(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】ダイヤフラム装置の製造方法及びダイヤフラム装置
(51)【国際特許分類】
F16K 7/12 20060101AFI20220714BHJP
C03C 27/10 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
F16K7/12 A
C03C27/10 A
(21)【出願番号】P 2018062378
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2020-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】白神 徹
【審査官】田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-029327(JP,A)
【文献】特開平11-159640(JP,A)
【文献】特開2013-216541(JP,A)
【文献】特開2012-169068(JP,A)
【文献】特開2009-156253(JP,A)
【文献】特開2008-180161(JP,A)
【文献】特開平05-079460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/02
C03C 27/10
F16K 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、可撓性を有するガラス製のダイヤフラムと、前記基材と前記ダイヤフラムとの間に形成される、流体の流路と、前記流路の一部を構成しつつ前記基材と前記ダイヤフラムとを接合する封止層と、を備えるダイヤフラム装置において、
前記ダイヤフラムは、前記封止層に接触する第1接触部と、前記ダイヤフラムの縁部と前記第1接触部との間に設けられ前記封止層に接触しない第1非接触部と、を備え、
前記基材は、前記封止層に接触する第2接触部と、前記流路の一部を構成する凹部と、前記第2接触部と前記凹部との間に設けられ前記封止層に接触しない第2非接触部と、を備え、
前記凹部は、その底部に形成されるとともに前記流路の一部を構成する貫通孔を備え、
前記ダイヤフラムは、前記貫通孔を開閉する弁体であり、
前記ダイヤフラムの厚みは、1~500μmであり、
前記ダイヤフラムが前記貫通孔を閉塞したときに、前記ダイヤフラムと前記第2非接触部との間に隙間が形成され
、
前記封止層は、前記第2非接触部の幅寸法よりも大きな幅寸法を有し、
前記封止層は、ガラスフリットを含み、
前記ガラスフリットは、ガラス及び耐火フィラーを含む
ことを特徴とする、ダイヤフラム装置。
【請求項2】
前記ダイヤフラムが前記貫通孔を閉塞したときに、前記ダイヤフラムと前記第2非接触部との間に前記隙間が形成されるように、前記第2非接触部の幅寸法は、前記第1非接触部の幅寸法よりも小さく設定される請求項1に記載のダイヤフラム装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のダイヤフラム装置を製造する方法において、
前記流路を封止するように前記基材と前記ダイヤフラムとを接合する接合工程を備え、
前記接合工程は、前記基材と前記ダイヤフラムとの間に封着材料を介在させた状態で、前記封着材料にレーザ光を照射して前記基材と前記ダイヤフラムとを接合する前記封止層を形成することを特徴とするダイヤフラム装置の製造方法。
【請求項4】
前記接合工程では、前記ダイヤフラムの縁部よりも内側の位置に前記封着材料を介在させた状態で、前記封着材料に前記レーザ光を照射する、請求項3に記載のダイヤフラム装置の製造方法。
【請求項5】
前記接合工程では、前記凹部から外側へ離れた位置で、前記封着材料に前記レーザ光を照射する、請求項3又は4に記載のダイヤフラム装置の製造方法。
【請求項6】
前記接合工程では、前記ダイヤフラムの厚み方向に視て前記封着材料を環状に設けた状態で、前記封着材料に前記レーザ光を照射する、請求項3から5のいずれか一項に記載のダイヤフラム装置の製造方法。
【請求項7】
前記接合工程では、前記基材と前記ダイヤフラムとの間に前記封着材料を円環状に介在させた状態で、前記レーザ光を前記封着材料の円周方向に沿って走査する、請求項6に記載のダイヤフラム装置の製造方法。
【請求項8】
前記ダイヤフラムに前記封着材料を固定する固定工程と、前記固定工程後に、前記封着材料が前記基材と前記ダイヤフラムとの間に介在するように、前記ダイヤフラムを前記基材に重ね合わせる積層工程と、を備え、
前記接合工程では、前記積層工程後に、前記封着材料に前記レーザ光を照射する、請求項3から7のいずれか一項に記載のダイヤフラム装置の製造方法。
【請求項9】
前記固定工程では、前記ダイヤフラムに前記封着材料を塗布する塗布工程と、前記塗布工程後に前記封着材料を加熱して少なくとも表面を固化させる加熱工程とを備える、請求項8に記載のダイヤフラム装置の製造方法。
【請求項10】
前記封着材料は、ガラスフリットにより構成される、請求項3から9のいずれか一項に記載のダイヤフラム装置の製造方法。
【請求項11】
前記基材は、ガラスにより構成される、請求項3から10のいずれか一項に記載のダイヤフラム装置の製造方法。
【請求項12】
