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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】プレス機用金型
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/02 20060101AFI20220714BHJP
   B30B 11/02 20060101ALI20220714BHJP
   B22F 3/035 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
B30B15/02 B
B30B11/02 F
B22F3/035 D
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019534093
(86)(22)【出願日】2017-12-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2017082544
(87)【国際公開番号】W WO2018114502
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-02
(31)【優先権主張番号】102016125406.1
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515056277
【氏名又は名称】ゲーカーエン シンター メタルズ エンジニアリング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ライネル
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】シュップ,トーマス
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特公昭53-003977(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2002/0044985(US,A1)
【文献】国際公開第2015/151825(WO,A1)
【文献】米国特許第03691816(US,A)
【文献】特開2012-136760(JP,A)
【文献】特開2008-105086(JP,A)
【文献】特開平06-304674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/02
B30B 11/02
B22F 3/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス機(2)内に配置用の金型(1)であって、
前記金型(1)は、第1端面(4)及び第2端面(5)との間で軸方向(3)に延び、前記端面(4、5)間に内周面(6)を形成し、
前記金型(1)は、前記内周面(6)から径方向(7)に、外周面(8)と、第1直径(9)上で径方向(7)に配置される1以上の中心合わせ面(10)と、に向かって延び、
前記金型(1)は、前記端面(4、5)から離間したプレス領域(11)を有し、また、前記端面(4、5)上に配置された前記金型(1)の領域(12、13)と少なくとも相対的に、法線ベクトル(32)の方向で前記内周面(6)に働くプレス力(14)と比較してより大きい最大第1剛性を前記プレス領域(11)の近傍において有し、
前記最大第1剛性が、前記端面(4、5)上に配置された1以上の領域(12、13)における最小第2剛性よりも少なくとも10%大き く、
前記金型(1)が、前記径方向(7)に沿って前記内周面(6)と前記第1直径(9)との間に、周方向(15)に互いに離間して配置された接続領域(19)を有し、
前記金型(1)が、旋盤加工、フライス加工、鋸断、穿孔及び研削、ワイヤ切断、型彫、ハードフライス加工、及び粉末状の出発材料から焼結を経て工作物を層状に形成する3D印刷から選択される一又は二以上の加工で形成されている ことを特徴とする金型(1)。
【請求項2】
前記接続領域(19)が、前記軸方向(3)にも互いに離間して配置されていることを特徴とする請求項に記載の金型(1)。
【請求項3】
プレス機(2)内に配置用の金型(1)であって、
前記金型(1)は、第1端面(4)及び第2端面(5)との間で軸方向(3)に延び、前記端面(4、5)間に内周面(6)を形成し、
前記金型(1)は、前記内周面(6)から径方向(7)に、外周面(8)と、第1直径(9)上で径方向(7)に配置される1以上の中心合わせ面(10)と、に向かって延び、
前記金型(1)は、前記端面(4、5)から離間したプレス領域(11)を有し、また、前記端面(4、5)上に配置された前記金型(1)の領域(12、13)と少なくとも相対的に、法線ベクトル(32)の方向で前記内周面(6)に働くプレス力(14)と比較してより大きい最大第1剛性を前記プレス領域(11)の近傍において有し、
前記最大第1剛性が、前記端面(4、5)上に配置された1以上の領域(12、13)における最小第2剛性よりも少なくとも10%大きく、
前記金型(1)が、前記径方向(7)に沿って前記内周面(6)と前記第1直径(9)との間に、少なくとも前記軸方向(3)に縮小する一の断面(18)を有し、
前記内周面(6)と前記第1直径(9)との間に位置する第2直径(20)と前記第1直径(9)との間に、前記第2直径(20)上の断面積(21)よりも大きい断面積が設けられていることを特徴とする金型(1)。
【請求項4】
プレス機(2)内に配置用の金型(1)であって、
前記金型(1)は、第1端面(4)及び第2端面(5)との間で軸方向(3)に延び、前記端面(4、5)間に内周面(6)を形成し、
前記金型(1)は、前記内周面(6)から径方向(7)に、外周面(8)と、第1直径(9)上で径方向(7)に配置される1以上の中心合わせ面(10)と、に向かって延び、
前記金型(1)は、前記端面(4、5)から離間したプレス領域(11)を有し、また、前記端面(4、5)上に配置された前記金型(1)の領域(12、13)と少なくとも相対的に、法線ベクトル(32)の方向で前記内周面(6)に働くプレス力(14)と比較してより大きい最大第1剛性を前記プレス領域(11)の近傍において有し、
