(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】死体収納袋、死体収納袋用の支持装置、および死体処理方法
(51)【国際特許分類】
A61G 17/06 20060101AFI20220714BHJP
A01K 29/00 20060101ALI20220714BHJP
B65D 30/10 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
A61G17/06
A01K29/00 Z
B65D30/10 A
(21)【出願番号】P 2020194516
(22)【出願日】2020-11-24
(62)【分割の表示】P 2016514939の分割
【原出願日】2015-04-21
【審査請求日】2020-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2014087479
(32)【優先日】2014-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591097702
【氏名又は名称】京都府
(73)【特許権者】
【識別番号】504322611
【氏名又は名称】学校法人 京都産業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000204192
【氏名又は名称】太陽工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 昌英
(72)【発明者】
【氏名】八谷 純一
(72)【発明者】
【氏名】矢野 小夜子
(72)【発明者】
【氏名】岩本 尚史
(72)【発明者】
【氏名】岩間 小松
(72)【発明者】
【氏名】寺石 武史
(72)【発明者】
【氏名】大槻 公一
(72)【発明者】
【氏名】高桑 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】薮田 淑予
(72)【発明者】
【氏名】朝日 武司
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲
(72)【発明者】
【氏名】山野辺 敦
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-190233(JP,A)
【文献】登録実用新案第3100141(JP,U)
【文献】登録実用新案第3150964(JP,U)
【文献】特開2006-116069(JP,A)
【文献】特開2000-197674(JP,A)
【文献】登録実用新案第050259(JP,Z2)
【文献】登録実用新案第3101940(JP,U)
【文献】実開平05-071196(JP,U)
【文献】特開2003-225254(JP,A)
【文献】実開平06-072902(JP,U)
【文献】国際公開第2005/080229(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0080811(US,A1)
【文献】特開2000-062796(JP,A)
【文献】登録実用新案第3032391(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 17/06
A61G 17/00
A01K 29/00
B65D 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
死体を収納するための収納空間が内部に形成された可撓性の袋本体と、当該袋本体の収納空間に配置される内袋と、を備えた死体収納袋であって、
上記袋本体は、上記収納空間への入口となる開口を一端に有する筒状の第1部分と、当該第1部分の他端側に設けられ、当該第1部分と協働して上記収納空間を形成する有底筒状の第2部分とを有し、
上記第1部分がその開口を閉鎖するように折り畳まれた状態のまま当該第1部分を保持するための保持具が上記袋本体に設けられ、
上記内袋は、上記袋本体の開口と同方向に開く開口を一端に有した有底筒状に形成され、
上記内袋の内部空間からなる内側収納空間に死体が収納可能とされ、
上記内袋の側面における上記内側収納空間の底面から離れた位置に、上記内側収納空間内の気体が外部に流出可能なように上記内袋の内外を連通させつつ当該気体中の微粒子の流出を阻止する内側フィルターが設けられた、ことを特徴とする死体収納袋。
【請求項2】
上記第1部分の開口の面積が上記第2部分の断面積よりも大きくなるように上記袋本体が形成された、ことを特徴とする請求項1に記載の死体収納袋。
【請求項3】
請求項1に記載の死体収納袋と、当該死体収納袋を保形しつつ支持する平面視矩形状の支持フレームとを備えた死体収納装置であって、
上記支持フレームは、その内部に上記第2部分が挿入された上記袋本体の第1部分が下方に折り返されて支持フレームの外側に配置された状態で当該袋本体を保持することが可能な形状を有する、ことを特徴とする死体収納装置。
【請求項4】
上記支持フレームは、平面視で平行に延びる互いに離れた一対の縦向き材と、各縦向き材に対し平面視で直交する方向に延びる互いに離れた一対の横向き材と、各横向き材の端部を縦向き材に結合する連結具とを有し、
上記連結具は、上記縦向き材と横向き材との交差角度を変更可能にする角度変更機能と、上記縦向き材と横向き材とを互いに着脱可能にする着脱機能との少なくとも一方を有する、ことを特徴とする
請求項3に記載の死体収納装置。
【請求項5】
上記横向き材の長さが上記縦向き材よりも短く設定されるとともに、上記横向き材の高さが上記縦向き材よりも低く設定された、ことを特徴とする
請求項4に記載の死体収納装置。
【請求項6】
請求項3
に記載の死体収納装置を用いて死体を処理する方法であって、
上記支持フレームの内部に上記袋本体の第2部分を上方から挿入する第1のステップと、
当該第1のステップの後、上記袋本体の第1部分が上記支持フレームの外側に配置されるように当該第1部分を下方に折り返す第2のステップと、
当該第2のステップの後、上記袋本体の収納空間に上方から死体を挿入する第3のステップと、
当該第3のステップの後、上記袋本体の開口が閉鎖されるように上記第1部分を折り畳むとともに、上記保持具を用いて当該第1部分を上記折り畳み状態に保持する第4のステ
ップと、
