチューブは一般に、サブミクロンの大きさの中空管状構造を有し、外表面は主にケイ酸塩SiO2からなり、内表面は主にアルミナAl2O3からなる。
【0013】
本発明のハロイサイトは、本発明の効果がより優れる理由から、少なくとも一部が上記ナノチューブ状であることが好ましい。他の形状としては、シート状、球状、角ばった団塊状、板状などが挙げられる。
本発明のハロイサイトがナノチューブ状である場合、本発明の効果がより優れる理由から、ナノチューブの長さは、2~1000nmであることが好ましく、2~500nmであることがより好ましい。
また、本発明のハロイサイトがナノチューブ状である場合、本発明の効果がより優れる理由から、ナノチューブの内径は、2~200nmであることが好ましく、2~100nmであることがより好ましい。
また、本発明のハロイサイトは、少なくとも一部がナノチューブ状である表面修飾ハロイサイトで構成されるのが好ましく、その集合体の形態はパウダー状でも造粒物でもよい。造粒物とする場合は、表面修飾する前、又は、固体触媒などとして利用する前に適宜造粒操作を加えてもよい。この時の造粒物の形状としては、円柱ペレット、球形、顆粒状及びフレーク状などが挙げられ、その造粒方法としては、押出し、転動及び噴霧乾燥など公知の方法が適用できる。
【0014】
本発明のハロイサイトがカルボキシ基含有基又はスルホ基含有基を有する位置は表面であれば特に制限されないが、本発明のハロイサイトがナノチューブ状である場合には、本発明の効果がより優れる理由から、ナノチューブの内表面であることが好ましい。
【0015】
また、上記カルボキシ基含有基又はスルホ基含有基の上記表面への結合形式は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、共有結合であることが好ましい。上記結合形式が共有結合である場合、触媒反応時の溶媒中へのカルボキシ基含有基又はスルホ基含有基の流出(例えば、後述する表面修飾剤の流出)が起こり難く、結果として、本発明のハロイサイトはより高い触媒活性を示す。このことは、特に触媒反応に用いる溶媒が極性溶媒(例えば、水、メタノール、エタノール)である場合に顕著となる。
【0016】
本発明のハロイサイトがカルボキシ基含有基を有する場合、本発明のハロイサイトが有するカルボキシ基含有基は、カルボキシ基、又は、カルボキシ基を含有する基である。カルボキシ基含有基は、本発明の効果がより優れる理由から、-L-COOHで表される基であることが好ましい。ここで、Lは、単結合、又は、2価の有機基を表す。
上記2価の有機基としては、置換若しくは無置換の2価の脂肪族炭化水素基(例えば、アルキレン基。好ましくは炭素数1~8)、置換若しくは無置換の2価の芳香族炭化水素基(例えば、アリーレン基。好ましくは炭素数6~12)、-O-、-S-、-SO2-、-NR-(R:炭化水素基)、-SiR1R2-(R1及びR2:炭化水素基)、-CO-、-NH-、-COO-、-CONH-、またはこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。
【0017】
本発明のハロイサイトがスルホ基含有基を有する場合、本発明のハロイサイトが有するスルホ基含有基は、スルホ基、又は、スルホ基を含有する基である。スルホ基含有基は、本発明の効果がより優れる理由から、-L-SO3Hで表される基であることが好ましい。ここで、Lは、単結合、又は、2価の有機基を表す。
上記2価の有機基の具体例及び好適な態様は上述したカルボキシ基含有基と同じである。上記2価の有機基は、本発明の効果がより優れる理由から、2価の脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0018】
本発明のハロイサイトがカルボキシ基含有基を有する場合、本発明のハロイサイトにおいて、表面修飾ハロイサイト全体に対するカルボキシ基含有基の含有量(以下、「カルボキシ基含有量」とも言う)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、0.1~15mmol/gであることが好ましく、0.1~12mmol/gであることがより好ましく、0.1~10mmol/gであることがさらに好ましい。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、0.7mmol/g以上であることが好ましく、1.0mmol/g以上であることがより好ましい。
【0019】
本発明のハロイサイトがスルホ基含有基を有する場合、本発明のハロイサイトにおいて、表面修飾ハロイサイト全体に対するスルホ基含有基の含有量(以下、「スルホ基含有量」とも言う)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、0.1~15mmol/gであることが好ましく、0.1~12mmol/gであることがより好ましく、0.1~10mmol/gであることがさらに好ましい。
【0020】
本発明のハロイサイトは、本発明の効果がより優れる理由から、表面にさらに水酸基を有するのが好ましい。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、表面に上述したカルボキシ基含有基又はスルホ基含有基と水酸基とが均一に共存するのが好ましい。
【0021】
[表面修飾ハロイサイトの製造方法]
