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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】成形装飾物品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20220713BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20220713BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
B29C45/14
B05D3/06 102Z
B32B3/30
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020513630
(86)(22)【出願日】2018-09-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 US2018051705
(87)【国際公開番号】W WO2019067286
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-03-05
(31)【優先権主張番号】15/717,275
(32)【優先日】2017-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501407311
【氏名又は名称】マクダーミッド エンソン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】パーソンズ、キース、ポール
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ヘリック、マン ヒン
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-076004(JP,A)
【文献】特開2018-089891(JP,A)
【文献】特開平06-016851(JP,A)
【文献】特開平08-174741(JP,A)
【文献】特開2011-136458(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0280426(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102686377(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B05D1/00-7/26
B29C45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形装飾物品を製造する方法であって、
(i)
第1の側面及び第2の側面を有する高分子フィルム基材と、
第1の側面及び第2の側面を有する硬化性コーティングであって、前記硬化性コーティングの前記第1の側面は、前記高分子フィルム基材の前記第2の側面上に配置されている、硬化性コーティングと、
第1の側面及び第2の側面を有する保護被覆層であって、前記保護被覆層の前記第1の側面は前記硬化性コーティングの前記第2の側面上に配置されている、保護被覆層と、を含み、
前記保護被覆層の少なくとも前記第1の側面がテクスチャ加工されており、
前記保護被覆層の前記第1の側面の前記テクスチャは、前記硬化性コーティングの前記第2の側面に付与されている、ハードコートフィルムを提供する工程と、
(ii)前記ハードコートフィルム上に画像を印刷する工程と、
(iii)前記保護被覆層を除去する工程と、
(iv)熱及び真空の少なくともいずれかにより前記ハードコートフィルムを3次元パターンに形成する工程と、
(v)前記硬化性コーティングを硬化させる工程と、
(vi)前記ハードコートフィルムを切断する工程と、
(vii)前記高分子フィルム基材の前記第1の側面にプラスチック部品を射出成形する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記(iv)熱及び真空の少なくともいずれかにより前記ハードコートフィルムを3次元パターンに形成する工程が、真空によって実行され、