各々が異なる複数のダイヤフラム装置の流路の一部となる複数の凹部を備えた基板と、前記複数の凹部を同時に施蓋する可撓性のガラス板と、前記ガラス板と前記基板との間に介在し前記複数の凹部各々の開口に沿って設けられた複数の封着材料と、を備える積層体を形成する準備工程と、
前記準備工程後に、前記複数の封着材料にレーザ光を照射して前記ガラス板と前記基板とを接合することにより、各々が前記ダイヤフラム装置の流路の一部を構成する複数の封止層を形成する接合工程と、
前記接合工程後に、前記ガラス板と前記封着材料との接触部を避けて前記ガラス板を切断する第一切断工程と、
前記第一切断工程後に、前記ガラス板と前記封着材料との接触部を避けて前記基板を切断して複数の個片のダイヤフラム装置を形成する第二切断工程と、を備えることを特徴とする、ダイヤフラム装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を制御するダイヤフラム装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ダイヤフラム装置は、ダイヤフラムの変形を利用して流体を制御するデバイスであり、その典型例として、ダイヤフラムによって流路の開閉を行うダイヤフラムバルブや、流体を圧送するダイヤフラムポンプなどが挙げられる。
【0003】
例えば特許文献1には、マイクロチップに適用可能なダイヤフラム装置(アクチュエータ)が開示される。ダイヤフラム装置は、中空部が設けられたガラス基板と、中空部を閉塞する、ダイヤフラムとしてのガラス薄板とを備える流体制御デバイスにより構成される。このダイヤフラム装置では、ガラス薄板の厚さが1~50μmとされており、このガラス薄板の変形によってガラス基板に係る中空部の容積を変化させることで、当該中空部に充填された流体の流れ及び出入等を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなダイヤフラム装置において、基材(ガラス基板)にダイヤフラム(ガラス薄板)を重ね合わせて中空部を封止する場合、この中空部から流体が漏洩しないように、ダイヤフラムを基材に対して気密に接合する必要がある。しかしながら、特許文献1では、基材とダイヤフラムとを接合する方法について何ら開示されていない。
【0006】
本発明は、ガラス製のダイヤフラムを基材に対して接合する場合に、接合部分の気密性を高めることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、基材と、可撓性を有するガラス製のダイヤフラムと、前記基材と前記ダイヤフラムとの間に形成される、流体の流路と、を備えるダイヤフラム装置を製造する方法において、前記流路を封止するように前記基材と前記ダイヤフラムとを接合する接合工程を備え、前記接合工程は、前記基材と前記ダイヤフラムとの間に封着材料を介在させた状態で、前記封着材料にレーザ光を照射して前記基材と前記ダイヤフラムとを接合する封止層を形成することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、基材とダイヤフラムとの間に介在させた封着材料にレーザ光を照射して封止層とすることで、ダイヤフラムと基材の接合強度を高め、かつ当該封止層の気密性を高く確保できる。また、本発明では、接合工程において封着材料をレーザ光により加熱することから、電気炉等によって加熱する場合と比較して、当該接合工程を効率良く短時間で行うことができる。
【0009】
前記接合工程では、前記ダイヤフラムの縁部よりも内側の位置に前記封着材料を介在させた状態で、前記封着材料に前記レーザ光を照射することが望ましい。
【0010】
かかる構成によれば、封着材料はダイヤフラムの縁部よりも内側に離れた位置に配置され、この位置に封止層が形成されることになる。したがって、この封着材料にレーザ光を照射して封止層を形成する場合に、当該封着材料がダイヤフラムの縁部よりも外側に流出することを防止でき、ダイヤフラム装置の意匠性を可及的に高めることができる。また、封止層は、ダイヤフラムの縁部よりも内側に形成されるため、異物との接触が防止されることで長期に亘ってその気密性を維持できる。
【0011】
また、本発明に係る製造方法において、前記基材は、前記流路の一部を構成する凹部を備え、前記接合工程では、前記凹部から外側へ離れた位置で、前記封着材料に前記レーザ光を照射することが望ましい。
【0012】
かかる構成によれば、封着材料は基材の凹部から外側に離れた位置に配置され、この位置に封止層が形成されることになる。したがって、封着材料にレーザ光を照射して封止層を形成する場合に、当該封着材料が凹部に流入することを防止できる。これにより、ダイヤフラム装置における流体の制御機能を精度良く確保できる。
【0013】
上記の製造方法において、前記接合工程では、前記ダイヤフラムの厚み方向に視て前記封着材料を環状に設けた状態で、前記封着材料に前記レーザ光を照射することが望ましい。これにより、ダイヤフラムと基材との間に環状の封止層を形成でき、ダイヤフラムと基材との間の気密性を高く確保できる。
【0014】
上記の場合において、前記接合工程では、前記基材と前記ダイヤフラムとの間に前記封着材料を円環状に介在させた状態で、前記レーザ光を前記封着材料の円周方向に沿って走査することが望ましい。これにより、レーザ光を封着材料の全周に亘って照射することができ、気密性の高い封止層を形成できる。
