(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】フロアカーペットの開口閉止具
(51)【国際特許分類】
B60N 3/04 20060101AFI20220713BHJP
F16B 21/06 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
B60N3/04 A
F16B21/06 A
(21)【出願番号】P 2019155651
(22)【出願日】2019-08-28
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】小西 徹
(72)【発明者】
【氏名】矢口 亮助
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 勇太
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-164452(JP,U)
【文献】特開2016-055823(JP,A)
【文献】特開2008-163961(JP,A)
【文献】実開平05-054811(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/04
A47G 27/00-27/06
F16B 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジ部と、前記ヒンジ部の両端の間を前記ヒンジ部から離れて延びるスリットと、を有する車両のフロアカーペットであって、前記ヒンジ部と前記スリットとで画定される回動舌部が前記ヒンジ部の周りを回動することによって前記フロアカーペットに開口が形成される車両のフロアカーペットに取り付けられた開口閉止具であって、
前記回動舌部に取り付けられた第1のカバー部材と、前記フロアカーペットの本体部に取り付けられ前記第1のカバー部材と対向する第2のカバー部材と、を有し、前記第1のカバー部材は第1の係合部を有し、前記第2のカバー部材は前記第1の係合部と着脱可能に係合する第2の係合部を有し
、前記第1のカバー部材は、前記回動舌部の先端縁部で前記スリットを跨ぐとともに、前記先端縁部の全長に渡って前記スリットの全幅を覆っている、フロアカーペットの開口閉止具。
【請求項2】
ヒンジ部と、前記ヒンジ部の両端の間を前記ヒンジ部から離れて延びるスリットと、を有する車両のフロアカーペットであって、前記ヒンジ部と前記スリットとで画定される回動舌部が前記ヒンジ部の周りを回動することによって前記フロアカーペットに開口が形成される車両のフロアカーペットに取り付けられた開口閉止具であって、
前記回動舌部に取り付けられた第1のカバー部材と、前記フロアカーペットの本体部に取り付けられ前記第1のカバー部材と対向する第2のカバー部材と、を有し、前記第1のカバー部材は第1の係合部を有し、前記第2のカバー部材は前記第1の係合部と着脱可能に係合する第2の係合部を有し、
前記回動舌部は少なくとも一つの第1の貫通孔を有し、前記本体部は少なくとも一つの第2の貫通孔を有し、
前記第1のカバー部材は、前記第1の貫通孔を通り先端に第3の係合部を有する第1の突状部を有し、前記第2のカバー部材は、前記第2の貫通孔を通り先端に第4の係合部を有する第2の突状部を有し、
前記第3の係合部と前記第4の係合部にそれぞれ係合し、前記開口閉止具を前記フロアカーペットに固定する複数の固定部材をさらに有する
、開口閉止具。
【請求項3】
ヒンジ部と、前記ヒンジ部の両端の間を前記ヒンジ部から離れて延びるスリットと、を有する車両のフロアカーペットであって、前記ヒンジ部と前記スリットとで画定される回動舌部が前記ヒンジ部の周りを回動することによって前記フロアカーペットに開口が形成される車両のフロアカーペットに取り付けられた開口閉止具であって、
前記回動舌部に取り付けられた第1のカバー部材と、前記フロアカーペットの本体部に取り付けられ前記第1のカバー部材と対向する第2のカバー部材と、を有し、前記第1のカバー部材は第1の係合部を有し、前記第2のカバー部材は前記第1の係合部と着脱可能に係合する第2の係合部を有し、
