(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】パラシュート装置および飛行装置
(51)【国際特許分類】
B64D 17/72 20060101AFI20220713BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20220713BHJP
B64D 17/54 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
B64D17/72
B64C39/02
B64D17/54
(21)【出願番号】P 2019110707
(22)【出願日】2019-06-14
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】酒本 譲
(72)【発明者】
【氏名】下久 昌司
(72)【発明者】
【氏名】持田 佳広
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-193055(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0251083(US,A1)
【文献】特許第4785084(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 17/72
B64C 39/02
B64D 17/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラシュートと、
前記パラシュートを収容するパラシュート収容部と、
前記パラシュートに
連結索を介して連結された飛翔体本体部と、ガスを発生するガス発生装置とを有する飛翔体と、
前記飛翔体を保持し、保持した前記飛翔体を射出するための射出部と、を備え、
前記飛翔体本体部は、前記射出部と係合され
るとともに、一端において前記ガス発生装置を保持し、他端において前記連結索と連結され、
前記ガス発生装置は、前記射出部と前記飛翔体本体部とによって画成される内部空間に配置され、
前記射出部は、前記パラシュート収容部の中心軸に対して、前記射出部の前記飛翔体の射出方向における端部が前記パラシュート収容部の中心軸から離れる方向に、傾斜している
パラシュート装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパラシュート装置において、
前記パラシュート収容部は、一端が開口し、他端が有底の筒状に形成され、
前記射出部は、前記パラシュート収容部の内側に配置されている
ことを特徴とするパラシュート装置。
【請求項3】
請求項2に記載のパラシュート装置において、
前記パラシュート収容部は、筒状の側壁部と、前記側壁部の一端側を塞ぐように形成された底部とを有し、
前記側壁部は、前記パラシュート収容部の中心軸から離れる方向に突出して形成された突出部を有し、
前記射出部の少なくとも一部は、前記パラシュート収容部の内側における前記突出部によって画成される空間に配置されている
ことを特徴とするパラシュート装置。
【請求項4】
請求項1に記載のパラシュート装置において、
前記パラシュート収容部は、筒状の側壁部と、前記側壁部の一端側を塞ぐように形成された底部とを有し、
前記射出部は、前記側壁部の外周面に配置されている
ことを特徴とするパラシュート装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載のパラシュート装置において、
前記側壁部の開口部を覆うカバー部材を更に備える
ことを特徴とするパラシュート装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のパラシュート装置において、
前記飛翔体を複数有し、
前記射出部は、前記飛翔体毎に設けられ、
それぞれの前記射出部は、前記パラシュート収容部の中心軸を中心とした回転方向において等間隔に配置されている
ことを特徴とするパラシュート装置。
【請求項7】
機体ユニットと、
前記機体ユニットに接続され、推力を発生する推力発生部と、
前記推力発生部を制御する飛行制御部と、
前記機体ユニットの飛行時の異常を検出する異常検出部と、
請求項1乃至6の何れか一項に記載のパラシュート装置と、
前記異常検出部による異常の検出に応じて、前記飛翔体を前記射出部から射出させる落下制御部と、を備える
ことを特徴とする飛行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラシュート装置および飛行装置に関し、例えば、遠隔操作および自律飛行が可能な、マルチロータの回転翼機型の飛行装置に取り付けられるパラシュート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遠隔操作および自律飛行が可能な、マルチロータの回転翼機型の飛行装置(以下、単に「回転翼機」とも称する。)の産業分野への実用化が検討されている。例えば、運送業において、回転翼機(所謂ドローン)による荷物の輸送や旅客の輸送等が検討されている。
【0003】
輸送用の回転翼機は、GPS(Global Positioning System)信号等によって自己の位置を特定しながら飛行する自立飛行機能を備えている。しかしながら、何らかの原因で回転翼機に異常が発生した場合、自立飛行ができなくなり、回転翼機の落下等の事故が発生するおそれがある。そのため、回転翼機の安全性の向上が望まれている。
【0004】
特に、輸送用の回転翼機は、今後、より大きな荷物や、旅客を輸送できるように機体の大型化が進むと予想される。このような大型の回転翼機が何らかの原因で制御不能に陥って落下した場合、これまでの回転翼機に比べて、人や構造物に甚大な被害を与えるおそれがある。そのため、回転翼機の大型化を図る場合には、これまで以上に安全性を重視する必要がある。
【0005】
そこで、本願発明者らは、回転翼機の安全性を向上させるために、例えば下記特許文献に開示されているような飛翔体用のパラシュート装置を回転翼機に取り付けることを検討した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の飛翔体用のパラシュートは、飛翔時に発生する気流によりパラシュートが開傘しやすいように設計されているため、上空において静止している状態から落下した場合、すぐに気流の効果が得られず、パラシュートが直ちに開傘しないおそれがあることが発明者らの検討により明らかとなった。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、飛行装置の飛行時または落下時における気流の効果がすぐに得られない場合であっても、確実にパラシュートを開傘可能なパラシュート装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の代表的な実施の形態に係るパラシュート装置は、パラシュートと、前記パラシュートを収容するパラシュート収容部と、前記パラシュートに連結された飛翔体本体部と、ガスを発生するガス発生装置とを有する飛翔体と、前記飛翔体を保持し、保持した前記飛翔体を射出するための射出部と、を備え、前記飛翔体本体部は、前記射出部と係合され、前記ガス発生装置は、前記射出部と前記飛翔体本体部とによって画成される内部空間に配置され、前記射出部は、前記パラシュート収容部の中心軸に対して、前記射出部の前記飛翔体の射出方向における端部が前記パラシュート収容部の中心軸から離れる方向に、傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、飛行装置の飛行時または落下時における気流の効果がすぐに得られない場合であっても、確実にパラシュートを開傘することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係るパラシュート装置を搭載した飛行装置の外観を模式的に示す図である。
