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特許7104780中性子放射化に基づく多原子分析のための方法及びデバイス並びに使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】中性子放射化に基づく多原子分析のための方法及びデバイス並びに使用
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/222 20060101AFI20220713BHJP
【FI】
G01N23/222
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020517263
(86)(22)【出願日】2018-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 DE2018100516
(87)【国際公開番号】W WO2018219406
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-02-02
(31)【優先権主張番号】102017111935.3
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】17401060.3
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519426519
【氏名又は名称】アーヘン インスティテュート フォー ニュークリア トレーニング ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】518150493
【氏名又は名称】フラマトム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】クリチキ, カイ
(72)【発明者】
【氏名】ケトラー, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ハヴェニート, アンドレアス
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0046867(US,A1)
【文献】特開2004-108994(JP,A)
【文献】特開2016-029386(JP,A)
【文献】特開2014-041147(JP,A)
【文献】特表平10-510621(JP,A)
【文献】特開2003-315289(JP,A)
【文献】特開昭49-088586(JP,A)
【文献】特表2013-532817(JP,A)
【文献】特開2013-120123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子放射化に基づく多原子分析の方法であって、
10keV~20Mevの範囲内のエネルギーを有する高速の中性子を発生し、前記中性子を減速する工程であって、重陽子同士を融合することにより前記高速の中性子を発生させる工程と;
前記中性子により試料(1)を照射する工程と;
前記試料の少なくとも1つの元素を判断するために少なくとも1つの検出器(16A、16B)により、照射された前記試料により放射されるガンマ線を測定する工程と、を含み;
前記試料は非パルス状のやり方で連続的に照射され、
前記測定は前記照射中に実施され、
前記連続的中性子照射からの少なくとも即発ガンマ線又は即発ガンマ線と遅延ガンマ線との両方は、前記少なくとも1つの元素を判断する目的のために測定、且つ評価され、
前記試料(1)はそれぞれの区画(P1、P2、Pn)に細分化され、前記測定は、前記それぞれの区画(P1、P2、Pn)に関し、それぞれの前記検出器を囲むコリメータ(17)を使用して実施され、
前記少なくとも1つの元素の前記判断は前記測定されたガンマ線の評価を含み、
前記評価は、前記試料(1)の前記それぞれの区画(P1、P2、Pn)内の中性子束の空間分解及びエネルギー分解判断と、前記試料の単一区画(P1、P2、Pn)内のエネルギー依存光電ピーク効率並びに中性子束及び中性子スペクトルの、近似法による計算とを含む、方法。
【請求項2】
前記照射及び測定は少なくとも1秒の期間にわたって実施され;及び/又は
2.45MeVの中性子エネルギー値又は2.45MeV、14.1MeVの群からの少なくとも1つの中性子エネルギー値を有する中性子が発生され、及び/又は
10keV~20MeV又は10keV~10MeVのエネルギー範囲内の少なくとも1つの値を有する中性子エネルギーを有する中性子が発生される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
連続的中性子照射からの遅延ガンマ線だけが、前記少なくとも1つの元素を判断するために少なくとも断続的に測定、且つ、評価される、又は、
前記測定又は判断は前記試料の前記それぞれの区画(P1、P2、Pn)に関し個別ベースで実施され、前記区画は予め定められる又は手動で若しくはコリメーションにより自動的に予め設定可能である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの元素を判断する目的のために、前記試料(1)により放射される前記ガンマ線は、光電ピーク計数率を判断することによりエネルギー分解的やり方で測定され、
前記判断は、前記それぞれの区画のガンマ線スペクトルに従って前記測定されたガンマ線のエネルギー分解評価を含み;及び/又は
前記測定/評価は前記試料(1)により放射される前記ガンマ線の強度のエネルギー分解測定/評価を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記評価は、計数率エネルギー線図内の少なくとも1つの光電ピークと前記試料(1)の元素とをそのエネルギーに基づき相関付ける工程を含む、又は、
前記評価はさらに、前記試料に含まれる前記少なくとも1つの元素の成分が、計数率エネルギー線図において前記元素により引き起こされる光電ピークの正味面積から背景信号を減じた後に評価されることによって、前記試料の前記少なくとも1つの元素の質量分率を定量化する工程を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記評価は、前記試料(1)の前記それぞれの区画内の均一質量及び/又は元素分布の仮定に基づき実施される、及び/又は
前記試料(1)の前記それぞれの区画内の前記中性子束は、線形ボルツマン方程式の拡散近似に基づき、次の関係式:
に基づき計算される、及び/又は、
前記中性子スペクトルは、次の関係式:
に基づき、空間分解及び/又はエネルギー分解的やり方で、前記試料(1)内で、前記試料のそれぞれの区画(P1、Pn、Pn)内で計算される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
近似法により中性子束及び中性子スペクトルを計算することによる、前記試料のそれぞれの区画(P1、P2、Pn)内のエネルギー依存光電ピーク効率並びに中性子束及び中性子スペクトルの前記計算は、いずれの場合にも次の関係式:
に基づき実施され、及び/又は
前記評価中、前記試料(1)の前記それぞれの区画(P1、P2、Pn)内の少なくとも1つの元素の複数のガンマ線エネルギーのそれぞれは、前記それぞれの区画内の前記少なくとも1つの元素の質量分率を定量化する際に、分析され、前記分析は次の関係式:
に基づく、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、中性子源強度、試料幾何学形状、及び試料質量の3つの入力変数に排他的に基づいて行われ、
前記方法は、いずれの場合も個々の元素に関して及び/又は前記試料(1)の前記それぞれの区画(P1、P2、Pn)に関して及び/又は前記試料(1)の完全な組成に関して反復的に行われる、及び/又は
前記方法は、前記測定されたガンマ線を、前記照射中の中性子源強度、試料幾何学形状、及び試料質量の3つのパラメータとは別の純粋に数値的に確定されたパラメータに基づき評価することにより、自動的やり方で行われる、及び/又は
以下のグループ:透過測定、試料秤量、前記試料幾何学形状の光学的検出、の測定のうちの少なくとも1つの測定が前記試料を特徴付けるために行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記中性子束の、それぞれの区画の全中性子束の前記空間分解及びエネルギー分解判断は、試料室内に配置された複数の中性子検出器(28;28A、28B、28C、28D)により、前記試料室内で、且つ前記試料の外で実施される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
方法がコンピュータ上で実行されるとき、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法による中性子放射化に基づき多原子分析を行うように構成され、且つ
前記試料のそれぞれの区画(P1、P2、Pn)内のエネルギー依存光電ピーク効率及び中性子束及び中性子スペクトルに基づき前記試料(1)の組成に関し、前記試料により放射される少なくとも即発ガンマ線又はそうでなければ即発及び遅延ガンマ線を評価することにより、中性子により非パルス状連続的やり方で照射される試料(1)の少なくとも1つの元素を判断するように構成され、
さらに、前記多原子分析中に記録される正味光電ピーク計数率に基づき、次の関係式:
に基づき、前記それぞれの区画(P1、P2、Pn)の前記少なくとも1つの元素の質量分率を定量化する際に、前記少なくとも1つの元素の複数のガンマ線エネルギーそれぞれが前記試料(1)の前記それぞれの区画(P1、P2、Pn)内で分析されることによって、区画コリメート式やり方で測定されるガンマ線を評価するように構成された、コンピュータプログラム製品(30)。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法による中性子放射化に基づき多原子分析を行うように構成された装置(10)であって、
重陽子同士を融合することにより高速の中性子を発生させる中性子発生器(11)と;
試料室(15)とその中に配置された試料保持器(14)と;
前記試料の少なくとも1つの元素を判断する目的のための、照射された試料により放射されるガンマ線を測定するように構成された少なくとも1つの検出器(16A、16B)を含む検出器ユニット(16)と、を含み、
前記装置(10)は、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を行うように構成された制御デバイス(20)を含み、
前記装置は前記試料(1)を非パルス状連続的やり方で照射するように構成され、
前記装置は、前記検出器(16A、16B)の視野を前記試料(1)のそれぞれの区画(P1、P2、Pn)へ制約する少なくとも1つのコリメータ(17)を含み、
前記装置は前記試料(1)の前記少なくとも1つの元素の量分率を定量化することにより前記区画(P1、P2、Pn)の前記測定結果を評価するように構成される、装置(10)。
【請求項12】
前記中性子発生器(11)は、燃料として重水素ガスを使用することにより重陽子同士を融合するように構成された中性子源(11.1)を含み;及び/又は
前記装置は前記装置の背景信号を減衰する少なくとも1つの構成要素を含み、
前記構成要素は、以下のグループ:鉛又はビスマスで作られた少なくとも1つのコリメータ(17)であって前記検出器の前記視野を前記試料の前記それぞれの区画へ制約するコリメータ(17)、及び/又はグラファイトで作られた減速室(12)、及び/又は硼酸塩ポリエチレンで作られたシールド(19)、及び/又はそれぞれがグラファイト又は完全フッ化プラスチック又はベリリウムで少なくとも部分的に作られる試料室(15)及び/又は試料キャリア(14)、から選択される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
コンピュータプログラム製品(30)又はそれに伴うデータメモリ(21)をさらに含み、
前記コンピュータプログラム製品は、エネルギー依存光電ピーク効率と前記試料の前記それぞれの区画(P1、P2、Pn)内の中性子束及び中性子スペクトルとに基づき前記測定されたガンマ線を評価することにより前記試料(1)の前記少なくとも1つの元素を判断するように構成され;及び/又は
前記装置は、
さらに前記試料キャリア(14)又は前記試料を併進及び/又は回転的やり方で移動するように構成された回転及び/又は吊り上げデバイス(18)であって、前記装置の前記試料室(15)から切り離される回転及び/又は吊り上げデバイス(18)を含み;及び/又は
前記検出器ユニット(16)は、前記中性子発生器(11)に対し又は前記装置の少なくとも1つの中性子源(11.1)に対し対称配置である少なくとも2つの検出器(16A、16B)を含む、請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法による中性子放射化に基づき多原子分析を行うように構成された装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子により試料を照射することによる中性子放射化に基づく多原子分析のための方法に関する。さらに、本発明は、少なくとも1つのコリメート可能検出器を含む対応装置に関する。特に、本発明はまた、制御デバイス又はコンピュータプログラム製品の使用に関する。特に、本発明はそれぞれの独立請求項又は代替独立請求項の前文による方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大いに重視されるのは、特に危険な品物又は廃棄物又はリサイクル材料又は原料の点で又は半完成品又は工業製品の品質管理に関する業界の多くの分野における特にその元素組成に関する物質又は材料の分析である。以前から行われる分析法の1つは、予め知らされる必要がある試料の正確な組成無しに試料の個々の元素が判断される所謂多原子分析である。
【0003】
