(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】アトピー性皮膚炎を処置するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/122 20060101AFI20220714BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220714BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220714BHJP
A61K 36/07 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
A61K31/122
A61P17/00
A61P37/08
A61K36/07
(21)【出願番号】P 2019523843
(86)(22)【出願日】2017-11-17
(86)【国際出願番号】 US2017062121
(87)【国際公開番号】W WO2018094122
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-11-05
(32)【優先日】2016-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513043570
【氏名又は名称】ゴールデン バイオテクノロジー コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】シェン―ユン リュウ
(72)【発明者】
【氏名】チー―ミン チェン
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-258091(JP,A)
【文献】特開2000-086529(JP,A)
【文献】Free Radical Bilology and Medicine,2013年,Vol.61,p.285-297
【文献】Archives of Biochemistry and Biophysics,2014年,Vol.542,p.14-20
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体のアトピー性皮膚炎の症状の処置または減少に使用するための、以下の構造を有するシクロヘキセノン化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、もしくは溶媒和物を含む、医薬組成
物であって、
前記アトピー性皮膚炎の症状の減少には、IL-4またはTNF-αの濃度の減少は含まれない、医薬組成物。
【化1】
【請求項2】
アトピー性皮膚炎の減少する症状とは、減少した皮膚炎の外観、皮膚生理機能の回復、湿潤効果の回復、炎症を起こした皮膚の表皮層と真皮層の厚さの減少、または、好酸球とランゲルハンス細胞の浸潤現象の減少である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
アトピー性皮膚炎の減少する症状とは、被験体におけるTSLPまたは総IgEの濃度の減少
、あるいはIFN-γまたはIL-12の濃度の増
加である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記シクロヘキセノン化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、もしくは溶媒和物は、経口で、非経口で、静脈内で、または注射により投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記シクロへキセノン化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、もしくは溶媒和物は、経口的に使用される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記シクロへキセノン化合物は、ベニクスノキタケから単離されるか、または、合成的にあるいは半合成的に調製される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
被験体のアトピー性皮膚炎の症状の処置または減少に使用するための、以下の構造を有するシクロヘキセノン化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、もしくは溶媒和物を含む、医薬組成物であって、
前記アトピー性皮膚炎の症状の減少は、減少した皮膚炎の外観、皮膚生理機能の回復、湿潤効果の回復、炎症を起こした皮膚の表皮層と真皮層の厚さの減少、好酸球とランゲルハンス細胞の浸潤現象の減少、被験体におけるTSLPまたは総IgEの濃度の減少、あるいはIFN-γまたはIL-12の濃度の増加である、医薬組成物。
【化2】
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
アトピー性皮膚炎(AD)(アトピー性湿疹としても知られている)は皮膚の炎症の一種(皮膚炎)である。これは皮膚のかゆみ、赤み、腫脹、および、ひび割れを引き起こす。ADを抱える人々はしばしば、恐らくおむつ領域を除く全身に広がる乾燥した皮膚や鱗状の皮膚と、腕または脚の屈曲部、顔、および首に形成される激しいかゆみのある赤い、斑点のある、隆起した病変を有している。この疾病は典型的には幼年期に始まり、年月を重ねるに連れて重症度が変化する。1歳未満の子どもでは、身体の多くが罹患することもある。人々が年をとるにつれて、膝の背面と肘の正面は最も共通する罹患領域である。成人では、手と足が最も一般的な罹患領域である。原因はまだわかっていないが、遺伝的特質、免疫系機能障害、環境暴露、および、皮膚の透過性に関係する問題を含むと信じられている。
【0002】
この診断は典型的には兆候は症状に基づく。診断を行う前に除外されなければならない他の疾患としては、接触皮膚炎、乾癬、および脂漏性皮膚炎が挙げられる。複数の処置が発赤の重症度と頻度を低下させることはあるが、ADに対する既知の治療法はまだない。処置は、疾病を悪化させるものを避けること、毎日の入浴とその後の保湿クリームの塗布、発赤が生じた場合にステロイドクリーム剤を塗布すること、および、痒さに役立つ薬物を含む。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、被験体のアトピー性皮膚炎の症状を処置または減少させるための方法が本明細書に提供され、該方法は、以下の構造を有する治療上有効な量のシクロヘキセノン化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、代謝産物、溶媒和物、あるいはプロドラッグを上記被験体に投与する工程を含み、
【0004】
【化1】
式中、
XおよびYの各々は、独立して、酸素、NR
5または硫黄であり、
Rは、水素またはC(=O)C
1-C
8アルキルであり、
R
1、R
2、およびR
3の各々は独立して、水素、随意に置換されたメチル、または(CH
2)
m-CH
3であり、
R
4は、NR
5R
6、OR
5、OC(=O)R
7、C(=O)OR
5、C(=O)R
5、C(=O)NR
5R
6、ハロゲン、5員または6員のラクトン、C
1-C
8アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、アリール、グルコシルであり、ここで、5員または6員のラクトン、C
1-C
8アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、アリール、およびグルコシルは、NR
5R
6、OR
5、OC(=O)R
7、C(=O)OR
5、C(=O)R
5、C(=O)NR
5R
6、C
1-C
8アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、C
3-C
8シクロアルキル、およびC
1-C
8ハロアルキルから選択される、1つ以上の置換基によって随意に置換され、
R
5およびR
6の各々は、独立して、水素またはC
1-C
8アルキルであり、
R
7はC
1-C
8アルキル、OR
5、またはNR
5R
6であり、
m=1-12であり、および、
n=1-12である。
【0005】
<引用による組み込み>
本明細書で言及される公開物、特許、および特許出願はすべて、あたかも個々の公開物、特許あるいは特許出願がそれぞれ参照により組み込まれるように具体的かつ個々に指示されるかのような同じ程度、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明の新しい特徴はとりわけ添付の請求項に記載される。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が用いられる実施形態を説明する以下の詳細な説明と、以下の添付図面とを引用することによって得られるであろう。
【
図1】動物研究中に化合物1を様々に与えられた各群中のマウスの重量の記録を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図2A】代表的なマウスの背中の例示的な皮膚状態の変化を示す。群Nのマウスの写真を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図2B】代表的なマウスの背中の例示的な皮膚状態の変化を示す。感作させた群である群Oのマウスの写真を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図2C】代表的なマウスの背中の例示的な皮膚状態の変化を示す。群L(マウスに低用量の例示的な化合物1を与えた)のマウスの写真を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図2D】代表的なマウスの背中の例示的な皮膚状態の変化を示す。群M(マウスに中程度の用量の例示的な化合物1を与えた)のマウスの写真を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図2E】代表的なマウスの背中の例示的な皮膚状態の変化を示す。群H(マウスに高用量の例示的な化合物1を与えた)のマウスの写真を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図3A】各群の相対的な経表皮水分喪失(3A)、相対湿度(3B)、pH(3C)の皮膚状態の例示的な試験結果を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図3B】各群の相対的な経表皮水分喪失(3A)、相対湿度(3B)、pH(3C)の皮膚状態の例示的な試験結果を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図3C】各群の相対的な経表皮水分喪失(3A)、相対湿度(3B)、pH(3C)の皮膚状態の例示的な試験結果を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図4A】各群の皮膚検体のH&E染色結果を示す。4A:群N、4B:群O、4C:群L、4D:群M、4E:群H.4Fは各群の表皮数を与える。4Gは各群の真皮数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図4B】各群の皮膚検体のH&E染色結果を示す。4A:群N、4B:群O、4C:群L、4D:群M、4E:群H.4Fは各群の表皮数を与える。4Gは各群の真皮数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図4C】各群の皮膚検体のH&E染色結果を示す。4A:群N、4B:群O、4C:群L、4D:群M、4E:群H.4Fは各群の表皮数を与える。4Gは各群の真皮数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図4D】各群の皮膚検体のH&E染色結果を示す。4A:群N、4B:群O、4C:群L、4D:群M、4E:群H.4Fは各群の表皮数を与える。4Gは各群の真皮数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図4E】各群の皮膚検体のH&E染色結果を示す。4A:群N、4B:群O、4C:群L、4D:群M、4E:群H.4Fは各群の表皮数を与える。4Gは各群の真皮数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図4F】各群の皮膚検体のH&E染色結果を示す。4A:群N、4B:群O、4C:群L、4D:群M、4E:群H.4Fは各群の表皮数を与える。4Gは各群の真皮数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図4G】各群の皮膚検体のH&E染色結果を示す。4A:群N、4B:群O、4C:群L、4D:群M、4E:群H.4Fは各群の表皮数を与える。4Gは各群の真皮数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図5A】各群の皮膚検体の好酸球染色の結果を示す。5A:群N、5B:群O、5C:群L、5D:群M、5E:群H.5Fは各群の好酸球数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図5B】各群の皮膚検体の好酸球染色の結果を示す。5A:群N、5B:群O、5C:群L、5D:群M、5E:群H.5Fは各群の好酸球数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図5C】各群の皮膚検体の好酸球染色の結果を示す。5A:群N、5B:群O、5C:群L、5D:群M、5E:群H.5Fは各群の好酸球数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図5D】各群の皮膚検体の好酸球染色の結果を示す。5A:群N、5B:群O、5C:群L、5D:群M、5E:群H.5Fは各群の好酸球数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図5E】各群の皮膚検体の好酸球染色の結果を示す。5A:群N、5B:群O、5C:群L、5D:群M、5E:群H.5Fは各群の好酸球数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図5F】各群の皮膚検体の好酸球染色の結果を示す。5A:群N、5B:群O、5C:群L、5D:群M、5E:群H.5Fは各群の好酸球数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図6A】各群の皮膚検体のTSLP染色の結果を示す。6A:群N、6B:群O、6C:群L、6D:群M、6E:群H.6Fは各群のTSLP数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図6B】各群の皮膚検体のTSLP染色の結果を示す。6A:群N、6B:群O、6C:群L、6D:群M、6E:群H.6Fは各群のTSLP数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図6C】各群の皮膚検体のTSLP染色の結果を示す。6A:群N、6B:群O、6C:群L、6D:群M、6E:群H.6Fは各群のTSLP数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図6D】各群の皮膚検体のTSLP染色の結果を示す。6A:群N、6B:群O、6C:群L、6D:群M、6E:群H.6Fは各群のTSLP数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図6E】各群の皮膚検体のTSLP染色の結果を示す。6A:群N、6B:群O、6C:群L、6D:群M、6E:群H.6Fは各群のTSLP数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図6F】各群の皮膚検体のTSLP染色の結果を示す。6A:群N、6B:群O、6C:群L、6D:群M、6E:群H.6Fは各群のTSLP数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図7A】各群の皮膚検体のランゲリン(Langerin)染色の結果を示す。7A:群N、7B:群O、7C:群L、7D:群M、7E:群H.7Fは各群のラングリン(Langrin)細胞数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図7B】各群の皮膚検体のランゲリン(Langerin)染色の結果を示す。7A:群N、7B:群O、7C:群L、7D:群M、7E:群H.7Fは各群のラングリン(Langrin)細胞数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図7C】各群の皮膚検体のランゲリン(Langerin)染色の結果を示す。7A:群N、7B:群O、7C:群L、7D:群M、7E:群H.7Fは各群のラングリン(Langrin)細胞数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図7D】各群の皮膚検体のランゲリン(Langerin)染色の結果を示す。7A:群N、7B:群O、7C:群L、7D:群M、7E:群H.7Fは各群のラングリン(Langrin)細胞数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図7E】各群の皮膚検体のランゲリン(Langerin)染色の結果を示す。7A:群N、7B:群O、7C:群L、7D:群M、7E:群H.7Fは各群のラングリン(Langrin)細胞数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図7F】各群の皮膚検体のランゲリン(Langerin)染色の結果を示す。