(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】予兆監視システム
(51)【国際特許分類】
B65G 1/137 20060101AFI20220714BHJP
【FI】
B65G1/137 A
(21)【出願番号】P 2018137856
(22)【出願日】2018-07-23
(62)【分割の表示】P 2018051274の分割
【原出願日】2018-03-19
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000114891
【氏名又は名称】ヤマト科学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000132194
【氏名又は名称】株式会社スズケン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】立花 弘之
(72)【発明者】
【氏名】安藤 井達
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-40466(JP,A)
【文献】特開2010-249701(JP,A)
【文献】特開2011-36638(JP,A)
【文献】特開2006-298559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/137
B65G 61/00
G06Q 50/28
A61J 3/00
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保管対象物を保管するための収容部と、該収容部内の設定配置領域に保管された前記保管対象物の温度情報を検出する保管対象物温度計と、検出された前記温度情報に基づいて前記設定配置領域に保管された前記保管対象物を所定温度範囲内に管理する温度管理手段とを有する恒温槽と、
前記温度情報を前記恒温槽の外部へ送信する送信手段と、
前記送信手段から送信された前記温度情報を受信し、前記温度管理手段に対し異常の有無を判断する判断手段とを備え
、
前記設定配置領域が温度補償をする領域であり、
前記恒温槽が複数設置されることで前記温度管理手段が複数設置され、
前記判断手段は、各温度管理手段に対して異常の有無を判断するものであり、
前記保管対象物温度計は、前記設定配置領域のうち、前記収容部へ空気が吹出す吹出口から最も遠い領域に配置されていることを特徴とする予兆監視システム。
【請求項2】
保管対象物を保管するための収容部と、
該収容部内の設定配置領域に保管された前記保管対象物の温度情報を検出する保管対象物温度計と、
検出された前記温度情報に基づいて前記設定配置領域に保管された前記保管対象物を所定温度範囲内に管理する温度管理手段と、
前記温度情報を前記収容部の外部へ送信する送信手段と、
前記送信手段から送信された前記温度情報を受信し、前記温度管理手段に対し異常の有無を判断する判断手段とを備え
、
前記設定配置領域が温度補償をする領域であり、
前記収容部が複数設置されることで前記温度管理手段が複数設置され、
前記判断手段は、各温度管理手段に対して異常の有無を判断するものであり、
前記保管対象物温度計は、前記設定配置領域のうち、前記収容部へ空気が吹出す吹出口から最も遠い領域に配置されていることを特徴とする予兆監視システム。
【請求項3】
前記保管対象物が容器に収容された液状の薬品であり、
前記保管対象物温度計は、前記容器の同形状、同材質のダミー容器と、
前記ダミー容器に収容された内部液と
を有して前記内部液の温度を測定することを特徴とする
請求項1または2に記載の予兆監視システム。
【請求項4】
前記判断手段は、規定期間内に前記設定配置領域の温度が前記所定温度範囲から規定回数以上外れた場合には異常と判断することを特徴とする
請求項1~3の何れか1項に記載の予兆監視システム。
【請求項5】
前記判断手段は、デフロスト開始から前記保管対象物温度計の計測温度が所定温度範囲に戻るまでの戻り時間が所定時間を超えた場合には異常と判断することを特徴とする
請求項1~4の何れか1項に記載の予兆監視システム。
【請求項6】
前記収容部内の温度を計測する室内温度計が設けられ、
前記判断手段は、デフロスト開始から前記室内温度計の計測温度が設定温度に到達するまでの時間が設定時間を超えた場合には異常と判断することを特徴とする
請求項1~5の何れか1項に記載の予兆監視システム。
【請求項7】
前記収容部内で発生する電磁波が前記収容部内から外部へ漏出するのを防止する漏磁防止手段と、
前記収容部内の前記保管対象物から出される前記保管対象物に関する情報を受信する情報受信部と
を備えることを特徴とする
請求項1~6の何れか1項に記載の予兆監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬品等の保管対象物を所定範囲内の温度で保管する上で有効な予兆監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
保管対象物を収納して保管する冷蔵庫のような恒温槽が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような保管庫で、温度管理が重要となる保管対象物を保管する場合には、所定範囲内の温度で保管する必要がある。この場合には、恒温槽が用いられることが多い。
【0004】
