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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】食用燕の巣抽出物および抽出方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/57 20150101AFI20220713BHJP
   C12P 21/00 20060101ALI20220713BHJP
   C12P 19/04 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 31/727 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 31/737 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 31/718 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220713BHJP
   C07K 14/465 20060101ALI20220713BHJP
   C07K 1/14 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
A61K35/57
C12P21/00 A
C12P19/04 Z
A61K38/02
A61K31/727
A61K31/737
A61K31/718
A61P43/00 121
A61P17/00
A61P43/00 105
A61P29/00
A61P37/04
A61P3/00
A61P9/00
A61P25/28
A61P27/02
A61P5/00
A61P19/02
C07K14/465
C07K1/14
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018567559
(86)(22)【出願日】2017-03-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-25
(86)【国際出願番号】 SG2017050117
(87)【国際公開番号】W WO2017155471
(87)【国際公開日】2017-09-14
【審査請求日】2020-01-15
(31)【優先権主張番号】10201601905R
(32)【優先日】2016-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】518322300
【氏名又は名称】リム,カー メン
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】リム,カー メン
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104498572(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102362637(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102621329(CN,A)
【文献】Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine,2012年,Vol. 2012, Article ID 797520,p. 1-11
【文献】Preliminary study on the enzyme digestion method for edible bird nest for invitro bioassay,Universiti Putra Malaysia,2016年03月03日,p.1-3,http://www.dvs.gov.my/dvs/resources/user_1/DVS%20pdf/Aneka%20Haiwan/poster%20papers/28_Careena_UPM.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、C07K、A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燕の巣抽出物を調製する方法であって、前記抽出物が、食用燕の巣(EBN)から得られた少なくとも1つの分子を含み、前記方法が、
(a)未加工のEBNを洗浄するステップと;
(b)洗浄したEBNをろ過するステップと;
(c)前記EBNから前記分子を抽出するステップと
(d)前記分子を単離するステップと
を含み、
前記分子を抽出するステップが、前記ろ過したEBNを、
(i)抗Nグリカン抗体および抗Oグリカン抗体を含む溶液;
(ii)抗ヘパラン硫酸抗体、抗コンドロイチン抗体、抗ケラタン抗体、および抗デルマタン抗体を含む溶液;ならびに
(iii)抗ロイシンジッパー抗体、抗ヘリックスターンヘリックス抗体、および抗ジンクフィンガー抗体を含む溶液
からなる群から選択される抽出溶液のいずれか1つに曝露することによって行われ、
前記分子を単離するステップが、第2の酵素溶液存在下で行われる、方法。
【請求項2】
洗浄するステップが、前記EBNを第1の酵素溶液に、室内温度で5分間曝露し、前記EBNおよび酵素溶液を水にさらに5分間浸漬することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の酵素溶液が亜硝酸還元酵素を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抽出ステップの前に、前記洗浄したEBNを121℃で10分間滅菌することをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
各溶液中に存在する量が、
(a)50%抗Nグリカン抗体および50%抗Oグリカン抗体
(b)25%抗ヘパラン硫酸抗体、25%抗コンドロイチン抗体、25%抗ケラタン抗体、および25%抗デルマタン抗体;ならびに
(c)37%抗ロイシンジッパー抗体、33%抗ヘリックスターンヘリックス抗体、および30%抗ジンクフィンガー抗体
である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抽出ステップが酸存在下で行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
抽出が、25℃から37℃の間で20~120分間行われる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の酵素溶液が、野菜または果物プロテアーゼを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の酵素溶液の濃度が10μg/mlから100ng/mlの間である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記分子を単離する前記ステップが、pH6.5~9.0、45℃で60分間行われる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
混合物を70℃で5分間加熱して、前記第2の酵素溶液中の酵素を不活性化することをさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(c)で抽出した生成物を脱水するステップをさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記脱水ステップがフリーズドライである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法から得られた燕の巣抽出物。
【請求項15】
請求項14に記載の抽出物を含む組成物。
【請求項16】
マルトデキストリンをさらに含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物中に存在するマルトデキストリンの量が、30wt%から75wt%の間である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
医薬品の製造における、請求項14に記載の抽出物の使用。
【請求項19】
状態および/または疾患を治療および/または予防するための医薬の製造における、請求項14に記載の抽出物の使用。
【請求項20】
請求項14に記載の抽出物および薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燕の巣抽出物を調製する方法、および前記方法から得られたさまざまな抽出物に関する。
【背景技術】
【0002】
食用燕の巣(EBN)は、東南アジア地域で自然にみられるアナツバメの唾液から作られる巣である。空の巣は、野生またはアナツバメ用の特別な飼育用構築物から採取される。EBNはさまざまな生物活性および栄養価を示し、有糸分裂反応、表皮成長因子(EGF)様活性、抗インフルエンザウィルス、血球凝集阻害活性、レクチン結合活性、骨強度および皮膚の厚さおよびホルモン含量の改善の可能性を含む。EBNの加工は用途によって異なる場合があることが報告されてきた。現在進行中の研究では、食用燕の巣の生物学的および医学的機能を解明することが行われている。
【0003】
現在のところ、EBNは、水中でEBNを煮込むことによって、スープまたは他の飲料の形態で使用し、消費される。そのような場合におけるEBNの分子は、巨大な生体高分子であり、それを消化吸収するのは身体にとって困難である。結果的に、そのような方法で調製されたEBNの有益な構成成分のバイオアベイラビリティは低く、かつEBNの有益な効果は最大限には高められない。
【0004】
しかし、未加工のEBNを消費すると、免疫グロブリンE(IgE)介在性アナフィラキシーが生じる場合があり(Goh et al., 2001, J. Allergy Clin. Immun., 107(6), 1082-1088)、EBNは、子供の生命にかかわり得る食品誘発アナフィラキシーの最も一般的な原因と考えられている。
【0005】
粗製EBNに伴う他の問題は、自然による原因または加工中の意図的な添加のいずれかに起因する望ましくない化合物の存在である。EBNには通常、不純物が混和され、EBNの品質低下が生じる。使用される不純物としては、ブタ皮膚、寒天、紅藻およびカラヤゴムがある。不純物および老廃物をごまかすために、漂白剤が多くの場合添加される。
【0006】
特に懸念されるのは、亜硝酸塩の存在であり、これはアナツバメの排泄物に主に由来する。亜硝酸塩はまた、加工中に白色の燕の巣へ添加され、商業的により高価である赤色の燕の巣へ変えられることがある。過剰な亜硝酸塩の摂取は、癌と関連する(Bryan et al. Food Chem. Toxicol. 2012, 50 (10), 3646-3654)。
【0007】
野生でまたは工場での加工中に、ウィルス、細菌および真菌がEBNを汚染することがある。野生の鳥におけるトリインフルエンザは未加工のEBN自体の輸入制限につながる場合があることが懸念される。
【0008】
その結果、EBNの加工を改良し、消費者にとっての品質全般および有益な特性を改善することが必要とされる。EBNから所望の化合物を抽出し、単離することによって、悪影響は取り除かれるか、最小限となると同時に、EBNの治療的利点は最大限となる。
【0009】
本明細書における以前に公開されたことが明らかな文献のリストまたは考察は、その文献が最新技術の一部である、または周知の一般的な知識であるという承認としてみなす必要は必ずしもない。
【0010】
本明細書において言及される任意の文献は、その全体を参照することによって本明細書に組み込まれるものとする。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、以下の[1]から[22]を含む。
[1]燕の巣抽出物を調製する方法であって、上記抽出物が、食用燕の巣(EBN)から得られた少なくとも1つの分子を含み、上記方法が、
(a)未加工のEBNを洗浄するステップと;
(b)洗浄したEBNをろ過するステップと;
(c)上記EBNから上記分子を抽出するステップと;
(d)上記分子を単離するステップと
を含む方法。
[2]洗浄するステップが、上記EBNを第1の酵素溶液に、室内温度で約5分間曝露し、上記EBNおよび酵素溶液を水にさらに5分間浸漬することを含む、上記[1]に記載の方法。
[3]上記第1の酵素溶液が亜硝酸還元酵素を含む、上記[2]に記載の方法。
[4]上記抽出ステップの前に、上記洗浄したEBNを121℃で約10分間滅菌することをさらに含む、上記[1]から[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5]上記分子を抽出するステップが、上記洗浄したEBNを、
(a)抗Nグリカンおよび抗Oグリカンを含む溶液;
(b)抗ヘパラン硫酸、抗コンドロイチン、抗ケラタン、および抗デルマタンを含む溶液;ならびに
(c)抗ロイシンジッパー、抗ヘリックスターンヘリックス、および抗ジンクフィンガーを含む溶液
を含む群から選択される抽出溶液のうちのいずれか1つに曝露することによって行われる、上記[1]から[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6]各溶液中に存在する量が、
(a)50%抗Nグリカンおよび50%抗Oグリカン;
(b)25%抗ヘパラン硫酸、25%抗コンドロイチン、25%抗ケラタン、および25%抗デルマタン;ならびに
(c)37%抗ロイシンジッパー、33%抗ヘリックスターンヘリックス、および30%抗ジンクフィンガー
である、上記[5]に記載の方法。
[7]上記抽出ステップが酸存在下で行われる、上記[5]に記載の方法。
[8]抽出が、25℃から37℃の間で約20~120分間行われる、上記[1]から[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9]上記分子を単離するステップが、第2の酵素溶液存在下で行われる、上記[1]から[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10]上記第2の酵素溶液が、野菜または果物プロテアーゼを含む、上記[9]に記載の方法。
