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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】構造能力及び難燃性能を有する複合材料
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/16 20060101AFI20220713BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20220713BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20220713BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20220713BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20220713BHJP
   C08L 81/06 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
B32B5/16
B32B5/28 A
C08J5/04 CER
C08J5/04 CEZ
C08L77/00
C08L79/08 Z
C08L81/06
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019548640
(86)(22)【出願日】2018-03-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 US2018021018
(87)【国際公開番号】W WO2018165073
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2020-12-02
(31)【優先権主張番号】62/467,885
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517318182
【氏名又は名称】サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】レンツィ, フィオレンツォ
(72)【発明者】
【氏名】レストゥッシア, カルメロ ルーカ
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-501904(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0164373(US,A1)
【文献】特表2008-506803(JP,A)
【文献】国際公開第2014/115844(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 70/00-70/88
C08J 5/04-5/24
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料であって、
硬化性樹脂を含浸させた強化繊維の少なくとも2つの層と;
強化繊維の隣接層の間に形成された層間領域と;
前記層間領域におけるポリマー強靱化粒子(P1)と難燃性粒子(P2)との組み合わせと
を含み、
前記難燃性粒子は、火又は200℃よりも上の温度に曝されたときに膨張するという点において熱膨張性であり、
前記ポリマー強靱化粒子が、熱可塑性ポリマー又は架橋熱可塑性ポリマーの粒子であり、
前記層間領域が硬化性樹脂を含み、前記ポリマー強靱化粒子が、前記複合材料の硬化中に前記層間領域で前記硬化性樹脂に不溶性であり、硬化後にばらばらの粒子としてとどまる、
複合材料。
【請求項2】
複合材料であって、
硬化性樹脂を含浸させた強化繊維の少なくとも2つの層と;
強化繊維の隣接層の間に形成された層間領域と;
前記層間領域におけるポリマー強靱化粒子(P1)と難燃性粒子(P2)との組み合わせと
を含み、
前記層間領域が硬化性樹脂を含み、前記ポリマー強靱化粒子が、前記複合材料の硬化中に前記層間領域で前記硬化性樹脂に可溶性である、
複合材料。
【請求項3】
前記難燃性粒子は、火又は200℃よりも上の温度に曝されたときに膨張するという点において熱膨張性である、請求項に記載の複合材料。
【請求項4】
前記ポリマー強靱化粒子が、熱可塑性ポリマー又は架橋熱可塑性ポリマーの粒子である、請求項2又は3に記載の複合材料。
【請求項5】
ポリマー強靱化粒子対難燃性粒子の重量比(P1:P2)が1:3~2:1の範囲にある、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
強化繊維の隣接層の間に形成された前記層間領域が全樹脂含有量の5%~40%の範囲の総重量を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項7】
前記ポリマー強靱化粒子が、ポリアミド、芳香族ポリイミド、及び架橋PES-PEES、ポリイミドと黒鉛とのブレンドの少なくとも1つを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項8】
前記難燃性粒子が少なくとも1つのリン化合物を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項9】
前記難燃性粒子が窒素及びリン化合物を含む、請求項に記載の複合材料。
【請求項10】
前記難燃性粒子がメラミンをさらに含む、請求項又はに記載の複合材料。
【請求項11】
前記難燃性粒子が、アンモニウムポリホスフェート、メラミンシアヌレート、メラミンホスフェート、メラミンポリホスフェート、及びメラミンポリ(金属ホスフェート)の少なくとも1つを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項12】
前記難燃性粒子が、メラミン又はメラミン含有樹脂内に封入されたアンモニウムポリホスフェートを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項13】
前記ポリマー強靱化粒子が、5~50ミクロン(μm)の範囲の平均粒径(d50)を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項14】
前記層間領域における前記硬化性樹脂が、前記強化繊維に含浸させる前記硬化性樹脂の組成と同じ組成を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項15】
前記硬化性樹脂が1つ若しくは複数のエポキシ樹脂を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項16】
前記硬化性樹脂が、二官能性、三官能性及び四官能性エポキシ樹脂から選択される少なくとも2つの多官能性エポキシ樹脂と、前記エポキシ樹脂と均質の混合物を形成することができる熱可塑性ポリマーとの組み合わせを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項17】
前記熱可塑性ポリマーが、PES、PEES、PES-PEESコポリマー、及びフェノキシから選択される、請求項16に記載の複合材料。
【請求項18】
前記硬化性樹脂が、多官能性エポキシ樹脂又はフェノール樹脂を有機ホスフィン酸又はそれの酸無水物と反応させることによって得られるリン変性エポキシ樹脂又はフェノール樹脂を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項19】
前記硬化性樹脂が、多官能性エポキシ樹脂をDOPOと反応させることによって調製されるDOPO(すなわち9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシド)の誘導体を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、繊維強化樹脂複合材料及びそれらの用途に関する。
【図面の簡単な説明】
【0002】
図1】本開示の実施形態による火暴露下の複合ラミネートの挙動を図解する。
図2】溶け落ち試験のためのセットアップを図解する。
【発明を実施するための形態】
【0003】
