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特許7104647エッジコンピューティングシステム、エッジホストコンピュータ装置、コンピュータプログラム及びエッジホスト決定方法
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  • 特許-エッジコンピューティングシステム、エッジホストコンピュータ装置、コンピュータプログラム及びエッジホスト決定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】エッジコンピューティングシステム、エッジホストコンピュータ装置、コンピュータプログラム及びエッジホスト決定方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 67/101 20220101AFI20220713BHJP
   G06F 9/50 20060101ALI20220713BHJP
   H04L 67/1008 20220101ALI20220713BHJP
【FI】
H04L67/101
G06F9/50 150D
H04L67/1008
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019031941
(22)【出願日】2019-02-25
(65)【公開番号】P2020137067
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-01-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度総務省「第5世代セルラネットワークを実現するミリ波エッジクラウドに関する研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】柚木 克夫
(72)【発明者】
【氏名】新保 宏之
【審査官】野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-173916(JP,A)
【文献】特開平11-232232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 67/00
G06F 9/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエッジホストコンピュータ装置を備え、前記エッジホストコンピュータ装置間が通信回線を介して接続されるエッジコンピューティングシステムにおいて、
前記エッジホストコンピュータ装置は、
特定サービスを提供する自エッジホストコンピュータ装置の計算負荷の状況に基づいて、前記特定サービスの要求を受けてから応答するまでの情報処理にかかる計算遅延時間を計算する計算負荷管理部と、
前記特定サービスを要求する端末装置と自エッジホストコンピュータ装置との間の通信にかかる通信遅延時間を計算する通信遅延管理部と、
前記計算遅延時間と前記通信遅延時間とに基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測し、前記特定サービスの応答遅延時間を他の前記エッジホストコンピュータ装置へ問合せし、前記他の前記エッジホストコンピュータ装置から回答された応答遅延時間と前記予測の結果の応答遅延時間とに基づいて前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置を決定し、決定した前記エッジホストコンピュータ装置が前記特定サービスを提供するための設定を行う制御部と、を備え
前記制御部は、他の前記エッジホストコンピュータ装置から問合せ対象サービスの応答遅延時間の問合せを受信した時に、前記計算負荷管理部が計算した当該問合せ対象サービスの最新の計算遅延時間及び前記通信遅延管理部が計算した当該問合せ対象サービスの最新の通信遅延時間に基づいて当該問合せ対象サービスの応答遅延時間を予測し、当該予測の結果である当該問合せ対象サービスの応答遅延時間を応答する、
エッジコンピューティングシステム。
【請求項2】
前記制御部は、他の前記エッジホストコンピュータ装置が前記特定サービスを提供するための設定を行った後に、前記予測の結果の応答遅延時間が所定の閾値以下に下がった場合、当該他の前記エッジホストコンピュータ装置が前記特定サービスを提供するための設定を解除し、自エッジホストコンピュータ装置が前記特定サービスを提供するための設定を行う、
請求項1に記載のエッジコンピューティングシステム。
【請求項3】
複数のエッジホストコンピュータ装置を備え、前記エッジホストコンピュータ装置間が通信回線を介して接続されるエッジコンピューティングシステムの前記エッジホストコンピュータ装置であり、
特定サービスを提供する自エッジホストコンピュータ装置の計算負荷の状況に基づいて、前記特定サービスの要求を受けてから応答するまでの情報処理にかかる計算遅延時間を計算する計算負荷管理部と、
前記特定サービスを要求する端末装置と自エッジホストコンピュータ装置との間の通信にかかる通信遅延時間を計算する通信遅延管理部と、
前記計算遅延時間と前記通信遅延時間とに基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測し、前記特定サービスの応答遅延時間を他の前記エッジホストコンピュータ装置へ問合せし、前記他の前記エッジホストコンピュータ装置から回答された応答遅延時間と前記予測の結果の応答遅延時間とに基づいて前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置を決定し、決定した前記エッジホストコンピュータ装置が前記特定サービスを提供するための設定を行う制御部と、
を備え
前記制御部は、他の前記エッジホストコンピュータ装置から問合せ対象サービスの応答遅延時間の問合せを受信した時に、前記計算負荷管理部が計算した当該問合せ対象サービスの最新の計算遅延時間及び前記通信遅延管理部が計算した当該問合せ対象サービスの最新の通信遅延時間に基づいて当該問合せ対象サービスの応答遅延時間を予測し、当該予測の結果である当該問合せ対象サービスの応答遅延時間を応答する、
エッジホストコンピュータ装置。
【請求項4】
複数のエッジホストコンピュータ装置を備え、前記エッジホストコンピュータ装置間が通信回線を介して接続されるエッジコンピューティングシステムの前記エッジホストコンピュータ装置に、
特定サービスを提供する自エッジホストコンピュータ装置の計算負荷の状況に基づいて、前記特定サービスの要求を受けてから応答するまでの情報処理にかかる計算遅延時間を計算する計算負荷管理ステップと、
前記特定サービスを要求する端末装置と自エッジホストコンピュータ装置との間の通信にかかる通信遅延時間を計算する通信遅延管理ステップと、
前記計算遅延時間と前記通信遅延時間とに基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測し、前記特定サービスの応答遅延時間を他の前記エッジホストコンピュータ装置へ問合せし、前記他の前記エッジホストコンピュータ装置から回答された応答遅延時間と前記予測の結果の応答遅延時間とに基づいて前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置を決定し、決定した前記エッジホストコンピュータ装置が前記特定サービスを提供するための設定を行う制御ステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記エッジホストコンピュータ装置に、
他の前記エッジホストコンピュータ装置から問合せ対象サービスの応答遅延時間の問合せを受信した時に、前記計算負荷管理ステップで計算した当該問合せ対象サービスの最新の計算遅延時間及び前記通信遅延管理ステップで計算した当該問合せ対象サービスの最新の通信遅延時間に基づいて当該問合せ対象サービスの応答遅延時間を予測し、当該予測の結果である当該問合せ対象サービスの応答遅延時間を応答する応答遅延時間応答ステップ、
をさらに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項5】
管理装置と複数のエッジホストコンピュータ装置とを備え、前記エッジホストコンピュータ装置間が通信回線を介して接続されるエッジコンピューティングシステムにおいて、
前記エッジホストコンピュータ装置は、
特定サービスを提供する自エッジホストコンピュータ装置の計算負荷の状況に基づいて、前記特定サービスの要求を受けてから応答するまでの情報処理にかかる計算遅延時間を計算する計算負荷管理部と、
前記特定サービスを要求する端末装置と自エッジホストコンピュータ装置との間の通信にかかる通信遅延時間を計算する通信遅延管理部と、
前記計算遅延時間と前記通信遅延時間とに基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測する制御部と、を備え、
前記管理装置は、
各前記エッジホストコンピュータ装置から前記特定サービスの応答遅延時間を取得し、前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置の変更を要求する変更要求元の前記エッジホストコンピュータ装置から取得した応答遅延時間と前記変更要求元以外の前記エッジホストコンピュータ装置から取得した応答遅延時間とに基づいて前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置の変更を行うか否かを判断し、当該判断の結果に基づいて、前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置の変更又は継続の指示を該当の前記エッジホストコンピュータ装置へ行う管理制御部を備え
前記制御部は、前記管理装置から前記特定サービスの応答遅延時間の問合せを受信した時に、前記計算負荷管理部が計算した前記特定サービスの最新の計算遅延時間及び前記通信遅延管理部が計算した前記特定サービスの最新の通信遅延時間に基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測し、当該予測の結果である前記特定サービスの応答遅延時間を応答する、
エッジコンピューティングシステム。
【請求項6】
管理装置と複数のエッジホストコンピュータ装置とを備え、前記エッジホストコンピュータ装置間が通信回線を介して接続されるエッジコンピューティングシステムの前記エッジホストコンピュータ装置であり、
特定サービスを提供する自エッジホストコンピュータ装置の計算負荷の状況に基づいて、前記特定サービスの要求を受けてから応答するまでの情報処理にかかる計算遅延時間を計算する計算負荷管理部と、
前記特定サービスを要求する端末装置と自エッジホストコンピュータ装置との間の通信にかかる通信遅延時間を計算する通信遅延管理部と、
前記計算遅延時間と前記通信遅延時間とに基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記予測の結果の応答遅延時間を前記管理装置へ通知し、前記管理装置からの前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置の変更又は継続の指示に従って前記特定サービスを提供するための設定を行う、
エッジホストコンピュータ装置であって、
前記制御部は、前記管理装置から前記特定サービスの応答遅延時間の問合せを受信した時に、前記計算負荷管理部が計算した前記特定サービスの最新の計算遅延時間及び前記通信遅延管理部が計算した前記特定サービスの最新の通信遅延時間に基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測し、当該予測の結果である前記特定サービスの応答遅延時間を応答する、