前記最大第1剛性が、前記端面(4、5)上に配置された1以上の領域(12、13)における最小第2剛性よりも少なくとも10%大きく、
前記金型(1)が、前記径方向(7)に沿って前記内周面(6)と前記第1直径(9)との間に、周方向(15)に互いに離間して配置された接続領域(19)を有し、
前記接続領域(19)が、前記軸方向(3)にも互いに離間して配置されていることを特徴とする金型(1)。
【請求項5】
前記最大第1剛性が周方向(15)に沿って異なることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の金型(1)。
【請求項6】
プレス機(2)内に配置用の金型(1)であって、
前記金型(1)は、第1端面(4)及び第2端面(5)との間で軸方向(3)に延び、前記端面(4、5)間に内周面(6)を形成し、
前記金型(1)は、前記内周面(6)から径方向(7)に、外周面(8)と、第1直径(9)上で径方向(7)に配置される1以上の中心合わせ面(10)と、に向かって延び、
前記金型(1)は、前記端面(4、5)から離間したプレス領域(11)を有し、また、前記端面(4、5)上に配置された前記金型(1)の領域(12、13)と少なくとも相対的に、法線ベクトル(32)の方向で前記内周面(6)に働くプレス力(14)と比較してより大きい最大第1剛性を前記プレス領域(11)の近傍において有し、
前記最大第1剛性が、前記端面(4、5)上に配置された1以上の領域(12、13)における最小第2剛性よりも少なくとも10%大きく、
前記最大第1剛性が周方向(15)に沿って異なることを特徴とする金型(1)。
【請求項7】
前記金型(1)が、前記径方向(7)に沿って前記内周面(6)と前記第1直径(9)との間に、
少なくとも前記軸方向(3)に縮小する一の断面(18)、又は
前記周方向(15)に互いに離間して配置された接続領域(19)を有することを特徴とする請求項に記載の金型(1)。
【請求項8】
前記金型(1)が、前記径方向(7)に沿って前記内周面(6)と前記第1直径(9)との間に、前記周方向(15)に互いに離間して配置された接続領域(19)を有し、この接続領域(19)が、前記軸方向(3)にも互いに離間して配置されていることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の金型(1)。
【請求項9】
前記1以上の中心合わせ面(10)が、前記軸方向(3)に沿って前記プレス領域(11)に配置されることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の金型(1)。
【請求項10】
前記1以上の中心合わせ面(10)が前記軸方向(3)に沿って第1高さ(16)を有し、第1高さ(16)が前記端面(4、5)間の最短距離(17)の80%以下に相当することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の金型(1)。
【請求項11】
前記内周面(6)と前記第1直径(9)との間に第2直径(20)が配置され、前記第2直径(20)上の前記金型(2)の断面積(21)が、前記内周面(6)の80%以下に相当することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の金型(1)。
【請求項12】
複数の中心合わせ面(10)が前記第1直径(9)上に配置され、前記中心合わせ面(10)が周方向(15)に互いに離間するように配置されることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の金型(1)。
【請求項13】
前記1以上の中心合わせ面(10)が、周方向(15)に円周状に延びるよう実装されることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の金型(1)。
【請求項14】
前記金型(1)が、前記1以上の中心合わせ面(10)から前記軸方向(3)に離間するように配置される1以上の保持部(22)を有することを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の金型(1)。
【請求項15】
プレス機(2)によって1以上の圧粉体(25)を製造する方法であって、前記プレス機(2)は、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の1以上の金型(1)と、前記金型(1)の端面(4、5)を通じて前記内周面(6)によって形成された前記圧粉体(25)用の容器へと前記軸方向(3)に沿って移動可能な1以上のパンチ(26、27)とを有し、前記方法が、
(a)粉末を前記容器に配置する工程と、
(b)前記1以上のパンチ(26、27)を前記金型(1)内で前記軸方向(3)に沿って移動し、前記プレス領域(11)内で前記粉末を圧縮して圧粉体とする工程と、
(c)前記金型(1)の端面(4、5)を通じて前記圧粉体(25)を前記金型(1)から離型する工程と、を備え、
前記金型(1)は、前記端面(4、5)から離間して前記プレス領域(11)を有すると共に、少なくとも工程(b)において、前記端面(4、5)上に配置された前記金型(1)の領域(12、13)と少なくとも相対的に、法線ベクトル(32)の方向で前記内周面(6)に働くプレス力(14)と比較してより大きい最大第1剛性を前記プレス領域(11)の近傍において有し、
前記最大第1剛性が、前記端面(4、5)上に配置された1以上の領域(12、13)における最小第2剛性よりも少なくとも10%大き く、
前記金型(1)が、前記径方向(7)に沿って前記内周面(6)と前記第1直径(9)との間に、周方向(15)に互いに離間して配置された接続領域(19)を有し、
前記金型(1)が、旋盤加工、フライス加工、鋸断、穿孔及び研削、ワイヤ切断、型彫、ハードフライス加工、又は粉末状の出発材料から焼結を経て工作物を層状に形成する3D印刷から選択される一又は二以上の加工で形成される ことを特徴とする方法。
【請求項16】
