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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】掌紋認証装置及び掌紋認証方法
(51)【国際特許分類】
   G06V 10/143 20220101AFI20220714BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220714BHJP
   G06V 40/12 20220101ALI20220714BHJP
   A61B 5/1171 20160101ALI20220714BHJP
【FI】
G06V10/143
G06T7/00 510B
G06V40/12
A61B5/1171
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018155866
(22)【出願日】2018-08-22
(65)【公開番号】P2020030619
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】508122998
【氏名又は名称】匠ソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】511312469
【氏名又は名称】東杜シーテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】岩本 正美
(72)【発明者】
【氏名】庄子 信行
(72)【発明者】
【氏名】谷口 広明
(72)【発明者】
【氏名】青木 孝文
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康一
【審査官】板垣 有紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-120383(JP,A)
【文献】特開2009-201064(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0194662(US,A1)
【文献】草薙 大地 他,ドアレバーのための指関節紋認証システムの高性能化,映像情報メディア学会技術報告,日本,(一社)映像情報メディア学会,2014年08月12日,第38巻 第32号,pp.5~8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06V 10/10 - 10/147
G06V 40/12
G06T 1/00
G06T 7/00
A61B 5/1171
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掌紋を用いて認証を行う掌紋認証装置であって、
認証対象者の手のひらに780nm以上940nm以下の波長の近赤外線を照射する近赤外線照射手段と、
認証対象者の手のひらに近赤外線よりも波長が短い380nm以上570nm以下の波長の光を照射する短波長光照射手段と、
認証対象者の手のひらを撮像する撮像手段と、
前記近赤外線照射手段による第1照射と前記短波長光照射手段による第2照射とを交互に、第1照射を先に少なくとも1回ずつ行い、かつ、前記撮像手段により、第1照射時の近赤外線画像、及び、第2照射時の短波長光画像を撮像するように制御する制御手段と、
前記撮像手段により撮像した近赤外線画像から、認証に使用する手のひらの画像範囲の座標を抽出する手のひら座標抽出手段と、
前記撮像手段により撮像した短波長光画像から、前記手のひら座標抽出手段により得られた座標位置の画像を認証対象画像として抽出する掌紋画像抽出手段と、
この掌紋画像抽出手段により抽出した認証対象画像を用いて認証を行う照合手段と
を備えたことを特徴とする掌紋認証装置。
【請求項2】
前記照合手段は、前記掌紋画像抽出手段により抽出した認証対象画像から特徴点を抽出し、予め登録した登録者の掌紋の照合用画像の特徴点と比較して認証を行う
ことを特徴とする請求項1記載の掌紋認証装置。
【請求項3】
前記撮像手段は、前記近赤外線照射手段による第1照射のタイミングと前記撮像手段による近赤外線画像の撮像タイミング、及び、前記短波長光照射手段による第2照射のタイミングと前記撮像手段による短波長光画像の撮像タイミングとを同期させる同期手段を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の掌紋認証装置。
【請求項4】
前記近赤外線照射手段により照射する近赤外線の波長範囲は810nm以上880nm以下であり、前記短波長光照射手段により照射する光の波長範囲は450nm以上495nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1に記載の掌紋認証装置。
【請求項5】
掌紋を用いて認証を行う掌紋認証方法であって、
認証対象者の手のひらに780nm以上940nm以下の波長の近赤外線を照射し、近赤外線画像を撮像する近赤外線画像撮像手順と、