前記(v)前記硬化性コーティングを硬化させる工程が、紫外線への曝露により実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記保護被覆層を除去する前記工程が、前記ハードコートフィルムを三次元パターンに形成する前記工程の前又は後のいずれかで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記硬化性コーティングが、紫外線によって硬化可能であり、前記硬化性コーティングを硬化させる前記工程が、紫外線を用いて実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記硬化性コーティングの前記第2の側面の前記テクスチャが、グレアを低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第1の側面及び第2の側面を有する第2の保護被覆層が、前記保護被覆層を有するハードコートフィルムを提供する前記工程の前に、前記ハードコートフィルムから除去され、前記第2の保護被覆層の前記第2の側面が、テクスチャ加工されておらず、かつ前記保護被覆層を有するハードコートフィルムを提供する前記工程の前に、前記硬化性コーティングの前記第2の側面上に配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記高分子フィルム基材が、ポリカーボネート、ポリエステル、又はPMMAである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(i)~(vi)が順番に実行される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、テクスチャ加工されたハードコートフィルムに関し、具体的な実施形態では、テクスチャ加工された被覆層を使用してエンボス加工によるグレアを低減するためのハードコートフィルムのテクスチャ加工に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムインサート成形(「FIM」)は、プラスチック部品を装飾及び製造する多用途かつ費用効率の高い方法である。FIMは、インモールド装飾(IMD)又はインモールドラベリング(IML)の高度な形態である。これらの技術は、高分子フィルム基材、硬化性コーティング、及び保護被覆層を含み得るハードコートフィルムを使用する。ハードコートフィルムは、画像を用いて、好ましくは、排他的ではないがスクリーン印刷によって逆装飾されてもよい。次いで、フィルムは、任意選択的に三次元パターンに形成され、次いで成形装飾物品を作製するために切断及び後方射出成形されてもよい。硬化性コーティングは、プロセスの開始時に半硬化されてもよい。半硬化は、コーティングが、形成工程及び他の処理に耐えるのに十分な物理的一体性を有することを可能にするが、形成が生じることを可能にするのに十分な可撓性がある。形成後、半硬化された硬化性コーティングは、成形装飾物品に有用な強靭性、硬度、耐擦傷性、及び/若しくは耐溶剤性又は他の特性を提供するために、好ましくは紫外線を用いて、完全に硬化されてもよい。保護被覆層は、形成工程の前又は後に除去されてもよい。
【0003】
完成したハードコートフィルムを有する成形装飾物品は、保護ハードコートフィルムを有するプラスチック部品の必要性がある自動車、家電、又はテレコム産業などの様々な用途で使用され得る。一般に、硬化性コーティングは、成形装飾物品の光沢仕上げ外観をもたらす。これは、審美的に心地よいものであり得る。
【0004】
しかしながら、光沢仕上げが望ましくないことが発見された成形装飾物品の用途が存在する。例えば、本発明により、自動車内のナビゲーションディスプレイ上の光沢仕上げが不必要なグレアをもたらし得ることが発見された。加えて、本発明により、これらの光沢仕上げがユーザーにとって触覚的又は触感的に心地よいものであることが発見された。
【0005】
このようなグレア及び/又は触感的不快感は、艶消し仕上げのハードコートフィルムを使用して実質的に低減され得ることが発見された。艶消し仕上げは、好ましくは、半硬化された硬化性コーティングの外側表面をテクスチャ加工することによって作製される。このテクスチャ加工は、最終硬化プロセスを介して保存され、艶消しの外観を生むのに役立ち、それによってグレアを低減する。このような表面はまた、「柔らかい」又は「滑らかな」感触を与えることなどによって、ユーザーの触覚体験を高めるように設計され得る。
【0006】