プレス機(2)によって1以上の圧粉体(25)を製造する方法であって、前記プレス機(2)は、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の1以上の金型(1)と、前記金型(1)の端面(4、5)を通じて前記内周面(6)によって形成された前記圧粉体(25)用の容器へと前記軸方向(3)に沿って移動可能な1以上のパンチ(26、27)とを有し、前記方法が、
(a)粉末を前記容器に配置する工程と、
(b)前記1以上のパンチ(26、27)を前記金型(1)内で前記軸方向(3)に沿って移動し、前記プレス領域(11)内で前記粉末を圧縮して圧粉体とする工程と、
(c)前記金型(1)の端面(4、5)を通じて前記圧粉体(25)を前記金型(1)から離型する工程と、を備え、
前記金型(1)は、前記端面(4、5)から離間して前記プレス領域(11)を有すると共に、少なくとも工程(b)において、前記端面(4、5)上に配置された前記金型(1)の領域(12、13)と少なくとも相対的に、法線ベクトル(32)の方向で前記内周面(6)に働くプレス力(14)と比較してより大きい最大第1剛性を前記プレス領域(11)の近傍において有し、
前記最大第1剛性が、前記端面(4、5)上に配置された1以上の領域(12、13)における最小第2剛性よりも少なくとも10%大きく、
前記金型(1)が、前記径方向(7)に沿って前記内周面(6)と前記第1直径(9)との間に、少なくとも前記軸方向(3)に縮小する一の断面(18)を有し、
前記内周面(6)と前記第1直径(9)との間に位置する第2直径(20)と前記第1直径(9)との間に、前記第2直径(20)上の断面積(21)よりも大きい断面積が設けられていることを特徴とする方法。
【請求項17】
プレス機(2)によって1以上の圧粉体(25)を製造する方法であって、前記プレス機(2)は、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の1以上の金型(1)と、前記金型(1)の端面(4、5)を通じて前記内周面(6)によって形成された前記圧粉体(25)用の容器へと前記軸方向(3)に沿って移動可能な1以上のパンチ(26、27)とを有し、前記方法が、
(a)粉末を前記容器に配置する工程と、
(b)前記1以上のパンチ(26、27)を前記金型(1)内で前記軸方向(3)に沿って移動し、前記プレス領域(11)内で前記粉末を圧縮して圧粉体とする工程と、
(c)前記金型(1)の端面(4、5)を通じて前記圧粉体(25)を前記金型(1)から離型する工程と、を備え、
前記金型(1)は、前記端面(4、5)から離間して前記プレス領域(11)を有すると共に、少なくとも工程(b)において、前記端面(4、5)上に配置された前記金型(1)の領域(12、13)と少なくとも相対的に、法線ベクトル(32)の方向で前記内周面(6)に働くプレス力(14)と比較してより大きい最大第1剛性を前記プレス領域(11)の近傍において有し、
前記最大第1剛性が、前記端面(4、5)上に配置された1以上の領域(12、13)における最小第2剛性よりも少なくとも10%大きく、
前記金型(1)が、前記径方向(7)に沿って前記内周面(6)と前記第1直径(9)との間に、周方向(15)に互いに離間して配置された接続領域(19)を有し、
前記接続領域(19)が、前記軸方向(3)にも互いに離間して配置されていることを特徴とする方法。
【請求項18】
プレス機(2)によって1以上の圧粉体(25)を製造する方法であって、前記プレス機(2)は、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の1以上の金型(1)と、前記金型(1)の端面(4、5)を通じて前記内周面(6)によって形成された前記圧粉体(25)用の容器へと前記軸方向(3)に沿って移動可能な1以上のパンチ(26、27)とを有し、前記方法が、
(a)粉末を前記容器に配置する工程と、
(b)前記1以上のパンチ(26、27)を前記金型(1)内で前記軸方向(3)に沿って移動し、前記プレス領域(11)内で前記粉末を圧縮して圧粉体とする工程と、
(c)前記金型(1)の端面(4、5)を通じて前記圧粉体(25)を前記金型(1)から離型する工程と、を備え、
前記金型(1)は、前記端面(4、5)から離間して前記プレス領域(11)を有すると共に、少なくとも工程(b)において、前記端面(4、5)上に配置された前記金型(1)の領域(12、13)と少なくとも相対的に、法線ベクトル(32)の方向で前記内周面(6)に働くプレス力(14)と比較してより大きい最大第1剛性を前記プレス領域(11)の近傍において有し、
前記最大第1剛性が、前記端面(4、5)上に配置された1以上の領域(12、13)における最小第2剛性よりも少なくとも10%大きく、
前記最大第1剛性が周方向(15)に沿って異なることを特徴とする方法。
【請求項19】
工程(c)において、前記第1端面(4)上に配置される第1領域(12)を通じて前記圧粉体(25)が前記金型から取り出され、前記最大第1剛性が前記第1領域(12、13)における最小第2剛性よりも少なくとも10%大きくいことを特徴とする請求項15から請求項18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレス機用、特には圧粉体を製造するための粉末プレス機用の、金型に関する。具体的には、当該プレス機は焼結可能な圧粉体、すなわちプレス工程後に焼結できる圧粉体、を製造するために用いられる。具体的には、金属及び/又はセラミックの粉末を金型内でプレスして圧粉体を形成可能である。
【背景技術】
【0002】
このような金型で公知のものは、いわゆるシュリンクリングを含む。このシュリンクリングの内部には、コア(特に硬質金属からなる)が配置可能であり、コアは金型の内周面を形成する。同時に、金型の内周面は、粉末、又は形成される圧粉体のための容器を形成する。具体的には、プレス機の1以上の上部パンチは、金型の上向きに開口した第1端面を通じて、軸方向に金型内へと移動可能である。1以上の上部パンチは、金型の内周面に沿って摺動し、粉末を徐々に圧縮する。具体的には、金型の下向きに開口した第2端面を通じて軸方向に金型内へと移動する、又は金型内の上位置と下位置との間で移動する、1以上の下部パンチが更に設けられてよい。これにより、1以上の上部パンチと1以上の下部パンチ間で粉末が圧縮されて圧粉体が形成され、特に、金型の内周面が圧粉体の側面外形を画定する。
