(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】キャップ着脱装置、並びに、これを備えたサンプリング装置及び前処理装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20220714BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M1/26
(21)【出願番号】P 2020531263
(86)(22)【出願日】2019-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2019027324
(87)【国際公開番号】W WO2020017408
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2018134171
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発/高生産性微生物創製に資する情報解析システムの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 勉
(72)【発明者】
【氏名】小田 あかり
(72)【発明者】
【氏名】蓮沼 誠久
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/069151(WO,A1)
【文献】特開2016-064445(JP,A)
【文献】特開平04-002485(JP,A)
【文献】特開2012-200239(JP,A)
【文献】特開2003-094374(JP,A)
【文献】実開昭62-034275(JP,U)
【文献】特開2018-000020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
G01N 1/00-27/92
B65D 35/44-35/54
B65D 39/00-55/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジ部が形成されたキャップを容器に対して回転させることにより着脱するためのキャップ着脱装置であって、
前記キャップを把持するキャップ把持部と、
前記キャップ把持部を回転させることにより、前記キャップを回転させて前記容器に着脱する回転機構とを備え、
前記回転機構は、
外周面にネジ山が形成された軸部と、
前記軸部の前記ネジ山に螺合されるネジ溝が内周面に形成され、固定された状態で前記軸部を回転可能に保持するナット部とを有し、
前記ネジ山のピッチが、前記キャップに形成された前記ネジ部のピッチと同一であることを特徴とするキャップ着脱装置。
【請求項2】
前記キャップ把持部は、
前記キャップを把持する状態と把持しない状態との間で変位可能な変位部と、
軸線方向に沿ってスライドすることにより前記変位部を変位させるシャフトとを有することを特徴とする請求項1に記載のキャップ着脱装置。
【請求項3】
前記軸部は、中空状に形成されており、
前記シャフトは、前記軸部内に挿通されていることを特徴とする請求項2に記載のキャップ着脱装置。
【請求項4】
前記回転機構を移動させることにより、前記キャップ把持部により把持された前記キャップに取り付けられている前記容器を移動させるための移動機構をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のキャップ着脱装置。
【請求項5】
細胞を含む培養液をサンプリングするためのサンプリング装置であって、
請求項1に記載のキャップ着脱装置を備え、
前記キャップ着脱装置により前記キャップが取り外された前記容器内に前記培養液をサンプリングすることを特徴とするサンプリング装置。
【請求項6】
容器内の細胞に対する前処理を行うための前処理装置であって、
請求項1に記載のキャップ着脱装置と、
前記キャップ着脱装置により前記キャップが取り外された前記容器内に試薬を供給する試薬供給機構とを備えることを特徴とする前処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ部が形成されたキャップを容器に対して回転させることにより着脱するためのキャップ着脱装置、並びに、これを備えたサンプリング装置及び前処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微生物や植物の細胞を培養槽内の培養液中で培養し、その培養液から細胞を回収して前処理を行った上で、液体クロマトグラフ質量分析装置に供給することにより、メタボローム解析などの分析を行う技術が知られている。この種の技術では、細胞を含む培養液をサンプリングするためのサンプリング装置と、サンプリングされた培養液に含まれる細胞に対して前処理を行うための前処理装置とが用いられている。培養液のサンプリングは、無菌状態にて行われる(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