火災は、商用航空機にとって主要な安全上の問題である。飛行中の火災は、商用ジェット機を含めて事故から生じる死亡の最も高い公知の原因のうちの1つとしてランク付けされている。商用航空機の圧力容器内で使用される全ての非金属材料は、多くの国で燃焼性規制を受けている。近年、胴体及び翼などのいくつかの航空機部品は、ポリマー母材中に埋め込まれた強化繊維からなる複合材料から製造されている。燃焼中の複合構造物によって放たれる熱、煙及びガス並びにその構造的完全性の劣化は、火災事故の場合に航空機の安全性を迅速に危うくし得る。
【0004】
多くの国で、航空機内装品及び材料の試験に対する規制及び要件が確立されている。例えば、米国の連邦航空局(Federal Aviation Administration)(FAA)は、航空機の複合部品、とりわけ胴体客室に対して適用できる、そのような要件をFAR Section 25.853に示している。類似の要件が、欧州では欧州航空安全局(EUROPEAN AVIATION SAFETY AGENCY)(EASA)によって定められている。
【0005】
1つの要件は、火炎源が複合材料への適用から除去されると、所定の秒内に自己消火できることである。
【0006】
別の要件は、材料の燃焼が高レベルの煙及び毒性ガスを発生するべきではないことである。煙及び毒性ガスのレベルは、複合クーポンの燃焼によって測定され得る。「煙」の生成についての一般的な試験の1つは、閉鎖チャンバー中で25kW/mの外部放射熱フラックスに複合クーポンを曝すことを含むASTM E662 Smoke Chamberである。別の業界標準試験は、Boeing Specification Support Standard,BSS 7239(“Test Method for Toxic Gas Generation by Materials of Combustion”)であり、それは、燃焼ガスの分析を要求し、且つ、シアン化水素(HCN)、窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)、塩化水素(HCl)、フッ化水素(HF)、及び二酸化硫黄(SO)を現在は含む毒性ガスに関する規定の濃度限界を有する。
【0007】
上記の要件は、火災シナリオによるリスクを軽減するために、及び乗客の脱出時間を改善するために、航空機一次構造物用の複合材料に特に適用できるわけではないが、無視できる量の煙、毒性ガス及び放出繊維を生成すると同時に迅速に自己消火できる複合材料が望ましい。
【0008】
航空機構造物、主に胴体外板に使用される複合材料は、最新技術の複合材料と比べて改善された溶け落ち防護を提供できることがまた非常に望ましい。これは、衝突後火災の場合に火侵入に対する改善された抵抗を有する複合材料によって達成することができよう。
【0009】
複合材料の燃焼性性能は、繊維強化ポリマー複合材の製造のために使用される母材樹脂に、無機添加剤などの、異なるタイプの材料を組み入れることによって改善することができる。例えば、セラミックミクロスフェア、水和アルカリ金属ケイ酸塩、アルミニウム三水和物(ATH)、水酸化アルミニウムAl(OH)、水酸化マグネシウム(MDH)及びホウ酸亜鉛などの金属酸化物が、火に曝されたときに自己消火特性又は煙発生の減少を複合材に提供するために高いローディングで添加されてもよいが、そのような添加は、著しい重量増加と、衝撃後圧縮強さ(Compression Strength After Impact)(CAI)並びにモードI及びIIでの及び破壊靱性(GIc及びGIIc)などの耐衝撃性関連特性の低下とをもたらす。
【0010】
したがって、最新の解決策は、繊維強化ポリマー複合材の燃焼性を改善できるが、同時に、その機械的性能を改善できないようなものである。改善された衝撃性能の硬化複合材(例えば、プリプレグレイアップ)は、CAI並びに破壊靱性(GIc及びGIIc)が改善されたものである。CAIは、複合材料が損傷に耐える能力を測定する。CAIを測定するための試験において、硬化複合材は、所与のエネルギーの衝撃に供され、次に圧縮において負荷をかけられる。損傷面積及びへこみ深さが、衝撃の後に及び圧縮試験の前に測定される。この試験中に、複合材は、弾性不安定性が全く起こっていないことを確実にするために制約を加えられ、複合材の強度が記録される。
【0011】
破壊靱性は、亀裂を含有する材料が破壊に抵抗する能力を表現する特性であり、航空宇宙用途向け材料の最も重要な特性の1つである。破壊靱性は、亀裂が存在する場合に脆性破壊に対する材料の抵抗を表現する定量的な方法である。
【0012】
破壊靱性は、新たに生成した破壊表面積の単位当たり破壊中に消散させられるエネルギーである、歪みエネルギー解放率(G)として定量化され得る。Gは、GIc(モード1-開口モード)又はGIIc(モードII-面内剪断)を包含する。下付き文字「Ic」は、亀裂に垂直な垂直引張応力下に形成される、モードI亀裂開口を意味し、下付き文字「IIc」は、亀裂の面に平行に及び亀裂前縁に垂直に作用する剪断応力によって生成したモードII亀裂を意味する。層間剥離の開始及び成長は多くの場合、モードI及びモードII破壊靭性を調べることによって決定される。
【0013】
高い衝撃性能及び破壊靱性を有する従来の高性能複合材料は典型的には、高いSO放出レベルを放ち得るポリエーテルスルホン(PES)又は他の硫黄含有熱可塑性強靱化材料を含有する。SO放出レベルは、ASTM E662によるNational Bureau Standard(米国規格基準局)(NBS)Smoke Density Chamber(煙密度チャンバー)における規定の熱暴露条件下に燃焼中に複合サンプルによって放たれる百万当たりの部(ppm)単位でのSOの量を測定することによって決定される。いくつかの複合材は、PESで強靱化された樹脂母材に加えて層間領域においてPES系強靱化粒子を含有してもよく、そのような粒子は、許容できないレベルまでSO放出のレベルをさらに増加させるであろう。
【0014】
さらに、高性能複合材料は、低い自己消火性能を有することが当業者によって知られている、ナイロンなどの、層間粒子を有する。
【0015】
それ故、低レベルのSO放出を生み出すであろう、迅速に自己消火することができ、火侵入に対する良好な抵抗を有して衝突後航空機事故によって引き起こされる機内火災シナリオ又は溶け落ち火災シナリオの場合に航空機乗客のリスクを低減する複合材料を提供することが望ましいであろう。さらに、耐荷重性用途向けに必要とされる衝撃性能及び靱性をまた同時に提供することができる多機能性複合材料を有することが航空宇宙業界において依然として必要とされている。
【0016】
複合ラミネートの層間領域におけるポリマー強靱化粒子と不溶性の難燃性粒子との組み合わせが、2つのタイプの粒子のほんの1つを含有する同じ複合ラミネートと比べて難燃性、衝撃性能及び靱性を同時に改善できることが分かった。これに関連して、「不溶性」粒子は、複合ラミネートの層間領域において、その硬化中にばらばらの粒子としてとどまる、すなわち、粒子は、硬化中に周囲の樹脂母材へ溶解しない。
【0017】
いくつかの実施形態において、層間領域でのポリマー強靱化粒子と、ある種の不溶性の難燃性粒子との組み合わせが、自己消火時間の低減及び煙放出の低減、並びに同時に、CAI及びGIcの改善を含む相乗効果を生み出し得ることが発見された。
【0018】
本開示の一態様は、硬化性複合材料であって、
a)硬化性樹脂を含浸させた又は硬化性樹脂中に埋め込まれた強化繊維の少なくとも2つの層と;
b)強化繊維の隣接層間の層間領域と;
c)層間領域におけるポリマー強靱化粒子(P1)と不溶性の難燃性粒子(P2)との組み合わせと
を含む複合材料を指向する。
【0019】
層間領域はまた、硬化性樹脂を含有し、粒子は、この樹脂中に実質的に埋め込まれている。層間領域における硬化性樹脂は、強化繊維に含浸させる硬化性樹脂と同じものであっても異なってもよい。用語「実質的に埋め込まれた」は、粒子の少なくとも90重量%が層間領域における樹脂中に埋め込まれていることを意味する。
【0020】
粒子は、球形であっても非球形であっても、多孔質であっても多孔質でなくてもよい。本明細書で用いるところでは、用語「粒子」は、互いに離れているはっきりと異なる、個別の単位である、ばらばらの三次元形状構造物を意味するが、そのような分離は、構造物が互いに接触していることを排除しない。
【0021】
ポリマー強靱化粒子(P1)及び難燃性粒子(P2)は、複合材料中の全樹脂含有量の重量を基準として5重量%~40重量%の総含有量で層間領域において分散されている。いくつかの実施形態において、P1及びP2粒子の両方の総含有量は、複合材料中の全樹脂含有量の重量を基準として10重量%~20重量%である。