当該第4のステップの後、死体を収納した上記袋本体を目的地まで搬送して処理する第5のステップとを含む、ことを特徴とする死体処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝染病などに因り生じた人や家畜などの生き物の死体を保管したり焼却または埋却処理のために搬送したりする場合に、当該死体を収納するために使用される死体収納袋、およびこれを備えた死体収納装置、並びにこれを用いた死体処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に家畜などの生き物に関しては、従来より、口蹄疫や鳥インフルエンザの伝染病などに因る死体が短期間で多数生じることがある。このような場合、衛生面や、死体の取り扱いの容易性などの観点から、従来では、上記死体収納袋を用いて死体を収納し、これにより死体を保管したり、焼却場や埋却地など所望地に向けて搬送したりすることが行われている。
【0003】
上記死体収納袋として、従来、下記特許文献1,2に示されるものがある。これら各公報に記載された死体収納袋は、一方向に開く開口を通じて死体が収納される収納空間を内部に有する有底筒状の袋本体と、当該袋本体の開口を開閉可能に閉じるファスナーとを備えている。
【0004】
上記袋本体に死体を収納する場合には、まず、上記開口を通じて袋本体の収納空間に死体が挿入され、次に、上記開口がファスナーで閉じられる。
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、開口を閉じた状態での袋本体の内部に、死体により占有されない無駄な空間が形成され易いという問題がある。
【0006】
すなわち、上記袋本体の収納空間に死体を挿入して上記開口をファスナーにより閉じたとき、死体のサイズ(体積)が袋本体の容量(収納空間の容積)よりもかなり小さいことが起こり得る。この場合、死体を収納した死体収納袋は、無用に大きい外径形状(占有空間)を有することになるので、多数の死体収納袋を限られた空間に効率よく保管することができなくなる。また、死体収納袋の搬送を含む各種取り扱い作業が煩雑になるおそれがある。
【0007】
また、上記従来技術の死体収納袋では、上記開口の面積が、袋本体の内部の最大断面積よりも小さくされている。このため、上記袋本体の収納空間に上記開口を通じて死体を収納しようとするとき、上記開口の周縁が邪魔になって、死体収納袋への死体の収納作業が阻害されるおそれがある。しかも、この死体収納の際、上記袋本体の開口の周縁が死体により汚損させられるおそれもある。このため、当該汚損を防止する措置が必要になり、そのような点でも上記死体収納袋の取り扱い作業が煩雑になるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2006-116069号公報
【文献】実用新案登録第3150964号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、死体を収納した死体収納袋を限られた空間に効率よく保管することが可能で、しかも死体収納袋の取り扱い作業を容易にすることが可能な技術を提供することである。
【0010】
上記目的を達成するためのものとして、本発明は、死体を収納するための収納空間が内部に形成された可撓性の袋本体と、当該袋本体の収納空間に配置される内袋と、を備えた死体収納袋であって、上記袋本体は、上記収納空間への入口となる開口を一端に有する筒状の第1部分と、当該第1部分の他端側に設けられ、当該第1部分と協働して上記収納空間を形成する有底筒状の第2部分とを有し、上記第1部分がその開口を閉鎖するように折り畳まれた状態のまま当該第1部分を保持するための保持具が上記袋本体に設けられ、上記内袋は、上記袋本体の開口と同方向に開く開口を一端に有した有底筒状に形成され、上記内袋の内部空間からなる内側収納空間に死体が収納可能とされ、上記内袋の側面における上記内側収納空間の底面から離れた位置に、上記内側収納空間内の気体が外部に流出可能なように上記内袋の内外を連通させつつ当該気体中の微粒子の流出を阻止する内側フィルターが設けられた、ことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明は、上述した死体収納袋と、当該死体収納袋を保形しつつ支持する平面視矩形状の支持フレームとを備えた死体収納装置であって、上記支持フレームは、その内部に上記第2部分が挿入された上記袋本体の第1部分が下方に折り返されて支持フレームの外側に配置された状態で当該袋本体を保持することが可能な形状を有する、ことを特徴とするものである。
【0012】
さらに、本発明は、上述した死体収納装置を用いて死体を処理する方法であって、上記支持フレームの内部に上記袋本体の第2部分を上方から挿入する第1のステップと、当該第1のステップの後、上記袋本体の第1部分が上記支持フレームの外側に配置されるように当該第1部分を下方に折り返す第2のステップと、当該第2のステップの後、上記袋本体の収納空間に上方から死体を挿入する第3のステップと、当該第3のステップの後、上記袋本体の開口が閉鎖されるように上記第1部分を折り畳むとともに、上記保持具を用いて当該第1部分を上記折り畳み状態に保持する第4のステップと、当該第4のステップの後、死体を収納した上記袋本体を目的地まで搬送して処理する第5のステップとを含む、ことを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる死体収納装置の全体構成を示す側面図である。
【
図5】死体収納袋に死体を収納する作業の手順を示す説明図(その1)である。
【
図6】上記死体収納作業の手順を示す説明図(その2)である。
【
図7】上記死体収納作業の手順を示す説明図(その3)である。
【
図8】上記死体収納作業の手順を示す説明図(その4)である。
【
図9】上記死体収納作業の手順を示す説明図(その5)である。
【
図10】上記死体収納作業の手順を示す説明図(その6)である。
【
図11】上記死体収納袋を搬送する作業の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1~3は、本発明の死体収納袋およびこれを備えた死体収納装置の好ましい実施の形態を示している。死体収納装置は、死体収納袋1と、これを保形しつつ支持するための支持フレーム24とを備えている。
【0015】
死体収納袋1は、豚、牛、鶏などの家畜やペットなどの動物もしくは人などの種々の生き物の死体2を消毒液などと共に収納するためのものである。死体収納袋1は、袋本体6と、袋本体6の内部に収納される内袋46とを有している。
【0016】
