(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】脂肪組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 9/04 20060101AFI20220713BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20220713BHJP
A23G 3/40 20060101ALI20220713BHJP
A23G 1/36 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
A23D9/04
A23D9/00 518
A23G3/40
A23G1/36
(21)【出願番号】P 2019544708
(86)(22)【出願日】2018-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2018053902
(87)【国際公開番号】W WO2018149974
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-02-08
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518269740
【氏名又は名称】ブンゲ ロダース クロックラーン ビー.ヴィ.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】バッガン, クリシュナダト
(72)【発明者】
【氏名】ワールマン, ジャニーヌ ラベル
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0215811(US,A1)
【文献】特表2009-525739(JP,A)
【文献】特表平10-506285(JP,A)
【文献】特表2012-525857(JP,A)
【文献】The Lipid Handbook with CD-ROM Third Edition, 2006, p.55
【文献】Evaluation of high oleic-high stearic sunflower hard stearins for cocoa butter equivalent formulation, Food Chemistry, 2012, vol.134, no.3, p.1409-1417
【文献】Fats in Food Technology Second Edition,2014,p.177-178
【文献】The advantages of solid fat content determination in cocoa butter and cocoa butter equivalents by the Karlshamns method,European Food Research and Technology,2005,vol.222,p.385-391
【文献】Identification of cocoa butter equivalents added to cocoa butter by fatty acid composition of the triacylglycerol sub-fractions separated by Ag+ -HPLC - II,European Food Research and Technology,1999,vol.208, no.3,p.198-202
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
A23G
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物中の全脂肪酸に基づいて45重量%未満の飽和脂肪酸(SAFA)を含む非トランス、非水素化脂肪組成物であって、前記組成物におけるN35
(35℃における固体脂のパーセンテージ)からN25
(25℃における固体脂のパーセンテージ)への固体脂含量
の変化が少なくとも15であり、前記組成物のN35が3未満であ
り、POP/StOSt重量比が1~4であり、N値(固体脂含量(SFC))は、20℃で24時間安定化させてIUPACの2.150b法に従ってNMR分光法を用いて決定され、Pがパルミチン酸であり、Oがオレイン酸であり、Stがステアリン酸である、脂肪組成物。
【請求項2】
N35が2未満、好ましくは1未満である、請求項1に記載の脂肪組成物。
【請求項3】
N35からN25への固体脂含量
の変化が少なくとも17である、請求項1または請求項2に記載の脂肪組成物。
【請求項4】
40重量%未満のSAFA、好ましくは30~40重量%のSAFAを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項5】
20重量%未満の
多価不飽和脂肪酸(PUFA
)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項6】
15重量%未満のPUFAを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項7】
