(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】ムスカリンM1受容体陽性アロステリックモジュレーターであるヘテロアリール化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20220713BHJP
A61K 31/437 20060101ALI20220713BHJP
A61K 31/444 20060101ALI20220713BHJP
A61K 31/5025 20060101ALI20220713BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220713BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20220713BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220713BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20220713BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20220713BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220713BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220713BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
C07D471/04 104A
A61K31/437
A61K31/444
A61K31/5025
A61K45/00
A61P25/04
A61P25/16
A61P25/18
A61P25/20
A61P25/28
A61P43/00 121
C07D471/04 CSP
C07D487/04 140
(21)【出願番号】P 2020520490
(86)(22)【出願日】2018-10-17
(86)【国際出願番号】 IB2018058047
(87)【国際公開番号】W WO2019077517
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】201741037090
(32)【優先日】2017-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】507302416
【氏名又は名称】スヴェン・ライフ・サイエンシーズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUVEN LIFE SCIENCES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100103230
【氏名又は名称】高山 裕貢
(72)【発明者】
【氏名】ラーマクリシュナ・ニロジ
(72)【発明者】
【氏名】アブドゥル・ラシード・モハメド
(72)【発明者】
【氏名】アニル・カルバリ・シンディ
(72)【発明者】
【氏名】スリニバス・ラベラ
(72)【発明者】
【氏名】バナジャ・ミデカディ
(72)【発明者】
【氏名】ビノッド・クマール・ゴーヤル
(72)【発明者】
【氏名】プラディープ・ジャヤラジャン
(72)【発明者】
【氏名】サイビシャル・ダリペリ
(72)【発明者】
【氏名】ベンカテスワール・ジャスティ
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0194321(US,A1)
【文献】欧州特許第03052496(EP,B1)
【文献】国際公開第2015/044072(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/172547(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/062853(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/042643(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/198937(WO,A1)
【文献】XUE, Y et al.,Synthesis and biological activities of indolizine derivatives as alpha-7 nAChR agonists,European Journal of Medicinal Chemistry,2016年,Vol. 115,pp. 94-108
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(I)
[式中、R
1は、-(C
6-10)-アリール、-(C
5-10)-ヘテロアリールまたは-(C
5-10)-ヘテロシクリルであり、これらはいずれも、ハロゲン、-OH、-O-(C
1-6)-アルキル、-S-(C
1-6)-アルキル、-N(CH
3)
2、-(C
1-6)-アルキル、-(C
3-6)-シクロアルキル、ハロ(C
1-6)-アルキル、-NH
2、-CNおよびR
1aの中から選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがあり;
R
1aは、-(C
6-10)-アリールまたは
5~10員ヘテロアリールであり、これらはいずれも、ハロゲン、-OH、-NH
2、-CN、-O-(C
1-6)-アルキル、-S-(C
1-6)-アルキル、-(C
1-6)-アルキルおよび-(C
3-6)-シクロアルキルからなる群から選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがあり;
A
1は、CH
2またはCHFであり;
R
2は、水素またはOHであり;
環Aは、
【化2】
であり;
【化3】
および
【化4】
は、結合点を表し、
但し、
【化5】
は、A
1の結合点であり;
W
1は、C-FまたはNであり;
W
2は、C-FまたはNであり;
W
3は、C-FまたはNであり;
R
aは、水素、ハロゲン、-OH、-(C
1-6)-アルキル、-O-(C
1-6)-アルキルまたはハロ(C
1-6)-アルキルであり;
R
bは、水素、ハロゲン、-OH、-(C
1-6)-アルキル、-O-(C
1-6)-アルキルまたはハロ(C
1-6)-アルキルであり;
R
cは、水素、ハロゲン、-OH、-(C
1-6)-アルキル、-O-(C
1-6)-アルキルまたはハロ(C
1-6)-アルキルであり;
Xは、CH
2、OまたはNHであり;そして、
Yは、CH
2、OまたはNHであり;
但し、
XがOである場合、YはCH
2またはNHである]
で示される化合物、もしくはその同位体、立体異性体、互変異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩。
【請求項2】
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(4-ブロモベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(5-ブロモ-2-フルオロベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(4-ブロモ-3-フルオロベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-5-イルメチル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2-ブロモ-ピリジン-5-イルメチル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(3-メトキシベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2,4-ジフルオロベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(4-フルオロベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2,3-ジフルオロベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(3-フルオロ-4-メトキシベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2-クロロ-ピリジン-4-イルメチル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(4-フルオロ-3-メトキシベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2-フルオロベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2-フルオロ-4-メトキシベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(3,4-ジフルオロベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2-クロロ-ピリジン-5-イルメチル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(テトラヒドロピラン-4-イル)-5-(2-クロロピリジン-5-イルメチル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2-フルオロ-3-メトキシベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(3-フルオロベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(4-メトキシベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(4-ピラゾール-1-イルベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(テトラヒドロピラン-4-イル)-5-(4-ピラゾール-1-イルベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(4-チアゾール-4-イルベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2-ブロモ-4-フルオロベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2,3-ジフルオロ-4-ブロモベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(3-ブロモ-4-フルオロベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(3-ブロモベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2-クロロピリジン-3-イルメチル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2-ブロモピリジン-4-イルメチル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(3-ヒドロキシテトラヒドロピラン-4-イル)-5-(3-フルオロベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(3-ヒドロキシテトラヒドロピラン-4-イル)-5-(4-ブロモベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-[3-フルオロ-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-[2-フルオロ-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-[6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ピリジン-3-イルメチル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-[2,3-ジフルオロ-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-[4-フルオロ-3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-[3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(3-ヒドロキシテトラヒドロピラン-4-イル)-5-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-[2-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ピリジン-4-イルメチル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-3-(4-ブロモベンジル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-3-ベンジル-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-3-(2-クロロピリジン-4-イルメチル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-3-(4-メトキシベンジル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-3-(4-チアゾール-4-イル-ベンジル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド;
N-(3-ヒドロキシテトラヒドロピラン-4-イル)-3-(2-クロロピリジン-4-イルメチル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド;