【0015】
本方法では、前記ダイヤフラムに前記封着材料を固定する固定工程と、前記固定工程後に、前記封着材料が前記基材と前記ダイヤフラムとの間に介在するように、前記ダイヤフラムを前記基材に重ね合わせる積層工程と、を備え、前記接合工程では、前記積層工程後に、前記封着材料に前記レーザ光を照射することが望ましい。
【0016】
かかる構成によれば、固定工程によって封着材料を予めダイヤフラムに固定することにより、ダイヤフラムと基材との間に封着材料を介在させる積層工程の作業性を大幅に向上させることが可能になる。
【0017】
また、前記固定工程では、前記ダイヤフラムに前記封着材料を塗布する塗布工程と、前記塗布工程後に前記封着材料を加熱して少なくとも表面を固化させる加熱工程とを備えることが望ましい。
【0018】
かかる構成によれば、塗布工程により、流路に適した態様で封着材料をダイヤフラムに塗布できるとともに、加熱工程によってダイヤフラムに対する当該封着材料の位置決めを行うことができる。
【0019】
本方法において、前記封着材料は、ガラスフリットにより構成されることが望ましい。これにより、ガラス製のダイヤフラムと封止層との接合に係る親和性を高め、その気密性を高めることができる。
【0020】
また、本方法において、前記基材は、ガラスにより構成されることが望ましい。このように、基材をダイヤフラムと同様にガラス製のものにすることで、ダイヤフラム装置を耐食性の高いものにできる。
【0021】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、各々が異なる複数のダイヤフラム装置の流路の一部となる複数の凹部を備えた基板と、前記複数の凹部を同時に施蓋する可撓性のガラス板と、前記ガラス板と前記基板との間に介在し前記複数の凹部各々の開口に沿って設けられた複数の封着材料と、を備える積層体を形成する準備工程と、前記準備工程後に、前記複数の封着材料にレーザ光を照射して前記ガラス板と前記基板とを接合することにより、各々が前記ダイヤフラム装置の流路の一部を構成する複数の封止層を形成する接合工程と、を備えることを特徴とする。
【0022】
かかる構成によれば、ダイヤフラム用のガラス板と流路形成用の基板との間に複数の封着材料を介在させた状態で、各封止材料にレーザ光を照射することで、気密性の高い複数の封止層を形成できる。また、複数の封着材料を有する積層体を事前に準備することで、後の接合工程を効率良く行うことが可能になる。
【0023】
この方法では、前記接合工程後に、前記ガラス板と前記封着材料との接触部を避けて前記ガラス板を切断する第一切断工程を備えることが望ましい。かかる構成によれば、接合工程によってガラス板を基板に固定した後に、ガラス板と前記封着材料との接触部を避けて第一切断工程を行うことで、封着材料を損傷させることなく、複数のダイヤフラムを効率良くかつ高精度に形成できる。
【0024】
また、この方法では、前記第一切断工程後に、前記ガラス板と前記封着材料との接触部を避けて前記基板を切断して複数の個片のダイヤフラム装置を形成する第二切断工程を備えることが望ましい。これにより、多数のダイヤフラム装置を効率良く製造できる。
【0025】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、基材と、可撓性を有するガラス製のダイヤフラムと、前記基材と前記ダイヤフラムとの間に形成される、流体の流路と、前記流路の一部を構成しつつ前記基材と前記ダイヤフラムとを接合する封止層と、を備えるダイヤフラム装置において、前記ダイヤフラムは、前記封止層に接触する第1接触部と、前記ダイヤフラムの縁部と前記接触部との間に設けられ前記封止層に接触しない第1非接触部と、を備えることを特徴とする。
【0026】
かかる構成によれば、ダイヤフラムの第1接触部と縁部との間に第1非接触部を形成することで、封止部がダイヤフラムの縁部から露出することを防止できる。したがって、この第1非接触部により封止層への異物の接触が防止される。これにより封止層は、高い気密性を長期に亘って維持できる。
【0027】
上記のダイヤフラム装置において、前記基材は、前記封止層に接触する第2接触部と、前記流路の一部を構成する凹部と、前記第2接触部と前記凹部との間に設けられ前記封止層に接触しない第2非接触部と、を備えることが望ましい。このように、凹部と第2接触部との間に第2非接触部を設けることで、封止層が凹部内に形成されることを防止できる。これにより、ダイヤフラム装置における流体の制御機能を精度良く確保できる。
【0028】
上記のダイヤフラム装置において、前記ダイヤフラムの縁部から前記第1接触部までの距離は、前記基材の前記凹部から前記第2接触部までの距離よりも大きく設定されることが望ましい。
【0029】
かかる構成によれば、ダイヤフラムの縁部と封止層との離間距離を相対的に大きくすることで、封止層がダイヤフラムの縁部から露出することを確実に防止できる。一方、基材の凹部と封止層との離間距離を相対的に小さく設定することで、ダイヤフラムが変形した場合に当該ダイヤフラムの一部が基材の第2非接触部に接触することを防止できる。これにより、ダイヤフラム装置の寿命を可及的に長期化できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ガラス製のダイヤフラムを基材に対して接合する場合に、接合部分の気密性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第一実施形態に係るダイヤフラム装置の断面図である。(a)図は、ダイヤフラムが開状態である場合を示す。(b)図は、ダイヤフラムが閉状態である場合を示す。
