(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】せん断応力印加のための織物および織物を含むベルト
(51)【国際特許分類】
D03D 11/00 20060101AFI20220713BHJP
B65G 15/34 20060101ALI20220713BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20220713BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20220713BHJP
D03D 15/573 20210101ALI20220713BHJP
D06M 15/564 20060101ALI20220713BHJP
D06M 15/693 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
D03D11/00 Z
B65G15/34
D03D1/00 D
D03D15/283
D03D15/573
D06M15/564
D06M15/693
(21)【出願番号】P 2019565059
(86)(22)【出願日】2018-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2018053613
(87)【国際公開番号】W WO2018149845
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2020-12-23
(32)【優先日】2017-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591270796
【氏名又は名称】ハバシット アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172236
【氏名又は名称】岩木 宣憲
(72)【発明者】
【氏名】ボド・ヴィクスメルテン
(72)【発明者】
【氏名】ベルント・ロゼル
(72)【発明者】
【氏名】ローラント・トレシュ
(72)【発明者】
【氏名】ブレント・ホワイトヘッド
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・タイラー
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-068440(JP,A)
【文献】実開昭53-019001(JP,U)
【文献】実開昭56-066000(JP,U)
【文献】英国特許第01390603(GB,B)
【文献】特表2005-507978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 11/00
B65G 15/34
D03D 1/00
D03D 15/283
D03D 15/573
D06M 15/564
D06M 15/693
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)
0.05~2mmの範囲にある直径を有し、本質的に互いに平行に走っており、互いに距離Dだけ隔てられている、第一の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(501~508)の第一の層(A)と、
b)
0.05~2mmの範囲にある直径を有し、本質的に互いに平行に走っており、互いに前記距離Dだけ隔てられている、第二の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(509~516)の第二の層(B)と、
ここで、連続するフィラメント対(501/509,502/510,503/511,504/512,505/513,506/514,507/515,508/516)を形成するために、前記第一の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(501~508)の各々に対して、一つの対応する第二の無捲縮横糸ポリエステル単フィラメント(509~516)が存在しており、逆もまた同様であり、各当該連続するフィラメント対は、唯一のおよび昇順の整数指標Nで指定され、
c)
15~40cN/texの範囲にある引張強さ、および、織りタイプc1~c4の一つを有する捲縮縦糸フィラメント(61~64)と:
c1-(N mod 4)=0を満たす指標Nを有する全てのフィラメント対(502/510,506/514)の第一の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(502,506)周りで絡み、ここで、当該指標Nは、N
Aとして指定され;(N mod 4)=1を満たす指標Nを有する全てのフィラメント対(503/511,507/515)の、第一の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(503,507)と第二の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(511,515)との間を通り、ここで、当該指標Nは、N
Bとして指定され;(N mod 4)=2を満たす指標Nを有する全てのフィラメント対(504/512,508/516)の第二の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(512,516)周りで絡み、ここで、当該指標Nは、N
cとして指定され;および、(N mod 4)=3を満たす指標Nを有する全てのフィラメント対(501/509,505/513)の、第一の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(501,505)と第二の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(509,513)との間を通り、ここで、当該指標Nは、N
Dとして指定され;
または、
c2-前記指標N
Aを有する全てのフィラメント対の第二の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(510,514)周りで絡み;前記指標N
Bを有する全てのフィラメント対(503/511,507/515)の、第一の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(503,507)と第二の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(511,515)との間を通り;前記指標N
cを有する全てのフィラメント対(504/512,508/516)の第一の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(504,508)周りで絡み;および、前記指標N
Dを有する全てのフィラメント対(501/509,505/513)の、第一の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメントと第二の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメントとの間を通り;
または、
c3-前記指標N
Aを有する全てのフィラメント対(502/510,506/514)の、第一の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(502,506)と第二の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(510,514)との間を通り;前記指標N
Bを有する全てのフィラメント対(503/511,507/515)の第一の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(503,507)周りで絡み;前記指標N
