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特許7104909半導体結晶ウェハの製造方法および製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】半導体結晶ウェハの製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220714BHJP
   B28D 5/04 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
H01L21/304 611W
B28D5/04 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022067973
(22)【出願日】2022-04-18
【審査請求日】2022-04-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502330849
【氏名又は名称】有限会社サクセス
(73)【特許権者】
【識別番号】521081850
【氏名又は名称】有限会社ドライケミカルズ
(74)【代理人】
【識別番号】240000693
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人滝田三良法律事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 愼介
(72)【発明者】
【氏名】千葉 哲也
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-307283(JP,A)
【文献】特開2000-153517(JP,A)
【文献】特開2006-305685(JP,A)
【文献】特開2012-250328(JP,A)
【文献】特表2011-526215(JP,A)
【文献】特開2020-53610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B28D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造方法であって、
複数のワイヤーにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断して半導体結晶ウェハを得る溝加工工程において、
前記複数のワイヤーを周回させながら進行させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断する際に、該ワイヤーと該半導体結晶インゴットとの接触部の両端において該ワイヤーを支持するワイヤー支持部により該ワイヤーが支持され、
前記ワイヤー支持部は、前記半導体結晶インゴットの両端面に対応した形状のプレートであって該両端面を挟持する一対の挟持プレートと、該挟持プレートの外周に形成されたガイド部と、該ガイド部に沿って進行する棒体とにより、該棒体が前記ワイヤーを支持すると共に該半導体結晶インゴットの側面外形に沿って進行することを特徴とする半導体結晶ウェハの製造方法。
【請求項2】
筒状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造装置であって、
前記半導体結晶インゴットに対して、複数のワイヤーを周回させながら進行させて切断するワイヤーソー部と、
前記ワイヤーソー部の前記ワイヤーと前記半導体結晶インゴットとの接触部の両端において該ワイヤーを支持するワイヤー支持部と
を備え、
前記ワイヤー支持部は、前記半導体結晶インゴットの両端面に対応した形状のプレートであって該両端面を挟持する一対の挟持プレートと、該挟持プレートの外周に形成されたガイド部と、該ガイド部に沿って進行する棒体とにより、該棒体が前記ワイヤーを支持すると共に該半導体結晶インゴットの側面外形に沿って進行することを特徴とする半導体結晶ウェハの製造装置。
【請求項3】
請求項2記載の半導体結晶ウェハの製造装置において、
前記ワイヤー支持部は、前記ワイヤーソー部の前記ワイヤーの進行と連動して前記棒体を進行させる進行制御部を有することを特徴とする半導体結晶ウェハの製造装置。
【請求項4】
請求項3記載の半導体結晶ウェハの製造装置において、
前記半導体結晶インゴットは、円筒形状に研削加工され、
前記ワイヤー支持部の前記挟持プレートは、円形プレートであって、
前記ワイヤー支持部の前記進行制御部が、前記棒体が前記ガイド部に沿って円形に進行する回転中心に設けられ、回転トルクを調整可能なロータリテーブルであることを特徴とする半導体結晶ウェハの製造装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のうちいずれか1項記載の半導体結晶ウェハの製造装置において、
