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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】コート液
(51)【国際特許分類】
   C09D 123/26 20060101AFI20220714BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20220714BHJP
   C08K 5/56 20060101ALI20220714BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220714BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
C09D123/26
C08L23/26
C08K5/56
C09D7/63
C09D5/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018138932
(22)【出願日】2018-07-25
(65)【公開番号】P2020015805
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】御前 公美
(72)【発明者】
【氏名】矢野 拓磨
【審査官】山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-139975(JP,A)
【文献】特開2011-042725(JP,A)
【文献】特開2013-151391(JP,A)
【文献】特開2013-170188(JP,A)
【文献】特開2016-040369(JP,A)
【文献】特開平05-239292(JP,A)
【文献】特開2005-015514(JP,A)
【文献】特開2015-170461(JP,A)
【文献】特開2005-075879(JP,A)
【文献】特開2005-075878(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107722545(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00、101/00-201/10
C08K 5/56
C08L 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部、有機金属化合物0.1~50質量部、および媒体を含有し、
酸変性ポリオレフィン樹脂が、オレフィン成分としてエチレンのみを含有し、かつ不飽和カルボン酸成分を0.1~4質量%含有する樹脂であるか、または、オレフィン成分としてプロピレンを含有する樹脂であり(ただし、酸変性された塩素化ポリオレフィン樹脂を除く)、
有機金属化合物を構成する金属が、遷移金属であることを特徴とするコート液。
【請求項2】
有機金属化合物が、金属アルコキシド類であることを特徴とする請求項1記載のコート液。
【請求項3】
遷移金属が、TiまたはZrであることを特徴とする請求項1または2記載のコート液。
【請求項4】
媒体が、水性媒体であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のコート液。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載のコート液から得られる塗膜。
【請求項6】
基材の少なくとも一方の面の少なくとも一部に、請求項記載の塗膜が積層された積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸変性ポリオレフィン樹脂と有機金属化合物を含むコート液に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂は、力学特性や化学特性、リサイクル特性などが優れていることから、成形体として、電気、電子、自動車、包装等の各種分野で幅広く、しかも大量に使用されている。また、ポリオレフィン樹脂は、コート液としての開発もなされてきており、中でも、酸変性ポリオレフィン樹脂を水性分散化したコート液が、多く提案されている。
高性能化や機能性付与等の目的で、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体に、添加剤を配合することも従来から行われている。例えば、特許文献1には、カルボキシル基側鎖を有するポリオレフィン樹脂粒子とエポキシ系架橋剤とを含有する水性分散体が開示され、この分散体を、接着剤や塗料に使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-080236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、酸変性ポリオレフィン樹脂に架橋剤を含有させた水性分散体においては、塗膜と基材との密着性、塗膜の耐溶剤性、均一性、接着性のさらなる向上が求められていた。
本発明の課題は、基材との密着性、耐溶剤性、均一性、接着性が優れる塗膜を形成することができる、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有するコート液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、酸変性ポリオレフィン樹脂、有機金属化合物および媒体を含有するコート液から得られる塗膜は、基材との密着性が良好であり、耐溶剤性に優れ、さらに均一性を有し、優れた接着性を有することを見出し、本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部、有機金属化合物0.1~50質量部、および媒体を含有し、