この恒温槽では、保管対象物を保管する収納部内の温度を所定範囲内の温度でとなるように温度管理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この恒温槽では、故障することにより収容部内を所定範囲内の温度で管理できなくなる場合がある。この場合には、保管対象物の品質に悪影響が出ることがある。特に貴重な薬品を保管する場合には影響が大きい。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、所定範囲内の温度で管理できなくなる予兆を捉えて故障前に対策をとることを可能にした予兆監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するための一形態は、保管対象物を保管するための収容部と、該収容部内の設定配置領域に保管された前記保管対象物の温度情報を検出する保管対象物温度計と、検出された前記温度情報に基づいて前記設定配置領域に保管された前記保管対象物を所定温度範囲内に管理する温度管理手段とを有する恒温槽と、前記温度情報を前記恒温槽の外部へ送信する送信手段と、前記送信手段から送信された前記温度情報を受信し、前記温度管理手段に対し異常の有無を判断する判断手段とを備え、前記設定配置領域が温度補償をする領域であり、前記恒温槽が複数設置されることで前記温度管理手段が複数設置され、前記判断手段は、各温度管理手段に対して異常の有無を判断するものであり、
前記保管対象物温度計は、前記設定配置領域のうち、前記収容部へ空気が吹出す吹出口から最も遠い領域に配置されていることを特徴とする。
また、他の態様は、保管対象物を保管するための収容部と、該収容部内の設定配置領域に保管された前記保管対象物の温度情報を検出する保管対象物温度計と、検出された前記温度情報に基づいて前記設定配置領域に保管された前記保管対象物を所定温度範囲内に管理する温度管理手段と、前記温度情報を前記収容部の外部へ送信する送信手段と、
前記送信手段から送信された前記温度情報を受信し、前記温度管理手段に対し異常の有無を判断する判断手段とを備え、前記設定配置領域が温度補償をする領域であり、前記収容部が複数設置されることで前記温度管理手段が複数設置され、前記判断手段は、各温度管理手段に対して異常の有無を判断するものであり、前記保管対象物温度計は、前記設定配置領域のうち、前記収容部へ空気が吹出す吹出口から最も遠い領域に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、所定範囲内の温度で管理できなくなる予兆を捉えて故障前に対策をとることを可能にした予兆監視システムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施形態で、恒温槽の一例を示す正面図である。
【
図2】
図1に示す恒温槽の内部構造例を模式的に示す左側の側面図である。
【
図6】恒温槽の本体とドアを示す分解斜視図である。
【
図7】恒温槽の本体に配置されたこのドア用の防磁部材の一部を示す図である。
【
図9】
図3に示すN部分のドア用の防磁部材とドアセンサとの付近を示す図である。
【
図10】観測窓の透明板の断面構造例を示す図である。
【
図11】恒温槽の本体の側面に設けられた結線用の開口と、開口閉鎖防磁部材の断面構造例を示す図である。
【
図12】例えば通気口防磁部材を備える通気口の構造例を示す断面図である。
【
図13】設定配置領域の一例を模式的に示す平面図である。
【
図14】実施形態に係る予兆監視システムで複数の恒温槽を温度管理する例を示す説明図である。
【
図15】温度管理の一例を示すフローチャート図である。
【
図16】恒温槽の収容部内に保管されているボトル温度と時刻との関係を示すタイミングチャートの一例を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を用いて、本発明を実施するための形態(以下、実施形態と称する)を説明する。まず、予兆監視システムを構成する恒温槽を説明し、その後、予兆監視システム全体を説明する。
【0033】
(恒温槽1の全体構成)
図1は、実施形態で説明する恒温槽の一例を示す正面図である。
図2は、
図1に示す恒温槽1の内部構造例を模式的に示す左側の側面図である。
図3は、
図1に示す恒温槽1の右側の側面図である。
図4は、
図1に示す恒温槽1の背面図である。
図5は、
図1に示す恒温槽1の平面図である。
【0034】
恒温槽1は、予兆監視システム(例えば、後述の
図14に示す予兆監視システムS)によって、内部温度を精密に制御されて管理される箱型の保管庫である。この恒温槽1は、例えば、
図2に例示するように、保管対象物の一例である複数のボトルBを、好ましくは低温状態を維持した状態で保管することができ、恒温槽1は、低温恒温槽あるいは冷蔵庫とも言われる。恒温槽1は、
図2に示す薬品等を収容したボトルBを、所定温度範囲(例えば3.5±1.0℃の範囲)の低温の状態に保持できるように、恒温槽1内を温度制御して保管管理する。なお、説明の簡単化のため、本明細書では、ボトルBに収容された保管対象物L(薬品など)の温度を、ボトルBの温度と適宜にいう。
【0035】
図1ないし
図3に示すように、この恒温槽1は、本体2と、ドア(扉)3を備える。本体2とドア3は、金属製であり、例えばSUS(ステンレス鋼)により作られている。本体2は、好ましくは箱型の収容体である。
