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特許7104812少なくとも1種の有効成分を含む、疎水性胃保護製剤およびそれを得る方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】少なくとも1種の有効成分を含む、疎水性胃保護製剤およびそれを得る方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/14 20060101AFI20220713BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20220713BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 31/07 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 31/375 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 31/4415 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 31/525 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 31/51 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 31/714 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 31/59 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 33/44 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 33/26 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 33/34 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 33/06 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 33/38 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20220713BHJP
   A23L 33/00 20160101ALI20220713BHJP
   A23K 20/00 20160101ALI20220713BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/19
A61K9/10
A61K47/14
A61K47/44
A61K47/32
A61K47/12
A61K45/00
A61K31/07
A61K31/4439
A61K31/7088
A61K31/355
A61K31/375
A61K31/4415
A61K31/525
A61K31/51
A61K31/714
A61K31/59
A61K33/44
A61K33/26
A61K33/34
A61K33/06
A61K33/38
A61P35/00
A61P29/00
A61P37/02
A61P37/06
A61P31/04
A61P3/06
A61P7/02
A23L33/00
A23K20/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020570650
(86)(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 FR2019050515
(87)【国際公開番号】W WO2019171009
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-11-10
(31)【優先権主張番号】1870252
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520346631
【氏名又は名称】イウアラレン, カリム
(73)【特許権者】
【識別番号】520346642
【氏名又は名称】レイナル, ローズ-アンヌ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】イウアラレン, カリム
(72)【発明者】
【氏名】レイナル, ローズ-アンヌ
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-521334(JP,A)
【文献】国際公開第2015/189726(WO,A1)
【文献】特表平08-505841(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0206785(US,A1)
【文献】国際公開第2007/072908(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00-9/72
A61K 45/00
A61K 47/00-47/69
A61K 31/00-31/80
A61K 33/00-33/44
A61P 35/00
A61P 29/00
A61P 37/02
A61P 37/06
A61P 31/04
A61P 3/06
A61P 7/02
A23L 33/OO
A23K 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の有効成分を含む疎水性胃保護製剤であって、製剤が5μmと3500μmの間のサイズを有する固体粒子の形態であり、製剤の固体粒子が、
- ワックス状マトリックスを形成する少なくとも1種のワックス状賦形剤;ならびに
- 農業食品使用のための有効成分、獣医学的使用のための有効成分、プロバイオティクス使用のための有効成分および医薬使用のための有効成分から形成される群から選択される前記少なくとも1種の有効成分
を含み;
固体粒子が、疎水性、非吸湿性、非注射用であり、水を含まず、界面活性剤を含まず、乳化剤を含まず、溶媒を含まず、剪断減粘性ポリマーを含まず;
固体粒子が、15℃と60℃の間の融点を有し;
前記少なくとも1種の有効成分が、ワックス状マトリックス中に0.2%と85%の間の質量比率で均一に分布し;
前記固体粒子が、胃媒体中において前記少なくとも1種の有効成分を保護および安定化するために適当であり、腸媒体中で分散性である
ことを特徴とする、製剤。
【請求項2】
ワックス状マトリックスの少なくとも1種のワックス状賦形剤が、トリグリセリド、パーム油、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、アフリカハネガヤワックス、ココアバター、植物ワックス、オリーブワックス、コメワックス、水素化されたホホバワックス、花のアブソルートワックス、ミツロウ、改質ミツロウ、ポリオレフィン、中和されておらずイオン化されていない脂肪酸、4と30の間の数の炭素原子を有する直鎖脂肪酸のエステル、4と30の間の数の炭素原子および疎水性脂質を有する直鎖脂肪酸のエステルから形成される群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