培養液がサンプリングされる容器には、キャップが取り付けられている。一般的に、キャップはネジ式のものであり、キャップの内周面に形成されたネジ溝に対して、容器の外周面に形成されたネジ山を螺合し、キャップを回転させて締め付けることによって、容器内をキャップで密閉することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サンプリングを自動で行う場合、容器に対するキャップの着脱も自動で行う必要がある。この場合、キャップを回転させる動作(回転動作)と、容器及びキャップを互いに離間又は接近させるためにキャップを移動させる動作(移動動作)とを同時に行う必要がある。そのため、回転動作を行うための回転機構と、移動動作を行うための移動機構とを設けて、それらを同期するように駆動させるキャップ着脱装置を用いることが考えられる。
【0006】
しかしながら、回転機構と移動機構とで別々のモータを用いた場合には、キャップの回転に要するトルクが変動したときなどに、回転動作と移動動作とが同期しなくなり、キャップの着脱を確実に行うことができなくなるおそれがある。また、制御用及び駆動用の部品が多く、製造コストも高くなるといった問題がある。
【0007】
ギアなどを用いて回転機構と移動機構とを連結し、1つのモータで駆動させることも考えられる。しかし、この場合にも、ギアなどの駆動用の部品が多くなるため、構造が複雑になり、故障も生じやすくなる。
【0008】
上記のような問題は、培養液をサンプリングするサンプリング時に限らず、サンプリングされた培養液に含まれる細胞に対して前処理を行う前処理時などにも生じる問題である。また、上記のような問題は、培養液を収容するための容器だけでなく、キャップが回転して着脱される任意の容器において生じるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成でキャップの着脱を確実に行うことができるキャップ着脱装置、並びに、これを備えたサンプリング装置及び前処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係るキャップ着脱装置は、ネジ部が形成されたキャップを容器に対して回転させることにより着脱するためのキャップ着脱装置であって、キャップ把持部と、回転機構とを備える。前記キャップ把持部は、前記キャップを把持する。前記回転機構は、前記キャップ把持部を回転させることにより、前記キャップを回転させて前記容器に着脱する。
【0011】
前記回転機構は、軸部と、ナット部とを有する。前記軸部は、外周面にネジ山が形成されている。前記ナット部は、前記軸部の前記ネジ山に螺合されるネジ溝が内周面に形成され、固定された状態で前記軸部を回転可能に保持する。前記ネジ山のピッチは、前記キャップに形成された前記ネジ部のピッチと同一である。
【0012】
このような構成によれば、固定されたナット部に対して軸部を回転させることにより、軸部を介してキャップ把持部を回転させながら軸線方向に移動させることができる。これにより、簡単な構成でキャップの回転動作及び移動動作を同時に行うことができる。特に、軸部に形成されたネジ山のピッチが、キャップに形成されたネジ部のピッチと同一であることにより、軸部の回転に伴い、キャップの回転動作及び移動動作を適切に行うことができるため、キャップの着脱を確実に行うことができる。
【0013】
(2)前記キャップ把持部は、変位部と、シャフトとを有していてもよい。前記変位部は、前記キャップを把持する状態と把持しない状態との間で変位可能である。前記シャフトは、軸線方向に沿ってスライドすることにより前記変位部を変位させる。
【0014】
このような構成によれば、シャフトを軸線方向に沿ってスライドさせることにより、キャップ把持部の変位部を変位させて、当該変位部でキャップを把持することができる。このように、シャフトをスライドさせる動作を変位部の変位に変換することにより、簡単な動作でキャップを把持することができる。
【0015】
(3)前記軸部は、中空状に形成されていてもよい。この場合、前記シャフトは、前記軸部内に挿通されていてもよい。
【0016】
このような構成によれば、軸線方向にスライドするシャフトが、中空状の軸部内に挿通されているため、シャフトの動作と軸部の動作が互いに干渉するのを防止することができる。
【0017】
(4)前記キャップ着脱装置は、移動機構をさらに備えていてもよい。前記移動機構は、前記回転機構を移動させることにより、前記キャップ把持部により把持された前記キャップに取り付けられている前記容器を移動させる。
【0018】
このような構成によれば、キャップ着脱装置を用いて、キャップを着脱することができるだけでなく、キャップが取り付けられた状態の容器を移動させることができる。したがって、容器を移動させるための装置を別途設ける必要がなく、構成がより簡単になる。
【0019】