図1に示すように、本体2は、上面側を形成する上面板4と、下面側を形成する下面板5と、左右の側面側を形成する側面板6、7と、背面側を形成する背面板8と、前面側(正面側)を形成する前面板9とを有している。本体2は、下面板5の下側の四隅部に、移動可能にするためのキャスタ5Aを備えている。
【0036】
以下、説明の簡略化のために、上面板を単に上面(例えば上面板4を上面4)、下面板を単に下面(例えば下面板5を下面5)、側面板を単に側面(例えば左右の側面板6、7を側面6、7)、背面板を単に背面(例えば背面板8を背面8)、前面板を単に前面(例えば前面板9を前面9)と適宜に記載する。
【0037】
図2に示すように、本体2は、内部に収容部20を有する。本体2の前面9には、ボトルB等を収容部20内へ出し入れするための縦長の長方形の開口部10が設けられている。
図1と
図2に示すように、例えば片開き式の長方形状のドア3は、本体2に対して、ヒンジ部11を用いて、開閉可能に取り付けられている。本体2内の収容部20は、ドア3により開口部10を塞ぐことで、外部に対する密封性と断熱性を保持している。
【0038】
図1に示すように、ドア3は、本体2の収容部20内が見えるように、透光性を有する例えば長方形状の観測窓12を有する。この観測窓12には、例えば透明なペアガラスがはめ込まれている。観測窓12としてペアガラスを用いることで、普通の一枚板のガラスを用いる場合に比べて、ドア3は、断熱性を確保でき、収容部20内の冷却状態を維持し易い。
【0039】
図1に示すように、ドア3は、把手3Aと、電磁ドアロック13と、非常時に用いられる鍵装置14を備える。
【0040】
図1と
図3に示すように、本体2の上面4には、モニタ表示部15が配置されている。このモニタ表示部15は、例えばカラー液晶表示部であり、使用者が画面にタッチすることで、各種の情報の表示や、本体2に対して指示する項目等を入力することができる。
図3に示すように、モニタ表示部15は、上面4に対して、脚部16により支持されており、モニタ表示部15の位置と姿勢は、脚部16を用いて、自在に変更することができる。
【0041】
図1に示す電磁ドアロック13は、使用者が、本体2において認証を受けることで、ドア3を施錠したり、逆にドア3の施錠を解除することができる。使用者が、例えばモニタ表示部15の画面15Aに対して、タッチ入力で所定のパスワードを入力したり、認証用のカードを近づけることで、使用者は、ドア3を施錠したり、逆にドア3の施錠を解除することができる。
【0042】
この電磁ドアロック13は、例えば商用電源からの電源供給を受けてドア3の施錠動作をする。このように、ドア3は、電磁ドアロック13を備えているために、恒温槽1が通常の連続運転を行っている際に、認証された使用者以外の者がドア3を開けることができない。従って、
図2に示すように、恒温槽1の収容部20内に保管されているボトルBは、認証された使用者以外の者は取り出すことができない。これにより、恒温槽1がボトルBを連続して低温保管をしているときに、ボトルBの保管上のセキュリティの保持ができる。
【0043】
また、非常の場合、例えば停電時には、電磁ドアロック13は商用電源からの通電がないために、ドア3を解錠状態にしてしまう。停電時に、無停電電源(UPS電源)からの通電があれば、電磁ドアロック13によりドア3の施錠状態を維持することができる。しかし、無停電電源からの通電がない場合には、使用者が、
図1に示す鍵装置14に、鍵を差し込んで回すことで、ドア3をロック(施錠)状態にして、ドア3が開かないようにすることができる。
【0044】
これにより、恒温槽1が停電により外部から電源供給を受けられない場合等の非常時には、認証された使用者以外の者が、恒温槽1の収容部20内に保管されているボトルBを、取り出すことができないので、恒温槽1は、停電時に、ボトルBの保管上のセキュリティの保持ができる。
【0045】
図1に示すように、本体2の上部には、庫内温度表示部17と、記録計17Aと、温度調節器17Bと、独立過昇防止器17Cとが設けられている。この庫内温度表示部17は、グリコール温度計ともいい、
図2に示す収容部20内におけるボトル温度計29が測定するボトル温度の情報を表示する。記録計17Aは、ボトル温度計29が測定するボトル温度の情報と、収容部20内の測定温度等とを記録する。温度調節器17Bは、収容部20内の温度を調節する。
【0046】
図1に示すように、本体2の上部には、上限限界温度異常表示部18Aと、下限限界温度異常表示部18Bと、ドア開閉表示部18Cと、異常警報ブザー19が、設けられている。上限限界温度異常表示部18Aと下限限界温度異常表示部18Bは、例えばともに赤色ランプであり、ドア開閉表示部18Cは、例えば黄色ランプである。
【0047】
図1に示す上限限界温度異常表示部18Aは、
図2に示すように、ボトルBが所定温度範囲(例えば3.5±1.0℃)を上回ったとき(例えば4.5℃を上回ったとき)に、制御部100の指令により、ボトルBの温度の異常上昇を点灯して警報し、異常警報ブザー19が音でも警報する。また、下限限界温度異常表示部18Bは、ボトルBが所定温度範囲(例えば3.5±1.0℃)を下回ったとき(例えば3.5℃を下回ったとき)に、制御部100の指令により、ボトルBの温度の異常下降を点灯して警報し、異常警報ブザー19が音でも警報する。なお、制御部100は、後述する設定配置領域Z(
図2参照)に保管されたボトルを所定温度範囲内に管理する温度管理手段28を構成している。
【0048】
