(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】CARをコードするヌクレオチド配列、このCARを発現するROBO1 CAR-NK細胞、その調製及び使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20220714BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220714BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220714BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220714BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220714BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220714BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220714BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220714BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20220714BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220714BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20220714BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20220714BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220714BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20220714BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N5/10 ZNA
C12N15/13
A61K35/17 Z
A61K9/10
A61P35/00
A61P1/16
A61P1/04
A61P1/18
A61P11/00
A61P13/08
A61P15/00
A61P25/00
C12N5/0783
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2020549850
(86)(22)【出願日】2018-11-28
(86)【国際出願番号】 CN2018117897
(87)【国際公開番号】W WO2019109838
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-06-15
(31)【優先権主張番号】201711276303.6
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520200230
【氏名又は名称】阿思科力(蘇州)生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ASCLEPIUS (SUZHOU) TECHNOLOGY COMPANY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】218 Xinghu Str.Suzhou,Jiangsu 215123 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】李 華順
(72)【発明者】
【氏名】韓 昆昆
(72)【発明者】
【氏名】王 保▲れい▼
(72)【発明者】
【氏名】任 宝永
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/181552(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/051718(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/208754(WO,A1)
【文献】Acta Pharmacologica Sinica,2017年09月,39,p. 167-176
【文献】第16回日本蛋白質科学会年会 プログラム・要旨集,2016年,p. 114の2P-132
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体をコードするヌクレオチ
ドであって、
前記キメラ抗原受容体は、抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、共刺激シグナル伝達領域を含み、前記抗原結合ドメインは、腫瘍特異抗原ROBO1に特異的に結合可能であり、膜貫通ドメイン及び共刺激シグナル伝達領域によりNK細胞を活性化し、
前記抗原結合ドメインは、ROBO1のFN3ドメインに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であり、前記抗原結合断片は、変異型scFvであり、
前記膜貫通ドメインは、CD8であり、前記共刺激シグナル伝達領域は、4-1BB及びCD3ζ細胞内ドメインを含み、
前記キメラ抗原受容体は、構造が
scFv-CD8-4-1BB-CD3ζである融合タンパク質であり、前記
scFv-CD8-4-1BB-CD3ζ融合タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号:3に示されることを特徴とする、キメラ抗原受容体をコードするヌクレオチ
ド。
【請求項2】
前記
scFv-CD8-4-1BB-CD3ζ融合タンパク質をコードするヌクレオチ
ドは、配列番号:4に示されることを特徴とする、請求項1に記載のキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチ
ド。
【請求項3】
キメラ抗原受容体を発現するROBO1 CAR-NK細胞であって、
前記キメラ抗原受容体は、抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、共刺激シグナル伝達領域を含み、
前記抗原結合ドメインは、腫瘍特異抗原ROBO1に特異的に結合可能であり、膜貫通ドメイン及び共刺激シグナル伝達領域によりNK細胞を活性化し、
前記抗原結合ドメインは、ROBO1のFN3ドメインに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であり、前記抗原結合断片は、変異型scFvであり、
前記膜貫通ドメインは、CD8であり、前記共刺激シグナル伝達領域は、4-1BB及びCD3ζ細胞内ドメインを含み、
前記キメラ抗原受容体は、構造が
scFv-CD8-4-1BB-CD3ζである融合タンパク質であり、前記
scFv-CD8-4-1BB-CD3ζ融合タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号:3に示されることを特徴とする、ROBO1 CAR-NK細胞。
【請求項4】
前記
scFv-CD8-4-1BB-CD3ζ融合タンパク質をコードするヌクレオチ
ドは、配列番号:4に示されることを特徴とする、請求項3に記載のROBO1 CAR-NK細胞。
【請求項5】