7A:群N、7B:群O、7C:群L、7D:群M、7E:群H.7Fは各群のラングリン(Langrin)細胞数を与える。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図8A】各群からの血清免疫グロブリンとOVA特異的免疫グロブリン数の結果を示す。8A:総IgE対日数。8B:特定のIgE対日数。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図8B】各群からの血清免疫グロブリンとOVA特異的免疫グロブリン数の結果を示す。8A:総IgE対日数。8B:特定のIgE対日数。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図9A】各群からの遅延感作反応の結果を示す。9Aは耳の厚さの測定値を示す。9Bは足の太さを示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図9B】各群からの遅延感作反応の結果を示す。9Aは耳の厚さの測定値を示す。9Bは足の太さを示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図10A】24時間のPHA、ConA、およびOVAによってシミュレートされた脾臓細胞のホルモン分泌の結果を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図10B】24時間のPHA、ConA、およびOVAによってシミュレートされた脾臓細胞のホルモン分泌の結果を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図10C】24時間のPHA、ConA、およびOVAによってシミュレートされた脾臓細胞のホルモン分泌の結果を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図10D】24時間のPHA、ConA、およびOVAによってシミュレートされた脾臓細胞のホルモン分泌の結果を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図11A】72時間のPHA、ConA、およびOVAによってシミュレートされた脾臓細胞のホルモン分泌の結果を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図11B】72時間のPHA、ConA、およびOVAによってシミュレートされた脾臓細胞のホルモン分泌の結果を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図11C】72時間のPHA、ConA、およびOVAによってシミュレートされた脾臓細胞のホルモン分泌の結果を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図11D】72時間のPHA、ConA、およびOVAによってシミュレートされた脾臓細胞のホルモン分泌の結果を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図12A】24時間のPHA、ConA、およびOVAによってシミュレートされたリンパ球のサイトカイン分泌の結果を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図12B】24時間のPHA、ConA、およびOVAによってシミュレートされたリンパ球のサイトカイン分泌の結果を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図12C】24時間のPHA、ConA、およびOVAによってシミュレートされたリンパ球のサイトカイン分泌の結果を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図12D】24時間のPHA、ConA、およびOVAによってシミュレートされたリンパ球のサイトカイン分泌の結果を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図13A】72時間のPHA、ConA、およびOVAによってシミュレートされたリンパ球のサイトカイン分泌の結果を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図13B】72時間のPHA、ConA、およびOVAによってシミュレートされたリンパ球のサイトカイン分泌の結果を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図13C】72時間のPHA、ConA、およびOVAによってシミュレートされたリンパ球のサイトカイン分泌の結果を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【
図13D】72時間のPHA、ConA、およびOVAによってシミュレートされたリンパ球のサイトカイン分泌の結果を示す。p値は、スチューデントt検定によってN群と比較された。(*p<0.05、**p<0.01,***p<0.001)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
アトピー性皮膚炎(AD)は、皮膚炎、損傷を受けた皮膚のバリア機能、および環境アレルゲンへに対するIgEに刺激された感作を特徴とする。アトピー性皮膚炎(AD)の免疫応答は、急性期と慢性期に分類可能である。急性期の間、臨床症状は極度のかゆみ、紅斑丘疹、表皮剥脱、および体液滲出を示す。ADの病原は外部から内部であり、その後、外部に戻り、主としてT-ヘルパー1(Th1)TH1/TH2細胞の調節異常の制御の異常に起因した。
【0008】
表皮中の樹状細胞は主として、骨髄性の樹状細胞であるランゲルハンス細胞(LC)である。
【0009】
ランゲルハンス細胞の表面にはIgEと受容体FcεRIがある。急性期の間、これらはTH2経路を引き起こすためにTリンパ球に提示された環境上の刺激に晒され得、ランゲルハンス細胞も単球を、炎症性の樹状表皮細胞(IDEC)に移行する表皮に誘導して、IgEおよび受容体FcεRIに、炎症性サイトカイン、IL-1、IL-6、およびTNF-αを分泌するアレルギーの免疫応答を増大させることができる(Mudde GC et al., 1992; Inagaki N et al., 1997)。慢性期の間に、炎症性の樹状表皮細胞(IDEC)はTH2をTH1とTH0の経路へ移行させ、サイトカイン、IFN-r、IL-12、IL-5、およびGM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)の分泌を引き起こす。
【0010】
Leung DYらによって報告されたように、AD患者の末梢血中で循環するTh2細胞は血清IgEと好酸球の増加を引き起こす。これらのT細胞は皮膚ホーミング受容体(CLA)を発現し、これらがアレルゲンにより誘発されたIgE+LCと、Th2細胞の発育に寄与するマスト細胞(MC)に結合することができる罹患していないAD皮膚を再循環する。皮膚が引っ掻き、環境アレルゲン、あるいは微生物による毒素によって損傷すると、皮膚は、炎症細胞の皮膚への血管外漏出を促す炎症誘発性のサイトカインとケモカインを放出するようにケラチノサイトを活性化する。胸腺間質リンホポエチン(TSLP)とIL-10はさらにTh2細胞分化を増強する。AD炎症は急性の皮膚病変でTh2細胞の増加を引き起こす。しかしながら、慢性的なAD期には、それは、炎症性のIDEC、好酸球、およびマクロファージ(Mφ)の浸潤を引き起こし、これがIFN-γの発現の増加に関連するTh1タイプのサイトカイン環境へのスイッチをもたらすIL-12を産生する。(“New insights into atopic dermatitis,” Leung, et al., J. Clin. Invest., 2004 Mar 1; 113(5): 651-657を参照)。
【0011】
いくつかの実施形態において、被験体(例えば、ラット、イヌ、ネコ、ヒトなどの哺乳動物)に本明細書に記載されたシクロヘキセノン化合物を投与することによって被験体のアトピー性皮膚炎の症状を処置または減少させるための方法が本明細書で提供される。
【0012】
本発明は、特定のシクロヘキセノン化合物(低用量、中程度の用量、または高用量の化合物1など)を供給することによって、ADを抱えるマウスの疾病が著しく改善することを発見した。その改善は、例えば、減少した皮膚炎の外観、皮膚生理機能と湿潤効果の回復、炎症を起こした皮膚の表皮層と真皮層の厚さの減少、および好酸球とランゲルハンス細胞の浸潤現象の減少を含む。組織染色方法に基づいて、AD炎症を引き起こすTSLPと総IgEの量は、AD疾病を抱えるマウスに化合物1を与えることにより、用量依存的に減少した。脾臓細胞とリンパ節細胞を刺激することによる実験に基づいて、例示的な化合物はさらに、IFN-γとIL-12の濃度を増加させ、および、IL-4とTNF-αの濃度を減少させるなど、特定のサイトカインを調節することができる。したがって、本明細書に記載されるたシクロヘキセノン化合物は、ADを処置されている被験体に治療効果をもたらす(実施例1-4を参照)。
【0013】
シクロヘキセノン化合物は、いくつかの実施形態では、天然物の抽出物から得られるか、あるいは合成的または半合成的に調製される。いくつかの実施形態において、本発明は、アトピー性皮膚炎の症状を処置または減少させるための例示的なシクロヘキセノン化合物(例えば、化合物1)の治療的および予防的な可能性を与える。
【0014】
いくつかの実施形態では、被験体のアトピー性皮膚炎の症状を処置または減少させるための方法が提供され、該方法は、以下の構造を有する治療上有効な量のシクロヘキセノン化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、代謝産物、溶媒和物、あるいはプロドラッグを上記被験体に投与する工程を含み、
【0015】
【化2】
式中、
XおよびYの各々は、独立して、酸素、NR
5または硫黄であり、
Rは、水素またはC(=O)C
1-C
8アルキルであり、
R
1、R
2、およびR
3の各々は独立して、水素、随意に置換されたメチル、または(CH
2)
m-CH
3であり、
R
4は、NR
5R
6、OR
5、OC(=O)R
7、C(=O)OR
5、C(=O)R
5、C(=O)NR
5R
6、ハロゲン、5員または6員のラクトン、C
1-C
8アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、アリール、グルコシルであり、ここで、5員または6員のラクトン、C
1-C
8アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、アリール、およびグルコシルは、NR
5R
6、OR
5、OC(=O)R
7、C(=O)OR
5、C(=O)R
5、C(=O)NR
5R
6、C
1-C
8アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、C
3-C
8シクロアルキル、およびC
1-C
8ハロアルキルから選択される、1つ以上の置換基によって随意に置換され、
R
5およびR
6の各々は、独立して、水素またはC
1-C
8アルキルであり、
R
7はC
1-C
8アルキル、OR
5、またはNR
5R
6であり、
m=1-12であり、および、
n=1-12である。
【0016】
いくつかの実施形態では、被験体のアトピー性皮膚炎の症状を処置または減少させる際に使用される、以下の構造を有する治療上有効な量のシクロヘキセノン化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、代謝産物、溶媒和物、あるいはプロドラッグを含む医薬組成物が提供され、
【0017】
【化3】
式中、
XおよびYの各々は、独立して、酸素、NR
5または硫黄であり、
Rは、水素またはC(=O)C
1-C
8アルキルであり、
R
1、R
2、およびR
3の各々は独立して、水素、随意に置換されたメチル、または(CH
2)
m-CH
3であり、
R
4は、NR
5R
6、OR
5、OC(=O)R
7、C(=O)OR
5、C(=O)R
5、C(=O)NR
5R
6、ハロゲン、5員または6員のラクトン、C
1-C
8アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、アリール、グルコシルであり、ここで、5員または6員のラクトン、C
1-C
8アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、アリール、およびグルコシルは、NR
5R
6、OR
5、OC(=O)R
7、C(=O)OR
5、C(=O)R
5、C(=O)NR
5R
6、C
1-C
8アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、C
3-C
8シクロアルキル、およびC
1-C
8ハロアルキルから選択される、1つ以上の置換基によって随意に置換され、
R
5およびR
6の各々は、独立して、水素またはC
1-C
8アルキルであり、
R
7はC
1-C
8アルキル、OR
5、またはNR
5R
6であり、
m=1-12であり、および、
n=1-12である。
【0018】
いくつかの実施形態では、被験体のアトピー性皮膚炎の症状を処置または減少させるための薬物の製造における、その構造を有する治療上有効な量のシクロヘキセノン化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、代謝産物、溶媒和物、あるいはプロドラッグの使用が提供され、
式中、
XおよびYの各々は、独立して、酸素、NR5または硫黄であり、
Rは、水素またはC(=O)C1-C8アルキルであり、
R1、R2、およびR3の各々は独立して、水素、随意に置換されたメチル、または(CH2)m-CH3であり、
R4は、NR5R6、OR5、OC(=O)R7、C(=O)OR5、C(=O)R5、C(=O)NR5R6、ハロゲン、5員または6員のラクトン、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、アリール、グルコシルであり、ここで、5員または6員のラクトン、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、アリール、およびグルコシルは、NR5R6、OR5、OC(=O)R7、C(=O)OR5、C(=O)R5、C(=O)NR5R6、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C3-C8シクロアルキル、およびC1-C8ハロアルキルから選択される、1つ以上の置換基によって随意に置換され、
R5およびR6の各々は、独立して、水素またはC1-C8アルキルであり、
R7はC1-C8アルキル、OR5、またはNR5R6であり、
m=1-12であり、および、
n=1-12である。
【0019】
いくつかの実施形態において、ADの減少する症状とは、減少した皮膚炎の外観、皮膚の生理機能の回復、皮膚の湿潤効果の回復、炎症を起こした皮膚の表皮層と真皮層の厚さの減少、好酸球とランゲルハンス細胞の浸潤現象の減少などである。いくつかの実施形態において、ADの減少する症状とは、被験体のTSLPまたは総IgEの濃度の減少、被験体におけるIFN-γまたはIL-12の濃度の増加、あるいはIL-4またはTNF-αの濃度の減少である。実施例2-3を参照。
【0020】
いくつかの実施形態では、構造
【0021】
【化4】
を有するシクロへキセノン化合物は、任意の適切な出発物質から合成的または半合成的に調製される。他の実施形態において、シクロへキセノン化合物は、発酵などによって調製される。例えば、化合物1と3-7は、有機溶媒抽出物から単離される。非限定的な典型的な化合物が以下に例示される。
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
他の実施形態では、構造
【0026】
【化8】
を有するシクロヘキセノン化合物は、ベニクスノキタケ(Antrodia camphorate、アントロディア カンフォラータ)の有機溶媒抽出物から単離される。いくつかの実施形態では、有機溶剤は、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、または同種のもの)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、または同種のもの)、アルカン類(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、または同種のもの)、ハロゲン化アルカン類(例えば、クロロメタン、クロロエタン、クロロホルム、塩化メチレン、および同種のもの)などから選択される。例えば、例示的な化合物1-7は、有機溶媒抽出物から単離される。特定の実施形態において、有機溶媒はアルコールである。特定の実施形態において、アルコールはエタノールである。いくつかの実施形態では、シクロヘキセノン化合物はベニクスノキタケの水性抽出物から単離される。ある実施形態では、本明細書に開示されるシクロヘキセノン化合物は、合成的または半合成的に調製される。
【0027】
いくつかの実施形態において、各々のXおよびYは独立して酸素または硫黄である。酸素と硫黄は構造中の同様の化学的性質を共有することから、各々のXおよびYが独立して酸素である化合物は、同様に、あるいは、各々のXおよびYが独立して硫黄である化合物の同じ経路によって、調製可能であるということは当該技術分野において既知である。いくつかの実施形態において、適切な保護基によって、各々のXおよびYが独立してNR5である化合物は、各々のXおよびYが独立して酸素または硫黄である化合物と同じ経路によって調製可能である。
【0028】
