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特許7104824シリンダ装置、及びシリンダ装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】シリンダ装置、及びシリンダ装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20220713BHJP
   F16F 9/54 20060101ALI20220713BHJP
   B60G 3/28 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
F16F9/32 J
F16F9/54
B60G3/28
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021034939
(22)【出願日】2021-03-05
(62)【分割の表示】P 2016156496の分割
【原出願日】2016-08-09
(65)【公開番号】P2021092322
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】柴田 宜浩
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 泰弘
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-197129(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01505313(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2002/0125382(US,A1)
【文献】独国特許発明第19647411(DE,C1)
【文献】中国実用新案第201547174(CN,U)
【文献】独国特許出願公開第102009000370(DE,A1)
【文献】特開平05-215174(JP,A)
【文献】特開2009-216129(JP,A)
【文献】米国特許第5282645(US,A)
【文献】特開2007-320332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/32
F16F 9/54
B60G 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のアウターシェルと、
前記アウターシェルの側部に設けられて径方向外側へ突出する突出部と、
前記アウターシェルの外周に取り付けられるブラケットとを備え、
前記ブラケットは、前記アウターシェルの外周を抱持して前部に割の入った断面C字状の筒状部と、前記筒状部の周方向の両端から径方向外側へ突出する一対の取付部とを有し、
前記筒状部には、少なくとも一方の側部から背部にかけて前記突出部の挿通を許容する孔が形成されている
ことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
前記孔は、前記割と前記筒状部の直径方向に向かい合う位置まで形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項3】
前記孔の前記筒状部の背部に位置する部分の軸方向長さは、前記孔の前記筒状部の側部に位置する部分の軸方向長さよりも長い
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシリンダ装置。
【請求項4】
前記孔の形状は、前記筒状部の中心を通る軸が鉛直方向へ延びるように前記筒状部を配置するとともに前記筒状部の前部を正面に向けた状態で、前記軸に対して左右対称形状とされている
ことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のシリンダ装置。
【請求項5】
請求項2から4の何れか一項に記載のシリンダ装置の製造方法であって、
前記突出部を前記筒状部の背部から外方へ突出させた状態で前記突出部を前記アウターシェルに溶接する突出部溶接工程と、
前記ブラケットを周方向に回転し、前記突出部を前記筒状部の側部から外方へ突出させるブラケット位置変更工程と、
前記筒状部を前記アウターシェルに溶接するブラケット溶接工程とをこの順に行う
ことを特徴とするシリンダ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ装置及びシリンダ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリンダ装置の中には、緩衝器として機能するとともに、アウターシェルの側部に減衰力可変バルブを取り付けたものがある(例えば、特許文献1)。当該緩衝器では、減衰力可変バルブで緩衝器の伸縮時に生じる作動液の流れに与える抵抗を調節して緩衝器が発生する減衰力を高低調節できる。さらに、減衰力可変バルブをアウターシェルの側部に径方向外側へ突出させるように設けると、緩衝器のストローク長を犠牲にせずに緩衝器の軸方向長さを短くできる。よって、このようなシリンダ装置では搭載性を良好にできる。
