(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】空気供給システム
(51)【国際特許分類】
B60T 17/18 20060101AFI20220714BHJP
B60T 13/36 20060101ALI20220714BHJP
B60T 13/68 20060101ALI20220714BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T13/36
B60T13/68
B60T7/12 C
B60T7/12 Z
(21)【出願番号】P 2021120452
(22)【出願日】2021-07-21
(62)【分割の表示】P 2018524042の分割
【原出願日】2017-06-16
【審査請求日】2021-08-20
(31)【優先権主張番号】P 2016125709
(32)【優先日】2016-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510063502
【氏名又は名称】ナブテスコオートモーティブ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515213711
【氏名又は名称】先進モビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】青木 啓二
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-149111(JP,A)
【文献】特開平10-258729(JP,A)
【文献】特開2012-256167(JP,A)
【文献】特開2015-150908(JP,A)
【文献】特表2006-525172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 15/00-17/22
B60T 13/00-13/74
B60T 7/12-8/1769
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のサービスブレーキを作動及び解除するブレーキ機構に対して空気の供給及び空気の排出を行う車両の空気供給システムであって、
前記ブレーキ機構に接続される第1空気供給回路と、
前記第1空気供給回路に備えられる
第1電磁弁を制御する第1制御装置と、
前記ブレーキ機構に接続される第2空気供給回路と、
前記第1制御装置と異なる制御装置であって、
前記第2空気供給回路に備えられる
第2電磁弁を制御する第2制御装置と、
前記第1空気供給回路及び前記第2空気供給回路の間に設けられ、それらの回路のうち高圧である方から前記ブレーキ機構へ向かう方向のみの空気の流れを許容するシャトル弁と、を備える
空気供給システム。
【請求項2】
前記第1電磁弁は、空気を供給するタンクに接続されるとともに、前記ブレーキ機構に対して空気の供給及び空気の排出を行うブレーキバルブに接続され、
前記第2電磁弁は、前記タンクに接続されるとともに、前記ブレーキバルブに接続される
請求項1に記載の空気供給システム。
【請求項3】
前記第1制御装置及び前記第2制御装置の両方に対して制御信号を出力する主制御装置を備え、
前記第1制御装置は、前記主制御装置から出力された制御信号に基づき前記第1空気供給回路を制御し、
前記第2制御装置は、前記主制御装置から出力された制御信号に基づき前記第2空気供給回路を制御する
請求項1
又は2に記載の空気供給システム。
【請求項4】
前記第1制御装置は、前記第2制御装置に対して優先して制御を行い、
前記第1制御装置及び前記第2制御装置の少なくとも一方に制御信号を出力する主制御装置を備え、
前記第1制御装置は、前記主制御装置から出力された制御信号に基づき前記第1空気供給回路を制御し、
前記第2制御装置は、前記第1制御装置が制御を実行しない場合に、前記主制御装置から出力された制御信号に基づき前記第2空気供給回路を制御する
請求項1
又は2に記載の空気供給システム。
【請求項5】
前記主制御装置は、車載センサから検出信号が入力される第1制御部及び第2制御部を備え、
前記第1制御部及び前記第2制御部は、互いの出力信号を比較して値が異なった場合に異常と判断し、予め設定された条件に基づきいずれかの制御部による制御に切り替える
請求項
3又は4に記載の空気供給システム。
【請求項6】
前記第1空気供給回路は、前記車両の駆動輪に設けられた前記ブレーキ機構に空気を供給及び排出
し、前記第1制御装置に制御される第1ABSバルブを有し、
前記第2空気供給回路は、前記車両の駆動輪に設けられた前記ブレーキ機構に空気を供給及び排出
し、前記第2制御装置に制御される第2ABSバルブを有し、
前記第1ABSバルブ及び前記第2ABSバルブは、前記シャトル弁に接続されている
請求項1~
5のいずれか1項に記載の空気供給システム。
【請求項7】
