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特許7104684光熱変換基板を備えた熱電変換モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】光熱変換基板を備えた熱電変換モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/32 20060101AFI20220713BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20220713BHJP
   H01L 35/30 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
H01L35/32 A
H02N11/00 A
H01L35/30
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019503073
(86)(22)【出願日】2018-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2018007569
(87)【国際公開番号】W WO2018159696
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】P 2017040999
(32)【優先日】2017-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513215487
【氏名又は名称】中弥 浩明
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】中弥 浩明
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-042108(JP,A)
【文献】特開2013-254940(JP,A)
【文献】国際公開第2011/065185(WO,A1)
【文献】特開2012-069625(JP,A)
【文献】特開2015-029056(JP,A)
【文献】特開2015-135939(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0118543(US,A1)
【文献】特表2015-507846(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0174495(US,A1)
【文献】国際公開第2013/012065(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0227780(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0167897(US,A1)
【文献】国際公開第2013/100716(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 35/32
H02N 11/00
H01L 35/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電変換モジュール要素および光熱変換材料を含有する光熱変換基板を備え、
前記熱電変換モジュール要素は、n型電荷輸送型熱電変換素子およびp型電荷輸送型熱電変換素子の少なくとも1つが形成され、
前記n型電荷輸送型熱電変換素子は、n型電荷輸送層、n型熱電変換材料層および電極からなり、
前記n型電荷輸送層は、n型半導体になるように電荷供与材料をドープする処理を行ったグラファイトシートの表面からなり、前記グラファイトシートのドープ表面の面内方向の熱伝導率が低減し、かつ、前記ドープ表面の面内方向にキャリアが移動するように、前記グラファイトシートの表面に前記電荷供与材料がドープされており、
前記n型電荷輸送型熱電変換素子は、前記n型電荷輸送層の両端部の前記ドープ表面上に前記n型熱電変換材料層が形成され、前記n型熱電変換材料層の上部に前記電極が形成され、
前記p型電荷輸送型熱電変換素子は、p型電荷輸送層、p型熱電変換材料層および電極からなり、
前記p型電荷輸送層は、p型半導体になるように電荷受容材料をドープする処理を行ったグラファイトシートの表面からなり、前記グラファイトシートのドープ表面の面内方向の熱伝導率が低減し、かつ、前記ドープ表面の面内方向にキャリアが移動するように、前記グラファイトシートの表面に前記電荷受容材料がドープされており、
前記p型電荷輸送型熱電変換素子は、前記p型電荷輸送層の両端部の前記ドープ表面上に前記p型熱電変換材料層が形成され、前記p型熱電変換材料層の上部に前記電極が形成され、
前記光熱変換基板は、外部の光を吸収して熱に変換し、前記n型熱電変換材料層および前記p型熱電変換材料層の少なくとも1つに前記熱を伝達するように前記光熱変換基板が配置されたことを特徴とする熱電変換モジュール。
【請求項2】
縁性基板の表面および裏面に前記n型電荷輸送型熱電変換素子および前記p型電荷輸送型熱電変換素子の少なくとも1つが形成された熱電変換モジュール要素からなる請求項1に記載の熱電変換モジュール。
【請求項3】
前記光熱変換基板は、光熱変換材料を含有する樹脂からなる請求項1に記載の熱電変換モジュール。
【請求項4】
前記光熱変換基板は、光熱変換材料を含有する多孔質材料からなる請求項1に記載の熱電変換モジュール。
【請求項5】
前記光熱変換基板は、上面層および下面層からなり、上面層は光熱変換材料を含有する樹脂および多孔質材料のうち少なくとも1つからなり、下面層は上面層を形成する材料の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する絶縁性材料からなる請求項1に記載の熱電変換モジュール。
【請求項6】
前記光熱変換材料は、黒鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、炭化ジルコニウム、セシウム酸化タングステン、六ホウ化ランタン、金属ナノ粒子および金属窒化物ナノ粒子からなる群から選択される材料である請求項1に記載の熱電変換モジュール。
【請求項7】
前記光熱変換基板は、受光面となる最上面と、前記熱電変換モジュール要素の端部と接触する底面とを備え、前記光熱変換基板の底面に複数の熱電変換モジュール要素が設けられた構造である請求項1に記載の熱電変換モジュール。
【請求項8】
前記熱電変換モジュール要素を支持するための支持基板および前記光熱変換基板を備え、前記支持基板の最上面および前記光熱変換基板の底面には、前記熱電変換モジュール要素を支持するための溝が形成され、前記熱電変換モジュール要素は前記溝に沿って出し入れできる構造である請求項7に記載の熱電変換モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
熱電変換素子は、石油やオゾンを使用しないクリーンなエネルギー変換素子として知られ、近年、地球温暖化対策の一つとして高効率な熱電変換素子および熱電変換モジュールが望まれている。
【0003】