硬化性コーティングの外側表面をテクスチャ加工するための1つの方法は、処方時に粒子の分散体を硬化性コーティングに添加することである。これらの粒子は、最終硬化後であっても、硬化性コーティングの外側表面から突出し、それによってアンチグレア特性を有する艶消し仕上げを製造する。しかしながら、本発明者らは、このプロセスの欠点を発見した。この方法によって製造され得るテクスチャの配列は、正確なサイズ及び形状の粒子の利用可能性によってある程度制限され、処方中に分散されて、沈殿、凝集などを伴わずに安定した混合物を製造し得る。加えて、粒子溶液は、製造業者が、光沢仕上げ又は艶消し仕上げが所望されるかどうかに応じて、硬化性コーティングのための異なる配合及び製造ラインを維持することを必要とする。更に、本発明者らは、このようなテクスチャは、依然として触感的に最適ではない場合があることを発見した。本発明者らは、これらの問題及び本発明が好ましい実施形態において解決策を提供し得ることを発見した。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、少なくともいくつかの実施形態において、改善されたハードコートフィルムと、成形装飾物品を作製するためのハードコートフィルムの改善された使用方法を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、少なくともいくつかの実施形態において、ハードコートフィルムの硬化性コーティングのテクスチャ加工を介した処理後に艶消し仕上げをもたらし得るハードコートフィルムを提供することである。
【0009】
本発明の更なる目的は、少なくともいくつかの実施形態において、容易に変化し得るテクスチャ加工を有するハードコートフィルムを提供することである。
【0010】
本発明の更なる目的は、少なくともいくつかの実施形態において、光沢仕上げを製造する、ハードコートフィルムに使用されるハードコートフィルムの硬化性コーティングのための同一又は類似の処方を利用して、処理後に艶消し及び/又は触感的に好ましい仕上げをもたらし得るハードコートフィルムを提供することである。
【0011】
一実施形態では、本発明は概して、ハードコートフィルムであって、高分子フィルム基材と、
第1の側面及び第2の側面を有する硬化性コーティングであって、硬化性コーティングの第1の側面は、高分子フィルム基材上に配置されている、硬化性コーティングと、
第1の側面及び第2の側面を有する保護被覆層であって、保護被覆層の第1の側面は、硬化性コーティングの第2の側面上に配置されている、保護被覆層と、を含み、
保護被覆層の少なくとも第1の側面はテクスチャ加工されている、ハードコートフィルムに関する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は概して、ハードコートフィルムであって、
高分子フィルム基材と、
第1の側面及び第2の側面を有する硬化性コーティングであって、硬化性コーティングの第1の側面は、高分子フィルム基材上に配置されている、硬化性コーティングと、を含み、
硬化性コーティングの第2の側面はエンボス加工されたテクスチャを有する、ハードコートフィルムに関する。
【0013】
別の実施形態において、本発明は概して、成形装飾物品を製造する方法であって、
(i)ハードコートフィルムを提供する工程であって、ハードコートフィルムは、
第1の側面及び第2の側面を有する高分子フィルム基材と、
第1の側面及び第2の側面を有する硬化性コーティングであって、硬化性コーティングの第1の側面は、高分子フィルム基材の第2の側面上に配置されている、硬化性コーティングと、
第1の側面及び第2の側面を有する保護被覆層であって、保護被覆層の第1の側面は、硬化性コーティングの第2の側面上に配置されている、保護被覆層と、を含み、
保護被覆層の少なくとも第1の側面はテクスチャ加工され、保護被覆層の第1の側面のテクスチャは、硬化性コーティングの第2の側面に付与されている、工程と、
(ii)ハードコートフィルム上に画像を印刷する工程と、
(iii)保護被覆層を除去する工程と、
(iv)硬化性コーティングを硬化させる工程と、
(v)ハードコートフィルムを切断する工程と、
(vi)高分子フィルム基材の第1の側面上にプラスチック部品を射出成形する工程と、を含む、方法に関する。
【0014】
先の実施形態はまた、好ましくは、ハードコートフィルムを三次元パターンに形成する工程を含んでもよい。
【0015】
先の実施形態に記載されているように、テクスチャ加工された保護被覆層を上に配置することによって、テクスチャ加工をハードコートフィルムの硬化性層に付与し得ることが発見された。この「押圧」又は「エンボス」により、テクスチャは、被覆層から硬化性層に転写され得る。このテクスチャは、最終硬化プロセスによって保存され、ハードコートフィルムの艶消し仕上げをもたらし得る。本明細書及び本発明の特許請求の範囲で使用されるとき、用語「テクスチャ(texture)」、「テクスチャ加工された(textured)」、及び「テクスチャ加工(texturing)」は、粗い又は隆起した表面、すなわち実質的に平坦ではない表面を有する状態を指す。典型的な保護被覆層であっても、その表面が完全に平坦であるとは言えないような、何らかの表面欠陥を有する場合があるが、そのような保護被覆層は、なお、本発明の意味する範囲内で実質的に平坦な表面を有することが理解される。好ましい実施形態では、保護被覆層及び硬化性コーティングの表面のテクスチャ加工は、艶消し仕上げを製造するようなものであってもよく、及び/又は光沢面と比較して、アンチグレア特性を有する表面、若しくは少なくとも実質的に低減されたグレアを有する表面を製造するようなものであってもよく、又は触り心地の「滑らかな」若しくは「柔らかい」(このような特性は、上述の「テクスチャ加工された」の本質的な定義内ではないが)テクスチャを製造するようなものであってもよい。