多原子分析は、中性子放射化又はそうでなければ例えばX線蛍光分析又は質量分光分析により実施され得る。以前は、中性子放射化による多原子分析はいくつかの時間仕様に従って照射により実施された。パルス状中性子照射のケースでは、有意な測定結果は、ある時間窓に続いて即発(prompt)ガンマ線がパルス状照射のやり方に応じて評価されれば保証されることができるということが分かった。ガンマ線の検出のための時間窓は、各中性子パルスの終了に続く待ち時間後に開始されそして次の中性子パルスが発射される前に終了する。
【0004】
国際公開第2012/010162A1号パンフレットと独国特許出願公開第102,010,031,844A1号明細書は、中性子線を使用することによる大量の試料の非破壊元素分析のための方法とこの方法を行うための装置とを説明する。この方法では、試料は高速中性子によりパルス状のやり方で照射され、ここでは、試料により放射されるガンマ線は、新しい中性子パルスが試料方向に発射される前に中性子パルスに続く一定時間窓後に測定される。ここで、この測定方法はまた、測定が減速過程によりそしてそれぞれの中性子パルス後に時間窓を観察することにより容易にされ得るという発見に基づく。非弾性的相互作用から生じる誘起ガンマ線の検出器における検出は、それぞれの中性子パルスに続く時間窓の理由でフィルタリングされ得、その結果、測定中マスクされ得る。即発ガンマ線はガンマ線として評価される。
【0005】
欧州特許第1,882,929B1号明細書及び国際公開第01/07888A2号パンフレットもまた、中性子がパルス状のやり方で試料上へ放射され、そして試料により放射される即発ガンマ線が測定されるまで時間窓が各パルスに続いて観察される方法について記載している。同等の方法がまた例えば欧州特許第0,493,545B1号明細書及び独国特許出願公開第102,007,029,778B4号明細書に記載されている。
【0006】
中性子放射化分析はまた以下の別の特許文献に記載されている:米国特許出願第2015/0338356A1号明細書、独国特許出願公開第60,310,118T2号明細書、米国特許出願第2005/0004763A1号明細書、米国特許出願第2012/046867A1号明細書、独国特許出願公開第10,215,070A1号明細書、独国特許出願公開第1,236,831B号明細書。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、中性子放射化による試料の多原子分析を単純化し得る方法及び装置を提供することである。本発明の目的はまた、中性子放射化による多原子分析のための方法及び装置を広い応用分野が生じるようなやり方で構成することである。本発明の目的はまた、分析対象試料のタイプ又は大きさ又は材料組成に可能な限り無関係に前記方法を適用することが可能な、ユーザのための簡単且つ速い測定方法を提供するものと考えられ得る。特に、本発明の目的は、中性子放射化に基づく多原子分析のための非破壊方法(可能な限り柔軟な)及び対応装置であって、検査対象試料が元素組成及び試料幾何学形状に関し分析するのが困難に違いない場合及び/又は破壊的である又は結果に影響を及ぼす検査対象試料の部分的試料を採用することが望まれない場合ですら、非常に高品質を有する又は放射されたガンマ線の測定及び評価の非常に信頼できる安全なやり方を有する非破壊方法及び対応装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの目的の少なくとも1つは、請求項1に記載の方法と代替独立装置請求項による装置とにより達成される。本発明の有利な発展形態はそれぞれの従属請求項において説明される。以下に説明される例示的実施形態の特徴は、明示的に禁止されない限り互いに結合可能である。
【0009】
中性子放射化に基づく多原子分析のための方法は、以下の工程により行われる:10keV~20Mevの範囲内のエネルギーにより高速中性子を発生する工程;中性子により試料を照射する工程;試料の少なくとも1つの元素を判断するために、放射されたガンマ線により照射される試料を測定する工程。本発明によると、試料が非パルス状のやり方で連続的に照射されるということを提案し、測定は、照射時間とは無関係に(照射の時間プロファイルとは無関係に)、特に、中性子パルスにより予め定められた時間窓無しに、特に照射と同じ期間にわたる照射と同時に、特に照射中は連続的に、実施される。
【0010】
これは、様々なタイプの試料のための中性子放射化に基づく多原子分析のための非破壊方法であって高い測定柔軟性と頑強な且つ再現可能且つ信頼できる結果を有する方法を提供し得る。試料は、個々のパルス無しに中性子により連続的に、例えば数秒又は数分又は数時間の期間にわたって連続的に照射され、試料により放射されるガンマ線は照射と同時に測定され得る。中性子が、特に重陽子(重水素核)同士を融合するように構成された発生器により-特に気体標的としての又は燃料としての重水素ガスにより-発生され得るということが分かった。本発明は、長期間にわたる比較的低いエネルギー照射に基づき測定及び評価を容易にし、その結果、分析が非常に正確に且つ再現可能に行われ得る。
【0011】
パルス状照射は、従来技術では多くの測定問題の中で従来は使用され、待ち時間がそれぞれの中性子パルス後に従来は必要とされた。従来、パルス長は通常、10~数百マイクロ秒(μs)の範囲内にある。パルス状照射とは対照的に、試料により放射される即発ガンマ線と遅延ガンマ線との両方は照射と同時に測定され、検出器のエネルギー分解能が即発ガンマ線と遅延ガンマ線とへの細分化を容易にする。パルス状照射とは対照的に、放射された放射線が測定/評価され得るまで時間窓(今まで、これは通常少なくとも5μsだった)を観察する必要が無い。ガンマ線の検出の開始の前に待ち時間を観察する必要が無い。それぞれの中性子パルスの終了と時間的連携する必要は最早無く;その代りに、照射及び測定が連続的に行われ得る。これもまた、試料の分析のための測定時間が低減されることを可能にする。
【0012】
測定は時間窓無しに完全に又は時間窓により任意選択的に部分的に実施され得る。いずれにせよ、放射されたガンマ線の少なくともいくつかは時間窓の無い時間非依存的やり方で測定される。本方法は、高速中性子の減速を少なくとも断続的に含み得る。
【0013】
ガンマ線の同時測定は計測設備の高効率を可能にする。ここで、即発ガンマ線と遅延ガンマ線との両方は、即発ガンマ線に重点を置く標準動作モード中に測定され得る。照射と同時の測定は、特に照射と同じ時間仕様により、又は照射の時間仕様とは無関係に個々の時間窓内に、連続的やり方で実施され得る。一例として、照射は連続的であるが、測定は任意選択的に短期間中にだけ行われる。同時測定及び連続照射の結果は、任意の時間窓を考慮するいかなる必要も最早無く、その代りに測定及び評価は非常に柔軟に行われ得、両タイプの放射線(すなわち即発ガンマ線と遅延ガンマ線)が評価され得る。中性子照射中の時間的関係とは無関係なガンマ線の測定/検出が本発明の特色としてハイライトされ得る。
【0014】
照射は従来技術によるとパルス状であり、待ち時間が従来、それぞれの中性子パルス後に必要とされる。従来、パルス長は通常、10~数百マイクロ秒(μs)の範囲にある。それぞれの中性子パルス直後の、従来採用された測定設備における背景信号は高過ぎるので、中性子パルスに直接続く信号対雑音比(SNR)は測定を評価することができるには余りに劣悪であった。したがって、ガンマ線の有意なスペクトルを検出することが可能ではなかった。以前の方法では、ある時間窓が、特に中性子の放射に続いて測定を請け負うことができるように、多くの測定問題の中で中性子に許された。通常、この時間窓は少なくとも5μsである。試料内の相互作用の確率はこの時間窓中に増加するので、測定は、それぞれの中性子パルスに続く一定の待ち時間(又は減速時間)後に十分に良好な信号対雑音比SNRでもって行われることができた。データ取得は中性子パルスに応じた時間オフセットのやり方で実施された。
【0015】
対照的に、本方法により測定及び評価されるガンマ線は第1に、試料の原子核と中性子との相互作用直後に放射される即発ガンマ線である。放射までの期間は即発ガンマ線のケースでは約10exp-16~10exp-12秒であり、この期間は非常に短いので、これは瞬間的/即発放射と呼ばれることがある。即発ガンマ線のケースでは、中性子捕獲とガンマ線の放射との間の-測定の観点から重要な-時間オフセットは無い。第2に、遅延ガンマ線もまた影響され;これは、放射化原子核が固有半減期による時間オフセットのやり方で減衰すると放射される。遅延ガンマ線は、形成された放射性核種の固有半減期による、中性子捕獲に続く時間オフセットで持って原子核により放射される。従来の中性子放射化分析(NAA:neutron activation analysis)では、中性子捕獲のための断面積と放射化放射性核種の半減期とが放射放射線に影響を及ぼす。本発明によると、2つの測定概念-一方では従来の中性子放射化分析(NAA)と他方では即発ガンマNAA(PGNAA:prompt gamma NAA)-が互いにリンクされ得る。ここで、ガンマ線のエネルギー(特に最大ピークの位置)と検出器のエネルギー分解能とに基づき即発ガンマ線と遅延ガンマ線との区別がなされ得る。
【0016】
予期した通り、ほとんどの知識は即発ガンマ線を評価することにより取得することができる。しかし、良好な即発信号を提供しない例えば鉛など多くの元素が存在する。したがって、即発ガンマ線と遅延ガンマ線との両方を評価することが多くのアプリケーション又は多くのタイプの材料試料において適切である。選択的に、照射はまた任意選択的に、遅延ガンマ線だけを測定するために少なくとも断続的にパルス状のやり方で実施され得る。選択的に、遅延ガンマ線だけが、特に鉛に関する分析のケースでは照射のタイプと無関係に測定され得る。
【0017】
試料により放射されるガンマ線は、1つ又は複数の検出器においてエネルギー分解的やり方で測定される。これは、エネルギーに応じた-ガンマ線検出器において検出された-特に事象の数の記録に対応する-測定ガンマ線スペクトルを生じる。試料の元素はガンマ線のエネルギーに基づき識別される。元素質量は測定されたエネルギー依存放射線強度により定量化される。背景信号の減算に続いて、試料に含まれる元素の質量分率が、ガンマ線スペクトル内の元素により引き起こされる光電ピークの面積から評価される。概して、試料内の照射された元素はガンマ線を様々なエネルギーで放射するので、元素のすべての評価可能ガンマ線エネルギーは、質量を判断するためにと、質量判断のための不確実性分析においてとの両方で分析的評価中に考慮される。元素のすべての評価可能ガンマ線エネルギーに基づく分析は、広範なデータベースが使用され得るという点でそして信憑性照査が行われ得るという点で有利であるということが分かった。さらに、依然として残る測定不確定性が低減され得、測定方法の精度が増加され得る。
【0018】
多原子分析の場合の質量を判断するための分析的評価は、特に試料からの及び試料の個々の区画からのガンマ放射のエネルギー依存光電ピーク効率の計算と試料内の及び試料の区画内の中性子スペクトル及び中性子束の計算とに基づく。当初、元素組成に関する仮定がこれらの計算のためになされ得、これらの仮定はガンマ線スペクトルの評価から導出される。多原子分析の結果が、光電ピーク効率、中性子スペクトル、及び中性子束をより正確に計算するための先験的になされる初期仮定を規定し、また、本方法が好適には試料の計算された組成が安定化するまで試料の組成に関し反復的に行われるように測定方法の精度を増加することができるということが分かった。このタイプの分析手順の結果として、中性子放射化に基づく多原子分析のための非破壊方法は自動的に(特に反復的に)行われ得、試料体の形式及び質量並びに中性子源強度だけが入力パラメータとして要求される。ここで、中性子源強度は計測設備又は装置から被制御変数として取得され得る。
【0019】
中性子放射化に基づく多原子分析のためのこの方法及びこの方法を行うための装置は、試料が物質組成に関し簡単なやり方で非破壊的に検査されることを可能にする。分析可能な試料の例は、土壌試料、灰、水試料、スラッジ、電気的廃棄物、化学的毒物又は放射性廃棄物を含み得る。ここで、試料は、バッチ操作で又は質量流上でオンラインで分析され得る。試料は、とりわけ品質保証、標的ソーティング、プロセス制御、及び/又は検証管理の目的のために分析され得る。
【0020】
以前の方法と比較して、本発明による方法は特に以下の特性により区別される:高速中性子の連続的放射;ガンマ線スペクトルの連続測定;試料全体のコリメート測定(collimated measurement)、又は試料の個々の分容積(区画)のコリメート測定;試料は特に2.45MeV(<10MeV、比較的低い開始エネルギー)中性子により照射される;ガンマ線は各区画の信号を評価することにより評価される;元素質量を判断するための分析的評価が、特に元素質量が区画内で均一的に分散されるという単純化仮定に基づき実施される;及び/又は検出器に対する試料体の回転及び軸方向変位がある。高速中性子が十分に熱化される(thermalized)まで、高速中性子の放射後及び放射中に減速室内の、試料室内の、及び/又は試料自体内の高速中性子の減速があり得る。
【0021】
これとは対照的に、分析は従来、以下の特性を有する方法により通常行われた:高速中性子によるパルス状照射;それぞれの中性子パルスに続く又は個々の中性子パルス間の予め規定された時間間隔又は時間窓内のガンマ線スペクトルの測定;試料は、コリメータが規定されることなく完全に測定される;特に、試料は14.1MeV(>10MeV)中性子により照射される;検出器の前に試料体の回転がある、ガンマ線は照射された試料の回転角に応じて測定される;不均一に分散された元素質量を判断するための分析的評価は、元素質量が点状であるという単純化仮定に基づき実施される。試料内の積分中性子束は試料の金属被覆により判断され得る。
【0022】
本発明に関連して使用される用語が以下に簡潔に論述される。
【0023】
シールドは好適には、装置又は計測設備を取り囲み計測設備の外のガンマ及び中性子環境線量率を低減する材料又はユニットを意味するものと理解されるべきである。
【0024】
照射又は照射することは好適には、試料から元素組成に固有なガンマ線の放射を引き起こすために中性子発生装置の動作と少なくとも1つの試料に向かう中性子の発生及び放射とを意味するものと理解されるべきである。
【0025】