酸変性ポリオレフィン樹脂が、オレフィン成分としてエチレンのみを含有し、かつ不飽和カルボン酸成分を0.1~4質量%含有する樹脂であるか、または、オレフィン成分としてプロピレンを含有する樹脂であり(ただし、酸変性された塩素化ポリオレフィン樹脂を除く)、
有機金属化合物を構成する金属が、遷移金属であることを特徴とするコート液。
(2)有機金属化合物が、金属アルコキシド類であることを特徴とする(1)記載のコート液
(3)遷移金属が、TiまたはZrであることを特徴とする(または(2)記載のコート液。
)媒体が、水性媒体であることを特徴とする(1)~()のいずれかに記載のコート液。
)上記(1)~()のいずれかに記載のコート液から得られる塗膜。
)基材の少なくとも一方の面の少なくとも一部に、()記載の塗膜が積層された積層体。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコート液から得られる塗膜は、基材との密着性、耐溶剤性、均一性に優れるものであり、さらに、多種基材との接着性に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のコート液は、酸変性ポリオレフィン樹脂、有機金属化合物、および媒体を含有することが必要である。
【0009】
本発明のコート液を構成する酸変性ポリオレフィン樹脂は、主成分としてオレフィン成分を含有する。酸変性ポリオレフィン樹脂のオレフィン成分は、特に限定されないが、エチレン、プロピレン、イソブチレン、2-ブテン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセンなどの炭素数2~6のアルケンが好ましく、これらの混合物を用いてもよく、中でも得られる塗膜の基材との接着性を向上させる観点から、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1-ブテンなどの炭素集2~4のアルケンがより好ましく、エチレン、プロピレンがさらに好ましく、プロピレンが最も好ましい。
【0010】
酸変性ポリオレフィン樹脂におけるオレフィン成分の含有量の下限は、45質量%であることが好ましく、55質量%であることがより好ましく、60質量%であることがさらに好ましく、70質量%であることが特に好ましく、80質量%であることが最も好ましい。
一方、酸変性ポリオレフィン樹脂におけるオレフィン成分の含有量の上限は、99.9質量%であることが好ましく、99.8質量%であることがより好ましく、99.7質量%であることがさらに好ましく、99.5質量%であることが特に好ましく、99.0質量%であることが最も好ましい。
オレフィン成分の含有量が45質量%未満の場合は、得られる塗膜は、耐溶剤性や接着性が低下することがあり、一方、オレフィン成分の含有量が99.9質量%を超える酸変性ポリオレフィン樹脂は、媒体への溶解性または分散性が低下することがある。
【0011】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、媒体への分散性向上の観点から、また得られる塗膜の接着性の観点から、酸変性成分として不飽和カルボン酸成分を含有することが好ましい。
不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。
不飽和カルボン酸成分は、酸変性ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられる。
【0012】
酸変性ポリオレフィン樹脂における不飽和カルボン酸成分の含有量の下限は、0.1質量%であることが好ましく、0.5質量%であることがより好ましく、1質量%であることがさらに好ましく、2質量%であることが最も好ましい。
一方、酸変性ポリオレフィン樹脂における不飽和カルボン酸成分の含有量の上限は、10質量%であることが好ましく、8質量%であることがより好ましく、5質量%であることがさらに好ましく、4質量%であることが最も好ましい。
不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1質量未満の場合は、酸変性ポリオレフィン樹脂は、媒体に溶解あるいは分散させることが困難であり、また得られる塗膜は、基材との接着性が低下することがある。一方、不飽和カルボン酸成分の含有量が10質量%を超える場合は、得られる塗膜は、耐溶剤性や接着性が低下することがある。
【0013】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、上記オレフィン成分や不飽和カルボン酸成分以外の他の成分が、本発明の効果を損ねない限りにおいて、20質量%以下程度含有されていてもよい。
他の成分として、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸ジエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどのビニルエステル類、並びにビニルエステル類を塩基性化合物などでケン化して得られるビニルアルコール、(メタ)アクリル酸アミド類などやこれらの混和物が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどのビニルエステル類成分が好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類がより好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸~」とは、「アクリル酸~またはメタクリル酸~」を意味する。
これらの他の成分は、酸変性ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられる。
