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特許7104837溶存ガス濃度測定方法、溶存水素濃度測定装置及び透析液調製用水製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】溶存ガス濃度測定方法、溶存水素濃度測定装置及び透析液調製用水製造装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20220713BHJP
   C02F 1/68 20060101ALI20220713BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20220713BHJP
   C02F 1/461 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
G01N27/416 300G
C02F1/68 510A
C02F1/68 520B
C02F1/68 530A
C02F1/68 530L
C02F1/68 540D
C02F1/44 H
C02F1/461 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021112355
(22)【出願日】2021-07-06
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】591201686
【氏名又は名称】株式会社日本トリム
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】橘 孝士
(72)【発明者】
【氏名】小泉 義信
(72)【発明者】
【氏名】三宅 正人
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-142208(JP,A)
【文献】特開2015-081799(JP,A)
【文献】特開2019-013873(JP,A)
【文献】特開2015-177911(JP,A)
【文献】特開2017-020823(JP,A)
【文献】国際公開第2016/178436(WO,A2)
【文献】特開2002-350396(JP,A)
【文献】特開2015-139475(JP,A)
【文献】特開2015-087221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/416
C02F 1/68
C02F 1/44
C02F 1/461
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガスが溶け込んだ液体の溶存第1ガス濃度を測定する方法であって、
第1極室及び第2極室を有する発電セルの前記第1極室に前記液体を供給する第1ステップと、
前記第1極室に供給された前記液体の供給量を検出する第2ステップと、
前記第1ガスと反応することにより電気エネルギーを発生する第2ガスを前記発電セルの前記第2極室に供給する第3ステップと、
前記第1極室内の前記第1ガスと前記第2極室内の前記第2ガスとを反応させて、前記電気エネルギーを発生させる第4ステップと、
前記第4ステップで発生した前記電気エネルギーを検出する第5ステップと、
前記第2ステップで検出された前記液体の前記供給量及び前記第5ステップで検出された前記電気エネルギーに基づいて、前記溶存第1ガス濃度を計算する第6ステップとを含み、
前記第5ステップは、前記第4ステップで発生した前記電気エネルギーを増幅し、電気信号として出力するステップを含む、
溶存ガス濃度測定方法。
【請求項2】
前記第4ステップは、前記液体から前記第1ガスを放出させるステップを含む、請求項1に記載の溶存ガス濃度測定方法。
【請求項3】
増幅された前記電気信号からノイズ成分を除去するステップを含む、請求項1または2に記載の溶存ガス濃度測定方法。
【請求項4】
水素ガスが溶け込んだ溶存水素水の溶存水素濃度を測定するための装置であって、
前記溶存水素水が供給される第1極室と、酸素ガスが供給される第2極室とを有し、前記第1極室内の前記水素ガスと前記第2極室内の前記酸素ガスとを反応させて、電気エネルギーを発生させる発電セルと、
前記溶存水素水の前記第1極室への供給量を検出する流量センサーと、
前記発電セルが発生した前記電気エネルギーを増幅し、電気信号として出力する増幅器と、
前記増幅器から入力された前記電気信号に基づいて、前記発電セルが発生した前記電気エネルギーを検出する電気エネルギー検出部と、