前記第1空気供給回路は、前記車両の一対の車輪に設けられたブレーキ機構の各々に空気を供給
し、前記第1制御装置に制御される第1アクスルモジュールを有し、
前記第2空気供給回路は、前記車両の一対の車輪に設けられたブレーキ機構の各々に空気を供給
し、前記第2制御装置に制御される第2アクスルモジュールを有し、
前記第1アクスルモジュール及び前記第2アクスルモジュールは、前記シャトル弁に接続されている
請求項1~
6のいずれか1項に記載の空気供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隊列走行を行う車両のサービスブレーキを作動及び解除する空気供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、トラック等の貨物車両による輸送の合理化を図るため、自動追従による隊列走行の開発が行われている。この隊列走行では、運転者により運転される先頭車両と、無人の後続車両とによって形成される隊列が走行する。先頭車両及び後続車両は、無線通信によって各種情報を互いに送受信し、一定の車間距離を維持しながら走行する。
【0003】
また、トラックなどの車両のブレーキシステムには、圧縮空気の供給及び排出によってブレーキを制御する空気圧ブレーキシステムが使用されている。隊列走行時には、先頭車両においては運転者のブレーキ操作に基づきブレーキを作動し、後続車両においては直前の車両である先頭車両又は後続車両に追従してブレーキを作動させる。
【0004】
後続車両は無人運転であるがゆえに、空気圧ブレーキシステムに異常が生じた場合にも自動的に停車する必要があり、空気圧ブレーキシステムには冗長性が要請されている。そのため、ブレーキシステムを多重化した隊列走行制御システムも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の隊列走行制御システムは、制御装置が別の制御装置の異常等を検知した際には作動させるブレーキシステムを切り替える制御を行っている。しかし、空気圧ブレーキシステムに生じる失陥は、電気系統の異常だけに限らない。例えば、ブレーキモジュールの一方において配管や弁装置などの構造の一部に異常が生じた場合に、そのブレーキモジュールから他方のブレーキモジュールに速やかに切り替えることについては考慮されていない。
【0007】
本発明の目的は、電気系統の異常以外の要因による異常状態にも対応することのできる空気供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する空気供給システムは、車両のサービスブレーキを作動及び解除するブレーキ機構に対して空気の供給及び空気の排出を行う車両の空気供給システムであって、前記ブレーキ機構に接続される第1空気供給回路と、前記第1空気供給回路に備えられる電磁弁を制御する第1制御装置と、前記ブレーキ機構に接続される第2空気供給回路と、前記第2空気供給回路に備えられる電磁弁を制御する第2制御装置と、前記第1空気供給回路及び第2空気供給回路の間に設けられ、それらの回路のうち高圧である方から前記ブレーキ機構へ向かう方向のみの空気の流れを許容するシャトル弁と、を備える。
【0009】
上記構成によれば、第1空気供給回路、及び第2空気供給回路に異常がない場合でも、シャトル弁により、第1空気供給回路及び第2空気供給回路のうち圧力が高い方の回路からブレーキ機構へ向かう方向へ空気が供給される。また、第1空気供給回路、及び第2空気供給回路のいずれかに異常が生じた場合にも、シャトル弁により、第1空気供給回路及び第2空気供給回路のうち圧力が高い方の回路からブレーキ機構へ向かう方向へ空気が供給される。このため、空気漏れなど、第1空気供給回路及び第2空気供給回路のいずれかに失陥が生じた場合にも、正常な空気供給回路からブレーキ機構へ空気を供給することができる。
【0010】
上記空気供給システムについて、前記第1制御装置及び前記第2制御装置の両方に対して制御信号を出力する主制御装置を備え、前記第1制御装置は、前記主制御装置から出力された制御信号に基づき前記第1空気供給回路を制御し、前記第2制御装置は、前記主制御装置から出力された制御信号に基づき前記第2空気供給回路を制御することが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、第1制御装置と第2制御装置とにより、主制御装置からの制御信号に基づき同時に空気供給回路が制御され、第1空気供給回路及び第2空気供給回路のうち圧力が高い方からブレーキチャンバーへ空気が供給されてサービスブレーキが作動する。すなわち、空気供給システムの全ての構成要素が2重化されるので、冗長性を高めることができる。また、第1制御装置及び第2制御装置を切り替えるための特別な処理を行う必要がないため、第1空気供給回路及び第2空気供給回路のいずれか一方に異常が生じた場合にも、空気供給回路を異常が発生していない他方にスムーズに切り替え、ブレーキ制御を継続することができる。