エッジホストコンピュータ装置。
【請求項7】
管理装置と複数のエッジホストコンピュータ装置とを備え、前記エッジホストコンピュータ装置間が通信回線を介して接続されるエッジコンピューティングシステムの前記エッジホストコンピュータ装置に、
特定サービスを提供する自エッジホストコンピュータ装置の計算負荷の状況に基づいて、前記特定サービスの要求を受けてから応答するまでの情報処理にかかる計算遅延時間を計算する計算負荷管理ステップと、
前記特定サービスを要求する端末装置と自エッジホストコンピュータ装置との間の通信にかかる通信遅延時間を計算する通信遅延管理ステップと、
前記計算遅延時間と前記通信遅延時間とに基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測する制御ステップと、
前記予測の結果の応答遅延時間を前記管理装置へ通知する通知ステップと、
前記管理装置からの前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置の変更又は継続の指示に従って前記特定サービスを提供するための設定を行う設定ステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記制御ステップは、前記管理装置から前記特定サービスの応答遅延時間の問合せを受信した時に、前記計算負荷管理ステップで計算した前記特定サービスの最新の計算遅延時間及び前記通信遅延管理ステップで計算した前記特定サービスの最新の通信遅延時間に基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測する、
コンピュータプログラム。
【請求項8】
複数のエッジホストコンピュータ装置を備え、前記エッジホストコンピュータ装置間が通信回線を介して接続されるエッジコンピューティングシステムのエッジホスト決定方法であり、
前記エッジホストコンピュータ装置が、特定サービスを提供する自己の計算負荷の状況に基づいて、前記特定サービスの要求を受けてから応答するまでの情報処理にかかる計算遅延時間を計算する計算負荷管理ステップと、
前記エッジホストコンピュータ装置が、前記特定サービスを要求する端末装置と自エッジホストコンピュータ装置との間の通信にかかる通信遅延時間を計算する通信遅延管理ステップと、
前記エッジホストコンピュータ装置が、前記計算遅延時間と前記通信遅延時間とに基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測し、前記特定サービスの応答遅延時間を他の前記エッジホストコンピュータ装置へ問合せし、前記他の前記エッジホストコンピュータ装置から回答された応答遅延時間と前記予測の結果の応答遅延時間とに基づいて前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置を決定し、決定した前記エッジホストコンピュータ装置が前記特定サービスを提供するための設定を行う制御ステップと、
を含むエッジホスト決定方法であって、
前記エッジホストコンピュータ装置が、他の前記エッジホストコンピュータ装置から問合せ対象サービスの応答遅延時間の問合せを受信した時に、前記計算負荷管理ステップで計算した当該問合せ対象サービスの最新の計算遅延時間及び前記通信遅延管理ステップで計算した当該問合せ対象サービスの最新の通信遅延時間に基づいて当該問合せ対象サービスの応答遅延時間を予測し、当該予測の結果である当該問合せ対象サービスの応答遅延時間を応答する応答遅延時間応答ステップ、
をさらに含むエッジホスト決定方法。
【請求項9】
管理装置と複数のエッジホストコンピュータ装置とを備え、前記エッジホストコンピュータ装置間が通信回線を介して接続されるエッジコンピューティングシステムのエッジホスト決定方法であり、
前記エッジホストコンピュータ装置が、特定サービスを提供する自己の計算負荷の状況に基づいて、前記特定サービスの要求を受けてから応答するまでの情報処理にかかる計算遅延時間を計算する計算負荷管理ステップと、
前記エッジホストコンピュータ装置が、前記特定サービスを要求する端末装置と自エッジホストコンピュータ装置との間の通信にかかる通信遅延時間を計算する通信遅延管理ステップと、
前記エッジホストコンピュータ装置が、前記計算遅延時間と前記通信遅延時間とに基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測する制御ステップと、
前記管理装置が、各前記エッジホストコンピュータ装置から前記特定サービスの応答遅延時間を取得し、前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置の変更を要求する変更要求元の前記エッジホストコンピュータ装置から取得した応答遅延時間と前記変更要求元以外の前記エッジホストコンピュータ装置から取得した応答遅延時間とに基づいて前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置の変更を行うか否かを判断し、当該判断の結果に基づいて、前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置の変更又は継続の指示を該当の前記エッジホストコンピュータ装置へ行う管理制御ステップと、
を含むエッジホスト決定方法であって、
前記エッジホストコンピュータ装置は、制御ステップにおいて、前記管理装置から前記特定サービスの応答遅延時間の問合せを受信した時に、前記計算負荷管理ステップで計算した前記特定サービスの最新の計算遅延時間及び前記通信遅延管理ステップで計算した前記特定サービスの最新の通信遅延時間に基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測し、当該予測の結果である前記特定サービスの応答遅延時間を応答する、
エッジホスト決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッジコンピューティングシステム、エッジホストコンピュータ装置コンピュータプログラム及びエッジホスト決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のコンピュータ装置の利用技術として例えば特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1に記載の従来技術では、ネットワークの所定区間に流れるパケットを複製した複製パケットを取得し、クライアントによるアクセス先の仮想マシンのクライアントへの応答時間を複製パケットから算出し、算出した応答時間が所定時間を超えた第1仮想マシンが稼働する第1物理マシンとは別の第2物理マシンで稼働している第2仮想マシンへ、第1仮想マシンへのパケットを転送する制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-110359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来技術では、クライアントとパケット転送後の物理マシンとの間の通信遅延時間がクライアントとパケット転送前の物理マシンとの間の通信遅延時間よりも長いと、クライアントへの応答時間がパケット転送前よりも長くなって通信品質が劣化する可能性があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、複数のコンピュータ装置の中から端末装置にサービスを提供するコンピュータ装置を決定する際、コンピュータ装置における計算遅延時間及び端末装置とコンピュータ装置との間の通信遅延時間に適応することを図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、複数のエッジホストコンピュータ装置を備え、前記エッジホストコンピュータ装置間が通信回線を介して接続されるエッジコンピューティングシステムにおいて、前記エッジホストコンピュータ装置は、特定サービスを提供する自エッジホストコンピュータ装置の計算負荷の状況に基づいて、前記特定サービスの要求を受けてから応答するまでの情報処理にかかる計算遅延時間を計算する計算負荷管理部と、前記特定サービスを要求する端末装置と自エッジホストコンピュータ装置との間の通信にかかる通信遅延時間を計算する通信遅延管理部と、前記計算遅延時間と前記通信遅延時間とに基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測し、前記特定サービスの応答遅延時間を他の前記エッジホストコンピュータ装置へ問合せし、前記他の前記エッジホストコンピュータ装置から回答された応答遅延時間と前記予測の結果の応答遅延時間とに基づいて前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置を決定し、決定した前記エッジホストコンピュータ装置が前記特定サービスを提供するための設定を行う制御部と、を備え、前記制御部は、他の前記エッジホストコンピュータ装置から問合せ対象サービスの応答遅延時間の問合せを受信した時に、前記計算負荷管理部が計算した当該問合せ対象サービスの最新の計算遅延時間及び前記通信遅延管理部が計算した当該問合せ対象サービスの最新の通信遅延時間に基づいて当該問合せ対象サービスの応答遅延時間を予測し、当該予測の結果である当該問合せ対象サービスの応答遅延時間を応答する、エッジコンピューティングシステムである。
(2)本発明の一態様は、前記制御部は、他の前記エッジホストコンピュータ装置が前記特定サービスを提供するための設定を行った後に、前記予測の結果の応答遅延時間が所定の閾値以下に下がった場合、当該他の前記エッジホストコンピュータ装置が前記特定サービスを提供するための設定を解除し、自エッジホストコンピュータ装置が前記特定サービスを提供するための設定を行う、上記(1)のエッジコンピューティングシステムである。
【0007】
(3)本発明の一態様は、複数のエッジホストコンピュータ装置を備え、前記エッジホストコンピュータ装置間が通信回線を介して接続されるエッジコンピューティングシステムの前記エッジホストコンピュータ装置であり、特定サービスを提供する自エッジホストコンピュータ装置の計算負荷の状況に基づいて、前記特定サービスの要求を受けてから応答するまでの情報処理にかかる計算遅延時間を計算する計算負荷管理部と、前記特定サービスを要求する端末装置と自エッジホストコンピュータ装置との間の通信にかかる通信遅延時間を計算する通信遅延管理部と、前記計算遅延時間と前記通信遅延時間とに基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測し、前記特定サービスの応答遅延時間を他の前記エッジホストコンピュータ装置へ問合せし、前記他の前記エッジホストコンピュータ装置から回答された応答遅延時間と前記予測の結果の応答遅延時間とに基づいて前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置を決定し、決定した前記エッジホストコンピュータ装置が前記特定サービスを提供するための設定を行う制御部と、を備え、前記制御部は、他の前記エッジホストコンピュータ装置から問合せ対象サービスの応答遅延時間の問合せを受信した時に、前記計算負荷管理部が計算した当該問合せ対象サービスの最新の計算遅延時間及び前記通信遅延管理部が計算した当該問合せ対象サービスの最新の通信遅延時間に基づいて当該問合せ対象サービスの応答遅延時間を予測し、当該予測の結果である当該問合せ対象サービスの応答遅延時間を応答する、エッジホストコンピュータ装置である。
【0008】