検出器ユニットは好適には、1つ又は複数の検出器を含む計測設備のユニット又はアセンブリを意味するものと理解されるべきであり、前記検出器ユニットは試料により又は試料の個々の区画により放射されるガンマ線の高分解能測定を行う。それぞれの検出器は1空間方向に例えば5~10cmの広がりを有し得る。
【0026】
コリメータは好適には、検出器の視野をガンマ線のより高い検出確率を有する空間領域へ制約する計測設備のユニット又はアセンブリを意味するものと理解されるべきである。コリメーションがまた、特に試料の個々のセグメント/区画に関し実施され得る。
【0027】
計測設備は好適には、試料の多原子分析の目的のために電離放射線を発生するための計測学的設置を意味するものと理解されるべきである。一実施形態では、本明細書に記載の装置は計測設備と呼ばれることがある。
【0028】
減速室は好適には、特にグラファイトにより中性子を減速するための計測設備のアセンブリ又は少なくとも部分的にグラファイトからなる計測設備のアセンブリを意味するものと理解されるべきである。減速は任意選択的に、所望タイプの測定/評価に依存して試料室内で提供され得る及び/又は別個の減速室内で実施され得る。
【0029】
中性子発生装置は好適には、計測設備のアセンブリを意味するものと理解されるべきであり、前記中性子発生装置は、高速中性子(特に、2.45MeV中性子又はさらにまた一般的に<10MeVを有する中性子)を放射しシールド内に配置される。任意選択的に、中性子発生装置は、試料室とは別個に設けられる減速室により取り囲まれ得る。
【0030】
中性子束は好適には、中性子密度(cm当たりの自由中性子)と中性子の速度(cm/s)の平均値との積を意味するものと理解されるべきである。
【0031】
中性子スペクトルは好適には、中性子のエネルギー範囲全体にわたる中性子エネルギーの相対的分布を意味するものと理解されるべきである。
【0032】
区画は好適には、試料内の事前規定可能/所定空間領域を意味するものと理解されるべきであり、ここでは、すべての区画の和が試料全体を生じる又は試料体全体を規定する。好ましい数の区画が、試料のサイズと測定問題とに依存して選択され得る(例えば1~60区画)。ここで、区画の容積は数立方センチメートル~数リットルの範囲内である。非常に小さい(例えば数立方センチメートル)試料の場合、単一区画だけを規定することが有利かもしれない。
【0033】
光電ピーク効率は好適には、検出器内のガンマ放射の完全なエネルギー付与のための検出確率を意味するものと理解されるべきである。
【0034】
ここで、ガンマ放射はそのエネルギーレベルと無関係なガンマ線を意味するものと理解され得る。固有ガンマ線は比エネルギーを有する。したがって、ガンマ放射は中性子による照射に続く反応である。したがって、分析は、特にガンマ放射のスペクトルからの個々のタイプのガンマ線に対して行われる。即発ガンマ線及び遅延ガンマ線の信号はガンマ放射のスペクトルにより検出される。
【0035】
試料は好適には、分析のために選択され検査対象を表す材料(例えば土壌試料、灰、水試料、スラッジ、及び化学的毒物又は放射性廃棄物を含む)の固体又は液体量を意味するものと理解されるべきである。
【0036】
試料室は好適には、照射中に試料が配置され、特に照射中に試料が任意選択的にまた移動され得る計測設備のアセンブリを意味するものと理解されるべきである。
【0037】
試料キャリアは好適には、試料を収容し試料室内に配置される計測設備のアセンブリを意味するものと理解されるべきである。試料の空間的移動は試料キャリアにより実施され得る。
【0038】
以下では、本発明による方法は当初一般的に説明され、本発明の個々の態様の詳細はその後論述される。
【0039】
1つ又は複数の中性子発生装置の動作は、計測設備内の試料が中性子により連続的に照射されるようにさせ、中性子相互作用の結果として誘起/放射されるガンマ線が照射と同時に測定される。
【0040】
既に述べたように、ガンマ線は、第1に、試料の原子核と中性子との相互作用の直後に放射される即発ガンマ線であり、第2に、固有半減期による放射化原子核の減衰に続いて放射される遅延ガンマ線である。試料により放射されるガンマ線は、1つ又は複数の検出器内でエネルギー分解的やり方で測定され得る。これは、検出器当たりの測定されたガンマ線スペクトルを生じる。ガンマ線スペクトルは、エネルギーに応じてガンマ検出器において検出される事象の数の記録である。試料の元素はガンマ線のエネルギーに基づき識別される。元素質量は測定されたエネルギー依存放射線強度により定量化され得る。
【0041】
区画化測定及び非区画化測定の場合の元素質量の計算
試料に含まれる元素の質量分率は、背景信号が減じられた後に、ガンマ線スペクトル内の元素により引き起こされる光電ピークの面積から計算される。多原子分析中に記録される正味光電ピーク計数率は、以下に記載された影響パラメータに依存する;この関係は、特に以下の刊行物において考察された:G.L.Molnar(Ed.),Handbook of Prompt Gamma Activation Analysis with Neutron Beams,Kluwer Academic Publishers,ISBN 1-4020-1304-3(2004)。
ここで、

はガンマ線エネルギーEγの元素の光電ピークの正味計数率である、
-Mは対応する元素のモル質量である、
-N=6.0221408×1023はアボガドロ定数である、

は試料容積V内の位置、
-Eは中性子エネルギーである、

は試料容積内の対応元素の質量の分布関数である、

は、位置
において放射された対応エネルギーEγにおける元素のガンマ線の光電ピーク効率である、
-σγ(E)は部分的ガンマ生成断面積である、並びに

は試料内の位置及びエネルギーに応じた中性子束である。
【0042】
ここで、部分的ガンマ生成断面積は、考察される元素に依存し、考察されるガンマ線Eγの強度とまた元素の関連アイソトープの固有周波数との両方を含む。概して、試料内の照射された元素はガンマ線を様々なエネルギーにおいて放射するので、元素のすべての評価可能ガンマ線エネルギーEγは、質量を判断するための分析的評価と質量判断のための不確実性分析とにおいて考慮される。1つの元素からの複数のガンマ線エネルギーを考慮することで測定方法の不確定性を低減する。
【0043】
好適には、試料は、区画に細分化され、セグメント的やり方で測定/分析される。この目的を達成するために、試料の1つ又は複数の区画は個々のガンマ分光測定中検出器のコリメート視野(collimated field of view)内に位置する(図4)。検出器の視野は、コリメータ幾何学形状のためにガンマ線の増加された検出確率を有する空間領域である。それぞれの区画同士が検出器の視野に対して最適なやり方でアライメントされ得るように、試料は検出器の前に移動(特に回転及び移動)され得る。試料又はそれぞれの区画からの放射されたガンマ線のエネルギー依存検出確率は光電ピーク効率と呼ばれる。ガンマ線は試料の区画内で減衰されるので、検出器に面しコリメータの視野内に位置する区画は検出器の視野の外の区画より高い光電ピーク効率を有する。その結果、それぞれの区画の元素組成に関する測定結果の頑強性は、特に複数のガンマ分光測定結果が考慮されれば、増加され得る。
【0044】
1つの区画に対するコリメーションの結果、特にそれぞれの区画のSNRが改善され得る。複数の区画のガンマ分光測定が合成的やり方で評価されれば、恐らく残る不確定性は低減され得る。
【0045】
特別の利点が試料体のサイズに依存して合計4つの区画の上に生じるということが分かった。ここで、区画の幾何学形状は好適には、試料体の幾何学形状と測定問題とに応じて規定される。
【0046】
円筒状試料では、試料は、特に層及びセクターに従って区画に分割される(図4)。特に、区画は、ケーキスライスの形式で(すなわち三次元円筒セグメントとして)生成される。水平方向区画化(特に円筒状試料の対称軸に対し直角の切断による)は層と呼ばれ、角度依存区画化は(角度)セクターと呼ばれる。対称軸からの距離に応じた角度セクターのさらなる細分化部分では、これらの区画は特に半径方向セクターと呼ばれる。立方体又は直方体試料は特に、個々のボクセルへ細分化され得る。各ボクセルは区画を表す。それぞれのボクセルは同様に立方体又は直方体幾何学形状を有する。
【0047】
個々の区画内の元素質量は以下に説明されるように判断される。ここでは、これは特に元素の質量mk(シンボルm)が区画内で均一に分散されるという仮定に基づく。その結果、N個のガンマ線スペクトルがN個の区画の場合に記録され、N個の正味光電ピーク計数率がガンマ線エネルギー毎に生じる。特に半径方向セクターの場合、変化が区画のタイプに依存して生じ得る。次に、NはKにより置換され得、例えば次のことが当てはまる:N個のガンマ線スペクトルはK個の区画の場合N回測定において記録され、ここでは、KはN以上であり、N個の正味光電ピーク計数率がガンマ線エネルギー毎に生じる。さて、式(1)は、K又はN個の区画に関し、区画iのコリメート測定の場合ガンマ線エネルギーの以下の和に変換され得る、ここで、指標Kは区画全体にわたって続き、単純且つ頑強な分析を約束する:
ここで、

は、測定iにおける区画kの積分光電ピーク効率である、

は、
により形成される、測定i中の区画kにおけるガンマ線エネルギーの積分(n,γ)断面積である、
ここで、

は、
により形成される測定i中の区画kにおける積分中性子束である。
【0048】
その結果、次元N×N又はN×Kを有する線形方程式が式(2)から生じ、この線形方程式は個々の区画の元素質量に関し解くことができる。この線形方程式は次の形式を有する:
(3)A・m=b
ここで、Aは次元N×N又はN×Kの行列であり、m、bは次元N×1又はK×1のベクトルである。行列A内のエントリは次式により与えられる:
【0049】
mのエントリはmiにより与えられ、bのエントリは
により与えられる。
【0050】
特に連立方程式の解の物理的に有意であり、正であり、且つ一意的な結果を得るために、所謂「非負最小二乗」法が連立方程式に対する数値解において適用され得る。
【0051】
セグメント化/区画化測定は、試料全体内の質量分布、中性子束分布、及び/又は光電ピーク効率の均一性に関する適用のために単純化仮定が特に試料のサイズ及び組成のパラメータに基づきなされれば、必要ではないかもしれない。このようなケースでは試料は単一の好適にコリメートされた測定において測定され得、単一ガンマ線スペクトルだけが記録され得るということが示された。次に、式(2)は次の単純線形関係式に帰着する:
ここで、

は試料の積分光電ピーク効率である、

は試料内のガンマ線エネルギーの積分(n,γ)断面積である、
-Φは試料内の積分中性子束である。
【0052】
この式は、元素質量mに関し直接解くことができる。対応パラメータは、セグメント化/区画化ケースと非セグメント化ケースとの両方のケースに関し同じやり方で計算され得る。
【0053】
対応する元素の質量mは、区画内であろうと試料容積全体内であろうと、ガンマ線エネルギー毎に計算される。この値の測定不確定性u(m)は、ドイツ標準化機構により発行された次の刊行物から収集され得るようにDIN ISO11929に準じて判断される:Determination of the characteristic limits(decision threshold,detection limit and limits of the confidence interval)for measurements of ionizing radiation - Fundamentals and application(ISO 11929:2010)(2011)。
【0054】
元素は様々なガンマ線エネルギーを有するガンマ線を放射するので、元素の質量は、測定結果としての個々の判断された質量の加重平均として判断される。重み付けは計算された不確定性に基づき実施される。
【0055】
試料に含まれる元素の自動識別子
試料に含まれる元素は、記録されたガンマ線スペクトルに基づき自動的に識別され得る。対応強度を有するガンマ線エネルギーの固有放射シグネチャは、核物理学データベースから元素毎に生成され得る。スペクトル内の元素の既知ガンマ線エネルギーにおける信号がコンピュータプログラムによりこのシグネチャと比較される。一致の程度の統計分析が、試料に含まれる可能性が最も高い元素のリストを提供する。即発ガンマ線のガンマ線エネルギーだけでなく遅延ガンマ線のガンマ線エネルギーもこの識別のために使用される。特に、複数の元素へ適用されることができる本方法の利点がその結果生じる。
【0056】
光電ピーク効率を判断する方法
元素のエネルギー依存光電ピーク効率は、試料の区画内又は試料全体内の均一な元素及び質量分布の仮定の下で判断される。試料の区画の平均密度は、例えばCo-60又はEu-154などのガンマ放射体の助けを借りて試料の質量を試料容積により除算することにより及び/又は透過測定により判断され得る。透過測定は、例えば検査対象流体の充填レベル又はドラム(試料)内の充填量を判断することができるために、試料を特徴付けるための拡張測定として役立ち得る。光電ピーク効率を計算するために、コンピュータプログラムが、試料容積内のランダム点を生成するために使用され、多数のランダム軌道が、次工程においてこの点から検出器の方向に生成される。次に、様々な材料中の経路長が個々の軌道に沿って判断され、軌道に沿った吸収及び散乱のエネルギー依存確率が材料の減衰係数から計算される。検出器内のガンマ線エネルギーの完全付与のエネルギー依存確率は、検出器内の経路長、光電子反応のエネルギー依存断面積、対生成、及びコンプトン散乱から計算される。両方の確率は、すべての可能なガンマ線エネルギーの軌道に沿った光子の検出の確率を取得するために組み合わせられる。この初期点のエネルギー依存光電ピーク効率は、同じ初期点を有するすべての軌道にわたる平均化から現われる。1つの区画内の初期点のすべてのエネルギー依存光電ピーク効率の結果は、ガンマ線エネルギー毎のこの区画の対応積分光電ピーク効率を取得するために平均化される。
【0057】
中性子束及び中性子スペクトルを判断する方法
試料の元素質量を判断する分析的評価のために、試料内又は試料の個々の区画内の中性子束及びエネルギー分解中性子スペクトルが、ガンマ放射のエネルギー依存光電ピーク効率に加えて分析的方法により判断される。ここでは、線形ボルツマン方程式の拡散近似を数値的に解くことができる。この連立方程式の入力パラメータは、空の試料室内の中性子束及び中性子スペクトルのシミュレーション計算から及び/又は測定により捕捉された試料の外の中性子束から計算される。