有効治療量の請求項3又は4に記載のROBO1 CAR-NK細胞を含むことを特徴とする、腫瘍を治療するための医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物は、薬学的に許容される添加剤をさらに含み、前記医薬組成物の剤形は水剤であることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記腫瘍は、肝がん、乳がん、結腸がん、膵臓がん、前立腺がん、神経膠腫又は肺がんであることを特徴とする、請求項5又は6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
がんを治療及び/又は予防する医薬品の調製における請求項3又は4に記載のROBO1 CAR-NK細胞の使用。
【請求項9】
前記がんは、肝がん、乳がん、結腸がん、膵臓がん、前立腺がん、神経膠腫又は肺がんであることを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学の分野に属し、具体的には、CARをコードするヌクレオチド配列、このCARを発現するROBO1 CAR-NK細胞、その調製及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
乳腺は、皮膚、線維組織、乳腺の腺体、脂肪で構成さていれる。乳がんは、乳腺の腺体の上皮組織に発生する悪性腫瘍であり、乳がんの患者は、99%が女性であり、男性はわずか1%である。
【0003】
乳腺は人の生命と活動を維持するための重要な器官ではなく、粘膜内の乳がんは致命的ではない。しかし、乳がん細胞は正常な細胞特性を失うため、細胞間の接続が緩んでおり、容易に脱落する。がん細胞が脱落すると、遊離のがん細胞は血液やリンパ液とともに全身に広がって転移し、生命を脅かす可能性がある。現在、乳がんは女性の心身健康を脅かす一般的な腫瘍になっている。
【0004】
世界的な乳がんの発生率は、1970年代後半から上昇している。米国では女性の8人に1人が乳がんを発症する。中国は乳がんの発生率が高い国ではないが、近年の中国の乳がん発生率の増加率は、高リスク国よりも1-2%高くなっている。
【0005】
キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor、CAR)修飾免疫細胞は、遺伝子工学的手法により免疫細胞を修飾し、外因性抗腫瘍遺伝子を発現させる。CAR遺伝子は主に細胞外認識ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインを含む。前者は腫瘍表面の特定の分子を認識し、後者は腫瘍表面分子の認識後に免疫細胞応答を開始することで細胞毒性の役割を果たす。CAR遺伝子は、主にT細胞をベクターとする。しかし、CAR-T細胞を使用して腫瘍を治療するとき、IL-6などのサイトカインが急激に上昇し、サイトカインストームが発生し、標的/標的外毒性や神経毒性などの問題があり、重症の場合、患者の生命を危険にさらす恐れがある。また、T細胞は体外で分離する必要がある(この過程には時間と費用が掛かる)。さらに、T細胞は特定の患者に対して改変されるが、一部の患者はT細胞を採取できないか、T細胞の準備過程を待つ十分な時間がない可能性がある。CAR-Tは現在、汎用のCAR-Tに発展しているが、実際にはこの発展に伴い、臨床上のリスクと操作上の困難が増加している。さらに、CAR-Tのコストも高く、これらの制限により、一部の患者はCAR-T免疫療法を受けることができない可能性がある。
【0006】
ナチュラルキラー(natural killer、NK)細胞は、非特異的免疫系の重要な部分であり、自然免疫系の応答の主要なメディエーター細胞である。NK細胞は広域スペクトル免疫細胞であり、異常細胞(例えば、がんやウイルス感染細胞)を迅速に発見して破壊する特異的機能を有し、事前に感作したりHLAマッチングしたりすることなく、異常細胞を溶解する強力な活性を示す。免疫細胞(NK細胞を含む)を用いたがんの治療は、近年の新しい傾向であり、この新しい治療法は、従来の手術、化学療法、放射線療法では効果のない腫瘍の治療に新たな希望をもたらすと期待されている。
【発明の概要】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明によれば、CARをコードするヌクレオチド配列、このCARを発現するROBO1 CAR-NK細胞、その調製及び使用が提供される。この細胞は、腫瘍を特異的に識別して殺傷することができ、より効果的な腫瘍殺傷活性を有し、毒性と副作用が少なく、安全性がより高い。
【0008】
本発明の一態様によれば、抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、共刺激シグナル伝達領域を含み、前記抗原結合ドメインは、腫瘍特異抗原ROBO1に特異的に結合可能であり、膜貫通ドメイン及び共刺激シグナル伝達領域によりNK細胞を活性化するキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列が提供される。
【0009】
例示的には、前記抗原結合ドメインは、腫瘍特異抗原ROBO1のIg1、Ig2、Ig3、Ig4、Ig5、FN1、FN2及びFN3ドメインのうちの1種又は複数種に特異的に結合可能である。
【0010】
例示的には、前記抗原結合ドメインは、腫瘍特異抗原ROBO1のFN3ドメインに特異的に結合可能である。
【0011】
例示的には、前記抗原結合ドメインは、ROBO1のFN3ドメインに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であり、前記抗原結合断片は、Fab又はscFvである。
【0012】
例示的には、前記膜貫通ドメインは、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD134、CD137、ICOS及びCD154からなる群より選択される。
【0013】
好ましくは、前記膜貫通ドメインは、CD8膜貫通ドメインである。
【0014】
例示的には、前記共刺激シグナル伝達領域は、共刺激分子の細胞内ドメインを含み、前記共刺激分子は、CD3ζ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD66d、CD2、CD4、CD5、CD28、CD134、CD137、ICOS、CD154、4-1BB及びOX40からなる群より選択される。
【0015】
好ましくは、前記共刺激シグナル伝達領域は、4-1BB及びCD3ζ細胞内ドメインを含む。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記キメラ抗原受容体は、構造がscFV-CD8-4-1BB-CD3ζである融合タンパク質であり、前記SCFV-CD8-4-1BB-CD3ζ融合タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号:1又は配列番号:3に示される。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記SCFV-CD8-4-1BB-CD3ζ融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、配列番号:2又は配列番号:4に示される。
【0018】
本発明の別の態様によれば、前記キメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含む構築物が提供される。
【0019】
本発明の別の態様によれば、前記ヌクレオチド配列によってコードされるキメラ抗原受容体が提供される。
【0020】