【0003】
具体的には、金型は外周面にカラーを有し、金型はこれによってプレス機内に受け入れられて固定される。カラーは外周面を越えて径方向に延出し、それにより金型はプレス機の支持部上に配置及び/又は支持される。更に、このような金型は略円筒形であり、円筒形の外周面は通常、プレス機内の径方向のクリアランスを通じて受け入れられ、それによりパンチと金型との相互の中心合わせ、すなわちパンチと金型との同軸的な配置、が可能となる。
【0004】
金型はそのそれぞれの端面にパンチ案内領域を有してよく、この場合、プレス領域は端面から離間して、かつ、パンチ案内領域に隣接して存在する。プレス領域では、最大プレス力で粉末が圧縮される。プレス領域は、金型内で明確に画定され、軸方向に沿って境界を有する。更に、離型領域、すなわちプレス機からの取り出しのために圧粉体が金型から押し出され(離型され)る金型上の領域、が1以上の端面に設けられてよい。粉末の圧縮中、等しい強さの接合圧力が金型の内周面にかけられる。この工程中、金型の内周面は径方向(または、内周面上にそれぞれ存在し、それによって内周面のそれぞれの表面に対して垂直に配置される法線ベクトルの方向)に弾性的に拡張する。プレス領域におけるこの拡張は、離型中の強い摩擦力をもたらす。金型は通常円筒形であり、それにより軸方向に沿って略一定の剛性(すなわち、径方向、または、内周面上にそれぞれ存在し、それによって内周面のそれぞれの表面に対して垂直に配置される法線ベクトルの方向、の弾性拡張に対する略一定の抵抗)を有するため、これらの摩擦力は、離型領域へと伝わり得る。
【0005】
金型のプレス領域のみのこの拡張は、寸法精度の高い圧粉体を製造できないという結果をもたらす。具体的には、圧粉体の離型中に、圧粉体が円錐化するおそれがある。この場合、離型が進行するにしたがって金型がプレス領域内で反発し、それにより圧粉体が下端に向かってますます圧縮され、全体的に円錐状となる。
【0006】
これらの摩擦力を軽減するために、圧粉体がプレス領域から軸方向に沿って離型領域を通じて端面へと移動する際に圧粉体の緩和が起きるよう、金型の内周面に抜き勾配を設けることが提案されている。
【0007】
このような金型の公知の設計は、例えば、金型、及び/又は金型の取り扱い又はプレス機への取り付け及び取り外しのために必要な補助機器、の材料が原因で、高コストである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような背景を踏まえ、本発明の目的は、従来技術に関連する上述の問題を少なくとも部分的に解決することである。具体的には、処理に由来する、圧粉体の望ましくない円錐化を回避することである。また、回転対称でない部品を高精度で製造可能とすることである。具体的には、製造される圧粉体の寸法精度を損なうことなく、従来の金型よりも軽量なプレス機用金型を提供することである。更に、抜き勾配を設けることなく、圧粉体の離型中に発生する摩擦力を軽減可能であることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、請求項1の構成による金型が提案される。従属項の主題は、有利な発展である。請求の範囲で個別に記載されている構成は、技術的に妥当な形で組み合わせられてよく、また、本明細書内の説明、及び本発明の設計の変形が示されている図面の詳細から、例示的な事項によって補完されてよい。
【0010】
この目的のために、金型はプレス機内の配置に寄与し、金型は第1端面及び(対向する)第2端面との間で軸方向に沿って延びることで両端面間に内周面を形成する。金型は、内周面から径方向に、外周面と、第1直径上で径方向に配置される1以上の中心合わせ面と、に向かって延びる。金型は、両端面から離間したプレス領域を有し、また、端面上に配置された金型の領域と少なくとも相対的に、法線ベクトル(すなわち、内周面のそれぞれの部分に存在する法線ベクトルであって、内周面のその部分のそれぞれの表面に対して垂直に位置される法線ベクトル)の方向で内周面に働くプレス力(又はそこに働く接合圧力)と比較してより大きい最大第1剛性(すなわちそこに存在する最大第1剛性)をプレス領域の近傍において有する。最大第1剛性は、いずれかの端面上に配置された1以上の領域における最小第2剛性(すなわちそこに存在する最小第2剛性)よりも少なくとも10%、特には少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、特に好ましくは少なくとも40%大きい。これは端面に配置される両方の領域に適用されることが特に好ましい。
【0011】
最大第1剛性は、いずれかの端面上に配置された1以上の領域における最大第2剛性(すなわちそこに存在する最大第2剛性)よりも少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、特に好ましくは少なくとも20%、もしくは少なくとも40%大きい。これは端面に配置される両方の領域に適用されることが特に好ましい。
【0012】
剛性とは、具体的に、径方向(または、内周面上にそれぞれ存在し、それによって内周面のそれぞれの表面に対して垂直に配置される法線ベクトルの方向)の変形に対する、内周面の抵抗を指す。剛性の単位は、N/m[ニュートン/メートル]である。
【0013】
一例として、剛性は以下のように求めることができる。金型の内周面に特に垂直に加えられる特定のプレス力[N]における金型の変形、特に弾性変形、がFEM分析により、求められる(すなわち[m]で表される、金型の内周面の法線ベクトル方向への金型の材料の移動)。これらの値の比率(プレス力[N]/材料の移動[m])が、金型の剛性を表す。
【0014】
金型の剛性が低いほど、金型の弾性変形が大きい。したがって、圧粉体の寸法精度を確保するために、プレス領域において金型は可能な限り剛性である必要がある。具体的には、特に離型領域においてより高い弾性を有し、それによりこの領域の摩擦力が最小化され、必要に応じて圧粉体の表面に損傷がない、又はごく少ない損傷で済むようにするためには、金型は、下端面及び/又は上端面の近傍において最小の剛性を有する必要がある。