【0014】
酸変性ポリオレフィン樹脂の具体例としては、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-プロピレン-(メタ)アクリル酸エステル-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-ブテン-(メタ)アクリル酸エステル-(無水)マレイン酸共重合体、プロピレン-ブテン-(メタ)アクリル酸エステル-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-(メタ)アクリル酸エステル-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-プロピレン-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-ブテン-(無水)マレイン酸共重合体、プロピレン-ブテン-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル-(無水)マレイン共重合体、エチレン-酢酸ビニル-アクリル-(無水)マレイン共重合体などが挙げられる。
共重合体の形態はランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよいが、入手が容易という点でランダム共重合体が好ましい。
【0015】
酸変性ポリオレフィン樹脂の融点は、50℃以上であることが好ましく、60~250℃であることがより好ましく、70~200℃であることがさらに好ましく、80~180℃であることが特に好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂の融点が50℃未満であると、得られる塗膜は、耐溶剤性が低下することがあり、融点が250℃を超える酸変性ポリオレフィン樹脂は、媒体に分散化することが困難となることがある。
【0016】
本発明のコート液は、有機金属化合物を含有することが必要である。
【0017】
有機金属化合物を構成する金属は、遷移金属であることが好ましい。遷移金属としては、例えば、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au等が挙げられ、中でもTi、Zrが好ましい。
また、有機金属化合物を構成する金属として、典型金属を使用してもよく、典型金属としては、Al等が挙げられる。
【0018】
有機金属化合物は、金属アルコキシド類であることが好ましい。金属アルコキシド類とは、金属アルコキシド化合物の他、金属アルコキシド化合物のアルコキシドをヒドロキシ酸または、ヒドロキシルアミン等で置換したものを含むものである。ヒドロキシ酸としては、例えば、乳酸、タルトロン酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸等が挙げられる。また、ヒドロキシアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。また、その他に置換するものとしては、酢酸、テレフタル酸、アセチルアセトネート、エチルアセトアセテート、リン酸エステルの他、ジヒドロキシメチルグリシン、ジヒドロキシエチルグリシン、ジヒドロキシプロピルグリシン、ジヒドロキシブチルグリシン、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、ヒスチジン、トレオニン、グリシルグリシン、1-アミノシクロプロパンカルボン酸、1-アミノシクロへキサンカルボン酸、2-アミノシクロヘキサンヒドロカルボン酸等のアミノカルボン酸が挙げられる。
【0019】
構成金属がTiである有機金属化合物としては、例えば、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラノルマルプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトライソブトキシド、チタンジイソプロポキシジノルマルブトキシド、チタンジターシャリーブトキシジイソプロポキシド、チタンテトラターシャリーブトキシド、チタンテトライソオクチロキシド、チタンテトラステアリルアルコキド、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタントリブトキシテレフタレート、チタントリイソプロポキシテレフタレート、チタンジイソプロポキシジテレフタレート、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタンラクテートアンモニウム塩、乳酸チタン等が挙げられる。
【0020】
構成金属がZrである有機金属化合物としては、例えば、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、ジルコニウムテトライソブトキシド、ジルコニウムジイソプロポキシジノルマルブトキシド、ジルコニウムジターシャリーブトキシジイソプロポキシド、ジルコニウムテトラターシャリーブトキシド、ジルコニウムテトライソオクチロキシド、ジルコニウムテトラステアリルアルコキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0021】
構成金属がAlである有機金属化合物としては、例えば、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリノルマルプロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリノルマルブトキシド、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート等が挙げられる。