組成物中の全トリグリセリドに基づいて、8重量%超、好ましくは10重量%超、より好ましくは10~15重量%のStOStトリグリセリドを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項8】
組成物中の全トリグリセリドに基づいて、40重量%未満、好ましくは35重量%未満、より好ましくは25~40重量%のPOPトリグリセリドを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項9】
前記POP/StOSt重量比
が2~3である、請求項1~8のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項10】
組成物中の全脂肪酸に基づいて、C16:0を20~35重量%、C18:0を8~15重量%、および18:1を40~50重量%含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項11】
C16:0を23~30重量%含む、請求項10に記載の脂肪組成物。
【請求項12】
20~40のN20(20℃における固体脂のパーセンテージ)を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項13】
35~50重量%、例えば40~45重量%の量のパーム中融点画分、10~30重量%、例えば12~20重量%の量のシアステアリン、および30~60重量%、例えば、40~50重量%の量のナタネ油等の液体油を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項14】
ヒトの口内に挿入されたときに冷たい口溶け感を有する、請求項1~
13のいずれか一項に記載の脂肪組成物。
【請求項15】
菓子製品における、好ましくは充填脂肪としての、請求項1~
14のいずれか一項に記載の脂肪組成物の使用。
【請求項16】
1つ以上のトリグリセリド含有成分と液体油とを混合することを含む、請求項1~
14のいずれか一項に記載の脂肪組成物の調製方法。
【請求項17】
前記1つ以上のトリグリセリド含有成分が、パーム中融点画分およびシアステアリンを含む、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記パーム中融点画分が、32~36のIV
(ヨウ素価)を有する、請求項
16または
17に記載の方法。
【請求項19】
前記液体油が、ヒマワリ油、ダイズ油、ナタネ油、ベニバナ油、コーン油、パームオレイン、シアオレイン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項
16~
18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪組成物、該組成物を含む菓子製品、菓子製品における該組成物の使用、および脂肪組成物の製造方法に関する。
【0002】
チョコレートおよびチョコレート様製品等の多くの菓子製品はトリグリセリド脂肪を含有する。該脂肪は、製品に有益なテクスチャおよび感覚受容性を付与する。例えば、菓子製品のフレーバーリリースおよび味覚経験は、それが含有するトリグリセリド脂肪の融解プロファイルに少なくとも部分的に依存する。
【0003】
ある種のトリグリセリド脂肪は、菓子製品にいわゆる冷たい口溶けを提供する。冷たい口溶けは、口内で菓子製品が融解する間に著しい温度低下の感覚的経験を伴う。
【0004】
飽和脂肪酸(SAFA)レベルの低下という観点では、より良い栄養価を有する脂肪組成物を提供することが望ましい。しかしながら、SAFA含量を低下させると、典型的には、菓子製品の物理的特性および感覚的経験に影響が生じる。
【0005】
口内に冷たい口溶け感を提供しながら、同時に低いSAFAレベルを有する、菓子製品に使用するのに適した脂肪組成物を提供することが望ましいであろう。
【0006】
WO2007/090869は、低含量の飽和およびトランス不飽和酸を含む食用製品について記載している。
【0007】
本発明によれば、組成物中の全脂肪酸に基づいて45重量%未満の飽和脂肪酸(SAFA)を含む脂肪組成物が提供され、組成物におけるN35からN25への固体脂含量の変化は、少なくとも15、または15超であり、組成物のN35は3未満である。
【0008】
組成物は、典型的には、非トランス、非水素化組成物である。「非トランス、非水素化」とは、組成物中の飽和脂肪酸が、水素による不飽和脂肪酸の還元によって得られていないことを意味することを意図する。
【0009】
本発明の脂肪組成物は、典型的には、25~35℃領域にシャープな融解プロファイルを示す。これらの脂肪組成物から、口内に冷たい口溶け感を伴う一方で、口内における「ワックス感」の少ない菓子製品を製造することができる。
【0010】
驚くべきことに、本発明の脂肪組成物は、ほぼ同じ飽和脂肪酸(SAFA)レベルを有する類似の組成物と比較したときに、非常に冷たい口溶け感を提供できることが見出された。通常、飽和脂肪酸を減少させると、より柔らかい生成物が得られ、融解曲線の急勾配への影響がより少なくなるため、低SAFA脂肪を菓子製品に適用したときに(例えば、菓子充填脂肪)冷たい口溶け性を有するとは予想されていなかった。
【0011】