【
図2】実施の形態1に係るパラシュート装置を搭載した飛行装置の機能ブロック図である。
【
図3】実施の形態1に係るパラシュート装置の構成を模式的に示す図である。
【
図4】パラシュートが開いた状態を模式的に示す図である。
【
図5A】実施の形態1に係るパラシュート収容部の斜視図である。
【
図5B】実施の形態1に係るパラシュート収容部の上面図である。
【
図5C】実施の形態1に係るパラシュート収容部の側断面図である。
【
図6】実施の形態1に係る飛翔体射出機構の構成を示す図である。
【
図7】実施の形態1に係るパラシュート装置を搭載した飛行装置のパラシュートが開いた状態を模式的に示す図である。
【
図8】実施の形態2に係るパラシュート装置を搭載した飛行装置の外観を模式的に示す図である。
【
図9】実施の形態2に係るパラシュート装置の構成を模式的に示す図である。
【
図10A】実施の形態2に係るパラシュート収容部の上面図である。
【
図10B】実施の形態2に係るパラシュート収容部の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0013】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るパラシュート装置(4,4A)は、パラシュート(400)と、前記パラシュートを収容するパラシュート収容部(40,40A)と、前記パラシュートに連結された飛翔体本体部(44)と、ガスを発生するガス発生装置(45)とを有する飛翔体(43)と、前記飛翔体を保持し、保持した前記飛翔体を射出するための射出部(41)とを備え、前記飛翔体本体部は、前記射出部と係合され、前記ガス発生装置は、前記射出部と前記飛翔体本体部とによって画成される内部空間(440)に配置され、前記射出部は、前記パラシュート収容部の中心軸(P)に対して、前記射出部の前記飛翔体の射出方向における端部(413)が前記パラシュート収容部の中心軸(P)から離れる方向に、傾斜していることを特徴とする。
【0014】
〔2〕上記パラシュート装置(4)において、前記パラシュート収容部は、一端が開口し、他端が有底の筒状に形成され、前記射出部は、前記パラシュート収容部の内側に配置されていてもよい。
【0015】
〔3〕上記パラシュート装置(4)において、前記パラシュート収容部は、筒状の側壁部(401)と、前記側壁部の一端側を塞ぐように形成された底部(402)とを有し、前記側壁部は、前記パラシュート収容部の中心軸(P)から離れる方向に突出して形成された突出部(405)を有し、前記射出部の少なくとも一部は、前記パラシュート収容部の内側における前記突出部によって画成される空間(415)に配置されていてもよい。
【0016】
〔4〕上記パラシュート装置(4A)において、前記パラシュート収容部(40A)は、筒状の側壁部(401A)と、前記側壁部の一端側を塞ぐように形成された底部(402A)とを有し、前記射出部は、前記側壁部の外周面(4010)に配置されていてもよい。
【0017】
〔5〕上記パラシュート装置(4,4A)において、前記側壁部の開口部を覆うカバー部材(49)を更に備えていてもよい。
【0018】
〔6〕上記パラシュート装置において、前記飛翔体を複数有し、前記射出部は、前記飛翔体毎に設けられ、それぞれの前記射出部は、前記パラシュート収容部の中心軸を中心とした回転方向において等間隔に配置されていてもよい。
【0019】
〔7〕本発明の代表的な実施の形態に係る飛行装置(1,1A)は、機体ユニット(2)と、前記機体ユニットに接続され、推力を発生する推力発生部(3,3_1~3_n)と、前記推力発生部を制御する飛行制御部(14)と、前記機体ユニットの飛行時の異常を検出する異常検出部(15)と、上記パラシュート装置(4,4A)と、前記異常検出部による異常の検出に応じて、前記飛翔体を前記射出部から射出させる落下制御部(16)とを備えていてもよい。
【0020】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0021】
≪実施の形態1≫
図1は、実施の形態1に係るパラシュート装置を搭載した飛行装置の外観を模式的に示す図である。
図1に示される飛行装置1は、例えば、3つ以上のロータを搭載したマルチロータの回転翼機型の飛行装置であり、所謂ドローンである。
【0022】
図1に示すように、飛行装置1は、機体ユニット2、推力発生部3_1~3_n(nは3以上の整数)、パラシュート装置4、報知装置5、およびアーム部6を備えている。
【0023】
機体ユニット2は、飛行装置1の本体部分である。機体ユニット2は、後述のように、飛行装置1の飛行を制御するための各種機能部を収容している。なお、
図1では、一例として円柱状の機体ユニット2を図示しているが、機体ユニット2の形状は特に制限されない。
【0024】
推力発生部3_1~3_nは、推力を発生するロータである。なお、以下の説明において、各推力発生部3_1~3_nを特に区別しない場合には、単に、「推力発生部3」と表記する。
【0025】
推力発生部3は、例えば、プロペラ30と、プロペラ30を回転させるモータ31とを、筒状の筐体32に収容した構造を有している。筒状の筐体32の開口部には、プロペラ30との接触を防止するための網(例えば、樹脂材料や金属材料(ステンレス鋼等)等)が設けられていてもよい。
【0026】
飛行装置1が備える推力発生部3の個数は特に制限されないが、3つ以上であることが好ましい。例えば、飛行装置1は、3つの推力発生部3を備えたトライコプター、4つの推力発生部3を備えたクワッドコプター、6つの推力発生部を備えたヘキサコプター、および8つの推力発生部3を備えたオクトコプターなどの何れであってもよい。
【0027】
なお、
図1では、飛行装置1が4つ(n=4)の推力発生部3_1~3_4を搭載したクワッドコプターである場合を一例として図示している。
【0028】
アーム部6は、機体ユニット2と各推力発生部3とを連結するための構造体である。アーム部6は、機体ユニット2から、例えば、機体ユニット2の中央部Oから放射状に突出して形成されている。各アーム部6の先端には、推力発生部3がそれぞれ取り付けられている。
【0029】