【0003】
また、シリンダ装置の中には、ストラット式サスペンションに使用され、アウターシェルの下端部外周に溶接固定したブラケットを介してナックルに連結されて、車輪の位置決め用の支柱として利用されるものがある。当該ブラケットを有するシリンダ装置が前述の減衰力可変バルブのような突出部を備える場合には、当該突出部がブラケットで覆われる部分に配置されることがある。その場合には、ブラケットに突出部の挿通を許容する孔を設け、当該孔により露出させたアウターシェルの側部に突出部を溶接する(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-59574号公報
【文献】特開2015-197129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ストラット式サスペンションに使用されるシリンダ装置のブラケットは、アウターシェルの外周を抱持する断面C字状の筒状部と、この筒状部の周方向の両端から径方向外側へ平行に延びる一対の取付部とを有する。そして、ブラケットは、一対の取付部でナックルアームを挟んだ状態で固定される。
【0006】
このようなブラケットの筒状部において、一対の取付部が連なる部分を前部、当該前部を正面に向けるとともに、筒状部の中心を通る軸が鉛直方向へ延びるように配置した状態での左部分及び右部分を側部とすると、車両への取付状態における突出部と周辺部品との干渉を避ける上ではアウターシェルに溶接される突出部を、筒状部の側部から外方へ突出させるのが好ましい(例えば、特開2015-197129号公報の図2)。
【0007】
しかし、突出部を筒状部の側部から外方へ突出させた状態では、いくら突出部を挿通するための孔を大きくしたとしても溶接するのが難しい。なぜなら、筒状部の前部には、取付部が連なっていて突出部と取付部との距離が近いので、取付部が溶接作業の邪魔になるためである。このため、外周にブラケットが装着されたアウターシェルと突出部とを溶接用の機械にセットして自動で溶接する場合には、トーチ、又はトーチを駆動するアーム等の上記機械を構成する部品と取付部との干渉を避けるため、溶接用の機械が大掛かりになってコスト高になったり、機械による自動溶接を断念せざるを得なくなったりする可能性がある。
【0008】
そこで、本願発明は、突出部をアウターシェルに容易に溶接できるとともに、ブラケットをアウターシェルに溶接等で固定した状態で突出部を筒状部の側部から外方へ突出させられるシリンダ装置、及びシリンダ装置の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する請求項1に記載のシリンダ装置では、ブラケットがアウターシェルの外周を抱持して前部に割の入った断面C字状の筒状部と、前記筒状部の周方向の両端から径方向外側へ突出する一対の取付部とを有し、前記筒状部には、少なくとも一方の側部から背部にかけて前記突出部の挿通を許容する孔が形成されている。このため、突出部を孔に挿通させたまま、突出部を筒状部の側部から外方へ突出させたり、背部から外方へ突出させたりできる。
【0010】
よって、ブラケットを溶接等でアウターシェルに固定した状態で、突出部を筒状部の側部から外方へ突出させたとしても、ブラケットを固定する前の工程では、突出部を筒状部の背部から外方へ突出させられる。このような状態では、筒状部の前部に位置する取付部が突出部から離れるので、当該突出部をアウターシェルに溶接する際に取付部が邪魔にならない。
【0011】
請求項2に記載のシリンダ装置では、請求項1に記載の構成を備えるとともに、前記孔が前記割と前記筒状部の直径方向に向かい合う位置まで形成されている。このため、取付部が溶接作業の邪魔になるのを確実に防止できるとともに、溶接の精度を良好にできる。
【0012】
請求項3に記載のシリンダ装置では、請求項1又は2に記載の構成を備えるとともに、前記孔の前記筒状部の背部に位置する部分の軸方向長さは、前記孔の前記筒状部の側部に位置する部分の軸方向長さよりも長い。このため、突出部の溶接作業を一層容易にできるとともに、ブラケットの剛性を確保し易い。
【0013】
請求項4に記載のシリンダ装置では、請求項1から3の何れか一項に記載の構成を備えるとともに、前記孔の形状は、前記筒状部の中心を通る軸が鉛直方向へ延びるように前記筒状部を配置するとともに前記筒状部の前部を正面に向けた状態で、前記軸に対して左右対称形状とされている。このため、ブラケットをプレス加工で成形し易い。
【0014】