この近赤外線画像撮像手順において撮像した近赤外線画像から、認証に使用する手のひらの画像範囲の座標を抽出する手のひら座標抽出手順と、
前記近赤外線画像撮像手順の後、認証対象者の手のひらに近赤外線よりも波長が短い380nm以上570nm以下の波長の光を照射し、短波長光画像を撮像する短波長光画像撮像手順と、
この短波長光画像撮像手順において撮像した短波長光画像から、前記手のひら座標抽出手順により得られた座標位置の画像を認証対象画像として抽出する掌紋画像抽出手順と、
この掌紋画像抽出手順により抽出した認証対象画像を用いて認証を行う照合手順と
を含むことを特徴とする掌紋認証方法。
【請求項6】
前記照合手順では、前記掌紋画像抽出手順により抽出した認証対象画像から特徴点を抽出し、予め登録した登録者の掌紋の照合用画像の特徴点と比較して認証を行う
ことを特徴とする請求項5記載の掌紋認証方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掌紋を用いて認証を行う掌紋認証装置及び掌紋認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子商取引や入退場管理など日常の様々な場面において、電子的な個人認証が広く利用されている。個人認証としては、従来より、ICカードやパスワード等を使った方法が用いられているが、より高い信頼性でセキュリティを確保することができる方法として、指紋や眼の虹彩、声など人間の身体的特徴や行動的特徴を利用して本人であることを確認する、いわゆるバイオメトリクス認証も実現されている。このバイオメトリクス認証で用いられる身体的特徴の1つに掌紋がある。掌紋は、指紋と同様に個人を識別する生体情報として利用することができ、しかも指紋に比べて加齢や摩耗によるかすれが少ないという特徴があるため、活用が進められている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には、掌紋を含んだ画像を撮像し、その画像から所定の特徴点を基準に所定範囲の画像を認証対象画像として抽出して、予め登録された掌紋の照合用画像と照合する掌紋認証装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-217307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の掌紋認証装置に使用しているのは一般的なCMOSカメラであるため、手のひらを撮像した時に手のひらの背景も一緒に映ってしまい、背景に認証を妨げるものが映り込んでしまうと、手のひらを正しい位置や範囲で検出するのが難しいという問題があった。認証を妨げる背景としては、例えば、濃い模様の壁紙、乱雑な荷物や家具、又は、照度の強い照明が挙げられる。掌紋認証において、このような背景が映り込んでしまう可能性は少なくない。そのため、例えば、撮像した画像について複雑な画像処理を行い、手のひらを認識しなければならなかった。
【0006】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、簡単に手のひらを認識することができる掌紋認証装置及び掌紋認証方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る掌紋認証装置は、掌紋を用いて認証を行うものであって、認証対象者の手のひらに780nm以上940nm以下の波長の近赤外線を照射する近赤外線照射手段と、認証対象者の手のひらに近赤外線よりも波長が短い380nm以上570nm以下の波長の光を照射する短波長光照射手段と、認証対象者の手のひらを撮像する撮像手段と、近赤外線照射手段による第1照射と短波長光照射手段による第2照射とを交互に、第1照射を先に少なくとも1回ずつ行い、かつ、撮像手段により、第1照射時の近赤外線画像、及び、第2照射時の短波長光画像を撮像するように制御する制御手段と、撮像手段により撮像した近赤外線画像から、認証に使用する手のひらの画像範囲の座標を抽出する手のひら座標抽出手段と、撮像手段により撮像した短波長光画像から、手のひら座標抽出手段により得られた座標位置の画像を認証対象画像として抽出する掌紋画像抽出手段と、この掌紋画像抽出手段により抽出した認証対象画像を用いて認証を行う照合手段とを備えたものである。
【0008】
本発明に係る掌紋認証方法は、掌紋を用いて認証を行うものであって、認証対象者の手のひらに780nm以上940nm以下の波長の近赤外線を照射し、近赤外線画像を撮像する近赤外線画像撮像手順と、この近赤外線画像撮像手順において撮像した近赤外線画像から、認証に使用する手のひらの画像範囲の座標を抽出する手のひら座標抽出手順と、近赤外線画像撮像手順の後、認証対象者の手のひらに近赤外線よりも波長が短い380nm以上570nm以下の波長の光を照射し、短波長光画像を撮像する短波長光画像撮像手順と、この短波長光画像撮像手順において撮像した短波長光画像から、手のひら座標抽出手順により得られた座標位置の画像を認証対象画像として抽出する掌紋画像抽出手順と、この掌紋画像抽出手順により抽出した認証対象画像を用いて認証を行う照合手順とを含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、近赤外線を照射して近赤外線画像を撮像するようにしたので、近赤外線画像の撮像手段に近い位置にあるものが映り、遠くにあるものは映らないという特性を利用して、背景を容易に除去することができ、手のひらの位置を容易に認識することができる。