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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】排泄物採取具
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/04 20060101AFI20220714BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20220714BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
G01N1/04 G
G01N1/10 V
G01N33/48 G
G01N33/48 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019138308
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2020024197
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2020-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2018143021
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598056733
【氏名又は名称】株式会社▲高▼橋型精
(74)【代理人】
【識別番号】100092598
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 光広
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-270403(JP,A)
【文献】特開平10-068726(JP,A)
【文献】特開平10-227787(JP,A)
【文献】特開平06-058925(JP,A)
【文献】実開平07-006760(JP,U)
【文献】特開平06-167491(JP,A)
【文献】特開2017-198512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央にリザーバーが設けられた排泄物採取部と、
前記排泄物採取部の少なくとも左右方向に延設されたバンド部と、
からなり、便器の便座またはリムに懸架して使用する排泄物採取具であって、
前記排泄物採取部は、
水に溶ける単層紙または積層紙からなるベース材の少なくとも前記リザーバーを含む領域に透水性低下材が塗布されて構成され、
前記バンド部は、
少なくとも一層が前記ベース材と連続する、水に溶ける単層紙または積層紙を含んで構成され、
前記排泄物採取部の前記リザーバーを除く領域に一または二以上の排泄物排出孔が設けられていることを特徴とする排泄物採取具。
【請求項2】
前記透水性低下材は、スプレー装置を用いた塗布により構成される請求項1に記載の排泄物採取具。
【請求項3】
前記排泄物採取部の前記リザーバーの内表面に、使用者の状況・状態を検知するための試薬を設けた請求項1または2に記載の排泄物採取具。
【請求項4】
前記リザーバー及びまたは前記リザーバー内の排泄物に対して供給し、使用者の状況・状態を検知するための試薬を収納した容器を備える請求項1から3の何れか1項に記載の排泄物採取具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座に着座した状態で排泄物の採取ができる排泄物採取具に関し、具体的には通常の便のみならず水様の便の採取にも適し、さらには特に女性の尿の採取にも適した排泄物採取具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洋式便器用の排泄物採取具が公知である(特許文献1参照)。図9は従来の排泄物採取具の説明図であり、(A)は排泄物採取具の平面図、(B)は排泄物採取具の側断面図である。図9(A),(B)に示すように、排泄物採取具91は、排泄物を採取するために用いられる。
排泄物採取具91は、水溶性の排泄物採取部92と、その左右に延設されたバンド部94(94a,94b)から構成される。
排泄物採取部92は、図9(B)に示されるように、2段の逆ピラミッド型の容器状をなしており、上段の受け部921と下段のリザーバー922とから構成されている。受け部921とリザーバー922との間にはフラット部923が形成されている。フラット部923には排泄物排出孔W2が形成されている。
バンド部94a,94bには、それぞれ矩形の軽量化用孔W0が形成されており、バンド部94a,94bの端にはそれぞれ接着材層Cが設けられている。