請求項5に記載のシリンダ装置の製造方法は、請求項2から4の何れか一項に記載のシリンダ装置の製造方法であって、前記突出部を前記筒状部の背部から外方へ突出させた状態で前記突出部を前記アウターシェルに溶接する突出部溶接工程と、前記ブラケットを周方向に回転し、前記突出部を前記筒状部の側部から外方へ突出させるブラケット位置変更工程と、前記筒状部を前記アウターシェルに溶接するブラケット溶接工程とをこの順に行う。このため、ブラケットを溶接した状態で、突出部を筒状部の側部から外方へ突出させたとしても、突出部をアウターシェルに溶接する際、取付部が邪魔にならない。
【発明の効果】
【0015】
本発明のシリンダ装置及びシリンダ装置の製造方法によれば、突出部をアウターシェルに容易に溶接できるとともに、ブラケットをアウターシェルに溶接等で固定した状態で突出部を筒状部の側部から外方へ突出させられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態に係るシリンダ装置である緩衝器の取付状態を示した取付図である。
図2】本発明の一実施の形態に係るシリンダ装置である緩衝器の本体部の縦断面を簡略化して示した縦断面図である。
図3】本発明の一実施の形態に係るシリンダ装置である緩衝器のブラケットを示した右側面図である。
図4】本発明の一実施の形態に係るシリンダ装置である緩衝器のブラケットを示した正面図である。
図5】本発明の一実施の形態に係るシリンダ装置である緩衝器のブラケットを示した平面図である。
図6】本発明の一実施の形態に係るシリンダ装置である緩衝器のブラケットを展開したときの孔を示した正面図である。
図7】(a)(b)は、突出部溶接時における緩衝器(本発明の一実施の形態に係るシリンダ装置)の状態を説明する説明図であり、(b)は(a)に記載の緩衝器を右方向から見た図である。(c)(d)(e)は、ブラケット溶接時における緩衝器(本発明の一実施の形態に係るシリンダ装置)の状態を説明する説明図であり、(d)は(c)に記載の緩衝器を右方向から見た図であり、(e)は(c)に記載の緩衝器を上方向から見た図である。各説明図において、ブラケットを簡略化して記載している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品を示す。
【0018】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るシリンダ装置は、ストラット型サスペンションに使用される緩衝器Aであり、四輪自動車等の車両に利用されている。緩衝器Aは、アウターシェル1と、アウターシェル1内に挿入されるロッド2とを有する本体部Dと、ロッド2を車体に連結する車体側マウント(図示せず)と、アウターシェル1を車輪Wに連結するブラケットBと、車体側マウントに取り付けられるばね受け(図示せず)と、アウターシェル1の外周に取り付けられる皿状のばね受け10と、両ばね受けの間に介装される懸架ばねSとを備える。
【0019】
より具体的には、車輪WはナックルNにより回転自在に支持されており、ブラケットBは、ナックルNに設けられて図1中斜め上方へ延びるナックルアームn1にボルトで固定され、本体部Dが車輪Wの位置決め用の支柱として機能する。そして、車両が凹凸のある路面を走行するなどして車輪Wが車体に対して上下に動くと、ロッド2がアウターシェル1に出入りして本体部Dが伸縮するとともに、ばね受けが遠近して懸架ばねSが伸縮し、これにより緩衝器Aが伸縮する。
【0020】
懸架ばねSは、コイルばねであり、本体部Dの外周に設けられている。懸架ばねSは、圧縮されると弾性力を発揮し、この弾性力は懸架ばねSの圧縮量が大きくなるほど大きくなる。この懸架ばねSにより車体が弾性支持されている。なお、懸架ばねSの構成は、適宜変更できる。例えば、懸架ばねSがエアばね等、コイルばね以外のばねであってもよい。
【0021】
また、本体部Dは、前述のように、アウターシェル1とロッド2とを備えるとともに、図2に示すように、シリンダ11と、シリンダ11内に摺動自在に挿入されるピストン20と、シリンダ11の上端部に固定される環状のロッドガイド12と、シリンダ11の下端部に固定されるボトム部材13と、シリンダ11の外周に設けた中間筒14とを備える。シリンダ11と中間筒14は、アウターシェル1の内側に配置されており、これらで三重管を構成する。ロッド2は、図2中下端がピストン20に連結されており、その上側がロッドガイド12で支えられつつアウターシェル1の外方へ突出する。
【0022】
アウターシェル1は、図2に示すように、有底筒状であり、底部となるボトムキャップ1aと、ボトムキャップ1aの外周部から上方へ延びる筒状部1bとを有する。そして、筒状部1bの上端開口部をロッドガイド12で塞ぎ、アウターシェル1の内部にできる空間を密閉している。また、アウターシェル1の側部には、筒状部1bの肉厚を貫通する取付孔1cが形成されている。当該取付孔1cには、後述する減衰力可変バルブVが先端を挿し込まれた状態で取り付けられている。
【0023】
