(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】ガラス物品の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
C03B 5/26 20060101AFI20220714BHJP
C03B 17/06 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
C03B5/26
C03B17/06
(21)【出願番号】P 2018126798
(22)【出願日】2018-07-03
【審査請求日】2021-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】玉村 周作
(72)【発明者】
【氏名】西村 康宏
【審査官】松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/223034(WO,A1)
【文献】特表2012-509845(JP,A)
【文献】特表2010-535694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 5/26
C03B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラス生成装置で溶融ガラスを生成する生成工程と、生成した前記溶融ガラスの状態を状態調整槽で調整する状態調整工程と、状態の調整が成された前記溶融ガラスを成形体に供給してガラスリボンを成形する成形工程とを備える、ガラス物品の製造方法において、
前記状態調整槽に設けられた前記溶融ガラスの流入口に、前記溶融ガラス生成装置の側から前記状態調整槽の内部に前記溶融ガラスを流入させるための流入管が接続され、
前記溶融ガラスの流れ方向上流側となる前記流入管の一端を通過する際の前記溶融ガラスの流れ方向を基準流れ方向とし、前記流入管の他端から前記状態調整槽の内部に流入する際の前記溶融ガラスの流れ方向を流入時流れ方向としたとき、
前記流入管を平面視した状態で、前記流入時流れ方向が前記基準流れ方向に対して左右何れか一方の側を向くように、前記流入管が曲がっていることを特徴とするガラス物品の製造方法。
【請求項2】
前記状態調整槽の流出口と前記成形体の流入口とが接続管で接続され、
前記接続管は、前記状態調整槽の流出口と同じ向きから、前記接続管を平面視した状態で前記流入時流れ方向と同じ向きに曲がっている請求項1に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項3】
前記流入管は、前記流入管を平面視した状態で、前記流入管の一端側から前記基準流れ方向に対して
前記左右何れか一方の側とは左右方向で反対側となる左右他方の側に傾斜した状態で直線状に伸びるストレート部と、前記ストレート部の下流端から前記流入時流れ方向へと曲がって、前記状態調整槽の流入口に接続される曲げ部とを有する請求項1又は2に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項4】
前記成形体は、オーバーフロー溝から溢れ出た前記溶融ガラスを両側面に沿って流下させることで前記ガラスリボンを成形するもので、
前記成形体の流入口は、前記両側面の向きに対して直交する向きに設けられ、かつ前記基準流れ方向と前記流入時流れ方向とがなす角度が90°に設定される請求項1~3の何れか一項に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項5】
前記ガラス物品は、前記ガラスリボンをロール状に巻き取ってなるガラスロールである請求項1~4の何れか一項に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項6】
溶融ガラスを生成する溶融ガラス生成装置と、生成した前記溶融ガラスの状態を調整する状態調整槽と、状態の調整が成された前記溶融ガラスを流下させ
てガラスリボンを成形する成形体とを備えるガラス物品の製造装置において、
前記状態調整槽に設けられた前記溶融ガラスの流入口に、前記溶融ガラス生成装置の側から前記状態調整槽の内部に前記溶融ガラスを流入させるための流入管が接続され、
前記溶融ガラスの流れ方向上流側となる前記流入管の一端を通過する際の前記溶融ガラスの流れ方向を基準流れ方向とし、前記流入管の他端から前記状態調整槽の内部に流入する際の前記溶融ガラスの流れ方向を流入時流れ方向としたとき、
