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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】積層長繊維不織布及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/18 20060101AFI20220714BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20220714BHJP
   B32B 5/12 20060101ALI20220714BHJP
   D01F 6/62 20060101ALI20220714BHJP
   D04H 3/018 20120101ALI20220714BHJP
   D04H 3/105 20120101ALI20220714BHJP
   E02B 11/00 20060101ALI20220714BHJP
   B01D 39/16 20060101ALN20220714BHJP
【FI】
E02D17/18 A
B32B5/02 C
B32B5/12
D01F6/62 302A
D04H3/018
D04H3/105
E02B11/00 Z
B01D39/16 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018032508
(22)【出願日】2018-02-26
(65)【公開番号】P2019148024
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木原 幸弘
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-038365(JP,A)
【文献】特開2013-076182(JP,A)
【文献】特開2015-147199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/18
B32B 5/02
B32B 5/12
D01F 6/62
D04H 3/018
D04H 3/105
E02B 11/00
B01D 39/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土中に埋めるか、または土に接して敷設する土木資材であり、該土木資材が地盤補強材、雨水分離材、排水材のいずれかであり、
該土木資材は、 単繊維繊度の大きい長繊維を構成繊維とする太繊度ウェブと、前記太繊度ウェブの構成繊維よりも単繊維繊度が小さい長繊維を構成繊維とする細繊度ウェブとが、積層されてなるニードルパンチ積層長繊維不織布により構成され
太繊度ウェブと細繊度ウェブとは、構成繊維同士が三次元的に交絡して積層一体化されてなり、
太繊度ウェブは、ポリエステル長繊維を構成繊維とし、該ポリエステル長繊維の横断面形状が、略Y字の下端で上下左右に連結した
形状(以下、「略Y4形状」という。)で、単繊維繊度が12デシテックス以上であり(ただし、13.2デシテックス以下を除く。)
細繊度ウェブは、単繊維繊度が8デシテックス未満であり、
積層長繊維不織布の目付が100g/m以上、100gf/cm荷重時の嵩密度が0.130g/cc以下であることを特徴とする土木資材
【請求項2】
太繊度ウェブを構成するポリエステル長繊維が、ポリエチレンテレフタレート長繊維であることを特徴とする請求項1記載の土木資材。
【請求項3】
単繊維繊度が12デシテックス以上(ただし、13.2デシテックス以下を除く。)、長繊維の横断面形状が、略Y字の下端で上下左右に連結した
形状(以下、「略Y4形状」という。)であるポリエステル長繊維であって、該ポリエステル長繊維が堆積してなる太繊度ウェブの片面に、単繊維繊度が8デシテックス未満である長繊維が堆積してなる細繊度ウェブを積層し、