【0058】
測定による試料室内及び試料外の中性子束の任意選択的判断は次の段落において説明される。
【0059】
計測データを評価する目的のために、各区画内の中性子束の合計又は絶対中性子束がまた任意選択的に、測定室内の試料の外に取り付けられ得る1つ又は複数の中性子検出器により判断され得る。各個々の区画内の合計中性子束はそれぞれの中性子検出器の計測データから再構築され得る。特に、BF3(BF)又は3He(He)を有するガス充填比例計数管が、中性子検出器として-特に熱中性子束を測定するのに特に適切な中性子受感物質として-使用され得る。検出器は、特に測定レベルの高さに対応する使用長さを有する円筒幾何学形状を有し得る。これは、全レベルの中性子束の検出又は測定を簡単にする。中性子検出器は、好適には予測最大及び最小熱中性子束の点に、任意選択的には追加点にも、好適にはコリメータの絞りの隣に、測定室内に配置され、特にいずれの場合も中性子源点(中性子源)から同じ距離に配置される。特に、少なくとも4つの中性子検出器が検出器と同じ高さで測定室内に配置される。中性子束の垂直分布を判断するために、同じ構成の中性子検出器が、冗長中性子検出器レベルの有意の範囲内で、測定レベルを越える及び測定レベル未満のレベルに設けられ得る。区画内の合計中性子束は、設定された中性子源強度、試料の重量及び容積、並びに試料の(空間分解された)材料組成を特に考慮することにより、再構築され得る、又はこのように取得された計測データから判断され得る。ここでは、試料の材料組成が用いられ得る。再構築は、計測データの反復評価過程の一部として実施され得る。特に、空間分解再構築が、中性子束に応じた試料物質の知られた減衰振る舞いを考慮して(特に減衰係数を考慮して)、そして前述の影響又は入力パラメータに応じたそれぞれの測定点における-シミュレーションにより判断された-中性子束の特徴に基づき、実施される。
【0060】
その結果、中性子検出もまたガンマ線検出に加えて試料室内で実施され得;前記中性子検出は特に、それぞれの区画内のそれぞれの中性子束が再構築され得るように、エネルギー範囲全体にわたる積分的やり方で合計中性子束を測定する目的に役立つ。それぞれの元素質量は、合計中性子束から並びに中性子スペクトル及び測定されたガンマ線スペクトルから定量化され得る。これは、測定結果の良好な頑強性又は有意性を与える。任意選択的に、中性子発生装置の線源強度もまた、(特に、測定冗長性の目的のための)入力変数として代替的に又は追加的に使用され得る。
【0061】
通常、試料内の中性子束は従来、試料全体に対する積分的やり方でエネルギー依存補正係数を判断することによって、判断された。この計算のやり方は、特に次の刊行物において考察された:A.Trkov,G.Zerovnik,L.Snoj,and M.Ravnik: On the self-shielding factors in neutron activation analysis,Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A,610,pp.553-565(2009)。大量の試料に関し、エネルギー依存性の無い中性子束を判断する近似的方法が、特に2空間次元までの低減を可能にする特定幾何学形状に関して、以下にさらに詳細に規定される1994年のR.Overwaterによる刊行物において提案された。
【0062】
試料内の又は試料の個々の区画内の中性子束及び中性子スペクトルが、本明細書に記載の方法において(コンピュータプログラムによる)自動的やり方で判断され得、ここでは、線形ボルツマン方程式の拡散近似式は、空間分解及びエネルギー分解的やり方(すべての3空間次元が考慮された)で数値的に解くことができ、この連立方程式の入力パラメータは、空の試料室内の中性子束及び中性子スペクトルのシミュレーション計算から及び/又は測定により検出される試料(測定される材料)の外の中性子束から計算され得る。
【0063】
試料内の空間分解及びエネルギー分解中性子束は、次の中性子の完全ボルツマン輸送方程式の解から判断され得る:
ここで、Ωは方向変数を示し、Ψは結果的に次式を満足する:
ここで、Σは全断面積を示し、Σは、試料に含まれる元素の個々の断面積から構成される試料物質の中性子の散乱断面積を示す。
【0064】
式(6)は所謂SP3近次に対応する結合型連立拡散方程式により近似され;前記関係は、特に次の刊行物において考察される:P.S.Brantley and E.W.Larson,The Simplified P3 Approximation,Nuclear Science and Engineering,134,pp.1-21(2000)。この連立方程式は、コンピュータプログラムにより多群形式で数値的に解かれる。この結果、積分中性子束及び中性子スペクトルが試料の各区画において取得され、対応するエネルギー群に分解され得る。入力パラメータを判断するために、試料又は測定室の境界を通るエネルギー分解束が、空の測定室内の中性子束のシミュレーション計算に基づき計算される。連立方程式のパラメータは試料の元素組成から出現し、ここで、第1の工程では、入力パラメータは、特に試料の均一性及び試料又は区画の元素組成の均一性に対する仮定の下に、空の試料室内のシミュレーション中性子束及び中性子スペクトルから及び/又は測定により検出された試料の外の中性子束から計算される。中性子束及び中性子スペクトルは、特にそれぞれの区画が試料の仮想細分化に基づき空間領域内で規定されることによって、いずれの場合もそれぞれの区画に関し個々に計算及び評価され得る。
【0065】
自動化反復手法
分析的評価の結果又は最も重要な結果は試料の元素組成である。評価は好適には、試料内の又は試料の区画内のエネルギー依存光電ピーク効率、中性子束、及び中性子スペクトルに関係するパラメータに基づく。その結果、極めて包括的な分析が、試料体の形式/幾何学形状、試料体の質量、及びまた中性子源強度の3つの入力パラメータに基づき実施され得、試料内の及び試料の区画内のエネルギー依存光電ピーク効率、中性子束、及び中性子スペクトルの3つの計算されたパラメータが考慮される。これらのパラメータは試料の元素組成により影響を受けるので、本方法は好適には、計算された元素組成が最早変化しなくなる又は最早ほぼ変化しなくなるまで、反復的に行われる。反復の可能なやり方は図3を参照してより詳細に説明される。初期中性子束及び初期中性子スペクトルが入力パラメータから計算される(工程S1)。さらに、正確なタイプのコリメーションと任意選択的に試料の区画化とが、追加的に考慮/判断され得、さらに、測定手順に有利な試料の並進及び/又は回転もまた考慮され得る(工程S2)。このタイプのコリメーションと試料の区画化は、特に試料のサイズ及び幾何学形状に依存してなされ得る。より大きな試料及びより複雑な幾何学形状は、小さい試料よりより多くの区画に細分化される。記録されたガンマ線スペクトルの評価は、ガンマピーク間の干渉を考慮してスペクトル内の測定ピークを個々の元素へ割り当てることによる、試料に含まれる元素の識別を含む。個々のガンマ線エネルギーにおける正味計数率は好適には、一回だけ計算され、反復方法内で一定に保たれる(工程S3)。試料の初期元素組成がそれから計算される。試料の元素組成は、さらに以下に説明される光電ピーク効率を計算する工程(工程S4)、試料の個々の区画内の元素質量を計算する工程(工程S5)、及び中性子束と中性子スペクトルを計算する工程(工程S6)を適用することにより判断される。この過程は、個々の区画内の元素組成が最早変化しなくなるまで反復的に行われる。高精度が反復分析手順の結果として得られる。
【0066】
個々のガンマ線エネルギーの正味計数率は特に、一回だけ計算され、反復方法中に一定に維持される。試料の元素組成に関する初期仮定が最初になされる。次に、区画の新しい元素組成が、試料の個々の区画内の光電ピーク効率、中性子束及び中性子スペクトル並びに元素質量を計算するための-前の段落で説明された-方法を適用することにより判断される。この過程は、個々の区画内の元素組成が最早変化しなくなるまで反復的に行われ得る。
【0067】
ここで説明された中性子放射化に基づく多原子分析の非破壊方法は、特に比較的長い期間にわたってすら、特に大量の(特に既に約1リットルを超える)試料の場合では、この分析手順の結果として最初に自動的又は完全に自動的やり方で行われ得る。試料体の形式と質量だけが入力パラメータとして要求され、中性子源強度は計算中に考慮される。ここで、中性子源強度は中性子発生装置の操作パラメータから又は中性子源の活動から確定される。大量試料の元素分析に関してもまた、それぞれの試料は中性子により連続的に照射され、試料により放射されるガンマ線と試料に含まれる元素の量とが測定され、そして背景信号の減算に続いて、前記元素は、特に計数率エネルギー線図において、元素により引き起こされる光電ピークの面積から評価される。前の方法とは対照的に、照射は連続的に行われ得、測定は同時に行われ得、測定時間中のパルス状照射も中断も要求されない。加えて、少なくともその一部が知られた試料の組成は、試料の位置における中性子束を判断するために最早必要とされない。特に大量試料に関しては、試料を特徴付けるための透過測定もあり得る。
【0068】
ここで、高速中性子は、特に試料との相互作用の確率を増加することができるために、線源により放射される時に速くその後すぐに試料室により及び/又は減速室により減速される中性子を意味するものと理解されるべきである。減速物質により減速された中性子は熱化(thermalized)中性子と呼ばれることがある。熱化中性子は、特に100meV(ミリ電子ボルト)未満の運動エネルギーを有する遅い又は減速された自由中性子である。中性子の分類では、熱化中性子又は熱中性子は冷中性子と高速中性子との間にある。用語「熱化」は、中性子が媒体中の反復散乱の結果として媒体の熱運動との平衡状態に入るということを示す。ここで、これらの熱化中性子の速度は、温度により記述され得る対応マクスウェル分布を採る。
【0069】
一実施形態によると、照射又は照射及び測定は、少なくとも1ミリ秒又は少なくとも1秒の期間にわたって実施される。一実施形態によると、照射に反応して放射された放射線の測定は5マイクロ秒(μs)未満の時間窓内の照射中に実施される。
【0070】
一実施形態によると、照射は中断無しに少なくとも10分の期間又は少なくとも30分の期間又は少なくとも2時間の期間にわたって実施される。最適照射期間はそれぞれの固有分析問題に依存して規定される。このような期間にわたる連続照射は、柔軟なやり方で特にまた個々の部分的態様に関し標的式やり方で計測データの信頼できる評価を容易にする。特に、照射期間は分析問題の必要感度という観点で規定され得る。微量汚染(微量の汚染)を検出する確率が照射期間の増加と共に増加するということが分かった。本発明による測定方法の感度は時間の増加と共に増加され得る。照射期間及び反復はこのケースでは互いに無関係に規定され得る。
【0071】
秒の範囲内の照射期間が最小照射期間として規定され得る。秒、分、時間、又はさらには日の範囲内の照射期間が最大照射期間として規定され得る。
【0072】
一実施形態によると、2.45MeVの中性子エネルギー値、又は2.45MeV、14.1MeVの群からの少なくとも1つの中性子エネルギー値を有する中性子が発生される。特に良好な信号(すなわち有利なSNRを有する信号)が2.45MeVにおける中性子の場合に得られるということが分かった。
【0073】
一実施形態によると、10keV~20MeV(特に10keV~10MeV)のエネルギー範囲内の少なくとも1つの値を有する中性子エネルギーを有する中性子が発生される。
【0074】
一実施形態によると、10MeV以下の中性子エネルギーを有する中性子が発生される。特に、これは高感度を提供する。10MeV以下(特に2.45MeVの中性子エネルギー)の中性子エネルギーを有する連続照射の利点は、少なくとも3~4MeVの中性子エネルギーを必要とする閾値反応がこのケースでは発生しないので何回もの非弾性相互作用であるということが分かった。このような非弾性相互作用はSNRの劣化を生じる。中性子源のエネルギーが今や可能な限り低く保たれることによって、選択された中性子エネルギー未満のこのような非弾性相互作用を回避することが可能である。本方法の可能な変形形態の1つによると、2.45MeVの中性子エネルギーの排他的使用がなされる。
【0075】
本発明によると、連続的中性子照射からの少なくとも即発ガンマ線、又は即発ガンマ線と遅延ガンマ線との両方のガンマ線が、少なくとも1つの元素を判断する目的のために測定、且つ、評価される。両タイプのガンマ線を評価することは、分析選択肢を拡大し、本方法の柔軟性を増加する。いかなる中性子パルスの時間依存性も考慮する必要無しに、照射された原子核の次の反応を評価することが適切であると分かった:様々なエネルギーにおけるガンマ線は原子核が中性子を捕捉するや否や自動的に放射される。原子核は次々と起こるガンマ放射により励起解除する。これにより生成されるガンマ線はそれぞれの元素に固有である。
【0076】
一実施形態によると、遅延ガンマ線だけが、少なくとも1つの元素を判断するために連続的中性子照射に反応して少なくとも断続的に測定、且つ、評価される。これは、検査の重要性がいくつかの態様(例えば特殊材料を有する試料の場合)に焦点を合わせられることを可能にする。
【0077】
一実施形態によると、少なくとも1つの元素を判断する目的のために、試料により放射されるガンマ線は、特に光電ピーク計数率を判断することによりエネルギー分解的やり方で測定され、ここでは、判断は、少なくとも1つのガンマ線スペクトルによる-特にそれぞれの検出器により検出されるガンマ線スペクトルによる-測定されたガンマ線のエネルギー分解評価を含む。ここで、同じ検出器は即発ガンマ線と遅延ガンマ線との両方のために使用され得る。エネルギー分解分析は柔軟性及び頑強性を増長する。これはまた、1つの測定を使用するほぼすべての元素の並行分析を可能にする。
【0078】
測定されたガンマ線スペクトルは検出器に固有である。それぞれの検出器は、いずれの場合も特定ガンマ線スペクトルに関して特定分解能を有し得る。