冷涼感の概念は、Geoff TalbotによるApplication of fats in confectionery(2006年にKennedy’s Publications Ltdにより刊行)の第1.6.1.章、融解特性に記載されている。この章は、冷涼感の特性および固体脂含量(SFC)プロファイルとの相関について説明しており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0012】
本明細書に記載されるN値(固体脂含量(SFC))は、典型的には、IUPACの2.150b法に従ってNMR分光法を用いて決定され、20℃で24時間安定である。固体脂含量は、例えば、N20(20℃における固体脂のパーセンテージ)、N25(25℃における固体脂のパーセンテージ)等と略される。
【0013】
本発明の脂肪組成物は、3未満のN35によって定義される固体脂含量を有する。好ましくは、組成物のN35は約2未満であり、より好ましくは約1未満、例えば約0.5未満、または約0.4未満、または約0.3未満である。低いN35値は、ワックス感の少ない口当たりを有する本発明の組成物を提供するのに役立つ。
【0014】
本発明の組成物において、温度を25℃から35℃に上昇させると、組成物の固体脂含量を少なくとも約15(または15%)以上減少させることができる。好ましくは、N35値は、同じ条件下で測定された同じ脂肪組成物のN25値よりも少なくとも15(または15%)低くなり得る。
【0015】
好ましくは、本発明の脂肪組成物は、少なくとも17(または17%)または17超のN35からN25への固体脂含量の変化を有し得る。より好ましくは、この変化は、少なくとも18もしくは18%、またはそれ以上、例えば、少なくとも18.8もしくは18.8%、またはそれ以上であり得る。より好ましくは、温度が25℃から35℃に上昇すると、固体脂含量を少なくとも17もしくは18、またはそれ以上減少させることができる(N25からN35)。
【0016】
本発明の組成物はまた、好ましくは20または25以上、より好ましくは30超、例えば20~40、好ましくは25または30~35のN20を有する。N値(固体脂含量(SFC))は、IUPACの2.150b法に従ってNMR分光法を用いて決定される。
【0017】
本明細書で使用される「脂肪酸」という用語は、8~24個の炭素原子を有する直鎖の飽和または不飽和(モノ-およびポリ不飽和を含む)カルボン酸を指す。n個の炭素原子およびx個の二重結合を有する脂肪酸は、Cn:xと表すことができる。例えば、パルミチン酸はC16:0と表されてもよく、オレイン酸はC18:1と表されてもよい。本明細書で言及される組成物中の脂肪酸のパーセンテージは、当該技術分野で慣用の用語であるように、グリセリド中に存在するトリ-、ジ-およびモノ-グリセリド中のアシル基を含み、C8~C24脂肪酸の総重量に基づく。脂肪酸プロファイル(すなわち、組成)は、例えば、ISO 15304に従ってガスクロマトグラフィーを用いて脂肪酸メチルエステル分析(FAME)によって決定され得る。
【0018】
本発明の脂肪組成物において、脂肪組成物は、組成物中の全脂肪酸に基づいて、好ましくは40重量%以下の飽和脂肪酸(SAFA)、好ましくは30~40重量%のSAFAを含む。
【0019】
典型的には、本発明の脂肪組成物は、組成物中に存在する全脂肪酸に基づいて55重量%未満、例えば50重量%未満、例えば40~50重量%の量の全モノ不飽和脂肪酸(MUFA)を含む。
【0020】
好ましくは、本発明による脂肪組成物は、組成物中の全脂肪酸に基づいて20重量%未満、より好ましくは12~16重量%等の15重量%未満の多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含む。
【0021】
「脂肪」という用語は、脂肪酸アシル基を含有するグリセリド油脂を指し、いずれか特定の融点を意味しない。「油」という用語は、「脂肪」と同義語として使用される。脂肪は、主としてトリグリセリドを含む。
【0022】
本明細書で特定されるトリグリセリドの量は、脂肪組成物中に存在する全トリグリセリドに基づく重量パーセントである。トリグリセリドXYZという表記は、グリセリドの1、2、および3位のいずれかに脂肪酸アシル基X、YおよびZを有するトリグリセリドを表す。A2Bという表記は、AABとABAの両方を含み、AB2は、ABBとBABの両方を含む。トリグリセリド含量は、例えばGC(ISO 23275)によって決定することができる。
【0023】
好ましくは、本明細書に記載される本発明の脂肪組成物は、組成物中の全トリグリセリドに基づいて、8重量%超、好ましくは10重量%超、より好ましくは10~15重量%のStOStトリグリセリドを含む。
【0024】
本明細書で使用される場合、「P」はパルミチン酸であり、「O」はオレイン酸であり、「St」はステアリン酸である。
【0025】
典型的には、本明細書に記載される本発明の脂肪組成物は、組成物中の全トリグリセリドに基づいて、40重量%未満、好ましくは35重量%未満、より好ましくは25~40重量%のPOPトリグリセリドを含む。
【0026】
有利には、本明細書に記載される本発明の脂肪組成物において、POP/StOSt重量比は、好ましくは10未満または5未満、より好ましくは1~4、さらにより好ましくは2~3である。
【0027】