(4)本発明の一態様は、複数のエッジホストコンピュータ装置を備え、前記エッジホストコンピュータ装置間が通信回線を介して接続されるエッジコンピューティングシステムの前記エッジホストコンピュータ装置に、特定サービスを提供する自エッジホストコンピュータ装置の計算負荷の状況に基づいて、前記特定サービスの要求を受けてから応答するまでの情報処理にかかる計算遅延時間を計算する計算負荷管理ステップと、前記特定サービスを要求する端末装置と自エッジホストコンピュータ装置との間の通信にかかる通信遅延時間を計算する通信遅延管理ステップと、前記計算遅延時間と前記通信遅延時間とに基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測し、前記特定サービスの応答遅延時間を他の前記エッジホストコンピュータ装置へ問合せし、前記他の前記エッジホストコンピュータ装置から回答された応答遅延時間と前記予測の結果の応答遅延時間とに基づいて前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置を決定し、決定した前記エッジホストコンピュータ装置が前記特定サービスを提供するための設定を行う制御ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムであって、前記エッジホストコンピュータ装置に、他の前記エッジホストコンピュータ装置から問合せ対象サービスの応答遅延時間の問合せを受信した時に、前記計算負荷管理ステップで計算した当該問合せ対象サービスの最新の計算遅延時間及び前記通信遅延管理ステップで計算した当該問合せ対象サービスの最新の通信遅延時間に基づいて当該問合せ対象サービスの応答遅延時間を予測し、当該予測の結果である当該問合せ対象サービスの応答遅延時間を応答する応答遅延時間応答ステップ、をさらに実行させるためのコンピュータプログラムである。
【0009】
(5)本発明の一態様は、管理装置と複数のエッジホストコンピュータ装置とを備え、前記エッジホストコンピュータ装置間が通信回線を介して接続されるエッジコンピューティングシステムにおいて、前記エッジホストコンピュータ装置は、特定サービスを提供する自エッジホストコンピュータ装置の計算負荷の状況に基づいて、前記特定サービスの要求を受けてから応答するまでの情報処理にかかる計算遅延時間を計算する計算負荷管理部と、前記特定サービスを要求する端末装置と自エッジホストコンピュータ装置との間の通信にかかる通信遅延時間を計算する通信遅延管理部と、前記計算遅延時間と前記通信遅延時間とに基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測する制御部と、を備え、前記管理装置は、各前記エッジホストコンピュータ装置から前記特定サービスの応答遅延時間を取得し、前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置の変更を要求する変更要求元の前記エッジホストコンピュータ装置から取得した応答遅延時間と前記変更要求元以外の前記エッジホストコンピュータ装置から取得した応答遅延時間とに基づいて前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置の変更を行うか否かを判断し、当該判断の結果に基づいて、前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置の変更又は継続の指示を該当の前記エッジホストコンピュータ装置へ行う管理制御部を備え、前記制御部は、前記管理装置から前記特定サービスの応答遅延時間の問合せを受信した時に、前記計算負荷管理部が計算した前記特定サービスの最新の計算遅延時間及び前記通信遅延管理部が計算した前記特定サービスの最新の通信遅延時間に基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測し、当該予測の結果である前記特定サービスの応答遅延時間を応答する、エッジコンピューティングシステムである。
【0010】
(6)本発明の一態様は、管理装置と複数のエッジホストコンピュータ装置とを備え、前記エッジホストコンピュータ装置間が通信回線を介して接続されるエッジコンピューティングシステムの前記エッジホストコンピュータ装置であり、特定サービスを提供する自エッジホストコンピュータ装置の計算負荷の状況に基づいて、前記特定サービスの要求を受けてから応答するまでの情報処理にかかる計算遅延時間を計算する計算負荷管理部と、前記特定サービスを要求する端末装置と自エッジホストコンピュータ装置との間の通信にかかる通信遅延時間を計算する通信遅延管理部と、前記計算遅延時間と前記通信遅延時間とに基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測する制御部と、を備え、前記制御部は、前記予測の結果の応答遅延時間を前記管理装置へ通知し、前記管理装置からの前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置の変更又は継続の指示に従って前記特定サービスを提供するための設定を行う、エッジホストコンピュータ装置であって、前記制御部は、前記管理装置から前記特定サービスの応答遅延時間の問合せを受信した時に、前記計算負荷管理部が計算した前記特定サービスの最新の計算遅延時間及び前記通信遅延管理部が計算した前記特定サービスの最新の通信遅延時間に基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測し、当該予測の結果である前記特定サービスの応答遅延時間を応答する、エッジホストコンピュータ装置である。
【0011】
(7)本発明の一態様は、管理装置と複数のエッジホストコンピュータ装置とを備え、前記エッジホストコンピュータ装置間が通信回線を介して接続されるエッジコンピューティングシステムの前記管理装置であり、各前記エッジホストコンピュータ装置から特定サービスの応答遅延時間を取得し、前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置の変更を要求する変更要求元の前記エッジホストコンピュータ装置から取得した応答遅延時間と前記変更要求元以外の前記エッジホストコンピュータ装置から取得した応答遅延時間とに基づいて前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置の変更を行うか否かを判断し、当該判断の結果に基づいて、前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置の変更又は継続の指示を該当の前記エッジホストコンピュータ装置へ行う管理制御部、を備える管理装置である。
【0012】
本発明の一態様は、管理装置と複数のエッジホストコンピュータ装置とを備え、前記エッジホストコンピュータ装置間が通信回線を介して接続されるエッジコンピューティングシステムの前記エッジホストコンピュータ装置に、特定サービスを提供する自エッジホストコンピュータ装置の計算負荷の状況に基づいて、前記特定サービスの要求を受けてから応答するまでの情報処理にかかる計算遅延時間を計算する計算負荷管理ステップと、前記特定サービスを要求する端末装置と自エッジホストコンピュータ装置との間の通信にかかる通信遅延時間を計算する通信遅延管理ステップと、前記計算遅延時間と前記通信遅延時間とに基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測する制御ステップと、前記予測の結果の応答遅延時間を前記管理装置へ通知する通知ステップと、前記管理装置からの前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置の変更又は継続の指示に従って前記特定サービスを提供するための設定を行う設定ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムであって、前記制御ステップは、前記管理装置から前記特定サービスの応答遅延時間の問合せを受信した時に、前記計算負荷管理ステップで計算した前記特定サービスの最新の計算遅延時間及び前記通信遅延管理ステップで計算した前記特定サービスの最新の通信遅延時間に基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測する、コンピュータプログラムである。
【0013】
(9)本発明の一態様は、管理装置と複数のエッジホストコンピュータ装置とを備え、前記エッジホストコンピュータ装置間が通信回線を介して接続されるエッジコンピューティングシステムの前記管理装置のコンピュータに、各前記エッジホストコンピュータ装置から特定サービスの応答遅延時間を取得し、前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置の変更を要求する変更要求元の前記エッジホストコンピュータ装置から取得した応答遅延時間と前記変更要求元以外の前記エッジホストコンピュータ装置から取得した応答遅延時間とに基づいて前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置の変更を行うか否かを判断し、当該判断の結果に基づいて、前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置の変更又は継続の指示を該当の前記エッジホストコンピュータ装置へ行う管理制御ステップ、を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【0014】
本発明の一態様は、複数のエッジホストコンピュータ装置を備え、前記エッジホストコンピュータ装置間が通信回線を介して接続されるエッジコンピューティングシステムのエッジホスト決定方法であり、前記エッジホストコンピュータ装置が、特定サービスを提供する自己の計算負荷の状況に基づいて、前記特定サービスの要求を受けてから応答するまでの情報処理にかかる計算遅延時間を計算する計算負荷管理ステップと、前記エッジホストコンピュータ装置が、前記特定サービスを要求する端末装置と自エッジホストコンピュータ装置との間の通信にかかる通信遅延時間を計算する通信遅延管理ステップと、前記エッジホストコンピュータ装置が、前記計算遅延時間と前記通信遅延時間とに基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測し、前記特定サービスの応答遅延時間を他の前記エッジホストコンピュータ装置へ問合せし、前記他の前記エッジホストコンピュータ装置から回答された応答遅延時間と前記予測の結果の応答遅延時間とに基づいて前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置を決定し、決定した前記エッジホストコンピュータ装置が前記特定サービスを提供するための設定を行う制御ステップと、を含むエッジホスト決定方法であって、前記エッジホストコンピュータ装置が、他の前記エッジホストコンピュータ装置から問合せ対象サービスの応答遅延時間の問合せを受信した時に、前記計算負荷管理ステップで計算した当該問合せ対象サービスの最新の計算遅延時間及び前記通信遅延管理ステップで計算した当該問合せ対象サービスの最新の通信遅延時間に基づいて当該問合せ対象サービスの応答遅延時間を予測し、当該予測の結果である当該問合せ対象サービスの応答遅延時間を応答する応答遅延時間応答ステップ、をさらに含むエッジホスト決定方法である。