また、380nm以上570nm以下の波長の光を照射して短波長光画像を撮像するようにしたので、掌紋を鮮明に撮像することができる。よって、近赤外線画像から認証に使用する手のひらの画像範囲の座標を抽出し、短波長光画像からその座標位置の画像を抽出することにより、容易に認証対象画像を得ることができる。従って、撮像画像から手のひらの認証対象画像を抽出するための複雑な画像処理が不要であり、高速に照合を行うことができる。更に、短波長光画像を利用するので、高い精度で認証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る掌紋認証装置の構成図である。
図2】手のひらの近赤外線画像の一例を表す図である。
図3】手のひらの短波長光画像の一例を表す図である。
図4】手のひら座標抽出手段において、認証に使用する手のひらの画像範囲の座標を抽出する方法を説明するための図である。
図5】掌紋画像抽出手段において、認証対象画像を抽出する方法を説明するための図である。
図6】照合手段において、認証対象画像を用いて認証する方法を説明するための図である。
図7】本実施の形態に係る掌紋認証方法の手順を表す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、第1の実施の形態に係る掌紋認証装置10の構成を表すものである。この掌紋認証装置10は、掌紋を用いて認証を行うものであり、認証対象者の手のひらに780nm以上940nm以下の波長の近赤外線を照射する近赤外線照射手段11と、認証対象者の手のひらに近赤外線よりも波長が短い380nm以上570nm以下の波長の光(以下、短波長光と言う)を照射する短波長光照射手段12と、認証対象者の手のひらを撮像する撮像手段13と、これら近赤外線照射手段11、短波長光照射手段12、及び、撮像手段13を制御する制御手段14とを備えている。近赤外線照射手段11、短波長光照射手段12、及び、撮像手段13は、例えば、筐体10Aの表面に配設されており、制御手段14は、例えば、筐体10Aの内部に配設されている。近赤外線照射手段11、短波長光照射手段12、及び、撮像手段13は、例えば、制御手段14とそれぞれ接続されている。
【0013】
近赤外線照射手段11は、例えば、近赤外LEDにより構成されている。この掌紋認証装置10では、近赤外線、特に、780nm以上940nm以下の波長の近赤外線を照射した近赤外線画像の特性、すなわち、撮像手段13に近い位置(例えば、10cmから30cm程度)にあるものは映るが、遠くにあるものは映らないという特性を利用し、近赤外線により、撮像手段13の近くにかざされた手のひらのみを映し、遠くの背景を映さずに容易に除去することができるようになっている。近赤外線照射手段11により照射する近赤外線の波長範囲は、例えば、780nm以上940nm以下の波長の近赤外線の中でも、汎用のCMOSイメージセンサで比較的感度の高い領域で使用することができる波長810nm以上880nm以下の近赤外線であればより好ましい。図2に、手のひらに780nm以上940nm以下の波長の近赤外線を照射して撮像した近赤外線画像の一例を示す。
【0014】
短波長光照射手段12は、例えば、短波長LEDにより構成されている。短波長光を利用するのは、掌紋を鮮明に撮像することができるからである。短波長光照射手段12により照射する光の波長範囲は、例えば、皮下への光の拡散が少なく、かつ、汎用のCMOSイメージセンサで感度が高い青色光となる450nm以上495nm以下の波長の光であればより好ましい。図3に、手のひらに短波長光を照射して撮像した短波長光画像の一例を示す。撮像手段13は、例えば、CMOSカメラにより構成されており、近赤外線を照射した近赤外線画像及び短波長光を照射した短波長光画像を両方撮像できるものが好ましい。
【0015】
制御手段14は、例えば、認証対象者の手のひらに対して、近赤外線照射手段11による第1照射と短波長光照射手段12による第2照射とを交互に、第1照射を先にして少なくとも1回ずつ行い、かつ、撮像手段13により、第1照射時の近赤外線画像及び第2照射時の短波長光画像を撮像するように構成されている。なお、制御手段14は、近赤外線画像及び短波長光画像を取得できるまで、近赤外線照射手段11による第1照射と短波長光照射手段12による第2照射とを交互に行い、近赤外線画像及び短波長光画像の撮像を繰り返すように構成されることが好ましい。また、制御手段14は、近赤外線照射手段11による第1照射のタイミングと撮像手段13による近赤外線画像の撮像タイミング、及び、短波長光照射手段12による第2照射のタイミングと撮像手段13による短波長光画像の撮像タイミングとを同期させる同期手段を有していることが好ましい。同期手段としては、例えば、撮像手段13のフレームの切替わりを示す信号やストロボの発光タイミングを促す信号等を同期信号として用い、同期信号に合わせて、近赤外線照射手段11による第1照射又は短波長光照射手段12による第2照射、及び、撮像手段13による撮像を行うように構成することが好ましい。