(5)本発明に係るサンプリング装置は、細胞を含む培養液をサンプリングするためのサンプリング装置であって、前記キャップ着脱装置と、前記キャップ着脱装置により前記キャップが取り外された前記容器内に前記培養液をサンプリングするサンプリング機構とを備える。
【0020】
このような構成によれば、サンプリング装置において容器内に培養液をサンプリングする際に、簡単な構成でキャップの着脱を確実に行うことができる。
【0021】
(6)本発明に係る前処理装置は、容器内の細胞に対する前処理を行うための前処理装置であって、前記キャップ着脱装置と、前記キャップ着脱装置により前記キャップが取り外された前記容器内に試薬を供給する試薬供給機構とを備える。
【0022】
このような構成によれば、前処理装置において容器内に試薬を供給する際に、簡単な構成でキャップの着脱を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、固定されたナット部に対して軸部を回転させるだけの簡単な構成で、キャップの回転動作及び移動動作を適切に行うことができるため、キャップの着脱を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係るキャップ着脱装置が適用されるサンプリング装置及び前処理装置を備えた自動前処理システムの概略構成を示したブロック図である。
【
図5】
図4のキャップ着脱装置のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.自動前処理システムの概略構成
図1は、本発明の一実施形態に係るキャップ着脱装置が適用されるサンプリング装置1及び前処理装置2を備えた自動前処理システム10の概略構成を示したブロック図である。この自動前処理システム10は、分析対象物に対する前処理を自動で行うための装置である。本実施形態において、分析対象物は、例えば培養された細胞であり、より具体的には菌体である。
【0026】
自動前処理システム10には、サンプリング装置1及び前処理装置2が備えられている。自動前処理システム10により前処理が行われた後の細胞からは、その細胞の代謝産物が抽出されて、液体クロマトグラフ質量分析装置3に供給される。液体クロマトグラフ質量分析装置3は、分析対象物を分析するための分析装置の一例に過ぎず、他の分析装置を用いて分析を行うことも可能である。
【0027】
サンプリング装置1は、容器(培養容器)から液体をサンプリングするための装置である。例えば、微生物や植物の細胞は、バイオリアクタと呼ばれる容器内において培養液中で培養され、バイオリアクタ内の細胞を含む培養液がサンプリング装置1によりサンプリングされる。バイオリアクタ内には、例えば磁力を用いて回転される攪拌部材や、溶存酸素の濃度を検知するための酸素濃度センサなどが設けられており、バイオリアクタ内において培養液を攪拌しながら溶存酸素濃度を調整することにより、サンプリング装置1内において細胞が培養される。
【0028】
前処理装置2は、バイオリアクタ内からサンプリングされた培養液に含まれる細胞に対して前処理を行う。サンプリング装置1では、細胞を含む培養液が、容器(サンプリング容器)としての試験管に収容される。前処理装置2には、遠心分離機構4、液体除去機構5、試薬供給機構6、攪拌機構7及び抽出機構8などが備えられており、これらの各機構により、試験管内の培養液に含まれる細胞に対して前処理が順次行われる。
【0029】
遠心分離機構4は、細胞を含む培養液が収容された試験管に対して遠心分離を行う。これにより、試験管内の培養液に遠心力が付与され、細胞(固体)と細胞以外の液体とに分離される。そして、遠心分離機構4により試験管内で遠心分離された細胞以外の液体が、液体除去機構5を用いて除去されることにより、細胞が回収される。
【0030】
液体除去機構5により液体が除去された後の試験管内には、試薬供給機構6により試薬が供給される。これにより、試験管内の細胞に試薬が混合され、混合液が生成される。そして、試薬供給機構6により生成された混合液が、攪拌機構7により攪拌される。
【0031】
本実施形態において使用される試薬は、細胞中の代謝産物を抽出するための試薬であり、細胞に試薬が混合された混合液を攪拌することにより、細胞中から代謝産物が抽出された懸濁液が得られる。このようにして得られた懸濁液の一部が、抽出液として抽出機構8により抽出され、液体クロマトグラフ質量分析装置3に供給される。
【0032】
2.キャップ着脱装置の具体的構成
図2は、キャップ着脱装置20の斜視図である。
図3は、キャップ着脱装置20の正面図である。
図4は、キャップ着脱装置20の底面図である。
図5は、
図4のキャップ着脱装置20のA-A断面図である。
【0033】
本実施形態では、サンプリング装置1において培養液が収容される試験管14に対して、キャップ着脱装置20によりキャップ141が着脱される。キャップ141はネジ式のものであり、キャップ141の内周面に形成されたネジ溝(ネジ部)に対して、試験管14の外周面に形成されたネジ山を螺合し、キャップ141を回転させて締め付けることにより、試験管14内を密閉することができる。