本発明の一態様は、管理装置と複数のエッジホストコンピュータ装置とを備え、前記エッジホストコンピュータ装置間が通信回線を介して接続されるエッジコンピューティングシステムのエッジホスト決定方法であり、前記エッジホストコンピュータ装置が、特定サービスを提供する自己の計算負荷の状況に基づいて、前記特定サービスの要求を受けてから応答するまでの情報処理にかかる計算遅延時間を計算する計算負荷管理ステップと、前記エッジホストコンピュータ装置が、前記特定サービスを要求する端末装置と自エッジホストコンピュータ装置との間の通信にかかる通信遅延時間を計算する通信遅延管理ステップと、前記エッジホストコンピュータ装置が、前記計算遅延時間と前記通信遅延時間とに基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測する制御ステップと、前記管理装置が、各前記エッジホストコンピュータ装置から前記特定サービスの応答遅延時間を取得し、前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置の変更を要求する変更要求元の前記エッジホストコンピュータ装置から取得した応答遅延時間と前記変更要求元以外の前記エッジホストコンピュータ装置から取得した応答遅延時間とに基づいて前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置の変更を行うか否かを判断し、当該判断の結果に基づいて、前記特定サービスを提供する前記エッジホストコンピュータ装置の変更又は継続の指示を該当の前記エッジホストコンピュータ装置へ行う管理制御ステップと、を含むエッジホスト決定方法であって、前記エッジホストコンピュータ装置は、制御ステップにおいて、前記管理装置から前記特定サービスの応答遅延時間の問合せを受信した時に、前記計算負荷管理ステップで計算した前記特定サービスの最新の計算遅延時間及び前記通信遅延管理ステップで計算した前記特定サービスの最新の通信遅延時間に基づいて前記特定サービスの応答遅延時間を予測し、当該予測の結果である前記特定サービスの応答遅延時間を応答する、エッジホスト決定方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数のコンピュータ装置の中から端末装置にサービスを提供するコンピュータ装置を決定する際、コンピュータ装置における計算遅延時間及び端末装置とコンピュータ装置との間の通信遅延時間に適応することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係るエッジコンピューティングシステムの構成例を示すブロック図である。
図2】一実施形態に係るエッジホスト管理部の構成例を示すブロック図である。
図3】一実施形態に係るエッジホスト決定方法の例を示すシーケンス図である。
図4】一実施形態に係るエッジコンピューティングシステムの構成例を示すブロック図である。
図5】一実施形態に係るエッジホスト決定方法の例を示すシーケンス図である。
図6】一実施形態に係るエッジホスト装置のネットワークトポロジの構成例を示す図である。
図7】一実施形態に係るエッジホスト装置のネットワークトポロジの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るエッジコンピューティングシステムの構成例を示すブロック図である。図1において、エッジコンピューティングシステム1は、2台のエッジホストコンピュータ装置(以下、エッジホスト装置と称する)10-1,10-2を備える。エッジホスト装置10-1は、通信ネットワーク17-1に接続されている。エッジホスト装置10-2は、通信ネットワーク17-2に接続されている。通信ネットワーク17-1と通信ネットワーク17-2は、接続回線20で接続されている。接続回線20は、通信ネットワーク17-1と通信ネットワーク17-2とを接続する通信回線である。エッジホスト装置10-1とエッジホスト装置10-2との間は、接続回線20を含む通信回線を介して接続される。
【0019】
エッジホスト装置10-1は、通信ネットワーク17-1を介して、無線通信ネットワーク3の基地局BSと通信を行う。エッジホスト装置10-2は、通信ネットワーク17-2、接続回線20及び通信ネットワーク17-1を介して、無線通信ネットワーク3の基地局BSと通信を行う。無線通信ネットワーク3は、A地域に設けられたものであって、A地域に存在する端末装置UEに無線通信サービスを提供する。端末装置UEは、基地局BSと無線により通信を行う。端末装置UEは、基地局BSを介して、各エッジホスト装置10-1,10-2と通信を行う。
【0020】
なお、図1の構成例では、端末装置UEが無線通信を行うが、端末装置UEが有線通信を行うものであってもよい。例えば、端末装置UEは、有線通信によりA地域に設けられた有線通信ネットワークの基地局に接続し、当該基地局を介して各エッジホスト装置10-1,10-2と通信を行ってもよい。
【0021】
以下、エッジホスト装置10-1,10-2を特に区別しないときは、エッジホスト装置10と称する。
【0022】
エッジホスト装置10は、特定サービスを端末装置UEに提供するためのソフトウェアによる情報処理を実行するコンピュータ装置である。1台のエッジホスト装置10は、1つの特定サービスを提供するものであってもよく、又は、複数の特定サービスを提供するものであってもよい。なお、図1の構成例では、エッジホスト装置10として2台のエッジホスト装置10-1,10-2を設けたが、3台以上のエッジホスト装置10を設けてエッジホスト装置10間を通信回線を介して接続してもよい。
【0023】
図1に示されるエッジホスト装置10は、エッジホスト管理部11と、仮想マシン(VM)12,13と、仮想スイッチ14と、ルーティング管理制御部15と、記憶部16とを備える。エッジホスト管理部11は、自エッジホスト装置10の管理を行う。
【0024】
仮想マシン12,13は、自エッジホスト装置10のコンピュータハードウェア資源を利用して構成される仮想的なコンピュータである。各仮想マシン12,13は、特定サービスを端末装置UEに提供するためのソフトウェアを実行する。各仮想マシン12,13が実行するソフトウェアは、同じ特定サービスのものであってもよく、又は、異なる特定サービスのものであってもよい。
【0025】
なお、図1の構成例では、1台のエッジホスト装置10に2つの仮想マシン12,13を設けたが、1台のエッジホスト装置10に設けられる仮想マシンは1つであってもよく、又は、3つ以上であってもよい。また、1台のエッジホスト装置10に複数の仮想マシンが設けられる場合、各仮想マシンが異なる特定サービスのソフトウェアを実行してもよく、又は、いずれか複数の仮想マシンが同じ特定サービスのソフトウェアを実行してもよい。エッジホスト管理部11は、自エッジホスト装置10に設けられる仮想マシンの管理を行う。
【0026】
仮想スイッチ14は、自エッジホスト装置10のコンピュータハードウェア資源を利用して構成される仮想的なスイッチであって通信の中継を行うものである。仮想スイッチ14は、自エッジホスト装置10が接続される通信ネットワーク17-1又は17-2からパケットを受信し、仮想マシン12,13宛てのパケットを宛先の仮想マシン12又は13へ転送する。また、仮想スイッチ14は、各仮想マシン12,13から出力されたパケットを、自エッジホスト装置10が接続される通信ネットワーク17-1又は17-2へ転送する。
【0027】
ルーティング管理制御部15は、仮想スイッチ14に対してパケットの転送(ルーティング)の設定を行う。ルーティング管理制御部15は、自エッジホスト装置10が接続される通信ネットワーク17-1又は17-2を流れるパケットを、仮想スイッチ14を介して監視する。ルーティング管理制御部15は、自エッジホスト装置10が提供可能な特定サービスの提供ホストのアドレス解決又は名前解決を要求するパケットを検出した場合、当該パケットの送信元の端末装置UEへ、当該特定サービスを提供する仮想マシンにアクセスするためのアドレス等のアクセス情報を応答する。
【0028】
記憶部16は、各種のデータを記憶する。各仮想マシン12,13には、記憶部16の記憶領域の一部が割り当てられる。
【0029】
図2は、エッジホスト管理部の構成例を示すブロック図である。図2において、エッジホスト管理部11は、制御部110と、計算負荷管理部111と、通信遅延管理部112とを備える。図2に示されるエッジホスト管理部11の機能は、エッジホスト装置10が備えるCPUがコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0030】
計算負荷管理部111は、特定サービスを提供する自エッジホスト装置10の計算負荷の状況に基づいて、自エッジホスト装置10が当該特定サービスの要求を受信してから当該要求に対する応答を送信するまでの情報処理にかかる時間(計算遅延時間)を計算する。計算遅延時間の計算方法の例を以下に説明する。
【0031】
計算負荷管理部111は、各仮想マシン12,13における計算負荷を一定の周期で監視し、各周期の各仮想マシン12,13の計算負荷量を記録する。計算負荷量は、例えば、エッジホスト装置10のCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)に関するものであって、各仮想マシン12,13に割り当てられるCPUの一部能力(例えばCPUサイクル数)の使用率である。
【0032】
計算負荷管理部111は、周期毎に、仮想マシン12の計算負荷量に基づいて、仮想マシン12が特定サービスの要求を受信してから当該要求に対する応答を送信するまでの情報処理にかかる計算遅延時間を計算する。計算負荷管理部111は、仮想マシン12の計算結果の各周期の計算遅延時間を、仮想マシン12が担当する特定サービスに関連付けて記憶部16に記録する。仮想マシン13についても、仮想マシン12と同様に、各周期の計算遅延時間が計算され、計算結果の各周期の計算遅延時間が仮想マシン13の担当の特定サービスに関連付けて記憶部16に記録される。
【0033】
また、計算負荷管理部111は、特定サービス毎に計算遅延時間の平均値及び最大値を求めて記憶部16に記録する。平均値及び最大値の算出対象の計算遅延時間は、過去の直近の一定期間の計算遅延時間であってもよく、又は、過去の全ての計算遅延時間であってもよい。
以上が計算遅延時間の計算方法の例の説明である。
【0034】
通信遅延管理部112は、特定サービスを要求する端末装置UEと自エッジホスト装置10との間の通信にかかる時間(通信遅延時間)を計算する。具体的には、通信遅延管理部112は、各仮想マシン12,13と端末装置UEとの間で送受されるパケットを監視し、パケット監視結果に基づいて各仮想マシン12,13と端末装置UEとの間の通信にかかる通信遅延時間を計算する。通信遅延時間の計算方法の例を以下に説明する。
【0035】
通信遅延管理部112は、仮想スイッチ14が転送するパケットを上り方向(端末装置から仮想マシンへ向う方向)と下り方向(仮想マシンから端末装置へ向う方向)で別々にカウントする。通信遅延管理部112は、仮想マシン12を対象にして、一定の期間における上り方向のカウント値に基づいて上り方向のスループット(上りスループット)を推定し、また、一定の期間における下り方向のカウント値に基づいて下り方向のスループット(下りスループット)を推定する。通信遅延管理部112は、仮想マシン12の上りスループット推定値に基づいて端末装置UEから仮想マシン12までの上り方向の通信にかかる通信遅延時間(上り通信遅延時間)を計算する。また、通信遅延管理部112は、仮想マシン12の下りスループット推定値に基づいて仮想マシン12から端末装置UEまでの下り方向の通信にかかる通信遅延時間(下り通信遅延時間)を計算する。通信遅延管理部112は、仮想マシン12の通信遅延時間を仮想マシン12の担当の特定サービスに関連付けて記憶部16に記録する。スループット推定値から通信遅延時間を算出する算出式は、予め、通信遅延管理部112に設定される。