従来の熱電変換素子は、図2に示すようにブロック状のn型またはp型の熱電変換材料が上下の電極に挟まれ、上部の電極でつながれたπ型構造であり、基本的に熱電変換材料と電極からなる。よって、熱電変換材料は、熱を電気に変換する能力としてゼーベック係数の大きな材料であること、高温部と低温部の温度差を確実にするために熱伝導率の低い材料であること、および発生した電流による電力消費を抑制するために電気伝導率の高い材料であること、この三つの特性が要求される。しかしながら、図3に示すように、ゼーベック係数と電気伝導率は物理的に相反する特性を有するものであり、極大値としてBi-Te系材料が存在する。よって、現在実用化されている多くの熱電変換素子はBi-Te系材料を使用するものであるが、十分な熱電変換効率を有するものではないため、熱電変換素子による発電は一般的に実用化されるには至っていない。また、新しい熱電変換材料の開発が多くなされているが、材料の熱伝導率を低下させることを目的とするものがほとんどであり、飛躍的に熱電変換効率を改善することは難しく実用化されるには至っていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/012065号明細書
【文献】国際公開第2017/038831号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の熱電変換素子は、熱電変換材料に高いゼーベック係数、高い電気伝導率、低い熱伝導率の三特性を同時に持たせることで熱電変換素子の開発を進めるものである。しかし、この三特性を同時に満たす材料を得ることは困難であり、特に、熱電変換材料層の内部抵抗を改善するため電気伝導率の高い熱電変換材料を使用するとゼーベック係数が低くなり(図3参照)、結果として大きな出力を得ることができないという問題がある。また、高出力の熱電変換素子を使用して太陽熱と太陽光によって発電を行う熱電変換モジュールは一般に実用化されておらず、どのような構造が適切か知られていないという問題がある。
【0006】
この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、高い電気伝導率を有する電荷輸送層を利用して、これまでゼーベック係数が高くても電気伝導率が非常に低いために使用されなかった熱電変換材料を利用できる高出力の電荷輸送型熱電変換素子(特許文献1,2)を用いて、太陽光・熱を利用できるようにした熱電変換モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、少なくとも電荷輸送型熱電変換素子が形成された熱電変換モジュール要素および光熱変換材料を含有する光熱変換基板を備えた熱電変換モジュールが提供される。
ここで、前記熱電変換モジュール要素は、絶縁性基板を備え、前記絶縁性基板上にn型またはp型の複数の電荷輸送型熱電変換素子が形成されるものであり、前記電荷輸送型熱電変換素子は、電荷輸送層、熱電変換材料層および電極からなるものであり、前記電荷輸送層は、n型半導体になるように電荷供与材料をドープする処理を行った半導体の特性を有するシート状のn型電荷輸送層か、またはp型半導体になるように電荷受容材料をドープする処理を行った半導体の特性を有するシート状のp型電荷輸送層である。
さらに、前記光熱変換基板は、外部の光を吸収して熱に変換し、発生した熱を前記電荷輸送層上に設けられた前記電極または前記熱電変換材料層に伝達するように配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い電気伝導率を有する電荷輸送層を利用して、これまでゼーベック係数が高くても電気伝導率が非常に低いために使用されなかった熱電変換材料を利用できる高出力の電荷輸送型熱電変換素子を用いて、太陽光・熱を利用できるようにした熱電変換モジュールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に使用される電荷輸送型熱電変換素子の概略図である。(1)は、電荷輸送型熱電変換素子の上面図を示す。(2)は、(1)の電荷輸送型熱電変換素子のA-A線断面図を示す。(3)は、(1)の電荷輸送型熱電変換素子のB-B線断面図を示す。
図2】従来の熱電変換素子の構成図である。
図3】熱電変換材料の熱電性能特性(室温)を示す概略図である。
図4】本発明の熱電変換モジュール要素e1の作製工程の一例を示す説明図である。(1)は熱電変換モジュール要素e1の第1層(工程1)を示す。(2)は熱電変換モジュール要素e1の第2層(工程2)を示す。(3)は熱電変換モジュール要素e1の第3層(工程3)を示す。(4)は熱電変換モジュール要素e1の第4層(工程4)を示す。
図5】本発明の熱電変換モジュール要素e2の概略図である。(1)は、本発明の熱電変換モジュール要素e2の上面図を示し、(2)は、(1)の熱電変換モジュール要素e2のC-C線断面図を示す。(3)は、(2)の熱電変換モジュール要素e2のD-D線断面図を示す。
図6】本発明に使用される光熱変換基板の概略図である。(1)は、本発明に使用される単層光熱変換基板の上面図を示し、(2)は、(1)のE-E線断面図を示す。(3)は、本発明に使用される積層光熱変換基板の上面図を示し、(4)は、(3)のF-F線断面図を示す。
図7】本発明の第1の熱電変換モジュールM1の上面図を示す。
図8】本発明の第2の熱電変換モジュールM2の概略図である。(1)は、第2の熱電変換モジュールM2の斜視図を示す。(2)は、第2の熱電変換モジュールM2の上面図を示す。
図9図8の第2の熱電変換モジュールM2の支持基板の断面図である。(1)は、支持基板として使用する単層支持基板の図8(2)のG-G線断面図を示す。(2)は、支持基板として使用する積層支持基板の図8(2)のG-G線断面図を示す。
図10】本発明の第3の熱電変換モジュールM3の概略図である。(1)は、第3の熱電変換モジュールM3の斜視図を示す。(2)は、第3の熱電変換モジュールM3の上面図を示す。
図11】(1)は、第3の熱電変換モジュールM3の光熱変換基板の下面図である。(2)は、第3の熱電変換モジュールM3の支持基板の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(i)本発明の熱電変換モジュールは、少なくとも、電荷輸送型熱電変換素子が形成された熱電変換モジュール要素および光熱変換材料を含有する光熱変換基板を備えた熱電変換モジュールであり、前記熱電変換モジュール要素は、絶縁性基板を備え、前記絶縁性基板上にn型またはp型の複数の電荷輸送型熱電変換素子が形成されたものであり、前記電荷輸送型熱電変換素子は、電荷輸送層、熱電変換材料層および電極からなるものである。
ここで、前記電荷輸送層は、n型半導体になるように電荷供与材料をドープする処理を行った半導体の特性を有するシート状のn型電荷輸送層か、またはp型半導体になるように電荷受容材料をドープする処理を行った半導体の特性を有するシート状のp型電荷輸送層である。
また、前記電荷輸送層がn型電荷輸送層である場合、その両端部にn型熱電変換材料層および電極を設けることによりn型熱電変換素子が構成され、一方、前記電荷輸送層がp型電荷輸送層である場合、その両端部にp型熱電変換材料層および電極を設けることによりp型熱電変換素子が構成される。