【0012】
上記空気供給システムについて、前記第1制御装置は、前記第2制御装置に対して優先して制御を行い、前記第1制御装置及び前記第2制御装置の少なくとも一方に制御信号を出力する主制御装置を備え、前記第1制御装置は、前記主制御装置から出力された制御信号に基づき前記第1空気供給回路を制御し、前記第2制御装置は、前記第1制御装置が制御を実行しない場合に、前記主制御装置から出力された制御信号に基づき前記第2空気供給回路を制御することが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、第1制御装置と第2制御装置との構成要素が2重化され、制御では、第1制御装置が優先的に制御を行う。そのため、第1制御装置及び第2制御装置の一部の構成要素が2重化されるものの、制御はいずれか一方が担うので、制御装置の演算負荷を軽減することができる。
【0014】
上記空気供給システムについて、前記主制御装置は、車載センサから検出信号が入力される第1制御部及び第2制御部を備え、前記第1制御部及び前記第2制御部は、互いの出力信号を比較して値が異なった場合に異常と判断し、予め設定された条件に基づきいずれかの制御部による制御に切り替えることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、第1制御部及び第2制御部の出力信号が異なる場合に異常を検出し、いずれかの制御部による制御に切り替える。すなわち主制御装置自体も2重化構成を有することができるので、空気供給システムの冗長化をさらに高めることができる。
【0016】
上記空気供給システムについて、前記第1空気供給回路は、前記車両の駆動輪に設けられた前記ブレーキ機構に空気を供給及び排出する第1ABSバルブを有し、前記第2空気供給回路は、前記車両の駆動輪に設けられた前記ブレーキ機構に空気を供給及び排出する第2ABSバルブを有し、前記第1ABSバルブ及び前記第2ABSバルブは、前記シャトル弁に接続されていることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、ABS(Antilock Brake System)バルブを2重化するため、アンチロックブレーキシステムを冗長化することができる。
上記空気供給システムについて、前記第1空気供給回路は、前記車両の一対の車輪に設けられたブレーキ機構の各々に空気を供給する第1アクスルモジュールを有し、前記第2空気供給回路は、前記車両の一対の車輪に設けられたブレーキ機構の各々に空気を供給する第2アクスルモジュールを有し、前記第1アクスルモジュール及び前記第2アクスルモジュールは、前記シャトル弁に接続されていることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、アクスルモジュールを2重化するため、車軸の両端に設けられた車輪に対するブレーキシステムを冗長化することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、異なる要因による異常状態にも対応することのできる空気供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】空気供給システムの一実施形態について、当該空気供給システムが搭載された車両による隊列走行を示す図。
【
図2】同実施形態の空気供給システムの概略構成を示す図。
【
図3】同実施形態の空気供給システムに備えられる主制御装置の概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、
図1及び
図2を参照して、空気供給システムの一実施形態を説明する。
まず
図1を参照して、隊列走行について説明する。隊列走行においては、荷台が一体に設けられたトラック(カーゴ車両)等の車両100によって隊列が形成される。この隊列走行では、運転者により運転される先頭車両100aと、無人の後続車両100bとによって形成される隊列が走行する。車両100は、隊列走行を制御するマスタECU(電子制御装置:Electronic Control Unit)5をそれぞれ備える。なお、マスタECU5は主制御装置に相当する。
【0022】
先頭車両100aのマスタECU5と、各後続車両100bのマスタECU5とは、無線通信によって各種情報を互いに送受信し、一定の車間距離を維持しながら走行する。先頭車両100aは、運転者のブレーキ操作に基づきブレーキを作動し、後続車両100bは、直前の車両100が減速したときに当該車両100に追従してブレーキを作動させる。なお、先頭車両100aは運転者により運転操作される車両であるため、先頭車両100aの空気圧ブレーキシステムは後続車両100bの空気圧ブレーキシステムと同じ構成である必要は無いが、同一の構成であってもよい。本実施形態では、先頭車両100aの空気圧ブレーキシステム及び後続車両100bの空気圧ブレーキシステムは同一の構成とする。また、