いくつかの実施形態では、Rは、水素、C(=O)C3H8、C(=O)C2H5、またはC(=O)CH3である。いくつかの実施形態において、R1は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはへキシルである。特定の実施形態では、R1は、水素またはメチルである。いくつかの実施形態において、R2は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルである。特定の実施形態では、R2は、水素またはメチルである。いくつかの実施形態において、R3は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはへキシルである。いくつかの実施形態において、R4は、ハロゲン、NH2、NHCH3、N(CH3)2、OCH3、OC2H5、C(=O)CH3、C(=O)C2H5、C(=O)OCH3、C(=O)OC2H5、C(=O)NHCH3、C(=O)NHC2H5、C(=O)NH2、OC(=O)CH3、OC(=O)C2H5、OC(=O)OCH3、OC(=O)OC2H5、OC(=O)NHCH3、OC(=O)NHC2H5、またはOC(=O)NH2である。いくつかの実施形態において、R4は、C2H5C(CH3)2OH、C2H5C(CH3)2OCH3、CH2COOH、C2H5COOH、CH2OH、C2H5OH、CH2Ph、C2H5Ph、CH2CH=C(CH3)(CHO)、CH2CH=C(CH3)(C(=O)CH3)、5員または6員のラクトン、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、アリール、およびグルコシルであり、ここで、5員または6員のラクトン、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、アリール、およびグルコシルは、NR5R6、OR5、OC(=O)R7、C(=O)OR5、C(=O)R5、C(=O)NR5R6、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C3-C8シクロアルキル、およびC1-C8ハロアルキルから選択される、1つ以上の置換基によって随意に置換される。特定の実施形態では、R4は、5員または6員のラクトン、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、アリール、およびグルコシルであり、NR5R6、OR5、OC(=O)R7、C(=O)OR5、C(=O)R5、C(=O)NR5R6、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C3-C8シクロアルキル、およびC1-C8ハロアルキルから選択される、1つ以上の置換基によって随意に置換される。特定の実施形態において、R4はCH2CH=C(CH3)2である。特定の実施形態において、化合物は
【0029】
【0030】
特定の薬学および医学用語
他に明記のない限り、明細書および請求項を含む本出願で使用される以下の用語は、下記の定義を有する。明細書および添付の請求項内で用いられる通り、単数形「a」、「an」、および「the」は、その文脈が明確に他のことを定めていない限り、複数の指示対象を含む。特に指示がない限り、質量分析、NMR、HPCL、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術、および薬理学の従来の方法が使用される。本出願において、「または」、あるいは「および」の使用は特に明記しない限り、「および/または」を意味する。さらに、用語「含んでいる(including)」の使用は、「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含まれる(included)」といった他の形態と同じく、限定的なものではない。本明細書に使用される段落の見出しは、組織化するためのものに過ぎず、記載される主題を制限するものと解釈されてはならない。
【0031】
「アルキル」基とは脂肪族炭化水素基を指す。アルキル基は、飽和アルキル基群(どの炭素炭素二重結合または炭素炭素三重結合を含まないことを意味する)であり、アルキル基は、不飽和アルキル基(少なくとも1つの炭素炭素二重結合または炭素炭素三重結合を含むことを意味する)であり得る。アルキル部分は、飽和であろうと不飽和であろうと、分枝鎖または直鎖であり得る。
【0032】
「アルキル」基は1~12の炭素原子を有し得る(本明細書ではいかなる場合も、「1~12」などの数値範囲は、指定された範囲の各整数を指し、例えば、「1~12の炭素原子」は、アルキル基が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子、および最大12個の炭素原子を含むものから成り得ることを意味するが、本定義はまた、いなかる数値範囲も指定されていない用語「アルキル」の登場も含む)。本明細書に記載される化合物のアルキル基は、「C1-C8アルキル」または同様の名称として命名してもよい。ほんの一例として、「C1-C8アルキル」は、アルキル鎖に1、2、3、4、5、6、7、または8個の炭素原子が存在することを示す。1つの態様において、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびt-ブチルからなる基から選択される。典型的なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、第三級ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、アリル、2-ブテニル、3-ブテニル、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチルなどを含むが、これらに限定されない。1つの態様において、アルキルはC1-C8アルキルである。
【0033】
用語「アルキレン」とは二価アルキルラジカルを指す。上記の一価アルキル基のいずれかがアルキルからの第2の水素原子の除去によるアルキレンであってもよい。1つの態様において、アルキレンはC1-C12アルキレンである。別の太陽において、アルキレンはC1-C8アルキレンである。典型的なアルキレン基は、限定されないが、-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-CH2CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH2C(CH3)2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-などを含む。
【0034】
本明細書で使用されるように、用語「アリール」は、環を形成する原子の各々が炭素原子である、芳香族環を指す。アリール環は、5、6、7、8、9、9、またはそれ以上の炭素原子によって形成される。アリール基は随意に置換される。1つの態様において、アリールは、フェニルまたはナフタレニルである。1つの態様では、アリールはフェニルである。一つの態様において、アリールはC6-C10アリールである。構造によっては、アリール基はモノラジカルまたはジラジカル(つまりアリーレン基)であり得る。1つの態様において、アリーレンはC6-C10アリーレンである。典型的なアリーレンは、限定されないが、フェニル-1,2-エン、フェニル-1,3-エン、およびフェニル-1,4-エンを含む。
【0035】
用語「芳香族」とは、4n+2π電子(nは整数である)を含む、非局在化されたπ-電子系を有する平面環を指す。芳香環は、5、6、7、8、9、または10以上の原子からを形成可能である。芳香族は随意に置換される。用語「芳香族」は、炭素環式アリール(「アリール」、例えば、フェニル)と複素環式アリール(または「ヘテロアリール」または「複素環式芳香族」)基(例えばピリジン)の両方を含んでいる。この用語は単環式または縮合環の多環式(つまり、隣接する炭素原子対を共有する環)基を含んでいる。
【0036】
用語「ハロ」あるいは代替的に「ハロゲン」または「ハロゲン化物」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、あるいはヨードを意味する。
【0037】
用語「ラクトン」は、同じ分子中のアルコール基-OHとカルボン酸基-COOHの縮合生成物とみなすことができる環状エステルを指す。それは、2つ以上の炭素原子と1つの酸素原子からなる閉じた環を特徴とし、別の酸素に隣接している炭素のうちの1つでケトン基=Oである。
【0038】
用語「複素環」あるいは「複素環式」とは、環に1~4つのヘテロ原子を含む芳香族複素環(ヘテロアリールとしても知られている)およびヘテロシクロアルキル環(ヘテロ脂環式基としても知られている)を指し、ここで環の各々のヘテロ原子はO、S、およびNから選択され、環の各複素環基は、その環系中に4~10の原子を有し、ただし、どの環も2つの隣接するOあるいはS原子を含んでいないとする。非芳香族複素環式基(ヘテロシクロアルキルとしても知られる)は、その環系内にほんの3個の原子しか備えていない基を含むが、芳香族複素環式基は少なくとも5個の原子をその環系内に備えなければならない。複素環式基はベンゾ縮合環系を含む。3員複素環基の例は、アジリジニルである。4員複素環式基の例はアゼチジニルである。5員複素環式基の例は、チアゾリルである。6員複素環式基の例は、ピリジルであり、10員複素環式基の例は、キノリニルである。非芳香族複素環式基はの例は、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、オキサゾリジノニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チオキサニル、ピペラジニル、アジリジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6-テトラヒドロピリジニル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、インドリニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、3H-インドリル、およびキノリジニルである。芳香族複素環式基の例は、ピリジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンズオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、およびフロピリジニルである。前述の基は、それらが可能な場合にC-結合またはN-結合してもよい。例えば、ピロールに由来する基は、ピロール-1-イル(N結合した)またはピロール-3-イル(C結合した)であり得る。さらに、イミダゾールに由来する基は、(両方ともN結合した)イミダゾール-1-イルまたはイミダゾール-3-イル、または(すべてC結合した)イミダゾール-2-イル、イミダゾール-4-イル、またはイミダゾール-5-イルであり得る。複素環式基はベンゾ縮合環系を含む。非芳香族複素環は、ピロリジン-2-オンなどの1つまたは2つのオキソ(=O)部分で置換されることがある。
【0039】
本明細書で使用されるような用語「アルケニル」は、2-10の炭素、および2つの水素の除去により形成された少なくとも1つの炭素炭素二重結合を含む、直鎖、分枝鎖、または環式(その場合、「シクロアルケニル」としても知られる)の炭化水素を意味する。いくつかの実施形態において、構造によっては、アルケニル基は、モノラジカルまたはジラジカル(すなわち、アルケニレン基)である。いくつかの実施形態において、アルケニル基は随意に置換される。アルケニルの例示的な例は、限定されないが、エテニル、2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、3-ブテニル、4-ペンテニル、5-ヘキセニル、2-ヘプテニル、2-メチル-1-ヘプテニル、および3-デセニル(cecenyl)を含む。
【0040】
本明細書で使用されるような用語「アルキニル」は、2-10の炭素、および4つの水素の除去により形成された少なくとも1つの炭素三重結合を含む、直鎖、分枝鎖、または環式(その場合、「シクロアルキニル」としても知られる)の炭化水素を意味する。いくつかの実施形態において、構造によっては、アルキニル基は、モノラジカルまたはジラジカル(すなわち、アルキニレン基)である。いくつかの実施形態において、アルキニル基は随意に置換される。アルキニルの例示的な例は、限定されないが、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニルなどを含む。
【0041】
本明細書に使用されるような用語「アルコキシ」は、酸素原子を介して親の分子部分に付加される、本明細書に定義されるようなアルキル基を意味する。アルコキシの実例は、限定されないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、プロポキシ、2-プロポキシ、ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチロキシ、およびヘキシロキシを含む。
【0042】
本明細書に使用されるような用語「シクロアルキル」は、炭素と水素のみを含有する単環式または多環式のラジカルを意味し、飽和、一部不飽和、または完全不飽和のそれらを含む。シクロアルキル基は、3~10の環状原子を有する基を含む。環式の代表的な例は、限定されないが、以下の部分を含む:
【0043】
【化10】
いくつかの実施形態において、構造次第で、ヘテロシクロアルキル基は、モノラジカルまたはジラジカル(例えば、ヘテロシクロアルキレン基)であり得る。
【0044】
本明細書で使用されるような用語「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」、「ハロアルキニル」、および「ハロアルコキシ」は、少なくとも1つの水素がハロゲン原子と交換された、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアルコキシの構造を含む。2つ以上の水素原子がハロゲン原子と取り替えられる特定の実施形態では、ハロゲン原子はすべて互いに同じである。2つ以上の水素原子がハロゲン原子に置き換えられる他の実施形態では、ハロゲン原子は、互いに、すべてが同じではない。用語「フルオロアルキル」および「フルオロアルコキシ」は、ハロアルキルとハロアルコキシの基をそれぞれ含み、その中でハロはフッ素である。特定の実施形態において、ハロアルキルは随意に置換される。
【0045】
本明細書で使用されるような用語「グルコシル」は、グルコシル基がグルコース環上で任意の水酸基によって結合された、D型またはL型のグルコシル基を含む。
【0046】
本明細書で使用されるような、製剤、組成物、または成分に関する用語「許容可能な」とは、処置されている被験体の健康状態に対して持続的な有害効果がないことを意味する。
【0047】
シカタケ属はトンビマイタケ科における真菌類の属である。シカタケ属種は、典型的には平らになっているまたは成長表面上で広がる子実体を有しており、子実層は外部に晒され、縁は薄い霊芝(narrow brackets)を形成するように折り曲げられ得る。大半の種が温帯林および北方林で発見され、褐色腐朽を引き起こしている。
【0048】
頑強な樟脳真菌(stout camphor fungus)であるGanoderma camphoratumとしても知られているベニクスノキタケは、台湾に固有であり、固有の木である牛樟(Cinnamomum kanehirae)上でのみ成長して、褐色心腐病(brown heart rot)を引き起こすシカタケ属真菌の一種である。台湾のこの特有のマッシュルームは伝統薬として様々な疾患疾病の予防に使用されてきた。
【0049】
ベニクスノキタケの様々な部分から単離された有効成分が、様々な文化的手段および方法によって変化することは当該技術分野で知られている。例えば、本明細書に開示されるあるシクロヘキセノン化合物は他の既知の方法とは異なるベニクスノキタケを栽培するための特有の固体状態発酵プロセスから単離可能である。
【0050】
用語「担体」は、本明細書で使用されるように、細胞または組織への化合物の取り込みを促す比較的無毒な化合物または薬剤を指す。
【0051】
用語「同時投与」などは、本明細書で使用されるように、一人の患者に対する選択された治療薬の投与を包含することを意味しており、同じあるいは異なる投与経路によって、または同じあるいは異なるときに薬剤が投与される治療レジメンを含むことを意図している。
【0052】
用語「希釈剤」は、送達の前に所望の化合物を希釈するために使用される化合物を指す。希釈剤はまた、より安定した環境を提供できるので、化合物を安定させるために用いられることもある。緩衝液(pHの制御または維持をもたらし得る)中に溶解した塩は、限定されないが、リン酸緩衝生理食塩溶液を含む当該技術分野の希釈剤として利用される。
【0053】
「有効な量」または「治療上有効な量」という用語は、本明細書で使用されるように、処置されている疾患または疾病の症状の1つ以上をある程度まで軽減する、投与されている薬剤または化合物の十分な量を指す。その結果は、疾患の徴候、症状、または原因が減少および/または軽減され得るか、または、生物系の任意の他の所望の変化がもたらされ得る。例えば、治療用途のための「有効な量」は、疾患症状を臨床的に有意に減少させるために必要とされる、本明細書に開示されるような化合物を含む組成物の量である。任意の固体における適切な「有効な」量は、用量増加試験などの技術を使用して定められてもよい。
【0054】
用語は「増強する(enhance)」あるいは「増強すること(enhancing)」は、本明細書で使用されるように、効能または持続時間のいずれかにおいて所望の効果を増加させるか延長することを意味する。したがって、治療薬の効果を増強することに関して、用語「増強する」は、効能または持続時間のいずれかにおいて、系に対する他の治療薬の効果を増大させるまたは延長する能力を指す。本明細書で使用されるような「増強有効量」は、望ましい系において別の治療薬の効果を増強するのに十分な量を指す。