本発明のハロイサイトを製造する方法は特に制限されないが、得られる表面修飾ハロイサイトの活性がより優れる理由から、ハロイサイト(表面未修飾のハロイサイト)(以下、表面未修飾のハロイサイトを単に「ハロイサイト」又は「Hs」とも言う)と、後述する表面修飾剤とを反応させる方法が挙げられる。なかでも、得られる表面修飾ハロイサイトの活性がより優れる理由から、ハロイサイトの表面の水酸基の一部と表面修飾剤とを反応させる方法が好ましい。このように反応させることで、カルボキシ基含有基又はスルホ基含有基と水酸基が均一に共存する表面修飾ハロイサイトが得られると考えられる。
より具体的には、溶媒中でハロイサイト及び表面修飾剤を高温(例えば、50~200℃)条件下で攪拌する方法などが挙げられる。
上記溶媒は特に制限されないが、得られる表面修飾ハロイサイトの活性がより優れる理由から、有機溶媒であることが好ましく、トルエンであることがより好ましい。
上記方法により、ハロイサイトが表面修飾される。より具体的には、ハロイサイトの表面(例えば、ハロイサイトがナノチューブ状である場合、内表面のアルミナ)にカルボキシ基含有基又はスルホ基含有基が導入される。
【0022】
〔ハロイサイト〕
ハロイサイト(表面未修飾のハロイサイト)は特に制限されないが、得られる表面修飾ハロイサイトの活性がより優れる理由から、ナノチューブ状のハロイサイト(ハロイサイトナノチューブ)を含有するのが好ましい。ハロイサイトの他の形状としては、シート状、球状、角ばった団塊状、板状などが挙げられる。ハロイサイトの形状(ハロイサイトナノチューブにおける長さ及び内径等)の具体例及び好適な態様は上述した本発明のハロイサイトと同じである。
【0023】
ハロイサイトは、通常、表面に水酸基(OH基)を有する。
ハロイサイト(表面未修飾のハロイサイト)の表面に存在する水酸基の量(表面水酸基量)は特に制限されないが、得られる表面修飾ハロイサイトの活性がより優れる理由から、0.1~15mmol/gであることが好ましい。なお、ハロイサイトの表面水酸基量は、MeLi(メチルリチウム)滴定(Shimazu et al.,Journal of Molecular Catalysis A:Chemical,182-183,343-350(2002))により測定したものとする。
【0024】
ハロイサイトの石英含有量は、得られる表面修飾ハロイサイトの活性がより優れる理由から、1.00質量%以下が好ましく、0.70質量%以下がより好ましく、0.40質量%以下が更に好ましい。下限は特に制限されないが、XRD測定において検出されないことが好ましい。
【0025】
ハロイサイト粉末の石英含有量は、XRD測定により、次のように求める。
まず、試料捕集用のフィルタ(フッ素樹脂処理ガラス繊維フィルタ)を秤量する。その後、フィルタをXRD測定用のZn製セルに設置し、Znが検出される角度(2θ=43.2deg)を含む範囲をXRD測定する。
次いで、試料(ハロイサイト粉末、および、検量線作成用試料である石英標準品)を水に分散させる。具体的には、約15mgのハロイサイト粉末を純水に分散させる。同様に、約0.1mg、0.5mg、1.0mg、3.0mgおよび5.0mgの石英標準品(日本作業環境測定協会遊離ケイ酸分析用JAWE460)を純水に分散させる。
水に分散させた試料を、吸引ろ過によって、事前にXRD測定したフィルタ上に捕集する。捕集した試料をフィルタごと105℃で2時間乾燥し、その後、秤量する。事前に秤量したフィルタの質量を差し引いて、捕集した試料の質量を算出する。
秤量した試料をフィルタごとZn製セルに設置し、石英が検出される角度(第1強線2θ=26.6deg)およびセル由来のZnが検出される角度(2θ=43.2deg)を含む範囲をXRD測定する。
基底標準吸収補正法により、Zn板(基底標準板)のピーク積分強度を用いて、石英のピーク積分強度を補正する。
石英標準品のピーク積分強度から質量の検量線を作成し、検量線を用いて、ハロイサイト粉末における石英の定量値を算出する。こうして、ハロイサイト粉末の石英含有量を求める。
【0026】
XRD測定における、その他の具体的な条件は、以下のとおりである。
・使用装置:X線回折分析装置SmartLab(Rigaku社製)
・X線管球:CuKα
・光学系:集中法
・管電圧:45kV
・管電流:200mA
・検出器:一次元半導体検出器
・スキャン範囲:26.0~28.0deg
・スキャンステップ:0.01deg
・スキャンスピード:5deg/min
【0027】
<精製ハロイサイト>
ハロイサイトは、得られる表面修飾ハロイサイトの活性がより優れる理由から、精製したハロイサイト(精製ハロイサイト)であることが好ましい。精製の度合いは利用目的や性能、製造コストなどの点から適宜選択される。
ハロイサイトを精製する方法は特に制限されないが、ハロイサイト以外の共存鉱物を除去し、多くのハロイサイトナノチューブ粒子を得る観点から、湿式の水ひ、または、遠心分離の操作を用いる方法が好ましい。
上記方法によって得られた精製ハロイサイトのスラリーの乾燥方法としては、例えば、(1)素焼板、ろ布上に広げて乾燥する。
(2)pHを調整したり、凝集剤を加えるなどで凝集させたスラリーを減圧ろ過、加圧ろ過、遠心分離などで脱水したケーキを乾燥する。
(3)又は、凍結乾燥、媒体流動乾燥、スプレードライヤなどで直接乾燥する方法などが選ばれる。
なお、乾燥後に、乾燥により生じた塊や顆粒を崩すために、粉砕操作を加えてパウダー状にしてもよい。
【0028】
<好適な態様>