図1では、3台の車両100によって隊列を形成したが、車両100は複数であればよい。
【0023】
次に
図2を参照して、空気圧ブレーキシステムの構成について説明する。空気圧ブレーキシステムは、空気圧によってブレーキ力を可変とするサービスブレーキと、スプリングの付勢力によって一定のブレーキ力を付与するパーキングブレーキとを作動させる。
【0024】
空気圧ブレーキシステムは、空気供給源であるタンク51F,51Rと、第1空気供給回路10及び第2空気供給回路20と、ブレーキ機構としてのブレーキチャンバー50とを含む。なお、
図2では、第1空気供給回路10を構成する要素はドットなし(白色)で示し、第2空気供給回路20を構成する要素はドットあり(灰色)で示している。
【0025】
タンク51F,51Rは、配管を介してブレーキバルブ52に接続されている。車両100の前輪用のタンク51Fは、ブレーキバルブ52の前輪用制御室52Fに接続されている。車両100の駆動輪である後輪用のタンク51Rは、ブレーキバルブ52の後輪用制御室52Rに接続されている。
【0026】
車両100には、1対の前輪が設けられるとともに、2対の後輪が設けられている。ブレーキチャンバー50は車輪毎に設けられ、サービスブレーキ用の制御室をそれぞれ有する。この制御室に空気が供給されるとサービスブレーキが作動し、空気の供給量が大きくなるとブレーキ力が大きくなる。制御室から空気が排出されるとサービスブレーキが解除される。
【0027】
まず第1空気供給回路10の構成について説明する。第1空気供給回路10は、第1リレーバルブ12を備えている。第1リレーバルブ12は、圧縮された空気が貯留されたタンク51Fから前軸2輪のブレーキチャンバー50Fへの空気の供給及び排出を制御して、サービスブレーキを作動及び解除する。第1リレーバルブ12は電磁弁である。第1リレーバルブ12は、ブレーキバルブ52の前輪用制御室52Fに接続する入力ポート12Aと、タンク51Fに接続する入力ポート12Bとを有する。また、第1リレーバルブ12は、第1ABSバルブ13に接続する出力ポート12Cと、第1ABSバルブ14に接続する出力ポート12Dとを有する。また、空気圧ブレーキシステムは、第1リレーバルブ12を制御する第1制御装置としての第1ECU11を備えている。
【0028】
第1ABSバルブ13,14は、第1空気供給回路10に含まれ、前軸2輪のアンチロックブレーキシステム(ABS:Antilock Brake System)を構成する。第1ABSバルブ13は、車両の左側の前輪に設けられたブレーキチャンバー50Fに接続され、第1ABSバルブ14の出力ポート14Bは、車両の右側の前輪に設けられたブレーキチャンバー50Fに接続されている。これらの第1ABSバルブ13,14は、電磁弁であって、第1ECU11によって制御される。
【0029】
また、第1空気供給回路10は、第1アクスルモジュール15を備えている。第1アクスルモジュール15は、後2軸4輪のブレーキチャンバー50Rへの空気の供給及び排出を制御するモジュールである。第1アクスルモジュール15は、タンク51Rに接続された入力ポート15A,15Bを有している。また、第1アクスルモジュール15は、ブレーキバルブ52の後輪用制御室52Rに接続する入力ポート15Cを有し、入力ポート15Cに入力される空気圧信号により制御される。また、第1アクスルモジュール15は、車両の右側の後輪に設けられたブレーキチャンバー50Rに接続する出力ポート15Dと、車両の左側の後輪に設けられたブレーキチャンバー50Rに接続する出力ポート15Eとを有している。
【0030】
次に、第2空気供給回路20の構成について説明する。第2空気供給回路20も、第1空気供給回路10と同様な構成である。すなわち、第2空気供給回路20は、第2リレーバルブ22を備えている。第2リレーバルブ22は電磁弁である。第2リレーバルブ22は、ブレーキバルブ52の前輪用制御室52Fに接続する入力ポート22Aと、タンク51Fに接続する入力ポート22Bと、第2ABSバルブ23に接続する出力ポート22Cと、第2ABSバルブ24に接続する出力ポート22Dとを有する。空気圧ブレーキシステムは、第2リレーバルブ22を制御する第2制御装置としての第2ECU21を備えている。
【0031】
第2ABSバルブ23,24は、第2空気供給回路20に含まれ、前軸2輪のアンチロックブレーキシステム(ABS)を構成する。第2ABSバルブ23は、車両の左側の前輪に設けられたブレーキチャンバー50Fに接続され、第2ABSバルブ24は、車両の右側の前輪に設けられたブレーキチャンバー50Fに接続されている。これらの第2ABSバルブ23,24は、電磁弁であって、第2ECU21によって制御される。
【0032】