cを有する全てのフィラメント対(504/512,508/516)の、第一の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(504,508)と第二の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(512,516)との間を通り;および、前記指標N
Dを有する全てのフィラメント対(501/509,505/513)の第二の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(509,513)周りで絡み;
または、
c4-前記指標N
Aを有する全てのフィラメント対(502/510,506/514)の、第一の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(502,506)と第二の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(510,514)との間を通り;前記指標N
Bを有する全てのフィラメント対(503/511,507/515)の第二の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(511,515)周りで絡み;前記指標N
cを有する全てのフィラメント対(504/512,508/516)の、第一の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(504,508)と第二の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(512,516)との間を通り;および、前記指標N
Dを有する全てのフィラメント対(501/509,505/513)の第一の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(501,505)周りで絡み;
d)
30~100cN/texの範囲にある引張強さを有し、全てのフィラメント対(501/509,502/510,503/511,504/512,505/513,506/514,507/515,508/516)の、第一の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(501~508)と第二の無捲縮横糸
ポリエステル単フィラメント(509~516)との間を通る、無捲縮縦糸フィラメント(4)とを、備え、
無捲縮縦糸フィラメントd)(4)に対する捲縮縦糸フィラメントc)(61~64)の数値比率は、4:1~12:1の範囲にあり、
前記織物は、交互の態様で、第一の無捲縮横糸フィラメント(501~508)および第二の無捲縮横糸フィラメント(509~516)周りで絡む、捲縮縦糸フィラメントを有さない、
織物。
【請求項2】
請求項1で定義された織りタイプc1(61)および織りタイプc2(62)の前記捲縮縦糸フィラメントは、常に対で存在しており、かつ互いに直隣接しており、
請求項1で定義された織りタイプc3(63)および織りタイプc4(64)の前記捲縮縦糸フィラメントは、常に対で存在しており、かつ互いに直隣接している、
請求項1に記載の織物。
【請求項3】
前記捲縮縦糸フィラメントc)(61,62,63,64)と前記無捲縮縦糸フィラメントd)(4)とが、横糸方向において、繰り返し単位で配置されており、
当該繰り返し単位において、上記織りタイプc1(61),c2(62),c3(63),c4(64)の前記無捲縮縦糸フィラメントd)(4)および前記捲縮縦糸フィラメントが、横糸方向に配置される順序は、常に同じである、
請求項1又は請求項2に記載の織物。
【請求項4】
第一の無捲縮横糸ポリエステル単フィラメントa)(501~508)、第二の無捲縮横糸ポリエステル単フィラメントb)(509~516)、捲縮縦糸フィラメントc)(61~64)、および無捲縮縦糸フィラメントd)(4)から成る、
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の織物。
【請求項5】
e)請求項1で定義された織りタイプc1、c2、c3、またはc4を有する、捲縮の帯電防止フィラメントを、さらに備える、
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の織物。
【請求項6】
全ての捲縮の帯電防止フィラメントは、同じ織りタイプを有する、
請求項5に記載の織物。
【請求項7】
第一の無捲縮横糸ポリエステル単フィラメントa)(501~508)、第二の無捲縮横糸ポリエステル単フィラメントb)(509~516)、捲縮縦糸フィラメントc)(61~64)、無捲縮縦糸フィラメントd)(4)、および捲縮の帯電防止フィラメントから成る、
請求項6に記載の織物。
【請求項8】
前記捲縮縦糸フィラメントc)(61~64)、前記無捲縮縦糸フィラメントd)(4)、および前記捲縮の帯電防止フィラメントは、横糸方向において、繰り返し単位で配置されており、
当該繰り返し単位において、無捲縮縦糸フィラメントd)(4)、織りタイプc1(61),c2(62),c3(63),c4(64)の捲縮縦糸フィラメント、および帯電防止フィラメントが、横糸方向に配置される順序は、常に同じである、
請求項6または請求項7に記載の織物。
【請求項9】
上面(9)および底面(10)を有するベルトであって、
前記ベルトは、
請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の織物を備え、
前記織物は、
当該織物に含まれる如何なる縦糸フィラメント
(4、61~64)が、前記ベルトの長手方向に移動するように、方向づけされ、
前記織物は、
エラストマー、熱可塑性物質、または熱可塑性エラストマーの含侵(11)により、含侵される、
ベルト。
【請求項10】
前記含侵(11)は、熱可塑性エラストマーを有する、
請求項9に記載のベルト。
【請求項11】
前記熱可塑性エラストマーは、TPUである、
請求項10に記載のベルト。
【請求項12】
搬送適用における、請求項9乃至請求項11の何れか1項に記載のベルトの使用であって、
前記ベルトの上面(9)および底面(10)との間における、前記ベルトの長手方向における、せん断が生じる、または生じることが予期される、
ベルトの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、織物を含むコンベアベルトおよび、せん断応力がベルトに印加される場合における当該コンベアベルトの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
コンベアベルトは、一般的に、ベース織物と、当該ベース織物に固着している上層とからなる。上層は、ゴム製、エラストマー製、熱可塑性物質製、および熱硬化性の材料製であってもよい。上層は、一般的にポリエステル製またはアラミド製であるベース織物に、化学的にまたは物理的に取り付けられる。コンベア適用の範囲内において正常に機能するために、コンベアベルトは、高い柔軟性を有する必要がある。オープンエンドの溶接による端部結合の緩和のために、当該端部結合の際に、熱溶融性接着剤として働くことができ、エンドレスベルトとするために溶接可能/接合可能である上層は、熱可塑性物質または熱可塑性エラストマーからなることが、望ましい。せん断のような、様々な処理および環境条件下において、外部/内部の長手の、横の、および表面の伸長/伸縮を受ける一方で、ベルトの設計は、固形物に対する摩擦抵抗を有し、液体、溶剤、オイル、および多種多様な他の化学薬品に対して抵抗することができなければならない。様々な処理および環境条件は、寸法安定性の優れた程度を同時に維持する一方で、複数の繰り返しのインパクトを伴う。そのような作用力は、相互作用接着(埋め込まれまたはラミネート加工され、より弱い、織物とポリマーとの間の接着力)を害しうる。
【0003】
DE2234915は、二つの個別の織物を有するコンベアベルトを開示し、各織物は、無捲縮横糸フィラメントの第一および二の層と、第二の捲縮縦糸フィラメントを有する。第二の捲縮縦糸フィラメントは、第一の層の無捲縮横糸フィラメント上を通り、それから、第一および二の層の無捲縮横糸フィラメント間を通り、それから、第二の層の無捲縮横糸フィラメント下を通り、それから、第一および二の層の無捲縮横糸フィラメント間を通る。二つの織物のいずれも、第一および二の層の無捲縮横糸フィラメント間を通る、無捲縮縦糸フィラメントを有さない。この刊行物は、ベルトの伸長を減少すること、および