シリンダ11内は、ピストン20で伸側室R1と圧側室R2の二つの部屋に区画されており、各部屋の中には作動油等の液体が充填されている。ピストン20のロッド2側に形成される部屋が伸側室R1、反対側の部屋が圧側室R2であり、伸側室R1の中心部をロッド2が貫通する。ピストン20には、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容するピストン通路20aが形成されている。
【0024】
また、シリンダ11の外周には、シリンダ11と中間筒14との間に筒状の排出通路Lが形成されるとともに、中間筒14とアウターシェル1との間に筒状の液溜室R3が形成されている。液溜室R3には、上記液体と気体が充填されている。シリンダ11には、伸側室R1に臨む位置に透孔11aが形成されており、排出通路Lは、上記透孔11aを介して伸側室R1と液溜室R3とを連通する。排出通路Lには、減衰力可変バルブVが設けられており、この減衰力可変バルブVで排出通路Lにおける液体の流れに抵抗を与えるとともに、当該抵抗を調節できる。
【0025】
また、ボトム部材13には、液溜室R3の液体をボトム部材13とボトムキャップ1aとの間に導くための切欠き13aと、液溜室R3から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路13bが形成されている。
【0026】
上記構成によれば、ロッド2がアウターシェル1から退出して緩衝器Aが伸長する場合、ピストン20がシリンダ11内を図2中上方へ移動して、伸側室R1が縮小し、圧側室R2が拡大する。緩衝器Aの伸長時において縮小する伸側室R1の液体は、透孔11aと排出通路Lを通って液溜室R3へ流出する。当該液体の流れに対して減衰力可変バルブVにより抵抗が与えられるので、緩衝器Aの伸長時には伸側室R1内の圧力が上昇し、緩衝器Aの伸長作動が抑制される。このようにして緩衝器Aは、伸長作動を抑制する伸側減衰力を発揮する。また、拡大する圧側室R2には、切欠き13aと、吸込通路13bを通じて液溜室R3の液体が供給される。
【0027】
反対に、ロッド2がアウターシェル1に進入して緩衝器Aが収縮する場合、ピストン20がシリンダ11内を図2中下方へ移動して、圧側室R2が縮小し、伸側室R1が拡大する。緩衝器Aの収縮時において縮小する圧側室R2の液体は、ピストン通路20aを通って拡大する伸側室R1へ移動する。さらに、緩衝器Aの収縮時には、シリンダ11内へ進入するロッド2体積分の液体がシリンダ11内で余剰になるので、この余剰分の液体が透孔11aと排出通路Lを通って液溜室R3へ流出する。当該液体の流れに対して減衰力可変バルブVにより抵抗が与えられるので、緩衝器Aの収縮時にはシリンダ11内の圧力が上昇し、緩衝器Aの収縮作動が抑制される。このようにして緩衝器Aは、収縮作動を抑制する圧側減衰力を発揮する。
【0028】
つまり、緩衝器Aでは、中間筒14とアウターシェル1とで内部に液溜室R3が形成されるリザーバを構成しており、当該リザーバでシリンダ11に出入りするロッド体積分のシリンダ内容積変化を補償したり、温度変化による液体の体積変化を補償したりできる。
【0029】
また、緩衝器Aは、ユニフロー型に設定されていて、緩衝器Aが伸縮作動を呈すると、液体が伸側室R1、液溜室R3(リザーバ)、圧側室R2の三つの部屋をこの順に一方通行で循環するとともに、排出通路Lを伸側室R1から液溜室R3(リザーバ)へ向けて液体が必ず流れるようになっている。このため、排出通路Lの途中に設けた単一の減衰力可変バルブVで伸圧両側の減衰力を発揮できるとともに、液体の流れに与える抵抗を調節して伸圧両側の減衰力を高低調節できる。
【0030】
減衰力可変バルブVの構成は、如何なる構成であってもよいが、減衰力可変バルブVは、例えば、排出通路Lに接続される通路が形成された弁座部材と、弁座部材に離着座して通路を開閉する主弁と、主弁の上流側の圧力を減圧して主弁の背面に導くパイロット通路と、パイロット通路の途中に設けられて主弁の背圧を制御するパイロット弁とを備えて構成される。そして、パイロット弁が電磁弁である場合には、パイロット弁への通電量を調節してパイロット弁の開弁圧を大小させると、主弁の開弁圧を大小させて減衰力を高低調節できる。
【0031】
また、減衰力可変バルブVは、ケースに収容されており、当該ケースは、アウターシェル1の側部に形成された取付孔1cの縁部に溶接される筒状のスリーブ30と、当該スリーブ30の開口を塞ぐキャップ31とを有して構成される。このため、スリーブ30をアウターシェル1に溶接してから、当該スリーブ30内に減衰力可変バルブVを収容すると、アウターシェル1の側部に減衰力可変バルブVを径方向外方へ突出させた状態で固定できる。このように、緩衝器Aでは、減衰力可変バルブVを収容するケース部分がアウターシェル1の側部に径方向外側へ突出する突出部3となる。そして、アウターシェル1を取付対象であるナックルNへ連結するためのブラケットBには、突出部3との干渉を避けるための孔8が形成されている(図1)。
【0032】