N-(3-ヒドロキシテトラヒドロピラン-4-イル)-3-(4-メトキシベンジル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル]-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド;
N-(3-ヒドロキシテトラヒドロピラン-4-イル)-3-(4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド;
N-(テトラヒドロピラン-4-イル)-3-(4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド;および
N-(4-ヒドロキシテトラヒドロピラン-3-イル)-3-(4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド
からなる群から選択される化合物である、請求項1に記載の化合物、もしくはその同位体、立体異性体、互変異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩。
【請求項3】
請求項1から2のいずれか一項に記載の化合物、もしくはその同位体、立体異性体、互変異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩、および製薬的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項4】
認知障害、アルツハイマー病、統合失調症、痛みまたは睡眠障害からなる群から選択される、ムスカリンM1受容体を介する疾患または障害の処置に使用するための、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
認知障害が、アルツハイマー病の認知症、パーキンソン病の認知症、ハンチントン病の認知症、ダウン症候群に関連する認知症、トゥレット症候群に関連する認知症、閉経後に関連する認知症、前頭側頭型認知症、レヴィー小体認知症、血管性認知症、HIVの認知症、クロイツフェルト-ヤコブ病の認知症、物質-誘発性の持続型認知症、ピック病の認知症、統合失調症の認知症、老人性認知症、および一般の病状における認知症からなる群から選択される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
認知障害、アルツハイマー病、統合失調症、痛みまたは睡眠障害から選択される、ムスカリンM1受容体を介する疾患または障害の処置のための医薬の製造における、請求項1および2のいずれか一項に記載の化合物、もしくはその同位体、立体異性体、互変異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩の使用。
【請求項7】
認知障害が、アルツハイマー病の認知症、パーキンソン病の認知症、ハンチントン病の認知症、ダウン症候群に関連する認知症、トゥレット症候群に関連する認知症、閉経後に関連する認知症、前頭側頭型認知症、レヴィー小体認知症、血管性認知症、HIVの認知症、クロイツフェルト-ヤコブ病の認知症、物質-誘発性の持続型認知症、ピック病の認知症、統合失調症の認知症、老人性認知症、および一般の病状における認知症からなる群から選択される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
請求項1から2のいずれか一項に記載の化合物、もしくはその同位体、立体異性体、互変異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩と、アセチルコリンエステラーゼ阻害物質およびNMDA受容体アンタゴニストから選択される一つまたはそれ以上の治療物質とを含む医薬組成物。
【請求項9】
アセチルコリンエステラーゼ阻害物質が、ドネペジル、リバスチグミン、タクリンおよびガランタミン、またはそれらの薬学的に許容できる塩からなる群から選択される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
NMDA受容体アンタゴニストが、メマンチンまたはその薬学的に許容できる塩である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
患者の認知障害、アルツハイマー病、統合失調症、痛みまたは睡眠障害の処置に使用するための、請求項8に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ムスカリンM1受容体陽性アロステリックモジュレーター(M1 PAMs)である式(I)で示される化合物、もしくはその同位体、立体異性体、または薬学的に許容できる塩に関する。本発明にはまた、そのような化合物の調製方法、そのような化合物を含む医薬組成物、およびそれらの使用について記載されている。
【背景技術】
【0002】
Gタンパク質共役受容体(GPCRs)のクラスAファミリーに属するムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChRs)は、全身に広く発現している。現在までのところ、内在性の神経伝達物質アセチルコリン(ACh)に反応する、M1からM5と称される五つのサブタイプが同定されている。それらは、中枢神経系および末梢神経系における認知機能を含む多くの重要な機能活性を調節するうえで重要な役割を果たしている。M1、M3およびM5は、Gqと共役し、M2およびM4は、Gi/oを介して下流のシグナル経路と関連するエフェクター・システムと共役する(Critical Reviews in Neurobiology, 1996, 10, 69-99; Pharmacology & Therapeutics, 2008, 117, 232-243)。M2およびM3は、末梢において高度に発現し、胃腸(GI)運動および唾液分泌のような副交感神経の反応に関与することが知られている(Life Sciences, 1993, 52, 441-448)。M1ムスカリン受容体は、認知に関与する皮質、海馬および偏桃体のような脳領域において主に発現しており、したがって、M1受容体を選択的に活性化すると、認知能力を改善することが期待される(Annals of Neurology, 2003, 54, 144 - 146)。
【0003】
M1およびM4 サブタイプに対して相応の選択性を有するムスカリン性アセチルコリン受容体アゴニストであるキサノメリン(Xanomeline)は、アルツハイマー病(AD)の臨床試験において認知に対して有意な効果を示したが、胃腸における副作用によって高い脱落率を示す臨床試験となった(Alzheimer Disease and Associated Disorders, 1998, 12(4), 304-312)。ムスカリン受容体サブタイプのオルソステリックなアセチルコリンリガンド結合部位では、ムスカリン受容体サブタイプ間の保存の程度が高く、これがM1選択的アゴニストの同定を困難にしている。
【0004】
この選択性および安全性の問題を回避するための代替アプローチは、保存性が比較的低いアロステリック結合部位において作用するM1 PAMを開発することからなる。Merck社は、M1 PAMであるPQCA(1-{[4-シアノ-4-(ピリジン-2-イル)-ピペリジン-1-イル]メチル}-4-オキソ-4H-キノリジン-3-カルボン酸)の開発を報告した。この化合物は、M1に対して他のムスカリン受容体サブタイプと比べて選択性が高く、認知に対する幾つかの前臨床モデル(Psychopharmacology, 2013, 225(1), 21-30)において有効であることが見出されており、それは、認知を改善するために必要な最小有効量からその5倍のマージン以下の量で胃腸の副作用を示さなかった。前臨床研究では、M1活生化によって脳における神経伝達物質アセチルコリン濃度が増加することが実証された。さらに、M1活生化は、APPプロセシングを非アミロイド形成性α-セクレターゼ経路にシフトさせることおよびタウ過剰リン酸化を減少させることの両方によって、ADに対しての疾患調節療法としての可能性がある。M1 受容体における陽性アロステリックモジュレーターは、インビトロにおいてsAPPαの生成を増強させることが実証されている(The Journal of Neuroscience, 2009, 29, 14271-14286)。したがって、M1 PAMは、ADおよび統合失調症における認知障害の症候性および疾患調節性処置の両方を標的とするアプローチを提供する。
【0005】
WO2016172547、WO2015028483、WO2011062853およびUS2015094328には、いくつかのM1 PAM化合物が開示されている。現在まで、文献上いくつかのM1 PAMが開示されているが、M1 PAMとして作用する医薬品は未だに上市されていない。
【0006】
従来、M1 PAM化合物がCNS関連疾患の処置に有用であると開示されているが、低い脳透過性や、唾液分泌亢進、下痢および嘔吐のようなコリン作動性の副作用の問題がある。したがって、CNS関連障害を処置するための、脳透過性が良好であり、かつコリン作動性の副作用が無い、新たなM1 PAMを発見し、かつ開発する、未だ満たされない医療上の必要性(アンメットメディカルニーズ)および余地がある。
【発明の概要】
【0007】
第1の態様では、本発明は、式(I)
【化1】
(I)
[式中、R
1は、-(C
6-10)-アリール、-(C
5-10)-ヘテロアリールまたは-(C
5-10)-ヘテロシクリルであり、これらはいずれも、ハロゲン、-OH、-O-(C
1-6)-アルキル、-S-(C
1-6)-アルキル、-N(CH
3)
2、-(C
1-6)-アルキル、-(C
3-6)-シクロアルキル、ハロ(C
1-6)-アルキル、-NH
2、-CNおよびR
1aの中から選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがあり;
【0008】
R1aは、-(C6-10)-アリールまたは-(C5-10)-ヘテロアリールであり、これらはいずれも、ハロゲン、-OH、-NH2、-CN、-O-(C1-6)-アルキル、-S-(C1-6)-アルキル、-(C1-6)-アルキルおよび-(C3-6)-シクロアルキルからなる群から選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがあり;
A1は、CH2またはCHFであり;
R2は、水素またはOHであり;
【0009】
環Aは、
【化2】
であり;
【化3】
は、結合点を表し;
W
1は、独立してC-FまたはNから選択され;
W
2は、独立してC-FまたはNから選択され;
W
3は、独立してC-FまたはNから選択され;
R
aは、水素、ハロゲン、-OH、-(C
1-6)-アルキル、-O-(C
1-6)-アルキルまたはハロ(C
1-6)-アルキルであり;
R
bは、水素、ハロゲン、-OH、-(C
1-6)-アルキル、-O-(C
1-6)-アルキルまたはハロ(C
1-6)-アルキルであり;
R
cは、水素、ハロゲン、-OH、-(C
1-6)-アルキル、-O-(C
1-6)-アルキルまたはハロ(C
1-6)-アルキルであり;
Xは、CH
2、OまたはNHであり;そして、
Yは、CH
2、OまたはNHである]
で示される化合物、
もしくはその同位体、立体異性体、互変異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩である、M1 PAMに関する。
【0010】
別の態様では、本発明は、式(I)で示される化合物、もしくはその立体異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩の調製方法に関する。
【0011】
さらに別の態様では、本発明は、治療的に有効な量の少なくとも一つの式(I)で示される化合物、もしくはその立体異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩、および製薬的に許容できる賦形剤または担体を含む医薬組成物に関する。
【0012】
さらに別の態様では、本発明は、アセチルコリンエステラーゼ阻害物質およびNMDA受容体アンタゴニストから選択される一つまたはそれ以上の他の治療物質と組み合わされた、式(I)で示される化合物、もしくはその立体異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩に関する。
【0013】
さらに別の態様では、本発明は、ムスカリンM1受容体陽性アロステリックモジュレーターとして使用するための、式(I)で示される化合物、もしくはその立体異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩に関する。
【0014】
さらに別の態様では、本発明は、認知、痛みまたは睡眠障害から選択される疾患または障害の処置に使用するための、式(I)で示される化合物、もしくはその立体異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩に関する。
【0015】
さらに別の態様では、本発明は、アルツハイマー病、統合失調症または不眠症から選択される疾患または障害の処置に使用するための、式(I)で示される化合物、もしくはその立体異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩に関する。
【0016】
さらに別の態様では、本発明は、ムスカリンM1受容体に関連する疾患または障害を処置するための方法であって、それを必要とする患者に、治療的に有効な量の式(I)で示される化合物、もしくはその立体異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩を投与することを含む方法に関する。
【0017】
さらに別の態様では、本発明は、ムスカリンM1受容体に関連する疾患または障害を処置するための医薬の製造のための、式(I)で示される化合物、もしくはその立体異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩の使用に関する。
【0018】
さらに別の態様では、本発明は、ムスカリンM1受容体の陽性アロステリックモジュレーション(陽性アロステリック調節)に使用するための、式(I)で示される化合物、もしくはその立体異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】海馬のシータ振動に対する、ドネペジルと組み合わせた試験化合物(実施例32)の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