更に、前記光熱変換基板は、外部の光を吸収して熱に変換し、発生した熱を前記電荷輸送層の一方の端部に設けられた前記電極または前記熱電変換材料層に伝達するように配置されたことを特徴とする。
【0011】
本発明において、「熱電変換モジュール」は、複数の電荷輸送型熱電変換素子を電気的に接続し光熱変換基板を設置したものであり、太陽光・熱を電力に変換するために用いられるものである。
本発明の「電荷輸送型熱電変換素子」は、n型またはp型の半導体になるように、電荷供与材料または電荷受容材料をドープした半導体の特性を有するシートの表面を電荷輸送層として使用した熱電変換素子である。電荷輸送型熱電変換素子は、例えば、絶縁性基板上に電荷輸送層として半導体化したグラファイトシートを設け、そのグラファイトシートの両端表面上に熱電変換材料層、電極の順に積層してなるものである。
本発明の「光熱変換材料」は、光を吸収して熱に変換できる機能を有する材料である。
【0012】
本発明の「絶縁性基板」は、樹脂やセラミック等の材質からなる基板を使用することが好ましい。樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素樹脂、フェノール樹脂、アリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フラン樹脂、シリコン樹脂等を使用することができる。また、ガラス繊維や炭素繊維、またはシリカフィラーやアルミナフィラーと樹脂を複合させた複合合成樹脂を使用することもできる。また、シリカ、アルミナ、炭化ケイ素等の絶縁性無機材料からなるセラミック基板、またはガラス基板を使用することもできる。
【0013】
本発明の「半導体の特性を有するシート状の電荷輸送層」は、例えば、電気伝導特性に対して異方性を有するグラファイトから構成される。天然黒鉛から製造したグラファイトシートは、層面内方向の電気伝導率が5000~12000S/cm程度で、厚み方向の電気伝導率が1S/cm程度である。また、ポリイミド等の高分子シートをグラファイト化させたグラファイトシートは、層面内方向の電気伝導率が10000~25000S/cm程度であり、厚み方向の電気伝導率が5S/cm程度である。また、従来から熱電変換材料として使用されているBi-Te系材料の電気伝導率が500~1000S/cm程度であり、どちらのグラファイトシートを使用してもグラファイトの層面内方向の高い電気伝導率を利用して有効な電荷輸送層として利用することができる。
【0014】
グラファイトシートを電荷輸送層として使用するにあたり、熱電変換材料とのキャリアの受け渡しをエネルギー的にロスすることなく行うために、グラファイトをn型あるいはp型の半導体になるように前処理を行う。
グラファイトをn型半導体にする方法としては、グラファイトをカリウム雰囲気下で熱処理する方法、電荷供与材料をドープする方法等がある。
電荷供与材料としては、テトラチアフルバレン(TTF)、テトラメチルテトラチアフルバレン(TMTTF)、ビスエチレンジチオテトラチアフルバレン(BEDT-TTF)、テトラセラナフルバレン(TSF)、トリフェニルフォスフィン(TPP)、トリメトキシフェニルフォスフィン(MeO-TPP)、トリフッ化フェニルフォスフィン(F-TPP)、ジフェニルフォスフィン(DPP)、ジフェニルホスフィノエタン(DPPE)、ジフェニルホスフォノプロパン(DPPP)、アミン、ポリアミン、ポリエチレンイミン、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、Cu-フタロシアニン、Zn-フタロシアニン等、およびその誘導体等の一般に知られた電荷供与材料を使用することができる。
【0015】
グラファイトをp型半導体にする方法としては、グラファイトに格子欠陥を導入する方法、電荷受容材料をドープする方法等がある。
電荷受容材料としては、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(TCNQF4)、ジシクロジシアノベンゾキノン(DDQ)、トリニトロフルオレノン(TNF)、ジニトロフルオレノン(DNF)、カルバゾール、4-ヒドロキシ-9H-カルバゾール、2-ヒドロキシ-9H-カルバゾール、フェニルボロン酸、ピリジン、キノリン、イミダゾール、トリフェニルアミン等、およびそれらの誘導体等の一般に知られた電荷受容材料を使用することができる。
【0016】
本発明において、半導体の特性を有するグラファイトシートは、熱電変換材料と接触させても発熱・吸熱をほとんど生じないという特性を有する。これは、熱電変換材料の伝導帯と、半導体の特性を有するグラファイト表面の伝導帯が、エネルギー的に近い状態で存在し、エネルギーギャップを生じない接合が形成されるためと考えられる。
また、電荷供与材料あるいは電荷受容材料をグラファイト表面にドープすることにより、グラファイト表面の熱伝導率が大幅に小さくなる。従来より、グラファイトのフォノン伝播はグラファイト表面を二次元伝播するものであり、個体のバルクをフォノンが三次元伝播する場合とは異なり、グラファイト表面に格子欠陥を注入することによりフォノンの平均自由工程が格子欠陥間の距離に等しくなり熱伝導率が大きく低下することが知られている。本発明における熱伝導率の低下は、格子欠陥の代わりにドープ元素がフォノンの二次元伝播を遮る役割をしたためと考えられる。
【0017】
本発明の「熱電変換材料」としては、Bi-Te系化合物、酸化物の他、ゼーベック効果を示す半導体材料ならばどのような材料でも使用することができる。本発明では、ゼーベック係数は高いけれども電気伝導率が非常に低いために、これまであまり熱電変換材料として使用されることがなかった酸化物材料を使用した。酸化物材料としては、特に限定されるものではないが、FeO、Fe2O3、Fe3O4、CuO、Cu2O、ZnO、Zn1-XAlXO、SnO、SnO2、MnO、NiO、CoO、Co2O3、TiO2、SrTiO3等の金属酸化物材料があげられる。
【0018】
また、本発明の熱電変換モジュールは、次のように構成されてもよく、それらが適宜組み合わされてもよい。
【0019】
(ii)前記熱電変換モジュールは、前記絶縁性基板の表面および裏面に複数の前記電荷輸送型熱電変換素子が形成された熱電変換モジュール要素からなるものであってもよい。
このようにすれば、限られた空間で高出力の熱電変換モジュールが提供される。
【0020】
(iii)前記光熱変換基板は、光熱変換材料を含有する樹脂からなるものであってもよい。
このようにすれば、光熱変換した熱を有効に利用できる熱電変換モジュールが提供される。
【0021】
(iv)前記光熱変換基板は、光熱変換材料を含有する多孔質材料からなるものであってもよい。
このようにすれば、高効率で光熱変換できる熱電変換モジュールが提供される。
【0022】
(v)前記光熱変換基板は、上面層および下面層からなり、上面層は光熱変換材料を含有する樹脂および多孔質材料のうち少なくとも1つからなり、下面層は上面層を形成する材料の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する絶縁性材料からなるものであってもよい。
このようにすれば、光熱変換した熱を有効に利用できる熱電変換モジュールが提供される。
【0023】