脂肪酸および脂肪酸エステルから形成される群から選択されるワックス状賦形剤が、製剤の質量の0.5%と85%の間の質量比率にあることを特徴とする、請求項1および2のいずれかに記載の製剤。
【請求項4】
脂肪酸および脂肪酸エステルから形成される群から選択されるワックス状賦形剤が、製剤の質量の25%と75%の間の質量比率にあることを特徴とする、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
10μmと2500μmの間のサイズを有する疎水性固体粒子の形態にあることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
150μmと800μmの間のサイズを有する疎水性固体粒子の形態にあることを特徴とする、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
融点が25℃と60℃の間であることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
32℃と52℃の間であることを特徴とする、請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
少なくとも1種の有効成分が、カリウム塩、プロバイオティクス化合物、酵母、生物活性化合物、香味料、薬学的活性化合物、抗がん化合物、抗炎症性化合物、免疫調節化合物、免疫抑制剤化合物、抗生物質化合物、血中脂質低下化合物、抗血栓症化合物、プロトンポンプ阻害化合物、ワクチン、アルカロイド、オリゴヌクレオチド、カロテノイド、フリーラジカル除去剤、ヒドロキシ酸、色素沈着に作用する分子、ビタミンおよびプロビタミンA、B、C、D、EおよびPPならびにそれらのエステル、顔料、カーボンブラック、金属酸化物、鉄および銅塩、ならびにアルミニウムおよび銀塩から選択されることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の製剤。
【請求項10】
サシェ中の散剤、錠剤、凍結乾燥により得られる口内錠、ゲルカプセル剤、ウェファカプセル剤、またはボトル中で水を添加することにより液体組成物を再構成するための散剤の形態であり、即時使用可能であることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の製剤を調製する方法であって、以下の工程:
- a.少なくとも1種のワックス状賦形剤を撹拌しながら溶融し、続いて温度をワックス状マトリックスの融点より3℃高い温度に低下させることによって、ワックス状マトリックスを調製する工程、
- b.溶融ワックス状マトリックス中に少なくとも1種の有効成分を添加し、分散させる工程、
- c.ワックス状マトリックスと前記少なくとも1種の有効成分との混合物を、前記混合物の融点より少なくとも10℃低い温度に冷却して、混合物を固化させる工程、
- e.前記少なくとも1種の有効成分を含有するワックス状マトリックスの融点より少なくとも20℃低い温度において、固化した混合物を機械的に粉砕する工程、
- f.それにより5μmと3500μmの間のサイズを有する固体粒子の粉末が形成される工程
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記少なくとも1種の有効成分を含有するワックス状マトリックスを粉砕する工程e.が、ハンマー粉砕機またはナイフ粉砕機またはディスク粉砕機またはジョークラッシャーまたはボールミルまたはジェットミルを使用して実施されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
固化、前粉砕および/または粉砕工程が、ドライアイスまたは液体窒素で冷却することにより実施されることを特徴とする、請求項11および12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
ワックス状マトリックスを冷却する工程c.が、固化したワックス状マトリックスを引き離すと同時にそれを前粉砕するための、タンジェンシャルナイフを備える冷やされた回転ドラム上に、ワックス状マトリックスを注ぐことにより実施されることを特徴とする、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程e.が、液体窒素またはドライアイスの添加により冷やされたスクリューコンベヤーにより供給される粉砕機を使用して実施され、単一工程における前粉砕および粉砕機への供給を可能にすることを特徴とする、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定化および胃保護と同時に製剤化有効成分の投与を容易にするための、疎水性の分割された固体形態の活性化合物または有効成分の新規製剤に関する。本発明は、そのような製剤を得る方法にも関する。本発明によれば、そのような製剤は、分割された固体すなわち粉末の形態にある。そのような製剤は、疎水性で、安定化され、および胃保護され、すなわち胃の環境に対して保護されている。本発明によるそのような製剤は、農業食品製品、バイオテクノロジー製品、獣医学用製品、工業製品および医薬製品を製造するために使用できる。
【背景技術】
【0002】
多くの化合物が粉末の形態で使用されている。自然のままの形態で得られた天然化合物と、RandolphおよびLarson、「Theory of Particulate Processes」、第2版、Academic Press、NY、1988年ならびにJ.A.Dodds、C.Frances、P.Guigon、A.Thomas「Methodologies pour la Modelisation du Broyage Fin,Colloque sur Science et Technologie des Poudres[Methodologies for modelling fine milling,colloquium on the science and technology of powders]」、フランス、Lyon、1994年11月に記載の従来技法に従って破砕および粉砕により粉末に変換されたものとは区別することができる。
【0003】
溶媒抽出により得られる天然化合物ならびに化学的合成により調製される合成および半合成生成物は、「Handbook of Industrial Crystallization」第2版、Allan S.Myerson、BH編集、2002年に記載されているように、従来の溶媒沈殿段階により回収される。
【0004】