【0055】
本明細書で開示される化合物の「代謝産物」は、化合物が代謝される際に形成されるその化合物の誘導体である。用語「活性代謝物」は、化合物が代謝されるときに形成される、化合物の生物学的に活性な誘導体を指す。用語「代謝される(metabolized)」は、本明細書で使用されるように、有機体によって特定の物質が変化するプロセス(限定されないが、加水分解反応および酵素によって触媒される反応を含む)の全体を指す。したがって、酵素は、化合物への具体的な構造的変化をもたらし得る。例えば、シトクロムP450は、様々な酸化反応および還元反応を触媒する一方で、ウリジン二リン酸グルクロニルトランスフェラーゼは、芳香族アルコール、脂肪族アルコール、カルボン酸、アミン、および遊離スルフヒドリル基への活性化グルクロン酸分子の移動を触媒する。本明細書に開示される化合物の代謝産物は、随意に、宿主への化合物の投与および宿主からの組織サンプルの解析、または肝細胞を用いた化合物のインビトロでのインキュベーションおよびその結果生じる化合物の解析のいずれかによって特定される。
【0056】
本明細書で使用されるような用語「薬学的な組み合わせ(pharmaceutical combination)」は、1つを超える有効成分の混合または併用に起因し、かつ、有効成分の固定されたおよび固定されていない組み合わせを含む生成物を意味する。用語「固定配合」は、有効成分、例えば、化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)と助剤の両方が、単一の実体または投与量の形態で患者に同時投与されることを意味する。用語「非固定配合」は、有効成分、例えば、化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)と助剤が、特定の時間制限の介入なく同時に、平行して、または連続して、別々の実体として患者に投与されることを意味し、このような投与は、患者の体に有効なレベルの二つの化合物を提供する。後者の用語はカクテル療法、例えば、3以上の有効成分の投与にも当てはまる。
【0057】
用語「医薬組成物」とは、化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)と、担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、および/または賦形剤などの他の化学成分との混合物を指す。医薬組成物は、有機体への化合物の投与を促進する。化合物を投与する複数の技術が当該技術分野に存在し、これらは以下を含む:静脈内、経口、エアロゾル、非経口、経眼、肺、局所的な投与。
【0058】
用語「被験体」または「患者」は、哺乳動物を包含する。哺乳動物の例は、限定されないが、以下の哺乳動物のクラスのメンバーを含む:ヒト、チンパンジーなどのヒト以外の霊長類、および他の類人猿ならびにサル類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの家畜、ウサギ、イヌ、およびネコなどの飼育動物、ラット、マウスおよびモルモットなどの、げっ歯類を含む実験動物。1つの実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0059】
用語「処置する」、「処置すること」、あるいは、「処置」は、本明細書で使用されるように、疾患または疾病の少なくとも1つの症状を緩和するか、軽減するか、あるいは改善すること、追加の症状を防ぐこと、疾患または疾病を阻害すること、例えば、疾患または疾病の発現を抑えること、疾患または疾病を軽減すること、疾患または疾病の退行を引き起こすこと、疾患または疾病によって引き起こされた状態を軽減すること、あるいは疾患または疾病の症状を予防的におよび/または治療的に止めることを含む。
【0060】
投与経路
適切な投与経路は、限定されないが、経口投与、静脈内投与、直腸投与、エアロゾル投与、非経口投与、経眼投与、経肺投与、経粘膜投与、経皮投与、膣内投与、経耳投与、経鼻投与、および、局所投与を含む。加えて、ほんの一例ではあるが、非経口送達は、くも膜下腔内、直接脳室内、腹腔内、リンパ内、および、鼻腔内の注入だけでなく、筋肉内、皮下、静脈内、髄内の注入も含む。
【0061】
特定の実施形態において、本明細書に記載される化合物は、しばしばデポ製剤または持続放出製剤として、例えば、器官への直接的な化合物の注射を介して、全身よりもむしろ局所に投与される。具体的な実施形態において、長期間作用型製剤は、移植(例えば、皮下または筋肉内に)または筋肉内注射により投与される。さらに、他の実施形態において、薬は標的とする薬送達系において、例えば、臓器特異的抗体(organ-specific antibody)に覆われたリポソームにおいて送達される。このような実施形態において、リポソームは、臓器を標的とし、臓器によって選択的に取り込まれる。さらに他の実施形態において、本明細書に記載の化合物は、急速放出製剤の形態、拡張放出製剤の形態、または、中間放出製剤の形態で提供される。さらに他の実施形態において、本明細書に記載の化合物は、局所的に投与される。
【0062】
いくつかの実施形態において、シクロへキセノン化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、代謝産物、溶媒和物、あるいはプロドラッグは、非経口投与または静脈内投与される。他の実施形態において、シクロへキセノン化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、代謝産物、溶媒和物、あるいはプロドラッグは、注射により投与される。いくつかの実施形態において、シクロへキセノン化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、代謝産物、溶媒和物、あるいはプロドラッグは、経口投与される。
【0063】
患者の状態が改善しない場合、医者の判断で、化合物の投与は、患者の疾患または疾病の症状を改善するか、さもなければ制御または制限するために、慢性的に、すなわち、患者の生涯を含む長期間、投与され得る。患者の状況が改善する場合、医師の判断に基づき、化合物の投与は連続的に行われ、あるいは特定の期間にわたり一時的に中止されてもよい(すなわち「休薬期間」)。
【0064】
個々の処置レジメンに関する変数の数が大きいため、前述の範囲は単なる示唆的なものに過ぎず、これらの推奨値から大きく逸脱することは珍しいことではない。こうした投与量は、多くの変数、限定されないが、使用される化合物の活性、処置される疾患または疾病、投与モード、個々の被験体の必要条件、処置されている疾患または疾病の重症度、および医師の判断に依存して変更されることがある。
【0065】
このような処置レジメンの毒性および治療効果は、限定されないが、LD50(集団の50%までの致死量)およびED50(集団の50%で治療上有効な用量)を判定するためのものを含む、細胞培養物または実験動物における標準の薬学的手順により定められ得る。毒性効果と治療効果との間の用量比は、治療指数であり、LD50とED50との間の比率として表され得る。高い治療指数を示す化合物が好ましい。細胞培養アッセイと動物研究から得られたデータは、ヒトで使用される一連の投与量を処方するのに使用可能である。こうした化合物の投与量は好ましくは、最小限の毒性を備えるED50を含む一連の循環濃度内に位置する。投与量は、使用された剤形と利用された投与経路に依存してこの範囲内で変動することがある。
【0066】
医薬製剤
いくつかの実施形態では、構造
【0067】
【化11】
を有する、治療上有効な量のシクロヘキセノン化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、代謝産物、あるいはプロドラッグ、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物が提供され、
式中、
XおよびYの各々は、独立して、酸素、NR
5または硫黄であり、
Rは、水素またはC(=O)C
1-C
8アルキルであり、
R
1、R
2、およびR
3の各々は独立して、水素、随意に置換されたメチル、または(CH
2)
m-CH
3であり、
R
4は、NR
5R
6、OR
5、OC(=O)R
7、C(=O)OR
5、C(=O)R
5、C(=O)NR
5R
6、ハロゲン、5員または6員のラクトン、C
1-C
8アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、アリール、グルコシルであり、ここで、5員または6員のラクトン、C
1-C
8アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、アリール、およびグルコシルは、NR
5R
6、OR
5、OC(=O)R
7、C(=O)OR
5、C(=O)R
5、C(=O)NR
5R
6、C
1-C
8アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、C
3-C
8シクロアルキル、およびC
1-C
8ハロアルキルから選択される、1つ以上の置換基によって随意に置換され、
R
5およびR
6の各々は、独立して、水素またはC
1-C
8アルキルであり、
R
7はC
1-C
8アルキル、OR
5、またはNR
5R
6であり、
m=1-12であり、および、
n=1-12である。
【0068】
いくつかの実施形態において、医薬組成物のシクロヘキセノン化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、代謝産物、溶媒和物、あるいはプロドラッグは、以下の構造を有し、
【0069】
【化12】
式中、
XおよびYの各々は、独立して、酸素、NR
5または硫黄であり、
Rは、水素またはC(=O)C
1-C
8アルキルであり、
R
1、R
2、およびR
3の各々は独立して、水素、随意に置換されたメチル、または(CH
2)
m-CH
3であり、
R
4は、NR
5R
6、OR
5、OC(=O)R
7、C(=O)OR
5、C(=O)R
5、C(=O)NR
5R
6、ハロゲン、5員または6員のラクトン、C
1-C
8アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、アリール、グルコシルであり、ここで、5員または6員のラクトン、C
1-C
8アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、アリール、およびグルコシルは、NR
5R
6、OR
5、OC(=O)R
7、C(=O)OR
5、C(=O)R
5、C(=O)NR
5R
6、C
1-C
8アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、C
3-C
8シクロアルキル、およびC
1-C
8ハロアルキルから選択される、1つ以上の置換基によって随意に置換され、
R
5およびR
6の各々は、独立して、水素またはC
1-C
8アルキルであり、
R
7はC
1-C
8アルキル、OR
5、またはNR
5R
6であり、
m=1-12であり、および、
n=1-12である。
【0070】
いくつかの実施形態では、Rは、水素、C(=O)C3H8、C(=O)C2H5、またはC(=O)CH3である。いくつかの実施形態では、R3は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルヘキシル、またはオクチルである。特定の実施形態では、R1は、水素またはメチルである。特定の実施形態において、R2は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルである。特定の実施形態では、R3は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルである。いくつかの実施形態において、R4は、ハロゲン、NH2、NHCH3、N(CH3)2、OCH3、OC2H5、C(=O)CH3、C(=O)C2H5、C(=O)OCH3、C(=O)OC2H5、C(=O)NHCH3、C(=O)NHC2H5、C(=O)NH2、OC(=O)CH3、OC(=O)C2H5、OC(=O)OCH3、OC(=O)OC2H5、OC(=O)NHCH3、OC(=O)NHC2H5、またはOC(=O)NH2である。特定の実施形態において、R4は、C2H5C(CH3)2OH、C2H5C(CH3)2OCH3、CH2COOH、C2H5COOH、CH2OH、C2H5OH、CH2Ph、C2H5Ph、CH2CH=C(CH3)(CHO)、CH2CH=C(CH3)(C(=O)CH3)、5員または6員のラクトン、ラクトン、アリール、またはグルコシルであり、ここで、5員または6員のラクトン、アリール、およびグルコシルは、NR5R6、OR5、OC(=O)R7、C(=O)OR5、C(=O)R5、C(=O)NR5R6、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C3-C8シクロアルキル、およびC1-C8ハロアルキルから選択される、1つ以上の置換基によって随意に置換される。特定の実施形態において、R4は、CH2COOH、C2H5COOH、CH2OH、C2H5OH、CH2Ph、C2H5Ph、CH2CH=C(CH3)(CHO)、CH2CH=C(CH3)(C(=O)CH3)、5員または6員のラクトン、アリール、またはグルコシルであり、ここで、5員または6員のラクトン、アリール、およびグルコシルは、NR5R6、OR5、OC(=O)R7、C(=O)OR5、C(=O)R5、C(=O)NR5R6、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C3-C8シクロアルキル、およびC1-C8ハロアルキルから選択される、1つ以上の置換基によって随意に置換される。特定の実施形態では、R4は、5員または6員のラクトン、アリール、またはグルコシルであり、NR5R6、OR5、OC(=O)R7、C(=O)OR5、C(=O)R5、C(=O)NR5R6、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C3-C8シクロアルキル、およびC1-C8ハロアルキルから選択される、1つ以上の置換基によって随意に置換される。
【0071】
特定の実施形態では、化合物は、以下からなる群から選択される。
【0072】
【0073】
【0074】
特定の実施形態では、化合物は、以下からなる群から選択される。
【0075】
【0076】
【0077】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される化合物は医薬組成物へ製剤される。特定の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に使用され得る製剤への活性化合物の処理を促進する、賦形剤および助剤を含む1つ以上の生理学的に許容可能な担体を使用する従来の方法で製剤される。適切な製剤は、選択される投与の経路に依存する。薬学的に許容可能なあらゆる技術、担体、および、賦形剤は、本明細書に記載の医薬組成物を処方するのに適したものとして使用される。Remington:The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed(Easton,Pa.: Mack Publishing Company, 1995)、Hoover,John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania 1975、Liberman,H.A.and Lachman,L.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York,N.Y.,1980、および、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed.(Lippincott Williams & Wilkins1999)(Lippincott Williams & Wilkins1999)。
【0078】
本明細書には、化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)、および薬学的に許容可能な希釈剤(複数)、賦形剤(複数)、または担体(複数)を含む医薬組成物が提供される。特定の実施形態において、本明細書に記載される化合物は、化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)が併用療法におけるように他の有効成分と混合される医薬組成物として、投与される。本明細書に含まれるものは、下の区分およびこの開示の至る所にある併用療法で説明される、活性分子(actives)の全ての組み合わせである。特異的な実施形態において、医薬組成物は、1つ以上の化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)を含む。
【0079】
医薬組成物は、本明細書で使用されるように、化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)と、担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、および/または賦形剤などの他の化学成分との混合物を指す。特定の実施形態では、医薬組成物は、有機体への化合物の投与を促進する。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される処置方法または使用を実施する際に、治療上有効な量の化合物(すなわち、本明細書に提供されるシクロへキセノン化合物)は、処置されるべき疾患または疾病を有する哺乳動物に、医薬組成物で投与される。具体的な実施形態では、哺乳動物はヒトである。特定の実施形態では、治療上有効な量は、疾患の重症度、被験体の年齢および相対的な健康状態、使用される化合物の効能、ならびに他の要因に依存して変わる。本明細書に記載される化合物は、単一で、または、混合物の成分としての1以上の治療薬と組み合わせて、使用される。