[11]上記第2の酵素溶液の濃度が10μg/mlから100ng/mlの間である、上記[9]に記載の方法。
[12]上記分子を単離する上記ステップが、pH6.5~9.0、45℃で60分間行われる、上記[9]に記載の方法。
[13]混合物を70℃で5分間加熱して、上記第2の酵素溶液中の酵素を不活性化することをさらに含む、上記[9]から[12]のいずれか一項に記載の方法。
[14]抽出混合物を脱水するステップをさらに含む、上記[1]から[13]のいずれか一項に記載の方法。
[15]上記脱水ステップがフリーズドライである、上記[14]に記載の方法。
[16]上記[1]から[15]のいずれか一項に記載の方法から得られた燕の巣抽出物。
[17]上記[16]に記載の抽出物を含む組成物。
[18]マルトデキストリンをさらに含む、上記[17]に記載の組成物。
[19]上記組成物中に存在するマルトデキストリンの量が、30wt%から75wt%の間である、上記[18]に記載の組成物。
[20]医薬品における、上記[16]に記載の抽出物の使用。
[21]状態および/または疾患を治療および/または予防するための医薬の製造における、上記[16]に記載の抽出物の使用。
[22]上記[16]に記載の抽出物および薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物。
本発明の第1の態様において、燕の巣抽出物を調製する方法であって、抽出物が食用燕の巣(EBN)から得られた少なくとも1つの分子を含み、方法が、(a)未加工のEBNを洗浄するステップと;(b)洗浄したEBNをろ過するステップと;(c)EBNから分子を抽出するステップと;(d)分子を単離するステップとを含む方法が提供される。
【0012】
好ましくは、洗浄ステップは、EBNを第1の酵素溶液に、室内温度で約5分間曝露し、EBNおよび酵素溶液を水にさらに5分間浸漬することを含む。さらに好ましくは、第1の酵素溶液は、亜硝酸還元酵素を含む。ある実施形態において、水は逆浸透法から得てもよい。
【0013】
洗浄ステップは、EBNを過酸化水素水で約10分間洗浄し、続いて70℃で約12時間乾燥することを伴っていてもよい。
【0014】
好ましくは、本方法は、抽出ステップの前に、洗浄したEBNを121℃で約10分間滅菌することをさらに含む。あるいは、抽出プロセスは、約20分間行ってもよい。
【0015】
抽出溶液は、抗Nグリカン、抗Oグリカン、抗シアル酸(特にシアル酸結合Ig様レクチン14)、抗ジンクフィンガー、抗パールカン、抗ヘリックスターンヘリックス、抗ヒアルロナン、抗デコリン、抗デルマタン、抗コンドロイチン、抗ルミカン、抗ケラタン、抗シンデカン、抗ロイシンジッパー、抗ヘパラン硫酸、抗ブレビカン、抗ニューロカン、抗バーシカンを含む群から選択されるいずれか1つを含んでいてもよい。
【0016】
「抗」は、目的の標的を選択的に標的化し、そこへ結合する任意の分子を指すことを意味し、すなわち、標的は、グリカン(NまたはOグリカン)、シアル酸(特に抗シアル酸結合Ig様レクチン14)、抗ジンクフィンガー、抗パールカン、抗ヘリックスターンヘリックス、抗ヒアルロナン、抗デコリン、抗デルマタン、抗コンドロイチン、抗ルミカン、抗ケラタン、抗シンデカン、抗ロイシンジッパー、抗ヘパラン硫酸、抗ブレビカン、抗ニューロカン、抗バーシカンなどである。
【0017】
したがって、本発明の抽出溶液によって、Nグリカン、Oグリカン、シアル酸(特にシアル酸結合Ig様レクチン14)、ジンクフィンガー、パールカン、ヘリックスターンヘリックス、ヒアルロナン、デコリン、デルマタン、コンドロイチン、ルミカン、ケラタン、シンデカン、ロイシンジッパー、ヘパラン硫酸、ブレビカン、ニューロカン、バーシカンの群から選択されるいずれか1つを含むEBN抽出物が得られることになる。これらは、抽出物中に任意の好適な量で存在していてもよい。さまざまな実施形態において、組成物は、以下のうちのいずれか1つを含んでいてもよい。
(a)EBN抽出物1
20%Nグリカン
30%Oグリカン
50%シアル酸結合Ig様レクチン14
(b)EBN抽出物2
70%ジンクフィンガー
15%パールカン
15%Nグリカン
(c)EBN抽出物3
15%Nグリカン
25%ヘリックスターンヘリックス
15%ヒアルロナン
35%デコリン
10%デルマタン
(d)EBN抽出物4
10%デルマタン
15%コンドロイチン
55%ヒアルロナン
20%ルミカン
(e)EBN抽出物5
10%ケラタン
25%シンデカン
35%コンドロイチン
30%ヒアルロナン
(f)EBN抽出物6
35%ロイシンジッパー
30%デコリン
35%ルミカン
(g)EBN抽出物7
25%ヘパラン硫酸
15%ブレビカン
20%ニューロカン
20%バーシカン
20%デコリン
【0018】
これらの量百分率は、組成物全体の重量百分率またはそれ以外のものであってもよい。
【0019】
好ましくは、ある実施形態において、分子を抽出するステップは、洗浄したEBNを、
(a)抗Nグリカンおよび抗Oグリカンを含む溶液;
(b)抗ヘパラン硫酸、抗コンドロイチン、抗ケラタン、および抗デルマタンを含む溶液;ならびに
(c)抗ロイシンジッパー、抗ヘリックスターンヘリックス、および抗ジンクフィンガーを含む溶液
を含む群から選択される抽出溶液のうちのいずれか1つに曝露することによって行われる。
【0020】
上記各溶液(a)~(c)中に存在する量は、
(a)50%抗Nグリカンおよび50%抗Oグリカン;
(b)25%抗ヘパラン硫酸、25%抗コンドロイチン、25%抗ケラタン、および25%抗デルマタン;ならびに
(c)37%抗ロイシンジッパー、33%抗ヘリックスターンヘリックス、および30%抗ジンクフィンガー
であってもよい。
【0021】
さらに、代替の実施形態において、抽出溶液の組成物は、以下から選択されるいずれか1つであってもよい。
(a)組成物1
20%抗Nグリカン(分子量20kDaから1000kDaの間)
30%抗Oグリカン(分子量30kDaから3000kDaの間)
50%抗シアル酸結合Ig様レクチン14(分子量20kDaから700kDaの間);または
(b)組成物2
70%抗ジンクフィンガー(分子量10kDaから200kDaの間)
15%抗パールカン(分子量50kDaから10000kDaの間)
15%抗Nグリカン(分子量20kDaから700kDaの間);または
(c)組成物3
15%抗Nグリカン(分子量20kDaから700kDaの間)
25%抗ヘリックスターンヘリックス(分子量10kDaから300kDaの間)
15%抗ヒアルロナン(分子量100kDaから3000kDaの間)
35%抗デコリン(分子量10kDaから200kDaの間)
10%抗デルマタン(分子量50kDaから500kDaの間);または
(d)組成物4
10%抗デルマタン(分子量50kDaから500kDaの間)
15%抗コンドロイチン(分子量30kDaから700kDaの間)
55%抗ヒアルロナン(分子量100kDaから3000kDaの間)
20%抗ルミカン(分子量20kDaから250kDaの間);または
(e)組成物5
10%抗ケラタン(分子量25kDaから500kDaの間)
25%抗シンデカン(分子量20kDaから100kDaの間)
35%抗コンドロイチン(分子量30kDaから700kDaの間)
30%抗ヒアルロナン(分子量100kDaから3000kDaの間);または
(f)組成物6
35%抗ロイシンジッパー(分子量10kDaから300kDaの間)
30%抗デコリン(分子量10kDaから200kDaの間)
35%抗ルミカン(分子量20kDaから250kDaの間);または
(g)組成物7
25%抗ヘパラン硫酸(分子量30kDaから300kDaの間)
15%抗ブレビカン(分子量10kDaから300kDaの間)
20%抗ニューロカン(分子量20kDaから300kDaの間)
20%抗バーシカン(分子量50kDaから500kDaの間)
20%抗デコリン(分子量10kDaから200kDaの間)
【0022】
各組成物は特異性および効果が異なっていてもよく、したがって使用が異なっていてもよい。各組成物の概要は以下のとおりである。
【0023】
組成物1
本特有の組成物は、H1N1およびH3N2に関してそれぞれ、最小濃度0.5g/lおよび1g/lで血球凝集を阻害することができるEBN抽出物を提供する。シアル酸のみを含む類似した抽出物は、H1N1およびH3N2に関して、それぞれ最小濃度5g/l~160g/lのみで血球凝集を阻害することができた。
【0024】
第2に、インフルエンザH1N1のin vitroでの感染力に関しては、本組成物を0.03から2g/lの間の濃度で哺乳動物細胞へ添加すると、抽出物組成物が補充されていない培養物と比較して、得られたウィルス力価は少なくとも、1/2に減少したことが示される。シアル酸のみを含む類似した抽出物は、はるかに高濃度である10~464g/lの濃度のみで同様に減少させることができた。
【0025】
このことは、本抽出溶液が、インフルエンザウィルスの予防に効力があり、シアル酸または市販の化合物のどちらよりもはるかに強力な組成物(すなわちEBN抽出物)を抽出できることを示す。
【0026】
それはまた、最小濃度0.33g/lの存在下で、H1N1およびH3N2インフルエンザウィルスに感染してから1日後の哺乳動物細胞には、細胞変性効果が観察されなかったことを示す。
【0027】
他のコンペティター、すなわち、他の市販のEBN溶液でもインフルエンザAを用いた血球凝集阻害アッセイで試験を行った。これらのEBN溶液には、細胞に対して細胞毒性を有すること、または検出可能な抗インフルエンザウィルス活性をまったく示さないことのいずれかが認められた。結論として、Gene Oasis専売(proprietary)EBN抽出物は、インフルエンザウィルス感染の予防において強力でありかつ優れている。
【0028】
組成物2
本特有の組成物は、腎細胞成長を、本GO専売EBN抽出物組成物を含まない対照と比較すると、濃度依存的様式で促進するEBN抽出物を提供する。3.3g/lの本組成物存在下で、腎細胞は、コンフルエントな細胞密度に3日目で達し(~5×10個細胞/cm)、対照よりも早い(4日目)。成長促進は、本特有のEBN抽出物で認められる活性分子の存在と関連し得る。
【0029】
組成物3
本抽出物組成物は、in vitroで細胞増殖中のヒト幹細胞増殖における増加を誘発することができるEBN抽出物を提供する。
【0030】
最も重要なことには、本抽出物をコンペティターA EBNとタンパク質量で比較すると、4.39%GeneOasis EBNは、培養の2日目から始まり5日目までに10%コンペティターA EBNとは統計的に有意差がある細胞成長曲線を導けることが示された(すべての日に関して***p<0.001;p値はグラフに示す)。同様に、GeneOasis EBN(GOA)をコンペティターA EBNと体積で比較すると、10%本EBN抽出物は、培養の2日目から始まり5日目までに10%コンペティターA EBNとは統計的に有意差がある細胞成長曲線を導けることが示された(p値はグラフに示す)。(i)細胞成長を促進し、かつコンペティターAのもののような細胞死を引き起こさない点、および(ii)EGFに取って代わるその能力の点で、本EBN抽出物がコンペティターA EBNよりも強力であることが示されるため、これは重要でありかつ新規である。
【0031】
最も重要なことには、本EBN抽出物(GOB)をコンペティターB EBNとタンパク質量で比較すると、3.35%の本EBN抽出物は、培養の4日目から始まり5日目までに10%コンペティターB EBNとは統計的に有意差がある細胞成長曲線を導けることが示された(4日目に関しては**p<0.01、および5日目に関しては***p<0.001;p値はグラフに示す)。同様に、本EBN抽出物(GOB)をコンペティターB EBNと体積で比較すると、10%の本EBN抽出物は、培養の2日目から始まり5日目までに10%コンペティターA EBNとは統計的に有意差がある細胞成長曲線を導けることが示された(4日目に関しては**p<0.01、および2日目および5日目に関しては***p<0.001;p値はグラフに示す)。(i)細胞成長を促進する点、および(ii)特に細胞成長後期(培養4日目および5日目)でのEGFに取って代わるその能力の点で、本EBN抽出物がコンペティターB EBNよりも強力であることが示されるため、これは重要でありかつ新規である。
【0032】
組成物4
本組成物は、in vitroで軟骨形成性分化の過程中のヒト幹細胞増殖において統計的に有意な増加を誘発することができるEBN抽出物を提供する。これは、DNA(細胞増殖)において、増加だけではなく統計的に有意な増加も示す最初の研究であるため、新規である。
組成物5
【0033】
本組成物は、ヒト幹細胞の軟骨形成性分化において、in vitroでのプロテオグリカン含量に関して増加を誘発するEBN抽出物を提供する。
【0034】
本EBN抽出物を添加すると、1ペレットあたりのグリコサミノグリカン(GAG)含量およびGAG/DNA比率が、主に分化の14日目から28日目で増加する。1ペレットあたりのGAG含量における増加は、2.5%~5%を使用した分化の14日目から28日目で最も有意でありかつ最も一貫している。GAG/DNA比率における増加は、5%のEBNを使用した分化の14日目から28日目で最も有意でありかつ最も一貫している。GAGは、軟骨組織で通常認められる主要なタイプのプロテオグリカンである。
【0035】
組成物6
本組成物は、1ペレットあたりのコラーゲンII含量およびコラーゲンII/DNA比率を、主に分化の21日目から28日目で増加させるEBN抽出物を提供する。1ペレットあたりのコラーゲンII含量における増加は、1.25%EBNに関しては分化の7日目から14日目で、ならびに2.5%EBNに関しては21日目から28日目で最も有意でありかつ最も一貫している。コラーゲンII/DNA比率における増加は、1.25%EBNを使用した分化の7日目から28日目で最も有意でありかつ最も一貫している。コラーゲンIIは、関節軟骨組織で通常認められる主要なタイプのコラーゲン分子または原線維である。1ペレットあたりのコラーゲンII含量は、in vitroでの幹細胞由来軟骨細胞様細胞の総産生機能(functional output)の指標である。コラーゲンII/DNA比率は、細胞1個あたりのコラーゲンII産生を表し、かつ幹細胞が軟骨細胞様細胞へいかによく分化しているかの機能的指標として使用される。点線は、EBN抽出物が添加されなかったときの、1ペレットあたりのコラーゲンII、およびコラーゲンII/DNA比率を指す。