【0015】
この金型は、特には圧粉体を製造するための粉末プレス機用である。具体的には、当該プレス機は焼結可能な圧粉体、すなわちプレス工程後に焼結できる圧粉体、を製造するために用いられる。具体的には、金属又はセラミックの粉末を金型内でプレスして圧粉体を形成可能である。
【0016】
具体的には、金型は、いわゆるシュリンクリングを含み、コア(特に硬質金属からなる)が金型の内周面を形成可能である。同時に、金型の内周面は、粉末、又は形成される圧粉体のための容器を形成する。具体的には、プレス機の1以上の上部パンチは、金型の上向きに開口した第1端面を通じて、軸方向に金型内へと移動可能である。1以上の上部パンチは、金型の内周面に沿って摺動し、粉末を徐々に圧縮する。具体的には、金型の下向きに開口した第2端面を通じて軸方向に金型内へと移動する、1以上の下部パンチが更に設けられてよい。これにより、1以上の上部パンチと1以上の下部パンチ間で粉末が圧縮されて圧粉体が形成され、特に、金型の内周面が圧粉体の側面外形を画定する。プレス力は、パンチによって粉末に加えられる。プレス力は、パンチ及び金型にわたって維持される。同時に、プレス力は法線ベクトル方向に金型に働く。
【0017】
具体的には、金型はそのそれぞれの端面(任意で、それに直接隣接して)にパンチ案内領域を領域として有してよく、ここでプレス領域は端面から離間して、かつ、パンチ案内領域に(任意で直接)隣接して存在する。最大プレス力で粉末が圧縮されるのは、プレス領域においてである。具体的には、プレス領域は最大プレス力が加えられている際に粉末が配置される軸方向に沿った領域によって画定される。
【0018】
更に、離型領域、すなわちプレス機からの取り出しのために圧粉体が金型から押し出され(離型され)る金型上の領域、が1以上の端面に存在する。
【0019】
具体的には、金型は、1以上の(外側)中心合わせ面によってプレス機内のパンチと整列される。しかしながら、他の面、例えば外周面の一部、によって、パンチと相対的に金型を中心合わせすることも可能である。具体的には、中心合わせ面(又は中心合わせのために用いられるそれぞれの面)とプレス機との間が、金型とプレス機との間の最小の径方向クリアランス(冷却管等のための接続を除く)となる。具体的には、1以上の中心合わせ面が、金型の最大第1直径上にあり、つまり、金型は第1直径以内でのみ延在する。
【0020】
具体的には、中心合わせ面、又は中心合わせ面のすぐ近傍の金型の上側と下側が、金型をプレス機の容器(アダプター)内で固定するためのカラーとして機能する。しかしながら、プレス機を受け入れることにより金型を固定するためのカラーとしては、他の面も好適である。
【0021】
本明細書で提案される金型は、最大又は可能な限り大きい第1剛性が、プレス領域の近傍に(のみ)存在するよう特に設計されている。この高い第1剛性により、プレス機及びプレス工程により圧粉体を高い寸法精度で製造することが可能となる。一方、金型の端面近傍の第2剛性は、より略小さく設計されている。これは、プレス力成分が法線ベクトル方向に働くことによって、(軸方向に沿って境界を有する)これらの領域において、より略小さい荷重が金型に働くためである。
【0022】
具体的には、より小さな第2剛性によって、円筒形の金型であれば通常用いられる材料の大部分が節約可能である。円筒形の金型と比較して、重量として25%以上、好ましくは50%以上、及び特に好ましくは75%の節約が達成される。
【0023】
具体的には、プレス作業中の金型の温度制御のために必要な冷却管及び/又は加熱管が、金型に一体化されている。
【0024】
金型の設計及びレイアウトは、具体的には、金型の荷重及び変形の計算及びシミュレーションを通じて行われる(例えば、FEM(有限要素法)による計算)。トポロジー最適化のためのプログラムを用いることもできる。
【0025】
第2剛性が小さいほど、金型からの圧粉体の離型に際して、特に摩擦力軽減の効果が発揮される。具体的には、圧粉体及び/又は金型の内周面の抜き勾配は必ずしも必要でなくなり、それにより、寸法安定性の非常に高い円筒形の外周面を有する圧粉体を製造することができる。さらに、離型中の摩擦によって金型に加わる応力が軽減されることで、金型の摩耗が軽減できる。また、一の端面を通じて圧粉体を離型する際の金型の復元力が低下し、それにより圧粉体の圧縮が少なくなり、(望ましくない)円錐化が非常に少ないか全くなくなる。
【0026】
金型材料の節約は、特に、大きな軽量化をもたらす。ただし、これにより、特にプレス機内への取り付け又はプレス機からの取り外し中の金型の扱いが容易になる。これにより、状況によっては、金型を手動のみで扱うこと、つまり機械的補助なしで金型を動かすこと(例えばクレーン、巻き上げ機など)も可能である。しかしながら、いずれの場合にも、使用される補助を軽量で設計でき、つまり、この点についても大きなコスト削減が達成可能である。現在、手動でセットアップ可能なプレス機は、プレス力が1500kN(キロニュートン)以下のものだけである。本明細書で提案の軽量化の結果、プレス力が4000kNまでのプレス機が、将来的に手動でセットアップ可能となる。具体的には、手動セットアップの場合に金型用のアダプターを交換する必要もない。その結果、第2のアダプター及びアダプターステーションが不要になる。プレス機の角の鋭いパンチと金型が接触することによる、金型又はパンチの損傷のリスクも軽減可能である。
【0027】
金型の周方向に沿った第1剛性は、周方向に異なっている、又は変化してよい。したがって、具体的には、金型は軸方向に平行な軸を中心に(又は、特には周方向に180°回転する場合).回転対称に設計されていない。金型のこのような設計は、例えば、直方体などの回転対称でない圧粉体を製造する場合に有利である。
【0028】
具体的には、1以上の中心合わせ面が、プレス領域において軸方向に沿って(少なくとも部分的に、又は全体的に)配置される。別の実施形態によれば、1以上の中心合わせ面が、端面に隣接する領域のうち1つ、具体的にはプレス領域の完全に外部、に少なくとも部分的に配置されてもよい。ただしこの場合、プレス領域における第1剛性が、その他の領域における第2剛性よりも高いことが重要である。