前記ワイヤー支持部の前記棒体は、前記ワイヤーソー部の前記ワイヤーの上側と下側とのいずれか一方または両方に設けられることを特徴とする半導体結晶ウェハの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状に切り出したウェハの表面に高精度研削加工を施した半導体結晶ウェハの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の半導体結晶ウェハであるSiウェハやSiCウェハの製造方法としては、下記特許文献1に示すように、ウェハ形状形成工程として、結晶成長させた単結晶の塊を円柱状のインゴットに加工するインゴット成形工程と、インゴットの結晶方位を示す目印となるよう、外周の一部に切欠きを形成する結晶方位成形工程と、単結晶のインゴットをスライスして薄円板状のウェハに加工するスライス工程と、修正モース硬度未満の砥粒を用いてウェハを平坦化する平坦化工程と、刻印を形成する刻印形成工程と、外周部を面取りする面取り工程とを含み、次に、加工変質層除去工程として、先行の工程でウェハに導入された加工変質層を除去する加工変質層除去工程を含み、最後に、鏡面研磨工程として、研磨パッドの機械的な作用とスラリーの化学的な作用を併用して研磨を行う化学機械研磨(CMP)工程を含む半導体結晶ウェハの製造方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-15646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来の半導体結晶ウェハの製造方法では、製造工程が多く複雑であり、装置構成が複雑となり製造コストが嵩むという問題ある。
【0005】
一方で、製造工程を簡略化した場合には、半導体結晶ウェハに要求される品質を安定して得ることが困難となる。
【0006】
そこで、本発明は、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる半導体結晶ウェハの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の半導体結晶ウェハの製造方法は、筒状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造方法であって、
複数のワイヤーにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断して半導体結晶ウェハを得る溝加工工程において、
前記複数のワイヤーを周回させながら進行させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断する際に、該ワイヤーと該半導体結晶インゴットとの接触部の両端において該ワイヤーを支持するワイヤー支持部により該ワイヤーが支持され、
前記ワイヤー支持部は、前記半導体結晶インゴットの両端面に対応した形状のプレートであって該両端面を挟持する一対の挟持プレートと、該挟持プレートの外周に形成されたガイド部と、該ガイド部に沿って進行する棒体とにより、該棒体が前記ワイヤーを支持すると共に該半導体結晶インゴットの側面外形に沿って進行することを特徴とする。
【0008】
第1発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、複数のワイヤーにより半導体結晶インゴットをスライス状に切断する際に、ワイヤーは、そのインゴットとの接触部の両端がワイヤー支持部の棒体により支持されることから、ワイヤーが接触部において弓なりになるのを防止して、水平に近い状態を維持することができる。
【0009】
ここで、ワイヤー支持部の棒体を、ガイド部を介して半導体結晶インゴットの側面外形に沿って進行させることで、ワイヤーと半導体結晶インゴットとの接触部の両端に棒体を常に位置させることができる。
【0010】
そのため、切断時にワイヤーが弓なりになって両端部側に切断応力が偏ることを防止して、うねりや筋のない切断面を実現することができ、平坦化工程において一般的に行われている遊離砥石加工、すなわち1次~4次の複数回のラップなど複雑な製造工程を大幅に簡略化することができる。
【0011】
このように、第1発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【0012】
第2発明の半導体結晶ウェハの製造装置は、筒状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造装置であって、
前記半導体結晶インゴットに対して、複数のワイヤーを周回させながら進行させて切断するワイヤーソー部と、
前記ワイヤーソー部の前記ワイヤーと前記半導体結晶インゴットとの接触部の両端において該ワイヤーを支持するワイヤー支持部と
を備え、
前記ワイヤー支持部は、前記半導体結晶インゴットの両端面に対応した形状のプレートであって該両端面を挟持する一対の挟持プレートと、該挟持プレートの外周に形成されたガイド部と、該ガイド部に沿って進行する棒体とにより、該棒体が前記ワイヤーを支持すると共に該半導体結晶インゴットの側面外形に沿って進行することを特徴とする。
【0013】
第2発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、複数のワイヤーにより半導体結晶インゴットをスライス状に切断する際に、ワイヤーは、そのインゴットとの接触部の両端がワイヤー支持部の棒体により支持されることから、ワイヤーが接触部において弓なりになるのを防止して、水平に近い状態を維持することができる。