排泄物採取具91の採便具としての使用に際し、使用者はバンド部94a,94bを洋式便器の便座の左右に貼り付け、排泄物採取部92を懸架した状態で採便を行うことができる。採便後は、排泄物採取具91を、そのままトイレに流すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-135296
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の排泄物採取具91を採便に使用する場合において、便が水様である場合には、排泄物採取部92を透過してしまい、採取ができないことがある。これに対処するために、排泄物採取具91として水様便が透過しにくい素材を採用すると、便の採取はできるものの、排泄物採取具91が排水管に詰まってしまう。
また、特許文献1の排泄物採取具91を採尿に転用する場合も同様であり、尿が排泄物採取部92を透過してしまい、採取ができず、排泄物採取具91として尿が透過しにくい素材を採用すると、尿の採取はできるものの、排泄物採取具91が排水管に詰まってしまう。
【0005】
本発明の目的は、通常の便のみならず水様の便の採取にも適した、便座に着座した状態で便の採取ができる排泄物採取具を提供することである。
また、本発明の他の目的は、女性の尿の採取にも適した、便座に着座した状態で尿の採取ができる排泄物採取具を提供することである。
【0006】
上述した課題はそれぞれ独立したものとして記載しているものであり、本発明は、必ずしも記載した課題の全てを解決できる必要はなく、少なくとも一つの課題が解決できれば良い。またこの課題を解決するための構成についても単独で分割出願・補正等により権利取得する意思を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下を要旨とする。
(1)
中央にリザーバー(reservoir)が設けられた排泄物採取部と、
前記排泄物採取部の少なくとも左右方向(すなわち、または左右方向および後方向等)に延設されたバンド部と、
からなり、便器の便座またはリムに懸架して使用する排泄物採取具であって、
前記排泄物採取部は、
水に溶ける単層紙または積層紙からなるベース材と、
少なくとも前記リザーバーを含む領域に形成した水に溶けるフィルム材と、
を含んで構成され、
前記バンド部は、
少なくとも一層が前記排泄物採取部の前記ベース材と連続する、水に溶ける単層紙または積層紙を含んで構成され、
前記フィルム材は、所定時間は水に溶けずに前記リザーバー内に水様の便及びまたは尿を保持するものであることを特徴とする排泄物採取具。
【0008】
排泄物採取部は、例えば、概略、逆多角錐、逆多角錐台、逆円錐、逆円錐台またはこれらの合成形状となるように構成できる。典型的には、逆多角錐は逆四角錐、逆多角錐台は逆四角錐台である。後述する実施形態では、排泄物採取部は、中段にステップを有するピラミッドを逆転させた形状となっている。
排泄物採取部は、水に溶ける単層紙または積層紙からなるベース材を基本構成とする。
リザーバーは、排泄物採取部の下部(例えば、逆多角錐、逆多角錐台、逆円錐、逆円錐台の下部)を構成するもので、少なくとも前記リザーバーを含む領域にベース材に積層して形成した水に溶けるフィルム材が設けられる。
リザーバーの容積はたとえば3mL~5mLの容量とすることが好ましい範囲であるが、5mLより大きな容積とすることができるし、3mLより小さな容積とすることができる。
バンド部は、たとえば、左右に1本ずつ延設されていてもよいし、左右に2本ずつ延設されていてもよい。また、左右および後方に延設するようにしてもよい。また、排泄物採取具が、採尿具として使用される場合には、バンド部は、左右および前方に延設するようにしてもよい。
ベース材の素材は典型的には水溶紙である。フィルム材の素材として、PVA系樹脂を採用することができる。また、ポリエチレンテレフタレートやポリオレフィン等の疎水性の材料を使用することができるし、セルロースを使用することもできる。
【0009】
(2)
(1)に記載の排泄物採取具であって、
前記リザーバーは、生理食塩水の注入から3分後の保持率が50%以上であることを特徴とする排泄物採取具。
(1)の態様では、生理食塩水の注入から3分後の保持率が15%より多い値となるように前記リザーバーを構成できる。(1)の態様では、生理食塩水の注入から3分後の保持率が20%以上となるように前記リザーバーを構成できる。この保持率は、好ましくは30%以上ないし70%以上である。なお、リザーバーはトイレに流されることから、上記保持率は75%または85%あるいは95%以下とすることができる。
【0010】
(3)