別に明記しない限り、明細書および特許請求の範囲に用いられる以下の用語は、次に示す意味を有する。
【0021】
本明細書で用いられる用語「(C1-6)-アルキル」とは、1から6個の炭素原子を含む分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素を意味する。(C1-6)-アルキルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルがある。好ましくは、(C1-6)-アルキルは、メチル、エチルまたはイソプロピルである。
【0022】
本明細書で用いられる用語「ハロゲン」または「ハロ」とは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。好ましくは、ハロゲンは、フッ素、塩素または臭素である。
【0023】
本明細書で用いられる用語「ハロ(C1-6)-アルキル」とは、同一または異なる炭素原子の一つまたはそれ以上の水素が同一または異なるハロゲンによって置換されている上記に定義されている(C1-6)-アルキルを意味する。ハロ(C1-6)-アルキルの例としては、フルオロメチル、クロロメチル、フルオロエチル、ジフルオロメチル、ジクロロメチル、トリフルオロメチル、ジフルオロエチル等がある。
【0024】
本明細書で用いられる用語「(C3-6)-シクロアルキル」とは、3から6個の炭素原子を含む飽和単環式炭化水素環を意味する。(C3-6)-シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルがある。
【0025】
本明細書で用いられる用語「(C6-10)-アリール」とは、6から10個の炭素原子を含む芳香族炭化水素環を意味する。(C6-10)-アリール基の例としては、フェニルまたはナフチルがある。
【0026】
本明細書で用いられる用語「(C5-10)-ヘテロアリール」とは、5から10個の原子を含む芳香族の単環式または芳香族の二環式ヘテロ環系を意味する。(C5-10)-ヘテロアリール基の例としては、1,2,4-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル、フリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、ピロリル、ピラゾリル、チアゾリル、チエニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゼピニル、ベンゾオキサジノニル、ベンゾオキサゾロニル、ベンゾオキサゾリル、イミダゾピリジニル、チエノピリジニル、フロピリジニル、ピロロピリジニル、ピラゾロピリジニル、オキサゾロピリジニル、チアゾロピリジニル、イミダゾピラジニル、イミダゾピリミジニル、チエノピリミジニル、フロピリミジニル、ピロロピリミジニル、ピラゾロピリミジニル、オキサゾロピリミジニル、チアゾロピリミジニル、ピラゾロトリアジニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、およびそれらのN-オキシドがある。
【0027】
本明細書で用いられる用語「(C5-10)-ヘテロシクリル」とは、5から10個の原子を含む非芳香族単環式または非芳香族二環式ヘテロ環系を意味する。(C5-10)-ヘテロシクリル基の例としては、ピペリジニル、ピペラジニル、ジヒドロベンゾフラン、ジヒドロベンゾチオフェン、ジヒドロインドール、テトラヒドロキノリンおよびテトラヒドロイソキノリンなどがあるが、これらに限定されない。
【0028】
「治療的に有効な量」という用語は、(i)本明細書に記載されている具体的な疾患、症状または障害を処置する、(ii)同じく具体的な疾患、症状または障害の一つまたはそれ以上の兆候を消去する、または(iii)同じく具体的な疾患、症状または障害の一つまたはそれ以上の兆候の発症を遅延させる、本発明化合物の量として定義される。
【0029】
本明細書で用いられる用語「同位体」は、式(I)で示される化合物の一つまたはそれ以上の原子が、そのそれぞれの同位体元素によって置換されている、式(I)で示される化合物を意味する。例えば、水素の同位体元素には、2H(重水素)および3H(トリチウム)がある。
【0030】
本明細書で用いられる用語「立体異性体」は、式(I)で示される化合物とは、それらの原子の空間的配置が異なっているその異性体を意味する。本明細書に開示している化合物は、単一の立体異性体、ラセミ体、ならびに/またはエナンチオマー(鏡像異性体)および/もしくはジアステレオマーの混合物として存在することができる。このような単一の立体異性体、ラセミ体およびそれらの混合物はすべて、本発明の範囲内に含まれている。
【0031】
本明細書で用いられる用語「薬学的に許容できる塩」とは、活性化合物、すなわち式(I)で示される化合物の塩を意味し、このような塩は、本明細書に記載されている化合物に見出される特定の置換基に応じて、適切な酸または酸誘導体との反応によって調製される。
【0032】
本明細書で用いられる用語「認知障害」とは、主に学習、記憶、認識および問題解決に影響を及ぼす一群のメンタルヘルス障害を意味し、それは、記憶喪失、認知症および精神錯乱を含む。認知障害は、疾患、障害、病気または毒によって発生することがある。ここに、好ましくは、認知障害は認知症である。認知症の例には、アルツハイマー病の認知症、パーキンソン病の認知症、ハンチントン病の認知症、ダウン症候群に関連する認知症、トゥレット症候群に関連する認知症、閉経後に関連する認知症、前頭側頭型認知症、レヴィー小体認知症、血管性認知症、HIVの認知症、クロイツフェルト-ヤコブ病の認知症、物質-誘発性の持続型認知症、ピック病の認知症、統合失調症の認知症、老人性認知症、および一般の病状における認知症が含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
本明細書で用いられる用語「患者」とは、動物を意味する。好ましくは、用語「患者」は、哺乳動物を意味する。用語「哺乳動物」は、マウス、ラット、イヌ、ウサギ、ブタ、サル、ウマ、ハト、アフリカツメガエル、ゼブラフィッシュ、モルモットおよびヒトなどの動物を含む。好ましくは、患者はヒトである。
【0034】
(実施の態様)
本発明は、式(I)の化合物として説明される全ての化合物を制限なしに包含するが、本発明の好ましい態様および要素を、本明細書中、以下の実施の態様として説明しておく。
【0035】
一実施態様では、本発明は、式(I):
[式中、
環Aは、
【化4】
であり;
ここに、W
1、W
2、W
3、R
a、R
bおよびR
cは、第1の態様で定義された通りである]
で示される化合物;もしくはその同位体、立体異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩に関する。
【0036】
一実施態様では、本発明は、式(I):
[式中、
環Aは、
【化5】
であり;
ここに、W
1およびR
aは、第1の態様で定義された通りである]
で示される化合物;もしくはその同位体、立体異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩に関する。
【0037】
別の実施態様では、本発明は、式(I):
[式中、
環Aは、
【化6】
であり;
ここに、W
2およびR
bは、第1の態様で定義された通りである]
で示される化合物;もしくはその同位体、立体異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩に関する。
【0038】
別の実施態様では、本発明は、式(I):
[式中、
環Aは、
【化7】
であり;
ここに、W
3およびR
cは、第1の態様で定義された通りである]
で示される化合物;もしくはその同位体、立体異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩に関する。
【0039】
別の実施態様では、本発明は、式(I)[式中、R1は、-(C6-10)-アリールまたは-(C5-10)-ヘテロアリールであり、これらはいずれも、ハロゲン、-OH、-O-(C1-6)-アルキル、-S-(C1-6)-アルキル、-N(CH3)2、-(C1-6)-アルキル、-(C3-6)-シクロアルキル、ハロ(C1-6)-アルキル、-NH2および-CNから選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがある]で示される化合物;もしくはその同位体、立体異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩に関する。
【0040】
別の実施態様では、本発明は、式(I)[式中、R1は、-(C6-10)-アリールまたは-(C5-10)-ヘテロアリールであり、これらはいずれも、一つまたはそれ以上のR1aによって置換され、且つハロゲン、-OH、-O-(C1-6)-アルキル、-S-(C1-6)-アルキル、-N(CH3)2、-(C1-6)-アルキル、-(C3-6)-シクロアルキル、ハロ(C1-6)-アルキル、-NH2および-CNから選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがある]で示される化合物;もしくはその同位体、立体異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩に関する。
ここに、R1aは、第1の態様で定義された通りであり、もしくはその同位体、立体異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩。
【0041】
別の実施態様では、本発明は、式(I)[式中、R1は、ハロゲン、-OH、-O-(C1-6)-アルキル、-S-(C1-6)-アルキル、-N(CH3)2、-(C1-6)-アルキル、-(C3-6)-シクロアルキル、ハロ(C1-6)-アルキル、-NH2および-CNから選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがある-(C6-10)-アリールである]で示される化合物;もしくはその同位体、立体異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩に関する。
【0042】
別の実施態様では、本発明は、式(I)[式中、R1は、ハロゲン、-OH、-O-(C1-6)-アルキル、-S-(C1-6)-アルキル、-N(CH3)2、-(C1-6)-アルキル、-(C3-6)-シクロアルキル、ハロ(C1-6)-アルキル、-NH2および-CNから選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがある-(C5-10)-ヘテロアリールである]で示される化合物;もしくはその同位体、立体異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩に関する。
【0043】
別の実施態様では、本発明は、式(I)[式中、R1は、ハロゲン、-OH、-O-(C1-6)-アルキル、-S-(C1-6)-アルキル、-N(CH3)2、-(C1-6)-アルキル、-(C3-6)-シクロアルキル、ハロ(C1-6)-アルキル、-NH2および-CNから選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがある-(C5-10)-ヘテロシクリルである]で示される化合物;もしくはその同位体、立体異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩に関する。
【0044】
別の実施態様では、本発明は、式(I)[式中、R1は、一つまたはそれ以上の、第1の態様で定義されたR1aによって置換されている-(C6-10)-アリールである]で示される化合物;もしくはその同位体、立体異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩に関する。
【0045】
別の実施態様では、本発明は、式(I)[式中、R1は、一つまたはそれ以上の、第1の態様で定義されたR1aによって置換されている-(C5-10)-ヘテロアリールである]で示される化合物;もしくはその同位体、立体異性体、または薬学的に許容できるそれらの塩に関する。
【0046】
別の実施態様では、本発明の好ましい化合物は、
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(4-ブロモベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(5-ブロモ-2-フルオロベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(4-ブロモ-3-フルオロベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-5-イルメチル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2-ブロモ-ピリジン-5-イルメチル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(3-メトキシベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2,4-ジフルオロベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(4-フルオロベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2,3-ジフルオロベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(3-フルオロ-4-メトキシベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
【0047】