本発明の別の態様によれば、キメラ抗原受容体を発現できるROBO1 CAR-NK細胞が提供される。前記キメラ抗原受容体は、抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、共刺激シグナル伝達領域を含み、前記抗原結合ドメインは、腫瘍特異抗原ROBO1に特異的に結合可能であり、膜貫通ドメイン及び共刺激シグナル伝達領域によりNK細胞を活性化する。
【0021】
例示的には、前記抗原結合ドメインは、腫瘍特異抗原ROBO1のIg1、Ig2、Ig3、Ig4、Ig5、FN1、FN2及びFN3ドメインのうちの1種又は複数種に特異的に結合可能である。
【0022】
例示的には、前記抗原結合ドメインは、腫瘍特異抗原ROBO1のFN3ドメインに特異的に結合可能である。
【0023】
例示的には、前記抗原結合ドメインは、ROBO1のFN3ドメインに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であり、前記抗原結合断片は、Fab又はscFvである。
【0024】
例示的には、前記膜貫通ドメインは、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD134、CD137、ICOS及びCD154からなる群より選択され、好ましくは、前記膜貫通ドメインは、CD8膜貫通ドメインであり、及び/又は
前記共刺激シグナル伝達領域は、共刺激分子の細胞内ドメインを含み、前記共刺激分子は、CD3ζ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD66d、CD2、CD4、CD5、CD28、CD134、CD137、ICOS、CD154、4-1BB及びOX40からなる群より選択され、好ましくは、前記共刺激シグナル伝達領域は、4-1BB及びCD3ζ細胞内ドメインを含む。
【0025】
例示的には、Anti ROBO1 CAR-NK細胞は、SCFV-CD8-4-1BB-CD3ζ融合タンパク質を発現することができ、この融合タンパク質は、ROBO1-FN3ドメインを標的としてROBO1分子を特異的に識別することができる。
【0026】
本発明の一実施形態において、前記SCFV-CD8-4-1BB-CD3ζ融合タンパク質のアミノ配列は、配列番号:1若しくは配列番号:3に示され、又は配列番号:1、3に示される配列の相同性配列等である。
【0027】
例示的には、前記SCFV-CD8-4-1BB-CD3ζ融合タンパク質のヌクレオチド配列は、配列番号:2若しくは配列番号:4に示され、又は配列番号:2、4に示される配列の相同性配列等である。
【0028】
本発明の一実施形態において、前記ROBO1 CAR-NK細胞は、肺がん細胞系、膵臓がん細胞系、肝がん細胞系、神経膠腫細胞系、乳腺細胞系、結腸がん細胞系若しくは前立腺がん細胞系を効果的に殺傷又は死滅できる。
【0029】
例示的には、前記細胞肺がん細胞系はH1299又はA549である。
【0030】
例示的には、前記膵臓がん細胞系はASPC-1又はBXPC3である。
【0031】
例示的には、前記肝がん細胞系はHepG2である。
【0032】
例示的には、前記神経膠腫細胞系はU87-MG又はSH-SY5Yである。
【0033】
例示的には、前記乳がん細胞系はMCF-7、HCC1143、HCC1187、HCC1599、HCC1806、HCC38、HCC1937又はMDA-MB-453である。
【0034】
本発明の別の態様によれば、前記ROBO1 CAR-NK細胞の調製方法が提供される。前記調製方法は、以下のステップ(1)から(3)を含む。
ステップ(1)において、前記ヌクレオチド配列を合成して増幅し、前記ヌクレオチド配列をレンチウイルス発現ベクターにクローニングする。好ましくは、前記ヌクレオチド配列は、SCFV-CD8-4-1BB-CD3ζ融合タンパク質遺伝子である。
ステップ(2)において、レンチウイルスパッケージングプラスミド及びステップ(1)で得られたレンチウイルス発現ベクタープラスミドを293T細胞に感染させ、レンチウイルスをパッケージングして調製する。
ステップ(3)において、ステップ(2)で得られたレンチウイルスをNK-92細胞に感染させ、CAR-NK細胞を得る。
【0035】
本発明によれば、前記ROBO1 CAR-NK細胞を含む医薬組成物がさらに提供される。
【0036】
例示的には、前記医薬組成物におけるROBO1 CAR-NK細胞と腫瘍細胞とのエフェクター細胞対標的細胞比は(0.5~1):2であり、好ましくは、前記エフェクター細胞対標的細胞比は、(0.5~1):1である。
【0037】
例示的には、前記医薬組成物は、必要に応じて薬学的に許容される添加剤をさらに含む。
【0038】
例示的には、前記医薬組成物の剤形は水剤である。
【0039】
本発明による薬学的に許容される添加剤は、好ましくは、薬学的に許容される注射剤用添加剤、例えば、等張性無菌塩溶液(リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなど、又はこれらの塩の混合物)、又は無菌水若しくは生理食塩水を加えることで注射用溶質等が形成される乾燥した、例えば凍結乾燥した組成物である。
【0040】
本発明によれば、前記ROBO1 CAR-NK細胞又は医薬組成物を用いてがんを治療及び/又は予防する方法であって、有効量のROBO1 CAR-NK細胞を含む医薬品を治療を必要とする患者に投与することを含む方法がさらに提供される。
【0041】
例示的には、前記がんは、ROBO1分子を高発現する腫瘍及び関連疾患である。
【0042】
例示的には、前記がんは、肝がん、乳がん、結腸がん、膵臓がん、前立腺がん、神経膠腫又は肺がんなどである。
【0043】
本発明の一実施形態において、前記がんは乳がんである。
【0044】
例示的には、前記ROBO1 CAR-NK細胞の投与量は(0.5~5)×109細胞/回である。
【0045】
例示的には、前記ROBO1 CAR-NK細胞を含む医薬品の投与方法は、腫瘍内注射、静脈注射、胸腔内注射又は局所介入である。
【0046】
本発明の一実施形態において、前記ROBO1 CAR-NK細胞を含む医薬品の投与方法は静脈注射である。
【0047】
本発明によれば、がんを治療及び/又は予防する医薬品の調製における前記ROBO1 CAR-NK細胞又は医薬組成物の使用を提供する。
【0048】
例示的には、前記がんは、Robo1を高発現する腫瘍及び関連疾患である。
【0049】
例示的には、前記がんは、肝がん、乳がん、結腸がん、膵臓がん、前立腺がん、神経膠腫又は肺がんであり、好ましくは、前記がんは乳がんである。
【0050】
本発明で提供されるROBO1 CAR-NK細胞は、以下の利点の少なくとも1つを有する。ROBO1分子を標的抗原とするROBO1抗体をCAR-NK細胞の構築に用い、ROBO1 CAR-NK細胞により腫瘍細胞を特異的に殺傷し、腫瘍類疾患の治療薬としてROBO1分子を高発現する腫瘍の治療に適用でき、かつサイトカインストームなどの不良な現象はなく、従来の手術、化学療法、放射線療法では効果のない腫瘍の治療に新しい治療法を提供する。また、NK92細胞にCARを導入することにより、標的性が大幅に向上するとともに抗腫瘍標的ROBO1が増加し、これによって標的性が向上し、抗腫瘍性能も高くなる。さらに、このROBO1 CAR-NK細胞は、ROBO1 CAR-T細胞と比較して、殺傷効果が明らかに高いので、腫瘍をより効果的に殺傷することができる。つまり、本発明で構築されるROBO1 CAR-NK細胞は、CARの導入によりNK92細胞を改変することにより、標的性が向上するとともに、NK細胞を用いることで安全性が大幅に向上し、毒性と副作用が小さく、コストが低く、NK細胞、CAR及び抗ROBO1標的の相乗効果により、殺傷効果が高く、ROBO1 CAR-T細胞よりもはるかに優れている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】本発明の実施例1で提供されるレンチウイルスプラスミドベクターPRRLSIN-SCFV(anti ROBO1-FN3)の構造模式図である。