前記流量センサーによって検出された前記供給量及び前記電気エネルギー検出部によって検出された前記電気エネルギーに基づいて、前記溶存水素濃度を計算する計算部とを含む、
溶存水素濃度測定装置。
【請求項5】
前記溶存水素水から前記水素ガスを放出させる放出装置を含む、請求項4に記載の溶存水素濃度測定装置。
【請求項6】
前記増幅器によって増幅された前記電気信号からノイズ成分を除去するノイズ除去装置をさらに含む、請求項4または5に記載の溶存水素濃度測定装置。
【請求項7】
透析液調製用水を製造するための装置であって、
原水に水素ガスを溶解させて溶存水素水を生成する水素溶解装置と、
前記溶存水素水を逆浸透処理することにより血液透析の透析液調製用水を製造する逆浸透処理装置と、
前記逆浸透処理装置で生成された透析液調製用水の溶存水素濃度を測定するための請求項4ないし6のいずれか1項に記載の溶存水素濃度測定装置とを含む、
透析液調製用水製造装置。
【請求項8】
前記水素溶解装置は、前記原水を電気分解することにより、前記水素ガスを発生させる電解槽と、前記電解槽に供給する電解電流を制御する第1制御部とを含む、請求項7に記載の透析液調製用水製造装置。
【請求項9】
前記第1制御部は、前記計算部によって計算された前記溶存水素濃度に基づいて、前記電解電流を制御する、請求項8に記載の透析液調製用水製造装置。
【請求項10】
透析液調製用水を製造するための装置であって、
原水に水素ガスを溶解させて溶存水素水を生成する水素溶解装置と、
前記溶存水素水を逆浸透処理することにより血液透析の透析液調製用水を製造する逆浸透処理装置と、
前記逆浸透処理装置で生成された透析液調製用水の溶存水素濃度を測定するための溶存水素濃度測定装置とを含み、
前記溶存水素濃度測定装置は、
前記溶存水素水が供給される第1極室と、酸素ガスが供給される第2極室とを有し、前記第1極室内の前記水素ガスと前記第2極室内の前記酸素ガスとを反応させて、電気エネルギーを発生させる発電セルと、
前記溶存水素水の前記第1極室への供給量を検出する流量センサーと、
前記発電セルが発生した前記電気エネルギーを検出する電気エネルギー検出部と、
前記流量センサーによって検出された前記供給量及び前記電気エネルギー検出部によって検出された前記電気エネルギーに基づいて、前記溶存水素濃度を計算する計算部とを含み、
前記水素溶解装置は、前記原水に泡状の水素ガスを供給する水素供給装置と、前記水素ガスの前記供給量を制御する第2制御部とを含む、透析液調製用水製造装置。
【請求項11】
前記第2制御部は、前記計算部によって計算された前記溶存水素濃度に基づいて、前記水素ガスの前記供給量を制御する、請求項10に記載の透析液調製用水製造装置。
【請求項12】
前記逆浸透処理装置から前記透析液調製用水を取り出すため取水口に至る第1水路と、前記第1水路から分岐して、前記発電セルを経由して排水口に至る第2水路とを含む、請求項7ないし11のいずれか1項に記載の透析液調製用水製造装置。
【請求項13】
前記第1水路から前記第2水路への水流を制御するバイパス弁をさらに含む、請求項12に記載の透析液調製用水製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶存ガス濃度測定方法、溶存水素濃度測定装置及び透析液調製用水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電解水を用いた血液透析治療が、患者の酸化ストレスの低減に有効であるとして、注目されている。近年の血液透析では、治療に用いられている電解水の溶存水素濃度を正確に知得できるよう要望されている。
【0003】
そして、特許文献1では、被測定液中の溶存水素濃度を測定するための装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-081799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された装置では、被測定液の供給量が変動する用途では、正確な溶存水素濃度を測定することが困難でさらなる改良が求められている。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、被測定液の供給量が変動する用途で用いられても、正確な溶存水素濃度を測定できる溶存水素濃度測定技術を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1ガスが溶け込んだ液体の溶存第1ガス濃度を測定する方法であって、第1極室及び第2極室を有する発電セルの前記第1極室に前記液体を供給する第1ステップと、前記第1極室に供給された前記液体の供給量を検出する第2ステップと、前記第1ガスと反応することにより電気エネルギーを発生する第2ガスを前記発電セルの前記第2極室に供給する第3ステップと、前記第1極室内の前記第1ガスと前記第2極室内の前記第2ガスとを反応させて、前記電気エネルギーを発生させる第4ステップと、前記第4ステップで発生した前記電気エネルギーを検出する第5ステップと、前記第2ステップで検出された前記液体の前記供給量及び前記第4ステップで検出された前記電気エネルギーに基づいて、前記溶存第1ガス濃度を計算する第6ステップとを含む。