より詳しくは、ブラケットBは、図3-5に示すように、アウターシェル1の外周面に倣うように湾曲し、アウターシェル1の外周を覆う断面C字状の筒状部4と、この筒状部4の周方向の両端から径方向外側へ延びる一対の板状の取付部5,6と、補強用のリブ7a,7b,7cとを有する。そして、上記孔8は、図3,4に示すように、筒状部4の両方の側部から背部にかけて形成されている。
【0033】
本願明細書、及び特許請求の範囲において、一対の取付部5,6が設けられる部分がブラケットB及び筒状部4の前部、その反対側が背部、図4に示すように一対の取付部5,6(前部)を正面に向けるとともに、筒状部4の中心を通る軸Xが鉛直方向へ延びるように配置した状態での左部分及び右部分が左右の側部である。
【0034】
そして、図3は、ブラケットBの右側部を正面に向けた状態を示す右側面図であり、図4は、ブラケットの前部を正面に向けた状態を示す正面図であり、図5は、図4のブラケットを上側から見た状態を示す平面図である。また、ブラケットBは、図4に示す正面図において、筒状部4の中心を通る軸Xに対して左右対称の線対称形状とされており、ブラケットBの左側面は図3に示す右側面と左右対称である。以下、説明の便宜上、図4に示すブラケットBの上、下、左、右、手前、及び奥を、特別な説明のない限り、単に「上」「下」「左」「右」「手前」「奥」とする。
【0035】
筒状部4の前部には、軸方向に沿って割4a(図5)が形成されており、筒状部4を径方向に切断したときの断面が軸方向の全てでC字状となる。左右の取付部5,6は、筒状部4の周方向の両端から一定の間隔を保ちつつ手前側へ延びており、向い合せに配置されている。リブ7a,7b,7cは、全て、筒状部4から一方の取付部(5又は6)にかけて設けられ、ブラケットBの上部と、軸方向(上下)の中央部と、下端にそれぞれ形成されている。なお、リブ7a,7b,7cの位置及び形状は、図示する限りではなく、ブラケットBの剛性を確保できればよい。
【0036】
また、左右の取付部5,6には、それぞれの上部と下部に、ボルトを挿通可能な挿通孔9a,9bが形成されている(図3)。そして、一対の取付部5,6の間にナックルアームn1(図1)を挿入し、一方の取付部の上側の挿通孔9aから他方の取付部の上側の挿通孔9aにかけてボルトを挿通し、一方の取付部の下側の挿通孔9bから他方の取付部の下側の挿通孔9bにかけてボルトを挿通し、上下のボルトにそれぞれナットを螺合してこれらのナットを締め付けることにより、ブラケットBがナックルNに連結される。
【0037】
つづいて、筒状部4には、前述のように、当該筒状部4の左右の側部から背部にかけて孔8が形成されている。図6は、ブラケットBを展開した状態での孔8の形状を示している。孔8において、筒状部4の左右の側部に形成される部分を側部開口80,81、筒状部4の背部に形成される部分を背部開口82とする。
【0038】
前述のようにブラケットBが左右対称形状とされているので、孔8の形状も左右対称形状となっている。このため、左右の側部開口80,81の代表として右側の側部開口81について説明する。この側部開口81は、ブラケットBをアウターシェル1の外周に溶接した状態で、突出部3が筒状部4の側部から外方へ突出するのを許容しつつ、ブラケットBと突出部3が干渉するのを防止する。側部開口81の縁8aは、前部側へ膨らむように円弧状に湾曲している(図3)。このため、突出部3を筒状部4の側部から突出させた状態で、孔8の縁と突出部3との干渉を避けつつブラケットBの剛性を確保するのが容易である。
【0039】
また、背部開口82は、筒状部4にアウターシェル1が挿入された状態で、突出部3が筒状部4の背部から外方へ突出するのを許容しつつ、ブラケットBと突出部3が干渉するのを防止する。背部開口82は、その軸方向長さが側部開口80,81の軸方向長さよりも長く、背部開口82の上側の縁8bは、上方へ膨らむように円弧状に湾曲している(図3,4)。このため、突出部3を筒状部4の背部から突出させた状態で、突出部3から孔8の縁までの距離を長く取りつつブラケットBの剛性を確保するのが容易である。
【0040】
以下、本実施の形態に係るシリンダ装置である緩衝器Aの製造方法について説明する。
【0041】
まず、突出部3を設ける前のアウターシェル1をブラケットBの筒状部4に挿入する。そして、背部開口82から露出させたアウターシェル1の側部にスリーブ30(図2)を押し付けつつ、当該スリーブ30をアウターシェル1に溶接する。当該工程により、アウターシェル1の側部に径方向外方へ突出する突出部3が設けられる。当該工程では、図7(a)(b)に示すように、突出部3は、背部開口82を通じてブラケットBの背部から外方へ突出した状態となっている。なお、取付孔1c(図2)は、スリーブ30の溶接前に形成しても、溶接後に形成してもよい。
【0042】
つづいて、図7(c)(d)(e)に示すように、ブラケットBをアウターシェル1の軸方向にずらすとともに(矢印Y1)、周方向に回転させて(矢印Y2)、突出部3を側部開口81へ移動させる。このように、先の工程でアウターシェル1の側部に設けた突出部3を、側部開口81を通じてブラケットBの側部から外方へ突出させた状態で、筒状部4をアウターシェル1に溶接する。