【0079】
一実施形態によると、測定/評価は試料により放射されるガンマ線の強度のエネルギー分解測定/評価を含む。これは、特に複数のタイプのガンマ線の評価に関連する高い柔軟性及び頑強性を提供する。
【0080】
一実施形態によると、判断は測定されたガンマ線の評価を含む。評価は計数率エネルギー線図内の少なくとも1つの光電ピークと試料の元素とをそのエネルギーに基づき相関付ける工程を含む。これは、即発放射と遅延放射との両方の観点で(特にいずれの場合も複数の検出器のうちの1つにより測定されたガンマ線スペクトルの)包括的な分析を提供する。
【0081】
ここで、検出された光電ピークは即発放射線又は遅延放射線を特徴付ける光電ピークであり得る。評価中、即発ガンマ線と遅延ガンマ線は、特に2つのガンマ線エネルギーが干渉する光電ピークの場合もそれぞれのエネルギーに基づき区別され得る。即時ピークと遅延ピークとの区別はこのような干渉とは無関係なままである。両タイプのガンマ線に関して、それぞれの光電ピーク効率は、このケースでは数値的方法による空間分解及びエネルギー分解的やり方で判断され得、ここでは、相互作用は試料内の放射の位置(線源点)から検出器内の吸収へマッピングされる。
【0082】
一実施形態によると、評価は、特に試料に含まれる少なくとも1つの元素の成分が計数率エネルギー線図における元素により引き起こされる光電ピークの正味面積から背景信号を減じた後に評価されることによって、試料の少なくとも1つの元素の質量分率を定量化する工程を含む。
【0083】
この目的を達成するために、光電ピークをスペクトル内に嵌め込むことができる。光電ピークより下の領域は背景/背景信号として規定され得、正味光電ピーク面積が使用される信号として規定され得る。
【0084】
一実施形態によると、試料(特に試料の個々の区画)は、特に区画の幾何学形状に対して特にコリメート視野を有する少なくとも1つの検出器又は複数の検出器によりコリメート式やり方で測定される。これは、精度を増加し得、また特に良好なSNRのケースでは試料の一部分への合焦を促進する。測定時間に関する利点は特に、2つ以上の検出器の場合に生じる。ここで説明された方法における測定時間はより多くの検出器が設けられれば設けられるほど一層短くなるように選択され得る及び/又は測定の感度は同じ測定時間に対して増加され得るということが分かった。
【0085】
本発明によると、試料は区画に細分化され、放射されたガンマ線はコリメータを使用することによりそれぞれの区画に関し測定、且つ、評価される。一実施形態によると、測定、判断、及び/又は評価は試料の個々の区画に関し個別ベースで実施され、前記区画は予め定められる又は手動で又は自動的に予め定められることができる(特にコリメーションにより)。これは、試料の個々の領域への合焦を容易にする、又は大量の試料又は異質の組成を有する試料の評価を簡単にする。
【0086】
区画化は、特に評価の所望正確さの点で分析を簡単にする。区画化は、結果としてそれぞれの区画内の元素組成の空間分解を容易にし得る。区画化はまた、より容易に又はより少ないエラーでもって推測することができるという利点を提供する。一例として、8以上の区画(特に12区画)が、円筒状試料体の場合には形成され、いずれの場合も円筒セグメント(ケーキスライス)として形成される。次に、検出器ユニットは、例えば互いに対向して配置されないが互いに一定角度(180°未満の円周角、例えば130~150°の円周角)でオフセットされる2つの検出器を含む。次に、試料全体は、増分回転により全外周にわたって分析され得特に60°ステップで(例えば2つの検出器が使用され12個の区画が規定された場合は6ステップで)分析され得る。
【0087】
コリメーションと区画化との関係又は依存性がこのケースでは利用され得るということが分かった。特に、コリメーションは選択された区画化に応じて実施され得る。装置の制御デバイスは選択された区画化に応じてコリメーションを予め定めるように構成され得る。ここで、以下の関係がコリメーションと区画化との間に予め定められ得る:区画全体は好適には検出器のコリメート視野内にある。ここで、検出器のコリメート視野は、他の区画(すなわちコリメーションが焦点を合わせられる標的位置に等しくない区画)の最小可能な空間構成要素だけを有する。視野は主として、コリメータの任意選択的に調整可能な幾何学形状の結果として標的位置へ制約され得る。
【0088】
コリメーションは特に背景信号を効果的に減衰し得るということが分かった。ここで、コリメート測定は特に、コリメート視野を有する少なくとも1つの検出器によるガンマ線の検出を意味するものと理解されるべきである。ここで説明された方法は、またコリメーションにより、特に有利なSNRを有する比較的長い期間にわたって連続的に行われ得るということが分かった。
【0089】
一実施形態によると、判断は、測定されたガンマ線の評価を含み、評価は試料内の均一質量及び/又は元素分布(特に、試料の複数の区画のうちの少なくとも1つの区画内の均一質量及び/又は元素分布)の仮定に基づき実施される。これは、高度に自動化される反復方法のケースでは特に、頑強な方法を提供する。
【0090】
元素及び質量分布は少なくともそれぞれの区画内で均一であると仮定され得るので、それぞれの区画は一様に計算/評価され得る。ここで、測定精度はまた、均一質量分布の仮定が最良な開始程度にあてはまる(すなわち、例えば、高さ方向に互いに重ねられた層に代わるケーキスライスが無い)ようなやり方で区画が幾何学的に選択されることによって増加され得る。
【0091】
これとは対照的に、以前の方法はしばしば、元素が点光源である分析的手法を使用する。元素分布の構成に関し、2つの初期仮定のうちの1つ(点光源又は区画内の均一元素及び質量分布のいずれか)がなされ得る。本明細書で説明された方法と併せた均一元素及び質量分布の仮定は不確定性が最小化された非常に頑強な測定を生じるということが分かった。
【0092】
本発明によると、判断は、測定されたガンマ線の評価を含み、ここで、評価は、試料のそれぞれの区画内の中性子束の空間分解及びエネルギー分解計算であって特に線形ボルツマン方程式の拡散近似に基づく(特に次の関係式に基づく)計算を含む:
【0093】
これはまた、前述の利点と併せて、反復の場合に特に利点を提供する単純明快なタイプの計算を提供する。
【0094】
一実施形態によると、評価はまた、特に次の関係式に基づく特に空間分解及び/又はエネルギー分解的やり方の試料内の(特に試料のそれぞれの区画内の)中性子スペクトルの計算を含む:
【0095】
これは、前述の利点と併せて頑強性を提供する。
【0096】
一実施形態によると、判断は、測定されたガンマ線の評価を含み、評価は、試料内の又は試料の個々の区画内のエネルギー依存光電ピーク効率並びに中性子束及び中性子スペクトルを、特に近似法により中性子束及び中性子スペクトルを計算することにより計算する工程を含み、いずれの場合も以下の関係式に基づく:
【0097】
これは前述の利点を提供する。試料内の又は試料の個々の区画内のエネルギー依存光電ピーク効率、中性子束及びエネルギー分解中性子スペクトルは評価のための頑強なベースを提供するということが分かった。ここで、入力パラメータは、空の試料室内の中性子束及び中性子スペクトルから及び/又は測定により検出された試料の外の中性子束から計算され得る。
【0098】
拡散近似が少数の独立変数に基づき計算を特に容易にするということが分かった。これもまた、分析の複雑性を低減し得る。非常に精確な別の方法は、決定論的なやり方で又はモンテカルロ法による、のいずれかでの全線形ボルツマン方程式に対する数値的解にその本質があり得る。しかし、両方の変形形態のコンピュータ的経費は非常に高くなるだろう;特に反復のケースでは、時間の範囲内又は日の範囲内の計算時間が予測されなければならない。拡散近似は、単純な数学的構造を提供し、単純な数値的方法の適用を可能にする。
【0099】
一実施形態によると、判断は、測定されたガンマ線の評価を含み、評価は、いずれの場合も試料のそれぞれの区画内の少なくとも1つの元素の複数のガンマ線エネルギーから生成されそれぞれの区画内のそれぞれの元素の質量分率を定量化する際に分析される複数の光電ピーク面積により、測定された光電ピーク面積に関して、少なくとも部分的に実施され、前記分析は次の関係式に基づく(N又はK個の区画それぞれに関し、ここで指標Kは区画全体にわたって続く):
【0100】
異なるやり方で表現すると、いずれの場合も試料のそれぞれの区画内の少なくとも1つの元素からの複数のガンマ線エネルギーは、それぞれの元素の質量分率を定量化する際の評価中に分析され得る。これは、良好な精度を有する単純明快、頑強、且つ柔軟な方法を提供する。測定/評価の高品質が保証され得る。
【0101】
従来、試料内の中性子束は、エネルギー依存補正係数が試料全体の積分的やり方で判断されることによって判断されることができた。特に大量試料に関し、近似的方法はまた、エネルギー依存性の無いそして2空間次元までの低減を可能にする特定幾何学形状の中性子束を判断するために適用され得るということが分かった。特に、このような方法は2つのパラメータだけにより判断される拡散方程式に基づく。特に、その関係式が次の刊行物において既に詳細に考察された方法の態様を適用することが可能である:R.Overwater,The Physics of Big Sample Instrumental Neutron Activation Analysis,Dissertation,Delft University of Technology,Delft University Press,ISBN 90-407-1048-1(1994)。
【0102】
これとは対照的に、試料内の又は試料の個々の区画内の中性子束及び中性子スペクトルは、コンピュータプログラムにより本発明に従って判断される可能性があり、線形ボルツマン方程式の拡散近似は、特にすべての3空間次元が考慮された空間分解及びエネルギー分解的やり方で数値的に解くことができる。この連立方程式の境界条件は、空の試料室内の中性子束のシミュレーション計算から及び/又は測定により検出された試料の外の中性子束から計算され得る。エネルギー依存補正係数は要求されないすなわち規定される必要が無い。
【0103】
中性子束及び中性子スペクトルの計算及び評価は、特にそれぞれの区画が試料の空間領域への仮想細分化に基づき規定されることによって、いずれの場合もそれぞれの区画に関して個々に実施され得る。
【0104】
一実施形態によると、本方法は、中性子源強度、試料幾何学形状、及び試料質量の入力変数に基づき(特に前記3つの入力変数に排他的に基づき)行われる。この結果、本方法は高度に自動化され得る。次に、3つの入力パラメータだけは予め定められなければならない。さらなるパラメータが数値的に/自動的やり方で確定され得る。この結果、ユーザの一部についての経費を最小化することも可能である。別の入力パラメータは、例えば核物理学データにより、又は中性子束及び中性子スペクトルの計算のための入力パラメータのシミュレーション計算により提供され得る。
【0105】
任意選択的に、所定組成を有するモニタ又は較正材料が試料と共に分析され得る。これは、特にその組成が未知の試料の場合に又は比較的不確かな仮定がなされた試料の場合に測定精度又は測定の頑強性を増加し得る。しかし、モニタの使用及びモニタにより放射されるガンマ線の評価は、本方法の態様及び本明細書で説明された装置と無関係に任意選択的に実施され得る。特に、高確度で試料内に発生しない材料、例えば試料上に置かれる非常に薄い金箔の形式の金が使用され得る。
【0106】
一実施形態によると、本方法は、特に、測定されたガンマ線を、照射中の中性子源強度、試料幾何学形状、及び試料質量の3つのパラメータとは別の純粋に数値的に確定されたパラメータに基づき評価することにより、自動的やり方で行われる。これは独立性と単純なやり方で反復を行う選択肢とを提供する。本方法はより頑強になる。ここで、中性子束はまた、試料の外の中性子検出器により検出され得る。
【0107】
任意選択的に、自動化はまた、3つの前述のパラメータに関し実施され得る。試料幾何学形状はカメラユニットにより独立に検出され得、試料質量は計量ユニットにより検出され得る。カメラユニット部品と計量ユニット部品との両方は好適には、装置の内部に配置されるのではなく、すなわち中性子場内に配置されるのではなく、試料室の外に特にシールドの外に配置される。この目的を達成するために、装置は試料を規定するための測定空間を有し得、前記測定空間において自動的やり方で試料を特徴付けることが可能である。中性子源強度は中性子発生装置から被制御変数として直接得られる。中性子源強度は中性子発生装置の高い電圧及び電流に直接依存する。この自動化の拡張の結果、非常に独立且つユーザフレンドリな装置又は計測設備が提供され得る。
【0108】
一実施形態によると、以下のグループの測定のうちの少なくとも1つの測定が、試料を特徴付けるために行われる:透過測定、試料秤量、試料幾何学形状の光学的検出。これは、第1にユーザの測定方法の処理を簡単にし、また、第2に、後続測定(特に区画化に関する)も簡単にする。
【0109】
一実施形態によると、本方法は、いずれの場合も個々の元素に関して、又は試料の完全な組成に関して、又は試料の個々の区画に関して、及び/又は特に試料の完全な組成に関して反復的に行われる。これは、処理するのが容易な方法の場合には特に、良好な精度を提供する。これはまた高度の独立性を有する方法を提供する。
【0110】
一実施形態によると、中性子束の(特にそれぞれの区画の絶対中性子束の)空間分解及びエネルギー分解判断は、特に試料室内に配置された少なくとも1つの中性子検出器により、試料に対して外の(すなわち試料の外の)試料室内で実施される。これはまた、それぞれの区画に関する判断に追加であろうとその代替であろうと、絶対又は合計中性子束の判断を簡単にする。
【0111】