好ましくは、本明細書に記載される本発明の脂肪組成物は、組成物中の全脂肪酸に基づいて、C16:0を20~35重量%、より好ましくは23~30重量%、C18:0を8~15重量%、より好ましくは10~13重量%、および18:1を35~55重量%、より好ましくは40~50重量%を含む。
【0028】
本発明の脂肪組成物は、組成物中の脂肪酸の総重量に基づいて0.4重量%未満、例えば0.3重量%未満、または約0.2重量%のC22:0含量を有し得る。
【0029】
パーム中融点画分(PMF)は、POPトリグリセリドが多いパーム油の画分である。それは、パームオレインまたはパームステアリンのいずれかからの再分画によって得られる。シアステアリンは、StOStトリグリセリドが多いシアバターの画分である。それはシアバターの分画によって得られる。
【0030】
本発明の脂肪組成物は、パーム中融点画分、シアステアリンおよび液体油の混合物またはブレンドを含んでもよい。パーム中融点画分は、好ましくは30~40、より好ましくは32~36のヨウ素価を有する。ヨウ素価は、当該技術分野において既知の方法を用いて決定することができる。液体油は、ヒマワリ油、ダイズ油、ナタネ油、ベニバナ油、コーン油、パームオレイン、シアオレイン、およびそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。好ましくは、液体油はナタネ油であり、パーム中融点画分は32~36のヨウ素価を有する。
【0031】
好ましくは、脂肪組成物は、35~50重量%、例えば40~45重量%の量のパーム中融点画分、10~30重量%、例えば12~20重量%の量のシアステアリン、および30~60重量%、例えば、40~50重量%の量のナタネ油等の液体油を含む。
【0032】
本明細書に記載される本発明の脂肪組成物は、ヒトの口内に挿入されたときに冷たい口溶け感を有する。ヒトの口腔は、典型的には、36.8±0.4℃の温度を有する。
【0033】
本発明はまた、菓子組成物または製品における、好ましくは充填脂肪としての、本明細書に開示される実施形態のいずれかによる脂肪組成物の使用も提供する。
【0034】
本明細書の実施形態のいずれかに記載される脂肪組成物を含む、菓子充填物等の菓子製品または組成物も提供される。
【0035】
本発明の菓子組成物は、典型的には、菓子製品および/またはパン製品の充填物として有用であり、該製品は周囲温度、すなわち10℃~30℃で保存および/または販売および/または消費されるように適合される。製品は、一般に冷凍されていない。充填物は、ビスケット、スポンジまたはウエハース等の基材に塗布することができ、またウエハースに含浸させることができる。ビスケット、スポンジまたはウエハースは、単層として、または隣接する層の間に充填物を有する多層において存在することができる。
【0036】
充填物は、ビスケット、スポンジもしくはウエハースに塗布される場合、またはそのように塗布されない場合、チョコレートの外層で覆われてもよい。したがって、本発明の好ましい菓子製品は、本発明の組成物で充填されたチョコレートの外層を含み、任意選択的に、充填物と共にビスケット、スポンジまたはウエハースを含む。典型的には、チョコレートの外層は、存在する場合、充填物およびビスケットまたはウエハースを包む。菓子製品は、任意選択的にセグメントに分割された、バーであり得る。セグメントは、製品の一部がユーザによって切り離され、製品の残りの部分とは別に消費されることを可能にするように適合され得る。
【0037】
別の実施形態では、本発明のパン組成物は、本発明の菓子組成物を含む充填物を有する焼成製品を含む。焼成製品は、パン、ケーキ、ビスケットおよびスポンジを含む。焼成製品は、隣接する層の間に充填物を有するビスケット、スポンジまたはウエハースの2つ以上の層を含むビスケット、スポンジまたはウエハースを含んでもよい。パン製品は、層の間に充填物が挟まれた2層のビスケット、スポンジまたはウエハースを含んでもよい。
【0038】
充填された菓子製品およびパン製品は、一般に、販売のために、例えば包装紙に梱包される。
【0039】
本発明の組成物は、糖、ホエイパウダー、脱脂粉乳、乳脂肪、無水ミルクパウダー、レシチン、メチルバニリン、ココアパウダー、ミルクパウダー、ヨーグルトパウダー、香味料および乳化剤から選択される1つ以上の菓子添加物を含む。好ましくは、組成物は、少なくとも糖、ホエイパウダー、脱脂粉乳、無水ミルクパウダー、および任意選択的に、他の成分を1つ以上含む。他の組成物は、少なくとも糖および香味料、および任意選択的に、他の成分を1つ以上含む。牛乳、水、着色剤および防腐剤、より好ましくは着色剤および防腐剤等の追加の成分が、任意選択的に組成物中に存在してもよい。糖は、スクロース、デキストロースおよびフルクトース(好ましくはスクロース)を含む。香味料として、例えば、イチゴ、ラズベリー、バニラ、ミント、オレンジ、レモン、ライム、コーヒー等が挙げられる。適切な乳化剤の例はレシチンである。好ましくは、本発明の組成物は、ナッツペースト等のナッツ固形物(例えば、ピーナッツ、アーモンド、ヘーゼルナッツ、クルミ、カシューナッツ、ピスタチオナッツ、マカデミアナッツおよびピーカンナッツ由来)を含有しない。
【0040】