前記流入管を平面視した状態で、前記流入時流れ方向が前記基準流れ方向に対して左右何れか一方の側を向くように、前記流入管が曲がっていることを特徴とするガラス物品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス物品の製造方法及び製造装置に関し、特に成形体に至る溶融ガラスの搬送経路を改良することで、製造ラインのレイアウトの自由度を高めるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ガラスロールや板ガラスの製造ラインは、溶融ガラスが流れる溶融ラインと、ガラスリボンが流れる加工ラインとからなる。この場合、溶融ラインは、例えば、上流側から順に、溶解槽と、清澄槽と、撹拌槽などの均質化槽と、状態調整槽と、成形体とを備えると共に、これら各槽と成形体とが溶融ガラスの供給管で接続された構成をなす(例えば特許文献1を参照)。また、ガラスロールの製造ラインにおいて、ガラスリボンの搬送方向は縦方向から横方向に転換される(例えば特許文献2を参照)。このため、加工ラインは、製造ラインを平面視した状態で、溶融ラインの終端(成形体)から溶融ラインに直交する向きに延伸している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-88754号公報
【文献】特開2011-16705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、ガラスロールの製造ラインにおいては、溶融ラインと加工ラインとが直交する向きに配置される。この場合、ガラスロールの製造ラインを並列に配置すると、加工ラインの分だけ溶融ライン間の距離を開けなくてはならず、設置スペース上の無駄が生じる。また、溶融ラインと加工ラインとが直交する位置関係しか採れないようだと、製造ラインのレイアウトが制限され、レイアウトを柔軟に変更することも難しい。
【0005】
上記問題を解決するための対策として、例えば
図9及び
図10に示すレイアウトが考えられる。このレイアウトにおいては、状態調整槽101は、図示しない均質化槽の下流側に位置し、成形体102は、状態調整槽101の下流側に位置している(
図9を参照)。そして、均質化槽と状態調整槽101とが所定形状の接続管103(
図10を参照)で接続されると共に、状態調整槽101と成形体102とが、所定の向きに曲がった形状をなす接続管104(
図9を参照)で接続されている。この場合、状態調整槽101の流出口101aは下方を向いており(
図9を参照)、この流出口101aに接続される接続管104が、この接続管104を平面視した状態で、状態調整槽101内への溶融ガラスGmの流入方向d0に対して直交する向きへと曲げられている(
図10を参照)。このように、接続管104を曲げた構成とすることで、ガラスリボンGrの送り方向D0と、溶融ガラスGmの流れ方向(状態調整槽101内部への溶融ガラスGmの流入方向d0)とが平行になるので、溶融ラインと加工ラインとを平行に配置することが可能となる。なお、
図9及び
図10中、符号101bは状態調整槽101の流入口、符号102aは成形体102の流入口、符号Gr1,Gr2は成形されるガラスリボンGrの幅方向両端部を示している。
【0006】
ところで、上述した溶融ラインを備えた製造ラインを稼働した場合、成形体102に至るまでの各槽(例えば
図11に示す均質化槽105や状態調整槽101)内に溶融ガラスGmの停滞領域R1,R2が生じることがある。これら停滞領域R1,R2内の溶融ガラスGm1’,Gm2’は、停滞領域R1,R2を通過することなく成形体102に至った溶融ガラスGmと、異なる温度履歴を経ているため、異質となり易い。従来構成の溶融ラインであれば、
図12に示すように、停滞領域R1,R2内の溶融ガラスGm1’,Gm2’は、状態調整槽101の下方から接続管106を流れて、成形体102の流入口102aの上部又は下部を通過し、成形品であるガラスリボンGrの幅方向両端部Gr1,Gr2となる。ガラスリボンGrの幅方向両端部Gr1,Gr2は、通常、その後の加工ラインにおいて切断等により除去されるため、異質な溶融ガラスGm1’,Gm2’が最終製品内に残ることもなく特に問題はない。これに対して、上記提案の溶融ライン(
図9及び
図10を参照)の場合、接続管104を、下方から、状態調整槽101への溶融ガラスGmの流入方向d0に対して直交する向きへと曲げているため、
図11及び
図13に示すように、停滞領域R1,R2の溶融ガラスGm1’,Gm2’は、接続管104のうち従来構成の溶融ラインにおいて流れる部分(
図12)とは異なる部分を流れ、成形体102の流入口102aのうち上下方向の中間部を通過し、成形体8内に流入する。そのため、これら停滞領域R1,R2の溶融ガラスGm1’,Gm2’は、
図13に示すように、ガラスリボンGrの幅方向両端部Gr1,Gr2の間に位置する製品部分に混入し、加工後のガラスリボンGr(すなわち、製品としてのガラスロールやガラス板)に異質な溶融ガラスGm1’,Gm2’が残り、製品不良を発生させる。
【0007】