【0022】
ポリマー強靱化粒子対難燃性粒子の重量比(P1:P2)は、1:3~2:1重量/重量の範囲にあってもよい。
【0023】
本明細書での目的に好適であるポリマー強靱化粒子には、熱可塑性樹脂粒子が含まれる。各粒子は、金属などの導電性外側コーティングを有しても有さなくてもよい。強靱化粒子は、複合材料の熱硬化性母材樹脂に、それの硬化中に可溶性であっても不溶性であってもよい。可溶性粒子は、樹脂の硬化時に周囲の樹脂へ溶解するが、不溶性粒子は、硬化ポリマー母材中にばらばらの粒子としてとどまる。ある種の粒子が不溶性であるか可溶性であるかの決定は、それらが存在する特定の樹脂系への粒子の溶解性に関連している。樹脂系には、1つ若しくは複数の熱硬化性樹脂、硬化剤及び/又は触媒、並びに未硬化樹脂又は硬化ポリマー母材の特性を変性するための少量の任意選択の添加剤が含まれてもよい。
【0024】
ポリマー強靱化粒子にはまた、硬化中に複合材料の熱硬化性樹脂中で膨潤する又は体積が増加する、膨潤性粒子が含まれてもよい。
【0025】
ポリマー強靱化粒子は、ポリイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA/ナイロン)、ポリフタルアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、架橋ポリブタジエン、ポリアクリル、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリエーテルイミド(PEl)、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及びポリエーテルケトンケトン(PEKK)などのポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリフェニルスルフィド(PPS)、ポリヒドロキシエーテル、スチレン-ブタジエン、ポリアクリレート、ポリアセトール、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド-イミド、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)、それらのブレンド、又はそれらのコポリマーから選択される熱可塑性ポリマーの粒子であってもよい。
【0026】
ポリマー強靱化粒子はまた、米国特許出願公開第2010/0304118号明細書及び米国特許第8,846,818号明細書に開示されているタイプの架橋熱可塑性樹脂粒子であってもよく、それらの両方とも参照により本明細書に援用される。いくつかの実施形態において、架橋熱可塑性樹脂粒子は、架橋PES-PEESコポリマーの粒子である。
【0027】
ポリマー強靱化粒子は、0.002ナノメートル~2000ミクロン範囲で動作する、Malvern Mastersizer 2000を、例えば、使用するレーザー回折技術によってによって測定されるときに5~50ミクロン(μm)の範囲の平均粒径(d50)を有してもよい。「d50」は、粒度分布の中央値を表し、あるいはまた、粒子の50%がこの値以下の粒径を有するような分布上の値である。
【0028】
好ましくは、ポリマー強靱化粒子は、およそ1:1のアスペクト比で形状が実質的に球形である。強靱化粒子に関して、用語「アスペクト比」は、粒子の最大断面寸対最小断面寸法の比を意味する。
【0029】
難燃性粒子は、好ましくは少なくとも14重量%、又は少なくとも18重量%の含有量で、リン化合物などの難燃性化合物を含有する。いくつかの実施形態において、難燃性粒子は、窒素及びリン化合物を含有する。他の実施形態において、難燃性粒子は、窒素、リン化合物及びメラミンを含有する。好ましくは、難燃性粒子は、200℃までエポキシなどの熱硬化性樹脂に可溶ではない。
【0030】
例として、難燃性粒子は、アンモニウムポリホスフェート、メラミンシアヌレート、メラミンホスフェート、メラミンポリホスフェート及びメラミンポリ(金属ホスフェート)から選択されてもよい。メラミンポリ(金属ホスフェート)の例は、メラミン-ポリ(亜鉛ホスフェート)及びメラミン-ポリ(アルミニウムホスフェート)である。
【0031】
難燃性粒子は、2~35ミクロン、いくつかの実施形態においては、5~20ミクロンの平均粒径(d50)を有してもよい。
【0032】
一実施形態において、難燃性粒子は、高温、例えば、200℃~600℃、及び火炎に曝されたとき膨張するであろう熱膨張性の又は膨張する難燃性粒子であり、水及び他の有機液体への低い溶解性を有する。図1は、層間領域において熱膨張性の難燃性粒子11とポリマー強靱化粒子12との組み合わせを有する複合ラミネート(又はプリプレグレイアップ)10の、ラミネートが火に曝されるときの挙動を図解する。図1において、左側の図は、火への初期暴露でのラミネート10を示し、右側の図は、火暴露のある期間後の暴露表面に近い難燃性粒子が膨張した同じラミネートを示す。
【0033】
一実施形態によれば、難燃性粒子は、メラミン又はメラミン含有樹脂で封入されたアンモニウムポリホスフェート粒子である。このタイプの難燃性粒子は、ポリアミド、芳香族ポリイミド、及び架橋PES-PEESから選択されるポリマー強靱化粒子と組み合わせられてもよい。芳香族ポリイミドは、繰り返し単位の50%(重量単位で)超が少なくとも1つの芳香環と少なくとも1つのイミド基とを含む任意のポリマーであってもよい。メラミンは、高温、例えば200℃よりも上に、及び火炎に曝されたときに膨張する傾向がある。
【0034】
別の実施形態において、メラミン封入アンモニウムポリホスフェート粒子と導電性ポリイミド粒子との組み合わせが使用される。導電性ポリイミド粒子は、ポリイミドと少量(重量単位で50%未満)の、黒鉛などの導電性材料とのブレンドから形成される。
【0035】
代表的な市販の難燃性粒子は、製品名Exolit(登録商標)AP 462及びExolit(登録商標)AP 740 FでのCLARIANT製のアンモニウムポリホスフェート粒子である。Exolit(登録商標)AP 462は、メラミン樹脂でマイクロカプセル化された(すなわち、コートされた)アンモニウムポリホスフェートの粒子からなる、約20ミクロンの粒径(d50)を有する細粒白色粉末であり、非吸湿性であり、非燃焼性である。Exolit(登録商標)AP 740 Fは、リン/窒素相溶効果及び膨張によってその有効性を発現するアンモニウムポリホスフェートをベースとする、8~12ミクロンのサイズ(d50)を有する細粒白色粉末である。
【0036】
メラミンポリ(金属ホスフェート)は、Catena Additivesから銘柄名Safireで商業的に入手可能である。
【0037】
リン/窒素相乗効果及び熱膨張によってその有効性を発現させる他の代表的な粒子は、6~7ミクロンの粒径(d50)のSOLVAYから商業的に入手可能な窒素-リン系粒子である、Amgard(登録商標)PA1及びAmgard(登録商標)PA2である。Amgard(登録商標)PA1粒子は、15重量%~18重量%のリン含有量及び30重量%~34重量%の窒素含有量を有する。Amgard(登録商標)PA2粒子は、17重量%~20重量%のリン含有量及び9重量%~12重量%の窒素含有量を有する。
【0038】
他の代表的な市販の難燃性製品には、Melapur(登録商標)MC25、MC50、MCXL、200、200/70、200FF、MPが含まれる。Melapur(登録商標)200は、BASF SE(Ludwigshafen,Germany)から商業的に入手可能な、42~44重量%の窒素及び12重量%のリンを含有するメラミンポリホスフェートである。
【0039】
いくつかの実施形態において、選択された難燃性粒子と選択されたポリマー強靱化粒子との組み合わせが、600℃~1200℃の範囲の温度表面を生み出す火炎に複合ラミネートが曝される、(図1に示される)溶け落ち試験中の伝熱を低減するという相乗効果を提供すると考えられる。
【0040】