横剛性または横の硬さ(Quersteifigkeit)を向上することを、目的とする。
【0004】
US4877126Aは、コンベアベルトを開示している。ここで、織物は、無捲縮横糸フィラメントの第一および二の層を有する;交互の態様で、第一の層の無捲縮横糸フィラメント上および第二の層の無捲縮横糸フィラメント下を通る第一の捲縮縦糸フィラメントと、DE2234915に対して上述されたようなタイプの第二の捲縮縦糸フィラメントとの両方。しかしながら、この織物は、第一および二の層の無捲縮横糸フィラメント間を通る、無捲縮縦糸フィラメントを有さない。
【0005】
GB2101643は、無捲縮横糸フィラメントの第一、二、および三の層を有する、ベルト織物を開示している;必ずしも交互の態様でなく、第一の層の無捲縮横糸フィラメント上および第二の層の無捲縮横糸フィラメント下を通る、または、必ずしも交互の態様でなく、第二の層の無捲縮横糸フィラメント上および第三の層の無捲縮横糸フィラメント下を通る、捲縮縦糸フィラメント;および、無捲縮横糸フィラメントの、第一および二の層間または第二および三の層間を通る、無捲縮縦糸フィラメント。しかしながら、当該織物は、DE2234915に対して上記されたタイプの如何なる第二の捲縮縦糸フィラメントを、含まない。織物の片方または両方上で、および望まれるなら端部に沿って、エラストマー材料により、当該ベルト織物は、最初に浸透され、その後覆われる。
【0006】
GB1273528は、無捲縮横糸フィラメントの第一、二、および三の層を有する織物を開示する;交互の態様で、第一の層の無捲縮横糸フィラメント上および第二の層の無捲縮横糸フィラメント下を通る、または、交互の態様で、第二の層の無捲縮横糸フィラメント上および第三の層の無捲縮横糸フィラメント下を通る、捲縮縦糸フィラメント;および、無捲縮横糸フィラメントの、第一および二の層間または第二および三の層間を通る、無捲縮縦糸フィラメント。しかしながら、当該織物は、DE2234915に対して上記されたタイプの如何なる第二の捲縮縦糸フィラメントを、含まない。当該織物は、好ましくは、たとえばゴムまたはPVCのような、加硫可能または熱可塑性のエラストマー材料により、浸透される。
【0007】
四つ全ての上述した文献は、ベルトの長手方向におけるせん断応力下における、ベルトの振る舞いに関しては、何も記載されていない。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、せん断応力印加下における使用の観点で、改良されたコンベアベルトを提供することを、目的とする。
【0009】
本発明は、織物を提供し、
a)本質的に互いに平行に走っており、互いに距離Dだけ隔てられている、第一の無捲縮横糸フィラメントの第一の層(A)と、
b)本質的に互いに平行に走っており、互いに前記距離Dだけ隔てられている、第二の無捲縮横糸フィラメントの第二の層(B)と、
ここで、連続するフィラメント対を形成するために、前記第一の無捲縮横糸フィラメントの各々に対して、一つの対応する第二の無捲縮横糸ポリエステル単フィラメントが存在しており、逆もまた同様であり、各当該連続するフィラメント対は、唯一のおよび昇順の整数指標Nで指定され、
c)織りタイプc1~c4の一つを有する捲縮縦糸フィラメントと:
c1-(N mod 4)=0を満たす指標Nを有する全てのフィラメント対の第一の無捲縮横糸フィラメント周りで絡み、ここで、当該指標Nは、NAとして指定され;(N mod 4)=1を満たす指標Nを有する全てのフィラメント対の、第一の無捲縮横糸フィラメントと第二の無捲縮横糸フィラメントとの間を通り、ここで、当該指標Nは、NBとして指定され;(N mod 4)=2を満たす指標Nを有する全てのフィラメント対の第二の無捲縮横糸フィラメント周りで絡み、ここで、当該指標Nは、Ncとして指定され;および、(N mod 4)=3を満たす指標Nを有する全てのフィラメント対の、第一の無捲縮横糸フィラメントと第二の無捲縮横糸フィラメントとの間を通り、ここで、当該指標Nは、NDとして指定され;
または、
c2-前記指標NAを有する全てのフィラメント対の第二の無捲縮横糸フィラメント周りで絡み;前記指標NBを有する全てのフィラメント対の、第一の無捲縮横糸フィラメントと第二の無捲縮横糸フィラメントとの間を通り;前記指標Ncを有する全てのフィラメント対の第一の無捲縮横糸フィラメント周りで絡み;および、前記指標NDを有する全てのフィラメント対の、第一の無捲縮横糸フィラメントと第二の無捲縮横糸フィラメントとの間を通り;
または、
c3-前記指標NAを有する全てのフィラメント対の、第一の無捲縮横糸フィラメントと第二の無捲縮横糸フィラメントとの間を通り;前記指標NBを有する全てのフィラメント対の第一の無捲縮横糸フィラメント周りで絡み;前記指標Ncを有する全てのフィラメント対の、第一の無捲縮横糸フィラメントと第二の無捲縮横糸フィラメントとの間を通り;および、前記指標NDを有する全てのフィラメント対の第二の無捲縮横糸フィラメント周りで絡み;
または、
c4-前記指標NAを有する全てのフィラメント対の、第一の無捲縮横糸フィラメントと第二の無捲縮横糸フィラメントとの間を通り;前記指標NBを有する全てのフィラメント対の第二の無捲縮横糸フィラメント周りで絡み;前記指標Ncを有する全てのフィラメント対の、第一の無捲縮横糸フィラメントと第二の無捲縮横糸フィラメントとの間を通り;および、前記指標NDを有する全てのフィラメント対の第一の無捲縮横糸フィラメント周りで絡み;
d)全てのフィラメント対の、第一の無捲縮横糸フィラメントと第二の無捲縮横糸フィラメントとの間を通る、無捲縮縦糸フィラメントとを、備え、
前記織物は、交互の態様で、第一の無捲縮横糸フィラメントおよび第二の無捲縮横糸フィラメント周りで絡む、捲縮縦糸フィラメントを有さない。
【0010】
好ましい織物の実施の形態は、下記の説明および従属クレームによる。
【0011】
さらに、本発明は、ベルトの上面とベルトの底面との間で、せん断応力が生じ得る場合における、当該織物を含むベルトおよび当該ベルトの適用を、提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】GB1273528の織物の略図であり断面図である。
【
図2】GB1273528の織物の略図であり上面図である。
【
図3】GB1273528の織物の略図であり断面図であるが、無捲縮条件(
図3の上)下または20°せん断(
図3の下)下での、唯一の捲縮縦糸フィラメントを含む。
【
図6】本発明の織物の略図であり断面図であるが、無捲縮条件(
図6の上)下または20°せん断(
図6の下)下での、唯一の捲縮縦糸フィラメントを含む。
【
図7】
図4の織物を有する本発明のベルトの断面図である。
【
図8】摩耗条件下における、層間剥離に対するテストのための試験機構を、示す図である。
【
図9】せん断応力下における、層間剥離に対するテストのための試験機構を、示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
当該開発は、複数層に編まれ結合された一方向性補強多層ポリエステル織物要素へと直接入り込む熱可塑性高分子マトリックスを使用することを意図し、埋め込まれ、絡めたポリマー/繊維マトリックスを形成するために、十分に浸透された、熱可塑性ポリマー(好ましくはTPU)の物理的絡み合いを提供する。層剥離を最小限にする当該絡み合いは、ポリママトリックスの結合/接合特徴および製品のイングレス(ingress)/コミネーション(commination)問題に対する耐性を向上し、また、良好なインテグラルおよびディメンジョナルを柔軟に提供する一方で、良好な摩耗特性を通して、ベルトのパフォーマンスおよびサービス寿命を、一般的に向上する。
【0014】
本発明に係る織物は、最も近い従来技術の一つであると考えられるGB1273528の