以上の事情に鑑み、本明細書では、溶融ラインで生じ得る異質な溶融ガラスがガラスリボンの製品部分に残る事態を防止しつつ、ガラス物品の製造ラインのレイアウトに関する自由度を高めることを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題の解決は、本発明に係るガラス物品の製造方法により達成される。すなわち、この製造方法は、溶融ガラス生成装置で溶融ガラスを生成する生成工程と、生成した溶融ガラスの状態を状態調整槽で調整する状態調整工程と、状態の調整が成された溶融ガラスを成形体に供給してガラスリボンを成形する成形工程とを備える、ガラス物品の製造方法において、状態調整槽に設けられた溶融ガラスの流入口に、溶融ガラス生成装置の側から状態調整槽の内部に溶融ガラスを流入させるための流入管が接続され、溶融ガラスの流れ方向上流側となる流入管の一端を通過する際の溶融ガラスの流れ方向を基準流れ方向とし、流入管の他端から状態調整槽の内部に流入する際の溶融ガラスの流れ方向を流入時流れ方向としたとき、流入管を平面視した状態で、流入時流れ方向が基準流れ方向に対して左右何れか一方の側を向くように、流入管が曲がっている点をもって特徴付けられる。
【0009】
このように、本発明に係る製造方法では、状態調整槽の流入口に接続される流入管の形状に着目し、この流入管を平面視した状態で、溶融ガラスの流入時流れ方向(状態調整槽の内部に流入する際の溶融ガラスの流れ方向)が基準流れ方向(流入管の一端を通過する際の溶融ガラスの流れ方向)に対して左右何れか一方の側を向くように、当該流入管を曲げるようにした。このように、従来直線状をなしていた流入管を曲げることにより、仮に状態調整槽よりも上流側の層(均質化槽など)で溶融ガラスの停滞領域が生じたとしても、この停滞領域の溶融ガラスは、流入管の一端に流入した際の位置(例えば流入管の下部)を可及的に維持して、流入管の他端、すなわち状態調整槽の流入口に至る。従って、状態調整槽と成形体とを従来の態様で接続することにより、接続管内での溶融ガラスの相対位置を変化させることなく当該溶融ガラスは、成形体の流入口の上部又は下部を通過することになる。これにより、停滞領域の溶融ガラスが流れ込んできたとしても、当該溶融ガラスを、成形体により成形されるガラスリボンの幅方向両端部となる領域に流れ込ませることが可能となる。また、従来直線状をなしていた流入管を上述のように曲げることにより、流入管の下流端と接続される状態調整槽の流入口の向きは、溶融ガラスが溶融ガラス生成装置で生成された後、状態調整槽に至る間の流れ方向とは異なる向きとなる。よって、この状態調整槽内部に流入する際の流れ方向(流入時流れ方向)を調整することにより、成形体の流入口の向きを適宜設定することができる。以上より、本発明によれば、異質な溶融ガラスが加工後のガラスリボンに残って、製品の品質低下を招く事態を可及的に防止しつつ、製造ラインのレイアウトの自由度を高めることが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る製造方法においては、状態調整槽の流出口と成形体の流入口とが接続管で接続され、接続管は、状態調整槽の流出口と同じ向きから、接続管を平面視した状態で流入時流れ方向と同じ向きに曲がっていてもよい。
【0011】
このように流入時流れ方向と同じ向きに曲がった接続管で、状態調整槽の流出口と成形体の流入口とを接続することによって、接続管内での溶融ガラスの相対位置を維持して、成形体の流入口の上部又は下部に溶融ガラスを供給することができる。よって、仮に停滞領域の溶融ガラスが流入管を通じて状態調整槽に流れ込んできたとしても、当該停滞領域の溶融ガラスは、流入管の一端に流入した際の位置(例えば流入管内部空間の下部)を維持して状態調整槽の流入口に至り、かつ接続管内でもその相対位置を維持したまま成形体の流入口(この場合、流入口の下部)に至る。これにより、停滞領域の溶融ガラスが流れ込んできたとしても、この好ましくない溶融ガラスがガラスリボンの製品部分に混入する事態を確実に防止することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る製造方法においては、流入管は、流入管を平面視した状態で、流入管の一端側から基準流れ方向に対して左右他方の側に傾斜した状態で直線状に伸びるストレート部と、ストレート部の下流端から流入時流れ方向へと曲がって、状態調整槽の流入口に接続される曲げ部とを有するものであってもよい。
【0013】
上述のように、流入管にその一端側から基準流れ方向に対して左右他方の側に傾斜した状態で直線状に伸びるストレート部を設けると共に、このストレート部の下流端から流入時流れ方向へと曲がって成形体の流入口に接続される曲げ部とを設けることで、基準流れ方向に対する曲げ部の曲げ方向(左右一方の側)とは左右逆向きにストレート部が傾斜した状態となる(後述する
図3等を参照)。よって、流入管の一端側から曲げ部の上流端までの管長さを短くすることができる。
【0014】
また、本発明に係る製造方法においては、成形体は、オーバーフロー溝から溢れ出た溶融ガラスを両側面に沿って流下させることでガラスリボンを成形するもので、成形体の流入口は、両側面の向きに対して直交する向きに設けられ、かつ基準流れ方向と流入時流れ方向とがなす角度が90°に設定されてもよい。また、本発明に係る製造方法においては、ガラス物品は、ガラスリボンをロール状に巻き取ってなるガラスロールであってもよい。
【0015】