【0043】
つまり、緩衝器Aは、アウターシェル1に突出部3を設ける突出部溶接工程と、アウターシェル1にブラケットBを溶接するブラケット溶接工程の二つの溶接工程を経て製造される。そして、二つの溶接工程の間に、ブラケットBの位置を変更するブラケット位置変更工程を挟んでいる。
【0044】
よって、最終的には、突出部3を筒状部4の側部から外方へ突出させた状態でブラケットBがアウターシェル1に固定されるものの、突出部溶接工程においては、突出部3を筒状部4の背部から外方へ突出させた状態にできる。このような状態では、孔8の縁から突出部3までの距離が離れている。このため、トーチと孔8の縁との干渉を避け易い。
【0045】
さらに、突出部3を筒状部4の側部から外方へ突出させた状態では、筒状部4の前部に位置する一対の取付部5,6が突出部3と反対側へ突出する(図7(a)(b))。よって、溶接時にトーチを動かしたり、アウターシェル1に対するトーチの角度を一定にするためアウターシェル1を揺動させたりしても、取付部5,6が溶接の邪魔にならない。
【0046】
よって、突出部溶接工程では、トーチの作業スペースを充分に確保できるので突出部を溶接し易く、アウターシェル1に対するトーチの角度を所定の角度に維持し易いので溶接の精度を向上できる。
【0047】
また、突出部溶接工程では、筒状部4の割4aが突出部3と反対側を向くようになっており、当該割4aからアウターシェル1の外周面が露出する(図7(b))。このため、突出部溶接工程では、アウターシェル1において、突出部3と直径方向の反対側に位置する部分を支持具等で直接支えられる。すると、アウターシェル1の軸を正確に把握できるので、突出部3の中心を通る軸がアウターシェル1の中心を通る軸に対して直交するように精度よく溶接できる。
【0048】
また、上記突出部溶接工程からブラケット位置変更工程を経てブラケット溶接工程へ移行するので、ブラケットBがアウターシェル1に溶接された状態では、突出部3を筒状部4の側部から外方へ突出させた状態に位置決めできる(図7(c)(d)(e))。すると、図1に示すように、緩衝器Aを車両に取り付けた状態で、ブラケットBの前部が車輪W側を向き、突出部3が車両の前方或いは後方へ向けて突出する。よって、突出部3が車両における周辺部品との干渉を避けられる。
【0049】
例えば、図示を省略するが、アウターシェル1の外周にスタビライザブラケットが溶接により固定され、当該スタビライザブラケットにスタビライザのアーム部が連結される場合には、ブラケットBの背部側(図1中右側)の空間はアーム部の可動用のスペースとなっている。このような場合には、突出部3を前述のように設けると、車両のレイアウトを変更せずに突出部3とアーム部との干渉を避けられる。
【0050】
なお、緩衝器Aでは、ブラケットBをアウターシェル1に溶接した状態で、突出部3が右側の側部開口81に挿通された状態になっている。しかし、車輪Wと左右で対となる車輪に取り付けられる緩衝器にブラケットBを利用する場合には、ブラケットBをアウターシェル1に溶接した状態で、突出部3が左側の側部開口80に挿通された状態にする。すると、左右で対となる緩衝器の取付状態において、共通のブラケットBを利用しつつ、突出部3の突出方向を同じにできる。
【0051】
また、ブラケット溶接工程を終了した段階では、突出部3がスリーブ30(図2)のみで構成されている。当該ブラケット溶接工程終了後に、アウターシェル1にシリンダ11、中間筒14、ロッド2、ピストン20、ボトム部材13等を組み付ける本体部組立工程を行うようになっており、当該本体部組立工程においてスリーブ30に減衰力可変バルブVが収容されて、キャップ31が装着される。しかし、スリーブ30が溶接された後であれば、いつでも、スリーブ30に減衰力可変バルブVとキャップ31を組み付けられる。
【0052】
以下、本実施の形態に係るシリンダ装置である緩衝器Aの作用効果について説明する。
【0053】
緩衝器Aは、突出部3を筒状部4の背部から外方へ突出させた状態で突出部3をアウターシェル1に溶接する突出部溶接工程と、ブラケットBを周方向に回転し、突出部3を筒状部4の側部から外方へ突出させるブラケット位置変更工程と、筒状部4をアウターシェル1に溶接するブラケット溶接工程とを、この順に経て製造される。
【0054】
上記方法によれば、ブラケットBをアウターシェル1に溶接した状態で、突出部3を筒状部4の側部から外方へ突出させられるので、突出部3と周辺部品との干渉を避けられる。また、ブラケットBをアウターシェル1に溶接した状態で、突出部3を本体部4の側部から外方へ突出させる場合であっても、ブラケットBを溶接する前の突出部3の溶接時には、当該突出部3の反対側に取付部5,6を向けられる。よって、突出部3を溶接する際に取付部5,6が邪魔にならず、突出部3の溶接作業を容易にできるとともに、機械にセットして自動で上記溶接をするのも容易である。