中央にリザーバー(reservoir)が設けられた排泄物採取部と、
前記排泄物採取部の少なくとも左右方向(すなわち、または左右方向および後方向等)に延設されたバンド部と、
からなり、便器の便座またはリムに懸架して使用する排泄物採取具であって、
前記排泄物採取部は、
水に溶ける単層紙または積層紙からなるベース材からなり、前記リザーバーが構成される領域に透水性低下材が塗布されて構成され、
前記バンド部は、
少なくとも一層が前記ベース材と連続する、水に溶ける単層紙または積層紙を含んで構成され、
ることを特徴とする排泄物採取具。
【0011】
上述した(1)の態様では、ベース材にフィルムが積層された領域にリザーバーが構成されたが、(3)の態様では、ベース材に透水性低下材が塗布された領域にリザーバーが構成される。
透水性低下材の塗布は、方法を問わず、たとえば刷毛を用いて塗布してもよいし、スプレー装置により塗布してもよい。なお、透水性低下材として、熱硬化傾向が強い樹脂等を使用すると良い。
バンド部の構成、リザーバーの容積等は、(1)の態様と同じである。
【0012】
(4)
(3)に記載の排泄物採取具であって、
前記リザーバーは、生理食塩水の注入から3分後の保持率が15%以上であることを特徴とする排泄物採取具。
(3)の態様でも、生理食塩水の注入から3分後の保持率が15%より多い値となるように前記リザーバーを構成できる。(3)の態様では、生理食塩水の注入から3分後の保持率が20%以上となるように前記リザーバーを構成できる。この保持率は、好ましくは30%以上ないし70%以上である。なお、リザーバーはトイレに流されることから、上記保持率は75%または85%あるいは95%以下とすることができる。
【0013】
(5)
前記排泄物採取部の前記リザーバーを除く領域に一または二以上の排泄物排出孔が設けられている(1)から(4)の何れか1項に記載の排泄物採取具。
一または二以上の排泄物排出孔により、下痢便または水様便の排泄物採取部からの排出を促進することができる。
【0014】
(6)
前記排泄物採取部の前記リザーバーの内表面に、使用者の状況・状態を検知するための試薬を設けた(1)から(5)の何れか1項に記載の排泄物採取具。
【0015】
(7)
前記リザーバー及びまたは前記リザーバー内の排泄物に対して供給し、使用者の状況・状態を検知するための試薬を収納した容器を備える(1)から(6)の何れか1項に記載の排泄物採取具。
【0016】
本発明の排泄物採取具は、2つの型からなるプレス成型により製造することができる。
プレス成型機は、排泄物採取部の凸形状を有する第1型と排泄物採取部の凹形状を有する第2型から構成できる。排泄物採取部が、中段にステップを有するピラミッドを逆転させた形状である場合には、(5)の態様において述べた排泄物排出孔は、第1型および第2型に設けたパンチ機構により打ち抜くことができる。
本発明の排泄物採取具では、排泄物採取部の周囲および/またはバンド部の周囲に、押圧力の高い線素片が破線状に表れる縁取り(いわゆるミシン目)、あるいは押圧力の高い連続線として表れる縁取り(押圧条)を形成することができる。
【0017】
また、バンド部材の面の全体にわたり、上記ミシン目や押圧条を格子等の模様で形成することができる。
バンド部材や採取部材にミシン目や押圧条を形成することで、積層して製造された排泄物採取具が剥離しにくくなるし、使用に際してのバンド部材や採取部材の強度が調整される。
その一方で、表裏を貫通するミシン目は、濡れた場合に水の浸透を助長する。したがって、バンド部にミシン目を形成することで使用時の強度が増し、かつ便器に流す場合に詰まりにくくなる。
したがって、たとえばミシン目や押圧条の模様を増やしたり減らしたりすること、破線の太さやピッチを調整することで、排泄物採取具が水に溶ける速度を制御することも可能である。
【0018】
なお、本発明の排泄物採取具では、長さ方向に水溶性の帯状補強材を追加する等により、バンド部の濡れによる強度低下を抑制することができる。帯状補強材は、ベース材と同じ素材を用いることもできるし、ベース材と異なる素材、たとえばフィルム材と同じ素材を用いることもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の排泄物採取具では、通常の便のみならず、潰瘍性大腸炎患者、食あたり患者等における水様便の採取にも適した、便座に着座した状態での採取ができる。
本発明の排泄物採取具は、特に女性の採尿にも適しており、便座に着座した状態での採取ができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は本発明の排泄物採取具の第1実施形態を示す図である。図1(A)は排泄物採取具1Aの平面図を示し、図1(B)は(A)におけるX0-X0の側断面図を示している。