上述のように構成した成形体に、上述のように曲げた形態をなす流入管(あるいは曲げ部)を接続することによって、基準流れ方向と、成形体により成形されるガラスリボンの主表面の向き(法線方向)とを一致させることができる。ガラスロールの製造工程では、成形されたガラスリボンは、下方に引き出された後、カテナリを介して水平方向に方向転換して搬送されるので、上記構成によれば、溶融ラインと、加工ラインとを平行に配置することができる。これにより、ガラスロールの製造ラインをその幅方向(溶融ラインにおいてはその短手方向と同じ向きをいい、加工ラインにおいてはガラスリボンの幅方向をいう。以下、本明細書において同じ。)に狭めることができるので、ガラスロールの製造ラインを並列に複数配置する場合に好適である。
【0016】
また、前記課題の解決は、本発明に係るガラス物品の製造装置によっても達成される。すなわち、この製造装置は、溶融ガラスを生成する溶融ガラス生成装置と、生成した溶融ガラスの状態を調整する状態調整槽と、状態の調整が成された溶融ガラスをガラスリボンに成形する成形体とを備えるガラス物品の製造装置において、状態調整槽に設けられた溶融ガラスの流入口に、溶融ガラス生成装置の側から状態調整槽の内部に溶融ガラスを流入させるための流入管が接続され、溶融ガラスの流れ方向上流側となる流入管の一端を通過する際の溶融ガラスの流れ方向を基準流れ方向とし、流入管の他端から状態調整槽の内部に流入する際の溶融ガラスの流れ方向を流入時流れ方向としたとき、流入管を平面視した状態で、流入時流れ方向が基準流れ方向に対して左右何れか一方の側を向くように、流入管が曲がっている点をもって特徴付けられる。
【0017】
このように、本発明に係る製造装置においても、従来直線状をなしていた流入管を曲げることにより、仮に状態調整槽よりも上流側の層で溶融ガラスの停滞領域が生じたとしても、この停滞領域の溶融ガラスは、流入管の一端に流入した際の位置を可及的に維持して、状態調整槽の流入口に至る。従って、状態調整槽と成形体とを従来の態様で接続することにより、接続管内での溶融ガラスの相対位置を変化させることなく成形体に供給することができる。これにより、停滞領域の溶融ガラスが流れ込んできたとしても、成形体の流入口の下部又は上部を通過して、当該溶融ガラスをガラスリボンの幅方向両端部となる領域に流れ込ませることが可能となる。また、従来直線状をなしていた流入管を上述のように曲げることにより、流入管の下流端と接続される状態調整槽の流入口の向きは、溶融ガラスが溶融ガラス生成装置で生成された後、状態調整槽に至る間の流れ方向とは異なる向きとなる。よって、この状態調整槽内部に流入する際の流れ方向を調整することにより、成形体の流入口の向きを適宜設定することができる。以上より、本発明によれば、異質な溶融ガラスが製品に残って、製品の品質低下を招く事態を可及的に防止しつつ、製造ラインのレイアウトの自由度を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上に述べたように、本発明によれば、溶融ラインで生じ得る異質な溶融ガラスがガラスリボンの製品部分に残る事態を防止しつつ、ガラス物品の製造ラインのレイアウトに関する自由度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るガラス物品の製造装置の要部を正面から見た図である。
【
図2】
図1に示す製造装置の要部を平面視した図である。
【
図3】
図1に示す第三の接続管及びその周辺部を平面視した図である。
【
図4】
図1に示す第三の接続管及びその周辺部をY方向から見た側面図である。
【
図5】
図3に示す第三の接続管及びその周辺部を正面から見た図である。
【
図6】
図1に示す製造装置において、停滞領域の溶融ガラスが成形体内部に至るまでの流れを模式的に描いた正面図である。
【
図7】
図6に示す第三の接続管まわりの溶融ガラスの流れをY方向から見た側面図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係るガラス物品の製造装置の要部を正面から見た図である。
【
図9】本発明との比較に用いるガラス物品の製造装置の要部を側面視した図であって、状態調整槽と成形体とを接続する接続管をY方向から見た側面図である。
【
図10】
図9に示す接続管及びその周辺部を平面視した図である。
【
図11】
図10に示す接続管を備えたガラス物品の製造装置において、停滞領域の溶融ガラスが成形体内部に至るまでの流れを模式的に描いた正面図である。
【
図12】従来構成に係るガラス物品の製造装置において、停滞領域の溶融ガラスが成形体内部に至るまでの流れを模式的に描いた正面図である。
【
図13】
図11に示す停滞領域の溶融ガラスの流れをY方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を
図1~
図7に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係るガラス物品の製造装置1を正面から見た図、