報知装置5は、飛行装置1の外部に危険を知らせるための装置である。報知装置5は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等から成る光源や音声発生装置(アンプおよびスピーカ等)を含んで構成されている。報知装置5は、後述する異常検出部15による異常の検出に応じて、飛行装置1が危険な状態であることを、光や音声によって外部に報知する。
【0030】
なお、報知装置5は、機体ユニット2の外部に露出していてもよいし、光源から発生した光やスピーカから発生した音声等を外部に出力可能な形態で機体ユニット2の内部に収容されていてもよい。
【0031】
パラシュート装置4は、飛行装置1に異常が発生し、落下のおそれがある場合に、飛行装置1の落下速度を緩やかにして、飛行装置1を安全に落下させるための装置である。パラシュート装置4は、例えば
図1に示すように、機体ユニット2上に設置されている。なお、パラシュート装置4の具体的な構成については、後述する。
【0032】
図2は、実施の形態1に係るパラシュート装置4を搭載した飛行装置1の機能ブロック図である。
【0033】
図2に示すように、機体ユニット2は、電源部11、センサ部12、モータ駆動部13_1~13_n(nは3以上の整数)、飛行制御部14、異常検出部15、落下制御部16、通信部17、および記憶部18を含む。
【0034】
これらの機能部のうち、飛行制御部14、異常検出部15、および落下制御部16は、例えば、プロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit)および各種メモリを含むマイクロコントローラ等によるプログラム処理によって実現される。
【0035】
電源部11は、バッテリ22と電源回路23とを含む。バッテリ22は、例えば二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)である。電源回路23は、バッテリ22の出力電圧に基づいて電源電圧を生成し、上記機能部を実現する各ハードウェアに供給する回路である。電源回路23は、例えば複数のレギュレータ回路を含み、上記ハードウェア毎に適切な大きさの電源電圧を供給する。
【0036】
センサ部12は、飛行装置1の状態を検知する機能部である。センサ部12は、飛行装置1の機体の傾きを検出する。センサ部12は、例えば、角速度センサ24、加速度センサ25、磁気センサ26、および角度算出部27を含む。
【0037】
角速度センサ24は、角速度(回転速度)を検出するセンサである。例えば、角速度センサ24は、x軸、y軸、およびz軸の3つの基準軸に基づいて角速度を検出する3軸ジャイロセンサである。
【0038】
加速度センサ25は、加速度を検出するセンサである。例えば、加速度センサ25は、x軸、y軸、およびz軸の3つの基準軸に基づいて加速度を検出する3軸加速度センサである。
【0039】
磁気センサ26は、地磁気を検出するセンサである。例えば、磁気センサ26は、x軸、y軸、およびz軸の3つの基準軸に基づいて方位(絶対方向)を検出する3軸地磁気センサ(電子コンパス)である。
【0040】
角度算出部27は、角速度センサ24および加速度センサ25の少なくとも一方の検出結果に基づいて、飛行装置1の機体の傾きを算出する。ここで、飛行装置1の機体の傾きとは、地面(水平方向)に対する機体(機体ユニット2)の角度のことである。
【0041】
例えば、角度算出部27は、角速度センサ24の検出結果に基づいて、地面に対する機体の角度を算出してもよいし、角速度センサ24および加速度センサ25の検出結果に基づいて、地面に対する機体の角度を算出してもよい。なお、角速度センサ24や加速度センサ25の検出結果を用いた角度の算出方法は、公知の計算式を用いてもよい。
【0042】
また、角度算出部27は、角速度センサ24および加速度センサ25の少なくとも一方の検出結果に基づいて算出した角度を、磁気センサ26の検出結果に基づいて補正してもよい。
【0043】
なお、センサ部12は、上述した角速度センサ24、加速度センサ25、および磁気センサ26に加えて、例えば、気圧センサ、風量(風向き)センサ、超音波センサ、GPS受信機、およびカメラ等を含んでもよい。
【0044】
通信部17は、外部装置9と通信を行うための機能部である。ここで、外部装置9は、飛行装置1の動作を制御し、飛行装置1の状態を監視する送信機やサーバ等である。通信部17は、例えば、アンテナおよびRF(Radio Frequency)回路等によって構成されている。通信部17と外部装置9との間の通信は、例えば、ISMバンド(2.4GHz帯)の無線通信によって実現される。
【0045】
通信部17は、外部装置9から送信された飛行装置1の操作情報を受信して飛行制御部14に出力するとともに、センサ部12によって計測された各種計測データ等を外部装置9へ送信する。また、通信部17は、異常検出部15によって飛行装置1の異常が検出された場合に、飛行装置1に異常が発生したことを示す情報を外部装置9に送信する。更に、通信部17は、飛行装置1が地上に落下した場合に、飛行装置1が落下したことを示す情報を外部装置9に送信する。
【0046】
モータ駆動部13_1~13_nは、推力発生部3_n毎に設けられ、飛行制御部14からの指示に応じて、駆動対象のモータ31を駆動する機能部である。
【0047】
なお、以下の説明において、各モータ駆動部13_1~13_nを特に区別しない場合には、単に、「モータ駆動部13」と表記する。
【0048】
モータ駆動部13は、飛行制御部14から指示された回転数でモータ31が回転するように、モータ31を駆動する。例えば、モータ駆動部13は、ESC(Electronic Speed Controller)である。
【0049】
飛行制御部14は、飛行装置1の各機能部を統括的に制御する機能部である。
飛行制御部14は、飛行装置1が安定して飛行するように推力発生部3を制御する。具体的には、飛行制御部14は、通信部17によって受信した外部装置9からの操作情報(上昇や下降、前進や後退等の指示)と、センサ部12の検出結果とに基づいて、機体が安定した状態で所望の方向に飛行するように、各推力発生部3のモータ31の適切な回転数を算出し、算出した回転数を各モータ駆動部13にそれぞれ指示する。
【0050】
飛行制御部14は、例えば風等の外部からの影響によって機体の姿勢が乱れた場合に、角速度センサ24の検出結果に基づいて、機体が水平になるように、各推力発生部3のモータ31の適切な回転数をそれぞれ算出し、算出した回転数を各モータ駆動部13にそれぞれ指示する。
【0051】
また、例えば、飛行制御部14は、飛行装置1のホバリング時に飛行装置1のドリフトを防止するために、加速度センサ25の検出結果に基づいて各推力発生部3のモータ31の適切な回転数を算出し、算出した回転数を各モータ駆動部13にそれぞれ指示する。
【0052】
また、飛行制御部14は、通信部17を制御して、外部装置9との間で上述した各種データの送受信を実現する。
【0053】