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2-クロロ-ピリジン-4-イルメチル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(4-フルオロ-3-メトキシベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2-フルオロベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2-フルオロ-4-メトキシベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(3,4-ジフルオロベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2-クロロ-ピリジン-5-イルメチル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(テトラヒドロピラン-4-イル)-5-(2-クロロピリジン-5-イルメチル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2-フルオロ-3-メトキシベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(3-フルオロベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(4-メトキシベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
【0048】
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(4-ピラゾール-1-イルベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(テトラヒドロピラン-4-イル)-5-(4-ピラゾール-1-イルベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(4-チアゾール-4-イルベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2-ブロモ-4-フルオロベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2,3-ジフルオロ-4-ブロモベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(3-ブロモ-4-フルオロベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(3-ブロモベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2-クロロピリジン-3-イルメチル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(2-ブロモピリジン-4-イルメチル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(3-ヒドロキシテトラヒドロピラン-4-イル)-5-(3-フルオロベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
【0049】
N-(3-ヒドロキシテトラヒドロピラン-4-イル)-5-(4-ブロモベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-[3-フルオロ-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-[2-フルオロ-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-[6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ピリジン-3-イルメチル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
実施例36から40のIUPAC名;N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-[2,3-ジフルオロ-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-[4-フルオロ-3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-[3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(3-ヒドロキシテトラヒドロピラン-4-イル)-5-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-[2-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ピリジン-4-イルメチル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド;
【0050】
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-3-(4-ブロモベンジル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-3-ベンジル-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-3-(2-クロロピリジン-4-イルメチル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-3-(4-メトキシベンジル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-3-(4-チアゾール-4-イルベンジル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド;
N-(3-ヒドロキシテトラヒドロピラン-4-イル)-3-(2-クロロピリジン-4-イルメチル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド;
N-(3-ヒドロキシテトラヒドロピラン-4-イル)-3-(4-メトキシベンジル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル]-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド;
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-3-(4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド;
N-(3-ヒドロキシテトラヒドロピラン-4-イル)-3-(4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド;
【0051】
N-(テトラヒドロピラン-4-イル)-3-(4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド;および
N-(4-ヒドロキシテトラヒドロピラン-3-イル)-3-(4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミドからなる群から選択される化合物;
またはそれらの薬学的に許容できる塩である。
【0052】
別の実施態様では、本発明は、本明細書に記載されている式(I)で示される化合物の調製方法に関する。
【0053】
実験操作:
反応式1は、式(I)で示される化合物の一般的な調製方法[ここに、Tは-(C
1-6)-アルキルであり、A
1はCH
2であり;環A、R
1、R
1a、XおよびYは、上記で定義した通りである]を示している。
【化8】
【0054】
工程1:式2で示される化合物の調製
式1で示される化合物を、25℃~30℃の範囲の温度条件下、メタノール、エタノールのような溶媒中で、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤を用いて、1~2時間還元し、化合物2で示される化合物を得る。
【0055】
工程2:式3で示される化合物の調製
式2で示される化合物を、-5℃~5℃の範囲の温度条件下、トリフルオロ酢酸存在下で、トリエチルシランなどの還元剤を用いて1~2時間還元し、化合物3で示される化合物を得る。
【0056】
工程3:式4で示される化合物の調製
式3で示される化合物を、水およびメタノールのような溶媒の混合物中で、水酸化ナトリウムを用いて2~4時間還流し、式4で示される化合物に加水分解させる。
【0057】
工程4:式(I)で示される化合物の調製
式4で示される化合物を、室温条件下、DMF、THF、ジクロロメタンまたは1,4-ジオキサンの中から選択される溶媒中、カップリング試薬であるHATU、DCCまたはEDC、および塩基、DIPEAの存在下で、一晩、式10:
【化9】
10
で示されるアミンとカップリングさせ、式(I)[式中、R1は、(C
6-10)-アリールである]で示される化合物を得る。
【0058】
工程5:式(I)[式中、R
1
は、R
1a
によって置換されている]で示される化合物の調製
工程4で得られる式(I)の化合物を、90℃~110℃の範囲の温度条件下、1,4-ジオキサンのような溶媒中、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリド・ジクロロメタン複合体(1,1'-Bis(diphenylphosphino)ferrocene-palladium(II)dichloride dichloromethane complex)および塩基性炭酸カリウムの存在下、R1a-B(OH)2と2~4時間反応させ、式(I)[式中、R1は、R1aによって置換されている]で示される化合物を得る。
【0059】
工程6:式3[式中、R
1
は、R
1a
によって置換されている]で示される化合物の調製
工程2で得られる式3の化合物を、90℃~110℃の範囲の温度条件下で、1,4-ジオキサンのような溶媒中、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリド・ジクロロメタン複合体および塩基性炭酸カリウムの存在下で、R1a-B(OH)2と2~4時間反応させ、式3[式中、R1は、R1aによって置換されている]で示される化合物を得る。
【0060】
工程7:式4で示される化合物の調製
工程6で得られる式3の化合物を、水およびメタノールのような溶媒の混合物中、水酸化ナトリウムを用いて2~4時間還流し、式4で示される化合物に加水分解させる。
【0061】
工程8:式(I)で示される化合物の調製
工程7で得られる式4の化合物を、室温条件下、DMF、THF、ジクロロメタンまたは1,4-ジオキサンの中から選択される溶媒中、カップリング試薬であるHATU、DCCまたはEDC、および塩基、DIPEAの存在下で、一晩、式10:
【化10】
で示されるアミンとカップリングさせ、式(I)[式中、R1は、(C
6-10)-アリールである]で示される化合物を得る。
【0062】
式(I)で示される化合物の薬学的に許容できる塩の調製
式(I)で示される化合物は、適切な酸または酸誘導体との反応によって、薬学的に許容できる塩に変換することができる。適当な薬学的に許容できる塩は、当業者には明らかである。前記塩は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸およびリン酸、または有機酸、例えばシュウ酸、コハク酸、マレイン酸、酢酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、安息香酸、p-トルイル酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸またはナフタレンスルホン酸を用いて形成される。
【0063】
反応式2は、式(I)で示される化合物の代替の一般的な調製方法[ここに、Tは-(C
1-6)-アルキルであり、A
1はCH
2であり;環A、R
1、R
1a、R
2、XおよびYは、上記で定義した通りである]を示している。
【化11】
【0064】
工程1:式6で示される化合物の調製
式6で示される化合物は、式5で示される化合物を、25℃~30℃の範囲の温度条件下、酢酸エチルから選択される溶媒中、式A:
【化12】
[式中、R
1は、上記で定義した通りである]で示される化合物と、14~18時間反応させることによって得られる。
【0065】
工程2:式1で示される化合物の調製
式6で示される化合物を、25℃~30℃の範囲の温度条件下、THF、DCMおよび酢酸エチルの中から選択される溶媒中、炭酸カリウムから選択される塩基の存在下で、式7で示される化合物と、14~18時間反応させ、式1で示される化合物を得る。
【0066】
工程3:式9で示される化合物の調製
式1で示される化合物を、水およびメタノールのような溶媒の混合物中で、水酸化ナトリウムを用いて2~4時間還流し、式9で示される化合物に加水分解させる。
【0067】
工程4:式11で示される化合物の調製
工程3で得られる式9の化合物を、室温条件下、DMF、THF、ジクロロメタンまたは1,4-ジオキサンの中から選択される溶媒中、カップリング試薬であるHATU、DCCまたはEDC、および塩基、DIPEAの存在下で、一晩、式10:
【化13】
で示されるアミンとカップリングさせ、式11で示される化合物を得る。
【0068】
工程5:式12で示される化合物の調製
式11で示される化合物を、25℃~30℃の範囲の温度条件下、メタノール、エタノールのような溶媒中で、水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤を用いて1~2時間還元させ、式12で示される化合物を得る。
【0069】
工程6:式(I)[式中、A
1
はCH
2
である]で示される化合物の調製
式12で示される化合物を、-5℃~5℃の範囲の温度条件下、トリフルオロ酢酸の存在下、トリエチルシランのような還元剤を用いて1~2時間還元させ、式(I)[式中、A1はCH2である]で示される化合物を得る。
【0070】
工程7:式(I)[式中、R
1
は、R
1a
によって置換されている]で示される化合物の調製