図2は、同じガラス物品の製造装置1を平面視した図である。これらの図に示すように、この製造装置1は、大別して溶融ガラスGmが流れる溶融ライン2と、溶融ライン2で成形されたガラスリボンGrの加工ライン3とを備える。このうち、溶融ライン2は、最上流域に配置された溶融ガラス生成装置としての溶解槽4と、溶解槽4の下流側に配設される清澄槽5と、清澄槽5の下流側に配設される均質化槽6と、均質化槽6の下流側に配設される状態調整槽7と、状態調整槽7の下流側に配設される成形体8と、各槽4~7、及び成形体8の間を接続する接続管9~12とを備える。
【0022】
また、ガラスリボンGrの加工ライン3は、例えば、何れも図示は省略するが、成形体8の下方に位置し、成形体8で成形したガラスリボンGrに徐冷処理を施す徐冷処理部と、徐冷処理が施されたガラスリボンGrを所定の温度、例えば室温付近にまで冷却する冷却部と、冷却後のガラスリボンGrの送り方向を縦方向から横方向に転換する方向転換部と、横方向に搬送されるガラスリボンGrの幅方向両端部(耳部ともいう)をガラスリボンGr本体から切り離す第一切断部と、幅方向両端部が除去されたガラスリボンGrを幅方向に沿って切断する第二切断部と、第二切断部を通過したガラスリボンGrをロール状に巻取る巻取り部とを備える。もちろん、上述の構成は一例にすぎず、上述した構成要素の一部を変更、省略してもよく、あるいは上記以外の構成要素を必要に応じて追加してもよい。以下、溶融ライン2について、均質化槽6と状態調整槽7との接続態様を中心に説明する。
【0023】
溶解槽4は、投入されたガラス原料を溶解して、溶融ガラスGmを生成する生成工程を行うための容器である。溶解槽4は、第一の接続管9によって清澄槽5に接続されている。
【0024】
清澄槽5は、第一の接続管9を介して溶解槽4から供給された溶融ガラスGmを清澄剤等の働きにより清澄する清澄工程を行うための容器である。清澄槽5は、第二の接続管10によって均質化槽6に接続されている。
【0025】
均質化槽6は、清澄された溶融ガラスGmを撹拌し、均一化する均質化工程を行うための容器である。均質化槽6は、第三の接続管11によって状態調整槽7に接続されている。なお、均質化槽6は、図示のように一つであってもよいし、二つ以上並べて配設してもよい。
【0026】
状態調整槽7は、溶融ガラスGmを成形に適した状態に調整する状態調整工程を行うための容器であり、例えば成形体8に供給する溶融ガラスGmの流量を調整する。状態調整槽7は、本実施形態では、第三の接続管11が接続され、第三の接続管11から溶融ガラスGmが流入する上部7aと、状態の調整が成された溶融ガラスGmが流出する下部7bと、上部7aと下部7bとを繋ぐ中間部7cとを備える。上部7aの側面には、溶融ガラスGmを流入させるための流入口7dが設けられる。また、下部7bの下端には、溶融ガラスGmの流出口7eが設けられている。上記構成の状態調整槽7は、第四の接続管12によって成形体8に接続されている。
【0027】
成形体8は、溶融ガラスGmを所望の形状に成形する。本実施形態では、成形体8は、オーバーフローダウンドロー法によって溶融ガラスGmを帯状に成形する。詳細には、成形体8は、断面形状が略楔形状をなし、その上部にオーバーフロー溝8aを有すると共に、オーバーフロー溝8aから溢れ出た溶融ガラスGmを流下させる両側面8b,8bとを有する。上記構成に係る成形体8は、両側面8b,8bに沿って流下させた溶融ガラスGmを両側面8b,8bの下頂部で融合させ、帯状のガラスリボンGrに成形可能としている。成形されたガラスリボンGrは、例えば、厚みが0.01~2mm(好ましくは0.3mm以下)であって、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ、有機EL照明、太陽電池などの基板や保護カバーに利用される。なお、成形体8は、スロットダウンドロー法などの他のダウンドロー法を実行するものであってもよい。
【0028】
第一の接続管9~第四の接続管12は、例えば白金又は白金合金からなる円筒管で構成されており、溶解槽4から下流側に隣接する各槽5~7、並びに成形体8に溶融ガラスGmを順次搬送する。
【0029】
図3は、均質化槽6と状態調整槽7とを接続する第三の接続管11及びその周辺部を平面視した図である。
図3に示すように、第三の接続管11は、所定の向きに曲がった形状をなしている。この第三の接続管11が、本発明に係る流入管に相当する。本実施形態では、第三の接続管11は、第三の接続管11を平面視した状態で、直線状に伸びるストレート部13と、ストレート部13の下流端から所定の向きへと曲がって、状態調整槽7の流入口7aに接続される第一曲げ部14と、均質化槽6の流出口6aとストレート部13の上流端とを接続する第二曲げ部15とを有する。
【0030】
また、第三の接続管11の上流端11aを通過する溶融ガラスGmの流れ方向(基準流れ方向d0)と、下流端11bを通過する溶融ガラスGmの流れ方向(流入時流れ方向d1)との関係でいえば、第三の接続管11は、
図3に示すように第三の接続管11を平面視した状態で、基準流れ方向d0に対して流入時流れ方向d1が左右何れか一方の側を向くように、第三の接続管11が曲がっている。本実施形態では、X方向及びY方向は水平方向、Z方向は鉛直方向であり、基準流れ方向d0は、