組成物7
【0036】
本抽出溶液組成物は、hNPCの長期培養に有益であり得るEGF様構成成分を含むEBN抽出物を提供する。
【0037】
好ましくは、抽出ステップは、酸存在下で行われる。
【0038】
好ましくは、抽出は、25℃から37℃の間で約20~120分間行われる。
【0039】
好ましくは、分子を単離するステップは、第2の酵素溶液存在下で行われる。さらに好ましくは、第2の酵素溶液は、野菜または果物プロテアーゼを含む。第2の酵素溶液の濃度は、10μg/mlから100ng/mlの間であってもよい。さらに、分子を単離するステップは、pH6.5~9.0、45℃で60分間行われる。
【0040】
好ましくは、単離ステップは、混合物を70℃で5分間加熱して、第2の酵素溶液中の酵素を不活性化することをさらに含む。
【0041】
好ましくは、本方法は、抽出混合物を脱水するステップをさらに含む。さらに好ましくは、脱水ステップはフリーズドライである。
【0042】
本発明の第2の態様において、本発明の第1の態様による方法から得られた燕の巣抽出物が提供される。
【0043】
本発明の第3の態様において、本発明の第2の態様による抽出物を含む組成物が提供される。好ましくは、組成物はマルトデキストリンをさらに含む。ある実施形態において、組成物中に存在するマルトデキストリンの量は、30wt%から75wt%の間であってもよい。
【0044】
本発明のある実施形態において、抽出物は医薬品において使用してもよい。より具体的には、抽出物は、状態および/または疾患を治療および/または予防するための医薬の製造において使用してもよい。
【0045】
さらにより具体的には、抽出物は、皮膚の改善ならびにさまざまな皮膚病、脱水および炎症性皮膚の治療、免疫系の強化、老化の遅延、代謝の促進、ヒト視力の保護、血液循環の改善、血中コレステロールレベルの制御、心血管の健康状態の保護、細胞の賦活および再生、関節炎による不快感の緩和、ホルモンレベルの調整、炎症発生の低下、糖尿病の管理、変形性関節、皮膚退化(degenerative skin)、変性性神経系および変性性脳の治療、ならびに腎不全の保護のために使用してもよい。
【0046】
本発明の第4の態様において、本発明の第2の態様による抽出物、薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物が提供される。
【0047】
好ましくは、組成物または配合剤は、活性成分の1日用量もしくは単位、1日分割用量またはこれらの適切な一部を含む単位用量である。本発明の組成物は、経口でまたは任意の非経口経路によって、燕の巣抽出物を任意選択で非毒性の有機、または無機、酸、または塩基、付加塩の形態で含む医薬組成物の形態で、薬学的に許容される剤型で通常投与してもよい。治療する状態、障害および患者、ならびに投与経路によって、組成物はさまざまな用量で投与してもよい。
【0048】
ヒト治療法において、本発明の燕の巣抽出物または組成物は、単独で投与することができるが、一般的には、意図する投与経路および標準的な医薬使用の実施に関して選択された好適な医薬賦形剤、希釈剤または担体との添加混合物として投与されることになる。これらは経口で(錠剤およびカプセル剤によって)または非経口で、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、胸骨内(intrastemally)、頭蓋内、筋肉内または皮下で投与してもよいか、注入技術によって投与してもよい。これらは、他の物質、例えば、血液と等張な溶液を作製するのに十分な塩またはグルコースを含み得る滅菌水性溶液の形態で最もよく使用される。水性溶液は、必要に応じて、好適に(好ましくはpH3~9に)緩衝しなければならない。滅菌条件下での好適な非経口配合剤の調製は、当業者に周知の標準的な医薬技術によって容易に行われる。
【0049】
非経口投与に好適な組成物または配合剤としては、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬および配合剤を対象とする受容者の血液と等張にする溶質を含み得る水性および非水性滅菌注射液;ならびに懸濁化剤および増粘剤を含み得る水性および非水性滅菌懸濁液がある。配合剤は、単位用量用または分割用量用容器、例えば、密閉されたアンプルおよびバイアルに存在していてもよく、かつ使用直前に滅菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管されていてもよい。用時調製(extemporaneous)注射液および懸濁液は前述の種類の滅菌粉末剤、顆粒剤および錠剤から調製されてもよい。
【0050】
ヒト患者への経口および非経口投与に関しては、本発明の化合物の1日用量レベルは、通常1mg/kg~30mg/kgとなるはずである。したがって、例えば、本発明の化合物の錠剤またはカプセル剤は、単独でまたは2つ以上を同時に投与するための用量の活性化合物を必要に応じて含んでいてもよい。いずれにしても医師が、任意の個々の患者に関して最も好適であろう実用量を決定することになり、かつそれは年齢、体重および特定の患者の応答に伴って変化することになる。上記用量は平均的な場合の例示である。当然、高用量または低用量範囲で利点がある個々の場合が存在することがあり、それは本発明の範囲内である。
【0051】
あるいは、本発明の組成物は、坐剤またはペッサリーの形態で投与することができるか、ローション剤、液剤、クリーム剤、軟膏剤または粉剤(dusting powder)の形態で局所的に適用することができる。本発明の組成物、特に燕の巣抽出物はまた、例えば、皮膚パッチの使用によって経皮投与されてもよい。これらはまた、特に眼疾患を治療するための眼球経路によって投与されてもよい。皮膚への局所適用に関して、本発明の化合物は、例えば、次のもの:鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水のうちの1つまたは複数との混合物に懸濁したまたは溶解した活性化合物を含む好適な軟膏剤として配合することができる。あるいはこれらは、例えば、次のもの:鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水のうちの1つまたは複数の混合物に懸濁したまたは溶解した好適なローション剤またはクリーム剤として配合することができる。
【0052】
一般的に、ヒトにおいて、本発明の組成物の経口または局所投与は、好ましい経路であり、最も簡便である。受容者が嚥下障害または経口投与後の薬物吸収不全に罹患している状況において、薬物は、非経口、例えば舌下、頬側、経粘膜または経皮的な手段で投与してもよい。
【0053】
現在のところ、関節軟骨の健康補助に広く使用される生物活性分子様コンドロイチン硫酸(CS)、ケラタン硫酸(KS)およびヒアルロン酸(HA)は、動物の一部または生物反応器中でクローン化された遺伝子操作微生物から主に抽出される。抽出物製品の純度および収率および安全面における整合性に関する基準は存在しない。
【0054】
これらの化合物を食用燕の巣(EBN)の天然原料から抽出すると、EBNはこうした生物活性因子の非常に豊富なかつ十分な原料であるため、安全性および持続性の問題が解決される。
【0055】
コンドロイチン硫酸は、クリーム剤、カプセル剤および健康補助医薬品の形態で関節炎治療に使用される。ヒアルロン酸は、化粧品および医薬品業界で世界的に広く使用される。
【0056】
皮膚および関節包を介したまたは経口投与経路を介した、そのような水溶性因子(CS)、(KS)および(HA)に関する吸収は、皮膚または腸における疎水性膜または構造を介した透過性が低いために問題とされてきた。したがって、これらの化合物の最大限のかつ即時的な効果を、世界中の何百万もの関節炎および関節痛患者の身体の必要な部位へ送達するのは困難である。これは、持続可能なおよび長期の問題解決に対する大きな課題である。
【0057】
化合物ならびにコンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、およびケラタン硫酸などのその加水分解製品を分離する方法を通して、高純度でかつ目的に適したさまざまな用量の化合物を供給するための経済的な方法が提供される。本方法で単離された製品は、使用者へさまざまな手段および方法で送達可能であり、化合物の作用部位への効果的なかつ迅速な送達を可能にする。特に、好適な配合剤を用いて、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、およびケラタン硫酸を、効果的なかつ有用な用量で疼痛および炎症の部位へ送達することができる。
【0058】
脂質形態で配合された本抽出物を使用し、経皮的であり、かつ安全なかつ持続可能な生物活性分子からなり、天然であるが十分な供給量のEBN再利用片から抽出された、初の経済的な市販製品を生成してもよい。
【0059】
本発明を十分に理解しかつ容易に実行に移す目的で、非限定的な例を用いて本発明の好ましい実施形態のみをここに記述し、添付の例示の図を参照しながら説明するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明の実施形態による燕の巣抽出物を調製する方法を示すフローチャートである。
図2】SF-EBNの、ベロ細胞成長に対する効果を示すグラフである。培養培地中にSF-EBNが存在すると、細胞成長に有意な改善が示される(3日目に測定した)。
図3】GeneOasis製SF-EBNは、インフルエンザウィルス(H1N1)介在性血球凝集を予防できることを示す写真である。WHOが推奨するウィルス濃度8HAU/50μlに対して、血球凝集の予防は、0.5g/l(2)のSF-EBNで得られた。
図4】GeneOasis製SF-EBNの、インフルエンザウィルス(H3N2)介在性血球凝集の阻害効果に対する効果を示す写真である。WHOが推奨するウィルス濃度8HAU/50μlに対して、血球凝集の予防は、1.0g/l(25)のSF-EBN濃度で得られた。
図5】ベロ細胞をSF-EBNの存在下で感染させた後の、培養上澄みにおけるインフルエンザウィルス力価を測定するための血球凝集アッセイを示す写真である。アッセイは、0.001のMOIでH1N1に感染させてから24時間後に行った。点線は、血球凝集を観察できる行中のウェルを分割する。
図6】コンペティターB製SF-EBNの、インフルエンザウィルス(H1N1)介在性血球凝集における評価を示す写真である。16HAU/50μlのH1N1ウィルス濃度を使用した。本発明のSF-EBNを希釈し、コンペティターB製SF-EBNの可溶性タンパク質濃度と一致させた。
図7】抗N-グリカンおよび/または抗ヘリックスターンヘリックスを使用して述べた方法から得られたEBN抽出物製品の、細胞増殖中のヒト幹細胞増殖に対する効果を示すグラフである。図7のデータは、10%EBN抽出物および3成長因子の組合せが、4成長因子を使用した場合と同様のプラスの効果をヒト幹細胞増殖に対して有することを示す。10%EBMのみが表皮成長因子(EGF)と代わって、EGFの代替物として作用することができる。EGFは栄養補助食品として利用できず、かつPanら(Environ. Health Perspect., DOI: 10.1289/ehpl409200)は、ヒトEGFおよびパラベンは、乳がん細胞株の増殖を増加させる場合があることを示している。その結果、EBN抽出物は、ヒト間葉幹細胞(hMSC)活性化および軟骨細胞への分化に必要とされる内因性EGFを生成しない個体のための実行可能な代替物となるはずである。
図8】コンペティターAおよびB製EBN抽出物と比較した、抗N-グリカンおよび/または抗ヘリックスターンヘリックスを使用して述べた方法から得られたEBN抽出物製品の、ヒト幹細胞増殖に対する効果を示すグラフである。EGFに代わるEBN抽出物の効果は、コンペティターAおよびB製品の両方と比較したEBN抽出物に関して、よりいっそう有意である。
図9】コンペティターAおよびB製EBN抽出物と比較した、抗N-グリカンおよび/または抗ヘリックスターンヘリックスを使用して述べた方法から得られたEBN抽出物製品の、ヒト幹細胞増殖に対する効果を示すグラフである。EGFに代わるEBN抽出物の効果は、コンペティターAおよびB製品の両方と比較したEBN抽出物に関して、よりいっそう有意である。
図10A-B】EBN抽出物の、hNPCの増殖および分化に対する効果を示すグラフである。細胞成長(A)、増殖に関する細胞マーカー(ki67)および神経分化に関する細胞マーカー(ベータ-チューブリン)(B)を1週間培養した後に測定した。
図11A-B】EBN抽出物の、hNPCの増殖および分化に対する長期効果を示すグラフである。hNPCを、成長因子およびEBN抽出物の両方の存在下で、3週間連続的に培養した。その後、hNPCを採取し、細胞成長研究用の新しいプレートに20,000個細胞/ウェルで播種した。細胞成長(A)、増殖に関する細胞マーカー(ki67)および神経分化に関する細胞マーカー(ベータ-チューブリン)(B)を1週間培養した後に測定した。
図12】EBN抽出物の、NPC培養物の形態に対する効果を示す写真である。
図13】10%の本EBN抽出物をEGFに置き換え、in vitroでのhMSC増殖の同様の成長曲線を得られることを示すグラフである。二元配置ANOVAを用いた統計的分析により、3成長因子+10%EBNの細胞成長は3成長因子のみのものとは有意差があり、10%EBNは、細胞培養の2日目から4日目の細胞成長が増加することによるプラスの効果を誘発することを示すことが明らかにされた。対照的に、二元配置ANOVAを用いた統計的分析により、3成長因子+10%EBNの細胞成長は4成長因子のものとは有意差がなく、10%EBNをEGFに置き換え、0日目から4日目までの細胞培養物と同様のhMSC成長を得られることが明らかにされた。p値、**p<0.01、***p<0.001および****p<0.0001。
図14】本EBN抽出物を添加すると、1ペレットあたりのDNA含量において、主に分化の7日目から14日目で増加が生じ、7日目の2.5%~5%EBNが最も有意なかつ一貫した結果であることを示すグラフである。DNA含量における増加は、細胞増殖の尺度として通常使用される。点線は、EBN抽出物が添加されなかったときの1ペレットあたりのDNA含量を指す。数値は、0%のEBNに対して誘発された倍率変化を指す。四角の囲みは1.0を超える倍率増加を有するものを強調する。