典型的には、本発明の菓子組成物は、5~70重量%、より好ましくは10~60重量%、さらにより好ましくは20~50重量%、例えば、30~40重量%の量の本発明の脂肪組成物を含む。さらに、本発明の組成物は、10~80重量%、より好ましくは20~70重量%、さらにより好ましくは30~60重量%の量の糖(例えば、スクロース)を含み得る。カカオパウダーは、本発明の組成物中に存在する場合、好ましくは2~20重量%の量で存在する。乳脂肪、ホエイパウダー、脱脂粉乳、および無水ミルクパウダー、ならびにレシチンおよびメチルバニリン等の他の成分は、好ましくは0.01~30重量%の量で存在する。パーセンテージの数字は合計で100%になることが理解されよう。
【0041】
本発明の1つの好ましい組成物は、10~60重量%の量の脂肪組成物、20~70重量%の量の糖、任意選択的に2~20重量%の量のココアパウダー、ならびに脱脂粉乳、乳脂肪、香味料および乳化剤、例えばレシチンのうちの1つ以上、好ましくは全てを0.01~30重量%含む。
【0042】
本発明の組成物は、糖、ココアパウダー、ミルクパウダー、ヨーグルトパウダー、香味料および乳化剤から選択される1つ以上の菓子添加物を脂肪ブレンドと組み合わせることによって製造することができる。典型的には、成分は、脂肪ブレンドが溶融する温度で(例えば、50~80℃等の40℃超で)混合される。
【0043】
本発明の菓子製品は、例えば、当該技術分野で周知の方法に従って食用基材に菓子組成物を充填することによって製造され得る。適切な食用基材として、ビスケット、ウエハースおよびチョコレートシェルが挙げられる。
【0044】
本明細書で使用される「脂肪」という用語は、いずれか特定の状態を意味することを意図するものではなく、室温で液体であり、時には油とも称されるこれらのトリグリセリド脂肪を網羅することを意図する。
【0045】
本発明はまた、1つ以上のトリグリセリド含有成分と液体油とを混合することを含む、本明細書に定義される本発明による脂肪組成物の調製方法も提供する。トリグリセリド含有成分と液体油とは、ブレンダー等の当該技術分野で既知の任意の適切な手段を使用して混合することができる。
【0046】
1つ以上のトリグリセリド含有成分は、好ましくはパーム中融点画分およびシアステアリンを含む。
【0047】
本明細書内の明らかに以前に発行された文書の列挙または考察は、必ずしも、その文書が、先端技術の一部であるか、または一般共通の知識であると認識されるべきではない。
【0048】
本発明の所与の態様、実施形態、特徴、またはパラメータにおける選好および選択肢は、文脈上別段の指示がない限り、本発明の全ての他の態様、実施形態、特徴、およびパラメータにおける任意のおよび全ての選好および選択肢と組み合わせて開示されていると見なされるべきである。
【0049】
以下の非限定的な実施例は本発明を説明するものであり、決してその範囲を限定するものではない。実施例において、また本明細書を通して、別段の指示がない限り、全てのパーセンテージ、部および比率は重量によるものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【実施例】
【0051】
脂肪配合物中の飽和脂肪酸を減少させると、通常、より柔らかい生成物および不安定なテクスチャが得られる。50g/脂肪1グラムより高いSAFAレベルを有する菓子充填脂肪の低SAFA代替品の開発により、我々は、より低いSAFA含量(30~40%低いSAFA)で同様のテクスチャを得ることができることを見出した。
【0052】
それに加えて、我々は、驚くべきことに、脂肪配合物のうちの1つが、ほぼ同じSAFAレベルを有する他の代替品と比較したときに、非常に冷たい口溶け感を与えていることを見出した。冷涼感について:Geoff Talbotは、彼の著書「Application of fats in confectionery」の中で、この特性およびSFCプロファイルとの相関について説明している。
【0053】
実施例1
35~40%の飽和脂肪酸(SAFA)レベルを有する配合物を得るために、異なる成分/画分をブレンドすることによって異なる脂肪混合物(試料A、B、CおよびD)を調製した。
【0054】
配合物は、硬
質パーム油中融点画分、シアステアリン、ナタネ油および/または構造化剤に基づくものであった。
【0055】
構造化剤として、Wormerveer,The NetherlandsのIOI Loders Croklaanから市販されているCristalGreenを使用した。参照物質として、高SAFA脂肪を含めた。SFC融解曲線の分析、脂肪酸メチルエステル分析(FAME)、およびトリグリセリド(TAG)分析を、それぞれ下記の表1、2および3に示す。
表1試料の物理的特性、FAMEおよびTAG分析
表2.試料のFAME分析
表3.試料のTAG分析
【0056】
実施例2
実施例1からの脂肪を以下のモデル適用においてさらに評価した。以下のレシピに従って菓子充填クリームを調製した。
【0057】
試料を予備結晶化してカップに入れ、20℃で保存した。1週間保存した後、これらの試料を以下の官能特性について熟練の官能パネラーにより評価した:硬さ、(口内で)溶けるまでの時間、ワックス感、冷涼感、フレーバーリリース時間、およびフレーバーインパクト。その結果を
図1にグラフで表す。試料Aに基づく充填脂肪は、他の脂肪と比較して、驚くべきかつ非常に明確な冷たい口溶けを示した。