工程6で得られる式(I)で示される化合物を、90℃~110℃の範囲の温度条件下、1,4-ジオキサンのような溶媒中、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリド・ジクロロメタン複合体および塩基性炭酸カリウムの存在下で、R1a-B(OH)2と2~4時間反応させ、式(I)[式中、R1は、R1aによって置換されている]で示される化合物を得る。
【0071】
式(I)で示される化合物の薬学的に許容できる塩の調製
式(I)で示される化合物は、適切な酸または酸誘導体との反応によって、薬学的に許容できる塩に変換することができる。適当な薬学的に許容できる塩は、当業者には明らかである。前記塩は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸またはリン酸、または有機酸、例えばシュウ酸、コハク酸、マレイン酸、酢酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、安息香酸、p-トルイル酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸またはナフタレンスルホン酸を用いて形成される。
【0072】
式(I)で示される化合物の立体異性体の調製
式(I)で示される化合物の立体異性体は、以下に示す一つまたはそれ以上の通常の方法によって調製することができる。
a. 一つまたはそれ以上の試薬を、それらの光学活性体で用いることができる。
b. 光学的に純粋な触媒、または金属触媒とともに不斉配位子を、還元過程において、用いることができる。前記金属触媒は、ロジウム(rhodium)、ルテニウム(ruthenium)、インジウム(indium)等でよい。前記不斉配位子は、好ましくは不斉ホスフィン(chiral phosphine)である。
【0073】
c. 立体異性体の混合物は、キラル酸またはキラルアミンまたはキラルアミノアルコール、またはキラルアミノ酸でジアステレオマー塩を形成するような通常の方法によって、光学分割することができる。次いで、得られたジアステレオマーの混合物は、分別再結晶、クロマトグラフィー等の方法によって分離することができ、その後、分割した材料/塩から光学活性生成物を単離させる工程を追加的に行う。
d. 立体異性体の混合物は、キラル酸またはキラル塩基で形成されたジアステレオマー塩を光学分割する、微生物分解のような通常の方法によって分割することができる。用いることができるキラル酸は、酒石酸、マンデル酸、乳酸、カンファースルホン酸、アミノ酸等でよい。用いることができるキラル塩基は、キナアルカロイド、ブルシン(brucine)、またはリジン、アルギニンなどの塩基性アミノ酸でよい。
【0074】
別の実施態様では、適切な薬学的に許容できる塩には、塩酸塩、臭化水素酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩およびコハク酸塩を含む。
【0075】
本発明の別の実施態様では、式(I)で示される化合物は、ムスカリンM1陽性アロステリックモジュレーターである。
【0076】
別の実施態様では、本発明は、認知障害、統合失調症、痛みまたは睡眠障害から選択される疾患または障害を処置する方法であって、それを必要とする患者に、治療的に有効な量の式(I)で示される化合物またはその薬学的に許容できる塩を投与することを含む方法に関する。
【0077】
別の実施態様では、本発明は、アルツハイマー病を処置する方法であって、それを必要とする患者に、治療的に有効な量の式(I)で示される化合物またはその薬学的に許容できる塩を投与することを含む方法に関する。
【0078】
別の実施態様では、本発明は、軽度のアルツハイマー病、中度のアルツハイマー病、重度のアルツハイマー病、軽度から中度のアルツハイマー病または中度から重度アルツハイマー病を含むアルツハイマー病を処置する方法であって、それを必要とする患者に、治療的に有効な量の式(I)で示される化合物またはその薬学的に許容できる塩を投与することを含む方法に関する。
【0079】
さらに別の態様では、本発明は、認知障害、統合失調症、痛みまたは睡眠障害から選択される疾患または障害の処置に使用するための、式(I)で示される化合物に関する。
【0080】
さらに別の態様では、本発明は、認知障害、統合失調症、痛みまたは睡眠障害から選択される疾患または障害を処置するための医薬の製造における、式(I)で示される化合物の使用に関する。
【0081】
さらに別の態様では、本発明は、認知障害から選択される疾患または障害を処置するための医薬の製造における、式(I)で示される化合物の使用に関する。
【0082】
さらに別の態様では、アルツハイマー病を処置するための医薬の製造における、式(I)で示される化合物の使用に関する。
【0083】
さらに別の態様では、本発明は、式(I)で示される化合物と、一つまたはそれ以上の他の治療物質であるアセチルコリンエステラーゼ阻害物質およびNMDA受容体アンタゴニストとの組み合わせに関する。
【0084】
別の態様では、本発明の式(I)で示される化合物は、本発明の式(I)の化合物が有用である疾患または障害を処置するうえで、一つまたはそれ以上の他の治療物質と組み合わせて使用することができる。本発明の化合物の組み合わせの例としては、アルツハイマー病を処置するための治療物質、例えばガランタミン、リバスチグミン、ドネペジルおよびタクリンのようなアセチルコリンエステラーゼ阻害物質;およびメマンチンのようなNMDA受容体アンタゴニストとの組み合わせを挙げることができる。
【0085】
さらに別の実施態様では、本発明は、式(I)で示される化合物と、ガランタミン、リバスチグミン、ドネペジル、タクリンおよびメマンチンの中から選択される少なくとも一つとの組み合わせに関する。
【0086】
さらに別の実施態様では、本発明は、認知障害、統合失調症、痛みおよび睡眠障害の処置に使用するための、式(I)で示される化合物と、一つまたはそれ以上の他の治療物質であるアセチルコリンエステラーゼ阻害物質およびNMDA受容体アンタゴニストとの組み合わせに関する。
【0087】
さらに別の実施態様では、本発明は、アルツハイマー病の処置に使用するための、式(I)で示される化合物と、一つまたはそれ以上の他の治療物質であるアセチルコリンエステラーゼ阻害物質およびNMDA受容体アンタゴニストとの組み合わせに関する。
【0088】
さらに別の実施態様では、本発明は、式(I)で示される化合物の医薬組成物に関する。式(I)で示される化合物、もしくはその立体異性体および薬学的に許容できるそれらの塩を治療に使用するには、通常、それらは標準的な製薬プラクティスによって医薬組成物に製剤化される。
【0089】
本発明の医薬組成物は、一つまたはそれ以上の製薬的に許容できる賦形剤を用いて、通常の方法によって製剤化することができる。製薬的に許容できる賦形剤は、希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、滑剤、ポリマー、コーティング剤、溶媒、共溶媒、保存剤、湿潤剤、増粘剤、消泡剤、甘味剤、香料、抗酸化剤、着色剤、溶解剤、可塑剤、分散剤等である。賦形剤は、微結晶セルロース、マンニトール、ラクトース、アルファ化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、トーモロコシデンプン(corn starch)またはその誘導体、ポビドン、クロスポビドン、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセリン(glyceryl palmitostearate)、タルク、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸または水添植物油、アラビアガム、マグネシア、グルコース、脂肪、ワックス、天然油もしくは硬化油、水、生理食塩水またはアルコール、例えばエタノール、プロパノールもしくはグリセリン、グルコース溶液もしくはマンニトール溶液等のような糖液、または多数の賦形剤の混合物の中から選択される。
【0090】
さらに別の態様では、本発明の活性化合物は、ピル、錠剤、コーティング錠、カプセル、粉末、顆粒、ペレット、パッチ、インプラント、フィルム、液剤、半固剤、ゲル、エアロゾル、乳剤、エリキシル剤等の形態に製剤化することができる。このような医薬組成物およびその製造方法は周知である。
【0091】
さらに別の態様では、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物またはその薬学的に許容できる塩を、1~90重量%、5~75重量%および10~60重量%含む。医薬組成物中の活性化合物またはその薬学的に許容できる塩の量は、約1mg~約500mg、または約5mg~約400mg、または約5mg~約250mgまたは約7mg~約150mgの範囲、または1mg~500mgのより広い範囲の任意の範囲にあってもよい。
【0092】
活性化合物の用量は、患者の年齢および体重、処置される疾患の性質および重症度のような要素および他の要素によって異なることがある。したがって、一般式(I)で示される化合物、その立体異性体および薬学的に許容できる塩の薬理学的有効量に関する記述は、これらの要素を意味する。
【0093】
以下の略語を、本明細書において用いている。
AMP:アデノシン一リン酸
AUC:曲線下面積
Cmax:最大濃度
CDCl3:重水素化クロロホルム
DCM:ジクロロメタン
DCC:N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
EC50:50%効果濃度
EDC:二塩化エチレン
EtOAc:酢酸エチル
HATU:2-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩
HCl:塩酸
H2O:水
h:時間(s)
H2SO4:硫酸
K2CO3:炭酸カリウム
LC-MS/MS:液体クロマトグラフィー-質量分析/質量分析
NaBH4:水素化ホウ素ナトリウム
NaHCO3:重炭酸ナトリウム
NaOH:水酸化ナトリウム
Na2SO4:硫酸ナトリウム
NH4Cl:塩化アンモニウム
RT:室温(25~30℃)
ROA:投与経路
p.o:経口
T:温度
THF:テトラヒドロフラン
T1/2:半減期
【実施例】
【0094】
本発明の化合物を、適切な材料および条件を用いて、以下の実験手順によって調製した。以下の実施例は、単なる例示として示すものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0095】
中間体の調製:
中間体1:1-(4-ブロモフェニル)-プロパ-2-イン-1-オン(I-1)
【化14】
【0096】
工程1:1-(4-ブロモフェニル)-プロパ-2-イン-1-オールの合成
【化15】
0℃に冷却した乾燥THF(32.4mL)中、4-ブロモベンゾアルデヒド(3.0g、16.2mmol)の溶液を攪拌し、それに、エチニルマグネシウムブロミド(0.5M、34.0mL)の溶液を10分間滴下添加(滴加)した。1℃、1時間後、その反応混合物に飽和NH
4Cl水溶液を添加し、反応を停止させた。二つの相を分離し、水相をEtOAcで抽出した。有機相を一緒にし、ブライン溶液で一回洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去し、表題の化合物を得た。
収量: 3.7 g;
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3): δ 7.51 (d, J-8.4 Hz, 2H), 7.42 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 5.41 (s, 1H), 2.66 (s, 1H), 2.24 (bs, 1H); Mass (m/z): 211, 213 (M+H)
+.
【0097】
工程2:1-(4-ブロモフェニル)-プロパ-2-イン-1-オンの合成
0℃に冷却したアセトン(10.0mL)中、1-(4-ブロモフェニル)-プロパ-2-イン-1-オール(3.6g、17.3mmol)の溶液を攪拌し、それに、三酸化クロム(1.15g、11.5mmol)のH2O(3.5mL)およびH2SO4(1.0mL)の混合物中溶液を滴加した。室温で2時間攪拌した後、得られた反応混合物を水およびクロロホルムを含む分液漏斗に移した。二つの相を分離し、水相をCHCl3で抽出した。有機相を一緒にし、ブライン溶液で一回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去し、表題の化合物を得た。
収量: 3.1 g (86 %); 1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.01 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.66 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 3.44 (s, 1H); Mass (m/z): 209, 211 (M+H)+.
【0098】
上記の2つのプロトコールを行うことにより、種々の置換アリールエチニルケトン類を合成し、それをその後の反応に用いて、対応する最終M1 PAM化合物を得た。
【0099】
中間体2:1-エトキシカルボニルメチル-ピリダジン-1-イウム・ブロミド(I-2)
【化16】
0℃に冷却したEtOAc(25.0mL)中、ピリダジン(1.0g、12.5mmol)の溶液を攪拌し、それに、臭化酢酸エチル(1.54mL、13.8mmol)を滴加した。室温で16時間攪拌した後、減圧下で揮発成分を除去した。得られた固形物を、溶媒用エーテルでトリチュレートし、真空下で乾燥させ、表題の化合物を得た。
収量: 2.6 g (86%);
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 10.04 (d, 5.7 Hz, 1H), 9.73 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 8.89 (dd, J = 5.7, 7.8 Hz, 1H), 8.76 (dd, J = 5.0, 7.8 Hz, 1H), 5.97 (s, 2H), 4.28(q, 2H), 1.25 (t, J = 7.1 Hz, 3H); Mass (m/z): 167.1 (M+H)
+.