いくつかの実施形態において、各難燃性材料の加法特性よりも大きい高められた難燃性特性を提供する難燃性材料の組み合わせを有することがまた可能である。例として、アンモニウムポリホスフェート系の膨張する難燃剤は、臭素化ホスフェート(例えば、FR 370)、メラミンホスフェート、及びメラミンポリホスフェート難燃剤の少なくとも1つと組み合わせられてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される粒子の組み合わせを含有する、結果として生じる硬化複合材料は、ASTM D7136/37に従って測定されるときに225MPa超又は250Mpa超の、30Jでの衝撃後の、衝撃後圧縮強さ(CAI)、及びEN6033に従って測定されるときに350J/m超又は400Mpa超のモードI下での層間破壊靱性(GIc)、及び高い複合材溶け落ち性能を示し、航空機用途向けの最も一般的な火災、煙及び毒性(FST)要件を順守している。好ましくは、30Jでの衝撃後の、衝撃後圧縮強さ(CAI)は、250~400MPaであり、モードI下での層間破壊靱性(GIc)は、400J/m~1000J/mである。
【0042】
樹脂
強化繊維に含浸させる/注入するための硬化性樹脂(又は樹脂組成物)は好ましくは、1つ若しくは複数の未硬化の熱硬化性樹脂を含有する硬化性又は熱硬化性樹脂であり、それらには、エポキシ樹脂、(例えばポリイミド又はビスマレイミドなどの)イミド、ビニルエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、ベンゾオキサジン、(例えば尿素、メラミン又はフェノールなどの)ホルムアルデヒド縮合物樹脂、ポリエステル、アクリル系樹脂、それらのハイブリッド、ブレンド及び組み合わせが含まれるが、それらに限定されない。
【0043】
好適なエポキシ樹脂には、芳香族ジアミン、芳香族モノ第一級アミン、アミノフェノール、多価フェノール、多価アルコール、ポリカルボン酸のポリグリシジル誘導体が含まれる。好適なエポキシ樹脂の例には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS及びビスフェノールKなどのビスフェノールのポリグリシジルエーテル、並びにクレゾール及びフェノール系ノボラックのポリグリシジルエーテルが含まれる。
【0044】
具体的な例は、4,4’-ジアミノジフェニルメタンのテトラグリシジル誘導体(TGDDM)、レソルシノールジグリシジルエーテル、トリグリシジル-p-アミノフェノール、トリグリシジル-m-アミノフェノール、ブロモビスフェノールFジグリシジルエーテル、ジアミノジフェニルメタンのテトラグリシジル誘導体、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、フェノール-ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジルエーテル、o-クレゾールノボラックのポリグリシジルエーテル又はテトラフェニルエタンのテトラグリシジルエーテルである。
【0045】
ホスト母材樹脂での使用に好適な市販のエポキシ樹脂には、N,N,N’,N’-テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(例えばHuntsman製のMY 9663、MY 720、及びMY 721);N,N,N’,N’-テトラグリシジル-ビス(4-アミノフェニル)-1,4-ジイソ-プロピルベンゼン(例えばMomentive製のEPON 1071);N,N,N’,N’-テトラクリシジル(tetraclycidyl)-ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン(例えばMomentive製のEPON 1072);p-アミノフェノールのトリグリシジルエーテル(例えばHunstman製のMY 0510);m-アミノフェノールのトリグリシジルエーテル(例えばHunstman製のMY 0610);2,2-ビス(4,4’-ジヒドロキシフェニル)プロパンなどのビスフェノールA系材料のジグリシジルエーテル(例えばDow製のDER 661、又はMomentive製のEPON 828、及び好ましくは25℃で粘度8~20Pa・sのノボラック樹脂;フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル(例えばDow製のDEN 431又はDEN 438);ジ-シクロペンタジエン系フェノールノボラック(例えばHuntsman製のTactix 556);並びにジヒドロキシジフェニルメタン(ビスフェノールF)のジグリシジル誘導体(例えばHuntsman製のPY 306)が含まれる。
【0046】
硬化性樹脂はまた、追加の難燃性性能を付与するためにリン変性エポキシ又はフェノール樹脂を含んでもよい。この変性樹脂は、多官能性エポキシ又はフェノール樹脂(例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂)を、有機ホスフィン酸(例えばメタン亜ホスホン酸及びジエチルホスフィン酸)又はそれの無水物と反応させることによって得ることができる。具体的な例は、多官能性エポキシをDOPOと反応させることによって調製されるDOPO(すなわち9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシド)の誘導体である。リン変性エポキシ樹脂は、硬化前に反応性の高いままであり、従来の硬化剤を使用して硬化させることができる。リン変性エポキシ樹脂中のリン含有量は、約3重量%~約11重量%の範囲内であってもよい。リン変性エポキシ樹脂又はフェノール樹脂は、室温(20℃~25℃)で液体であっても固体であってもよく、一般に、ASTM D-1652によって測定されるときに約170~約450のエポキシ当量(g/eq)を有する。市販の、難燃性の、リン変性エポキシ樹脂の例には、Shin-A T&C Co.製のSEN-6030、6065、6070、6075、6085、6095、SENP-6630、SEN-275MC 75、SEN-290MC 65、XEN-0140、XEN-0230;DIC Corpから入手可能なHFC-350、HPC 9080-60P、及びEXB-Xが含まれる。これらの樹脂中のリン含有量は、3重量%~11重量%の範囲内である。
【0047】
硬化性樹脂は、赤リンをさらに含んでもよい。一般に、5重量%~10重量%の赤リンの添加が着火のリスクを低減することができる。
【0048】
一般に、硬化性樹脂は、硬化剤、硬化触媒、コモノマー、レオロジー制御剤、粘着性付与剤、無機若しくは有機充填剤、強靱化剤としての熱可塑性及び/又は弾性ポリマー、安定剤、抑制剤、顔料、染料、難燃剤、反応性稀釈剤などの他の添加剤、並びに硬化前又は硬化後の母材樹脂の特性を変性させるための当業者に周知の他の添加剤と組み合わせて1つ若しくは複数の熱硬化性樹脂を含有する。
【0049】
硬化性樹脂組成物のための好適な強靱化剤には、ポリアミド、コポリアミド、ポリイミド、アラミド、ポリケトン、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリスルフィド、ポリフェニレンオキシド(PPO)及び変性PPO、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)及びポリプロピレンオキシド、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリル、ポリフェニルスルホン、高性能炭化水素ポリマー、液晶ポリマー、エラストマー及びセグメント化エラストマーの単独で又は組み合わせでのどちらかのホモポリマー又はコポリマーが含まれるが、それらに限定されない。
【0050】
硬化性母材樹脂への硬化剤及び/又は触媒の添加は任意選択であるが、そのようなものの使用は、必要に応じて、硬化速度を増加させる及び/又は硬化温度を低下させ得る。硬化剤は好適には、公知の硬化剤、例えば、芳香族若しくは脂肪族アミン、又はグアニジン誘導体から選択される。芳香族アミン硬化剤が好ましく、好ましくは、1分子当たり少なくとも2つのアミノ基を有する芳香族アミンであり、例えばアミノ基がスルホン基に対してメタ位又はパラ位にある、ジアミノジフェニルスルホンが特に好ましい。特定の例は、3,3’-及び4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(DDS);メチレンジアニリン;ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン;ビス(4-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン;4,4’メチレンビス-(2,6-ジエチル)-アニリン(Lonza製のMDEA);4,4’メチレンビス-(3-クロロ,2,6-ジエチル)-アニリン(Lonza製のMCDEA);4,4’メチレンビス-(2,6-ジイソプロピル)-アニリン(Lonza製のM-DIPA);3,5-ジエチルトルエン-2,4/2,6-ジアミン(Lonza製のD-ETDA 80);4,4’メチレンビス-(2-イソプロピル-6-メチル)-アニリン(Lonza製のM-MIPA);4-クロロフェニル-N,N-ジメチル-尿素(例えばMonuron);3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチル-尿素(例えばDIURON TM)及びジシアノジアミド(例えばPacific Anchor Chemical製のAMICURE TM CG 1200)である。