図1の織物に渡るせん断集中適用において、利点を有し、これは、
図1-6を参照して、詳細に説明される。
【0015】
図1(断面図)および
図2(上面図)は、GB1273528の
図1の上記従来技術の織物を示す。当該織りは、中心の無捲縮縦糸フィラメント(符号1により指定されたもの)、無捲縮横糸フィラメント(
図1の断面図で示されており、符号201-216で指定されたもの)、および捲縮縦糸フィラメント(符号31および32で指定されたより上のもの)を、有する。隣接する無捲縮横糸フィラメント(たとえば、212,213)の中心は、距離Dだけ織物の縦方向において、間隔があけられている。ここで、
図3に示すように、距離Dは、縦方向における織りのハーフピッチ距離Lに、等しい。縦方向において隣接する無捲縮横糸フィラメントは、対応するペア(たとえば、208/216)において、釣り合わされている。ペア内における無捲縮横糸フィラメントの中心は、縦距離Hだけ、無捲縮状態で、隔てられている。捲縮縦糸フィラメント31,32は、第一の無捲縮横糸フィラメント501,502,503,504,505,506,507,508および第二の無捲縮横糸フィラメント509,510,511,512,513,514,515,516の周りに、交互の態様で、絡み合わせっている。
【0016】
図3は、
図1および2の捲縮縦糸フィラメント31の側面図であり、せん断がない時点(
図3の上部)および20°せん断時点(
図3の下部)である。左から右へと織物の縦糸方向において見たとき、当該フィラメント31は、降下フィラメント部(符号311で示されたもの)および上昇フィラメント部(符号312で示されたもの)を、有する。織物が、20°だけ右へとせん断されたとき(
図3の下部)、捲縮縦糸フィラメント31の上昇フィラメント部312には、引張応力がかかる。捲縮縦糸フィラメント31が、合理的な引っ張り強さであると仮定するなら、このとき、当該引張応力下において、上昇フィラメント部312は、著しく伸長しない。無捲縮縦糸フィラメント1は、高い引っ張り強さを有しており(GB1273528は、強度を付与するものとして、これらの中心無捲縮縦糸フィラメントを指定している)、如何なる引張応力下において、著しく伸長することもない。このことは、
図3に示すように、織物のせん断されていない状態およびせん断された状態の両方において、織物全体のハーフピッチLおよび上昇フィラメント部312の長さWが、本質的に一定に維持される、ということを意味する。しかしながら、捲縮縦糸フィラメント31の下降フィラメント部311は、織物が20°だけせん断されたとき、圧縮応力がかかる。下降フィラメント部311の推定されるこのような圧縮応力に対する反応は、縦軸から外側への膨らみ(単フィラメントのため)、または、含まれる個々のフィラメントのけば立ち(複フィラメントのため)、または、複フィラメントの膨張である。下降フィラメント部311の当該推定される圧縮応力に対する反応は、これらの下降フィラメント部311に付着している含浸の可能性のある剥離、よって縦糸フィラメント31に対して付着しているそのような含侵(impregnation)の剥離が、主な理由であると考えられる。下降フィラメント部311の当該推定される圧縮応力に対する反応は、
図3において適切に示すことができない。しかし、
図3は、V(非せん断状態)からV'(せん断状態)への、下降フィラメント部311の長さの短縮の概要を示している。
【0017】
下降フィラメント部311の当該短くなった長さV'の概要は、せん断角、フィラメント直径、およびフィラメント間距離に基づいて、正確に計算でき、LおよびWが一定であるという仮定において、次のようになる:
ここで、Wは、上昇フィラメント部312の長さ(非せん断状態およびせん断状態で等しく、さらに、非せん断状態において、下降フィラメント部311の長さVに等しい)であり、当該Wは、次のように計算できる:
ここで、LおよびHは、上記のように定義され;Xは、無捲縮横糸フィラメント201~216の直径であり;Yは、捲縮縦糸フィラメント31の直径であり、δは、せん断角である。
【0018】
意味のあるせん断角δに対して、sin(δ)は、ゼロ以上である。さらに、LおよびHは、常にゼロより大きいので、従って常に、
である。これは、(1)におけるカッコ内の項が、常にゼロより小さい、ということを意味している。ゼロよりも大きい、意味のあるせん断角δで、(1)により計算されるV’は、したがって、(1)において現れるWよりも常に小さい。WはVに等しいので、非せん断状態での下降フィラメント部311の長さは次のようになる、つまり、ゼロより大きい意味のあるせん断角δに対して、比(V’:V)は、1よりも小さい。
図1~3の例である実施の形態において、L=H=15units、X=4.35units、Y=4.35units、およびδ=20°であり、上記各式により次のものが得られる:W=V=19.35units、V’=12.42units、およびV’:V(=V’:W)=0.642。これは、35.8%の20°せん断での、下降フィラメント部311の図示された短くなっているものに、対応する。これは、縦軸からの外方向への著しい膨らみを表しており(もし、捲縮縦糸フィラメント31が単フィラメントなら)、または著しいけば立ちや膨張を表しており(もし、捲縮縦糸フィラメント31が複フィラメントなら)、よって、これらの捲縮縦糸フィラメント31に対して付着している含侵がせん断下で剥離する、著しい傾向を示す。
【0019】
上記考察は、
図1,2において示されている捲縮縦糸フィラメント31に対して、特になされたものであるが、捲縮縦糸フィラメントは全て、無捲縮横糸フィラメントとの同じ交互の絡まりを有するので、ここで示される他のあらゆる捲縮縦糸フィラメントに対しても適用できる。
【0020】
しかしながら、所定のHおよびδで、(1)で表れている項
は、ハーフピッチLの増加と共に、ゼロにより近づく。これは、ハーフピッチLの増加に対して、所定のH,X,Y,δで(1)により計算されるV’は、(1)で表れるWにより近づく、ということを意味する。したがって、V’:Vの比(=V’:W)は、ハーフピッチLの増加と共に、1(unity)により近づく。
【0021】
図4(断面図)および
図5(上面図)は、ここでの発明の織物の例を示す。当該織物は、無捲縮縦糸フィラメント4、符号501~508および符号509~516により各々指定されている、第一の無捲縮および第二の横糸フィラメント(
図4の断面図に示されている)、捲縮縦糸フィラメント61~64をも有する。連続するフィラメント対501/509,502/510,503/511,504/512,505/513,506/514,507/515,508/516を形成するために、第一の無捲縮横糸フィラメント501,502,503,504,505,506,507,508の各々に対して、それぞれ、対応する、第二の無捲縮横糸フィラメント509,510,511,512,513,514,515,516が存在する(逆の場合も同じ)。これらの連続する対の各々は、たとえば次の表1に従って、整数指標により明示できる:
表1
指標Nが、横糸方向における連続するフィラメント対の順番とともに増加すると仮定すると、連続するフィラメント対の各々に対して割当てられた指標Nは、任意である。指標Nは、N
minからN
maxの範囲内であり得る。ここで、N
minは、問題となる織物の見本の第一のフィラメント対に対して典型的に割当てられる最も低い可能性のある指標であり、N
maxは、問題となる織物の見本の最後のフィラメント対に対して典型的に割当てられる最も高い可能性のある指標である。所定の指標Nが割り当てられようかなかろうが、上記表1により明らかなように、指定N
A、N
B、N
c、またはN
Dが、Nで実施されるモジュロ4演算の結果に依存する。ここで用いられるように、モジュロ4演算(N mod 4)は、4までのNの、いわゆる「ユークリッド整数除算」により得られる余りである。
【0022】
フィラメント対の上記指標N
A~N
Dに依存性している、捲縮縦糸フィラメント61~64の織りタイプは、次の表2のようになる:
表2
【0023】