【0029】
具体的には、1以上の中心合わせ面が軸方向に沿って第1高さを有し、第1高さが端面間の最短距離の80%以下に相当する。最短距離は、端面から内周面への移行領域において求められることが好ましい。
【0030】
好適な実施形態によれば、金型は、径方向に沿って内周面と第1直径との間に、少なくとも、
少なくとも軸方向に縮小する一の断面、又は
周方向に互いに離間して配置された接続領域
を有する。
【0031】
軸方向に縮小する断面は、内周面及び第1直径との間の領域における、端面での金型の形状を反映している。金型形状の収縮の一種をここに設けることが可能である。つまり、金型のこの領域においては、内周面の近傍よりも、端面間の距離が短い。
【0032】
接続領域は、金型の周方向の形状を反映している。ここで、内周面と第1直径との間に、自由空間(すなわち、金型材料のない空間)が存在してよい。この場合、内周面と、第1直径上に配置される中心合わせ面とを接続するスポークが、接続領域によって形成されてよい。
【0033】
具体的には、接続領域は、軸方向にさらに離間して配置される。具体的には、少なくとも部分的に周方向の同じ位置に配置されるが、軸方向には異なる位置に配置されるスポークが、このように形成可能である。
【0034】
具体的には、第2直径は内周面と第1直径との間に配置され、第2直径上にある金型の断面積は、内周面の80%以下、特には60%以下、好ましくは40%以下である。上述のとおり、材料のない領域、すなわち自由空間は、この第2直径上に設けられる。具体的には、第2直径と第1直径との間に、第2直径上の断面積よりも大きい追加の断面積が設けられる。
【0035】
具体的には、複数の中心合わせ面が第1直径上に配置され、中心合わせ面が周方向に互いに離間するように配置される。具体的には、3以上の中心合わせ面が、周方向に互いに離間するように配置される。
【0036】
1以上の中心合わせ面は、周方向に円周状に延びるよう実施されてよい。これは例えば、この中心合わせ面が外周にわたって連続していることを意味する。
【0037】
金型は、1以上の中心合わせ面から軸方向に離間して配置される1以上の保持部を有してよい。保持部は、特に金型の扱いを容易にする目的で設けられる。具体的には、保持部は金型を手動で扱う際にハンドルとして機能する。好ましくは、保持部は金型と一体に、すなわち一体的に接続されるよう、実施される。もしくは、保持部は、例えばネジによって金型に固定されてもよい。
【0038】
具体的には、保持部は内周面と第1直径との間に、径方向に配置される。
【0039】
保持部は、環状に延在することが好ましい。
【0040】
容易に理解されるとおり、本明細書で提案される金型の特別な形状は、旋盤加工、フライス加工、鋸断、穿孔・研削、ワイヤ切断、型彫、ハードフライス加工などの公知の製造方法で製造可能である。ただし、金型又は少なくともシュリンクリングの製造は、レーザー焼結(粉末状の出発材料から、焼結を経て、工作物を層状に製造する3D印刷)などのいわゆる付加的方法で行われるのが特に有利である。これにより、金型が可能な限り軽量化された、真に自由な金型の設計が可能になる。
【0041】
プレス機によって1以上の圧粉体を製造する方法が更に提案される。プレス機は、上述の1以上の金型と、金型の端面を通じて内周面によって形成された圧粉体用の容器へと軸方向に沿って移動可能な1以上のパンチとを有し、該方法は、
(a)粉末を前記容器に配置する工程と、
(b)1以上のパンチを金型内で軸方向に沿って移動し、プレス領域内で粉末を圧縮して圧粉体とする工程と、
(c)金型の端面を通じて圧粉体を金型から取り出す工程と、を備え、
金型は、端面から離間してプレス領域を有すると共に、少なくとも工程(b)において、端面上に配置された金型の領域と少なくとも相対的に、法線ベクトルの方向で内周面に働くプレス力と比較してより大きい最大第1剛性をプレス領域の近傍において有し、最大第1剛性が、端面上に配置された1以上の領域における最小第2剛性よりも少なくとも10%大きい。
【0042】
具体的には、工程(c)において、第1端面上に配置される第1領域を通じて圧粉体が金型から取り出され、最大第1剛性が第1領域における最小第2剛性よりも少なくとも10%大きいことが提案される。
【0043】
金型に関する記載は方法にも適用され、逆も同様である。
【0044】
なお、本明細書で用いられる数詞(「第1」、「第2」等)は、主に複数の同様のものや数量を区別するために(のみ)使われ、これらのものや数量の互いに対する従属性及び/又は順序を表すものではない。従属性及び/又は順序が必要な場合には、本明細書内に明示的に記載されるか、又は、具体的に記載された実施形態を解釈する際には当業者の解釈に従う。
【0045】
本発明と技術環境を、図面を参照して詳述する。実施形態は、本発明を限定する意図を有するものではない。具体的には、特に記載がない限り、図面に記載された構成の一部を抽出して、明細書の記載及び/又は図面内の他の部品及び知見と組み合わせることも可能である。図面と、特に図示される寸法関係は、模式的なものにすぎないことが特に指摘される。同じ参照記号は、同じものを指すため、必要に応じて他の図面の説明を参照してよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】公知の金型の側面断面図である。
図2図1に示す金型の斜視図である。
図3】第1の設計変形による金型の斜視図である。
図4図3の金型の上面図である。
図5図3及び4の金型の側面図である。
図6図3~5に示す金型の側面断面図である。
図7】第2の設計変形による金型の斜視図である。
図8】第3の設計変形による金型の斜視図である。
図9】第4の設計変形による金型の斜視図である。
図10】第5の設計変形による金型の斜視図である。
図11図10に示す金型の側面断面図である。
図12図10及び11に示す金型の側面断面図である。
図13】第6の設計変形による金型の斜視図である。
図14】第7の設計変形による金型の斜視図である。