【0080】
1つの実施形態において、化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)は、水溶液中で製剤される。特定の実施形態において、その水溶液は、ほんの一例であるが、ハンクス溶液、リンガー溶液、または、生理的食塩水などといったな生理的に適合する緩衝液から選択される。他の実施形態において、化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)は、経粘膜投与のために製剤される。特定の実施形態において、経粘膜製剤は、浸透するバリアにとって適切な浸透剤を含む。本明細書に記載される化合物が他の非経口注入のために製剤されるさらに他の実施形態では、適切な製剤は、水溶性または非水溶性の溶液を含む。特定の実施形態において、そのような溶液は、生理学的に適合する緩衝液および/または賦形剤を含む。
【0081】
別の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、経口投与のために製剤される。化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)を含む、本明細書に記載される化合物は、活性化合物を、例えば薬学的に許容可能な担体または賦形剤と混合することによって製剤される。様々な実施形態において、本明細書に記載の化合物は、ほんの一例として、錠剤、粉剤、丸薬、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、エリキシル剤、スラリー剤、懸濁剤などを含む、経口の投与形態で製剤される。
【0082】
特定の実施形態において、経口使用される医薬調製物は、1以上の固体の賦形剤を、本明細書中に記載されている1以上の化合物と混合することによって、随意に結果として得られた混合物を任意に粉砕することによって、および、錠剤または糖衣錠コア(dragee cores)を得るために、必要に応じて、適切な助剤を添加した後に、顆粒の混合物を処理することによって、得られる。適切な賦形剤は、特に、ラクトーゼ、ショ糖、マンニトール、または、ソルビトールを含む砂糖などの充填剤、次のもののようなセルロース製剤:例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、じゃがいもデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの、セルロース調剤、または、ポリビニルピロリドン(PVPまたはポビドン)あるいはリン酸カルシウムなどの他のものを含む。具体的な実施形態において、崩壊剤は任意に加えられる。崩壊剤は、ほんの一例ではあるが、架橋クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸あるいはアルギン酸ナトリウムなどのそれらの塩を含む。
【0083】
一実施形態では、糖衣錠コアおよび錠剤などの剤形には、1つ以上の適切なコーティングが提供される。具体的な実施形態において、濃縮した糖液は、剤形をコーティングするために用いられる。糖液は、ほんの一例ではあるが、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または、二酸化チタン、ラッカー溶液、および、適切な有機溶媒、または、混合溶媒などのさらなる成分を任意に含む。染料および/または色素は同様に、同定目的のため、コーティングに任意に加えられる。さらに、染料および/または色素は、随意に、活性化合物の投与量の異なる組み合わせを特徴づけるために利用される。
【0084】
特定の実施形態において、本明細書に記載されている少なくとも1つの治療上有効な量の化合物は、他の経口剤形へと製剤される。経口剤形は、ゼラチン製の押し出しカプセル剤と、ゼラチン製の密封されたソフトカプセル剤、および、グリセロールやソルビトールなどの可塑剤を含む。具体的な実施態様において、押し出しカプセル剤は、1以上のフィラーと混合された有効成分を含む。注入剤は、ほんの一例として、ラクトース、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、および随意に安定剤を含む。他の実施形態では、ソフトカプセルは、適切な液体中に溶解または懸濁される1つ以上の活性化合物を含有している。適切な液体は、ほんの一例ではあるが、1以上の脂肪油、流動パラフィン、または、液体ポリエチレングリコールを含む。加えて、安定剤が随意に加えられる。
【0085】
他の実施形態において、本明細書に記載される治療上有効な量の少なくとも1つの化合物は、口腔投与または舌下投与のために製剤される。口腔投与または舌下投与に適した製剤は、ほんの一例ではあるが、錠剤、ロゼンジ剤、または、ゲル剤を含む。さらに他の実施態様において、本明細書中に記載される化合物は、ボーラス注入または持続注入に適した製剤を含む、非経口注入のために処方される。具体的な実施形態において、注入用製剤は、単位剤形で(例えばアンプルで)、または複数回用量容器で提供される。保存剤は随意に注入製剤に加えられる。また他の実施形態において、化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)の医薬組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクル中で、滅菌懸濁剤、溶液、またはエマルジョンとして、非経口注入に適した形態で製剤される。非経口注入製剤は、懸濁剤、安定剤、および/または、分散剤などの処方剤(formulatory agent)を随意に含む。具体的な実施形態では、非経口投与のための医薬製剤は、水溶性形態の活性化合物の水溶液を含む。追加の実施形態において、活性な化合物の懸濁剤は、適切な油性注入懸濁剤として調製される。本明細書に記載される医薬組成物における使用のための適切な親油性の溶媒またはビヒクルは、ほんの一例として、胡麻油などの脂肪油、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、あるいはリポソームを含む。特定の具体的な実施形態では、水性注射懸濁液は、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの、懸濁液の粘度を増大させる物質を含有している。随意に、懸濁液は、高濃度の溶液の調製を可能にするために化合物の溶解度を増大させる適切な安定剤または薬剤を含有している。代替的に、他の実施形態において、有効成分は、使用前に、適切なビヒクル、例えば、発熱物質を含まない滅菌水で構成するための粉末形態である。
【0086】
1つの態様において、化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)は、本明細書に記載されるような、または当該技術分野で既知の非経口注入のための溶液として調製され、自動注射器で投与される。米国特許番号4,031,893、5,358,489;5,540,664;5,665,071、5,695,472、およびWO/2005/087297(この各々はそのような開示のために引用によって本明細書に組み込まれる)に開示されたような自動注入器が知られている。一般に、自動注射器は全て、注入される化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)を含む、一定の量の溶液を含有する。一般に、自動注入器は、薬物を送達するための注射針と流体連通している、溶液を維持するためのリザーバー(reservoir)と、自動的に注射針を展開させて、患者に注射針を挿入し、患者へ投与量を送達するための機構とを含む。典型的な注射器は、溶液1mLあたり0.5mg~50mgの濃度の化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)で、約0.3mL、0.6mL、1.0mL、または他の適切な量の溶液を提供する。注射器はそれぞれ、化合物を1回分だけ送達することができる。
【0087】
さらに他の実施形態において、化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)は局所投与される。本明細書中に記載されている化合物は、溶液、懸濁剤、ローション剤、ゲル剤、ペースト剤、薬用スティック、バーム、クリーム、または、軟膏といった様々な局所投与可能な組成物に処方される。そのような医薬組成物は、可溶化剤、安定剤、等張増強剤、緩衝剤、および、保存剤を任意に含む。
【0088】
さらに他の実施形態において、化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロヘキセノン化合物)は、経皮投与のために製剤される。具体的な実施形態において、経皮製剤は、経皮送達装置および経皮送達パッチを利用し、ポリマーまたは粘着剤の中で溶解および/または分散した親油性エマルジョンまたは緩衝水溶液であってもよい。様々な実施形態において、このようなパッチは、医薬品の連続送達、パルス送達、または、オンデマンド送達に合わせて構築される。さらなる実施形態において、化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロヘキセノン化合物)の経皮送達は、イオン泳動性パッチなどの手段により達成される。特定の実施形態において、経皮パッチは、化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロヘキセノン化合物)の制御送達を提供する。具体的な実施形態では、吸収速度は、律速膜を使用することによって、またはポリマーマトリックスまたはゲル内に化合物を捕捉することによって遅らされる。代替的な実施形態では、吸収促進剤は、吸収を増加させるために使用される。吸収促進剤または担体は、皮膚を介する通過を補助する、薬学的に許容可能な吸収性溶媒を含む。例えば、1つの実施形態において、経皮装置は、裏当て部材(backing member))と、担体、任意に長時間にわたって、制御された所定の速度で宿主の皮膚に化合物を送達するための律速用バリアを任意に含む化合物を含んだリザーバーと、および、皮膚に装置を固定する手段とを含む、包帯の形態である。
【0089】
本明細書に記載された経皮製剤は、当該技術分野で記載されてきた様々な装置を用いて投与される。例えば、そのような装置は限定されないが、米国特許第3,598,122号、米国特許第3,598,123号、米国特許第3,710,795号、米国特許第3,731,683号、米国特許第3,742,951号、米国特許第3,814,097号、米国特許第3,921,636号、米国特許第3,972,995号、米国特許第3,993,072号、米国特許第3,993,073号、米国特許第3,996,934号、米国特許第4,031,894号、米国特許第4,060,084号、米国特許第4,069,307号、米国特許第4,077,407号、米国特許第4,201,211号、米国特許第4,230,105号、米国特許第4,292,299号、米国特許第4,292,303号、米国特許第5,336,168号、米国特許第5,665,378号、米国特許第5,837,280号、米国特許第5,869,090号、米国特許第6,923,983号、米国特許第6,929,801号、および、米国特許第6,946,144号を含む。
【0090】
本明細書に記載される経皮的な剤形は、当該技術分野で従来のものである薬学的に許容可能な賦形剤を組み込むことがある。1つの実施形態では、本明細書に記載される経皮的な製剤は少なくとも3つの成分:(1)化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロヘキセノン化合物)の製剤、(2)浸透促進剤、および、(3)水性のアジュバントを含む。加えて、経皮的な製剤は、限定されないが、ゲル化剤、クリーム剤、および軟膏基剤など追加の成分を含み得る。いくつかの実施形態において、経皮製剤はさらに、織り込まれた裏地または織り込まれていない裏地を含み、それにより吸収を促進するとともに、皮膚からの経皮製剤の除去を防ぐ。他の実施形態において、本明細書に記載の経皮製剤は、肌への拡散を促進するために飽和状態または過飽和状態を維持することが可能である。
【0091】
他の実施形態において、化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロヘキセノン化合物)は吸入投与のために製剤される。吸入による投与に適した様々な形態は、エアロゾル、ミスト、または粉末を含むが、これら限定されない。化合物(すなわち本明細書に記載されるシクロヘキセノン化合物)の医薬組成物は、適切な高圧ガス(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素またはその他適切なガス)を用いた、圧縮パックまたは噴霧機からのエアロゾルスプレー投与の形態で都合よく送達される。具体的な実施形態において、加圧されたエアロゾルの用量単位は、計量された量を送達するために、バルブを提供することによって決定される。特定の実施形態において、ほんの一例ではあるが、吸入器または注入器で使用するためのゼラチンなどから成るカプセル剤および薬包は、化合物の粉末混合、およびラクトースまたはでん粉などの適切な粉末基剤を含み製剤される。
【0092】
経鼻投与の剤形は従来技術で周知であり、例えば、米国特許第4,476,116号、米国特許第5,116,817号、および米国特許第6,391,452号に記載されており、この各々は引用によって本明細書に具体的に組み込まれる。当該技術分野で周知のこれらの技術および他の技術に従って調製される、化合物(すなわち本明細書に記載されるシクロヘキセノン化合物)を含む製剤は、従来技術で公知のベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、フルオロカーボン、および/または可溶化剤または分散剤を用いて、生理食塩水中の溶液として調製される。例えば、Ansel, H.C. et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Sixth Ed.(1995)を参照されたい。好ましくは、これらの組成物と製剤は、適切な無毒の薬学的に許容可能な成分で調製される。これらの成分は、当該技術分野で標準的な文献である、REMINGTON: THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY, 21st edition, 2005などのソースで見られる。適切な担体の選択は、望ましい経鼻用剤形(例えば、溶液、懸濁液、軟膏剤、ゲル剤)の正確な性質に大きく依存する。経鼻用剤形は、一般に有効成分に加えて大量の水を含んでいる。pH調節剤、乳化剤、または分散剤などの少量の他の成分、保存剤、界面活性剤、ゲル化剤、またはバッファー、および他の安定化剤と可溶化剤も存在することがある。好ましくは、経鼻用剤形は鼻の分泌物と等張でなければならない。
【0093】
吸入による投与に関して、本明細書に記載の化合物は、エアロゾル、ミスト、または粉末としての形態であってもかまわない。本明細書に記載される医薬組成物は、適切な高圧ガス、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、他の適切なガスを用いて、加圧されたパックまたは噴霧器からエアロゾルスプレー表示の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投与単位は、測定された量を送達するためのバルブを設けることによって決定されてもよい。ほんの一例として、吸入器または注入器で使用されるゼラチンのカプセル剤とカートリッジは、本明細書に記載される化合物と、ラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基材との粉末混合物を含んで、処方されることがある。
【0094】
さらに他の実施形態において、化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)は、ポリビニルピロリドンやPEGなどの合成ポリマーだけでなく、ココアバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐薬用基剤を含む、浣腸剤、直腸用ゲル剤、直腸用気泡剤、直腸用エアロゾル、坐薬、ゼリー状坐薬、あるいは保持用浣腸剤などの、直腸用組成物で製剤される。組成物の坐薬形態において、限定されないが、脂肪酸グリセリドの混合物などの低融点ワックスは、随意にココアバターと組み合わされて最初に融解する。
【0095】
特定の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に使用され得る製剤への活性化合物の処理を促進する賦形剤および助剤を含む、1つ以上の生理学的に許容可能な担体を使用する従来の方法で製剤される。適切な製剤は、選択される投与の経路に依存する。薬学的に許容可能なあらゆる技術、担体、および賦形剤は、適切に、当技術分野で理解されているように任意に使用される。化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)を含む医薬組成物は、ほんの一例ではあるが、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、粉砕、乳化、封入、包括、または圧縮のプロセスの手段などの、従来の方法で製造され得る。
【0096】