記憶部18は、飛行装置1の動作を制御するための各種プログラムやパラメータ等を記憶するための機能部である。例えば、記憶部18は、フラッシュメモリおよびROM等の不揮発性メモリやRAM等から構成されている。
【0054】
記憶部18に記憶される上記パラメータは、例えば、後述する残容量閾値28および傾き閾値29等である。
【0055】
異常検出部15は、飛行時の異常を検出する機能部である。具体的には、異常検出部15は、センサ部12の検出結果と、バッテリ22の状態と、推力発生部3の動作状態とを監視し、飛行装置1が異常状態であるか否かを判定する。
【0056】
ここで、異常状態とは、飛行装置1の自律飛行が不可能になるおそれがある状態を言う。例えば、推力発生部3が故障したこと、バッテリ22の残容量が所定の閾値よりも低下したこと、および機体(機体ユニット2)が異常に傾いたこと、の少なくとも一つが発生した状態を異常状態と言う。
【0057】
異常検出部15は、推力発生部3の故障を検出した場合に、飛行装置1が異常状態であると判定する。ここで、推力発生部3の故障とは、例えば、飛行制御部14が指定した回転数でモータ31が回転しないこと、プロペラ30が回転しないこと、およびプロペラ30の破損したこと等を言う。
【0058】
また、異常検出部15は、バッテリ22の残容量が所定の閾値(以下、「残容量閾値」とも称する。)28よりも低下したことを検出した場合に、飛行装置1が異常状態であると判定する。
【0059】
ここで、残容量閾値28は、例えば、飛行制御部14が指示した回転数でモータが回転できなくなる程度の容量値とすればよい。残容量閾値28は、例えば、予め記憶部18に記憶されている。
【0060】
また、異常検出部15は、飛行装置1(機体)の異常な傾きを検出した場合に、飛行装置1が異常であると判定する。例えば、異常検出部15は、角度算出部27によって算出した角度が所定の閾値(以下、「傾き閾値」とも称する。)29を超えている状態が所定期間継続した場合に、飛行装置1が異常状態であると判定する。
【0061】
傾き閾値29は、例えば、飛行装置1が前後方向に移動するときの角度(ピッチ角)や飛行装置1が左右方向に移動するときの角度(ロール角)を予め実験により取得し、それらの角度よりも大きい値に設定すればよい。傾き閾値29は、例えば、予め記憶部18に記憶されている。
【0062】
落下制御部16は、飛行装置1の落下を制御するための機能部である。具体的には、落下制御部16は、異常検出部15によって飛行装置1が異常状態であることが検出された場合に、飛行装置1を安全に落下させるための落下準備処理を実行する。
【0063】
具体的には、落下制御部16は、落下準備処理として以下に示す処理を実行する。すなわち、落下制御部16は、異常検出部15による異常の検出に応じて報知装置5を制御して、危険な状態であることを外部に報知する。また、落下制御部16は、異常検出部15による異常の検出に応じて各モータ駆動部13を制御して、各モータ31の回転を停止させる。更に、落下制御部16は、異常検出部15による異常の検出に応じて、パラシュートの開傘を指示する制御信号をパラシュート装置4に出力して、パラシュート400を開傘させる。
【0064】
次に、実施の形態1に係るパラシュート装置4について、具体的に説明する。
図3は、実施の形態1に係るパラシュート装置4の構成を模式的に示す図である。
図3には、パラシュート装置4の側断面(部分断面)が示されている。
【0065】
パラシュート装置4は、パラシュート400、パラシュート収容部40、射出部41、射出制御部42、飛翔体43、リード線47、およびカバー部材49を備えている。
【0066】
図4は、パラシュート400が開いた状態を模式的に示す図である。
同図に示すように、パラシュート400は、傘体(キャノピー)406、および吊索407を含む。
【0067】
吊索407は、傘体406とパラシュート収容部40(パラシュート取り付け部404)とを連結する。
【0068】
傘体406は、連結索46によって飛翔体43と連結されている。例えば、
図4に示すように、連結索46は、傘体406の頂点よりもエッジ(周縁)側において、傘体406と接続されている。より具体的には、各連結索46は、パラシュート400の周縁部に、互いに離間して接続されている。例えば、
図4に示すように、パラシュート400が開いたときの頂点側から見たときのパラシュート400の形状が円形状である場合には、各連結索46は、パラシュート400の周縁部の円周方向に沿って等間隔に接続されている。
【0069】
なお、飛翔体43が1つだけ設けられる場合には、連結索46は、パラシュート400の周縁部に接続されていればよい。この場合、連結索46が接続されるパラシュート400の周縁部上の位置については、特に制限されない。
【0070】
連結索46は、例えば、金属材料(例えば、ステンレス鋼)、または、繊維材料(例えば、ナイロン紐)から構成されている。
【0071】
ここで、飛行装置1を低速で落下させるために必要な傘体406の直径Dは、例えば、下記式(1)に基づいて算出することができる。式(1)において、mは飛行装置1の総重量、vは飛行装置1の落下速度、ρは空気密度、Cdは抵抗係数である。
【0072】
【0073】
例えば、飛行装置1の総重量m=250〔kg〕、抵抗係数Cd=0.9、空気密度ρ=1.3kg/mとしたとき、飛行装置1の落下速度vを5〔m/s〕とするために必要な傘体406の直径Dは、式(1)より14.6〔m〕と算出される。
【0074】
例えば
図3に示すように、パラシュート400は、その使用前において、傘体406が折り畳まれた状態でパラシュート収容部40に収容されている。
【0075】
図5A~
図5Cは、パラシュート収容部40の構成を示す図である。
図5Aには、パラシュート収容部40の斜視図が示され、
図5Bには、パラシュート収容部40の上面図が示され、
図5Cには、
図5Bにおけるパラシュート収容部40のA-A断面を示す側断面図が示されている。
なお、
図5A~
図5Cにおいて、パラシュート400、飛翔体43、射出部41、射出制御部42、およびリード線47の全部または一部については、図示を省略している。
【0076】
パラシュート収容部40は、パラシュート400を収容する容器である。
図5A~
図5Cに示すように、パラシュート収容部40は、例えば、一端が開口し、他端が有底の円筒形状を有する。
図1に示すように、パラシュート収容部40は、機体ユニット2の上面、すなわち飛行装置1の飛行時において地面と反対側に面する面に設定されている。例えば、パラシュート収容部40は、機体ユニットの上面において、機体ユニット2の中央部Oとパラシュート収容部40の中心軸Pとが重なるように設置されていることが好ましい。
【0077】
パラシュート収容部40は、筒状の側壁部401と、側壁部401の一端側の開口を塞ぐように形成された底部402とを有する。パラシュート収容部40は、例えば、樹脂から構成されている。側壁部401および底部402は、例えば樹脂成形品として一体成形されていてもよいし、別個の部品として形成され、互いに接合されていてもよい。本実施の形態では、側壁部401と底部402とが一体成形された部品であるとして説明する。