図15】第8の設計変形による金型の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、公知の金型1の側面断面図である。図2は、図1に示す金型1の斜視図である。図1及び図2を合わせて以下に説明する。
【0048】
金型1は、いわゆるシュリンクリング23と、シュリンクリング23内に配置され.金型1の内周面6を形成するコア24と、を有する。一例として、金型1の内周面6は、粉末、及び形成される圧粉体25のための容器を形成する。プレス機2の上部パンチ26は、軸方向3に沿って、金型1の上向きに開口した端面4を通じて金型1内へと移動可能である。上部パンチ26は、金型1の内周面26に沿って摺動し、粉末を徐々に圧縮する。ここで、(金型1の取り付け中に)軸方向3に沿って、金型1の下向きに開口した第2端面5を通じて金型1内へと移動し、金型1が取り外されるまで金型1内で上下に移動する下部パンチ27が更に設けられる。粉末はこのように、圧粉体25へのプレス力14によって上部パンチ26と下部パンチ27との間で圧縮され、特に、金型1の内周面6が圧粉体25の側面外形を画定する。
【0049】
金型1は外周面8にカラー28を有し、金型1はこれによってプレス機2内に受け入れられて固定される。カラー28は外周面8を越えて径方向7に延出し、それにより金型1はプレス機2の支持部29上に配置される。金型1は円筒形であり、円筒形の外周面8はプレス機2内の径方向のクリアランスを通じて受け入れられ、それによりパンチ26、27と金型1との中心合わせ、すなわちパンチ26、27と金型1との同軸的な配置、が可能となる。
【0050】
金型1は第1端面4上に第1領域12を、第2端面5上に第2領域13を有し、それぞれパンチ案内領域30と呼ばれる。プレス領域11は、端面4、5から離間して、かつ、パンチ案内領域30と隣接して存在する。プレス領域11では、最大プレス力14で粉末が圧縮される。プレス領域11は、金型1内で明確に画定され、軸方向3に沿って境界を有する。更に、離型領域31、すなわちプレス機2からの取り出しのために圧縮済みの圧粉体25が金型1から押し出され(離型され)る金型1上の領域、が第1端面4に存在する。粉末の圧縮中、等しい強さの接合圧力が金型1の内周面6にかけられる。金型1の内周面6は、法線ベクトル32方向に弾性的に拡張する。プレス領域11におけるこの拡張は、離型中の強い摩擦力をもたらす。金型1は通常円筒形であり、それにより軸方向3に沿って略一定の剛性(すなわち、法線ベクトル32の方向の弾性拡張に対する略不変の抵抗)を有するため、これらの摩擦力は、離型領域31へと伝わる。金型1のプレス領域11のみのこの拡張は、寸法精度の高い圧粉体25を製造できないという結果をもたらす。圧粉体25の離型中に、圧粉体25が円錐化するおそれがある。この場合、離型が進行するにしたがって金型1がプレス領域11内で反発し、それにより圧粉体25が下端に向かってますます圧縮され、全体的に円錐状となる。
【0051】
図3は、第1の設計変形による金型1の斜視図である。図4は、図3に示す金型1の上面図である。図5は、図3及び4の金型の側面図である。図6は、図3~5に示す金型1の側面断面図である。図3図6を合わせて以下に説明する。
【0052】
金型1は、端面4、5間で軸方向3に延び、端面4、5間に内周面6を形成する。金型1は、内周面6から径方向7に、外周面8と、第1直径9上で径方向7に配置される3つの中心合わせ面10と、に向かって延びる。金型1は、両端面4、5から離間したプレス領域11を有する。金型1は、端面4、5上に配置された領域12、13と少なくとも相対的に、法線ベクトル32の方向で内周面6に働くプレス力14と比較してより大きい最大第1剛性(すなわち、そこに存在する最大の第1剛性)を、プレス領域11の近傍において有する。
【0053】
金型1は、特には圧粉体25を製造するための粉末プレス機用である。焼結可能な圧粉体25は、プレス作業後に焼結できるプレス機2で製造される。金属又はセラミックの粉末を金型1内でプレスして圧粉体25を形成可能である。
【0054】
金型1は、いわゆるシュリンクリング23と、シュリンクリング23内に配置され.金型1の内周面6を形成するコア24と、を有する。一例として、金型1の内周面6は、粉末、及び形成される圧粉体25のための容器を形成する。プレス機2の上部パンチ26は、軸方向3に沿って、金型1の上向きに開口した端面4を通じて金型1内へと移動可能である。上部パンチ26は、金型1の内周面26に沿って摺動し、粉末を徐々に圧縮する。金型1の下向きに開口した第2端面5を通じて軸方向3に金型1内へと移動する下部パンチ27が更に設けられる。粉末はこのように、圧粉体25へのプレス力14によって上部パンチ26と下部パンチ27との間で圧縮され、特に、金型1の内周面6が圧粉体25の側面外形を画定する。プレス力14は、パンチ26、27によって粉末に加えられる。プレス力14は、パンチ26、27及び金型1にわたって維持される。同時に、プレス力14は法線ベクトル32方向に金型1に働く。
【0055】
金型1はそのそれぞれの端面4、5にパンチ案内領域30を有してよく、ここでプレス領域11は端面4、5から離間して、かつ、パンチ案内領域30に隣接して存在する。最大プレス力で粉末が圧縮されるのは、プレス領域11においてである。プレス領域11は最大プレス力14が加えられている際に粉末が配置される軸方向3に沿った領域によって画定される(図1参照)。
【0056】
更に、離型領域31、すなわちプレス機2からの取り出しのために圧粉体25が金型1から押し出され(離型され)る金型1上の第1領域12、が少なくとも第1端面4に設けられる。
【0057】
金型1は、中心合わせ面10により、プレス機2内でパンチ26、27に対して整列される。中心合わせ面10は、金型1の最大第1直径9上にあり、つまり、金型1は第1直径9以内でのみ延在する。
【0058】
本明細書で提案される金型1において、プレス領域11の近傍においてのみ最大剛性が存在するべきであることが前提とされる。この高い第1剛性により、プレス機2及びプレス工程により圧粉体25を高い寸法精度で製造することが可能となる。一方、金型1の端面4、5近傍の第2剛性は、より略小さく設計されていてよい。これは、プレス力(成分)14が法線ベクトル32方向に働くことによって、(軸方向3に沿って境界を有する)これらの領域において、より略小さい荷重が金型1に働くためである。