図15】合計でn=ペレット3個の第1の独立した実験に関して、本EBN抽出物を添加すると、1ペレットあたりのDNA含量において、分化の7日目から28日目で統計的に有意な増加は生じないことを示すグラフである。これは、表示された各時点における同一条件のペレット間で観察されたDNA含量のばらつきにおそらく起因する。DNA含量の増加は、細胞増殖の尺度として通常使用される。統計的分析を、通常の一元配置ANOVAとテューキーの多重比較検定を用いて行った。青色の四角の囲みは、分析をより多数の試料で行うことができる場合、潜在的に有意であり得るものを強調する。赤色の四角の囲みは統計的に有意であるものを強調する。
図16】合計でn=ペレット4個の第2の独立した実験に関して、2.5%および10%の本EBN抽出物は、1ペレットあたりのDNA含量において、EBN抽出物をまったく含まない(0%)対照条件と比較すると分化の7日目で統計的に有意な増加が生じたことを示すグラフである。これは、本EBN抽出物が、in vitroで軟骨形成性分化の過程中のヒト幹細胞増殖において統計的に有意な増加を誘発できることを示す。これは、DNA(細胞増殖)において増加だけではなく統計的に有意な増加も示す最初の研究であるため、新規である。DNA含量の増加は、細胞増殖の尺度として通常使用される。統計的分析を、通常の一元配置ANOVAとテューキーの多重比較検定を用いて行った。青色の四角の囲みは、分析をより多数の試料で行うことができる場合、潜在的に有意であり得るものを強調する。赤色の四角の囲みは統計的に有意であるものを強調する。p値、p<0.05。
図17】合計でn=ペレット7個に組み合わせた結果に関して、2.5%の本EBN抽出物は、1ペレットあたりのDNA含量において、EBN抽出物をまったく含まない(0%)対照条件と比較すると分化の7日目で統計的に有意な増加が生じたことを示すグラフである。これは、本EBN抽出物が、in vitroで軟骨形成性分化の過程中のヒト幹細胞増殖において統計的に有意な増加を誘発できることを示す。これはDNA(細胞増殖)において増加だけではなく統計的に有意な増加も示す最初の研究であるため、新規である。DNA含量の増加は、細胞増殖の尺度として通常使用される。統計的分析を、通常の一元配置ANOVAとテューキーの多重比較検定を用いて行った。青色の四角の囲みは、分析をより多数の試料で行うことができる場合、潜在的に有意であり得るものを強調する。赤色の四角の囲みは統計的に有意であるものを強調する。p値、p<0.05。
図18】本EBN抽出物を添加すると、1ペレットあたりのグリコサミノグリカン(GAG)含量およびGAG/DNA比率が、主に分化の14日目から28日目で増加することを示すグラフである。1ペレットあたりのGAG含量における増加は、2.5%~5%を使用した分化の14日目から28日目で最も有意でありかつ最も一貫している。GAG/DNA比率における増加は、5%のEBNを使用した分化の14日目から28日目で最も有意でありかつ最も一貫している。GAGは、軟骨組織で通常認められる主要なタイプのプロテオグリカンである。1ペレットあたりのGAG含量は、in vitroでの幹細胞由来軟骨細胞様細胞の総産生機能の指標である。GAG/DNA比率は、細胞1個あたりのGAG産生を表し、かつ幹細胞が軟骨細胞様細胞へいかによく分化しているかの機能的指標として使用される。点線は、EBN抽出物が添加されなかったときの1ペレットあたりのGAGおよびGAG/DNA比率を指す。数値は、0%のEBNに対して誘発された倍率変化を指す。四角の囲みは、1.0を超える倍率増加を有するものを強調する。
図19】合計でn=ペレット3個の第1の独立した実験に関して、本EBN抽出物を添加すると、1ペレットあたりのGAG含量およびGAG/DNA比率において、分化の7日目から28日目で統計的に有意な増加は生じなかったことを示すグラフである。これは、表示された各時点における同一条件のペレット間で観察されたGAGおよびDNA含量のばらつき(図15を参照のこと)におそらく起因する。GAGは軟骨組織で通常認められる主要なタイプのプロテオグリカンである。1ペレットあたりのGAG含量は、in vitroでの幹細胞由来軟骨細胞様細胞の総産生機能の指標である。GAG/DNA比率は、細胞1個あたりのGAG産生を表し、かつ幹細胞が軟骨細胞様細胞へいかによく分化しているかの機能的指標として使用される。統計的分析を、通常の一元配置ANOVAとテューキーの多重比較検定を用いて行った。青色の四角の囲みは、分析をより多数の試料で行うことができる場合、潜在的に有意であり得るものを強調する。赤色の四角の囲みは統計的に有意であるものを強調する。
図20】合計でn=ペレット4個の第2の独立した実験に関して、本EBN抽出物を添加すると、1ペレットあたりのGAG含量およびGAG/DNA比率において、分化の7日目から28日目で統計的に有意な増加は生じなかったことを示すグラフである。これは、表示された各時点における同一条件のペレット間で観察されたGAGおよびDNA含量のばらつき(図15を参照のこと)におそらく起因する。しかし、2.5%および10%の本EBN抽出物は、1ペレットあたりのGAG含量において、EBN抽出物をまったく含まない(0%)対照条件と比較すると、分化の7日目で統計的に有意な増加が潜在的に生じ得る。これは、GAG/DNA含量が未変化のままで、1ペレットあたりのDNA含量が統計的に有意に増加すること(図16を参照のこと)に起因し得る。GAGは軟骨組織で通常認められる主要なタイプのプロテオグリカンである。1ペレットあたりのGAG含量は、in vitroでの幹細胞由来軟骨細胞様細胞の総産生機能の指標である。GAG/DNA比率は、細胞1個あたりのGAG産生を表し、かつ幹細胞が軟骨細胞様細胞へいかによく分化しているかの機能的指標として使用される。統計的分析を、通常の一元配置ANOVAとテューキーの多重比較検定を用いて行った。青色の四角の囲みは、分析をより多数の試料で行うことができる場合、潜在的に有意であり得るものを強調する。赤色の四角の囲みは統計的に有意であるものを強調する。
図21】合計でn=ペレット7個に組み合わせた結果に関して、本EBN抽出物を添加すると、1ペレットあたりのGAG含量およびGAG/DNA比率において、分化の7日目から28日目で統計的に有意な増加は生じないことを示すグラフである。これは、表示された各時点における同一条件のペレット間で観察されたGAGおよびDNA含量のばらつき(図2.2.2を参照のこと)におそらく起因する。GAGは軟骨組織で通常認められる主要なタイプのプロテオグリカンである。1ペレットあたりのGAG含量は、in vitroでの幹細胞由来軟骨細胞様細胞の総産生機能の指標である。GAG/DNA比率は、細胞1個あたりのGAG産生を表し、かつ幹細胞が軟骨細胞様細胞へいかによく分化しているたかの機能的指標として使用される。統計的分析を、通常の一元配置ANOVAとテューキーの多重比較検定を用いて行った。青色の四角の囲みは、分析をより多数の試料で行うことができる場合、潜在的に有意であり得るものを強調する。赤色の四角の囲みは統計的に有意であるものを強調する。
図22】本EBN抽出物を添加すると、1ペレットあたりのコラーゲンII含量およびコラーゲンII/DNA比率が、主に分化の21日目から28日目で増加することを示すグラフである。1ペレットあたりのコラーゲンII含量における増加は、1.25%EBNに関しては分化の7日目から14日目で、ならびに2.5%EBNに関しては21日目から28日目で最も有意でありかつ最も一貫している。コラーゲンII/DNA比率における増加は、1.25%EBNを使用した分化の7日目から28日目で最も有意でありかつ最も一貫している。コラーゲンIIは、関節軟骨組織で通常認められる主要なタイプのコラーゲン分子または原線維である。1ペレットあたりのコラーゲンII含量は、in vitroでの幹細胞由来軟骨細胞様細胞の総産生機能の指標である。コラーゲンII/DNA比率は、細胞1個あたりのコラーゲンII産生を表し、かつ幹細胞が軟骨細胞様細胞へいかによく分化しているかの機能的指標として使用される。点線は、EBN抽出物が添加されなかったときの、1ペレットあたりのコラーゲンII、およびコラーゲンII/DNA比率を指す。数値は、0%のEBNに対して誘発された倍率変化を指す。四角の囲みは1.0を超える倍率増加を有するものを強調する。
図23】4.39%と10%の両方の本EBN抽出物は、10%コンペティターA EBNよりも、培養2日目から5日目のhMS細胞成長の誘発において有意に優れていることを示すグラフである。驚くべきことに、3成長因子+10%コンペティターAは、(i)3成長因子のみのものとは有意差があり(2日目に関してはp<0.05、他のすべての日に関してはp<0.001)、(ii)4成長因子のものとは有意差があり(すべての日に関してp<0.001)、かつ(iii)成長因子なしでのものとは有意差がない(すべての日に関してp>0.05)細胞成長曲線を有する。これは、コンペティターA EBNが(i)他の3成長因子の効果を無効にする阻害効果を有し、(ii)EGFに代わって、4成長因子と同様の成長曲線に達することができず、かつ(iii)細胞成長を誘発しないことを示し、このことはコンペティターA EBNがむしろ細胞死を起こしている場合があることも示唆する。この一連の結果に関する統計的分析は、グラフには示さず、個別に行う。最も重要なことには、本EBN抽出物(GOA)をコンペティターA EBNとタンパク質量で比較すると、4.39%の本EBN抽出物は、培養の2日目から始まり5日目までに10%コンペティターA EBNとは統計的に有意差がある細胞成長曲線を導けることが示された(すべての日に関して***p<0.001;p値はグラフに示す)。同様に、本EBN抽出物(GOA)をコンペティターA EBNと体積で比較すると、10%本EBN抽出物は、培養の2日目から始まり5日目までに10%コンペティターA EBNとは統計的に有意差がある細胞成長曲線を導けることが示された(p値はグラフに示す)。(i)細胞成長を促進しかつコンペティターAのもののような細胞死を引き起こさない点、および(ii)EGFに取って代わるその能力の点で、本EBN抽出物がコンペティターA EBNよりも強力であることが示されるため、これは重要でありかつ新規である。
図24】3.35%と10%の両方の本EBN抽出物は、10%コンペティターB EBNよりも培養4日目から5日目および2日目から5日目のhMSC細胞成長の誘発においてそれぞれ有意に優れていることを示すグラフである。驚くべきことに、3成長因子+10%コンペティターBは(i)3成長因子のみのものとは2日目から4日目まで有意差があり(2日目に関してはp<0.01、3日目に関してはp<0.05、4日目に関してはp<0.001)、(ii)4成長因子のものとは有意差があり(3日目に関してはp<0.01、4および5日目に関してはp<0.001)、かつ(iii)成長因子なしでのものと有意差がある(すべての日に関してp<0.001)細胞成長曲線を有する。これはコンペティターB EBNが(i)3成長因子のみのものと比較すると、2日目から4日目でのみ有意なプラスの効果を細胞成長に対して有し、(ii)培養3日目から5日目まで、EGFに代わって4成長因子と同様の成長曲線に達することができず、かつ(iii)成長因子不含のものと比較して細胞死を誘発しないことを示す。この一連の結果に関する統計的分析はグラフには示さず、個別に行う。最も重要なことには、本EBN抽出物(GOB)をコンペティターB EBNとタンパク質量で比較すると、3.35%GeneOasis EBNは、培養の4日目から始まり5日目までに10%コンペティターB EBNとは統計的に有意差がある細胞成長曲線を導けることが示された(4日目に関しては**p<0.01および5日目に関しては***p<0.001;p値はグラフに示す)。同様に、本EBN抽出物(GOB)をコンペティターB EBNと体積で比較すると、10%の本EBN抽出物は、培養の2日目から始まり5日目までに10%コンペティターA EBNとは統計的に有意差がある細胞成長曲線を導けることが示された(4日目に関しては**p<0.01ならびに2日目および5日目に関しては***p<0.001;p値はグラフに示す)。(i)細胞成長を促進する点、および(ii)特に細胞成長の後期(培養の4日目および5日目)でのEGFに取って代わるその能力の点で、本EBN抽出物がコンペティターB EBNよりも強力であることが示されるため、これは重要でありかつ新規である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明において、活性栄養補助成分(ANI)の低価格な原料としての、さらに活性医薬成分(API)のような高い有効性を有するEBNを利用する方法が提示される。
【0062】
室内温度または室温とは、20~30℃の範囲の温度を指す。
【0063】
N連結グリカンとは、配列Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrにおけるアスパラギンの側鎖の窒素が、Xがプロリンを除く任意のアミノ酸である場合、グリカンとグリコシド結合を形成する構造を指し、グリカンはN-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、ノイラミン酸、N-アセチルグルコサミン、フコース、マンノース、および他の単糖から構成されていてもよい(Varki A, Cummings RD, Esko JD, et al., editors, Essentials of Glycobiology, 2nd edition, Cold Spring Harbor (NY): Cold Spring Harbor Laboratory Press; 2009)。
【0064】
O連結グリカンとは、セリンまたはトレオニンの側鎖の酸素が、N-アセチルガラクトサミンとグリコシド結合を形成し、そのN-アセチルガラクトサミンがさらなる糖単糖と結合している構造を指す。
【0065】