この積層体に、ニードルパンチ処理を施して、積層体を構成する長繊維同士を三次元的に交絡させて、一体化させることを特徴とする請求項1記載の土木資材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層長繊維不織布により構成される土木資材及びその製造方法に関し、特に圧縮に対して変形しにくく、不織布が有する空隙を維持し、高い通気性や透水性を保持しうる積層長繊維不織布により構成される土木資材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長繊維不織布は、従来より、種々の用途に用いられている。長繊維不織布のなかでも、ポリエステル長繊維によって構成される不織布は、ポリエステル以外の合成繊維に比べて高剛性であるため、例えば、フィルター材に積層貼合する支持体として用いられている。
【0003】
特許文献1には、フィルター支持体として用いる不織布であって、低融点成分と高融点成分とから構成されるポリエステル系連続繊維から構成され、部分的に熱圧着された不織布であり、目付と通気性が高く、剛性にも優れる不織布が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1の不織布は、部分的に熱圧着することにより剛性を向上させていることから、不織布自体が圧着により繊維間の空隙が潰されている。
【文献】特開2003-275519号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、部分的に熱圧着して繊維間空隙をつぶすことにより剛性を発揮するのではなく、目付と通気性が高く、かつ繊維間空隙も維持しながら剛性に優れる不織布を得ることを検討した。
一方、本発明者は、特殊な横断面形状を持つポリエステル不織布を開発した(特開2013-76182号公報)。これは、ポリエステル長繊維を構成繊維とする不織布であって、該ポリエステル長繊維の横断面形状が、略Y字の下端で上下左右に連結した略Y4形状であることを特徴とするポリエステル不織布である。かかるポリエステル不織布は、特異な横断面形状の長繊維によって構成されるため、高剛性であるという特性を持っている。
【0006】
そして、前記した特異な横断面形状の長繊維を用いて、特定の手段によって不織布化したところ、厚み方向に圧縮されにくく、繊維間空隙を維持しうるものが得られることを見出し、特許出願した(特願2016-224280号)。本発明は、前記特許出願を利用するものであり、目付と通気性が高く、繊維間空隙を維持しながら厚み方向に圧縮されにくい土木資材を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、土中に埋めるか、または土に接して敷設する土木資材であり、該土木資材が地盤補強材、雨水分離材、排水材のいずれかであり、
該土木資材は、単繊維繊度の大きい長繊維を構成繊維とする太繊度ウェブと、前記太繊度ウェブの構成繊維よりも単繊維繊度が小さい長繊維を構成繊維とする細繊度ウェブとが、積層されてなるニードルパンチ積層長繊維不織布により構成され
太繊度ウェブと細繊度ウェブとは、構成繊維同士が三次元的に交絡して積層一体化されてなり、
太繊度ウェブは、ポリエステル長繊維を構成繊維とし、該ポリエステル長繊維の横断面形状が、略Y字の下端で上下左右に連結した
形状(以下、「略Y4形状」という。)で、単繊維繊度が12デシテックス以上であり(ただし、13.2デシテックス以下を除く。)
細繊度ウェブは、単繊維繊度が8デシテックス未満であり、
積層長繊維不織布の目付が100g/m以上、100gf/cm荷重時の嵩密度が0.130g/cc以下であることを特徴とする土木資材を要旨とする。
【0008】
本発明において積層長繊維不織布は、単繊維繊度の大きい長繊維を構成繊維とする太繊度ウェブと、前記太繊度ウェブの構成繊維よりも単繊維繊度が小さい長繊維を構成繊維とする細繊度ウェブとが積層されてなる。
【0009】
まず、単繊維繊度の大きい長繊維を構成する太繊度ウェブについて説明する。太繊度ウェブは、ポリエステル長繊維を構成繊維とし、このポリエステル長繊維は、繊維の横断面形状に特徴を有するものである。この横断面形状は、図1に示すような略Y字を四個持つものである。そして、略Y字の下端1で上下左右に連結して、図2に示すような略Y4形状となっている。この略Y4形状は、四個の凹部2と八個の凸部3と四個の小凹部4とを有していることにより嵩高性に優れている。また、四個の凹部2の箇所に塵埃等を捕捉されやすく、フィルター性能や塵埃補足性に優れている。また、中央の略+字部5と、略+字部5の各先端に連結された四個の略V字部6により、高剛性となっている。すなわち、六角形やY字等の単なる異形ではなく、剛性の高い略+字部5と略V字部6の組み合わせによって、より高剛性となるのである。