実施例1
【0100】
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(4-ブロモベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド
【化17】
【0101】
工程1:5-(4-ブロモベンゾイル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボン酸エチルの合成
0℃に冷却した乾燥THF(60.0mL)中、1-(4-ブロモフェニル)-プロパ-2-イン-1-オン(I-1)(3.1g、15.0mmol)の溶液を攪拌し、それに、K2CO3(3.53g、25.6mmol)を加え、続いて1-エトキシカルボニルメチル-ピリダジン-1-イウム・ブロミド(I-2)(3.71g、15.1mmol)を添加した。室温で16時間攪拌した後、得られた反応混合物を水およびEtOAcで希釈した。二つの相を分離し、水相をEtOAcで抽出した。有機相を一緒にし、ブライン溶液で一回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去し、粗生成物を得、それをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題の化合物を得た。
収量: 3.4 g (60%); 1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.87 (d, 9.0 Hz, 1H), 8.61 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 7.78 (s, 1H), 7.75 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.69 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.22 (dd, J = 4.4, 9.0 Hz, 1H), 4.46 (q, 2H), 1.43 (t, J = 7.1 Hz, 3H); Mass (m/z): 373.0, 375.0 (M+H)+.
【0102】
工程2:5-[(4-ブロモフェニル)-ヒドロキシメチル]ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボン酸エチルの合成
エタノール(45.0mL)中、上記の工程で得られた5-(4-ブロモベンゾイル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボン酸エチル(3.4g、9.1mmol)の溶液を攪拌し、それにNaBH4(1.04g、27.5mmol)を0℃で添加した。室温で2時間攪拌した後、得られた反応混合物を水およびCHCl3で希釈した。二つの相を分離し、水相をCHCl3で抽出した。有機相を一緒にし、ブライン溶液で一回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去し、表題の化合物を得た。
収量: 3.4 g (100%); 1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.37 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 7.92 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 7.52 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.35 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.31 (s, 1H), 6.79 (dd, J = 4.4, 9.0 Hz, 1H), 6.12 (d, J = 3.0 Hz, 1H), 4.42 (q, 2H), 2.29 (d, J = 3.0 Hz, 1H), 1.4 (t, J = 7.1 Hz, 3H); Mass (m/z): 374.9, 376.9 (M+H)+.
【0103】
工程3:5-(4-ブロモベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボン酸エチルの合成
トリフルオロ酢酸(7.1mL)中、上記の工程で得られた5-[(4-ブロモフェニル)-ヒドロキシメチル]ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボン酸エチル(3.4g、9.1mmol)の溶液を攪拌し、それにトリエチルシラン(3.2mL、20.3mmol)を-10℃で添加した。0℃で1時間攪拌した後、得られた反応混合物をNaHCO3の10%水溶液およびEtOAcで希釈した。二つの相を分離し、水相をCHCl3で抽出した。有機相を一緒にし、ブライン溶液で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去し、粗生成物を得、それをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題の化合物を得た。
収量: 1.96 g (59%); 1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.34 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 7.69 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.42 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.34 (s, 1H), 7.08 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 6.74 (dd, J = 4.4 Hz, 9.0 Hz, 1H), 4.43 (q, 2H), 4.05 (s, 2H), 1.41 (t, 3H); Mass (m/z): 358.8, 360.8 (M+H)+.
【0104】
工程4:5-(4-ブロモベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボン酸の合成
水およびエタノールの2:1混液(1.0mL)中、上記の工程で得られた5-(4-ブロモベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボン酸エチル(0.029g、0.08mmol)の溶液を攪拌し、それにNaOH(0.0065g、0.16mmol)を0℃で添加した。還流温度で2時間攪拌した後、得られた反応混合物を室温に冷却し、2N HClで酸性にし、DCMで抽出した。有機相を一緒にし、ブライン溶液で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去し、表題の化合物を得た。
収量: 0.034 g (100%); 1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 12.0 (bs, 1H), 8.26 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 7.81 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.53 (s, 1H), 7.42 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.08 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 6.83 (dd, J = 4.4 Hz, 9.0 Hz, 1H), 4.08 (s, 2H); Mass (m/z): 331.2, 333.3 (M+H)+.
【0105】
工程5:N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-(4-ブロモベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミドの合成
DCM(1.1mL)中、上記の工程で得られた5-(4-ブロモベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボン酸(34mg、0.1mmol)の溶液を攪拌し、それにDIPEA(0.05mL、0.3mmol)、1-アミノシクロヘキサノール塩酸塩(15.6mg、0.1mmol)およびTBTU(36.0mg、0.11mmol)を順番に0℃で添加した。室温で16時間攪拌した後、得られた反応混合物を、水およびDCMで希釈した。2つの相を分離し、水相をDCMで抽出した。有機相を一緒にし、ブライン溶液で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去し、粗生成物を得、それをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題の化合物を得た。
収量: 37.0 mg (86%); 1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.01 (d, J = 6.3 Hz, 1H), 8.18 (d, J = 4.1 Hz, 1H), 7.24 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.53 (s, 1H), 7.39 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.07 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 6.7 (dd, 4.1, 8.9 Hz, 1H), 4.11 (d, J = 3.1 Hz, 1H), 4.06 (s, 2H), 3.94-3.90 (m, 1H), 3.53-3.48 (m, 1H), 2.14-2.10 (m, 2H), 1.78-168 (m, 2H), 1.48-1.35 (m, 4H); Mass (m/z): 428.2, 430.4 (M+H)+.
【0106】
以下に示す実施例2から実施例31は、置換アリールエチニルケトン類および中間体I-2を用いて、実施例1に記載されている実験手順にいくつかの重要でない改変を加えて従うことにより、調製した。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【0107】
実施例32
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミド
【化18】
【0108】
工程1:5-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボン酸エチルの合成
1,4-ジオキサン(27.8 mL)中、実施例1の工程3で得られた5-(4-ブロモベンジル)-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボン酸エチル(1.0g、2.78mmol)の溶液を攪拌し、それに、K2CO3(0.58g、4.2mmol)、1-メチルピラゾール-4-ボロン酸(0.42g、3.3mmol)および水(5.6 mL)を順番に室温で添加した。10分間脱気した後、それに、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリド・ジクロロメタン複合体(0.22g、0.27mmol)を添加した。反応温度を100℃に昇温し、この温度で3時間攪拌した。得られた反応混合物を室温に冷却し、セライトベッドで濾過し、EtOAcで洗浄した。濾過液を一緒にし、水、続いてブライン溶液で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去し、粗生成物を得、それをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題の化合物を得た。
収量: 496.0 mg (50 %); 1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.33 (d, J = 3.0 Hz, 1H), 7.73 (s, 1H), 7.73 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 7.58 (s, 1H), 7.40 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.39 (s, 1H), 7.20 (d, J = 7.9 Hz, 2H) 6.73 (dd, J = 9.0, 4.36 Hz, 1H), 4.43 (m, 2H), 4.1 (s, 2H), 3.93 (s, 3H), 1.41 (t, 3H); Mass (m/z): 361.1 (M+H)+.
【0109】
工程2:5-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボン酸の合成
水およびエタノールの2:1比率の混液(6.0mL)中、上記の工程で得られた5-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボン酸エチル(0.49g、1.37mmol)の溶液を攪拌し、それにNaOH(0.11g、2.75mmol)を0℃で添加した。還流温度で2時間攪拌した後、得られた反応混合物を室温に冷却し、2N HClで酸性にし、DCMで抽出した。有機相を一緒にし、ブライン溶液で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去し、表題の化合物を得た。
収量: 0.49 g (100 %); 1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 12.07 (s, 1H), 8.25 (d, J = 3.5 Hz, 1H), 7.85 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.73 (s, 1H), 7.58 (s, 2H), 7.42 (d, J = 7.7 Hz, 2H), 7.2 (d, J=7.9 Hz, 2H), 6.82 (dd, J=8.9, 4.4 Hz, 1H), 4.13 (s, 2H), 3.39 (s, 3H); Mass (m/z): 333.1 (M+H)+.
【0110】
工程3:N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボキサミドの合成
DCM(6.1mL)中、上記の工程で得られた5-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル]-ピロロ[1,2-b]ピリダジン-7-カルボン酸(492mg、1.48mmol)の溶液を攪拌し、DIPEA(0.7mL、3.9mmol)、1-アミノシクロヘキサノールヒドロクロリド(225.0mg、1.48mmol)およびTBTU(533.0mg、1.62mmol)を0℃で順番に添加した。室温で16時間攪拌した後、得られた反応混合物を水およびDCMで希釈した。2つの相を分離し、水相をDCMで抽出した。有機相を一緒にし、ブライン溶液で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去し、粗生成物を得、それをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題の化合物を得た。
収量: 457.0 mg (72 %); 1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 9.03 (d, J=6.52Hz,1H), 8.17 (d, J=4.32Hz, 1H), 7.79 (d, J=8.96Hz, 1H), 7.71 (s,1H) ,7.57 (d, j=2.96Hz, 2H), 7.38 (d, J=8Hz, 2H),7.19 (d, J=7.96Hz, 2H), 6.69 (dd, J=8.96Hz, 4.4Hz, 1H), 4.19 (d, J=3.5Hz, 1H), 4.11 (s, 2H), 3.93 (s, 3H), 3.91-3.89 (m, 1H), 3.55-3.48 (m, 1H), 2.14-2.08 (m, 2H), 1.79-1.76 (m, 2H), 1.51-1.31 (m, 4H); Mass (m/z): 430.3 (M+H)+.