前記第1のカバー部材は、前記第1の係合部の内側に前記第1の係合部の変形を規制するストッパを有している
、開口閉止具。
【請求項4】
ヒンジ部と、前記ヒンジ部の両端の間を前記ヒンジ部から離れて延びるスリットと、を有する車両のフロアカーペットであって、前記ヒンジ部と前記スリットとで画定される回動舌部が前記ヒンジ部の周りを回動することによって前記フロアカーペットに開口が形成される車両のフロアカーペットに取り付けられた開口閉止具であって、
前記回動舌部に取り付けられた第1のカバー部材と、前記フロアカーペットの本体部に取り付けられ前記第1のカバー部材と対向する第2のカバー部材と、を有し、前記第1のカバー部材は第1の係合部を有し、前記第2のカバー部材は前記第1の係合部と着脱可能に係合する第2の係合部を有し、
前記フロアカーペットは前記第1のカバー部材と前記第2のカバー部材が互いに連結される位置に切欠きを有し、前記第1のカバー部材と前記第2のカバー部材の少なくともいずれかは前記切欠きに収容される突状部を有する
、開口閉止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車のフロアカーペットの開口閉止具に関し、特に一部が回動することで開口が形成されるフロアカーペットに取り付けられる開口閉止具に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロアカーペットは、遮音や意匠性の付与の目的で自動車のフロアパネルに設置される。近年フロアパネルに車両識別番号(以下、VINという)が刻設される自動車が開発されている。VINは日常的に確認する必要はないが、容易に確認できるようにするため、フロアカーペットに開口が設けられることがある。通常、開口は開口閉止具で閉止されている。特許文献1には、VINが視認可能なフロアカーペットの開口から内側に突き出すヒンジ片と、ヒンジ片に固定され、開口を塞ぐ蓋部材と、を有するフロアカーペットの開口閉止具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のフロアカーペットの開口閉止具は蓋部材を必要とする。フロアカーペットの開口はVINの確認に必要な大きさである必要があることから、開口を塞ぐ蓋部材は大型化しやすい。
【0005】
本発明は、簡易で小型化が可能なフロアカーペットの開口閉止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ヒンジ部と、ヒンジ部の両端の間をヒンジ部から離れて延びるスリットと、を有する車両のフロアカーペットであって、ヒンジ部とスリットとで画定される回動舌部がヒンジ部の周りを回動することによってフロアカーペットに開口が形成される車両のフロアカーペットに取り付けられた開口閉止具に関する。開口閉止具は、回動舌部に取り付けられた第1のカバー部材と、フロアカーペットの本体部に取り付けられ第1のカバー部材と対向する第2のカバー部材と、を有している。第1のカバー部材は第1の係合部を有し、第2のカバー部材は第1の係合部と着脱可能に係合する第2の係合部を有している。
一態様では、第1のカバー部材は、回動舌部の先端縁部でスリットを跨ぐとともに、先端縁部の全長に渡ってスリットの全幅を覆っている。
他の態様では、回動舌部は少なくとも一つの第1の貫通孔を有し、本体部は少なくとも一つの第2の貫通孔を有し、第1のカバー部材は、第1の貫通孔を通り先端に第3の係合部を有する第1の突状部を有し、第2のカバー部材は、第2の貫通孔を通り先端に第4の係合部を有する第2の突状部を有し、第3の係合部と第4の係合部にそれぞれ係合し、開口閉止具をフロアカーペットに固定する複数の固定部材をさらに有している。
さらに他の態様では、第1のカバー部材は、第1の係合部の内側に第1の係合部の変形を規制するストッパを有している。