図1に示すドアセンサ18Dは、ドア3が開いていることを検出して、
図2の制御部100に通知する。
図1のドア開閉表示部18Cは、例えばドア3が所定時間を超えて開いていると制御部100が判断すると、制御部100の指令により点灯して、ドア3が開いた状態であることを警報するとともに、異常警報ブザー19が音でも警報する。
【0049】
(収容部20の構造)
次に、
図2を参照して、本体2の収容部20の構造例を説明する。
【0050】
この収容部20の内面は、背面20D、上面20F、下面20G、左右の側面20H、20H(
図7も参照)を有する。収容部20の背面20D、上面20F、下面20G、左右の側面20H,20Hの各外側の周囲には、温度調整空気導入経路30が、収容部20の内部の温度調整をするために設けられている。すなわち、温度調整空気導入経路30は、収容部20の上面20F,下面20G,左右の側面20H,20H,背面20Dの外側において温度調整空気を通しており、この温度調整空気が収容部20内に導入される。
【0051】
収容部20の上部には、この温度調整空気を収容部の収容空間内に入れる吹出し口Mが形成されており、吹出し口Mの付近には室内温度計31が配置されている。なお、
図2では、吹出し口Mを背面20Dに配置している例で示しているが、特に背面20Dに限定はせず、上面20F、下面20G、左右の側面20H,20Hに配置してもよく、更には、背面20D、上面20F、下面20G、左右の側面20H,20Hの全てに配置することも可能である。
【0052】
温度調整空気導入経路30は、背面20Dの後側に、図示しないが温度調整用の熱交換器とヒータを有する。熱交換器とヒータは、収容部20内の設定配置領域Zの温度調整を行う。これにより、設定配置領域Zは、指定の温度で低温状態に維持した状態で、ボトルBの温度を3.5±1.0℃の範囲内に保持することができる。
【0053】
収容部20内には、複数の棚板21,22が水平にしかも間隔をおいて配置されている。左右の側面20H,20Hには、それぞれ棚板支持部23,23が配置されている。左右の棚板支持部23,23は、上下方向に沿って配置されて棚板21,22の両端部を保持している。
【0054】
棚板21の上下方向の位置は、棚板支持部23,23において任意に変更することができる。これに対して、最も下段に位置する棚板22は、上下方向の位置が高さJの位置で固定されている。このように、最も下段に位置する棚板22の上下方向の位置が固定されているのは、この棚板22の下の位置に次に説明するボトル温度計29を配置するためである。これにより、この棚板22の位置が固定されているので、ボトル温度計29を置くための空間を確保でき、棚板22がボトル温度計29に誤って当たることを防げる。
【0055】
図2に示すように、収容部20の下面20Gの上には、例えば1つのボトル温度計29が配置されている。ボトル温度計29は、保管対象物であるボトルBの温度を直接測定する代わりにボトルBのダミーとして測定しており、ボトル温度計29が測定したボトル温度情報BTの温度をボトルBの温度とみなしている。このボトル温度計29は、保管対象物温度計の例である。
【0056】
ボトル温度計29は、ダミーボトルを有している。このダミーボトルの大きさや材質は、例えばボトルBのものと同様のものとすることができる。ダミーボトルの中には、ボトル内部液として例えば無毒性グリコールが収容されており、温度プローブがこのグリコールの温度を測定するようになっている。
【0057】
このボトル内部液は、ボトルBに収容されている薬品に相当するダミーの薬品である。これにより、このボトル温度計29は、収容部20内におけるボトルBの温度を直接に測定することに代えて、収容部20内におけるボトルBの薬品の温度を間接的にモニタリングすることができる。
【0058】
例えば1つのボトル温度計29は、本体2の外界雰囲気の影響を受け易い収容部20の内部の前面側に置く。すなわち、ボトル温度計29は、例えばドア3を開けると温度変化が生じやすい位置であるドア3寄りの前側の位置等に配置するのが好ましい。これにより、ボトル温度計29により検出される検出温度を、各ボトルB内の薬品の温度よりも高くない温度にすることができる。
【0059】
ボトル温度計29が検出するボトル温度情報の温度は、ワークであるボトルBの温度として扱う。すなわち、ボトルB内の薬品の温度は直接測定できないので、ボトル温度計29が測定するボトル温度情報の温度が、ボトルBの温度情報の温度であるとして扱われる。このボトル温度情報の温度は、例えば有線の通信線を介して、
図2に示す制御部100に通知される。モニタ表示部15は、制御部100からの指令により、ボトル温度情報の温度を表示する。制御部100とコンバータ101等が、本体2の上部に配置されている。
【0060】
図2に示すように、収容部20の内部には、情報受信部として、好ましくは複数の受信用のアンテナ40から43が配置されている。アンテナ40は上面20Fに配置され、アンテナ43は下面20Gに配置されている。アンテナ41,42は背面20Dに配置されている。
【0061】
図2に示すように、収容部20の内部に配置されるボトルBには、それぞれボトルBに関する個別の情報を発信するための情報発信機能部50が例えば貼り付けることで配置されている。各ボトルBの情報発信機能部50は、そのボトルBの個別情報を記憶している。収容部20内では、アンテナ40から43の少なくとも1つは、情報発信機能部50から送信されてくるボトルBの個別情報を、無線通信により受信して、制御部100に送る。