【0051】
好適な硬化剤にはまた、酸無水物、特にポリカルボン酸無水物、例えばナド酸無水物、メチルナド酸無水物、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、及びトリメリット酸無水物などが含まれる。
【0052】
層間領域での硬化性母材樹脂はまた、上で考察されたタイプの、1つ若しくは複数の未硬化の熱硬化性樹脂を含有する硬化性又は熱硬化性樹脂である。ある種の実施形態において、層間領域での硬化性母材樹脂は、強化繊維を含有する領域における母体樹脂と同じものである。他の実施形態において、層間領域での樹脂は、強化繊維を含有する領域における母体樹脂とは異なる。
【0053】
強化繊維
高性能複合材料及びプリプレグを製造するために、好適な強化繊維は、高い引張強さ、好ましくはASTM C1557-14に従って測定されるときに500ksi(すなわち3447MPa)超の引張強さを有する。この目的のために有用である繊維には、炭素繊維又は黒鉛繊維、ガラス繊維及び炭化ケイ素、アルミナ、ホウ素、石英等で形成された繊維、並びに例えばポリオレフィン、ポリ(ベンゾチアゾール)、ポリ(ベンズイミダゾール)、ポリアリレート、ポリ(ベンゾオキサゾール)、芳香族ポリアミド、ポリアリールエーテル等の有機ポリマーから形成された繊維が含まれ、2つ若しくはそれ以上のそのような繊維を有する混合物が含まれてもよい。好ましくは、繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、及び商品名KEVLARでDuPont Companyによって販売される繊維などの、芳香族ポリアミド繊維から選択される。強化繊維は、複数のフィラメントでできた不連続又は連続トウの形態で、連続一方向若しくは多方向テープとして、又は織布、不捲縮布、若しくは不織布として使用されてもよい。織形態は、平織、繻子織、又は綾織スタイルから選択されてもよい。不捲縮布は、多数の層及び繊維配向を有してもよい。
【0054】
繊維は、サイジングされてもサイジングされなくてもよい。繊維は、典型的には5~35重量%、好ましくは少なくとも20重量%の濃度で添加することができる。構造的用途向けには、とりわけ30容積%~70容積%、よりとりわけ50容積%~70容積%で、連続繊維、例えばガラス又は炭素繊維を使用することが好ましい。
【0055】
複合プリプレグ及びラミネートの製造
一実施形態によれば、特定量のポリマー強靱化粒子及び燃性粒子が、強化繊維の含浸の前に(すなわち、プリプレグ製造の前に)樹脂組成物と混合される。プリプレグ層を製造するために、樹脂フィルムが、先ず粒子含有樹脂組成物を剥離紙上へコートすることによって製造される。次に、そのような樹脂フィルムの1つ若しくは2つが、繊維に含浸させるために熱及び圧力の助けの下で強化繊維の層の一面若しくは両面上へ積層され、それによって単位面積当たりの繊維の特定の重量の繊維強化ポリマー層(又はプリプレグ層)を形成する。積層プロセス中に、粒子のサイズが繊維フィラメント間の間隔よりも大きいという事実のために、粒子は濾去され、繊維層の外側にとどまる。結果として生じるプリプレグ層は、粒子がその中に埋め込まれている母材樹脂の1つ若しくは2つの層に隣接した構造的繊維強化層を含有する。その後、その中に強靱化粒子を含有する2つ若しくはそれ以上のプリプレグ層がレイアッププロセスによって他の層のトップ上に積層されたものである場合、粒子は、2つの隣接層間の層間領域に配置される。この実施形態において、(粒子なしの)層間領域での母材樹脂は、強化繊維に含浸させる樹脂と同じものである。
【0056】
別の実施形態において、粒子なしの硬化性樹脂が、樹脂フィルムを形成するために剥離紙上へコートされる。この樹脂フィルムは次に、繊維層の1つの面と接触させられる。加圧すると、樹脂フィルムは、繊維に含浸させ、繊維層の外面上にほとんど又は全く樹脂を残さない。その後、粒子を含有する硬化性樹脂の層が、樹脂含浸繊維層の露出外面に積層される。粒子を有する硬化性樹脂は、強化繊維に含浸させる樹脂と同じものであってもそれとは異なってもよい。結果として、粒子含有樹脂層は、含浸させられた繊維層の外側にとどまり、繊維にさらに含浸させない。複数のそのような構造物が、難燃性粒子とポリマー強靱化粒子とが層間領域に配置された複合ラミネートを形成するために一緒に積層される。
【0057】
用語「プリプレグ」は、本明細書で用いるところでは、繊維体積の少なくとも一部分内に硬化性樹脂組成物を含浸させている繊維のシート又は層を意味する。航空宇宙構造物を製造するために使用されるプリプレグは通常、連続強化繊維、例えば炭素繊維の樹脂含浸シートである。プリプレグは完全含浸プリプレグであっても部分含浸プリプレグであってもよい。強化繊維に含浸させる母材樹脂は、部分硬化状態にあっても未硬化状態にあってもよい。一実施形態において、航空宇宙構造物を製造するために使用されるプリプレグは、「テープ」又は「一方向テープ」としばしば言われる、一方向強化繊維、例えば炭素繊維からなってもよい。別の実施形態において、航空宇宙構造物を製造するために使用されるプリプレグは、「布」又は「バイアキシャルテープ」としばしば言われる、2つの方向に配向させられた強化繊維からなってもよい。
【0058】
典型的には、プリプレグは、レイアップし、三次元形態へと成形し、引き続き、最終複合部品/構造物へ硬化させる準備ができている柔軟な又は可撓性の形態にある。このタイプのプリプレグは、航空機の翼、胴体、バルクヘッド及び操縦翼面などの、耐荷重性の構造部品を製造するのに特に好適である。硬化プリプレグの重要な特性は、低減された重量での高い強度及び剛性である。
【0059】
複合構造物を形成するために、複数のプリプレグ層が「プリプレグレイアップ」を形成するために積層順序でツール上にレイアップされてもよい。最も一般的な航空機一次構造物において、層が異なる方向に配向させられたレイアップを作り出し、異なる方向に耐荷重性性能を有する複合構造物を作り出すために複数の一方向テープが組み立てられる。レイアップ内のプリプレグ層は、互いに選択された配向で、例えば0°、±45°、90°等で配置されてもよい。プリプレグレイアップは、手動レイアップ、自動化テープレイアップ(ATL)、先進型繊維配置(advanced fibre placement)(AFP)、及びフィラメント・ワインディングを含むが、それらに限定されない技術によって製造され得る。いくつかの実施形態において、複合構造物は、「一方向テープ」で組み立てられてもよい。別の実施形態において、航空宇宙構造物を製造するために使用されるプリプレグは、一方向テープ及びバイアキシャルテープからなってもよい。例えば、布が一方向テープよりも大きい防火を提供する能力を有し、このため、防火能力又は溶け落ち能力を必要とする複合構造物における外層としてしばしば使用されることはよく知られている。
【0060】
本明細書に開示される複合材料又はプリプレグレイアップの硬化は、200℃までの高温で、好ましくは170℃~190℃の範囲で、そして漏洩ガスの変形効果を抑えるために、又はボイド形成を抑えるために、高圧、好適には10バール(1MPa)までの、好ましくは3バール(0.3MPa)~7バール(0.7MPa)の範囲の圧力を使用して一般に実施される。好ましくは、硬化温度は、5℃/分まで、例えば、2℃/分~3℃/分で加熱することによって達成され、9時間まで、好ましくは6時間まで、例えば2時間~4時間の必要とされる期間維持される。母材樹脂における触媒の使用は、さらにより低い硬化温度を可能にし得る。圧力は全部解除され、温度は、5℃/分まで、例えば3℃/分までで冷却することによって低下させられる。190℃~350℃の範囲の温度及び大気圧でのポスト硬化が、母材樹脂のガラス転移温度を改善するために、好適な加熱速度を用いて、行われてもよい。