ハロイサイトは、得られる表面修飾ハロイサイトの活性がより優れる理由から、ハロイサイトナノチューブを含むハロイサイトが集合してなる顆粒を含む粉末であって、上記顆粒が、上記ハロイサイトナノチューブのチューブ孔に由来する第1の細孔と、上記第1の細孔とは異なる第2の細孔とを有する、ハロイサイト粉末(以下、「本発明のハロイサイト粉末」又は「本発明の粉末」とも言う)であることが好ましい。
また、本発明のハロイサイト粉末は以下の利点を有する。
・かさ比重が高く、低発塵性で取り扱い易い。
・流動性が良く、供給性に優れ量産に適する。
すなわち、取り扱い易さと供給性に優れながら、第2の細孔があることで顆粒を構成しているナノチューブまで溶液が浸透し、表面修飾が可能になる。
【0029】
本発明の粉末が含む顆粒(以下、「本発明の顆粒」ともいう)が、ハロイサイトナノチューブを含むハロイサイトが集合してなる顆粒であり、かつ、ハロイサイトナノチューブのチューブ孔に由来する孔(第1の細孔)を有することは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)写真により確認できる。
本発明の顆粒が、更に、第1の細孔とは異なる第2の細孔を有することは、例えば、顆粒断面のSEM写真により確認できる。顆粒の断面は、例えば、顆粒を集束イオンビーム(FIB)で加工することにより露出させる。また、細孔分布測定からも確認することができる。
【0030】
(本発明のハロイサイト粉末の製造方法)
本発明のハロイサイト粉末を製造する方法は特に制限されないが、上述した本発明のハロイサイト粉末を製造する方法であって、少なくとも、ハロイサイトナノチューブを含むハロイサイトのスラリーを準備する工程(スラリー準備工程)と、上記スラリーから粉末を調製する工程(粉末調製工程)と、を備える方法であるのが好ましい。
粉末調製工程としては、例えば、スラリー準備工程において調製されたスラリー(例えば、遠心分離により得られた分散相)を媒体流動乾燥やスプレードライヤにより粉末を得る工程が挙げられる。
なお、上記スラリーから粉末を調製する手段は、上述した媒体流動乾燥やスプレードライに限定されない。
本発明の製造方法は、粉末調製工程において得られた粉末を焼成する工程(焼成工程)を更に備えていてもよい。
【0031】
〔表面修飾剤〕
表面修飾剤は、ハロイサイトの表面にカルボキシ基含有基又はスルホ基含有基を導入することが可能な化合物であれば特に制限されない。
【0032】
ハロイサイトの表面にカルボキシ基含有基を導入することが可能な化合物(以下、「カルボキシ基含有基導入表面修飾剤」とも言う)は特に制限されないが、省エネルギー的で効率的に反応(ハロイサイトの表面のOH基と一段回で反応して一方がAl-Oに結合したカルボキシ基含有基を生成)し、また、得られる表面修飾ハロイサイトの活性がより優れる理由から、カルボン酸、カルボン酸塩及びカルボン酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。カルボキシ基含有基導入表面修飾剤は、得られる表面修飾ハロイサイトの活性がより優れる理由から、カルボン酸無水物であることが好ましい。
カルボン酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4-メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3-メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、無水フタル酸、ジグリコール酸無水物及びグルタル酸無水物等が挙げられる。なかでも、ハロイサイトの表面のOH基と反応して一方がOに結合し他方はカルボン酸基を生じ、また、得られる表面修飾ハロイサイトの活性がより優れる理由から、ジグリコール酸無水物が好ましい。
ハロイサイトに対するカルボキシ基含有基導入表面修飾剤の添加量は、得られる表面修飾ハロイサイトの活性がより優れる理由から、ハロイサイトの表面水酸基量に対して1~1000等量であることが好ましく、1~100等量であることがより好ましい。また、ハロイサイトに対するカルボキシ基含有基導入表面修飾剤の添加量は、得られる表面修飾ハロイサイトの活性がより優れる理由から、ハロイサイト(表面未修飾のハロイサイト)1gに対して、1~1000mmmolであることが好ましく、1~200mmolであることがより好ましく、1~100mmolであることがさらに好ましい。
【0033】
Hs-COOHの置換率は特に制限されないが、得られる表面修飾ハロイサイトの活性がより優れる理由から、1~99mol%であることが好ましく、10~90mol%であることがより好ましく、20~80mol%であることがさらに好ましく、30~80mol%であることが特に好ましい。
ここでHs-COOHの置換率とは、ハロイサイト(表面未修飾のハロイサイト)の表面の水酸基の一部と表面修飾剤とを反応させることで得られたHs-COOHにおいて、ハロイサイト(表面未修飾のハロイサイト)の表面水酸基量(mmol/g)に対する、Hs-COOHのカルボキシ基含有量(mmol/g)の割合を言う。
【0034】
ハロイサイトの表面にスルホ基含有基を導入することが可能な化合物(以下、「スルホ基含有基導入表面修飾剤」とも言う)は特に制限されないが、得られる表面修飾ハロイサイトの活性がより優れる理由から、スルホン酸、スルホン酸塩及びスルホン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。スルホ基含有基導入表面修飾剤は、省エネルギー的で効率的に反応(ハロイサイトの表面のOH基と一段回で反応して一方がAl-Oに結合したスルホ基含有基を生成)し、また、得られる表面修飾ハロイサイトの活性がより優れる理由から、スルホン酸エステルであることが好ましく、環状スルホン酸エステルであることがより好ましい。