【0062】
アンテナ40から43は、ボトルBの個別情報を受信する情報受信部の例である。各ボトルBの情報発信機能部50が、アンテナ40から43側から無線で、問い合わせを受けると、各情報発信機能部50は、記憶しているボトルBの個別情報、例えばボトルBの製造番号(ロット番号)、ボトルBの重量、ボトルBの中に入っている薬品の種類等のボトルB(薬品)に関する情報等を、アンテナ40から43の少なくとも1つへ無線で送信する。
【0063】
このように、複数のアンテナ40から43が収容部20内の互いに異なる位置に配置されているので、ボトルBが収容部20内のどの位置にあっても、各ボトルBの情報発信機能部50からの個別情報を、確実に受信できる。
【0064】
制御部100は、アンテナ40から43で受信したボトルBについての個別情報から、ボトルBの在荷情報を得る。また、制御部100は、収容部20内にある重量センサからボトルBの重量情報を得る。制御部100は、在荷情報や重量情報からボトルBの監視情報を作成する。この監視情報は、制御部100から、外部通信ユニット102を通じて、例えば本体2の外部の所定の情報ステーション(例えば、後述する管理サーバ36)に、無線または有線により送信することができる。なお、外部通信ユニット102は、後述する送信手段34を構成している。
【0065】
(恒温槽1の漏磁防止構造例)
次に、恒温槽1に設けられている漏磁防止構造の具体的な例を説明する。
【0066】
上述したように、
図2に例示するアンテナ40から43や、各ボトルBの情報発信機能部50は、収容部20内で電磁波を発生する。この発生した電磁波が、本体2の収容部20内から、本体2の庫外に漏出するのを防止する漏磁防止手段60が、本体2の各部位に配置されている。これにより、電磁波が本体2の外部に漏出するのを防ぐことができ、ボトルBに関する情報が、本体2の庫外に漏れ出るのを防ぐことができる。以下に、具体的に説明する漏磁防止手段60は、電気的にグランドに接地されている。
【0067】
(ドア用の防磁部材61)
まず、
図6から
図8を参照して、ドア用の防磁部材61について説明する。
【0068】
図2と
図6に示すように、本体2は長方形の開口部10を有しており、ドア3はこの開口部10を開閉可能に塞ぐ。
【0069】
図6は、本体2とドア3を示す分解斜視図である。
図6に示すドア用の防磁部材61は、漏磁防止手段60の例であり、ドア3の内側であってドア3の周囲に対応する位置、すなわち本体2の前面9にある開口部10の周囲の位置に配置されている。このドア用の防磁部材61は、
図6に例示している。ドア用の防磁部材61は、本体2の前面9において、開口部10を形成している縁部分に沿って取り付けられている。
【0070】
このドア用の防磁部材61は、開口部10を形成している縁部分に沿った長方形状の枠型になっており、例えば導電材の心材に対して網状の金属物質で覆った構造のものを採用できる。ドア用の防磁部材61は、電気的にグランドに接地されている。
図7は、本体2に配置されたこのドア用の防磁部材61の一部を示し、
図8は、
図7に示すR部分の拡大図である。
図9は、
図3に示す部分Nのドア用の防磁部材61とドアセンサ18Dとの付近を示す図である。
【0071】
これにより、ドア用の防磁部材61は、ドア3と本体2の前面9との間では、アンテナ40から43や、各ボトルBの情報発信機能部50が、収容部20内で発生する電磁波を、ドア3と本体2の前面9の間から庫外に漏出するのを防止する。
【0072】
(窓防磁部材62)
次に、
図6と
図10を参照して、窓防磁部材62について説明する。
図10は、観測窓12の透明板63の断面構造例を示している。
【0073】
図6に示すように、ドア3は、収容部20内を確認するための観測窓12を閉塞する透明板63と、透明板63の周囲に配置されている窓防磁部材62とを有している。窓防磁部材62は、漏磁防止手段60の例であり、観測窓12の周囲に配置されている。この漏磁防止手段60は、ドア3の外面から見えないようにドア3の内側において、観測窓12を形成している部分に沿って配置されている。
【0074】
図10に示すように、透明板63は、好ましくはペアガラスであり、第1ガラス板63Aと、第2ガラス板63Bを有している。第1ガラス板63Aと第2ガラス板63Bとの間には、空気層63Cが形成されている。これにより、透明板63がペアガラスであり空気層63Cを有していることから、透明板63の断熱性が向上している。
【0075】
第1ガラス板63Aの外面63Dには、フィルム状の透明板防磁部材64が貼り付けられている。また、第2ガラス板63Bの内面63Eには、フィルム状の別の透明板防磁部材65が貼り付けられている。透明板防磁部材64と別の透明板防磁部材65は、例えば細い金属製のメッシュ部材を有しており、透明板防磁部材64と別の透明板防磁部材65とは、漏磁防止手段60の例である。透明板防磁部材64と別の透明板防磁部材65とは、電気的にグランドに接地されている。
【0076】
この構成により、窓防磁部材62は、アンテナ40から43や、各ボトルBの情報発信機能部50が、収容部20内で発生する電磁波を、観測窓12付近から庫外に漏出させてしまうのを防止する。
【0077】
(結線用の開口のための開口閉鎖防磁部材70)
次に、
図3と
図11を参照して、結線用の開口のための開口閉鎖防磁部材70を説明する。
【0078】