すなわち、c1からc4、c2、c3へと変わるとき、第一の無捲縮横糸フィラメント周りで絡まる、第一および二の無捲縮横糸フィラメント間を通る、第二の無捲縮横糸フィラメント周りで絡まる、および第一および二の無捲縮横糸フィラメント間を通ることが、指標NA、NB、Nc、およびNDに渡って、周期的に順序が変わる、という点においてのみ、上記織りタイプc1,c4,c2,c3は相違する。
【0024】
図6は、せん断がないとき(
図6の上部)および試みられた20°せん断のとき(
図6の下部)の、
図4,5の発明となる織物の捲縮縦糸フィラメント61の側面図である。
【0025】
図1~3の織物と類似的に、当該捲縮縦糸フィラメント61は、長さVの下降フィラメント部(符号611で示されているもの)および長さWの上昇フィラメント部(符号612で示されているもの)を、有する。ここで、非せん断状態で、W=Vである。ここでまた、仮に、織物がせん断されたなら、上昇フィラメント部612は、引張応力を受ける。
図1~3の織物におけるように、仮に、無捲縮縦糸フィラメント4および捲縮縦糸フィラメント61~64が、合理的な引っ張り強さを有すると仮定されるなら、上昇フィラメント部612のハーフピッチLおよび長さWは、非せん断およびせん断状態で、変化しないと想定され得る。また、
図1~3の織物におけるものと類似して、せん断下のときに、降下フィラメント部611は、圧縮応力を受け、長さV’は、当該圧縮応力下で、より短くなる。当該長さV’は、また、上式(1)により計算でき、ここで含まれるWが、また、上式(2)により計算できる。V’の短縮は、また、降下フィラメント部611の膨張またはけば立ちを示し、よって、せん断応力下において、含侵が剥離する傾向を示す。
【0026】
しかしながら、
図1~3の織物とは異なり、
図4~6の織物においては、縦糸方向での織りのハーフピッチLは、隣接する無捲縮横糸フィラメントの中心間での距離Dに等しくなく、距離Dの約2倍である。これは、発明である織物において、第一および二の無捲縮フィラメント間の捲縮縦糸フィラメント61-64の通りを許す、余分なフィラメント対が、常に存在するからである。よって、発明である織物におけるハーフピッチLは、一般的により長く、他の同一の特徴下における
図1~3の織物のハーフピッチLの典型的には約2倍である。
【0027】
ハーフピッチLの増加を伴う式(1)の振る舞いに対する上記説明と一致して、他の同一のパラメータH,X,およびY(および、よってW)での所定のせん断角δで、V’の短縮は、
図1~3の織物による場合よりも、
図4,5の織物により、より小さく表され、V’:Vの比(=V’:W)は、
図1~3の織物による場合よりも、一般的に1(unity)により近づく、ということが、予期することができる。
図4~6の例である実施の形態において、L=30units、H=15units、X=4.35、Y=4.35units、およびδ=20°の場合で、上式により、W=V=32.39units、V’=26.29units、およびV’:V(=V:W)=0.831を、得る。
【0028】
これは、たった16.9%の試みられた20°せん断での、降下フィラメント部611の短縮に相当する。当該短縮は、20°せん断での
図1~3の織物に対して観測される短縮である上述した35.8%よりも、かなり小さい。
図3の降下フィラメント部311の短縮に対する、
図6の降下フィラメント部611のより小さく表された短縮により、
図6の降下フィラメント部611は、
図3の降下フィラメント部311のように、実際に、強く、外側に膨れたり、膨張したり、けば立ったりすることがない、ということを予期することができる。
【0029】
したがって、
図1~3の織物が、降下フィラメント部311に対して、同じせん断下において有する傾向と比較して、せん断下における
図4~6の織物の降下フィラメント部611に付着する含侵を剥離する傾向は、より小さい、ということを予期することが最初に可能である。
【0030】
さらに、
図4~6の織物において、第一および二の無捲縮フィラメント間の捲縮縦糸フィラメント(たとえば、
図6の61)の通りを許す、言及された余分なフィラメント対(たとえば、
図6の503/511または508/516)が存在する。織物のせん断された状態での当該フィラメント対における、第一の無捲縮横糸フィラメント(たとえば、
図6の503または508)および第二の無捲縮横糸フィラメント(たとえば、
図6の511または516)の中心間の距離H’を計算するための式は、
である。ここで、H,Lおよびδは、上記で定義した通りである。LおよびHは、常にゼロよりも大きいので、さらに意味のあるせん断角δに対して、sin(δ)は、ゼロ以上であるので、式(3)により計算されるH’は、ハーフピッチLの増加と共に、より小さくなる。せん断角δがゼロであるとき、式(3)によるH’はHに等しく、δがゼロより大きいとき、Hよりも小さくなる。
【0031】
したがって、上式(3)の振る舞いにより、せん断角δの増加と共にH’がより小さくなるために、上記余分なフィラメント対(たとえば、
図6の503/511)は、降下フィラメント部611を縦方向に圧縮し始め、これが、上記外方向への膨らみ、膨張またはけば立ちを部分的に妨げ、よって、降下フィラメント部611に付着する含侵の剥離をさらに妨げる、ということを予期することが2番目に可能である。
【0032】
したがって、後者において、ハーフピッチLが、距離Dに等しい一方で、前者の織物において、ハーフピッチLは、隣接する無捲縮横糸フィラメント間の距離Dの約2倍であるので、上式(3)の振る舞いにより、ハーフピッチLの増加と共にH’がゼロに向かうため、距離H’の縮小は、
図1~3の織物よりも、
図4~6の織物において、より大きく表される、ということを予期することが2番目に可能である。したがって、圧縮される(より大きく表されたH’の縮小)という前者のより強い傾向のために、
図4~6の織物は、
図1~3の織物ほど、強くせん断されることができない、ということが予期できる。捲縮縦糸フィラメント61および無捲縮縦糸フィラメント4による、無捲縮横糸フィラメント501~516のグラフィカルなオーバラップを考慮して、
図4~6の織物は、20°へのせん断に抵抗するということを、
図6の下部に表されているものは実際に予期している。これに対して、
図1~3の織物は、如何なるフィラメントのグラフィカルなオーバラップなしに、せん断され得る。
【0033】
上記考察は、
図4,5において現れている捲縮縦糸フィラメント61に対して特になされているが、ここで示された他の捲縮縦糸フィラメント62,63,64の何れにおいても適用できる。これは、すべてが捲縮縦糸フィラメント61と同じ織りのタイプを有しているからである。
【0034】
前述を考慮して、ベルトに含まれ、浸透されるとき、類似的に浸透されたベルトにおいて、
図4~6の織物は、
図1~3の織物よりも、含侵の剥離をはぎ取る傾向がより小さいことが予期される。せん断応力下における剥離に対する抵抗をテストするための、適切で実用的な試験機構は、下記の例において記述される。
【0035】
よって、せん断剥離に対する当該改良された抵抗に対して重要なことは、本発明の織物は、
図4,5に対して議論された織りタイプの捲縮縦糸フィラメント61~64および無捲縮縦糸フィラメント4の両方を含むが、
図1~3に対して議論されたタイプの交互に絡んでいる如何なる捲縮縦糸フィラメントを含まない、ということである。
【0036】
前述の考察に従って、本発明の織物は、