なお、他の通信遅延時間計算方法として、仮想マシン12が実行する特定サービスの情報処理で必要になる所要通信データ量が既知である場合、当該既知の所要通信データ量と、当該特定サービスの情報処理におけるデータ通信にかかった時間とから、上りスループット及び下りスループットをそれぞれ推定してもよい。
【0036】
仮想マシン13についても、仮想マシン12と同様に、仮想マシン13の通信遅延時間が算出される。仮想マシン13の通信遅延時間は、仮想マシン13の担当の特定サービスに関連付けて記憶部16に記録される。
【0037】
また、通信遅延管理部112は、特定サービス毎に通信遅延時間の平均値及び最大値を求めて記憶部16に記録する。平均値及び最大値の算出対象の通信遅延時間は、過去の直近の一定期間の通信遅延時間であってもよく、又は、過去の全ての通信遅延時間であってもよい。
以上が通信遅延時間の計算方法の例の説明である。
【0038】
制御部110は、特定サービスの計算遅延時間と通信遅延時間とに基づいて、特定サービスの応答遅延時間を予測する。特定サービスの応答遅延時間は、端末装置UEが当該特定サービスの要求を送信してから当該端末装置UEが当該要求に対する応答を受信するまでにかかる時間である。例えば、特定サービスの計算遅延時間と通信遅延時間との和を、特定サービスの応答遅延時間の予測値として算出してもよい。特定サービスの応答遅延時間の予測に使用される計算遅延時間及び通信遅延時間は、平均値又は最大値であってもよい。
【0039】
制御部110は、特定サービスの応答遅延時間を他のエッジホスト装置10へ問合せる。制御部110は、他のエッジホスト装置10から回答された特定サービスの応答遅延時間と自己の予測結果の当該特定サービスの応答遅延時間とに基づいて、当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10を決定する。制御部110は、決定したエッジホスト装置10が当該特定サービスを提供するための設定を行う。
【0040】
次に図3を参照して本実施形態に係るエッジホスト決定方法を説明する。図3は、第1実施形態に係るエッジホスト決定方法の例を示すシーケンス図である。図3の例では、図1に示されるように、A地域に存在する端末装置UEに対して、エッジホスト装置10-1はエッジホスト装置10-2よりも通信距離が短いので、予め、エッジホスト装置10-1が当該端末装置UEに特定サービスを提供するエッジホスト装置10として設定されている。
【0041】
(ステップS11) エッジホスト装置10-1の制御部110は、特定サービスの最新の計算遅延時間及び通信遅延時間に基づいて当該特定サービスの応答遅延時間を予測し、予測した応答遅延時間が所定の応答遅延閾値を超える場合に、当該特定サービスのサービス名のサービス遅延クエリをエッジホスト装置10-2へ送信する。当該サービス遅延クエリは、当該特定サービスの応答遅延時間を問合せるメッセージである。応答遅延閾値は、予め、特定サービス毎に記憶部16に格納される。応答遅延閾値は、特定サービスが要求するQoS(Quality of Service;サービス品質)に基づいた当該特定サービスの応答遅延時間の上限値を基に決定された値である。例えば、応答遅延閾値は、特定サービスに必要な応答遅延時間の上限値から一定の割合だけ小さい値である。なお、特定サービスの応答遅延時間の予測に使用される計算遅延時間及び通信遅延時間は、最新の平均値又は最大値であってもよい。
【0042】
(ステップS12) エッジホスト装置10-2の制御部110は、エッジホスト装置10-1からサービス遅延クエリを受信すると当該サービス遅延クエリのサービス名の特定サービスの最新の計算遅延時間及び通信遅延時間に基づいて当該特定サービスの応答遅延時間を予測する。サービス遅延クエリの受信時に特定サービスの応答遅延時間を予測することによって、現在の状態により即した特定サービスの応答遅延時間が得られる。一方、サービス遅延クエリの受信時において、特定サービスの応答遅延時間の予測に時間がかかる。
このため、他の予測方法として、エッジホスト装置10-2の制御部110は、一定時間毎に、各特定サービスの計算遅延時間及び通信遅延時間を計算して当該各特定サービスの応答遅延時間を予測し、予測した当該各特定サービスの応答遅延時間を自装置の記憶部16に記憶しておいてもよい。この場合、エッジホスト装置10-2の制御部110は、エッジホスト装置10-1からサービス遅延クエリを受信すると、当該サービス遅延クエリのサービス名の特定サービスの最新の予測結果の応答遅延時間を自装置の記憶部16から取得する。これにより、サービス遅延クエリの受信時において、特定サービスの応答遅延時間の予測にかかる時間を省くことができる。
【0043】
(ステップS13) エッジホスト装置10-2の制御部110は、当該特定サービスのサービス名のサービス遅延レスポンスに当該特定サービスの予測結果の応答遅延時間を含め、当該サービス遅延レスポンスをエッジホスト装置10-1へ返信する。
【0044】
(ステップS14) エッジホスト装置10-1の制御部110は、エッジホスト装置10-2から特定サービスのサービス名のサービス遅延レスポンスを受信すると、当該サービス遅延レスポンスに含まれる当該特定サービスの応答遅延時間と自己の予測結果の当該特定サービスの応答遅延時間とに基づいて、エッジホスト装置10-2を当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10にするか否かを判断する。例えば、エッジホスト装置10-1の制御部110は、自己の予測結果の特定サービスの応答遅延時間よりも、エッジホスト装置10-2から回答された当該特定サービスの応答遅延時間の方が一定の時間以上短い場合に、エッジホスト装置10-2を、当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10にすると判断し、そうではない場合には、エッジホスト装置10-2を、当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10にしないと判断する。
【0045】
エッジホスト装置10-2を当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10にすると判断された場合、当該特定サービスのサービス転送判定は合格であって、ステップS15に進む。一方、エッジホスト装置10-2を当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10にしないと判断された場合、当該特定サービスのサービス転送判定は不合格であって、図3の処理を終了する。当該特定サービスのサービス転送判定が不合格の場合には、エッジホスト装置10-1が当該特定サービスの提供を継続する。
【0046】
(ステップS15) エッジホスト装置10-1の制御部110は、特定サービスのサービス転送判定が合格であるエッジホスト装置10-2へ、当該特定サービスのサービス名のタスク受け入れ要求を送信する。
【0047】
(ステップS16) エッジホスト装置10-2の制御部110は、エッジホスト装置10-1からタスク受け入れ要求を受信すると、自エッジホスト装置10-2の計算負荷の状況に基づいて、当該タスク受け入れ要求のサービス名の特定サービスの提供タスクを受け入れるか否かを判断する。
【0048】
(ステップS17) エッジホスト装置10-2の制御部110は、当該特定サービスの提供タスクを受け入れるか否かの判断結果を当該特定サービスのサービス名のタスク受け入れ応答としてエッジホスト装置10-1へ返信する。特定サービスの提供タスクを受け入れる場合はタスク受け入れ応答「許可」であり、特定サービスの提供タスクを受け入れない場合はタスク受け入れ応答「拒否」である。
【0049】
エッジホスト装置10-1の制御部110は、エッジホスト装置10-2から特定サービスのサービス名のタスク受け入れ応答「許可」を受信した場合、エッジホスト装置10-2を当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10に決定し、エッジホスト装置10-2が当該特定サービスを提供するための設定を行う。具体的には、エッジホスト装置10-1の制御部110は、ルーティング管理制御部15に対して、エッジホスト装置10-2が当該特定サービスを提供するためのサービス転送設定を指示する。ルーティング管理制御部15は、当該サービス転送設定の指示に従って当該特定サービスのサービス転送設定を行う。特定サービスのサービス転送設定では、当該特定サービスの提供ホストがエッジホスト装置10-2であることが設定される。この特定サービスのサービス転送設定が行われると、ルーティング管理制御部15は、仮想スイッチ14を介して監視する通信ネットワーク17-1を流れるパケットの中に、当該特定サービスの提供ホストのアドレス解決又は名前解決を要求するパケットを検出した場合、当該パケットの送信元の端末装置UEへ、当該特定サービスの提供ホストであるエッジホスト装置10-2の当該特定サービスを提供する仮想マシンにアクセスするためのアドレス等のアクセス情報を応答する。当該アクセス情報は、エッジホスト装置10-2から受信した当該特定サービスのサービス名のタスク受け入れ応答「許可」に含まれるものである。当該端末装置UEは、当該応答されたアクセス情報に基づいて、当該特定サービスの提供ホストであるエッジホスト装置10-2の当該特定サービスを提供する仮想マシンへアクセスする。これにより、当該端末装置UEは、エッジホスト装置10-2から当該特定サービスの提供を受ける。
【0050】
一方、エッジホスト装置10-1の制御部110は、エッジホスト装置10-2から特定サービスのサービス名のタスク受け入れ応答「拒否」を受信した場合、自エッジホスト装置10-1を当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10に決定する。これにより、エッジホスト装置10-1が当該特定サービスの提供を継続する。
【0051】
なお、エッジホスト装置10-1の制御部110は、自エッジホスト装置10-1の計算負荷が減少した場合に、エッジホスト装置10-2が特定サービスを提供するためのサービス転送設定を解除して、自エッジホスト装置10-1が特定サービスを提供する元の状態に戻してもよい。具体的には、エッジホスト装置10-1の制御部110は、エッジホスト装置10-2が特定サービスを提供するためのサービス転送設定を行った後に、定期的に、当該特定サービスの最新の計算遅延時間及び通信遅延時間に基づいて当該特定サービスの応答遅延時間を予測し、予測した応答遅延時間が所定の応答遅延閾値を下回ったか否かを判断する。エッジホスト装置10-1の制御部110は、予測した応答遅延時間が所定の応答遅延閾値を下回った場合に、エッジホスト装置10-2が特定サービスを提供するためのサービス転送設定を解除する。このサービス転送設定が解除されると、ルーティング管理制御部15は、仮想スイッチ14を介して監視する通信ネットワーク17-1を流れるパケットの中に、当該特定サービスの提供ホストのアドレス解決又は名前解決を要求するパケットを検出した場合、当該パケットの送信元の端末装置UEへ、当該特定サービスの提供ホストである自エッジホスト装置10-1の当該特定サービスを提供する仮想マシンにアクセスするためのアドレス等のアクセス情報を応答する。当該端末装置UEは、当該応答されたアクセス情報に基づいて、当該特定サービスの提供ホストであるエッジホスト装置10-1の当該特定サービスを提供する仮想マシンへアクセスする。これにより、当該端末装置UEは、エッジホスト装置10-1から当該特定サービスの提供を受ける。
【0052】