図11は、本体2の側面7に設けられた結線用の開口71と、開口閉鎖防磁部材70の断面構造例を示している。
【0079】
図3と
図1に示すように、本体2の側面7には、結線用の開口71が設けられている。この結線用の開口71は、結線(配線ライン)を
図2の収容部20内から外部に導くための例えば円形状の貫通孔である。結線用の開口71の好ましくは外側と内側は、開口閉鎖防磁部材70で閉塞されている。開口閉鎖防磁部材70は、漏磁防止手段60の一例である。開口閉鎖防磁部材70は、電気的にグランドに接地されている。
【0080】
図11に示すように、開口閉鎖防磁部材70は、例えば結線用の開口71の周囲に固定されるリング状の固定部材72と、円形状の蓋部材73を有する。この蓋部材73は、固定部材72に対して着脱可能に取り付けられている。例えば、固定部材72は金属製であり、円形状の蓋部材73はプラスチック製であるが、固定部材72がプラスチック製であり、円形状の蓋部材73が金属製でも良い。
【0081】
これにより、開口閉鎖防磁部材70は、アンテナ40から43や、各ボトルBの情報発信機能部50が、収容部20内で発生する電磁波を、結線用の開口71から庫外に漏出するのを防止する。
【0082】
(通気口防磁部材90)
次に、
図1から
図4と
図12を参照して、通気口防磁部材90を説明する。
【0083】
図1に示すように、本体2の前面9の下部には、通気口80が設けられ、
図2に示すように、本体2の側面6の下部には、通気口81が設けられている。
図3に示すように、本体2の側面7の下部には、通気口82が設けられ、
図4に示すように、本体2の背面8の下部には、通気口83が設けられている。
【0084】
図12は、例えば通気口防磁部材90を備える通気口80の構造例を、代表して示す断面図である。
図1から
図4に示すように、本体2の通気口80から83は、収容部20内の温度を維持するために配置されている熱交換器やヒータ等で発生する熱を、本体2から庫外へ空気を排気することで放出している。
【0085】
各通気口80から83には、ステンレス等の金属製の通気口板79が配置されている。
図12に示すように、通気口板79の内側には、それぞれ通気口防磁部材90が配置されている。通気口防磁部材90は、ステンレス等の金属製のメッシュ部材であり、漏磁防止手段60の一例である。通気口防磁部材90は、電気的にグランドに接地されている。
【0086】
この構成により、アンテナ40から43や各ボトルBの情報発信機能部50が収容部20内で発生する電磁波を通気口80付近から庫外に漏出させてしまうことを、通気口防磁部材90が防止する。
【0087】
(部材通し用防磁部材95)
次に、
図4を参照して、部材通し用防磁部材95を説明する。
【0088】
図4に示すように、本体2の側面8の上部には、部材通し開口96やサービスコンセント99が設けられている。部材通し開口96は、部材通し用防磁部材95を備える。部材通し開口96は、例えばLAN(ローカルエリアネットワーク)用のLANポートである。この部材通し開口96は、導電性のシールドコーキングである部材通し用防磁部材95により防磁されている。部材通し用防磁部材95は、漏磁防止手段60の一例である。部材通し用防磁部材95は、電気的にグランドに接地されている。
【0089】
この構成により、アンテナ40から43や各ボトルBの情報発信機能部50が収容部20内で発生する電磁波を部材通し開口96付近から庫外に漏出させてしまうことを、部材通し用防磁部材95が防止する。
【0090】
(電源ケーブル97)
また、
図1に示すように、本体2に接続されている電源ケーブル97には、防磁用の金属製のメッシュが配置されている。電源ケーブル97は、漏磁防止手段60の一例であり防磁ケーブルである。電源ケーブル97は、電気的にグランドに接地されている。
【0091】
この構成により、アンテナ40から43や各ボトルBの情報発信機能部50が、収容部20内で発生する電磁波を電源ケーブル97から庫外に漏出させてしまうことを、電源ケーブル97が防止する。
【0092】
図13は、設定配置領域Zの一例を模式的に示す平面図である。収容部20において、ボトルBとボトル温度計29を配置して温度補償をする設定配置領域Zの一例は、収容部20内の斜線で示す範囲である。設定配置領域Zは、収容部20の収容空間のうち天井側と底側とを除いた壁面(すなわち収容部20の側壁)からそれぞれ収容空間内側にやや離れた位置までで設定される領域であり、例えば、収容部20内の収容空間の上下方向中心線Vから、ドア3の内面3i、収容部20の背面20D、収容部20の側面20H、20Hまでの各距離の90%で設定される領域である。
【0093】
なお、吹出し口Mの位置を調整するなどして、ドア3の内面3iに隣接する領域にまで設定配置領域Zを広げることも可能であり、これにより、ドア3を開いて直ぐに取り出せる位置にボトルBを置くことが可能になり、使い勝手が更に向上する。
【0094】
(予兆監視システムにおける複数の恒温槽の予兆監視)
図14は、実施形態に係る予兆監視システムSで複数の恒温槽を温度管理する一例を示す説明図である。
図15は、温度管理の一例を示すフローチャート図である。
図16は、恒温槽の収容部内に保管されているボトル温度と時刻との関係を示すタイミングチャートの一例を示すグラフ図である。
図16では、縦軸が温度T(℃)を示し、横軸が時刻を示している。
【0095】