袋本体6は、全体として、軸心9に沿って上下方向に延びる有底筒状に形成されており、単数もしくは複数の死体2を収納可能な収納空間5を内部に有している。すなわち、袋本体6は、収納空間5への入口として上向きに開放された開口4を一端(上端)に有するとともに、収納空間5を閉じる底壁11を他端(下端)に有している。なお、当実施形態において、袋本体6は、平面視において一方向に長い矩形に近似した形状を有している。以下の説明では、袋本体6が呈する平面形状(長方形)の長辺に沿った方向のことを前後方向と称し、これと直交する方向のことを左右方向と称する。そして、図面中において矢印Frで示される方向を前方とし、矢印Lで示される方向を左方とする。言い換えると、矢印Frとは反対の方向が後方であり、矢印Lとは反対の方向が右方である。
【0017】
袋本体6は、上側部分6aと、上側部分6aの下方に設けられた下側部分6bと、上側部分6aと下側部分6bとの間に設けられた中間部分6cとを有しており、これら上側部分6a、下側部分6b、および中間部分6cが協働して内部に収納空間5を形成している。なお、上側部分6aは請求項にいう「第1部分」に相当し、下側部分6bは請求項にいう「第2部分」に相当する。
【0018】
上側部分6aは、その上下両端が開放された筒状の部材であり、この上側部分6aの上端の開放面が袋本体6の開口4とされている。上側部分6aは、平面視で略矩形状の断面を有し、その面積(断面積)は上下方向にわたって略一定とされている。上側部分6aの上縁には、帯状の補強材10が開口4を取り囲むように取り付けられている。
【0019】
下側部分6bは、その上端が開放されるとともに下端が閉じられた有底筒状の部材であり、この下側部分6bの下端の閉止面が袋本体6の底壁11とされている。下側部分6bは、平面視で略矩形状の断面を有し、その面積(断面積)は上下方向にわたって略一定とされている。ただし、この下側部分6bの断面積は、上側部分6aの断面積よりも小さい。
【0020】
中間部分6cは、上方に至るほど断面積が徐々に大きくなるような偏平な角錐筒状に形成されており、下側部分6bとこれよりも断面積の大きい上側部分6aとを滑らかにつなぐように設けられている。
【0021】
袋本体6は、その内部の収納空間5に収納された死体2の体液や微粒子が外部に漏出するのを防止することが可能で、かつ袋本体6の外部から雨水などの水が収納空間5に浸入したりするのを防止することが可能な可撓性の材料により構成されている。具体的に、袋本体6は、特に防水性や防油性に優れたポリ塩化ビニル(PVC)等の合成樹脂製のシートにより構成することが好ましい。この場合、シートの材質としては、ポリ塩化ビニル(PVC)の他、ポリウレタン(PU)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン(PE)等を使用することができる。また、合成樹脂製のシートに代えて、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等のゴム製のシートを使用してもよい。更に、袋本体6は、例えばケナフ等の天然繊維やポリエステル等の合成繊維を用いた繊維織布、繊維糸をメッシュ状に編み合わせた織布、または網布を芯材とし、この芯材に合成樹脂、ゴム、アルミニウムもしくはこれらの複合体を用いたコーティングを施したものであってもよい。
【0022】
袋本体6は、その上側部分6aを折り畳むことにより開口4を閉鎖することが可能である。そして、袋本体6には、開口4を閉鎖するように折り畳まれた上側部分6aを折り畳み状態のまま保持するための保持具として、第1保持具14および第2保持具15が設けられている。
【0023】
第1保持具14は、袋本体6の上側部分6aにおける上縁(補強材10)の一箇所に比較的短いベルトを介して取り付けられた係止部14aと、当該上縁の他箇所に比較的短いベルトを介して取り付けられるとともに係止部14aと係脱可能な被係止部14bとを有している。より具体的に、当実施形態では、係止部14aが上側部分6aの後面の上端に取り付けられ、被係止部14bが上側部分6aの前面の上端に取り付けられている。上述したように、袋本体6は平面視で前後方向に長い矩形状に形成されているので、係止部14aおよび被係止部14bが取り付けているのは、いずれも、袋本体6が呈する平面形状(長方形)の短辺に対応する部位である。係止部14aおよび被係止部14bは、例えば、比較的簡単な操作により係合または離脱が可能な樹脂製のバックルにより構成されている。
【0024】
第2保持具15は、袋本体6の下側部分6bの一側面に取り付けられた前後一対の係止部15a,15aと、下側部分6bの他側面に基端が固定された長さ調整可能な前後一対のベルト15c,15cと、各ベルト15c,15cの先端(自由端)に取り付けられるとともに各係止部15a,15aと係脱可能な前後一対の被係止部15b,15bとを有している。より具体的に、当実施形態では、下側部分6bの一方の長辺に対応する左側面に係止部15aが取り付けられ、下側部分6bの他方の長辺に対応する右側面にベルト15cおよび被係止部15bが取り付けられている。係止部15aおよび被係止部15bは、例えば、比較的簡単な操作により係合または離脱が可能な樹脂製のバックルにより構成されている。
【0025】
袋本体6の下側部分6bのおける下部の四隅には、それぞれ面ファスナーからなる固定具16が取り付けられている。この固定具16は、袋本体6を後述する支持フレーム24に固定するために使用される。また、袋本体6を全体的にコンパクトに折り畳んだときに、当該袋本体6をコンパクトな状態のままに保持するために固定具16を使用することも可能である。
【0026】
袋本体6の下側部分6bには、袋本体6の内外を連通させるフィルター18が設けられる。具体的に、フィルター18は、下側部分6bの左側面における上方寄りの位置、つまり、下側部分6bの左側面のうち収納空間5の底面(底壁11)から上方に十分に離れた位置に取り付けられている。
【0027】
フィルター18は、袋本体6の収納空間5に含まれる気体を外部に流出させることが可能で、かつ死体2から生じる病原菌やウイルスなどの微粒子(例えば、直径20~30nmの口蹄疫ウイルス)が外部に流出するのを阻止することが可能なように構成されている。これにより、無菌の気体(ガス)だけがフィルター18を通って収納空間5から外部に排出可能とされる。フィルター18としては、例えば、HEPAフィルター、ULPAフィルター、中空糸フィルター、PTFE多孔質膜、もしくはこれらを組み合わせたものを用いることが好ましい。特に、中空糸フィルターとPTFE多孔質膜とを組み合わせものが好適である。
【0028】
袋本体6には一対の吊りロープ20,20が設けられている。各吊りロープ20は、袋本体6を吊り上げる際に使用されるもので、下側部分6bの複数の側面に跨るように取り付けられている。
【0029】