水性相中の生成物のためには、固/液分離に基づく他の技法が、粉末形態における活性化合物の製造を可能にする。これは、論文S.C.Tsinontides、「Freeze-drying - principles and practice for successful scale-up to manufacturing」、International Journal of Pharmaceutics、280巻、1~2号、2004年8月1~16頁に詳細に記載された凍結乾燥のための場合である。
【0005】
噴霧乾燥としても知られている霧化技法も、D.Kumar D.ら、「Powder Preparation via Spray Dryer」、Ceram.Forum Int.、5巻(1988年)141~44頁に記載されている、固/液分離で使用され得る。
【0006】
以下の本明細書を通して、用語「活性薬剤」、「活性化合物」または「有効成分」は、物理化学的、技術的、生物学的、薬理学的、生理学的、医薬、化粧品、農業食品またはバイオテクノロジー効果を得るための任意の化合物を意味する。
【0007】
そのような方法により得られた乾燥粉末の形態にある多くの活性化合物または有効成分は、いくつかの欠点を有する。敏感な活性化合物または有効成分は、化学的および/または物理的および/または生物学的要因の効果に基づいて分解され得る。挙げることができる例は、以下の分解反応:水との接触による加水分解、酸性またはアルカリ性分解、酸化、光分解、酵素的分解、結晶性形態の不安定性を含む。
【0008】
これらの現象は、製造時に、貯蔵中にまたはそれらのその後の使用中に起こり得る。
【0009】
いくつかの解決策が、これらの困難に対処するために開発された。
【0010】
1つの解決策は、調製条件の修正に関する。保護効果を生ずる溶媒の変更により調製中における分解を制限することが可能である。したがって、粉砕中にアスコルビン酸を保護するために、EP1688130A1は、無水油性相でこの工程を実施することを提案している。他の技法は、その後、貯蔵または使用中に活性薬剤を保護することを指向する。
【0011】
最も広く使用される技術的解決策は、US 4434009に記載されたように、ポリマーを使用して化合物をカプセル化することによる保護システムを実行することに存する。
【0012】
これらの技法も、加水分解または酸性ストレスに敏感な、薬学的活性剤のために適用される。これらのカプセル化またはコーティング技法は、当業者に周知である。一方で、WO 00/30617およびWO 02/092106に記載されたように、コーティング溶液をターボミキサーまたは流動床で噴霧することに基づく物理的コーティング方法、他方で、US 3341416に記載されたようなコアセルベーションまたは相分離に基づく物理化学的コーティングが区別され得る。薬学的活性剤をコーティングするこれらの技法は、US 6660382に記載された徐放性の性質ならびにEP 1051174に記載された非常に酸性の胃媒体に対する安定化および耐性を付与された、安定化されて保護された活性薬剤の粉末を得ることを可能にする。
【0013】
しかしながら、粉末を調製および/または処理するこれらの技法は、いくつかの欠点を有する。
【0014】
したがって、油性または有機保護溶媒における粉砕の技法は、非乾燥油性形態を得ることを包含する。油性相の除去は、困難であり、溶媒の使用または乾燥もしくは蒸発による除去技法の使用を包含する。全てのこれらの技法は、費用および時間が掛かり、溶媒残留物が除去されることを可能にしない。最終的に、有効度があまりに劣り、酸化に対する長期の保護または、例えば、胃媒体中における酸性分解に対する保護を提供しない。
【0015】
活性薬剤の結晶および/または粒子の表面処理による修正の技法は、活性薬剤の化学修飾を誘発するという主な欠点を有する。医薬、栄養学的および生物学的用途では、このように処理された活性薬剤は、もはや最初の活性薬剤と同じではない。それ故、もはや使用することができない。
【0016】
最終的に、コーティングまたはカプセル化技術は、それ自体も、いくつかの欠点を有する:
- 活性薬剤の溶解および分散の速度がかなり変更される、
- コーティングされた粒子は、数百マイクロメートルから数ミリメートルのサイズを有して、吸収中に知覚可能である。この場合に、それらの破壊は、投与中にまずい味をもたらし得る、
- これらの技術に、安定な液体形態の調製物との適合性を与えることは困難である、
- これらの方法は、複雑であり、多数の工程を包含し、費用が掛かり、および凍結乾燥された形態の調製物または水性溶媒を使用する任意の方法と不適合性である。
【0017】
したがって、粉末を調製および/または処理するためのこれらの技術は、完全に満足なものではない。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、少なくとも1種の有効成分を含む疎水性胃保護製剤であって、製剤が5μmと3500μmの間のサイズを有する固体粒子の形態であり、製剤の固体粒子が、
- ワックス状マトリックスを形成する少なくとも1種のワックス状賦形剤;ならびに
- 農業食品使用のための有効成分、獣医学的使用のための有効成分、プロバイオティクス使用のための有効成分および医薬使用のための有効成分から形成される群から選択される前記少なくとも1種の有効成分
を含み;
固体粒子が、厳密に疎水性、非吸湿性、非注射用であり、水を含まず、界面活性剤を含まず、乳化剤を含まず、溶媒を含まず、剪断減粘性ポリマーを含まず;
固体粒子が、15℃と60℃の間の融点を有し;
前記少なくとも1種の有効成分が、ワックス状マトリックス中に0.2%と85%の間の質量比率で均一に分布し;
前記固体粒子が、胃媒体において前記少なくとも1種の有効成分を保護および安定化するために適当であり、腸媒体中で分散性である
ことを特徴とする、製剤に関する。
【0019】
本文全体を通して、用語「混合物」、「活性化合物を含有する混合物」、「有効成分を含有する混合物」、「活性薬剤または有効成分を含有するマトリックス」および「活性薬剤または有効成分を含有する生成物」は、反応装置中で溶融後のワックス状マトリックスの構成要素のワックス状賦形剤(単数または複数)と少なくとも1種の有効成分との混合から生ずる液体または固体を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明による方法を実施するための装置の略図である。
図2】本発明による製剤により得られた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者らは、完全に予想外に、本発明による製剤化方法は、有効成分(単数または複数)が、前に言及した欠点を生じることなく水性、酸性、塩基性、酸化的および生物学的攻撃に対して保護されている粒子の安定な粉末を得ることを可能にすることを見出した。このように製剤化された有効成分(単数または複数)は、胃分解なしで経口的に投与され得る。この製剤化方法は、例えば、胃保護プロバイオティクス化合物、すなわち動物飼料として特に有利な胃環境で保護される化合物を含有する食物の製造を可能にする。
【0022】
したがって、少なくとも1種の有効成分を含有するワックス状マトリックス粉末から形成される本発明による製剤は、
- 有効成分または有効成分混合物を保護するワックス状マトリックスで構成され、