【
図2】ダイヤフラム装置の製造方法に係る一工程を示す平面図である。
【
図3】ダイヤフラム装置の製造方法に係る一工程を示す断面図である。
【
図4】ダイヤフラム装置の製造方法に係る一工程を示す断面図である。
【
図5】ダイヤフラム装置の製造方法に係る一工程を示す平面図である。
【
図6】第二実施形態に係るダイヤフラム装置の製造方法を示す平面図である。
【
図7】ダイヤフラム装置の製造方法に係る一工程を示す断面図である。
【
図8】ダイヤフラム装置の製造方法に係る一工程を示す平面図である。
【
図9】ダイヤフラム装置の製造方法に係る一工程を示す断面図である。
【
図10】ダイヤフラム装置の製造方法に係る一工程を示す平面図である。
【
図11】ダイヤフラム装置の製造方法に係る一工程を示す平面図である。
【
図12】ダイヤフラム装置の製造方法に係る一工程を示す平面図である。
【
図13】第三実施形態に係るダイヤフラム装置を示す断面図である。
【
図14】第四実施形態に係るダイヤフラム装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
図1乃至
図5は、本発明に係るダイヤフラム装置及びその製造方法の第一実施形態を示す。
【0033】
図1(a)(b)は、ダイヤフラム装置1の断面図を示す。本実施形態では、ダイヤフラム装置1として、MEMS(Micro Electric Mechanical System)に好適に使用されるマイクロバルブを例示する。
【0034】
図1(a)に示すように、ダイヤフラム装置1は、基材2と、ダイヤフラム3と、基材2とダイヤフラム3の間に形成される流路4a~4cと、流路4a~4cを封止するように基材2とダイヤフラム3とを接合する封止層5とを備える。
【0035】
基材2は、ガラスにより板状又はブロック状に構成されるが、これに限定されず、セラミック、金属その他の材料により構成され得る。基材2は、封止層5に接触する表面2aと、表面2aの一部に形成される凹部2bとを有する。基材2の表面2aは、封止層5に接触する第2接触部6と、封止層5の内側(流路4a~4c側)に設けられるとともに当該封止層5に接触しない第2非接触部7とを備える。
【0036】
第2接触部6の幅寸法は、封止層5の幅寸法W1と等しい。第2非接触部7は、封止層5の幅寸法W1よりも小さな幅寸法W2を有する。第2非接触部7は、この幅寸法W2により、封止層5と凹部2b(側部9)とを離間する。第2非接触部7の幅寸法W2は、50μm以上とされることが好ましい。
【0037】
凹部2bは平面視において円形に構成されるが、この形状に限定されるものではない。凹部2bは、流路4a~4cの一部を構成するものであり、底部8と側部9とを備える。底部8には、一対の貫通孔(第一貫通孔、第二貫通孔)10,11が形成されている。各貫通孔10,11は、底部8に限らず、凹部2bの側部9に形成されてもよい。
【0038】
ダイヤフラム3は、可撓性を有する超薄板ガラスにより構成される。ダイヤフラム3の厚みは、1~500μmとされることが好ましく、より好ましくは、4~50μmである。可撓性を有する超薄板ガラスとしては、日本電気硝子株式会社製の「G-Leaf」(登録商標)が好適に使用される。
【0039】
ダイヤフラム3は円板状に構成されるが、この形状に限定されず、矩形状その他の各種形状に構成され得る。ダイヤフラム3の直径は、2~50mmとされることが好ましく、より好ましくは、5~20mmである。
【0040】
ダイヤフラム3に使用されるガラスとしては、例えば、無アルカリガラスが使用されるが、ダイヤフラム3の材料はこれに限定されない。本実施形態において、無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスのことであって、具体的には、アルカリ成分の重量比が3000ppm以下のガラスのことである。本発明におけるアルカリ成分の重量比は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下であり、最も好ましくは300ppm以下である。無アルカリガラスとしては、日本電気硝子株式会社製の「OA-10G」や「OA-11」が好適に使用される。
【0041】
ダイヤフラム3は、その一方(内側)の表面3aに、封止層5に接触する第1接触部12と、第1接触部12よりも半径方向の外側に設けられるとともに封止層5に接触しない第1非接触部13と、を備える。第1接触部12の幅寸法は、封止層5の幅寸法W1と等しい。第1非接触部13は、その幅寸法W3により、封止層5とダイヤフラム3の縁部3bとを離間する。第1非接触部13の幅寸法W3は、50μm以上とされることが好ましい。
【0042】