内袋46は、その内部に内側収納空間45を有した有底筒状の部材であり、袋本体6の開口4と同方向に(上方に)開く開口を一端(上端)に有するとともに、内側収納空間45を閉じる底壁を他端(下端)に有している。内袋46は、袋本体6の収納空間5に収納可能なように、全体として袋本体6よりも一回り小さいサイズに形成されている。死体2は、内袋46の内部(内側収納空間45)に収納された状態で、袋本体6の収納空間5に収納される。
【0030】
内袋46の構造は袋本体6と同様のものでもよいが、特に、熱可塑性樹脂シートに蒸着等によりアルミニウムの被覆を施したものを内袋46として使用することが好ましい。このような内袋46を用いれば、死体2を収納した後の内袋46の上縁(開口の周縁)をヒートシーラーで溶着することができるので、より密閉性を高めることができ、死体2から生じる液体やガスが外部に漏出するのをより確実に防止することができる。
【0031】
なお、内袋46に用いる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)が好ましく、その他、ポリエチレンテフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等が利用可能である。
【0032】
支持フレーム24は、収納空間5が上方に大きく開くような形状に変形された袋本体6を、当該形状のまま保持しつつ水平なベース面23上に支持するための治具である。ベース面23は、地面、作業面、床面などである。
【0033】
支持フレーム24は、平面視において前後方向に長い矩形(長方形)状になるように枠組みされた枠材25と、枠材25の枠組みを保持するための連結具30とを有している。なお、枠材25はベース面23上に固定されておらず、所望位置まで自由に移動可能である。
【0034】
枠材25は、左右方向に互いに離れた状態で前後方向に延びる左右一対の縦向き材28,28と、前後方向に互いに離れた状態で左右方向に延びる前後一対の横向き材29,29とを有している。縦向き材28,28は平面視で互いに平行に延びるように配置され、横向き材29,29は平面視で縦向き材28,28とそれぞれ直交するように配置されている。
【0035】
各縦向き材28は、上下方向に延びる前後一対の柱材32,32と、前後の柱材32,32の上端部同士を結合するように前後方向に延びる上部材33と、前後の柱材32,32の上下方向の中間部(より詳しくは下端部の近傍)同士を結合するように前後方向に延びる下部材34とを一体に有している。これら柱材32、上部材33、および下部材34は、互いに同径の断面円形のパイプ材により構成されている。
【0036】
各横向き材29は、左右方向に延びる上部材37と、上部材37よりも下方位置において上部材37と平行に延びる下部材38とを別体に有している。これら上部材37および下部材38は、それぞれの両端部が連結具30を介して縦向き材28の柱材32に結合されている。また、上部材37および下部材38は、上述した縦向き材28(柱材32、上部材33、および下部材34)と同径の断面円形のパイプ材により構成されている。
【0037】
上部材37および下部材38は、上下方向において、縦向き材28の上部材33と下部材34との間に位置している。すなわち、縦向き材28の上縁(つまり上部材33の上面)の高さを縦向き材28の高さ、横向き材29の上縁(つまり上部材37の上面)の高さを横向き材29の高さとしたとき、当実施形態では、横向き材29の高さが縦向き材28よりも低く設定されている。
【0038】
また、縦向き材28の上部材33または下部材34の軸方向長さを縦向き材28の長さ、横向き材29の上部材37または下部材38の軸方向長さを横向き材29の長さとしたとき、当実施形態では、横向き材29の長さが縦向き材28よりも短く設定されている。
【0039】
以上のように枠組みされた枠材25の内部には、袋本体6の下側部分6bが上方から挿脱可能に挿入される。
図1に示すように、下側部分6bが枠材25の内部に挿入されるのに伴い、袋本体6の下側部分6bはベース面23上に載置される。また、この状態において、袋本体6の中間部分6cは、枠材25における縦向き材28の上縁(上部材33)と同じ高さに配置される。
【0040】
枠材25の内部に挿入された袋本体6は、その上側部分6aが枠材25の外側に配置されるように当該上側部分6aを下方に向かって折り返すことが可能である(後述する
図5参照)。折り返された上側部分6aは、枠材25における縦向き材28の上縁(上部材33)に掛止される。これにより、袋本体6は、その収納空間5が上方に大きく開いた形状に保持されたまま、ベース面23上に支持される。
【0041】
連結具30は、上述したように、横向き材29の上・下部材37,38の各両端部を縦向き材28の柱材32に結合することにより、縦向き材28と横向き材29とを互いに連結している。より具体的に、当実施形態では、連結具30は、縦向き材28と横向き材29とを、両者の交差角度が変更可能でかつ互いに着脱可能となるように連結している。
【0042】
上記のような連結具30の構造を
図4を用いて詳しく説明する。この
図4に示すように、連結具30は、縦向き材28の柱材32に対しその軸回りに回動可能かつ軸方向に移動可能となるよう外嵌される可動筒体41と、この可動筒体41を柱材32の上下方向の所望位置に固定するための第1締結具42と、可動筒体41からその径方向外方に突出し、横向き材29の上・下部材37,38の各端部に外嵌される支持筒体43と、この支持筒体43に挿入された上・下部材37,38の端部を支持筒体43に固定するための第2締結具44とを有している。なお、
図4では、第1・第2締結具42,44として六角頭ボルトを図示しているが、各締結具42,44は六角穴付ボルトであってもよい。
【0043】
上記のような連結具30を備えた支持フレーム24は、その不使用時にコンパクトな形状に変形させることができる。例えば、
図4において実線で示すように、横向き材29の上部材37と左側の縦向き材28とを連結している連結具30に対し、その第2締結具44を弛緩する作業を行い、当該連結部30の支持筒体43から上部材37を離脱させる。同様に、横向き材29の下部材38と右側の縦向き材28とを連結している連結具30に対し、その第2締結具44を弛緩する作業を行い、当該連結部30の支持筒体43から下部材38を離脱させる。次に、全ての連結具30に対しその第1締結具42を弛緩する作業を行い、可動筒体41が柱材32の軸回りに回動できるようにする。そして、横向き材29の上・下部材37,38が縦向き材28に接近するように、各連結具30の可動筒体41をそれぞれ柱材32の軸心回りに90度回動させる。これにより、
図4中に二点鎖線で示すように、支持フレーム24をコンパクトな形状に変形させることができる。
【0044】
次に、上述した死体収納袋1と支持フレーム24とを用いて死体2を処理する方向について説明する。