【0016】
この掌紋認証装置10は、また、撮像手段13により撮像した近赤外線画像から、認証に使用する手のひらの画像範囲の座標を抽出する手のひら座標抽出手段15と、撮像手段13により撮像した短波長光画像から、手のひら座標抽出手段15により得られた座標位置の画像を認証対象画像として抽出する掌紋画像抽出手段16と、この掌紋画像抽出手段16により抽出した認証対象画像を用いて認証を行う照合手段17とを備えている。
【0017】
これら手のひら座標抽出手段15、掌紋画像抽出手段16、及び、照合手段17は、例えば、筐体10Aの内部に配設されている。手のひら座標抽出手段15は、例えば、撮像手段13、制御手段14、及び、掌紋画像抽出手段16とそれぞれ接続されている。掌紋画像抽出手段16は、例えば、撮像手段13、制御手段14、手のひら座標抽出手段15、照合手段17とそれぞれ接続されている。照合手段17は、例えば、制御部14及び掌紋画像抽出手段16とそれぞれ接続されている。
【0018】
手のひら座標抽出手段15は、例えば、次のようにして認証に使用する手のひらの画像範囲の座標を抽出するように構成されている。図4は、抽出方法を説明するものである。手のひら座標抽出手段15では、例えば、近赤外線画像を2値化し、人差し指と中指の付け根の間の谷間部分A、及び、薬指と小指の付け根の谷間部分Bを抽出し、これら2点A,Bを結ぶ直線Yを引き、次いで、この直線Yに垂直で、かつ、2点A,Bの中心を通る直線Xを引き、続いて、直線X上に中心Cを持ち、1辺が直線Xと並行で、中心Cが直線Yから所定距離離れた正方形の領域Rを手のひらの画像範囲とし、その座標を抽出する。なお、手のひら座標抽出手段15における抽出方法は任意であり、他の方法により抽出するようにしてもよい。
【0019】
掌紋画像抽出手段16は、例えば、図5に示したように、短波長光画像から、手のひら座標抽出手段15により特定した領域Rに対応する部分の画像を認証対象画像として抽出するように構成されている。
【0020】
照合手段17は、例えば、掌紋画像抽出手段16により抽出した認証対象画像から特徴点を抽出し、予め登録した登録者の掌紋の照合用画像の特徴点と比較して認証を行うように構成されていることが好ましい。例えば、照合手段17は、位相限定相関法により認証を行うように構成されていることが好ましい。なお、位相限定相関法というのは、デジタル信号化された画像をフーリエ変換し、得らえた位相情報のみを用いて相関関数を算出するものである。
【0021】
照合手段17の具体的な構成としては、例えば、記憶部17Aと、照合位置特定部17Bと、相関算出部17Cと、補正部17Dと、判定部17Fとを有している。記憶部17Aは、登録者の掌紋の照合用画像、及び、掌紋画像抽出手段16により抽出した認証対象画像を保存するものである。照合位置特定部17Bは、照合用画像及び認証対象画像について照合位置を特定するものであり、例えば、図6において黒丸で示した位置(範囲)を照合位置として特定するように構成されている。相関算出部17Cは、照合用画像及び認証対象画像の照合位置に関し、位相限定相関法により位置ズレ量と相関ピーク(類似度の尺度)とを算出するものである。補正部17Dは、相関算出部17Cにより得られた位置ズレ量に基づき、照合位置を補正するものである。判定部17Eは、相関算出部17Cにより得られた相関ピーク値が一定の閾値以上である場合に本人であると判断し、閾値よりも低い場合に本人でないと判断するものである。なお、照合手段17は、照合位置特定部17Bによる照合位置の特定、相関算出部17Cによる相関関数の算出、補正部17Dによる補正を順に複数回行い、それにより得られた相関ピーク値に基づき判定部17Eにより判断するように構成されることが好ましい。
【0022】
この掌紋認証装置10は、更に、例えば、認証を開始する認証開始手段18と、表示手段19とを備えていることが好ましい。認証開始手段18及び表示手段19は、例えば、筐体10Aの表面に配設されており、制御手段14とそれぞれ接続されている。認証開始手段19は、例えば、手のひらが撮像手段13の近くにかざされたことを検出するセンサー、又は、認証対象者が認証開始を指示するスイッチにより構成することができる。表示手段19は、例えば、照合手段による認証の結果を表示するものであり、認証時には、撮像手段14により撮像している映像を表示するようにしてもよい。
【0023】
この掌紋認証装置10は、例えば、次ようにして認証を行う。図7は、本実施の形態に係る掌紋認証方法の手順の流れを表すものである。
【0024】
まず、認証開始手段18により認証の開始が指示されると、制御手段14からの指示により、近赤外線照射手段11は認証対象者の手のひらに780nm以上940nm以下の波長の近赤外線を第1照射し(ステップS101)、撮像手段13は、第1照射時の近赤外線画像を撮像する(ステップS102)。撮像手段13により撮像された近赤外線画像(例えば、図2参照)は、手のひら座標抽出手段15に送られ、手のひら座標抽出手段15は、近赤外線画像から認証に使用する手のひらの画像範囲の座標を抽出する(ステップS103)。