- 厳密に疎水性で胃保護され、
- 水性または有機溶媒を含まない
ことを特徴とする。本発明による製剤は、水性または有機溶媒のいかなる痕跡も含まない。しかしながら、本発明による製剤は、製剤への水性または有機溶媒の意図的添加から生じたものでない、水性または有機溶媒の検出可能限界における痕跡、すなわち残存量を含有することは可能である。それらは、有効成分(単数または複数)により導入された水性または有機溶媒の残留物であり得て、
- 界面活性剤または両親媒性または洗剤化合物を含まず、
- ポリマーおよびポリマー活性物質の残留物を含まず、
- 固体粒子のワックス状マトリックス中における有効成分(単数または複数)の均一な分配、および固体粒子内における半径方向の勾配がないことにより特徴づけられ、
- 生体適合性および腸媒体中で分散性であり、
- 本発明による粉末を構成する固体粒子は、非経口的に投与され得ない。
【0023】
有利なことに、製剤の固体粒子は、ワックス状マトリックスを形成する少なくとも1種のワックス状賦形剤、ならびに農業食品使用のための有効成分、獣医学的使用のための有効成分、プロバイオティクス使用のための有効成分および医薬使用のための有効成分から形成される群から選択される少なくとも1種の有効成分のみから排他的に形成される。
【0024】
本発明による粉末から形成された製剤は、熱帯性貯蔵条件下および/または水性媒体中における安定性が向上した。
【0025】
本発明による製剤は、水およびいかなるポリマーの水性ゲルも含まない。特に、本発明による製剤の固体粒子は、残存末梢ポリマー化合物を含まない。それらは、脂質粒子を形成する方法から誘導される、いかなるポリマー化合物も、とりわけいかなる水性ポリマー化合物も含まない。本発明による製剤は乾燥した製剤である。
【0026】
本発明による製剤の固体粒子は、任意の形態を有する。特に、それらは、規則的な球形の形態の分布を有しない。それらは、不規則な形態の分布を有し、水性ポリマーマトリックス内に粒子を形成する方法から誘導されることはない。
【0027】
固体粒子のワックス状マトリックスは疎水性であり、水に不溶の疎水性化合物の混合物からなり、それらは、室温で固体であり、界面活性剤化合物、溶媒残留物、および加水分解または酸化反応の原因となり得る水を全く含まない。特に脂質タイプの、使用されるワックス状賦形剤(単数または複数)と適合性の1種または複数の有効成分が、このワックス状マトリックスに添加される。
【0028】
ある特定の実施形態では、本発明による製剤は、10μmと2500μm(ミクロン、マイクロメートル)の間、優先的に150μmと800μmの間のサイズを有する疎水性固体粒子の形態にある。
【0029】
例として、少なくとも1種の、とりわけ各ワックス状賦形剤は、疎水性ワックスまたは植物、動物、合成および/もしくはミネラル起源の疎水性ワックスの混合物だけでなく、油および疎水性化合物からも形成される群から選択することができる。少なくとも1種の、とりわけ各ワックス状賦形剤は、製剤の融点、硬度、物理化学的性質および生物学的性質、とりわけ生分解性を調節することを可能にするように選択される。ワックス状マトリックスは、添加剤に加えて、ミネラル粒子などの1種または複数の可溶性または不溶性の有効成分を含有することもできる。本発明により、15℃と60℃の間、とりわけ25℃と60℃の間、優先的に32℃と52℃の間の融点を有するワックス状賦形剤(単数または複数)と有効成分(単数または複数)との混合物が使用される。本発明により、15℃と60℃の間、とりわけ25℃と60℃の間、優先的に32℃と52℃の間の融点を有する1種または複数のワックス状賦形剤が使用される。固体粒子は、25℃と60℃の間、優先的に32℃と52℃の間の融点を有することが有利である。
【0030】
ワックス状賦形剤として、少なくとも1種のトリグリセリド、とりわけその脂肪酸が8から30個の炭素原子(C8~C30)を含有する少なくとも1種のトリグリセリドが使用され得る。他のワックス状賦形剤、例えば、高分子量の脂肪族アルコール、優先的に直鎖飽和C12~C30対である脂肪酸(イオン化されておらず中和されていない、カルボン酸形態-COOHで)、ならびに脂肪酸と高分子量のアルコールのエステル、とりわけC8~C30脂肪酸とC2~C32アルコールとのエステルなどを使用することも可能である。全ての場合に、ワックス状マトリックスおよびワックス状マトリックスと有効成分(単数または複数)との混合物は、室温または生理学的温度で固体形態にあり、水の非存在、界面活性剤化合物の非存在、疎水性挙動、水により濡れないことおよび吸湿性の非存在を特徴とする。本文全体を通して、用語「脂肪酸(単数または複数)」は、1種または複数のイオン化されておらず中和されていない脂肪酸、すなわちカルボン酸形態(-COOH)にあるものを表す。
【0031】
ある特定の実施形態では、ワックス状のマトリックスの少なくとも1種のワックス状賦形剤は、パーム油、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、アフリカハネガヤワックス、ココアバター、植物ワックス、ミツロウおよび改質ミツロウから形成される群から選択される。ある特定の実施形態では、ワックス状マトリックスは、天然起源のワックスを含み、特にそれのみからなる。本発明により使用される脂肪酸は、イオン化されておらず中和されていない酸の形態(-COOH)にある。これらの脂肪酸の塩は、石鹸を形成するので、それらは、マトリックスの濡れやすさを助長するであろうから、それらはいかなる方法でも使用することはできない。
【0032】
ある特定の実施形態では、少なくとも1種の植物ワックスは、オリーブワックス、コメワックス、水素化されたホホバワックスおよび花のアブソルートワックス(absolute wax)から形成される群から選択される。
【0033】
ある特定の実施形態では、少なくとも1種のワックス状賦形剤は、ポリオレフィン、脂肪酸(中和されておらずイオン化されていない)、4と30の間の数の炭素原子を有する直鎖脂肪酸のエステル、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸、4と30の間の数の炭素原子および疎水性脂質を有する直鎖脂肪酸のエステルから形成される群から選択される。
【0034】
少なくとも1種のパラフィンが、ワックス状賦形剤として使用される。
【0035】
ワックス状マトリックス中における有効成分(単数または複数)の溶解度または分散性を改善するために、油を添加することが場合により必要である。このことは、融点を調節することも可能にする。
【0036】
上で挙げたワックスの他にも、本発明による製剤は、疎水性シリコーンオイル、シクロメチコン、親油性有機フッ素油、スクワレンおよびそれらの誘導体、短鎖トリグリセリドおよびエステルから選択される油を単独でまたは混合物として含有することができる。
【0037】
他の油性化合物、例えば、オレイルアルコール、ヒマワリ油、パーム油、オリーブ油など、脂肪酸および脂肪アルコールも使用され得るが、得られる混合物は、疎水性挙動、水との混和性の非存在を特徴とするものでなければならない。当業者は、このワックス状マトリックスについて、加熱温度が、製剤の少なくとも1種の化合物の分解温度を超えてはならないことを知っている。