【0008】
本発明に係る前記溶存水素濃度測定方法において、前記第4ステップは、前記液体から前記第1ガスを放出させるステップを含む、ことが望ましい。
【0009】
本発明は、水素ガスが溶け込んだ溶存水素水の溶存水素濃度を測定するための装置であって、前記溶存水素水が供給される第1極室と、酸素ガスが供給される第2極室とを有し、前記第1極室内の前記水素ガスと前記第2極室内の前記酸素ガスとを反応させて、電気エネルギーを発生させる発電セルと、前記溶存水素水の前記第1極室への供給量を検出する流量センサーと、前記発電セルが発生した前記電気エネルギーを検出する電気エネルギー検出部と、前記流量センサーによって検出された前記供給量及び前記電気エネルギー検出部によって検出された前記電気エネルギーに基づいて、前記溶存水素濃度を計算する計算部とを含む。
【0010】
本発明に係る前記溶存水素濃度測定装置において、前記溶存水素水から前記水素ガスを放出させる放出装置を含む、ことが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記溶存水素濃度測定装置において、前記発電セルが発生した前記電気エネルギーを増幅し、電気信号として前記電気エネルギー検出部に出力する増幅器をさらに含む、ことが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記溶存水素濃度測定装置において、前記増幅器によって増幅された前記電気信号からノイズ成分を除去するノイズ除去装置をさらに含む、ことが望ましい。
【0013】
本発明は、透析液調製用水を製造するための装置であって、水に水素ガスを溶解させて溶存水素水を生成する水素溶解装置と、前記溶存水素水を逆浸透処理することにより血液透析の透析液調製用水を製造する逆浸透処理装置と、前記逆浸透処理装置で生成された透析液調製用水の溶存水素濃度を測定するための前記溶存水素濃度測定装置とを含む。
【0014】
本発明に係る前記透析液調製用水製造装置において、前記水素溶解装置は、前記原水を電気分解することにより、水素ガスを発生させる電解槽と、前記電解槽に供給する電解電流を制御する第1制御部とを含む、ことが望ましい。
【0015】
本発明に係る前記透析液調製用水製造装置において、前記第1制御部は、前記計算部によって計算された前記溶存水素濃度に基づいて、前記電解電流を制御する、ことが望ましい。
【0016】
本発明に係る前記透析液調製用水製造装置において、前記水素溶解装置は、前記原水に泡状の水素ガスを供給する水素供給装置と、前記水素ガスの前記供給量を制御する第2制御部とを含む、ことが望ましい。
【0017】
本発明に係る前記透析液調製用水製造装置において、前記第2制御部は、前記計算部によって計算された前記溶存水素濃度に基づいて、前記水素ガスの前記供給量を制御する、ことが望ましい。
【0018】
本発明に係る前記透析液調製用水製造装置において、前記逆浸透処理装置から前記透析液調製用水を取り出すため取水口に至る第1水路と、前記第1水路から分岐して、前記発電セルを経由して排水口に至る第2水路とを含む、ことが望ましい。
【0019】
本発明に係る前記透析液調製用水製造装置において、前記第1水路から前記第2水路への水流を制御するバイパス弁をさらに含む、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の前記溶存ガス濃度測定方法では、前記第2ステップで検出された前記液体の前記供給量及び前記第4ステップで検出された前記電気エネルギーに基づいて、前記第6ステップで前記溶存第1ガス濃度を計算する。従って、前記液体の前記供給量が変動する用途で用いられても、溶存第1ガス濃度が正確に測定できるようになる。
【0021】