【
図2】
図2a-2bは、本発明の実施例3で提供されるROBO1 CAR-NKをフローサイトメトリーにより測定したCAR細胞の陽性率の結果を示す図である。
【
図3】
図3a-3bは、本発明の実施例3で提供されるROBO1 CAR-NKをフローサイトメトリーにより測定したCD56分子陽性率の結果を示す図である。
【
図4】
図4a-4bは、本発明の実施例4で提供されるROBO1 CAR-Tをフローサイトメトリーにより測定した陽性率の結果を示す図である。
【
図5a】本発明の実施例5で提供されるROBO1-CAR NK92細胞、ROBO1M-CAR NK92細胞のH1299細胞殺傷実験の結果を示す図である。
【
図5b】本発明の実施例5で提供されるROBO1-CAR NK92細胞、ROBO1M-CAR NK92細胞のA549細胞殺傷実験の結果を示す図である。
【
図5c】本発明の実施例5で提供されるROBO1-CAR NK92細胞、ROBO1M-CAR NK92細胞のASPC-1細胞殺傷実験の結果を示す図である。
【
図5d】本発明の実施例5で提供されるROBO1-CAR NK92細胞、ROBO1M-CAR NK92細胞のHepG2細胞殺傷実験の結果を示す図である。
【
図5e】本発明の実施例6で提供されるROBO1M-CAR NK92細胞のSH-SY5Y細胞殺傷実験の結果を示す図である。
【
図5f】本発明の実施例6で提供されるROBO1M-CAR NK92細胞のU87-MG細胞殺傷実験の結果を示す図である。
【
図6a】本発明の実施例7で提供されるROBO1M CAR-NK細胞のMCF7細胞殺傷実験の結果を示す図である。
【
図6b】本発明の実施例7で提供されるROBO1M CAR-NK細胞のHCC1143細胞殺傷実験の結果を示す図である。
【
図6c】本発明の実施例7で提供されるROBO1M CAR-NK細胞のHCC1187細胞殺傷実験の結果を示す図である。
【
図6d】本発明の実施例7で提供されるROBO1M CAR-NK細胞のHCC1599細胞殺傷実験の結果を示す図である。
【
図6e】本発明の実施例7で提供されるROBO1M CAR-NK細胞のHCC1806細胞殺傷実験の結果を示す図である。
【
図6f】本発明の実施例7で提供されるROBO1M CAR-NK細胞のHCC38細胞殺傷実験の結果を示す図である。
【
図7】本発明の実施例8で提供されるRobo1M CAR-NK細胞の乳がん治療実験の前後比較の結果を示す図である。
【
図8a】本発明の実施例8で提供される病巣にRobo1M CAR-NK細胞を直接注射した後のサイトカインの測定結果を示す図である。
【
図8b】本発明の実施例8で提供されるRobo1M CAR-NK細胞を静脈注入した後のサイトカインの測定結果を示す図である。
【
図9】本発明の実施例8で提供されるRobo1M CAR-NK細胞による治療過程の模式図である。
【
図10】本発明の実施例8で提供される乳がん患者の組織化学検出の結果を示す図である。
【
図11】本発明の比較例1におけるROBO1M CAR-NK細胞とROBO1M CAR-TのHCC1937細胞殺傷実験の比較結果を示す図である。
【
図12】本発明の比較例1におけるROBO1M CAR-NK細胞とROBO1M CAR-TのMCF7細胞殺傷実験の比較結果を示す図である。
【
図13】本発明の比較例1におけるROBO1M CAR-NK細胞とROBO1M CAR-TのMDA-MB-453細胞殺傷実験の比較結果を示す図である。
【
図14】本発明の比較例1におけるROBO1M CAR-NK細胞とROBO1M CAR-TのBXPC3細胞殺傷実験の比較結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
別段の定義がない限り、本発明で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明で説明される技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0053】
具体的には、本発明によるSCFV-CD8-4-1BB-CD3ζ融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、この融合タンパク質をコードすることができる任意のDNA配列である。好ましくは、この配列は、配列番号:2に示される配列若しくはその相補配列、又は配列番号:4に示される配列若しくはその相補配列である。また、本発明によるSCFV-CD8-4-1BB-CD3ζ融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、ストリンジェントな条件下で配列番号:2又は配列番号:4に示されるヌクレオチド配列とハイブリダイズし、この融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド又はその相補配列である。
本明細書に記載の「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件、及び高ストリンジェントな条件の1つであってもよく、好ましくは高ストリンジェントな条件である。例示的には、「低ストリンジェントな条件」は、30℃、5×SSC、5×Denhardt液、0.5%SDS、52%ホルムアミドの条件であり、「中ストリンジェントな条件」は、40℃、5×SSC、5×Denhardt液、0.5%SDS、52%ホルムアミドの条件であり、「高ストリンジェントな条件」は、50℃、5×SSC、5×Denhardt液、0.5%SDS、52%ホルムアミドの条件である。当業者は、温度が高いほど、相同性がより高いポリヌクレオチドが得られることを理解できる。さらに、当業者は、対応するストリンジェンシーを達成するためにハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を与える温度、プローブ濃度、プローブ長さ、イオン強度、時間、及び塩濃度などの複数の要因によって形成される包括的な結果を選択できる。
【0054】
さらに、ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドは、FASTA、BLASTなどの相同性検索ソフトウェア用システムで設定されたデフォルトパラメータにより計算する場合、配列番号:6のポリヌクレオチドと約60%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1以上、99.2以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上又は99.9%以上の同一性を有するポリヌクレオチドであってもよい。
【0055】
ヌクレオチド配列の相同性は、Karlin及びAltschulのアルゴリズムBLAST (Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268,1990;Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873,1993)により決定することができる。BLASTアルゴリズムに基づくプログラムBLASTN、BLASTXは既に開発されている(Altschul SF,et al:J Mol Biol 215:403,1990)。BLASTNにより塩基配列を分析するとき、例えば、パラメータはscore=100、wordlength=12である。また、BLASTXによりアミノ酸配列を分析するとき、例えば、パラメータはscore=50、wordlength=3である。BLAST及びGapped BLASTプログラムを用いるとき、各プログラムを採用するシステムは、デフォルトのパラメータ値を設定できる。