さらに他の態様では、フロアカーペットは第1のカバー部材と第2のカバー部材が互いに連結される位置に切欠きを有し、第1のカバー部材と第2のカバー部材の少なくともいずれかは切欠きに収容される突状部を有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、少なくとも、フロアカーペットの回動舌部に取り付けられる第1のカバー部材と、フロアカーペットの不動部に取り付けられる第2のカバー部材と、があればよい。これらのカバー部材の大きさは開口の大きさに一致させる必要がない。このため、本発明によれば、より構成が簡易で小型化が可能なフロアカーペットの開口閉止具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る開口閉止具が取り付けられたフロアカーペットの斜視図である。
【
図2】
図1に示すフロアカーペットと開口閉止具の部分拡大斜視図である。
【
図3】フロアカーペットの回動舌部と開口閉止具の平面図と断面図である。
【
図4】第1及び第2のカバー部材の斜視図と側面図である。
【
図7】第1の係合部と第2の係合部との係合方法を示す模式図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る開口閉止具の断面図である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る開口閉止具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明のフロアカーペット2の開口閉止具3の実施形態について説明する。図面において、FRは車両前方方向、REは車両後方方向、Rは車両前方方向に関し右方向、Lは車両前方方向に関し左方向、Uは鉛直方向に関し上方向、Dは鉛直方向に関し下方向を意味する。
【0010】
まず、本発明の開口閉止具3が適用される車両のフロアカーペット2について説明する。
図1は、本実施形態の開口閉止具3が取り付けられた車両のフロアカーペット2の斜視図である。開口閉止具3が取り付けられたフロアカーペット2をフロアカーペット組立体1という。
図2はフロアカーペット2の部分拡大斜視図であり、併せて開口閉止具3も示している。
図3(a)はフロアカーペット2の回動舌部25と開口閉止具3の平面図、
図3(b)は
図3(a)のA-A線に沿った断面図である。フロアカーペット2は自動車のフロアパネル4(図
3(b)参照)に設置される。フロアカーペット2は三次元形状にプレス成形されている。フロアカーペット2はダッシュパネルの形状に沿うように前方が若干傾斜するとともに、左右方向中央部にコンソールを受け入れるための切欠部21が形成されている。フロアカーペット2は基布にパイル糸を刺し込むことにより形成されたタフテッドカーペットや、繊維ウェブや不織布をニードリングすることにより形成されたニードルパンチカーペットを用いることができる。一例では、フロアカーペット2はディロア層(目付350g/m
2)、吸音層(目付500g/m
2)、ポリエチレン(PE)層(目付200g/m
2)、防音材層(目付600g/m
2)の積層構造である。
【0011】
フロアカーペット2の右側中央部に、VIN確認用の開口22を形成するスリット23(
図2参照)と、開口22(スリット23)を閉じる開口閉止具3とが設けられている(
図1のA部参照)。VIN5は頻繁に確認する必要がないため、フロアパネル4の前部座席(運転席または助手席)の下方に設けられている。開口閉止具3も前部座席の下方に設けられている。乗員に踏まれたときにフロアカーペット2の沈み込みを防止するためのスペーサは設けられていない。開口閉止具3とフロアパネル4との間は空間Sとなっている。
【0012】
スリット23は概ね、台形の長辺を除く3辺に相当する形状を有し、台形の長辺に相当する部分はヒンジ部24とされている。フロアカーペット2のヒンジ部24とスリット23で画定される部分、すなわち仮想台形で画定される部分は、ヒンジ部24の周りを回動する回動舌部25を構成する。