医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤、および有効成分として本明細書に記載される少なくとも1つの化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)を含む。有効成分は、遊離酸形態もしくは遊離塩基形態、または薬学的に許容可能な塩の形態である。加えて、本明細書に記載される方法および医薬組成物は、同じタイプの活性を有するこれら化合物の活性代謝産物だけでなく、結晶形態(多形体としても知られる)の使用を含む。本明細書に記載される化合物のすべての互変異性体は、本明細書に示される化合物の範囲内に含まれる。さらに、本明細書に記載される化合物は、非溶媒和形態の他に、水、エタノールなどの薬学的に許容可能な溶媒を有する溶媒和形態も包含する。本明細書に提示の化合物の溶媒和形態は、同様に本明細書で開示されるものとみなされる。さらに、医薬組成物は、随意に、他の薬剤または医薬品、担体、保存剤、安定化剤、湿潤剤、または乳化剤などのアジュバント、溶液プロモーター、浸透圧を制御するための塩、緩衝液、および/または他の治療上有益な物質を含む。
【0097】
本明細書に記載される化合物を含む組成物の調製のための方法は、固形物、半固形物または液体を形成するために、1以上の不活性な、薬学的に許容可能な賦形剤または担体を用いて、化合物を調剤する工程を含む。固形組成物は、粉剤、錠剤、分散性顆粒、カプセル剤、カシェ剤、および坐薬を含むが、これらに限定されない。液体組成物は、本明細書に開示されるように、化合物が溶解される溶液、化合物を含むエマルジョン、または化合物を含むリポソーム、ミセル、またはナノ粒子を含有する溶液を含む。半固形組成物は、ゲル剤、懸濁剤、およびクリームを含むが、これらに限定されない。本明細書中に記載されている医薬組成物の形態は、液体溶液または懸濁液、使用前に液体に溶解もしくは懸濁することに適した固形形態、またはエマルジョンを含む。これらの組成物は随意に、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤などの微量の非毒性補助物質も含む。
【0098】
いくつかの実施形態において、少なくとも化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)を含む医薬組成物は例示的に、薬剤が溶液、懸濁液、またはその両方に存在する液体の形態を取る。一般的に組成物が溶液または懸濁液として投与されると、薬剤の第一の部分は溶液中に存在し、薬剤の第二の部分は液体マトリックス中の懸濁液中に粒子形態で存在する。いくつかの実施形態において、液体組成物はゲル製剤を含む。他の実施形態において、液体組成物は水性である。
【0099】
特定の実施形態において、医薬品の水溶性懸濁液は、懸濁剤として1以上のポリマーを含む。ポリマーは、セルロースポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性ポリマーと、架橋カルボキシル含有ポリマーなどの非水溶性ポリマーを含む。本明細書中に記載されている特定の医薬組成物は、例えばカルボキシメチルセルロース、カルボマー(アクリル酸ポリマー)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリカルボフィル、アクリル酸/アクリル酸ブチルコポリマー、アルギン酸ナトリウム、およびデキストランから選択される粘膜付着性ポリマーを含む。
【0100】
医薬組成物は随意に、化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)の溶解を補助するための可溶化剤も含む。「可溶化剤」という用語は、一般的に、薬剤のミセル溶液または真性溶液をもたらす薬剤を含む。特定の許容可能な非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80は可溶化剤として役立ち、眼科用として許容可能なグリコール、ポリグリコール、例えばポリエチレングリコール400、およびグリコールエーテルも役立つ。
【0101】
さらに、医薬組成物は、随意に、酢酸、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸、および塩酸などの酸、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、およびトリスヒドロキシメチルアミノメタンなどの塩基、ならびに、クエン酸塩/デキストロース、重炭酸ナトリウム、および塩化アンモニウムなどの緩衝剤、を含む1つ以上のpH調節剤または緩衝剤を含むことがある。このような酸、塩基、および緩衝液は、組成物のpHを許容可能な範囲で維持することに必要とされる量で含まれる。
【0102】
さらに、医薬組成物は随意に、組成物のモル浸透圧濃度を許容可能な範囲にするために必要とされる量で1つ以上の塩を含む。こうした塩は、ナトリウム、カリウム、またはアンモニウムのカチオン、ならびに塩化物、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、チオ硫酸塩、または重亜硫酸塩のアニオンを含み、適切な塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、および、硫酸アンモニウムを含む。
【0103】
他の医薬組成物は随意に、微生物の活性を抑制する1つ以上の保存剤を含む。適切な保存剤は、メルフェン(merfen)とチオメルサールのような水銀を含有する物質;安定した二酸化塩素;ならびに、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、および塩化セチルピリジウムのような四級アンモニウム化合物を含む。
【0104】
さらなる他の医薬組成物は、物理的安定性を増幅するため、または他の目的のために、1以上の界面活性剤を含む。適切な非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよび植物油、例えば、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油;および、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとアルキルフェニルエーテル、例えば、オクトキシノール10、オクトキシノール40などが挙げられる。
【0105】
さらなる他の医薬組成物は、必要に応じて化学安定性を増幅させる1以上の抗酸化剤を含み得る。適切な抗酸化剤は、ほんの一例ではあるが、アスコルビン酸および二亜硫酸ナトリウムを含む。
【0106】
特定の実施形態において、医薬品の水性懸濁液組成物は、単回用量用の再密閉できない容器に包装される。代替的に、複数回投与の再密閉可能な容器が使用され、その場合、典型的に、組成物に保存剤が含まれる。
【0107】
代替的な実施形態において、疎水性の医薬化合物のための他の送達系が利用される。リポソームおよびエマルジョンは、本明細書の送達用ビヒクルまたは担体の例である。特定の実施形態において、N-メチルピロリドンなどの有機溶媒も利用される。さらなる実施形態において、本明細書中に記載されている化合物は、治療薬剤を含む固形の疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの持続放出系を用いて送達される。様々な持続放出物質が本明細書で役立つ。いくつかの実施形態において、持続放出カプセル剤は、数時間から24時間までの間、化合物を放出する。治療試薬の化学的性質と生物学的安定性に依存して、タンパク質安定化のための追加方策が用いられ得る。
【0108】
特定の実施形態において、本明細書中に記載されている製剤は、1以上の抗酸化剤、金属キレート剤、チオール含有化合物、および/または他の一般的な安定剤を含む。そのような安定化剤の例としては、限定されないが、以下が挙げられる:(a)約0.5%-約2%w/vのグリセロール、(b)約0.1%-約1%w/vのメチオニン、(c)約0.1%-約2%w/vのモノチオグリセロール、(d)約1mM-約10mMのEDTA、(e)約0.01%-約2%w/vのアスコルビン酸、(f)0.003%-約0.02%w/vのポリソルベート80、(g)0.001%-約0.05%w/vのポリソルベート20、(h)アルギニン、(i)ヘパリン、(j)硫酸デキストラン、(k)シクロデキストリン、(l)ペントサンポリサルフェートおよび他のヘパリン類似物質、(m)マグネシウムと亜鉛などの2価カチオン;または(n)これらの組み合わせ。
【0109】
併用療法
一般的に、本明細書において、および併用療法が本明細書に記載される作用機序に基づいて使用される実施形態において記載される組成物、および他の薬剤は、同一の医薬組成物で投与される必要はなく、いくつかの実施形態では、物理的および化学的な特徴が異なるため、異なる経路で投与される。いくつかの実施形態において、初回投与は、実証されたプロトコルに従って行われ、その後、観察された効果に基づいて、投与量、投与の方法、および投与の時間が当業者によって修正される。
【0110】
いくつかの実施形態では、処置の組み合わせで薬物を使用する場合、治療上有効な量は変動する。併用処置はさらに、患者の臨床管理を援助するために様々な時点で開始および停止される定期的処置も含む。本明細書に記載される併用療法に関して、同時投与された化合物の投与量は、利用される併用薬、利用される特定の薬物、処置されている疾患、障害、または疾病などによって変わる。
【0111】
いくつかの実施形態において、緩和が求められる疾病を処置、予防、または改善するための投与レジメンが、様々な要因に従って変更されることが理解される。これらの要因は、被検体の年齢、体重、性別、食事および病状と同様に、被検体が苦しむ障害も含む。したがって、いくつかの実施形態において、実際に利用される投与レジメンは、広く変わり、それ故、本明細書に明記される投与レジメンから逸脱する。他のAD治療剤と化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロヘキセノン化合物)の組み合わせが対象にされるように意図されている。本明細書に記載されたシクロヘキセノン化合物と他のAD治療剤との組み合わせは、いくつかの実施形態では、他の薬剤を用いたさらなる療法および処置レジメンを包含する。このような追加の療法および処置レジメンは、いくつかの実施形態において別のAD治療を含むことができる。代替的に、他の実施形態において、追加の療法および処置レジメンは、ADに関連する付随的な疾病(adjunct conditions)または併用療法におけるこのような薬剤からの副作用の処置に使用される他の薬剤を含む。さらなる実施形態において、アジュバントまたは促進剤は本明細書に記載される併用治療によって投与される。
【0112】
いくつかの実施形態において、以下の構造を有する治療上有効な量のシクロヘキセンオン化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、代謝産物、溶媒和物、あるいはプロドラッグ、および、1つ以上のAD治療剤を含む、ADの症状を処置または減少させるための組成物が提供され、
【0113】
【化17】
式中、
XおよびYの各々は、独立して、酸素、NR
5または硫黄であり、
Rは、水素またはC(=O)C
1-C
8アルキルであり、
R
1、R
2、およびR
3の各々は独立して、水素、随意に置換されたメチル、または(CH
2)
m-CH
3であり、
R
4は、NR
5R
6、OR
5、OC(=O)R
7、C(=O)OR
5、C(=O)R
5、C(=O)NR
5R
6、ハロゲン、5員または6員のラクトン、C
1-C
8アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、アリール、グルコシルであり、ここで、5員または6員のラクトン、C
1-C
8アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、アリール、およびグルコシルは、NR
5R
6、OR
5、OC(=O)R
7、C(=O)OR
5、C(=O)R
5、C(=O)NR
5R
6、C
1-C
8アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、C
3-C
8シクロアルキル、およびC
1-C
8ハロアルキルから選択される、1つ以上の置換基によって随意に置換され、
R
5およびR
6の各々は、独立して、水素またはC
1-C
8アルキルであり、
R
7はC
1-C
8アルキル、OR
5、またはNR
5R
6であり、
m=1-12であり、および、
n=1-12である。
【実施例】
【0114】
<実施例1:典型的なシクロへキセノン化合物の調製>
【0115】
ベニクスノキタケの菌糸体100グラムをフラスコに入れた。適切な量の水およびアルコール(70-100%のアルコール溶液)をフラスコへ加え、少なくとも1時間、20-25°Cで撹拌した。溶液を、フィルターおよび0.45μmの膜をフィルターに通し、濾液を抽出液として集めた。いくつかの例では、例えば、Lee,T-H.,et al., Planta Med 2007;73:1412-1415に開示された固体の発酵させた菌糸体状態および組成物によって、抽出物を調製した。
【0116】
ベニクスノキタケの濾液を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析にさらした。RP18カラム上で分離を実行し、移動相は、メタノール(A)および0.3%の酢酸(B)からなり、その勾配条件は、1ml/分の流量で、95%-20%のBにおいて0-10分、20%-10%のBにおいて10-20分、10%-10%のBにおいて20-35分、10%-95%において35-40分であった。カラム流出液を、紫外可視検出器によってモニタリングした。
【0117】
21.2~21.4分に集められた画分を収集して濃縮することで、浅黄色液体の生成物である化合物5を得た。化合物5を、408の分子量を有する、4-ヒドロキシ-5-(11-ヒドロキシ-3,7,11-トリメチルドデカ-2,6-ジエニル)-2,3-ジメトキシ-6-メチルシクロヘキサ-2-エノン(分子式:C24H40O5)であると分析した。1H-NMR(CDCl3)δ(ppm)=1.21、1.36、1.67、1.71、1.75、1.94、2.03、2.07、2.22、2.25、3.68、4.05、5.71および5.56。13C-NMR(CDCl3)δ(ppm):12.31、16.1、16.12、17.67、25.67、26.44、26.74、27.00、30.10、40.27、43.34、59.22、 60.59、71.8、120.97、123.84、124.30、131.32、134.61、135.92、138.05、160.45、および197.11。
【0118】
【化18】
化合物5:4-ヒドロキシ-5-(11-ヒドロキシ-3,7,11-トリメチルドデカ-2,6-ジエニル)-2,3-ジメトキシ-6-メチルシクロヘキサ-2-エノン
【0119】
23.7~24.0分に集められた画分を収集して濃縮することで、浅黄色液体の生成物である化合物7を得た。化合物7を、422の分子量を有する、4-ヒドロキシ-2,3-ジメトキシ-5-(11-メトキシ-3,7,11-トリメチルドデカ-2,6-ジエニル)-6-メチルシクロヘキサ-2-エノン(C25H42O5)であると分析した。1H-NMR(CDCl3)δ(ppm)=1.21、1.36、1.71、1.75、1.94、2.03、2.07、2.22、2.25、3.24、3.68、4.05、5.12、5.50および5.61。13C-NMR(CDCl3)δ(ppm):12.31、16.1、16.12、17.67、24.44、26.44、26.74、27.00、37.81、39.81、40.27、43.34、49.00、59.22、60.59、120.97、123.84、124.30、135.92、138.05、160.45および197.12。
【0120】
【化19】
化合物7:4-ヒドロキシ-2,3-ジメトキシ-5-(11-メトキシ-3,7,11-トリメチルドデカ-2,6-ジエニル)-6-メチルシクロヘキサ-2-エノン
【0121】
25~30分に集められた画分を収集して濃縮することで、浅黄色の褐色液体の生成物である、4-ヒドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5-(3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエニル)シクロヘキサ-2-エノン(化合物1)を得た。化合物1の分析は、C24H38O4の分子式を示し、これは48~52℃の融点を有する390の分子量であった。NMRスペクトルは、1H-NMR(CDCl3)δ(ppm)=1.51、1.67、1.71、1.75、1.94、2.03、2.07、2.22、2.25、3.68、4.05、5.07、および5.14を示した。13C-NMR(CDCl3)δ(ppm)=12.31、16.1、16.12、17.67、25.67、26.44、26.74、27.00、39.71、39.81、40.27、43.34、59.22、60.59、120.97、123.84、124.30、131.32、135.35、135.92、138.05、160.45、および197.12。
【0122】
【化20】
化合物1:4-ヒドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5-(3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエニル)シクロヘキサ-2-エノン
【0123】
化合物1の代謝物である、化合物27を、動物研究において化合物1を与えたラットの尿サンプルから得た。化合物27を、312の分子量を有する、4-ヒドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5-(3-メチル-2-ヘキセン酸)シクロヘキサ-2-エノン(C16H24O6)であると決定した。2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-((2E,6E)-3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエニル)シクロヘキサ-2,5-ジエン-1,4-ジオン(386.52の分子量、C24 H34O4)であると決定された化合物25を、精製工程から得た。