本発明はまた、中性子放射化に基づく多原子分析の方法に関する。本方法は、10keV~20Mevの範囲内のエネルギーにより高速中性子を発生する工程と;中性子により試料を照射する工程と;試料の少なくとも1つの元素を判断するために、照射された試料により放射されるガンマ線を測定する工程とを含み;試料は非パルス状のやり方で連続的に照射され、測定は、照射とは時間的に無関係に(特に照射と同時に)照射中に実施され、連続的中性子照射からの少なくとも即発ガンマ線、又は即発ガンマ線と遅延ガンマ線との両方が、少なくとも1つの元素を判断する目的のために測定、且つ、評価され、評価は、試料内の又は試料の複数の区画のうちの少なくとも1つの区画内の均一質量及び/又は元素分布の仮定に基づき実施される。前述の利点のうちの多くがその結果として生じる。測定/評価は、照射の時間曲線と無関係に又は照射の個々の段階と無関係に実施され得る。
【0112】
前述の目的の少なくとも1つはまた、中性子による試料の連続照射のための、放射された即発ガンマ線と遅延ガンマ線との両方を連続的に測定するように構成された中性子放射化に基づく試料の多原子分析中に少なくとも1つの検出器を含む検出器ユニットの使用により達成される。ガンマ線はまた少なくとも部分的に、連続的に測定される、すなわち照射の時間と無関係に、可能な中性子パルスと無関係に、特に時間窓無しに、そして連続照射と同時に測定される。検出器ユニットの視野は、少なくとも1つのコリメータにより試料のそれぞれの区画へ制約される、特に、いずれの場合も、好適には鉛又はビスマスで作られたコリメータを有する-少なくとも1つの区画に関し又は区画の少なくとも1つの予め規定可能な幾何学形状に関しコリメート式又は区画コリメート式(partition-collimated)又は調節可能にコリメート可能な-複数の検出器を有する検出器ユニットの使用により試料のそれぞれの区画へ制約される。前述の利点がその結果として生じる。
【0113】
本発明はまた、2.45MeV、14.1MeVのグループからの少なくとも1つの中性子エネルギー値を有する第1の中性子により、及び/又は10keV~20MeV(特に10keV~10MeV)のエネルギー範囲内の少なくとも1つの値を有する中性子エネルギーを有する第2の中性子により;及び/又は10MeV以下の中性子エネルギーを有する第3の中性子により、試料を連続的に照射するための高速中性子を発生するための中性子放射化に基づく試料の多原子分析の少なくとも1つの中性子源の使用に関する。前述の利点はその結果として生じる。好適には、放射されたガンマ線は、鉛又はビスマスで作られたコリメータを有する検出器により検出される。
【0114】
前述の目的の少なくとも1つはまた、中性子放射化に基づく多原子分析のための装置(特に本明細書で述べた装置)の少なくとも1つの中性子発生装置を作動させるように構成された制御デバイスにより達成される。中性子発生器は10keV~20Mev(特に10keV~10MeV)の範囲内のエネルギーを有する高速中性子を発生するように構成される。制御デバイスは、特に少なくとも1つの第1の時間窓中に、中性子発生器を作動して中性子を発生し、試料を非パルス状且つ連続的やり方で照射するように構成され、制御デバイスはさらに、照射と同時に、特に第1の時間窓と無関係な少なくとも1つの第2の時間窓中に、連続照射と同時に連続的に、及び/又はそれとは時間的に無関係に、試料又は試料の単一区画により放射されるガンマ線の連続的及び/又は間欠測定のための少なくとも1つの検出器を作動させるように構成される。第1及び第2の時間窓は異なってもよいし、互いに無関係に設定又は予め規定されても良い。制御デバイスはさらに、検出器の視野を少なくとも1つのコリメータにより試料のそれぞれの区画へ制約するように構成される。特に、制御デバイスは上述の方法を制御するように構成される。
【0115】
このタイプの分析は前述の利点を提供する。ここで、制御デバイスは、少なくとも照射と測定とを同期させ、(特に回転/リフティング装置を活性化/規制することにより)試料の位置決めも任意選択的に同期させ得、結果的に、前記制御デバイスは計測設備の実測方法(特にデータ取得のやり方とその期間と)を制御し得る。照射及び測定は、特に例えば少なくとも20又は50秒の期間にわたって、又はそうでなければ複数の時間又は日にわたって、この制御デバイスにより実施され得る。制御デバイスは、回転/吊り上げデバイスへ結合され得、さらに、回転/吊り上げデバイスにより-試料キャリア上に配置された-試料を、特に試料の区画の幾何学形状により又はそれに依存して位置決するように構成される。特に、これは、単一制御デバイスを使用して装置全体を作動する可能性、又は単一制御デバイスを使用して中性子発生器の作動、少なくとも1つの検出器の作動、及び試料の位置決めを含む方法全体(3機能制御デバイス)を走らせることを可能にする可能性を提供する。ここで、例えば中性子源強度などのパラメータは中性子発生器に関して予め定められ得、回転/吊り上げデバイスの位置データ又は移動走行速度及び移動速度は予め定められ得る。
【0116】
制御デバイスは、前記試料の連続的且つ非パルス状照射により試料の多原子分析のための高速中性子を発生する目的のために重陽子同士を溶融するように構成された中性子発生器の動作を制御するように構成され得る。
【0117】
装置又は制御デバイスは、照射中の中性子源強度、試料幾何学形状、及び試料質量の3つのパラメータの手入力のための入力マスク(ユーザインターフェース)又は入力ユニットを含み得る。これらのパラメータはまた、データメモリ内に格納され得、制御デバイスにより読み出され、コンピュータプログラム製品へ転送され得る。
【0118】
前述の目的の少なくとも1つはまた、中性子放射化に基づく多原子分析のためのコンピュータプログラム製品により達成される。コンピュータプログラム製品は、中性子により非パルス状連続的やり方で照射される試料の少なくとも1つの元素を、試料により放射されるガンマ線(特に即時及び/又は遅延ガンマ線)を試料内の又は試料の単一区画内のエネルギー依存光電ピーク効率及び中性子束及び中性子スペクトルに基づき評価することにより、判断するように構成される。コンピュータプログラム製品はさらに、多原子分析中に記録された正味光電ピーク計数率に基づき(特に次の関係式に基づき)それぞれの区画のそれぞれの元素の質量分率を定量化する際に少なくとも1つの元素の複数のガンマ線エネルギーそれぞれが試料のそれぞれの区画内で分析されることによって、区画コリメート式やり方で測定されたガンマ線を評価するように構成される:
【0119】
ここで、この連立方程式は、個々の区画内の本発明による元素質量の判断(個々の区画のすべての質量の式の(特に同時)評価)に関係する。このコンピュータプログラム製品は分析の高精度と併せて高度の自動化又は独立性を増長する。特に、コンピュータプログラム製品は上述のタイプの評価を自動的やり方で行うように構成される。ここで、区画コリメート評価は試料の個々の区画に関し個別である評価を意味するものと理解されるべきであり、前記区画は予め幾何学的に規定されており互いに境界を定められる。
【0120】
加えて、コンピュータプログラム製品はまた、試料の意図された位置を、特に検出又は入力された試料幾何学形状に応じて予め定めるように構成され得、特に意図された位置に基づき、試料幾何学形状及び/又は試料サイズに応じて位置データベース内に格納され得、この位置決めは、特に回転/吊り上げデバイスを作動/規制することにより実施され得る。
【0121】
コンピュータプログラム製品は、それぞれの試料幾何学形状の区画化の様々な変数を計算するように、そして最適として識別された区画化を提案する又はそれを直接自律的に選択するように構成され得る。この目的を達成するために、コンピュータプログラム製品は、区画の数及び構成に応じて近似的不確実性分析を行い得、ユーザにより必要とされる精度に依存して区画化を設定する又はこれを自律的に判断し得る。この手順では、構成可能コリメータが、特に、選択された区画に関して設定され得る。
【0122】
本発明はまた、このようなコンピュータプログラム製品を格納するデータ媒体、又はコンピュータ、又はコンピュータシステム、又は仮想マシン、又はそれに伴う少なくとも1つのハードウェア要素に関する。
【0123】
本発明はまた、本明細書で説明された評価のやり方を提供する又は本明細書で説明された点に関する方法工程を提供するように構成されたコンピュータプログラムに関する。
【0124】
例示的一実施形態によると、コンピュータプログラム製品は、特に単一ガンマ線スペクトルに基づき(特に次の関係式に基づき)、非区画化試料に関し積分測定結果を評価するように構成される:
【0125】
これは、均一質量分布の仮定についての単純化を提供する。
【0126】
本発明による方法はまた以下のように説明され得る。試料の非破壊元素分析のための方法では、それぞれの試料は高速中性子により連続的に照射され、照射と同時に、試料により放射されるガンマ線が測定され、試料に含まれる元素の量は、元素が計数率エネルギー線図内に生じる-背景信号の減算に続き-光電ピークの正味面積から評価される。ここで、試料の元素質量の定量化は自動的やり方で進み得、照射中の中性子源強度と試料の幾何学形状及び全体質量とは別の、分析に必要なパラメータが数値的に計算され得る。ここで、中性子束のモニタ、又は試料内又は外校正標準の必要は無い。ここで、試料は空間領域(区画)に分解され得、試料の各区画はコリメート式やり方で測定され得る。ここで、試料の元素質量の判断は、試料の個々の区画内の元素分布及び質量分布が均一であると仮定されることに基づき得る。ここで、区画の平均密度は放射性ガンマ放射体を使用することにより透過測定から現れ得る。ここで、試料の区画内の中性子束は、線形ボルツマン方程式の拡散近似を数値的に解き、空の試料室内の中性子束及び/又は測定により検出された試料外の中性子束のシミュレーション計算からこの連立方程式の境界条件を計算する分析方法により判断され得る。ここで、光電ピーク効率は、相互作用が試料(線源点)内の放射から検出器内の吸収へマッピングされる数値的方法により空間分解及びエネルギー分解的やり方で判断され得る。ここで、本方法は、試料の計算された組成が安定化するまで、試料の組成に関し反復的に行われ得る。ここで、試料内の元素の様々なガンマ放射により生成されるすべての検出された光電ピーク面積は分析的評価において考慮され得る。ここで、各区画の測定の結果は分析的評価中に考慮され得、この結果、試料全体の測定方法の感度及び精度の改善があり得る。ここで、中性子源及び試料は、グラファイトで作られた-減速室として具現化された-試料室内に位置し得る。この過程では、中性子線からの効果的シールドは減速室周囲又は試料室周囲に直接位置し得る。ここで、検出器又は検出器ユニットはガンマ線を遮蔽する材料で作られたコリメータ内に位置し得る。ここで、試料及び減速室の及び/又は試料キャリアの幾何学形状は、特に中性子束勾配が低減又は修正される効果により変更可能減速長さ(中性子源/中性子源点と試料との経路長)により得られる試料内の中性子束勾配を低減し得る。
【0127】
前述の目的の少なくとも1つはまた、中性子放射化に基づき多原子分析を行うように構成された装置により達成される。本装置は、高速中性子を発生するように構成された中性子発生器と;試料室とその中に配置された試料ホルダと;試料の少なくとも1つの元素を判断する目的のための、照射された試料により放射されるガンマ線を測定するように構成された少なくとも1つの検出器を含む検出器ユニットとを含み、本装置は、試料キャリア上に配置された試料を非パルス状連続的やり方で照射するように構成され、さらに、照射に時間的に無関係に、照射された試料により放射される即発及び/又は遅延ガンマ線を測定するように構成され、特に照射中は時間窓無しに、特に連続照射と同時に、上記方法を行うように特に構成される。この結果、前述の利点は、特に低背景信号又は本装置及び/又は方法技術により最小化された背景信号と併せて生じる。
【0128】
ここで、本装置は、検出器の視野を試料のそれぞれの区画へ制約する少なくとも1つのコリメータを含み、試料を個々の区画に細分化するように構成され、さらに、照射中に試料のそれぞれの区画に関し連続的に照射された試料により放射される少なくとも即発ガンマ線又は即発ガンマ線と遅延ガンマ線との両方を測定するように構成される。本装置はさらに、自動化連続照射を行うように構成された制御デバイスであって照射中に連続的に印加される中性子照射の自動化測定を制御/規制するように構成された制御デバイスを含む。本装置はさらに、空間分解及びエネルギー分解的やり方で試料のそれぞれの区画内の中性子束を判断するように構成され、試料の少なくとも1つの元素の質量分率を定量化することにより区画の測定結果を評価するように構成される。これもまた自動化を簡単にする。
【0129】
好適には、半導体又はシンチレーション検出器が、即発ガンマ線と遅延ガンマ線とを測定するように構成された(検出器ユニットの)個々の検出器(すなわち高いエネルギー分解能を有する検出器)として使用される。
【0130】
任意選択的に、本方法は、試料室とは独立に設けられる減速室により変化される。標準として、減速室は、空中に固定された装置内に設けられ得る/設置され得る。減速の過程は、所望により試料室内、減速室内、及び/又は試料自体内で行われ得る。
【0131】
本装置のそれぞれの検出器は少なくとも1つのコリメータにより焦点を合わせられ得る。検出器の視野を予め定める又は境界を定める又は設定するように構成されたコリメータが、特に連続照射とも併せた改善されたSNRの利点を特に提供する。さらに、試料は区画コリメート式やり方で測定され得る。
【0132】
好適には、複数の検出器が同じ高さレベルで、特に中性子源又は中性子源点の高さレベルで配置される。好適には、検出器又は検出器群は中性子源点に可能な限り近くに配置される。これは、良好な測定結果を提供する又は背景信号の最小化を容易にする。同じ高さレベルにおける構成の場合の平面図では、検出器は好適には、中性子源点に対し円周方向に90°未満だけ(例えば60又は75°だけ)オフセットされる。
【0133】
ここで、中性子源点は好適には、中性子が放射される(特に試料方向に試料室内へ放射される)位置又は場所を意味するものと理解されるべきである。中性子発生器は、中性子源点の場所と無関係に配置され得る、又はそうでなければ中性子源点の場所を予め定め得る。
【0134】
減速室のように、コリメータは単一所定設定又は構成で安全に設置され得る。任意選択的に、コリメータはまた、所定視野の複数の設定(例えば比較的広い/広範な視野を有する第1の設定、中域視野を有する第2の設定、及び比較的狭い/厳格な/合焦視野を有する第3の設定)をそれぞれ有し得、コリメータは設定間で切り替え可能であり得る。
【0135】