図4に示すように、本質的に互いに並行して走っており、上記距離Dだけ互いに離隔している、無捲縮第三横糸フィラメント517~524の第三の層(C)を任意に含み得る。連続する更なるフィラメント対509/517,510/518,511/519,512/520,513/521,514/522,515/523,516/524を形成するために、第二の無捲縮横糸フィラメント(509,510,511,512,513,514,515,516,517の各々)の各々に対して、対応する無捲縮第三横糸フィラメント517,518,519,520,521,522,523,524が各々存在する(逆の場合も同じ)。所定の第二の無捲縮横糸フィラメント509,510,511,512,513,514,515,516,517の各々を含む、連続する更なるフィラメント対の各々は、上記表1により例示されているように、同じ第二の無捲縮横糸フィラメント509,510,511,512,513,514,515,516,517の各々を含む、連続するフィラメント対のように、同じ指標Nで指定することができる。よって、捲縮縦糸フィラメント61~64に対して上記で議論された織りタイプc1~c4の一つを有する、捲縮の更なる縦糸フィラメント71~74が存在する。しかしながら、これらの上記織りの説明において、更なる捲縮縦糸フィラメント71~74に対する織りタイプの記載を得るために、「第一の無捲縮横糸フィラメント」に対する如何なる言及は、「第二の無捲縮横糸フィラメント」に対する言及により置換される必要があり、「第二の無捲縮横糸フィラメント」に対する如何なる言及は、「第三の無捲縮横糸フィラメント」に対する言及により置換される必要がある。
【0037】
本発明の織物に対して、上記織りタイプc1とc2の捲縮縦糸フィラメントは、常に、対でおよび互いに直ぐに隣接して現れ、上記織りタイプc3とc4の捲縮縦糸フィラメントは、常に、対でおよび互いに直ぐに隣接して現れる、ということが好ましい。本発明の織物に対して、捲縮縦糸フィラメント61~64および無捲縮縦糸フィラメント4は、横糸方向に、繰り返し単位で、存在するということがより好ましい。ここで、捲縮縦糸フィラメント61(織りタイプc1と共に)、捲縮縦糸フィラメント62(織りタイプc2と共に)、捲縮縦糸フィラメント63(織りタイプc3と共に)、捲縮縦糸フィラメント64(織りタイプc4と共に)、および無捲縮縦糸フィラメント4が、横糸方向に配置された当該順序は、常に同じである。仮に、無捲縮横糸フィラメント517~524の第三の層Cが存在するなら、そのとき、更なる捲縮縦糸フィラメント71~74および更なる無捲縮縦糸フィラメント8が、繰り返し単位で、存在するということが好ましい。ここで、捲縮の更なる縦糸フィラメント71(織りタイプc1と共に)、捲縮の更なる縦糸フィラメント72(織りタイプc2と共に)、捲縮の更なる縦糸フィラメント73(織りタイプc3と共に)、捲縮の更なる縦糸フィラメント74(織りタイプc4と共に)、および無捲縮の更なる縦糸フィラメント8が現れる当該順序は、常に同じであり、捲縮縦糸フィラメント61~64および無捲縮縦糸フィラメント4の繰り返し単位の範囲での順序と同じである。
【0038】
織物の好ましい一実施の形態において、無捲縮縦糸フィラメント4に対する捲縮縦糸フィラメント61~64の上記比は、4:1であってもよい。仮に、これらの縦糸フィラメントが、繰り返し単位で生じるなら、これらの繰り返し単位でのフィラメントの順序が常に同じである場合には、例となる当該順序(フィラメント番号および、適用できる場合には、丸括弧内の織りタイプ)は、61(c1)-62(c2)-4-63(c3)-64(c4)または、これのあらゆる循回置換である。類似的に、仮に、更なる無捲縮横糸フィラメント71~74、更なる捲縮縦糸フィラメント517~524、および更なる無捲縮縦糸フィラメント8の第三の層Cが存在するなら、これらのフィラメントの順序は、従って、71(c1)-72(c2)-8-73(c3)-74(c4)または、上記巡回置換に対応するこれの循回置換である。
【0039】
織物の他の好ましい実施の形態において、無捲縮縦糸フィラメント4に対する捲縮縦糸フィラメント61~64の上記比は、12:1であってもよい。仮に、これらの縦糸フィラメントが、繰り返し単位で生じるなら、これらの繰り返し単位でのフィラメントの順序が常に同じである場合には、例となる当該順序(フィラメント番号および、適用できる場合には、丸括弧内の織りタイプ)は、63(c3)-64(c4)-61(c1)-62(c2)-63(c3)-64(c4)-4-61(c1)-62(c2)-63(c3)-64(c4)-61(c1)-62(c2)または、これのあらゆる循回置換である。類似的に、仮に、更なる無捲縮横糸フィラメント71~74、更なる捲縮縦糸フィラメント517~524、および更なる無捲縮縦糸フィラメント8の第三の層Cが存在するなら、これらのフィラメントの順序は、従って、73(c3)-74(c4)-71(c1)-72(c2)-73(c3)-74(c4)-8-71(c1)-72(c2)-73(c3)-74(c4)-71(c1)-72(c2)または、上記巡回置換に対応するこれの循回置換である。
【0040】
仮に、縦糸フィラメントが繰り返し単位で生じるなら、これらの繰り返し単位でのフィラメントの順序が常に同じであり、また帯電防止フィラメントも存在する場合には、好ましくは、繰り返し単位内で同じ位置に、これらの帯電防止フィラメントは再び常に含まれる。それとは別に、繰り返し単位でのそれらの数および位置は、任意である。好ましくは、繰り返し単位当たり、一つの当該帯電防止フィラメントが存在する。
【0041】
全ての無捲縮横糸フィラメント501~524は単フィラメントであり、より好ましくは、当該単フィラメントは、0.05~2mmの範囲において直径を有し、好ましくは0.25~0.45mmである、ということが、本発明の織物に対して望ましい。無捲縮横糸フィラメントは、好ましくは、たとえばPETなどのポリエステルから成る。無捲縮横糸フィラメントのタイターは、好ましくは、670~2100dtexの範囲である。
【0042】
全ての捲縮縦糸フィラメント61~64,71~74は、複フィラメント、紡績糸、または、一般的に知られている「コアスピニング」処理により互いに紡いだ、複フィラメント糸とステイプルファイバとの組み合わせである、ということが、本発明の織物に対して望ましい。好ましくは、当該捲縮縦糸フィラメントは、コットン、ジュート、麻、またはセルロースに基づく繊維などの、自然繊維を有さない。当該自然繊維がなくても、含侵は、本発明の織物に対して、十分に付着する。捲縮縦糸フィラメントは、好ましくは、PETなどのポリエステルから成る。捲縮縦糸フィラメントのタイターは、特にPETなどのポリエステルから成る場合には、好ましくは、500~2000dtexの範囲にある。また望ましくは、捲縮縦糸フィラメントの引っ張り強さは、15~250cN/texの範囲であることが好ましく、より好ましくは15~40cN/texの範囲であり、最も好ましくは20~30cN/texの範囲である。また望ましくは、熱収縮(180℃、2分間の加熱下における長さ減少のパーセンチュアル)は、0.5~15%の範囲であり、より好ましくは5~15%であり、最も好ましくは8~12%である。また望ましくは、捲縮縦糸が紡績糸である場合には、当該捲縮縦糸は、0~400の範囲内である、メートル当たりの巻数を有することが好ましく、より好ましくは250~400であり、最も好ましくは300~400である。
【0043】
全ての無捲縮縦糸フィラメント4,8は、複フィラメントであること、または、平行に配設され、互いに直隣接している、複数の当該複フィラメント(たとえば3~8の当該複フィラメント)である、ということが、本発明の織物に対して望ましい。無捲縮縦糸フィラメントは、好ましくは、ポリエステルから、特にPRTまたはアラミドから成る。無捲縮縦糸フィラメントのタイター(または、複数の複フィラメントが存在する場合には、全ての複フィラメントのタイターの合計)は、好ましくは、500~5000dtexの範囲にある。より好ましくは、無捲縮縦糸フィラメントが、PETなどのポリエステルからなる場合には、それらのタイター(または、複数の複フィラメントが存在する場合には、全ての複フィラメントのタイターの合計)は、550~2000dtexの範囲にあり、それらがアラミドである場合には、そのタイターは、より好ましくは、440~3500dtexの範囲にある。また望ましくは、無捲縮縦糸フィラメントの引っ張り強さ(または、複数の複フィラメントが存在する場合には、当該複数の全体の引っ張り強さ)は、15~250cN/texの範囲であることが好ましく、より好ましくは30~100cN/texであり、最も好ましくは60~80cN/texである。また望ましくは、それらの熱収縮(180℃、2分間の加熱下における長さ減少のパーセンチュアル)は、0.5~15%の範囲であり、より好ましくは0.5~5%であり、最も好ましくは1~2%である。また望ましくは、無捲縮縦糸複フィラメントは、好ましくは、SやZのねじれを有していてもよく、好ましくは0~400の範囲であるメートル当たりの巻数を有し、より好ましくは50~300であり、最も好ましくは70~140である。