図2図2は本発明の排泄物採取具の第2実施形態を示す図である。図2(A)は排泄物採取具1Bの平面図を示し、図2(B)は(A)におけるX0-X0の側断面図を示している。
図3図3は本発明の排泄物採取具の第3実施形態を示す図である。図3(A)は排泄物採取具1Cの平面図を示し、図3(B)は(A)におけるX0-X0の側断面図を示している。
図4図4は本発明の排泄物採取具の第4実施形態を示す図である。図4(A)は排泄物採取具1Dの平面図を示し、図4(B)は(A)におけるX0-X0の側断面図を示している。
図5図5(A)~(C)は図3に示した排泄物採取具1Cの使用形態の一例を示す図である。図5(A)は便座62を着座できるようにセットしたときの着座式便器6の平面図、図5(B)は(A)におけるX1-X1線断面図(正面図)、図5(C)は(A)におけるX2-X2線断面図(側面図)である。
図6図6は本発明の排泄物採取具(採尿用排泄物採取具)の第5実施形態を示す図である。図6(A)は排泄物採取具1Eの平面図を示し、図6(B)は(A)におけるX0-X0の側断面図を示している。
図7図7(A)~(C)は図6に示した排泄物採取具1Eの使用形態の一例を示す図である。図7(A)は便座62を着座できるようにセットしたときの着座式便器6の平面図、(B)は(A)におけるX1-X1線断面図(正面図)、図7(C)は (A)におけるX2-X2線断面図(側面図)である。
図8図8は本発明の排泄物採取具の第6実施形態を示す図である。図8(A)は排泄物採取具1Fの平面図を示し、図8(B)は(A)におけるX0-X0の側断面図を示している。
図9図9は従来の排泄物採取具の説明図であり、図9(A)は排泄物採取具の平面図、図9(B)は排泄物採取具の側断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について図面に基づき、詳細に説明する。なお、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0022】
図1は本発明の排泄物採取具の第1実施形態を示す図である。図1(A)は排泄物採取具1Aの平面図を示し、図1(B)は(A)におけるX0-X0の断面図を示している。図1(B)には、符号Fで示す部分の拡大図を併記してある。
【0023】
図1において排泄物採取具1Aは、平面視四角形の採取部2と、採取部2の左右(横方向)に延設されたバンド部4(バンド部4a,4b)とからなる。同図ではバンド部4a,4bの縦幅は、採取部2の縦幅の縦幅と同じに構成してあるが、採取部2の縦幅よりも狭く構成することもできるし、広く構成することもできる。なお、本実施形態の排泄物採取具1Aでは、平面素材を三次元にプレス成型することから、完成品に皺Kが形成される。なお、第2~第5実施形態の排泄物採取具1B~1Eについても同様である。
【0024】
採取部2は、図1(B)に示されるように、本実施形態では2段の逆ピラミッド型の容器状をなしており、上段の受け部21と下段のリザーバー22とから構成されている。受け部21とリザーバー22との間にはフラット部23が形成されている。フラット部23には排泄物排出孔W2が形成されている。
【0025】
採取部2は、全体(受け部21およびリザーバー22)を構成する採取部ベース材と、リザーバー22の領域に形成されたフィルム材24からなる。
採取部2が逆ピラミッド型に形成されることで、使用者の水様便が受け部21に放出された場合に、必要量がリザーバー22に保持され、余剰分は排泄物排出孔W2から排出される。
また、受け部21とリザーバー22との間に、フラット部23を形成することで、図示しないプレス金型に排泄物排出孔W2をパンチングする機構を造作することが容易となる。本実施形態では、採取部2に溜まる水様便の重さを軽減することができる。
【0026】
バンド部4a,4bは、バンド部ベース材からなり、端部下面に形成した接着材層Cとからなる。
本実施形態では、採取部ベース材およびバンド部ベース材は水に溶ける2層(紙層S1,S2)の積層紙(水溶・水解紙)からなり、採取部ベース材とバンド部ベース材とは連続した(すなわち、同一枚葉の)単層紙原材または積層紙原材から形成されている。
本実施形態では、接着材層Cも、水に溶けるものが選択されている。なお、接着材層Cは、使用前において離型紙により被覆される。この離型紙も水に溶けるように形成でき、たとえば蝋材を塗布した水溶性紙を用いることもできる。
【0027】