【0016】
加えて、本発明で使用するとき、保護被覆層上のテクスチャは、保護被覆層の表面全体を包含することを必要としない。保護被覆層がテクスチャ加工された表面を含んでいれば十分である。ゆえに、本発明の特許請求の範囲がテクスチャ加工される保護被覆層の側面を指すとき、側面の実質的な部分のみがテクスチャ加工される必要があることを理解されたい。同時に、保護被覆層の一部分のみがテクスチャ加工されている場合、これは、テクスチャが硬化性層の一部分にのみ付与されることを意味する。これも同様に、本発明及びその特許請求の意図する範囲内である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書に記載のとおり、一実施形態では、本発明は概して、ハードコートフィルムであって、
高分子フィルム基材と、
第1の側面及び第2の側面を有する硬化性コーティングであって、硬化性コーティングの第1の側面は、高分子フィルム基材上に配置されている、硬化性コーティングと、
第1の側面及び第2の側面を有する保護被覆層であって、保護被覆層の第1の側面は、硬化性コーティングの第2の側面上に配置されている、保護被覆層と、を含み、
保護被覆層の少なくとも第1の側面はテクスチャ加工されている、ハードコートフィルムに関する。
【0018】
好ましい実施形態では、高分子フィルム基材は、可撓性フィルム基材であってもよく、最も好ましくは、ポリカーボネート、ポリエステル、PMMA、又はこれらの材料のうちの1つ以上の多層共押出物を含んでもよい。他のポリマーは、熱又は真空成形に耐えるのに十分可撓性があり、かつ装飾プラスチック物品を保護するのに十分な一体性及び硬度を有する場合に使用され得る。
【0019】
硬化性コーティングは、好ましくは、紫外線を用いた重合によって硬化するように設計される。硬化性コーティングは、好ましくは、当業者に既知のアクリレートモノマーなどのモノマーを含んでもよい。硬化性コーティングはまた、好ましくは、紫外線への曝露時に重合を促進するための光開始剤を含んでもよい。
【0020】
本実施形態における硬化性コーティングは、好ましくは、半硬化状態である。これは、製造プロセス中に、すなわち、成形プロセスで顧客が使用するために販売される前に達成され得る。硬化性コーティングは、好ましくは、一部の紫外線に曝露するか、又はそれを加熱して部分的な熱硬化を誘導することによって半硬化されてもよいが、そのような放射線又は熱は、全てのモノマーを完全に重合し、固めるのに十分ではない。硬化性組成物を半硬化させることは、コーティングが、形成工程及び他の処理に耐えるのに十分な物理的一体性を有することを可能にするが、形成が生じることを可能にするのに十分な可撓性があることも可能にする。形成後、半硬化された硬化性コーティングは、成形装飾物品に有用な強靭性、硬度、耐擦傷性、及び/若しくは耐溶剤性又は他の特性を提供するために、好ましくは紫外線を用いて、完全に硬化されてもよい。硬化性層を半硬化させることはまた、高分子フィルム基材との十分な接着を確実にする。
【0021】
保護被覆層は、好ましくは、可撓性ポリマー/プラスチックを含む。保護被覆層は、硬化性層が紫外線で完全に硬化される前に、成形プロセス中に硬化性層に追加の保護を提供し得る。ゆえに、好ましくは、保護被覆層は、印刷工程の後、又はハードコートフィルムを形成する任意の工程の後に除去されてもよい。上述のように、少なくとも硬化層上に配置された保護被覆層の側面は、テクスチャ加工される。このテクスチャは、好ましくは、概して「押圧」又は「エンボス」と呼ばれ得るものを介して、硬化性層に付与される。保護被覆層が硬化性層上に設置される製造プロセスの通常条件は、保護被覆層のテクスチャを硬化性層に付与するために、保護被覆層と硬化層との間に十分な圧力を付与し得る。あるいは、又は加えて、又は任意選択的に、追加の圧力又は熱を使用して、テクスチャが硬化性層に付与されることを確実にすることができる。硬化性層へのテクスチャの実質的な付与をもたらす任意の条件のセットは、「押圧」又は「エンボス」が意味するものである。
【0022】