また、第2空気供給回路20は、第2アクスルモジュール25を備えている。第2アクスルモジュール25は、後輪4輪のブレーキチャンバー50Rへの空気の供給及び排出を制御するモジュールである。第2アクスルモジュール25は、タンク51Rに接続された入力ポート25A,25Bを有している。また、第2アクスルモジュール25は、ブレーキバルブ52の後輪用制御室52Rに接続する入力ポート25Cを有し、入力ポート25Cに入力される空気圧信号により制御される。また、第1アクスルモジュール15は、車両の右側の後輪に設けられたブレーキチャンバー50Rに接続する出力ポート25Dと、車両の左側の後輪に設けられたブレーキチャンバー50Rに接続する出力ポート25Eとを有している。
【0033】
次に、第1空気供給回路10及び第2空気供給回路20の接続関係について説明する。左側の前輪に対して設けられた第1空気供給回路10の第1ABSバルブ13と、左側の前輪に対して設けられた第2空気供給回路20の第2ABSバルブ23とは、配管を介してシャトル弁33の入力ポート33A,33Bに接続されている。シャトル弁33は、ダブルチェックバルブであって、第1ABSバルブ13と第2ABSバルブ23とのうち高い圧力を有する方からブレーキチャンバー50Fへ向かう方向のみ空気の流れを許容する。シャトル弁33の出力ポート33Cは、ブレーキチャンバー50のサービスブレーキの制御室に接続されている。
【0034】
同様に、右側の前輪に対して設けられた第1空気供給回路10の第1ABSバルブ14と、右側の前輪に対して設けられた第2空気供給回路20の第2ABSバルブ24とは、配管を介してシャトル弁34の入力ポート34A,34Bに接続されている。シャトル弁34は、ダブルチェックバルブであって、第1ABSバルブ14と第2ABSバルブ24とのうち高い圧力を有する方からブレーキチャンバー50Fへ向かう方向のみ空気の流れを許容する。シャトル弁33の出力ポート33Cは、ブレーキチャンバー50のサービスブレーキの制御室に接続されている。
【0035】
また、第1空気供給回路10の第1アクスルモジュール15の出力ポート15Dと、第2空気供給回路20の第2アクスルモジュール25の出力ポート25Dとは、配管を介してシャトル弁35の入力ポート35A,35Bに接続されている。シャトル弁35は、ダブルチェックバルブであって、第1アクスルモジュール15と第2アクスルモジュール25とのうち高い圧力を有する方からブレーキチャンバー50Rへ向かう方向のみ空気の流れを許容する。シャトル弁35の出力ポート35Cは、T字管等の継手37に接続されている。継手37は、シャトル弁35から供給された空気を、ブレーキチャンバー50Rのサービスブレーキの制御室の各々に(分けて)供給する。
【0036】
さらに、第1空気供給回路10の第1アクスルモジュール15の出力ポート15Eと、第2空気供給回路20の第2アクスルモジュール25の出力ポート25Eとには、配管を介してシャトル弁36の入力ポート36A,36Bに接続されている。シャトル弁36は、ダブルチェックバルブであって、第1アクスルモジュール15と第2アクスルモジュール25とのうち高い圧力を有する方からブレーキチャンバー50Rへ向かう方向のみ空気の流れを許容する。シャトル弁36の出力ポート36Cは、T字管等の継手38に接続されている。継手38は、シャトル弁36から供給された空気を、ブレーキチャンバー50Rのサービスブレーキの制御室の各々に分けて供給する。
【0037】
第1ECU11及び第2ECU21は、マスタECU5から入力される指令に基づき、各バルブを制御する。第1ECU11には、左側の前輪に設けられた車速センサ61、右側の前輪に設けられた車速センサ62、左側の後輪に設けられた車速センサ63、及び右側の後輪に設けられた車速センサ64から、各車輪の回転速度に応じた車速信号が入力される。後輪に設けられた車速センサ63,64の信号線は、第1アクスルモジュール15及び第2アクスルモジュール25を経由する。第1ECU11は、車速センサ61~64から入力される車速信号に基づき、加減速度を算出する。また、第1ECU11は、スリップ率等を算出して、算出したスリップ率等に基づきスリップの有無を判断する。スリップ率は、車体速度から車輪速度を減算した値を車体速度で除算することによって算出される。車輪速度は、車輪の回転速度に基づき算出され、車体速度は、各車輪の回転速度のうち最大の回転速度等に基づき算出される。そして、スリップの有無に基づいて、第1ABSバルブ13,14による空気の供給及び排出を制御する。なお、車速センサ61~64を区別しないで説明する場合には、単に「車速センサ60」とする。
【0038】
同様に、第2ECU21には、車速センサ61~64から、各車輪の回転速度に応じた車速信号が入力される。なお、