環状スルホン酸エステルとしては、例えば、1,3-プロパンスルトン、1,2-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,2-ブタンスルトン、1,3-ブタンスルトン、2,4-ブタンスルトン及び1,3-ペンタンスルトン等が挙げられる。なかでも、得られる表面修飾ハロイサイトの活性がより優れる理由から、1,3-プロパンスルトンが好ましい。
ハロイサイトに対するスルホ基含有基導入表面修飾剤の添加量は、得られる表面修飾ハロイサイトの活性がより優れる理由から、ハロイサイトの表面水酸基量に対して1~1000等量であることが好ましく、1~100等量であることがより好ましい。また、ハロイサイトに対するスルホ基含有基導入表面修飾剤の添加量は、得られる表面修飾ハロイサイトの活性がより優れる理由から、ハロイサイト(表面未修飾のハロイサイト)1gに対して、1~1000mmmolであることが好ましく、1~200mmolであることがより好ましく、1~100mmolであることがさらに好ましい。
【0035】
Hs-PSの置換率は特に制限されないが、得られる表面修飾ハロイサイトの活性がより優れる理由から、1~99mol%であることが好ましく、10~90mol%であることがより好ましく、20~80mol%であることがさらに好ましく、30~80mol%であることが特に好ましい。
ここでHs-PSの置換率とは、ハロイサイト(表面未修飾のハロイサイト)の表面の水酸基の一部と表面修飾剤とを反応させることで得られたHs-PSにおいて、ハロイサイト(表面未修飾のハロイサイト)の表面水酸基量(mmol/g)に対する、Hs-PSのスルホ基含有量(mmol/g)の割合を言う。
【0036】
[触媒反応]
本発明の触媒反応は、上述した本発明のハロイサイトを固体触媒として用いた触媒反応である。上述のとおり、本発明のハロイサイトは、微細構造(例えば、ナノチューブ状等)を有するハロイサイトの表面にカルボキシ基含有基又はスルホ基含有基が結合した構造を有するため、酸触媒反応(例えば、従来公知の酸触媒反応)に極めて有用である。
なかでも、本発明のハロイサイトが表面にカルボキシ基含有基を有するハイロサイトである場合、多糖(2糖等のオリゴ糖を含む)の加水分解することにより単糖を合成する方法に極めて有用である。
また、本発明のハロイサイトが表面にスルホ基含有基を有するハイロサイトである場合、糖の脱水分解に有用であり、そのなかでも、フルクトースを脱水分解することによりヒドロキシメチルフルフラールを合成する方法に極めて有用である。
【0037】
本発明のハロイサイトが表面にスルホ基含有基を有するハイロサイトである場合、触媒反応に用いられる溶媒は特に制限されないが、収率が向上する理由から、有機溶媒であることが好ましく、アルコール(特に、炭素数1~10)であることがより好ましく、炭素数3以上のアルコールであることがさらに好ましく、炭素数4以上のアルコール(ブタノール(例えば、2-ブタノール))であることが特に好ましい。
【0038】
本発明の触媒反応の反応時間は特に制限されないが、収率が向上する理由から、1時間以上であることが好ましく、3時間以上であることがより好ましく、10時間以上であることがさらに好ましい。上限は特に制限されないが、100時間以下であることが好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
〔精製ハロイサイトの調製等〕
以下のようにして、精製ハロイサイト(精製ハロイサイト1及び2)を調製した。なお、精製ハロイサイト1及び2は、SEM写真から、上述した本発明の粉末に該当することが確認された。
【0041】
<精製ハロイサイト1>
JFEミネラル社の飯豊鉱業所の遅谷工場(山形県西置賜郡飯豊町大字遅谷)で発生する粘土分(飯豊粘土)を原料として用いた。この粘土分は、主成分として、ハロイサイト及びSiO2で表される微砂(石英)を含有する。
まず、高速ミキサーに、飯豊粘土及び水を投入し、飯豊粘土が水に分散したスラリーを得た。
次いで、スラリーを、目開き45μmの篩を全通させることにより、網上+45μmの粗粒を除去した。網下-45μmのスラリーは、吸引ろ過し、フィルタ上の残渣を脱水ケーキとして回収した。
さらに、高速ミキサーに、上記脱水ケーキ及び水を加え、分散剤としてアニオン性高分子界面活性剤を添加し、分散スラリーを得た。
得られた分散スラリーを、遠心機で2470Gの遠心力で、沈降相と、分散相とに分離した。そして、沈降相より上の部分を、ポンプで吸引することにより、分散相を回収した。
そして、得られた分散相のスラリーを媒体流動乾燥機で乾燥することで顆粒状のハロイサイト粉末を得た。さらに、分散剤を除去するために400℃で焼成し、界面活性剤を除去した。このようにして、精製ハロイサイトを調製した。得られた精製ハロイサイトを精製ハロイサイト1とする。
得られた精製ハロイサイト1はナノチューブ状のハロイサイト(ハロイサイトナノチューブ)を含有していた。また、得られた精製ハロイサイト1は表面に水酸基を有していた。ハロイサイトの表面水酸基量を測定したところ、3.55mmol/gであった。ハロイサイトの表面水酸基量の測定方法は上述のとおりである。
【0042】
<精製ハロイサイト2>