図3に矢印で示すように、回動舌部25をヒンジ部24の周りで回動させることで、回動舌部25の設けられている部位がフロアカーペット2の開口22となる。VIN5はフロアパネル4の開口22(回動舌部25)の直下の位置に刻設されており、開口22を通して視認することができる。回動舌部25のヒンジ部24と対向する先端縁部25A(仮想台形の短辺に相当する部分)は、ヒンジ部24と概ね平行に延びている。先端縁部25Aの中央に切欠き26が設けられている。切欠き26を設けることで、回動舌部25(後述する第1のカバー部材31)を、後述する第2のカバー部材32の張り出し部との干渉を回避してスムーズに回動させることができるとともに、第2のカバー部材32をフロアカーペット2に接触せずにスムーズに移動させることができる。回動舌部25ないしスリット23の形状は台形に限定されず、半円形、半楕円形など、ヒンジ部24の両端の間をヒンジ部24から離れて延びる任意の形状を採用することができる。フロアカーペット2の回動舌部25以外の部分を本体部27と称する。回動舌部25は2つの第1の貫通孔25Bを有し、本体部27は一つの第2の貫通孔27Aを有している。第1の貫通孔25Bの数は2に限定されず、少なくとも一つの第1の貫通孔25Bがあればよい。第2の貫通孔27Aの数は1に限定されず、少なくとも一つの第
2の貫通孔2
7Aがあればよい。
【0013】
図4(a)は
図1のA部拡大図、すなわち、車内からみた第1のカバー部材31と第2のカバー部材32の、互いに連結された状態の斜視図、
図4(b)は第1のカバー部材31と第2のカバー部材32の分解斜視図、
図4(c)は車両後方からみた第1のカバー部材31と第2のカバー部材32の側面図である。便宜上、
図4(a)と
図4(b)は、互いに逆方向からみた斜視図を示している。
図5(a)は第1のカバー部材31の下面側からみた斜視図、
図5(b)は第2のカバー部材32の下面側からみた斜視図である。開口閉止具3は、フロアカーペット2の回動舌部25に取り付けられた第1のカバー部材31と、フロアカーペット2の本体部27に取り付けられた第2のカバー部材32と、を有している。第1のカバー部材31と第2のカバー部材32は車両前後方向に互いに対向して設けられている。第1のカバー部材31と第2のカバー部材32が互いに連結される位置にフロアカーペット2の切欠き26が位置している。第1のカバー部材31は第2のカバー部材32より車両左右方向に長尺である。第1のカバー部材31は、第2のカバー部材32との係合部を備える中央部31Aと、中央部31Aの車両左右方向両側に設けられた一対の延長部31Bと、を有している。第1のカバー部材31は回動舌部25の先端縁部25Aの少なくとも一部を覆っており、本実施形態では全長を覆っている。中央部31Aと一対の延長部31Bはそれぞれ回動舌部25の先端縁部25Aの一部を覆っている。
【0014】
第2のカバー部材32の第1のカバー部材31と対向する先端部には張り出し部41が形成されている。第1のカバー部材31と第2のカバー部材32が互いに連結された状態で、張り出し部41は第1のカバー部材31と重なっている。張り出し部41と第1のカバー部材31の重なり部はスリット23の一部を覆っている。第1のカバー部材31と第2のカバー部材32は、面外方向の動きが相互に規制されるため、上方向や横方向からの荷重に対してより強固になる。このため、第1のカバー部材31の第1の爪部35A(
図7参照)に大きな力が掛ることが防止され、第1の爪部35Aを保護することができる。張り出し部41の構成は本実施形態に限定されず、第1のカバー部材31と第2のカバー部材32が互いに連結された状態で、鉛直方向にみたときに、第1のカバー部材31と第2のカバー部材32が重複していればよい。
【0015】
第1のカバー部材31はポリアセタール(POM)で形成された成形品である。第2のカバー部材32はポリブチレンテレフタレート(PBT)で形成された成形品である。POMとPBTを組み合わせることで、係合に必要な強度と可撓性を両立させ、さらに係合の際の異音を抑えることができる。第1のカバー部材31の中央部31Aの上面には「VIN」の文字が刻設されている。
【0016】
図5に示すように、第1のカバー部材31の2つの延長部31Bの下面、すなわち2つの延長部31Bのフロアカーペット2と対向する面には、それぞれ第1の突状部33が形成されている。第1の突状部33はフロアカーペット2に形成された第1の貫通孔25Bを通っている(