【0078】
側壁部401は、例えば、テーパ状の筒形状を有する。より具体的には、側壁部401は、上面の面積と下面の面積が異なる円錐台状の外形を有している。側壁部401において、開口側の半径r1は、底部402側の半径r2よりも大きい。
【0079】
パラシュート収容部40において、パラシュート400を収容するための収容空間403が側壁部401と底部402とによって画成されている。
【0080】
底部402には、パラシュート収容部40とパラシュート400とを連結するためのパラシュート取り付け部404が設けられている。例えば、
図4に示したように、パラシュート400の吊索407の一端がパラシュート取り付け部404に連結されることにより、パラシュート400とパラシュート収容部40とが連結される。
【0081】
図5A~
図5Cに示すように、側壁部401は、パラシュート収容部40の中心軸Pから離れる方向に突出して形成された突出部405を有している。換言すれば、突出部405は、側壁部401の一部を他の部分よりも外側に突出させることによって形成されている。
【0082】
パラシュート収容部40の内側には、側壁部401の突出部405によって、空間415が画成されている。
図5A~
図5Cに示すように、射出部41の少なくとも一部は、パラシュート収容部40の内側における空間415に配置されている。
【0083】
パラシュート収容部40には、側壁部401の開口部を覆うカバー部材49が設けられていてもよい。カバー部材49は、例えば、樹脂材料から成る蓋であってもよいし、薄膜部材であってもよい。
図3に示すように、カバー部材49は、突出部405によって形成される開口部も覆うように、パラシュート収容部40の開口部を全体的に覆って配置されることが好ましい。カバー部材49は、パラシュート400および飛翔体射出機構50を収容空間403に収容した後に、パラシュート収容部40に固定される。カバー部材49は、飛翔体43の射出時にカバー部材49がパラシュート収容部40から容易に外れる程度の締結力よって、パラシュート収容部40に固定されている。
【0084】
飛翔体43は、パラシュート400をパラシュート収容部40の外部に放出し、パラシュート400の開傘(展開)を補助するための装置である。飛翔体43は、ガスを発生するガス発生装置45を有する。
【0085】
リード線47は、ガス発生装置45を点火するための電気配線である。リード線47は、例えば、ビニール線、すずめっき線、またはエナメル線等から構成されている。リード線47の一端は、ガス発生装置45に接続され、リード線47の他端は、射出制御部42に接続されている。
【0086】
射出制御部42がリード線47を介してガス発生装置45を点火することにより、ガス発生装置45からガスが発生する。飛翔体43は、ガス発生装置45から発生したガスを噴射することによって推力を得て、射出部41から射出される。
【0087】
パラシュート装置4は、少なくとも1つの飛翔体43を備えている。例えば、パラシュート装置4は、3つ以上の飛翔体43を備えていることが好ましい。本実施の形態では、一例として、
図1に示すように、パラシュート装置4が3つの飛翔体を備えている場合を例にとり説明する。なお、飛翔体43の具体的な構成については後述する。
【0088】
射出制御部42は、飛翔体43を射出部41から射出するための制御を行う機能部である。射出制御部42は、例えば、機体ユニット2内の落下制御部16からパラシュート400の開傘を指示する制御信号を受信した場合に、点火信号を出力する。点火信号がリード線47を介して各飛翔体43に設けられたガス発生装置45に入力されることにより、後述する点火薬453が点火して、ガス発生装置45からガスが発生する。
【0089】
射出部41は、飛翔体43を保持し、保持している飛翔体43を射出するため装置である。射出部41は、飛翔体43毎に設けられている。
図1に示すように、実施の形態1に係るパラシュート装置4は、3つの飛翔体43を別々に収容するために、3つの射出部41を備えている。
【0090】
図3および
図5Cに示すように、射出部41は、一端が開口し、他端が有底の筒状に形成されている。具体的には、射出部41は、筒状(例えば円筒状)の側壁部411と、側壁部411の一方の開口を覆う底部412とを有する。側壁部411と底部412とは、飛翔体43を収容するための収容空間を画成している。側壁部411には、後述するように、リード線47を通すための貫通穴4110が形成されている。
【0091】
側壁部411および底部412は、例えば樹脂から構成されている。側壁部411および底部412は、例えば樹脂成形品として一体成形されていてもよいし、別個の部品として形成され、互いに接合されていてもよい。本実施の形態では、射出部41は、側壁部411と底部412とが一体成形された部品であるとして説明する。
【0092】
射出部41は、パラシュート収容部40に設けられている。具体的には、上述したように、各射出部41は、パラシュート収容部40の側壁部401に形成された複数の突出部405によって画成される各空間415に、一つずつ配置されている。
【0093】
ここで、各射出部41は、例えば
図1等に示すように、パラシュート収容部40の中心軸Pに対して、射出部41の飛翔体43の射出方向(射出部41の中心軸Qと平行な方向:軸線方向Q)における端部がパラシュート収容部40の中心軸Pから離れる方向に、傾斜している。
【0094】
より具体的には、
図5Cに示すように、各射出部41は、パラシュート収容部40(側壁部401)の中心軸Pに垂直な方向から見たときに、パラシュート収容部40の中心軸Pと各射出部41の中心軸Qとのなす角(角度φ)が鋭角(0°<φ<90°)となるように、配置されている。
【0095】
また、複数の射出部41は、パラシュート収容部40の中心軸Pを中心とした回転方向において等間隔に配置されている。例えば、本実施の形態のように、パラシュート装置4が3つの射出部41を有している場合には、各射出部41は、パラシュート収容部40の中心軸Pを中心とした回転方向に120°(=360°/3)間隔で配置される。
【0096】
図6は、実施の形態1に係る飛翔体射出機構の構成を示す図である。
同図には、飛翔体43、射出部41、およびリード線47を含む飛翔体射出機構50の断面形状が示されている。
【0097】
飛翔体43は、ガス発生装置45と飛翔体本体部44を有する。
図6に示すように、飛翔体43は、飛翔体本体部44の一端側が射出部41の内側に挿入され、且つ、射出部41の内側においてガス発生装置45が射出部41の底部412(底面412a)と対面した状態で、配置されている。
【0098】
ガス発生装置45は、飛翔体43を射出部41の射出口413から射出するための推力の基になるガスを発生する装置である。ガス発生装置45は、例えば
図6に示すように、ハウジング451、封止部材452、点火薬453、およびガス発生剤454を有する。
【0099】