【0034】
試験管14は、内部が空の状態でキャップ141が取り付けられ、サンプリング装置1にセットされる。サンプリング装置1には、複数の試験管14をセットすることができるようになっており、各試験管14が順次搬送されて使用される。サンプリング装置1において各試験管14に培養液をサンプリングする際には、キャップ着脱装置20により試験管14からキャップ141が取り外され、その試験管14内に培養液がサンプリングされた後、試験管14にキャップ141が再度取り付けられる。
【0035】
キャップ着脱装置20は、サンプリング装置1だけでなく、前処理装置2に適用することも可能である。すなわち、培養液が収容された試験管14がサンプリング装置1から前処理装置2に搬送された場合、その試験管14に対してキャップ141を着脱する際に、キャップ着脱装置20が用いられてもよい。この場合、遠心分離機構4による遠心分離後に、キャップ着脱装置20により試験管14からキャップ141が取り外され、その試験管14内から細胞以外の液体が液体除去機構5により除去されるとともに、試薬供給機構6により試験管14内に試薬が供給された後、キャップ着脱装置20により試験管14にキャップ141が再度取り付けられてもよい。
【0036】
キャップ着脱装置20は、キャップ141を把持するキャップ把持部21と、キャップ把持部21を回転させる回転機構22とを備えている。キャップ把持部21によりキャップ141を把持した状態で、回転機構22によりキャップ把持部21を回転させれば、キャップ141を回転させて試験管14に着脱することができる。
【0037】
キャップ把持部21は、1対の変位部211と、これらの1対の変位部211を変位させるためのシャフト212とを備えている。1対の変位部211は、互いに対向して配置された爪状の部材であり、1対の変位部211の間にキャップ141を挟んで把持することができる。
【0038】
1対の変位部211は、支軸213を中心にして、それぞれ揺動可能に支持されている。1対の変位部211は、支軸213を中心に揺動することにより、先端部が互いに接近した状態と、先端部が互いに離間した状態との間で変位することができる。キャップ141を把持するときには、1対の変位部211の先端部が接近した状態となり、それらの先端部でキャップ141を把持することができる。この状態から、1対の変位部211が支軸213を中心に揺動し、それらの先端部がキャップ141の外径よりも離間すれば、1対の変位部211がキャップ141を把持しない状態となる。
【0039】
1対の変位部211によりキャップ141が把持された状態で、当該キャップ141が取り付けられている試験管14は、その軸線方向が上下方向に延びる状態で保持される。この状態において、試験管14は、軸線を中心に回転できない状態となっている。すなわち、試験管14の外周面が固定されることにより、キャップ141を回転させた場合であっても、試験管14が回転しないようになっている。具体的には、試験管14が設置される設置位置において試験管14の外周面を固定してもよいし、試験管14の外周面を固定する固定機構がキャップ着脱装置20に備えられていてもよい。
【0040】
シャフト212は、1対の変位部211により把持される試験管14と同軸上(上下方向)に延びている。シャフト212は、その軸線方向に沿ってスライド可能に保持されており、このシャフト212をスライドさせることにより1対の変位部211を変位させることができる。具体的には、シャフト212を下方にスライドさせることにより、1対の変位部211の先端部が離間し、シャフト212を上方にスライドさせることにより、1対の変位部211の先端部が接近する。シャフト212は、例えばキャップ把持部21に備えられたシリンダ214などの駆動源によりスライドさせることができる。
【0041】
回転機構22は、中空状の軸部221と、軸部221を回転可能に保持するナット部222とを備えている。軸部221を回転させれば、キャップ把持部21の1対の変位部211を回転させることができる。軸部221は、キャップ把持部21のシャフト212と同軸上(上下方向)に延びており、内部にシャフト212が挿通されている。軸部221の内径は、シャフト212の外径よりも大きい。したがって、軸部221を回転させた場合であっても、シャフト212には外力が加わらず、シャフト212は回転しないようになっている。
【0042】
軸部221の外周面には、ネジ山223が形成されている。また、ナット部222の内周面には、軸部221のネジ山223に螺合されるネジ溝224が形成されている。ナット部222は、キャップ着脱装置20において所定の位置に固定されており、このナット部222に軸部221が螺合されることにより、軸部221は固定された状態のナット部222に対して回転可能に保持されている。したがって、軸部221を回転させたときには、固定された状態のナット部222に対して、軸部221が回転しながら軸線方向(上下方向)に移動するようになっている。