予兆監視システムSは、複数の恒温槽として恒温槽1A、1B、1Cを備える。各恒温槽の各収容部20A、20B、20C(第1保管庫、第2保管庫、第3保管庫)の各設定配置領域には、それぞれ、保管対象物(ボトル)の温度を検出するボトル温度計29A、29B、29Cが配置されている。
【0096】
各恒温槽1A、1B、1Cは、各ボトル温度計29A、29B、29Cの検出温度に基づいて、各設定配置領域Z(
図2参照)に保管されたボトルを所定温度範囲内に管理する温度管理手段28A、28B、28Cと、各収容部20A、20B、20Cの室内温度を測定する室内温度計31A、31B、31Cとをそれぞれ備える。温度管理手段28は、例えば、冷蔵庫内の温度を厳密にコントロールする空冷手段である。
【0097】
更に、予兆監視システムSは、各ボトル温度計の検出温度を恒温槽外部へ送信する送信手段34と、送信手段34から送信されたデータ(温度)を受信する管理サーバ36と、管理サーバ36からの信号を受信し、各温度管理手段28に対し異常の有無を判断する監視センター(判断手段)38とを備える。
【0098】
ここでは、上述した恒温槽1A、1Bを顧客Xが保有して使用し、恒温槽1Cを顧客Yが保有して使用している。そして、管理サーバ36および監視センター38を管理会社Wが保有している。また、管理会社Wには、顧客XのサービススタッフSX、顧客YのサービススタッフSYが社員として雇用されており、顧客Xに関する管理サーバ36のデータ(温度)は、監視センター38からサービススタッフSXにも送信され、顧客Yに関する管理サーバ36のデータ(温度)は、監視センター38からサービススタッフSYにも送信される。
【0099】
監視センター38で恒温槽1A、1Bの少なくとも一方に関して異常と判断された場合には、その旨が、顧客XのサービススタッフSXに伝達される。
【0100】
監視センター38で異常と判断された旨がサービススタッフSXに伝達されると、サービススタッフSXは顧客Xにその旨を連絡し、異常と判断された恒温槽(恒温槽1A、1Bの少なくとも一方)に関して現地診断を行い、必要に応じてメンテナンスや修理や代替の恒温槽の設置を行う。
【0101】
この場合、恒温槽1A、1Bのうち片方の恒温槽では異常と判断されていないときは、異常と判断された恒温槽内のボトル(保管対象物)を異常と判断されていない恒温槽に直ちに移動させるように顧客Xに連絡してもよい。これにより、ボトル内の薬品等の温度管理精度を維持することを確実にし易い。
【0102】
また、監視センター38で恒温槽1Cに関して異常と判断された場合には、その旨が顧客YのサービススタッフSYに伝達される。サービススタッフSYは顧客Yにその旨を連絡し、異常と判断された恒温槽1Cに関して現地診断を行い、必要に応じてメンテナンスや修理や代替の恒温槽の設置を行う。
【0103】
なお、ここでは予兆監視システムSが複数の恒温槽の予兆監視を行う例で説明したが、1つの恒温槽の予兆監視を行う予兆監視システムとしてもよい。
【0104】
(監視センターが異常か否かを判断する具体例)
以下、
図15を参照しつつ、監視センター38が恒温槽に関して異常と判断する具体例を説明する。
【0105】
デフロスト開始からの温度の戻り時間(すなわち、デフロスト開始からボトル温度計29が所定温度範囲にまで戻るのに要した時間)は許容範囲内か否かを判断する(ステップS1)。ステップS1でYesの場合には後述のエンド(ステップS5)に移動する。
【0106】
ステップS1でNoの場合には、所定温度範囲から外れる事象が規定期間で規定回数以上に発生しているか否かを判断する(ステップS2)。ステップS2でNoの場合にはステップS1に戻る。
【0107】
ステップS2でYesの場合には、サービススタッフと顧客とへの警告通知を自動発信で行う(ステップS3)。警告はメール等で行っても良い。
【0108】
そして、サービススタッフによる現地診断(異常と判断された恒温槽の診断)を行う(ステップS4)。そして、メンテナンス等の必要な措置を行った後、エンド(ステップS5)に移動する。
【0109】
(恒温槽の温度変化の具体例)
以下、
図16を参照しつつ、恒温槽の収容部における温度変化の具体例をタイミングチャートを用いて説明する。
【0110】
0時にデフロストを開始する(
図16のDefを参照)。デフロスト開始後、設定配置領域に配置したボトル温度計29の計測温度(実体温度)は4.5℃を超えて5℃弱にまで上昇するが、その後、1時30分前に4℃にまで戻る。
【0111】
その後、8時~12時までの期間にドア3の開閉が4回行われている。ボトル温度計29の計測温度(実体温度)は所定温度範囲(3.5±1.0℃)である。
【0112】
0時~12時までの期間を規定期間とした場合、この規定期間内にボトル温度計29の計測温度が所定温度範囲から規定回数以上(例えば3回以上)外れることが生じていなときには、監視センター38は、温度管理手段28が異常とは判断しない。
【0113】
なお、監視センター38は、デフロスト開始からボトル温度計29の計測温度(実体温度)が所定温度範囲(3.5±1.0℃の範囲)に戻るまでの戻り時間が所定時間を超えた場合には異常と判断するように設定されていてもよい。例えばこの所定時間が1時間である場合、本具体例ではこの戻り時間は1時間未満であるので(
図16参照)、監視センター38は異常とは判断しない。
【0114】