【0061】
用途
本明細書に開示される複合材料は、隠れエリアで良好な溶け落ち防護能力及び低い火炎伝播を有する航空機構造物を製造するのに好適であるプリプレグの形態にあってもよい。例えば、複合プリプレグは、一次及び二次航空機構造物、立体及び弾道構造物を製造するために使用されてもよい。そのような構造部材には、複合胴体及び翼構造物が含まれる。とりわけ、複合プリプレグは、燃焼性要件を満たす必要があろう耐荷重性又は耐衝撃性構造物の製造に特に好適である。本明細書に開示されるプリプレグはまた、航空、船舶、自動車、及び鉄道などの、他の輸送機関用途向けの構成部品の製造にも適用できる。
【実施例
【0062】
以下の実施例において製造される複合パネルは、燃焼性及び機械的性能評価のために以下の手順に従って試験した。
【0063】
a.60秒垂直燃焼試験手順
燃焼性は、あるものがどの程度容易に燃えて又は着火して、火災又は燃焼を引き起こすかである。燃焼性試験FAR 25.853又はCS25 App.F Part-I(a)(1)(i)は、火炎の作用に供された材料が燃えるかどうかを評価するために用いられる簡単な試験である。
【0064】
75mm×300mmの寸法を有する60秒垂直燃焼試験用のクーポンを、欠陥を含まないベースラインパネルから摘出した。クーポンを垂直にぶら下げ、38mm高さの火炎に曝した。火炎を60秒の期間適用した。この期間後に、バーナーを取り除き、フレーム時間を検出した。
【0065】
フレーム時間は、バーナー火炎が検体の真下から除去された後に検体が炎を上げて燃え続ける秒単位での時間である。白熱光をもたらすが、火炎をもたらさない表面燃焼は含まれない。
【0066】
FAR25.853又はCS25 App.F Part-I(a)(1)(i)に従った材料の燃焼性分類のための判定基準は、試験に合格するためには平均フレーム時間が15秒を超えるべきではないことである。
【0067】
b.毒性試験
エポキシ樹脂/炭素繊維クーポンについて、aにおいて発生した煙の毒性は、BSS 7239に従って測定した。
【0068】
75×75×1.6mmの寸法を有するクーポンを、24時間21±3℃-50±5%相対湿度で順化させ、密閉チャンバー(NBS-煙濃度チャンバー)中で25KW/mの一定照射に供した。3つの試験を各サンプルについて行った。各試験の継続時間は300秒であった。試験中に、二酸化硫黄(SO)の濃度の値を、比色分析のDraeger(登録商標)パイプを使用して測定した。
【0069】
c.溶け落ち試験手順
試験は、火炎温度を用いて較正された熱源としてプロパンバーナーを使用して40cm×40cmフラットパネルに関して実施した。衝突後火災をシミュレートするために、パネル表面での熱フラックスを、約1160℃の火炎温度で182kW/mに固定した。層状熱電対(タイプN)を、試験中に火炎温度をモニタするために「高温面」でパネルの近くに配置した。3つの熱電対タイプKを使用してパネルと直接に接触している「低温面」の温度分布をモニタした。追加の熱電対及び熱フラックス(HF)検出器をまた、パネルから30.48cmすなわち12インチの距離にそれぞれ配置して試験中にパネル上方の高温ガスの温度及び熱フラックスをモニタした。2つのビデオカメラを使用してパネルを通しての火侵入を検出し、試験中のパネル反応を評価した。「高温面」(火暴露面)及び「低温面」での温度をモニタしながら、溶け落ち試験を5分間行った。図2は、この試験のためのセットアップを例示する。
【0070】
試験されたパネルをまた目視検査し、結果を以下の損傷レベル判定基準に従って評価した:
5=パネルは激しく損傷を受けた:目に見える乾燥繊維の60%超のパネルの低温面
4=パネルはひどく損傷を受けた:目に見える乾燥繊維の40~60%の低温面
3=パネルは損傷を受けた:目に見える乾燥繊維の20~40%の低温面側
2=パネルはわずかに損傷を受けた:目に見える乾燥繊維の10~20%の低温面
1=パネルはほとんど損傷を受けなかった:目に見える乾燥繊維のゼロ又は10%未満の低温面
【0071】
d.機械的特性評価
30ジュール衝撃後の衝撃後圧縮(CAI)を、24層準等方性ラミネートを使用して測定した。測定は、EN 2565方法Bに従って調製され、180℃で2時間硬化させられた、欠陥を含まないパネルから摘出されたクーポンに関して室温で行った。検体を機械加工し、衝撃を与え、ASTM D7136/37に従って試験した。
【0072】
モードIでの層間破壊靱性(GIc)は、中央面に亀裂スタータとしてのフロオロエチレンポリマー(FEP)フィルムを有する硬化16層一方向ラミネートを使用して測定した。GIc測定は、EN 2565方法Bに従って調製され、180℃で2時間硬化させられた、欠陥を含まないパネルから摘出されたクーポンに関してEN 6033に従って室温で行った。
【0073】
開放孔圧縮は、ASTM D6484に従って測定した。見かけ層間剪断強さ(ILSS)は、EN 2563に従って測定した。
【0074】
実施例1:強靱化ナイロン粒子とアンモニウムポリホスフェートとの組み合わせ
プリプレグ製造
5つの樹脂組成物を表1に示される処方に従って調製した。樹脂組成物対照1.0は、いかなる粒子も含有しない。他の樹脂組成物のそれぞれは、ポリマー強靱化粒子と難燃性粒子との異なる組み合わせで変性した。成分の量は、重量比(w/w)百分率で報告する。
【0075】
【0076】
原材料:
Araldite PY 306は、Huntsmanから入手可能なビスフェノールFジグリシジルエーテル樹脂である。
Araldite MY 0510は、Huntsmanから入手可能なp-アミノフェノール樹脂のトリグリシジルエーテルである。
SUMIKAEXCEL 5003Pは、住友化学から入手可能なポリエーテルスルホンポリマーである。
Exolit(登録商標)AP 462(粒子a)は、Clariantによって商業化された20ミクロンの平均粒径のメラミン系コーティング付きのアンモニウムポリホスフェート粒子である。
Vestosint(登録商標)Z2649(粒子b)は、Evonikから入手可能な脂肪族ナイロン粒子である。
【0077】
プリプレグは、一方向炭素繊維に含浸させるために表1の樹脂調合物を使用して製造した。約50gsmの単位面積当たりの重量(areal weight)を有する2つのフィルムを製造するために樹脂調合物を使用した。次に、Toho Tenaxから商業的に入手可能なIMS65 E23 24K炭素繊維に含浸させるためにこれらのフィルムを使用し、それぞれ約190gsmの単位面積当たりの繊維の重量及び表2に報告されるように35%w/w~36%w/wの樹脂含有量のプリプレグをもたらした。
【0078】
【0079】
垂直燃焼及び毒性試験結果
16層、[+,0,-,90]2sに等しいレイアップ及び約3.2mmの厚さの対照パネル2.0を製造するために、粒子を有しない対照プリプレグ1.0を使用した。複数のプリプレグ1.1、1.3及び1.4を使用して、それぞれ、表3の複合パネル2.1、2.2及び2.3を調製した。これらのパネルは、プリプレグをレイアップして準等方性形態[+,0,-,90]2sのレイアップ(各レイアップは約3.2mm厚さである)を形成すること、引き続く177℃で及び6バール圧力で2時間のオートクレーブ中での圧密及び硬化によって製造した。粒子含有プリプレグを、前記粒子がレイアップの間紙領域にとどまるようにレイアップした。全ての硬化パネルを60秒垂直燃焼及び毒性試験に供した。燃焼性試験及び毒性試験結果を表3に報告する。
【0080】
【0081】
層間粒子を有しない、対照パネル2.0は、60秒垂直燃焼試験中に高い平均フレーム時間(17秒)を示し、且つ、毒性試験中に高いSO含有量(100ppm)を生成した。そのような高いフレーム時間は、航空機複合部品の実際の火災及び燃焼中にこれが起こる場合には乗客に重大なリスクを示すであろう。Vestosint(登録商標)Z2649ナイロン粒子の添加(比較パネル2.1)は、さらにより高いフレーム時間及び同じSO含有量を提供した。しかしながら、Vestosint(登録商標)Z2649ナイロン粒子とExolit(登録商標)AP 462との組み合わせ(パネル2.2及び2.3)は、ポリマー強靱化粒子のみを有するパネル(比較パネル2.1)又は粒子を有しないパネル(対照パネル2.0)と比べて60秒垂直燃焼試験中の平均フレーム時間の低減及び毒性試験中のSO含有量の放出の低減で見られるように、燃焼性性能の著しい改善を提供した。