(vi)前記光熱変換材料は、黒鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、炭化ジルコニウム、セシウム酸化タングステン、六ホウ化ランタン、金属ナノ粒子および金属窒化物ナノ粒子からなる群から選択される材料であるものであってもよい。
このようにすれば、高効率で光熱変換できる熱電変換モジュールが提供される。
【0024】
(vii)前記光熱変換基板は、受光面となる最上面と、前記熱電変換モジュール要素の端部と接触して熱電変換モジュール要素を設置する底面とを備え、前記底面に複数の熱電変換モジュール要素が設置された構造であるものであってもよい。
このようにすれば、高出力で光熱変換できる熱電変換モジュールが提供される。
【0025】
(viii)前記熱電変換モジュールは、前記熱電変換モジュール要素を支持するための支持基板および前記光熱変換基板を備え、前記支持基板の最上面および前記光熱変換基板の底面には、前記熱電変換モジュール要素を支持するための溝が形成され、前記熱電変換モジュール要素は前記溝に沿って出し入れできる構造であるものであってもよい。
このようにすれば、熱電変換モジュール要素の交換が容易で汎用性のある熱電変換モジュールが提供される。
【0026】
〔電荷輸送型熱電変換素子について〕
以下、図面を用いてこの発明をさらに詳述する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、この発明を限定するものと解されるべきではない。
【0027】
図1に基づき、本発明の電荷輸送型熱電変換素子について説明する。
図1は、本発明に使用される電荷輸送型熱電変換素子の概略図である。図1(1)は、電荷輸送型熱電変換素子の上面図を示し、図1(2)は、図1(1)の電荷輸送型熱電変換素子のA-A線断面図を示し、図1(3)は、図1(1)の電荷輸送型熱電変換素子のB-B線断面図を示す。
【0028】
電荷輸送型熱電変換素子についてわかりやすく説明するために、この実施形態においては、絶縁性基板1上に互いに離れて形成されたn型熱電変換素子10Nおよびp型熱電変換素子10Pを直列に接続した構成の電荷輸送型熱電変換素子について説明する。
図1にその構造を示す。n型熱電変換素子10Nは、絶縁性基板1上に電荷輸送層2N、n型熱電変換材料層3N、電極4の順で積層されている。p型熱電変換素子10Pは、基板1上に電荷輸送層2P、p型熱電変換材料層3P、電極4の順で積層されている。
【0029】
この実施形態では、電荷輸送層2N,2Pとして、n型またはp型の半導体になるように前処理を行ったグラファイトシートを使用する。グラファイトシートとしては、ポリイミド等の高分子シートをグラファイト化させたPGSグラファイトシートを使用する。グラファイトシートの厚みは特に規定されるものではないが50~300μm程度の厚みのグラファイトシートを使用する。
【0030】
n型にする前処理として、電荷供与材料であるトリフェニルフォスフィン(TPP)、ジフェニルホスフォノプロパン(DPPP)、またはトリメトキシフェニルフォスフィン(MeO-TPP)等のn型ドーパントを5wt%含有するジメチルスルホキシド(DMSO)溶液をグラファイトシート表面に塗布し、N2雰囲気下200℃で加熱処理する。これを5回繰り返すことにより電荷供与材料をグラファイト表面にドープする。このように前処理されたグラファイトシートを、n型熱電変換素子10Nの電荷輸送層2Nに使用する。
【0031】
p型に変換する前処理として、電荷受容材料であるテトラシアノキノジメタン(TCNQ)、4-ヒドロキシ-9H-カルバゾール、またはカルバゾール等のp型ドーパントを5wt%含有するジメチルスルホキシド(DMSO)溶液をグラファイトシート表面に塗布し、N2雰囲気下200℃で加熱処理する。これを5回繰り返すことにより電荷受容材料をグラファイト表面にドープする。このように前処理されたグラファイトシートを、p型熱電変換素子10Pの電荷輸送層2Pに使用する。
【0032】
この実施形態において、n型熱電変換材料層3Nおよびp型熱電変換材料層3Pは、酸化物材料で形成される。n型熱電変換材料層3Nは、酸化鉄(Fe2O3)または酸化亜鉛(ZnO)で形成され、p型熱電変換材料層3Pは、酸化銅(Cu2O)で形成される。実施形態1においては、全ての酸化物熱電変換材料層をイオンプレーティング法で形成する。ターゲットにFe,Zn,Cuのプレートをそれぞれ使用し、電子銃により加熱させる。10-3Pa減圧下、反応性ガスとしては酸素ガス15~20sccm、窒素ガス3~5sccmを流し、高周波によりプラズマを発生させてプラズマ中で反応させ基板(グラファイト)上に酸化膜を形成する。基板温度130℃、高周波電源出力300W、基板バイアス0V、製膜速度0.5~1nm/secの条件で厚み約0.3μmの酸化膜を形成後、N2雰囲気下、150℃で10分間アニールすることにより熱電変換材料層をグラファイトシート上に形成する。
【0033】
この実施形態では、上記のように基板1上にグラファイトからなる電荷輸送層2N,2Pが形成され、電荷輸送層の両端部に酸化物材料からなる熱電変換材料層3N,3Pがそれぞれ積層される。前記熱電変換材料層上にAg(銀:以下Agと記す)層を蒸着法で形成し、前記Ag層にAl(アルミニウム:以下Alと記す)基板を半田で取り付けることにより電極4を形成する。
以上の工程により、電荷輸送型熱電変換素子(図1)が製造される。
【0034】
〔熱電変換モジュール要素e1について〕
次に、図4に基づき、本発明の熱電変換モジュール要素e1について説明する。
図4は、本発明の熱電変換モジュール要素e1の作製工程の一例を示す説明図である。
【0035】
熱電変換モジュール要素e1は、一枚の絶縁性基板1の片面に、複数の電荷輸送型熱電変換素子を形成することにより構成される。電荷輸送型熱電変換素子は、電荷輸送層、熱電変換材料層および電極からなり、前記電荷輸送層は、n型半導体になるように電荷供与材料をドープする処理を行ったグラファイトシートからなるn型電荷輸送層、またはp型半導体になるように電荷受容材料をドープする処理を行ったグラファイトシートからなるp型電荷輸送層である。n型電荷輸送層の両端部にn型熱電変換材料層および電極を設けることによりn型熱電変換素子10Nが構成され、p型電荷輸送層の両端部にp型熱電変換材料層および電極が形成されることによりp型熱電変換素子10Pが構成される。
【0036】
(工程1) 図4(1)に示すように、一枚の絶縁性基板1を準備する。
(工程2) 次に、図4(2)に示すように、絶縁性基板1の片面に複数枚のn型電荷輸送層2Nおよびp型電荷輸送層2Pを所定間隔離して交互に配置する。
(工程3) 次に、図4(3)に示すように、n型電荷輸送層2Nの両端表面にn型熱電変換材料層3Nを、p型電荷輸送層2Pの両端表面にp型熱電変換材料層3Pをそれぞれ形成する。
(工程4) 次に、工程4として、図4(4)に示すように、電極4を図4(3)の熱電変換材料層上に形成して複数のn型熱電変換材料層3Nおよびp型熱電変換材料層3Pを直列に接続する構成とする。そして、電気接続端子5を蛇行配線となっている電極4の両端部の側表面上に半田付で固定する。