本発明の前記溶存水素濃度測定装置では、前記流量センサーによって検出された前記供給量及び前記電気エネルギー検出部によって検出された前記電気エネルギーに基づいて、前記計算部が前記溶存水素濃度を計算する。従って、前記溶存水素水の前記供給量が変動する用途で用いられても、前記溶存水素濃度が正確に測定できるようになる。
【0022】
本発明の透析液調製用水製造装置では、前記溶存水素水を生成する前記水素溶解装置と、前記溶存水素水を逆浸透処理する前記逆浸透処理装置と、前記逆浸透処理装置で生成された前記透析液調製用水の前記溶存水素濃度を測定する。従って、前記透析液調製用水の前記生成量が変動する用途で用いられても、前記溶存水素濃度が正確に測定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一形態の溶存水素濃度測定装置の概略構成を示す図である。
図2】本発明の一形態の溶存水素濃度測定方法の手順を示すフローチャートである。
図3図1の溶存水素濃度測定装置の変形例の概略構成を示す図である。
図4図3の溶存水素濃度測定装置を含む透析液調製用水製造装置の概略構成を示す図である。
図5図4の水素溶解装置の一実施形態の概略構成を示す図である。
図6図5の水素溶解装置の変形例の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の溶存水素濃度測定装置1の構成を示している。溶存水素濃度測定装置1は、水素ガスが溶け込んだ溶存水素水の溶存水素濃度を測定するための装置である。
【0025】
溶存水素濃度測定装置1は、発電セル2と、流量センサー3と、電気エネルギー検出部4と、計算部5とを含んでいる。
【0026】
発電セル2は、溶存水素水が供給される第1極室21と、酸素ガスが供給される第2極室22とを有している。第1極室21には第1電極23が、第2極室22には第2電極24がそれぞれ配されている。第1電極23と第2電極24との間には、固体高分子膜等からなる電解質膜25が配されている。電解質膜25は、発電セル2の内部を第1極室21と第2極室22とに区分する。
【0027】
発電セル2は、第1極室21内の水素ガスと第2極室22内の酸素ガスとを反応させて、電気エネルギー(電力)を発生させる。発電セル2の動作に関しては、燃料電池の発電原理と同様である。発電セル2にて発生した電気エネルギーは、第1電極23及び第2電極24から取り出すことができる。
【0028】
流量センサー3は、例えば、第1極室21に溶存水素水を供給するための流路に設けられる。流量センサー3は、溶存水素水の第1極室21への供給量を検出し、上記供給量に相当する電気信号を計算部5に出力する。
【0029】
電気エネルギー検出部4は、発電セル2の第1電極23及び第2電極24に接続されている。電気エネルギー検出部4は、第1電極23及び第2電極24間の電圧及び電流に基づいて発電セル2が発生した電気エネルギーを検出し、電気エネルギー検出部4は、上記電気エネルギーに相当する電気信号を計算部5に出力する。
【0030】
計算部5は、流量センサー3及び電気エネルギー検出部4に接続されている。計算部5には、例えば、プロセッサー及びメモリを備えたマイクロコンピューターチップが適用される。
【0031】
計算部5は、流量センサー3によって検出された供給量及び電気エネルギー検出部4によって検出された電気エネルギーに基づいて、溶存水素濃度を計算する。計算部5によって計算された溶存水素濃度は、例えば、液晶パネル等の表示部(図示せず)に出力される。計算部5によって計算された溶存水素濃度を記憶する記憶部が設けられていてもよい。
【0032】
発電セル2が発生させた電気エネルギーは、第1極室21への水素ガスの充填量すなわち、第1極室21に供給される溶存水素水の溶存水素濃度及び供給量と、第2極室22への酸素ガスの充填量すなわち、第2極室22への酸素ガスの供給量に依存する。このため、酸素ガスの供給量を一定とした場合、上記電気エネルギーは、第1極室21に供給される溶存水素水の溶存水素濃度及び供給量との間で、一定の相関関係を有し、それには再現性が認められる。
【0033】
そして、本願発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、第2極室22内の酸素ガスの濃度を一定に保ちつつ、第1極室21発電セルに流れ込む溶存水素水の流量及び発電セル2が発生させた電気エネルギーを測定することによって、溶存水素水の溶存水素濃度を計算できることを見出した。溶存水素濃度の計算にあたっては、事前に、電気エネルギーと溶存水素水の溶存水素濃度及び供給量との関係を特定する必要がある。電気エネルギーと溶存水素水の溶存水素濃度及び供給量との関係は、溶存水素濃度が既知の溶存水素水を第1極室21に供給し、流量センサー3及び電気エネルギー検出部4によって検出された供給量及び電気エネルギーから特定可能である。