【0010】
太繊度ウェブを構成するポリエステル長繊維は、一種類のポリエステルからなるものでもよく、また、低融点ポリエステルと高融点ポリエステルとを組み合わせてなるものでもよい。一種類のポリエステルから構成される場合は、繊維強度や熱安定性に優れることから、ポリエチレンテレフタレートにより構成されることが好ましい。また、低融点ポリエステルと高融点ポリエステルとの組み合わせでなる場合は、ポリエステル長繊維の横断面形状の略V字部6が低融点ポリエステルで形成され、略+字部5が高融点ポリエステルで形成された複合型とするのが好ましい。複合型ポリエステル長繊維を採用する場合は、後述するニードルパンチ工程前に、形態保持のための仮圧着の際に、低融点ポリエステルのみを軟化又は溶融させて、低融点ポリエステル同士を仮熱接着する程度にするのがよい。
【0011】
太繊度ウェブを構成するポリエステル長繊維の単繊維繊度は、12デシテックス以上(ただし、13.2デシテックス以下を除く。)である。繊度が12デシテックス未満になると、太繊度であるポリエステル長繊維の剛性が低下して、ひいてはポリエステル長繊維不織布の剛性も低下する傾向が生じ、そして、長繊維の剛性が低下すると、圧縮に対する変形が大きくなり、本発明の目的が達成しにくい。なお、本発明で用いる太繊度ウェブを構成するポリエステル長繊維を得る方法等の詳細については、上記した特開2013-76182号公報に詳述されている。
【0012】
本発明においては、この特異な横断面形状を有し、種々の凹凸部を有する長繊維同士が三次元的に交絡してなることから、ポリエステル長繊維により構成される層(太繊度ウェブ)においては、繊維間の空隙を大きく有し、嵩高である。
【0013】
長繊維同士のこのような三次元的な交絡は、長繊維が集積してなる繊維ウェブに、ニードルパンチ処理を施すことにより得ることができる。すなわち、長繊維が集積してなる繊維ウェブを準備し、この繊維ウェブにニードルパンチ処理を施して、堆積されていた長繊維の繊維軸方向を厚み方向にも移動させて、長繊維同士を交絡させる。本発明における太繊度ウェブを構成するポリエステル長繊維は、特異な横断面を有することにより剛性に優れることから、このような長繊維の繊維軸方向を厚み方向にも移動させて繊維同士を交絡させることにより、厚み方向に高い剛性を有し、圧縮に対して厚み変化が少なく、繊維間の空隙を維持しうる層(太繊度ウェブ)となる。
【0014】
このように厚み方向に高い剛性を有し、圧縮に対して厚み変化が少なく、繊維間の空隙を維持しうるためには、太繊度ウェブの目付は70g/m以上とするとよい。目付を70g/m以上とすることにより、相対的な構成繊維本数を確保でき、ニードルパンチ処理によって十分に繊維交絡させることができ、剛性が良好で強力を維持することができる。ポリエステル長繊維からなる太繊度ウェブのより好ましい目付は100g/m以上、さらに好ましい目付は200g/m以上である。また、本発明の積層長繊維不織布の用途に応じて適宜設定すればよいが、ポリエステル長繊維からなる太繊度ウェブの目付の上限は1000g/m程度とする。
【0015】
本発明における積層長繊維不織布は、上記した特異な横断面のポリエステル長繊維からなる太繊度ウェブの少なくとも片面に、単繊維繊度の小さい長繊維によって構成される細繊度ウェブが積層され、一体化している。細繊度ウェブを構成する長繊維の単繊維繊度は、8デシテックス未満であり、好ましくは2~6デシテックスである。
【0016】
太繊度ウェブは、上記したように、特異な略Y4形状の横断面の長繊維によって構成され、かつ三次元交絡しているため、繊維間の空隙が大きく、この空隙が厚み方向への圧縮に対しても潰れにくく維持する。一方、細繊度ウェブは、構成する繊維の単繊維繊度が小さいため、繊維間の空隙は小さく、また、厚み方向に圧縮されると、空隙は潰れやすく、より小さくなる。よって、本発明の積層長繊維不織布においては、繊維間空隙の大きさや嵩高性、圧縮に対する空隙の維持の点で、異なる2種の層を有していることを特徴とする。