さらに、n型電荷輸送層2N及びp型電荷輸送層2P上の熱電変換材料層が形成されていない中央部のドープ層が露出している表面部分にパッシベーション膜6を形成する。パッシベーション膜6としては、窒化シリコン、窒化アルミニウム等の窒化膜、炭化シリコン等の炭化膜、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンおよび四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン等のフッ素樹脂等が好ましい。
以上の工程により、絶縁性基板1の片面に、n型熱電変換素子10Nおよびp型熱電変換素子10Pからなる複数の熱電変換素子が直列に配置された熱電変換モジュール要素e1が作製される。
【0037】
〔熱電変換モジュール要素e2について〕
次に、図5に基づき、本発明の熱電変換モジュール要素e2について説明する。
図5は、本発明の熱電変換モジュール要素e2の概略図である。図5(1)は、本発明の熱電変換モジュール要素e2の上面図を示し、図5(2)は、図5(1)の熱電変換モジュール要素e2のC-C線断面図を示し、図5(3)は、図5(2)の熱電変換モジュール要素e2のD-D線断面図を示す。
【0038】
図5に示すように、熱電変換モジュール要素e2は、一枚の絶縁性基板の両面に複数の電荷輸送型熱電変換素子を形成することにより構成される。熱電変換モジュール要素e2の作製方法は、熱電変換モジュール要素e1とほぼ同じである。
【0039】
図5(2)に示されるように、絶縁性基板1の両面にn型電荷輸送層2Nが配置される。両面のn型電荷輸送層2Nの両端表面にn型熱電変換材料層3Nが形成され、n型熱電変換材料層3N上に電極4が形成されている。上部の電極4は基板側面にコンタクト層を形成することで表側と裏側の電極4がコンタクトされている構造となっている。一方、下部の電極4も基板側面にコンタクト層を形成することで表側と裏側の電極4がコンタクトされている構造となっている。よって絶縁性基板1を挟んで同位置にn型の電荷輸送型熱電変換素子10Nがそれぞれ形成され、表と裏で並列につながる構造となっている。
図5(3)においては、絶縁性基板1を挟んで同位置にp型の電荷輸送型熱電変換素子10Pがそれぞれ形成され、表と裏で並列につながる構造となっている。図5(2)のn型の電荷輸送型熱電変換素子10Nおよび図5(3)のp型の電荷輸送型熱電変換素子10Pは、図5(1)に示されるように、電極4で直列につながる構造となっている。そして、電気接続端子5が蛇行配線となっている電極4の両端部の側表面上に半田付で固定される構造となっている。
以上のように、熱電変換モジュール要素e2は、一枚の絶縁性基板の両面に電荷輸送型熱電変換素子が形成された構成である。
【0040】
〔光熱変換基板について〕
次に、図6に基づき、本発明の光熱変換基板7および9について説明する。
図6は、本発明に使用される光熱変換基板7および9の概略図である。図6(1)は、本発明に使用される単層光熱変換基板7の上面図を示し、図6(2)は、図6(1)の単層光熱変換基板7のE-E線断面図を示す。また、図6(3)は、本発明に使用される積層光熱変換基板9の上面図を示し、図6(4)は、図6(3)の積層光熱変換基板9のF-F線断面図を示す。
【0041】
本発明の光熱変換基板7および9は、光熱変換材料を含有する樹脂あるいは多孔質材料からなる。
図6(1)(2)に示すように、光熱変換材料を含有する樹脂あるいは多孔質材料からなる単層光熱変換基板7を使用する。
また、図6(3)(4)に示すように、単層光熱変換基板7と、単層光熱変換基板7の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する材料からなる基板8とを積層した積層光熱変換基板9を使用してもよい。
【0042】
光熱変換材料は、光を吸収して熱に変換できる機能を有する材料であれば特に限定されることはないが、黒鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、炭化ジルコニウム、セシウム酸化タングステン、六ホウ化ランタン、金属ナノ粒子および金属窒化物ナノ粒子からなる群より選択される材料であることが好ましい。
【0043】
単層光熱変換基板7の基材としては、耐熱性で熱伝導率の低い樹脂や多孔質材料を使用することが好ましい。樹脂としては、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素樹脂、アリル樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂およびシリコン樹脂等を使用することができる。
【0044】
多孔質材料としては、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、フッ素樹脂等の粉末を焼結して作製された多孔質シートや、発泡ポリプロピレン、発泡ポリウレタン、発泡エポキシ樹脂および発泡フッ素樹脂等の発泡樹脂を使用することができる。
また、ガラス繊維や炭素繊維、あるいはシリカフィラーやアルミナフィラーと樹脂を複合させた複合合成樹脂や、多孔質シリカ、多孔質アルミナおよび多孔質炭化ケイ素等の多孔質セラミックを使用することもできる。
単層光熱変換基板7は、基板の表面に光熱変換材料を含むコーティング液を塗布して作製したもの、または、基板の製造時に光熱変換材料を分散させて作製したものであってもよい。
【0045】
積層光熱変換基板9において、下層に配置する基板8は、上層に配置する単層光熱変換基板7の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する基板であることが好ましい。基板8の基材としては、シリカ、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、黒鉛およびジルコニア等の粉末と有機結合剤とからなるセラミックシートや上記粉末を焼結させたセラミック板を使用することが好ましい。
【0046】
〔第1の熱電変換モジュールM1について〕
次に、図7に基づき、本発明の第1の熱電変換モジュールM1について説明する。
図7は、本発明の第1の熱電変換モジュールM1の上面図を示す。
【0047】
本発明の第1の熱電変換モジュールM1は、図4に示す工程で作製された熱電変換モジュール要素e1または図5に示す工程で作製された熱電変換モジュール要素e2の一方の電極4上に上記の単層光熱変換基板7または積層光熱変換基板9を設置することで作製される。
本発明の熱電変換モジュールM1は、一枚の絶縁性基板1上に形成された複数の電荷輸送型熱電変換素子および光熱変換基板7または9からなるものであり、低電力のデバイス製品に搭載するのに適している。特に、スマートフォンや携帯電話、パッド、ノートパソコン等に搭載することが好ましい。
【0048】
以上のように、本発明は、n型またはp型の電荷輸送層を有する複数の電荷輸送型熱電変換素子が形成された熱電変換モジュール要素e1またはe2と、光熱変換材料を含有する光熱変換基板7または9とからなる熱電変換モジュールM1である。