有機金属化合物は、上記金属アルコキシド類からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。なお、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明のコート液において、有機金属化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、0.1~50質量部の範囲であることが必要であり、有機金属化合物の含有量の下限は、0.2質量部であることが好ましく、0.5質量部であることがより好ましく、1質量部であることがさらに好ましく、上限は、30質量部であることが好ましく、10質量部であることがより好ましく、8質量部であることがさらに好ましく、5質量部であることが特に好ましい。
有機金属化合物の含有量が、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、0.1質量部未満の場合は、添加の効果が少なく、本発明の効果が得にくい。有機金属化合物の含有量が50質量部を超えると、得られる塗膜は、透明性や接着性が低下することがある。
【0023】
本発明のコート液を構成する媒体は、水性媒体(水を含む)であっても非水性媒体であってもよいが、地球環境、職場環境の観点から、水性媒体であることが好ましい。
【0024】
本発明において水以外の水性媒体とは、20℃における水に対する溶解性が50g/L以上である水溶性の有機溶媒である。水溶性の有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、tert-アミルアルコール、1-エチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸-sec-ブチル、酢酸-3-メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、3-メトキシ-3-メチルブタノール、3-メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチルなどが挙げられ、これらは単独であっても、2種類以上の混合液であってもよい。
【0025】
非水性媒体としては、例えば、トルエン、ヘプタン、キシレン、アミルベンゼン、イソプロピルベンゼン、オクタン、シクロヘキサン、シクロへキシルベンゼン、シクロへキセン、シクロペンタン、ジペンテン、シメン、テレピン油、ヘキサン、ペンタン、メシチレン、メチルシクロヘキサン等に代表される炭化水素などを用いることができる。
【0026】
水性媒体に酸変性ポリオレフィン樹脂および有機金属化合物を溶解または分散する方法としては、公知の方法を用いることが可能である。
水溶性の酸変性ポリオレフィン樹脂および有機金属化合物を用いた場合は、水性媒体の中で加熱や撹拌さらには加圧などによって溶液を得ることができる。
また、非水溶性の酸変性ポリオレフィン樹脂および有機金属化合物を用いた場合は、水性媒体に分散し、分散体として取得する方法を用いることが有効である。不揮発性の乳化剤を使用して分散化する場合、塗膜の耐溶剤性を高性能で維持するために、分散体中の乳化剤の含有量は、全固形分に対して1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%であることがより好ましく、ゼロであることが最も好ましい。乳化剤が塗膜中に存在すると、それらが塗膜の耐溶剤性、基材との密着性を低下させる原因となる。非水溶性の酸変性ポリオレフィン樹脂を水性媒体に不揮発性の乳化剤を添加せずに分散する方法は、特開2003-119328号公報などに例示されており、具体的には、酸変性ポリオレフィン樹脂、水性媒体、アミンなどの塩基性化合物と水とを密閉容器内で加熱および撹拌する方法が好ましい。
【0027】
上記塩基性化合物としては、塗膜形成時に揮発するアンモニアまたは有機アミン化合物が、塗膜の耐水性の面から好ましく、中でも沸点が30~250℃、さらには50~200℃の有機アミン化合物が好ましい。有機アミン化合物は、沸点が30℃未満の場合、樹脂の水性化時に揮発する割合が多くなり、樹脂の水性化が完全に進行しない場合がある。沸点が250℃を超える有機アミン化合物は、塗膜から乾燥によって飛散させることが困難になり、得られる塗膜は、耐水性が低下する場合がある。
【0028】
有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N-メチル-N,N-ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、sec-ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、3-メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等を挙げることができる。
塩基性化合物の添加量は酸変性ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基に対して0.5~3.0倍当量であることが好ましく、0.8~2.5倍当量であることがより好ましく、1.01~2.0倍当量であることが特に好ましい。塩基性化合物の添加量が0.5倍当量未満では、塩基性化合物の添加効果が認められず、塩基性化合物の添加量が3.0倍当量を超えると、塗膜形成時の乾燥時間が長くなったり、水性分散体が着色する場合がある。
【0029】
非水性媒体に酸変性ポリオレフィン樹脂および有機金属化合物を溶解または分散する方法としては、公知の方法を用いることが可能であり、酸変性ポリオレフィン樹脂および有機金属化合物を非水性媒体に溶解する方法が一般的である。溶解する方法としては、例えば、酸変性ポリオレフィン樹脂および有機金属化合物を、非水溶性の溶媒の中で加熱や撹拌さらには加圧などによって、酸変性ポリオレフィン樹脂および有機金属化合物の溶液を得ることができる。