図2では、便宜上、第1ECU11に電気的に接続する車速センサ61~64と、第2ECU21に電気的に接続する車速センサ61~64とを記載しているが、これらは同じものであり、車速センサ61~64は2重化されていない。第2ECU21は、車速センサ61~64から入力される車速信号に基づき、加減速度を算出する。また、第2ECU21は、スリップ率等を算出して、算出したスリップ率等に基づきスリップの有無を判断する。そして、スリップの有無に基づいて、第2ABSバルブ23,24による空気の供給及び排出を制御する。
【0039】
次に
図3を参照して、マスタECU5の構成について説明する。マスタECU5は、第1CPU71及び第2CPU72を備えている。なお、第1CPU71は第1制御部として機能し、第2CPU72は第2制御部として機能する。第1CPU71及び第2CPU72には、CAN(Controller Area Network)やLAN(Local Area Network)等の車載ネットワークNWを介して車速センサ60からの信号が入力される。また、第1CPU71及び第2CPU72には、車両100の後側方の物体を検出する後側方ミリ波レーダや前方の車両100との距離を検出する車間距離レーダ等のレーダ73、前後の車両100と無線や光等によって通信を行う車車間通信装置74等からの信号が入力される。
【0040】
第1CPU71は、各種センサ等から入力された信号を変換する入力変換部、車両100が車線を維持するように制御する車線維持制御部、車両100の位置を算出する自律航法制御部を備えている。また、第1CPU71は、車両100の位置を、車線維持制御部及び自律航法制御部にて算出された位置に追従させるトラッキング制御部、車両100の速度を制御する速度制御部を備えている。さらに、第1CPU71は、CPU自体が失陥しているか否かを監視するCPU監視部、CPUが失陥したときに出力を遮断する出力遮断部を備えている。第2CPU72は、第1CPU71と同様の機能を有している。
【0041】
第1CPU71の入力変換部にて変換された信号は、車線維持制御部、自律航法制御部、トラッキング制御部、及び速度制御部にそれぞれ入力される。そして、それらから出力された制御信号は、統合された上で出力される。
【0042】
第1CPU71は、第1ECU11及び第2ECU21に対して制御信号を出力可能である。また、第2CPU72は、第1ECU11及び第2ECU21に対して制御信号を出力可能である。すなわち、第1ECU11及び第2ECU21には、第1CPU71から出力された制御信号及び第2CPU72から出力された制御信号のいずれか一方が入力されている。よって、第1CPU71及び第2CPU72の一方が失陥したとしても、失陥していない他方のCPUから出力された制御信号によって、第1ECU11及び第2ECU21の制御が継続して行われる。
【0043】
次に、第1空気供給回路10及び第2空気供給回路20の作用について、空気圧ブレーキシステムの動作とともに説明する。
マスタECU5は、第1ECU11及び第2ECU21に対して制御信号を出力する。第1ECU11は、マスタECU5から入力される制御信号に基づき、第1ABSバルブ13,14を制御する。このとき、第1ECU11が、スリップ率等に基づきスリップの有無を判断し、第1ABSバルブ13,14を制御して、ブレーキ量を調整する。第2ECU21は、マスタECU5から入力される制御信号に基づき、第2ABSバルブ23,24を制御する。このとき、第1ECU11がスリップ率等に基づきスリップの有無を判断し、第2ABSバルブ23,24を制御して、ブレーキ量を調整する。
【0044】
第1ABSバルブ13及び第2ABSバルブ23を接続するシャトル弁33は、第1ABSバルブ13と第2ABSバルブ23とのうち圧力が高い方からブレーキチャンバー50Fへ向かう方向への流れを許容する。したがって、第1ABSバルブ13に失陥がある状態や、第1ABSバルブ13とシャトル弁33との間の配管に漏れが生じている状態等、第1空気供給回路10に失陥が生じている場合においても、ブレーキチャンバー50Fには、第2空気供給回路20から空気が供給されることとなる。また、仮に第2空気供給回路20に失陥が生じている場合においても、ブレーキチャンバー50Fには、第1空気供給回路10から空気が供給されることとなる。
【0045】
第1アクスルモジュール15及び第2アクスルモジュール25を接続するシャトル弁35,36は、第1アクスルモジュール15と第2アクスルモジュール25とのうち圧力が高い方からブレーキチャンバー50Rへ向かう方向への流れを許容する。したがって、第1アクスルモジュール15に失陥がある状態や、第1アクスルモジュール15とシャトル弁35,36との間の配管に漏れが生じている状態等、第1空気供給回路10に失陥が生じている場合においても、ブレーキチャンバー50には、第2空気供給回路20から空気が供給されることとなる。また、仮に第2空気供給回路20に失陥が生じている場合においても、ブレーキチャンバー50Rには、第1空気供給回路10から空気が供給されることとなる。