【0055】
また、緩衝器Aでは、図1に示すように、突出部3がアウターシェル1の下部に設けられている。そこで、背部開口82における上側の縁8bのみを上方へ張り出するように湾曲させ、下側の縁8cはブラケットBを展開した状態で側部開口80,81の縁から直線状に延長されるように形成している(図6)。そして、突出部溶接工程では、溶接された状態でのブラケットBの位置よりも低い位置で突出部3を溶接し(図7(a))、ブラケット位置変更工程において、ブラケットBを周方向へ回転するとともに軸方向上方へずらしている(図7(c)(d)中、矢印Y1,Y2)。
【0056】
上記構成によれば、背部開口82の上下幅をトーチと干渉しないように充分に大きくしたとしても、筒状部4における孔8の下側の部分の上下幅が狭くなって当該部分の剛性が弱くなり過ぎるのを防止できる。しかし、ブラケットBの剛性が確保されていれば、孔8の形状は適宜変更できる。また、当該孔8の形状及び突出部3の位置によっては、ブラケット位置変更工程でブラケットBを軸方向に動かす方向を変えたり、ブラケットBを軸方向に動かすのをやめたりできる。
【0057】
例えば、ブラケットBを溶接等でアウターシェル1に固定した状態で、突出部3がブラケットBの軸方向上部分に位置する場合には、孔8の形状を上下逆にして、ブラケットBをずらす方向を矢印Y1と逆向きにするとよい。また、ブラケットBを溶接等でアウターシェル1に固定した状態で、突出部3がブラケットBの軸方向中央部分に位置する場合には、側部開口80,81を筒状部4の軸方向の中央部分に配置できる。このような場合には、背部開口82が上下に張り出すように孔8を形成してもよく、このようにすると、ブラケット位置変更工程で、ブラケットBを軸方向へ移動せずに済む。
【0058】
また、緩衝器Aにおいて、ブラケットBの形状が左右対称形状とされており、孔8の形状が左右対称形状とされている。左右対称とは、筒状部4の中心を通る軸Xが鉛直方向へ延びるように筒状部4を配置するとともに、筒状部4の前部を正面に向けた状態で、上記軸Xに対して左右対称となっていることをいう。また、左右対称形状とは、厳密に左右対称になっていなくてもよく、製造上の誤差を含む。
【0059】
上記構成によれば、ブラケットBを容易に成形できる。より詳しくは、ブラケットBは、一枚の金属板である母材をプレス加工することによって形成されている。このようにブラケットをプレス加工で成形する場合、大きな開口がブラケットの右半分にのみ形成される等、ブラケットの形状が左右非対称になって左右で剛性の差が大きくなると、成形時において剛性の小さい方がより大きく変形してしまい、一対の取付部が手前奥方向にずれてしまうことがある。このように取付部がずれる場合には、取付部の矯正、成形条件の調整等が必要になり、ブラケットを成形するのが難しくなる。つまり、ブラケットBを成形する上では、孔8の形状を左右対称形状にして、ブラケットBの左右の剛性差を小さくするのが好ましく、ブラケットB自体の形状を左右対称形状にするのがより好ましい。
【0060】
なお、ブラケットBの成形が可能であれば、ブラケットB及び孔8の形状は左右非対称であってもよい。具体的には、緩衝器Aのように、ブラケットBを溶接した状態で、突出部3を右側の側部開口81に挿通した状態にする場合には、左側の側部開口80を廃止できる。反対に、ブラケットBを溶接した状態で、突出部3を左側の側部開口80に挿通した状態にする場合には、右側の側部開口81を廃止できる。
【0061】
また、緩衝器Aにおいて、背部開口(孔8における筒状部4の背部に位置する部分)82の軸方向長さは、側部開口(孔8における筒状部4の側部に位置する部分)80,81の軸方向長さよりも長い。このため、突出部溶接工程において、突出部3から孔8の縁までの距離を充分に離すことができ、溶接作業を一層容易にできる。さらに、突出部3から孔8の縁までの距離を充分に取ったとしても、側部開口80,81の軸方向長さは短いので、ブラケットBの剛性を確保し易い。なお、孔8の縁とトーチとの干渉を防ぐとともに、ブラケットBの剛性を確保できれば、側部から背部にかけての孔8の軸方向長さを一定にしてもよい。
【0062】
また、緩衝器Aにおいて、孔8は、割4aと直径方向に向かい合う位置まで形成されており(図4)、突出部3を筒状部4の背部の周方向中央位置から外方へ突出させられる(図7(b))。この場合、突出部溶接工程において、突出部3の中心を通る線分と、筒状部4の直径方向に延びて一対の取付部5,6の中心を通る線分の成す角度θ(以下、突出部3に対する取付部5,6の角度θという)が約180度になる(図7(b))。この場合、両方の取付部5,6が突出部3から離れるので、取付部5,6が溶接作業の邪魔になるのを確実に防止できる。さらに、割4aから露出したアウターシェル1の外周を直接支えた状態で、突出部3をアウターシェル1に押し付けつつ溶接できるので、溶接の精度を良好にできる。