【0014】
ここで、ワイヤー支持部の棒体を、ガイド部を介して半導体結晶インゴットの側面外形に沿って進行させることで、ワイヤーと半導体結晶インゴットとの接触部の両端に棒体を常に位置させることができる。
【0015】
そのため、切断時にワイヤーが弓なりになって両端部側に切断応力が偏ることを防止して、うねりや筋のない切断面を実現することができ、平坦化工程において一般的に行われている遊離砥石加工、すなわち1次~4次の複数回のラップなど複雑な製造工程を大幅に簡略化することができる。
【0016】
このように、第2発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【0017】
第3発明の半導体結晶ウェハの製造装置は、第2発明において、
前記ワイヤー支持部は、前記ワイヤーソー部の前記ワイヤーの進行と連動して前記棒体を進行させる進行制御部を有することを特徴とする。
【0018】
第3発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、ワイヤーの進行とワイヤー支持部の棒体の進行とを連動させることで、進行方向の位置関係を維持することができ、常にワイヤーを一定の支持力で安定して支持させることができる。
【0019】
このように、第3発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に安定して製造することができる。
【0020】
第4発明の半導体結晶ウェハの製造装置は、第3発明において、
前記半導体結晶インゴットは、円筒形状に研削加工され、
前記ワイヤー支持部の前記挟持プレートは、円形プレートであって、
前記ワイヤー支持部の前記進行制御部が、前記棒体が前記ガイド部に沿って円形に進行する回転中心に設けられ、回転トルクを調整可能なロータリテーブルであることを特徴とする。
【0021】
第4発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、棒体が円形プレートの外周に形成されたガイド部に沿って円形に回転する際に、その回転トルクを制御するロータリテーブルを設けることで、棒体の位置をワイヤーに連動させて正確に制御することができる。そのため、ワイヤーに対して一定の負荷で棒体を押し付けることができる。
【0022】
このように、第4発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に安定して製造することが実現できる。
【0023】
第5発明の半導体結晶ウェハの製造装置は、第2~第4発明のいずれかにおいて、
前記ワイヤー支持部の前記棒体は、前記ワイヤーソー部の前記ワイヤーの上側と下側とのいずれか一方または両方に設けられることを特徴とする。
【0024】
第5発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、ワイヤーを支持する棒体の配置は、ワイヤーとインゴットとの接触部の両端位置であれば、ワイヤーの上側または下側のいずれであっても、ワイヤーが水平に近い状態に矯正され、ワイヤーが接触部において弓なりになるのを防止することができる。
【0025】
このように、第5発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に安定して製造することが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態のSiウェハ(半導体結晶ウェハ)の製造方法の工程全体を示すフローチャート。
図2図1のSiウェハの製造方法における溝加工工程の内容を示す説明図。
図3図1のSiウェハの製造方法における切断工程の内容を示す説明図。
図4図3の切断工程の内容を示す説明図。
図5図1のSiウェハの製造方法における第1面加工工程および第2面加工工程の内容を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1に示すように、本実施形態において、半導体結晶ウェハであるSiウェハの製造方法は、円筒形状に研削加工されたSiインゴットからスライス状に切り出したウェハの一面のうねり除去を施したSiウェハを得る方法であって、溝加工工程(STEP110/図1)と、切断工程(STEP120/図1)と、第1面加工工程(STEP130/図1)と、第2面加工工程(STEP150/図1)とを備える。
【0028】
図2図5を参照して各工程の詳細および各工程で用いられる装置について説明する。
【0029】
まず、図2に示すSTEP100の溝加工工程では、予め結晶させたSi結晶に対して、インゴット加工工程において、結晶方位を定めて円筒研削加工を施して得られる円筒形状のSiインゴット10を準備する。
【0030】
そして、STEP100の溝加工工程では、かかるSiインゴット10に対して、側面全体に周回する複数の凹溝11を形成する。
【0031】
具体的に、STEP100の溝加工工程では、凹溝11に対応した凸部21が側面に形成された溝加工ドラム砥石20を互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながらSiインゴット10に圧接することにより凹溝11を形成する。