ハウジング451は、ガス発生装置45を収容するとともにガス発生装置45から発生したガスを放出するガス放出室455を有する筐体である。例えば、ハウジング451は、ドーム形状を有している。ハウジング451は、例えば、樹脂から構成されている。好ましくは、ハウジング451は、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber-Reinforced Plastics)等によって構成されている。なお、ハウジング451は、樹脂に限らず金属によって構成されていてもよい。
【0100】
図6に示すように、ガス放出室455には、ガス発生剤454が充填されている。
点火薬453は、ガス発生剤を点火するための薬剤である。点火薬453は、リード線47の一端に形成されている。例えば、樹脂等を混ぜ込んだ液状の点火薬をリード線47の先端に塗り固めることにより、リード線47の一端に点火薬453を固定することができる。
【0101】
なお、
図6では、点火薬453が球状である場合が例示されているが、点火薬453の形状は特に制限されない。
【0102】
点火薬453は、少なくとも一部がガス発生剤454に覆われた状態で固定されている。例えば、
図6に示すように、点火薬453は、ハウジング451内において、ガス発生剤454に埋め込まれた状態で固定されている。点火薬453の固定方法は、例えば以下の通りである。
【0103】
先ず、樹脂等を混ぜ込んだ粉状のガス発生剤454をハウジング451のガス放出室455内に流し込む。その後、粉状のガス発生剤454中に、リード線47の先端に形成された点火薬453を入れた状態でガス発生剤454を圧填する。これにより、点火薬453が、ガス発生剤454の内部に固定されるとともに、リード線47の一端がガス発生装置45と接続される。
【0104】
点火薬453は、リード線(導線)47を介して射出制御部42と電気的に接続されている。点火薬453は、射出制御部42から出力された点火信号に応じて点火し、ガス発生剤454を化学的に反応させることにより、ガスを発生させる。
【0105】
ガス放出室455には、ガス発生剤454から発生したガスを放出するガス放出孔456が形成されている。また、ガス放出室455には、ガス放出孔456を覆ってガス発生剤454をガス放出室455内に封止する封止部材452が設けられている。
【0106】
封止部材452は、ガス発生剤454からガスが発生した場合に、発生したガスの圧力によって容易に破壊される材料によって構成されている。例えば、封止部材452は、ポリエステル等の薄膜である。
【0107】
ガス発生装置45は、射出部41と飛翔体本体部44とによって画成される内部空間440に配置されている。
【0108】
飛翔体本体部44は、パラシュートに連結される部品である。飛翔体本体部44は、ガス発生装置45を保持するとともに、連結索46に連結される。飛翔体本体部44は、例えば、棒状に形成されている。より具体的には、飛翔体本体部44は、例えば一部が中空の円柱状に形成されている。飛翔体本体部44は、射出部41と係合されている。
【0109】
飛翔体本体部44は、一端においてガス発生装置45を保持し、他端において連結索46と連結されている。換言すれば、飛翔体本体部44は、軸線方向Qにおいて、ガス発生装置45を保持する保持部441と、連結索46と連結するための連結部442の二つの機能部に分けられている。例えば、保持部441および連結部442はそれぞれ有底の筒形状を有している。保持部441と連結部442とは、互いの底面が対面し、且つ同軸となるように接合されている。
【0110】
飛翔体本体部44は、例えば、樹脂から構成されている。保持部441および連結部442は、例えば樹脂成形品として一体成形されていてもよいし、別個の部品として形成され、互いに接合されていてもよい。本実施の形態では、飛翔体本体部44は、保持部441と連結部442とが一体成形された部品であるとして説明する。
【0111】
保持部441は、その内部にガス発生装置45を収容して、保持する。具体的には、保持部441は、射出部41の内部において、ガス発生装置45のガスが放出される側、すなわちハウジング451のガス放出孔456(封止部材452)側が射出部41の底部412(底面412a)と対面するように、ガス発生装置45を保持している。例えば、保持部441は、ガス発生装置45の形状に対応するように形成された穴441aを有している。例えば、ガス発生装置45(ハウジング451)が穴441aに対して圧入または接着されることにより、ガス発生装置45が保持部441に保持される。
【0112】
連結部442は、軸線方向Qと平行な方向において保持部441と反対側に突出して形成されている。上述したように、連結部442は、有底の筒状(例えば円筒状)に形成されている。連結部442は、保持部441と反対側の端部に、連結索46を係止するための係止部4420を有する。係止部4420は、例えば貫通穴である。例えば、連結索46は、係止部4420としての貫通穴に挿通された状態で係止部4420に係止されている。
【0113】
実施の形態1に係る飛翔体射出機構50において、リード線47は、一端がガス発生装置45と接続された状態で、内部空間440から飛翔体43の射出方向(軸線方向Q)と異なる方向に引き出されている。
【0114】
具体的には、リード線47は、飛翔体43の射出方向と交差する方向に引き出されている。例えば、リード線47は、
図6における軸線方向Qと直交するR方向に引き出されている。より具体的には、
図6に示すように、リード線47は、ガス発生装置45のハウジング451に形成された貫通穴4510と、飛翔体本体部44の保持部441に形成された貫通穴4410と、射出部41の側壁部411に形成された貫通穴4110とを通って、射出部41の外部に引き出されている。
【0115】
リード線47は、飛翔体43が射出部41の射出口413から射出されたときに、切断可能に構成されている。例えば、飛翔体43が射出口413から射出されたときに、飛翔体43によってリード線47が引っ張られ、その引張力によってリード線47が貫通穴4110の縁部に押し付けられることにより、リード線47を破断することが可能となっている。
【0116】
次に、実施の形態1に係るパラシュート装置4におけるパラシュート400の開傘の流れについて説明する。
【0117】
例えば、パラシュート装置4を搭載した飛行装置1が飛行しているときに、強風によって飛行装置1の機体(機体ユニット2)の傾きが傾き閾値29を超えた状態が所定期間継続し、異常検出部15が異常状態であると判定した場合、飛行装置1側の落下制御部16が、パラシュート400の開傘を指示する制御信号をパラシュート装置4の射出制御部42に対して送信する。
【0118】
射出制御部42は、パラシュート400の開傘を指示する制御信号を受信した場合、リード線47を介してガス発生装置45に点火信号を出力する。具体的には、射出制御部42はリード線47に所定の電流を流して、リード線47の一端に形成されている点火薬453を点火させる。
【0119】