【0082】
溶け落ち試験結果
40cm×40cmの寸法を有する対照パネル2.4を製造するために、複数の対照プリプレグ1.0を使用した。パネル2.5及び2.6を、それぞれ、複数のプリプレグ1.2及びプリプレグ1.4から製造した。これらのパネルは、プリプレグをレイアップして準等方性形態[+,-,0,90]sのレイアップ(各レイアップは約1.6mm厚さである)を形成すること、引き続く177℃で及び6バール圧力で2時間のオートクレーブ中での圧密及び硬化によって製造した。全ての硬化パネルを溶け落ち試験に供し、結果を表4に報告する。
【0083】
【0084】
表4の結果は、Vestosint(登録商標)Z2649ナイロン粒子(b)のみを含有する、対照パネル2.4が不十分な溶け落ち防護性能を提供したことを示す。試験中に、パネルの高温面上の温度は約1160℃であった。パネルの低温面上の温度は、火暴露時間の関数として急速に上昇し、それは約2分で400℃超に達した。そのような速い温度上昇は、複合胴体外板などの航空機複合部品上で起こる場合には、それにより低い荷重下で構造部材(フレームなどの)の崩壊を引き起こしてしまうことがあるため悲惨であろう。火暴露の5分後に、パネルは、パネル低温面での目に見える乾燥繊維の60%超で激しく損傷を受けたように思われた(損傷レベルは、溶け落ち試験手順について上に考察された判定基準によれば5に分類される)。
【0085】
表4の結果は、18%w/wのAP462難燃性粒子(a)を含有する、比較パネル2.5が溶け落ち防護性能の改善を提供したことを示す。粒子(a)と(b)との組み合わせを含有した、パネル2.6は、製造されたパネル全ての中でパネルの裏面での最低の温度及び最低の熱フラックス、並びに5分の火暴露後に最低の損傷レベルを提供した。パネル2.6について、温度低下は、AP462粒子のみを含有するパネル2.5と比べて2分の溶け落ち試験後のパネル低温面で約30℃、及び4分の溶け落ち試験後で約50℃であった。意外にも、試験後のパネル2.6の損傷レベル(損傷レベル3-表3を参照のこと)は、比較パネル2.5の損傷レベル(損傷レベル4-表3を参照のこと)及び対照パネル2.4の損傷レベル(損傷レベル5-表3を参照のこと)よりも低い。パネル2.6が比較パネル2.5と比べて樹脂組成物中に減少した量の難燃性粒子を有するし、そしてナイロン粒子の使用が一定量の難燃性粒子との組み合わせでない場合には良好な燃焼性結果を提供すると予期されなかったので、これは意外である。
【0086】
機械的試験結果
[+,0,-,90]3s形態に従った、24層の対照パネルをレイアップすること、引き続く177℃で及び6バール圧力で2時間のオートクレーブ中での圧密及び硬化によって、対照パネル2.7を製造した。パネル2.8及び2.9を、それぞれ、複数のプリプレグ1.2及びプリプレグ1.4から製造した。欠陥を含まないクーポンを、パネルから摘出し、CAI試験に供した。パネルの詳細及び機械的試験結果を表5に報告する。
【0087】
【0088】
表5の結果は、層間領域への難燃性粒子(a)のみの添加(比較パネル2.8)が、粒子を有しない対照パネル2.7と比べて改善を提供しなかったことを示す。しかし、パネル2.9におけるナイロン強靱化粒子(b)と難燃性粒子(a)との組み合わせは、対照パネル2.7及び比較パネル2.8と比べてCAI値の50MPa超の改善を提供した。
【0089】
1つの余分なパネル(パネル2.10)を、488J/mに等しいGIcを提供する破壊靱性試験のために16層のプリプレグ1.4をレイアップすることによって製造した。この結果は、パネル2.9の層間領域におけるナイロン強靱化粒子(b)と難燃性粒子(a)との組み合わせが、250J/mよりも上の30J衝撃後のCAI、400J/mよりも上のGIcを提供し、且つ、垂直燃焼及び毒性試験(表3を参照のこと)並びに溶け落ち試験(表4を参照のこと)中に優れた燃焼性性能を提供したことを示す。
【0090】
実施例2:強靱化ポリイミド粒子とアンモニウムポリホスフェートとの組み合わせ
プリプレグ製造
表6に示される処方に従って樹脂組成物を調製した。いかなる粒子も含有しなかった、樹脂組成物対照1.0は、対照と見なされる。様々な樹脂組成物は、ポリマー強靱化粒子と難燃性粒子との異なる組み合わせを含有した。量は、重量比(w/w)百分率で報告する。
【0091】
【0092】
P84 NT1(粒子c)は、硬化時に膨張し、周囲の樹脂へ可溶化する(溶解する)、44ミクロンの平均粒度分布d50を有するEvonik製の芳香族ポリイミド粒子である。プリプレグは、実施例1についてのように一方向炭素繊維IMS65 E23 24Kに含浸させるための表6の樹脂調合物を使用して製造し、それぞれ約190gsmの単位面積当たりの繊維の重量及び表7に報告されるように35%w/w~36%w/wの樹脂含有量の3つのプリプレグをもたらした。
【0093】
【0094】
垂直燃焼及び毒性試験
複数のプリプレグ3.1、3.2及び3.3を使用して、表8に開示される複合パネル4.1、4,2及び4.3をそれぞれ調製した。パネル製造及びクーポン試験は、実施例1に記載された手順と同様であった。試験結果を表8に報告する。比較のために、層間粒子を有していなかった対照パネル2.0に関して生じた結果を表8にまた報告する。
【0095】
【0096】
ポリイミド強靱化粒子P84 NT1とExolit(登録商標)AP 462との組み合わせ(パネル4.2及び4.3)は、ポリマー強靱化粒子のみを有するパネル(比較パネル4.1)又は粒子を有しないパネル(対照パネル2.0)と比べて60秒垂直燃焼試験中の平均フレーム時間の低減及び毒性試験中の放出SO含有量の低減で見られるように、燃焼性性能の著しい改善を提供した。
【0097】
溶け落ち試験結果
複数のプリプレグ3.1及び3.3を使用して、表9に開示される複合パネル4.4及び4.5をそれぞれ調製した。パネル製造及び試験は、実施例1に記載された手順と同様であった。試験結果を表9に報告する。比較のために、AP462粒子のみを有する比較パネル2.5に関して生じた結果を表9にまた報告する。
【0098】
【0099】
表9の結果は、P84 NT1(ポリイミド)層間粒子のみを含有する、対照パネル4.4が、不十分な溶け落ち防護性能を提供したことを示す。2つの粒子(a)及び(c)の組み合わせを含有するパネル4.5は、対照パネル4.4及び比較パネル2.5と比べてパネルの裏面での著しい温度低下、及び損傷レベルの著しい低下を提供した。実施例1におけるパネル2.6の場合におけるように、パネル4.5が比較パネル2.5と比べて樹脂組成物中に減少した量の難燃性粒子を有したし、一定量の難燃性粒子との組み合わせでない場合にポリイミド粒子の使用が良好な燃焼性結果を提供すると予期されなかったので、この効果は意外である。
【0100】
機械的試験結果
複数のプリプレグ3.3を使用して、それぞれ、CAI及びGIc試験用の複合パネル4.6及び4.7を調製した。パネルの詳細及び機械的試験結果を表10に報告する。比較のために、層間粒子を有しない対照パネル2.7についての結果をまた報告する。
【0101】
表10は、パネル4.6及び4.7の層間領域におけるP84 NT1及びAP462粒子の組み合わせが250MPaよりも上(具体的には、252MPa)の30J衝撃後のCAI、400Jよりも上(具体的には、477J/m)のGIcを提供し、且つ、表8及び9に報告されるように優れた燃焼性性能を提供したことを示す。GIcは、層間粒子を有しない類似のパネル(対照パネル2.11)よりも約50%大きいことが分かった。
【0102】
【0103】
プリプレグ3.3のマルチプライ層をまた、ASTM D6484に従って行われるOHC試験及びEN 2563に従って行われるILSS試験用の追加のパネルを製造するために使用した。表11は、ポリマー強靱化粒子と難燃性粒子との組み合わせを含むプリプレグから製造されたパネルの良好な圧縮負荷及び層間剪断耐力を示す機械的試験結果を報告する。
【0104】
【0105】
実施例3:架橋熱可塑性樹脂粒子とアンモニウムポリホスフェートとの組み合わせ
プリプレグ製造
表12に示される処方に従って2つの樹脂組成物を調製した。いかなる粒子も含有しない、樹脂組成物対照1.0は、対照と見なされる。様々な樹脂組成物は、ポリマー強靱化粒子と難燃性粒子との異なる組み合わせを含有した。量は、重量比(w/w)百分率で報告する。