【0063】
なお、孔8は、筒状部4における少なくとも一方の側部から背部に達するように形成されていて、突出部3を孔8に挿通したまま側部開口(80又は81)から背部開口82へ移動できればよい。つまり、突出部3に対する取付部5,6の角度θは180度未満でもよく、孔8が割4aと直径方向に向かい合う位置に達していなくてもよい。しかし、例えば、後者の場合等、アウターシェル1における突出部3の直径方向反対側がブラケットで覆われている場合には、当該ブラケットを介してアウターシェルを支えてもよいが、ブラケットの寸法には製造上の誤差があるので、アウターシェルの軸を正確に把握するのが難しくなる。
【0064】
また、緩衝器(シリンダ装置)Aは、筒状のアウターシェル1と、アウターシェル1の側部に設けられて径方向外側へ突出する突出部3と、アウターシェル1の外周に取り付けられるブラケットBとを備える。このブラケットBは、アウターシェル1の外周を抱持して前部に割4aの入った断面C字状の筒状部4と、筒状部4の周方向の両端から径方向外側へ突出する一対の取付部5,6とを有する。そして、筒状部4には、両方の側部から背部にかけて突出部3の挿通を許容する孔8が形成されている。
【0065】
上記構成によれば、突出部3を孔8に挿通させたまま、突出部3を筒状部4の側部から外方へ突出させたり、背部から外方へ突出させたりできる。このため、ブラケットB溶接時には、筒状部4の側部から突出部3を突出させるようにして、突出部3と周辺部品との干渉を避けられる。
【0066】
また、このようにブラケットBをアウターシェル1に溶接した状態で、突出部3を筒状部4の側部から突出させる場合であっても、孔8が筒状部4の背部まで形成されていて、ブラケットBを溶接する前の状態では、取付部5,6を突出部3の反対側へ向けられる。よって、このような状態で突出部3をアウターシェル1に溶接すると、当該溶接時に取付部5,6が邪魔にならず、突出部3の溶接作業を容易にできるとともに、機械にセットして自動で上記溶接をするのも容易である。
【0067】
また、孔8が筒状部4の両方の側部から背部にかけて形成されているので、緩衝器Aが車両に利用される場合であって、左右で対となる車輪のうち、左側の車輪に取り付けられる緩衝器と、右側の車輪に取り付けられる緩衝器の両方で共通のブラケットを利用できる。よって、車両を構成する部品の種類を削減できるとともに、左側用の緩衝器に右側用のブラケットを装着する等、ブラケットの誤組の発生も防止できる。
【0068】
なお、前述のように、孔8は、筒状部4の少なくとも一方の側部から背部にかけて形成されていればよく、必ずしも孔8を筒状部4の両方の側部から背部にかけて形成する必要はない。
【0069】
また、緩衝器Aでは、ブラケットBがアウターシェル1に溶接された状態で、突出部3に対する取付部5,6の角度θが約90度になるようになっている(図7(d))。当該角度θは、適宜変更できるものの、緩衝器A等のシリンダ装置がストラット式サスペンションに使用される場合であって、車両における周辺部品との干渉を避ける上では、角度θが90±5度程度とされるのが好ましい。
【0070】
また、本実施の形態において、ブラケットBは、一枚の板状の母材をプレス加工することにより形成されており、一枚板構造となっているが、一対の取付部5,6の間に挿入される断面U字状のインナーブラケットを備えて、二枚板構造となっていてもよい。
【0071】
また、本実施の形態において、突出部3が減衰力可変バルブVの一部である。減衰力可変バルブVのような、減衰力調整部を緩衝器Aに設ける場合、減衰力調整部の内部に液体を引き込む必要がある。よって、突出部がブラケットと重なる位置に配置される場合には、ブラケットに孔を形成し、当該孔を通じてアウターシェルに突出部を直接溶接する必要があり、要求される精度が高い。よって、突出部が減衰力調整部である場合には、本発明を適用するのが特に有効である。しかし、突出部3は、減衰力調整部以外の構成であってもよい。
【0072】
また、本実施の形態において、シリンダ装置は緩衝器Aであり、液体の流れに抵抗を与えて減衰力を発揮するが、これ以外の方法(例えば、電磁力、摩擦力等)で減衰力を発揮してもよく、対象物を積極的に駆動するアクチュエータであってもよい。
【0073】
そして、これらの変更は、孔8の形状、孔8を設ける範囲によらず可能である。
【0074】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
A・・・緩衝器(シリンダ装置)、B・・・ブラケット、X・・・筒状部の中心を通る軸、1・・・アウターシェル、3・・・突出部、4・・・筒状部、4a・・・割、5,6・・・取付部、8・・・孔、80,81・・・側部開口(孔の筒状部の側部に位置する部分)、82・・・背部開口(孔の筒状部の背部に位置する部分)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7