点火薬453が点火することにより、点火薬453を覆っているガス発生剤454が化学的に反応し、ガスが発生する。ガス放出室455内に発生したガスの圧力が高まると、ガス放出孔456を覆っている封止部材452が破れる。これにより、ガス放出室455内のガスが、ガス放出孔456から射出部41内の空間418に放出され、空間418にガスが充満する。そして、空間418内のガスの圧力が所定値を超えたとき、飛翔体43は、ガスの圧力によって射出口413側に移動し、射出部41の射出口413から射出される。
【0120】
このとき、点火薬453とともにガス発生剤454に固定されていたリード線47は、ガス発生剤454が化学的に反応することにより、飛翔体43と分離可能になる。そのため、飛翔体43が射出部41から射出されたとき、例えば、リード線47は、飛翔体43から分離し、射出部41側に残る。あるいは、リード線47が射出部41の貫通穴4110の縁部によって切断され、リード線47の一部が飛翔体43とともに射出され、リード線47の残りの部分が射出部41側に残る。
【0121】
飛翔体43が各射出部41からそれぞれ射出されると、各飛翔体43は、連結索46を介してパラシュート400を引っ張る。これにより、パラシュート400がパラシュート収容部40から放出される。その後、各飛翔体43によって更に引っ張られたパラシュート400は、畳まれた状態の傘体406の内部に空気が入り込むことによって、開傘する。
【0122】
図7は、実施の形態1に係る飛行装置1のパラシュート400が開いた状態を模式的に示す図である。
例えば、上述した処理手順を経て各飛翔体43が射出された場合、各飛翔体43は、射出部41の中心軸Qの軸線方向に飛び出す。すなわち、各飛翔体43は、パラシュート収容部40の中心軸Pから離れる方向に飛行する。これにより、各飛翔体43は、真上に(パラシュート収容部40の中心軸Pと平行な方向に)射出する場合に比べて、放出されたパラシュート400の傘体406をその頂点部分からエッジ(周縁)側に効果的に引っ張ることができる。これにより、傘体406を速やかに広げて空気をはらみ易くすることができる。
【0123】
以上、実施の形態1に係るパラシュート装置4は、パラシュート400を収容するパラシュート収容部40と、パラシュート400に連結された飛翔体本体部44およびガスを発生するガス発生装置45を有する飛翔体43と、飛翔体43を保持し、保持した飛翔体43を射出するための射出部41とを備え、射出部41は、パラシュート収容部40の中心軸Pに対して、射出部41の飛翔体43の射出方向における端部(射出口413)がパラシュート収容部40の中心軸Pから離れる方向に、傾斜している。
【0124】
これによれば、上述したように、射出部41が、パラシュート収容部40の中心軸Pに対して、射出部41の飛翔体43の射出方向における端部(射出口413)がパラシュート収容部40の中心軸Pから離れる方向に、傾斜しているので、ガス発生装置45から発生したガスの圧力によって射出された飛翔体本体部44は、パラシュート収容部40の中心軸Pから離れる方向に飛行する。これにより、パラシュート400の傘体406は、各飛翔体43によって、傘体406の頂点部分からエッジ(周縁)側に引っ張られる。これにより、傘体406を速やかに広げて空気をはらみ易くすることができるので、パラシュート400を素早く且つ確実に開傘させることが可能となる。
【0125】
したがって、飛行装置1のような地上に対して垂直な方向へ移動することが多い回転翼機にパラシュート装置4を取り付けた場合であっても、確実にパラシュート400を開傘させることが可能となる。
【0126】
また、パラシュート装置4において、射出部41は、パラシュート収容部40の内側に配置されている。
これによれば、外部から衝撃等が射出部41や飛翔体43に直接加わることを防ぐことができるので、飛翔体射出機構50の信頼性を向上させることができる。
【0127】
また、パラシュート装置4において、パラシュート収容部40の側壁部401は、パラシュート収容部40の中心軸Pから離れる方向に突出して形成された突出部405を有し、射出部41の少なくとも一部は、パラシュート収容部40の内側における突出部405によって画成される空間415に配置されている。
【0128】
これによれば、パラシュート収容部40の内側に射出部41を設けることによる、パラシュート収容部40内の収容空間403の狭小化を抑えることが可能となる。すなわち、パラシュート収容部40内のパラシュート400を収容するための収容空間403をより広く確保することができるので、より大きなパラシュート400を採用することが可能となる。
【0129】
また、パラシュート装置4は、パラシュート収容部40の側壁部401の開口部を覆うカバー部材49を更に備えている。
【0130】
これによれば、パラシュート400のみならず、飛翔体射出機構50が雨水や異物に曝されることによる飛翔体射出機構50の劣化、例えば飛翔体43のガス発生装置45の劣化を防止することが可能となる。
【0131】
また、
図5A~
図5Cに示すように、各射出部41は、パラシュート収容部40の中心軸Pを中心とした回転方向に等間隔に配置されている。これによれば、射出された飛翔体43によって、パラシュート400の傘体406を複数の方向から均等に引っ張ることが可能となる。これにより、より確実にパラシュート400を開傘させることが可能となる。
【0132】
≪実施の形態2≫
図8は、実施の形態2に係るパラシュート装置を搭載した飛行装置の外観を模式的に示す図である。
【0133】
図8に示される、実施の形態2に係るパラシュート装置4Aは、飛翔体射出機構50Aがパラシュート収容部40Aの外側に配置される点において、実施の形態1に係るパラシュート装置4と相違し、その他の点においては、実施の形態1に係るパラシュート装置4と同様である。
【0134】
図9は、実施の形態2に係るパラシュート装置4Aの構成を模式的に示す図である。
図9には、パラシュート装置4Aの側断面(部分断面)が示されている。
図9に示すように、パラシュート装置4Aにおいて、飛翔体43、射出部41A、およびリード線47を含む飛翔体射出機構50Aは、パラシュート収容部40Aの側壁部401Aの外側に設置されている。
【0135】
図10A、
図10Bは、実施の形態2に係るパラシュート収容部40Aの構成を示す図である。
図10Aには、パラシュート収容部40Aの上面図が示され、
図10Bには、
図10Aにおけるパラシュート収容部40のA-A断面を示す側断面図が示されている。
【0136】
なお、
図10Aおよび
図10Bにおいて、パラシュート400、飛翔体43、射出部41A、射出制御部42、およびリード線47の全部または一部については、図示を省略している。
【0137】
パラシュート収容部40Aは、筒状の側壁部401Aと、側壁部401Aの一端側の開口を塞ぐように形成された底部402Aとを有する。パラシュート収容部40Aは、実施の形態1に係るパラシュート収容部40と同様に、例えば、側壁部401Aと底部402Aとが一体に形成された樹脂成型品である。
【0138】