図3に示すように、鉛直上方から見た場合にはY方向を向いている。また、流入時流れ方向d1は、鉛直上方から見た場合にはX方向を向いている。以上より、基準流れ方向d0と流入時流れ方向d1とは、水平面となるXY平面上で互いに直交している。
【0031】
また、本実施形態では、ストレート部13は、第三の接続管11の上流端11a側から基準流れ方向d0に対して左右他方の側に傾斜した状態で直線状に伸びている。これに対して、ストレート部13の下流端と接続される第一曲げ部14は、流入時流れ方向d1が基準流れ方向d0に対して左右一方の側を向くように曲がっている。本実施形態でいえば、ストレート部13が基準流れ方向d0に対して右方向(
図3でいえば下方向)に傾斜した状態で直線状に伸びているのに対し、第一曲げ部14は、ストレート部13の延伸方向から、基準流れ方向d0に対して右方向(
図3でいえば下方向)へと曲がっている。これにより、状態調整槽7は、
図4に示すように、均質化槽6の流出口6aよりも-X方向の側(
図4でいえば左側)にずれた位置にある。なお、ストレート部13は、
図5に示すように、上流端側(左側)から下流端側(右側)に向かうにつれて+Z方向に移行するように、水平方向に対して所定の角度で上向きに傾斜している。よって、第一曲げ部14は第二曲げ部15よりも高い位置にある。
【0032】
第四の接続管12は、状態調整槽7から流出した溶融ガラスGmを成形体8に供給可能なように、状態調整槽7と成形体8とを接続するもので、
図3に示すように、状態調整槽7の流出口7eと同じ向きから流入時流れ方向d1と同じ向きへと曲がっている。本実施形態のように、状態調整槽7の下部7b(流出口7e)が鉛直下方を向いている場合、第四の接続管12は、
図4に示すように、Z方向(鉛直方向)からX方向(水平方向)へと90°曲がっている。この場合、成形体8内部への溶融ガラスGmの流入方向d2と状態調整槽7内部への流入方向(流入時流れ方向d1)とは、互いに平行な関係にある。
【0033】
次に、上記構成の製造装置1を用いたガラス物品の製造方法の一例を、特に均質化槽6から成形体8に至る溶融ガラスGmの流れ態様を中心に説明する。
【0034】
上記構成をなす製造装置1を用いてガラス物品を製造するに際しては、
図1及び
図2に示すように、まずガラス原料を溶融ライン2の最上流域に位置する溶解槽4に投入して、ガラス原料を溶解することで、溶融ガラスGmを生成する。次いで溶融ガラスGmを第一の接続管9を介して清澄槽5に供給し、清澄槽5で清澄した溶融ガラスGmを第二の接続管10を介して均質化槽6に供給する。均質化槽6に供給された溶融ガラスGmは撹拌等により均質化された後、第三の接続管11を通って状態調整槽7に供給される。状態調整槽7内で例えば流量を調整した溶融ガラスGmが第四の接続管12を通って成形体8に供給される。成形体8では、例えばオーバーフローダウンドロー法によって溶融ガラスGmを帯状のガラスリボンGrに成形する。成形されたガラスリボンGrは、溶融ライン2と平行に延在する加工ライン3上を搬送され、切断など上述した適宜の加工ないし処理を施すことにより、例えばガラスロールが得られる。このようにして、ガラス物品の製造が連続的に実施される。
【0035】
ところで、上記構成の製造装置1でガラス物品を連続的に製造する場合、例えば
図6に示すように、均質化槽6の底部に溶融ガラスGmの停滞領域R1が生じることがある。この場合、停滞領域R1の溶融ガラスGm1’は均質化槽6の流出口6aから第三の接続管11の上流端11aの下部に流入する。あるいは、同じく
図6に示すように、状態調整槽7の頂部(上部7aのうち流入口7dよりも上方の領域)に溶融ガラスGmの停滞領域R2が生じることがある。この場合、停滞領域R2の溶融ガラスGm2’は流出口7eの成形体8に近い側(XYZ座標系でいえば+X方向の側)を通って第四の接続管12の上流端に流入する。
【0036】
ここで、本発明に係る製造装置1では、第三の接続管11を平面視した状態で、溶融ガラスGmの流入時流れ方向d1が基準流れ方向d0に対して左右何れか一方の側を向くように、流入管としての第三の接続管11を曲げるようにした(
図3を参照)。このように第三の接続管11を曲げることにより、
図6に示すように均質化槽6で溶融ガラスGmの停滞領域R1が生じたとしても、この停滞領域R1の溶融ガラスGm1’は、第三の接続管11の上流端11aに流入した際の位置を可及的に維持して(ここでは上流端11aの下部、第二曲げ部15の下部15a、ストレート部13の下部13a、第一曲げ部14の下部14a、そして下流端11bの下部を通って)、状態調整槽7の流入口7dに至る。また、状態調整槽7と成形体8とを
図4に示すように曲がった形態の第四の接続管12で接続することにより、停滞領域R1の溶融ガラスGm1’は、