ここで、本装置は本装置の背景信号を減衰する少なくとも1つの構成要素を含む。前記構成要素は次のグループから選択される:少なくとも1つのコリメータ、好適には鉛又はビスマスで作られたコリメータ。前記コリメータは(それぞれの)検出器の視野を試料の一区画へ制約する。本装置はさらに、グラファイトで作られた減速室、及び/又は硼酸塩ポリエチレンで作られたシールド、及び/又はそれぞれがグラファイト又は完全フッ化プラスチック又はベリリウムで少なくとも部分的に作られた試料室及び/又は試料キャリアを含み得る。特に、改善されたSNRがその結果として得られる。コリメータは好適には少なくとも5cmの壁強度を有する。本装置は、試料を非破壊やり方で分析し得、この過程で無数の態様に関する放射ガンマ線を評価し得る。本装置は、特定タイプの又はある時間窓内のガンマ線の評価へ制約されない。
【0136】
中性子発生器と検出器との有利な角度は、特に、検出器が余りに高い中性子束に晒されることを回避し得るので、50~90°の間にあるということが分かった。さらに、この角度範囲内の検出器は、試料内の中性子束が可能であれば最大限に高い空間領域上へ焦点を合わせられ得る。
【0137】
以前は、従来採用された設備内の非弾性相互作用(散乱過程)からのガンマ線は、このような強い背景信号を生成したのでガンマ線の検出は中性子パルスに続く一定待ち時間(時間窓)後にだけ可能だった。従来使用された検出器又は従来使用された設備内の検出器は従来、それぞれの中性子パルスに続きほぼ「ブラインド状態」であった。余りに高い信号レートは、検出器が麻痺されることに至った。そこで、検出器はいずれの場合も、検出が再び実施されることができる前に(すなわち信号レートが再び低下するまで)一定の待ち時間を必要とした。
【0138】
例示的一実施形態によると、本装置はさらにコンピュータプログラム製品又はそれに伴うデータメモリを含む。コンピュータプログラム製品は、測定されたガンマ線を、試料内の又は試料の個々の区画内のエネルギー依存光電ピーク効率及び中性子束及び中性子スペクトルに基づき-特にコンピュータプログラム製品に関し既に説明された関係式のうちの少なくとも1つに基づき-評価することにより試料の少なくとも1つの元素を判断するように構成される。これらの式又は関係はそれぞれ、データメモリ内に複数の計算ベースの1つとして格納され得、これによりコンピュータプログラム製品は相互作用する又はコンピュータプログラム製品はデータメモリへアクセスする。判断/評価中の大きな柔軟性に加えて、これはまた、特に中性子放射を制御/調整するための制御デバイス、検出器、及び/又は回転/吊り上げデバイスと併せて、完全自動的且つ反復的多原子分析の選択肢を提供する。
【0139】
例示的一実施形態によると、本装置はさらに、併進及び/又は回転的やり方で試料キャリア又は試料を移動するように構成された回転及び/又は吊り上げデバイス(好適には本装置の試料室から切り離される回転及び/又は吊り上げデバイス)を含む。回転/吊り上げデバイスの少なくとも1つの電気駆動装置は、本装置のシールドの外(特に硼酸塩ポリエチレンで作られたシールドの外の)に配置される。これもまた良好なSNRを提供する。
【0140】
例示的一実施形態によると、本装置はさらに、試料又はそれぞれの区画の平均密度を判断するように構成された透過測定のためのユニットを含む。透過ユニットは、放射性ガンマ放射体(特にEu-154又はCo-60)と試料を貫通した後にガンマ線の減衰を測定するための検出器とを含む。ここで、ガンマ線の減衰を測定する検出器は、即発ガンマ線検出器と遅延ガンマ線検出器とのうちの1つ、又はそうでなければこの透過測定のために特に設けられた検出器であり得る。試料は透過測定中に中性子により照射されない。これはガンマ線のタイプ間の差異を助長する。
【0141】
例示的一実施形態によると、本装置は、特に本装置の中性子発生器に対して及び/又は少なくとも1つの中性子源又は少なくとも1つの中性子源点に対して対称配置の少なくとも2つの検出器を含む。その結果、それぞれの区画はそれぞれの検出器の前に最適に位置決め又はアライメントされ得る。加えて、区画は試料の幾何学形状に依存して幾何学的に規定され得、試料はそれに応じてアライメントされ(例えば6回転ステップでその外周全体にわたって一回転され)得る。
【0142】
並進及び/又は回転は、それぞれの区画の中心が検出器と同じ高さに又は検出器の視軸に沿って位置するようなやり方で、又は試料又は区画が検出器のコリメート視野内に位置するようなやり方で行われ得る。
【0143】
例示的一実施形態によると、本装置はさらに、自動化連続照射を行うように構成された制御デバイス、及び/又は連続照射と同時に、前記中性子照射と時間的に無関係に、連続的に印加された中性子照射の場合に自動化測定を制御/規制するように構成された制御デバイス、特に、放射され測定されたガンマ線の反復自動化評価を、数値的に確定されたパラメータ、又は照射中の中性子源強度、試料幾何学形状、及び試料質量の3つの手動で又は自動的に予め定められたパラメータとは別に制御デバイスにより読み出されたパラメータだけに基づき中性子照射時間とは時間的に無関係に行うように構成された制御デバイスを含む。これは、個々の工程又はそうでなければ方法全体が自動的やり方で実行されることを可能にする選択肢を提供する。
【0144】
例示的一実施形態によると、中性子発生器は、特に気体標的又は気体燃料として重水素ガスを使用して重陽子(重水素の核)同士を融合するように構成された中性子源又は中性子源点を含む。十分に高い線源強度は重陽子同士の融合によってすら保証され得るということが分かった。このエネルギー範囲の使用は、第1に低い中性子エネルギーのために、そして第2に長い照射期間に関し、連続照射中の及びまた測定及び評価中の利点を提供する。燃料は気体(固体の代わりに)であり得るので一定期間後に使い果たされた固体標的(固体)を置換する必要は最早無い。特に、これは、長期間にわたる分析を簡単にし、測定結果の高い再現性又は高い信頼性を保証し得る。
【0145】
例示的一実施形態によると、中性子発生器は、電気的に操作される中性子発生器である、又は例えばAmBe源などの少なくとも1つの放射性核種中性子源を含む。重陽子同士を融合しこの核融合反応の結果として2.45MeVの開始エネルギーを有する中性子を放射する中性子発生器が好ましい。ここで、パルス状照射が任意選択的にまた、特に2.45MeVにおいて実施され得る。これとは対照的に、トリチウム重水素(14.1MeV)を融合するための中性子発生器が、正確にこのエネルギー値を有する中性子の従来のパルス照射において頻繁に使用される。
【0146】
例示的一実施形態によると、少なくとも1つの検出器は半導体検出器又はシンチレーション検出器である。これは、広範なエネルギー範囲内の即発ガンマ線と遅延ガンマ線との両方の正確な評価を容易にする。
【0147】
本発明はまた、中性子放射化に基づく多原子分析のための装置に関する。本装置は、高速中性子を発生するように構成された中性子発生器と;試料室とその中に配置された試料ホルダと;試料の少なくとも1つの元素を判断する目的のための、照射された試料により放射されるガンマ線を測定するように構成された少なくとも1つの検出器を含む検出器ユニットとを含む。本装置は、試料を非パルス状連続的やり方で照射するように構成され、さらに、照射中に、照射に時間的に無関係に、照射された試料により放射される即発及び/又は遅延ガンマ線を測定するように構成される。本装置は本装置の背景信号を減衰する少なくとも1つの構成要素を含む。前記構成要素は、以下のグループから選択される:検出器の視野を試料又は区画へ制約する少なくとも1つのコリメータ、及び/又はグラファイトで作られた減速室、及び/又は硼酸塩ポリエチレンで作られたシールド、及び/又はそれぞれがグラファイト又は完全フッ化プラスチック又はベリリウムで少なくとも部分的に作られる試料室及び/又は試料キャリア。本装置はさらに、自動化連続照射を行うように構成された制御デバイス、及び/又は特に連続照射と同時に、照射中に、中性子照射の個々の段階とは時間的に無関係に、連続的に印加される中性子照射の場合の自動化測定を制御/規制するように構成された制御デバイス、を含む。前述の利点のうちの多くがその結果として生じる。
【0148】
試料の連続的且つ非パルス状照射のための中性子放射化に基づき試料の多原子分析のための高速中性子を発生するための特に気体標的又は気体燃料としての重水素ガスにより重陽子同士を融合するように構成された中性子発生器を使用する結果として、前述の利点が実現され得る。
【0149】
本発明は、添付図面の以下の図において、そして添付図面のそれぞれの図において明示的に説明されない参照符号の添付図面の他の図を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0150】
図1】例示的実施形態による非破壊多原子分析のための装置の概略図の斜視図を示す。
図2A-C】例示的実施形態による非破壊多原子分析のための装置の各場合における詳細な景観内の検出器だけでなく1つ又は2つの検出器を有する試料室の断面図を示す。
図3】一実施形態による方法の個々の工程の概略図をフローチャートで示す。
図4】一実施形態による方法における区画化するための一例として円盤状セグメントの形式の区画化を有する円筒状試料を示す。
図5】例示的一実施形態による装置の回転及び吊り上げデバイスを有する-シールドの外に配置された-試料室の断面図を示す。
図6】例示的一実施形態による非破壊多原子分析のための装置の中性子検出器ユニットの中性子検出器がその中に配置された試料室の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0151】
図1は、非破壊多原子分析のための(正確には中性子放射化に基づく多原子分析のための本明細書で説明される方法を行うための計測設備のスタイルの)装置10のアセンブリを示す。
【0152】
1つ又は複数の中性子発生器11を操作することにより、試料1は中性子により連続的に照射され、これにより誘起/放射されたガンマ線が照射と同時に測定される。試料1を含む装置/計測設備10は特に以下のアセンブリにより構成される:中性子発生器11は、少なくとも1つの電気的に操作される中性子源(特に、少なくとも重水素と重水素(又は重陽子)とを融合しそして任意選択的に別のタイプの融合(特にトリチウムと重水素との融合)を助長する中性子源)を含む。2.45MeVのエネルギーを有する高速中性子が重陽子核融合反応中に放射される。ここで、重水素ガスは好適には標的(非放射性)として使用される。任意選択的に、少なくとも1つの別のエネルギー値(特に14.1MeV)が中性子発生器により供給され得る。中性子発生器11は減速室12内に位置しており、シールド19により囲まれる。減速室12は、減速過程中に高速中性子を可能な限り効果的に減速しそして可能な限り少ないガンマ線を放射する材料(好適にはグラファイト)で構成される。試料により放射されないがそれにもかかわらず検出器により記録されるガンマ線が能動背景信号として規定される。本明細書で説明される装置10は有利には、非常に弱い且つ最小化された背景信号を供給するので、ガンマ線は非常に柔軟に測定され得る。
【0153】
照射中、試料1は試料室15の内部の試料キャリア14上に位置する。一例として、試料キャリアは、回転板、箱、缶、又はフラスコであり得る。好適には、グラファイト及び完全フッ化プラスチックが試料キャリア14の材料として使用され得る。
【0154】
試料キャリア14及び試料室15は、試料が中性子により可能な限り均一に(すなわち小さな局所中性子束勾配でもって)照射されるように、そして試料からそれる中性子が試料内へ効果的に後方反射されるように設計される。可能であれば弱い能動背景信号だけが、中性子と試料キャリア14との相互作用中に及び中性子と試料室15との相互作用中に引き起こされるべきである。特に、これは、グラファイト、ベリリウム、及び完全フッ化又は炭素繊維強化プラスチックが好適には試料キャリア14及び試料室15の材料として使用されることによって保証され得る。
【0155】
照射と同時に測定されるガンマ線スペクトルは、検出器ユニット16により又は1つ又は複数の検出器16A、16Bにより記録される。1つの検出器と複数の検出器との両方は検出器ユニット16を意味するものに理解され得る。試料の測定時間は複数の検出器により低減され得る、又は多原子分析方法の感度及び精度は不変測定時間の場合には増加され得る。検出器ユニット16は、試料により放射されるガンマ線のエネルギーを記録し、検出器内のエネルギー付与を計数する。コリメータ17は各検出器16の周囲に位置する。それぞれのコリメータは、試料により放射される主にガンマ線が検出されるようなやり方で、採用された検出器の「視野」を制約するために使用され得る。ガンマ線の上昇された検出確率を有する空間領域は特に、検出器から始まる円錐又はピラミッドの形式を有する。コリメータ17は、ガンマ線を可能な限り効果的に遮蔽する材料(好適には鉛)で作られる。検出器の制約された視野により、コリメータは能動背景信号の最小化又は減衰を可能にする。
【0156】
試料はセグメント化/区画化されたやり方で測定され得る。この目的を達成するために、測定される試料は、試料体全体ではなく、単一ガンマ分光測定中に検出器のコリメート視野内に位置する個々のセグメント(所謂区画)だけである。個々の区画を検出器の視野内に位置決めする目的のために、回転及び持ち上げ装置18が、試料及び試料キャリアを回転及び/又は並進するために設けられる。回転及び持ち上げ装置と試料キャリアとは特に圧入及び/又は連結的やり方で互いに接続される。回転及び持ち上げ装置の構成要素が能動背景信号を増加する可能性があるので、これらのアセンブリは好適には、試料室及び減速室15、12の外に及びシールド19の外に配置される(図5)。特に、シャフト、チェーン又は歯付きベルトが、回転及び持ち上げ装置と試料キャリア14との間で力を伝えるために使用され得る。
【0157】
シールド19は、減速室と試料室12、15の周囲、検出器ユニット16の周囲、及びコリメータ17の周囲に配置される。シールド19は計測設備を囲み、計測設備の外の中性子及びガンマ環境線量率を低減する。好適には、硼酸塩ポリエチレンが、主として中性子線を遮蔽するシールドの一部分の材料として使用される。コンクリートとより高い原子番号及びより高い密度を有する元素(例えば鋼、鉛)とが、主としてガンマ線を低減又は減衰するシールドの一部分の材料として使用され得る。SNRは、減速室及び試料室12、15の領域内、その周囲、検出器ユニット16の周囲、及びコリメータ17の周囲の硼酸塩ポリエチレンにより著しく改善され得るということが分かった。