【0034】
本溶存水素濃度測定装置1では、流量センサー3によって検出された溶存水素水の供給量及び電気エネルギー検出部4によって検出された電気エネルギーに基づいて、計算部5が溶存水素濃度を計算する。従って、溶存水素水の供給量が変動する用途で用いられても、溶存水素濃度が正確に測定できるようになる。
【0035】
本溶存水素濃度測定装置1では、溶存水素水から水素ガスを放出させる放出装置6を含む、のが望ましい。溶存水素水から水素ガスが放出されることにより、酸素ガスとの反応が促進され、電気エネルギー検出部4によって電気エネルギーとして検出される。従って、溶存水素水に溶け込んだ水素ガスの濃度が正確に測定される。
【0036】
本実施形態の放出装置6は、溶存水素水を加熱するヒーターを含んでいる。ヒーターは、第1極室21内のまたは第1極室21に供給される溶存水素水を加熱する。ヒーターが溶存水素水を加熱することにより、溶存水素水を構成する分子の衝突が激しくなり、溶存水素水から水素ガスが放出される。放出装置6は、上記ヒーターに替えて、または上記ヒーターに加えて、溶存水素水を攪拌する構成を含んでいてもよい。
【0037】
図2は、溶存水素濃度測定装置1を用いた溶存ガス濃度測定方法100の手順を示している。溶存ガス濃度測定方法100は、第1ガスが溶け込んだ液体の溶存第1ガス濃度を測定する方法である。本実施形態では、第1ガスとして水素ガスが適用されているが、第1ガスとは別の第2ガスと反応して電気エネルギーを発生するガスであれば、これに限られない。また、上記液体として水が適用されているが、第1ガスが熔解する液体であれば、これに限られない。
【0038】
溶存ガス濃度測定方法100は、第1ステップS1ないし第6ステップS6を含んでいる。
【0039】
第1ステップS1では、第1極室21及び第2極室22を有する発電セル2の第1極室21に液体が供給される。本実施形態では、発電セル2の第1極室21に溶存水素水が供給される。
【0040】
第2ステップS2では、第1極室21に供給された液体の供給量が検出される。本実施形態では、流量センサー3が溶存水素水の供給量を検出する。
【0041】
第3ステップS3では、第2ガスが発電セル2の第2極室22に供給される。本実施形態では、第1極室の水素ガスと反応して電気エネルギーを発生する酸素ガスが第2極室に供給されるが、第1ガスと反応して電気エネルギーを発生するガスであれば、これに限られない。
【0042】
この第3ステップS3では、第2極室22に第2ガスが存在していれば足りるので、第2ガスを含有する液体が第2極室22に供給されてもよい。例えば、酸素ガスが溶け込んだ水(溶存酸素水)が第2極室22に供給されてもよい。なお、下記第4ステップS4で、第2ガスの不足によって電気エネルギーの発生が滞らないように、十分な量の第2ガスが継続的に第2極室22に供給されることが好ましい。
【0043】
第4ステップS4では、第1極室21内の第1ガスと第2極室22内の第2ガスとを反応させて、電気エネルギーを発生させる。本実施形態では、第1極室21内の水素ガスと第2極室22内の酸素ガスとが反応し、電気エネルギーが発生する。
【0044】
第5ステップS5では、第4ステップS4で発生した電気エネルギーが検出される。本実施形態では、電気エネルギー検出部4が上記電気エネルギーを検出する。
【0045】
第6ステップS6では、第2ステップS2で検出された液体の供給量及び第5ステップS5で検出された電気エネルギーに基づいて、溶存第1ガス濃度が計算される。本実施形態では、計算部5が、溶存水素水の供給量及び電気エネルギー検出部4によって検出された電気エネルギーに基づいて、溶存水素濃度を計算する。
【0046】
本溶存ガス濃度測定方法100では、第2ステップS2で検出された液体の供給量及び第5ステップS5で検出された電気エネルギーに基づいて、第6ステップS6で溶存第1ガス濃度を計算する。従って、液体の供給量が変動する用途で用いられても、溶存第1ガス濃度が正確に測定できるようになる。
【0047】
本溶存ガス濃度測定方法100において、放出装置6を含む溶存水素濃度測定装置1が適用される形態では、第4ステップS4が、第1ステップS1で供給された液体から第1ガスを放出させるステップを含んでいてもよい。当該ステップは、液体を加熱等することにより実現される。
【0048】