側壁部401Aは、例えば、上面の面積と下面の面積が異なる円錐台状(テーパ状)の外形を有している。側壁部401Aにおいて、開口側の半径r1Aは、底部402A側の半径r2よりも大きい。
【0139】
パラシュート収容部40Aにおいて、パラシュート400を収容するための収容空間403が側壁部401Aと底部402Aとによって画成されている。
【0140】
底部402Aにおける側壁部401Aの開口部側の面には、パラシュート収容部40Aとパラシュート400とを連結するためのパラシュート取り付け部404が設けられている。底部402Aにおける側壁部401Aの開口部と反対側の面(
図1における機体ユニット2側の面)には、射出制御部42が設けられている。
【0141】
射出部41Aは、パラシュート収容部40Aに設けられている。具体的には、
図10A等に示すように、各射出部41Aは、側壁部401Aの外周面4010に配置されている。
【0142】
ここで、射出部41Aは、パラシュート収容部40Aの中心軸Pに対して、射出部41Aの飛翔体43の射出方向(射出部41Aの軸線方向Q)における端部がパラシュート収容部40の中心軸Pから離れる方向に、傾斜している。
【0143】
具体的には、各射出部41A(側壁部411A)の中心軸Qは、各側壁部411Aにおける底部412Aと反対側の端部に形成された開口部である射出口413がパラシュート収容部40Aの中心軸Pから離れる方向に、傾斜している。
【0144】
より具体的には、
図10Bに示すように、各射出部41Aは、パラシュート収容部40Aの中心軸Pに垂直な方向から見たときに、パラシュート収容部40Aの中心軸Pと各射出部41Aの中心軸Qとのなす角(角度φ)が鋭角(0°<φ<90°)となるように、配置されている。
【0145】
また、複数の射出部41Aは、パラシュート収容部40Aの中心軸Pを中心とした回転方向において等間隔に配置されている。例えば、実施の形態2のように、パラシュート装置4Aが3つの射出部41Aを有している場合には、各射出部41Aは、パラシュート収容部40Aの中心軸Pを中心とした回転方向に120°(=360°/3)間隔で配置される。
【0146】
パラシュート収容部40Aには、側壁部401Aの開口部を覆うカバー部材49が設けられていてもよい。例えば、
図9に示すように、カバー部材49は、側壁部401Aのみならず、飛翔体射出機構50Aの少なくとも一部を覆うように配置されることが好ましい。
【0147】
以上、実施の形態2に係るパラシュート装置4Aは、実施の形態1に係るパラシュート装置4と同様に、射出部41Aが、パラシュート収容部40Aの中心軸Pに対して、射出部41Aの飛翔体43の射出方向(軸線方向Q)における端部がパラシュート収容部40Aの中心軸Pから離れる方向に、傾斜している。
【0148】
これによれば、実施の形態1に係るパラシュート装置4と同様に、ガス発生装置45から発生したガスの圧力によって射出された飛翔体本体部44は、パラシュート収容部40Aの中心軸Pから離れる方向に飛行する。これにより、傘体406を速やかに広げて空気をはらみ易くすることができるので、パラシュート400を素早く且つ確実に開傘させることが可能となる。
【0149】
また、パラシュート装置4Aにおいて、射出部41Aは、パラシュート収容部40Aの側壁部411Aの外周面4010に配置されている。これによれば、パラシュート収容部40A内のパラシュート400収容するための収容空間403をより広く確保することができるので、より大きなパラシュート400を採用することが可能となる。
【0150】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0151】
例えば、上記実施の形態において、射出制御部42がパラシュート装置4,4Aに設けられる場合を例示したが、これに限られない。例えば、射出制御部42は、機体ユニット2に設けられていてもよい。
【0152】
また、上記実施の形態では、パラシュート収容部40,40Aが円筒状である場合を例示したが、これに限られない。すなわち、パラシュート収容部40,40Aは、内部にパラシュート400を収容するための空間を有していればよく、例えば、多角柱(例えば四角柱)状であってもよい。
【0153】
また、パラシュート収容部40,40Aがテーパ状である場合を例示したが、これに限られない。なお、パラシュート収容部40,40Aの外形をテーパ状にしない場合には、射出部41,41Aの中心軸Qの角度(中心軸Qの中心軸Pに対する角度φ)が適切になるように、パラシュート収容部40,40Aに対する射出部41の接合構造を工夫する必要がある。
【0154】
また、上記実施の形態において、射出部41,41Aの外形が円筒状である場合を例示したが、これに限られない。すなわち、射出部41,41Aは、内部に飛翔体43を収容し、飛翔体43を射出可能な構造であればよく、例えば、外形が多角柱(例えば四角柱)状で、飛翔体43を収容する内部空間が円筒状であってもよい。
【0155】
また、実施の形態1において、射出制御部42がパラシュート収容部40の内側に配置される場合を例示したが、これに限られず、実施の形態2に係るパラシュート装置4Aのように、射出制御部42をパラシュート収容部40の外側(例えば、底部402における機体ユニット2側の面)に配置してもよい。また、実施の形態2において、射出制御部42がパラシュート収容部40Aの外側に配置される場合を例示したが、これに限られず、実施の形態1に係るパラシュート装置4のように、射出制御部42をパラシュート収容部40Aの内側(例えば、底部402Aにおける側壁部401Aの開口部側の面)に配置してもよい。
【符号の説明】
【0156】
1,1A…飛行装置、2…機体ユニット、3,3_1~3_n…推力発生部、4,4A…パラシュート装置、5…報知装置、6…アーム部、9…外部装置、11…電源部、12…センサ部、13,13_1~13_n…モータ駆動部、14…飛行制御部、15…異常検出部、16…落下制御部、17…通信部、18…記憶部、22…バッテリ、23…電源回路、24…角速度センサ、25…加速度センサ、26…磁気センサ、27…角度算出部、28…残容量閾値、29…傾き閾値、30…プロペラ、31…モータ、32…筐体、40,40A…パラシュート収容部、41,41A…射出部、42…射出制御部、43…飛翔体、44…飛翔体本体部、45…ガス発生装置、46…連結索、47…リード線(導線)、49…カバー部材、50,50A…飛翔体射出機構、400…パラシュート、401,401A…側壁部、402,402A…底部、403…収容空間、404…パラシュート取り付け部、405…突出部、406…傘体(キャノピー)、407…吊索、411,411A…側壁部、412,412A…底部、412a…底面、413…射出口、415,418…空間、440…内部空間、441…保持部、441a…穴、442…連結部、451…ハウジング、452…封止部材、453…点火薬、454…ガス発生剤、455…ガス放出室、456…ガス放出孔、4010…外周面、4110,4410,4510…貫通穴、4420…係止部、O…中央部、P…中心軸、Q…中心軸、軸線方向。