図2参照)。第1の突状部33の先端には概ね三角形断面の第3の係合部33Aが形成されている。第2のカバー部材32の下面、すなわち第2のカバー部材32のフロアカーペット2と対向する面には、一つの第2の突状部34が形成されている。第2の突状部34はフロアカーペット2に形成された第2の貫通孔27Aを通っている(
図2,3参照)。第2の突状部34の先端には概ね三角形断面の第4の係合部34Aが形成されている。
【0017】
第1のカバー部材31の中央付近に、切欠き26に収容され、下方に突出するピンの形状の第3の突状部42が設けられている。第3の突状部42は、例えば第1のカバー部材31を180°反転して組み付けてしまうことを防止する。すなわち、第3の突状部42は第1のカバー部材31の誤組付を防止する。
【0018】
第2のカバー部材32のフロアカーペット2と対向する面の、第1のカバー部材31と対向する縁部には一対の第4の突状部37が形成されている。第4の突状部37が切欠き26内に収容されることで、第2のカバー部材32をセットする際の誤組付防止や、組付後の回転防止が可能となる。第4の突状部37がない場合、例えば第2のカバー部材を180°反転して組み付けてしまう可能性がある。また、第2のカバー部材32は後述するように一つの固定部材6だけで固定されているため、固定がゆるむと第2のカバー部材32が回転する可能性がある。切欠き26の縁部から少し隙間を空けて第4の突状部37を設けることによって、一定角度以上の回転を防止することができる。第3の突状部42と第4の突状部37は少なくともいずれか一方が設けられることが好ましい。
【0019】
第1のカバー部材31と第2のカバー部材32は固定部材6によってフロアカーペット2に固定される。固定部材6はPOMで形成された成形品である。第1の突状部33と第2の突状部34はフロアカーペット2の裏面に設けられた固定部材6と係合している。
図6は固定部材6の平面図を示している。固定部材6は概ね長円形の板状部材で、第1の突状部33と第2の突状部34を受け入れる長孔61Aが中央部に形成された第1の部分61と、第1の部分61の周囲に放射状に設けられた4つの第2の部分62と、を有している。第2の部分62はフロアカーペット2の裏面との接触面積を確保する目的で設けられている。第2の部分62同士の間に設けられた隙間によって、第2の部分62の鉛直方向の可撓性が向上し、取付誤差を容易に吸収することができる。第1の部分61の長孔61Aの長手方向両側縁部に爪部63Aが、短手方向両側縁部に爪部63Bが形成されている。爪部63Aは固定部材6の長手方向の位置ずれを抑制する。
図3(b)に示すように、第2の突状部34の第4の係合部34Aは固定部材6の爪部63Bと係合する(爪部63Aは図示せず)。図示は省略するが、第1の突状部33の第3の係合部33Aも固定部材6の爪部63Bと係合する。第3の係合部33Aと第4の係合部34Aはそれぞれ、第1の貫通孔25Bまたは第2の貫通孔27Aの内部に位置してもよいし、外部に位置してもよい。固定部材6が第1及び第2のカバー部材31,32に取り付けられたとき、フロアカーペット2は第1及び第2のカバー部材31,32と固定部材6との間で圧縮される。固定部材6の第1及び第2のカバー部材31,32との係合は、固定部材6を第1及び第2のカバー部材31,32に対して押し込むだけの簡単な操作で行わるため、専用の工具は不要である。
【0020】
図7に示すように、第1のカバー部材31の第2のカバー部材32と対向する面には第1の係合部35が形成され、第2のカバー部材32には、第1の係合部35と着脱可能に係合する第2の係合部36が形成されている。
図7は第1及び第2の係合部35,36の内部構造と、第1の係合部35と第2の係合部36との係合方法を示す模式図である。
図7(a)~7(c)は第1のカバー部材31の面内における断面を、
図7(d)は第2のカバー部材32の面内における断面を示している。第1の係合部35と第2の係合部36は、第1のカバー部材31をオス部材、第2のカバー部材32をメス部材とするバックル構造を有している。
【0021】