【0056】
本発明の医薬品の有効量は、がんの治療、がん症状の緩和又はがん細胞の抑制のための任意の量であり、約0.1-10.0×109細胞に相当する量であり得る。当業者は、本明細書に開示される内容に基づいて有効量を決定することができる。
【0057】
本発明によれば、本発明の医薬品(医薬、薬剤)又は医薬組成物は、任意の有効量で被験者に投与することができる。好ましくは、本発明の医薬品(医薬、薬剤)又は医薬組成物は、複数回投与、例えば、約2~約20回投与、より好ましくは約4~10回投与で投与することができる。特に好ましい実施形態では、投与過程において、本発明の医薬品(医薬、薬剤)又は医薬組成物は、注射、注入又は経口投与などにより約3週間に1回の頻度で被験者に投与される。特に好ましい実施形態では、投与は、腫瘍部位への注射である。
【0058】
本発明の医薬品(医薬、薬剤)又は医薬組成物は、任意の適切な経路による投与のための任意の適切な方法で製剤化できることを理解されたい。
【0059】
本発明の医薬品(医薬、薬剤)又は医薬組成物は、通常の用量単位で被験者に投与する。例えば、用量単位は、日1回、週1回、月1回又はそれ以上などであり得る。用量単位は、2回/週、即ち週に2回、例えば3日に1回投与することができる。
【0060】
本発明の医薬品に含まれる医薬品に関する説明書は、適応症(乳がんなど)、投与量(上記で例示したものなど)、副作用などの内容を含み得る。
【0061】
本発明において、「抗体」という用語は、抗原に特異的に結合する免疫グロブリン分子を指す。抗体は、天然源又は組換え源に由来する完全な免疫グロブリン、又は完全な免疫グロブリンの免疫反応性部分であり得る。抗体は通常、免疫グロブリン分子の四量体である。本発明の抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、Fab、及びF(ab)2、ならびに一本鎖抗体及びヒト化抗体などを含む、様々な形態で存在し得る(Harlow et al.,1999, In:Using Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY;Harlow et al.,1989, In:Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor, New York;Houston et al.,1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;Bird et al.,1988, Science 242:423-426)。
【0062】
「抗体断片」という用語は、無傷抗体の一部であって、無傷抗体の抗原性可変領域を指す。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片、抗体断片から形成される線状抗体、scFv抗体、並びに多重特異性抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
特に明記しない限り、「コーディングヌクレオチド」は、互いの縮重バージョンであり、同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。タンパク質をコードするヌクレオチド配列はイントロンを含み得る。
【0064】
「レンチウイルス」という用語は、非周期性及び有糸分裂細胞に効果的に感染することができるレトロウイルス科の属を指す。レンチウイルスは、かなりの量の遺伝情報を宿主細胞のDNAに送達できるため、遺伝子送達ベクターの最も効果的な方法の1つである。
【0065】
「プロモーター」という用語は、ポリヌクレオチド配列の特定の転写を開始するために必要であり、細胞の合成機構によって認識又は誘導されるDNA配列として定義される。
【0066】
「特異的結合」という用語は、特定の抗原を識別するが、サンプル中の他の分子を実質的に識別又は結合しないことを指す。
【0067】
「ベクター」という用語は、単離された核酸を含む物質の組成物であり、単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用することができる。多くのベクターは、当技術分野で知られており、線形ポリヌクレオチド、イオン性又は両親媒性化合物に関連するポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスを含むがこれらに限定されない。したがって、「ベクター」という用語には、自律的に複製するプラスミド又はウイルスが含まれる。この用語はまた、例えば、ポリリジン化合物、リポソームなどの、細胞への核酸の移入を容易にする非プラスミド及び非ウイルス化合物を含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例には、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
「がん」という用語は、異常な細胞の急速で制御されない成長を特徴とする疾患として定義される。がん細胞は局所的に、又は血流とリンパ系を介して体の他の部分に広がる可能性がある。様々ながんの例には、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、皮膚がん、膵臓がん、結腸直腸がん、腎臓がん、肝がん、脳がん、リンパ腫、白血病、肺がんなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書において、「包含」は「含む」、「含有」又は「ことを特徴とする」と同義であり、包括的又は開放的であり、列挙されていない要素又は方法ステップを除外しない。本明細書において、「包含」という用語は、特に本発明の方法、使用、又は製品を説明するとき、前記成分、部材又はステップから実質的に構成され、及び前記成分、部材又はステップから構成される製品、方法及び使用を含むと理解され得る。本明細書に例示的に記載された本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の1つ又は複数の要素、1つ又は複数の限定がない場合において適切に実施され得る。
【0070】
本明細書で使用される用語及び表現は、限定的な用語ではなく説明的な用語として使用されており、このような用語及び表現の使用は、示され又は説明される特徴又はその一部の均等物を排除することを意図していないが、保護を請求される本発明の範囲内で様々な改変が可能であることを認識すべきである。したがって、本発明は好ましい実施形態及び任意の特徴によって具体的に開示されているが、当業者は本明細書に開示された概念の改変及び変形を採用することができ、そのような改変及び変形は添付する特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内であると見なされることを理解されたい。
【0071】
本明細書に記載の英語の名称は、大文字と小文字が区別されない。例えば、ROBO1、Robo1、robo1などは同じ意味であり、Robo1 CAR-NK、Robo1-CAR NKは同じ意味であり、Robo1 CAR-NKとAnti Robo1-CAR NKは同じ意味であり、いずれも抗ROBO1分子のCAR-NK細胞を表す。Robo1M CAR-NKとAnti Robo1M-CAR NKは同じ意味であり、いずれも変異型の抗ROBO1分子のCAR-NK細胞を表す。NK-92、NK92はいずれもNK92細胞を表す。
【0072】