【0017】
細繊度ウェブを構成する長繊維の横断面形状は特に限定しないが、円形断面であればよい。また、空隙を小さくするためには、偏平断面も好ましい。また、細繊度ウェブの構成する長繊維は、合成繊維であることが好ましく、なかでもポリエステル繊維であることが好ましい。
【0018】
本発明における積層長繊維不織布は、構成繊維同士が、三次元的に交絡することにより一体化して不織布の形態を維持するとともに、太繊度ウェブと細繊度ウェブとが交絡により一体化している。太繊度ウェブと細繊度ウェブとの質量比率は、積層長繊維不織布の用途に応じて、適宜選択すればよいが、本発明の目的、すなわち、繊維間空隙を維持しながら厚み方向に圧縮されにくい不織布を得ることからすれば、太繊度ウェブの比率が大きいことが好ましく、太繊度ウェブ/細繊度ウェブ=1~10/1がよい。
【0019】
積層一体化して積層不織布を得るには、太繊度ウェブと細繊度ウェブとをそれぞれ準備し、少なくとも太繊度ウェブの片面に細繊度ウェブを積層し、この積層した積層体にニードルパンチ処理を施し、長繊維同士を三次元的に交絡させて一体化させる。積層形態としては、太繊度ウェブの片面に細繊度ウェブを積層した太繊度ウェブ/細繊度ウェブとした積層体であっても、太繊度ウェブの両面に細繊度ウェブを積層した細繊度ウェブ/太繊度ウェブ/細繊度ウェブとしてもよい。
【0020】
ニードルパンチ処理は、積層体の片面のみから行ってもよく、また、両面から行ってもよい。ニードルパンチ処理の回数は、積層体の目付等も考慮して適宜設計すればよいが、パンチ数は概ね30~120パンチ/cm程度がよい。なお、太繊度ウェブや細繊度ウェブには、搬送性等を考慮して、繊維同士を仮熱接着してなるものを用いるのもよい。繊維同士の仮熱接着は、ニードルパンチ処理による衝撃により、容易に解かれる程度がよい。
【0021】
本発明における積層長繊維不織布は、100gf/cm荷重時の嵩密度は0.130g/cc以下である。本発明における積層長繊維不織布は、厚み方向に圧縮されにくく、当初の繊維間空隙を維持しやすいことから、100gf/cm荷重時であっても、嵩密度を0.130g/cc以下であり、不織布内における空隙を維持することができ、嵩高性に優れるのである。
【0022】
100gf/cm荷重時の嵩密度は、以下の方法により測定する。すなわち、JIS L1913 6.1厚さ(ISO法)A法に準じて、厚みを測定する。なお、その際に、試料は、標準状態の試料から、縦10cm×横10cmの試料片10点とし、プレッサーフードの面積が10cmのものを用い、荷重100gf/cmをかけて厚さを測定する。測定した10点の厚さの平均値より、不織布の厚さ(μm)を求め、下記により嵩密度を算出する。
【0023】
嵩密度(g/cc)=目付(g/m)/厚さ(μm)
【0024】
さらには、本発明においては、上と同様の方法で測定する嵩密度であって、荷重を300gf/cmとしたときの嵩密度は、0.160g/cc以下であることが好ましい。
【0025】
本発明における積層長繊維不織布は、嵩高性を有し、かつ圧縮に対して厚み方向に圧縮されにくく、その嵩高性を維持しやすいものであり、さまざまな用途に適用できる。たとえば、高剛性であり、かつ塵埃除去性にも優れているという特性を持っているため、フィルター材として好適に用いることができる。すなわち、フィルター材として使用すれば、圧縮されにくく、取扱性にも優れたものになる。
【0026】
本発明における積層長繊維不織布は、土木用途において土中に埋める、土に接して敷設するものであり、地盤補強や雨水分離等の補強材や分離材、排水材としての用途に適用する。このとき、排水機能は、圧縮に対して厚み変化が少なく空隙を維持している太繊度ウェブの層が主として担い、細繊度ウェブの層は空隙が小さいため、土粒がウェブ内に入り込まないように遮蔽する役割を担う。