媒体流動乾燥機の代わりにスプレードライヤを用いて乾燥を行った以外は精製ハロイサイト1と同様の手順に従って、精製ハロイサイトを調製した。得られた精製ハロイサイトを精製ハロイサイト2とする。
得られた精製ハロイサイト2はナノチューブ状のハロイサイト(ハロイサイトナノチューブ)を含有していた。また、得られた精製ハロイサイト2は表面に水酸基を有していた。ハロイサイトの表面水酸基量を測定したところ、3.55mmol/gであった。ハロイサイトの表面水酸基量の測定方法は上述のとおりである。
【0043】
<SIGMA-ALDRICH社製ハロイサイト>
市販のハロイサイトとしてパウダー状のハロイサイト(SIGMA-ALDRICH社製、製品番号:685445、ナノチューブ状のハロイサイト(ハロイサイトナノチューブ)を含有)を使用した。SIGMA-ALDRICH社製ハロイサイトはパウダー状であり、SEM写真から、上述した本発明の粉末に該当しないことが確認された。
【0044】
ここで、
図2に、実施例で使用されたハロイサイト(表面修飾前のハロイサイト)のXRDパターンを示す。
(A)が上述した精製ハロイサイト1のXRDパターンであり、(B)が上述したSIGMA-ALDRICH社製ハロイサイトのXRDパターンである。なお、精製ハロイサイト2は精製ハロイサイト1と同様のXRDパターンを示した。SIGMA-ALDRICH社製ハロイサイト(B)のXRDパターンには、ギブサイトおよび石英のピークが現れていたのに対して、精製ハロイサイト1及び2(A)のXRDパターンには、ギブサイトは検出されず、石英のピークも非常に低かった。このため、精製ハロイサイト1及び2は、ギブサイトおよび石英などの不純物が少なく、高純度であると言える。
【0045】
また、精製ハロイサイト1及び2並びにSIGMA-ALDRICH社製ハロイサイトについて石英含有量を測定したところ、精製ハロイサイト1及び2の石英含有量は0.3質量%であり、SIGMA-ALDRICH社製ハロイサイトの石英含有量は1.2質量%であった。
【0046】
〔表面修飾ハロイサイトの製造〕
下記のとおり、表面修飾ハロイサイト(Hs-COOH)(実施例1-1~1-4、実施例1-6~1-7)及び表面修飾ハロイサイト(Hs-PS)(実施例2-1~2-2及び実施例2-7~2-8)を製造した。
【0047】
<実施例1-1>
得られた精製ハロイサイト1を150℃にて1時間乾燥させた。乾燥させた精製ハロイサイト1(0.20g)に無水トルエン40mL及びジグリコール酸無水物(1,4-ジオキサン-2,6-ジオン)(下記構造式)1.27mmolを添加し(ハロイサイトの表面水酸基量に対して1.8等量)、さらにN,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)(触媒量)0.25mmol及びトリエチルアミン(NEt3)(塩基)2.5mmolを加え、超音波処理を1時間行い、その後、還流しながら撹拌した(70℃、72時間)。次いで、濾過後蒸留水で洗浄し、乾燥処理を行うことで、精製ハロイサイト1を表面修飾した。
【0048】
【0049】
FT-IR測定(
図1)から、表面修飾後のハロイサイトは、ハロイサイトナノチューブの内表面にカルボキシ基含有基(-COCH
2OCH
2-COOH)を有するハロイサイト(表面修飾ハロイサイト)であることが確認された。なお、上記カルボキシ基含有基は、ハロイサイトナノチューブの内表面のアルミナに結合して、Al-O-COCH
2OCH
2-COOHで表される構造を形成している。
【0050】
また、得られた表面修飾ハロイサイトについてTG-DTA(Thermogravimetry-Differential Thermal Analysis)測定を行ったところ、カルボキシ基含有量は0.6mmol/gと見積もられた。
【0051】
<実施例1-2>
ジグリコール酸無水物の添加量を1.90mmol、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)の添加量を0.37mmol、及び、トリエチルアミン(NEt3)(塩基)の添加量を3.7mmolにした以外は、実施例1-1と同様の手順に従って精製ハロイサイト1を表面修飾した。
【0052】
FT-IR測定(
図1)から、表面修飾後のハロイサイトは、ハロイサイトナノチューブの内表面にカルボキシ基含有基(-COCH
2OCH
2-COOH)を有するハロイサイト(表面修飾ハロイサイト)であることが確認された。なお、上記カルボキシ基含有基は、ハロイサイトナノチューブの内表面のアルミナに結合して、Al-O-COCH
2OCH
2-COOHで表される構造を形成している。
【0053】
また、得られた表面修飾ハロイサイトについてTG-DTA(Thermogravimetry-Differential Thermal Analysis)測定を行ったところ、カルボキシ基含有量は0.9mmol/gと見積もられた。
【0054】
<実施例1-3>
ジグリコール酸無水物の添加量を2.53mmol、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)の添加量を0.5mmol、及び、トリエチルアミン(NEt3)(塩基)の添加量を5.0mmolにした以外は、実施例1-1と同様の手順に従って精製ハロイサイト1を表面修飾した。
【0055】
FT-IR測定(
図1)から、表面修飾後のハロイサイトは、ハロイサイトナノチューブの内表面にカルボキシ基含有基(-COCH
2OCH