本発明による「NK」は、正常なヒトNK細胞、NKT細胞又はNK細胞系であり、NK-92細胞、YT細胞、NKL細胞、HANK-1細胞、NK-YS細胞、KHYG-1細胞、SNK-6細胞及びIMC-1細胞などを含む。本発明の具体的な実施例では、NK-92細胞を例として説明する。
【0073】
本発明をより明確に説明するために、以下の実施例により詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明の例示的な説明にすぎず、本発明を限定するものとして解釈されない。
【0074】
実施例1:レンチウイルスベクターの調製
SCFV(Anti ROBO1-FN3)-CD8-4-1BB-CD3ζ融合遺伝子配列(そのアミノ酸配列は配列番号:1に示され、遺伝子配列は配列番号:2に示される)及び変異型SCFV(Anti ROBO1-FN3)-CD8-4-1BB-CD3ζ融合遺伝子配列(そのアミノ酸配列は配列番号:3に示され、遺伝子配列は配列番号:4に示される)をそれぞれ合成した。SCFV(Anti ROBO1-FN3)-CD8-4-1BB-CD3ζ融合遺伝子を例としてROBO1 CAR-NK細胞の調製過程を説明する。変異型SCFV(Anti ROBO1-FN3)-CD8-4-1BB-CD3ζ融合遺伝子を用いてROBO1M CAR-NK細胞を調製する過程は同じである。
【0075】
酵素切断によりSCFV(Anti ROBO1-FN3)-CD8-4-1BB-CD3ζ融合遺伝子配列を遺伝子の上流がEP-1αプロモーターであるように変換してPRRSLINベクターに接続した。ベクターでStbl3大腸菌株を変換し、アンピシリンでスクリーニングし、陽性クローンを取得し、プラスミドを抽出し、酵素切断によりクローンを同定したところ、PRRLSIN-SCFV(anti ROBO1-FN3)レンチウイルストランスフェクションベクターを得た(
図1を参照)。
【0076】
実施例2:レンチウイルスの調製
(1)トランスフェクションの時に293T細胞が約80%コンフルエントになりかつ培養皿に均一に分布することを確保するために、トランスフェクションの24時間前に約8×106/皿で293T細胞を15cm培養皿に接種した。
(2)溶液A及び溶液Bの準備
溶液A:6.25ml 2×HEPES buffer緩衝液(5つの大きな皿を一緒にパッケージングする量であり、効果が最も高い)。
【0077】
溶液B(以下のプラスミドを加えた混合物):112.5μg PRRLSIN-SCFV(anti ROBO1-FN3)(target plasmid)、39.5μg pMD2.G(VSV-G envelop)、73μg pCMVR8.74(gag,pol,tat,rev)、625μl 2Mカルシウムイオン溶液。溶液Aの総体積は6.25mlであった。
【0078】
溶液Bを十分に均一に混合した後、溶液Aを穏やかにボルテックスしながら溶液Bを一滴ずつ加え、AとBの混合溶液を得た後、5-15分間静置した。前記AとBの混合溶液を穏やかにボルテックスし、293T細胞含有培養皿に一滴ずつ加え、培養皿を静かに前後に振ってDNAとカルシウムイオンの混合物を均一に分布させ、さらにこの培養皿(培養皿を回転してはいけない)をインキュベーター内で16-18時間培養した。新鮮な培地を交換した後、引き続き培養し、48時間及び72時間後にそれぞれウイルスを含む上清を収集し、500g、25℃で10分間遠心分離した。PES膜(0.45μm)で濾過した。70%エタノールでベックマンコールターのUltra-clear SW28 centrifuge tubesを消毒した後、紫外線ランプ下で30分間消毒した。濾過したレンチウイルスを含む上清を遠沈管に移した。遠沈管の底部に20%スクロース(8ml上清に1mlスクロースを加える)を一層慎重に敷いた。PBSで遠沈管を平衡化し、25000rpm(82,700g)、4℃で2時間遠心分離した。遠沈管を慎重に取り出し、上清を捨て、遠沈管を転倒させて残留液体を除去した。100μl PBSを加え、遠沈管を密閉し、4℃で2時間静置し、20分間ごとに軽くボルテックスし、500gで1分間(25℃)遠心分離した後、ウイルス上清を収集した。さらに、収集したウイルス上清を氷上で冷却した後、-80℃で保存した。
【0079】
実施例3:ROBO1 CAR-NK細胞の調製
NK-92細胞の密度を2-3×105/mlに調整し、体積比(V/V)によるウイルス:細胞培地=1:5で、実施例2で調製したウイルスを加え、さらにポリブレン8μg/mlを加えた。4時間後に、等量の新鮮な完全培地を追加して細胞密度を1×105/mlに調整した後、引き続き培養した。翌日、全ての細胞を遠心分離し、新鮮な培地を加え、引き続き培養した。細胞密度が2-3×105/mlに維持されるように1-2日ごとに培地を補給した。72時間後にCAR抗体染色を行い、フローサイトメトリーによりROBO1 CAR NK-92陽性細胞を選別して拡大培養した。培地の色の変化、細胞密度、細胞形態を毎日観察し、記録した。
【0080】
フローサイトメトリーにより選別した後、陽性のROBO1 CAR NK-92細胞をGMPワークショップで引き続き培養し、臨床使用に必要な量に増幅した後、遠心分離及び3回の洗浄(PBS溶液)を行い、最後にROBO1 CAR-NK 92を生理食塩水中に再懸濁し、臨床治療輸液に用いた。
【0081】
細胞品質の安全性を保証するために、臨床治療前に薬局方に記載の方法に従ってROBO1 CAR-NK 92に対して品質検査を行った。測定結果を表1に示す。
【0082】
表1:ROBO1 CAR NK-92細胞の品質検査
【0083】
フローサイトメトリーによりCAR NK-92細胞の陽性率を測定し、フローサイトメトリーの結果を
図2a及び
図2bに示す。
図2a及び
図2bにおいて、用いた抗体は、APC蛍光標識抗体であり、横座標で示され、NK92細胞がCAR分子の発現に成功すると、このシグナル値は著しく高くなる。
図2a及び
図2bから分かるように、APC蛍光標識のシグナル値は著しく高くなり、NK-92細胞がCAR分子の発現に成功したことを示しており、CAR-NK92の陽性率は98.89%であった。
【0084】
図3a及び
図3bは、ROBO1 CAR-NKフローサイトメトリーによるCD56分子陽性率の結果を示す図である。
図3aは対照群、
図3bは実験群を示す。
図3a及び3bから分かるように、CD56分子は陽性であり、調製したCAR-NK92細胞はCD56分子を失わず、他の形態の分化は発生せず、NK細胞の基本的な特性は保持されていることを示している。
【0085】
同じ方法でROBO1M CAR-NK細胞を調製した。
【0086】
実施例4:ROBO1 CAR-T細胞の調製
(1)T細胞の調製:健常者から血液100MLを採取し、(15/50ml BDチューブ)Ficall試薬による密度勾配遠心でPBMCを分離し、T細胞培地(X-VIVO 15、血清(5%)/血漿、IL-2 300IU(輸入)/ml、500IU(国内)/ml、二重抗体10%)を用いて分離したPBMCを活性化培養し、活性化培養したPBMCを得た。その後、活性化培養したPBMCを再懸濁し、CD3+のT細胞(一般にはPBMCの50%-60%を占める)を分離した。磁気ビーズを用いてCD3+のT細胞(磁気ビーズ:T=3:1)を収集し(残りの細胞は他の実験に使用できる)、T細胞を得た。
【0087】