図7に示すように状態調整槽7の流出口7eのうちで成形体8から遠い側(XYZ座標系でいえば-X方向の側)から第四の接続管12の曲げ部の外側12aを通って成形体8の流入口8cの下部を通過する。あるいは、状態調整槽7の頂部に溶融ガラスGmの停滞領域R2が生じたとしても、この停滞領域R2の溶融ガラスGm2’は、状態調整槽7の流出口7eのうちで成形体8に近い側(XYZ座標系でいえば+X方向の側)から第四の接続管12の曲げ部の内側12bを通って成形体8の流入口8cの上部を通過する。上述のようにして成形体8の流入口8cを通過した各停滞領域R1,R2の溶融ガラスGm1’,Gm2’は、ガラスリボンGrの幅方向両端部Gr1,Gr2となる領域に流れ込む(
図7を参照)。
【0037】
このように、本発明によれば、第三の接続管11内に流入した際の停滞領域R1の溶融ガラスGm1’の位置を第三の接続管11の下部、並びに第四の接続管12の曲げ部の外側12aで可及的に維持して、成形体8の流入口8cの下部を通過させることができる。また、第四の接続管12内に流入した際の停滞領域R2の溶融ガラスGm2’の位置を第四の接続管12の曲げ部の内側12bで可及的に維持して、成形体8の流入口8cの上部を通過させることができる。従って、これら異質な溶融ガラスGm1’,Gm2’が加工後のガラスリボンGrに残って、製品(加工後のガラスリボンGr)の品質が低下する事態を可及的に防止することが可能となる。また、第三の接続管11の曲げ方向については、第三の接続管11を平面視した状態で基準流れ方向d0に対して左右何れかの向きであればよいため、曲げ後の方向、すなわち、状態調整槽7の流入口7dの向き(流入時流れ方向d1)を適宜設定することにより、成形体8の流入口8cの向き、ひいては成形体8で成形されるガラスリボンGrの送り方向D0(すなわち加工ライン3の向き)を比較的自由に設定することが可能となる。
【0038】
また、本実施形態では、成形体8の流入口8cを、上部のオーバーフロー溝8aから溢れ出た溶融ガラスGmを流下させる両側面8b,8bに対して直交する向きに設けると共に、基準流れ方向d0と流入時流れ方向d1とがなす角度を90°に設定し、かつ第四の接続管12の曲げ方向(成形体8内部への流入方向d2)を、状態調整槽7の流出口7eと同じ向きから、第四の接続管12を平面視した状態で流入時流れ方向d1と同じ向きに曲げるようにした(
図3及び
図4を参照)。このように第三の接続管11の曲げ方向と第四の接続管12の曲げ方向とを成形体8の流入口8cとの関係で定めることによって、基準流れ方向d0と、成形体8により成形されるガラスリボンGrの主表面の向き(すなわちガラスリボンGrの送り方向D0)とを一致させることができる。成形されたガラスリボンGrは、下方に引き出された後、カテナリを介して水平方向に方向転換して搬送されるので、上記構成によれば、溶融ライン2と、加工ライン3とを平行に配置することができる。
【0039】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明に係るガラス物品の製造方法及び製造装置は、上記実施形態には限定されることなく、本発明の範囲内で種々の形態を採ることが可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態では、第三の接続管11の曲げ方向(曲げた後の方向となる下流端11bの方向)を規定する際の基準となる基準流れ方向d0を水平方向とした場合を例示(
図5を参照)したが、基準流れ方向d0は水平方向には限らない。流入時流れ方向d1についても水平方向には限られることはなく、上述の通り、鉛直上方から見た状態(平面視した状態)で、基準流れ方向d0に対して左右何れか一方の側を向く限りにおいて、流入時流れ方向d1を任意の向きに設定することが可能である。また、成形体8内部への溶融ガラスGmの流入方向d2についても、図示の向き(+X方向)には限定されない。例えば、流入方向d2を+X方向以外の向きに設定することも可能である。また、以上のことから、第三の接続管11における曲げ角度(第三の接続管11を平面視した状態で基準流れ方向d0と流入時流れ方向d1とがなす角度)は90°に限られない。同様に、第四の接続管12における曲げ角度(状態調整槽7の流出口7eの向きと流入方向d2とがなす角度)も90°に限らず、上述した条件を満たす範囲内において任意の角度を採り得る。
【0041】
また、上記実施形態では、第三の接続管11を、直線状に伸びるストレート部13と、ストレート部13と状態調整槽7とを接続する第一曲げ部14、及び均質化槽6とストレート部13とを接続する第二曲げ部15とで構成した場合を例示したが、もちろん第三の接続管11は上記以外の構成を採ることも可能である。例えば図示は省略するが、平面視した状態で、第二曲げ部15の下流端に-X方向に伸びる第一ストレート部を接続し、第一ストレート部の下流端に第三曲げ部を接続し、第三曲げ部の下流端に+Y方向に伸びる第二ストレート部を接続し、第二ストレート部の下流端に第一曲げ部14を接続し、第一曲げ部14の下流端を状態調整槽7の流入口7dに接続した形態をとることも可能である。
【0042】
また、上記実施形態では、外径寸法が一定の第三の接続管11を状態調整槽7に直接接続した場合を例示したが(
図3及び
図4を参照)、もちろんこれ以外の接続形態をとることも可能である。
図8は、その一例(本発明の他の実施形態)に係る第三の接続管11と状態調整槽7との接続部分をY方向から見た図である。