【0158】
図1はさらに、少なくとも3つの変数/パラメータv1、v2、v3(特に、中性子源強度、試料幾何学形状、及び/又は試料質量)のうちの少なくとも1つが入力マスク23において入力又は呼び出され得るということを示す。1つの変形形態によると、これらの3つのパラメータはまた、装置10により十分に自動的なやり方で確定され得る。
【0159】
図1に示す構成では、減速は試料室15の外の別個の減速室12内で行われ得る。任意選択的に、減速はまた試料室15内で行われ得る。一般的に、減速は、減速室12内、試料室15内、及び/又は試料1自体内で行われ得る。
【0160】
図1はさらに透過測定ユニット24を示し、これにより、試料のさらなる特徴付けが任意選択的に、特にガンマ線に基づき行われ得る。
【0161】
図1はさらに、測定又は評価を自動化するための構成要素(特に制御デバイス20)であって、データメモリ21へ、核物理学データベース22へ、入力ユニット/入力マスク23へ、透過測定ユニット24へ、カメラユニット25へ、計量ユニット27へ、及び/又はコンピュータプログラム製品30へ結合される構成要素を示す。コンピュータプログラム製品30はまた制御デバイス20内に格納され得る。
【0162】
図2A、2B、2Cは、非破壊多原子分析のための装置を示し、この装置による試料の区画のコリメート測定がある。図2Aに示す変形形態では、2つの検出器16A、16Bが中性子源に対し又は中性子発生器11の中性子源点11.1に対し対称的に配置される。
【0163】
詳細には、図2A、2B、2Cはまた、好適に採用可能な材料、特に、弱い背景信号を保証するための材料、特に、中性子線のシールド19用の硼酸塩(特に5又は10%)ポリエチレンM1(また、ガンマ線のシールド19用の断面内のコンクリート)、コリメータ17用の又はガンマ線を遮蔽する目的のための鉛又はビスマスM2、減速室12又は試料キャリア14又は試料室15用のグラファイトM3、検出器を遮蔽するためのリチウム-6-ポリエチレン又はリチウム-6-シリコーンM6、クリスタル16.1用のゲルマニウムM10を示す。検出器16の個々の構成要素間(特に検出器エンドキャップ16.2とクリスタル16.1との間)の領域(特にコリメータの内部の)は空気M4により充填される。中性子発生器又は検出器のタイプに依存して、個々のさらなる構成要素の適切な材料M7、M8が特に、銅、アルミニウム、プラスチック(特に強化炭素繊維)を含むリストから選択され得る。
【0164】
図2Aは、例示的やり方で、n個の区画Pnのうちの2つの区画P1、P2を円筒状試料1の場合の円筒セグメント(ケーキスライス)の形式で示す。ここで、試料1はまた、充填量又は流体のある充填レベルを有するドラムにより供給され得る。ドラムは比較的大きな容積(例えば200リットル)を有し得る。
【0165】
図2Aはさらに、長手軸x、横軸y、及び垂直軸zにより個々の構成要素のアライメントの識別を可能にする。試料は、少なくとも一部では円筒状である、又は例えばドラムとして具現化され、垂直軸zに沿って(特にz軸に関して回転対称やり方で)広がる。様々なzレベルにおける位置決めは前述の吊り上げデバイス18により可能である。
【0166】
図2Bは、円筒セグメント上でコリメートされるただ1つの検出器16を有する変形形態を示す。この構成はまた、特に費用最適化式やり方で提供され得る。
【0167】
図2A、2Bにそれぞれに示す構成では、減速がまた、試料室15内で排他的に行われ得る。
【0168】
図2Cはさらに、検出器エンドキャップ16.2及びクリスタルホルダー16.3を示す。前記要素によりクリスタル16.1を位置決めしアライメントすることが可能である。
【0169】
図3は、それぞれが副工程を含む6つの工程S1~S6における方法を示す。制御点R1~R5は、ユーザ照会用であろうと自動コンピュータ制御照会用であろうと個々の工程間に設けられ得る。
【0170】
中性子を発生し中性子により試料を照射することが第1の工程S1において実施される。第1の工程は、以下の副工程のうちの少なくとも1つを含み得る:中性子源強度を設定(制御又は調整)する副工程(S1.1)、減速副工程(S1.2)、シミュレーションにより中性子スペクトルを計算する副工程(S1.3)、シミュレーションにより中性子束を計算する副工程(S1.4)。これが自動データ照会であれ、これがユーザ入力/ユーザ誘導の範囲内であれ、特に、第1の制御点R1において中性子源強度に関し任意選択的に反復される照会があり得る。
【0171】
試料は第2の工程S2において規定され測定される。第2の工程は、以下の副工程のうちの少なくとも1つを含み得る:試料質量と任意選択的にまた試料幾何学形状とを検出する副工程(S2.1)、コリメーション副工程(S2.2)、試料区画化を検出又は設定する副工程(S2.3)、特に並進及び/又は回転により試料を移動/位置決めする副工程(S2.4)。工程S2.1は、特に、例えばドラム内(試料内)の充填レベルを検出するための又はマトリクス密度を判断するための放射性ガンマ線が試料方向に放射されることによって、透過測定と併せて実施され得る。透過測定はまた、試料を特徴付けるための拡張測定であると考えられ得、特にまた可能な限り有用な区画化に関しさらなるデータを提供し得る。特に、カメラユニット及び/又は計量ユニットと通信する自動データ照会であれ、ユーザ入力/ユーザ誘導の範囲内であれ、第2の制御点R2において試料質量、試料幾何学形状、及び区画化に関し任意選択的に反復される照会があり得る。特に、試料の位置決め又はアライメントはまた、第2の制御点R2において実施され得る。
【0172】
放射されたガンマ線は第3の工程S3において検出又は測定される。第3の工程は、以下の副工程のうちの少なくとも1つを含み得る:ガンマ線を検出/測定しガンマ線スペクトルを評価する副工程(S3.1)、元素/ピーク識別副工程(S3.2)、干渉分析副工程(S3.3)、ピーク評価(特に領域及び背景に関する評価)副工程(S3.4)。特に、中間結果の転送及び検証が第3の制御点R3において実施され得る。ここで、制御点R3は、特に試料内又はそれぞれの区画内の均一元素及び質量分布に関する陳述の範囲内の信憑性照査を含み得る、特に、新しいコリメート手法に基づき測定するために(例えば最大閾値より大きい偏差の場合に)工程S2へ戻る反復が任意選択的に存在し得る。
【0173】
測定されたガンマ線は、特にエネルギー依存光電ピーク効率を計算するために第4の工程S4において評価される。第4の工程は以下の副工程のうちの少なくとも1つを含み得る:エネルギー依存光電ピーク効率を計算するための試料内の相互作用を評価する副工程(S4.1)、それぞれの検出器内の相互作用を評価する副工程(S4.2)、試料と検出器との立体角を判断する副工程(S4.3)、光電ピーク効率(特に(初期)光電ピーク効率)を判断する副工程(S4.4)。特に、中間結果の転送及び検証は第4の制御点R4において実施され得る。
【0174】
少なくとも1つの元素の質量が第5の工程S5において判断される。第5の工程は、以下の副工程のうちの少なくとも1つを含み得る:少なくとも1つの元素質量を判断する又は元素質量比を判断する副工程(S5.1)、特に工程S1又は工程S4のいずれかから少なくとも1つの断面積を判断する副工程(S5.2)。特に、中間結果の転送及び検証は第5の制御点R5において実施され得る。ここで、制御点R5は、信憑性照査(特に、試料の定量化された元素質量と全体質量との近接性又は比較)を含み得る。
【0175】
核特性が第6の工程S6において計算される。第6の工程は以下の副工程のうちの少なくとも1つを含み得る:特に拡散近似により相互作用(特に試料内の中性子相互作用)を評価する副工程(S6.1)、中性子スペクトルを評価する副工程(S6.2)、特に拡散近似により中性子束を評価する副工程(S6.3)。
【0176】
制御点R1~R5はそれぞれ、特にユーザ入力又は中間結果の検証の範囲内の、先の工程への任意選択的フィードバック(制御ループ)を含み得る。工程S4~S6は、特に、連続的に照射された試料からのガンマ線の評価中に連続的に、個別制御点とは無関係に反復的に行われ得る。反復は、判断されるべき元素質量が最早変化しない又は実質的に最早変化しないと(例えば差の予め設定可能な閾値未満である)判断されれば、終了される。
【0177】
図4は、円盤及び円弧P1、P2、Pnへ区画化された円筒状試料1の例を使用することによりそれぞれの検出器16A、16Bの視野を示す。ここで、それぞれの検出器16A、16Bの視野は、それぞれの区画に必ずしも対応する必要は無い又はそれと同一平面である必要は無い。隣接する区画がそれぞれの検出器の視野内にどの程度まで存在するかが評価中に考慮され得る。前記隣接する区画は同時に評価される又は計算により除去されるように意図されている。各レベルには12個の区画が存在する。次に、試料全体は、6回転と当該数の併進レベル移動ステップとにより分析され得る(ここでは、5つのレベル(すなわちz方向に4回の移動ステップ)が存在する)。一例として、各区画は数秒~数分の期間にわたって照射され測定される。
【0178】
図5は、試料キャリア14がそのレベルという意味でかなりの距離だけ上方へ移動され得る(点線を有する矢)装置10を示す。試料室15は材料M3により境界を定められ、前記材料M3を試料1と共に試料1の上の空気充填空洞内に移動することが可能である。回転及び吊り上げデバイス18は、シャフト18.1を含むカップリングにより試料キャリア14へ接続されるが、これとは別に、前記回転及び吊り上げデバイスは、中性子シールドの外に配置され、試料室から遮蔽される。これは、中性子が回転及び吊り上げデバイスに到達しないということを保証し得る。中性子の回転及び吊り上げデバイスへの経路が妨げられる。シャフト18.1を誘導する材料は好適にはグラファイトである。図5に示すように、シャフト18.1の通路はグラファイトブロック内に設けられ得る。好適には、回転及び吊り上げデバイス18は、シャフト18.1により試料キャリア14へ接続されるだけである。中性子シールドはこの場合シャフトにより侵入されるだけである。回転及び吊り上げデバイスは効果的な中性子シールドの背後に封鎖的やり方で配置される。
【0179】
図6は、中性子検出器ユニット28の4つの中性子検出器28A、28B、28C、28Dが試料室15内に配置される非破壊多原子分析の装置10を示す。ここで例示的やり方で配置された中性子検出器は試料室15の外周回りに一様分布で配置される。任意選択的に、5以上の中性子検出器も設けられ得る。中性子検出器は好適には、ガンマ検出器の設置レベルに配置される。中性子検出器ユニット28は、試料から外方への中性子束(特にそれぞれの区画の絶対又は合計中性子束)の空間分解及びエネルギー分解判断を生じ得る。
【符号の説明】
【0180】
1 試料
10 中性子放射化に基づく多原子分析のための装置
11 中性子発生器
11.1 中性子源又は中性子源点
12 減速室
14 試料キャリア
15 試料室
16 検出器ユニット
16A、16B 個々の検出器
16.1 個々の検出器のクリスタル
16.2 検出器エンドキャップ
16.3 クリスタルホルダー
17 コリメータ
18 回転及び吊り上げデバイス
18.1 カップリング、特にシャフト
19 シールド
20 制御デバイス
21 データメモリ
22 核物理学データベース
23 入力ユニット/マスク
24 透過測定ユニット
25 カメラユニット
27 計量ユニット
28 中性子検出器ユニット
28A、28B、28C、28D 個々の中性子検出器
30 コンピュータプログラム製品
A16 検出器の視軸
M1 材料1、特に硼酸塩ポリエチレン及び/又はセメント
M2 材料2、特に鉛及び/又はビスマス
M3 材料3、特にグラファイト
M4 材料又は媒体4、特に空気
M6 材料6、特にリチウムポリエチレン及び/又はリチウムシリコーン
M7 材料7、特にアルミニウム及び/又は炭素繊維強化プラスチック
M8 材料8、特に銅又はプラスチック
M10 材料10、特にゲルマニウム
P1、P2、Pn 試料の区画
R1 第1の制御点
R2 第2の制御点
R3 第3の制御点
R4 第4の制御点
R5 第5の制御点
S1 第1の工程、特に中性子を発生し中性子により照射される
S1.1 中性子源強度を設定(制御又は調整)する
S1.2 減速
S1.3 シミュレーションにより中性子スペクトルを計算する
S1.4 シミュレーションにより中性子束を計算する
S2 第2の工程、特に試料仕様及び測定
S2.1 試料質量及び/又は試料幾何学形状及び/又は透過測定結果を検出する
S2.2 コリメーション
S2.3 試料区画化を検出又は設定する
S2.4 特に並進及び/又は回転により試料を移動/位置決めする
S3 第3の工程、特に、放射されたガンマ線を検出/測定し、測定されたガンマ線を評価する
S3.1 ガンマ線を検出/測定する又はガンマ線スペクトルを評価する
S3.2 元素/ピーク識別
S3.3 干渉分析
S3.4 ピークの評価、特にピーク面積及び背景に関する
S4 第4の工程、特に、測定されたガンマ線を評価する
S4.1 試料内の相互作用を評価する
S4.2 検出器内の相互作用を評価する
S4.3 試料と検出器との立体角を判断する
S4.4 光電ピーク効率を判断する、特に初期光電ピーク効率
S5 第5の工程、特に、少なくとも1つの元素(特に質量)を判断する
S5.1 少なくとも1つの元素質量又は元素質量比を判断する
S5.2 少なくとも1つの断面積を判断する
S6 第6の工程、特に核特性を計算する
S6.1 試料内の相互作用を評価する
S6.2 中性子スペクトルを評価する
S6.3 中性子束を評価する
v1 特に手動で入力されることができる第1の変数/パラメータ(特に中性子源強度)
v2 特に手動で入力されることができる第2の変数/パラメータ(特に試料幾何学形状)
v3 特に手動で入力されることができる第3の変数/パラメータ(特に試料質量)
x 長手軸
y 横軸
z 垂直軸
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6