【0032】
なお、溝加工工程により得られたSiインゴット10(特に凹溝11)に対して化学処理的手法によりノンダメージの鏡面加工を施すことが望ましい。
【0033】
次に、図3に示す、STEP110の切断工程では、溝加工工程において形成された複数の凹溝11に配置された複数のワイヤー31によりSiインゴット10をスライス状に切断してSiウェハ100を得る。
【0034】
具体的に切断工程では、切断加工装置であるワイヤーソー装置は、ワイヤーソー部30が、複数のワイヤー31を溝加工工程で形成した複数の凹溝11にそれぞれ合せて、ワイヤー31を周回させながら前進させることによりSiインゴット10をスライス状に切断する。
【0035】
なお、ワイヤー31を周回させるワイヤーソーボビン32の側面全体に複数の凸部21に対応した複数の凹型のボビン溝が形成されている。また、Siインゴット10は、Siインゴット10が嵌まり込むスライス用ベース(ダミープレート)35に接着剤などを介して嵌まり込んで固定されている。
【0036】
このとき、ワイヤーソー装置が備えるワイヤー支持部40が、ワイヤー31とSiインゴット10との接触部の両端においてワイヤー31に当接して支持する。
【0037】
具体的に、ワイヤー支持部40は、一対の棒体41,41と、アーム42と、ガイド受け部43と、挟持プレート44と、ガイド部45と、ロータリテーブル46とを備える。
【0038】
棒体41は、Siインゴット10の軸線方向と平行に配置された円筒形状の棒体であって、棒体41の両端は、アーム42により軸着されている。なお、棒体41とアーム42との間には、ボールベアリングなど軸受けを設けることで、棒体41が無負荷状態で回転自在に構成されることが好ましい。
【0039】
また、棒体41の両端には、円盤状のガイド受け部43が設けられ、ガイド受け部43を棒体41が貫通するように構成される。ここでも、ガイド受け部43と棒体41との間には、ボールベアリングなどの軸受けを設けることで、棒体41が無負荷状態で回転自在に構成されることが好ましい。
【0040】
挟持プレート44は、Siインゴット10の両端面に対応した円形のプレートであって該両端面を挟持する。ガイド部45は、挟持プレート44の外周に形成され、棒体41のガイド受け部42が当接することにより、ガイド受け部42を介して棒体41が挟持プレート44の外周に沿って進行することを補助する。
【0041】
ここで、ガイド部45およびガイド受け部43(本発明の進行制御部に相当する)には、周方向の進行を確実とするように、一方に溝部、他方に凸部を設けることが好ましい。本実施形態では、ガイド部45(挟持プレート44の側面)に溝部を設けると共に、ガイド受け部43に外周を走る凸部を設けている。
【0042】
ロータリテーブル46(本発明の進行制御部に相当する)は、回転トルクを調整可能な回転制御機器であって、アーム42の回転を制御する。すなわち、棒体41がガイド部45に沿って円形に進行する際に、その回転中心軸がロータリテーブル46の制御軸46Aに連結されている。
【0043】
本実施形態のロータリテーブル46では、2つのダクト46B,46Bの空気圧(空気の流出入)により回転トルクが調整可能となっている。
【0044】
また、ロータリテーブル46は、フレーム47を貫通するネジ46Cによりねじ止めされてフレームと一体となっている(図4参照)。
【0045】
なお、本実施形態では、一対の棒体41,41は、ワイヤー31の上側に設けられ、ワイヤーソーボビン32を介して周回する複数のワイヤー31によりSiインゴット10を切断する際に、ワイヤー31のSiインゴット10との接触部の両端を上側から当接支持し、ワイヤー31がSiインゴット10に巻き付いて、ワイヤー31が接触部において弓なりになるのを防止して、水平に近い状態を維持することができる。
【0046】
このとき、ロータリテーブル46は、ワイヤーソー装置30の進行(図面上方への進行(切断スピード))に対応させて、2つのダクト46B,46Bを空気圧を調整して、制御軸46Aを回転させ、アーム42を介して棒体41を挟持プレート44の外周回りに進行させる。
【0047】
これにより、棒体41の位置をワイヤー31に連動させて正確に制御することができ、ワイヤー31に対して一定の負荷で棒体31を押し付けることができる。
【0048】
なお、ロータリテーブル46は、(積極的に制御軸46Aを回転させる代わりに)ワイヤー31からの一定の負荷に応じて(負荷規定値を超える場合に)棒体を進行させるようにしてもよい。これにより、ワイヤーに一定の負荷で棒体を押し付けることができ、ワイヤーと棒体との進行とを連動させてもよい。
【0049】
なお、一対の棒体41,41は、セッティングワイヤー31の上側に設ける代わりに、ワイヤー31の下側に配して、ワイヤー31を棒体41により下支えして、ワイヤー31の下側へのたるみを抑制するようにしてもよい。
【0050】
さらに、本実施形態の一対の棒体41,41(ワイヤー31の上側配置)に加えて、アーム42を延伸させて、延伸させたアームの先端にもう一組の棒体(ワイヤー31の下側配置)を設けて、ワイヤー31のSiインゴット10との接触部の両端を上側および下側から当接支持させてもよい。