【0059】
より小さな第2剛性によって、円筒形の金型1(図1~3参照)であれば通常用いられる材料の大部分が節約可能である。
【0060】
中心合わせ面10は、軸方向3に沿って、プレス領域11にのみ配置される。
【0061】
中心合わせ面10は、軸方向3に沿って第1高さ16を有し、この第1高さ16は端面4、5間の最短距離17よりも小さい。
【0062】
金型1は、内周面6と第1直径9との間に径方向7に沿って、少なくとも軸方向に縮小する1以上の断面18を、又は、周方向15に互いに離間して配置された接続領域19を有する。
【0063】
軸方向に縮小する断面18は、内周面6及び第1直径9との間の領域における、端面4、5での金型1の形状を反映している。金型1の形状はここで収縮しており、つまり、金型1のこの領域においては、内周面6の近傍よりも、端面4、5間の距離が短い。
【0064】
接続領域19は、金型1の周方向15の形状を反映している。ここで、内周面6と第1直径9との間に、自由空間(すなわち、金型1の材料のない空間)が存在する。内周面6と、第1直径9上に配置される中心合わせ面10とを接続するスポークが、接続領域19によって形成される。
【0065】
ここで、3つの中心合わせ面10は第1直径9上に配置され、中心合わせ面10は周方向15に互いに離間するように配置される。
【0066】
さらに、金型1は、中心合わせ面10から軸方向3に離間して配置された保持部22を有する。
【0067】
保持部22は、金型1の扱いを容易にする目的で設けられる。保持部22は金型1を手動で扱う際にハンドルとして機能する。この場合、保持部22はネジで金型1に固定されている(図4参照)。
【0068】
具体的には、保持部22は内周面6と第1直径9との間に、径方向7に配置される。保持部22は、環状に延在することが好ましい。
【0069】
図6では、圧粉体25はプレス領域11内に配置される。圧粉体25は、本実施形態の方法の工程(b)で、プレス領域内で粉末を圧縮することで形成される。プレス領域11において、接合圧力が最大に達する。本実施形態の方法の工程(c)で(図示せず)、圧粉体25は、離型領域31として第1端面4に設けられている第1領域12を通じて金型から取り出される。
【0070】
図7は、第2の設計変形による金型1の斜視図である。図3~6についての記載が参照される。第1の設計変形とは異なり、金型1は、接続領域19の近傍に、追加の自由空間又は凹部を有する。金型1への、及びシュリンクリング23への保持部22の接続も異なっている。
【0071】
図8は、第3の設計変形による金型1の斜視図である。図3~6についての記載が参照される。第1の設計変形とは異なり、接続領域19が、軸方向3にも互いに離間して配置されている。少なくとも部分的に周方向15の同じ位置に配置されるが、軸方向3には異なる位置に配置されるスポークが、このように形成される。また、中心合わせ面10は、周方向15に円周状に延びるよう実施される。
【0072】
接続領域19は金型1を手動で扱う際にハンドルとして用いることができる。
【0073】
図9は、第4の設計変形による金型1の斜視図である。図3~6及び図8についての記載が参照される。図8とは異なり、ここでは、内周面6と、周方向の中心合わせ面10との間に追加の周方向の中間環が設けられている。
【0074】
図10は、第5の設計変形による金型1の斜視図である。図11は、図10の金型1の、金型1の中心軸を通って切断された側面断面図である。図12は、図10及び図11の金型1の側面断面図であり、切断線が中心軸よりも横方向にオフセットされている。図3~6及び図8についての記載が参照される。図8とは対照的に、周方向15に円周状に延びる波型領域が形成されており、軸方向に大幅に縮小する断面18を有する。
【0075】
第2直径20は、内周面6と第1直径9との間に配置され、第2直径20上の金型1の断面積21は内周面6よりも大幅に小さい。第2直径20と第1直径9との間に、第2直径20上の断面積21よりも大きい追加の断面積が設けられる。
【0076】
ここで、中心合わせ面10、又は中心合わせ面10のすぐ近傍の金型1の上側と下側が、金型1をプレス機2の容器(アダプター;容器の支持部29のみ図示)内で固定するためのカラー28として機能する。
【0077】
図13は、第6の設計変形による金型1の斜視図である。図14は、第7の設計変形による金型1の斜視図である。図15は、第8の設計変形による金型1の斜視図である。図13図15を合わせて以下に説明する。図3~6及び図8についての記載が参照される。図8とは対照的に、ここでは、内周面6は回転対称でない。内周面6の形状、又は圧縮する粉末用の容器の形状によって、パンチ26、27によって内周面6に加えられるプレス力14の量は、周方向15に沿った位置に応じて変化する。このため、金型1は周方向15に沿って異なる第1剛性を有するよう設計される。ここで金型1は、軸方向3に平行な軸の周りに180°の角度間隔で、回転対称に設計される。周方向15に沿って第1剛性が異なる、金型1のこのような構成は、非回転対称な圧粉体25(又は180°の角度間隔でのみ対称な圧粉体25)、例えば、図示のような直方体状の圧粉体25、を製造する場合に特に有利である。金型のこの特殊な設計変形によって、非対称な圧粉体25が理想的な方法で支持可能となり、その結果、金型1の、ひいては圧粉体25の、径方向に非対称な変形を防止できる。
【符号の説明】
【0078】
1 金型
2 プレス機
3 軸方向
4 第1端面
5 第2端面
6 内周面
7 径方向
8 外周面
9 第1直径
10 中心合わせ面
11 プレス領域
12 第1領域
13 第2領域
14 プレス力
15 周方向
16 第1高さ
17 距離
18 断面
19 接続領域
20 第2直径
21 断面積
22 保持部
23 シュリンクリング
24 コア
25 圧粉体
26 上部パンチ
27 下部パンチ
28 カラー
29 支持部
30 パンチ案内領域
31 離型領域
32 法線ベクトル方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15