【0046】
さらに、第1ECU11及び第2ECU21には、第1CPU71から出力された制御信号及び第2CPU72から出力された制御信号のいずれかが入力されている。よって、第1CPU71及び第2CPU72の一方が失陥したとしても、失陥していない他方のCPUから出力された制御信号によって、第1ECU11及び第2ECU21の制御が継続して行われる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)第1空気供給回路10、及び第2空気供給回路20に異常がない場合でも、シャトル弁33~36により、第1空気供給回路10及び第2空気供給回路20のうち圧力が高い方の回路からブレーキチャンバー50へ向かう方向へ空気が供給される。また、第1空気供給回路10、及び第2空気供給回路20のいずれかに異常が生じた場合にも、シャトル弁33~36により、第1空気供給回路10及び第2空気供給回路20のうち圧力が高い方の回路からブレーキチャンバー50へ向かう方向へ空気が供給される。このため、空気漏れなど、第1空気供給回路10及び第2空気供給回路20のいずれかに失陥が生じた場合にも、正常な空気供給回路からブレーキチャンバー50へ空気を供給することができる。
【0048】
(2)第1ECU11と第2ECU21とにより、マスタECU5からの制御信号に基づき同時に空気供給回路の制御が行われ、第1空気供給回路10及び第2空気供給回路20のうち圧力が高い方からブレーキチャンバー50へ空気が供給されてサービスブレーキが作動する。すなわち、空気供給システムの全ての構成要素が2重化されるので、冗長性を高めることができる。また、第1ECU11及び第2ECU21を切り替えるための特別な処理を行う必要がないため、第1空気供給回路10及び第2空気供給回路20のいずれかに異常が生じた場合にも、ブレーキ制御をスムーズに継続することができる。
【0049】
(3)第1空気供給回路10及び第2空気供給回路20では、ABSバルブが2重化される。そのため、アンチロックブレーキシステムを冗長化することができる。
(4)第1空気供給回路10及び第2空気供給回路20では、アクスルモジュールが2重化される。そのため、後輪のブレーキシステムを冗長化することができる。
【0050】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態は、以下のような形態をもって実施することもできる。
・上記実施形態では、第1ECU11及び第2ECU21、ABSバルブ13,14,23,24、アクスルモジュール15,25を2重化した。さらに、車速センサ61~64を2重化してもよい。また、第1ECU11及び第2ECU21や電磁弁に電力を供給する電源系統を2重化してもよい。このようにすると、さらに冗長性を高めることができる。
【0051】
・マスタECU5は、第1ECU11及び第2ECU21に対しタイミングを同期させて制御信号を出力してもよい。
・上記実施形態では、空気供給システムが適用される車両100を、1対の前輪と2対の後輪とを備え後輪を駆動輪とする車両とした。この車両以外に、例えば前軸が2軸、後軸が3軸の車両等、それ以外の構成の車両に空気供給システムを適用してもよい。車両は、カーゴ車両でもよく、トラクタ及びトレーラを有する連結車両であってもよい。
【0052】
・上記実施形態では、マスタECU5の第1CPU71の制御信号及び第2CPU72の制御信号のいずれかが、第1ECU11及び第2ECU21に入力されるようにした。異常の判断方法としては以下の方法がある。まず、必要な減速度に対する限界ブレーキ力が車速毎に記録された情報を図示しない記憶部に予め記憶しておく。次に、制御の際、第1CPU71及び第2CPU72は、必要な減速度から、必要ブレーキ力(N)を算出する。さらに、第1CPU71及び第2CPU72は、第1CPU71及び第2CPU72が算出した必要ブレーキ力と予め記録されている前記限界ブレーキ力とを比較し、必要ブレーキ力が限界ブレーキ力から大きく逸脱しているか否かを判断する。この際、第1CPU71は、第2CPU72が算出した必要ブレーキ力について判断し、第2CPU72は、第1CPU71が算出した必要ブレーキ力について判断してもよい。そして、必要ブレーキ力が限界ブレーキ力よりも所定量だけ大きい等、CPUが算出した必要ブレーキ力が予め記録されている限界ブレーキ力に対して大きく逸脱している場合には、故障、又は異常があると判断してもよい。この態様によれば、第1CPU71及び第2CPU72の各々が自身の異常を判断することができる。また、第1CPU71及び第2CPU72が互いの異常を判断するようにすることもできる。
【0053】
また、他の実施形態として1つのCPUが少なくとも2つのプロセッサコアを持つ場合、各コアの必要ブレーキ力等の計算結果を比較して、それらの計算結果同士がずれている場合はCPUが異常と判断することもできる。