【0038】
他の化合物が、ワックス状マトリックスに添加されてもよい。タルク、カオリン、着色剤、ならびにマトリックスの外見、色、密度および硬度を調節するための活性物質などの充填剤も挙げることができる。生物学的および医薬用途のために、毒性、生体適合性、免疫原性の非存在および経口吸収または局所適用での生分解性に関して適合性である適当な組成物が選択されるべきである。ワックス状マトリックスは、生理学的に許容されなければならない。
【0039】
本発明のある特定の実施形態では、脂肪酸および脂肪酸エステルから形成される群から選択されるワックス状賦形剤(単数または複数)は、質量により製剤の0.5%と85%の間、優先的に25%と75%の間の質量比率である。
【0040】
本発明により、少なくとも1種の有効成分を含有する製剤は、有効成分(単数または複数)を保護する性質を付与される。ある特定の実施形態により、本発明による製剤は、味、とりわけ有効成分(単数または複数)の味を遮蔽することを可能にする。ある特定の実施形態により、本発明による製剤は、有効成分(単数または複数)の放出を調整することを可能にする。
【0041】
一実施形態により、混合物は、顔料、金属酸化物、鉄および銅塩、ならびにアルミニウムおよび銀塩などの成分を含有することができる。それは、生物活性化合物、精油、香味料および他の活性物質を含有することもできる。ワックス状マトリックスの充填容量は、その重量に対して0.2%から85%に拡大することができる。当業者は、これらの成分が本発明によるワックス状マトリックス中に組み込まれるときに、本発明による製剤が調製され得るように、疎水性ワックス状賦形剤の適当な組成物が、選択されるべきであることを知っている。
【0042】
ワックス状マトリックス中に組み込まれ得る成分のなかで、カロテノイド、フリーラジカル除去剤、消毒液、色素沈着または炎症に作用する分子、ビタミンまたはプロビタミンA、B、C、D、EおよびPPならびにそれらのエステルを挙げることができる。
【0043】
マトリックスは、分散もしくは溶解された形態であることができるかまたは両方の形態であることができる有効成分または有効成分の混合物を含有する。ある活性薬剤は、全体的にまたは部分的に非晶質形態にあることができる。
【0044】
ある特定の実施形態では、少なくとも1種の有効成分は、リン酸誘導体、カリウム塩、ヒトまたは動物の栄養のためを意図される栄養素、プロバイオティクス化合物、酵母、生物活性化合物、香味料、薬学的活性化合物、抗がん化合物、抗炎症性化合物、免疫調節化合物、免疫抑制剤化合物、抗生物質化合物、血中脂質低下化合物、抗血栓症化合物、プロトンポンプ阻害化合物、獣医学的使用のための化合物、ワクチン、アルカロイド、オリゴヌクレオチド、カロテノイド、フリーラジカル除去剤、ヒドロキシ酸、色素沈着に作用する分子、ビタミンおよびプロビタミンA、B、C、D、EおよびPPならびにそれらのエステル、顔料、カーボンブラック、金属酸化物、鉄および銅塩、ならびにアルミニウムおよび銀塩から選択される。
【0045】
この記載で、用語「医薬有効成分」は、疾患を、診断する、ケアする、回復させる、治療するまたは予防するために、ヒトまたは動物に有利に投与され得る任意の活性治療物質または混合物を表すために使用される。例として、抗がん剤および抗炎症剤、免疫調節剤、免疫抑制剤、抗生物質、血中脂質低下剤、抗血栓症剤、プロトンポンプ阻害剤、血管拡張剤、血管収縮薬、抗利尿剤および利尿剤、抗ウイルス剤および抗レトロウイルス剤、フィブラート系製剤、抗マラリア剤、獣医学的化合物、ワクチン、アルカロイド、オリゴヌクレオチド、ホルモン、骨粗鬆症と闘うための生成物、オクトレオチド、ソマトスタチンならびにスタチンを挙げることができる。本記載において、用語「栄養素」または「プロバイオティクス」または「食物サプリメント」は、栄養学的目的のために、ヒトまたは動物に有利に投与され得る任意の可食性物質または混合物を表すために使用される。挙げることができる例は、ビタミン、ミネラル塩、タンパク質、アミノ酸、可食性の痕跡元素、およびそれらのプロバイオティクスの性質のために使用されるサッカロミセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)などの微生物を含む。
【0046】
少なくとも1種の有効成分は、生物学的触媒であることができる。本記載において、用語「生物学的触媒」は、発酵または生体内変換形成過程で有利に使用され得る任意の分子または微生物または混合物を表すために使用される。挙げることができる一例は、製パン方法で使用されるサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。本発明による疎水性ワックス状マトリックス中へのこれらの酵母の取込みは、暑く湿度の高い国における過酷な気候条件にさらされる領域において、乾燥形態の品質を改善することを可能にする。本発明は、室温における改良された安定性およびより優れた発酵力により特徴づけられる長くなった保存をもたらす。
【0047】
本発明により粉末形態で得られた製剤は、単位のまたは複数の形態で包装することができる。ある特定の実施形態では、本発明による製剤は、即時使用製剤である。製剤は、例えば、ゲルカプセル剤、錠剤、ウェファカプセル剤、口内分散性錠剤、凍結乾燥によって得られる口内錠、水性懸濁剤、液体形態を得るためのサシェ中の散剤、とりわけサシェまたはボトル中の分散性散剤などの従来のガレヌス形態であってもよい。有利には、本発明による製剤は、例えば、滑沢剤、例えばタルク、均質性を改善するための作用剤、例えばシリカ、着色剤、防腐剤、甘味料および増粘剤、例えばセルロース誘導体などの添加剤と混合することができる。本発明による粉末は、ヒトまたは動物の栄養学的調製物と混合することもできる。
【0048】
ある特定の実施形態では、本発明による製剤は、0.1gと1000gの間の容量で、1つのユニットまたは複数の容器中に含有される。
【0049】
本発明は、本発明による製剤を調製する方法にも関する。
【0050】
本発明による優先的実施形態では、粉末は、以下の工程を含む方法に従って調製される:
- a.前記少なくとも1種のワックス状賦形剤の混合物の融点を超える温度で撹拌しながら前記少なくとも1種のワックス状賦形剤を溶融することによる、疎水性ワックス状マトリックスの調製。有利には、ワックス状マトリックスは、前記少なくとも1種のワックス状賦形剤を撹拌しながらa/溶融し、続いて温度を、ワックス状マトリックスの融点より3℃高い温度に低下させることにより調製される。
- b.溶融ワックス状マトリックス中における有効成分(単数または複数)の添加および機械的分散。
- c.得られた混合物の融点より少なくとも10℃低く冷却することによるワックス状マトリックスと前記少なくとも1種の有効成分との混合物の回収および固化。有利には、ワックス状マトリックスと前記少なくとも1種の有効成分との混合物は、前記混合物の融点より少なくとも10℃低い温度に冷却され、それより混合物は固化する。