【0106】
【0107】
粒子(d)は、内部で生成した、25ミクロンの平均粒径の架橋PES-PEESの粒子である。プリプレグは、実施例1についてのように一方向炭素繊維IMS65 E23 24Kに含浸させるために表12の樹脂調合物を使用して製造し、それぞれ約190gsmの単位面積当たりの繊維の重量及び表13に報告されるように約36%w/wの樹脂含有量の2つのプリプレグをもたらした。
【0108】
【0109】
垂直燃焼及び毒性試験結果
複数のプリプレグ5.1及び5.2を使用して、表14に開示される複合パネル6.1及び6.2を、それぞれ、調製した。パネル製造及びクーポン試験は、実施例1に記載された手順と同様であった。試験結果を表14に報告する。比較のために、層間粒子を有しない、対照パネル2.0に関して生じた結果を表14にまた報告する。
【0110】
【0111】
架橋PES-PEES粒子とExolit(登録商標)AP 462との組み合わせ(パネル6.2)は、ポリマー強靱化粒子のみを含有する比較パネル6.1及び粒子を全く含有しない対照パネル2.0と比べて60秒垂直燃焼試験中の平均フレーム時間の低減及び毒性試験中のSO含有量の低減で見られるように、燃焼性性能の著しい改善を提供した。
【0112】
溶け落ち試験結果
複数のプリプレグ5.1及び5.2を使用して、表15に開示される複合パネル6.3及び6.4を、それぞれ、調製した。パネル製造及び試験は、実施例1に記載された手順と同様であった。試験結果を表15に報告する。比較のために、AP462粒子のみを有する比較パネル2.5に関して生じた結果を表15にまた報告する。
【0113】
【0114】
表15の結果は、層間領域で架橋PES-PEES粒子のみを含有する、対照パネル6.3は、不十分な溶け落ち防護性能を提供したことを示す。2つの粒子(a)及び(b)の組み合わせを含有した、パネル6.4は、対照パネル6.3及び比較パネル2.5と比べてパネル裏面での著しい温度低下及び損傷レベルの著しい低下を提供した。実施例1についてのように、パネル6.4が比較パネル2.5と比べて樹脂組成物中に減少した量の難燃性粒子を有したし、一定量の難燃性粒子との組み合わせでない場合に架橋熱可塑性樹脂粒子の使用が良好な燃焼性結果を提供すると予期されなかったので、この効果は意外である。
【0115】
機械的試験結果
パネル6.5及び6.6を、実施例1及び2に記載された手順と同様のCAI及びGIc試験用にプリプレグ5.2を使用して製造した。層間粒子を有しない対照パネル2.7及び2.11に関する結果と比較して機械的結果を表16に報告する。
【0116】
【0117】
表14及び16は、パネル6.5及び6.6の層間領域における架橋熱可塑性樹脂粒子と難燃性粒子との組み合わせが308MPaの30J衝撃後のCAI、400J/mよりも上のGIcを提供し、且つ、優れた燃焼性性能を提供したことを示す。
【0118】
プリプレグ5.2のマルチプライ層をまた、OHC及びILSS試験用の追加のパネル(パネル6.7及び6.8)を製造するために使用した。表17は、ポリマー強靱化粒子と難燃性粒子との組み合わせを含むプリプレグから製造されたパネルの良好な圧縮負荷及び層間剪断耐力を示す機械的試験結果を報告する。
【0119】
【0120】
実施例4:導電性ポリイミド粒子とアンモニウムポリホスフェートとの組み合わせ
プリプレグ製造
表18に示される処方に従って樹脂組成物7.1を調製した。いかなる粒子も含有しなかった、樹脂組成物対照1.0は、対照と見なされる。量は、重量比(w/w)百分率で報告する。NT1-15G(粒子e)は、15%w/wの合成黒鉛を含有するEvonik製の導電性ポリイミド粒子である。
【0121】
【0122】
垂直燃焼及び毒性試験結果
前の実施例についてのように一方向炭素繊維IMS65 E23 24Kに含浸させるために樹脂7.1を使用し、約190gsmの単位面積当たりの繊維の重量及び約36重量%の樹脂含有量のプリプレグ7.1をもたらした。
【0123】
複数のプリプレグ7.1を使用して複合パネル8.1を調製した。パネル製造及びクーポン試験は、前の実施例に記載された手順と同様であった。パネル8.1における導電性ポリイミド粒子NT1-15G(粒子e)とExolitAP 462粒子(a)との組み合わせが、粒子を全く含有しない対照パネル2.0と比べて60秒垂直燃焼試験中の平均フレーム時間及び毒性試験中のSO含有量の両方の低減によって示されるように、燃焼性性能の著しい改善を提供したことを示す試験結果を表19に報告する。
【0124】
【0125】
機械的試験結果
パネル8.2及び8.3を、前に記載された手順と同様のCAI及びGIc試験用にプリプレグ7.1を使用して製造した。層間粒子を有しない対照パネル2.7及び2.11に関する結果と比較して機械的結果を表20に報告する。
【0126】
【0127】
表19及び20は、パネル8.2及び8.3の層間領域における導電性ポリイミド粒子と難燃性粒子との組み合わせが、229MPaの30J衝撃後のCAI、417J/mのGIcを提供し、且つ、優れた燃焼性性能を提供したことを示す。
【0128】
プリプレグ7.1のマルチプライ層をまた、OHC及びILSS試験用のパネル8.4及び8.5を製造するために使用した。表21に報告される、試験結果は、導電性ポリイミド粒子と難燃性粒子との組み合わせを含むプリプレグから製造されたパネルの良好な圧縮負荷及び層間剪断耐力を示す。
【0129】
【0130】
実施例5:架橋熱可塑性樹脂粒子と窒素-リン系粒子との組み合わせ
プリプレグ製造
表22に示される処方に従って、樹脂組成物9.1及び9.2を調製した。量は、重量比(w/w)百分率で報告する。Amgard PA1(Solvay製)を、窒素及びリン含有難燃性粒子として使用した。SEN6065は、255~285g/eqのエポキシ当量及び7.3%のリン含有量の、Shin-Aから商業的に入手可能なリン変性エポキシである。リン変性エポキシの使用は、改善された難燃性特性を付与することを意図した。
【0131】
【0132】
樹脂組成物9.1及び9.2のそれぞれを、前の実施例に記載されたような一方向炭素繊維IMS65 E23 24Kに含浸させるために使用し、それぞれ約190gsmの単位面積当たりの繊維の重量及び35%w/wの樹脂含有量の、2つの異なる粒子含有プリプレグをもたらした。表23は、プリプレグの組成を提供する。
【0133】
【0134】
垂直燃焼及び毒性試験結果
複数のプリプレグ9.1及び9.2を使用して、表24に開示される複合パネル10.1及び10.2を、それぞれ、調製した。パネル製造及びクーポン試験は、実施例1に記載された手順と同様であった。試験結果を表24に報告する。比較のために、層間粒子を全く持たなかった、対照パネル2.0に関して生じた結果を表24にまた報告する。
【0135】
【0136】
架橋熱可塑性樹脂粒子と難燃性粒子との組み合わせ(パネル10.1)は、粒子を全く含有しない対照パネル2.0と比べて60秒垂直燃焼試験中の平均フレーム時間及び毒性試験中のSO含有量の低減で見られるように、燃焼性性能の著しい改善を提供した。平均フレーム時間のさらなる低減は、リン変性エポキシの添加(パネル10.2)で得られた。
【0137】
機械的試験結果
パネル10.3~10.6を、前に記載された手順と同様のCAI及びGIc試験のためにプリプレグ9.1及び9.2を使用して製造した。いかなる層間粒子も持たなかった、対照パネル2.7及び2.11についての結果と比較して機械的結果を表25に報告する。
【0138】
【0139】
専門用語
本開示において、量に関連して用いられる修飾語「およそ」及び「約」は、表記の値を含み、文脈によって決められる意味を有する(例えば、特定の量の測定に関連した誤差の程度を包含する)。例えば、「約」に続く数は、その列挙される数のプラスマイナス0.1%~1%の列挙される数を意味することができる。接尾語「(s)」は、本明細書で用いるところでは、それが修飾する用語の単数形及び複数形の両方を包含し、それによってその用語の1つ若しくは複数を包含する(例えば、金属(metal(s))は、1つ若しくは複数の金属を包含する)ことを意図する。本明細書に開示される範囲は、端点及びその範囲の全ての中間値を含み、例えば、「1%~10%」は、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%等を包含する。
図1
図2