(2)ROBO1 CAR-T細胞の調製:(1)で得られたT細胞を1×106/mlの密度で24-48時間培養し、2~3日後に培地を交換し、培地を交換して培養したT細胞を得た。さらに、培地を交換して培養したT細胞を細胞密度が3~5×106個/mlになるまで新鮮な培地で細胞濃縮し、ウイルス形質導入を行った。ウイルス:細胞培地=1:10の体積比(V/V)でウイルス(実施例2の方法により調製される)を添加した後、十分に均一に混合し、37℃、5%CO2で4時間静置培養した後、培地を補給し、細胞濃度1×105/mlまで希釈した。2日目に培地を交換し、全ての細胞を遠心分離し、新鮮な培地を加え、培養しながら観察し、2~3日後に培地半量交換(培地半量交換とは、一般的に培地で遠心分離した後、新鮮な培地で細胞を希釈し、培養フラスコに加えることをいう)を行って細胞密度を2~3×105/mlに維持し、7日間の連続培養後、ROBO1 CAR-T細胞を得た。このROBO1 CAR-T細胞に用いたROBO1の配列はROBO1Mと同じであった。
【0088】
また、フローサイトメトリーによりROBO1 CAR-T陽性細胞を選別して拡大培養した。フローサイトメトリーによりCAR NK-T細胞の陽性率を測定し、フローサイトメトリーの結果を
図4a及び
図4bに示す。用いた抗体はAPC蛍光標識抗体であり、横座標で示される。T細胞がCAR分子の発現に成功すると、このシグナル値は著しく高くなる。
図4a及び
図4bから分かるように、APC蛍光標識のシグナル値は著しく高くなり、T細胞がCAR分子の発現に成功したことを示しており、T細胞の陽性率は96.44%であった。
【0089】
実施例5:ROBO1 CAR-NK細胞、ROBO1M CAR-NK細胞の体外腫瘍に対する殺傷効果の評価
CCK-8方法(Human Leukocyte Antigen-G Inhibits the Anti-Tumor Effect of Natural Killer Cells via Immunoglobulin-Like Transcript 2 in Gastric Cancer, Rui Wan Zi-Wei Wang Hui Li ,et al.を参照)によりROBO1 CAR-NK細胞、ROBO1M CAR-NK細胞の異なる腫瘍細胞系に対する殺傷効果を評価した。腫瘍細胞系は、肺がん細胞系H1299、肺がん細胞系A549、膵臓がん細胞系ASPC-1及び肝がん細胞系HepG2を含む。実験の操作方法は以下の通りである。
(1)24ウェルプレート中で1ml腫瘍細胞懸濁液(2X10
4個/ウェル)を調製した。培養プレートをインキュベーターで12時間前培養した。
(2)24ウェルプレートの培養上清を捨て、各ウェルに1mlエフェクター細胞を加え、エフェクター細胞数と標的細胞数の比は1:1であった。培地対照ウェルに1ml培地のみを加え、各実験を3回繰り返した。エフェクター細胞と標的細胞を合計4時間インキュベートした。
(3)各ウェルに100ul CCK-8溶液を加え、培養プレートをインキュベーター内で2時間インキュベートした。
(4)マイクロプレートリーダーにより450nmでの吸光度を測定した。
(5)殺傷率=(As-Ab)/(Ac-Ab)X100%
As:試験ウェル(腫瘍細胞含有培地、CCK-8、CAR-NK)
Ac:対照ウェル(腫瘍細胞含有培地、CCK-8)
Ab:ブランク対照(細胞及びCAR-NKを含有しない培地、CCK-8)
ROBO1 CAR-NK細胞、ROBO1M CAR-NK細胞の体外腫瘍に対する殺傷効果評価の実験結果を
図5a-5dに示す。
【0090】
図5a-5dの実験結果は、ROBO1-CAR NK 92細胞、ROBO1M-CAR NK 92細胞が肺がん細胞系H1299、肺がん細胞系A549、膵臓がん細胞系ASPC-1及び肝がん細胞系HepG2のいずれに対しても強い殺傷効果を有し、その効果が普通のNK-92細胞よりも高いことを実証している。
【0091】
また、
図5a-5dから分かるように、ROBO1M-CAR NK 92細胞の殺傷効果は、ROBO1-CAR NK 92細胞よりも優れており、腫瘍をより効果的に殺傷できる。この結果に鑑み、後続の臨床実験は、ROBO1M-CAR NK 92細胞を用いて行った。
【0092】
実施例6:ROBO1M CAR-NK細胞の神経膠腫細胞に対する殺傷効果の評価
CCK-8方法によりROBO1M CAR-NK細胞の神経膠腫細胞系U87-MG及び神経膠腫細胞SH-SY5Yに対する殺傷効果を評価した。NK 92細胞を対照とした。その実験結果を
図5f及び
図5eに示す。
【0093】
また、
図5f及び
図5eの実験結果は、ROBO1M-CAR NK細胞の神経膠腫細胞系U87-MG及び神経膠腫細胞SH-SY5Yに対する殺傷効果がNK 92細胞よりも優れていることを示している。
【0094】
実施例7:ROBO1M CAR-NK細胞の乳がん細胞に対する殺傷効果の評価
CCK-8方法によりROBO1M CAR-NK細胞の乳腺細胞系MCF-7、HCC1143、HCC1187、HCC1599、HCC1806及びHCC38に対する殺傷効果を評価した。NK 92細胞を対照とした。その実験結果を
図6a-6fに示す。
【0095】
実験結果は、ROBO1M-CAR NK細胞の乳腺細胞系MCF-7、HCC1143、HCC1187、HCC1599、HCC1806及びHCC38に対する殺傷効果がNK 92細胞よりもはるかに優れていることを示している。
【0096】
本発明のAnti ROBO1 CAR-NK細胞は、肺がん細胞系H1299、肺がん細胞系A549、膵臓がん細胞系ASPC-1、肝がん細胞系HepG2、細胞神経膠腫細胞系U87-MG、神経膠腫細胞SH-SY5Y、乳腺細胞系MCF-7、乳腺細胞系HCC1143、乳腺細胞系HCC1187、乳腺細胞系HCC1599、乳腺細胞系HCC1806及び乳腺細胞系HCC38などの多くのがん細胞に対して殺傷作用を有し、腫瘍患者の治療に希望を与える。
【0097】
実施例8:乳がんの臨床治療におけるROBO1M CAR-NK細胞の使用
一、患者状況
王某、女性、55歳。2016年6月、シャワーを浴びていた時に偶然に右乳房に索状腫物があることに気付き、腫物は押しても動かず、乳首が黄色みを帯び、臭い液が分泌され、右側の腋窩に多発性リンパ節症があり、痛みがなく、吐き気も嘔吐もなく、目眩、頭痛、その他の不快感もないため、患者は注意を払わなかった。
【0098】
2017年02月、患者は腰痛のため病院に行った。2017-02-13、頭部検査及び胸部CTの結果は、1.右大脳基底核のラクナ梗塞、左上前頭洞と篩骨洞炎症;2.右乳房病変(右腋窩リンパ節転移を伴う右乳がんと考えられる);3.右上葉の胸膜下の複数の結節、右下葉の線維性病巣;4.右下葉石灰化巣、左肺舌区と右下葉の線維性病巣、右胸少量水貯溜;5.胸椎、腰椎、両側肋骨、仙骨、両側腸骨、恥骨多発性骨破壊(右第7/10肋骨、左第3肋骨、左恥骨病変を伴う転移と考えられる);6.子宮肥大を示した。2017-02-14、病院で局所生検を行った結果、(右乳房)浸潤性乳管がんグレードIIであった。免疫病理的検査の結果は、がん細胞E-cadherin(+)、Ki-67(+)、約10%、ER(+)、強、陽性率約90%、PR(-)、Her2(-)、CK7(+)、P63(-)、CK5/6(-)であった。病歴と病理診断と合わせて右乳房浸潤性乳管がんと診断された。患者は化学放射線療法を受けることを拒否し、退院した。
【0099】
2017年04月、患者は、腫物が増大したため、病院に行った。2017-04-11、胸部・腹部CTで再検査した結果、脊椎と肋骨への複数の転移を伴う右乳がん、両側腋窩に複数の腫大リンパ節陰影、両肺に複数の小結節陰影が示され、転移と考えられた。両肺に感染を伴う慢性気管支炎があり、両胸に胸水が貯留した。岩舒(Yanshu)、強林坦(Tazobactam Sodium and Piperacillin Sodium for Injection)、ゾレドロン酸などを用いて治療したが、あまり効果がなかった。5月12日、レトロゾールを患者に経口投与して治療したところ、翌日に患者が心房細動を発症し、ジゴキシン、ベタロック及び麝香保心丸で治療した後、改善した。
【0100】