なお、上述したエッジホスト決定方法では、エッジホスト装置10-1の制御部110は、予測した特定サービスの応答遅延時間が所定の応答遅延閾値を超える場合に、当該特定サービスの応答遅延時間をエッジホスト装置10-2へ問合せたが、これに限定されない。例えば、エッジホスト装置10-1の制御部110は、一定の周期で、特定サービスの応答遅延時間をエッジホスト装置10-2へ問合せてもよい。この場合においても、エッジホスト装置10-1の制御部110は、自己の予測結果の特定サービスの応答遅延時間とエッジホスト装置10-2から回答された当該特定サービスの応答遅延時間とに基づいて、当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10を決定する。例えば、エッジホスト装置10-1の制御部110は、自己の予測結果の特定サービスの応答遅延時間よりも、エッジホスト装置10-2から回答された当該特定サービスの応答遅延時間の方が一定の時間以上短い場合に、エッジホスト装置10-2を、当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10として決定する。これにより、特定サービス毎に、特定サービスを提供する負荷の分散を定常的に図ることができる。
【0053】
[特定サービスの応答遅延時間の問合せ先候補が複数台ある場合のエッジホスト決定方法]
上述した図3の例では、エッジホスト装置10が2台(エッジホスト装置10-1,10-2)の場合であって特定サービスの応答遅延時間の問合せ先候補のエッジホスト装置10が1台(エッジホスト装置10-2のみ)であるが、3台以上のエッジホスト装置10が設けられる場合であって特定サービスの応答遅延時間の問合せ先候補のエッジホスト装置10が複数台(エッジホスト装置10-2,10-3,・・・)あるときのエッジホスト決定方法(複数候補エッジホスト決定方法)の例1,例2を以下に説明する。
【0054】
(複数候補エッジホスト決定方法の例1)
複数候補エッジホスト決定方法の例1では、問合せ元のエッジホスト装置10の制御部110は、複数台の問合せ先候補のエッジホスト装置10の優先順位(問合せ優先順位)に従って、上位の問合せ先候補のエッジホスト装置10から順番に問合せ先にして上記の図3の各ステップを実行する。問合せ優先順位は、予め、各エッジホスト装置10に対して個別に設定される。問合せ優先順位は、例えば、問合せ先候補のエッジホスト装置10との間の通信距離や、問合せ先候補のエッジホスト装置10の定常的なリソース使用率などに基づいて決定される。
【0055】
問合せ元のエッジホスト装置10の制御部110は、ステップS14の特定サービスのサービス転送判定が合格である問合せ先候補のエッジホスト装置10を、当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10にすると判断し、次いでステップS15を実行し、ステップS17でタスク受け入れ応答「許可」である場合に当該問合せ先候補のエッジホスト装置10を、当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10に決定し、当該問合せ先候補のエッジホスト装置10が当該特定サービスを提供するための設定を行う。
【0056】
一方、問合せ元のエッジホスト装置10の制御部110は、問合せ先候補のエッジホスト装置10について、ステップS14の特定サービスのサービス転送判定が不合格になった場合、及び、ステップS14の特定サービスのサービス転送判定が合格であってもステップS17でタスク受け入れ応答「拒否」である場合には、当該問合せ先候補のエッジホスト装置10を、当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10にしない。次いで、問合せ元のエッジホスト装置10の制御部110は、自己に設定された問合せ優先順位に従って、次に上位の問合せ先候補のエッジホスト装置10を問合せ先にして上記の図3の各ステップを実行する。この結果、ステップS14の特定サービスのサービス転送判定「合格」且つステップS17のタスク受け入れ応答「許可」である問合せ先候補のエッジホスト装置10が存在する場合には、問合せ元のエッジホスト装置10の制御部110は、当該問合せ先候補のエッジホスト装置10を、当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10に決定し、当該問合せ先候補のエッジホスト装置10が当該特定サービスを提供するための設定を行う。一方、ステップS14の特定サービスのサービス転送判定「合格」且つステップS17のタスク受け入れ応答「許可」である問合せ先候補のエッジホスト装置10が存在しない場合には、問合せ元のエッジホスト装置10が当該特定サービスの提供を継続する。
【0057】
(複数候補エッジホスト決定方法の例2)
複数候補エッジホスト決定方法の例2では、問合せ元のエッジホスト装置10の制御部110は、全ての問合せ先候補のエッジホスト装置10から特定サービスの応答遅延時間を取得し、各問合せ先候補のエッジホスト装置10から回答された当該特定サービスの応答遅延時間と自己の予測結果の当該特定サービスの応答遅延時間とに基づいて当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10を決定する。
【0058】
具体的には、問合せ元のエッジホスト装置10の制御部110は、全ての問合せ先候補のエッジホスト装置10を問合せ先にして上記の図3のステップS11からステップS13までを実行する。次いで、問合せ元のエッジホスト装置10の制御部110は、各問合せ先候補のエッジホスト装置10から回答された特定サービスの応答遅延時間と自己の予測結果の当該特定サービスの応答遅延時間とに基づいて当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10を決定する。
【0059】
例えば、問合せ元のエッジホスト装置10の制御部110は、自己の予測結果の特定サービスの応答遅延時間よりも一定の時間以上短い当該特定サービスの応答遅延時間であって最短の応答遅延時間を回答した問合せ先候補のエッジホスト装置10を、当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10にすると判断し、次いでステップS15を実行し、ステップS17でタスク受け入れ応答「許可」である場合に当該問合せ先候補のエッジホスト装置10を、当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10に決定し、当該問合せ先候補のエッジホスト装置10が当該特定サービスを提供するための設定を行う。
【0060】
一方、問合せ元のエッジホスト装置10の予測結果の特定サービスの応答遅延時間よりも一定の時間以上短い当該特定サービスの応答遅延時間を回答した問合せ先候補のエッジホスト装置10が存在しない場合、及び、問合せ元のエッジホスト装置10の予測結果の当該特定サービスの応答遅延時間よりも一定の時間以上短い当該特定サービスの応答遅延時間を回答し且つタスク受け入れ応答「許可」である問合せ先候補のエッジホスト装置10が存在しない場合には、問合せ元のエッジホスト装置10が当該特定サービスの提供を継続する。
【0061】
以上が複数候補エッジホスト決定方法の例1,例2の説明である。
【0062】
上述した第1実施形態によれば、複数のエッジホスト装置10の中から端末装置UEに特定サービスを提供するエッジホスト装置10を決定する際、エッジホスト装置10における計算遅延時間及び端末装置UEとエッジホスト装置10との間の通信遅延時間に基づいて予測された当該特定サービスの応答遅延時間を基にして、当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10が決定される。これにより、複数のエッジホスト装置10の中から端末装置UEに特定サービスを提供するエッジホスト装置10を決定する際、エッジホスト装置10における計算遅延時間及び端末装置UEとエッジホスト装置10との間の通信遅延時間に適応することができるという効果が得られる。
【0063】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態に係るエッジコンピューティングシステムの構成例を示すブロック図である。図4において図1の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。第2実施形態では、図4に示されるエッジコンピューティングシステム1aにおいて、管理装置30が設けられる。管理装置30は、各通信ネットワーク17-1,17-2に接続されている。管理装置30は、通信ネットワーク17-1を介して、エッジホスト装置10-1と通信を行う。管理装置30は、通信ネットワーク17-2を介して、エッジホスト装置10-2と通信を行う。
【0064】
管理装置30は、管理制御部31と管理記憶部32とを備える。管理記憶部32は、各種のデータを記憶する。図4に示される管理装置30の機能は、管理装置30が備えるCPUがコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0065】
管理制御部31は、各エッジホスト装置10-1,10-2から特定サービスの応答遅延時間を取得する。管理制御部31は、当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10の変更を要求する変更要求元のエッジホスト装置10から取得した特定サービスの応答遅延時間と当該変更要求元以外のエッジホスト装置10から取得した当該特定サービスの応答遅延時間とに基づいて当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10の変更を行うか否かを判断する。管理制御部31は、当該判断の結果に基づいて、当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10の変更又は継続の指示を該当のエッジホスト装置10へ行う。
【0066】
次に図5を参照して本実施形態に係るエッジホスト決定方法を説明する。図5は、第2実施形態に係るエッジホスト決定方法の例を示すシーケンス図である。図5の例では、図4に示されるように、A地域に存在する端末装置UEに対して、エッジホスト装置10-1はエッジホスト装置10-2よりも通信距離が短いので、予め、エッジホスト装置10-1が当該端末装置UEに特定サービスを提供するエッジホスト装置10として設定されている。
【0067】
管理装置30の管理制御部31は、一定の周期で、各エッジホスト装置10-1,10-2から特定サービスの応答遅延時間を取得する。管理制御部31は、各エッジホスト装置10-1,10-2から取得した特定サービスの応答遅延時間を管理記憶部32に記録する。また、管理制御部31は、特定サービス毎に、各エッジホスト装置10-1,10-2の応答遅延時間の平均値及び最大値を求めて管理記憶部32に記録する。平均値及び最大値の算出対象の応答遅延時間は、過去の直近の一定期間の応答遅延時間であってもよく、又は、過去の全ての応答遅延時間であってもよい。
【0068】
(ステップS21) エッジホスト装置10-1の制御部110は、上記した図3のステップS11と同様に、特定サービスの最新の計算遅延時間及び通信遅延時間に基づいて当該特定サービスの応答遅延時間を予測し、予測した当該特定サービスの応答遅延時間が所定の応答遅延閾値を超えるか否かを判断する。エッジホスト装置10-1の制御部110は、予測結果の特定サービスの応答遅延時間が応答遅延閾値を超える場合に、当該特定サービスのサービス名のホスト変更要求に当該予測結果の特定サービスの応答遅延時間を含め、当該ホスト変更要求を管理装置30へ送信する。当該ホスト変更要求は、当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10を自エッジホスト装置10-1から他のエッジホスト装置10に変更することを要求するメッセージである。