【0045】
まず、支持フレーム24の内部に袋本体6の下側部分6bを上方から挿入し、ベース面23上に載置する。また、下側部分6bの下部の四隅に取り付けられた固定具16を用いて袋本体6を支持フレーム24に固定する。すなわち、面ファスナーからなる固定具16を支持フレーム24の4つの柱材32にそれぞれ回し掛けることにより、袋本体6を支持フレーム24に固定する。
【0046】
次いで、
図5に示すように、袋本体6の上側部分6aが支持フレーム24の外側に配置されるように、当該上側部分6aを下側部分6bに対し下方に折り返す。折り返された上側部分6aは、支持フレーム24の縦向き材28の上縁(上部材33)に掛止される。
【0047】
次いで、
図6に示すように、上側部分6aが下方に折り返された上記袋本体6の収納空間5に対し内袋46を上から挿入する。また、挿入した内袋46の上部を、袋本体6の上側部分6aに被せるように下方に折り返す。
【0048】
次いで、内袋46の内側収納空間45に死体2を上から挿入するとともに、内側収納空間45内で死体2が密閉されるように内袋46を閉じる。すなわち、
図7に示すように、内袋46の上縁を左右方向に突き合わせることにより、前後方向(長手方向)に延びる突合せ部Yを形成し、当該突合せ部Yをヒートシーラーで溶着する。この場合、内袋46内に余分な気体が残らないように、内袋46内の気体を抜きながら端から順に突合せ部Yを溶着するようにする。
【0049】
ここで、内袋46に死体2を収納する際、この死体2の角、歯牙、蹄などの鋭利で硬質な部位が内袋46を損傷させたり、ひいては袋本体46を損傷させたりすることが懸念される。そこで、このような事態が生じないように、内袋46に死体2を収納する前に、死体2における上記硬質な部位を保護カバーによって覆う処置を施しておくことが望ましい。なお、保護カバーとしては、例えば、不織布製のシートや、袋本体6と同様の材質のものを用いることができる。
【0050】
次いで、
図8および
図9に示すように、袋本体6の上端の開口4(
図3)が閉じられるように上側部分6aを折り畳む。具体的には、まず、上側部分6aの上縁(補強材10が取り付けられた開口4の周縁)を左右方向に突き合わせることにより、前後方向(長手方向)に延びる突合せ部Xを形成する(
図8参照)。次いで、突合せ部Xを前後方向の軸を中心に回転させるようにして左方または右方に複数回(好ましくは3回以上)巻き込み、その後、突合せ部Xの両端に位置する第1保持具14の係止部14aおよび被係止部14bをそれぞれ上側部分6aの中央側に移動させて両者を互いに係合させる(
図9参照)。このような係止部14aと被係止部14bとの係合により、上側部分6aは、
図9のような折り畳み状態に安定して保持される。
【0051】
次いで、
図10に示すように、第2保持具15の被係止部15bと係止部15aとを互いに係合させるとともに、ベルト15cを用いて上側部分6aの上面を下向きに締め付ける。具体的には、まず、下側部分6bの右側面に基端が固定されたベルト15cを上側部分6aの上面を跨いで左右方向に延びるように配置し、当該ベルト15cの先端に固定された被係止部15bを下側部分6bの左側面まで移動させる。そして、当該左側面に取り付けられた係止部15aに被係止部15bを係合させ、その状態でベルト15cを締め付ける。すなわち、上側部分6aの上面がベルト15cによって適度に押さえ付けられる程度に、ベルト15cに取り付けられた図外のアジャスターを用いてベルト15cの長さを短縮方向(締め付け方向)に調整する。このようなベルト15cの締め付けにより、上側部分6aは、よりコンパクトに折り畳まれた状態に保持される。
【0052】
以上のようにして死体収納袋1(袋本体6および内袋46)への死体2の収納および死体収納袋1の折り畳み(閉止)作業が完了すると、次に、死体2を死体収納袋1に収納された状態のまま目的地まで搬送する。すなわち、袋本体6を支持フレーム24に固定している固定具16を支持フレーム24の柱材32から取り外した上で、
図11に示すように、クレーンなどの重機47により死体収納袋1を吊り上げて図外の運搬車(水密車両等)に積載させる。この車両への積載にあたっては、例えば重機47に備わるフック47aに死体収納袋1の吊りロープ20を掛止し、重機47の操作によって死体収納袋1を支持フレーム24の上方まで吊り上げた上で上記運搬車まで移動させる。その後、運搬車を運転して死体収納袋1(およびその内部の死体2)を目的地まで搬送し、死体収納袋1とともに死体2を焼却もしくは埋却等の処理をする。
【0053】
以上説明したように、本発明の実施形態では、袋本体6の上側部分6aを折り畳むことによって開口4を閉鎖することが可能であり、かつ当該上側部分6aを折り畳み状態のまま保持するための保持具(第1・第2保持具14,15)が袋本体6に設けられているので、死体収納袋1の保管効率や搬送時等の取り扱い容易性を高めることができる。
【0054】
すなわち、上記実施形態では、袋本体6の開口4を通じて内部の収納空間5に死体2を挿入した後、袋本体6の上側部分6aを折り畳んで開口4を閉鎖することにより、死体2のサイズに相応したコンパクトな形状に袋本体6を変形させることができる。例えば、袋本体6の容量(収納空間5の容積)に比べて死体2のサイズがかなり小さいような場合でも、当該死体2のサイズに合わせて上側部分6aの折り畳み量を増やしてやれば、死体2のサイズに相応したコンパクトな形状に袋本体6を変形させることができ、袋本体6が無用に大きくなるのを有効に回避することができる。このように、上記実施形態によれば、袋本体6を含む死体収納袋1を可及的にコンパクト化できるので、死体収納袋1を限られた空間に効率よく保管することが可能になる。また、死体収納袋1を搬送する作業などにおいて死体収納袋1の取り扱いが容易になるという利点もある。
【0055】
特に、上記実施形態では、袋本体6の収納性を高めるべく、その上側部分6aの断面積(もしくは開口4の面積)の方が下側部分6bの断面積よりも大きく設定されているため、自由状態での袋本体6の形状は大きくなりがちである。しかしながら、上側部分6aの折り畳みによって開口4を閉鎖する上記実施形態によれば、自由状態での袋本体6の形状が大きくなるとしても、上側部分6aの折り畳みによって袋本体6を十分にコンパクト化できるので、死体収納袋1の保管効率や搬送時等の取り扱い容易性を高めることができる。
【0056】
また、上記実施形態では、袋本体6の下側部分6bの側面における底壁11(収納空間5の底面)から離れた位置に、収納空間5の気体が外部に流出可能なように袋本体6の内外を連通させつつ当該気体中の微粒子の流出を阻止するフィルター18が設けられている。