このような溶存ガス濃度測定方法100では、第4ステップS4で液体から第1ガスが放出されることにより、第2ガスとの反応が促進され、第5ステップS5において電気エネルギーとして検出される。従って、液体に溶け込んだ第1ガスの濃度が正確に測定される。
【0049】
図3は、図1の溶存水素濃度測定装置1の変形例である溶存水素濃度測定装置1Aの概略構成を示す図である。溶存水素濃度測定装置1Aのうち、以下で説明されてない部分については、上述した溶存水素濃度測定装置1の構成が採用されうる。
【0050】
溶存水素濃度測定装置1Aは、増幅器7をさらに含んでいる。増幅器7は、アンプ回路を含んでいる。増幅器7は、発電セル2の第1電極23及び第2電極24と電気エネルギー検出部4との間に配される。
【0051】
増幅器7は、発電セル2が発生した電気エネルギーを増幅し、電気信号として電気エネルギー検出部4に出力する。これにより、微少な電気エネルギーを電気エネルギー検出部4で検出することが可能となり、溶存水素濃度の測定精度が高められる。
【0052】
溶存水素濃度測定装置1Aでは、ノイズ除去装置8をさらに含む、のが望ましい。ノイズ除去装置8は、増幅器7と電気エネルギー検出部4との間に配される。ノイズ除去装置8には、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタまたはハイパスフィルタ等のフィルター回路が適用される。
【0053】
ノイズ除去装置8は、増幅器7によって増幅された電気信号から特定の周波数のノイズ成分を除去する。これにより、電気エネルギー検出部4による電気エネルギーの検出精度が向上する。
【0054】
図4は、溶存水素濃度測定装置1Aを含む透析液調製用水製造装置10の概略構成を示している。透析液調製用水製造装置10は、溶存水素水を用いて透析液調製用水を製造するための装置である。溶存水素濃度測定装置1Aに替えて、溶存水素濃度測定装置1が適用されてもよい。
【0055】
透析液調製用水製造装置10は、水素溶解装置11と、逆浸透処理装置12とを含んでいる。
【0056】
水素溶解装置11は、原水に水素ガスを溶解させて溶存水素水を生成する。原水は、透析液調製用水製造装置10の外部から供給される。原水には、水道水、井戸水または地下水が用いられる。水素溶解装置11に供給される原水は、フィルター等によって浄化され、活性炭等により次亜塩素酸が除去されているのが望ましい。
【0057】
水素溶解装置11によって生成された溶存水素水は、逆浸透処理装置12に供給される。逆浸透処理装置12は、逆浸透膜を有している。逆浸透処理装置12は、溶存水素水を逆浸透処理、すなわち、溶存水素水を加圧して逆浸透膜を通過させることにより血液透析の透析液調製用水を製造する。逆浸透処理が施された透析液調製用水を用いることにより透析液が生成される。
【0058】
溶存水素濃度測定装置1Aは、逆浸透処理装置12で生成された透析液調製用水の溶存水素濃度を測定する。従って、透析液調製用水製造装置10が透析液調製用水の生成量が変動する用途で用いられても、溶存水素濃度が正確に測定できるようになる。
【0059】
透析液調製用水製造装置10は、第1水路13と、第2水路14とを含んでいる。
【0060】
第1水路13は、逆浸透処理装置12から透析液調製用水を取り出すため取水口13aに至る。取水口13aは、透析液調製用水製造装置10の外部の透析液生成装置(図示せず)に接続されている。透析液生成装置は、透析液調製用水に透析原液を混合(または透析成分の粉末を溶解)することにより透析液を生成する。
【0061】
第2水路14は、第1水路13から分岐して、溶存水素濃度測定装置1Aの発電セル2の第1極室21を経由して、排水口14aに至る。すなわち、逆浸透処理装置で生成された透析液調製用水は、第2水路14を介して発電セル2に供給される。これにより、溶存水素濃度測定装置1Aによって透析液調製用水の溶存水素濃度が測定可能となる。
【0062】
第1水路13において第1極室21の手前には、逆止弁15が設けられるのが望ましい。また、第1極室21を経由して排水口14aから排出される透析液調製用水は、第1水路13内の透析液調製用水と合流することなく、排気されるのが望ましい。これにより、第1水路13から取水口13aを経て透析液生成装置に供給される透析液調製用水は、第2水路14から発電セル2に流れ込んだ透析液調製用水から独立し、その清浄度が容易に確保される。
【0063】
第2水路14への分岐部には、第1水路13から第2水路14への水流を制御するバイパス弁16が設けられるのが望ましい。バイパス弁16には電磁弁等が適用される。バイパス弁16は、例えば、計算部5によって制御される。