【0111】
以下に示す実施例33から実施例40は、実施例32に記載されている実験手順にいくつかの重要でない改変を加えて従うことにより、調製した。
【表11】
【表12】
【表13】
【0112】
実施例41
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-3-(4-ブロモベンジル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド
【化19】
【0113】
工程1:1-[2-(4-ブロモフェニル)-2-オキソ-エチル]-3-フルオロピリジニウム・ブロミドの合成
EtOAc(49.2mL)中、3-フルオロピリジン(0.8g、8.2mmol)の溶液を攪拌し、0℃に冷却し、それに、4-ブロモフェナシル・ブロミド(2.26g、8.2mmol)を添加した。室温で16時間攪拌した後、沈殿した固形物を濾過し、溶媒用エーテルで洗浄し、減圧下で乾燥させ、表題の化合物を得た。
収量: 0.85 g (35%); 1H - NMR (300 MHz, DMSO): δ 9.36 (s, 1H), 8.96 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.80 (m, 1H), 8.43 (m, 1H), 8.02 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.93 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.49 (s, 2H); Mass (m/z): 294.1, 395.9 (M+H)+.
【0114】
工程2:3-(4-ブロモベンゾイル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボン酸エチルの合成
乾燥THF(11.5mL)中、工程1で得られた1-[2-(4-ブロモフェニル)-2-オキソ-エチル]-3-フルオロピリジニウム・ブロミド(0.85g、2.8mmol)の溶液を攪拌し、それに、K2CO3(0.58g、4.2mmol)およびプロピオル酸エチル(0.31mL、3.1mmol)を添加した。室温で16時間攪拌した後、得られた反応混合物を水およびEtOAcで希釈した。二つの相を分離し、水相をEtOAcで抽出した。有機相を一緒にし、ブライン溶液で一回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去し、粗生成物を得、それをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題の化合物を得た。
収量: 0.38 g (35%); 1H - NMR (300 MHz, CDCl3): δ 9.8 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 7.80 (s, 1H), 7.73-7.65 (m, 4H),7.20-7.11 (m, 1H); 7.08-7.0 (m, 1H), 4.4 (q, 2H), 1.4 (t, J = 6.9 Hz, 3H); Mass (m/z): 390.0, 391.9 (M+H)+.
【0115】
工程3:3-(4-ブロモベンゾイル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボン酸の合成
水およびメタノールの1:1比率の0℃に冷却した混液(5.0mL)中、工程2で得られた3-(4-ブロモベンゾイル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボン酸エチル(0.2g、0.51mmol)の溶液を攪拌し、それに、NaOH(0.041g、1.02mmol)を添加した。還流温度で2時間攪拌した後、得られた反応混合物を室温に冷却し、2N HClで酸性にし、EtOAcで抽出した。有機相を一緒にし、ブライン溶液で一回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去し、表題の化合物を得た。
収量: 0.19 g (100%); 1H - NMR (300 MHz, DMSO): δ 12.5 (bs, 1H) 9.7 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 7.82 (d, J = 8.1, 2H),7.76 (d, J = 8.1, 2H) 7.65 (s, 1H), 7.55-7.45 (m,1H), 7.36-7.25 (m, 1H); Mass ( m/z): 360.0, 362.0 (M+H)+.
【0116】
工程4:N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-3-(4-ブロモベンゾイル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミドの合成
0℃に冷却したDCM(4.8mL)中、工程3で得られた3-(4-ブロモベンゾイル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボン酸(175mg、0.48mmol)の溶液を攪拌し、それに、DIPEA(0.12mL、0.72mmol)、1-アミノシクロヘキサノール塩酸塩(55.0mg、0.48mmol)およびHATU(183.0mg、0.48mmol)を順番に添加した。室温で16時間攪拌した後、得られた反応混合物を水およびDCMで希釈した。二つの相を分離し、水相をDCMで抽出した。有機相を一緒にし、ブライン溶液で一回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去し、粗生成物を得、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題の化合物を得た。
収量: 180.0 mg (85%); 1H - NMR (300 MHz, CDCl3): δ 9.84 (d, J = 6.9 Hz, 1 H), 7.89 (s, 1H), 7.71 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.67 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.18-7.10 (m, 1H), 7.05-6.95 (m, 1H), 6.58 (bs, 1H), 3.92-3.82 (m, 1H), 3.50-3.40 (m, 1H), 2.18-2.02 (m, 2H), 1.82-1.70 (m, 2 H), 1.52-1.25 (m, 4H); Mass (m/z): 459.0, 461.0 (M+H)+.
【0117】
工程5:N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-3-[(4-ブロモフェニル)ヒドロキシメチル]-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミドの合成
0℃に冷却したメタノール(7.6mL)中、工程4で得られたN-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-3-(4-ブロモベンゾイル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド(175.0mg、0.38mmol)の溶液を攪拌し、それに、NaBH4(21.0mg、0.57mmol)を添加した。室温で2時間攪拌した後、得られた反応混合物を水およびEtOAcで希釈した。二つの相を分離し、水相をEtOAcで抽出した。有機相を一緒にし、ブライン溶液で一回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去し、表題の化合物を得た。
収量: 175.0 mg (100%); 1H - NMR (300 MHz, CDCl3): δ 8.07 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 7.47-7.32 (m, 5H), 7.06 (bs, 1H), 6.78-6.67 (m, 1H), 6.63-6.53 (m, 2H), 6.13 (s, 1H), 4.38 (bs, 1H), 3.88-3.75 (m, 1H), 3.47-3.35 (m, 1H), 2.15-2.0 (m, 2H), 1.70-1.60 (m, 2H), 1.45-1.18 (m, 4H); Mass (m/z): 461.1, 463.1 (M+H)+.
【0118】
工程6:N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-3-(4-ブロモベンジル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミドの合成
-10℃に冷却したトリフルオロ酢酸(0.29mL、3.6mmol)中、工程5で得られたN-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-3-[(4-ブロモフェニル)ヒドロキシメチル]-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド(170.0mg、0.36mmol)の溶液を攪拌し、、それに、トリエチルシラン(0.12mL、0.79 mmol)を添加した。0℃で1時間攪拌した後、得られた反応混合物をNaHCO3の10%水溶液およびEtOAcで希釈した。二つの相を分離し、水相をCHCl3で抽出した。有機相を一緒にし、ブライン溶液で一回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去し、粗生成物を得、それをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題の化合物を得た。
収量: 0.9 g (54%); 1H - NMR (300 MHz, CDCl3): δ 7.51 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.43 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.23 (s, 1H), 7.03 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 6.74-6.52 (m, 3H), 4.16 (s, 2H), 3.91-3.80 (m, 1H), 3.50-3.40 (m, 1H), 2.18-2.02 (m, 2H), 1.82-1.72 (m, 2H), 1.45-1.25 (m, 4H); Mass (m/z): 445.1, 447.1 (M+H)+.
【0119】
以下に示す実施例42から実施例47は、実施例41に記載されている実験手順にいくつかの重要でない改変を加えて従うことにより、調製した。
【表14】
【表15】
【0120】
実施例48
N-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-5-[4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンジル]-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド
【化20】
室温の1,4-ジオキサン(3.0mL)中、実施例41の工程6で得られたN-(cis-1S,2S-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-3-(4-ブロモベンジル)-8-フルオロインドリジン-1-カルボキサミド(30.0mg、0.06mmol)の溶液を攪拌し、それに、Na
2CO
3(0.019g、0.18mmol)、1-メチルピラゾール-4-ボロン酸(0.008g、0.06mmol)およびH
2O(0.61mL)を順番に添加した。10分間脱気した後、それに、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリド・ジクロロメタン複合体(0.003g、0.003mmol)を添加した。反応温度を100℃に昇温し、この温度で3時間攪拌した。得られた反応混合物を室温に冷却した後、セライトベッドで濾過した。EtOAcを使用してベッドを洗浄した。濾過液を一緒にし、水、続いてブライン溶液で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去し、粗生成物を得、それをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題の化合物を得た。
収量: 8.2 mg (26%);
1H - NMR (300 MHz, CDCl
3): δ 7.72 (s, 1H), 7.57 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.42 (s, 1H), 7.40 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.23 (s, 1H), 7.15 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 6.74-6.52 (m, 3H), 4.20 (s, 2H), 3.93 (s, 3H), 3.80-3.70 (m, 1H), 3.50-3.40 (m, 1H), 2.18-2.02 (m, 2H), 1.82-1.72 (m, 2H), 1.45-1.25 (m, 4H); Mass (m/z): 447.3 (M+H)
+.