図8に示すように、第三の接続管11は、その下流側に位置する第一曲げ部14と、第一曲げ部14と状態調整槽7側の間に位置し、第一曲げ部14側から状態調整槽7側に向けて横断面積(長手方向と垂直な断面における面積、以下、単に「断面積」ともいう)が漸次変化する断面積変化部16とを有する。これにより、第三の接続管11の第一曲げ部14と状態調整槽7とが、断面積変化部16を介して接続される。この場合、断面積変化部16が、第三の接続管11の下流端11bとなる。
【0043】
本実施形態では、第三の接続管11の第一曲げ部14の断面積をS1、状態調整槽7の上部7aの断面積をS2とすると、第一曲げ部14の断面積S1は上部7aの断面積S2と異なり、より具体的には、第一曲げ部14の断面積S1は上部7aの断面積S2より小さい。この場合、断面積変化部16の断面積が、第一曲げ部14側から状態調整槽7側に向けて漸次増大するよう、断面積変化部16の内面16aの形状が設定されている。具体的には、断面積変化部16の内面16aの、縦断面(長手方向に沿う断面)の形状が円弧状である。このため、断面積変化部16の内面16aは、筒状であり、第一曲げ部14側から状態調整槽7側に向けて拡径している。
【0044】
第一曲げ部14の断面積S1は、上部7aの断面積S2の0.75倍以上でかつ1.25倍以下に設定するのがよい。本実施形態のように、第一曲げ部14の断面積S1を上部7aの断面積S2より小さくする場合には、第一曲げ部14の断面積S1を、上部7aの断面積S2の0.75倍以上でかつ0.96倍以下に設定するのがよい。例えば、第一曲げ部14の内径は150mm以上でかつ300mm以下に設定することができ、断面積変化部16の内面16aの曲率半径は、10mm以上でかつ50mm以下に設定することができ、好ましくは20mm以上でかつ40mm以下に設定することが好ましい。
【0045】
状態調整槽7の下部7bと、第四の接続管12の上流端12cとは、縁切りされた状態で(状態調整槽7の下部7bと第四の接続管12の上流端12cが接触しない状態で)、溶融ガラスGmを状態調整槽7側から第四の接続管12側へ供給可能としている。具体的には、
図8に示すように、下部7bを第四の接続管12の上流端12c内周に挿入した状態で、状態調整槽7で状態の調整が成された溶融ガラスGmを、第四の接続管12を通じて成形体8に供給可能としている。
【0046】
ここで、状態調整槽7の下部7bの断面積をS3、第四の接続管12の上流端12cの断面積をS4とした場合、下部7bの断面積S3を、上流端12cの断面積S4の0.75倍以上でかつ0.96倍以下に設定するのがよい。
【0047】
また、第三の接続管11が上記構成をなす場合、第一曲げ部14と状態調整槽7との間の断面積変化部16を通過する溶融ガラスGmの粘度は、好ましくは800Pa・s以上に設定され、より好ましくは1000Pa・s以上に設定される。一方、失透を抑制する観点から、断面積変化部16を通過する溶融ガラスGmの粘度は、50000Pa・s以下に設定されることが好ましい。
【0048】
このように、本実施形態では、第三の接続管11が、第一曲げ部14と状態調整槽7の間に、第一曲げ部14側から状態調整槽7側に向けて断面積が漸次変化する断面積変化部16を有するようにした。この構成によれば、第三の接続管11から状態調整槽7内部に流入した溶融ガラスGmに剥離流が発生する事態を可及的に防止して、均質化槽6の底部に停滞する溶融ガラスGm1’(
図6を参照)を、第四の接続管12の外側12aを通って、成形体8のうちガラスリボンGrの幅方向一端部Gr2(
図7を参照)となる領域に確実に流れ込ませることができる。また、状態調整槽7の上部7aに停滞する溶融ガラスGm2’を、第四の接続管12の内側12bを通って、成形体8のうちガラスリボンGrの幅方向他端部Gr1(
図7を参照)となる領域により確実に流れ込ませることができる。以上より、本実施形態に係るガラス物品の製造方法及び製造装置によれば、成形不良の原因となる異質な溶融ガラスGm1’(Gm2’)が加工後のガラスリボンGrに残って、製品としてのガラス物品の品質低下を招く事態を可及的に防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
1 ガラス物品の製造装置
2 溶融ライン
3 加工ライン
4 溶解槽
5 清澄槽
6 均質化槽
7 状態調整槽
7a 流入口
7b 流出口
8 成形体
8a オーバーフロー溝
8b,8b 両側面
8c 流入口
9 第一の接続管
10 第二の接続管
11 第三の接続管
12 第四の接続管
13 ストレート部
14 第一曲げ部
15 第二曲げ部
16 断面積変化部
104 接続管(比較に用いる構成)
106 接続管(従来構成)
D0 ガラスリボンの送り方向
Gm 溶融ガラス
Gm1’,Gm2’ 停滞領域の溶融ガラス
Gr ガラスリボン
Gr1,Gr2 幅方向両端部
R1,R2 停滞領域
d0 基準流れ方向
d1 流入時流れ方向(状態調整槽内部への流入方向)
d2 流入方向(成形体内部への流入方向)