【0124】
【0125】
4-ヒドロキシ-2-メトキシ-6-メチル-5-((2E,6E)-3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエニル)シクロヘキサ-2-エノンである化合物26を、350.53(C23H36O3)の分子量で精製工程によって調製した。化合物28も調製した。
【0126】
【0127】
代替的に、典型的な化合物は、4-ヒドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチルシクロヘキサ-2,5-ジエノンなどから調製され得る。例えば、米国特許第9,365,481号と米国特許公開第2016-0237012号の例を参照する。同様に、以下の構造
【0128】
【化23】
を有する他のシクロへキセノン化合物は、ベニクスノキタケから単離されるか、あるいは適切な出発物質から合成的または半合成的に調製される。当業者は、このような合成のための適切な条件を容易に活用するであろう。
<実施例2:Outside-In動物モデル試験>
【0129】
6-8週齢のBALC/cメスのラットを使用する。各群は6-8匹のラットを有する。血液サンプルを感作の前にラットの頬から得た。1日目と8日目に、50μg/マウスのOVA水酸化アルミニウム(1:1v/v)をマウスの腹腔内に注入した。15日目にマウスをOVAパッチで皮膚上で感作させた。PBS中で調製されたOVA(100μg)を、2×2cmの滅菌ガーゼのパッチに含ませた。該パッチをマウスの剪毛した背中に置き、3MのTegaderフィルムで、その後、3MのCobanテープで皮膚に固定して、ガーゼを固定した。3日後、ガーゼを取り外し、再度適用した。この手順を3回繰り返した。27日目に、試験のすべてのマウスを殺処分して調べた。
【0130】
スケジュール:群ブランクN:ブランクである。
【0131】
群感作O:1日目と8日目にOVA(感作)を注入し、15日目にOVAガーゼを3日間(負荷)適用し、1日休ませたOVAガーゼ処置の適用を3回繰り返した。14日目から始めて、群のマウスに水を与えた。
【0132】
群L:マウスに低用量(5mg/kg BW)の例示的な化合物1を与えたことを除いて、群Oと同じ処置。
【0133】
群M:マウスに中程度の用量(15mg/kg BW)の例示的な化合物1を与えたことを除いて、群Oと同じ処置。
【0134】
群H:マウスに高用量(45mg/kg BW)の例示的な化合物1を与えたことを除いて、群Oと同じ処置。
【0135】
その処置を以下の表で要約する。
【0136】
【0137】
組織学的検査について、マウスを殺処分した後に、マウスのパッチを当てた背側の皮膚から皮膚検体(0.5x0.5cm)を得て、写真(
図2A-Eを参照)を撮った。同様にマウスから血液サンプルを入手した。皮膚検体の筋肉層と脂肪層を分離させた。皮膚検体を、6ウェルのディスク中の中性の緩衝液中の10%ホルマリンで固定し、乾燥後にパラフィンに埋め込んだ。
【0138】
血清免疫グロブリン分析。その測定はサンドイッチ-ELISAによって使用された。適切な量の抗マウスIgE抗体を、コーティング緩衝液(pH9.6)の96ウェルのNuncイムノプレートで調製した。一晩中4°Cのあと、プレートをPBST緩衝液で洗浄して非共役抗体を取り除き、その後、30分間室温で200μl/ウェルのブロッキング緩衝液(1%BSA/PBS)でブロックした。その後、プレートをPBST緩衝液で洗浄し、50倍に希釈した100μlのマウス血清、あるいは既知の濃度のIgG、IgA、IgEの標準対照を加えた。
【0139】
試験溶液あるいはIgE基準が含まれたウェルを1時間室温で反応させ、PBST緩衝液で洗浄し、適切に濃縮したHRP共役抗IgE二次抗体100μl/ウェルを加えた。1時間室温でプレートを反応させ、その後、PBST緩衝液で洗浄して、その後、TMB基質で反応させた。5分後、反応を100μlの2NのH2SO4で停止させ、その後、450nmの波長で測定することで吸収値を決定した。その値を用いて血清中の抗体濃度を決定した。
【0140】
遅延型のアレルギー反応。OVAをマウスの腹腔に注入した。6日後、OVAを、皮下注射によってマウスの右後肢、あるいはマウスの耳の内側と外側に適用した。24時間の適用後、後肢の腫れの厚さ、あるいは耳を、遅延型アレルギー反応の基礎として、適用していない部分(つまり対照群)に対して測定した。
【0141】
皮膚生理機能の決定。麻酔後、マウスの皮膚を、Tewameter TM210によって、経表皮水分喪失および相対湿度について測定した。皮膚のpHも測定した。
図3A-
図3Cを参照。
【0142】
マウス脾臓細胞の採取。マウスの脾臓を無菌的に取り除き、RPMI培地(10%のFBS)に入れた。20mLのシリンジからのバレルを使って脾臓を粉砕する。結果として得られた脾臓懸濁液を、無菌の金属細胞濾過器(70μm)に注ぎ、4°Cで5分間、300xgで遠心分離機にかけた。上清を取り除き、ペレット剤を5mlのRBC溶解緩衝液に溶かした。溶液を10分間氷で冷却し、その後、同じ量のcRPMI培地を加えて反応を止めた。結果として得られた懸濁液を4°Cで5分間、300xgで遠心分離機にかけた。上清を取り除き、ペレット剤を10mlのcRPMI培地に溶かして、その後、細胞数を数えた。結果として得られた溶液の濃度を、cRPMI培地を用いて1x106/mlに調節された。結果として得られた細胞を播種して12ウェルのディスクに置いて、各ウェルに50μg/mlのOVA、5μg/mlのConA、および10μg/mlのPHA-Lを加えた。各ウェルを72時間テストし、その後、4°Cで5分間、300xgで遠心分離機にかけた。各ウェルの上清を採取し、-80°Cで保存した。
【0143】
<マウスのリンパ節の採取>
マウスのリンパ節を無菌的に摘出し、RPMI培地(10%のFBS)に入れた。20mLのシリンジからバレルを使用し、リンパ節を粉砕する。結果として生じた懸濁液を、無菌の金属細胞ストレーナ(70μm)を通して注ぎ、4°Cで5分間、300xgで遠心分離機にかけた。上清を取り除き、ペレットを5mlのRBC溶解緩衝液に溶解させた。溶液を、10分間氷によって冷やし、その後、同じ量のcRPMI培地を加えて、反応を止めた。結果として生じた懸濁液を、4°Cで5分間、300xgで遠心分離機にかけた。上清を取り除き、ペレットを10mlのcRPMI培地に溶解させ、その後、細胞数を数えた。結果として生じた溶液の濃度を、cRPMI培地を用いて1x106/mlに調節した。結果として生じた細胞を、12のウェルディスクに播種し、50μg/mlのOVA、5μg/mlのConAおよび10μg/mlのPHA-Lを各ウェルに加えた。各ウェルを72時間誘発し、その後、4°Cで5分間、300xgで遠心分離機にかけた。各ウェルの上清を採取し、-80°Cで保存した。
【0144】
サイトカイン産生の定量化は、いくつかの病理学のプロセスを定義する際に、標準的な免疫学のアッセイに対し有益な付属物である。サイトカイン・レベルの測定は、ADにおける病理学のプロセスの有益な情報をもたらしてきた。
【0145】
<サイトカイン分泌試験>
分離されたリンパ球の濃度を1×106/mlに調節し、24のウェルプレートに配置した。プレートは、定量化したPHA、ConAあるいはOVAを曝し、脾臓細胞またはリンパ球を刺激した。ディスクを24時間あるいは72時間培養し、各々のウェルの上清をサイトカイン分泌の量を測定するために採取した。サイトカインをサンドイッチELISA法によって測定した。ELISAプレートを処理し、抗体を適用し、4°Cで夜通し培養した。プレートを試験の前に1%のPBS-BSAを用いて洗浄した。検体をプレートに加え、室温で2時間保持した後、ビオチン結合抗サイトカイン抗体を加えた。室温で2時間後、プレートにアビジン結合ペルオキシダーゼを加えた。さらに2時間後、TMBを酵素/基質読み出しに使用した。発色結果を、自動マイクロプレートELISAリーダを使用して、450nmで測定した。上記手順の中で使用される各試薬の濃度は、既知濃度を備えたリンパ媒体を用いて参照することにより、試験の前に決定されなければならない。
【0146】
<皮膚ケラチノサイト・アポトーシス>
皮膚検体をマウスからカットした。筋肉層および皮膚検体の脂肪層を切り捨て、その後、皮膚を10%の抗生物質を含むPBS中に5分間入れた。皮膚検体を取り出した後、37°Cで30分間0.25%のトリプシン溶液に入れた。皮膚検体を取り出し、10cmのディスクに置いた。皮膚ケラチノサイトを、ブレードでこすり、その後、遠心分離機にかけられたトリプシンを用いて洗浄し、遠心分離機にかけ、PBS中のペレットを2x105/mlの濃度に再懸濁した。イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)およびフィコエリトリン(PE)の結合させた抗体を蛍光活性化細胞分類(FACS)分析中で用いて、(a)表皮角化細胞のアポトーシスの状態を決定した。
【0147】
<統計分析>
【0148】
実施例の結果を平均の±SEMとして表現、独立t検定によって分析した。0.05未満の両側のp値は有意であると考えられる。
【0149】
<結果>
【0150】
図1に図示されるように、化合物1の経口投与量の全てのマウスの投与は、研究時間を通じて、体重のいかなる減少も、いかなる観察される臨床的症状も引き起こさず、体重変化は全ての処置群の間で有意差がなかった。
【0151】
図2A-Eで図示されるように、群Oのマウスは群Nのマウスより重度の腫脹および炎症を示す。群Oと比較して、低用量の群Lと中程度の量の群Mとの間に有意差はなかった。注目する価値があるのは、群H(化合物1の高用量)のマウスの皮膚状態が、群Oのマウスと比較すると良好で、少ない腫脹および炎症状態がより少ないことである。皮膚も同様により滑らかである。したがって、例示的な化合物1の高容量を与えられたマウスがAD疾病を改善したことは明らかである。
【0152】
経表皮水分喪失(TEWL)によって示されるように、TEWLの値が小さくなるほど、肌表面からの水分損失はより少なくなり、これは表皮の保護層がより良好な状態であることを意味する。TEWL値がより大きくなる場合、水分損失が多くなるにつれ、表皮の保護膜がより激しく損傷する。
【0153】
図3Aで図示されるように、14日目以前、マウスの背側の皮膚にOVAパッチを貼ると、各群のTEWL値は非常に類似している。27日目、群OのTEWL値は、群Nの値より著しく高く、これは肌表面の水分損失が原因となって、OVAがADを引き起こしたことを示す。群L、群Mと群HのTEWL値は、群Oと比較して統計的に著しく低く、これはこれらの群で表皮の損傷の改善がなされたことを示す。データはこの改善が、良好な改善をもたらすための、より高容量が、用量依存的であることも示す。
【0154】
相対湿度(RH)によって示されるようにRH値が小さい時、それは皮膚がより良好な保水性を有し、皮膚組織が正常であることを意味する。RH値がより大きい場合、それは、皮膚がより乾燥していて、皮膚組織が完璧ではないことを意味する。
【0155】
図3Bで図示されるように、14日目以前、マウスの背側の皮膚にOVAパッチを貼ると、各群のRH値は非常に類似している。27日目、群OのRH値は、群Nの値より統計的に著しく高く、これは、OVAがADを引き起こし、肌皮膚組織損傷の乾燥皮膚と、皮膚組織の損傷を誘発したことを示している。群L、群Mと群HのRH値は、群Oと比較して統計的に著しく低く、これはこれらの群での表皮の損傷の改善を示す。データはこの改善が、良好な改善をもたらすための、より高容量が、用量依存的であることも示す。
【0156】
FI3Cで図示されるように、14日目、マウスの背側の皮膚にOVAパッチを貼り、27日目に、各群のpH値は非常に類似している。
【0157】
したがって、例示的な化合物の有効な量をとることによって、TEWLとRH値の結果によって証拠づけられるように、ADの皮膚生理機能反応を改善させることができる。
【0158】
ヘマトキシリン(Hematoxylin)-エオシン染色法あるいはヘマトキシリン(haematoxylin)-エオシン染色(H&E染色あるいはHE染色)は、組織学の主要な染色のうちの1つである。この染色法は染料用の細胞の成分の親和性に基づく。サンプル構造差は染色差を結果としてもたらす。ヘマトキシリンは、好塩基性の構造を青~バイオレットに染色し、その一方でヘマチンは、エオシン好性の構造を赤、ピンクあるいはオレンジに染色する。
【0159】
図4A-Eで図示されるように、群Nと比較する際、H&E染色結果は、群Oにおける皮膚検体の表皮および真皮層の両方が著しく厚くなるという結果をもたらす。層は、さらに炎症性細胞浸潤の数が増えることを示す。群L、群Mと群Hの表皮および真皮層は、群Oの結果と比較すると、著しく薄く、炎症細胞の浸潤を減少させた。
【0160】
特に、
図4Fおよび4Gで図示されるように、群Oの表皮および真皮層は群Nのものより統計的に著しく厚く、これは、OVAが皮膚の肥厚化をもたらす炎症細胞の多くの浸潤を引き起こすことを示す。群L、群Mおよび群Hの表皮と真皮の層は、群Oと比較すると、統計的に著しく厚みが少ない。データは、用量依存的様式で表皮と真皮の厚さの減少も示す。
【0161】
したがって、例示的な化合物の有効な量をとることによって、H&E-染色被検体の結果によって証拠づけられるように、ADの表皮疾病を改善させることができる。
【0162】
好酸球(好酸球性白血球)は、血液へ遊走する前に骨髄中の造血の間に発生する顆粒球である。それらは主に、炎症および寄生虫感染中に生成される。それらは気管支喘息、アトピー性皮膚炎、鼻炎、アレルギー性眼炎、アレルギー性耳炎、寄生虫性および細菌感染、自己免疫疾患と慢性疲労を含む様々な活発な炎症性疾患をモニタリングするのに役立つことが示されている。
【0163】
図5A-Eに図示されるように、群O好酸球染色結果を群Nと比較すると、群Oにおける皮膚検体の真皮中の好酸球は、著しく増大した。群L、群M、および群Hの真皮中の好酸球は、群Oの結果と比較して、著しく減少した。
【0164】
図5Fは、真皮中の好酸球の細胞数の計測の結果を示す。
【0165】
群Oの真皮中の好酸球細胞の数は、統計的に群Nより著しく増大しており、これはOVAがADを誘発して好酸球細胞の数を増大させたことを示す。群Oと比較して、群L、群M、および群Hの真皮中の好酸球細胞の数は減少した。特に、群Mおよび群Hで減少した数は統計的に優位である。
【0166】
したがって、例示的な化合物の有効な量をとることによって、好酸球染色細胞の結果によって証拠づけられるように、ADの真皮疾病を改善させることができる。
【0167】
皮膚損傷が表皮を活性化し、胸腺間質リンホポエチン(胸腺間質リンホポエチン、TSLP)が生じるため、アトピー性皮膚炎は痒み感を引き起こす。
【0168】
6A-Eで図示されるように、群OのTSLP染色結果を群Nと比較すると、群Oにおける皮膚検体の真皮中のTSLPは著しく増大した。群L、群M、および群Hの真皮中のTSLP染色は、群Oの結果と比較して著しく減少した。
【0169】
図6Fは、マウスの表皮中のTSLP細胞染色の定量化した細胞数の結果を示す。感作された群Oの中のTSLPに染色された細胞の数は、群Nよりも統計的に著しく高く、これはOVAがADを誘発するTSLP染色細胞の数を増大させたことを示す。
【0170】
群L、群Mおよび群Hにおける表皮中のTSLP染色細胞の数は、群Oより低い。特に、群Mおよび群Hで減少した数は統計的に有意である。
【0171】
したがって、例示的な化合物の有効な量をとることによって、TSLP-染色細胞によって証拠づけられるように、ADの表皮の疾病を改善させることができる。
【0172】
ランゲルハンス細胞は皮膚バリア状態を検出するために使用することができる。皮膚が破損される際、外部ウイルスを呑み込み破壊する(食菌する)ために、ランゲルハンス細胞が大量に分泌される。ランゲルハンス細胞は、いくつかのリンパ球の産生を促すこともできる。
【0173】
図7AからEで図示されるように、ランゲルハンス細胞を染色した結果を提供すると、感作された群Oの上記染色されたランゲルハンス細胞の量は、群Nより著しく高かった。群L、群M、および群H中のランゲルハンス染色量は、群Oの量と比較して明らかに減少した。
【0174】
図7Fは、ランゲルハンス細胞染色の定量化した細胞数の結果を示す。感作された群Oの中のランゲルハンス染色細胞の数は、群Nよりも統計的に著しく高く、これはOVAがADを誘発し、ランゲルハンス染色細胞の数を増大させることを示す。群L、群Mおよび群Hにおけるランゲルハンス染色細胞数は、群Oより統計的に著しく低い。
【0175】
したがって、例示的な化合物の有効な量をとることによって、ランゲルハンス染色細胞との結果によって証拠づけられるように、ADの皮膚生理機能を改善させることができる。
【0176】
身体にアレルギー反応がある時、血清免疫グロブリンE(免疫グロブリンE、IgE)は増加する。
【0177】
図8Aは各群の総IgE量を示す。0日目、各群の間に違いはなかった。14日目、マウスが背側の皮膚上にOVAパッチを貼る前に、群Nマウス以外の、他の群のすべてのマウスに腹腔へOVA注射を行った。群O、群L、群Mおよび群Hにおける総IgEは、群Nより統計的に高く、これは、OVA注射が身体にアレルギー反応を引き起こすことを示す。27日目、群Oにおける総IgEは、群Nより統計的に著しく高く、これは、群OのマウスへのOVAパッチによるADモデルの確立が成功していることを示す。群L、群Mおよび群Hにおける総IgEの量は、群Oより統計的に著しく低く、減少は用量依存的であった。
【0178】