- e.活性薬剤を含有するマトリックスの融点より少なくとも20℃低い温度における粉砕。有利には、固化した混合物の機械的粉砕は、前記少なくとも1種の有効成分を含有するワックス状マトリックスの前記混合物の融点より少なくとも20℃低い温度で実施される。
- f.活性薬剤を含む粉末の回収。5μmと3500μmの間のサイズを有する固体粒子の粉末から形成される本発明による製剤が得られる。
【0051】
ある特定の実施形態では、方法は、粉砕に先立つ前記固化した混合物を前粉砕する工程d.を含む。
【0052】
本発明の第1の工程で、前記少なくとも1種の有効成分は、ワックスまたはワックスと予め溶融された疎水性ワックス状マトリックスと名づけられた厳密に疎水性の賦形剤との混合物中に分散される。前記少なくとも1種の有効成分は、酸素および水との任意の接触に対して、ならびにより一般的に任意の外からの化学的ストレスに対して保護される。ワックス状マトリックスに対する前記少なくとも1種の有効成分の添加は、ワックス状マトリックスの融点より少なくとも3℃高いおよび好ましくは5℃高い、ワックス状マトリックスの融点より高い温度で、しかし常に前記少なくとも1種の有効成分の分解または失活温度より低い温度で実施される。得られた、前記少なくとも1種の有効成分を含有する液体ワックス状マトリックスは、次に冷却により固化して、次に任意選択で、粗い前粉砕工程にかけられる。
【0053】
次に制御された粒子サイズの固体粒子の即時使用の粉末を得るために、マトリックスは粉砕される。前記少なくとも1種の有効成分を含むこの粒子状のマトリックス粉末は、その厳密に疎水性の性質のために、活性薬剤に対するいかなるリスクもなく水中に分散され得る。
【0054】
したがって、この方法は、急速に実行され、活性薬剤のいかなる事前の化学修飾も活性薬剤(単数または複数)の粒子および/もしくは結晶のいかなる表面処理も必要としない。それは、有効成分が、ワックス状マトリックスの構成要素の混合の非常に初期の段階から、ワックス状マトリックス中に組み込まれることを可能にする。それは費用が掛からず、実施が容易である。
【0055】
本発明は、組み合わせでまたは別々に、本明細書において上でまたは下で挙げた特性の全てまたは一部を特徴とする、製剤およびそのような製剤を調製する方法にも関する。それらが正式に説明されているかどうかに関係なく、別段の明示的な指示がない限り、本明細書において上でまたは下で挙げた種々の特性は、厳密にまたは不可分に一緒に連結されていると考えられるべきではなく、本発明は、これらの構造的もしくは機能的な特性の1つだけに、またはこれらの構造的もしくは機能的特性の一部だけに、またはこれらの構造的もしくは機能的特性の1つの一部だけに、またはこれらの構造的もしくは機能的特性の全てのもしくは一部のその他の任意の群、組み合わせもしくは並置にかかわることができる。
【0056】
本発明の他の目標、特性および利点は、いかなる暗黙の限定もなく与えられた、添付の図を参照する、それらの可能な実施形態の一部の以下の説明を読めば、明らかになるであろう。
【0057】
図2は、酸性媒体(0.1N HCl)における2-([4-(3-メトキシプロポキシ)-3-メチルピリジン-2-イル]メチルスルフィニル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール(BZ)の分解のグラフによる表示である。図2は、実施例1および製剤化されていない活性薬剤(◆)に対する本発明により製剤化された活性薬剤(○)の安定性における改善を例示する。
【0058】
該方法は、製剤中に、いかなる界面活性剤化合物、いかなる乳化剤またはいかなる両親媒性生成物も含まず、除去が常に困難であり、および使用がますます制限的になっているいかなる有機溶媒も必要としない。それはいかなる剪断減粘剤も包含しない。方法の間中に、調製が行われている製剤の有機もしくは水性溶媒または水との接触はない。このことは、活性薬剤と相互作用して、物理化学的安定性、貯蔵時間および充填の程度を低下させ得る、水溶性の活性薬剤の溶解および抽出を防止する。他の技法とは対照的に、活性化合物(単数または複数)または有効成分(単数または複数)は、分割されたワックス状マトリックス中に均一に分布する。
【0059】
最終の製剤が粉末形態で得られる組成物を構成するワックス状マトリックスの種々のワックス状の成分または賦形剤と有効成分(単数または複数)との混合は、方法の第1の工程において、恒温で維持されている反応装置、溶融容器(1)または任意の他の適当なシステム中で実施される。最初に最高の融点を有するワックス状賦形剤が溶融されて、次に賦形剤が融点の低くなる順で、逐次添加される。優先的な実施形態では、温度を、得られる混合物の融点より常に3℃高く保ちながら、温度は低下される。活性薬剤は最後に添加される。活性薬剤の性質の関数として温度を修正することが必要なことはわかるが、常に15℃と105℃の間である。
【0060】
全ての成分を均一に分散するために適当な機械的撹拌方法が適用される。好ましい本発明の実施形態によれば、撹拌装置は、溶融されたワックス状賦形剤の混合物を分散させるための、インペラー(2)、優先的には異形3枚羽根インペラー、例えばAgimel TPE(登録商標)を有するという特徴を有する。次に、活性薬剤が、単独でまたは混合物として、溶融混合物に添加される。特定の本発明の実施形態では、TシリーズTurrax(登録商標)ターボミキサーまたはAgimel TTC(登録商標)ターボミキサーの使用が、活性薬剤の均一分散を得るために必要なこともある。撹拌時間は、その性質に大きく依存する。したがって、この混合工程は急速であり、長いおよび困難な混合工程を必要としない。
【0061】
しかしながら、得られる混合物が実際に均一であることを確実にするために注意しながら、他の適当な分散方法、例えば、超音波処理、押出し、静的ミキサーもしくは線状ミキサー、または再循環ポンプが使用されることを妨げることは何もない。
【0062】
得られる混合物は、最も敏感な有効成分(単数または複数)を保護して固体相を得るために直ちに冷却される。特定の本発明の実施形態により、1kg未満の量のために、溶融マトリックス中に分散された有効成分(単数または複数)を含有する溶融マトリックスの冷却は、接触冷却板上に広げることにより実施することができる。固化は、120秒未満で得られて、次に冷却板は、冷チャンバーに入れられて、それは、必要であれば、工程が切り離されることを可能にする。
【0063】
より大きい量のためには、冷却は、連続した冷却システムを通過させることにより実施され得る。挙げることができる一例は、Sandvikモデル321ステンレス鋼の連続したベルト冷却システムである。特定の本発明の実施形態により、溶融生成物は、液滴、フィラメントまたはフィルムの形態で、冷却チャンバーを通過するステンレス鋼のベルトコンベヤー上に堆積されて、排出口において固体形態で回収される。
【0064】