【0064】
バイパス弁16が閉じられることにより、第1水路13から第2水路14への水流が遮断される。逆浸透処理装置で生成された透析液調製用水の全てが、取水口13aを経て透析液生成装置に供給される。一方、バイパス弁16が開放されることにより、逆浸透処理装置12で生成された透析液調製用水の一部が第2水路14に流れ込み、溶存水素濃度測定装置1Aによって溶存水素濃度が測定される。従って、バイパス弁16の開放を溶存水素濃度の測定時に制限することにより、排水口14aから排出される透析液調製用水を削減でき、透析液調製用水の有効利用を図ることが可能となる。
【0065】
なお、発電セル2にて溶存水素濃度の測定に供された後、排水口14aから排出される水は、水素溶解装置11に還元されてもよい。
【0066】
図5は、水素溶解装置11の一実施形態を示している。水素溶解装置11は、電解槽30と、第1制御部39とを含んでいる。
【0067】
電解槽30は、供給された原水を電気分解することにより、水素ガスを発生させる。電解槽30は、電解室内に第1給電体31と、第2給電体32と、を有する。第1給電体31及び第2給電体32の極性及び第1給電体31及び第2給電体32に印加される電圧は、第1制御部39によって制御される。
【0068】
第1給電体31と第2給電体32との間には、隔膜33が設けられている。隔膜33には、例えば、スルホン酸基を有するフッ素系樹脂からなる固体高分子膜が適宜用いられている。固体高分子膜は、電気分解により、陽極側で発生したオキソニウムイオンを陰極側へと移動させて、水素ガスの生成原料とする。従って、電気分解の際に水酸化物イオンが発生することなく、溶存水素水のpHが変化しない。
【0069】
電気分解により生じた水素ガスが陰極側の水に溶け込むことにより、電解槽30で溶存水素水が生成される。
【0070】
第1制御部39は、第1給電体31及び第2給電体32に印加する直流電圧を制御することにより、電解槽30(すなわち、第1給電体31及び第2給電体32)に供給する電解電流を制御する。より具体的には、第1制御部39は、電解電流が予め設定された所望の値となるように、第1給電体31及び第2給電体32に印加する直流電圧をフィードバック制御する。例えば、電解電流が過大である場合、第1制御部39は、上記電圧を減少させ、電解電流が過小である場合、第1制御部39は、上記電圧を増加させる。これにより、第1給電体31及び第2給電体32に供給する電解電流が適切に制御される。
【0071】
第1制御部39と計算部5とは、互いに接続されている。第1制御部39は、計算部5によって計算された溶存水素濃度に基づいて、電解電流を制御する、ように構成されているのが望ましい。
【0072】
例えば、計算部5によって計算された溶存水素濃度が予め定められた目標値に対して不足している場合、第1制御部39は、第1給電体31及び第2給電体32に供給する電解電流を大きくする。一方、計算部5によって計算された溶存水素濃度が目標値に対して過大である場合、第1制御部39は、第1給電体31及び第2給電体32に供給する電解電流を小さくする。これにより、透析液調製用水の溶存水素濃度が安定し、かつ、治療に最適な溶存水素濃度の透析液調製用水が容易に生成される。
【0073】
第1制御部39には、例えば、計算部5と同様のマイクロコンピューターチップが適用される。計算部5の処理能力に余裕がある場合、第1制御部39の機能が統合されていてもよい。これにより、透析液調製用水製造装置10の構成が簡素化される。
【0074】
図6は、水素溶解装置11の変形例である水素溶解装置11Aを示している。水素溶解装置11Aは、水素供給装置40と、第2制御部49とを含んでいる。
【0075】
水素供給装置40は、供給された原水に泡状の水素ガスを供給する。水素供給装置40は、例えば、水素ガスが充填されたボンベ等を含んで構成されている。水素供給装置40によって水素ガスが溶け込んだ溶存水素水が生成される。
【0076】
第2制御部49は、水素供給装置40による水素ガスの供給量を制御する。第2制御部49が、水素供給装置40から供給される水素ガスの供給量を増加させることにより、溶存水素濃度が高められる。一方、第2制御部49が、水素供給装置40から供給される水素ガスの供給量を減少させることにより、溶存水素濃度が低められる。
【0077】
第2制御部49と計算部5とは、互いに接続されている。第2制御部49は、計算部5によって計算された溶存水素濃度に基づいて、電解電流を制御する、ように構成されているのが望ましい。
【0078】