ヘパラン硫酸(HS)は、二糖単位(GlcNAcα1-4GlcAβ1-4/ldoAα1-4)によって定義されるグリコサミノグリカンであり、N-およびO-スルフェートエステルをさまざまな位置に含み、典型的には、プロテオグリカンコアタンパク質へ共有結合していることが認められる。ヘパラン硫酸に存在する主要二糖単位の構造を以下に示す。
【0066】
【化1】
略語:
GlcA=β-D-グルクロン酸
IdoA=α-L-イズロン酸
ldoA(2S)=2-O-スルホ-α-L-イズロン酸
GlcNAc=2-デオキシ-2-アセトアミド-α-D-グルコピラノシル
GlcNS=2-デオキシ-2-スルファミド-α-D-グルコピラノシル
GlcNS(6S)=2-デオキシ-2-スルファミド-α-D-グルコピラノシル-6-O-スルフェート
【0067】
ヘパラン硫酸内の最も一般的な二糖単位は、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)へ連結したD-グルクロン酸(GlcA)からなり、典型的には、全二糖単位の約50%を占める。3-O-硫酸化グルコサミン(GlcNS(3S,6S)または遊離アミン基(GlcNH )を含むまれな二糖は示していない。
【0068】
コンドロイチン硫酸は、一般構造式Iを有する二糖単位(GalNAcβ1-4GlcAβ1-3)によって定義される硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)であり、特定の位置においてエステル連結スルフェートで修飾されており、典型的には、プロテオグリカンコアタンパク質へ共有結合していることが認められる。コンドロイチン鎖は100個を超える個々の糖を有することができ、これはそれぞれさまざまな位置および量で硫酸化され得る。
【0069】
【化2】
【0070】
デルマタンスルフェートは、硫酸化グリコサミノグリカン様コンドロイチン硫酸であり、ここでD-グルクロン酸はL-イズロン酸と置き換えられ、かつ二糖モノマーは一般構造式IIに示される。
【0071】
【化3】
【0072】
ケラタン硫酸(KS)は、繰り返し二糖単位からなる直鎖状ポリサッカライドである。ケラタン硫酸はプロテオグリカン(PG)として存在し、その中でKS鎖は細胞表面または細胞外マトリックスタンパク質へ結合している。ケラタン硫酸内の繰り返し二糖基本単位は(-3ガラクトースβ1-4-N-アセチルグルコサミンβ1-)である。これは、GalまたはGlcNAc単糖のいずれかまたは両方の6位の炭素位置(C6)で硫酸化することができる。しかし、特定のタイプのKSの詳述な主要構造は、3つの領域:その一端でKS鎖がタンパク質へ連結している連結領域、-3Galβ1-4GlcNAcβ1-繰り返し二糖単位から構成される繰り返し領域、およびタンパク質連結領域に対してKS鎖の反対端に存在する鎖キャッピング領域から構成されると考えるのが最善である。
【0073】
ヒアルロン酸は、結合組織、上皮組織、および神経組織にわたって広く分布しているアニオン性、非硫酸化グリコサミノグリカンである。それは、硫酸化されていないという点においてグリコサミノグリカンの中では特有であり、その分子量は非常に大きいことがあり、多くの場合、in vivoで5~20kDaのサイズ範囲である。ヒアルロン酸は二糖のポリマーであり、D-グルクロン酸およびD-N-アセチルグルコサミンから構成され、β-1,4およびβ-1,3グリコシド結合によって交互に連結している。
【0074】
ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヒアルロン酸は、糖部分がタンパク質にAsnまたはSer/Thrの位置で接合しているので、NまたはOグリカンのタイプである。
【0075】
ロイシンジッパーは、真核生物転写因子のbZIP(基本領域ロイシンジッパー)クラスの二量化ドメインである。bZIPドメインは60~80個の長さのアミノ酸であり、高度に保存されたDNA結合基本領域およびより多様なロイシンジッパー二量化領域を伴う。ロイシンジッパーは、タンパク質における一般的な3次元構造モチーフであり、二量化ドメインにおいて7つごとにアミノ酸がロイシンであるためにその名前を有する。
【0076】
タンパク質において、ヘリックスターンヘリックス(HTH)は、DNAに結合することができる主要な構造モチーフである。それは、アミノ酸短鎖によって接合された2つのαヘリックスからなり、かつ遺伝子発現を制御する多くのタンパク質で認められる。
【0077】
ジンクフィンガーは、小タンパク質構造モチーフであり、折り畳み構造を安定化するために1つまたは複数の亜鉛イオンに配位することによって特徴付けられる。一般的に、ジンクフィンガーは、システインおよびヒスチジン残基の組合せによって亜鉛イオンに配位している。本来は、これらの残基の番号および順序は、異なる種類のジンクフィンガー(例えば、CysHis、Cys、およびCys)を分類するのに使用された。最近になって、ジンクフィンガータンパク質を分類するために、より系統的な方法が代わりに使用されている。この方法はジンクフィンガータンパク質を、折り畳まれたドメイン中のタンパク質骨格の全体的な形状に基づいて「折り畳み構造グループ」に分類する。最も一般的なジンクフィンガーの「折り畳み構造グループ」は、CysHis様(「古典的なジンクフィンガー」)、ト音記号、および亜鉛リボンである(Krishna SS, Majumdar I, Grishin NV, 2003, Nucleic Acids Research 31 (2), 532-50)。
【0078】
グリカン特異的抗体を除く天然に存在するグリカン結合タンパク質(GBP)に関しては、GBPを2つの主要なグループであるレクチンおよびグリコサミノグリカン結合タンパク質に広く分類することが可能である。大部分のレクチンは、多くの場合、主要アミノ酸配列または3次元構造の特異的な特徴を保持する共通の祖先遺伝子から明らかに進化した、定義済みの「糖認識ドメイン」(CRD)を有するファミリーのメンバーである。したがって、新規のファミリーメンバーは、タンパク質配列または構造データベースを検索することによって識別することができる。新規のGBPを予測するこの能力にもかかわらず、単一のレクチンファミリーメンバーによって認識されたグリカン構造は非常に多様であり得る。多くのレクチンにおいて、単一部位結合親和性は低い(マイクロモル範囲のΚd値を有する)ようであるが、いくつかのレクチンはグリカンを極めて高い親和性(ナノモル範囲のΚd値を有する)で認識する。低親和性を有するそれらのレクチンに関しては、複数のCRDと複数のグリカンとの間の多価相互作用は、多くの場合in vivoで意味がある高アビディティ結合相互作用の生成に必要とされる。レクチンは、グリカン鎖の特異的末端の特徴を、浅いが比較的はっきりと区別された結合ポケット中にそれをフィットさせることによって認識する傾向がある。対照的に、硫酸化グリコサミノグリカンとのタンパク質相互作用には、伸長されたアニオン性グリコサミノグリカン鎖の内部領域に対して整列した正電荷のアミノ酸の表面クラスターが関与するようである。レクチンは、R型、L型、P型、C型、I型、およびガレクチンとしてさらに分類することができる。いくつかのレクチンによって認識されるN-グリカンの例の構造を示す。結合に必要な決定基を四角に囲まれた部分に示す。
【0079】
【化4】
【0080】
EBNからANIを抽出および単離するための一般的な方法は以下のとおりである(図1に示す)。
(a)EBNの汚れを落とし、混入物を除去する。
(b)汚れを落としたEBNをすりつぶし、メッシュに通してふるいにかけた。
(c)EBN粉末を水に溶解し、少なくとも1つの抗体を含む溶液で処理した。
(d)抗体および結合分子を分離してもよい。
(e)結合分子を、酸溶液を用いて部分的に加水分解し、高分子量のペプチドを添加することによって結合分子を放出した。
(f)放出された小分子を透析によって単離した。
(g)単離した分画を酵素溶液で処理し、化合物をさらに破壊した。
(h)酵素を変性させ、除去した後に、単離した分画を乾燥し、固体製品を得た。
【0081】
粗製EBN(1片は約10~50g)を水中に浸漬することによって汚れを落とし、亜硝酸塩、ダニおよび他の混入物を除去した。除去される他の考えられる混入物としては、重金属、漂白剤および染料を含む他のわずかな破片があり得る。
【0082】
亜硝酸塩を除去する効果的な方法は、果物、植物および土壌から得られる亜硝酸還元酵素を含む溶液を使用することである。さらに、溶液は亜硝酸塩を生成する任意の付着細菌(accompanying bacteria)を不活性化する他の酵素を含んでいてもよい。ダニを除去するために、特殊な果物プロテアーゼを含む溶液を使用する。このような例としては、パパイヤ(パパイン)、キウイフルーツ(アクチニジン)、パイナップル(ブロメライン)、イチジク(フィシン)などから得られる任意のそのようなプロテアーゼがある。これらのプロテアーゼは、細菌の不活性化を可能にする任意の好適な濃度で使用してもよい。
【0083】
EBN混合物を、各酵素溶液を用いて、室温から40℃で少なくとも5分間、連続的に処置した。得られた酵素溶液中のEBN懸濁液にナノバブルを発砲すると(Nanobubbling)、細胞破片が分解され、水表面に浮かぶことになり、容易に除去することができる。その後、酵素溶液を固体EBNから除去する。固体EBNをさらに洗浄し、すべての残渣酵素および混入物を除去することができる。
【0084】
汚れを落としたEBNを、好ましくは70℃で12時間乾燥し、過剰な水を除去する。
【0085】
汚れを落としたEBNをすりつぶし、メッシュに通してふるいにかける。メッシュサイズは残された任意の大きな不純物を除去するのに十分でなければならず、好ましくは、200~700μmのサイズである。最も好ましくは、メッシュサイズは600μmである。
【0086】
EBN粉末を、水、好ましくは蒸留水または脱イオン水に、5℃で5時間入れる。好適な濃度は、水1000mL中EBN25gである。必要に応じて、混合物を、121℃で10分間さらに滅菌してもよい。
【0087】
EBN混合物を、少なくとも1つの抗体を含む水性溶液を用いて、4~37℃の温度範囲で少なくとも20分間処理する。25~37℃の温度、20~120分で十分である。4℃の温度で、抗体およびEBNの混合物を少なくとも9時間維持する。一般的に、温度が低いほど、抗体溶液が標的化合物に完全に結合するにはより長い時間が必要とされる。
【0088】
抗体は以下から選択される。
1.抗N-グリカン
2.抗O-グリカン
3.抗ヘパラン硫酸
4.抗コンドロイチン硫酸
5.抗ケラタン硫酸
6.抗デルマタン硫酸
7.抗ロイシンジッパー
8.抗ヘリックスターンヘリックス
9.抗ジンクフィンガー
10.ヒアルロン酸抗体
【0089】
抗体および結合分子は、通常既知の方法のうちのいずれかによって混合物から分離することができる。これらの方法のうちのいくつかとしては、物理化学的画分、クラス特異的親和性および抗原特異的親和性がある。物理化学的画分としては、示差沈殿、サイズ排除もしくはサイズに基づく免疫グロブリンの固相結合、電荷または他の抗体の共通の化学的特徴がある。クラス特異的親和性としては、免疫グロブリンに特異的親和性を有する固定化された生物学的リガンドによる、特定の抗体クラス(例えばIgG)の固相結合がある。抗原特異的親和性としては、それらの特異的抗原結合ドメインを介して抗体を精製するための特異的抗原の使用がある。
【0090】
使用する抗体としては、天然に存在する抗体、または改変抗体、例えば、抗体の分離を促進することができる標識抗体があり得る。抗体に使用した標識のいくつかの一般的な例は、His標識およびFLAG標識である。さらに、標的分子の抽出に使用される抗体は、固体支持体へ結合させてもよい。固体支持体は強磁性材料または従来の不活性支持体材料から作製してもよい。抗体は市販されており、かつそのようなものとして使用することができる。抗体の修飾が所望される場合、抗体を修飾し、所望の特徴を得るための文献で一般的に知られているように多数の方法が存在する。抗体の分離を通常「フィッシング」法で使用して、標的タンパク質を抽出する。
【0091】
前述のような時間で抗体を添加した後、混合物を酸溶液で処理し、100℃に加熱し、標的化合物を部分的に加水分解する。酸は、好ましくは食品酸、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、酒石酸、フマル酸、および乳酸である。混合物を室温に冷却し、pH7に中和する。
【0092】
抗体結合化合物は、過剰な巨大ペプチドの天然グリコアミノグリカンおよび細胞転写調節因子を添加することによって抗体から放出される。
【0093】
その後、放出された化合物を、添加したペプチド、酵素および抗体から透析バッグを使用することによって単離する。
【0094】
他の実施形態において、抗体溶液は、少なくとも2つの抗体を含んでいてもよい。例えば、抗N-グリカンおよび抗O-グリカンを含む溶液、抗ヘパラン硫酸、抗コンドロイチン、抗ケラタン、および抗デルマタンを含む溶液、抗ロイシンジッパー、抗ターンヘリックスターン、および抗ジンクフィンガーを含む溶液である。
【0095】
好ましくは、抗体溶液組成物は以下のとおりであり、ここで所与の百分率は、溶液中に存在する抗体の合計重量に対する抗体の重量百分率である。
1.50%の抗N-グリカンおよび50%の抗O-グリカン
2.25%の抗ヘパラン硫酸、25%の抗コンドロイチン、25%の抗ケラタン、および25%の抗デルマタン
3.37%の抗ロイシンジッパー、33%の抗ターンヘリックスターン、および30%の抗ジンクフィンガー。
【0096】
あるいは、EBNを含む混合物を、異なる抗体を含む溶液で連続的に処理し、分離し、所望の化合物を連続的に抽出することができる。
【0097】
単離された化合物は、野菜および食品プロテアーゼを用いて、pH6.5~9.0、45℃で1時間さらに加水分解することができる。使用する酵素の濃度は、効率的に加水分解するために、少なくとも10μg/mLでなくてはならない。好ましくは、酵素の濃度は最大100μg/mLであり、かつコーンまたはトウモロコシ末端プロテアーゼを使用する。酵素は、混合物を70℃で5分間加熱することによって変性する。酵素は、55℃超の温度で析出するため、混合物を55℃超の温度でろ過し、所望の化合物をろ液中の溶液として得ることができる。
【0098】