冷却は、冷ガスストリームとの熱交換により、または冷却された支持台で伝導により実施される。生成物の量および到達されるべき固化温度に応じて、当業者は、システムのパラメーター、特に材料の流速、ベルトの処理速度、冷却チャンバーの長さおよび温度を調節するであろう。ある装置の場合には、ベルトも、例えば、液体窒素で冷却される。
【0065】
特定の実施形態では、溶融ワックス状マトリックスと前記少なくとも1種の有効成分との混合物を含有する反応装置または溶融容器は、制御された速度で固化システム(3)に移送するためのポンプを備える。
【0066】
混合物の冷却温度は、混合物の融点より少なくとも10℃低く、優先的にこの温度より15℃低く、特定の実施形態では、融点より45℃低くに調節される。本発明の一実施形態により、冷却温度は、-195℃と45℃の間、および優先的に-10℃から5℃である。
【0067】
特定の本発明の実施形態では、溶融容器は、溶融マトリックスのフィラメントを製造するための多数のダイス(3)を有する排出口に備えられている。これらのフィラメントは、図1に記載されたようなステンレス鋼の冷やされた回転ドラムシステム(4)上に接触することにより連続的に固化される。接線方向に位置付けられたスクレーパー(5)が、固化したフィラメントが引き離されて断片化されることを可能にする。
【0068】
断片化された混合物は、次に、接触または対流により冷却された後、前粉砕システム中に傾け入れられる。粉砕機に正確に供給できるようにするために、断片を優先的に40mm未満のサイズおよび特に5mm未満のサイズで得るように、固化したマトリックスを含む混合物を前粉砕することが必要である。この目的のために、Retsch GMローター、ハンマーもしくはナイフ型前粉砕機またはジョークラッシャー前粉砕機、例えば、Retsch社により販売されているBBシリーズJaw Crushers、あるいは液体窒素の添加または任意の他の適当なシステムにより冷却されるWAM CXコンベヤーなどの極低温のスクリューコンベヤーが使用され得る。ある固化した混合物は脆くて、同じ機械で、単一工程で、但し異なる速度で前粉砕および粉砕され得る。
【0069】
最終の工程において、冷却により固化して前粉砕されたマトリックスは、粉砕(6)によりサイズが縮小されて粉末になる。この最終の工程が、本発明による製剤を、疎水性粉末の形態で、最終の生成物として得ることを可能にする。ハンマー、ナイフ、ローター、ボールまたはジェットミルなどの多数の粉砕機を使用することができる。Hosokawa Alpin AG社からのAPP(登録商標)粉砕機、Fitzpatrick社により販売されているFS(登録商標)、L1A(登録商標)およびM5A(登録商標)粉砕機またはRetsch社からのSM、ZMおよびGMシリーズの粉砕機を挙げることができる。ワックス状マトリックスの粉砕を容易にするために、本発明の優先的な実施は、マトリックスを冷却してそれを固くおよび脆化することにある。この操作は、粉砕工程の前または最中に行われる。
【0070】
冷却粉砕は、特許FR2550961に記載された、当業者に周知の技法である。多くの粉砕システムは、Fitzpatrick Co社またはRetsch社により提案された粉砕供給システムなどの、液体窒素またはドライアイスで冷却するための特別の装置を受け入れることができる。ある供給システムは、混合物を冷却するためにも使用することができる。挙げることができる例は、液体窒素の添加により冷却されるWAM CXコンベヤーである。粉砕の終結で得られた粒子状マトリックス粉末は、直接包装することができる。本発明による粉末は、5μmと3500μmの間および優先的に10μmと2500μmの間の粒子サイズを有する。優先的な実施形態では、粉末は、150μmと800μmの間の粒子サイズを有する。
【0071】
本発明による特定の実施形態では、活性薬剤を含有する溶融混合物は、BetetaおよびIvanova、「Cool Down with Liquid Nitrogen」、CEP 2015年9月により記載された、冷凍ペレット化技法により粉砕する前に、固化および断片化することができる。例として、CES社からのCryogenic Pelletizer機を使用することができる。この技法により、溶融マトリックスから固化された数ミリメートルのペレットが得られる。この工程に粉砕工程が続く。
【実施例
【0072】
以下の実施例は限定するものではなく、それらは、本発明を単に例示するために役立つものである。以下の実施例の一部について、味遮蔽試験を、10名の個人の調査員で実施した。試験生成物は決して吸収されない。
【0073】
結果は、以下の尺度に従って表現される:
- 1:有効成分の味が検出されない、
- 2:有効成分の味がわずかに知覚される、
- 3:有効成分の味が検出される、
- 4:有効成分の味はまだ我慢できる、
- 5:有効成分の味は我慢できない。
【0074】
試験値は、10からの最大等級に対して得られた等級の平均により計算される。
【0075】
実施例1
酸性媒体に不安定なベンズイミダゾール誘導体を含有する胃耐性製剤(BZ-AT)の調製
ここで(BZ)と称される誘導体は、2-([4-(3-メトキシプロポキシ)-3-メチルピリジン-2-イル]メチルスルフィニル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾールである。
【0076】
組成:
- Captex(登録商標)トリグリセリドの混合物(Abitec社) 69.2g
- DUB PPトリグリセリド(Stearinerie Dubois) 10g
- BZ(Sigma): 20g
- タルク(Cooper) 0.5
- ナトリウム水素カーボネート(Cooper) 0.2g
- シリカ(Aerosil) 0.1g
【0077】
最高の融点を有する化合物、DUB PPトリグリセリドを、500mlの恒温に調節された反応装置中で55℃にして、次に種々の化合物を、最高の融点から最低の融点で、徐々に添加する。混合物の温度を徐々に下げて、次に45℃で維持する。組成物の添加中の間、3枚羽根インペラーの撹拌速度は100rpmである。
【0078】
BZは最後に添加する。脂質相中におけるこの活性薬剤の分散は、T25 Turraxブランドのターボミキサー撹拌システムを6000rpmの速度で使用して実施する。マトリックスは、温度が-10℃に維持されているステンレス鋼板上に注ぐことにより固化される。平均サイズが35mmの回収された断片を、ドライアイスが共充填されたRetsch GM200ナイフ粉砕機を使用して、以下の条件下で前粉砕して、次に粉砕する:
- 前粉砕:1500rpmで20秒
- 粉砕:3000rpmで70秒
【0079】
このようにして得られる粒子は、342μmの平均サイズを有する。
【0080】
0.1N塩酸溶液中における粒子の安定性の、HPLCアッセイ方法による測定:
- カラム(ProntoSIL、ドイツ、Bischoff):C18、5μm、120Å、4.6×150mm、
- 移動相:メタノール、65%/10mM Na2HPO4、35%、
- 流量:1.00mL/分、
- 温度:20℃(サーモスタット)、
- 検出:UV(λ=310nm)
- 注入体積:20μL。
【0081】