【0030】
以上のような方法で得られる、酸変性ポリオレフィン樹脂、有機金属化合物および媒体を含有するコート液において、固形分濃度は、製膜条件、目的とする塗膜の厚さや性能等により適宜選択でき、特に限定されるものではないが、コート液の粘性を適度に保ち、かつ良好な塗膜形成能を発現させる点で、1~60質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましく、5~40質量%がさらに好ましく、5~30質量%が特に好ましい。
【0031】
本発明のコート液は、本発明の効果を損ねない限りにおいて、酸変性ポリオレフィン樹脂以外の樹脂、有機金属化合物以外のその他の添加剤を含有してもよい。
【0032】
酸変性ポリオレフィン樹脂以外の樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン-ポリ塩化ビニル共重合体、フッ素樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、スチレン-マレイン酸樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、UV硬化型樹脂などが挙げられる。これらは単独で含有しても、複数で含有してもよい。
酸変性ポリオレフィン樹脂以外の樹脂の含有量は、効果を損ねない限りにおいては特に限定されないが、通常、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して500質量部以下であることが好ましい。
【0033】
有機金属化合物以外のその他の添加剤としては、必要な性能によって適宜選択すればよく、特に限定されないが、例えば、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライトなどからなる無機微粒子;レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、触媒、光触媒、UV硬化剤、濡れ剤、架橋剤、浸透剤、柔軟剤、増粘剤、分散剤、撥水剤、滑剤、帯電防止剤、老化防止剤、加硫促進剤などの各種薬剤、顔料あるいは染料、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、ガラス繊維などの添加剤や上記添加剤以外の有機もしくは無機の化合物が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0034】
本発明のコート液は、様々な基材に対して良好な密着性を有し、公知の方法によって塗布することができる。コート液に含有する溶媒の全てまたは一部を乾燥することにより、本発明の塗膜を得ることができ、これにより、基材の少なくとも一方の面の少なくとも一部に塗膜が積層された積層体を得ることができる。
基材としては特に限定されず、例えばプラスチックの成形体、熱可塑性樹脂フィルム、繊維、不織布、ガラス、金属、金属箔、紙等が挙げられる。
熱可塑性樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン樹脂;ポリスチレン樹脂;6-ナイロン、ポリ-m-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)などのポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアクリルニトリル樹脂;ポリイミド樹脂やこれらを混合したものが挙げられる。熱可塑性樹脂フィルムは、これらの樹脂の複層体(例えば、ナイロン6/MXD/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)でもよい。
【0035】
本発明のコート液の塗布方法としては、特に限定されず、公知の塗布方法を用いることができる。例えば、キャスティングヘッドからの吐出、ロールコート、エアナイフコート、グラビアロールコート、ドクターロールコート、ドクターナイフコート、カーテンフローコート、スプレーコート、シャワーコート、ワイヤーバー、ロッドコート、浸漬コート、刷毛塗りなどが挙げられる。また塗布は2回以上行ってもよい。
【0036】
乾燥方法や乾燥条件は特に限定されず、塗膜の厚み等に応じて適宜、設定することができる。効率よく乾燥させるために、加熱乾燥することが好ましい。乾燥温度は、40~250℃が好ましく、60~200℃がより好ましい。また乾燥時間は、塗膜の耐溶剤性を良好にするためには長時間の乾燥が有効であるが、生産性などの観点から、5~1200秒が好ましく、10~900秒がより好ましく、20~600秒がさらに好ましい。また、乾燥後のいずれかの工程で熱処理してもよい。
【0037】
塗膜の厚みは、目的に応じて適宜、設定してよい。例えば、乾燥後の塗膜の厚みとしては、0.05~500μmが好ましく、0.2~200μmがより好ましく、0.3~100μmがさらに好ましい。塗膜の厚みが0.05μm未満の場合は、本発明の効果が小さく、500μmを超えた場合は、効果が飽和してくるため、経済的に不利である。
【0038】
基材に塗膜が積層された積層体は、互いの層間の接着性を向上させるなど種々の目的で、層間に表面処理がなされていてもよいし、アンカーコート層や接着層などのその他の層が設けられていてもよい。さらには基材の外層側や内層側に必要に応じてその他の層が設けられていてもよい。
【実施例
【0039】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0040】