本発明の電荷輸送型熱電変換素子は、n型あるいはp型の半導体になるように、電荷供与材料あるいは電荷受容材料をドープしたグラファイトシートの表面を電荷輸送層として使用することに特徴がある。半導体の特性を有するグラファイトシートは、熱電変換材料と接触させても発熱・吸熱をほとんど生じないという特性を有する。また、半導体の特性を有するグラファイトシート表面は、従来の熱電変換材料に比べて電気伝導率が100倍以上高く、素子の内部抵抗を低減することができる。そして、電荷供与材料あるいは電荷受容材料をグラファイトシート表面にドープすることにより、グラファイトシート表面の熱伝導率を低く抑制することができる。また、これまでゼーベック係数が高くても電気伝導率が非常に低いために使用されることがなかった熱電変換材料を、電荷輸送層を設けることで使用することが可能となる。このため、ゼーベック係数の高い材料を選択して熱電変換材料として使用することができる。結果として、これまでにない大きな出力の熱電変換素子を提供することができる。
【0049】
また、本発明の熱電変換モジュールM1は、複数の電荷輸送型熱電変換素子が形成された熱電変換モジュール要素e1またはe2を使用し、かつ、光熱変換材料を含有する光熱変換基板7または9を有することで、太陽熱と太陽光を利用して実用的に発電することが可能となる。
本発明は、このような優れた熱電特性を有する熱電変換モジュールM1を提供するものであり、クリーンで再生可能な新しいエネルギー変換技術を提供するものである。
【0050】
従来の熱電変換素子の構造では、高いゼーベック係数、高い電気伝導率、低い熱伝導率の三特性を熱電変換材料に要求するため、ゼーベック係数が300~1000μV/Kと高いが、電気伝導率が0.5S/cm以下と低い酸化物材料を熱電変換材料として使用することは困難であった。しかしながら、本発明の電荷輸送層を有する熱電変換素子においては、熱電変換材料にゼーベック係数の高い酸化物材料を使用することができる。電気伝導については高い電気伝導率を有するグラファイトからなる電荷輸送層が役割を担う。また、熱伝導についても電荷供与材料あるいは電荷受容材料をドープしたグラファイト表面を利用することで熱伝導率を大きく低減することができる。結果として、高出力の熱電変換素子を提供することができる。
【0051】
〔実施形態1〕
次に、図4図6および図7を参照して、本発明の実施形態1に係る熱電変換モジュールM1の作製工程を以下に説明する。ここで、図中のX方向を長さ、Y方向を幅、Z方向を厚さとして記載する。
【0052】
(工程1) 図4(1)に示すように、第1層として長さ100mm×幅60mm、厚さ1mmのポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる絶縁性基板1を準備した。
【0053】
(工程2) 次に、図4(2)に示すように、第2層として電荷輸送層2N,2Pを基板1上に形成する。ここでは、電荷輸送層2Nとして、電荷供与材料(n型ドーパント)であるトリフェニルフォスフィン(TPP)を表面にドープした長さ15mm×幅60mm,厚さ100μmのPGSグラファイトシート(2N)を3枚用意する。また、電荷輸送層2Pとして、電荷受容材料(p型ドーパント)であるテトラシアノキノジメタン(TCNQ)を表面にドープした長さ15mm×幅60mm,厚さ100μmのPGSグラファイトシート(2P)を3枚用意する。
図4(2)に示される電荷輸送層2N,2Pの位置に、上記の処理を施したグラファイトシート(2N,2P)を、それぞれドープ表面を上にして基板1上に交互に配置し電荷輸送層2N,2Pとした。なお、上記の配置には耐熱性接着剤を使用した。各グラファイトシート(2N,2P)は、その長手方向がY方向を向くように配置され、X方向において、n型とp型とが交互になるように各3枚配置した。
【0054】
(工程3) 次に、図4(3)に示すように、第3層として熱電変換材料層3N,3Pを、電荷輸送層2N,2P上にそれぞれ形成する。ここでは、第2層を成す各グラファイトシート(2N,2P)の両端部に、長さ15mm×幅15mm、厚さ200μmの大きさの熱電変換材料層3N,3Pをそれぞれ形成した。n型熱電変換材料としてFe2O3を、p型熱電変換材料としてCu2Oを、それぞれイオンプレーティング法によって成膜し熱電変換材料層3N,3Pを形成した。
【0055】
(工程4) 次に、図4(4)に示すように、第4層としてパッシベーション膜6を、グラファイトシート(2N,2P)のドープ層上に形成し、電極4を熱電変換材料層3N,3P上に形成する。ここでは、グラファイトシート(2N,2P)の中央表面上のドープ層が露出している部分に、厚さ200μmの窒化シリコン膜をプラズマCVD法で形成することによりパッシベーション膜6を形成した。
次に、熱電変換材料層3N,3Pの表面上に長さ15mm×幅15mmのAg層を蒸着法で形成した。続いて、長さ15mm×幅15mm、厚さ100μm、または長さ31mm×幅15mm、厚さ100μmのAl基板をAg層上に半田で固定して電極4を形成した。電極4は、グラファイトシート(2N,2P)を流れる電荷の経路が蛇行(ミアンダ)形状をなすように、隣り合ったAg層同士を接合して配置した。さらに、電気接続端子5を半田付で上記蛇行配線の両端部の電極4の側表面に固定した。ここで、電気接続端子5は銅からなる端子である。
【0056】
(工程5) 次に、図7に示すように、単層光熱変換基板7を熱電変換モジュール要素に設置して本発明の熱電変換モジュールM1を完成させる。ここでは単層光熱変換基板7として、セシウム酸化タングステン粒子を分散させたコーティング液を、ポリイミドシートの表面に塗布することで作製された光熱変換シートを使用した。図6(1),(2)に示すように、長さ100mm×幅20mm、厚さ300μmの単層光熱変換基板7を用意した。
図7に示すように、図4(4)の工程4で形成された電気接続端子5が固定されていない下部の電極4上に接触させて上記の単層光熱変換基板7を設置し、本発明の実施形態1に係る熱電変換モジュールM1を作製した。なお、上記の設置には耐熱性接着剤を使用した。
【0057】
〔実施形態2〕
次に、図4図6および図7を参照して、本発明の実施形態2に係る熱電変換モジュールM1の作製工程を以下に説明する。
【0058】
実施形態2に係る熱電変換モジュールM1は、図4に示す工程1から工程4までは実施形態1に係る熱電変換モジュールM1と同様に作製し、工程5の単層光熱変換基板7を図6(3)に示す単層光熱変換基板7と基板8からなる積層光熱変換基板9に変更して作製した。
単層光熱変換基板7として、セシウム酸化タングステン粒子を分散させたコーティング液をポリイミドシートの表面に塗布することで作製された光熱変換シートを使用した。基板8として、アルミナ(Al2O3)粉末と結合剤としてポリビニルブチラールを用いて作製されたアルミナシートを使用した。図6(4)に示すように、単層光熱変換基板7および基板8を耐熱性接着剤で積層し、長100mm×幅20mm、厚さ600μmの積層光熱変換基板9を用意した。
【0059】
次に、図7に示すように、図4(4)の工程4で形成された電気接続端子5が固定されていない下部の電極4上に接触させて上記の積層光熱変換基板9を配置し、本発明の実施形態2に係る熱電変換モジュールM1を作製した。なお、上記の配置には耐熱性接着剤を使用した。