リザーバー22部分に形成されるフィルム材24は、水に溶けるフィルム材であるが、所定時間は水に溶けずにリザーバー22内に水様の便及びまたは尿を保持する機能を有するものとすると良い。このようにすると、リザーバー22内に例えば水様便や、尿が貯まったとしても、フィルム材24はすぐに溶けたり破けたりすることなくカップ状の形態を保持し、当該水様便や尿を所定時間貯留することができる。通常の便のみならず水様便や尿の採取にも適する。そしてフィルム材24は、水に溶ける材質のため、排出物の採取後は排泄物採取具1Aをそのまま排出物と共に便器内に廃棄することで、水洗できる。
【0028】
水に溶けるフィルム材は、例えば樹脂製のフィルム材とするとよく、例えばPVA系樹脂フィルム)を採用するとよい。図1(B)中のF部に拡大して示す図から明らかなように、リザーバー22部分は、採取部ベース部材を構成する2層の紙層S1と紙層S2の間にフィルム材24を挟み込んだ3層構造としている。
【0029】
リザーバー22は、生理食塩水の注入から3分後の保持率が15%以上であることが好ましい。なお、フィルム材24もトイレに流すことから、上記保持率は85%以下または95%以下であることが好ましい。
【0030】
なお、従来市販されている排泄物採取具の重量が約6グラム以上である。これに対し、本実施形態の排泄物採取具は、重量が約5グラム以下(または,4.5グラム以下または4.0グラム以下)に設計するとよい。これにより、排泄物採取具1Aでは、便器に流した場合の排水管等の紙詰りが生じにくい。
【0031】
図1(A)に示されるように、本実施形態では、採取部2の周囲およびバンド部4a,4bの周囲に、押圧力の高い線素片が破線状に表れる縁取りDL(本明細書ではミシン目とも言う)が形成されている。なお、図示はしないがバンド部4a,4bの面の全体にわたり、押圧力の高い線素片が破線状に表される格子、押圧力の高い連続線により表される格子等の適宜模様を形成することができる。
【0032】
図1の排泄物採取具1Aでは、縁取りDLにより排泄物採取具1Aを構成する水溶・水解性紙の層が剥離しにくいので、採取部2およびバンド部4a,4bの強度が保障される。したがって、縁取りDLの模様を増やしたり減らしたりすること、縁取りDLの太さやピッチを調整することで、排泄物採取具が水に溶ける速度を制御することも可能である。
【0033】
排泄物採取具1Aの製造に際して、例えば採取部ベース材L1とバンド部ベースL2との一体品は水に溶ける紙を多層(本実施形態では2層)重ね合わせ、これを所望形状に打ち抜くと同時に、熱プレスにより成型することで製造することができる。このとき、フィルム材24を所望位置に配置しておくことで図1に示した排泄物採取具1Aを製造することができる。
【0034】
なお、熱プレスの前工程、熱プレスと同時、または熱プレスの後工程において、消毒剤、消臭剤、脱臭剤、芳香剤の少なくとも1つを排泄物採取具1Aに含ませる(例えば染み込ませる)とよい。
【0035】
図2は本発明の排泄物採取具の第2実施形態を示す図である。図2(A)は排泄物採取具1Bの平面図を示し、図2(B)は(A)におけるX0-X0の側断面図を示している。図2(B)には、符号Fで示す部分の拡大図を併記してある。
【0036】
本実施形態の排泄物採取具1Bは、バンド部4a,4bに軽量化用孔W1が設けられて点が第1実施形態とは異なっている。図2の軽量化用孔W1は、バンド部4a,4bにそれぞれ6個設けられているが、2~5個、7個以上であってもよいし、次に述べるように(図3参照)、軽量化用孔をバンド部4a,4bにそれぞれ1個のみ設けることもできる。
【0037】
図3は本発明の排泄物採取具の第3実施形態を示す図である。図3(A)は排泄物採取具1Cの平面図を示し、図3(B)は(A)におけるX0-X0の断面図を示している。図3(B)には、符号Fで示す部分の拡大図を併記してある。本実施形態の排泄物採取具1Cは、上述したようにバンド部4a,4bに軽量化用孔をそれぞれ1個設けてある。
【0038】
図4は本発明の排泄物採取具の第4実施形態を示す図である。図4(A)は排泄物採取具1Dの平面図を示し、図4(B)は(A)におけるX0-X0の断面図を示している。図4(B)には、符号Fで示す部分の拡大図を併記してある。
【0039】
図1図3で示した第1実施形態~第3実施形態では、リザーバー22を含む領域には、フィルム材24が形成されているが、本実施形態では、リザーバー22を含む領域における採取部ベース材のカップ状のリザーバー22の内表面、すなわち、紙層S1の表面に透水性低下材25を備える。この透水性低下材25は、例えば紙層S1の表面に、所定の塗料を塗布して成膜すると良い。この透水性低下材25に用いる塗料としては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリオレフィン等を含む塗料を使用するとよく、セルロースを主成分とする塗料を使用しても良い。
【0040】