図7(a)に示すように、第1の係合部35は車両左右方向に配置された一対の第1の爪部35Aを有し、第2の係合部36は第1の爪部35Aが進入可能な一対の内部空間36Aを有している。内部空間36Aを画定する外側壁36Bは開口36Cを有している。第1の爪部35Aの両面の先端には鉛直方向に突き出すロック突起35Cが形成されている(
図5(a)も参照)。第1のカバー部材31の一対の第1の爪部35Aの内側には一対のストッパ38が形成されている。ストッパ38は第1のカバー部材31が第2のカバー部材32と係合していないとき、すなわち第1の爪部35Aがむき出しとされているときに第1の爪部35Aを保護する。第1の爪部35Aが外力によって内側に変形すると、第1の爪部35Aはストッパ38に当接し、第1の爪部35Aの大きな曲げ変形を規制する。一対のストッパ38の内側にはガイド部材39が形成されている。ガイド部材39の基部39Aは拡幅されており、これによってガイド部材39の剛性が確保される。第2のカバー部材32にはガイド部材39を受け入れるスリット40が形成されている。
【0022】
第1のカバー部材31を第2のカバー部材32に近づけ、または第2のカバー部材32を第1のカバー部材31に近づける。
図7(b)に示すように、ガイド部材39がスリット40にガイドされ、第1の爪部35Aが内部空間36Aに進入する。第1の爪部35Aは外側壁36Bに当接し、内側に変形しながら内部空間36Aをさらに進む。
図7(c)に示すように、外側壁36Bを通過した第1の爪部35Aが開口36Cに達し、弾性復元力によって外側に変形し、開口36Cから外側に突き出す。このとき、
図7(d)に示すように第1の爪部35Aのロック部材35Cが第2のカバー部材32の内側縁部32Aと係合することで、第1のカバー部材31は引き抜かれないようにロックされる。ロックを解除するときは内部空間36Aの外側に突き出した一対の第1の爪部35Aを内側に指で押し込み、第1の爪部35Aのロック部材35Cと第2のカバー部材32の内側縁部32Aとの係合を解除する。第1のカバー部材31を第2のカバー部材32から離れる方向に動かし、または第2のカバー部材32を第1のカバー部材31から離れる方向に動かすことにより、第1の係合部35と第2の係合部36を相互に離すことができる。
【0023】
次に、本実施形態の利点を説明する。
【0024】
まず、第1のカバー部材31と第2のカバー部材32の係合にバックル方式を採用しているため、ロック操作とアンロック操作をともに容易に行うことができる。
【0025】
次に、第1のカバー部材31と第2のカバー部材32のロックの信頼性が高い。これは以下の2つの理由による。第1の理由は、両側の第1の爪部35Aを同時に押し込まないとロックの解除ができないことである。両側の第1の爪部35Aを同時に押し込む操作は乗員の足や物がたまたま接触するだけではほぼ不可能である。第2の理由は、回動舌部25の先端縁部25Aが第1のカバー部材31で覆われていることである。上からの荷重(例えば乗員の足で踏まれることによる荷重)と横からの荷重(例えば乗員の足や物が引っ掛かることによる荷重)はいずれも、第1のカバー部材31によって吸収される。このため、第1のカバー部材31と第2のカバー部材32のロックが容易に解除されることがない。特に、本実施形態では回動舌部25の先端縁部25Aの全長が第1のカバー部材31で覆われているため、乗員の足や物がスリット23に引っ掛かることが効果的に防護される。しかも、第1のカバー部材31と第2のカバー部材32は、スペーサがなくとも上方向からの荷重に容易に耐えることができる。また、スリット23の露出や、スリット23を通してフロアカーペット2の下方空間が見えることが防止され、意匠性が向上する。
【0026】
次に、工程の自由度が向上する。従来は回動舌部25を本体部27に保持するために、回動舌部25の周縁部に沿ってファスナーを取り付けることがあった、しかし、ファスナーを取り付けるためには、タッカーや、フロアカーペット2を固定するための固定治具などの設備が必要であり、ファスナーを取り付けるタイミングが制約されることがある。本実施形態では、フロアカーペット2に第1及び第2の貫通孔25B,27Aとスリット23が形成された後であれば、第1のカバー部材31と第2のカバー部材32のフロアカーペット2への取付け、及び第1のカバー部材31と第2のカバー部材32の係合を行うタイミングは制約されない。