2017年5月17日、症状は主に動悸、胸悶で、両下肢が不随意に痙攣し、下肢の動きが制限され、腰背部痛が明らかであった。身体検査した結果、右乳房腫物が比較的大きく、腫物サイズは約10*7cmであり、局所皮膚に多くの潰瘍があり、心電図に心房細動が示された。
【0101】
2017-05-19、改善PET-CTにより、右乳腺に病変があり、FDG摂取量が増加したことが分かり、両肺、多発性リンパ節、多発性骨転移を伴う悪性と考えられた。また、両肺に炎症があり、両側性胸水貯留があった。検査により、全身多発性骨転移が示され、ゾレドロン酸で骨を保護した。患者は、心房細動のため、全身静脈内化学療法に耐えることができず、家族と相談した後、全身化学療法を拒否し、免疫細胞療法を検討した。
【0102】
二、治療設計
治療設計前に、病理組織化学により患者のROBO1標的の発現を測定した。発現結果を
図10に示す。結果は陽性であり、Robo1M CAR-NK細胞で治療することができる。患者に重度の局所病巣及び骨転移病巣があることに鑑み、まず、腫瘍組織内に直接注射し、さらに全身治療を行う治療計画を設計した。患者にRobo1M CAR-NK細胞を隔日投与で週に2回直接注射した。初期注射細胞数は1×10
9細胞/回であり、有害反応が発生しない場合、2×10
9細胞/回に増加する。輸液に関連する有害反応を減らすために、細胞注射前に患者にデキサメタゾンと塩酸プロメタジンを投与し、耐性が良好であれば、デキサメタゾンの用量を低減するか又はデキサメタゾンを使用しない。患者が局所注射後に反応がした場合、患者に全身治療を与える。
【0103】
三、治療過程
2017年5月25日から2017年6月29日にかけて、この患者に合計8回(2回は1×10
9細胞、6回は2×10
9細胞)のRobo1M CAR-NK細胞腫瘍部位の直接注射を与えた。6月17日から6月29日まで、患者に細胞を静脈内注入した(2×10
9細胞/回、3回/週、隔日投与、合計5回)。治療過程を
図9に示す。
図9は、Robo1M CAR-NK細胞治療過程の模式図である。同図には、実線の矢印は腫瘍組織内への直接注射、破線の矢印は静脈内注入を示す。
【0104】
四、治療結果
5月25日及び6月6日に右乳房にRobo1M CAR-NK細胞を2回局所注射したところ、右乳房の腫物は6*5cmの大きさまで明らかに小さくなり、乳房局所潰瘍も大幅に改善し、治療は有効であった。
【0105】
6月12日、頭部CTでの再検査により異常がなく、胸部と腹部の強化CTにより病状が安定したことが示された。
【0106】
6月15日からRobo1M CAR-NK細胞の局所及び全身治療を同時に1か月以上与えた結果、右乳房の腫物は明らかに2*3cmまで小さくなり、潰瘍部位は基本的に治癒した。
【0107】
7月17日、胸部強化CTで再検査した結果、胸水は明らかに少なくなり、動悸と胸悶がなくなり、肩の痛みは基本的に緩和され、右乳房の腫物は5月より明らかに小さくなり(
図7)、病状が安定し、徐々に回復していることを示している。
【0108】
国内外で報告されたCAR-T細胞を用いて腫瘍を治療する際に、IL-6などのサイトカインが急激に上昇し、その結果、サイトカインストームが発生し、重症の場合、患者の生命を危険にさらす恐れがある。そこで、研究者はさらに、Robo1M CAR-NK細胞で腫瘍を治療するときの患者体内のサイトカインの変化状況を調べた。その結果を
図8a、
図8bに示す。
【0109】
図8a及び
図8bの結果から明らかなように、Robo1M CAR-NK細胞の腫瘍局部注射及び血液注射のいずれの場合においても、患者体内にはIL-10のみが一時的に増加し、IL-6などの他のサイトカインの有意な変化はなかった。治療中の患者の良好な状態と組み合わせて考慮すると、このRobo1M CAR-NK細胞製品は、安全性が高く、サイトカインストームなどの有害反応を回避し、腫瘍を効果的に治療し、生存率を向上させることができる。
【0110】
比較例1:ROBO1 CAR-T細胞とROBO1M CAR-NK細胞の殺傷効果
CFSE染色法(A Mathematical Model of Natural Killer Cell Activity, Anna Scherbakova,1,2 Helen Lust,1,2 Hele Everaus,1,2,3 Alar Aints1,2,4*を参照)によりROBO1 CAR-T細胞、ROBO1M CAR-NK細胞の異なる腫瘍細胞系に対する殺傷効果を調べ、T細胞を対照とした。腫瘍細胞系は、乳がん細胞系HCC1937、MCF7、MDA-MB-453及び膵臓がん細胞系BXPC3を含む。実験の操作方法は以下の通りである。
(1)事前に標的細胞を処理し、1μlのCFSEに1X10
6個の細胞があるように標的細胞をCFSEに加え、暗所でインキュベーターで15分間インキュベートし、10%のBSAで停止させ、PBSで2回洗浄し、24ウェルプレートに調製した500μl腫瘍細胞懸濁液(8X10
4個/ウェル)を加えた。培養プレートをインキュベーターで12時間前培養した。
(2)エフェクター細胞対標的細胞が0.5:1及び1:1の割合で500μlのエフェクター細胞を加え、各実験を3回繰り返し、エフェクター細胞と標的細胞を合計4時間インキュベートした。
(3)4時間後、上清を1.5のEPチューブにピペットで移し、各ウェルに200μlのパンクレアチンを加えて1分間消化した後、移した上清で細胞をピペッティングし、遠心分離した後PBSで再懸濁し、1ulの7-AADを加え、暗所で15分間インキュベートした後、機器で調べた。
(4)殺傷率=(標的細胞の殺傷率-自発死亡率)/(1-自発死亡率)X100%
ROBO1 CAR-T細胞、ROBO1M CAR-NK細胞の体外腫瘍殺傷効果についての評価実験の結果を
図11-14に示す。
【0111】
図11-14の実験結果は、ROBO1 CAR-T細胞、ROBO1M CAR-NK細胞は、いずれも乳がん細胞系HCC1937、MCF7、MDA-MB-453及び膵臓がん細胞系BXPC3に対して強い殺傷効果を有し、それぞれの効果は普通のT細胞よりも強いことを実証した。
【0112】
また、
図11-14から分かるように、ROBO1M CAR-NKの殺傷効果は、ROBO1 CAR-T細胞よりも明らかに優れ、腫瘍をより効果的に殺傷することができる。
【0113】
要約すると、本発明で提供されるROBO1 CAR-NK細胞では、ROBO1分子を標的抗原とするROBO1抗体をCAR-NK細胞の構築に用い、ROBO1 CAR-NK細胞により腫瘍細胞を特異的に殺傷し、腫瘍類疾患の治療薬としてROBO1分子を高発現する腫瘍の治療に適用でき、かつサイトカインストームなどの不良な現象がなく、従来の手術、化学療法、放射線療法では効果のない腫瘍の治療に新しい治療法を提供する。また、NK92細胞にCARを導入することにより、標的性が大幅に向上するとともに抗腫瘍標的ROBO1が増加し、これによって標的性が向上し、抗腫瘍性能も高くなる。さらに、このROBO1 CAR-NK細胞は、ROBO1 CAR-T細胞と比較して、殺傷効果が明らかに高いので、腫瘍をより効果的に殺傷することができる。つまり、本発明で構築されるROBO1 CAR-NK細胞は、CARの導入によりNK92細胞を改変することにより、標的性が向上するとともに、NK細胞を用いることで安全性が大幅に向上し、毒性と副作用が小さく、コストが低く、NK細胞、CAR及び抗ROBO1標的の相乗効果により、殺傷効果が高く、ROBO1 CAR-T細胞よりもはるかに優れている。
【0114】
以上の説明は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するものではない。本発明の趣旨及び原則内でなされる任意の改変、同等置換などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【配列表】