第1非接触部13の幅寸法W3は、基材2に係る第2非接触部7の幅寸法W2よりも大きく設定されることが望ましい。換言すると、ダイヤフラム3の第1非接触部13がダイヤフラム3の縁部3bと封止層5とを離間する距離(W3)は、基材2の第2非接触部7が凹部2bと封止層5とを離間する距離(W2)よりも大きく設定されることが望ましい。すなわち、ダイヤフラム3における第1非接触部13の幅寸法W3は、意匠性や封止層5の保護の観点から、封止層5がダイヤフラム3の縁部3bから露出することを確実に防止すべく、相対的に大きく設定されることが望ましい。一方、基材2の第2非接触部7の幅寸法W2は、ダイヤフラム3が変形した際に当該ダイヤフラム3との接触を防止する点から、相対的に小さく設定されることが望ましい。
【0043】
流路4a~4cは、第一流路4aと、第二流路4bと、第三流路4cとを含む。第一流路4aは、基材2の凹部2bに形成される第一貫通孔10により構成される。第一流路4aは、ダイヤフラム装置1内に流体を流入させるためのものである。
【0044】
なお、流体は、例えば、ガスや空気等の任意の気体であって良く、水や化学薬液や天然由来の液体等の任意の液体であっても良く、これら気体と液体の混合物であっても良い。また、流体には任意の粒子等が含有される態様であっても良い。
【0045】
第二流路4bは、第一流路4aの下流側であって、基材2の凹部2bとダイヤフラム3との間に形成される。第二流路4bの一部を構成するダイヤフラム3は、当該第二流路4bの開閉を行うバルブ(弁体)として機能する。
図1(b)に示すように、ダイヤフラム3は、その変形により凹部2bの第一貫通孔10と第二貫通孔11とを閉塞することで、流体の流通を遮断する。この構成に限らず、ダイヤフラム3は、第一貫通孔10、第二貫通孔11のいずれか一方を閉塞するように構成されてもよい。
【0046】
第三流路4cは、基材2の凹部2bに形成される第二貫通孔11により構成される。第三流路4cは、第二流路4bからの流体をダイヤフラム装置1の外部に流出させるためのものである。
【0047】
封止層5は、封着材料14を基材2とダイヤフラム3との間に介在させ、当該封着材料14を加熱することによって軟化変形した後、硬化させることにより形成される。このような構成により、封止層5は、第二流路4bの一部として、基材2とダイヤフラム3とを気密に接合する。封着材料14は、例えばガラスフリットにより構成される。ガラスフリットは、ガラス粉末と、耐火性フィラー粉末とを含む。
【0048】
ガラス粉末は、後述するレーザ光Lが照射された場合に軟化流動して、ダイヤフラム3及び基材2と反応することで、封止層5の接合強度を確保するための材料である。耐火性フィラー粉末は、骨材として作用し、熱膨張係数を低下させるための材料である。
【0049】
ガラス粉末としては、任意の組成を有するガラスを用いて良いが、比較的融点が低いガラスを用いることが好ましい。例えば、ガラス粉末としては、ビスマス系ガラス、銀リン酸系ガラス、および銀テルル系ガラスの何れかを単独で、或いはこれら混合して用いることが望ましい。
【0050】
ビスマス系ガラスは、ガラス組成として、モル%で、Bi2O3 25~60%、B2O3 20~35%、CuO+MnO 5~40%を含有することが好ましいが、この組成に限定されるものではない。
【0051】
銀リン酸系ガラス粉末は、ガラス組成として、モル%で、Ag2O+AgI 15~85%、TeO2 0~35%、P2O5 10~55%、Ga2O3 0~20%、TeO2 0~60%、ZnO 0~50%、Nb2O5 0~30%、B2O3 0~15%、WO3 0~30%を含有することが好ましいが、この組成に限定されるものではない。
【0052】
銀テルル系ガラス粉末は、ガラス組成として、モル%で、Ag2O+AgI 15~85%、TeO2 10~60%、P2O5 0~35%、Ga2O3 0~20%、TeO2 0~60%、ZnO 0~50%、Nb2O5 0~30%、B2O3 0~15%、WO3 0~30%を含有することが好ましいが、この組成に限定されるものではない。
【0053】
耐火性フィラー粉末としては、種々の材料が使用可能であるが、その中でも、コーディライト、ジルコン、酸化錫、酸化ニオブ、リン酸ジルコニウム系セラミック、ウイレマイト、β-ユークリプタイト、β-石英固溶体から選ばれる一種又は二種以上の材料により構成されることが好ましい。
【0054】
ガラス粉末及び耐火性フィラー粉末の平均粒径D50は、2μm未満とされることが好ましい。ここで、「平均粒径D50」とは、レーザ回折法で測定した値であって、レーザ回折法により測定した際の体積基準の累積粒度分布曲線において、その積算量が粒子の小さい方から累積して50%である粒径を意味する。
【0055】
ガラス粉末及び耐火性フィラー粉末の最大粒径D99は、10μm未満とされることが好ましい。ここで、「最大粒径D99」とは、レーザ回折法で測定した値であって、レーザ回折法により測定した際の体積基準の累積粒度分布曲線において、その積算量が粒子の小さい方から累積して99%である粒径を意味する。
【0056】
封止層5は、円環状に構成されるが、これに限らず、四角形状その他の環形状に構成され得る。封止層5の厚さは、1μm~20μmとされることが好ましく、より好ましくは、3~8μmである。封止層5の外径寸法は、ダイヤフラム3の直径よりも小さく設定される。封止層5の外径寸法は、1~25mmとされることが好ましく、より好ましくは、2.5~10mmである。封止層5の内径は、凹部2bの直径よりも大きく設定される。封止層5の幅寸法W1は、50~2000μm以上とされることが好ましく、より好ましく100~1000μmである。封止層5の各寸法は、上記の範囲に限定されず、ダイヤフラム装置1の大きさに応じて適宜設定され得る。