2-COOH)を有するハロイサイト(表面修飾ハロイサイト)であることが確認された。なお、上記カルボキシ基含有基は、ハロイサイトナノチューブの内表面のアルミナに結合して、Al-O-COCH
2OCH
2-COOHで表される構造を形成している。
【0056】
また、得られた表面修飾ハロイサイトについてTG-DTA(Thermogravimetry-Differential Thermal Analysis)測定を行ったところ、カルボキシ基含有量は2.8mmol/gと見積もられた。
【0057】
なお、
図1中、「Halloysite」が表面修飾前(精製ハロイサイト1)のFT-IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)スペクトルであり、「Hs-COOH(0.6)」が表面修飾後(実施例1-1)のFT-IRスペクトルであり、「Hs-COOH(0.9)」が表面修飾後(実施例1-2)のFT-IRスペクトルであり、「Hs-COOH(2.8)」が表面修飾後(実施例1-3)のFT-IRスペクトルである。
【0058】
<実施例1-4>
精製ハロイサイト1の代わりに、上述したSIGMA-ALDRICH社製ハロイサイト(ナノチューブ状のハロイサイト(ハロイサイトナノチューブ)を含有)(表面水酸基量:2.5mmol/g)を用いた以外は、実施例1-1と同様の手順に従ってハロイサイトを表面修飾した。
【0059】
FT-IR測定から、表面修飾後のハロイサイトは、ハロイサイトナノチューブの内表面にカルボキシ基含有基(-COCH2OCH2-COOH)を有するハロイサイト(表面修飾ハロイサイト)であることが確認された。なお、上記カルボキシ基含有基は、ハロイサイトナノチューブの内表面のアルミナに結合して、Al-O-COCH2OCH2-COOHで表される構造を形成している。
【0060】
また、得られた表面修飾ハロイサイトについてTG-DTA(Thermogravimetry-Differential Thermal Analysis)測定を行ったところ、カルボキシ基含有量は0.3mmol/gと見積もられた。
【0061】
<実施例1-6>
得られた精製ハロイサイト1を150℃にて1時間乾燥させ、その後、ナノチューブの形状がなくなるまで粉砕することで、ナノチューブ状のハロイサイトを含有しない精製ハロイサイト1の粉砕物(精製ハロイサイト1粉砕物)を得た。そして、精製ハロイサイト1の代わりに上記精製ハロイサイト1粉砕物を用いた以外は、実施例1-1と同様の手順に従って精製ハロイサイト1粉砕物を表面修飾した。
【0062】
FT-IR測定から、表面修飾後のハロイサイトは、ハロイサイトの表面にカルボキシ基含有基(-COCH2OCH2-COOH)を有するハロイサイト(表面修飾ハロイサイト)であることが確認された。なお、上記カルボキシ基含有基は、ハロイサイトナノチューブの表面のアルミナに結合して、Al-O-COCH2OCH2-COOHで表される構造を形成している。
【0063】
また、得られた表面修飾ハロイサイトについてTG-DTA(Thermogravimetry-Differential Thermal Analysis)測定を行ったところ、カルボキシ基含有量は0.6mmol/gと見積もられた。
【0064】
<実施例1-7>
精製ハロイサイト1の代わりに精製ハロイサイト2を用いた以外は、実施例1-1と同様の手順に従って精製ハロイサイト2を表面修飾した。
【0065】
FT-IR測定から、表面修飾後のハロイサイトは、ハロイサイトナノチューブの内表面にカルボキシ基含有基(-COCH2OCH2-COOH)を有するハロイサイト(表面修飾ハロイサイト)であることが確認された。なお、上記カルボキシ基含有基は、ハロイサイトナノチューブの内表面のアルミナに結合して、Al-O-COCH2OCH2-COOHで表される構造を形成している。
【0066】
また、得られた表面修飾ハロイサイトについてTG-DTA(Thermogravimetry-Differential Thermal Analysis)測定を行ったところ、カルボキシ基含有量は0.6mmol/gと見積もられた。
【0067】
なお、実施例1-1~1-4及び実施例1-6~1-7の表修飾ハロイサイトは表面にさらに水酸基を有するハロイサイトであった。
また、実施例1-1~1-3及び実施例1-6~1-7の表面修飾ハロイサイトのFT-IRスペクトルにおいて、カルボキシ基含有基同士の相互作用が観測されていないことから、実施例1-1~1-3及び実施例1-6~1-7の表面修飾ハロイサイトにおいて、表面にカルボキシ基含有基及び水酸基が均一に共存していることが分かった。
【0068】
<実施例2-1>
得られた精製ハロイサイト1を150℃にて1時間乾燥させた。乾燥させた精製ハロイサイト1(0.20g)に無水トルエン10mL及び1,3-プロパンスルトン25mmol(ハロイサイトの表面水酸基量に対して35.2等量)を添加し、超音波処理を1時間行い、その後、還流しながら撹拌した(120℃、72時間)。次いで、濾過後蒸留水で洗浄し、乾燥処理を行うことで、精製ハロイサイト1を表面修飾した。
【0069】
図3は、表面修飾前後のハロイサイトのFT-IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)スペクトルである。(a)が表面修飾前のスペクトル、(b)が表面修飾後のスペクトルである。FT-IR測定から、得られたハロイサイトは、ハロイサイトナノチューブの内表面にスルホ基含有基(-C
3H
6-SO