【0051】
また、本実施形態において、棒体41の側面全体に溝加工ドラム砥石20の複数の凸部21に対応した凹型の支持溝が形成されることが好ましい。
【0052】
以上のように構成されたワイヤー支持部40によれば、図4に示すように、Siインゴット10の側面外形に沿って進行する。
【0053】
このとき、ワイヤー支持部40により、棒体41により複数のワイヤー31を同時に同一位置で支持することができる。
【0054】
また、棒体41が軸受け42を介して無負荷の状態で回転可能に構成されることで、ワイヤー31の周回速度を維持させながらワイヤー31を確実に支持することができる。加えて、ワイヤー31による棒体41への削り込みも防止することができる。
【0055】
さらに、棒体41は、側面全体にSiインゴット10の凹溝11と同一の支持溝が形成され、ワイヤーソーボビン32にも凹溝11と同じボビン溝が形成されている。このため、周回するワイヤー31をボビン溝により確実に凹溝11に位置させることに加えて、支持溝によりワイヤー31が切断の際に横ずれすることがなく確実に支持させることができる。
【0056】
加えて、ワイヤー支持部40を、ワイヤーソー部30のワイヤー31の進行方向の変位と連動させつつ、Siインゴット10の側面外形に沿って進行させることで、ワイヤーとSiインゴット10との接触部の両端にワイヤー支持部を常に位置させることができる。
【0057】
なお、ワイヤー31およびワイヤー支持部40は、最後にスライス用ベース35に沿って進行して、Siインゴット10を切断し切っても、ワイヤー31がスライス用ベースに残ることで、Siインゴット10の切断終了部位の剥がれなどを防止することができる。
【0058】
これにより、ワイヤー31は、Siインゴット10との接触部の両端がワイヤー支持部40により常に支持されることから、ワイヤー31が接触部において弓なりになるのを防止して、水平に近い状態を維持することができる。
【0059】
ひいては、切断時にワイヤーが弓なりになって両端部側に切断応力が偏ることを防止して、うねりや筋のない切断面を実現することができる。
【0060】
このように、複数の凹溝11に正確に配置された複数のワイヤー31で精度よくSiインゴット10を1回でスライス状に精度よく切断することができ、改めて面取り工程を行う必要もない。
【0061】
次に、図5に示すように、STEP120の第1面加工工程では、切断面のいずれか一方の一面110を支持面として、残る他面120にメカニカルポリッシュ(高精度研削加工)を施す。
【0062】
具体的には、第1面加工工程では、メカニカルポリッシュを施すメカニカルポリッシュ装置50(超高合成高精度研削加工装置)により、研削加工を行う。
【0063】
メカニカルポリッシュ装置50は、スピンドル51と、定盤であるプラテン52上のダイアモンド砥石53とを備える。
【0064】
まず、ここで一面110を上面として、スピンドル51の吸着プレートである真空ポーラスチャック54に吸着させて支持させ、他面120を下面として、ダイアモンド砥石53により他面120を研削加工する。
【0065】
このとき、スピンドル51およびダイアモンド砥石53は、図示しない駆動装置により回転駆動されると共に、図示しないコンプレッサーなどによりスピンドル51がダイアモンド砥石53に押圧されることにより残る他面120に研削加工が施される。
【0066】
なお、研削加工後には、ドレッサーなどによりダイアモンド砥石53へのドレッシングが施されてもよい。
【0067】
また、メカニカルポリッシュ装置50は、必要に応じて、加工時に複数の機能水を使用可能なように機能水供給配管を有してもよい。
【0068】
次に、STEP130の第2面加工工程では、第1面加工工程により、高精度研削加工が施された他面120を上面として、一面110に対して、第1面加工工程と同様の高精度研削加工を施す。
【0069】
すなわち、他面120を上面として、スピンドル51の吸着プレートである真空ポーラスチャック54に吸着させ、一面110を下面として、ダイアモンド砥石53により一面110を研削加工する。
【0070】
この場合にも、必要に応じて、ドレッサーなどをダイアモンド砥石53に押圧することによりドレッシングが施されてもよい。
【0071】
かかるSTEP120の第1面加工工程およびSTEP130の第2面加工工程のメカニカルポリッシュ(高精度研削加工)処理によれば、切断工程により得られた高い平坦性を有する切断面のいずれか一方を支持面(吸着面)として、残りの面に順次、メカニカルポリッシュ(高精度研削加工)を施していくことで、いわゆる転写を防止して高品質なSiウェハを得ることができると共に、従来の遊離砥石加工、すなわち1次~4次の複数回のラップなど複雑な製造工程を大幅に簡略化することができる。
【0072】
より具体的には、砥石を替えて粗研削や複数回の仕上げ研削を行う必要がなく、例えば、♯30000以上の砥石により直接1回の研削加工により仕上げまで行うことができるため、簡易であるばかりでなく、Siウェハ100から利用できる真性半導体層を大きく確保するすることができるという優位性がある。