所望の化合物の溶液を乾燥し、化合物を粉末状物として得る。好ましくは、化合物はフリーズドライまたはスプレードライによって乾燥する。フリーズドライは溶液を、-180から-70℃の間の温度に、液体窒素またはドライアイスを用いて冷却することによって行い、凍結した混合物を真空に曝し、氷を昇華させる。フリーズドライは、乾燥粉末製品を得ることを必要とする場合、繰り返すことができる。
【0099】
乾燥粉末製品を他の添加物と混合し、食品または医薬品を得ることができる。あるいは、製品は他の添加物とともに水に溶解することができる。
【0100】
コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、およびケラタン硫酸などの製品ならびにその加水分解を分離する方法を通して、高純度でかつ目的に適するさまざまな用量の化合物を供給するための経済的な方法が提供される。本方法で単離された製品は、使用者へさまざまな手段および方法で送達可能であり、化合物の作用部位への効果的なかつ迅速な送達を可能にする。特に、好適な配合剤を用いて、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、およびケラタン硫酸を、効果的なかつ有用な用量で疼痛および炎症の部位へ送達することができる。
【0101】
いくつかの可能な配合剤の例が提供され、ここで所与の百分率は、製品の合計重量に対する構成成分の重量百分率である。25~70重量%のEBN抽出物を、残りを占める糖と混合し、100%とする。好適な糖は、デキストリンまたはマルトデキストリンである。
【0102】
いくつかの可能な配合剤が以下のとおりに提供される。
1.70%のEBN抽出物製品および30%マルトデキストリン
2.60%のEBN抽出物製品および40%マルトデキストリン
3.50%のEBN抽出物製品および50%マルトデキストリン
4.25%のEBN抽出物製品および75%マルトデキストリン
【0103】
EBNから得た抽出物製品は、治療的または予防的利点を有し、医薬品にまたは予防対策として使用してもよい。抽出物は、皮膚の改善ならびにさまざまな皮膚病、脱水および炎症性皮膚の治療、免疫系の強化、老化の遅延、代謝の促進、ヒト視力の保護、血液循環の改善、血中コレステロールレベルの制御、心血管の健康状態の保護、細胞の賦活および再生、関節炎による不快感の緩和、ホルモンレベルの調整、炎症発生の低下、糖尿病の管理、変形性関節、皮膚退化、変性性神経系および脳の治療、ならびに腎不全の保護ために使用してもよい。
【0104】
In vitro細胞アッセイの結果
In vitro細胞アッセイ実験を行い、EBNから単離された製品の潜在的な治療効果を研究し、結果を本明細書でさらに検討した。
【0105】
図2は、抗ジンクフィンガーを使用して述べた方法から得られた4種類の濃度のEBN抽出物製品の、ベロ細胞の成長に対する効果を示す。3日目に、EBN抽出物もよって、ベロ細胞成長が用量依存的様式で促進されることが実証される。さらに、試験された最も高い濃度(3.3g/l)で、細胞成長は最大であり、かつEBN抽出物製品が添加されていない陰性対照よりも有意に高かった。これは、EBN製品は、ベロ細胞成長を促進することを示す。
【0106】
抗O-グリカンを使用して述べた方法から得られたEBN抽出物製品の、インフルエンザウィルスの表面に位置し、赤血球と相互作用する血球凝集素分子の能力に対する阻害効果を判定するために、血球凝集阻害(HAI)アッセイを行った。図3は、インフルエンザウィルスのH1N1株に関するHAIアッセイの結果を示す。インフルエンザウィルスと結合しない赤血球はウェルの底部に沈み、赤色ボタン様物質(button)として観察されることになる。インフルエンザウィルスへ結合した赤血球は格子を形成することになる。血球凝集は、試験された2つのウィルス濃度に関しては2倍希釈まで観察されなかった(縦列1~6では、点線より左のすべての縦列のプレートのウェルに点を認めることができる)。その希釈に対応するEBN抽出物濃度は0.5g/lである。言い換えれば、濃度0.5g/lの本EBN抽出物製品は、H1N1インフルエンザウィルスが赤血球へ結合するのを阻害することができる。
【0107】
図4は、H3N2ウィルス株を用いたHAIアッセイを示す。EBN抽出物製品の濃度は、16および8HAU/50μlのウィルス濃度で、それぞれ2.1g/lおよび1.0g/lである。
【0108】
図5は、抗O-グリカンを使用して述べた方法から得られたEBN抽出物製品の、ベロ細胞のインフルエンザウィルス感染の阻害に対する効果を示す。図5は、HAIを使用したウィルス力価の定量化を示す。以下の表1は、EBN抽出物製品が、H1N1インフルエンザウィルスの、ベロ細胞に対する感染力を低下させることを示す。
【0109】
【表1】
【0110】
抗体-O-グリカンを使用して述べた方法から得られたEBN抽出物製品の、H1N1ウィルス性活性阻害に対する効果を、2つの市販されているEBN溶液(コンペティターAおよびB)と比較した。EBN抽出溶液、コンペティターAおよびBの溶液中の可溶性タンパク質含量を、DC(商標)タンパク質アッセイ(Bio-Rad、カタログ番号5000116)によって、ウシ血清アルブミンをタンパク質標準として用いて判定した。3つの溶液の可溶性タンパク質含量は、それぞれ2021μg/mL、823μg/mLおよび628μg/mLであると判定された(表3)。したがって、本方法から得られたEBN抽出溶液を、各コンペティター溶液と一致するように希釈した。しかし、コンペティターA EBN溶液は細胞に対して細胞毒性が認められ、さらに試験を行わなかったが、コンペティターB EBN溶液はH1N1ウィルス阻害を示さなかった。したがって図6は、本発明のEBN抽出溶液の、コンペティターBのEBN溶液に対する比較を示す。
【0111】
【表2】
【0112】
図7は、抗N-グリカンおよび/または抗ヘリックスターンヘリックスを使用して述べた方法から得られたEBN抽出物製品の、細胞増殖中のヒト幹細胞増殖に対する効果を示す。図7のデータは、10%EBN抽出物および3つの成長因子の組合せが、4成長因子を使用した場合と同様のプラスの効果をヒト幹細胞増殖に対して有することを示す。10%EBMのみが表皮成長因子(EGF)と代わって、EGFの代替物として作用することができる。EGFは栄養補助食品として利用できず、かつPanら(Environ. Health Perspect., DOI: 10.1289/ehpl409200)は、ヒトEGFおよびパラベンは、乳がん細胞株の増殖を増加させる場合があることを示している。その結果、EBN抽出物は、ヒト間葉幹細胞(hMSC)活性化および軟骨細胞への分化に必要とされる内因性EGFを生成しない個体のための実行可能な代替物となるはずである。
【0113】
図8および図9は、コンペティターAおよびB製EBN抽出物と比較した、抗N-グリカンおよび/または抗ヘリックスターンヘリックスを使用して述べた方法から得られたEBN抽出物製品の、ヒト幹細胞増殖に対する効果を示す。EGFに代わるEBN抽出物の効果は、コンペティターAおよびB製品の両方と比較したEBN抽出物に関して、よりいっそう有意である。
【0114】
EBN抽出物の、インフルエンザに対する効果
材料および方法
1.抽出方法
図1を参照して、重量10~50gのEBN片を酵素溶液で5分間洗浄し、ダニを除去し、溶液を除去した。燕の巣を、亜硝酸還元酵素を含む水性溶液で洗浄し、溶液を除去した。汚れを落としたEBNを70℃で12時間乾燥した。乾燥しかつ汚れを落としたEBNをすりつぶし、メッシュに通してふるいにかけ(600μm孔径)、羽および異物を除去した。すりつぶしたEBNを蒸留水(25g/水1000ml)中に5℃で5時間維持し、次いで、121℃で10分間加熱滅菌した。
【0115】
懸濁液を、抗体を含む溶液270mlと20分間、続いて酸200mlと4℃で一晩混合した。抽出物をホモジナイザーでホモジネートし、100℃において加熱した。室温に冷却後、溶液のpHを、攪拌しながらアルカリを滴加することによって7.0に調整した。抗体結合化合物を、過剰な巨大ペプチドの天然グリコアミノグリカンおよび細胞転写調節因子を添加することによって抗体から放出した。その後、放出された化合物を、添加したペプチド、酵素および抗体から透析バッグを使用することによって単離した。
【0116】
抽出物を、コーンまたはトウモロコシ末端プロテアーゼを用い、pH6.5~9.0、45℃で1時間処理した。懸濁液を70℃で5分間加熱することによって、酵素を不活性化し、55℃超の温度で沈殿した酵素をろ過除去した。ろ液中の単離された製品を少なくとも24時間フリーズドライした。
【0117】
in vitroアッセイ試験用に、個別のフリーズドライEBN粉末を蒸留水に溶解し、濃度33.3g/lの原液を調製し、ガンマ線によって25kGryで1時間滅菌した。すべての不溶性物質を遠心分離によって8000RPMで除去した。原液を、必要になるまで-20℃で保管した。
【0118】
SF-EBN中の可溶性タンパク質濃度を、DC(商標)タンパク質アッセイ(Bio-Rad、カタログ番号5000116)によって判定し、タンパク質標準としてウシ血清アルブミンを使用した。オスモル濃度および濁度を、蒸気圧浸透圧計(VAPRO)およびマイクロプレートリーダー(Tecan Infinite M200)によってそれぞれ測定した。
【0119】
代替方法において、燕の巣を10分間洗浄し、70℃で12時間乾燥した。乾燥した燕の巣をすりつぶし、メッシュ(600μm孔径)に通してふるいにかけ、羽および異物を除去した。すりつぶした燕の巣を、蒸留水(25g/水1000ml)中に5℃で5時間維持し、次いで121℃で10分間加熱(滅菌)した。懸濁液を、抽出溶液270mlと20分間、続いて酸200mlと4℃で一晩混合した。抽出物をホモジナイザーでホモジネートし、100℃において加熱した。
【0120】
室温に冷却後、溶液のpHを、アルカリを攪拌しながら滴加することによって7.0に調整した。抽出物を、専売酵素(濃度は酵素規格による)を用い、pH6.5~9.0、45℃で1時間処理した。その後、懸濁液を70℃で5分間加熱することによって、酵素を不活性化した。処理した抽出物をフリーズドライした。In vitroアッセイ試験用に、フリーズドライEBN粉末を蒸留水に溶解し、濃度を33.3g/lとし、ガンマ線によって25kGryで1時間滅菌した。不溶性EBN抽出物を遠心分離によって8000RPMで除去した。-20℃で保管した可溶性分画(SF-EBN)をインフルエンザ中和試験用に使用した。
【0121】
SF-EBN中の可溶性タンパク質濃度を、DC(商標)タンパク質アッセイ(Bio-Rad、カタログ番号5000116)によって判定し、ウシ血清アルブミンをタンパク質標準として使用した。オスモル濃度および濁度を蒸気圧浸透圧計(VAPRO)およびマイクロプレートリーダー(Tecan Infinite M200)によってそれぞれ測定した。
【0122】
2.ベロ細胞バンクの増殖および作製
マスター細胞バンクから得た129代継代ベロ細胞(ATC CCCL-81)を解凍し、4mM L-グルタミン(Life Technologies、カタログ番号25030149)が補充された無血清培地、OptiPro無血清培地(Life Technologies、カタログ番号12309-019)で増殖させ、作業用細胞バンクを1バイアルあたり2×10個細胞のバイアル20個で得た。ベロ細胞をStemProAccutase(Life Technologies、カタログ番号A11105-01)を使用して4日おきに継代して、細胞分離し、得られた単一の細胞を1.5×10個細胞/cmの細胞密度で接種した。
【0123】
3.EBN抽出溶液のベロ細胞成長に対する効果
SF-EBNの、細胞成長に対する効果を試験するために、ベロ細胞を、3×10個細胞/ウェルで、24ウェル組織培養プレートのOptiPro無血清培地に播種した。播種してから1日後、SF-EBN(33.3g/l)を個別のウェルへ添加し、最終濃度を3.3g/l(10%v/v)、1.65g/l(5%v/v)、0.83g/l(2.5%v/v)、および0.33g/l(1%v/v)とした。細胞成長を4日にわたって毎日モニターした。細胞計数を、Nucleocounter NC-3000(Chemometec、Inc.)を使用し、推奨される手順に従って行った。
【0124】
4.ベロ細胞におけるインフルエンザウィルス増殖
2.5×10個細胞/cmで播種し、培養の2日後にサブコンフルエンスを得たベロ細胞に、インフルエンザA H1N1ウィルス(IVR-116、NIBSCコード06/108)およびH3N2ウィルス(A/Wisconsin/67/2005HGR、NIBSCコード06/112))を0.001~0.01のMOI(感染多重度)で感染させた。インフルエンザウィルスの活性化に使用するためのブタトリプシン(Sigma-Aldrich、カタログ番号T5266、1500BAEE単位/mg)を、脱イオン水および滅菌フィルターを用いて調製し、原液濃度を5mg/mlとした。ウィルス増幅中、トリプシンを、ウィルスを接種してから30分後に添加し、最終濃度を5μg/mlとした。ウィルスを含む培養上澄みを、2~3日後に採取し(80%細胞変性効果(CPE)が観察されたときに)、遠心分離し、細胞残屑を除去した。ウィルス原液(H1N1およびH3N2)を、-80℃で保管した。そのウィルス力価を、以下で述べるような血球凝集および組織培養感染用量(TCID50)アッセイを使用して定量化した。
【0125】
5.インフルエンザウィルス力価の定量化
ウィルス力価を、Chenら(BMC Biotechnol.、2011、11-81)に記載のような血球凝集アッセイおよび組織培養感染用量(TCID50)アッセイを使用して定量化した。血球凝集アッセイに関しては、4%ヒト赤血球(Siemens Healthcare Diagnostics)をダルベッコリン酸緩衝溶液(DPBS、Life Technologies、カタログ番号14190-250)で希釈し、0.75%細胞懸濁液を得た。次いで、希釈した赤血球懸濁液を、2倍連続希釈のウィルスおよび対照試料に添加した。赤血球の完全な血球凝集をもたらすウィルスの最大希釈を、HA滴定終点とみなす。HA力価(HAU/50μl)は完全な血球凝集を含む最後のウェルのウィルス希釈の逆数である(例えば、2の希釈は血球凝集単位(HAU/50μl)128となる)。
【0126】