3H)を有するハロイサイト(表面修飾ハロイサイト)であることが確認された。なお、上記スルホ基含有基は、ハロイサイトナノチューブの内表面のアルミナに結合して、Al-O-C
3H
6-SO
3Hで表される構造を形成している。
【0070】
また、得られた表面修飾ハロイサイトについてTG-DTA(Thermogravimetry-Differential Thermal Analysis)測定を行ったところ、スルホ基含有量は1.4mmol/gと見積もられた。
【0071】
<実施例2-2>
精製ハロイサイト1の代わりに、上述したSIGMA-ALDRICH社製ハロイサイト(ナノチューブ状のハロイサイト(ハロイサイトナノチューブ)を含有)(表面水酸基量:2.5mmol/g)を用いた以外は、実施例2-1と同様の手順に従ってハロイサイトを表面修飾した。
【0072】
FT-IR測定から、表面修飾後のハロイサイトは、ハロイサイトナノチューブの内表面にスルホ基含有基(-C3H6-SO3H)を有するハロイサイト(表面修飾ハロイサイト)であることが確認された。なお、上記スルホ基含有基は、ハロイサイトナノチューブの内表面のアルミナに結合して、Al-O-C3H6-SO3Hで表される構造を形成している。
【0073】
また、得られた表面修飾ハロイサイトについてTG-DTA(Thermogravimetry-Differential Thermal Analysis)測定を行ったところ、スルホ基含有量は0.7mmol/gと見積もられた。
【0074】
<実施例2-7>
精製ハロイサイト1の代わりに上述した精製ハロイサイト1粉砕物を用いた以外は、実施例2-1と同様の手順に従って精製ハロイサイト1粉砕物を表面修飾した。
【0075】
FT-IR測定から、表面修飾後のハロイサイトは、ハロイサイトの表面にスルホ基含有基(-C3H6-SO3H)を有するハロイサイト(表面修飾ハロイサイト)であることが確認された。なお、上記スルホ基含有基は、ハロイサイトの表面のアルミナに結合して、Al-O-C3H6-SO3Hで表される構造を形成している。
【0076】
また、得られた表面修飾ハロイサイトについてTG-DTA(Thermogravimetry-Differential Thermal Analysis)測定を行ったところ、スルホ基含有量は1.4mmol/gと見積もられた。
【0077】
<実施例2-8>
精製ハロイサイト1の代わりに精製ハロイサイト2を用いた以外は、実施例2-1と同様の手順に従って精製ハロイサイト2を表面修飾した。
【0078】
FT-IR測定から、表面修飾後のハロイサイトは、ハロイサイトナノチューブの内表面にスルホ基含有基(-C3H6-SO3H)を有するハロイサイト(表面修飾ハロイサイト)であることが確認された。なお、上記スルホ基含有基は、ハロイサイトの表面のアルミナに結合して、Al-O-C3H6-SO3Hで表される構造を形成している。
【0079】
また、得られた表面修飾ハロイサイトについてTG-DTA(Thermogravimetry-Differential Thermal Analysis)測定を行ったところ、スルホ基含有量は1.4mmol/gと見積もられた。
【0080】
なお、実施例2-1、2-2、2-7及び2-8の表面修飾ハロイサイトは表面にさらに水酸基を有するハロイサイトであった。
また、実施例2-1、2-7及び2-8の表面修飾ハロイサイトのFT-IRスペクトルにおいて、スルホ基含有基同士の相互作用が観測されていないことから、実施例2-1、2-7及び2-8の表面修飾ハロイサイトにおいて、表面にスルホ基含有基及び水酸基が均一に共存していることが分かった(2.54(=3.55(mmol/g)÷1.4mmol(mmol/g))個の水酸基に1個のスルホ基含有基が一様に分布)。
【0081】
〔表面修飾ハロイサイト(Hs-COOH)を用いた触媒反応〕
得られた各表面修飾ハロイサイト(実施例1-1~1-4及び1-6~1-7)0.02g、セロビオース0.1mmol及び水5mLを反応容器に加え攪拌し、表面修飾ハロイサイトを固体触媒として用いて、セロビオースの加水分解を行った(150℃、8時間)。
また、実施例1-3の表面修飾ハロイサイトを用いて、加水分解の時間を24時間に延長して、同様にセロビオースの加水分解を行った(実施例1-5)。
また、表面修飾ハロイサイトの代わりに上述した精製ハロイサイト1(表面修飾していないもの)を使用して、同様にセロビオースの加水分解を行った(比較例1-1)。
下記表1に収率(グルコースの収率)及び選択率(反応したセロビオースに対するグルコースの割合)を示す。なお、収率及び選択率はHPLC(High Performance Liquid Chromatography)から求めた。
【0082】
【0083】
なお、表1中、「Hs-COOH」は表面修飾ハロイサイト(Hs-COOH)を表し、「Hs」はハロイサイト(表面未修飾のハロイサイト)を表す。また、「カルボキシ基含有量」は上述したカルボキシ基含有量を表す。また、「置換率」は上述した置換率を表す。また、「反応時間」はセロビオースの加水分解を行った時間を表す。
【0084】
表1に示されるように、表面にカルボキシ基含有基を有するハロイサイトである実施例1-1~1-4及び1-6~1-7の表面修飾ハロイサイトを固体触媒として用いた場合、高い収率でグルコースが得られた。すなわち、表面にカルボキシ基含有基を有するハロイサイトである実施例1-1~1-4及び1-6~1-7の表面修飾ハロイサイトは高い触媒活性を示した。なかでも、少なくとも一部がナノチューブ状である実施例1-1~1-4及び1-7は、より高い触媒活性を示した。そのなかでも、上述した本発明の粉末に該当する精製ハロイサイトを用いて製造した実施例1-1~1-3及び1-7は、さらに高い触媒活性を示した。実施例1-4で使用されたSIGMA-ALDRICH社製ハロイサイトには不純物(石英やギブサイト)が多く含まれるのに対して、実施例1-1~1-3及び1-7で使用された精製ハロイサイトは不純物が少ないため(