【0073】
なお、STEP120の第1面加工工程およびSTEP130の第2面加工工程の高精度研削加工処理において、Siウェハ100のサイズは、現在8インチまでであり、それぞれの口径のウェハはヘッドの面積に応じて、セットされ、(12インチまでが可能)高精度研削加工処理が行われる。
【0074】
以上が本実施形態のSiウェハの製造方法の詳細である。以上、詳しく説明したように、かかる本実施形態のSiウェハの製造方法によれば、高品質なSiウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【0075】
なお、本実施形態では、ロータリテーブル46を介して、積極的に一対の棒体41,41を進行させる場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0076】
例えば、本実施形態において、ロータリテーブル46を省略して、ワイヤーソー部30のワイヤーソーボビン32と、ワイヤー支持部40の棒体41とを、それぞれ図示しないフレームおよびフレーム動作手段により支持し、ワイヤー31(ワイヤーソーボビン32)とワイヤー支持部40とを動作進行させてもよい。
【0077】
この場合、ワイヤー31の進行方向変位量とワイヤー支持部40の進行方向変位量とが連動するように、ワイヤー支持部40(棒体41)を進行させる。これにより、進行方向におけるワイヤー31とワイヤー支持部40(棒体41)との位置関係が維持されるようにしてもよい。
【0078】
また、この場合、ワイヤーソーボビン32およびワイヤー支持部40の進行動作は、予めSiインゴット10に応じて、フレーム動作手段にティーチングにより記憶保持させてもよく、Siインゴット10の規格寸法に応じた動作データテーブルから動作進行を選択して動作データを読み出すように構成してもよい。
【0079】
さらに、本実施形態において、Siインゴット10は、円筒形状である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、筒状であれば、角柱(四角柱)などであってもよく、挟持プレート44もその角柱の断面形状に対応したプレート形状とすればよい。この場合も、挟持プレート44の外周に沿って、一対の棒体41,41を、ワイヤー31(ワイヤーソーボビン32)の進行と連動させて進行させればよい。
【0080】
また、本実施形態は、STEP10の溝加工工程を実行する場合について説明したが、溝加工工程を省略して、凹部のないSiインゴット10を直接STEP110で切断してもよい。
【0081】
また、本実施形態のSiウェハの製造方法において、上述の一連の処理の後、必要に応じて、化学機械研磨(CMP)工程やウェハ洗浄工程が行われてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、半導体結晶ウェハの製造方法として、Siインゴット10からSiウェハ100を製造する場合について説明した。すなわち、Siインゴット(Siウェハ)は、300mmφ(12インチ)と口径が大きく、その分、切断のためのワイヤー31の水平幅が長くなり、切断開始時および切断終了時のインゴット10とワイヤーソーボビン32の距離が遠くになりワイヤーがぶれやすいため、特に好適であるが、半導体結晶は、Siに限定されるものはない。半導体結晶は、例えば、シリコンカーバイド(SiC)、ガリヒソ、インジュウムリン、その他の化合物半導体であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…Si結晶(半導体結晶)、10…Siインゴット(半導体結晶インゴット)、11…凹溝、20…溝加工ドラム砥石、21…凸部、30…ワイヤーソー部(ワイヤーソー装置)、31…ワイヤー、32…ワイヤーソーボビン、35…スライス用ベース(ダミープレート)、40…ワイヤー支持部(ワイヤーソー装置)、41…棒体、42…アーム、43…ガイド受け部(凸部)、44…挟持プレート、45…ガイド部(溝部)、46…ロータリテーブル、46A…制御軸、46B…ダクト、46C…ネジ、47…フレーム、50…メカニカルポリッシュ装置(超高合成高精度研削加工装置)、51…スピンドル、52…プラテン、53…ダイアモンド砥石、54…真空ポーラスチャック(吸着プレート)、100…Siウェハ(半導体結晶ウェハ)、110…一面、120…他面。
【要約】
【課題】本発明は、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる半導体結晶ウェハの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【解決手段】半導体結晶ウェハであるSiウェハの製造方法の切断工程において、ワイヤー支持部40を構成する、Siインゴット10の両端面に対応した一対の挟持プレート44と、挟持プレート44の外周に形成されたガイド部45と、ガイド部45に沿って進行する棒体41とにより、棒体41がワイヤー31を当接支持すると共にSiインゴット10の側面外形に沿って進行する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5