安定性は、0.1N HCl媒体中25℃で、500mlの体積および20mgのBZについて測定する。照らし合わせた結果は、図2で初期投与量に対するパーセンテージとして表現されている。
【0082】
実施例1で調製されたBZ(BZ-T5、○)は、120分のインキュベーションで8%未満の分解を示す。製剤化されていないBZ(BZ、◆)の分解は100%である。
【0083】
動物における胃での保護および予備的バイオアベイラビリティーの試験。この試験では、この実施例に記載された本発明によるBZ-AT製剤およびBZの保護されていない形態の保護能力が比較される。
【0084】
各製剤が、体重が175~250gの間の雄Sprague-Dawleyラットに経口的に投与される。試験は、純粋なBZおよび以下の水溶液中10mg/mlで溶解されたBZ-AT形態で実施する:
- スクロース 65g
- ナトリウムメチルパラ-ヒドロキシベンゾエート 0.015g
- ナトリウムプロピルパラ-ヒドロキシベンゾエート 0.03g
- 精製水 100mlにする量
【0085】
投与され得る体積は、各動物の関数として、4mL/kgすなわち40mg/kgのBZの投与量が達成されることを可能にするように調節される。投与は、絶食させた動物に経口的に実施される。結果は下の表1で照らし合わされる。
【0086】
実施例2
ポリ不飽和脂肪酸、EPAおよびDHAを含有する、味が遮蔽され、胃保護され、安定化された魚油を含有する散剤の調製。
高投与量のノルウェイのタラ肝油を有する魚油を含有する2.5kgの粒子を製造するために与えられた実施例である。
【0087】
組成:
- ステアリン酸 0.61kg
- PPM1トリグリセリド(Stearinerie Dubois) 1.24kg
- 魚油(Solgarノルウェイのタラ肝油 0.625kg
- タルク 0.020kg
- シリカ 0.005kg
【0088】
最高の融点を有する化合物を、5リットルの恒温に調節された反応装置中でその融点より3℃高い温度にして、次に、種々の化合物を、最高の融点から最低の融点に、徐々に添加する。混合物の温度を徐々に下げてから、新しい得られる混合物の融点より3℃高い、この例では48℃で維持する。最後に魚油を添加する。溶融ワックス状の相中におけるこれらの成分の分散は、錨形のスピンドルを備えた撹拌システムを、200rpmの速度で使用して実施する。次に、T25 Turraxターボミキサーを使用して4500rpmで6分間撹拌を実施し、完全な分散液を得る。
【0089】
マトリックスを、温度が4℃にされた回転する円筒上に注いで固化させる。
【0090】
回収された平均サイズが4mmの断片を、次に、ドライアイスで冷却する。混合物を前粉砕して、次にステンレス鋼のRetsch GMナイフ粉砕機を使用して粉砕する。
- 速度:3000(rpm)、
- 時間:90秒、
- 粒子サイズ:平均直径445μm。
【0091】
次にこの魚油散剤を味試験で評価する。味試験の結果は、1.20の平均値を与える。平均値は2未満である:油の味は検出不可能である。
【0092】
実施例3
ポリ不飽和脂肪酸、EPAおよびDHAを含有する、味が遮蔽され、胃保護され、安定化された魚油を含有する、香味づけられた散剤の調製。
この生成物は、食物サプリメントの製造のためを意図される:実施例は、高投与量のノルウェイのタラ肝油を有する魚油を含有するミントで香味づけられた粒子を2.5kg製造するために与えられる。
【0093】
組成:
- PPM1トリグリセリド(Stearinerie Dubois) 1.24kg
- ステアリン酸 0.608kg
- 魚油(Solgarノルウェイのタラ肝油) 0.625kg
- タルク 0.020kg
- シリカ 0.005kg
- ミントの香味料 0.002kg
【0094】
散剤を、実施例2に記載されたプロトコールに従って調製する。得られる散剤は、1.2のスコアの魚油味の検出の非存在を特徴とする。
【0095】
得られる散剤は、味試験において5のスコアの顕著なミント味を特徴とする。
【0096】
実施例4
実施例1によるBZが充填された粒子を含有する経口経路の水分散性散剤の調製
組成:
- 実施例1によるBZ-AT粒子 100g
- マンニトール 80g
- 香味料 10g
- アスパルテーム 8g
- キサンタンガム(Xanthural 180) 2g
【0097】
組成物をTurbula粉末ミキサー(フランス、WAB)に入れる。混合後、散剤を400mgの単位サシェに分割する。
【0098】
実施例5
安定化されたアスコルビン酸を含有する粒子の調製。
組成:
- Suppocire DMトリグリセリド(Stearinerie Dubois) 65g
- パルミチン酸(Sigma) 4g
- 固形パラフィン(Sigma) 1g
- アスコルビン酸(Sigma) 30g
【0099】
最高の融点を有する化合物を、恒温に調節された容器中でその融点より3℃高い温度にして、次に、種々の化合物を最高の融点から最低の融点に徐々に添加する。化合物の添加の間中、3枚羽根インペラーの撹拌速度は180±20rpmである。撹拌を、添加の終了後60秒間維持する。混合物の温度を、徐々に下げてから、新しい得られる混合物の融点の5℃上で維持する。アスコルビン酸を最後に添加する。この成分の分散を、T25 Turraxブランドのターボミキサー撹拌システムを使用して、3000rpmの速度で3分間実施する。
【0100】
マトリックスを、温度が-4℃に維持されているステンレス鋼板上に注ぐことにより固化させる。平均サイズが15mm未満の回収された断片を、-10℃で恒温に維持されているIKA M20粉砕機を使用して、以下の条件下で前粉砕して、次に粉砕する:
- 前粉砕:1500rpmで30秒、
- 粉砕:6000rpmで90秒。
【0101】
測定される最終の粒子サイズは、345μmの平均粒子直径により特徴づけられる。
【0102】
実施例6
実施例2の手順に従う胃保護され、安定化された生きた酵母散剤の調製:
- DUBトリグリセリド(Stearinerie Dubois) 650g
- Suppocire CMトリグリセリド 100g
- ステアリン酸 50g
- 乾燥サッカロミセス・セレビシエ 720g
- 疎水性シリカ 5g
【0103】
得られる散剤は以下の特性を有する:
- 粒子サイズ=910μm、
- 生存細胞の濃度:
- 初期粉末:2.8×1010CFU/g、
- 酵母を含有するマトリックス粉末:1.72×1010CFU/g。
【0104】
本発明は、上で記載されたもの以外の多数の変形および用途の対象となり得る。特に、別段の指示がない限り、本明細書において上で記載された実施形態の各々の種々の構造的および機能的特性が、組み合わされた、および/または厳密におよび/または互いに不可分に連結されていると考えるのではなく、むしろ逆に、簡単な並置と考えなければならないことは言うまでもない。それに加えて、本明細書において上で記載された種々の実施形態の構造的および/または機能的特性は、任意の異なる並置または任意の異なる組み合わせの対象を全体的にまたは部分的に形成し得る。
図1
図2