【0057】
以下、上記構成のダイヤフラム装置1を製造する方法について、
図2乃至
図5を参照しながら説明する。本方法は、基材2とダイヤフラム3とを重ね合わせて積層体LMを形成する工程(準備工程)と、準備工程後に封着材料14を加熱してダイヤフラム3と基材2とを接合する工程(接合工程)とを備える。
【0058】
準備工程は、ダイヤフラム3の表面3aに予め封着材料14を固定する工程(固定工程)と、固定工程後にダイヤフラム3を基材2に積層する工程(積層工程)とを備える。
【0059】
固定工程は、封着材料14(ガラスフリット)をダイヤフラム3の表面3aに塗布する工程(塗布工程)と、塗布工程後に、封着材料14を加熱する工程(加熱工程)とを備える。
【0060】
塗布工程では、例えばスクリーン印刷、ディスペンサ等により、ペースト状のガラスフリット(封着材料14)をダイヤフラム3の表面3aに対して(厚み方向から視て)環状に塗布する(
図2参照)。塗布される封着材料14の厚みは、後の加熱工程及び接合工程による封止層5の厚さ方向の収縮を考慮し、設定されている封止層5の厚みよりも10~500%の範囲で厚くされることが望ましい。なお、ガラスフリットは、粉末状のものを用いても良い。
【0061】
加熱工程では、レーザ光(図示せず)を封着材料14に照射し、または電気炉等によって封着材料14を加熱する。この加熱は、ダイヤフラム3の歪点以下の温度で行われることが望ましい。この加熱工程により、封着材料14のガラス粉末を軟化流動させることで、当該封着材料14をダイヤフラム3に融着させる。封着材料14は、その少なくとも表面が固化することによりダイヤフラム3に固定される。
【0062】
封着材料14の外径がダイヤフラム3の直径よりも小さいことから、ダイヤフラム3の表面3aでは、第1接触部12と、ダイヤフラム3の縁部3bと封着材料14(後の封止層5)とを離間する第1非接触部13とが仮決めされた状態となる。
【0063】
積層工程では、ダイヤフラム3において封着材料14が固定された表面3aを基材2に対向させた状態で、当該ダイヤフラム3を基材2の表面2aに重ね合わせる(
図3参照)。ダイヤフラム3は、封着材料14における環の内側に基材2の凹部2bが位置するように、当該基材2に積層される。このとき、封着材料14は、基材2に第2非接触部7が形成されるように、凹部2bから外側に離れた位置に配置される。以上により、ダイヤフラム3と基材2との間に封着材料14が介在してなる、すなわち、ダイヤフラム3と基材2とが封着材料14を挟み積層してなる積層体LMが構成される。
【0064】
図4及び
図5に示すように、接合工程では、レーザ照射装置15により、積層体LMの封着材料14に対してダイヤフラム3側からレーザ光Lを照射する(レーザ照射工程)。使用されるレーザとしては、半導体レーザが好適に使用されるが、これに限らず、YAGレーザ、CO
2レーザ、エキシマレーザ、赤外レーザ等の各種レーザを使用してもよい。
【0065】
レーザ光Lの波長は、600~1600nmとされることが好ましいが、この範囲に限定されない。レーザ光Lのスポット径は、封着材料14の幅寸法(W1)よりも大きく設定されることが望ましい。
【0066】
レーザ光Lは、封着材料14の円周方向に沿って円軌道を描くように走査される(
図5参照)。この場合において、レーザ光Lは、その円軌道を一周するように走査される。或いは、レーザ光Lは、その円軌道を複数回に亘って周回するように連続的に走査され得る。これにより、レーザ光Lは、円環状に構成される封着材料14の全範囲(全幅及び全長)に亘って当該封着材料14を所定時間、加熱する。レーザ光Lの加熱により、封着材料14は、そのガラス成分(ガラス粉末)が軟化し、基材2の第2接触部6及びダイヤフラム3の第1接触部12に融着する。封着材料14が凝固することにより、基材2とダイヤフラム3とを接合するとともに第二流路4bを気密に封止する環状の封止層5が形成される。
【0067】
この場合、ダイヤフラム3の表面3aにおいて、環状の封止層5の半径方向外側に第1非接触部13が形成される。第1非接触部13の存在により、封止層5は、ダイヤフラム3の縁部3bよりも半径方向内側に離れた位置で形成される。これにより、ダイヤフラム3の縁部3bから封止層5が外側に露出することが確実に防止される。したがって、製造されたダイヤフラム装置1の意匠性を高めることができる。さらに、封止層5を第1非接触部13によって覆うことで、異物が封止層5に接触することを防止できる。これにより、第1非接触部13は、長期に亘りその気密性を維持できる。
【0068】
また、接合工程が行われると、基材2の表面2aにおいて、環状の封止層5の半径方向内側(凹部2bの外側)に第2非接触部7が形成される。第2非接触部7が凹部2bと封止層5とを離間することで、接合工程時における封着材料14の凹部2bへの侵入が確実に防止される。
【0069】
なお、上記の封着材料14にレーザ光Lを照射した際の熱により、ダイヤフラム3も加熱されることになる。このため、ダイヤフラム3には、その歪による残留応力が発生し得る。この場合において、接合工程の直後に、ダイヤフラム3の残留応力を除去するアニール工程が実施されることが望ましい。アニール工程は、ダイヤフラム3の第1接触部12にアニールレーザを照射することにより行われる。これに限らず、アニール工程は、接合工程の直後に、ダイヤフラム装置1を電気炉で加熱することにより行われてもよい。以上により、気密性及び耐久性に優れたダイヤフラム装置1を製造できる。