各種の特性については以下の方法によって測定または評価した。
1.酸変性ポリオレフィン樹脂の特性
(1)構成
H-NMR分析(バリアン社製、300MHz)より求めた。酸変性ポリオレフィン樹脂は、オルトジクロロベンゼン(d)を溶媒とし、120℃で測定した。
(2)メルトフローレート(MFR)
JIS 6730記載(190℃、2160g荷重)の方法で測定した。
【0041】
2.酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体の特性
(1)数平均粒子径
マイクロトラック粒度分布計(日機装株式会社製、UPA150、MODEL No.9340、動的光散乱法)を用い、樹脂の屈折率を1.50として求めた。
【0042】
3.コート液の特性
(1)塗膜の耐溶剤性
PETフィルム(ユニチカ社製、エンブレットTAG-50、厚さ50μm、透明グレード、ヘイズ値2%)に、コート液を乾燥後の塗膜の厚みが10μmになるようにマイヤーバーを用いて塗布した後、120℃で2分間、乾燥させて、積層体を得た。
PETフィルム上に形成した塗膜について、メチルエチルケトンをしみ込ませたガーゼで50往復のラビング試験を行い、表面状態を目視で評価した。
○:変化なし
△:塗膜がくもる、または一部に溶解の痕跡あり
×:塗膜が完全に溶解、または剥離
【0043】
(2)基材/塗膜層の密着性
PETフィルム(ユニチカ社製、エンブレットTAG-50、厚さ50μm、透明グレード、ヘイズ値2%)に、コート液を乾燥後の塗膜の厚みが2μmになるようにマイヤーバーを用いて塗布した後、120℃で2分間、乾燥させて、積層体を得た。
PETフィルム上に形成した塗膜の表面に、セロハンテープ(ニチバン社製、TF-12)を貼り付け、テープを一気に剥がした場合の剥がれの程度を目視で評価した。
○:全く剥がれなし
△:一部、剥がれた
×:全て剥がれた
【0044】
(3)塗膜の均一性
PETフィルム(ユニチカ社製、エンブレットTAG-50、厚さ50μm、透明グレード、ヘイズ値2%、算術平均高さ(Sa)45nm)に、コート液を乾燥後の塗膜の厚みが2μmになるようにマイヤーバーを用いて塗布した後、120℃で2分間、乾燥させて、積層体を得た。
PETフィルム上に形成した塗膜について、非接触式表面性状測定機(アメテック社製、タリサーフCCI6000)を用いて、三次元表面粗さにおける算術平均高さ(Sa)を測定して、均一性を評価した。使用用途によって一概には言えないが、塗膜は均一である方が好ましい。本試験で求められる算術平均高さ(Sa)は、200nm以下であることが好ましく、100nm未満であることがより好ましい。
【0045】
(4)塗膜の接着性
PETフィルム(ユニチカ社製、エンブレットTAG-50、厚さ50μm、透明グレード、ヘイズ値2%)に、コート液を乾燥後の塗膜の厚みが2μmになるようにマイヤーバーを用いて塗布した後、120℃で2分間、乾燥させて、積層体を得た。
積層体の塗膜上に、未コートのPETフィルムを重ねて、ヒートプレス機でプレス圧0.1MPa/cm、120℃、10秒の条件で熱圧着し、熱圧着積層体を得た。
得られた熱圧着積層体から幅15mmの試験片を採取し、引張り試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機2020型)を用い、180°剥離により接着強度を測定した。測定は20℃、65%RHの雰囲気中、引張速度200mm/分で行った。
【0046】
コート液製造の原料として下記のものを使用した。
<水性分散体HX8290Emの製造>
撹拌機とヒーターを備えた1リットル容ガラス容器に、酸変性ポリオレフィン樹脂HX8290(アルケマ社製、ホンダインHX8290)を100g、イソプロパノールを100g、2-ジメチルアミノエタノールを5g、蒸留水を295g仕込んだ。撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに120分間撹拌し分散化させた。その後、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ、ヒーターの電源を切り約40℃まで冷却したところで、イソプロパノールを添加して水性分散体の固形分濃度を10質量%となるように調整し、180メッシュのステンレス製フィルターで加圧濾過して、乳白色の均一なHX8290の水性分散体(HX8290Em)を得た。
【0047】
<水性分散体AN42115CEmの製造>
撹拌機とヒーターを備えた1リットル容ガラス容器に、酸変性ポリオレフィン樹脂AN42115C(三井・デュポンポリケミカル社製、ニュクレルAN42115C)を75g、n-プロパノールを175g、2-ジメチルアミノエタノールを20g、蒸留水を230g仕込んだ。撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を150℃に保ってさらに120分間撹拌し分散化させた。その後、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ、ヒーターの電源を切り約40℃まで冷却したところで、イソプロパノールを添加して水性分散体の固形分濃度を10質量%となるように調整し、180メッシュのステンレス製フィルターで加圧濾過して、乳白色の均一なAN42115Cの水性分散体(AN42115CEm)を得た。
【0048】
<水性分散体N1560Emの製造>