【0121】
以下に示す実施例49から実施例51は、実施例48に記載されている実験手順にいくつかの重要でない改変を加えて従うことにより、調製した。
【表16】
【0122】
実施例52
ムスカリンM1受容体についてのアロステリック効能EC
50
値の測定
組換えヒトムスカリンM1受容体およびpCRE-Lucレポーター系を発現する安定的なCHO細胞株を、細胞-ベースアッセイに使用した。このアッセイは、化合物のGPCRへの結合性を測定する非放射活性ベースアプローチを提供する。この特定のアッセイでは、受容体の活性または阻害によって調節される細胞内サイクリックAMPのレベルが測定される。ここでの組換え細胞は、cAMP応答エレメントの制御下にあるルシフェラーゼ・レポーター遺伝子を有している。
【0123】
上記の細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)を含有するHams F12培地中、96ウェルの透明な底の白プレートで培養した。化合物または標準アゴニストを添加する前に、細胞を一晩、血清飢餓状態にした。試験化合物の濃度を増加させ、それらをOptiMEM培地中のEC
20のアセチルコリンのと共に、細胞に添加した。37℃、CO
2インキュベータ中、インキュベーションを4時間続けた。培地を除去し、細胞をリン酸緩衝食塩水で洗浄した。得られた細胞を細胞溶解し、ルミノメーター(Luminometer)でルシフェラーゼ活性を測定した。試験項目の各濃度における発光カウントを、アセチルコリン誘発最大応答に対して正規化し、そのデータをGraphpadソフトウェアを用いて分析した。化合物のEC
50値を、EC
20のアセチルコリンの存在下でルシフェラーゼ活性を50%まで刺激するに要する濃度として定義した。
【表17】
【0124】
実施例53
齧歯(げつし)動物の薬物動態研究
雄性ウィスターラット(Wistar rats, 260±50g)を実験動物として使用した。動物を、ポリプロピレン製ケージで個別に飼育した。研究の2日前、雄性ウィスターラットをイソフルランで麻酔し、内頸静脈カテーテルを外科的に留置した。ラットを、無作為に経口群(3mg/kg)および静脈内(i.v)(1mg/kg)投与群(n=3/群)に分け、経口投与(p.o.)前に、一晩断食させた。しかし、静脈内(i.v.)投与群に割り当てられたラットには、食物および水を自由に与えた。
【0125】
あらかじめ決められた時点で、頸静脈から採血し、それと同等の量の生理食塩水を補充した。採取した血液を、抗凝固剤としてヘパリンを10μL含有するラベル付エッペンドルフチューブに移した。血液試料を通常通り、以下の時点すなわち投与の0.08、0.25、0.5、1、2、4、6、8および24時間後に、採取した。血液を、4000rpmで10分間遠心分離した。血漿を分離し、分析まで-80℃で凍結させ、保存した。試験化合物の血漿中濃度を、適当な抽出法とともに、定量化LC-MS/MS法によって定量した。試験化合物を、1-1000ng/mLの較正範囲内で定量した。バッチ中の較正試料およびバッチ全体に分散させた対照試料を用い、研究試料を分析した。
【0126】
薬物動態パラメータであるCmax、AUC
t、T
1/2、クリアランスおよび生物学的利用能(F)を、Phoenix WinNonlin6.0.2版または6.0.3版ソフトウェアパッケージを使用し、標準非コンパートメントモデルを用いた非コンパートメントモデルによって計算した。
【表18】
【0127】
実施例54
齧歯(げつし)動物の脳透過性研究
雄性ウィスターラット(260±40grams)を実験動物として使用した。3匹の動物を、それぞれのケージで飼育した。実験期間中、動物には水および食物を自由に与え、12時間の光/暗周期で維持させた。
【0128】
脳透過性は、ラットにおいて離散手法により測定した。投与の1日前から、雄性ウィスターラットを環境順応させ、体重によって無作為にグループ分けした。各時点(0.5、1および2時間)で、n=3の動物を使用した。
【0129】
試験化合物を、あらかじめ適切に製剤化し、(遊離塩基当量で)3mg/kgで経口投与した。イソフルラン麻酔を用い、心臓穿刺によって血液試料を取り出した。動物を犠牲にし、脳組織を採取した。血漿を分離し、脳の試料をホモジナイズし、分析まで-20℃で凍結させ、保存した。試験化合物の血漿および脳中の濃度を、LC-MS/MS法を用いて測定した。
【0130】
適当な抽出法を用い、定量化LC-MS/MS法によって、血漿および脳ホモジネート中の試験化合物を定量した。試験化合物を、血漿および脳ホモジネートにおいて、1-500ng/mLの較正範囲内で定量した。バッチ中の較正試料およびバッチ全体に分散させた対照試料を用い、研究試料を分析した。脳-血漿の比の範囲を計算し(Cb/Cp)、その結果を以下の表に表した。
【表19】
【0131】
実施例55
物体認識タスクモデル
本発明の化合物における認知強化特性を、このモデルを用いて算定した。
【0132】
雄性ウィスターラット(8-10週齢)を実験動物として使用した。4匹の動物をそれぞれのケージで飼育した。実験の前日から20%の食糧欠乏状態で動物を飼育した。実験期間中、水は自由に与えた。動物を、温度および湿度が管理された部屋で、12時間の光/暗周期で維持させた。実験を、アクリル系の円形または四角形の試験場で実施した。ラットを1日目に、何の物体も無い状態で、最大1時間まで個々の試験場に慣れさせた。
【0133】
馴染み(T1)試験および選択(T2)試験の前に、12匹のラットの一つの群にビヒクルを投与し、他の動物の組に、式(I)で示される化合物を投与した。馴染みの段階(T1)の間、2つの同一の物体(a1およびa2)を壁から10cmの位置に置いた試験場に3分間、ラットを個々に放置した。T1の24時間後、長期記憶試験を行った。同じラットを、T1試験に放置したと同じ試験場に放置した。選択段階(T2)の間、馴染みの物体のコピー(a3)および新規物体(b)を置き、試験場を3分間探索させた。T1およびT2試験の間、各物体への探索(物体に対して1cm未満の距離で嗅ぐ、舐める、噛むまたは物体に鼻を向けながら鼻毛を動かすことと定義される)を、ストップウォッチを用いて記録した。
T1は、馴染みの物体(a1+a2)を探索するのに費やした総時間である。
T2は、馴染みの物体および新規物体(a3+b)を探索するのに費やした総時間である。
【0134】
物体認識試験は、Ennaceur, A., Delacour, J., 1988, A new one-trial test for neurobiological studies of memory in rats - Behavioural data, Behav. Brain Res., 31, 47-59に記載されている通りに実施した。
【表20】
【0135】
実施例56
アセチルコリンエステラーゼ阻害物質ドネペジルと組み合わせた、麻酔された雄性ウィスターラットの背側海馬における、シータ変調の評価
薬力学的評価項目である脳活動に対する、ドネペジルと組み合わせたM1 PAM化合物(実施例32)の効果を評価する。
【0136】
雄性ウィスターラット(240-320g)を、ウレタン(1.2から1.5g/kg)を腹腔内投与することにより、麻酔し、左の大腿静脈にカテーテルを移植した。動物を定位フレームに設置し、背側海馬に電極(ステンレス鋼ワイヤ、プラスチックワイヤ)を移植した(AP:-3.8mm; ML:+2.2mm; DV:-2.5mm; Paxinos and Watson, 2004)。二極刺激の電極(先端で0.75-1.0mm分かれた、ねじられていないステンレス鋼ワイヤ、プラスチックワイヤ)を、橋網様体核(Nucleus Pontis Oralis)に移植した(NPO; AP:-7.8mm; ML:1.8mm; DV:-6.0mm; Paxinos and Watson, 2004)。さらに、小脳に一つの電極を移植し、それを対照として用いた。Grass S88刺激装置(Grass S88 stimulator)およびPSIU6刺激単離ユニット(PSIU6 stimulus isolation unit)(Grass Medical Instruments, Quincy, MA)を用い、海馬のシータ(θ)リズムを、0.01トレイン/sの速度でNPOに供給される6秒間の電気刺激トレイン(20-160 μA, 0.3-ms パルス期間, 250 Hz)を介して誘発した。Ponemah(5.2版)ソフトウェアを用い、EEGを、1000Hzの速度で記録し、NeuroScore(3.0版)を用いてオフライン分析のために保管した。対照条件下、最大のシータリズム振幅の50%を誘発するのに必要な電流を用いることによって、ベースライン振幅レベルを達成した。1時間の安定期間の後、ベースライン記録を30分間行い、その後、ビヒクルまたは実施例32(1mg/kg、i.v.)を処置した。実施例32で処置してから30分後にドネペジル(0.3mg/kg、i.v.)を投与し、さらに1時間、記録を続けた。
【0137】
統計学上の分析:
30分のベースライン期間の刺激期間におけるシータリズム周波のパワーを計算し、これらの測定値の処置後の変化%を計算した。実施例32とドネペジルを組み合わせた後の相対的シータパワーにおける変化%を、二元分散分析(時間および処置)、その後のBonferroniの事後試験を用いて、ドネペジルの場合と比較した。統計的有意性は、0.05未満のp値と見做せた。
【0138】
参考文献
1. Paxinos G. and Watson C. (2004) Rat brain in stereotaxic coordinates. Academic Press, New York.
【0139】
結果:
ドネペジルでの処置により、海馬のシータパワーが中等度に増加した。実施例32はドネペジルと組み合わせ、シータパワーのレベルを有意に増加させた。組み合わせの処置の効果は、ドネペジル単独の効果より有意に高いことが観察された(
図1)。
【0140】
実施例32およびドネペジルで処置した後に計算した曲線下面積(AUC)の平均値は、ドネペジルの単独処置と比べて、有意的に高かった(
図1)。