【0070】
以上説明した本実施形態に係るダイヤフラム装置1及びその製造方法によれば、基材2とダイヤフラム3との間に介在させた封着材料14にレーザ光Lを照射して封止層5とすることで、基材2とダイヤフラム3との接合強度を高め、かつ当該封止層5の気密性を高く確保できる。また、接合工程において封着材料14をレーザ光Lによって加熱することから、電気炉等によって加熱する場合と比較して、当該接合工程を効率良く短時間で行うことができる。
【0071】
図6乃至
図12は、本発明の第二実施形態を示す。本実施形態では、ダイヤフラム装置の量産に適した製造方法を例示する。
【0072】
本実施形態に係るダイヤフラム装置1の製造方法は、複数のダイヤフラム装置1を形成可能な積層体LMを形成する準備工程と、接合工程と、接合工程後に積層体LMから複数のダイヤフラム装置1を形成する切断工程とを備える。
【0073】
準備工程により形成される積層体LMは、複数の凹部2bを有するガラス基板G1と、複数のダイヤフラム3を切り出すことが可能な薄板状のガラス板G2と、ガラス板G2とガラス基板G1との間に介在する封着材料14とを備える。本実施形態において封着材料14は、薄板状のガラス板G2とガラス基板G1の積層方向に視て、複数の凹部2b各々の開口に沿って、当該開口を包囲するよう複数箇所に塗布される。すなわち、本実施形態において、封着材料14は、薄板状のガラス板G2とガラス基板G1の主面方向に、所定のパターンで設けられた封着材料層として形成される。
【0074】
図6に示すように、準備工程では、ガラス板G2に対して複数の封着材料14を所定ピッチで固定する(固定工程)。固定工程では、第一実施形態と同様に、塗布工程と、加熱工程とによって、複数の円環状の封着材料14をガラス板G2に固定する。
【0075】
固定工程が終了すると、積層工程が行われる。積層工程では、
図7に示すように、封着材料14がガラス基板G1とガラス板G2との間に介在するように、ガラス板G2をガラス基板G1に重ね合わせる。ガラス板G2は、ガラス基板G1に重ねられることで、ガラス基板G1に形成されている複数の凹部2bを同時に施蓋する。これにより準備工程が終了し、積層体LMが構成される。
【0076】
図8及び
図9に示すように、接合工程では、積層体LMの各封着材料14に対してガラス板G2側からレーザ光L1が照射される(レーザ照射工程)。レーザ光L1は、封着材料14の円周方向に沿って走査される。本実施形態では、複数の封着材料14に対して、レーザ照射装置15からレーザ光L1を順次連続して照射する。全ての封着材料14にレーザ光L1が照射されると、レーザ照射工程が終了する。これにより、積層体LMは、複数の封止層5によってガラス板G2とガラス基板G1とが接合されたものとなる。なお、このレーザ照射工程では、複数のレーザ光L1を複数の封着材料14の各々に同時に照射して封着を行っても良い。このようにすることで、効率良く封着を行うことができる。
【0077】
切断工程は、ガラス板G2からダイヤフラム3を切り出す第一切断工程と、第一切断工程後にガラス基板G1を切断する第二切断工程とを備える。
【0078】
第一切断工程では、例えばレーザ溶断によってガラス板G2を切断する。
図10に示すように、第一切断工程では、ガラス板G2に設定される円形の切断予定線CL1に沿ってレーザ光L2を走査し、レーザ光L2が照射されたガラス板G2の部分を溶融させることで、当該ガラス板G2から円形のダイヤフラム3を切り出す。切断予定線CL1は、複数の封止層5の何れをも横断しないよう、封止層5(第1接触部12、第2接触部6)を避けて予め設定される。より好ましくは、複数の封止層5各々から所定距離外側へ離間した位置に、封止層5の輪郭形状に沿って設定される。なお、この第一切断工程では、複数のレーザ光L2を同時に照射して切断を行っても良い。このようにすることで、複数のダイヤフラム3をガラス板G2から効率良く切り出すことができる。なお、第一切断工程における切断方法としては、切断予定線に沿って局所的に応力を付与すると共に、クラックを形成および進展させる割断方法(例えば、国際公開第2011/155314に記載の方法)を用いても良い。
【0079】
図11に示すように、第二切断工程では、ガラス基板G1に設定される直線状(格子状)の切断予定線CL2に沿ってガラス基板G1を切断する。この切断予定線CL2は、ガラス基板G1から複数の基材2を切り出すために設定される。切断予定線CL2は、複数の封止層5及び複数のダイヤフラム3の何れをも横断しないよう、当該封止層5(第1接触部12、第2接触部6)及びダイヤフラム3を避けて予め設定される。より好ましくは、複数のダイヤフラム3の各々から所定距離外側へ離間した位置に、ダイヤフラム3の輪郭形状に沿って設定される。第二切断工程では、例えばスクライブ割断やレーザ熱割断等の切断方法により、ガラス基板G1を切断する。これにより、基材2とダイヤフラム3とを封止層5によって接合してなる複数の個片(個別)のダイヤフラム装置1が形成される(
図12参照)。なお、本実施形態では、