実施形態1,2では、絶縁性基板1上において、n型熱電変換素子10Nおよびp型熱電変換素子10Pを直列に接続した熱電変換素子を3セット作製し、当該3セットの熱電変換素子を直列に接続して熱電変換モジュールM1を作製した。なお、n型熱電変換素子10Nとp型熱電変換素子10Pの直列・並列の具体的な接続構成や素子の数は、上記の例に限定されるものではない。
【0060】
〔第2の熱電変換モジュールM2について〕
次に、図8および図9に基づき、本発明の第2の熱電変換モジュールM2について説明する。
図8は、本発明の第2の熱電変換モジュールM2の概略図である。図8(1)は、第2の熱電変換モジュールM2の斜視図を示し、図8(2)は、第2の熱電変換モジュールM2の上面図を示す。また、図9は、図8の第2の熱電変換モジュールM2の支持基板11または13の断面図である。図9(1)は、支持基板として使用する単層支持基板11の図8(2)のG-G線断面図を示し、図9(2)は、支持基板として使用する積層支持基板13の図8(2)のG-G線断面図を示す。
【0061】
図8(1)に示すように、本発明の第2の熱電変換モジュールM2は、支柱16と、光熱変換基板7または9と、支持基板11または13とからなる。
本発明の熱電変換モジュールM2は、より詳細には、下面に単層支持基板11または積層支持基板13を配置し、上面に単層光熱変換基板7または積層光熱変換基板9を設置し、上面および下面の間に熱電変換モジュール要素e1またはe2を設置する構成である。また、電気接続端子15が熱電変換モジュール要素e1またはe2の電気接続端子5とコンタクトがとれるように設置されており、各熱電変換モジュール要素e1またはe2が直列に繋がる構成である。
【0062】
支持基板は、図9(1)に示すように、単層支持基板11であっても良いし、また、図9(2)に示すように、単層支持基板11の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する材料からなる基板12と単層支持基板11とからなる積層支持基板13であっても良い。単層支持基板11の基材としては、シリカ、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、黒鉛およびジルコニア等の粉末と有機結合剤とからなるセラミックシートや上記粉末を焼結させたセラミック板を使用することが好ましい。基板12の基材としては、銅、アルミニウム、焼結性黒鉛、結晶性黒鉛およびグラファイト等を使用することが好ましい。
【0063】
〔第3の熱電変換モジュールM3について〕
次に、図10図11に基づき、本発明の第3の熱電変換モジュールM3について説明する。
図10は、本発明の第3の熱電変換モジュールM3の概略図である。図10(1)は、第3の熱電変換モジュールM3の斜視図を示し、図10(2)は、第3の熱電変換モジュールM3の上面図を示す。また、図11(1)は、第3の熱電変換モジュールM3の光熱変換基板の下面図である。また、図11(2)は、第3の熱電変換モジュールM3の支持基板の上面図である。
【0064】
熱電変換モジュールM3では、光熱変換基板の底面および支持基板の最上面に溝を形成し、溝に沿って熱電変換モジュール要素を出し入れ可能に設置できる構成である。
図11(2)に示すように、熱電変換モジュールM3の支持基板11または13の最上面には多数の溝14が形成されている。また、図11に示すように、熱電変換モジュールM3の光熱変換基板7または9の底面には多数の溝14が形成されており、溝14の端部には電気接続端子15が設置されている。熱電変換モジュール要素e1またはe2を溝14に沿って配置したときに、熱電変換モジュール要素e1またはe2の電気接続端子5と熱電変換モジュールM3の電気接続端子15はコンタクトがとれる構造となっている。ここでは各熱電変換モジュール要素e1またはe2が直列に繋がる構成を示す。
【0065】
図10に示すように、熱電変換モジュールM3は、光熱変換基板7または9と支持基板11または13の間に、複数の熱電変換モジュール要素e1またはe2を溝14に沿って出し入れ可能に設置する。ここでは、溝を図示するために熱電変換モジュール要素を途中まで設置した図を示すが、もちろん一杯に配置するのが基本構成である。
【0066】
次に、図4図11に基づき、本発明の熱電変換モジュールM2,M3の実施形態について説明する。
〔実施形態3〕
まず、図4および図5に従って熱電変換モジュール要素e2の作製工程1から6を以下に説明する。続いて、図8に示す熱電変換モジュールM2の作製工程7を説明する。ここで、図中のX方向を長さ、Y方向を幅、Z方向を厚さとして記載する。
【0067】
(工程1) 図4(1)に示すように、第1層として長さ307mm×幅120mm、厚さ5mmのガラス・エポキシシートからなる絶縁性基板1を準備した。
【0068】
(工程2) 次に、図4(2)に示すように、第2層として電荷輸送層2N,2Pを基板1上に形成する。ここでは、電荷輸送層2Nとして、電荷供与材料(n型ドーパント)であるトリフェニルフォスフィン(TPP)を表面にドープした長さ50mm×幅120mm,厚さ100μmのPGSグラファイトシート(2N)を6枚用意する。電荷輸送層2Pとして、電荷受容材料(p型ドーパント)であるテトラシアノキノジメタン(TCNQ)を表面にドープした長さ50mm×幅120mm,厚さ100μmのPGSグラファイトシート(2P)を6枚用意する。
図4(2)に示される電荷輸送層2N,2Pの位置に、上記の処理を施したグラファイトシート(2N,2P)の各3枚を、それぞれドープ表面を上にして絶縁性基板1の表側に交互に配置し電荷輸送層2N,2Pとした。上記配置には耐熱性接着剤を使用した。各グラファイトシート(2N,2P)は、その長手方向がY方向を向くように配置され、X方向において、N型とP型が交互になるように各3枚配置された。
【0069】
(工程3) 次に、図4(3)に示すように、第3層として熱電変換材料層3N,3Pを、電荷輸送層2N,2P上にそれぞれ形成する。ここでは、絶縁性基板1の表側に配置された第2層を成す各グラファイトシート(2N,2P)の両端部に、長さ50mm×幅30mm、厚さ200μmの大きさの熱電変換材料層3N,3Pをそれぞれ形成した。n型熱電変換材料としてZnOを、p型熱電変換材料としてCu2Oを、それぞれイオンプレーティング法によって成膜し熱電変換材料層3N,3Pを形成した。
続いて、図4(4)に示すように、グラファイトシート(2N,2P)の中央表面上のドープ層が露出している部分に、厚さ200μmの窒化シリコン膜をプラズマCVD法で形成することによりパッシベーション膜6を形成した。
【0070】
(工程4) 次に、絶縁性基板1の裏側に、図4(2)に示すように、第2層として電荷輸送層2N,2Pを形成する。このとき、絶縁性基板1の表側に形成した電荷輸送層2N,2Pの導電型と同じ導電型の電荷輸送層2N,2Pを絶縁性基板1の裏側の同位置に配置する。すなわち、表側でn型が形成されていればその同位置の裏側もn型を、表側でp型が形成されていればその同位置の裏側もp型を形成する。
ここでは、工程2で作製した長さ50mm×幅120mm,厚さ100μmのPGSグラファイトシート(2N,2P)の各3枚を、ドープ表面を上にして絶縁性基板1の裏側にそれぞれ交互に配置した。配置には耐熱性接着剤を使用した。