【0043】
軸部221には、複数のギア225を介して、回転機構22に備えられたモータ226が連結されている。これにより、モータ226を回転させれば、複数のギア225を介して軸部221を回転させ、それに伴って、キャップ把持部21の1対の変位部211を回転させながら軸線方向に移動させることができる。
【0044】
本実施形態では、軸部221の外周面に形成されたネジ山223のピッチが、キャップ141の内周面に形成されたネジ溝のピッチと同一となっている。したがって、軸部221の1回転当たりのナット部222に対する移動量と、キャップ141の1回転当たりの試験管14に対する移動量は同一である。
【0045】
図4に概念的に示すように、キャップ把持部21及び回転機構22は、移動機構23により一体的に移動させることができるようになっている。移動機構23は、例えばモータ及び複数のギア(いずれも図示せず)を備えており、回転機構22を上下方向及び水平方向に移動させることにより、キャップ把持部21により把持されたキャップ141に取り付けられている試験管14を移動させることができる。
【0046】
3.作用効果
(1)本実施形態では、固定されたナット部222に対して軸部221を回転させることにより、軸部221を介してキャップ把持部21を回転させながら軸線方向(上下方向)に移動させることができる。これにより、簡単な構成でキャップ141の回転動作及び移動動作を同時に行うことができる。特に、軸部221に形成されたネジ山223のピッチが、キャップ141に形成されたネジ部のピッチと同一であることにより、軸部221の回転に伴い、キャップ141の回転動作及び移動動作を適切に行うことができるため、キャップ141の着脱を確実に行うことができる。
【0047】
(2)本実施形態では、シャフト212を軸線方向(上下方向)に沿ってスライドさせることにより、キャップ把持部21の1対の変位部211を変位させて、当該変位部211でキャップ141を把持することができる。このように、シャフト212をスライドさせる動作を1対の変位部211の変位に変換することにより、簡単な動作でキャップ141を把持することができる。
【0048】
(3)本実施形態では、軸線方向(上下方向)にスライドするシャフト212が、中空状の軸部221内に挿通された構成となっている。そのため、シャフト212の動作と軸部221の動作が互いに干渉するのを防止することができる。
【0049】
(4)本実施形態では、移動機構23で回転機構22を移動させることにより、キャップ着脱装置20を用いて、キャップ141を着脱することができるだけでなく、キャップ141が取り付けられた状態の試験管14を移動させることができる。したがって、試験管14を移動させるための装置を別途設ける必要がなく、構成がより簡単になる。
【0050】
4.変形例
以上の実施形態では、キャップ141を把持する変位部が、爪状の1対の変位部211により構成される場合について説明した。しかし、このような構成に限らず、キャップ把持部21に備えられた変位部は、キャップ141を把持する状態と把持しない状態との間で変位可能であれば、他の任意の構成であってもよい。また、キャップ把持部21は、変位部によりキャップ141を把持するような構成に限らず、キャップ141を把持することができるような構成であれば、他の任意の構成を採用することができる。
【0051】
軸部221は、上下方向に延びるように配置された構成に限らず、上下方向に対して交差する方向に延びるように配置された構成であってもよい。この場合、試験管14も上下方向に対して交差する方向(軸部221と同軸上)に延びるように配置されることとなる。
【0052】
試験管14に着脱されるキャップ141は、その内周面に形成されたネジ溝が、試験管14の外周面に形成されたネジ山に螺合されるような構成に限らず、キャップ141の外周面に形成されたネジ山が、試験管14の内周面に形成されたネジ溝に螺合されるような構成であってもよい。
【0053】
なお、本発明に係るキャップ着脱装置20は、サンプリング装置1や前処理装置2に限らず、他の任意の装置に適用することができる。すなわち、キャップ着脱装置20は、試験管14に限らず、他の任意の容器に対してキャップを着脱する際に使用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 サンプリング装置
2 前処理装置
3 液体クロマトグラフ質量分析装置
4 遠心分離機構
5 液体除去機構
6 試薬供給機構
7 攪拌機構
8 抽出機構
10 自動前処理システム
14 試験管
20 キャップ着脱装置
21 キャップ把持部
22 回転機構
23 移動機構
141 キャップ
211 変位部
212 シャフト
213 支軸
214 シリンダ
221 軸部
222 ナット部
223 ネジ山
224 ネジ溝
225 ギア
226 モータ