TCID50アッセイを、10倍連続希釈ウィルス試料を、96ウェルプレートで培養されたベロ細胞へ、5μg/mlのブタトリプシンが補充されたOptiPro無血清培地を使用して添加することによって3回行った。プレートを5%CO雰囲気中、37℃で3日間インキュベートし、次いで、培養物を、光顕微鏡下で細胞変性効果に関して確認した。培養物の50%(組織培養感染用量の中央値、TCID50/ml)に細胞変性効果をもたらす懸濁液の希釈を、ReedおよびMuench(1938)の式に従って計算した。
【0127】
6.血球凝集阻害アッセイ
血球凝集阻害(HAI)アッセイを、既に記載されているように(Guo et al., 2006, Antiviral Res., 70, 140-146)96ウェルマイクロタイタープレートを使用して行った。Mg2+およびCa2+を含むDPBSを希釈緩衝液として使用した。ヒト赤血球を指標細胞として使用した。ウィルス懸濁液(それぞれDPBS0.05ml中、8HAU/50μlおよびDPBS0.05ml中、16HAU/50μl)を、希釈緩衝液で2倍連続希釈したEBN溶液を含む各ウェルへ添加した。DPBS中の0.75%(v/v)ヒトO型赤血球0.05mlを、プレートへ添加し、4℃で1時間インキュベートした。完全な血球凝集阻害を示す試料の最大希釈をEBN溶液のHAI力価として定義した。
【0128】
7.EBNのインフルエンザウィルス複製阻害に対する効果
ベロ細胞を、T25フラスコのOptiPro無血清培地で、3×10個細胞/cmの密度で播種して培養した。細胞培養物が90%培養密度に達したときに、培養物を、インフルエンザウィルスに0.001のMOIで感染させた。次いで、SF-EBNを添加し、最終濃度を2g/l(6.25%v/v)、0.26g/l(0.78%v/v)および0.03g/l(0.10%v/v)とした。2時間後、SF-EBN含有培養培地を除去した。細胞をOptiPro無血清培地で3回洗浄した。ブタトリプシンを添加し、最終濃度を5μg/mlとした。24時間後、培養物上澄みを収集した。SF-EBN抗インフルエンザ効果を、血球凝集およびTCID50アッセイによって検証した。
【0129】
8.ヒト間葉幹細胞(hMSC)細胞培養物
hMSC(8~9代継代)を、2400~2800個細胞/cmの密度で、T175cm細胞培養フラスコまたはNunc(商標)EasyFill(商標)Cell Factory(商標)Systemのいずれかの、最小必須培地α、10%ウシ胎仔血清(FBS)および1%ペニシリン-ストレプトマイシン(すべてGibco製)からなるMSC成長培地に蒔いた。培地を2~3日おきに交換した。0.25%トリプシン-EDTA(Gibco)を37℃で5分間使用して採取した場合、hMSCは約70%の培養密度で継代された。自動NucleoCounter(登録商標)NC-3000(Chemometec)を用いて生存率および細胞計数アッセイを行った。すべての培養物を、5%CO加湿インキュベーター(Thermo Scientific)中、37℃で維持した。
【0130】
9.細胞成長曲線用のhMSC細胞増殖
hMSCを、1000個細胞/cmの密度で、Nunclon(商標)Delta Surface24ウェルプレートに蒔いた。hMSCを0日目に播種し、4日間培養した。hMSCは、いずれの成長因子も含まないBTI専売無血清MSC成長培地のみで成長させ、GeneOasis Pte Ltd EBN抽出物を陰性対照として使用し、それは「成長因子不含」として既知であった。10ng/ml PDGF(Peprotech)、5ng/ml TGFβ-1(Peprotech)、および10ng/ml FGFβ(Gibco)が補充されたBTI専売無血清MSC成長培地で成長したhMSCをまた、陰性対照として使用し、また「3成長因子」と称した。10ng/ml PDGF(Peprotech)、5ng/ml TGFβ-1(Peprotech)、1ng/ml EGF(Peprotech)および10ng/ml FGFβ(Gibco)が補充されたBTI専売無血清MSC成長培地で成長したhMSCを、陽性対照として使用し、また「4成長因子」と称した。3成長因子(EGFを除く)が補充され、10%EBN(vol/vol)を含む無血清MSC成長培地で成長した、hMSCを試験し、それを「3成長因子+10%EBN」と称した。10%EBN(vol/vol)を1日目に添加した。細胞計数アッセイを、各条件に関して、自動NucleoCounter(登録商標)NC-3000(Chemometec)を用いて毎日3回行った。すべての培養物を5%CO加湿インキュベーター(Thermo Scientific)中、37℃で維持した。
【0131】
10.軟骨形成性分化
hMSCを、透明丸底超低接着96ウェルプレート(Corning)で、軟骨形成性分化用にマイクロマスペレットとして成長させた。ペレットを、1000rpmの遠心分離によって、室温(rt)で5分間、1ウェルあたり1ペレットあたり2×10hMSCを使用して形成した。これらを、DMEM-高グルコース(Gibco)、1mMピルビン酸ナトリウム(Gibco)、100nΜデキサメタゾン(Sigma)、0.1mM L-アスコルビン酸-2-ホスフェート(Sigma)、1%ITS+1(Sigma)、L-プロリン(Sigma)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)を含む軟骨形成性分化培地で培養した。EBN抽出物を含まない軟骨形成性分化培地のみで成長したペレットを陰性対照として使用した。異なる濃度(1.25%、2.5%、5%および10%vol/vol)のEBNを含む軟骨形成性分化培地で成長したペレットの試験を行った。100ng/ml BMP2が補充された軟骨形成性分化培地で成長したペレットを陽性対照として使用した。補充されたまたは補充されていない軟骨形成性培地を2~3日おきに交換した。
【0132】
11.DNA、GAGおよびコラーゲンII含量の評価
ペレット(1時点あたり1条件あたり少なくとも3個)を、リン酸緩衝食塩水(PBS)で1回すすいでから、すぐに-80℃で保管した。解凍後、ペレットを、DNAおよびGAG定量化の場合は0.125mg/mlパパインを用いて65℃で一晩消化するか、コラーゲンII評価の場合は、0.1mg/mlペプシンを用いて4℃で2晩消化し、続いて0.1mg/mlエラスターゼによって4℃で一晩消化するかのいずれかを行った。DNA定量化を、Quant-iT Picogreen dsDNA Assayを使用して行い、GAG測定を、Blyscan Sulfated Glycosaminoglycan Assay(Biocolor)を使用して行い、かつコラーゲンII定量化をELISAによってII型コラーゲン(Chondrex)に対して行い、すべて製造業者の取扱説明書に従った。すべての蛍光および可視光の読み取りはTecan Infinite M200を用いて行った。
【0133】
12.統計的分析
データを、統計ソフトウェアPrism6(GraphPad)を用いて分析した。異なる条件間での多重比較を、通常の一元配置分散分析(ANOVA)を使用し、テューキーの多重比較検定を用いて統計的に比較した。すべての統計的検定に関して、0.05未満のp値を有意とみなした。
【0134】
13.GeneOasis EBNのコンペティターA EBNおよびコンペティターB EBNとの比較
hMSCを、第9項で詳述されたような同様の方法で成長させた。hMSCを0日目に播種し、5日間培養した。2つのタイプのEBN抽出物の比較をコンペティターA EBNまたはコンペティターB EBNのいずれかに対して行った。片方のタイプの比較は、10%のコンペティターEBNをGeneOasis EBNに対して、タンパク質含量に関して正規化または対照化することによって比較することであった(すなわち、GeneOasis EBN対照は、各コンペティターのものと同じタンパク質量を有することになる)。測定されたように、10%のコンペティターA EBNは、4.39%のGeneOasis EBNと同等であった。したがって、3成長因子(EGFを除く)が補充され、4.39%GeneOasis EBN(vol/vol)を含むMSC成長培地を試験し、それを「GOA」と称した。3成長因子(EGFを除く)が補充され、10%コンペティターA EBN(vol/vol)を含むMSC成長培地を試験し、それを「3成長因子+10%コンペティターA」と称した。コンペティターBに関しても同様に、10%のコンペティターB EBNは、3.35%のGeneOasis EBNと同等であった。したがって、3成長因子(EGFを除く)が補充され、3.35%GeneOasis EBN(vol/vol)を含むMSC成長培地を試験し、それを「GOB」と称した。3成長因子(EGFを除く)が補充され、10%コンペティターB EBN(vol/vol)を含むMSC成長培地を試験し、それを「3成長因子+10%コンペティターB」と称した。もう片方のタイプの比較は、10%のコンペティターEBNをGeneOasis EBNと、体積に関して正規化または対照化することによって比較することであった(すなわち、10%GeneOasis EBNを、10%のコンペティターEBNと体積で比較することになる)。関連実験を実施し、かつデータ分析する間は、研究者にはコンペティターAおよびBの識別について知らせなかった。
【0135】
要約すると、新規なEBN抽出方法が述べられ、かつ本発明のEBN抽出物は、ヒト赤血球に対するインフルエンザAの血球凝集を阻害し、かつベロ細胞において感染力を低下できることが認められた。EBN抽出物(SF-EBN)の可溶性の分画を使用して、H1N1およびH3N2に関してそれぞれ最小濃度が0.5g/lおよび1g/LのEBNが血球凝集を阻害できることが示された。インフルエンザH1N1のin vitro感染力に関しては、SF-EBNを0.03から2g/lの間の濃度でベロ細胞培養物へ添加すると、SF-EBNが補充されていない培養物と比較したときに、得られたウィルス力価が少なくとも、1/2に減少したことが示される。市販のEBN溶液でも、インフルエンザAを用いた血球凝集阻害アッセイで試験を行った。これらのEBN溶液には、細胞に対して細胞毒性を有すること、または検出可能な抗インフルエンザウィルス活性をまったく示さないことのいずれかが認められた。結論として、GeneOasis専売EBN抽出物は、インフルエンザウィルス感染の予防において強力でありかつ優れている。
【0136】
結果
SF-EBNの、細胞およびインフルエンザウィルス複製に対する効果を試験する前に、以下の表1で示すように、標準としてウシ血清を用いた可溶性タンパク質アッセイを行った。これにより、さまざまな原料とEBN抽出方法との間のその後の比較に関する基準点が与えられることになる。
【0137】
【表3】
【0138】
EBNのベロ細胞成長に対する効果
4つのSF-EBN濃度(3.3g/l(10%v/v)、1.65g/l(5%v/v)、0.83g/l(2.5%v/v)、および0.33g/l(1%v/v))の、組織培養プレートのベロ細胞成長に対するそれらの効果に関して試験を行った。図2で示すように、SF-EBNは、SF-EBNを含まない対照と比較したときにベロ細胞成長を濃度依存的様式で促進した。3.3g/l SF-EBNの存在下で、ベロ細胞は、3日目にコンフルエントな細胞密度(約5×l0個細胞/cm)に達し、対照よりも早かった(4日目)。EGFが、ベロ細胞が成長に必要とする既知の必須成長因子である場合、成長促進は、EBN抽出物に認められるEGF様分子の存在と関連し得る。
【0139】
EBN抽出物の、インフルエンザウィルス感染に対する阻害効果
SF-EBNの、インフルエンザウィルスの表面に位置し、赤血球と相互作用する血球凝集素分子の能力に対する阻害効果を判定するために、インフルエンザウィルスの濃度を定量化するために通常使用されるアッセイである、血球凝集阻害(HAI)アッセイを行った。16および8HAU/50μlの2つのウィルス濃度を調製した(8HAU/50μlは、WHO検査手順(WHO laboratory procedure)に記載されているインフルエンザウィルスの血清学的検出のための推奨濃度である)。図3で示すように、2倍連続希釈のSF-EBN(縦列2~12)をヒト赤血球と混合してから、インフルエンザウィルスを、16および8ΗΑU/50μl(上述の)の2つの濃度で96ウェルプレートに添加した。インフルエンザウィルスと結合しない赤血球はウェルの底部に沈み、赤色ボタン様物質が形成されることになる。ウィルスが赤血球へ結合する場合、格子が形成された。血球凝集は、試験された2つのインフルエンザウィルス濃度に関しては2倍希釈まで観察されなかった。その希釈に対応するSF-EBN濃度は0.5g/lである。これは、この濃度0.5g/l(低くはないが)で、EBNが血球凝集を阻止することを示す。実験は、図4で示すように、インフルエンザH3N2を使用して繰り返した。高SF-EBN濃度の2.1g/Lおよび1.0g/Lがそれぞれ、濃度16および8HAU/50μlのH3N2ウィルスの存在下で、血球凝集を阻止するのに必要であった。これらの結果は、EBN抽出物はウィルス性血球凝集素分子と競合し(ヒト赤血球の血球凝集によって測定される)、インフルエンザウィルス感染力を低下させることができる(特異的抗血清の活性と同様である)ことを実証する。
【0140】
また、SF-EBNの、ベロ細胞のインフルエンザウィルス感染の阻害に対する効果を調べた。コンフルエントなベロ細胞に、インフルエンザウィルスH1N1(0.001のMOI)を、2g/l、0.26g/lおよび0.03g/lのSF-EBNの存在下で感染させた。感染してから24時間後、培養物上澄みを収集して、血球凝集アッセイを使用し、ウィルス力価を定量化した。以下の表2で示すように、0.03から2g/lの間のSF-EBN濃度は、H1N1ウィルス力価において約1/2までの減少を示した。これは、EBN抽出物が、インフルエンザウィルスの感染力(ベロ細胞を使用した)を低下させることができることを示す。
【0141】
【表4】
【0142】
コンペティター製SF-EBNの抗ウィルス効果に関する評価
2つの市販されているEBN溶液(コンペティターAおよびB)を抗ウィルス活性判定用に選択した。以下の表3で示すように、これらの市販のEBN溶液は、SF-EBNよりも低い可溶性タンパク質濃度およびオスモル濃度を示した。
【0143】