撹拌機とヒーターを備えた1リットル容ガラス容器に、酸変性ポリオレフィン樹脂N1560(三井・デュポンポリケミカル社製、ニュクレルN1560)を75g、イソプロパノールを50g、2-ジメチルアミノエタノールを7g、蒸留水を368g仕込んだ。撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を130℃に保ってさらに120分間撹拌し分散化させた。その後、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ、ヒーターの電源を切り約40℃まで冷却したところで、イソプロパノールを添加して水性分散体の固形分濃度を10質量%となるように調整し、180メッシュのステンレス製フィルターで加圧濾過して、乳白色の均一なN1560の水性分散体(N1560Em)を得た。
【0049】
<水性分散体PO1Emの製造>
プロピレン-エチレン共重合体(プロピレン/エチレン=97/3質量%、重量平均分子量85000)280gを、4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた。その後、系内温度を180℃に保って、撹拌下、不飽和カルボン酸としての無水マレイン酸20.0gとラジカル発生剤としてのジ-tert-ブチルパーオキサイド6.0gとをそれぞれ2時間かけて加え、その後1時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥して、酸変性ポリオレフィン樹脂PO1を得た。
撹拌機とヒーターを備えた1リットル容ガラス容器に、酸変性ポリオレフィン樹脂PO1を60g、エチレングリコール-n-ブチルエーテルを45g、2-ジメチルアミノエタノールを8g、蒸留水を137g仕込んだ。撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を150℃に保ってさらに60分間撹拌し分散化させた。その後、回転速度300rpmのまま撹拌しつつ、空冷にて内温が80℃になるまで冷却し、撹拌を止め、開封して、テトラヒドロフランを45g、2-ジメチルアミノエタノールを5g、蒸留水を30g添加した。その後、密閉し、撹拌翼の回転速度を300rpmとして系内温度を130℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ、ヒーターの電源を切り、室温(約25℃)まで冷却した後、180メッシュのステンレス製フィルターで加圧濾過して、微白濁の均一なPO1の水性分散体(PO1Em)を得た。
【0050】
使用した酸変性ポリオレフィン樹脂と、得られた水性分散体の特性を表1にまとめた。
【0051】
【表1】
【0052】
<有機金属化合物>
・TC-100:マツモトファインケミカル社製オルガチックスTC-100(チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、固形分濃度75質量%)
・TC-400:同TC-400(チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、固形分濃度80質量%)
・ZC-540:同ZC-540(ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、固形分濃度45質量%)
・AL-3200:同AL-3200(アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、固形分濃度76質量%)
【0053】
<架橋剤>
・EM-051R:アデカ社製アデカレジンEM-051R(エポキシ化合物の水性分散体、固形分濃度48質量%)
・SDH:大塚化学社製セバシン酸ジヒドラジドの水溶液(固形分濃度5質量%)
・Aqua BI200:Baxenden社製ブロックイソシアネートAqua BI200(固形分濃度40質量%)
【0054】
実施例1
酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体としてHX8290Emを用い、有機金属化合物としてTC-100を用い、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、有機金属化合物が2質量部となるように混合し、室温で撹拌した。次いで、混合液に、媒体としてイソプロパノールを、固形分濃度が20質量%となるように添加し、コート液C-1を得た。得られたコート液を用いて、耐溶剤性、密着性、均一性、接着性を評価した。
【0055】
実施例2~3、5~7、10、比較例1~6、参考例1~
水性分散体を構成する酸変性ポリオレフィン樹脂の種類、有機金属化合物の種類と質量部、架橋剤の種類と質量部を、表2記載のように変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、固形分濃度が20質量%のコート液C-2~16を得た。得られたコート液を用いて、耐溶剤性、密着性、均一性、接着性を評価した。
【0056】
実施例1~3、5~7、10、比較例1~6、参考例1~で作成したコート液の評価結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
表2に示すように、実施例1~3、5~7、10で得られたコート液は、酸変性ポリオレフィン樹脂と有機金属化合物とを本発明で規定する比率で含有するため、それぞれのコート液から得られた塗膜は、耐溶剤性、密着性、均一性、接着性に優れるものであった。
実施例1~3と参考例3の比較から、有機金属化合物を構成する金属は、遷移金属の方が好ましいものであった。参考例2において、酸変性ポリオレフィン樹脂中の不飽和カルボン酸成分の含有量が多いと、得られる塗膜に、耐溶剤性、密着性、均一性の低下がみられた。
これに対して、比較例1のコート液は、有機金属化合物を含有していなかったため、比較例2~3のコート液は、有機金属化合物の含有量が本発明で規定する量をはずれるため、また、比較例4~6のコート液は、有機金属化合物を含有せず、架橋剤を使用したため、耐溶剤性、密着性、均一性、接着性に劣るものであった。