【0069】
(ステップS22) 管理装置30の管理制御部31は、エッジホスト装置10-1からホスト変更要求を受信すると、当該ホスト変更要求のサービス名のサービス遅延クエリをエッジホスト装置10-2へ送信する。当該サービス遅延クエリは、当該ホスト変更要求のサービス名の特定サービスの応答遅延時間を問合せるメッセージである。
【0070】
なお、図5の例では、エッジホスト装置10が2台(エッジホスト装置10-1,10-2)の場合であって特定サービスの応答遅延時間の問合せ先候補のエッジホスト装置10が1台(エッジホスト装置10-2のみ)であるが、3台以上のエッジホスト装置10が設けられる場合であって特定サービスの応答遅延時間の問合せ先候補のエッジホスト装置10が複数台(エッジホスト装置10-2,10-3,・・・)あるときについては後述する。
【0071】
(ステップS23) エッジホスト装置10-2の制御部110は、管理装置30からサービス遅延クエリを受信すると、当該サービス遅延クエリのサービス名の特定サービスの最新の計算遅延時間及び通信遅延時間に基づいて当該特定サービスの応答遅延時間を予測する。サービス遅延クエリの受信時に特定サービスの応答遅延時間を予測することによって、現在の状態により即した特定サービスの応答遅延時間が得られる。一方、サービス遅延クエリの受信時において、特定サービスの応答遅延時間の予測に時間がかかる。
このため、他の予測方法として、エッジホスト装置10-2の制御部110は、一定時間毎に、各特定サービスの計算遅延時間及び通信遅延時間を計算して当該各特定サービスの応答遅延時間を予測し、予測した当該各特定サービスの応答遅延時間を自装置の記憶部16に記憶しておいてもよい。この場合、エッジホスト装置10-2の制御部110は、管理装置30からサービス遅延クエリを受信すると、当該サービス遅延クエリのサービス名の特定サービスの最新の予測結果の応答遅延時間を自装置の記憶部16から取得する。これにより、サービス遅延クエリの受信時において、特定サービスの応答遅延時間の予測にかかる時間を省くことができる。
【0072】
(ステップS24) エッジホスト装置10-2の制御部110は、当該特定サービスのサービス名のサービス遅延レスポンスに予測結果の特定サービスの応答遅延時間を含め、当該サービス遅延レスポンスを管理装置30へ返信する。
【0073】
(ステップS25) 管理装置30の管理制御部31は、エッジホスト装置10-2から特定サービスのサービス名のサービス遅延レスポンスを受信すると、当該サービス遅延レスポンスに含まれる当該特定サービスの応答遅延時間と変更要求元のエッジホスト装置10-1から受信したホスト変更要求に含まれる当該特定サービスの応答遅延時間とに基づいて当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10の変更を行うか否かを判断する。例えば、管理制御部31は、変更要求元のエッジホスト装置10-1の特定サービスの応答遅延時間よりも、エッジホスト装置10-2から回答された当該特定サービスの応答遅延時間の方が一定の時間以上短い場合に、エッジホスト装置10-2を、当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10にすると判断し、そうではない場合には、エッジホスト装置10-2を、当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10にしないと判断する。
【0074】
エッジホスト装置10-2を当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10にすると判断された場合、当該特定サービスのサービス転送判定は合格であって、ステップS26に進む。一方、エッジホスト装置10-2を当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10にしないと判断された場合、当該特定サービスのサービス転送判定は不合格であって、管理制御部31は、変更要求元のエッジホスト装置10-1へ、当該特定サービスのサービス名のホスト変更応答「拒否」を返信する(図示せず)。この場合、変更要求元のエッジホスト装置10-1が当該特定サービスの提供を継続する。当該ホスト変更応答「拒否」は、当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10-1の継続の指示に対応する。
【0075】
(ステップS26) 管理装置30の管理制御部31は、特定サービスのサービス転送判定が合格であるエッジホスト装置10-2へ、当該特定サービスのサービス名のタスク受け入れ要求を送信する。
【0076】
(ステップS27) エッジホスト装置10-2の制御部110は、管理装置30からタスク受け入れ要求を受信すると、自エッジホスト装置10-2の計算負荷の状況に基づいて、当該タスク受け入れ要求のサービス名の特定サービスの提供タスクを受け入れるか否かを判断する。
【0077】
(ステップS28) エッジホスト装置10-2の制御部110は、当該特定サービスの提供タスクを受け入れるか否かの判断結果を当該特定サービスのサービス名のタスク受け入れ応答として管理装置30へ返信する。特定サービスの提供タスクを受け入れる場合はタスク受け入れ応答「許可」であり、特定サービスの提供タスクを受け入れない場合はタスク受け入れ応答「拒否」である。
【0078】
(ステップS29) 管理装置30の管理制御部31は、エッジホスト装置10-2から特定サービスのサービス名のタスク受け入れ応答「許可」を受信した場合、変更要求元のエッジホスト装置10-1へ、当該特定サービスのサービス名のホスト変更応答「許可」を返信する。当該ホスト変更応答「許可」には、タスク転送先ホスト名としてエッジホスト装置10-2のホスト名が記載される。一方、管理装置30の管理制御部31は、エッジホスト装置10-2から特定サービスのサービス名のタスク受け入れ応答「拒否」を受信した場合、変更要求元のエッジホスト装置10-1へ、当該特定サービスのサービス名のホスト変更応答「拒否」を返信する。
【0079】
エッジホスト装置10-1の制御部110は、管理装置30から特定サービスのサービス名のホスト変更応答「許可」を受信した場合、当該ホスト変更応答「許可」に記載されたホスト名のエッジホスト装置10-2を当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10に決定し、エッジホスト装置10-2が当該特定サービスを提供するための設定を行う。この設定は、上述した図3のステップS17におけるサービス転送設定と同じである。なお、エッジホスト装置10-2の当該特定サービスを提供する仮想マシンにアクセスするためのアドレス等のアクセス情報は、エッジホスト装置10-2から管理装置30へ送信された当該特定サービスのサービス名のタスク受け入れ応答「許可」に含まれるものが当該特定サービスのサービス名のホスト変更応答「許可」に含められて変更要求元のエッジホスト装置10-1に通知される。
【0080】
一方、エッジホスト装置10-1の制御部110は、管理装置30から特定サービスのサービス名のホスト変更応答「拒否」を受信した場合、自エッジホスト装置10-1が当該特定サービスの提供を継続すると決定する。この場合、変更要求元のエッジホスト装置10-1が当該特定サービスの提供を継続する。当該ホスト変更応答「拒否」は、当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10-1の継続の指示に対応する。
【0081】
なお、管理装置30の管理制御部31は、特定サービスを提供するエッジホスト装置10をエッジホスト装置10-1からエッジホスト装置10-2へ変更した後に、各エッジホスト装置10-1,10-2の当該特定サービスの応答遅延時間を監視し、エッジホスト装置10-2の当該特定サービスの応答遅延時間よりも、エッジホスト装置10-1の当該特定サービスの応答遅延時間の方が一定の時間以上短くなった場合に、当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10を、エッジホスト装置10-2からエッジホスト装置10-1へ戻す処理を行ってもよい。
【0082】
なお、上述したエッジホスト決定方法では、管理装置30の管理制御部31は、エッジホスト装置10-1から特定サービスのサービス名のホスト変更要求を受信した場合に、図5のステップS22以降の処理を実行したが、これに限定されない。例えば、管理制御部31は、各エッジホスト装置10の特定サービスの応答遅延時間を監視し、当該特定サービスの応答遅延時間が所定の応答遅延閾値を上回った場合に、当該上回った応答遅延時間に該当するエッジホスト装置10から他のエッジホスト装置10へ当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10を変更するために、図5のステップS22以降の処理を実行してもよい。又は、管理制御部31は、各エッジホスト装置10の特定サービスの応答遅延時間を監視し、エッジコンピューティングシステム全体の負荷の配分の最適化を目的にして、図5のステップS22以降の処理を実行してもよい。
【0083】
[応答遅延時間の問合せ先候補が複数台ある場合のエッジホスト決定方法]
上述した図5の例では、エッジホスト装置10が2台(エッジホスト装置10-1,10-2)の場合であって特定サービスの応答遅延時間の問合せ先候補のエッジホスト装置10が1台(エッジホスト装置10-2のみ)であるが、3台以上のエッジホスト装置10が設けられる場合であって特定サービスの応答遅延時間の問合せ先候補のエッジホスト装置10が複数台(エッジホスト装置10-2,10-3,・・・)あるときについて以下に説明する。
【0084】
管理装置30の管理制御部31は、管理記憶部32に格納される各問合せ先候補のエッジホスト装置10の最新の特定サービスの応答遅延時間に基づいて、当該特定サービスの応答遅延時間の問合せ先(当該特定サービスのサービス名のサービス遅延クエリの送信先)のエッジホスト装置10を決定する。例えば、特定サービスの応答遅延時間が最短である問合せ先候補のエッジホスト装置10を、当該特定サービスの応答遅延時間の問合せ先(当該特定サービスのサービス名のサービス遅延クエリの送信先)のエッジホスト装置10に決定する。特定サービスの応答遅延時間の問合せ先の決定に使用される応答遅延時間は、最新の平均値又は最大値であってもよい。
【0085】
管理制御部31は、特定サービスの応答遅延時間の問合せ先に決定したエッジホスト装置10に対して、図5のステップS22以降の処理を実行する。この結果、ステップS25の特定サービスのサービス転送判定「合格」且つステップS28のタスク受け入れ応答「許可」である場合には、管理制御部31は、当該問合せ先候補のエッジホスト装置10を、当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10の変更先に決定する。
【0086】
一方、ステップS25の特定サービスのサービス転送判定「不合格」又はステップS28のタスク受け入れ応答「拒否」である場合には、管理制御部31は、再度、当該特定サービスの応答遅延時間の次の問合せ先を決定して図5のステップS22以降の処理を実行する。そして、ステップS25の特定サービスのサービス転送判定「合格」且つステップS28のタスク受け入れ応答「許可」である問合せ先候補のエッジホスト装置10が存在しない場合には、当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10の変更を行わず、当該特定サービスを提供する現状のエッジホスト装置10を継続させる。