【表5】
【0144】
したがって、SF-EBNを水で希釈し、血球凝集アッセイ用の市販のEBN溶液の可溶性タンパク質濃度と一致させた。細胞に対して細胞毒性が認められたために、コンペティターA EBN溶液をアッセイから除外したが、もう一方のEBN溶液(コンペティターB)は成長阻害効果を示さなかった。血球凝集アッセイの結果を図6に示す。市販のEBN溶液(コンペティターB)は、赤血球のH1N1ウィルス介在性血球凝集の予防に活性をまったく示さないことが認められた。これはこの市販のEBN溶液が、SF-EBNで示されるような抗ウィルス特性を有さないことを示す。EBNが抗インフルエンザウィルス活性を有することは既知であるため、EBNを抽出する新規な方法が、抗ウィルス特性の予防において優れた特質によって開発されたことを結論づけることができる。
【0145】
EBN抽出物の、ヒト神経前駆細胞成長および分化に対する効果
1.材料および方法
1.1ヒト神経前駆物質の誘導および維持
ヒト神経前駆物質(hNPC)を、微小担体懸濁培養物を使用することによって、ヒト胚幹細胞株(hESC)HES-3から得た。その後、次いでhNPCをgeltrex被覆プレートで成長させ、EGF(20ng/ml、Peprotech)およびFGF(20ng/ml、Peprotech)が補充されたNPC培地(Neurobasal培地、1×NEAA、1×ペニシリン-ストレプトマイシン、2mM L-グルタミン、1×N2、ビタミンA不含1×B27、すべてLife Technologies製)を加えた。
【0146】
培地を1日おきに交換した。細胞が約80~90%の培養密度に達したときに、hNPCを、StemPro Accutase(Life Technologies)を使用して継代した。
【0147】
1.2ヒト神経前駆物質の細胞成長および細胞計数
hNPCを、2000個細胞/ウェルの密度で、geltrex被覆48ウェルプレートに蒔き、1週間成長させた。hNPCに、成長因子(EGF、FGF)およびGeneOasis Pte Ltd EBN抽出物の異なる組合せが補充されたNPC培地を加えた。次いで、細胞を溶解して、すべてのかつ生存可能な細胞を、DAPIを用いた核計数方法で、NucleoCounter NC3000(Chemometec)によって、製造業者の取扱説明書に従って計数した。
【0148】
1.3ヒト神経前駆物質の細胞増殖および分化
hNPCを、150,000個細胞/ウェルの密度で、geltrex被覆6ウェルプレートに蒔き、1週間および3週間成長させた。hNPCに、成長因子(EGF、FGF)およびGeneOasis Pte Ltd EBN抽出物の異なる組合せが補充されたNPC培地を加えた。培養期間中、細胞が80%の培養密度に達したときに、hNPCを継代した。タイムポイント(1週目および3週目)で、Tryple(Life Technologies)を用いて、hNPCを単一細胞に解離した。その後、細胞を固定し、透過性にし、細胞増殖用の一次抗体、Anti-Ki-67(1:200、BD Bioscience)および神経分化評価用の抗チューブリンβ3(1:1000、Covance)とインキュベートした。Alexa Fluor488(登録商標)ヤギ抗マウス(Life Technologies)を二次抗体として使用した。すべてのインキュベートを4℃で20分間行った。蛍光測定を、フローサイトメーター(GUAVA、Millipore)を使用して行った。FlowJoソフトウェアを使用して、フローサイトメトリーデータを分析した。
【0149】
2.結果
本研究において、EBN抽出物が、ヒト胚幹細胞(hESC)由来のhNPCの増殖を維持できるかどうかを調べた。図10で示すように、FGF-2およびEGFの存在下で培養されたhNPCは、7日後に最も高い細胞収率を示した。成長因子FGF-2と組み合わせたEBN抽出物は、FGF-2+EGFおよびFGF-2単独の条件でのものに匹敵する細胞成長プロファイルに達した。FGF-2を含まないEBNを添加すると、より低い細胞成長となっている。結果より、EBN抽出物は、hNPC増殖に関して最も重要な成長因子であるFGF2の代わりにはなれないことが示唆された。一方、EBNは、EBN抽出物の無血清培地におけるヒト間葉幹細胞の増殖に対する効果を記載した報告で示されているEGF様活性を含んでいたが、FGF-2の存在下、hNPCの短期間の増殖においてEBN抽出物の有益な効果は観察されなかった。
【0150】
増殖したhNPCのさらなる分析を行った。図10Bで示すように、FGF-2およびEBN抽出物を含むNPC培養物は、細胞増殖マーカー、ki67および神経分化マーカー、ベータ-チューブリンを発現する同様の細胞集団を示した。FGF-2を含まないEBN抽出物添加培養物は、低値のki67および高値のベータ-チューブリン細胞集団を示した。ki67の傾向は、EBN抽出物が、FGF-2なしでNPC成長を維持できなかった細胞成長研究と一致した。低値のki67発現レベルは、神経分化の発生時に細胞増殖の減少が生じるという既に報告されている現象と一致する。
【0151】
研究を3週間延長した。図11で示すように、FGF-2と組み合わせたEBN抽出物は、FGF-2のみを含む培養物よりも高収率を示すようであった。細胞増殖マーカーki67の発現は、すべての条件下で、初期培養物と同様であった。しかし、神経分化マーカー(ベータ-チューブリン)は、EBN抽出物が補充され、FGF-2を含まないhNPC培養物で有意に増加し、EGFおよびFGF-2の両方を含まない培養物と同様のレベルに到達したことが認められた。増加したベータチューブリン陽性細胞集団は神経細胞の発達を示した。これは、神経細胞形態(軸索伸張)が、高ベータ-チューブリン発現を伴う培養物で顕著となった図12に示す細胞形態画像と一致した。hNPCは、10%EBN抽出物+FGFの条件で成長したときに、その典型的な形態を維持した。
【0152】
最後に、本EBN抽出物はEGF様構成成分を含み、これがhNPCの長期培養に有益であり得ることができることが本発明者らの研究によって示される。考えられ得るさらなる研究のうちの1つは、EBN抽出物を画分し、EGF様構成成分をさらなる特性評価用に単離することである。
【0153】
EBN抽出物の、細胞培養物、細胞成長および軟骨形成性アッセイに対する効果
1.2.1.hMSC細胞培養
hMSC(8~9代継代)を、2400~2800個細胞/cmの密度で、T175cm細胞培養フラスコまたはNunc(商標)EasyFill(商標)Cell Factory(商標)Systemのいずれかの、最小必須培地α、10%ウシ胎仔血清(FBS)および1%ペニシリン-ストレプトマイシン(すべてGibco製)からなるMSC成長培地に蒔いた。培地を2~3日おきに交換した。0.25%トリプシン-EDTA(Gibco)を37℃で5分間使用して採取した場合、hMSCは約70%培養密度で継代された。自動NucleoCounter(登録商標)NC-3000(Chemometec)を用いて生存率および細胞計数アッセイを行った。すべての培養物を5%CO加湿インキュベーター(Thermo Scientific)中、37℃で維持した。ウェルプレート設計を示す以下の表を参照されたい。
【0154】
【表6】
【0155】
1.2.2.細胞成長曲線用のhMSC細胞増殖
hMSCを、1000個細胞/cmの密度で、Nunclon(商標)Delta Surface24ウェルプレートに蒔いた。hMSCを0日目に播種し、4日間培養した。hMSCは、いずれの成長因子も含まないBTI専売無血清MSC成長培地のみで成長させ、GeneOasis Pte Ltd EBN抽出物を陰性対照として使用し、それは「成長因子不含」として既知であった。10ng/ml PDGF(Peprotech)、5ng/ml TGFβ-1(Peprotech)、および10ng/ml FGFβ(Gibco)が補充されたBTI専売無血清MSC成長培地で成長したhMSCをまた、陰性対照として使用し、また「3成長因子」と称した。10ng/ml PDGF(Peprotech)、5ng/ml TGFβ-1(Peprotech)、1ng/ml EGF(Peprotech)および10ng/ml FGFβ(Gibco)が補充されたBTI専売無血清MSC成長培地で成長したhMSCを、陽性対照として使用し、また「4成長因子」と称した。3成長因子(EGFを除く)が補充され、10%EBN(vol/vol)を含む無血清MSC成長培地で成長したhMSCを試験し、それを「3成長因子+10%EBN」と称した。10%EBN(vol/vol)を1日目に添加した。細胞計数アッセイを、各条件に関して、自動NucleoCounter(登録商標)NC-3000(Chemometec)を用いて毎日3回行った。すべての培養物を5%CO加湿インキュベーター(Thermo Scientific)中、37℃で維持した。
【0156】
1.2.3.軟骨形成性分化
hMSCを、透明丸底超低接着96ウェルプレート(Corning)で、軟骨形成性分化用にマイクロマスペレットとして成長させた。ペレットを、1000rpmの遠心分離によって、室温(rtm)で5分間、1ウェルあたり1ペレットあたり2×10hMSCを使用して形成した。これらを、DMEM-高グルコース(Gibco)、1mMピルビン酸ナトリウム(Gibco)、100nΜデキサメタゾン(Sigma)、0.1mM L-アスコルビン酸-2-ホスフェート(Sigma)、1%ITS+1(Sigma)、L-プロリン(Sigma)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)を含む軟骨形成性分化培地で培養した。本発明の抽出物を含まない軟骨形成性分化培地のみで成長したペレットを陰性対照として使用した。異なる濃度(1.25%、2.5%、5%および10%vol/vol)のEBNを含む軟骨形成性分化培地で成長したペレットの試験を行った。100ng/ml BMP2が補充された軟骨形成性分化培地で成長したペレットを陽性対照として使用した。補充されたまたは補充されていない軟骨形成性培地を2~3日おきに交換した。
【0157】
1.2.4.DNA、GAGおよびコラーゲンII含量の評価
ペレット(1時点あたり1条件あたり少なくとも3個)を、リン酸緩衝食塩水(PBS)で1回すすいでから、すぐに-80℃で保管した。解凍後、ペレットを、DNAおよびGAG定量化の場合は0.125mg/mlパパインを用いて65℃で一晩消化するか、コラーゲンII評価の場合は、0.1mg/mlペプシンを用いて4℃で2晩消化し、続いて0.1mg/mlエラスターゼによって4℃で一晩消化するかのいずれかを行った。DNA定量化を、Quant-iT Picogreen dsDNA Assayを使用して行い、GAG測定を、Blyscan Sulfated Glycosaminoglycan Assay(Biocolor)を使用して行い、かつコラーゲンII定量化をELISAによってII型コラーゲン(Chondrex)に対して行い、すべて製造業者の取扱説明書に従った。すべての蛍光および可視光の読み取りはTecan Infinite M200を用いて行った。
1.2.5.統計的分析
【0158】
データを、統計ソフトウェアPrism6(GraphPad)を用いて分析した。異なる条件間での多重比較を、通常の一元配置分散分析(ANOVA)を使用し、テューキーの多重比較検定を用いて統計的に比較した。すべての統計的検定に関して、0.05未満のp値を有意とみなした。
【0159】
1.2.6.本GeneOasis EBNのコンペティターA EBNおよびコンペティターB EBNとの比較
hMSCを、1.2.2.で詳述されたような同様の方法で成長させた。hMSCを0日目に播種し、5日間培養した。2つのタイプの本EBN抽出物の比較をコンペティターA EBNまたはコンペティターB EBNのいずれかに対して行った。片方のタイプの比較は、10%のコンペティターEBNを本EBN抽出物に対して、タンパク質含量に関して正規化または対照化することによって比較することであった(すなわち本EBN抽出物対照は、各コンペティターのものと同じタンパク質量を有することになる)。測定されたように、10%のコンペティターA EBNは、4.39%の本EBN抽出物と同等である。したがって、3成長因子(EGFを除く)が補充され、4.39%GeneOasis EBN(vol/vol)を含むMSC成長培地を試験し、それを「GOA」と称した。3成長因子(EGFを除く)が補充され、10%コンペティターA EBN(vol/vol)を含むMSC成長培地を試験し、それを「3成長因子+10%コンペティターA」と称した。
【0160】
コンペティターBに関しても同様に、10%のコンペティターB EBNは、3.35%の本EBN抽出物と同等である。したがって、3成長因子(EGFを除く)が補充され、3.35%の本EBN抽出物(vol/vol)を含むMSC成長培地を試験し、それを「GOB」と称した。3成長因子(EGFを除く)が補充され、10%コンペティターB EBN(vol/vol)を含むMSC成長培地を試験し、それを「3成長因子+10%コンペティターB」と称した。もう片方のタイプの比較は、10%のコンペティターEBNを本EBN抽出物と、体積に関して正規化または対照化することによって比較することであった(すなわち、10%の本EBN抽出物を、10%のコンペティターEBNと体積で比較することになる)。関連実験を実施し、かつデータ分析する間は、研究者にはコンペティターAおよびBの識別について知らせない。
【0161】
以下の表は、本EBN抽出物を、コンペティターA EBNまたはコンペティターBのいずれかと比較する方法の要約である。
【0162】
【表7】
【0163】
2.結果
本EBN抽出物は、図13~24で示すように、in vitroで細胞増殖中のヒト幹細胞増殖における増加を誘発することができる。
【0164】
前述の発明を実施するための形態で述べたが、設計または構造の詳述に多くの変形または改良を、本発明から逸脱することなく行ってもよいことは関連技術における当業者であれば理解するであろう。

図1
図2
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図10A-B】
図11A-B】
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