【0044】
発明の織物は、先行技術で知られているように、選択的に、捲縮帯電防止フィラメントをさらに含んでいてもよい。これらの捲縮帯電防止フィラメントは、上記で例示した織りタイプc1~c4の一つを有する。これらの帯電防止フィラメントは、好ましくは、たとえばカーボンファイバーの紡績糸であり、または、付着、コート、または埋め込まれた金属導電体を有する、導電性のある、ポリエステル、コットン、ナイロンまたはアラミドファイバである。当該導電性のある繊維は、それ自体従来のものである。捲縮帯電防止フィラメントの引っ張り強さは、15~250cN/texの範囲にあることが好ましく、より好ましくは15~40cN/texであり、最も好ましくは20~30cN/texである。また望ましくは、それらの熱収縮(180℃、2分間の加熱下における長さ減少のパーセンチュアル)は、0.5~15%の範囲であり、より好ましくは5~15%であり、最も好ましくは8~12%である。また望ましくは、捲縮帯電防止フィラメントは、好ましくは、SやZのねじれを有していてもよく、好ましくは0~400の範囲であるメートル当たりの巻数を有し、より好ましくは100~400である。より望ましくは、4つの連続する無捲縮縦糸複フィラメント毎により分けられた、ちょうと一つの捲縮帯電防止フィラメントが存在する。
【0045】
上記で述べたように、本発明の織物を提供することにより、および、たとえば溶解、コーティング、艶出し、ロートキュア(rotocure)などの標準的な工程に従って、これを含侵することにより、エラストマー(ゴム)、熱可塑性物質、または熱可塑性エラストマーの含侵と共に、本発明のベルトが作られる。「含侵」によりとは、ベルトの上面および底面から突出しているフィラメントセグメントがない状態で、織物が完全に含侵内に埋め込まれることを、意味する。「含侵」は、ベルトは、含侵のみからなり、またベルトの上面および底面を各々提供している、上層およびカバー層を有していてもよい、ということも意味していてもよい。一つの好ましい実施の形態において、上層は比較的厚く、たとえばベルト全体厚さの約10~30%であり、底層は比較的薄く、たとえばベルト全体厚さの約1~5%である。当該好ましい実施の形態において、上層の上面は、ものが運ばれる場所であり、底層の底面は、支持部および/またはローラと接触する場所である。支持部および/またはローラと接触するとき、薄い底層は、含侵材料の摩耗を最小化し、これは、上面と底面との間でせん断があるときに、利点となる。他の好ましい実施の形態において、上層および底層の両方は、比較的に厚く、たとえばベルト全体の厚さの約10~30%であり、またそのとき、上層および底層の何れかは、ものを運ぶまたは支持部および/ローラと接触するのに、役立つことができる。より好ましくは、上層および底層の両方は、同じ厚さを有する。上層または底層の一つがかなりひどく摩耗した場合に、上記によりベルトの方向を逆にすることができ、よって、ベルトのサービス寿命が延びる。
【0046】
含侵としてのエラストマー(ゴム)は、好ましくは、自然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリル・ブタジエン・ゴム(NBR)、エチレンクロロプレンゴム(EPDM)、およびアクリル酸ゴムから、選択されてもよい。加硫されていないまたは架橋された状態で、それは織物内に含侵され、そしてその後、慣例的な手順に従って、加硫されまたは架橋されることが、望ましい。
【0047】
含侵としての熱可塑性物質は、好ましくは、熱可塑性ポリオレフィン(たとえば、ポリエチレンまたはポリプロピレン)、実質的にランダムなエチレン/C3-12-α-オレフィン共重合体(1-プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、および1-オクテンである、α-オレフィンの例)、熱可塑性ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリ(ビニルアセテート)、およびPVCから成るグループから、選択されてもよい。
【0048】
含侵としての熱可塑性エラストマーは、好ましくは、熱可塑性エラストマリックブロック共重合体(たとえば、スチレンブロック共重合体、特にスチレン・ブタジエン・スチレン、スチレン・イソプレン・スチレン、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン、およびスチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体)、中密度ポリエチレンのハードブロックおよびエチレン/α-オレフィン共重合体のソフトブロックの共重合体、熱可塑性ポリウレタン樹脂(たとえば、ポリエステルジオールまたはジイソシアネートを有するポリエステルジオール)、ポリエーテル-/エステルブロックアミド、および熱可塑性エラストマティクイオノマーから、選択されてもよい。
【0049】
含侵は、好ましくは熱可塑性エラストマーから成り、より好ましくはTPUから成る。適切なTPUは、ハードブロックセグメントを含むジイソシアネートをポリエステルジオールソフトブロックセグメントと反応させるによって、得ることができる。好ましくは、付着促進剤の助けなしに、含有は、織物に適用される。すなわち、含侵前の発明となる織物と含侵組成物それ自身との両方は、当該付着促進剤を有さない。当該含侵促進剤がない場合でも、含侵は、本発明の織物に付着する。好ましくは有さない、代表的な通例の付着促進剤は、架橋剤を含む、ハロゲン化ポリマー、特に塩素化ポリオレフィンである。
【0050】
本発明のベルトは、その上面および/または底面上において、溶剤に対する耐性を向上させる、または抗菌剤を含む、通例のコーティングにより、選択的に被覆されてもよい。
【0051】
図7は、無捲縮縦糸フィラメント4、第一の無捲縮横糸フィラメント501~508、および第二の無捲縮横糸フィラメント509~516を切り裂いた、ベルトの長手方向に沿った、本発明の織物を含む本発明のベルトの断面図である。ベルトの長手方向は、本発明の目的のためのものであり、ベルトの走行方向であるとも考えられる。したがって、(捲縮縦糸フィラメント61~64に沿った)織物の縦糸方向は、ベルトの長手方向に一致する。第一の無捲縮横糸フィラメント501~508および第二の無捲縮横糸フィラメント509~516は、ポリエステルから成る単フィラメントであり、例示された実施の形態において、0.25~0.45mmの厚さを有する。典型的には、無捲縮縦糸フィラメント4は、ポリエステルまたはより好ましくはアラミドから成る、複フィラメントである。例示された実施の形態において、無捲縮縦糸フィラメント4は、440~3500dtexの単一のアラミド複フィラメントであるか、または、平行におよび互いに直隣接して配列された、複数(たとえば3~8)の当該複フィラメントである。典型的には、捲縮縦糸フィラメント61~64は、ポリエステルから成る複フィラメントであり、さらに例示された実施の形態において、550~2000dtexのタイターを有する。典型的に、無捲縮縦糸フィラメント4当たり、4又は12の捲縮縦糸フィラメント61~64が存在する。ここで、12:1である後者の比率は、互いに平行および直隣接して配列された複数のフィラメントである、上記実施の形態の無捲縮縦糸フィラメント4に対して、特に適用される。本発明の当該ベルトは、典型的に、1~3mmの範囲にある全体厚さを、有する。二つの矢印は、ベルトの上サイド9およびベルトの底サイド10上に作用し、さらにベルト内部でのせん断を引き起こす、摩擦力の反対方向を示す。これは、当該ベルトの本発明に係る適用において典型的に生じる、せん断である。当該ベルトは、熱可塑性物質または熱可塑性エラストマー、特にTPUから成る(たとえば、Lubrizol’s Estane(登録商標) TPUタイプ)、含侵11を有する。当該代表的な含侵コンベアベルトは、軽量コンベアベルトの一例として、考えられる。