【0025】
具体的には、例えば、図4に示したように、近赤外線画像を2値化し、人差し指と中指の付け根の間の谷間部分A、及び、薬指と小指の付け根の谷間部分Bを抽出し、これら2点A,Bを結ぶ直線Yを引き、次いで、この直線Yに垂直で、かつ、2点A,Bの中心を通る直線Xを引き、続いて、直線X上に中心Cを持ち、1辺が直線Xと並行で、中心Cが直線Yから所定距離離れた正方形の領域Rを手のひらの画像範囲とし、その座標を抽出する。手のひら座標抽出手段15は、手のひらの画像範囲の座標を抽出すると、その座標を掌紋画像抽出手段16に送り、また、手のひらの画像範囲の座標を抽出した旨の信号を制御手段14に送る。
【0026】
また、制御手段14は、近赤外線照射手段11に近赤外線の第1照射を指示し、撮像手段13に第1照射時の撮像を指示した後、短波長光照射手段12に短波長光の第2照射を指示すると共に、撮像手段13に第2照射時の撮像を指示する。これにより、短波長光照射手段12は、認証対象者の手のひらに短波長光を第2照射し(ステップS104)、撮像手段13は、第2照射時の短波長光画像を撮像する(ステップS105)。撮像手段13により撮像された短波長光画像(例えば、図3参照)は、掌紋画像抽出手段16に送られ、掌紋画像抽出手段16は、この短波長光画像から、手のひら座標抽出手段15により得られた座標位置の画像を認証対象画像として抽出する(ステップS106)。
【0027】
具体的には、例えば、図5に示したように、短波長光画像から、手のひら座標抽出手段15により特定した領域Rに対応する部分の画像を認証対象画像として抽出する。掌紋画像抽出手段16は、認証対象画像を抽出すると、その認証対象画像を照合手段17に送り、また、認証対象画像を抽出した旨の信号を制御手段14に送る。
【0028】
なお、制御手段14は、手のひら座標抽出手段15から手のひらの画像範囲の座標を抽出した旨の信号を受け、かつ、掌紋画像抽出手段16から認証対象画像を抽出した旨の信号を受けるまで、近赤外線照射手段11に対する第1照射の指示、及び、撮像手段13に対する第1照射時の撮像の指示と、短波長光照射手段12に対する第2照射の指示、及び、撮像手段13に対する第2照射時の撮像の指示とを交互に行う。
【0029】
そののち、照合手段17において、認証対象画像と照合用画像の特徴点を比較する(ステップS107)。具体的には、例えば、図6に黒丸で示したように、照合位置特定部17Bにより、認証対象画像及び照合用画像について照合位置を特定し、相関算出部17Cにより、照合位置について位置限定相関法により位置ズレ量と相関ピークとを算出し、補正部17Dにより、照合位置を補正し、必要に応じてこれらを複数回繰り返す。次いで、判定部17Eにより、相関算出部17Cで得られた相関ピーク値が一定の閾値以上である場合には(ステップS108;Y)、本人であると判断し、一定の閾値よりも低い場合には(ステップS108;N)、本人でないと判断する。照合手段17は、判断の結果を制御部14に送り、制御部14は、その結果を表示手段19に表示する。また、照合手段17は、例えば、認証の結果を利用する外部の図示しない装置に判断の結果を出力する。
【0030】
このように本実施の形態によれば、近赤外線を照射して近赤外線画像を撮像するようにしたので、近赤外線画像の撮像手段13に近い位置にあるものが映り、遠くにあるものは映らないという特性を利用して、背景を容易に除去することができ、手のひらの位置を容易に認識することができる。また、短波長光を照射して短波長光画像を撮像するようにしたので、掌紋を鮮明に撮像することができる。よって、近赤外線画像から認証に使用する手のひらの画像範囲の座標を抽出し、短波長光画像からその座標位置の画像を抽出することにより、容易に認証対象画像を得ることができる。従って、撮像画像から手のひらの認証対象画像を抽出するための複雑な画像処理が不要であり、高速に照合を行うことができる。更に、短波長光画像を利用するので、高い精度で認証することができる。
【0031】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、本発明の構成要素について具体的に説明したが、具体的な構成が異なっていてもよい。また、上記実施の形態で説明した全ての構成要素を備えていなくてもよく、また、他の構成要素を備えていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
掌紋認証に用いることができる。
【符号の説明】
【0033】
10…掌紋認証装置、10A…筐体、11…近赤外線照射手段、12…短波長光照射手段、13…撮像手段、14…制御手段、15…手のひら座標抽出手段、16…掌紋画像抽出手段、17…照合手段、17A…記憶部、17B…特徴点抽出部、17C…比較部、18…認証開始手段、19…表示手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7