すなわち、細繊度ウェブが積層されておらず、太繊度ウェブのみであれば、土粒等が太繊度ウェブ内の大きな空隙に入り込みやすく、空隙を塞いでしまう恐れがあり、結果的に、太繊度ウェブが有する空隙を維持しにくくなるが、細繊度ウェブが、太繊度ウェブに積層されてなるため、太繊度ウェブの空隙内に直接異物が入り込まないように覆っていることから、このような現象を防ぐことができ、長期に亘って、太繊度ウェブの繊維間空隙を維持し、通気性や透水性等を保持し、良好に機能することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の土木資材を構成する積層長繊維不織布は、略Y4形状を有するポリエステル長繊維によって構成される太繊度ウェブと細繊度ウェブとが積層されてなるものであり、構成繊維同士が三次元的に交絡することにより一体化しているため、嵩高であるとともに、太繊度ウェブが、剛性の高いポリエステル長繊維によって構成されるため、厚み方向に圧縮されにくく、加圧によっても繊維間空隙を維持し、嵩高性を維持しうることができる。
【実施例
【0028】
本発明を以下実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明は、特定の横断面形状を持つポリエステル長繊維を構成繊維とする太繊度ウェブによって構成され、かつ構成繊維同士が三次元的に交絡することにより一体化した不織布であり、このような不織布は、高剛性であり、厚み方向に圧縮されにくいとの知見に基づくものであると解釈されるべきである。
【0029】
実施例1
(太繊度ウェブの作成)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸(TPA)100mol%とジオール成分としてエチレングリコール(EG)100mol%を用いて共重合し、ポリエチレンテレフタレート(相対粘度〔ηrel〕1.38、融点260℃)を準備した。そして、図3に示したノズル孔(Y字の下端で上下左右に連結し、かつ、隣り合うY字の/同士及び\同士が平行である「Y形状」)を用い、紡糸温度285℃、単孔吐出量8.33g/分で溶融紡糸した。
【0030】
ノズル孔から排出されたフィラメント群を、2m下のエアーサッカー入口に導入し、ポリエステル長繊維の繊度が16.4デシテックスとなるように牽引した。エアーサッカー出口から排出されたポリエステル長繊維群を開繊装置にて開繊した後、移動するネット製コンベア上に集積し、繊維ウェブを得た。この繊維ウェブを、表面温度が190℃のエンボスロール(各エンボス凸部先端の面積は0.7mmで、ロール全面積に対するエンボス凸部の占める面積率は15%)とフラットロールからなる熱融着装置に導入し、両ロール間の線圧150N/cmの条件で搬送性を良好にするために仮熱接着して、横断面が略Y4形状のポリエステル長繊維からなる目付100g/mのポリエステル長繊維不織ウェブを得た。得られたポリエステル長繊維不織ウェブを2枚重ねたウェブを太繊度ウェブ(目付200g/m)として用いた。
【0031】
(細繊度ウェブの作成)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸(TPA)100mol%とジオール成分としてエチレングリコール(EG)100mol%を用いて共重合し、ポリエチレンテレフタレート(相対粘度〔ηrel〕1.38、融点260℃)を準備した。そして、孔径0.4mmのノズル孔を用い、紡糸温度285℃、単孔吐出量1.67g/分で溶融紡糸した。
【0032】
ノズル孔から排出されたフィラメント群を、2m下のエアーサッカー入口に導入し、ポリエステル長繊維の繊度が3.3デシテックスとなるように牽引した。エアーサッカー出口から排出されたポリエステル長繊維群を開繊装置にて開繊した後、移動するネット製コンベア上に集積し、繊維ウェブを得た。この繊維ウェブを、表面温度が190℃のエンボスロール(各エンボス凸部先端の面積は0.7mmで、ロール全面積に対するエンボス凸部の占める面積率は15%)とフラットロールからなる熱融着装置に導入し、両ロール間の線圧150N/cmの条件で搬送性を良好にするために仮熱接着して、横断面が円形断面であるポリエステル長繊維からなる目付70g/m不織ウェブを得た。得られたウェブを細繊度ウェブとして用いた。
【0033】
(積層長繊維不織布の作成)