【0087】
上述した第2実施形態によれば、複数のエッジホスト装置10の中から端末装置UEに特定サービスを提供するエッジホスト装置10を決定する際、エッジホスト装置10における計算遅延時間及び端末装置UEとエッジホスト装置10との間の通信遅延時間に基づいて予測された当該特定サービスの応答遅延時間を基にして、当該特定サービスを提供するエッジホスト装置10が決定される。これにより、複数のエッジホスト装置10の中から端末装置UEに特定サービスを提供するエッジホスト装置10を決定する際、エッジホスト装置10における計算遅延時間及び端末装置UEとエッジホスト装置10との間の通信遅延時間に適応することができるという効果が得られる。
【0088】
また、管理装置30が集中的に各エッジホスト装置10における各特定サービスの応答遅延時間を管理して各特定サービスのサービス転送判定を行うことにより、サービス転送判定処理の効率向上の効果が得られる。
【0089】
[エッジホスト装置のネットワークトポロジの例]
図6図7を参照して、上述した第1実施形態及び第2実施形態に係るエッジホスト装置10のネットワークトポロジの構成例を説明する。図6図7は、第1実施形態及び第2実施形態に係るエッジホスト装置のネットワークトポロジの構成例を示す図である。
【0090】
(ツリー型のネットワークトポロジの例)
図6には、ツリー型のネットワークトポロジの構成例が示される。図6の例では、3階層のツリー状のネットワークが構成される。第1階層(最上位層)には、1台のエッジホスト装置10-3が配置される。第2階層(中間層)には、2台のエッジホスト装置10-2が配置される。第3階層(最下位層)には、6台のエッジホスト装置10-3が配置される。第1階層のエッジホスト装置10-3には、第2階層の2台のエッジホスト装置10-2が各接続回線20を介して接続される。第2階層の各エッジホスト装置10-2には、3台のエッジホスト装置10-1が各接続回線20を介して接続される。
【0091】
第3階層の各エッジホスト装置10-1には、図1及び図4に例示されるエッジホスト装置10-1に対するA地域のように、各担当地域が割り当てられる。その第3階層の各エッジホスト装置10-1にとっては、図1及び図4に例示されるエッジホスト装置10-1に対するA地域の基地局BSのように、各担当地域に設けられた無線又は有線の通信ネットワークの基地局(図6には図示せず)は通信距離が最短の基地局である。図6には、各エッジホスト装置10-1に対して、各担当地域の基地局の配下に在る端末装置UEが当該基地局を介して接続されることが示されている。
【0092】
図6に例示されるツリー型のネットワークトポロジでは、第3階層の各エッジホスト装置10-1が、担当地域の基地局の配下に在る端末装置UEに対して特定サービスを提供するデフォルトのエッジホスト装置10として、予め設定される。第3階層の各エッジホスト装置10-1が担当地域の基地局の配下に在る端末装置UEに対して特定サービスを提供することにより、特定サービスを効率よく提供することができる。しかし、第3階層の各エッジホスト装置10-1において特定サービスの応答遅延時間が当該特定サービスが要求するQoSに基づいた当該特定サービスの応答遅延時間の上限値を超える場合、当該特定サービスが要求するQoSを満足することができない可能性がある。
【0093】
このため、第3階層のエッジホスト装置10-1において自己の予測結果の特定サービスの応答遅延時間が所定の応答遅延閾値を超える場合には、上述した第1実施形態又は第2実施形態のエッジホスト決定方法によって、当該エッジホスト装置10-1の上位の第2階層のエッジホスト装置10-2や第1階層のエッジホスト装置10-3に対して、当該特定サービスの提供を代行してもらうこと(当該特定サービスのサービス転送設定)を実施する。これにより、特定サービスが要求するQoSを維持することを図る。
【0094】
なお、ツリー型のネットワークトポロジにおいて、第2階層のエッジホスト装置10-2は、自己の配下の第3階層のエッジホスト装置10-1と当該エッジホスト装置10-1の担当地域の基地局の配下に在る端末装置UEとの間の通信遅延時間を、当該エッジホスト装置10-1からの報告により記録する。また、第2階層のエッジホスト装置10-2は、自己と自己の配下の第3階層のエッジホスト装置10-1との間の通信にかかる時間を測定して記録する。これらの記録から、第2階層のエッジホスト装置10-2は、自己と、自己の配下の第3階層のエッジホスト装置10-1の担当地域の基地局の配下に在る端末装置UEとの間の通信遅延時間を算出する。
【0095】
第1階層のエッジホスト装置10-3は、自己の配下の第2階層のエッジホスト装置10-2と当該エッジホスト装置10-2の担当地域の基地局の配下に在る端末装置UEとの間の通信遅延時間を、当該エッジホスト装置10-2からの報告により記録する。また、第1階層のエッジホスト装置10-3は、自己と自己の配下の第2階層のエッジホスト装置10-2との間の通信にかかる時間を測定して記録する。これらの記録から、第1階層のエッジホスト装置10-3は、自己と、自己の配下の第3階層のエッジホスト装置10-1の担当地域の基地局の配下に在る端末装置UEとの間の通信遅延時間を算出する。
【0096】
(リング型のネットワークトポロジの例)
図7には、リング型のネットワークトポロジの構成例が示される。図7の例では、3台のエッジホスト装置10-1,10-2,10-3が各接続回線20を介して接続されることにより、リング状のネットワークが構成される。各エッジホスト装置10-1,10-2,10-3には、図1及び図4に例示されるエッジホスト装置10-1に対するA地域のように、各担当地域が割り当てられる。その各エッジホスト装置10-1,10-2,10-3にとっては、図1及び図4に例示されるエッジホスト装置10-1に対するA地域の基地局BSのように、各担当地域に設けられた無線又は有線の通信ネットワークの基地局(図7には図示せず)は通信距離が最短の基地局である。図7には、各エッジホスト装置10-1,10-2,10-3に対して、各担当地域の基地局の配下に在る端末装置UEが当該基地局を介して接続されることが示されている。
【0097】
図7に例示されるリング型のネットワークトポロジでは、各エッジホスト装置10-1,10-2,10-3が、担当地域の基地局の配下に在る端末装置UEに対して特定サービスを提供するデフォルトのエッジホスト装置10として、予め設定される。各エッジホスト装置10-1,10-2,10-3が担当地域の基地局の配下に在る端末装置UEに対して特定サービスを提供することにより、特定サービスを効率よく提供することができる。しかし、各エッジホスト装置10-1,10-2,10-3において特定サービスの応答遅延時間が当該特定サービスが要求するQoSに基づいた当該特定サービスの応答遅延時間の上限値を超える場合、当該特定サービスが要求するQoSを満足することができない可能性がある。
【0098】
このため、エッジホスト装置10-1,10-2,10-3のうち例えばエッジホスト装置10-1において自己の予測結果の特定サービスの応答遅延時間が所定の応答遅延閾値を超える場合には、上述した第1実施形態又は第2実施形態のエッジホスト決定方法によって、他のエッジホスト装置10-2,10-3に対して、当該特定サービスの提供を代行してもらうこと(当該特定サービスのサービス転送設定)を実施する。これにより、特定サービスが要求するQoSを維持することを図る。
【0099】
なお、リング型のネットワークトポロジにおいて、各エッジホスト装置10-1,10-2,10-3は、自己と、自己に隣接するエッジホスト装置(隣接エッジホスト装置)10との間の通信にかかる時間(隣接ホスト間通信遅延時間)を測定して記録する。各エッジホスト装置10-1,10-2,10-3は、隣接エッジホスト装置10に特定サービスの提供を代行してもらう場合に、当該隣接エッジホスト装置10に係る隣接ホスト間通信遅延時間と、自己と自担当地域の基地局の配下に在る端末装置UEとの間の通信遅延時間(自ホスト通信遅延時間)とから、当該隣接エッジホスト装置10における当該端末装置UEとの間の通信遅延時間(隣接ホスト通信遅延時間)を算出する。例えば、隣接ホスト間通信遅延時間と自ホスト通信遅延時間との和を、隣接ホスト通信遅延時間として算出してもよい。この場合、各エッジホスト装置10-1,10-2,10-3において、隣接エッジホスト装置10から回答される特定サービスの応答遅延時間は当該隣接エッジホスト装置10における計算遅延時間のみから予測された予測値でよい。
【0100】
又は、各エッジホスト装置10-1,10-2,10-3は、隣接エッジホスト装置10に特定サービスの提供を代行してもらう場合に、自ホスト通信遅延時間を当該隣接エッジホスト装置10に通知する。当該隣接エッジホスト装置10は、当該通知された代行元のエッジホスト装置10の自ホスト通信遅延時間と、当該代行元のエッジホスト装置10との間の通信にかかる隣接ホスト間通信遅延時間とから、自己と当該代行元のエッジホスト装置10の担当地域の基地局の配下に在る端末装置UEとの間の通信遅延時間(隣接ホスト通信遅延時間)を算出してもよい。この場合、当該隣接エッジホスト装置10から当該代行元のエッジホスト装置10に回答される特定サービスの応答遅延時間は、当該隣接エッジホスト装置10における計算遅延時間と当該算出された隣接ホスト通信遅延時間とから予測された予測値でよい。
【0101】
以上がエッジホスト装置のネットワークトポロジの例の説明である。
【0102】
なお、上述した図6又は図7のエッジホスト装置のネットワークトポロジの例において、複数のエッジホスト装置10を一グループとしてクラスタを構成し、同一クラスタ内のいずれかのエッジホスト装置10に管理装置30の機能を設けることにより、上述した第2実施形態のエッジコンピューティングシステム1aを構成してもよい。これにより、管理装置30の機能を局所的に設けて管理装置30の情報処理を集中させることにより効率化を図ることができる。例えば、図6に示されるツリー型のネットワークトポロジを一グループとしてクラスタを構成し、当該ツリー型のネットワークトポロジ内のいずれかのエッジホスト装置10、例えば第1階層のエッジホスト装置10-3に管理装置30の機能を設けてもよい。また、図7に示されるリング型のネットワークトポロジを一グループとしてクラスタを構成し、当該リング型のネットワークトポロジ内のいずれかのエッジホスト装置10に管理装置30の機能を設けてもよい。
【0103】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0104】
上述した各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0105】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0106】
1…エッジコンピューティングシステム、3…無線通信ネットワーク、10-1,10-2,10-3…エッジホストコンピュータ装置(エッジホスト装置)、11…エッジホスト管理部、12,13…仮想マシン(VM)、14…仮想スイッチ、、15…ルーティング管理制御部、16…記憶部、17-1,17-2…通信ネットワーク、20…接続回線、30…管理装置、31…管理制御部、32…管理記憶部、110…制御部、111…計算負荷管理部、112…通信遅延管理部、BS…基地局、UE…端末装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7