また、監視センター38は、デフロスト開始から室内温度計31の計測温度(制御温度)が設定温度に到達するまでの時間が設定時間を超えた場合には異常と判断するように設定されていてもよい。例えばこの設定時間が15分であり設定温度が3.5℃である場合、本具体例では15分以内で3.5℃にまで到達しているので(
図16参照)、監視センター38は異常とは判断しない。
【0115】
以上説明したように、実施形態によれば、予兆監視システムSは、恒温槽1を備え、この恒温槽1は、収容部20内の設定配置領域Zに保管されたボトル温度計(保管対象物温度計)と、ボトル内の保管対象物(薬品等)を所定温度範囲内に管理する温度管理手段28とを有する。そして予兆監視システムSは、計測した温度を外部へ送信する送信手段34と、送信された温度情報を受信して温度管理手段28に対して異常の有無を判断する監視センター38(判断手段)を備える。
【0116】
従って、監視センター38が異常と判断した場合に、恒温槽を診断してメンテナンス等の必要な措置をとることができる。よって、所定範囲内の温度で管理できなくなる予兆を捉えて故障前に対策をとることを可能にした予兆監視システムSが実現される。
【0117】
また、恒温槽が複数設置されることで温度管理手段28が複数設置されてもよく、この場合、監視センターは各温度管理手段28に対して異常の有無を判断することができる。これにより、異なる場所に設置された複数の恒温槽に対して監視センターが異常の有無を判断することができ、効率的に管理することができる。
【0118】
また、ボトル温度計29のボトル内部液は、ボトルBに収容されている薬品に相当するダミーの薬品である。これにより、このボトル温度計29は、収容部20内におけるボトルBの温度を直接測定するのに代えて、収容部20内におけるボトルBの薬品の温度をモニタリングすることができ、ボトルBに収容されている薬品の実際の温度に極めて近い温度を測定することができる。
【0119】
また、ボトル温度計29(保管対象物温度計)が、設定配置領域Zのうち、収容部20を開閉可能に塞ぐドア側の領域に配置されていることが好ましい。これにより、ボトル温度計29により検出される検出温度を、各ボトルB内の薬品の温度よりも高くない温度にすることができ、より確実に温度管理することができる。
【0120】
また、ボトル温度計29は、設定配置領域のうち、収容部20へ空気が吹出す吹出し口Mから最も遠い領域に配置されていてもよい。これにより、ボトル温度計29により検出される検出温度を、各ボトルB内の薬品の温度よりも高くない温度にし易いので、より確実に温度管理をし易い。
【0121】
また、収容部20内の温度を計測する室内温度計31が設けられ、監視センター38は、デフロスト開始から室内温度計31の計測温度が設定温度に到達するまでの時間が設定時間を超えた場合には異常と判断する構成にしてもよく、これにより、デフロストを行ったときの異常の予兆を簡単に把握することができる。
【0122】
また、恒温槽を有しない予兆監視システムにすることも可能である。例えば、保管対象物を保管するための収容部20と、収容部20内の設定配置領域Zに保管された保管対象物の温度情報を検出するボトル温度計29(保管対象物温度計)と、検出された温度情報に基づいて設定配置領域Zに保管されたボトルB(保管対象物)を所定温度範囲内に管理する温度管理手段28と、温度情報を収容部20の外部へ送信する送信手段34と、送信手段34から送信された温度情報BT(
図2参照)を受信し、温度管理手段28に対し異常の有無を判断する監視センター(判断手段)38とを備えた予兆監視システムとすることも可能である。そして、収容部20が複数設置されることで温度管理手段28が複数設置されていてもよい。
【0123】
このような予兆監視システムであっても、予兆監視システムSと同様の効果を奏させることが可能である。
【0124】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、上記実施形態は一例であり、特許請求の範囲に記載される発明の範囲は、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更できるものである。
【0125】
上述した実施形態の恒温槽1は、例えば保管対象物としては、所定温度の低温で保管する必要がある薬品を例に挙げているが、これに限らず、他の種類や分野の保管対象物であっても良い。
【0126】
情報受信部としてのアンテナの配置数や配置位置や配置姿勢は、図示例に限らず、任意に設定できる。保管対象物であるボトルBの配置数や配置位置は、図示例に限らず、任意に設定できる。
【0127】
棚板21の配置枚数等は、
図3に示す例に限定されない。また、ドア3は片開き式ではなく、両開き式(観音開き式)でも良い。
【0128】
また、精密な温度管理を要する薬品等は、例えばガラス製のボトル状の容器に限らず、他の形状の容器であっても良い。この場合、精密な温度管理を要する薬品等の温度情報を検出する温度計は、その容器の形状に合わせた形状にしてこの薬品等を入れて温度計測することが好ましい。
【符号の説明】
【0129】
1、1A、1B、1C 恒温槽
3 ドア
20、20A、20B、20C 収容部
28、28A、28B、28C 温度管理手段
29、29A、29B、29C ボトル温度計
31、31A、31B、31C 室内温度計
34 送信手段
38 監視センター(判断手段)
40~43 アンテナ(情報受信部)
60 漏磁防止手段
100 制御部
B ボトル(保管対象物)
L 保管対象物
M 吹出し口
S 予兆監視システム
Z 設定配置領域