あるいは、光沢保護被覆層を有する通常のハードコートフィルムを顧客に提供し、次いで顧客が硬化性層をテクスチャ加工するか否かを選択できるようにすることが望ましい場合がある。これは、別個のテクスチャ加工された被覆層も顧客に提供することによって達成され得る。次いで、光沢被覆層を除去し、テクスチャ加工された被覆層と置き換えてもよい。この場合もやはり、ハードコート層は、硬化層上に被覆層のテクスチャを実質的に付与するのに十分な条件のセットに供される。このようにして、顧客は、テクスチャ加工された被覆層を潜在的に再使用することができ、かつ/又は、光沢フィルム、艶消しフィルム、若しくはその両方を作製するか否かを必ずしも決めることなく、1種類のハードコートフィルムを購入するだけで済むことになる。
【0023】
本明細書に記載のとおり、別の実施形態では、本発明は概して、ハードコートフィルムであって、高分子フィルム基材と、第1の側面及び第2の側面を有する硬化性コーティングと、を含み、硬化性コーティングの第1の側面は、高分子フィルム基材上に配置され、硬化性コーティングの第2の側面はエンボス加工されたテクスチャを有する、ハードコートフィルムに関する。実施形態は、第1の実施形態に記載の状態で製造後のハードコートフィルムの組成物に関する場合がある。このような構成では、本実施形態に係る発明は、上述の保護被覆層を更に含んでもよい。本実施形態に記載される本発明の態様はまた、具体的には、テクスチャ加工された保護被覆層が除去された後の、成形方法中のハードコートフィルムの状態に関する場合がある。
【0024】
本明細書に記載されるとおり、第3の実施形態において、本発明は概して、成形装飾物品を製造する方法であって、
(i)ハードコートフィルムを提供する工程であって、ハードコートフィルムは、
第1の側及び第2の側を有する高分子フィルム基材と、
第1の側面及び第2の側面を有する硬化性コーティングであって、硬化性コーティングの第1の側面は、高分子フィルム基材の第2の側面上に配置されている、硬化性コーティングと、
第1の側面及び第2の側面を有する保護被覆層であって、保護被覆層の第1の側面は、硬化性コーティングの第2の側面上に配置されている、保護被覆層と、を含み、
保護被覆層の少なくとも第1の側面はテクスチャ加工され、保護被覆層の第1の側面のテクスチャは、硬化性コーティングの第2の側面に付与されている、工程と、
(ii)ハードコートフィルム上に画像を印刷する工程と、
(iii)保護被覆層を除去する工程と、
(iv)硬化性コーティングを硬化させる工程と、
(v)ハードコートフィルムを切断する工程と、
(vi)高分子フィルム基材の第1の側面上にプラスチック部品を射出成形する工程と、を含む、方法に関する。
【0025】
先の工程のリストは、必ずしも記載された順序で実行される必要はないことを認識し、理解するべきである。また、記載されるようにハードコートフィルムを提供することを含む成形装飾物品の製造方法の工程については、前述している。
【0026】
成形装飾物品の製造方法は、ハードコートフィルムに画像を印刷する工程を伴う。好ましくは、ハードコートフィルムは、裏刷りされる。すなわち、印刷は高分子フィルム基材の第1の側面に行われる。これにより、インクは、完成した成形装飾物品において、硬化性層(この方法の最後に硬化される)、一方では高分子フィルム基材と、射出成形プラスチックとの間の完成された成形装飾物品内に「入れられる」ことが可能になる。好ましい実施形態では、当業者によって理解されるスクリーン印刷方法が、本発明によって企図される印刷を達成するために使用される。
【0027】
成形装飾物品の製造方法は、任意選択的に、ハードコートフィルムを三次元パターンに形成する更なる工程を伴う。この工程は、最終成形装飾物品が平坦でないこと、すなわち、丸みを帯びた表面などの三次元表面を有することが所望される場合に行われる。このような三次元パターンは、自動車、家電、及び通信産業において特に望ましい。形成は、好ましくは、ハードコートフィルムを三次元パターンに設定及び/又は熱硬化させるために、ダイ及び/又は熱及び/又は真空を使用して達成され得る。当然のことながら、三次元パターンが形成される場合、このことは印刷工程において考慮される必要がある。通常、ハードコートフィルムは、平坦な状態で印刷され、したがって、印刷された二次元画像は、三次元形成工程によって生じる歪みを考慮する必要がある。
【0028】