透水性低下材25を用いることで、リザーバー22内に例えば水様便や、尿が貯まったとしても、透水性低下材25はすぐに溶けたり破けたりすることなく、リザーバー22はカップ状の形態を保持し、当該水様便や尿を所定時間貯留することができる。よって通常の便のみならず水様便や尿の採取にも適する。そして透水性低下材25は、紙のように水にすぐに溶けることはないものの、水に溶ける材質のため、採取後は排泄物採取具1Dをそのまま排出物と共に便器内に廃棄することで、水洗できる。
【0041】
図5(A)~(C)は、図3に示した排泄物採取具1Cの使用形態を示す図である。なお、図1の排泄物採取具1A,図2の排泄物採取具1B,図4の排泄物採取具1Dについても使用方法は同じである。
【0042】
図5(A)~(C)に示す例では、着座式便器6はリム61と便座62を備える。図5(A)は便座62を着座できるようにセットしたときの着座式便器6の平面図である。図5(B)は(A)におけるX1-X1線断面図(正面図)であり、図5(C)は(A)におけるX2-X2線断面図(側面図)である。
【0043】
排泄物採取具1Cは、バンド部4a,4bの端を、接着材層Cにより着座式便器6の便座62の左右上面に貼着する。これにより、採取部2はバンド部4a,4bにより便座62に懸架される。
図5(A)~(C)の排泄物採取具1Cでは、採取部2により使用者7の便が採取される。この便は通常の半固形便であってもよいが、特に水様便の場合にはリザーバー22に便が保持されるので例えばスポイト等による採便が可能となる。
なお、バンド部4が、3つ以上のバンド部を備える使用形態は図示しないが、3つのバンド部を便座62の上面に貼着することにより、採取部2はバンド部により便座62に懸架される。
【0044】
図6は本発明の排泄物採取具の第6実施形態を示す図である。図6の排泄物採取具1Eは採尿に使用されるもので、図6(A)は排泄物採取具1Eの平面図を示し、図6(B)は(A)におけるX0-X0の断面図を示している。図6(B)には、符号Fで示す部分の拡大図を併記してある。
【0045】
本実施形態では、排泄物採取具1Eは第3実施形態の排泄物採取具1Cと概略同じであるが、バンド部4a,4bの端辺が斜めにカットされている点が排泄物採取具1Cとは異なっている。なお、第1~第4実施形態の排泄物採取具1A~1Dを、そのまま採尿用として使用することもできる。
採尿に際しては、排泄物採取具1Eは、図7に示すように便座の前側に配置しなくてはならない。排泄物採取具1Eでは、バンド部4a,4bが斜めになっていることで、便座への取り付けを容易に行うことができる。
本実施形態では、リザーバー22が尿で漏れても、排泄物排出孔W2により当該尿を排出でき、かつフィルム材24により尿を所定時間(たとえば、180秒程度)保持することができる。
【0046】
図7(A)~(C)は、図6に示した排泄物採取具1Eの使用形態を示す図である。図7(A)~(C)に示す例では、着座式便器6はリム61と便座62を備える。図7(A)は便座62を着座できるようにセットしたときの着座式便器6の平面図である。図7(B)は(A)におけるX1-X1線断面図(正面図)である。図7(C)は(A)におけるX2-X2線断面図(側面図)である。
【0047】
排泄物採取具1Eでは、バンド部4a,4bの端を、着座式便器6の便座62の左右上面に貼着することにより、採取部2はバンド部4a,4bにより便座62に懸架される。図7(A)~(C)の排泄物採取具1では、採取部2により使用者7の尿が採取される。
【0048】
図8は本発明の排泄物採取具の第6実施形態を示す図である。図8(A)は排泄物採取具1Fの平面図を示し、図8(B)は(A)におけるX0-X0の断面図を示している。図8(B)には、符号Fで示す部分の拡大図を併記してある。本実施形態の排泄物採取具1Fは、第3実施形態の排泄物採取具1Cを前提とし、さらに、リザーバー22を含む領域における採取部ベース材のカップ状のリザーバー22の内表面、すなわち、紙層S1の表面に試薬26を配置している。
【0049】
試薬26は、使用者7から排出される尿や便に接触して反応することで、使用者7の身体の状況・状態を検知する機能を有するものである。試薬26は、当該反応により例えば表示状態が変化するように、使用者7の視覚により認識できるものとするとよく、表示状態の変化は例えば色の変化とするとよい。この試薬26は、例えば、尿たん白、尿糖、尿潜血の少なくとも一つを検査するための尿検査薬や、便潜血を検査するための検査薬などとするとよい。また、試薬26は、例えば尿に基づいて判定する妊娠検査薬などとしてもよく、その他の各種のものを適用できる。
【0050】