図8BはOVA特異的IgE量を示す。0日目、各群の間に違いはなかった。14日目、マウスの背側の皮膚上にOVAパッチを貼る前に、群Nマウス以外の、他の群のすべてのマウスに腹腔へOVA注射を行った。各群の。群O、群L、群Mおよび群HにおけるOVA特異的IgE量は、群Nより統計的に高く、これは、OVA注射が身体にアレルギー反応を引き起こすことを示す。27日目、群OにおけるOVA特異的IgEは、群Nより統計的に著しく高く、これは、群OのマウスへのOVAパッチによるADモデルの確立が成功していることを示す。群L、群Mおよび群HにおけるOVA特異的IgEの量は、群Oより統計的に著しく低い。
【0179】
したがって、例示的な化合物の有効な量を取ることによって、ADにおける総IgEおよびOVA特異的IgEは、血清IgE測定の結果で証拠づけられるように、減少する可能性がある。
【0180】
図9Aで図示されるように、27日目には、感作された群Oにおける耳の厚さはグループNと比較して厚くならなかった。群L、群Mおよび群Hにおける耳の厚さは、群Oとは異ならなかった。
【0181】
図9Bで図示されるように、群Oにおける後肢の太さは群Nより統計的に著しく厚かった。群L、群Mおよび群Hにおける後肢の太さは、明らかに群O未満であり、ここで群Lのそれは統計的に有意である。
【0182】
したがって、例示的な化合物の有効な量をとることによって、アトピー性皮膚炎における耳および脚への遅延アレルギー反応は改善される可能性がある。
【0183】
<24時間のPHA、ConA、およびOVAによってシミュレートされた脾臓細胞のホルモン分泌の結果>
【0184】
27日目および脾臓細胞が採取された後、各群のマウスを殺処分した。脾臓細胞を含有する溶液の濃度を1x106/mlに調節し、その後、PHA、ConA、およびOVAによる24時間の刺激に曝した。脾臓細胞の中で生成されたIFN-γ、IL-4、IL-12およびTNF-αの量を測定した。
【0185】
図10Aで図示されるように、群Oおよび群Nにおける24時間のPHA刺激の後のIFN-γ分泌の量はほぼ同じであった。群L、群Mおよび群HにおけるIFN-γ分泌の量は、群Oよりわずかに高かったが、統計的な意味は全くない。24時間のConA刺激の後のIFN-γ分泌の量に関して、群OにおけるIFN-γ分泌の量は、群Nより統計的に著しく低かった。群L、群Mおよび群HにおけるIFN-γ分泌の量は、群Oより統計的に著しく高かった。各群中における24時間のOVA刺激の後のIFN-γ分泌の量は、違いがなくほぼ同じであった。
【0186】
10Bで図示されるように、24時間のPHA刺激の後の群Oおよび群NにおけるIL-4分泌の量は、ほぼ同じであった。24時間のConA刺激の後の群OにおけるIL-4分泌の量は、群Nより統計的に著しく高かった。群L、群Mおよび群HにおけるIL-4分泌の量は、群Oより低く、特に群Lおよび群Mで統計的に優位であった。24時間のOVA刺激の後の各群におけるIL-4分泌の量は、違いがなくほぼ同じであった。
【0187】
図10Cで図示されるように、24時間のPHA刺激の後の各群におけるIL-12分泌の量は、ほぼ同じであった。24時間のConA刺激の後の群OにおけるIL-12分泌の量は、群Nより少し低かったが、統計的な意味は全くない。群L、群Mおよび群HにおけるIL-12分泌の量は、群Oより高く、特に群Lと群Mで統計的に有意であった。24時間のOVA刺激の後の各群におけるIL-12分泌の量は、違いがなくほぼ同じであった。
【0188】
図10Dに図示されるように、24時間のPHA刺激の後の各群におけるTNF-α分泌の量はほぼ同じであった。24時間のConA刺激の後の群OにおけるTNF-α分泌の量は、群Nより統計的に著しく高かった。群L、群Mおよび群HにおけるTNF-α分泌の量は、群Oより統計的に著しく低かった。24時間のOVA刺激の後の群OにおけるTNF-α分泌の量は、群Nよりわずかに高かったが、統計的な有意性はない。群L、群Mおよび群HにおけるTNF-α分泌の量は、群Oよりわずかに低かったが、統計的に有意ではなかった。
【0189】
したがって、例示的な化合物の有効な量は、AD中の脾臓細胞から特定のバイオマーカーの分泌に影響する可能性がある。
【0190】
<72時間のPHA、ConA、およびOVAによってシミュレートされた脾臓細胞のホルモン分泌の結果>
【0191】
27日目の後、各群のマウスを殺処分した。脾臓細胞を含有する溶液の濃度を1x106/mlに調節し、その後、PHA、ConA、およびOVAによる72時間の刺激に曝した。脾臓細胞の中で生成されたIFN-γ、IL-4、IL-12とTNF-αの量を測定した。
【0192】
図11Aで図示されるように、群Oおよび群Nにおける72時間のPHA刺激の後のIFN-γ分泌の量はほぼ同じであった。群Lおよび群MにおけるIFN-γの分泌の量は群Oとほぼ同じであった。群Hにおける量は、群Oよりわずかに高かったが、統計的な意味は全くない。72時間のConA刺激の後のIFN-γ分泌の量に関して、群OにおけるIFN-γ分泌の量は、群Nとほぼ同じであった。群L、群Mおよび群HにおけるIFN-γ分泌の量は、群Oよりわずかに高く、特に群Mで統計的に有意になる。72時間のOVA刺激の後の群Oおよび群NにおけるIFN-γの分泌の量は、ほぼ同じであった。群Lおよび群Mの量は、群Oとほぼ同じである。群Hにおける量は、群Oよりわずかに高かったが、統計的な意味はない。
【0193】
11Bで図示されるように、72時間のPHA刺激の後の群Oおよび群NにおけるIL-4分泌の量は、ほぼ同じであった。72時間のConA刺激の後の群OにおけるIL-4分泌の量は、群Nより統計的に著しく高かった。群L、群Mおよび群HにおけるIL-4分泌の量は、群Oより統計的に著しく低かった。72時間のOVA刺激の後の各群におけるIL-4分泌の量は、違いがなくほぼ同じであった。
【0194】
図11Cに図示されるように、72時間のPHA、ConA、およびOVA刺激の後の各群におけるIL-12の分泌の量はほぼ同じであった。
【0195】
図11Dに図示されるように、72時間のPHA刺激の後の各群におけるTNF-α分泌の量はほぼ同じであった。72時間のConA刺激の後の群OにおけるTNF-α分泌の量は、群Nより統計的に著しく高かった。群L、群Mおよび群HにおけるTNF-α分泌の量は、群Oより統計的に著しく低かった。各群中における72時間のOVA刺激の後のTNFーα分泌の量は、違いがなくほぼ同じであった。
【0196】
<24時間のPHA、ConA、およびOVAによってシミュレートされたリンパ球サイトカイン分泌の結果>
【0197】
27日目の後、各群のマウスを殺処分し、リンパ球を採取した。リンパ球を含有する溶液の濃度を1x106/mlに調節し、その後、PHA、ConA、およびOVAによる24時間の刺激に曝した。リンパ球の中で生成されたIFN-γ、IL-4、IL-12とTNF-αの量を測定した。
【0198】
図12Aで図示されるように、各群における24時間のPHA刺激の後のIFN-γ分泌の量はほぼ同じであった。24時間のConA刺激の後のIFN-γ分泌の量に関して、群OにおけるIFN-γ分泌の量は、群Nより統計的に著しく高かった。群L、群Mおよび群HにおけるIFN-γ分泌の量は、群Oより統計的に著しく高かった。各群中における24時間のOVA刺激の後のIFN-γ分泌の量は、違いがなくほぼ同じであった。
【0199】
12Bで図示されるように、24時間のPHA刺激の後の各群におけるIL-4分泌の量は、ほぼ同じであった。24時間のConA刺激の後の群OにおけるIL-4分泌の量は、群Nより統計的に著しく高かった。群L、群Mおよび群HにおけるIL-4分泌の量は、群Oより統計的に著しく低かった。24時間のOVA刺激の後の各群におけるIL-4分泌の量は、違いがなくほぼ同じであった。
【0200】
図12Cに図示されるように、24時間のPHA、ConAまたはOVA刺激の後の各群におけるIL-12分泌の量はほぼ同じであった。
【0201】
図12Dに図示されるように、24時間のPHA刺激の後の各群におけるTNF-α分泌の量はほぼ同じであった。24時間のConA刺激の後の群OにおけるTNF-α分泌の量は、群Nより統計的に著しく高かった。群L、群Mおよび群HにおけるTNF-α分泌の量は、群Oより統計的に著しく低かった。24時間のOVA刺激の後の各群におけるTFL-α分泌の量は、違いがなくほぼ同じであった。
【0202】
<72時間のPHA、ConA、およびOVAによってシミュレートされたリンパ球サイトカインの分泌の結果>
【0203】
27日目の後、各群のマウスを殺処分し、リンパ球を採取した。リンパ球を含有する溶液の濃度を1x106/mlに調節し、その後、PHA、ConA、およびOVAによる72時間の刺激に曝した。リンパ球の中で生成されたIFN-γ、IL-4、IL-12とTNF-αの量を測定した。
【0204】
図13Aで図示されるように、各群における72時間のPHA刺激の後のIFN-γ分泌の量はほぼ同じであった。72時間のConA刺激の後のIFN-γ分泌の量に関して、群OにおけるIFN-γ分泌の量は、群Nとほぼ同じであった。群L、群Mおよび群HにおけるIFN-γ分泌の量は、群Oよりわずかに高かったが、統計的な意味はない。各群中における72時間のOVA刺激の後のIFN-γ分泌の量は、違いがなくほぼ同じであった。
【0205】
13Bで図示されるように、72時間のPHA刺激の後の各群におけるIL-4分泌の量は、ほぼ同じであった。72時間のConA刺激の後の群OにおけるIL-4分泌の量は、群Nより統計的に著しく高かった。群L、群Mおよび群HにおけるIL-4分泌の量は、群Oより低く、特に群Mと群Hのうちの複数で統計的有意差があった。24時間のOVA刺激の後の各群におけるIL-4分泌の量は、違いがなくほぼ同じであった。
【0206】
図13Cに図示されるように、72時間のPHA、ConA、およびOVA刺激の後の各群におけるTNF-12分泌の量はほぼ同じであった。
【0207】
図13Dに図示されるように、72時間のPHA刺激の後の各群におけるTNF-α分泌の量はほぼ同じであった。72時間のConA刺激の後の群OにおけるTNF-α分泌の量は、群Nより統計的に著しく高かった。群L、群Mおよび群HにおけるTNF-α分泌の量は、群Oより統計的に著しく低かった。24時間のOVA刺激の後の各群におけるTNF-α分泌の量は、違いがなくほぼ同じであった。
【0208】
<実施例4:アトピー性の皮膚炎患者の治療のための化合物1に関する臨床試験研究>
【0209】
アトピー性皮膚炎を有する患者を治療する際の化合物1などの、本明細書に記載された、シクロヘキセノン化合物の有効性を研究する臨床試験。
【0210】
研究設計:無作為の、3群、二重盲検、用量範囲、プラセボ対照試験。
【0211】
主な意図:この研究は、中程度のアトピー性皮膚炎を伴う患者で、化合物1(例えば50、100、および200mg)の安全性と有効性をプラセボと比較する。
【0212】
<目的>
【0213】
第1の目的:中程度から重度のアトピー性皮膚炎を伴う患者における化合物1の活性の評価。
【0214】
第2の目的:アトピー性皮膚炎を伴う患者におけるアントロキノノール(Antroquinonol)のサイトカイン類変化およびメカニズムの査定。
【0215】
試験的な目的:アントロキノノールの曝露および安全性と有効性エンドポイントとの間の潜在的関連性の探索。
【0216】
概要:1群あたり20人、合計で60人の患者のサンプルサイズが登録される。患者は、0日目から12週間、あるいは受け入れがたい毒性の文書証拠、患者の同意の不履行または取り消し、あるいは調査者が処置の中止を決めるまでのいずれが最初に起こるまで、一日あたり、アントロキノノール50mg、100mg、またはプラセボを受ける。試験薬投与の時間は、患者の日記に記録されなければならない。EASIスコア、SCORAD、sIGAスコアを含むスコア評価は、0日目、28日目、56日目、および84日目のスクリーニングで実施される。第一のエンドポイントは、湿疹面積と重症度インデックス(EASI)におけるベースラインと12週目間の改善の割合である。
【0217】
<包含基準>
【0218】
研究の資格を有する年齢:12歳および65歳の間の、中度から重度のアトピー性皮膚炎(HanifinおよびRajkaの診断基準を使用して)を有していた者。
【0219】
体重が≧35kgおよび≦120kgの患者
【0220】
参加するための資格として、患者は以下を有することを要求された;
a.湿疹面積(Eczema Area)と重症度インデックス(Severity Index)(EASI)上で、少なくとも10のスコア、これは0から72で変動し、高いスコアほど悪化した疾患重症度を示す;
b.ビジュアル・アナログ・スケール上で、少なくとも30mmのそう痒のスコア、これは0(かゆみはない)から100mm(想像できる最悪なかゆみ)まで変動する;
c.static Investigator’s Global Assessment(sIGA)上で、少なくとも3のスコア、これは0(明瞭)から4(重篤な疾患)で変動する;
d.BSAの影響を受けた、あるいはPSAI≧5%
【0221】
<除外基準>
1.アトピー性皮膚炎を伴う進行中の皮膚病の患者。
2.調査者の観点から研究への参加を禁止する重篤な病状を伴う患者。
3.不完全な表皮バリアをもたらすネザートン症候群あるいは他の遺伝性皮膚症を伴う被験体。
4.免疫無防備状態か、悪性疾患の病歴を有するあらゆる被験体。この情報は、患者から病歴を収集する間に、患者より口頭で集められ、HIV検査などのさらなる検査を含まない。
5.研究プロトコルに応じる能力に干渉ことになる精神疾患の病歴あるいはアルコールまた薬物乱用の経歴を持つ被験体。
6.ひどく擦りむいた皮膚あるいは、活発な感染あるいは増加した感染感受性を連想させる、開いている傷またはじくじくした傷を含む、一方の腕の皮膚上のあらゆる顕著な損傷あるいはヒビがあること。
7.別の調査の試験へ進行中の参加。
8.患者の治療に耐える能力を損なうという調査者の意見による、治療通院または活発な感染の最大4週間前のあらゆる経口または局所用抗生物質の使用。
9.治療通院の4週間以内のあらゆる全身の免疫抑制療法(例えばCsA、MTXなど)の使用。
10.調査者の意見によると、患者を重大なリスクにさらす可能性があるか、または患者の研究への参加に重大な支障をきたす可能性がある、疾病を有する又は状態にある患者。
11.人工心臓弁、ペースメーカー、脈管内カテーテルあるいは他の異物または、人工器官を有する被験体。
12.重度のアナフィラキシー症状あるいはアナフィラキシー反応に関連する食物または薬物の経歴。
13.妊娠または授乳
14.癲癇、深刻な神経異常、脳血管障害あるいは血流不全の病歴あるいは存在。
15.薬物治療を必要とする心筋梗塞あるいは心不整脈の病歴あるいは存在。
16.紙上のアンケートを記入することができない患者。
17.臨床的に重大な研究所の異常。
18.処置済みまたは未処理の、あらゆる臓器系の悪性腫瘍病歴。
【0222】
第1の研究エンドポイント:湿疹面積と重症度インデックスにおける、ベースラインと12週目間の改善の割合。
【0223】
第2の研究エンドポイント:第1のベースラインからの改善が含まれた、12週目および各時点(4、8、および12週目)。
1.EASIスコア;
2.アトピー性皮膚炎(SCORAD)のスコア、これは0から103で変動し、高いスコアほどより重篤な疾病を示す;
3.sIGAスコア、これは0から4で変動する;
4.アトピー性皮膚炎の影響を受けた体表面積;
5.そう痒の口頭での評価尺度、これは毎日のそう痒の激しさを0(無)から10(非常に厳しい)で記載する;
6.睡眠障害ビジュアル・アナログ・スケール、これは毎日、0(睡眠障害はない)から10(全く眠れない)で変動する;
7.そう痒のビジュアル・アナログ・スケール、EASI、およびSCORADスコアにおけるスコアの25%、50%、および75%の改善がある患者の割合;
8.sIGAおよび、そう痒の口頭での評価尺度で少なくとも2ポイント進歩がある患者の割合。
【0224】
他の有効的なエンドポイント:TARC/CCL17、IFN-γ、TNF-α、IL-18、IL-6、IL-1βを含む、血清サイトカイン類中のベースラインと12週目との間の変化率。
【0225】
<実施例5:経口製剤>
【0226】
経口送達のための医薬組成物を調製するために、同じ重量の例示的な化合物1と、同じ重量のトウモロコシ油(例えば25mg、50mg、100mg、200mg)を混合する。混合物はカプセル内の経口投与ユニットを組み込まれ、これは経口投与に適する。
【0227】
いくつかの例においては、本明細書に記載の100mgの化合物を、750mgのデンプンと混合する。混合物は、例えば硬ゼラチンカプセル等の経口投与ユニットに組み込まれ、これは経口投与に適する。
【0228】
<実施例6:舌下(硬ロゼンジ)製剤>
【0229】
硬ロゼンジなどの、口腔送達用の医薬組成物を調製するために、式の化合物1の一部を、粉末状砂糖混合物の四から五部と、適切な量の薄いトウモロコシシロップ、蒸留水、およびミント抽出物と混合する。混合物を穏やかに混ぜ合わせ、型に注ぐことで、口腔投与に適したロゼンジを形成する。
【0230】
<実施例7:吸入組成物>
【0231】
吸入送達用の医薬組成物を調製するために、本明細書に記載の化合物の20mgを、無水クエン酸の50mg、および0.9%塩化ナトリウム溶液の100mLと混合する。吸入投与に適した、例えば噴霧器のような吸入送達ユニットに混合物を組み込む。
【0232】
本発明の好ましい実施形態が本明細書で示され記載されてきたが、こうした実施形態がほんの一例として提供されているに過ぎないということは当業者にとって明白である。
多くの変更、変化、および置換が、本発明から逸脱することなく、当業者の心に思い浮かぶであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施において利用されるかもしれないことを理解されたい。以下の請求項は本発明の範囲を定義するものであり、この請求項とその均等物の範囲内の方法、および構造体がそれによって包含されるものであるということが意図されている。