成形装飾物品の製造方法はまた、硬化性コーティングを硬化させる更なる工程を伴う。好ましい実施形態では、これは、ハードコートフィルムを化学放射、最も好ましくは紫外線化学放射に曝露することによって達成される。硬化はまた、上述のように熱的に達成され得る。化学線の波長は、好ましくは、硬化可能な層組成物に使用される光開始剤及び/又はモノマーの最適な波長に対応するように選択される。硬化性コーティングを硬化させる工程は、好ましくは、「完全に」硬化した硬化性層をもたらす。当業者であれば、硬化性層が完全に硬化していると見なされるために、モノマーの100%全てが完全に重合される必要はないことを理解されたい。層が、好ましくは強靭性、硬度、耐擦傷性、及び/若しくは耐溶剤性、又は成形装飾物品に有用な他の特性を有するように、実質的に硬化されていれば十分である。硬化性層を硬化させる工程は、印刷工程及び形成工程の後に行われることが好ましいが、必須ではない。硬化性層は、例えば、フィルムが屈曲して所望の形状に形成され得る容易性を促進するために、これらの工程中に完全には固められないことが好ましい。
【0029】
成形装飾物品の製造方法はまた、保護被覆層を除去する更なる工程を伴う。これは、好ましくは手で達成され得る。保護被覆層を除去する工程は、好ましくは、印刷後又は形成後に行われてもよい。いずれの場合でも、保護被覆層と硬化した硬化層との間の過度の接着がなされることを回避するために、硬化層を硬化させる工程の前に保護被覆層を除去することが非常に好ましい。
【0030】
成形装飾物品の製造方法はまた、ハードコートフィルムを切断する更なる工程を伴う。切断する工程は、好ましくは、所望のパターン又は画像によって必要とされないハードコートフィルムの部分を除去する。未処理のハードコートフィルムが標準的なサイズ及び形状で販売されることは好ましいが、顧客が任意のサイズ及び形状の成形装飾物品を調製できることが望ましい。切断プロセスは、好ましくは、成形装飾物品に所望されるサイズ及び形状に対応するように、ハードコートフィルムのサイズ及び形状を決定する。切断プロセスは、好ましくは、鋭利なダイ又は切断用具を用いて実行される。
【0031】
成形装飾物品の製造方法はまた、高分子フィルム基材の第1の側面上にプラスチック部品を射出成形する更なる工程を伴う。印刷工程からのインクは、好ましくは、高分子フィルム基材の第1の側面上により直接的に配置され、これはまた、好ましくは本発明及びその特許請求の範囲の企図する範囲内であり、かつ用語「高分子フィルム基材の第1の側面上」の意味する範囲内であることを理解されたい。当業者は、請求及び記載されるように、ハードコートフィルム上に射出成形プラスチックを作製するプロセスを理解している。
【実施例
【0032】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を例示し、本発明の好ましい実施形態を実施する潜在的な利点及び予期せぬ結果を更に説明し、表示するために与えられる。以下の実施例では、以下に請求される本発明に限定されるものとして解釈されるべきではない。
【0033】
実施例1(比較)
【0034】
【表1】
溶液(溶液1.1)を以下のように作製した。
【0035】
この処方を、70マイクロメートルの湿潤厚さまでローラーコーティングを用いて250マイクロメートルのポリカーボネートフィルム基材に適用した。湿潤コーティングを乾燥させ、100℃のオーブンで部分的に硬化させて、タックフリー性の硬化性コーティングを得た。
【0036】
【表2】
第2の溶液(溶液1.2)を以下のように作製した。
【0037】
次いで、この処方を上のコーティングされた材料に適用し、保護被覆層として、220マイクロメートルの湿潤厚さまでローラーコーティングを用いて硬化性コーティングに適用した。次いで、保護被覆層を90℃のオーブンで乾燥させて、タックフリー性の表面を得た。
【0038】
この材料から、サイズ305×458mmのシートを切り出し、保護被覆層を手作業で剥離した。次いで、残りのフィルムを真空フォーマーに入れ、機械加工された機構を含む工具に接触させながら約150℃まで9秒間加熱して、三次元形成形状を作製した。次いで、この形成された部品を、Fusion UVシステム提供の、H型バルブを装備したDRSE-120 UVコンベアシステムに通過させることにより、紫外線に1J/cmの線量で曝露することによって完全に硬化させた。得られたフィルムは、光沢表面を有することが見出された。部品の表面の粗さを、Surtronic 25表面プロファイルゲージを用いて測定し、Ra=0.01μm及びRz=0.04μmを得た。フィルムの表面もまた、60°の角度のREFO3光沢測定器を使用して測定し、光沢度92の測定値を得た。
【0039】
実施例2(発明)
実施例1の溶液1.1を、70マイクロメートルの湿潤厚さまでローラーコーティングを用いて250マイクロメートルのポリカーボネートフィルム基材に再び適用した。湿潤コーティングを乾燥させ、100℃のオーブンで部分的に硬化させて、タックフリー性の硬化性コーティングを得た。
【0040】
【表3】
第2の溶液(溶液2.2)を以下のように作製した。
【0041】