【0027】
次に、意匠性への影響が最小限に抑えられる。例えば、タッカーでファスナーを取り付ける場合、針や鋲が露出し意匠性を損なうことがある。本実施形態では針や鋲を用いていないため、これらが露出することがない。また、回動舌部25の先端縁部25Aの全長が第1のカバー部材31で覆われているため、スリット23が目立ちにくい。
【0028】
次に、VINの確認が容易である。例えば、ファスナーを用いた場合、VINを確認するためにファスナーの掴み具をスリット23の全長に渡って動かす必要がある。本実施形態では、第1のカバー部材31と第2のカバー部材32の係合を上述した簡単なアンロック操作で外すだけで回動舌部25を回動させることができる。しかもその際、第1のカバー部材31と第2のカバー部材32は回動舌部25及び本体部27に固定したままでいい。
【0029】
次に、開口閉止具3の小型化が可能である。例えば特許文献1に記載の開口閉止具3では、VINを識別可能なサイズの蓋部材が必要である。本実施形態では、VINを覆うのはフロアカーペット2(回動舌部25)であり、開口閉止具3ではない。開口閉止具3は回動舌部25を本体部27に保持させることができる限りその大きさは限定されない。第1のカバー部材31は回動舌部25の先端縁部25Aを覆うために第2のカバー部材32より大型化されているが、極端に大きなサイズとする必要はない。
【0030】
以上、本発明を一実施形態によって説明したが、本発明はこの実施形態に限定されず様々な変形が可能である。第1のカバー部材31(または第2のカバー部材32)をフロアカーペット2に固定する方法は上述の固定部材6を用いた方法に限定されない。例えば、
図8に示すように、第1のカバー部材31(または第2のカバー部材32)のフロアカーペット2と対向する裏面に、爪部311と、爪部311と係合する係合部312と、を設けることができる。爪部311は第1のカバー部材31(または第2のカバー部材32)の裏面に直接固定され、または第1のカバー部材31(または第2のカバー部材32)と一体に形成されている。係合部312は弾性変形可能なストリップ部材313を介して、第1のカバー部材31(または第2のカバー部材32)の裏面に固定され、または第1のカバー部材31(または第2のカバー部材32)と一体に形成されている。係合部312は爪部311を受け入れる凹部を有し、凹部の開口付近に内側に突き出す爪部314が形成されている。係合部312とストリップ部材313を第1の貫通孔25B(または第2の貫通孔27A)を介してフロアカーペット2の裏面側に通し、爪部311を爪部314と係合させることができる。本変形例は固定部材6を用いる必要がないため、固定部材6の紛失の可能性がない。
【0031】
さらに、第1の係合部35と第2の係合部36の係合方法はバックル方式に限定されない。例えば、
図9に示すように、第1のカバー部材31の先端部にU字形状の鉤部315を設け、第2のカバー部材32の先端部に突状部321を設け、鉤部315を突状部321と係合させることができる。
【0032】
図示は省略するが、第2のカバー部材32に第1の爪部35Aを設け、第1のカバー部材31に第1の爪部35Aが進入可能な一対の内部空間36Aを設けてもよい。すなわち、第1のカバー部材31と第2のカバー部材32はどちらがオス部材であってもよく、どちらがメス部材あってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 フロアカーペット組立体
2 フロアカーペット
3 開口閉止具
22 開口
23 スリット
24 ヒンジ部
25 回動舌部
25A 先端縁部
25B 第1の貫通孔
27 本体部
27A 第2の貫通孔
31 第1のカバー部材
32 第2のカバー部材
33 第1の突状部
33A 第3の係合部
34 第2の突状部
34A 第4の係合部
35 第1の係合部
36 第2の係合部
38 ストッパ
6 固定部材