図2)、より高い触媒活性を示したことが考えられる。
また、実施例1-1~1-3及び1-7のうち、カルボキシ基含有量が0.6mmol/gである実施例1-1と実施例1-7との対比から、スプレードライにより得た精製ハロイサイトを用いた実施例1-7は、より高い触媒活性を示した。
また、実施例1-1~1-3の対比(媒体流動乾燥により得た精製ハロイサイトを用いた態様同士の対比)から、カルボキシ基含有率が0.7mmol/g以上である実施例1-2及び1-3はより高い触媒活性を示した。そのなかでも、カルボキシ基含有率が1.0mmol/g以上である実施例1-3はさらに高い触媒活性を示した。
また、実施例1-3の表面修飾ハロイサイトを固体触媒として用いて、多糖であるキシランの加水分解を行ったところ、キシロースが高収率(89.3%)で得られた。
また、実施例1-3と1-5との対比(反応時間のみが異なる態様同士の対比)から、反応時間が10時間以上である実施例1-5は、より高い収率を示した。
【0085】
〔表面修飾ハロイサイト(Hs-PS)を用いた触媒反応〕
得られた各表面修飾ハロイサイト(実施例2-1、2-2、2-7、2-8)30mg、フルクトース20mg、エチレングリコール16mg及び2-ブタノール5mLを反応容器に加え撹拌し、表面修飾ハロイサイトを固体触媒として用いて、フルクトースの脱水分解を行った(120℃、24時間)。
また、実施例2-1の表面修飾ハロイサイト20mg、フルクトース40mg及び下記表2に記載の溶媒2mLを反応容器に加え撹拌し、表面修飾ハロイサイトを固体触媒として用いて、フルクトースの脱水分解を行った(120℃、2時間)(実施例2-3~2-5)。
また、脱水分解の時間を4時間に変更した以外は、実施例2-1と同様の手順に従って、フルクトースの脱水分解を行った(実施例2-6)。
また、表面修飾ハロイサイトを加えなかったこと以外は、実施例2-3と同様の手順に従って、フルクトースの脱水分解を行った(比較例2-1)。
また、表面修飾ハロイサイトの代わりに上述した精製ハロイサイト1(表面修飾していないもの)を使用した以外は、実施例2-3と同様の手順に従って、フルクトースの脱水分解を行った(比較例2-2)。
また、表面修飾ハロイサイトを加えなかったこと以外は、実施例2-6と同様の手順に従って、フルクトースの脱水分解を行った(比較例2-3)。
また、表面修飾ハロイサイトの代わりに上述した精製ハロイサイト1(表面修飾していないもの)を使用した以外は、実施例2-6と同様の手順に従って、フルクトースの脱水分解を行った(比較例2-4)。
下記表2に、反応転化率及び収率(目的物質であるヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の収率)を示す。なお、反応転化率及び収率はHPLC(High Performance Liquid Chromatography)から求めた。
【0086】
【0087】
なお、表2中、「Hs-PS」は表面修飾ハロイサイト(Hs-PS)を表し、「Hs」はハロイサイト(表面未修飾のハロイサイト)を表す。また、「スルホ基含有量」は上述したスルホ基含有量を表す。また、「置換率」は上述した置換率を表す。また、「反応時間」はフルクトースの脱水分解を行った時間を表す。
【0088】
表2に示されるように、表面にスルホ基含有基を有するハロイサイトである実施例2-1~2-8の表面修飾ハロイサイトを固体触媒として用いた場合、高い収率でHMFが得られた。すなわち、表面にスルホ基含有基を有するハロイサイトである実施例2-1~2-8の表面修飾ハロイサイトは高い触媒活性を示した。
実施例2-1と2-2と2-7と2-8との対比(反応時間が24時間の態様同士の対比)から、少なくとも一部がチューブ状である実施例2-1、2-2及び2-8は、より高い触媒活性を示した。なかでも、上述した本発明の粉末に該当する精製ハロイサイトを用いて製造した実施例2-1及び2-8は、さらに高い触媒活性を示した。実施例2-2で使用されたSIGMA-ALDRICH社製ハロイサイトには不純物(石英やギブサイト)が多く含まれるのに対して、実施例2-1及び2-8で使用された精製ハロイサイトは不純物が少ないため(
図2)、より高い触媒活性を示したことが考えられる。また、実施例2-1及び2-8のなかでも、スプレードライにより得た精製ハロイサイトを用いた実施例
2-8は、より高い触媒活性を示した。
また、実施例2-3~2-5の対比(反応時間が2時間の態様同士の対比)から、反応溶媒として炭素数3以上のアルコールを使用した実施例2-3及び
2-5は、より高い収率を示した。なかでも、反応溶媒として炭素数4以上のアルコールを使用した実施例2-3は、さらに高い収率を示した。
【0089】
また、実施例2-1と2-3と2-6との対比(反応時間のみが異なる態様同士の対比)から、反応時間が3時間以上である実施例2-1及び2-6は、より高い収率を示した。なかでも、反応時間が10時間以上である実施例2-1は、さらに高い収率を示した。反応時間を延ばすことで、中間体として生成していたフルクトースの2量体がHMFに転換したことが考えられる。