【0057】
このように、上側部分6aでなく下側部分6bにフィルター18を設けた場合には、袋本体6の開口4を閉鎖するために上側部分6aを大きく折り畳んだとしても、この折り畳まれた上側部分6aによってフィルター18が覆われることが回避されるので、フィルター18の通気性能を良好に維持することができる。
【0058】
また、下側部分6bの中でも収納空間5の底面から離れた高さ位置にフィルター18が設けられているので、収納空間5の底面上に溜まった死体2の体液などの液体がフィルター18を通って袋本体6の外部に漏出することが回避され、当該液体により死体収納袋1の周りが汚染されるような事態を確実に防止することができる。
【0059】
また、上記実施形態では、袋本体6の収納空間5に内袋46が配置され、この内袋46の内部空間からなる内側収納空間45に死体2が収納可能とされる。
【0060】
この構成によれば、死体2は、袋本体6とその内部の内袋46とにより多重(二重)に包み込まれることになるので、例えば死体収納袋1の取り扱い時に作用する外力に十分に対抗し得る高い強度が死体収納袋1に付与される。これにより、死体収納袋1の耐久性およびシール性が向上するので、死体2の体液などの液体もしくは死体2から発生する微粒子が死体収納袋1の外部に漏出することや、その結果として死体収納袋1の周りが汚染されることがより確実に防止される。
【0061】
また、例えば、死体収納袋1の外袋を構成する袋本体6の強度を内袋46に比べて大きくする一方、内袋46のシール性を袋本体6に比べて高くするというように、袋本体6および内袋46がそれぞれ果たす主たる機能を異ならせることも可能になる。このようにすれば、袋本体6と内袋46とが互いの機能を補完し合う合理的な収納構造が実現され、死体収納袋1の周りの汚染等をより確実に防止することができる。
【0062】
また、上記実施形態では、死体収納袋1に死体2を収納する作業の際に、死体収納袋1の外周を取り囲む平面視矩形状の支持フレーム24が用いられ、当該支持フレーム24により死体収納袋1を保形しつつ支持することが可能とされている。例えば、袋本体6については、その下側部分6bを支持フレーム24の内部に挿入した状態で上側部分6aを下方に折り返すことにより、その折り返された形状(収納空間5が大きく上方に開かれた形状)を保持することが可能である。同様に、内袋46についても、その下部を支持フレーム24の内部(支持フレーム24に支持された袋本体6の収納空間5)に挿入した状態で上部を下方に折り返すことにより、その折り返された形状(内側収納空間45が大きく上方に開かれた形状)を保持することが可能である。
【0063】
この構成によれば、袋本体6の収納空間5に上方から死体2を挿入する作業、より詳しくは、袋本体6の収納空間5に内袋46を挿入した上で当該内袋46の内側収納空間45に死体2を挿入する作業を容易に行うことができる。また、このような死体2の収納作業の際に、袋本体6の上側部分6aの内面が汚損されることが防止されるので、その後に開口4を閉鎖する作業を行う際に当該作業をスムーズに進めることができる。
【0064】
また、上記実施形態において、支持フレーム24は、平面視で平行に延びる互いに離れた一対の縦向き材28と、各縦向き材28に対し平面視で直交する方向に延びる互いに離れた一対の横向き材29と、各横向き材29の端部を縦向き材28に結合する連結具30とを有している。連結具30は、縦向き材28と横向き材29とを両者の交差角度を変更可能な状態で連結するとともに、縦向き材28と横向き材29とを互いに着脱可能に連結している。
【0065】
このような構成によれば、支持フレーム24の不使用時などに、例えば、縦向き材28と横向き材29とを互いに分離させたり、縦向き材28と横向き材29とを互いに接近するように両者の交差角度を変更したりすることにより、支持フレーム24をコンパクトな形状に変形させることができる。そして、このように支持フレーム24がコンパクト化された場合には、支持フレーム24を限られた空間に容易に保管することが可能になり、また、保管場所から作業場所へと支持フレーム24を容易に搬送することが可能になるので、支持フレーム24の取り扱いが非常に容易になる。
【0066】
また、上記実施形態では、横向き材29の長さが縦向き材28よりも短く設定されるとともに、横向き材29の高さが縦向き材28よりも低く設定されている。
【0067】
この構成によれば、支持フレーム24による適正な死体収納袋1の保形および支持を可能にしつつ、死体2を死体収納袋1に収納する作業の作業性を高めることができる。
【0068】
すなわち、死体2の平面形状は、全体的に見て、正方形や円形に比べて長方形に近い形状をなすのが一般的であるので、このような死体2を収納する死体収納袋1(袋本体6および内袋46)も、やはり平面視で長方形に近い形状とされるのが一般的である。これに対し、上記実施形態では、横向き材29の長さが縦向き材28よりも短くなるように支持フレーム24が形成されているので、当該支持フレーム24によって上記のような長方形状の死体収納袋1を適正に保形および支持することができる。
【0069】
しかしながら、支持フレーム24が長方形状になると、横向き材29から死体収納袋1(袋本体6)の中央部までの距離が長くなるため、死体収納に関する各種作業がやり難くなることが懸念される。例えば、横向き材29に対面する位置に立った作業者A(
図11参照)が、袋本体6の上側部分6aを折り畳んでその状態を第1・第2保持具14,15により保持する作業をしようとしたときに、当該作業がやり難くなることが懸念される。また、例えば、横向き材29に対面する位置に立った作業者Aが、死体収納袋1を上方に吊り上げるために重機47のフック47aに吊りロープ20を掛止する作業をしようとしたときに、当該作業がやり難くなることが懸念される。
【0070】
このような問題に対し、上記実施形態では、横向き材29の高さが縦向き材28よりも低く設定されているので、例えば
図11に示すように、作業者Aは、横向き材29に特に邪魔されることなく死体収納袋1の中央部に容易にアクセスすることが可能になり、死体収納袋1に対する各種作業を容易に行えるようになる。
【0071】
なお、上記実施形態では、内袋46にフィルターを設けなかったが、袋本体6に取り付けられるフィルター18と同様のフィルター(以下、内側フィルターという)を内袋46に設けてもよい。すなわち、内袋46の側面における内側収納空間45の底面から離れた位置に、内側収納空間45内の気体が外部に流出可能なように内袋46の内外を連通させつつ当該気体中の微粒子の流出を阻止する内側フィルターを設けてもよい。このようにすれば、袋本体6の場合と同様に、内袋46の通気性を確保しつつ、内袋46の周り(ひいては死体収納袋1の周り)がウイルスや体液等により汚染される事態を防止することができる。