試薬26の配置位置は、カップ状のリザーバー22の内表面の全面あるいは全体的に形成してもよいが、部分的に配置するとよい。部分的な配置は、例えば尿用の検査のための試薬は、カップ状のリザーバー22の側面とすると良く、特に深さ方向では側面の上方部位から中央部位の領域内とするとよい。また、周回方向では、無端状に配置するのでは無く、離散的にするとよい。離散的にする場合、高さ・深さの異なるに複数箇所に形成すると、少ない設置エリア・箇所で効率よく検知できるので良い。
【0051】
また、便用の試薬の場合、カップ状のリザーバー22の底面とするとよく、側面に形成する場合には下方部位とするとよい。底面の場合、全面に設けるのではなく、例えば周辺近くとするとよい。底面の中央に配置しても、その上に便が溜まったままだと、試薬の反応状態を視認しにくい。これに対し、周辺近くに設けた試薬26は、便の周辺近くの表面に接触して反応し、その反応の結果は横方向から見ると視認可能となる。
【0052】
さらに、カップ状のリザーバー22内に便が溜まった状態で、使用者7等が水その他の所望の水溶液をリザーバー22内に供給し、例えば便の表面付近等を溶かしたり軟化させたりし、例えば便潜血を検知しやすくするとよい。また、便の溜まる位置は不定であるので、コスト高になるが試薬26を全面に配置するのはよい。
【0053】
また、リザーバー22は、フィルム材24を有し、所定時間は水に溶けたり破けたりすることなく排泄物等を保持する。そこで、所定時間は、試薬26が反応し結果が現れるのに十分な時間とすると良い。
【0054】
本実施形態によれば、使用者7は、排尿或いは排便後にリザーバー22の内表面を見て試薬26の色などを視認することで、自分の身体等の現在の状態・状況を簡易的に知ることができる。そして、異常等気になる結果の場合、早期に医療機関を受診する契機付けとなるので良い。
【0055】
上述した第6実施形態は、第3実施形態を前提として構成したが、別の各種の実施形態・変形例等にも適用することができる。
【0056】
また、第6実施形態並びにその変形例では、リザーバー22の表面に所定の試薬26を設けたが、本発明はこれに限ることはなく、上述した各実施形態等において試薬を収納した容器を備えるとよい。試薬は、例えば粉体・粒体等の固体でもよいし、液体でも良い。
【0057】
このように試薬入りの容器を備えた本実施形態では、排便及びまたは排尿によりリザーバー22内に便や尿等の排泄物が溜まった状態で、容器内の試薬をリザーバー22内に供給する。すると、供給された試薬が排泄物と反応し、所望の発色等の表示状態になる。使用者は、試薬の色などの表示状態を視認することで、自分の身体等の現在の状態・状況を簡易的に知ることができる。そして、異常等気になる結果の場合、早期に医療機関を受診する契機付けとなるので良い。
【0058】
試薬を容器に収納して保存しておくことで、例えば試薬が空気等に触れたりすると劣化するように鮮度を有するものの場合、容器に密封保存することで鮮度が保てるので良い。また、鮮度に関係のないものであっても、例えば排泄した後で試薬を供給することで、排泄物の量や、排泄した位置などに応じて、適切な量や位置に試薬を供給できるので、必要十分な試薬の量で適切な判定を行うことができる。さらにまた、異なる試薬を収納した容器を試薬毎にそれぞれ用意しておくことで、そのときの使用者の状況にあった試薬を用いた簡易的な判定を行うことができるので良い。また試薬が液体の場合、例えば、通常の半固形便などの場合でも、その便の表面等を溶かしたり軟化させたりできるのでよい。
【0059】
以上、本発明の様々な側面を実施形態並びに変形例を用いて説明してきたが、これらの実施形態や説明は、本発明の範囲を制限する目的でなされたものではなく、本発明の理解に資するために提供されたものであることを付言しておく。本発明の範囲は、明細書に明示的に説明された構成や製法に限定されるものではなく、本明細書に開示される本発明の様々な側面の組み合わせをも、その範囲に含むものである。本発明のうち、特許を受けようとする構成を、添付の特許請求の範囲に特定したが、現在の処は特許請求の範囲に特定されていない構成であっても、本明細書に開示される構成を、将来的に特許請求する可能性があることを、念のために申し述べる。
【符号の説明】
【0060】
1A,1B,1C,1D,1E,1F 排泄物採取具
2 採取部
21 受け部
22 リザーバー
23 フラット部
24 フィルム材
25 透水性低下材
26 試薬
4 バンド部
4a,4b バンド部
6 着座式便器
61 リム
62 便座
7 使用者
C 接着材層
DL 縁取り
K 皺
S1,S2 紙層
W0,W1 軽量化用孔
W2 排泄物排出孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9