【0071】
(工程5) 次に、図4(3)に示すように、第3層として熱電変換材料層3N,3Pを、絶縁性基板1の裏側に配置された電荷輸送層2N,2P上にそれぞれ形成する。ここでは、絶縁性基板1の裏側に配置された第2層を成す各グラファイトシート(2N,2P)の両端部に、長さ50mm×幅30mm、厚さ200μmの大きさの熱電変換材料層3N,3Pをそれぞれ形成した。n型熱電変換材料としてZnOを、p型熱電変換材料としてCu2Oを、それぞれイオンプレーティング法によって成膜し熱電変換材料層3N,3Pを形成した。
続いて、図4(4)に示すように、グラファイトシート(2N,2P)の中央表面上のドープ層が露出している部分に、厚さ200μmの窒化シリコン膜をプラズマCVD法で形成することによりパッシベーション膜6を形成した。
【0072】
(工程6) 次に、絶縁性基板1の表側に形成された熱電変換材料層3N,3Pの表面上に、長さ50mm×幅30mmのAg層を蒸着法で形成した。続いて、絶縁性基板1の裏側に形成された熱電変換材料層3N,3Pの表面上に長さ50mm×幅30mmのAg層を蒸着法で形成した。そして、表側と裏側のAg層を挟む絶縁性基板1の側面にAgペーストを塗布して表側と裏側のAg層のコンタクトを形成した。
次に、長さ50mm×幅66mm、厚さ50μm、あるいは、長さ101mm×幅66mm、厚さ50μmのAl基板をコの字型にして、図5(2)(3)に示すようにAg層上に被せるようにして半田で固定し電極4を形成した。電極4は、グラファイトシート(2N,2P)を流れる電荷の経路が蛇行(ミアンダ)形状をなすように、隣り合ったAg層同士を接合して配置した。
更に、電気接続端子5を半田付で上記蛇行配線の両端部の電極4の側表面に固定した。ここで、電気接続端子5は銅からなる端子である。
【0073】
以上により、絶縁性基板1の表側と裏側で並列に接続されたn型熱電変換素子10Nとp型熱電変換素子10Pが各3セット形成され、それらのn型熱電変換素子10Nとp型熱電変換素子10Pが直列に接続された熱電変換モジュール要素e2が作製された。もちろん、n型熱電変換素子10Nとp型熱電変換素子10Pの直列・並列の接続構成や素子の数は例示に限定されるものではない。
【0074】
(工程7) 次に、図8に示すように、支柱16と光熱変換基板7または9と支持基板11または13と熱電変換モジュール要素からなる熱電変換モジュールM2を作製した。
光熱変換基板として、セシウム酸化タングステン粒子を四フッ化エチレン樹脂粒子中に分散させて焼結することで作製された多孔質シートを使用した。図6(1)(2)に示すように、長さ210mm×幅310mm、厚さ3mmの単層光熱変換基板7を用意した。
支持基板として、アルミナを焼結させたセラミック基板を使用した。図9(1)に示すように、長さ210mm×幅310mm、厚さ5mmの単層支持基板11を用意した。
支柱として高さ120mmのガラス・エポキシからなる支柱16を4本用意した。そして、熱電変換モジュール要素として、工程1から工程6で作製された熱電変換モジュール要素e2を10枚用意した。
図8に示すように、単層支持基板11上に4本の支柱16と10枚の熱電変換モジュール要素e2を設置し、その上に単層光熱変換基板7を設置した。設置には耐熱性接着剤を使用した。次に、隣り合った電気接続端子5を繋ぐように電気接続端子15を設置し、本発明の熱電変換モジュールM2を作製した。ここで、電気接続端子15は銅からなる端子であり半田付けで設置した。
【0075】
以上により、図8に示される熱電変換モジュールM2が作製された。もちろん、熱電変換モジュール要素の数や接続形態、モジュールの大きさは例示に限定されるものではない。
【0076】
〔実施形態4〕
次に、図10に示す熱電変換モジュールM3を作製した。熱電変換モジュールM3においては、熱電変換モジュール要素e2を、実施形態3の工程1から工程6までと同様の工程で作製し、工程7の光熱変換基板と支持基板に関して、光熱変換基板の底面と支持基板の最上面に溝を形成し、溝に沿って熱電変換モジュール要素を出し入れできる設置構成とした。
【0077】
光熱変換基板として、図6(3)(4)に示す単層光熱変換基板7と基板8を積層した積層光熱変換基板9を使用した。単層光熱変換基板7として、セシウム酸化タングステン粒子を四フッ化エチレン樹脂粒子中に分散させて焼結することで作製された多孔質シートを使用した。基板8として、アルミナ(Al2O3)粉末と結合剤としてポリビニルブチラールを用いて作製されたアルミナシートを使用した。単層光熱変換基板7と基板8を耐熱性接着剤で積層し、長さ210mm×幅310mm、厚さ6mmの積層光熱変換基板9を用意した。
図11は光熱変換基板の下面図を示す。積層光熱変換基板9の底面には幅6mm,深さ1.5mmの溝14が10本形成されており、溝14の端部には電気接続端子15が設置されている。熱電変換モジュール要素e2を溝14に沿って配置したときに、熱電変換モジュール要素e2の電気接続端子5とモジュールM3の電気接続端子15はコンタクトがとれる構造となっている。電気接続端子15は銅からなる端子であり耐熱性接着剤で設置した。ここでは各熱電変換モジュール要素e2が直列に繋がる構成を示す。
【0078】
支持基板として、図9(2)に示す単層支持基板11と基板12とからなる積層支持基板13を使用した。単層支持基板11として、アルミナを焼結させたセラミック基板を使用した。基板12として銅板を使用した。単層支持基板11と基板12を耐熱性接着剤で積層し、長さ210mm×幅310mm、厚さ10mmの積層支持基板13を用意した。
図11(2)に支持基板の上面図を示す。積層支持基板13の最上面には幅6mm,深さ1mmの溝14が10本形成されている。
【0079】
支柱として高さ118mmのガラス・エポキシからなる支柱16を4本用意した。熱電変換モジュール要素として、工程1から工程6で作製された熱電変換モジュール要素e2を10枚用意した。
図10に示すように、積層支持基板13上に4本の支柱16を設置し、その上に積層光熱変換基板9を設置した。設置には耐熱性接着剤を使用した。最後に、熱電変換モジュール要素e2を溝に沿って挿入し、本発明の熱電変換モジュールM3を作製した。
【0080】
以上により、図10に示される熱電変換モジュールM3が作製された。もちろん、熱電変換モジュール要素e2の数や接続形態、モジュールの大きさは例示に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0081】
1:絶縁性基板
2N:n型電荷輸送層 2P:p型電荷輸送層
3N:n型熱電変換材料層 3P:p型熱電変換材料層
4:電極
5:電気接続端子
6:パッシベーション膜
7:単層光熱変換基板
8:基板
9:積層光熱変換基板
10N:n型熱電変換素子 10P:p型熱電変換素子
11:単層支持基板
12:基板
13:積層支持基板
14:溝
15:電気接続端子
16:支柱
100:従来の熱電変換素子
120,121,180 :電極
130:n型熱電変換材料
131:p型熱電変換材料
e1、e2:熱電変換モジュール要素
M1、M2、M3:熱電変換モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11