【0054】
・上記実施形態では、マスタECU5が、スリップ率を演算して、第1ECU11及び第2ECU21へ出力してもよい。これによれば、第1ECU11及び第2ECU21の演算負荷を軽減することができる。
【0055】
・第1空気供給回路10に、第1ECU11や第1ECU11に接続するセンサ等が異常状態である場合に強制的にブレーキを作動させる強制ブレーキモジュールを接続してもよい。異常状態とは、第1ECU11やセンサに失陥が生じた場合等であって、正常なブレーキ制御が不可能となる状態のことをいう。また、第2空気供給回路20に、第2ECU21や第2ECU21に接続するセンサ等が異常状態である場合に強制的にブレーキを作動させる強制ブレーキモジュールを接続してもよい。このようにすると、空気圧ブレーキシステムの保安性を高めることができる。
【0056】
・上記実施形態では、第1アクスルモジュール15及び第2アクスルモジュール25を設けた。しかしながら、後輪のブレーキチャンバー50Rに対して空気を供給及び排出する制御するバルブが空気供給回路10,20に設けられていれば、第1アクスルモジュール15及び第2アクスルモジュール25の構成を省略してもよい。
【0057】
・上記実施形態では、第1ABSバルブ13,14を設けた。しかしながら、前輪のブレーキチャンバー50Fに対して空気を供給及び排出する制御するバルブが空気供給回路10,20に設けられていれば、上記構成の第1ABSバルブ13,14を省略し、別のABSバルブを設けてもよい。
【0058】
・上記実施形態では、第1ECU11及び第2ECU21を同等としたが、これ以外の態様であってもよい。例えば、第1ECU11の優先順位を、第2ECU21の優先順位よりも高くしてもよい。第1ECU11に異常がない場合には第1ECU11が第1ABSバルブ13,14、及び第1アクスルモジュール15を制御する。第1ECU11に異常が発生した場合には、マスタECU5が第1ECU11の異常を検出して、第2ECU21に減速指令を出力する。第2ECU21は、マスタECU5から入力される減速指令に基づき、第2ABSバルブ23,24、及び第2アクスルモジュール25を制御する。この構成によれば、第1空気供給回路10及び第2空気供給回路20の構成要素が2重化され、制御では、第1ECU11が優先的に制御を行う。そのため、第1ECU11及び第2ECU21の一部の構成要素が2重化されるものの、制御はいずれか一方が担うので、ECUの演算負荷を軽減することができる。
【0059】
・第1ECU11の制御を第2ECU21の制御よりも優先させる態様において、マスタECU5の第1CPU71及び第2CPU72は、互いの出力信号を比較して値が異なった場合に異常と判断し、予め設定された条件に基づきいずれかの制御部による制御に切り替えるようにしてもよい。例えば、一方のCPUの出力信号が予め設定された閾値を超えるような異常な値であるときに、他方のCPU、すなわち、その出力信号を出力したCPUとは異なるCPUによる制御に切り替えるようにしてもよい。この構成によれば、マスタECU5自体も2重化構成を有することができるので、空気供給システムの冗長化をさらに高めることができる。
【0060】
・上記実施形態では、第1ECU11及び第2ECU21の両方に対して制御信号を出力する主制御装置としてのマスタECU5を備えた。しかしながら、第1ECU11及び第2ECU21が車両100の隊列走行の制御を行うことができれば、マスタECU5の構成を省略してもよい。
【0061】
・上記実施形態では、第1空気供給回路10、及び第2空気供給回路等の失陥時に機械的にブレーキを作動させる緊急ブレーキ回路をさらに設けてもよい。
【符号の説明】
【0062】
5…マスタECU、10…第1空気供給回路、11…第1ECU、12…第1リレーバルブ、12A,12B…入力ポート、12C,12D…出力ポート、13,14…第1ABSバルブ、14B…出力ポート、15…第1アクスルモジュール、15A~15C…入力ポート、15D,15E…出力ポート、20…第2空気供給回路、21…第2ECU、22…第2リレーバルブ、22A,22B…入力ポート、22C,22D…出力ポート、23,24…第2ABSバルブ、25…第2アクスルモジュール、25A~25C…入力ポート、25D,25E…出力ポート、33~36…シャトル弁、33A,33B…入力ポート、33C…出力ポート、34A,34B…入力ポート、35A,35B…入力ポート、35C…出力ポート、36A,36B…入力ポート、36C…出力ポート、37,38…継手、50,50F,50R…ブレーキチャンバー、51F,51R…タンク、52…ブレーキバルブ、52F…前輪用制御室、52R…後輪用制御室、60~64…車速センサ、71…第1CPU、72…第2CPU、73…レーダ、100…車両、100a…先頭車両、100b…後続車両、NW…車載ネットワーク。