【0052】
ベルトの長手方向におけるベルトの上面と底面との間におけるせん断が発生し又は発生することが予期される場合における、本発明のベルトの例となる使用を、これから、記載する。
【0053】
最初の当該使用は、食品加工処理である。運転中に、上面に沿ってすれるナイフを用いて、ベルトの上面を、破片、ダストまたは汚れから、間欠的に清浄されることがある。当該すれるナイフは、ベルト上において、せん断を与える。
【0054】
第二の当該使用は、ランニングマシーンにおけるものである。ベルトが、固定された支持板上を走行することがある。当該支持板上に存するベルトの部分上を走るときに、ランニングマシーン上で運動中のランナーが、自身の足により、ベルトの上面を加速する。固定された板上に存するベルトの底サイドと、ランナーの足により加速されるベルトの上サイドとの間において、せん断が生じる。
【0055】
第三の当該使用は、郵便仕分け機械におけるものである。固定された支持と共同することにより、または駆動していないベルトと共同することにより、1通のメールを運ぶ、駆動したベルトが存在する。固定された支持は、まったく動かない。したがって、駆動しているベルトにより運ばれる間に、当該1通のメールは、ブレーキング作用(つまり、せん断)を、駆動しているベルトの上面に生じさせる。同様に、運ばれる1通のメールにより、上面において、せん断が加速されるので、非駆動のベルトにおいてもせん断が生じる。当該メール仕分け機械の詳細および上記二つのメールを運ぶ方法の詳細は、WO 2015/011090 A1の
図3~5および関連する記載において開示されている。
【0056】
図1-6を参照して上述されたように、せん断応力下における剥離耐性の向上に加えて、本発明のベルトは、いわゆる摩耗条件下、すなわち小さい直径を有する複数のプーリにおける曲げを伴う長期間サイクル下における、剥離耐性の向上も発揮する。これは、実験的に決定されており、また、
図8,9を参照して、下記例において述べられる。
【0057】
本発明は、これから、次の限定されない例により、説明される。
【0058】
例
例1:摩耗条件下またはせん断応力下における、剥離耐性のための試験装置
【0059】
当該試験装置により、主に摩耗条件下における(
図8)または主にせん断条件下における(
図9)、剥離に対する脆弱性をテストすることができる。両装置において、ベルトに凸曲げを与える、駆動プーリ12およびアイドルプーリ13,14を少なくとも含むループにおいて、エンドレスベルト(発明または比較)は回転する。
【0060】
摩耗条件下(
図8)において、ベルトに凹み曲げを与えるアイドルプーリ15が、さらに存在している。アイドルプーリ13,14,15は、十分に小さい直径(典型的には、最大で30~40mm)を有するので、これらの小さい直径のプーリの周りでの曲げの繰り返しにより、織物と含侵とに間の接点において疲労が引き起こされる。
【0061】
二つの凸曲げプーリ13,14と一つの凹曲げプーリ15を有することを説明することを目的とし、凸曲げ方向および凹曲げ方向の両方において、同じ摩耗効果を有するために、前者二つのプーリの直径よりも小さい後者のプーリの直径を選択することが可能である。
【0062】
しかしながら、せん断装置(
図9)において、凹曲げブレーキングプーリが、さらに存する。当該プーリ16は、軸161上において又はプーリ16の表面上において奏されるブレーキングトルクT
B(Nm)により(図は、ブレーキングプーリ表面上で作用する、例となるシューブレーキを示す)、駆動プーリ12により奏される駆動トルクT
D(Nm)を中和する。ブレーキングトルクT
Bが、ベルトの外側の(移送)面上で作用する一方で、駆動トルクT
Dは、ベルトの内側(プーリ)面上で作用する。これら二つのトルク、つまり、駆動トルクT
DおよびブレーキングトルクT
Bは、反対方向において、ベルトの縦力において生じ、よって、ベルトにおいてせん断が生じる。ベルトのルーピングを維持するために、T
Dは、T
Bよりも大きくなければならない。さらに、ベルト表面とプーリ表面との間における摩擦係数、ベルト内部の力(T
D、T
B、Fwにより生じる)、および駆動プーリ12とブレーキングプーリ16に渡りベルトがスイープする角度は、これら二つのプーリの何れか上におけるスリップが生じないようなものである、ことが必須である。しかしながら、このことは、Eytelwein式に関して、または実験により、簡単に決定することができる。
【0063】
図9は、反時計回りに回転する、駆動プーリ12およびブレーキングプーリ16を示しており、よって、δにより指定される、反対方向の上記力およびせん断は、図に示すように、ベルトループの右側において、主に生じる。
【0064】
駆動プーリ12およびブレーキングプーリ16が時計回りに回転する場合には、反対方向の力およびせん断は、ベルトループの左側において、主に生じる。
【0065】
図9のせん断装置において、プーリ上における曲げによる摩耗効果を最小にするために、全てのプーリは、十分に大きな直径(典型的には、少なくとも100mm、好ましくは130mm以上)を有している。
【0066】
図8,9の両方の装置において、凹曲げプーリ(アイドルプーリ15およびブレーキングプーリ16)は、軸151または軸161上に各々配置されており、これらは、垂直方向に動かされることができ(
図8,9の両方における両矢印)、適切な緊張力Fwにより、ベルトに必要な張力を与えることができる。Fw(N)は、次式により計算される。
Fw=2×k
1%×b×ε
0
ここで、k
1%は、ベルト幅単位当たりの、1%の伸長に達するために必要な張力(N/mm)であり、EN ISO 21181:2013(軽いコンベアベルト―緩和された弾性係数の決定)に従った緩和の後に決定される。
k
1%は、
図8の摩耗装置において、循環前のオープンベルトについて決定され;
図9のせん断装置において、当該試験装置における10000回循環だけエンドレスタイプで走行し続けた後に、再オープンベルトにおいて決定され;
bは、ベルトの幅(mm)であり、任意に選択できるが、典型的には10~50mmの範囲内に存し;
ε
0は、緩和後の試験装置において意図されたベルト伸長(%)であり、一般的に0.5%である。
【0067】
Fwは、たとえば、カウンタウェイトの手段により、またはスプリングスケールの手段により、軸151又は軸161に対して垂直に印加する。
【0068】
例2:摩耗条件下における、剥離耐性ための、本発明のベルトおよび従来のベルトの比較試験
【0069】
図4のものと同様の織物構成を有する本発明のベルトと、平織りPETの二つの個別の層を有する、コードEMB-12EMCH下で出願人により市場に出された従来技術とを、比較した。摩耗条件下における剥離脆弱性に対する本発明のベルトの向上を示すために、試験装置は、
図8のものと同様であった。ベルトおよび試験装置のパラメータを、次の表3に示す。
表3
【0070】
二つのベルトの評価は、以下の通りである。
―本発明のベルト:テスト後に含侵の剥離はなかった。フィンガエンド接続の外側であろうとまたはフィンガエンド領域であろうと、ベルトの二つのサイドのうちの何れかにおいて、視認できるクラップまたは分裂は、なかった。試験前後で、ダブル層織物から含侵層を剥離することは、可能ではなかった;ダブル織物に対する含侵の付着は、含侵層自身における付着よりも、常に高かった。
-従来技術のベルト:試験後に、ベルトは、長手方向および/または幅方向におけるクラックおよび分裂を含む、いくつかのタイプの欠陥をしめした(フィンガエンド領域の外側および内側の両方)。織物から含侵層を剥離することは、可能であった。試験前において、含侵を剥離するために必要な力は、ベルト幅のcm当たり30~50Nの範囲であり、試験後において、当該必要な力は、ベルトの幅のcm当たり10Nより小さい値まで下がった。時折、二つの個々の織物を、互いに剥離させることができた。