【0072】
上記のように内袋46に内側フィルターを設けた場合、袋本体6のフィルター18は省略することが可能である。このようにした場合には、外袋46と袋本体6との両方にフィルターを設けた場合に比べて通気性はやや劣るものの、死体収納袋1の外袋を構成する袋本体6にフィルターが存在しない分、死体収納袋1の周りにウイルスや体液等が漏出する事態をより確実に防止することができる。
【0073】
また、上記実施形態では、第1・第2保持具14,15、固定具16、および吊りロープ20を袋本体6に設ける一方、内袋46にはこれらのパーツ(14,15,16,20)に相当するものを設けなかったが、各パーツ(14,15,16,20)の少なくともいずれかに相当するものを内袋46に設けてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、袋本体6の上側部分6aを折り畳む際にその上縁(開口4の周縁)を溶着することはしなかったが、内袋46の場合と同様、袋本体6の開口4の周縁をヒートシーラーで溶着してもよい。このようにすれば、袋本体6の開口4が上側部分6aの折り畳みと溶着とによってさらに厳重に閉鎖されることになる。
【0075】
また、上記実施形態では、袋本体6を平面視で略長方形状に形成したが、正方形状や円形状であってもよい。このことは、内袋46でも同様である。
【0076】
また、上記実施形態では、第1・第2保持具14,15をベルトおよびバックルにより構成したが、例えば面ファスナーであってもよいし、ロープ等の結束手段であってもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、固定具16を面ファスナーにより構成したが、ベルトおよびバックルであってもよいし、ロープ等の結束手段であってもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、支持フレーム24の縦向き材28と横向き材29とを連結する連結具30が、縦向き材28と横向き材29との交差角度を変更可能にする機能(角度変更機能)と、縦向き材28と横向き材29とを互いに着脱可能とする機能(着脱機能)との両方を有していたが、連結具30はいずれか一方の機能のみを有するものであってもよい。
【0079】
例えば、角度変更機能のみを有する連結具を用いた場合には、一対の縦向き材28と一対の横向き材29との交差角度を同時に変更して各縦向き材28と各横向き材29とを互いに接近させることにより、支持フレーム24を全体として偏平な平行四辺形のようなコンパクトな形状にすることができる。
【0080】
また、着脱機能のみを有する連結具を用いた場合には、一対の縦向き材28と一対の横向き材29との連結を全て解除してこれらをバラバラに分離することができる。このようにすれば、一対の縦向き材28と一対の横向き材29とを重ねて配置する等により、コンパクトにレイアウトすることができる。
【0081】
また、上記実施形態では、袋本体6の内部に内袋46を配置し、この内袋46の内部に死体2を収納するようにしたが、内袋46は省略してもよい。内袋46を省略した場合は、袋本体6のみによって十分のシール性が得られるようにするために、袋本体6の上側部分6aを折り畳むだけでなく、開口4の周縁をヒートシーラーで溶着することが望ましい。また、この場合において、袋本体6の内部に余分な気体が残らないようにするため、ヒートシーラーによる溶着はある程度ガス抜きをしてから行うのが望ましい。例えば、袋本体6の上側部分6aをある程度折り畳むなどして袋本体6の収納空間5からある程度の気体を抜いておき、その状態で開口4の周縁を溶着する。そして、当該溶着の後に、上側部分6aを本格的に折り畳んで開口4の閉鎖を完了させる。収納空間5に残っていた気体の多くは、この仕上げの折り畳みに従ってフィルター18を通じて袋本体6の外部に排出される。
【0082】
ここで、内袋46を省略した場合、袋本体6の収納空間5に死体2が直接収納されることになるが、この場合は特に、上記実施形態と同様の形状の袋本体6、つまり上端の開口4の面積が下側部分6bの断面積よりも大きくなるように形成された袋本体6を用いることが好ましい。これにより、袋本体6の収納空間5に死体2を挿入する作業を、比較的大きな開口4を通じて容易に行うことができる。また、開口4が拡大されることにより、死体2の挿入時に開口4の周縁が死体2により汚損される可能性が低減されるので、その後の袋本体6の取り扱いが容易になる。
【0083】
<実施形態のまとめ>
最後に、上記実施形態により開示された死体収納袋、死体収納装置、および死体処理方法について、その特徴的な構成および作用効果についてまとめて説明する。
【0084】
死体収納袋は、死体を収納するための収納空間が内部に形成された可撓性の袋本体を備える。この袋本体は、上記収納空間への入口となる開口を一端に有する筒状の第1部分と、当該第1部分の他端側に設けられ、当該第1部分と協働して上記収納空間を形成する有底筒状の第2部分とを有し、上記第1部分がその開口を閉鎖するように折り畳まれた状態のまま当該第1部分を保持するための保持具が上記袋本体に設けられる。
【0085】
この構成によれば、袋本体の開口を通じて内部の収納空間に死体を挿入した後、袋本体の第1部分を折り畳んで開口を閉鎖することにより、死体のサイズに相応したコンパクトな形状に袋本体を変形させることができる。これにより、袋本体を含む死体収納袋を可及的にコンパクト化できるので、死体収納袋を限られた空間に効率よく保管することが可能になる。また、死体収納袋を搬送する作業などにおいて死体収納袋の取り扱いが容易になるという利点もある。
【0086】
上記死体収納袋において、好ましくは、上記第1部分の開口の面積が上記第2部分の断面積よりも大きくなるように上記袋本体が形成される。
【0087】
この構成によれば、袋本体の収納空間に死体を挿入する作業を、比較的大きな開口を通じて容易に行うことができる。また、開口が拡大されることにより、死体の挿入時に開口の周縁が死体により汚損される可能性が低減されるので、その後の袋本体の取り扱いが容易になる。
【0088】
一方、上記のように袋本体の開口の面積を大きくした場合には、自由状態での袋本体の形状は大きくなりがちである。しかしながら、袋本体の第1部分の折り畳みによって開口を閉鎖する上記構成によれば、自由状態での袋本体の形状が大きくなるとしても、第1部分の折り畳みによって袋本体を十分にコンパクト化できるので、死体収納袋の保管効率や搬送時等の取り扱い容易性を高めることができる。
【0089】