図12に示すように、積層体LMからダイヤフラム装置1を個別に切り出しているが、これに限らず、二個以上のダイヤフラム装置1を含むユニットが構成されるように、ガラス基板G1を切断してもよい。
【0080】
本実施形態に係るダイヤフラム装置1の製造方法では、準備工程において複数のダイヤフラム装置1を製造可能な積層体LMを形成し、当該積層体LMに対して接合工程及び切断工程を実施することで、多数のダイヤフラム装置1を効率良く製造できる。
【0081】
図13は、本発明の第三実施形態を示す。本実施形態では、第一実施形態と同様に、マイクロバルブからなるダイヤフラム装置1を示す。但し、本実施形態に係るダイヤフラム装置1の基材2は、第一実施形態における凹部2b及び第2非接触部7を備えていない。
【0082】
基材2は、その表面2aに連通する第一貫通孔10及び第二貫通孔11を有する。第一貫通孔10は、第一流路4aを構成し、第二貫通孔11は、第三流路4cを構成する。ダイヤフラム装置1の第二流路4bは、基材2の表面2aと、ダイヤフラム3の表面3aとを環状の封止層5により接合することで、両表面2a,3aの間に形成されている。
【0083】
本実施形態におけるその他の構成は、第一実施形態と同じである。本実施形態において、第一実施形態と共通する構成要素には、共通符号を付している。このダイヤフラム装置1は、第一実施形態又は第二実施形態で例示した製造方法により製造できる。
【0084】
図14は、本発明の第四実施形態を示す。本実施形態では、ダイヤフラム装置1としてダイヤフラムポンプを例示する。
【0085】
ダイヤフラム装置1は、流体を流入させる第一流路4aと、ダイヤフラム3が設けられる第二流路4bと、第二流路4bからの流体を流出させる第三流路4cとを含む。
【0086】
第一流路4aは、その中途部に第一逆止弁16を備える。第一逆止弁16は、第一流路4aから第二流路4bに流入する流体が第一流路4aに逆流しないように、第一流路4aを閉塞する。
【0087】
第二流路4bは、ダイヤフラム3の変形により第一流路4aから第二流路4bに流入した流体を第三流路4cに圧送するように構成される。本実施形態において、ダイヤフラム3は、その変形により第二流路4bの容積を変化させるとともに、第二流路4bの流体を第三流路4cに圧送する駆動体として機能する。
【0088】
第三流路4cは、その中途部に第二逆止弁17を備える。第二逆止弁17は、第三流路4cから流出する流体が第二流路4bに逆流しないように、当該第三流路4cを閉塞する。
【0089】
基材2A,2Bは、ダイヤフラム3に接合される第一基材2Aと、第一基材2Aに接合される第二基材2Bとを含む。第一基材2Aと第二基材2Bとの接合部分には、第一逆止弁16及び第二逆止弁17を収容する弁収容部18が形成されている。
【0090】
本実施形態に係るダイヤフラム装置1は、ダイヤフラム3の変形により、流体の吸込工程と、吐出工程とを交互に実行する。
【0091】
吸込工程において、ダイヤフラム3は、第二流路4bの容積を増大させるように変形する(
図14において一点鎖線で示す)。これにより、ダイヤフラム装置1は、第二逆止弁17が第三流路4cを閉塞した状態で、第一逆止弁16による第一流路4aの閉塞を解除し、流体を第一流路4aから第二流路4bへと流入させる。
【0092】
吐出工程において、ダイヤフラム3は、第二流路4bの容積を減少させるように変形する(
図14において二点鎖線で示す)。これにより、ダイヤフラム装置1は、第一逆止弁16が第一流路4aを閉塞した状態で、第二逆止弁17による第三流路4cの閉塞を解除し、第二流路4b内の流体を、第三流路4cを通じてダイヤフラム装置1の外部に流出させる。
【0093】
本実施形態におけるその他の構成は、第一実施形態と同じである。本実施形態において、第一実施形態と共通する構成要素には、共通符号を付している。本実施形態に係るダイヤフラム装置1は、第一実施形態又は第二実施形態で例示した製造方法により製造できる。
【0094】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0095】
上記の実施形態では、MEMSに使用され得る小型のダイヤフラム装置1を例示したが、本発明は、これに限定されず、他の各種機械に使用される流体制御システムに適用可能である。
【0096】
上記の実施形態では、準備工程(固定工程)において、ダイヤフラム3又はガラス板G2に封着材料14を固定する例を示したが、本発明はこの構成に限定されない。すなわち、準備工程において、基材2又はガラス基板G1に封着材料14を固定してもよい。
【0097】
上記の実施形態では、固定工程後に積層工程を行う場合を一例として示したが、固定工程を省略して積層工程および加熱工程を行っても良い。
【0098】
上記の実施形態では、接合工程において、ダイヤフラム3側又はガラス板G2側からレーザ光L,L1を照射する例を示したが、本発明は、これに限定されず、基材2側又はガラス基板G1側からレーザ光L,L1を照射してもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 ダイヤフラム装置
2 基材
3 ダイヤフラム
3b 縁部
4b 第二流路
5 封止層
6 第2接触部
7 第2非接触部
12 第1接触部
13 第1非接触部
14 封着材料
L レーザ光
L1 レーザ光