例えば、計算部5によって計算された溶存水素濃度が予め定められた目標値に対して不足している場合、第2制御部49は、水素供給装置40から供給される水素ガスの供給量を増加させる。一方、計算部5によって計算された溶存水素濃度が目標値に対して過大である場合、第2制御部49は、水素供給装置40から供給される水素ガスの供給量を減少させる。これにより、透析液調製用水の溶存水素濃度が安定し、かつ、治療に最適な溶存水素濃度の透析液調製用水が容易に生成される。
【0079】
第2制御部49には、例えば、計算部5と同様のマイクロコンピューターチップが適用される。計算部5の処理能力に余裕がある場合、第2制御部49の機能が統合されていてもよい。これにより、透析液調製用水製造装置10の構成が簡素化される。
【0080】
以上、本発明の溶存水素濃度測定装置等が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【0081】
すなわち、溶存ガス濃度測定方法100は、少なくとも、第1ガスが溶け込んだ液体の溶存第1ガス濃度を測定する方法であって、第1極室21及び第2極室22を有する発電セル2の第1極室21に液体を供給する第1ステップS1と、第1極室21に供給された液体の供給量を検出する第2ステップS2と、第1ガスと反応することにより電気エネルギーを発生する第2ガスを発電セル2の第2極室22に供給する第3ステップS3と、第1極室21内の第1ガスと第2極室22内の第2ガスとを反応させて、電気エネルギーを発生させる第4ステップS4と、第4ステップS4で発生した電気エネルギーを検出する第5ステップS5と、第2ステップS2で検出された液体の供給量及び第4ステップS4で検出された電気エネルギーに基づいて、溶存第1ガス濃度を計算する第6ステップS6とを含んでいればよい。
【0082】
また、本発明の溶存水素濃度測定装置1は、少なくとも、水素ガスが溶け込んだ溶存水素水の溶存水素濃度を測定するための装置であって、溶存水素水が供給される第1極室21と、酸素ガスが供給される第2極室22とを有し、第1極室21内の水素ガスと第2極室22内の酸素ガスとを反応させて、電気エネルギーを発生させる発電セル2と、溶存水素水の第1極室21への供給量を検出する流量センサー3と、発電セル2が発生した電気エネルギーを検出する電気エネルギー検出部4と、流量センサー3によって検出された供給量及び電気エネルギー検出部4によって検出された電気エネルギーに基づいて、溶存水素濃度を計算する計算部5とを含んでいればよい。
【0083】
また、本発明の透析液調製用水製造装置10は、少なくとも、透析液調製用水を製造するための装置であって、原水に水素ガスを溶解させて溶存水素水を生成する水素溶解装置11と、溶存水素水を逆浸透処理することにより血液透析の透析液調製用水を生成する逆浸透処理装置12と、逆浸透処理装置12で生成された透析液調製用水の溶存水素濃度を測定するための溶存水素濃度測定装置1とを含んでいればよい。
【符号の説明】
【0084】
1 溶存水素濃度測定装置
1A 溶存水素濃度測定装置
2 発電セル
3 流量センサー
4 電気エネルギー検出部
5 計算部
6 放出装置
7 増幅器
8 ノイズ除去装置
10 透析液調製用水製造装置
11 水素溶解装置
11A 水素溶解装置
12 逆浸透処理装置
13 第1水路
13a 取水口
14 第2水路
14a 排水口
16 バイパス弁
21 第1極室
22 第2極室
30 電解槽
39 第1制御部
40 水素供給装置
49 第2制御部
100 溶存ガス濃度測定方法
S1 第1ステップ
S2 第2ステップ
S3 第3ステップ
S4 第4ステップ
S5 第5ステップ
S6 第6ステップ
【要約】
【課題】被測定液の供給量が変動する用途で用いられても、正確な溶存水素濃度を測定可能とする。
【解決手段】溶存水素濃度測定装置1は、水素ガスが溶け込んだ溶存水素水の溶存水素濃度を測定するための装置である。溶存水素濃度測定装置1は、溶存水素水が供給される第1極室21と、酸素ガスが供給される第2極室22とを有し、第1極室21内の水素ガスと第2極室22内の酸素ガスとを反応させて、電気エネルギーを発生させる発電セル2と、溶存水素水の第1極室21への供給量を検出する流量センサー3と、発電セル2が発生した電気エネルギーを検出する電気エネルギー検出部4と、流量センサー3によって検出された供給量及び電気エネルギー検出部4によって検出された電気エネルギーに基づいて、溶存水素濃度を計算する計算部5とを含む。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6