上記死体収納袋において、好ましくは、上記第2部分の側面における上記収納空間の底面から離れた位置に、上記収納空間内の気体が外部に流出可能なように上記袋本体の内外を連通させつつ当該気体中の微粒子の流出を阻止するフィルターが設けられる。
【0090】
このように、袋本体の第1部分でなく第2部分にフィルターを設けた場合には、袋本体の開口を閉鎖するために第1部分を大きく折り畳んだとしても、この折り畳まれた第1部分によってフィルターが覆われることが回避されるので、フィルターの通気性能を良好に維持することができる。
【0091】
また、袋本体の第2部分の中でも収納空間の底面から離れた高さ位置にフィルターが設けられるので、収納空間の底面上に溜まった死体の体液などの液体がフィルターを通って袋本体の外部に漏出することが回避され、当該液体により死体収納袋の周りが汚染されるような事態を確実に防止することができる。
【0092】
上記死体収納袋は、好ましくは、袋本体の収納空間に配置されるとともに上記袋本体の開口と同方向に開く開口を一端に有した有底筒状の内袋をさらに備え、当該内袋の内部空間からなる内側収納空間に死体が収納可能とされる。
【0093】
この構成によれば、死体は、袋本体とその内部の内袋とにより多重(二重)に包み込まれることになるので、例えば死体収納袋の取り扱い時に作用する外力に十分に対抗し得る高い強度が死体収納袋に付与される。これにより、死体収納袋の耐久性およびシール性が向上するので、死体の体液などの液体もしくは死体から発生する微粒子が死体収納袋の外部に漏出することや、その結果として死体収納袋の周りが汚染されることがより確実に防止される。
【0094】
また、例えば、死体収納袋の外袋を構成する袋本体の強度を内袋に比べて大きくする一方、内袋のシール性を袋本体に比べて高くするというように、袋本体および内袋がそれぞれ果たす主たる機能を異ならせることも可能になる。このようにすれば、袋本体と内袋とが互いの機能を補完し合う合理的な収納構造が実現され、死体収納袋の周りの汚染等をより確実に防止することができる。
【0095】
上記構成において、より好ましくは、内袋の側面における上記内側収納空間の底面から離れた位置に、上記内側収納空間内の気体が外部に流出可能なように上記内袋の内外を連通させつつ当該気体中の微粒子の流出を阻止する内側フィルターが設けられる。
【0096】
この構成によれば、内袋の通気性を確保しつつ、内袋の周り(ひいては死体収納袋の周り)がウイルスや体液等により汚染される事態を防止することができる。
【0097】
上記実施形態による死体収納装置は、上述した死体収納袋と、当該死体収納袋を保形しつつ支持する平面視矩形状の支持フレームとを備える。支持フレームは、その内部に上記第2部分が挿入された上記袋本体の第1部分が下方に折り返されて支持フレームの外側に配置された状態で当該袋本体を保持することが可能な形状を有する。
【0098】
上記死体収納装置を用いることにより、次のように死体の収納作業を進めることが可能になる。まず、支持フレームの内部に袋本体の第2部分を上方から挿入し、この状態で、袋本体の第1部分が支持フレームの外側に配置されるように当該第1部分を下方に折り返す。すると、下方に折り返された第1部分が支持フレームの上縁等に支持される結果、袋本体は、第1部分が折り返された形状(収納空間が大きく上方に開かれた形状)に保持される。次に、袋本体の収納空間に死体を上から挿入する。このとき、支持フレームによって袋本体が上記のような開かれた形状に保持されているため、死体の挿入作業が非常に容易になる。また、死体挿入の際に、袋本体の第1部分の内面が汚損されることが防止されるので、その後に開口を閉鎖する作業を行う際に当該作業をスムーズに進めることができる。
【0099】
上記死体収納装置において、好ましくは、上記支持フレームは、平面視で平行に延びる互いに離れた一対の縦向き材と、各縦向き材に対し平面視で直交する方向に延びる互いに離れた一対の横向き材と、各横向き材の端部を縦向き材に結合する連結具とを有し、当該連結具は、上記縦向き材と横向き材との交差角度を変更可能にする角度変更機能と、上記縦向き材と横向き材とを互いに着脱可能にする着脱機能との少なくとも一方を有する。
【0100】
この構成によれば、支持フレームの不使用時などに、例えば、縦向き材と横向き材とを互いに分離させたり、あるいは縦向き材と横向き材とを互いに接近するように両者の交差角度を変更したりすることにより、支持フレームをコンパクトな形状に変形させることができる。そして、このように支持フレームがコンパクト化された場合には、支持フレームを限られた空間に容易に保管することが可能になり、また、保管場所から作業場所へと支持フレームを容易に搬送することが可能になるので、支持フレームの取り扱いが非常に容易になる。
【0101】
上記構成において、より好ましくは、上記横向き材の長さが上記縦向き材よりも短く設定されるとともに、上記横向き材の高さが上記縦向き材よりも低く設定される。
【0102】
死体の平面形状は、全体的に見て、正方形や円形に比べて長方形に近い形状をなすのが一般的であるので、このような死体を収納する袋本体も、やはり平面視で長方形に近い形状とされるのが一般的である。これに対し、上記構成では、横向き材の長さが縦向き材よりも短くなるように支持フレームが形成されているので、当該支持フレームによって上記のような長方形状の袋本体を適正に保形および支持することができる。
【0103】
しかしながら、支持フレームが長方形状になると、横向き材から袋本体の中央部までの距離が長くなるため、死体収納に関する各種作業がやり難くなることが懸念される。このような問題に対し、上記構成では、横向き材の高さが縦向き材よりも低く設定されているので、作業者は、横向き材に特に邪魔されることなく袋本体の中央部に容易にアクセスすることが可能になり、死体収納に関する各種作業を容易に行えるようになる。
【0104】
上記実施形態による死体処理方法は、上記支持フレームの内部に上記袋本体の第2部分を上方から挿入する第1のステップと、当該第1のステップの後、上記袋本体の第1部分が上記支持フレームの外側に配置されるように当該第1部分を下方に折り返す第2のステップと、当該第2のステップの後、上記袋本体の収納空間に上方から死体を挿入する第3のステップと、当該第3のステップの後、上記袋本体の開口が閉鎖されるように上記第1部分を折り畳むとともに、上記保持具を用いて当該第1部分を上記折り畳み状態に保持する第4のステップと、当該第4のステップの後、死体を収納した上記袋本体を目的地まで搬送して処理する第5のステップとを含む。
【0105】
この方法によれば、死体を死体収納袋に収納してこれを目的地まで搬送する場合に、その作業をスムーズに進めることができる。