次いで、この処方を上のコーティングされた材料に適用し、保護被覆層として、220マイクロメートルの湿潤厚さまでローラーコーティングを用いて第1の硬化層に適用した。次いで、保護被覆層を90℃のオーブンで乾燥させて、タックフリー性の表面を得た。
【0042】
この材料から、サイズ305×458mmのシートを切り出し、保護被覆層を手作業で剥離した。次いで、残りのフィルムを真空フォーマーに入れ、機械加工された機構を含む工具に接触させながら約150℃まで9秒間加熱して、三次元形成形状を作製した。次いで、この形成された部品を、Fusion UVシステム提供の、H型バルブを装備したDRSE-120 UVコンベアシステムを通過させることにより、紫外線に1J/cmの線量で曝露することによって完全に硬化させた。得られたフィルムは、テクスチャ加工表面を有することが見出された。部品の表面の粗さを、Surtronic 25表面プロファイルゲージを用いて測定し、Ra=0.18μm及びRz=1.41μmを得た。フィルムの表面もまた、60°角度のREFO3光沢測定器を使用して測定し、光沢度36の測定値を得た。
【0043】
実施例3(発明)
実施例1の溶液1.1を、70マイクロメートルの湿潤厚さまでローラーコーティングを用いて250マイクロメートルのポリカーボネートフィルム基材に再び適用した。湿潤コーティングを乾燥させ、100℃のオーブンで部分的に硬化させて、タックフリー性の硬化性コーティングを得た。
【0044】
【表4】
第2の溶液(溶液3.2)を以下のように作製した。
【0045】
次いで、この処方を上のコーティングされた材料に適用し、保護被覆層として、220マイクロメートルの湿潤厚さまでローラーコーティングを用いて第1の硬化層に適用した。次いで、保護被覆層を90℃のオーブンで乾燥させて、タックフリー性の表面を得た。
【0046】
この材料から、サイズ305×458mmのシートを切り出し、保護被覆層を手作業で剥離した。次いで、残りのフィルムを真空フォーマーに入れ、機械加工された機構を含む工具に接触させながら約150℃まで9秒間加熱して、三次元形成形状を作製した。次いで、この形成された部品を、Fusion UVシステム提供の、H型バルブを装備したDRSE-120 UVコンベアシステムを通過させることにより、紫外線に1J/cmの線量で曝露することによって硬化させた。得られたフィルムは、テクスチャ加工表面を有することが見出された。部品の表面の粗さを、Surtronic 25表面プロファイルゲージを用いて測定し、Ra=0.12μm及びRz=1.10μmを得た。フィルムの表面もまた、60°の角度のREFO3光沢測定器を使用して測定し、光沢度55の測定値を得た。
【0047】
実施例4(発明)
実施例1の溶液1.1を、70マイクロメートルの湿潤厚さまでローラーコーティングを用いて250マイクロメートルのポリカーボネートフィルム基材に再び適用した。湿潤コーティングを乾燥させ、100℃のオーブンで部分的に硬化させて、タックフリー性の硬化性コーティングを得た。
【0048】
次いで、溶液2.2を上のコーティングされた材料に適用し、保護被覆層として、220マイクロメートルの湿潤厚さまでローラーコーティングを用いて第1の硬化層に適用した。次いで、保護被覆層を90℃のオーブンで乾燥させて、タックフリー性の表面を得た。
【0049】
次いで、これを以下のように処理した。溶液2.2から適用されたコーティング層は、形成後まで定位置に残った状態であった。このコーティングされた材料から、サイズ305×458mmのシートを切り出した。次いで、フィルムのシートを真空フォーマーに入れ、機械加工された機構を含む工具に接触させながら約150℃まで9秒間加熱して、三次元形成形状を作製した。次いで、保護被覆層の層を手作業で剥離した。次いで、この形成された部品を、Fusion UVシステム提供の、H型バルブを装備したDRSE-120 UVコンベアシステムを通過させることにより、紫外線に1J/cmの線量で曝露することによって硬化させた。得られたフィルムは、テクスチャ加工表面を有することが見出された。部品の表面の粗さを、Surtronic 25表面プロファイルゲージを用いて測定し、Ra=0.17μm及びRz=1.52μmを得た。フィルムの表面もまた、60°の角度のREFO3光沢測定器を使用して測定し、光沢度31の測定値を得た。
【0050】
例示の目的のために、本明細書には、典型的で好ましい実施形態が記載されている。先の好ましい実施形態は、当業者に理解されるように、以下の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。本明細書に記載の本発明の範囲から逸脱することなく、様々な代替物、修正、適応、及び付加が当業者に想起されるであろう。