太繊度ウェブ(目付200g/m)の両面に細繊度ウェブ(それぞれ70g/m)を積層した積層体(目付340g/m)にニードルパンチ処理を施した。ニードルパンチ処理は、ニードルパンチ用の油剤(DIC社製 UN-12)を繊維質量に対して0.5質量%となるように付着させ、グロッツ・ベッケルト社製ニードル(654851 B271F7 JBF 15×18×40×3 C3+3 G 28017)を具備するニードルパンチ機を用い、ニードル針の深度10mm、パンチ数60パンチ/cmの条件で、片面から施した。繊維同士が三次元交絡してなる得られた積層長繊維不織布の目付は、360g/mであった。
【0034】
実施例2
実施例1において、太繊度ウェブとして、特異な異型断面のポリエステル長繊維からなる長繊維不織ウェブを3枚積層したものを太繊度ウェブ(目付300g/m)として用いたこと、ニードルパンチ処理にあたり、積層体として、太繊度ウェブ(目付300g/m)の片面に細繊度ウェブ(70g/m)を積層した積層体(目付370g/m)にニードルパンチ処理を施したこと以外は、実施例1と同様にニードルパンチ処理を施して、実施例2の積層長繊維不織布を得た。得られた実施例2の積層長繊維不織布の目付は386g/mであった。
【0035】
比較例1
実施例1において、太繊度ウェブを用いず細繊度ウェブのみを用いたこと、ニードルパンチ処理にあたり、積層体として、細繊度ウェブ(目付70g/mのポリエステル長繊維不織ウェブ)を5枚重ねて積層体(目付350g/m)としたこと以外は、実施例1と同様にニードルパンチ処理を施して、比較例1の長繊維不織布を得た。得られた比較例1の長繊維不織布の目付は402g/mであった。
【0036】
得られた実施例1、2、比較例1の積層長繊維不織布について、厚みおよび各種の荷重をかけた状態での厚みと嵩密度を求めた。そして、厚みおよび各種の荷重時の厚みについては、目付100g/mあたりの厚みに換算して、特定荷重時における目付100g/mあたりの厚みを求めた。
【0037】
厚みおよび各種荷重時の厚みは、上記したように、JIS L1913 6.1厚さ(ISO法)A法に準じて、厚みを測定し、試料は、標準状態の試料から、縦10cm×横10cmの試料片10点とし、プレッサーフードの面積が10cmのものを用いて測定した。荷重は、20gf/cm、100gf/cm、300gf/cmの4種とした。なお、測定した10点の厚さの平均値より、不織布の厚さ(μm)を求め、下記式により、嵩密度を算出した。
【0038】
嵩密度(g/cc)=目付(g/m)/厚さ(μm)
【0039】
また、得られた実施例1、2、比較例1の積層長繊維不織布について、通気度の測定を行った。通気度(cc/cm2・秒)は、フラジール型通気度試験機(DAIEI KAGAKUSEIKI SEISAKUSHO LTD.TEXTILE AIR PERMEABILITY TESTER 織物通気度試験機) を用い、JIS L 1096の「一般織物試験方法」に準拠し、傾斜型気圧計は12.7mmに固定して通気度を測定した。そして得られた通気度の値は、目付100g/mあたりに換算して、目付100g/mあたりの通気度を求めた。
【0040】
結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

本発明の実施例と、比較例とを対比すれば明らかなとおり、実施例に係る積層長繊維不織布は、圧縮した際の厚みの変化が少なく、嵩密度も高いので繊維間空隙を維持していることが分かる。また、実施例に係る積層長繊維不織布の通気度も、比較例と対して、高いものであった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明で用いるポリエステル長繊維の横断面形状である略Y4形状の一つの略Y字を示した図である。
図2】本発明におけるポリエステル長繊維の横断面形状である略Y4形状を示した図である。
図3】本発明に用いるY4形のノズル孔を示した図である。
【符号の説明】
【0043】
1 ポリエステル長繊維の横断面形状である略Y4形状の一つの略Y字の下端
2 略Y4形状で形成された凹部
3 略Y4形状で形成された凸部
4 略Y4形状で形成された小凹部
5 略Y4形状中の略+字部
6 略Y4形状中の略V字部
図1
図2
図3